説明

アミロイドパシーにおいて、フィブリロジェニックAβペプチドの沈着を改変するために、1−アミノシクロヘキサン誘導体を使用する方法

本発明は、NMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体を、アミロイドパシーにおいて、潜在的に毒性及びフィブリロジェニックAβペプチドの沈着を改変するために使用することに関する。具体的に, 本発明はAPPのプロセシングを邪魔し、フィブリロジェニック Aβペプチドのレベルを低下させるメマンチンの能力に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、N-メチル-D-アスパルタート (NMDA) 受容体アンタゴニスト、たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体を、アミロイドパシー(amyloidopathy)においてフィブリロジェニック(fibrillogenic)Aβペプチドの沈着を改変するために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病 (AD) は、年齢65才以上の人々の間の痴呆症例全体のうちの約50 % - 60 %を占める神経変性のますます広まる形態である。ADは、進行性記憶喪失, 認知, 論理的思考, 判断, 及び次第に深刻な精神機能低下及び最終的に死に至る情緒的安定性によって臨床的に特徴づけられる。ADは臨床症状の開始及び死の間の平均約8.5 年の持続期間を有する進行性疾患である。ADは第四の最も一般的な病的死因を代表すると考えられ、そして米国では、約4百万人に影響を及ぼしている。 AD有病率は、65才を超えると5年ごとに倍に成る(非特許文献1及び2)。現在、ADは世界中で約15 百万人(全ての人種及び少数民族を含めて)に影響を及ぼし、そして人口の中で高齢者が相対的増加するために、その有病率は次の20又は30年にわたって増加する可能性がある。AD は現在治療することができない。効果的にADを予防するか又はその症状及び進行を無効にする治療は、現在全く知られていない。
【0003】
ヒトにおけるADの 臨床的症状は、記憶, 認知活動及び人格に重要な意味をもつ脳領域のニューロンの選択的変性に起因する(非特許文献3)。機能障害及びこれらのニューロンの死は その標的領域でシナプスマーカーの減少した数の原因となる。シナプス情報伝達の崩壊は、精神障害、そして最後に 重度の痴呆によって現れる。
【0004】
ADの患者の脳は、老人 (又は アミロイド) 斑, アミロイド血管症 (血管中のアミロイド沈着) 及び 神経原線維変化という特徴的な病変を示す。更に限られた解剖分布(anatomical distribution)中の比較的少ないこれらの病変は、臨床的ADのない最高齢のヒトの脳にも見出される。アミロイド斑及びアミロイド血管症は、トリソミー 21 (ダウン症候群)及び オランダ(Dutch)型アミロイド症を伴う遺伝性脳卒中(HCHWA-D)の患者の脳の特徴でもある。
【0005】
脳中に見出される蛋白質凝集体に2種類は、ADの病理学的特徴: 細胞内神経原線維変化(もつれ)及び細胞外アミロイド 斑である (最近の検討に関して、非特許文献4 参照)。もつれ(tangle)も、 斑も優先的に皮質, 海馬及び扁桃腺に局在化される。神経原線維変化は、細胞体及び近位樹枝状突起(proximal dendrites)内に, 及び末端神経突起及びシナプス末端での糸状の腫れ(filamentous swellings)内に見つかる内包物である。微小管構成成分タウ蛋白質のハイパーリン酸化されたイソホルム(これは不完全に可溶性の対のらせんフィラメントに集まる)は、これらの神経原線維変化の主たる特徴である(非特許文献5)。
【0006】
細胞外斑は、β-アミロイドペプチド (Aβ) 又は ときにはβAP, AβP 又は β/A4 と名づけられた約 39-43個のアミノ酸のおよそ 4.2 キロダルトン(kD)蛋白質 の高められた量によって発生する(非特許文献6; 特許文献1参照)。分子生物学分析及び蛋白質化学分析は、 Aβがはるかに大きい前駆体蛋白質(β-アミロイド前駆体蛋白質 (APP)として呼ばれる)の小さいフラグメントであることを示した(たとえば非特許文献7及び8参照)。APP は、多種の細胞タイプ中で正常に発現されるタイプI 膜貫通蛋白質であるが、特にニューロン中に豊富にある。Aβ モノマーはオリゴマー及びマルチマーを形成し、これらはプロトフィラメント、ついで原線維に集まる。場合により, Aβ原線維は、神経炎又は 老人斑 (アミロイド症)のアミロイド コアとして沈着し、これらはジストロフィー神経突起, 星状細胞及びミクログリアも有する複雑な構造である。アミロイドペプチドは、α-, β- 及びγ-セクレターゼと呼ばれる3つの異なるプロテアーゼによってAPPの切断(cleavage)を経て生成される。β-セクレターゼは, Aβを産生する、多量に分泌される誘導体(sAPPβ) 及び Aβを有する膜に関連するC-末端誘導体(CTFβ)-------これは第二活性、γ-セクレターゼ、によってその後に切断される--------- のアミノ側(amino side)でAPP を切断してAβを遊離する。またα-セクレターゼは, Aβ内でAPPを切断して、分泌される誘導体 sAPPα 及び 膜関連CTFαを生じる。主に分泌されるAPP誘導体は、ほとんどの細胞種でsAPPα である。分泌したAβのほとんどは、長さ40個の残基(Aβ40)であるが、少ない割合で長さ42個の残基 (Aβ42)がある。しかし, 長いAβ42がより一層容易に凝集し、それ故に病理学的に重要な形態であるとみなされる (最近の検討に関して非特許文献9参照 )。 要約されたAPP-プロセッシング事象は全く正常であり、そして全身で実質上すべての神経細胞及び非神経細胞中の度合いの変化を生じる。常染色体優性遺伝子AD, たとえばAPP内の突然変異又はプレセリン(PS)遺伝子PS1及びPS2の原因となる特定の遺伝的欠陥は,僅かにより短い及びより少ない疎水性Aβ40 型よりも高度に自己凝集するAβ42 バリアントの産生を好む方法で、すべての細胞内でAPP プロセシングのアミロイドジェニックパスウエイ(amyloidogenic pathway)を増大させる。 Aβ42 は通常、分泌したAβペプチド全体の約5-10%にすぎず, しかしAPP 又は PSが突然変異体である場合、このフラクションは約15-40%に増加する (非特許文献10)。
【0007】
Aβペプチド, 特にAβ42, が過剰に産生されるか又は不十分に除かれた場合, これらは安定なオリゴマー及びより大きいポリマーに凝集しがちになり, 明らかに結果的に成熟アミロイド原線維(mature amyloid fibrils)になる。成熟アミロイド原線維よりむしろAβのオリゴマーの中間体が主要な形であることが分かる。それによってペプチドはその悪影響を及ぼす。Aβオリゴマーは、周辺ニューロン, ミクログリア及び星状細胞に複合的な影響を及ぼし、そのオリゴマーの累積的効果はシナプス機能及びこのような情報の保存及び検索を潜在的に変えることである。ヒトAβ及びヒトtauの双方を有するマウスの最近の研究によって裏付けられるように, ADにおける脳の“思考”部分に生じるtau含有ジストロフィー 神経突起及び神経原線維変化は、Aβ蓄積の結果であるらしい (上記非特許文献10及びそこに引用された参考資料).
ADにおける最近の治療戦略のうちの1つは、毒性Aβのレベルの低下である。これらは、α-セクレターゼを増加させるか又はβ-又はγ-セクレターゼ活性又は産生を低下させることによって(たとえば 小分子阻害剤を用いて) Aβペプチドの遊離を低下させるか又は防止することを含む。その他の戦略は、Aβペプチド凝集の低下, Aβペプチド除去(clearance)の増加, Aβペプチド産生の減少又はAβペプチド凝集及び沈着の細胞作用の低下を含む(たとえば非特許文献11及び特許文献2参照)。これらの研究は、能動又は受動“Aβワクチン接種”を含み、これはマウス研究から導かれる。 その研究において、合成Aβペプチドの反復非経口投与が、脳内Aβレベルを低下させる抗体応答を誘発することを見出した (非特許文献12)。また発明者及びその同僚は、タクリン,コリン作動性分解酵素 アセチルコリンエステラーゼ阻害剤 (AChEI), があらゆる検出可能な細胞損傷又は毒性の不在下にヒト神経芽細胞腫細胞内でAPP, sAPPα, 及び 総Aβ, Aβ40 及び Aβ42 の選択された形の遊離を低下させることができることを見出した(非特許文献13)。
【0008】
後者の結果は、ADがマイネルト基底核内のコリン作動性ニューロンの深刻な損失に関連するという事実に関係する可能性がある(非特許文献14〜16)。
【0009】
グルタミン酸受容体 -------特にこれはN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA)によって選択的に活性化される ------- の過剰の又は病理学的活性化は, AD 患者の脳内コリン作動性細胞の変性を引き起こす過程にも関与した(非特許文献16〜20)。Aβがグルタマート毒性を増大させ、そしてNMDA 受容体媒介神経毒性を増加させる証拠もある。確かに, NMDA 受容体は、APP プロセシングに影響を及ぼすか又はAPP プロセシングによって影響を及ぼされる情報伝達カスケード(signalling cascades)にも係わっていた。 したがって培養された海馬 ニューロンで, sAPPαはNMDA-媒介された電流を選択的に抑制することが分かった (非特許文献21)。
【0010】
ヒト神経芽細胞腫細胞内でAβ遊離を低下させるAchEIsの能力を示すその初期のデータに基づき, 本発明者は、NMDA 受容体 アンタゴニストが毒性Aβのレベルを低下させることにも有用であり、そしてそれ故にAD 並びにその他のアミロイドパシーを治療及び(又は)予防することができると仮定した。
【0011】
NMDA 受容体の機能的阻害は、 NMDA 受容体複合体, たとえば: 第一伝達物質部位 (競合), カチオンチャネル内に局在するフェンシクリジン部位 (非競合), ポリアミン調節部位及び ストリキニーネ非感受性, コアゴニスト性(co-agonistic) グリシン部位(グリシンB) 内で異なる認知部位での作用によって達成することができる(上記非特許文献22)。NMDA 受容体 が、またシナプス可塑性の種々の形態、たとえば学習及び記憶に係わる形態に決定的な生理学的役割を果たすので(たとえば非特許文献23参照), NMDA 受容体に高い親和性を有する神経保護剤は正常のシナプス伝達を害する可能性があって、それによって多くの副作用を引き起こす。確かに, 現在までに同定された、多くのNMDA 受容体アンタゴニストは、その想定される治療範囲内での薬用量で非常に望ましくない副作用を生じる。したがって, 臨床試験は、ジゾシルピン(Dizocilpine)((+)MK-801; (+)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾシクロヘプテン-5,10-イミン マレアート), セレスタト(Cerestat)(CNS-1102), リコスチネル(Licostinel) (ACEA 1021), セルホテル(Selfotel) (CGS-19755), 及びD-CPP-eneのようなNMDA 受容体アンタゴニストに対する多数の副作用のために、良好な治療利用を裏付けられなかった (非特許文献24 〜26)。 それ故に、 この分野での要求がNMDA 受容体の病理学的活性化を妨げるが、その生理学的活性を可能にするNMDA 受容体アンタゴニストを開発させた。
【0012】
メマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン) は、1-アミノ-シクロヘキサンの同族体である (たとえば特許文献3ないし5に記載されている)。 ネラメキサン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン) も、1-アミノシクロヘキサンの誘導体である (たとえば特許文献4に記載されている)。メマンチン, ネラメキサン並びにいくつかのその他の1-アミノアルキル-シクロヘキサン類は、受容体に中程度の親和性を有する 、系統的に活性な非競合 NMDA 受容体アンタゴニストである。これらは強い電圧依存性特性及び速い遮断/非遮断動力学を示す(上記非特許文献22; 非特許文献24〜28)。これらの化合物はNMDA 受容体チャネルから、高い親和性のNMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば(+)MK-801 に比べてはるかに速く解離され、そして恐らく信号対雑音比(signal-to-noise ratio)の増加に起因するNMDA 受容体の持続性過刺激(tonic overstimulation)によって生じるニューロン性可塑性の崩壊を弱める。受容体に対するその比較的低い親和性, 強い電圧依存性及び速い受容体非遮断動力学のゆえに, これらの化合物は治療範囲内の薬用量でその他のNMDA 受容体アンタゴニストの副作用を本質的にもっていない(非特許文献29)。確かに, メマンチンは 15 年以上にわたって臨床上投与され、200,000人を超える、多くの治療された患者に良好な忍容性(許容性)を示している (上記非特許文献22)。
【0013】
メマンチン, ネラメキサン及びその他の1-アミノアルキルシクロヘキサン類は、種々の進行性神経変性疾患、たとえばADによる痴呆, パーキンソン病及び痙縮の緩和に有用であると提案された(たとえば, 特許文献7〜9; 上記非特許文献22及び24 非特許文献30〜34参照)。 これらの疾患は、グルタミン酸伝達障害が原因として関与し(そしてすべての事象で密接に関係する)と考えられる。すなわちNMDA 受容体チャネルによるカルシウムの過剰流入の結果としてして生じ, これが特異脳領域で脳細胞の崩壊を導くと考えられる(非特許文献35〜37)。成熟ラットのメマンチンを用いる長期治療は、海馬 長期増強の形成を増強させ、シナプス可塑性の永続性を増し、空間記憶能力を改善し, そして NMDA受容体アゴニストによって生じる記憶障害を反転させることが分かった(非特許文献38及び39)。
【特許文献1】米国特許第4,666,829号明細書
【特許文献2】米国特許第6,080,778号明細書
【特許文献3】米国特許第4,122,193号明細書
【特許文献4】米国特許第4,273,774号明細書
【特許文献5】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献6】米国特許第6,034,134号明細書
【特許文献7】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献8】米国特許第5,614,560号明細書
【特許文献9】米国特許第6,034,134号明細書
【非特許文献1】National Institute on Aging: Prevalence and costs of Alzheimaer’s Disease. Progress Report on Alzheimaer’s Disease. NIH Publication No. 99 3616, November 1998
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【非特許文献3】Francis 等., 1999, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry, 66:137-147
【非特許文献4】Wong等, Nature Neurosci., 2002, 5: 633-639
【非特許文献5】Goedert等, Curr. Opin. Neurobiol., 1998, 8: 619-632
【非特許文献6】Glenner 及び Wong, Biochem. Biophys. Res. Commun., 120:885-890, 1984
【非特許文献7】Lahiri 等., Drug Dev. Res., 56:267-281, 2002
【非特許文献8】Selkoe, Physiol. Rev., 81:741-766, 2001
【非特許文献9】Sambamurti 等., Neuromolecular Med., 1:1-31, 2002
【非特許文献10】Selkoe, J. Clin. Invest., 110:1375-81, 2002
【非特許文献11】Sabbagh et al., Alzheimer's Disease Rev., 3:1-19, 1997
【非特許文献12】Schenk 等., Nature, 400:173-177, 1999
【非特許文献13】Lahiri 等., Mol. Brain Res. 1998, 62: 131-140
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【非特許文献18】Francis 等., J. Neurochem., 1993, 60:263-291
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【非特許文献41】Barnes 等., Eur. J. Neurosci., 1996; 8:65-571
【非特許文献42】Zajaczk owski 等., Neuropharm., 1997, 36:961-971
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
その臨床効果に関する豊富なデータにもかかわらず,フィブリロジェニック Aβ ペプチドの沈着に直接影響を与えるNMDA 受容体アンタゴニストの能力は示唆されなかった。また,アミロイドパシーを患っている哺乳類のより有効な治療に関して技術的な要求が明らかにある。本発明者は、NMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体 (たとえばメマンチン 又は ネラメキサン)が、分泌されたsAPP 及びAβ40 (及び恐らくAβ42) のレベルを低下させることができ、そしてそれ故にフィブリロジェニック Aβ ペプチドの沈着を改変する(modify)ことができることに最初に思いつき、そして実証することによってこの要求を満足させた。これらの知見は、患者に症状に関する救済をもたらすほかに、NMDA 受容体 アンタゴニスト、たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体が根本的な病状を直ちに改変することができるという見解を裏付ける。
【0015】
図面の簡単な説明
図 1は、 種々の薬用量のメマンチン (0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(総APP (mAb22C11) 又は sAPPα (mAb6E10)に対して特異的mAbを用いてウエスタンブロットによって測定されるように)ヒト 神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で3日目にsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す。
【0016】
図 2は、種々の薬用量のメマンチン (0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(総APP (mAb22C11) 又は sAPPα (mAb6E10)に対して特異的mAbを用いてウエスタンブロットによって測定されるように)ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で6日目にsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す。
【0017】
図 3は、種々の薬用量のメマンチン (0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(総 APP (mAb22C11) 又は sAPPα (mAb6E10)に対して特異的mAbを用いてウエスタンブロットによって測定されるように)ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で種々の期間(3,6,12 日間)でsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す。
【0018】
図4 は、種々の薬用量のメマンチン(0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(抗-ヒト Aβ (35-40) ウサギ IgG を捕捉Ab(capture Ab)として、そしてHRP 標識抗-ヒト Aβ (11-28) ウサギ IgG Fab を検出Ab(検出 Ab)として用いてELISAによって測定されるように)ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で3日目にAβ40 のレベルに影響を及ぼすのを示す。
【0019】
図 5 は、種々の薬用量のメマンチン(0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(抗-ヒト Aβ (35-40) ウサギ IgG を捕捉Ab(capture Ab)として、そしてHRP 標識抗-ヒト Aβ (11-28) ウサギ IgG Fab を検出Ab(検出 Ab)として用いてELISAによって測定されるように)ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で6日目にAβ40 のレgベルに影響を及ぼすのを示す。
【0020】
図 6 は、種々の薬用量のメマンチン(0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、(抗-ヒト Aβ (35-40) ウサギ IgG を捕捉Ab(capture Ab)として、そしてHRP 標識抗-ヒト Aβ (11-28) ウサギ IgG Fab を検出Ab(検出 Ab)として用いてELISAによって測定されるように)ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で9日目にAβ40 のレベルに影響を及ぼすのを示す。
【0021】
図 7 は、種々の薬用量のメマンチン (0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml)が MTT (テトラゾリウム染料3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド) アッセイによって測定されるようにヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの細胞生死に影響を及ぼすことをを示す。
【0022】
図 8は、種々の薬用量のメマンチン(0 μg/ml, 0.25 μg/ml, 0.5 μg/ml及び 1 μg/ml) が、LDH (乳酸脱水素酵素) アッセイによって測定されるようにヒト 神経芽細胞腫細胞SK-N-SHの細胞毒性に影響を及ぼすのを示す。
【0023】
図 9 は、閉じられた透明ケージ中で10分間の記録の間探索行動の程度を示す。(A) 横の動き(移動距離), (B) 縦の動き (立ちあがる回数)。黒い棒グラフ及び白い棒グラフは1日目 及び3日目それぞれの平均値±SEMを示す。 ***APP/PS1 マウスは総合的 ANOVA (p< 0.001)でNT 同腹子と著しく異なる。
【0024】
図 10は、孤立誘発攻撃試験(an isolation-induced aggression test)を示す。棒グラフは、侵入マウスを攻撃する常駐マウスの平均値±SEM 潜伏時間を示す(NT マウスに対して黒い棒グラフ及びAPP/PS1マウスに対して白い棒グラフ)。 *APP/PS1マウスは総合的 ANOVA (p<0.05)でNT 同腹子と著しく異なる。
【0025】
図 11は、メマンチン及び偽薬処置されたNT 及び APP/PS1マウスに対するモリス水迷路試験を示す。平均避難潜伏時間(mean escape latency) (A, B, C) 及び プールの外側域にいる平均%時間 (D, E, F)を、種々の試験日に対して記載する。 1-5日目: 隠されたプラットホーム試験; 7-8日目, 見ることができるプラットホーム試験。星印は、すべての試験日にわたる、特定の2グループ間の相違を示す(隠されたプラットホームに対して5グループ、見ることができるプラットホームに対して2グループ): *p < 0.05, **p < 0.01, ***p < 0.001 (反復測定に関するANOVA)。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の要旨
本発明は、アミロイド前駆体蛋白質, たとえばsAPPα, Aβ40 又は Aβ42を発現する哺乳類細胞によって産生される、少なくとも1種のアミロイドペプチドのレベルを低下させる新規方法であって、1-アミノシクロヘキサン誘導体を上記細胞に供給されることから成る上記方法を提供する。好ましくは, 1-アミノシクロヘキサン誘導体は、一般式(I):
【0027】
【化1】

