説明

アラビノース発酵性酵母細胞の代謝工学

本発明は、araA、araBおよびaraD酵素をコードするヌクレオチド配列を発現する真核細胞に関し、これらのヌクレオチド配列の発現は、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換する能力を細胞に与える。任意で、真核細胞は、キシロースをエタノールに転換することもできる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する能力を有する真核細胞と、この細胞が使用される発酵産物の製造方法とに関する。
【0002】
[発明の背景]
燃料エタノールは、化石燃料の価値ある代替品として認められている。植物バイオマスのヘミセルロース画分からの経済的に実行可能なエタノールの製造は、同等の速度および高い収率でのペントースおよびヘキソースの両方の同時発酵性の転換を必要とする。酵母、特にサッカロミセス(Saccharomyces)種は、好気的にも嫌気的にもヘキソースにおいて急速に増殖および発酵することができるので、この方法のための最も適切な候補である。さらに、これらは(遺伝子改変)細菌よりも、リグノセルロース加水分解物の毒性環境に対して遥かに耐性がある。
【0003】
欧州特許第1499708号明細書には、L−アラビノースからエタノールを産生することができるS.セレビシエ(S.cerevisiae)菌株の製造方法が記載されている。これらの菌株は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)からのaraA(L−アラビノースイソメラーゼ)遺伝子、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)からのaraB(L−リブロキナーゼ)およびaraD(L−リブロース−5−P4−エピメラーゼ)遺伝子を導入することによって改変された。さらに、これらの菌株はそのゲノムに付加的な変異を保有しているか、あるいはTAL1(トランスアルドラーゼ)遺伝子を過剰発現していた。しかしながら、これらの菌株はいくつかの欠点を有する。これらは、酸素制限条件下でアラビノースを発酵させる。さらにこれらは、0.05g.g−1.h−1という低いエタノール産生速度を有する(ベッカー(Becker)およびボーレス(Boles)、2003年)。さらにこれらの菌株は、嫌気条件下でL−アラビノースを使用することができない。最後に、これらのS.セレビシエ(S.cerevisiae)菌株は野生型の背景を有し、そのため、これらはいくつかのC5糖を共発酵させるために使用することができない。
【0004】
国際公開第03/062430号パンフレットおよび国際公開第06/009434号パンフレットは、キシロースをエタノールに転換することができる酵母菌株を開示している。これらの酵母菌株は、キシロースをキシルロースに直接異性化することができる。
【0005】
依然として、よりよく機能し、そして比較的厳しい産生条件に対してより頑強および耐性である、エタノールを産生するための代替菌株が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】pRW231およびpRW243のプラスミドマップ。
【図2】0.5%ガラクトース(A)および0.1%ガラクトース+2%L−アラビノース(B)を含有する合成培地における菌株RWB219(○)およびIMS0001(●)の振とうフラスコ培養の増殖パターン。ガラクトースを有する合成培地(A)において培養物を72時間増殖させ、次にガラクトースおよびアラビノースを有する合成培地(B)に移した。増殖は、OD660の測定により決定した。
【図3】2%(w/v)L−アラビノースを有する合成培地を含有する振とうフラスコ培養物におけるS.セレビシエ(S.cerevisiae)IMS0001の連続転移(serial transfer)中の増殖速度。各データ点は、(指数関数的な)増殖中に測定したOD660から見積もった増殖速度を表す。黒丸および白丸は2通りの連続転移実験を表す。
【図4】2%(w/v)L−アラビノースを有する合成培地におけるS.セレビシエ(S.cerevisiae)IMS0001の嫌気性SBR発酵中の増殖速度。各データ点は、指数関数的な増殖中にCOプロファイル(実線)から見積もった増殖速度を表す。
【図5a】菌株IMS0002の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、20gl−1のアラビノース(A)、20gl−1のグルコースおよび20gl−1のアラビノース(B)、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(C)を補充した1の合成培地中で実施した。菌株IMS0002およびRWB218の混合物による嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(D)を補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:グルコース(●)、キシロース(○)、アラビノース(■)、累積的なCO産生から計算したエタノール(□)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)、キシリトール(▼)。
【図5b】菌株IMS0002の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、20gl−1のアラビノース(A)、20gl−1のグルコースおよび20gl−1のアラビノース(B)、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(C)を補充した1の合成培地中で実施した。菌株IMS0002およびRWB218の混合物による嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(D)を補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:グルコース(●)、キシロース(○)、アラビノース(■)、累積的なCO産生から計算したエタノール(□)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)、キシリトール(▼)。