(I)
【0028】
{式中、
R* は-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、この際n+m = 0, 1又は2,
A は線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6)及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及び R2 が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれ、
R3及びR4は独立して水素,線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6) より成る群から選ばれるか, 又はこれらは一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10) を形成するか、又はこれらはNと一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン[これは(アルキル(C1-C6),アルケニル (C2-C6)) 置換された 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む]を形成するか, 又は
独立してR3又はR4 はRp, Rq, Rr又はRsと一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t-
(式中、t= 0又は1)を形成することができ、そしてこのアルキレン鎖の左側はU又はYに結合し、そしてこのアルキレン鎖の右側はNに結合し、そしてR6 が水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより群から選ばれか、又は
独立してR3又はR4はR5 と一緒になって式-CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖, 又は式-CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は -CH2-CH=CH-(CH2)t-(式中、t= 0 又は 1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, このアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側はW に結合し、そしてアルキレン環の右側がNに結合し、
R5は独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれるか又は R5は、これに結合する炭素及び隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し,
Rp, Rq, Rr及びRsは独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル(C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル(C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6), シクロアルキル(C3-C6) 及びアリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか、又は
Rp, Rq, Rr及びRsは独立してこれに結合するU又はYと一緒になって二重結合を形成することができるか, 又は
又はRp, Rq, Rr及びRsは一緒になって低級アルキレン-(CH2)x- (式中、x は2-5である。)又は低級アルケニレン架橋を示すことができ、このアルキレン架橋がついでR5と一緒になって別の低級アルキレン -(CH2)y- (式中、y は1-3である。)又は低級アルケニレン架橋を形成することができ,
符号U, V, W, X, Y及び Z が炭素原子を示す。}
によって表わされ, そして一般式(I)で表わされる化合物の光学異性体, ジアステレオマー, 多形体, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及びそれらの混合物を含むことができる。
【0029】
本発明に使用に最も好ましいNMDA 受容体アンタゴニストは、メマンチン及びネラメキサンである。また好ましくは、細胞はニューロン起源である。
【0030】
第一方法と共に, 本発明は哺乳類においてフィブリロジェニックβ-アミロイド (Aβ)ペプチドの潜在的沈着を改変する(modify) 新規方法であって、この目的に有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を当該哺乳類に投与することを含む、上記方法を提供する。好ましくは、1-アミノシクロヘキサン誘導体を、0.1-150μMの範囲、そしてより好ましくは1-25μM の範囲、最も好ましくは1-4μM の範囲にある量で投与する。具体的実施態様において、哺乳類はマウス又はヒトである。
【0031】
本発明は更に哺乳類においてアルツハイマー病 (AD)に関連するアミロイドパシー以外のアミロイドパシーの潜在的治療-、予防-、進行の停止-、開始の遅延-及び(又は)発現のリスクの減少-方法であって,この目的に有効な量で1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物を当該哺乳類に投与することを含む、上記方法を提供する。具体的な実施態様において、アミロイドパシーはダウン症候群, びまん性レビス(Lewis)小体病, 進行性核上麻痺, クロイツフェルト-ヤコブ病, フィンランド型家族性アミロイド症, 家族性アミロイドチック多発性神経障害, オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血及びゲルスターマン-ストラウスラー シャインカー(Gerstmann-Straussler Scheinker) 病を含むがこれらに限定されない。具体的実施態様によれば、1-アミノシクロヘキサン誘導体を1日あたり1-100 mgの範囲、最も好ましくは1日あたり5-60 mgの範囲、そして特に1日あたり10-40 mgの範囲にある治療上有効な量で投与する。
【0032】
したがって, 本発明の1つの課題は、アミロイドパシーの臨床的症状をまだ示さないが, 潜在的に毒性の及びフィブリロジェニックAβの高められたレベルを発現する危険にあるヒト対象者に、又はすでに認知機能障害の徴候を示すか又は高められたAβレベルを有することに起因する認知機能障害の危険にある個体に1-アミノシクロヘキサン誘導体を投与することにある。1-アミノシクロヘキサン誘導体を供することによって, 本発明はこのような個体において恐らくアミロイドパシーの発現のリスクを減少させるか又はアミロイドパシーの開始を遅延させる調合物及びその方法を提供する。 更に、本明細書に記載されるように, このような治療は更なる認知低下の速度を止めるか又は減少させることができ、そして少なくとも1種のマーカー又は方法によって測定されたように, 認知低下を長年にわたって反転させることができる。 このような症状又はマーカーは患者のADL, SIB, MMSE, CIBIC 又は ADAScog スコアである。
【0033】
具体的な実施態様において,本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、哺乳類の脳, 脳脊髄液又は血漿内Aβペプチド量を低下させることを含む、上記方法に関する。脳内 Aβペプチド量の低下は APP プロセシングに影響を与えることになる。
【0034】
別の実施態様にいて, 本発明はアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物を哺乳類に投与することによって哺乳類の脳, 脳脊髄液又は血漿内Aβペプチドの消失を増加させることを含む、上記方法に関する。好ましい実施態様において、哺乳類の脳内Aβペプチドの消失を増加させる。
【0035】
また別の実施態様において, 本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、哺乳類の脳内Aβペプチド凝集又は斑形成を予防又は低下させることを含む、上記方法に関する。
【0036】
別の実施態様において, 本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーの他覚症状を示す哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、哺乳類のAβペプチドの形成を減少させ, Aβペプチドの消失を増加させ, APPのプロセシングを調節するか, 又は斑の成長(plaque maturation)を減少させる、上記治療方法に関する。
【0037】
特定の実施態様において, 検出Aβレベルを約10-70%又はそれ以上低下させる。
【0038】
別の実施態様によれば, 1-アミノシクロヘキサン誘導体を別の1-アミノシクロヘキサン誘導体, アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI), セクレターゼモディファイヤー(たとえばβ- 及び(又は)γ-セクレターゼ阻害剤, β-シートブレーカー又はα-セクレターゼ エンハンサー)又はそれらの組み合わせて同時に又は連続して投与する。本発明の方法に有効なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン, タクリン, ドネペジル, フィソスチグミン及びリバスチグミンを含むが、これらに限定されない。
【0039】
その他の関連実施態様において、本発明はアミロイドパシーを患う患者の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療を行う方法を提供する。 好ましくは本発明は、1-アミノシクロヘキサン誘導体を用いて治療上の処置を受けた対象者に治療上の処置が影響を与えるのを監視する方法を提供する。この方法は、適当な時間間隔で体液中のAβ濃度の量を測定することからなる。 Aβ量のあらゆる変化又は変化の欠如は識別され、そして対象者への治療上の処置の影響と関連させることができる。特定の好ましい実施態様において、本発明は 1-アミノシクロヘキサン誘導体治療でのAβレベルの変化又は不変化を検出し、そしてそれに応じてその治療を調整することを提供する。Aβの測定量をベースラインレベルと比べることができる。好ましくはAβ濃度のこのベースラインレベルは、1-アミノシクロヘキサン誘導体治療前に対象者中に存在する。特定の実施態様において、そのベースラインレベル は既存の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療を受けている患者で測定されたレベルである。
【0040】
本発明の方法と共に, 治療上有効な量の、少なくとも1種の1-アミノシクロヘキサン誘導体 (たとえばメマンチン又はネラメキサン) 及び場合により薬学的に許容し得るキャリヤー又は賦形剤を含む薬学的調合物及び投薬形がここに提供される。 更に、可溶性β-アミロイドペプチド検出手段(たとえば抗-Aβ抗体), 並びに本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療法のスクリーンニング及び治療評価に使用される上記検出手段を含む検出アッセイ及びキットも提供する。
【0041】
発明の詳細な説明
本発明の方法
本発明者は、NMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体 (たとえばメマンチン又はネラメキサン)が、分泌されたAβペプチドのレベルを (たとえばAβ形成の阻止又は低下, Aβ消失の増加, Aβ凝集の阻止又は低下又はそれらの組み合わせによって)低下させるのを見出した。
【0042】
したがって, 本発明は哺乳類細胞によって産生された少なくとも1種のアミロイドペプチドレベルの新規低下方法であって, 1-アミノシクロヘキサン誘導体をその細胞に投与することを含む、上記方法を提供する。具体的な実施態様において, このアミロイドペプチドはsAPPα 又は Aβ (たとえば Aβ40 又はAβ42)である。好ましくは1-アミノシクロヘキサン誘導体はメマンチン又はネラメキサンである。また好ましくは, 上記細胞は神経細胞である。
【0043】
第一方法と共に, 本発明は哺乳類においてフィブリロジェニックβ-アミロイド (Aβ)ペプチドの潜在的沈着を改変する(modify) 新規方法であって、この目的に有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体をその哺乳類に投与することを含む、上記方法を提供する。好ましくは、1-アミノシクロヘキサン誘導体を、0.1-150μMの範囲、そしてより好ましくは1-25μM の範囲、最も好ましくは1-4μM の範囲にある量で投与する。具体的実施態様において、哺乳類はマウス又はヒトである。
【0044】
本発明は更に哺乳類においてアルツハイマー病 (AD)に関連するアミロイドパシー以外のアミロイドパシーの潜在的治療-、予防-、進行の停止-、開始の遅延-及び(又は)発現のリスクの減少-方法であって,この目的に有効な量で1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物を当該哺乳類に投与することを含む、上記方法を提供する。具体的な実施態様において、アミロイドパシーはダウン症候群, びまん性レビス(Lewis)小体病, 進行性核上麻痺, クロイツフェルト-ヤコブ病, フィンランド型家族性アミロイド症, 家族性アミロイドチック多発性神経障害, オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血及びゲルスターマン-ストラウスラー シャインカー(Gerstmann-Straussler Scheinker) 病を含むがこれらに限定されない。具体的実施態様によれば、1-アミノシクロヘキサン誘導体を1日あたり1-100 mgの範囲、最も好ましくは1日あたり5-60 mgの範囲、そして特に1日あたり10-40 mgの範囲にある治療上有効な量で投与する。
【0045】
したがって, 本発明の1つの課題は、アミロイドパシーの臨床的症状をまだ示さないが, 潜在的に毒性の及びフィブリロジェニックAβの高められたレベルを発現する危険にあるヒト対象者に、又はすでに認知機能障害の徴候を示すか又は高められたAβレベルを有することに起因する認知機能障害の危険にある個体に1-アミノシクロヘキサン誘導体を投与することにある。1-アミノシクロヘキサン誘導体を供することによって, 本発明はこのような個体において恐らくアミロイドパシーの発現のリスクを減少させるか又はアミロイドパシーの開始を遅延させる調合物及びその方法を提供する。 更に、本明細書に記載されるように, このような治療は更なる認知低下の速度を止めるか又は減少させることができ、そして少なくとも1種のマーカー又は方法によって測定されたように, 認知低下を長年にわたって反転させることができる。 このような症状又はマーカーは患者のADL, SIB, MMSE, CIBIC 又は ADAScog スコアである。
【0046】
具体的な実施態様において,本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、哺乳類の脳, 脳脊髄液又は血漿内Aβペプチド量を低下させることを含む、上記方法に関する。脳内 Aβペプチド量の低下は APP プロセシングに影響を与えることになる。
【0047】
別の実施態様にいて, 本発明はアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物を哺乳類に投与することによって哺乳類の脳, 脳脊髄液又は血漿内Aβペプチドの消失を増加させることを含む、上記方法に関する。好ましい実施態様において、哺乳類の脳内Aβペプチドの消失を増加させる。
【0048】
また別の実施態様において, 本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーに罹る哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、
哺乳類の脳内Aβペプチド凝集又は斑形成を予防又は低下させることを含む、上記方法に関する。
【0049】
別の実施態様において, 本発明はアルツハイマー病関連アミロイドパシー以外のアミロイドパシーの他覚症状を示す哺乳類の治療方法であって、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することによって、哺乳類のAβペプチドの形成を減少させ, Aβペプチドの消失を増加させ, APPのプロセシングを調節するか, 又は斑の成長(plaque maturation)を減少させる、上記治療方法に関する。
【0050】
特定の実施態様において, 検出Aβレベルを約10-70%又はそれ以上低下させる。
【0051】
別の実施態様によれば, 1-アミノシクロヘキサン誘導体を別の1-アミノシクロヘキサン誘導体, アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI), セクレターゼモディファイヤー(たとえばβ- 及び(又は)γ-セクレターゼ阻害剤, β-シートブレーカー又はα-セクレターゼ エンハンサー)又はそれらの組み合わせと同時に又は連続して投与する。本発明の方法に有効なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン, タクリン, ドネペジル, フィソスチグミン及びリバスチグミンを含むが、これらに限定されない。
【0052】
その他の関連実施態様において、本発明はアミロイドパシーを患う患者の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療を行う方法を提供する。 好ましくは本発明は、1-アミノシクロヘキサン誘導体を用いて治療上の処置を受けた対象者に治療上の処置が影響を与えるのを監視する方法を提供する。この方法は、適当な時間間隔で体液中のAβ濃度の量を測定することからなる。 Aβ量のあらゆる変化又は変化の欠如は識別され、そして対象者への治療上の処置の影響と関連する。特定の好ましい実施態様において、本発明は 1-アミノシクロヘキサン誘導体治療でのAβレベルの変化又は不変化を検出し、そしてそれに応じてその治療を調整することを提供する。Aβの測定量をベースラインレベルと比べることができる。好ましくはAβ濃度のこのベースラインレベルは、1-アミノシクロヘキサン誘導体治療前に対象者中に存在する。特定の実施態様において、そのベースラインレベル は既存の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療を受けている患者で測定されたレベルである。
【0053】
特定の実施態様において, 本発明は1-アミノシクロヘキサン誘導体投与の有効性を決定するために、哺乳類の体液中のAβ検出レベルを少なくとも1個の予め検出されたAβレベルと比べることからなる。検出されたレベルを正常又は疾患状態の徴候があるとして認められる、技術上公知の一般に認められたレベルと比べることもできる。別の実施態様において, 本発明は上記比較に基づき、1-アミノシクロヘキサン誘導体の繰り返し投薬を調整することを含む。
【0054】
アミロイドペプチド レベルの測定に関して技術上公知のあらゆる処理操作を本発明の実施で使用することができる。このような処理操作は、上記Aβレベルを上記体液中で、放射免疫測定法, ELISA [酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay)], "サンドイッチ" 免疫測定法, 沈降反応, ゲル拡散沈降反応, 免疫拡散法, 凝集測定法, 補体結合測定法, 免疫放射定量測定法, 蛍光免疫測定法, ウエスタンブロット法, プロテインA免疫測定法及び免疫電気泳動法, それらの組み合わせ等々のような方法を用いて競合及び非競合アッセイシステムを含むが、これらに限定されない。一般的にいえば、アミロイドペプチドの定量測定法はアミロイドペプチドを一次捕捉抗体を用いて捕捉し,すべての非結合成分を洗浄除去し, ついで残存する複合体を二次捕捉抗体を用いて検出することを提供する。好ましくは, 免疫アッセイデザインは非常に多くの"捕捉及び検出-抗体" 組み合わせに基づき, そして抗体の組み合わせを含むが、この場合それぞれの抗体は別々のエピトープと反応する。
【0055】
具体的実施態様において, 本発明の方法は体液中の Aβを捕捉し、Aβの存在を検出する Aβペプチド抗体を用いることからなる。したがって, 具体的な局面で, 本発明は、体液サンプル中のAβ濃度の測定に有用であり、そして本発明のスクリーニング法でも、診断法でも使用することができる特異結合アッセイを提供する。本発明の特異結合アッセイは、患者体液及び馴化培養培地の特徴である極めて低い濃度で可溶性 Aβを検出する能力があり、典型的には約1 ng/ml 〜10 ng/ml, 又はそれ以下の範囲で閾値濃度を測定する能力がある。本発明の特異結合アッセイは、エピトープ又はAβ分子上の決定因子部位(この部位は一般にβ-アミロイド前駆体蛋白質 (APP)の他のフラグメント又は分解生成物上に見出されない。)に特異的な少なくとも1個の結合物質を使用する。Aβ内接合領域(junction region)を認識する抗体が特に有用である。そこでその接合域は残基Lys16 と Leu17 の間でAPPの通常蛋白質分解的切断部位あたりに位置し(Esch 等, Science, 248:1122-1124, 1990; Anderson等, Neuroscience Lett., 128:126-128, 1991), 典型的にはアミノ酸残基13及び28に及ぶ。代表的な得意結合アッセイは、2つの部位 (サンドイッチ) アッセイを含み、 そのアッセイで捕捉抗体は上述のように Aβ接合域に特異的であり、そして標識された第二抗体は捕捉抗体によって認識されたエピトープ以外のエピトープに特異的である。Aβのアミノ-最終末端(terminal end)に結合する第二抗体が特に有用であり、この抗体は主にアミノ酸残基1-16内のエピトープを認識する。 別の局面で, 本発明は体液サンプル中の可溶性 Aβを検出するシステムを提供する。このシステムは、上述のようにAβの接合域でエピトープに特異的である最初に結合する物質、主として抗体, 及び最初に結合する物質によって結合されるエピトープ以外のAβのエピトープに特異的である二番目に結合する物質, 主として抗体を含む。第一及び第二結合物質のうちの1つは固相に結合し、一方もう1つは、好ましくは固相に結合する捕捉抗体である第一結合物質と、好ましくは標識された抗体、より好ましくは酵素標識された抗体である第二結合物質で標識される。このシステムは更に酵素に対する基質を含むことができる。そのシステムは体液サンプル中のAβ検出に高い特異性及び感受性を有する酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)を行うのに有用である。
【0056】
本発明のある好ましい実施態様において、ウエスタンブロットAβ検出を使用する。その他の好ましい実施態様において, ELISA (酵素免疫測定法) Aβ検出を使用する。このような実施態様の1つの説明はたとえば以下の通りである:
可溶性抗原に対するモノクロナール抗体 (捕捉抗体, mAb 1)を固体基体に吸着させる。サンプル中に存在する可溶性抗原はこの抗体に結合し、そして未処理サンプル成分を洗浄によって除去する。抗原の第二エピトープに対する、酵素結合したモノクロナール抗体 (検出抗体, mAb 2) は、mAb 1 によって捕捉される抗原に結合し、サンドイッチを完成する。非結合mAb 2を洗浄によって除去した後, 基質溶液をウエルに加える。 特定の実施態様において, 着色された生成物を、サンプル中に存在する抗原の量に比例して生じさせる。反応を停止液の添加によって終了し、ついで吸光度を分光光度法で測定することができるか又はいくつかの実施態様において、生成物を蛍光光度法で検出することができる。
【0057】
好ましい実施態様において, 本発明で使用される抗体はAβペプチドにのみ特異的である。
【0058】
特定の実施態様において, 本発明のアッセイ法を、キットの形で、たとえばアッセイを実施するための指示書、捕捉抗体及び以下に記載されるような固定化用固体支持体が一緒にパッケージにいれられた形で提供することができる。更に, 検出手段は、たとえばAβペプチドに対する抗体(標識されているか又は標識されていない), 並びにその他の添加物, たとえば安定剤, 洗浄剤 及びインキュベーション緩衝液等々を包含していてもよい。
【0059】
本発明のキットは、たとえば注射容器又は 中空成形プラスチック容器のように市販するために厳重な監視下で試薬を含む手段も一般に包含する。記載の方法の特定の段階を実施するのに適するその他の容器も提供することができる。
【0060】
定義
ここで使用される用語“β-アミロイドペプチド” (Aβ) は、約4.2 kD蛋白質を意味し、この蛋白質は、たとえばアルツハイマー病 (AD), ダウン症又はHCHWA-D に罹る対象者及び幾人かの正常な老人対象者の脳内に, 小さい脳-及び髄膜-血管中の老人 (アミロイド) 斑及びアミロイド沈着を含むアミロイドフィラメントのサブユニットを形成する(アミロイド血管障害)。Aβはフィラメント状ポリマー形で生じることができる(この形で、これはこれと関連して記載したアミロイドのコンゴ-レッド 及び チオフラビン-S 染料-結合特性を示す)。Aβは組織中に非フィラメント状形 ("プレアミロイド" 又は "無定形" 又は "拡散" 沈着) で生じることもできる。この形状で、検出不可能な複屈折の、コンゴ-レッドによる染色が生じる。髄膜血管から得られる不溶性の形のこの蛋白質の一部は、米国特許第4,666,829号明細書に記載されている。本発明に関連して使用される場合、Aβは具体的に、インビトロで生育された培養細胞の細胞外液体 (培地)中に又はヒト及び正常の個体及びAβ-関連病態を患う個体も包含するその他の哺乳類の体液中に見出され、そしてこれらから精製されうる約39-43個のアミノ酸ペプチドを意味する。しかし, Aβx-40 として呼ばれるアミノ切断されたAβペプチドもここで使用されるアッセイによって細胞外液体 (培地) 中に検出された。したがって, Aβは正常遺伝子のAβ領域中の突然変異の原因となる関連Aβ配列も意味する。どんな形であっても、Aβは大きい膜貫通型糖蛋白質の約39-43個のアミノフラグメント又はAβx-40であり、β-アミロイド前駆体蛋白質 (APP)として呼ばれ,ヒト染色体21の長腕の遺伝子によってコードされている。AβはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で又は高速液体クロマトグラフィー (HPLC)でその相対移動度によって更に特徴づけられる。その43-アミノ酸配列は次の通りである:
AspAlaGluPheArgHisAspSerGlyTyrGluValHisHisGlnLysLeuValPhePheAlaGluAspValGlySerAsnLysGlyAlaIleIleGlyLeuMetValGlyGlyValValIleAlaThr (SEQ ID NO: 1)
又はこれに実質的に相同する配列。
【0061】
ここで使用される用語“Aβペプチド”は、 無傷の又はフルレンス(full length) Aβ を意味し、そして低濃度で哺乳類細胞によって発生されるAβのフラグメント及び分解生成物と呼ばれる。特定のAβフラグメントは約3 kDの分子量を有し、そしてAβのアミノ酸残基11-40 及び 17-40からなると現在考えられている。
【0062】
ここで使用される用語“Aβ接合域(junction region)”は、APP の正常な蛋白質分解プロセシングの標的であるアミノ酸残基 16 と17 (Lys16 及び Leu17)の間の部位に中心があるAβの領域を意味する。このような通常のプロセシングは、無傷Aβ分子及び本発明の方法で同定されうるAβのフラグメントと潜在的に免疫学上交差反応する種々のAPP フラグメントを結果的にもたらす。接合域は、 アミノ酸残基 10 〜35, 好ましくは貫通型(spanning)アミノ酸残基 15〜30を、必須の特異性を見せることが分かったアミノ酸残基 13-28個からなる合成ペプチドに対して生じる抗体と共に有する。
【0063】
ここで使用される用語“β-アミロイド前駆体蛋白質”又は “APP” は、ヒトにおいて染色体 21の長腕に突き止められた同一名称の遺伝子によってコード化され、そして そのカルボキシル末端(carboxyl third)内にAβを包含するポリペプチドとして定義される。APPは、グリコシル化された, 多くの哺乳類組織において広範な細胞中で発現される、1回膜貫通型蛋白質である。ヒトに存在すると現在知られている、特異的アイソタイプのAPPの例は、Kang等によって記載された695-アミノ酸ポリペプチドであり (Nature, 325:733-736, 1987)、これは "正常" APPと呼ばれる; 751-アミノ 酸ポリペプチドはPonte 等 (Nature, 331:525-527, 1988) 及び Tanzi等(Nature, 331:528-530 1988) によって記載されている; そして770-アミノ酸ポリペプチドはKitaguchi 等. (Nature, 331:530-532 1988)によって記載されている。APPの特異的バリアントの例は、位置も表現型も異なることができる。ポイント突然変異を包含する。(公知のバリアント突然変異の検討に関してHardy, Nature Genet., 1:233-234, 1992参照)。
【0064】
ここで使用される用語“APP フラグメント”は、もっぱらAβ又はAβフラグメントからなるAPP以外のAPPフラグメントを意味する。すなわち, APP フラグメントは、無傷Aβ又はAβフラグメントを形成するAPPに加えてAPPのアミノ酸配列を包含する。
【0065】
ここで使用される用語“Aβ-関連病態”又は “アミロイドパシー”は、アルツハイマー病 (これは家族性アルツハイマー病を含む), パーキンソン病, ダウン症候群, びまん性レビス(Lewis)小体病, 進行性核上麻痺, クロイツフェルト-ヤコブ病, 家族性アミロイド症(フィンランド型), 家族性アミロイドチック多発性神経障害, アミロイド症(オランダ型)を伴う遺伝性脳出血及びゲルスターマン-ストラウスラー シャインカー(Gerstmann-Straussler Scheinker) 病を包含するものとして定義される。
【0066】
ここで使用される用語“馴化培養培地”及び“培養培地”は、組織培養(インビトロ)で生育した細胞を含み、そしてその他の構成成分のうち、細胞によって分泌される蛋白質及びペプチドを含有する水性細胞外液体を意味する。
【0067】
ここで使用される用語“体液”は、Aβ及びAβフラグメントの測定可能な量を含むことが見込まれる哺乳類ホストの体液を意味し、具体的に血液, 脳脊髄液 (CSF), 尿及び腹水を含む。用語“血液”は全血並びに血漿 及び血清を意味する。本発明によれば, Aβ及びAβフラグメントを検出するか及び(又は)種々の生物学的及び生理学的サンプル-----------これはインビトロサンプル, たとえばトランスフェクションされた細胞系及び内因性細胞系を含む培養細胞からの馴化培地、及びインビボ患者サンプル, 一般に体液及び脳組織抽出物を含む-----------中で測定することができる。Aβペプチドの検出及び測定は、Aβ及びAβフラグメントとサンプル中に見出されるかもしれないその他のAPP フラグメントを区別することができるあらゆる方法によって達成することができる。通常, 免疫学的な検出法は Aβに特異的な結合物質, たとえば抗体、抗体フラグメント, 組換え抗体等々(これらは特異性及び感受性をもってAβに結合する)の使用を採用することができる。 特にAβの接合域にモノ特異的である抗体はAβとその他のAPPフラグメントを区別する能力があることが分かった。Aβの接合域はアミノ酸残基16 及び 17, 主として貫通型(spanning) アミノ酸残基 13-28に中心があり, そしてこのような接合-特異的抗体を、その配列を免疫原として有する合成ペプチドを用いて調製することができる。特に適する検出法はELISA, ウエスタンブロット, 放射免疫測定等々を包含する。
【0068】
好ましい免疫アッセイ法は、接合-特異抗体、たとえば捕捉抗体 (固相に結合された) 及び捕捉抗体によって結合されるエピトープ以外のエピトープに結合する二次標識抗体を用いる二元(two-site)アッセイ又は "サンドイッチ" アッセイ である。二次標識抗体は好ましくはAβのアミノ末端を認識し、そして本質的にAβのアミノ酸残基 1-16からなる合成ペプチドに対して通常生じることができる。
【0069】
Aβ特異的抗体の使用を要求しないAβ及びAβフラグメントを検出するためのその他の非-免疫学的方法を使用することもできる。たとえば二次元ゲル電気泳動を、体液サンプル中に存在する、密接にかかわる可溶性蛋白質を分離することに使用することができる。多くのAPPのフラグメント(Aβを含む)と交差反応する抗体は,ゲル上のその正確な位置に基づいて同定されるAβの存在によってそのゲルを調べるために使用することができる。培養細胞の場合, 細胞蛋白質は代謝的に標識され、ついでSDS-ポリアクリルアミド ゲル電気泳動によって, 場合により開始分離工程として免疫沈降を用いて分離することができる。
【0070】
患者サンプルのAβインビボ検出を、アルツハイマー病 (AD) 及びその他のAβ-関連病態の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療監視に本発明の方法にしたがって使用することができる。適する患者サンプルは、体液, たとえば血液, CSF, 尿素及び腹水を包含する。 Aβ-関連病態の存在は、正常の個体, すなわちAD 又は あらゆる他のAβ-関連病態に罹っていない個体のこれらのAβ値に比べて、一般に体液中の高められたAβレベルと関係する。血液中のAβの診断濃度は、0.1 ng/ml 〜10 ng/ml 又はそれ以上, より一般的に0.1 ng/ml 〜3 ng/mlの範囲である。CSF中のAβ診断濃度は、0.1 ng/ml 〜25 ng/ml 又はそれ以上, より一般的に0.1 ng/ml 〜5 ng/mlの範囲である。
【0071】
Aβの測定濃度を、1-アミノシクロヘキサン誘導体治療の有効性を追跡するために監視することができる。本発明によれば, Aβレベルは有効な1-アミノシクロヘキサン誘導体治療投薬計画によって低下する。
【0072】
適する細胞培養から馴化培地中でAβレベルのインビトロ監視を、本発明のスクリーンニング法のために使用することができる。馴化培地中で、Aβ蓄積を生じる条件下で細胞を増殖させ、ついで培養細胞を1-アミノシクロヘキサン誘導体にさらすことによって, これらの1-アミノシクロヘキサン誘導体の Aβ 産生への影響を観察することができる。
【0073】
適する細胞系は、ヒト及び動物細胞系、たとえばヒト神経膠腫細胞系, ヒトヒーラ細胞, ヒト腎臓細胞系HEK-293, ヒト初代内皮細胞 (たとえばHUVEC細胞), ヒト初代線維芽細胞又はリンパ芽球, ヒト初代混合脳細胞 (ニューロン, 星状細胞及び神経膠神経膠を含む) 、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞等々を包含する。本発明よるスクリーニング法での使用に好ましくのは、Aβを過剰産生するAPP バリアントを発現することができるヒト細胞系である。“過剰産生”とは、バリアント APPから産生されたAβの量が前述した正常APP イソホルム, たとえばその695, 751, 及び 770 アミノ酸イソホルムのいずれか又はこれらのずべてから産生された量に比べて大きいことを意味する。特に好ましくはAβ 切断部位に直接置換された1種又は数種のアミノ酸を有するAPP バリアントである。たとえば K293 細胞;これは、正常APPを発現する細胞に比べて約6〜8倍多いAβを産生するスウェーデンのFAD 家族に見出される二重突然変異[Lys595 →Asn595及び Met596→Leu596]を有するAPP DNAを発現する(米国特許第 6,284,221号明細書参照)。残基596の突然変異は根本的に増加の原因であると考えられる。
【0074】
同様に,動物モデル, たとえば国際特許出願(WO)第 91/19810号明細書に記載されたマウス動物モデル及びその他のAPP アイソタイプ及び(又は)バリアントを発現する動物モデルにおいてAβのインビボ監視は,1-アミノシクロヘキサン誘導体の種々の投薬量及び投薬計画の治療有効性を試験するためにも使用することができる (インビトロスクリーン、たとえば上記インビトロスクリーンによって予め識別された投薬量から常に始まる)。特定の体液中のAβレベルを低下させる1-アミノシクロヘキサン誘導体の投薬量は、更なる評価のための対象であるとみなされる。
【0075】
用語“治療する” は、本明細書で患者の少なくとも1種の症状を軽減又は緩和するという意味で使用される。たとえばアミロイドパシー関連痴呆に関連して, 用語“治療する” は、認知障害 (たとえば記憶障害及び(又は) 適応障害) 又は全体機能障害 (日常生活動作, ADL)を軽減又は緩和させることを意味するか及び(又は) ADL又は認知障害の進行性悪化を減速又は反転させることを意味する。本発明の意味する範囲内で, 用語“治療する” は疾患の進行又は悪化の開始 (すなわち疾患の臨床症状の前の期間)を阻止、遅延させるか及び(又は) 疾患の進行又は悪化の恐れを軽減させることも意味する。 用語"保護する" は、本明細書で必要に応じて,患者の疾患の進行又は持続又は 悪化の遅延又は治療、あるいはすべてを妨害するという意味で使用される。 本発明の意味する範囲内で, その疾患はアミロイドパシーであり, これらはアルツハイマー病 (AD), パーキンソン病, ダウン症候群, びまん性レビス(Lewis)小体病, 進行性核上麻痺, クロイツフェルト-ヤコブ病, フィンランド型家族性アミロイド症, 家族性アミロイドチック多発性神経障害, オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血及びゲルスターマン-ストラウスラー シャインカー(Gerstmann-Straussler Scheinker) 病を含むが、これらの限定されない。
【0076】
たとえば, 本明細書に記載したように, 1-アミノシクロヘキサン誘導体の予防のための投与は、高められたレベルのフィブリロジェニック β-アミロイドペプチド (Aβ)を有する受容対象者を保護することができる (たとえば数種の遺伝子,
たとえばβ-アミロイド前駆体蛋白質 (APP), プレセリン(PS1, PS2), セクレターゼ, たとえばβ-アミロイド切断酵素 (BACE), 及びアポリポ蛋白質 Eのうちの1種において同型又は異型突然変異体である個体; Goate, 1991, Nature, 349:704-706に記載された遺伝学的スクリーニング及び臨床分析も参照)。同様に, 本発明によれば, 1-アミノシクロヘキサン誘導体の治療のための投与が、臨床症状の進行の減速を又は症状の軽減さえも導くことができる。
【0077】
本発明の意味する範囲で, 用語“NMDA アンタゴニスト薬” は、NMDA 受容体 -介在性ニューロン発火(firings)の正常な引き金を抑制することができる薬物という意味で使用される。本発明の好ましいNMDA アンタゴニスト薬は、1-アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン及びネラメキサンである。これらの化合物は5HT3アンタゴニスト 活性及び(又は) ニューロン性ニコチン受容体アンタゴニスト活性も有する。
【0078】
用語“同族体” 又は “誘導体” は、本明細書で通常の薬学的意味で, 基本分子(たとえば1-アミノシクロヘキサン)が構造上似ている分子という意味で使用されるが、目標とされた、そして制御された方法で基本分子の特定の置換基1種以上を代わりの置換基で置換して変更し、それぞれ基本分子に構造上類似する分子をもたらす。同族体の合成及びスクリーニング(たとえば構造分析及び(又は) 生化学分析を用いて)は,ある公知化合物の僅かに変更された種々の形態------- これは改善された特性又は偏った特性 (たとえばより特異的標的受容体型でより高い有効性及び(又は) 選択性 , 哺乳類血液脳関門をより多く貫通する能力, より僅かな副作用等々) を有する----------を同定するのに薬化学でよく知られた医薬品設計方法である。
【0079】
用語“1-アミノシクロヘキサン誘導体”は、類似の、しかし僅かに異なる医薬を製造するのに使用される方法で1-アミノシクロヘキサン (又はその使用可能な誘導体, たとえば ネラメキサン又はメマンチン)に由来する化合物を描写するめに、本明細書で使用される。
【0080】
本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体は、一般式(I):
【0081】
【化2】

(I)
【0082】
{式中、g
R* は-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、この際n+m = 0, 1又は2,
A が線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6)及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及び R が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれ、
R3及びR4が独立して水素,線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6) より成る群から選ばれるか, 又はこれらが一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10) を形成するか、又はこれらがNと一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン[これは (アルキル(C1-C6),アルケニル (C2-C6)) 置換された 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む]を形成するか, 又は
独立してR3又はR4 はRp, Rq, Rr又はRsと一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t-
(式中、t= 0又は1)を形成することができ、そしてこのアルキレン鎖の左側がU又はYに結合し、そしてこのアルキレン鎖の右側がNに結合し、そしてR6 が水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより群から選ばれか、又は
独立してR3又はR4はR5 と一緒になって式-CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖, 又は式-CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は -CH2-CH=CH-(CH2)t-(式中、t= 0 又は 1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, このアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側が W に結合し、そしてアルキレン環の右側がNに結合し、
R5が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれるか又は R5が、これに結合する炭素及び隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し,
Rp, Rq, Rr及びRsが独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル(C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル(C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6), シクロアルキル(C3-C6) 及びアリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか、又は
Rp, Rq, Rr及びRsが独立してこれに結合するU又はYと一緒になって二重結合を形成することができるか, 又は
又はRp, Rq, Rr及びRsが一緒になって低級アルキレン-(CH2)x- (式中、x は2-5である。)又は低級アルケニレン架橋を示すことができ、このアルキレン架橋がついでR5と一緒になって別の低級アルキレン -(CH2)y- (式中、y は1-3である。)又は低級アルケニレン架橋を形成することができ,
符号U, V, W, X, Y及び Z が炭素原子を示す。}
によって表わされ, そして一般式(I)で表わされる化合物の光学異性体, ジアステレオマー, 多形体, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及びそれらの混合物を含むことができる。
【0083】
U-V-W-X-Y-Zによって定義される環は、シクロヘキサン, アミノシクロヘキ-2-エン, アミノシクロヘキ-3-エン, アミノシクロヘキ-1,4-ジエン, アミノシクロヘキ-1,5-ジエン, アミノシクロヘキ-2,4-ジエン及びアミノシクロヘキ-2,5-ジエンより成る群から選ばれるのが好ましい。
【0084】
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン誘導体は下記例によって限定されないが、つぎの群:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(トランス),3(トランス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(シス),3(シス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン (ネラメキサン),
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-シス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,5S)シス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-トランス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,5S)トランス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル) ピロリジン,
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1 アミノ-1,3,3,5(トランス)-テトラメチルシクロヘキサン (アキシャルアミノ基),
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン 半水和物,
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチル-3(シス)-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
シス-3-エチル-1(トランス)-3(トランス)-5-トリメチルシクロヘキサミン,
1-アミノ-1,3(トランス)-ジメチルシクロヘキサン,
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-プロピルシクロヘキサン,
1-メチル-3(シス)-プロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(シス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(トランス)-エチルシクロヘキサン,
シス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
トランス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン,
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン,
2-メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン,
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル-1)-エチルアミン 半水和物,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,SS)トランス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5, 5-トリメチル-3(シス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(トランス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-エチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-メチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-シス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-トランス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1R,SS)トランス-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン,
それらの光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体、それらの薬学的に許容し得る塩, 及びそれらの混合物より成る群から選ばれる1-アミノアルキルシクロヘキサン誘導体を含む。
【0085】
ネラメキサン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は、たとえば米国特許出願第09/597,102明細書及び米国特許第6,034,134号明細書に記載されている。
【0086】
3つのアキシャルアルキル置換基, たとえばRp, Rr 及び R5が一緒になって架橋ヘッドを形成し、下記式IIb - IId で表わされる化合物(いわゆる1-アミノアダマンタン類)を生じる場合を含む一般式(I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン誘導体:
【0087】
【化3】