【図5c】菌株IMS0002の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、20gl−1のアラビノース(A)、20gl−1のグルコースおよび20gl−1のアラビノース(B)、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(C)を補充した1の合成培地中で実施した。菌株IMS0002およびRWB218の混合物による嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(D)を補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:グルコース(●)、キシロース(○)、アラビノース(■)、累積的なCO産生から計算したエタノール(□)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)、キシリトール(▼)。
【図5d】菌株IMS0002の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、20gl−1のアラビノース(A)、20gl−1のグルコースおよび20gl−1のアラビノース(B)、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(C)を補充した1の合成培地中で実施した。菌株IMS0002およびRWB218の混合物による嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノース(D)を補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:グルコース(●)、キシロース(○)、アラビノース(■)、累積的なCO産生から計算したエタノール(□)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)、キシリトール(▼)。
【図6】キシロースにおける嫌気性増殖のために選択された菌株IMS0002細胞の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、20gl−1のキシロースおよび20gl−1のアラビノースを補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:キシロース(○)、アラビノース(■)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)、キシリトール(▼)。
【図7】菌株IMS0003の嫌気性バッチ発酵中の糖消費および産物形成。発酵は、30gl−1のグルコース、15gl−1のキシロース、および15gl−1のアラビノースを補充した1リットルの合成培地中で実施した。記号:グルコース(●)、キシロース(○)、アラビノース(■)、累積的なCO産生から計算したエタノール(□)、HPLCによって測定したエタノール(▲)、累積的なCO産生(△)。
【0007】
[発明の説明]
[真核細胞]
第1の態様では、本発明は、以下のヌクレオチド配列:
(a)アラビノースイソメラーゼ(araA)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraAをコードするヌクレオチド配列、
(ii)配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
(iii)その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iv)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(b)L−リブロキナーゼ(araB)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも20%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraBをコードするヌクレオチド配列、
(ii)配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
(iii)その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iv)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(c)L−リブロース−5−P−4−エピメラーゼ(araD)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraDをコードするヌクレオチド配列、
(ii)配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列
(iii)その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iv)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と
を発現することができる真核細胞に関するものであり、これらのヌクレオチド配列の発現は、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換する能力を細胞に与える。
【0008】
好ましい実施形態は、以下のヌクレオチド配列:
(a)アラビノースイソメラーゼ(araA)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列
(ii)その相補鎖が(i)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iii)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(ii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(b)L−リブロキナーゼ(araB)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも20%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraBをコードするヌクレオチド配列、
(ii)配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
(iii)その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iv)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(c)L−リブロース−5−P−4−エピメラーゼ(araD)をコードするヌクレオチド配列であって、
(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraDをコードするヌクレオチド配列、
(ii)配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列
(iii)その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
(iv)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と
を発現することができる真核細胞に関し、これらのヌクレオチド配列の発現は、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換する能力を細胞に与える。
【0009】
[配列同一性および類似性]
配列同一性は、本明細書では、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列の間、または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列の間の、配列の比較により決定される関係と定義される。通常、配列同一性または類似性は、比較される配列の全長にわたって比較される。当該技術分野では、「同一性」は、場合によっては、このような配列のストリング間の一致によって決定されるようなアミノ酸または核酸配列の間の配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存的アミノ酸置換体を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」および「類似性」は、当業者に知られている様々な方法によって容易に計算することができる。
【0010】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて体系化される。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法としては、例えば、BestFit、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(アルトシュール(Altschul)、S.F.ら、J.Mol.Biol.215:403−410頁(1990年)、NCBIおよび他の供給源から公的に入手可能(BLAST Manual、アルトシュール、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD20894))がある。使用される最も好ましいアルゴリズムはEMBOSSである(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align)。EMBOSSを用いるアミノ酸配列比較のための好ましいパラメータは、gap open 10.0、gap extend 0.5、Blosum 62マトリックスである。EMBOSSを用いる核酸配列比較のための好ましいパラメータは、gap open 10.0、gap extend 0.5、DNA フルマトリックス(DNA同一性マトリックス)である。
【0011】
任意で、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者には明らかであるように、当業者はいわゆる「保存的」アミノ酸置換も考慮に入れることができる。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。本明細書において開示されるアミノ酸配列の置換変異形は、開示される配列内の少なくとも1つの残基が除去されて、その場所に異なる残基が挿入されたものである。好ましくは、アミノ酸変化は保存的である。天然に存在するアミノ酸のそれぞれに対する好ましい保存的置換は次の通りである:Alaからserへ、Argからlysへ、Asnからglnまたはhisへ、Aspからgluへ、Cysからserまたはalaへ、Glnからasnへ、Gluからaspへ、Glyからproへ、Hisからasnまたはglnへ、Ileからleuまたはvalへ、Leuからileまたはvalへ、Lysからarg、glnまたはgluへ、Metからleuまたはileへ、Pheからmet、leuまたはtyrへ、Serからthrへ、Thrからserへ、Trpからtyrへ、Tyrからtrpまたはpheへ、そしてValからileまたはleuへ。
【0012】
[核酸配列のハイブリッド形成]
本発明の細胞内で発現される酵素をコードするヌクレオチド配列は、中程度あるいは好ましくはストリンジェントなハイブリッド形成条件下でこれらが配列番号2、4、6、8、16、18、20、22、24、26、28、30のヌクレオチド配列とそれぞれハイブリッド形成できることによっても定義され得る。ストリンジェントなハイブリッド形成条件は、本明細書では、少なくとも約25、好ましくは約50ヌクレオチド、75または100、そして最も好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列が、約1Mの塩、好ましくは6×SSCを含む溶液中あるいは同等のイオン強度を有する他の溶液中、約65℃の温度でハイブリッド形成できるようにし、約0.1M以下の塩、好ましくは0.2×SSCを含む溶液中あるいは同等のイオン強度を有する他の溶液中、65℃で洗浄する条件であると定義される。好ましくは、ハイブリッド形成は一晩、すなわち少なくとも10時間実施され、そして好ましくは、洗浄は、洗浄溶液を少なくとも2回変えて少なくとも1時間実施される。これらの条件は、通常、約90%以上の配列同一性を有する配列の特異的なハイブリッド形成を可能にするであろう。