【0088】
式(I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン誘導体(式中、n + m = 0, U, V, W, X, Y 及び Z はシクロヘキサン環を形成し、そしてR3 及び R4 のうちの1つ又は双方は独立して、Rp, Rq, Rr, Rs 又は R5によって形成されるアルキレン架橋を介して上記シクロヘキサン環に結合する。)は、次式IIIa-IIIcで表わされる:
【0089】
【化4】

【0090】
(式中、Rq, Rr, Rs, Rr 及び R5は式(I)に対して上記に定義された通りであり, R6 が水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール 又は アリールアルキルであり、Y は飽和されているか又はR6 と一緒になってこれが結合する環炭素と炭素-水素結合を形成し, l= 0 又は 1 及び k= 0, 1 又は 2 及び ------ は単結合又は二重結合を示す。)
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン誘導体は下記例によって限定されないが、つぎの化合物:
1-アミノ-3-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-メチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン (メマンチン),
1-アミノ-3-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-イソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジイソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジ-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-N-メチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-エチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-イソプロピル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N,N-ジメチル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-メチル-N-イソプロピル-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジシクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジフェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチル-7-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチル-7-メチルアダマンタン,
1-N-ピロリジノ及び 1-N-ピペリジン誘導体,
1-アミノ-3-メチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
それらの光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体、水和物、N-メチル誘導体, N,N-ジメチル誘導体, N-エチル誘導体, N-プロピル誘導体、それらの薬学的に許容し得る塩及びそれらの混合物より成る群から選ばれた1-アミノアダマンタン及びその誘導体を含む。
【0091】
本発明の更に好ましい化合物
本発明にしたがって使用される、好ましい1-アミノシクロヘキサン誘導体は、式
【0092】
【化5】

【0093】
{式中、
R* は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する。
【0094】
更に、本発明にしたがって使用される、好ましい1-アミノシクロヘキサン誘導体は、式
【0095】
【化6】

【0096】
{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。},
で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体又はその薬学的に許容し得る塩を包含する。
【0097】
更に、本発明にしたがって使用される、好ましい1-アミノシクロヘキサン誘導体は、式
【0098】
【化7】

【0099】
{式中、R* は -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 線状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 線状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R*は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は線状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する。
【0100】
メマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)はたとえば米国特許第4,122,193号 及び第4,273,774号明細書の対象である。
【0101】
式IIb 及び IId で表わされる1-アミノ アダマンタン 誘導体(メマンチンを含む)は一般にハロゲン化アダマンタンのアルキル化, 好ましくはブロモ- 又はクロロアダマンタン類のアルキル化によって製造される。ジ- 又はトリ-置換されたアダマンタン類は 付加的なハロゲン化及び アルキル化操作によって得られる。アミノ基は、三酸化クロムによる酸化 及び HBrによる臭素化又は臭素による臭素化及び ホルムアミドと反応させて、ついで加水分解して導入される。 アミノ官能基を一般に認められている方法にしたがってアルキル化することができる。たとえば、メチル化はギ酸クロロメチルと反応させ、ついで還元させることによって達成することができる。エチル基を、それぞれのアセトアミドの還元によって導入することができる。 合成に関して更に詳細はたとえば米国特許第5,061,703号 及び第6,034,134号明細書を参照。前記化合物に対する別の合成法を、仮出願番号第60/350,974号明細書 (出願日:2001年11月7日), 仮出願番号第60/337,858 号明細書(出願日:2001年11月8日)及び仮出願番号第60/366,386号明細書 (出願日:2002年3月21日)[ すべて参考のために示す。] 並びに 下記の合成例に見出すことができる。
【0102】
本発明によれば, 式(I) で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体は、そのまま投与することができるか又はその薬学的に許容し得る塩(たとえば酸付加塩、たとえば塩酸塩, 臭化水素酸塩, 硫酸塩, 酢酸塩, コハク酸塩又は酒石酸塩, 又はこれをフマル酸, マレイン酸, クエン酸 又はリン酸との酸付加塩 を含めて)の形で使用することができる。
【0103】
更に, 当業者に周知の方法を用いて, 本発明の化合物の同族対掌体及び誘導体を製造することができる。これらは、痴呆のコントロールでの改善された治療効果, すなわち特異的標的受容体タイプでのより高い有効性及び(又は) 選択性、哺乳類の血液脳関門を貫通するより大きい又はより低い能力 (たとえばより高い又はより低い血液脳関門 貫通率), より少ない副作用等を有する。
【0104】
ここに列挙される医薬の種々の塩及び異性対掌体(立体異性体及び対掌体を含めて)を使用することができる。用語"塩" は遊離酸及び遊離塩基の付加塩を含むことができる。 薬学的に許容し得る酸付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、無機酸、たとえば塩酸、硫酸又はリン酸、及び有機酸、たとえば酢酸、マレイン酸、コハク酸又はクエン酸等を含む。これらの塩(又はその他の類似の塩)すべては通常の手段で製造することができる。塩又は異性対掌体の性質は、これが非毒性であり、そして所望の薬理学的活性を実質上妨げないという条件で、厳密なものでない。
【0105】
薬用量又は量に適用される用語 “治療上有効な” は、これを必要とする哺乳類に投与した際に所望の活性を生じるのに十分である化合物又は医薬調合物のその量を意味する。本明細書では、 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び(又は) AchEIを含む医薬調合物に関して, 用語“治療上有効な量/薬用量” を用語 “神経学的に有効な量/薬用量” と交換して使用でき、そして哺乳類に投与した際に有効な神経学的応答を生じるのに十分である化合物 又は医薬調合物の量/薬用量を意味する。有効成分の組み合わせを投与する場合、その組み合わせの有効量は個々に有効である、それぞれの成分の量を含んでいてよいことに注目してください。
【0106】
有効成分の量を示す用語 “閾値以下” は、応答を生じるのに不十分な量、すなわち最小の有効量に満たない量を意味する。有効成分の量を示す用語 “最適値より少ない(suboptimal)” は、より高い量で達成されるであろう応答を、完全な程度でないが生じる有効成分の量を意味する。
【0107】
本発明の調合物に関連して使用される、語句"薬学的に許容し得る" は、生理学的に耐性であり、そして哺乳類 (たとえばヒト)に投与した場合、典型的に不利な反応を生じないこのような調合物の医療用物質(molecular entities) 及び他の成分を意味する。好ましくは, 本明細書では, 用語 "薬学的に許容し得る" は米国連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は哺乳類に使用される, 及び 更に具体的にはヒトに使用される、その他の一般に容認された薬物類中に列挙されていることを意味する。
【0108】
本発明の医薬調合物に適用される用語 "キャリヤー" は、希釈剤, 賦形剤又は媒体(vehicle)を意味し、これと共に有効化合物 (たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体及び(又は)AChEI) を投与する。このような医薬用キャリヤーは滅菌液体, たとえば水, 食塩水, デキストロース水溶液, グルセロール水溶液及び油状物(石油-, 動物-, 植物-又は合成-由来のもの, たとえばピーナッツ油, 大豆油, 鉱油, ごま油等々を含む。)であることができる。 適する医薬用キャリヤーは、"Remington's 医薬品 ciences" by E.W. Martin, 18th Edition中に記載されている。
【0109】
本明細書では、用語 "対象者(subject)" は哺乳類 (たとえば げっし類、たとえばマウス又はラット)を意味する。特に, この用語はヒト意味する。
【0110】
用語 "約" 又は "およそ"は、常に所定の値又は範囲の20%以内, より好ましくは10%以内, 及び最も好ましくはまた5%以内を意味する。あるいは, 特に生体系で, 用語 "約" はほぼ1 ログ(a log)(すなわち 一桁)以内、好ましくは2つの所定の値のファクター内であることを意味する。
【0111】
抗体及び免疫検出法
ここで使用されるように, 用語“抗体”は、免疫グロブリン分子のすべての種類, モノクロナール抗体, ポリクロナール抗体, アンフィニティー精製されたポリクロナール抗体, Fab 及び (Fab)2, 一本鎖 (SC) 抗体, 又はAβ上でエピトープを特異的に結合するその他の分子を包含する。このような抗体は、公知の従来技術にしたがって産生される。一般に, 本発明のAβを検出するために使用される抗体は、検出可能な標識, たとえばAβ上で個々のエピトープに特異的な放射性標識, 蛍光標識, 二次抗体で標識される。この際二次抗体は検出可能なシグナルの発生を触媒するために使用される酵素に接合される。
【0112】
Aβ上でエピトープに特異的に結合するあらゆる抗体は、本発明のアッセイに潜在的に有用である。このような抗体の例は、たとえば及び制限なく, Aβの残基1-17 及び 17-28に対する2つの抗体 (pAb 1-17 及び pAb 17-28) [Quality Controlled Biochemicals Inc. (Hopkinton, Mass.)によって製造される] 及びAβ1-17に対するAb 6E10 及びAβ17-24に対するmAb 4G8 [Senetekから市場で入手される] 及び米国特許第5,955,317号明細書(Suzuki 等)----------これに開示された事項は参考として組み込まれる----------に記載された抗体を包含する。Aβエピトープを検出するためのこのようなこう体を使用する多くの適当な方法は、当業者に明らかであって、蛍光発色セルソーター (FACS), サンドイッチアッセイ, 競合免疫測定法, ELISAアッセイ, ウエスタンブロット法, ドットブロット, オクタロニープレート, 免疫電気泳動法, フルオリメトリー(fluorimetry), 鏡検, 蛍光顕微鏡検査, 限外濾過 (放射性標識された抗体を用いて) 及びその他を含む。
【0113】
好ましい実施態様において, 体液をAβ上のエピトープに特異的な抗体を用いるELISAによって分析する。ELISA装置は、通常96ウエルマイクロタイタープレートからなる。その内側表面は、Aβ-特異抗体のうちの1種でコーティングされる。このコーティング, 抗体の固相への結合(binding)又は付加(attachment)は化学反応でなく、むしろマイクロタイタープレートのポリスチレンマトリックスと抗体の間の物理的又は非共有相互作用に起因すると考えられる。 標的分子Aβを含有するらしいと疑われるサンプルを、結合がサンプル中のリガンドAβと抗体の間に生じるように被覆されたマイクロタイター プレートに接して置く。ついでサンプル体液中のあらゆる非結合成分をプレートウエルからいくつかの洗浄工程によって除去する。標的分子を特異的に認識し、そしてシグナル発生酵素に結合する二次抗体を添加する。サンプル中の標的分子の存在を示す酵素の検出は、検出可能なシグナル、たとえば蛍光又は色の変化を生じる試薬の添加によって一般に行われる。
【0114】
本発明によれば、体液を固定化捕捉抗体と接触させ、ついでこの抗体と共にインキベートするのが好ましい。 固定化に使用される固相は、あらゆる不活性な支持体又はキャリヤー----------これは好ましくは水不溶性で、免疫測定法に有用である-------------であることができ、たとえば面、粒子、多孔性マトリックス等の形にある支持体を包含する。通例使用される支持体の例は、小さいシート, セファデックス, 塩化ポリビニル, プラスチックビーズ, 及び アッセイプレート又はポリエチレン, ポリプロピレン, ポリスチレン等々から製造された試験管(これは96-ウエルマイクロタイター プレート,並びに粒子状材料、たとえばろ紙, アガロース, 交差結合デキストリン及びその他のポリサッカライドを含む)を包含する。あるいは , 反応性水不溶性マトリックス、たとえば臭化シアン活性された炭水化物及び米国特許第3,969,287号;第3,691,016号;第4,195,128号; 第4,247,642号;第4,229,537号及び第 4,330,440号明細書に記載された反応基質が、捕捉試薬固定化に適切に使用される。使用される好ましい固相は、いくつかのサンプルを1回で分析するのに使用することができるマルチ-ウエルマイクロタイター プレートである。最も好ましいプレートは、マイクロテスト96-ウエル ELISA プレート、たとえばNunc Maxisorb 又は Immulonとして販売されるプレートである。固相を上記に定義された通りの捕捉試薬----------これを所望されるような非共有又は共有相互作用又は物理的リンケージによって結合することができる----------で被覆する。96-ウエルプレートを使用した場合, これらを好ましくは捕捉抗体で被覆し、ついで少なくとも約10時間, より好ましくは少なくとも一晩インキュベートする。
【0115】
ついで被覆されたプレートを一般に遮断剤-----------これは結合部位に非特異的に結合し、結合部位を飽和し、ついで検出抗体がプレートのウエル表面上で過剰の非特異部位に不要に結合させない--------で処理する。この目的に適する遮断剤の例は、たとえばゼラチン, ウシ血清アルブミン, 卵アルブミン, カゼイン及びノンファットミルクを包含する。被覆及び遮断の後, (好ましくは希釈された)分析すべき体液を固定化相に加える。
【0116】
サンプル及び固定化捕捉試薬のインキュベーション条件は検査の感度を最適化するために選択される。通常一定の温度をインキュベーション期間の間維持する。 種々の緩衝液は、この段階中で間望ましいpHを達成するか又は維持することができる。これらはホウ酸塩, リン酸塩, 炭酸塩, トリス-HCl 又は トリス-リン酸塩, クエン酸塩, 酢酸塩, バルビタール等々を包含する。使用される特定の緩衝液本発明にとって重要でないが, 個々の検査で、ある緩衝液が他の緩衝液より好ましくてよい。
【0117】
体液を固定化捕捉抗体から(好ましくは洗浄によって)分離して、非捕捉体液を除去する。洗浄に使用された溶液は、一般に使用される捕捉試薬に依存するpH を有する緩衝液(“洗浄緩衝液”) である。洗浄は1回以上行うことができる。
【0118】
検査法の最後の段階で, 捕捉抗体に今結合されているAβを測定する。この測定は多くの方法, たとえば捕捉試薬から結合したAβを除去するための抽出によって、ついでバイオアッセイ, 放射受容体測定又は 放射免疫測定によって達成することができる。
【0119】
しかし更に詳しくは, 遊離リガンドの量を、同一プレートで, 抽出又はその他の面倒な工程を要求することなく, 検出手段として標準ELISA法を用いて分析する。この操作で, 期待されるAβの最大濃度に対してモル過剰の抗体を、この抗体を洗浄した後、プレートに加えるのが好ましい。
【0120】
固定化捕捉抗体に添加される検出抗体は、直接標識されるか、又は過剰の一次抗体の洗浄後に、一次検出抗体を標的とするモル過剰の二次標識抗体を添加することによって間接的に標識される。
【0121】
一次又は二次検出抗体に対して使用される標識は、遊離リガンドが抗体に結合するのを妨げないあらゆる検出可能な機能性物質(functionality)である。適当な標識の例は、免疫検査で使用に知られているこれらの多数の標識であって、直接検出されうる部分, たとえば蛍光色素, 化学発光及び放射性標識, 並びに検出されるために反応しなければならないか又は誘導されねばならない部分、たとえば酵素を含む。このような標識の例は、放射性同位元素 32P, 14C, 125I, 3H, 及び 131I, フルオルフォア、たとえば希土類キレート又はフルオレッセン及びその誘導体, ロードアミン及びその誘導体, ダンシル, ウンベリフェロン, ルセリフェラーゼ, たとえば蛍ルセリフェラーゼ及び細菌性ルセリフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書), ルシフェリン, 2,3-ジヒドロフタラジンジオン, ホースラディシュペルオキシダーゼ (HRP), アルカリホスファターゼ, β-ガラクトシダーゼ, グルコアミラーゼ, リゾチーム, サッカライドオキシダーゼ, たとえばグルコース オキシダーゼ, ガラクトース オキシダーゼ, 及び グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ, ヘテロ環状オキシダーゼ、たとえばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ(過酸化水素を利用して染料前駆体、たとえばHRPを酸化する酵素とカップリングする), ラクトパーオキシダーゼ又はマイクロパーオキシダーゼ, ビオチン/アビジン, スピン標識, バクテリオファージ標識, 安定なフリーラジカル等々を含む。
【0122】
従来の方法は、これらの標識を蛋白質又はポリペプチドに共有結合させるのに有効である。この場合好ましい標識は、酵素、たとえばホースラディシュペルオキシダーゼ 及びアルカリホスファターゼである。
【0123】
最後の標識抗体の添加後,過剰の標識抗体を洗浄して除去し、ついで標識に適合する検出法を用いて結合した標識(attached label)の量を測定し, ついでその測定量と体液中のAβ量を関連づけることによって結合した抗体の量を決定する。
【0124】
便宜上、本発明のアッセイ法は, キットの形で、たとえばアッセイを実施するための指示書、上記に定義された通りの捕捉試薬及び抗体、Aβに対するスタンダード及び上記に定義された通りの固定化用固体支持体が一緒にパッケージにいれられた形で提供することができる。更に, 上記に定義された通りの検出手段は、たとえばAβペプチドに対する特異抗体(標識されているか又は標識されていない), 並びにその他の添加物, たとえば安定剤, 洗浄剤 及びインキュベーション緩衝液等々を包含していてもよい。
【0125】
細胞系アッセイ
本発明のアッセイに対する適する細胞系は、アミロイドペプチドを合成, プロセス及び分泌する種々のヒト及び動物細胞系、たとえばヒト神経芽細胞腫細胞系 (たとえばSK-N-SH), ヒト神経膠腫細胞系, ヒトヒーラ細胞, ヒト腎臓細胞系HEK-293, ヒト初代内皮細胞 (たとえばHUVEC細胞), ヒト初代線維芽細胞又はリンパ芽球, ヒト初代混合脳細胞 (ニューロン, 星状細胞及び神経膠神経膠を含む) 、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞等々を包含する。本発明よる使用に、APP バリアントを発現するヒト 細胞系又はAβを過剰産生するヒト細胞系, たとえばAβ切断部位のN-末端に直接置換された1種又は数種のアミノ酸を有するAPP バリアント (たとえば K293 細胞;これは、米国特許第 6,284,221号明細書に記載されているように、正常APPを発現する細胞に比べて約6〜8倍多いAβを産生するスウェーデンのFAD 家族に見出される二重突然変異[Lys595 →Asn595及び Met596→Leu596]を有するAPP DNAを発現する)が好ましい。
【0126】
1-アミノシクロヘキサン誘導体の処理前及び処理後に細胞系によって産生されるアミロイドペプチドを、上記概要を示した免疫検査法を用いて検出することができる。
【0127】
細胞外 sAPP 及びそのフラグメントを測定するために、細胞培養上澄みを利用することができる。完全長(full-length)細胞内 APP 及びそのフラグメントを測定するために, 細胞ライゼート(lysates)を利用することができる。たとえば細胞に関連する完全長をAPP測定するために又はAPPのカルボキシ末端フラグメントを測定するために, 細胞ライゼートを、APPのカルボキシ末端を認識する抗体と共にインキュベートすることができる (たとえばBuxbaum 等, Proc. Natl. Acad. Sci. 米国, 87:6003-6, 1990参照)。Aβペプチドの測定のために, 又は分泌したカルボキシ末端切断形であるsAPPを測定するために, 細胞上澄みをsAPP のCOOH-末端アミノ酸に応答する、Aβの最初の15個のアミノ酸を認識する抗体と共にインキュベートすることができる(たとえばBuxbaum 等., Proc. Natl. Acad. Sci. 米国, 91:4489-93, 1994参照)。
【0128】
細胞外Aβペプチドの量及び 細胞外sAPPの量を、細胞内に見出される総APP量に正規化することができる。この正規化は、培養間のあらゆる相違及び改変(altered) APP 合成 又は1-アミノシクロヘキサン誘導体で処置された細胞内突然変異に起因するあらゆる相違の原因となる有効な手段を提供する。
【0129】
治療評価
アルツハイマー病 (AD) 診断の基準は良く知られており、そして神経及び伝達障害国立研究所及びアルツハイマー病及び関連障害協会のガイドラインに(McKhann 等, Neurology, 34: 939-944, 1984) 及び米国精神医学会、精神障害の診断及び統計マニュアル (診断及び統計マニュアルIV)に記載されている。これらのうちのすべてを本願に引用して援用する。一般に、AD診断の客観的基準は次のことを含む: 徐々の記憶障害及び 後続の失語症, 失行症, 失認症又は遂行機能障害のうちの少なくとも1種の徐々の開始。
【0130】
治療をADの症状の軽減があるまで続けことができ、そして投薬量を哺乳類の個々の応答に応じて調整することができる。一般に、治療が90 〜365日の最小期間続けられるまで、肯定的応答(a positive response)は期待されない。
【0131】
医薬調合物
本発明の方法と同時に, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 (たとえばメマンチン 又は ネラメキサン) の治療上有効な量並びに場合により付加的なキャリヤー又は賦形剤 (すべて薬学的に許容し得る)を含む医薬調合物も提供する。この調合物を、1日1回投与又は1日2回投与に調製することができる。
【0132】
記載の調合物中に、好ましくは1-アミノシクロヘキサン誘導体が治療上有効な量で存在する。投与の厳密なモード、医薬が投与される形態、投与の対象となる症状、関係する対象者(subject involved)(たとえば体重、体の状態、年齢、性別等々)及び更に担当する医者又は獣医の好み又は経験を考慮にいれて、治療上有効な最適量は実験で決定されねばならない。本明細書では、 ヒトに投与する場合, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体を、好ましい形で、1日あたり約1〜 100 mgの投薬量で投与する。更に詳しくは, 1-アミノシクロヘキサン誘導体を1日あたり投薬量5-60 mg, 及び特に10-40 mgで投与するのが好ましい。ある場合において最適値より少ないか又は閾値以下の量で有効成分を投与することも望ましく、そしてこのような投与も本発明の範囲内である。
【0133】
本発明はまた治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体及び場合により1種以上の生理学的に許容し得るキャリヤー 及び(又は) 賦形剤 及び(又は) 助剤物質を混合することを特徴とする、医薬調合物を製造する方法を提供する。
【0134】
治療適用において, 薬学的調合物を病気にすでに羅患したホストに投与する。薬学的調合物をAβ斑の更なる沈着を阻止するのに十分な量で投与する。このことを成し遂げられるのに適する量を"治療上有効な薬用量"として定義する。
【0135】
予防適用のために, 本発明の薬学的調合物をAβ-関連疾患の影響を受けやすいが、このような疾患にまだ罹っていないホストに投与する。このようなホストを遺伝学的スクリーニング 及び臨床分析, 医学文献(たとえばGoate, Nature, 349:704-706, 1991)に記載されているように、遺伝学的スクリーニング 及び臨床分析によって識別することができる。薬学的調合物はAβ斑の沈着を症状の初期段階で阻止又は予防することができる。β-アミロイド疾患の最初の段階でさえ予防することができるのが好ましい。このような予防処置に必要な量( 予防上有効な薬用量と呼ぶ)は一般に治療処置に記載したのと同じである。
【0136】
投与
本発明の有効な剤を、経口で, 局所に, 腸管外に又は粘膜に(たとえば口腔に, 吸入によって, 又は直腸に)通常の非毒性薬学的に許容し得るキャリヤーを含む単位投薬剤形で投与することができる。通常、経口経路を使用するのが望まれる。有効な剤を、カプセル, 錠剤等々の形で経口で投与することができる (Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack 5 Publishing Co., Easton, PA参照)。経口投与された医薬は、拡散律速系, 貫通装置, 溶解調節されたマトリックス 及び侵食性/分解性 マトリックスを含む、時間調節された遊離媒体の形で投与することができる。
【0137】
錠剤又はカプセルの形の経口投与に関して, 有効医薬成分を非毒性薬学的に許容し得る賦形剤、たとえば結合剤 (たとえば前糊化されたトウモロコシデンプン, ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース); 増量剤 (たとえば乳糖, ショ糖, グルコース, マンニトール, ソルビトール及び その他の還元糖 及び非還元糖, 微結晶セルロース, 硫酸カルシウム又はリン酸水素カルシウム); 滑沢剤 (たとえばステアリン酸マグネシウム, タルク又はシリカ, ステアリン酸, ステアリルフマル酸ナトリウム, ベヘン酸グリセリル, ステアリン酸カルシウム等); 砕解剤 (たとえばジャガイモデンプン又はグリコールデンプンナトリウム); 又は 湿潤剤 (たとえば ラウリル硫酸ナトリウム), 着色剤及び矯味矯臭薬, ゼラチン, 甘味料, 天然及び合成ゴム (たとえばアカシア, トラガント又はアルギナート類), 緩衝塩, カルボキシメチルセルロース, ポリエチレングリコール, ロウ等々と共に配合することができる。液体形での経口投与に関して、医薬成分を非毒性薬学的に許容し得る不活性キャリヤー (たとえばエタノール, グリセロール, 水), 懸濁化剤 (たとえばソルビトールシロップ, セルロース誘導体 又は 水素添加された食用油), 乳化剤 (たとえばレシチン又はアカシア), 非水性賦形剤(たとえばアーモンド油, 油状エステル類, エチルアルコール 又は 分留植物油), 保存剤(たとえばメチル 又は プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)等々と一緒に配合することができる。 安定化剤、たとえば酸化防止剤 (BHA, BHT, 没食子酸プロピル, アスコルビン酸ナトリウム, クエン酸)を投薬形態を安定化するために添加することができる。
【0138】
錠剤を従来公知の方法によってコーティングすることができる。本発明の調合物は、微小カプセル(microspheres) 又は マイクロカプセル(たとえばポリグリコール酸/乳酸 (PGLA)から製造される)に加えることもできる (たとえば米国特許第 5,814,344号; 第5,100,669号 及び第 4,849,222号明細書; PCT 公表第 WO95/11010号 及び 第WO93/07861号明細書参照)。経口投与用液体調合物は、たとえば溶液、シロップ、エマルション又は懸濁液の形をとることができるか又はこれらは使用前に水 又は その他の適当な媒体を用いて再構成させるために乾燥製品として存在させることができる。 経口投与用調製物を、調節された又は延期された有効物質の遊離を生じるように適当に製剤化することができる。経口の時間調節された遊離医薬製剤の具体例は、米国特許第 5,366,738号明細書に記載されている。
【0139】
有効物質を、リポソーム供給システム, たとえば 単層小胞, 大単層小胞及び 多層小胞の形で投与することもできる。リポソームを種々のホスホリピド, たとえば周知のコレステロール, ステアリルアミン又は ホスフファチジルコリンから形成することができる。
【0140】
本発明の医薬を、化合物分子が結合する単一キャリヤーとしてモノクロナール抗体を使用することによって供給してもよい。 薬物を標的医薬キャリヤーとしての可溶性ポリマーと結合させてもよい。このようなポリマーは、ポリビニル-ピロリドン, ピランコポリマー, ポリヒドロキシ-プロピル メタアクリルアミド-フェノール, ポリヒドロキシ-エチル-アスパルタートアミド-フェノール, 又は パルミトイル残基によって置換されたポリエチレンオキシド-ポリシランを含むことができる。更に, 有効物質は、医薬の調節された遊離を達成させるのに有用な、生体分解性ポリマー類、たとえばポリ乳酸, ポリグリコール酸, ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー, ポリイプシロンカプロラクタム, ポリヒドロキシ酪酸, ポリオルトエステル類, ポリアセタール類, ポリヒドロピラン類, ポリシアノアクリレート類, 及びヒドロゲル類の架橋された又は両親媒性ブロックコポリマーに結合していてよい。
【0141】
吸入投与のために、本発明の治療薬を、適する噴射剤, たとえばジクロロフルオロメタン, トリクロロフルオロメタン, ジクロロテトラフルオロエタン, 二酸化炭素, 又はその他の適当なガスの使用と共に、加圧パック又は噴霧器からのエアゾルスプレープレゼンテーションの形で通常供給することができる。 加圧エアゾルの場合、単位投薬量は計量された量を供給するためにバルブを備えることによって決定することができる。たとえば吸入器又は通気器(insufflator)中に使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを調製することができ、これは化合物と適する粉末ベース、たとえばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有する。
【0142】
本発明の製剤を、腸管外に、すなわち静脈内 (i.v.), 脳室内 (i.c.v.), 皮下(s.c.), 腹腔内 (i.p.), 筋肉内 (i.m.), 皮下 (s.d.), 又は 皮内 (i.d.) 投与によって, 直接注射、 たとえばボラス注射又は連続吸入によって供給することができる。 注射用製剤は、添加された保存剤と共に単位投薬形、たとえばアンプル又は多薬用量容器 (multi-dose containers)中にあることができる。調合物は賦形剤, 懸濁液, 溶液又は油状媒体又は水性媒体中でエマルションのような形態をとることができ、そしてこの調合物は製剤化剤(formulatory agents)、たとえば沈殿防止剤, 安定化剤及び(又は)分散剤を含むことができる。あるいは, 有効成分は、使用前に適当な媒体, たとえば 滅菌発熱物質不含水を用いて再構成される粉末形にあることができる。
【0143】
本発明の調合物を直腸投与、たとえば座薬として又は停留浣腸(たとえば通常の座薬基剤、たとえばココアバター又はその他のグリセリドを含む) のために製剤化することもできる。
【0144】
本明細書では, 1-アミノシクロヘキサン誘導体を、薬学的に許容することができ、そして有効成分と適合すことができる賦形剤と混合することができる。更に、所望ならば, 調製物は少量の助剤物質、たとえば湿潤剤又は乳化剤, pH緩衝剤, 及び(又は) 医薬調合物の効果を増大させる剤を含んでいてもよい。これらの助剤分子を蛋白質として全身に又は局所に、あるいは分子の発現をコードするベクターの発現によって供給することができる。1-アミノシクロヘキサン誘導体の供給のための上記方法は助剤分子の供給に使用することもできる。
【0145】
本発明の有効物質(active agents)は分割投薬量で, たとえば1日2又は3回投与されてもよいが, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体の単一1日薬用量が好ましい。
【0146】
本発明の単位投薬量中に使用することができる1-アミノシクロヘキサン誘導体の好ましい具体的な量は、たとえば メマンチンに対して5mg, 10 mg, 15 mg 及び 20 mg 、そしてネラメキサンに対して5 mg, 10 mg, 20 mg, 30 mg, 及び 40 mgを含む。
【0147】
具体的実施態様によれば、1-アミノシクロヘキサン誘導体の放出制御された製剤(以下"放出制御された調合物"とも呼ぶ)を、通常の即時放出投薬によって達成されえない増強された高価をもたらすために使用する。放出制御された形態の使用は、不規則な時間に食事を取るか又は食間に頻繁にスナック菓子を食べるこれらの哺乳類で高い薬用量及び低い薬用量を避けるために、1-アミノシクロヘキサン誘導体の一定のレベルをもたらすのに特に有用である。
【0148】
浸透圧性投薬形に基づいて放出制御される製剤は、米国特許第4,615,698号明細書に記載されている。この投薬形は崩壊することを目的として作られ、そして薬物が投薬形の半透性壁の通路(passageway)を通して供給されるように、閉じた接触アレンジメントになる被覆表面(faced surfaces)を生じさせる。更に, 米国特許第4,503,030号明細書に,通路、及び特定のセルロースポリマー及び腸被覆材料であってよいpH 敏感な材料より成る半透性膜を有する浸透圧性投薬形が開示されている。この発明は、pH敏感な材料とセルロースポリマーの1:1混合物(これは浸透圧縮コアタブレットとコーティング材料の全重量に対して約7%のレベルで適用される)の使用が記載されている。
【0149】
本発明は、本発明の製剤の成分1種以上を含む容器1個以上からなる医薬パック又はキットも提供する。関連する実施態様において、本発明は本発明の 医薬調合物の製造用キットを提供する。このキットは第一の容器に1-アミノシクロヘキサン誘導体を、そして場合によりの1-アミノシクロヘキサン誘導体の混合に関する及び(又は)調合物の投与に関する指示書を含む。キットのそれぞれの容器は、 場合により1種以上の生理学的に許容し得るキャリヤー 及び(又は) 賦形剤 及び(又は) 助剤物質を含むこともできる。このような容器類に関連して、医薬品 又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって定められた形態での注意があり、その注意はヒトへの投与に関して、製造、使用又は販売の機関による承認に反映される。
【0150】
調合物を、望むならば、有効成分を含む単位投薬形1種以上を含有するパック容器又はディスペンサ容器中に存在させることができる。このパックはたとえば金属又はプラスチックホイル、たとえばブリスター包装を含むことができる。。パック容器又はディスペンサ容器は投与の指示書を添付していてよい。適合する薬学的キャリヤー中で製剤化される調合物は、製造され、適当な容器に入れられ、そして表示された病態の治療用であるとラベル表示されてよい。
【0151】
有効薬用量及び安全評価
本発明の方法にしたがって、本明細書に記載した医薬調合物を患者に治療上有効な薬用量で、好ましくは最小の毒性でもって投与する。“定義”の項目では、用語 “神経学的に有効な薬用量” 及び “治療上有効な薬用量”の定義を示した。
【0152】
本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体の有効性は、馴化培地にAPPペプチドを分泌することで知られている、培養細胞でのインビトロアッセイによって測定することができる。適する細胞系は、ヒト 及び動物細胞系, たとえばヒト神経芽細胞腫細胞系 (たとえばSK-N-SH [ATCC HTB-11], SK-N-MC [ATCC HTB-10], IMR-32 [ATCC CCL-127], MC-IXC [ATCC CRL-2270]), ヒト神経膠腫細胞系, ヒトヒーラ細胞, ヒト腎臓細胞系HEK-293, ヒト初代内皮細胞 (たとえばHUVEC細胞), ヒト初代線維芽細胞又はリンパ芽球, ヒト初代混合脳細胞 (ニューロン, 星状細胞及び神経膠神経膠を含む) 、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞等々を包含する。本発明よる使用に、APP バリアントを発現するヒト 細胞系又はAβを過剰産生するヒト細胞系, たとえばAβ切断部位のN-末端に直接置換された1種又は数種のアミノ酸を有するAPP バリアント (たとえば K293 細胞;これは、米国特許第 6,284,221号明細書に記載されているように、正常APPを発現する細胞に比べて約6〜8倍多いAβを産生するスウェーデンFAD 家族に見出される二重突然変異[Lys595 →Asn595 及び Met596 →Leu596]を有するAPP DNAを発現する)が好ましい。APP のこれらの分泌した誘導体のレベル(すなわちsAPPα, 総Aβ, Aβ40又はAβ42) をたとえば種々の特異的ポリクロナール抗体及びモノクロナール抗体を用いて免疫検査(たとえばウエスタンブロット又は免疫沈澱)によって評価することができる。
【0153】
更に、本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体の有効性は、ラット又はヒト脳組織中に結合する [3H]MK-801 の転移(displacement), 培養されたニューロン及び異種発現系中でのNMDA 受容体チャネルの遮断, インビボでの抗痙攣効果, チャネル-遮断及び 抗痙攣作用の間の相関関係, 脳虚血に対する保護、 NMDA-誘発された死亡に対する保護等々の測定法のようなインビトロ薬理学的試験を用いて測定することができる(たとえば 米国特許第 5,061,703号明細書参照)。
【0154】
ついで、技術的に十分に確立されている次の方法、本発明の化合物及び組み合わせの有効な薬用量及び毒性(これらはインビトロ試験で十分に実施された)を、小動物モデル (たとえばマウス又はラット) を用いる臨床前実験で決定する。この実験で、2つの 1-アミノシクロヘキサン誘導体が治療上有効であることが見出され、そしてこの実験でこれらの医薬をヒト臨床試験に対して提案された同一の経路によって投与することができる。好ましい本発明の動物モデルは、下記例2に記載されるADの遺伝子導入モデルである。
【0155】
本発明の方法で使用されるすべての医薬調合物に関して、治療上有効な薬用量を、予め動物モデルから見積もって、IC50 を含む血中血漿濃度範囲を達成することができる(すなわち、脳の関連領域でNMDA 受容体活性 の半-最大阻害を達成する供試化合物の濃度)。ついで動物系に由来する薬用量-応答曲線を使用して、ヒトでの最初の臨床試験のための供試薬用量を決定する。それぞれの組み合せに対する安全性の決定で, 投薬量及び投与の傾向が臨床試験での使用に予想されるそれらを満たすか又は超えねば成らない。
【0156】
本明細書では, 本発明の調合物中の成分の投薬量は、連続的に又は間欠的に投与される薬用量が実験動物及び患者の個々の病態に生じる結果を考慮した後に決定された量を必ず超えないことを定める。具体的な薬用量は、当然のことながら投薬処理、患者又は対象となる動物の状態、たとえば年齢体重、性別、感受性、食餌、投薬期間、組み合わせで使用される医薬、疾患の過酷さにしたがって変化する。一定の条件下での適当な薬用量及び投薬回数を、上記の指示に基づく試験によって決定することができるが、 精緻化し、そして最後に医師の判断にしたがって及び標準臨床法によるそれぞれの患者の環境 (年齢, 全身状態, 症状の重症度, 性別等々) にしたがって決めることができる。本明細書では、1-アミノシクロヘキサン誘導体の適当な薬用量は一般に体重1kgあたり 0.016-1.66 mg の範囲である。
【0157】
本発明の調合物の毒性及び治療有効性は、動物実験で標準薬物操作によって、たとえばLD50 (人口の50%が死に至る量) 及びED50 (人口の50% に治療上有効な薬用量)を測定することによって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の薬用量割合は治療指標であり、そしてこれを比率 ED50/LD50.として表わすことができる。大きな治療指標を示す調合物が好ましい。
【0158】
動物実験から得られたデータを、ヒトに使用する薬用量の範囲を策定するのに使用することができる。ヒトにおける 1-アミノシクロヘキサン 誘導体の治療上有効な薬用量は、ほとんど又は全く毒性のなくED50 を含む血中濃度の範囲内にあるのが好ましい。たとえば,メマンチンに対するこのような治療上有効な血中濃度は1 μM である(たとえば Kornhuber and Quack, Neurosci Lett. 195(2):137-139, 1995参照)。投薬量は、使用される投薬形態及び適用される投与の経路にしたがってこの範囲内を変化することができる。理想的には, それぞれの医薬の1回分薬用量(a single dose)は、1日あたりで使用されねばならない。
【0159】
本発明の医薬は比較的に低い薬用量で高度に有効であるばかりか、低い毒性を有し、そしてほとんど副作用を生じない。確かに、本発明の 1-アミノシクロヘキサン誘導体の使用で生じる最も普通の副作用は、マイナー運動障害及び認知障害 f(たとえば吐き気, 嘔吐, めまい, 又は意識混濁)を生じさせる。
【実施例】
【0160】
本発明を例によって説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0161】
例1:
メマンチンの治療濃度がヒト神経芽細胞腫細胞中の分泌されたAPP 誘導体レベルに影響を与えることを判定
背景
メマンチンは中程度の親和性, 非競合(オープンチャネル) NMDA 受容体 アンタゴニストである。これは強い電圧依存性特性及び速い遮断/非遮断動力学を示す。メマンチンは神経保護作用をもたらし、そしていくつかの動物モデルにおいて学習及び記憶を改善することが分かった。臨床上, メマンチンは、中程度〜重度のアルツハイマー病 (AD)患者の認識機能低下を軽減させる(検討のためにLahiri 等., Curr. Drug Targets 2003, 4(2): 97-112を参照)。アミロイドパシー、たとえばアルツハイマー病 (AD), ダウン症, 又は HCHWA-Dを患う対象者の脳は,アミロイド原線維又は無定形凝集体として沈着し、そして疾患の病因において決定的な役割を果たすと考えられる、Aβペプチドの細胞外凝集体の存在によって特徴づけられる。アミロイドβペプチドの2つの主要な高度にフィブリロジェニックした形は、40番目の残基 (Aβ40)で終わる短い形及び42番目の残基(Aβ42)で終わる長い形である。これらの高度にフィブリロジェニックした Aβペプチドの細胞外沈着は、セクレターゼとして周知の種々の蛋白質分解酵素によるフルレンスβ-アミロイド前駆体蛋白質 (APP)の異常なプロセシングが原因で生じる。 これに関連して,アミロイドジェニック及び潜在的に毒性 Aβペプチドのレベルに影響を与えることができる薬物の同定が重要である。
【0162】
APPプロセシングは、細胞培養で検出することができる。たとえば神経芽細胞腫細胞は、APP誘導体(これはフルレンス細胞内APPよりも長さの点で短い)を馴化培地に分泌することが知られている。これらの分泌されたAPP誘導体レベルを、APP に対する特異抗体によってたとえばウエスタンブロット法又は ELISA (酵素免疫測定法)を用いて馴化培地を調べて測定することができる。
【0163】
この例において, 本発明者は、メマンチン (1-4μM)の治療濃度がヒト神経芽細胞腫 (SK-N-SH) 細胞の馴化培地中で分泌したアミロイドペプチド, sAPPα, Aβ40及びAβ42のレベルに影響を及ぼすことを調査した。SK-N-SH 細胞を1-4μM βメマンチンで12 日間にわたって処理し、馴化培地中のsAPP 及び Aβ40 レベルをウエスタン免疫ブロッチング及び ELISAアッセイそれぞれによって測定する。メマンチン (6-12日間2-4μM)は、馴化培地中でsAPP レベルを顕著に低下させる。低濃度のメマンチン (6-12日間1μM )は、sAPP レベルの減少傾向を示す。Aβ40レベルの判定もそのレベルの減少を示す。 細胞の生存及び毒性はテスト濃度でメマンチンによって影響を受けない。これらのデータは、メマンチンが治療濃度でAPP プロセシングに影響を与え、そしてフィブリロジェニック Aβペプチドの蓄積を潜在的に阻止することを示す。
【0164】
実験計画
細胞培養及び薬物治療。ヒト神経芽細胞腫 (SK-N-SH, ATCC HTB-11, Biedler 等., Cancer Res. 1973, 33(11): 2643-52) 細胞を、約2×106 細胞/ウエルで6-ウエルプレートに播種する。その後, メマンチンの薬物濃度を0 μg/ml (コントロール), 0.25 μg/ml (1 μM), 0.5 μg/ml (2 μM), 及び 1.0 μg/ml (4 μM)で 1% FBS 及び 1×抗生物質が追加されたMEM 培地中で開始する。処理期間は3 日間隔で馴化培地 (CM) の捕集を含めて12 日である。捕集後、新鮮なメマンチン-培地を添加し、ついで12日目に採取するまでこの処理を繰り返す。 sAPPとAβ40 双方のレベルは下記のように測定される。
【0165】
ウエスタンブロット法によってsAPP レベルの分析。CMサンプル中の総sAPP レベルを変性ポリアクリルアミド ゲル電気泳動 (SDS-PAGE)、ついでmAb22C11 抗体を用いるウエスタン免疫ブロット法によって測定する。サンプルを等量の馴化培地 (30μg 蛋白質/サンプル)でゲル上に負荷する。ブロット中の特異APPバンドの密度を、NIH イメージソフトウエアを用いて定量化する。APPのレベルをコントロールに対する百分率として表わす。構成的に発現したβ-アクチン蛋白質のレベルを、内部コントロールとして並行して測定する。
【0166】
ELISAによるAβレベルの分析。定量固相サンドイッチ ELISA (酵素免疫測定法)を使用して、馴化培地サンプル中のAβ40 レベルを測定する。具体的に,アフィニティ精製した抗-ヒト Aβ (35-40) ウサギ IgG を捕捉抗体として使用し,そしてアフィニティ精製した HRP-標識抗-ヒトAβ (11-28) ウサギ IgG Fab を、検出 抗体として使用する (2つの試薬はIBL (日本)からの入手)。 Aβ (11-28) に対する抗体は二次標識抗体として使用するので, N-末端部位で切断されたヒトAβ40 バリアント はELISA 法でも検出することができる。 TMBを着色剤(色素産生菌)として使用する。 測定範囲は5.6〜約1,000 pg/ml (3.6〜約230.9 pmol/L)である。
【0167】
細胞毒性及び生存アッセイ。 コントロール及びメマンチン-処理サンプル中の細胞の生存を、MTT (テトラゾリウム染料 3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)を用いて測定する。細胞毒性を 乳酸脱水素酵素 (LDH) (Sigma, St. Louis, MO) アッセイを用いて測定する。
【0168】
データ分析。データを3-6 個の独立した細胞培養実験から分析する。統計分析 (たとえば分散分析及び多重比較に関するポストホックテスト(post-hoc tests)) をSPSS プログラム(Statistical Products 及び Services Solutions, Chicago, IL) を用いて行い、ついで平均及び平均の標準誤差を含む。
【0169】
結果
ヒト神経芽細胞腫 (SK-N-SH) 細胞を、0 μg/ml (コントロール), 0.25μg/ml (1 μM), 0.5μg/ml (2 μM), 及び 1.0μg/ml (4 μM) のメマンチンの存在下に12日間増殖する。 馴化培地のサンプルを3日間隔で集め、ついでsAPP 及び Aβ40 双方のレベルをウエスタンブロット及びELISAそれぞれによって測定する。sAPPのレベルで顕著な変化が3日目に観察されないが (図 1), 薬用量依存性sAPP レベルの低下が 6日目に観察され(図 2), 9日目と12日目に測定した場合、まだ残存するか又は更に低下した(図 3)。sAPPのように, Aβ40 レベルの顕著な変化は3日目に観察されかった (図 4)。とりわけ, 6日目 (図 5) 及び 9日目 (図 6)でAβ40 レベルの顕著な低下がある(マイナスのコントロールに比べて)。
【0170】
メマンチンが細胞の生存及び毒性に影響を与えることも測定された。 細胞の生存を比色分析 MTT アッセイを用いて評価した。図 7に示したように, sAPP 及び Aβ40 レベルの低下の有意差をより一層目立たせるメマンチン-処理対未処理(コントロール) プレートで、細胞の生存の増加が観察された(細胞の生存に正規化されるように)。毒性のLDHアッセイは 、使用されたあらゆるメマンチン投薬量で細胞への毒性は示さなかった (図 8)。
【0171】
総合すると, ヒト 神経芽細胞腫 (SK-N-SH) 細胞の馴化培地中のsAPP 及びAβ400 レベルの徐々の低下が治療上非毒性 (1-4μM)薬用量のメマンチンの存在下に観察された。
【0172】
本発明者は、メマンチンの治療濃度が Aβ42レベルに影響を与えることを測定するために、同一の実験法を用いる。種々の非関連の、非競合及び 競合NMDA 受容体アンタゴニスト 及び非NMDA 受容体アンタゴニスト (たとえばAMPA 受容体)をを用いることによって, 本発明はメマンチンが、NMDA 受容体へのその活性に比べて馴化培地中でsAPPα, Aβ40 及び Aβ42 のレベルを低下させるかどうかも測定する。
【0173】
結果
本発明のデータは、治療薬用量のメマンチン (1-4 μM)によるヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの治療が馴化培地中でsAPP 及び Aβ40 レベルの低下をもたらすことを示す。MTT 及び LDHアッセイそれぞれによって判定されるように細胞の生存及び毒性は, 上記濃度でメマンチンによって影響を受けない。治療濃度のメマンチンでsAPP 及び Aβ40 レベルの観察された低下は、メマンチンが脳内フィブリロジェニック Aβペプチドの沈着を低下させることを示唆させる。
【0174】
例2:
メマンチン及びその他の1-アミノシクロヘキサン誘導体の治療薬用量の投与が、アルツハイマー病のマウスモデル脳内Aβ40 及び Aβ42レベルに影響を与えるのを判定
AD は、大きい割合で原因不明の理由から生じる突発性(sporadic)と呼ばれるADと比較的小さい割合でいくつかの遺伝子のうちの1つに突然変異, たとえばβ-アミロイド前駆体蛋白質 (APP) 及び プレセニリン (PS1, PS2)によって引き起こされる早発型開始家族AD (FAD)に係わる異質性病因を有するように思われる。tau, セクレターゼ, たとえばβ-アミロイド切断酵素 (BACE), 及び アポリポ蛋白質 E を伴うこれらの蛋白質は、病理学で重要な役割を果たす(最近の検討に関してLahiri 等, Curr. Drug Targets, 4:97-112, 2003参照)。
【0175】
早発型開始 ADの幾人かの個体で, 病気は常染色体優性として遺伝される (すなわち 突然変異遺伝子の単一複写のみが疾患を引き起こすのに必要である。)。このような突然変異は 少なくとも3つの異なる遺伝子中で認められる: APP, プレセニリン1 (PS1) 及び プレセリニン2 (PS2) (Price 等, Annu. Rev. Genet., 1998, 32: 461-493; Hardy 等, Science, 1998, 282: 1075-1079; Tanzi, Neuron, 2001, 32: 181-184; Selkoe, ibid., pp. 177-180; Sherrington 等, Nature, 1995, 375: 754-760; Levy-Lahad 等., Science, 1995, 269: 973-977; Rogaev等, Nature, 1995, 376: 775-778)。
【0176】
FAD (家族性 AD)の症例で報告された種々のAPP突然変異は、βAPの形成に関与する分解部位に近い(たとえばGoate等, 1991, Nature, 349:704-706; Harlan等, 1991, Nature, 353:844-846; Murrell等, 1991, Science, 254:97-99; 及び Mullan等, 1992, Nature Genet., 1:345-347)。APP 717 突然変異はAβのC-末端の近くに位置し、そしてβ-セクレターゼ活性を促進して、より長い及びより毒性のAβ ペプチド, Aβ42 の増加された分泌に至らしめる。 このより長いAβ42 ペプチドは、Aβ凝集体及びアミロイド 斑の形成を促進すると考えられる。APPswe突然変異、Aβ42のN-末端での二重突然変異, はBACE1 分解を増加させ、そしてAβ42を含むβAP ペプチドの高められた量に関与する。 これに反して, Aβペプチドドメイン中のAPP 突然変異 (たとえば、 APP-E693Q, A692G 又は E693G) はAβの量を上昇させないが、 Aβオリゴマー又は プロト原線維 形成を増加させることによってアミロイド症を引き起こす。
【0177】
PS1 及び PS2は、安定なN-末端フラグメント及びC-末端フラグメントにされる高度に相同な 43- 〜50-kD 複数回貫通型膜蛋白質をコードし、広範に発現されるが、中枢神経系で低い量(at low abundance)で発現される。PS1 はAPP プロセシング に影響を与える(Borchelt等、 Neuron, 1997, 19: 939-945; 上記文献Wong等, 2002)。PS1 遺伝子は、80 より多くの異なるFAD 突然変異を有するharbor)と報告され (AD 突然変異データベース, http://molgen-www.uia.ac.be参照), 一方、ほんの少数の突然変異がPS2-関連ファミリー(linked families)に見出された。PS遺伝子での異常の圧縮的多数は単一アミノ 酸置換を生じるミスセンス突然変異であり, これが一般にセクレターゼ活性に影響を与え、Aβ42ペプチドの発生を増加させると考えられる。
【0178】
細胞培養でアミロイド生成性 βAPの プロセシング 及び(又は) 分泌作用の治療上重要な増加を生じる、1-アミノシクロヘキサン 誘導体(たとえばメマンチン又はネラメキサン)の濃度は、ADのトランスジェニック動物モデル、たとえば FAD-関連APP 突然変異体をコードするAPP ミニ遺伝子(たとえば米国特許第 5,912,410号明細書に記載されたswe 又は 717)を発現するマウス動物モデル又はBorchelt等によって記載されている 二重突然変異体マウスモデル(Neuron, 19: 939-945, 1997)でβAP 量を監視することによって、更にインビボで試験される。後者のトランスジェニックマウスは、早発型開始家族 AD (FAD)-関連ヒトプレセニリン 1 (PS1) バリアント (A246E) 及びスウェーデン FAD 親類に関連する突然変異のあるキメラマウス/ヒト APP(APPswe)を共発現する。これらのマウスは、APPswe 及び ワイルド-タイプヒトPS1を発現する年齢-適合マウスによりもはるかに早くおびただしいアミロイド沈着を生み出す。FAD-関連APP 突然変異体及び,特に, 突然変異体 ヒト PS1 A246E 及びAPPsweの共発現をコードするAPPミニ遺伝子の発現 は、脳中でβAPの量を上昇させ, そしてこれらのマウスは海馬及び皮質で非常に多くの広がったβAP 沈着及び斑を生み出す (Calhoun 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1999, 96: 14088-14093)。ADを患うヒトと同様に、これらの及びその他のトランスジェニック動物モデルは、種々の認知欠陥、たとえば ニューロン障害, 学習障害, 物体認識記憶にある問題及び交互-空間関連(alternation-spatial reference)を有する問題及び作動記憶 (Chen等, Nature, 2000, 408: 975-979)によって特徴づけられる。
【0179】
具体的に, トランスジェニック 動物の2つのグループを調べた: コントロールグループ は治療しない, 実験グループ は1-アミノシクロヘキサン誘導体 (たとえばメマンチン又はネラメキサン)を与える。薬物投与は範囲の決められた時間期間にわたって実施され、ついで(i)体液中の種々のAPP ペプチド (たとえばsAPPα, Aβ40 又は Aβ42)のレベル及び(ii) 脳内の β-アミロイド 斑 の量を試験する(たとえば免疫検査 及び 組織化学を用いて)。実験グループで観察された減少 (コントロールグループに比べて )を、本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療の有効性の尺度として使用する。トランスジェニック動物モデルを、更に最適投薬量, 有効性, 毒性並びに本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体治療に関連する副作用を決定するのに使用する。
【0180】
APPプロセッシングでの細胞培養データに基づき,メマンチンがADのこのトランスジェニックマウスモデルでAβ40及びAβ42の沈着を減少させることが予期される。
【0181】
例 3:
アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおける空間学習に治療薬用量のメマンチンの投与が影響を及ぼすのを判定
背景
哺乳類脳内で, NMDA 受容体は、重要な生理学的な機能、たとえばシナプス可塑性及びシナプス形成(これは記憶, 学習 及び発育の間の神経回路網の形成に重要な役割を果たす)に関与する(Mayer 及び Westbrook, 1987)。学習及び記憶におけるNMDA 受容体の重要な役割を考慮すれば (Morris, 1989; Tsien 等., 1996), NMDA 受容体アンタゴニストがアルツハイマー病 (AD)の症候学を改善する可能性があることは直観では分からないと思われる。NMDA 受容体に対する高い親和性を有するいくつかのNMDA 受容体アンタゴニスト [たとえば (+) MK-801] は、神経行動学的な有害作用、たとえば幻覚及び認知機能障害を引き起こすことを見出した (Benvenga 及び Spaulding, 1988; Abi-Saab 等., 1998)。これらの有害事象は、高い親和性NMDA受容体アンタゴニストの臨床上の発展を大いに制限した。このような副作用を避けるための代替的アプローチは、NMDA 受容体の完全な遮断よりむしろ部分的遮断を生じることにある。部分的受容体遮断は、たとえば低い親和性 NMDA 受容体 アンタゴニスト(これは高い親和性NMDA 受容体アンタゴニストに比べて良好な治療濃度域を典型的に有する)によって達成することができる(Rogawski, 2000)。メマンチン (低い〜中程度の親和性NMDA 受容体アンタゴニスト)は学習及び記憶障害のいくつかの薬理学的モデルで (Zajaczkowski 等., 1996; Wenk 等., 1997),ベースライン記憶障害機能の成熟ラットで (Barnes 等., 1996) 及び中程度〜重度のAD患者で (Reisberg 等., 2003; Tariot 等., 2004)、活動(performance)を改善することが分かった。
【0182】
AD の最も明確な病理学的顕著な特徴のうちの1つは、セレクト脳領域内のβ-アミロイド (Aβ) 斑の細胞外沈着である。AD ケースの一部は早期発症を示し、そして家族性 (FAD)である。FADはプレセリン 1 (PS 1), プレセリン 2 (PS 2) 又は アミロイド前駆体蛋白質 (APP)遺伝子内の突然変異によって引き起こされる。このような突然変異は、高度にフィブリロジェニックAβ1-42ペプチドの増強された産生を導く (Borchelt 等., 1997; Holcomb 等., 1998)。一連の証拠は、Aβ 毒性がグルタマートの高められたレベル及び(又は)NMDA 受容体の過活性に関連することを示唆した。たとえば, APPはグルタミン酸作動性ニューロンによって発現され (Ouimet 等., 1994), そしてAD患者の脳内の細胞損傷は、グルタミン酸作動性シナプス可塑性を示す領域に主に見出される(Arendt 等., 1998)。 ラット脳内にAβの注入は学習及び記憶の欠陥 (Sweeney 等., 1997) 及び長期増強(LTP)の障害,いくつかの形の学習及び記憶をつかさどる活性依存性可塑性のモデル(Stephan 等., 2001; Walsh 等., 2002)を生じる。Aβ及び APPを発現するトランスジェニックマウスは加齢による認知減少も示し (Chapman 等., 1999; Puolivali 等., 2002), そしてグルタマートはLTPのAβ-誘発された障害を悪化させることが知られている(Nakagami 及び Oda, 2002)。 更に, 最近の研究で, メマンチンはAβ-誘発アポトーシスからラット海馬細胞を守った(Miguel-Hidalgo 等., 2002)。Aβ又はAPPの不在下でさえ, NMDA 受容体の過活性はシナプス可塑性及び学習を低下させることができる。たとえば, LTPの発生は、高濃度のNMDA によって害される可能性があり(Katagiri 等., 2001), そして非けいれん性薬用量のNMDAの全身投与は、ラットの受動回避学習を損なうことを示した (Zajaczkowski 等., 1997)。
【0183】
グリアグルタマートトランスポータ, GLT-1 (EAAT-2)の反応抑制が AD 患者に生じるという知見は、グルタマートのシナプスレベル 及びそれゆえにNMDA 受容体活性がAD で増加するという見解も裏付ける(Masliah 等., 1996)。 興味深いことに, GLT-1 欠陥マウスは、低い薬用量のNMDA 受容体アンタゴニストによって正常なレベルに一部修復される(Katagiri 等., 2001)、グルタマートの高められたシナプスレベル及び海馬LTPの悪化も示し、そしてAPPトランスジェニックマウスは減損したグリアグルタマートトランスポータ活性を示す (Masliah 等., 2000)。まとめると, これらの知見は、NMDA 受容体の過活性及び(又は)シナプス中のグルタマートの高められたレベルがAβ及びAPPの神経毒及び記憶障害作用を悪化させうることを示唆させる。
【0184】
現在の研究で,海馬をベースとする空間学習及びその他の一般的行動にメマンチンの亜慢性経口投与が影響を及ぼすことを、突然変異したヒト APP(swe) 及び PS1 (A246E) 遺伝子をもつマウスで判定する。これらのマウスは加齢による記憶障害を発生し、そしていくつかの脳領域中でAβレベルの加齢関連の増加を示す (Liu 等., 2002; Puolivaeli 等., 2002)。
【0185】
実験計画
家族性ADに関連するA246E 突然変異を有するヒト PS1 又はスエーデン型家族性AD 家系(APPswe)に関連するヒトAβドメイン及び突然変異(K595N, M596L)を有するキメラ マウス/ヒトAPP695 (Borchelt 等., 1997)を発現するトランスジェニックマウスを、16世代にわたって C57BL/6Jに戻し高配し、ついで一緒に交雑して、双方のトランス遺伝子を共発現するダブルトランスジェニックマウスを生み出しす。すべての試験に, 8ヶ月の二重突然変異雄性マウス(APP/PS1; n=45) 及びそれらの非トランスジェニック同腹子 (NT; n=36, )を使用する。この年齢で, APP/PS1マウスはβ-アミロイドペプチドの増加された脳レベルを示す (Wang 等., 2003)。メマンチンの治療薬用量を約1μMの定常状態の血漿薬物レベルを生じる薬用量として定義し、そして8ヶ月の雄性C57 BL/6J マウス(トランスジェニックマウスのバックグランド系統)で判定する。
【0186】
始めから終わりまで実験動物を別々にコントロールされた環境に収容した(温度21±1℃, 湿度 50 ±10%, 照明期間 07:00-19:00 h)。餌及び水は自由に得られる。実験を欧州評議会 (Directive 86/609) 及び フィンランドガイドラインにしたがって行い, そして東フィンランドの国家州立局(State Provincial Office of Eastern Finland)によって承認される。
【0187】
投薬量決定予備試験: 予備試験を行って、メマンチンの治療薬用量を決定し[すなわち, 約1μMの定常状態の血漿薬物レベルを生じるメマンチンの投薬量------------いくつかの前臨床及び臨床試験が示したこの量は治療量である (Kornhuber 及び Quack, 1995; Zajaczkowski 等., 1996)]、トランスジェニック マウスにおいて後続の実験に使用される。 メマンチン(Forest Research Institute, Jersey City, NJ)を、雄性 C57BL/6J マウスに1日あたり10 mg/kg (n = 10), 30 mg/kg (n = 10) 及び100 mg/kg (n = 10) で4 週間(飲料水を介して) 経口投与した。偽薬グループ (n = 10) はメマンチン不含水を飲んだ。血液サンプルを薬物処理の開始4周間後に大腿静脈から採取し、メマンチンの定常状態の血漿濃度を測定する。血漿サンプルを、Merz Pharmaceuticals GmbH (フランクフルトアムマイン, ドイツ)で 質量検出器 (Kornhuber 及びQuack., 1995)と連結したガスクロマトグラフィーシステムを用いて分析した。
【0188】
メマンチン処理: 予備試験に基づいて、1日あたり投薬量30 mg/kg (詳細は結果の欄を参照)を行動試験のために選び、ついで3週間飲料水を投与した。メマンチンを23 APP/PS1 マウス及び19 NTマウスに投与した。偽薬グループ(APP/PS1: n = 22; NT: n = 17) はメマンチン不含水を飲んだ。行動試験は、処理開始後2週間で始め、1週間続ける。処理の2週間後, マウスを探索行動, 孤立誘発攻撃及びモリス水迷路試験での行動を調べた。
【0189】
探索行動: 赤外線光検査に基づくTruScan (登録商標) (Coulbourn Instruments, CO, 米国) 自動活動モニタを探索行動を監視するために使用した。透明な観察ケージからなるシステム(26×26×39 cm) 及び横の動き(長期のXY-活動) 及び 縦の動き (立ちあがる回数)の別々の監視が可能である二連式光検知器。動きを48時間まで分離された2つの別個のセッションで10分間測定した。
【0190】
孤立誘発攻撃: すべてのテストマウス(‘常駐マウス”) を、この試験開始前少なくとも3週間個別のケージに収容しておく。 “侵入マウス” はNT 雄性C57Bl/J6 マウス(試験時生後16-20 週間)であって、離乳してから4-8匹のグループで収容した。無作為に選ばれた侵入マウスを常駐ケージに入れ、ついで常駐マウスの攻撃を攻撃潜伏時間を測定して評価する。すなわちケージに侵入マウスを導入と常駐マウスによる最初の攻撃の間を秒で評価する。実験者は遺伝子型及び薬物処理に左右されない。
【0191】
モリス水迷路: モリス水迷路を使用して空間学習及び記憶を測定する。装置は 直径120 cmの黒色プラスチックプールである。黒色避難プラットホーム(正方形, 14 ×14 cm)を水面から1.0 cm 下に置く(隠す)。 水温を実験の間中一定に保ち(20 ±0.5℃), そして10分の回復期間を訓練トライアルの間認める。最初に, マウスを水面下1 cmにあるプラットホームに至る小道 (1×14 cm×25 cm) を使って2日間 プラットホームを見つけ、それ上に上る予備訓練した。訓練は1日あてり5回のトライアルを含む、連続8日の試験日からなる。マウスが最大時間(60 秒)以内に避難プラットホームを見つけられない場合, 動物を実験者によって10秒間プラットホーム上にあげる。試験の最初の5日間、マウスを隠されたプラットホームで訓練した。プラットホーム位置は一定に保たれ 、ついで開始位置はプールの縁で4つの一定の場所の間を移動した。マウスを 無作為な方法で開始ポイントのうちの1つに、壁にかれらの鼻を向けて水中に置く。6日目に、プラットホーム を除き、ついでマウスを60 秒間泳がせ、かれらのサーチ傾向を判定した。試験7 及び 8日目に, あらゆる更なる迷路の目に見える手がかりを隠すために、黒色カーテンをスイミングプールの周りにかける。マウスを目に見えるプラットホーム(これは白い旗のある10 cmの高さのポールを有し、そしてトライアル毎に新しい位置に変えられる)を見つける訓練をする。水面下のプラットホームを見つけるまでの潜伏時間のタイミングは実験者によって開始され、ついで終了される。イメージ分析器 (HVS Image(登録商標), Hampton, 英国) に連結されたコンピュータは泳ぎパターンを監視する。水迷路訓練の間, 水泳速度及びプラットホームを見つける潜伏時間を測定する。壁-水泳傾向(走触性) は、プールを3つの同心円の等しい水面域に分け、ついで外側で過ごす時間を算出して判断する。 探査トライアル中のサーチ傾向を、プラットホームが予め設置された場所の周辺でマウスが過ごす時間を算出する。これをプラットホーム (直径30 cm)上の目標域として定める。この目標域は水面域全体の6.25 %からなり, したがってプール中で60 秒間の任意の泳ぎは、探査トライアル中、目標域で3.75秒の滞留時間をみたらす。
【0192】
統計分析: すべての統計分析をウインドウズソフトウエア, バージョン11.5.1 (SPSS, シカゴ, IL)のSPSSを用いる。遺伝子型, 処理, 訓練日及び探索行動の活動パラメータとモリス 水迷路での行動の相互関係の効果を、反復測定用分散分析 (ANOVA)によって算出する。孤立誘発攻撃試験からの攻撃潜伏時間を、ファクターとして遺伝子型及び処理を用いる二元ANOVAによって分析する。
【0193】
結果
メマンチン血漿濃度: 一日あたり10, 30 及び 100 mg/kgのメマンチンの経口投与後の定常状態の血漿レベルは、それぞれ0.49 ± 0.06, 1.14 ± 0.07 及び 5.54 ± 0.40 μM (平均 ± SEM)であった。これらのデータに基づき, 治療定常状態の血漿レベル(約1μM)を生じる、 一日あたり30 mg/kgの投薬量を、すべての行動試験に選ぶ。
【0194】
探索行動: APP/PS1 及び NT マウスを先ず自動化された行動モニターで運動及び探索行動の遺伝子型及び薬物作用を検出する。ANOVAは著しい遺伝子型 効果を示す。APP/PS1 マウスは、NT マウスに比べてあまり横の動かず (図 9, F(1, 77) = 13.0, p = 0.001)、そしてあまり立ち上がらない (図 9, F(1, 77) = 35.0, p < 0.001)ことを示す。メマンチンは探索行動の程度に著しく影響をあたえない。
【0195】
孤立誘発攻撃: 侵入マウスに直面した時, APP/PS1 マウスはNT コントロールに比べて短い侵入マウス攻撃潜伏時間を示した (図10; F(1, 56) = 3.9, p = 0.05)。増大したAPP/PS1 マウス で観察された増大した攻撃行動は、メマンチンによって著しく改変されなかった (図10)。
モリス水迷路: 総合ANOVAは空間学習で遺伝子型 (F(1, 77) = 12.5, p = 0.001) も、薬物作用 (F(1, 77) = 8.0, p = 0.006)も明らかにする。 偽薬処理したAPP/PS1 マウスは、隠された プラットホーム を見つけるのにNT コントロールに比べて遅い(図11A; F(1,40) = 8.9, p = 0.005)。メマンチン処理は、偽薬処理したAPP/PS1 マウスに比べて APP/PS1 マウスの避難潜伏時間を減少させる(図11B; F(1,43) = 6.0, p = 0.02)。実際、メマンチン処理したAPP/PS1 マウスの行動レベルは、偽薬処理したNTマウスのレベルと相違しなかった (4つのグルグループで一元 ANOVA, ついでTukey’s post-hocテスト, p = 0.96)。メマンチンで処理したNT マウスで改善行動傾向もあった。しかし, この作用は顕著でなかった(図11C; F(1,34) = 3.0, p = 0.09)。APP/PS1 マウスは、目に見えるプラットホームを見つける際にかれらのNT 同腹子に比べても遅い (図11A; F(1, 77) = 15.8, p< 0.001)。しかし, メマンチンはこのパラダイムで顕著な改善を示さなかった (図11B)。 水泳速度は、遺伝子型 (F(1, 77) = 0.27, p > 0.6) 又は薬物処理 (F(1, 77) = 0.94, p>0.3)によって影響されなかった。
【0196】
最初に,マウスの生来の性向は、水からの避難を求めて、プール壁に密着したままである。しかし, かれらは、その壁から逃げられいことにすぐに気づき、ついでプールの真中のプラットホームを探し始める。サーチパターンを更に分析するために、プールの外側域で過ごす時間を別々に測定した。APP/PS1 マウスに関する外側域で過ごす全時間は、NT マウス (図11D; F(1, 77) = 18.3, p < 0.001)に比べて著しく大きい。メマンチンは外側域で過ごす全時間を著しく減少させ (F(1, 77) = 11.7, p = 0.001), そしてこの作用はAPP/PS1 マウス共に顕著であった (図11E; F(1,43) = 4.7, p = 0.04) 及び NT マウス (図11F; F(1,34) = 9.8, p = 0.004)。
【0197】
学習した空間サーチ傾向の強さを、探査トライアルの間6日目にプラットホームなしで評価した。 すべてのグループのマウスが、プラットホーム場所周辺で 無作為な水泳によって予想されるであろう時間に比べて多くの時間を過ごした (60秒のうち3.75秒; 方法参照)。異なるグループに関して目標域で過ごす時間はつぎの通りであった: NT (偽薬): 36.0 ± 2.0 秒 (平均±sem), NT (メマンチン): 36.1 ±2.6秒, APP/PS1 (偽薬): 35.5±2.3秒, APP/PS1 (メマンチン): 39.0±2.0秒。グループの差異は顕著でなかった。
【0198】
結論
治療血漿濃度で3-4週間経口投与した後, メマンチンは空間学習で加齢による障害を示すAPP/PS1 マウスで空間ナビゲイションの学習段階を著しく改善した(図11B)。メマンチンは、無意識の自発運動 又は 特定の運動 パターン、たとえば水迷路での水泳に影響を与えなかった。
【0199】
メマンチンで処理したAPP/PS1 又は NT マウスで、自発的な立ち上がりの変化又は横移動は観察されなかった。げっし類で (+)MK-801の特徴的作用のいくつかは、水迷路行動での欠陥及び 増大する壁から離れない(走触性) (Cain 等., 1996)である。これに反して, メマンチン処理は APP/PS1 マウスの水迷路学習を改善し、そして走触性を減少させた。メマンチンのこれらの作用は、臨床試験で観察されたメマンチン の高い許容プロフィールと一致している。
【0200】
メマンチン処理は、APP/PS1 マウスで水迷路取得の著しい改善をもたらした。 フィッシャー(Fisher) 344 ラットでの初期の研究で, 8 週間1日あたり30 mg/kgのメマンチン処理によって、改善した水迷路学習は、報告されていた(Barnes 等., 1996). しかし, その研究において,メマンチンの作用は、調査試験の改善されたサーチ傾向によって水迷路学習の後期で明らかであった。一方、本発明の例によってこの作用は、学習の初期段階で最も顕著であった。NMDA 受容体の活性化が、複雑な課題のいくつかの同時におこる局面の速い学習、たとえばモリス水迷路 (たとえば, 水から逃れるためのプラットホームがあることを学ぶ, 壁から逃げられないことを学ぶ, 及び更なる迷路空間手がかりによってプラットホームの場所を判断する) に重要な役割を果たすので,未処理トランスジェニックマウスに比べてメマンチン処理したAPP/PS1 マウスの水迷路習得の初期段階で観察された改善した学習は、 NMDA 受容体の生理学的機能が病的病態下でメマンチンによって修復されたことを示す。
【0201】
本発明の例で, メマンチンはAPP/PS1 又はNT マウスで攻撃行動を増加させなかった。
【0202】
したがって, その臨床使用に似たメマンチンの亜慢性経口投与は、APP/PS1 トランスジェニック マウスの欠陥空間学習を改善したが、これらのマウスに観察された増大した攻撃又は減少した探索行動に影響を与えなかった。
【0203】
本発明はここに記載した具体的な実施態様によって範囲を限定するものではない。確かに, ここの記載した変更に加えて、本発明の種々の変更は、前述の記載から当業者に明になる。このような変更は付加された請求項の範囲内にあることを意図している。
【0204】
すべての特許明細書, 出願明細書, 公表明細書, 試験法, 文献及びここに引用されたその他の記事を参考としてここに援用する。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図 1は、 種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で3日目にsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す。
【図2】図 2は、種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で6日目にsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す。
【図3】図 3は、種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SH の馴化培地で種々の期間(3,6,12 日間)でsAPPのレベルに影響を及ぼすのを示す
【図4】図4 は、種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で3日目にAβ40 のレベルに影響を及ぼすのを示す。
【図5】図 5 は、種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で6日目にAβ40 のレgベルに影響を及ぼすのを示す。
【図6】図 6 は、種々の薬用量のメマンチンが、ヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの馴化培地中で9日目にAβ40 のレベルに影響を及ぼすのを示す。
【図7】図 7 は、種々の薬用量のメマンチンが MTT (テトラゾリウム染料3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド) アッセイによって測定されるようにヒト神経芽細胞腫細胞 SK-N-SHの細胞生死に影響を及ぼすことをを示す。
【図8】図 8は、種々の薬用量のメマンチンが、LDH (乳酸脱水素酵素) アッセイによって測定されるようにヒト神経芽細胞腫細胞SK-N-SHの細胞毒性に影響を及ぼすのを示す。
【図9】図 9 は、閉じられた透明ケージ中で10分間の記録の間探索行動の程度を示す。
【図10】図 10は、孤立誘発攻撃試験を示す。
【図11】図 11は、メマンチン及び偽薬処置されたNT 及び APP/PS1マウスに対するモリス水迷路試験を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞によって産生される、少なくとも1種のアミロイドペプチドのレベルを低下させる方法であって, 1-アミノシクロヘキサン誘導体をその細胞に投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
アミロイドペプチドがsAPPα, Aβ40又はAβ42である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アミロイドペプチドがAβ40である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が神経細胞である、請求項1記載の方法,
【請求項5】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が一般式(I):
【化1】