【0013】
中程度の条件は、本明細書では、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは約200以上のヌクレオチドの核酸配列が、約1Mの塩、好ましくは6×SSCを含む溶液中あるいは同等のイオン強度を有する他の溶液中、約45℃の温度でハイブリッド形成できるようにし、約1Mの塩、好ましくは6×SSCを含む溶液中あるいは同等のイオン強度を有する他の溶液中、室温で洗浄する条件であると定義される。好ましくは、ハイブリッド形成は一晩、すなわち少なくとも10時間実施され、そして好ましくは、洗浄は、洗浄溶液を少なくとも2回変えて少なくとも1時間実施される。これらの条件は、通常、50%までの配列同一性を有する配列の特異的なハイブリッド形成を可能にするであろう。当業者は、同一性が50%〜90%の間で異なる配列を特異的に同定するためにこれらのハイブリッド形成条件を変更できるであろう。
【0014】
[AraA]
本発明の細胞内で発現されるアラビノースイソメラーゼ(araA)をコードする好ましいヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
(b)配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも60、70、80、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列と、
(c)その相補鎖が(a)または(b)の核酸分子配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列と、
(d)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(c)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列と
からなる群から選択される。
【0015】
araAをコードするヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物のaraA、すなわち、原核生物または真核生物中に天然に存在するaraAのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するaraAのどちらもコードし得る。本発明者らは、araBおよびaraDと共発現されるときに、アラビノースを使用する能力、そして/あるいはアラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換する能力を真核宿主細胞に与える特定のaraAの能力は、araAが原核生物起源または真核生物起源のどちらを有するかにあまり依存しないことを発見した。むしろ、これは、配列番号1の配列に対するaraAのアミノ酸配列の関連性に依存する。
【0016】
[AraB]
本発明の細胞内で発現されるL−リブロキナーゼ(AraB)をコードする好ましいヌクレオチド配列は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
(b)配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも50、60、70、80、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列と、
(c)その相補鎖が(a)または(b)の核酸分子配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列と、
(d)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(c)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列と
からなる群から選択される。
【0017】
araBをコードするヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物のaraB、すなわち、原核生物または真核生物中に天然に存在するaraBのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するaraBのどちらもコードし得る。本発明者らは、araAおよびaraDと共発現されるときに、アラビノースを使用する能力、そして/あるいはアラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する能力を真核宿主細胞に与える特定のaraBの能力は、araBが原核生物起源または真核生物起源のどちらを有するかにあまり依存しないことを発見した。むしろ、これは、配列番号3の配列に対するaraBのアミノ酸配列の関連性に依存する。
【0018】
[AraD]
本発明の細胞内で発現されるL−リブロース−5−P−4−エピメラーゼ(araD)をコードする好ましいヌクレオチド配列は、
(e)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
(f)配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列と、
(g)その相補鎖が(a)または(b)の核酸分子配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列と、
(h)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(c)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列と
からなる群から選択される。
【0019】
araDをコードするヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物のaraD、すなわち、原核生物または真核生物中に天然に存在するaraDのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するaraDのどちらもコードし得る。本発明者らは、araAおよびaraBと共発現されるときに、アラビノースを使用する能力、そして/あるいはアラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する能力を真核宿主細胞に与える特定のaraDの能力は、araDが原核生物起源または真核生物起源のどちらを有するかにあまり依存しないことを発見した。むしろ、これは、配列番号5の配列に対するaraDのアミノ酸配列の関連性に依存する。
【0020】
驚くことに、コドンバイアス指数(codon bias index)は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)のaraA、araBおよびaraD遺伝子の発現が、欧州特許第1499708号明細書に記載される原核生物のaraA、araBおよびaraD遺伝子よりも、酵母における発現に好都合であることを示した。
【0021】
L.プランタルム(L.plantarum)は、食品登録当局(food registration authorities)によって安全であると認められるGenerally Regarded As Safe(GRAS)生物体であることに注意すべきである。従って、好ましいヌクレオチド配列はそれぞれ、上記で定義されるような配列番号1、3、または5の配列にそれぞれ関連するアミノ酸配列を有するaraA、araBまたはaraDをコードする。好ましいヌクレオチド配列はそれぞれ、真菌のaraA、araBまたはaraD(例えば、担子菌(Basidiomycete)から)をコードし、より好ましくはそれぞれ、嫌気性真菌から、例えばネオカリマスティクス(Neocallimastix)科、カエコミセス(Caecomyces)科、ピロミセス(Piromyces)科、オルピノミセス(Orpinomyces)科、またはルミノミセス(Ruminomyces)科に属する嫌気性真菌からのaraA、araBまたはaraDをコードする。あるいは、好ましいヌクレオチド配列はそれぞれ、好ましくはグラム陽性細菌から、より好ましくはラクトバチルス(Lactobacillus)属から、最も好ましくはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種からの細菌のaraA、araBまたはaraDをコードする。好ましくは、araA、araBおよびaraDヌクレオチド配列のうちの1つ、2つまたは3つは、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、より好ましくはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種が起源である。本発明の細胞内で発現される細菌araAは、欧州特許第1499708号明細書に開示され、配列番号9で与えられるバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)araAではない。配列番号10は、配列番号9をコードするヌクレオチド酸配列を表す。本発明の細胞内で発現される細菌araBおよびaraDは、欧州特許第1499708号明細書に開示され、配列番号11および配列番号13で与えられるエシェリキア・コリ(Escherichia coli)(大腸菌)のものではない。配列番号12は、配列番号11をコードするヌクレオチド酸配列を表す。配列番号14は、配列番号13をコードするヌクレオチド酸配列を表す。
【0022】
(細菌の)araA、araBおよびaraD酵素が酵母などの本発明の真核宿主細胞においてそれぞれ活性型で発現される可能性を増大させるために、対応するコード化ヌクレオチド配列は、選択された真核宿主細胞に対してそのコドン使用を最適化するように適応され得る。araA、araB、およびaraD酵素(または本発明の他の酵素、以下を参照)をコードするヌクレオチド配列の、選択された宿主細胞のコドン使用に対する適応性は、コドン適応指数(codon adaptation index、CAI)として表すことができる。コドン適応指数は、本明細書では、高度発現遺伝子のコドン使用に対する遺伝子のコドン使用の相対的な適応性の尺度であると定義される。各コドンの相対的な適応性(w)は、同じアミノ酸のための最も大量のコドンに対する各コドンの使用の比である。CAI指数はこれらの相対的な適応値の幾何平均であると定義される。非同義コドンおよび終止コドン(遺伝暗号に依存する)は排除される。CAI値は0〜1の範囲であり、より高い値は最も大量のコドンの割合がより高いことを示す(シャープ(Sharp)およびリー(Li)、1987年、Nucleic Acids Research 15:1281−1295頁を参照。ジャンセン(Jansen)ら、2003年、Nucleic Acids Res.31(8):2242−51頁も参照)。適応されたヌクレオチド配列は、好ましくは、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7のCAIを有する。
【0023】
好ましい実施形態では、本明細書において前に定義したようなaraA、araBおよびaraDをコードするヌクレオチド配列の発現は、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸に転換する能力を細胞に与える。理論に束縛されることは望まないが、L−アラビノースはまずL−リブロースに転換され、次に、ペントースリン酸経路に入る主要分子であるキシルロース5−リン酸に転換されることが予想される。本発明との関連では、「L−アラビノースを使用する」は、好ましくは、少なくとも0.5%のL−アラビノースを存在させた好気条件または嫌気条件下で少なくとも20日間培養された形質転換細胞の660nmで測定される光学濃度(OD660)が、約0.5から1.0以上まで増大されることを意味する。より好ましくは、OD660は、0.5から1.5以上まで増大される。より好ましくは、細胞は、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%のL−アラビノースの存在下で培養される。最も好ましくは、細胞は、約2%のL−アラビノースの存在下で培養される。
【0024】
本発明との関連では、L−アラビノース(好ましい濃度は前の段落と同じ)を存在させた好気条件または嫌気条件下で少なくとも20日間培養された細胞において、適切なアッセイを用いて検出可能な量のL−リブロースが検出されるときに、細胞は「L−アラビノースをL−リブロースに転換」することができる。好ましくは、アッセイは、L−リブロースに対するHPLCである。
【0025】
本発明との関連では、L−アラビノース(好ましい濃度は前の段落と同じ)を存在させた好気条件または嫌気条件下で少なくとも20日間培養された細胞において、適切なアッセイを用いてキシルロース5−リン酸の少なくとも2%の増大が検出されるときに、細胞は「L−アラビノースをキシルロース5−リン酸に転換」することができる。好ましくは、キシルロース5−リン酸に対するHPCLに基づくアッセイは、ザルディバル(Zaldivar)J.ら((2002年)、Appl.Microbiol.Biotechnol.、59:436−442頁)において記載されている。このアッセイは実験部分に簡単に記載される。より好ましくは、増大は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%またはそれ以上である。
【0026】
もう1つの好ましい実施形態では、本明細書において前に定義したようなaraA、araBおよびaraDをコードするヌクレオチド配列の発現は、L−アラビノース(好ましい濃度は前の段落と同じ)を存在させた好気条件または嫌気条下で少なくとも1ヶ月から1年までの間培養されるときに、L−アラビノースを所望の発酵産物に転換する能力を細胞に与える。より好ましくは、適切なアッセイを用いて検出可能な量の所望の発酵産物が検出されるとき、そして前文で与えられる条件下で細胞が培養されるときに、細胞はL−アラビノースを所望の発酵産物に転換することができる。さらにより好ましくは、アッセイはHPLCである。さらにより好ましくは、発酵産物はエタノールである。
【0027】
それぞれ上記に記載されるaraA、araB、およびaraD酵素をコードするヌクレオチド配列による形質転換のための細胞は、好ましくは、細胞内への能動的または受動的なキシロース輸送および細胞内でのキシロース異性化が可能である宿主細胞である。細胞は、好ましくは、活性な解糖が可能である。細胞はさらに内因性ペントースリン酸経路を含有することができ、そしてキシロースから異性化されたキシルロースがピルベートに代謝されるような内因性キシルロースキナーゼ活性を含有することができる。細胞はさらに、好ましくは、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質またはセファロスポリンなどの所望の発酵産物にピルベートを転換するための酵素を含有する。細胞は、国際公開第2007/041269号パンフレットに開示されるようなブタノール経路の1つまたは複数の遺伝子の導入によって、ブタノールを産生できるようにされてもよい。
【0028】
好ましい細胞は、アルコール発酵、好ましくは嫌気性アルコール発酵が自然に可能である。宿主細胞はさらに、好ましくは、エタノールに対する高い耐性、低pH(すなわち、5、4、3、または2.5よりも低いpHで増殖することができる)、ならびに乳酸、酢酸またはギ酸のような有機酸およびフルフラールやヒドロキシ−メチルフルフラールなどの糖分解産物に対する高い耐性、そして高温に対する高い耐性を有する。宿主細胞のこれらの特徴または活性はどれも宿主細胞内に天然に存在してもよいし、あるいは遺伝子選択または遺伝子改変によって導入または改変されてもよい。適切な宿主細胞は、例えば真菌のような真核微生物であるが、宿主細胞として最も適切なのは酵母または糸状菌である。
【0029】
酵母は本明細書では真核微生物と定義され、単細胞形態で優勢に増殖する細分類ユーミコチナ(Eumycotina)(アレクソプーロス(Alexopoulos),C.J.、1962年、In:Introductory Mycology、John Wiley&Sons,Inc.、ニューヨーク)の全ての種を含む。酵母は単細胞性葉状体(unicellular thallus)の出芽によって増殖されるか、あるいは生物体の分裂によって増殖され得る。宿主細胞として好ましい酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、クロエケラ(Kloeckera)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属、またはヤロウイア(Yarrowia)属のうちの1つに属する。好ましくは、酵母は、嫌気性発酵、より好ましくは嫌気性アルコール発酵をすることが可能である。
【0030】
糸状菌は、本明細書では、細分類ユーミコチナ(Eumycotina)の全ての糸状形態を含む真核微生物であると定義される。これらの真菌は、キチン、セルロース、および他の複合多糖で構成される栄養菌糸によって特徴付けられる。本発明の糸状菌は、形態的、生理学的、および遺伝的に酵母とは異なる。糸状菌による栄養増殖は菌糸伸長によるものであり、ほとんどの糸状菌の炭素異化は偏性好気性である。宿主細胞として好ましい糸状菌は、アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、フミコラ(Humicola)属、アクレモニウム(Acremonium)属、フザリウム(Fusarium)属、またはペニシリウム(Penicillium)属のうちの1つに属する。
【0031】