{式中、
R* は-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、この際n+m = 0, 1又は2,
A は線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6)、線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6)及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及びR2は独立して水素、線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれ、
R3 及びR4は独立して水素,線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6) より成る群から選ばれるか, 又はこれらは一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10) を形成するか、又はこれらはNと一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン[これは (アルキル(C1-C6),アルケニル (C2-C6)) 置換された 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む]を形成するか, 又は
独立してR3又はR4 はRp, Rq, Rr又はRs と一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t-
(式中、t= 0又は1)を形成することができ、そしてこのアルキレン鎖の左側はU又はYに結合し、そしてこのアルキレン鎖の右側はNに結合し、そしてR6 は水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより群から選ばれか、又は
独立してR3又はR4はR5 と一緒になって式-CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖, 又は式-CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は -CH2-CH=CH-(CH2)t- (式中、t= 0 又は 1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, このアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側はW に結合し、そしてアルキレン環の右側はNに結合し、
R5は独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれるか又は R5は、これに結合する炭素及び隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し,
Rp, Rq, Rr及びRsは独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル(C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル(C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6), シクロアルキル(C3-C6) 及びアリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか、又は
Rp, Rq, Rr及びRs は独立してこれに結合するU又はYと一緒になって二重結合を形成することができるか, 又は
Rp, Rq, Rr及びRsは一緒になって低級アルキレン-(CH2)x- (式中、x は2-5である。)又は低級アルケニレン架橋を示すことができ、このアルキレン架橋はついでR5と一緒になって別の低級アルキレン -(CH2)y- (式中、y は1-3である。)又は低級アルケニレン架橋を形成することができ,
符号U, V, W, X, Y及び Z は炭素原子を示す。}
で表わされ, そして一般式(I)で表わされる化合物の光学異性体, ジアステレオマー, 多形体, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及びそれらの混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が1-アミノアダマンタンであるか、又は次の群:
1-アミノ-3-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-メチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン (メマンチン),
1-アミノ-3-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-イソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジイソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジ-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-N-メチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-エチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-イソプロピル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N,N-ジメチル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-メチル-N-イソプロピル-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジシクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジフェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチル-7-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチル-7-メチルアダマンタン,
1-N-ピロリジノ及び 1-N-ピペリジン誘導体,
1-アミノ-3-メチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
その光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, N-メチル誘導体, N,N-ジメチル誘導体, N-エチル誘導体, N-プロピル誘導体、それらの薬学的に許容し得る塩, 及びそれらの混合物より成る群から選ばれる1-アミノアダマンタン誘導体のうちの1種である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、メマンチン及びそのプロドラッグ、塩、異性体、同族体及び誘導体より成る群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がメマンチンである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(トランス),3(トランス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(シス),3(シス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン (ネラメキサン),
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-シス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,5S)シス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-トランス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,5S)トランス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル) ピロリジン,
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1 アミノ-1,3,3,5(トランス)-テトラメチルシクロヘキサン (アキシャルアミノ基),
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン 半水和物,
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチル-3(シス)-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
シス-3-エチル-1(トランス)-3(トランス)-5-トリメチルシクロヘキサミン,
1-アミノ-1,3(トランス)-ジメチルシクロヘキサン,
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-プロピルシクロヘキサン,
1-メチル-3(シス)-プロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(シス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(トランス)-エチルシクロヘキサン,
シス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
トランス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン,
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン,
2-メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン,
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル-1)-エチルアミン 半水和物,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,SS)トランス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5, 5-トリメチル-3(シス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(トランス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-エチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-メチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-シス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-トランス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1R,SS)トランス-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン,
それらの光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物,それらの薬学的に許容し得る塩, 及びそれらの混合物より成る群から選ばれる1-アミノアルキルシクロヘキサン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がネラメキサン及びそのプロドラッグ、塩、異性体、同族体及び誘導体から選ばれる、請求項1記載の方法.
【請求項11】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がネラメキサンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
哺乳類においてフィブリロジェニックβ-アミロイド (Aβ)ペプチドの沈着を改変する(modify) 方法であって、この目的に有効な量の1-アミノシクロヘキサン誘導体をその哺乳類に投与することを含む、上記方法。
【請求項13】
1-アミノシクロヘキサン誘導体を、0.1-150μMの範囲にある量で投与する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
1-アミノシクロヘキサン誘導体を1-25μM の範囲にある量で投与する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
1-アミノシクロヘキサン誘導体を1-4μM の範囲にある量で投与する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
哺乳類がマウスである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
哺乳類がヒトである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
哺乳類のアミロイドパシー(amyloidopathy)の治療-、予防-、進行の停止-、開始の遅延-及び(又は)発現のリスクの減少-方法であって,哺乳類の脳, 脳脊髄液又は血漿内Aβペプチド量を低下させるのに有効な量で1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む調合物をその哺乳類に投与することを包含する、上記方法。
【請求項19】
アミロイドパシーがダウン症候群, びまん性レビス(Lewis)小体病, 進行性核上麻痺, クロイツフェルト-ヤコブ病, フィンランド(Finnish) 型家族性アミロイド症, 家族性アミロイドチック多発性神経障害, オランダ(Dutch)型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血及びゲルスターマン-ストラウスラーシャインカー(Gerstmann-Straussler Scheinker) 病より成る群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
哺乳類がヒトである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が一般式(I):
【化2】

{式中、
R* が-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、この際n+m = 0, 1又は2,
A が線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6)及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及び R2 が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれ、
R3 及びR4が独立して水素,線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6) より成る群から選ばれるか, 又はこれらが一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10) を形成するか、又はこれらがNと一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン[これは(アルキル(C1-C6),アルケニル (C2-C6)) 置換された3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む]を形成するか, 又は
独立してR3又はR4 がRp, Rq, Rr又はRs と一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t- (式中、t= 0又は1)を形成することができ、そしてこのアルキレン鎖の左側がU又はYに結合し、そしてこのアルキレン鎖の右側がNに結合し、そしてR6 が水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより群から選ばれか、又は
独立してR3又はR4がR5 と一緒になって式-CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖, 又は式-CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は -CH2-CH=CH-(CH2)t- (式中、t= 0 又は 1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, このアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側がW に結合し、そしてアルキレン環の右側がNに結合し、
R5が独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6)より成る群から選ばれるか又は R5が、これに結合する炭素及び隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し,
Rp, Rq, Rr及びRsが独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル(C1-C6), 線状又は分枝状低級アルケニル(C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル(C2-C6), シクロアルキル(C3-C6) 及びアリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか、又は
Rp, Rq, Rr及びRs が独立してこれに結合するU又はYと一緒になって二重結合を形成することができるか, 又は
又はRp, Rq, Rr及びRsが一緒になって低級アルキレン-(CH2)x- (式中、x は2-5である。)又は低級アルケニレン架橋を示すことができ、このアルキレン架橋がついでR5と一緒になって別の低級アルキレン -(CH2)y- (式中、y は1-3である。)又は低級アルケニレン架橋を形成することができ,
符号U, V, W, X, Y及び Z が炭素原子を示す。}
で表わされ, そして一般式(I)で表わされる化合物の光学異性体, ジアステレオマー, 多形体, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及びそれらの混合物を含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が1-アミノアダマンタンであるか、又は次の群::
1-アミノ-3-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-メチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン (メマンチン),
1-アミノ-3-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-イソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジイソプロピルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジ-n-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-N-メチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-エチルアミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-イソプロピル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N,N-ジメチル-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン,
1-N-メチル-N-イソプロピル-アミノ-3-メチル-5-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジシクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジフェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチル-7-エチルアダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチル-7-メチルアダマンタン,
1-N-ピロリジノ及び 1-N-ピペリジン誘導体,
1-アミノ-3-メチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-プロピルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ブチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-フェニルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ペンチルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ヘキシルアダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
その光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, N-メチル誘導体, N,N-ジメチル誘導体, N-エチル誘導体, N-プロピル誘導体、それらの薬学的に許容し得る塩, 及びそれらの混合物より成る群から選ばれる1-アミノアダマンタン誘導体のうちの1種である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、メマンチン及びそのプロドラッグ、塩、異性体、同族体及び誘導体より成る群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項24】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がメマンチンである、請求項18記載の方法。
【請求項25】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(トランス),3(トランス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(シス),3(シス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン (ネラメキサン),
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-シス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,5S)シス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-トランス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,5S)トランス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル) ピロリジン,
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1 アミノ-1,3,3,5(トランス)-テトラメチルシクロヘキサン (アキシャルアミノ基),
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン半水和物,
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチル-3(シス)-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
シス-3-エチル-1(トランス)-3(トランス)-5-トリメチルシクロヘキサミン,
1-アミノ-1,3(トランス)-ジメチルシクロヘキサン,
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-プロピルシクロヘキサン,
1-メチル-3(シス)-プロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(シス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(トランス)-エチルシクロヘキサン,
シス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
トランス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン,
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン,
2-メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン,
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル-1)-エチルアミン 半水和物,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,SS)トランス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5, 5-トリメチル-3(シス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(トランス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-エチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-メチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-シス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-トランス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1R,SS)トランス-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン,
その光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物,それらの薬学的に許容し得る塩, 及びそれらの混合物より成る群から選ばれる1-アミノアルキルシクロヘキサン誘導体である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がネラメキサン及びそのプロドラッグ、塩、異性体、同族体及び誘導体から選ばれる、請求項18記載の方法.
【請求項27】
1-アミノシクロヘキサン誘導体がネラメキサンである、請求項18記載の方法。
【請求項28】
1-アミノシクロヘキサン誘導体を治療上有効な量で投与する、請求項18記載の方法。
【請求項29】
上記量が1日あたり1-100 mgの範囲である、請求項18記載の方法。
【請求項30】
上記量が1日あたり5-60 mgの範囲である、請求項18記載の方法。
【請求項31】
上記量が1日あたり10-40 mgの範囲である、請求項18記載の方法。
【請求項32】
哺乳類の脳内Aβペプチド量を低下させるのに有効な量で1-アミノシクロヘキサン誘導体を投与する、請求項18記載の方法。
【請求項33】
Aβレベルを少なくとも10-70%低下させる、請求項18記載の方法。
【請求項34】
薬学的調合物が薬学的に許容し得るキャリヤー又は賦形剤を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項35】
1-アミノシクロヘキサン誘導体を別の1-アミノシクロヘキサン誘導体, アセチルコリンエステラーゼ阻害剤 (AChEI), セクレターゼモディファイヤー(secretase modifier)又はそれらの組み合わせと同時に又は連続して投与する、請求項18記載の方法。
【請求項36】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤 (AChEI) がガランタミン, タクリン, ドネペジル及びリバスチグミンより成る群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
アミロイドパシーの患者又はアミロイドパシーを進行させる恐れのある患者に対処する方法であって、 Aβレベルを低下させる量の1-アミノシクロヘキサン誘導体を上記患者に与え, そしてこの患者の体液中のAβレベルを検出して、この1-アミノシクロヘキサン誘導体の効力を判断することからなる、上記方法。
【請求項38】
更に、体液中のAβレベルを繰り返し検出すことを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
上記体液が血漿又は血清である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
上記Aβレベルを上記体液中で、放射免疫測定法, ELISA [酵素免疫測定法(enzyme linked immunosorbent assay)], "サンドイッチ" 免疫測定法, 沈降反応, ゲル拡散沈降反応, 免疫拡散法, 凝集測定法, 補体結合測定法, 免疫放射定量測定法, 蛍光免疫測定法, ウエスタンブロット法, プロテインA免疫測定法及び免疫電気泳動法, 及びそれらの組み合わせより成る群から選ばれるアッセイを用いて検出する、請求項37記載の方法。
【請求項41】
上記アッセイがELISAである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
上記1-アミノシクロヘキサン誘導体を与える前にAβのべースラインレベルを検出することを更に含む、請求項37記載の方法。
【請求項43】
上記Aβレベルに基づき、当該1-アミノシクロヘキサン誘導体治療を調整することを更に含む、請求項37記載の方法。
【請求項44】
患者の体液又は脳内Aβレベルを低下させるための薬剤の製造に、1-アミノシクロヘキサン誘導体を使用する方法。
【請求項45】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、式
【化3】

{式中、
R* が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項46】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、式
【化4】

{式中、R* が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項12記載の方法。
【請求項47】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、式
【化5】


{式中、R* が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項18記載の方法。
【請求項48】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、式
【化6】

{式中、R* が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項37記載の方法。
【請求項49】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が、式
【化7】

{式中、R* は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1 〜R7 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくとも R1, R4及びR5 が低級アルキルであり、そしてR8 及び R9 が独立して水素及び低級アルキル (1-6C)から選ばれるか、又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2〜5である。)を示す。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項44記載の方法。
【請求項50】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化8】

{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。},
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項1記載の方法。
【請求項51】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化9】

{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。},
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項12記載の方法。
【請求項52】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化10】

{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。},
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項18記載の方法。
【請求項53】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化11】

{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。},
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項37記載の方法。
【請求項54】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化12】

{式中、R1及びR2 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
R3 及び R4 が同一であるか又は異なり, 水素又は直鎖状又は分枝状、炭素原子数1 〜6のアルキル基、炭素原子数5 又は 6のシクロアルキル基及びフェニルから選ばれ、
R5 が水素又は直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキル基である。}
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項44記載の方法。
【請求項55】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化13】

{式中、R* は -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R3 が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)であり、そして
R*が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は線状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項56】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化14】

{式中、R* が -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R3 が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)であり、そして
R*は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項12記載の方法。
【請求項57】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化15】

{式中、R* が -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R3 が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)であり、そして
R*が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項18記載の方法。
【請求項58】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化16】

{式中、R* が -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R3 が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)であり、そして
R*が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項37記載の方法。
【請求項59】
1-アミノシクロヘキサン誘導体が式
【化17】

{式中、R* が -(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、 n+m=0, 1, 又は 2)であり、
R1〜R7 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), -CH2- 及び 低級シクロアルキル (1-6C)から選ばれ, 少なくともR1, R4及びR5 は低級アルキル又は-CH2-であり, そして
R8 及び R9 が独立して水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル (1-6C), 及び低級シクロアルキル(1-6C)から選ばれるか, 又はこれらが一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- (式中、x は2 〜5である。)を示すか又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基を示し、
但しR1, R4及びR5がそれぞれ独立して -CH2-である場合、
R1, R4及びR5 がそれぞれ1個のCRa 基(式中、Ra が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれる)に結合して、架橋を形成し,
R2が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C), シクロアルキル基(5-6C)及びフェニルから選ばれ、
R3 が水素, 直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)であり、そして
R*が-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9(式中、n+m=0, そしてR8 及び R9 が同一であるか又は異なり、そして水素又は直鎖状又は分枝状低級アルキル基(1-6C)を示すか、又はこれらがNと一緒になって環炭素原子数5 又は 6のヘテロ環状基示す。)である。}
で表わされる化合物及びその対掌体、光学異性体, 水和物及び薬学的に許容し得る塩を包含する、請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−509165(P2007−509165A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536825(P2006−536825)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035040
【国際公開番号】WO2005/079779
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
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(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】