長年にわたって、穀物糖からバイオエタノールを生産するために種々の生物体の導入について提言されてきた。しかしながら、実際には、主要なバイオエタノールの生産工程は全て、エタノール産生体としてサッカロミセス(Saccharomyces)属の酵母を使用し続けている。これは、工業工程のためのサッカロミセス(Saccharomyces)種の多数の魅力的な特徴、すなわち、高い酸耐性、エタノール耐性および浸透圧耐性、嫌気性増殖能力、そしてもちろんその高いアルコール発酵能力のためである。宿主細胞として好ましい酵母種には、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ブルデリ(S.bulderi)、S.バルネッチ(S.barnetti)、S.エクシグウス(S.exiguus)、S.ウバラム(S.uvarum)、S.ディアスタティカス(S.diastaticus)、K.ラクティス(K.lactis)、K.マルキシアヌス(K.marxianus)、K.フラギリス(K.fragilis)が含まれる。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、上記で定義したaraA、araB、およびaraD酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物で形質転換された宿主細胞である。1つのより好ましい実施形態では、宿主細胞は、3つの核酸構築物で同時形質転換され、各核酸構築物は、araA、araBまたはaraDをコードするヌクレオチド配列を含む。araA、araB、および/またはaraDコード配列を含む核酸構築物は、宿主細胞内でaraA、araB、および/またはaraD酵素を発現することができる。このために、核酸構築物は、例えば、国際公開第03/0624430号パンフレットに記載されるように構築され得る。宿主細胞は各核酸構築物の単一のコピーを含むこともできるが、好ましくは多数のコピーを含む。核酸構築物はエピソームに保持され、従って、ARS配列などの自己複製のための配列を含むことができる。適切なエピソーム核酸構築物は、例えば、酵母2μまたはpKD1(フリール(Fleer)ら、1991年、Biotechnology 9:968−975頁)プラスミドに基づくことができる。しかしながら、好ましくは、各核酸構築物は、宿主細胞のゲノムへ1つまたは複数のコピーで組み込まれる。真菌分子遺伝学的分野においてよく知られている(例えば、国際公開第90/14423号パンフレット、欧州特許出願公開第A−0481008号明細書、欧州特許出願公開第A−0635574号明細書および米国特許第6,265,186号明細書を参照)ように、宿主細胞のゲノムへの組込みは非正統的組換えによってランダムに生じてもよいが、好ましくは、核酸構築物は、相同組換えによって宿主細胞のゲノムに組み込まれる。従って、より好ましい実施形態では、本発明の細胞は、araA、araB、および/またはaraDコード配列を含む核酸構築物を含み、araA、araB、および/またはaraD酵素を発現することができる。さらにより好ましい実施形態では、araA、araB、および/またはaraDのコード配列はそれぞれ、細胞内で対応するヌクレオチド配列の十分な発現を引き起こすプロモーターに作動可能に連結され、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸に転換する能力を細胞に与える。好ましくは、細胞は酵母細胞である。従って、さらなる態様では、本発明は、本明細書で前に概説された核酸構築物も包含する。好ましくは、核酸構築物は、araA、araBおよび/またはaraDをコードする核酸配列を含む。araA、araB、またはaraDをコードする核酸配列は全て本明細書において前に定義されている。さらにより好ましくは、細胞内の対応するヌクレオチド配列の発現は、本明細書において後で定義される所望の発酵産物にL−アラビノースを転換する能力を細胞に与える。さらにより好ましい実施形態では、発酵産物はエタノールである。さらにより好ましくは、細胞は酵母細胞である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、機能的な関係にあるポリヌクレオチド要素(すなわち、コード配列または核酸配列)の連結を指す。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるときに「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を与えれば、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されるとは、連結されている核酸配列が通常連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合には連続して読み枠内にあることを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写開始部位の転写方向に関して上流側に位置する1つまたは複数の遺伝子の転写を制御するように機能する核酸断片を指し、DNA依存性RNAポリメラーゼのための結合部位と、転写開始部位と、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびに直接または関節的に作用してプロモーターからの転写の量を調節するための当業者に既知の任意の他のヌクレオチド配を含む(しかし、限定されない)任意の他のDNA配列との存在によって構造的に同定される。「構成的な」プロモーターは、ほとんどの環境および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境または発生規制下で活性なプロモーターである。
【0035】
araA、araBおよび/またはaraDをコードするヌクレオチド配列の発現を達成するために使用され得るプロモーターは、発現される酵素をコードするヌクレオチド配列に対してネイティブでない、すなわち、作動可能に連結されたヌクレオチド配列(コード配列)に対して異種であるプロモーターである。プロモーターは、好ましくは、作動可能に連結されたコード配列に対して異種であるが、プロモーターが相同である、すなわち宿主細胞に対して内因性であることも好ましい。好ましくは、アラビノース、またはアラビノースおよびグルコース、またはキシロースおよびアラビノース、またはキシロースおよびアラビノースおよびグルコースが、炭素源として、より好ましくは主要炭素源(すなわち、アラビノース、またはアラビノースおよびグルコース、またはキシロースおよびアラビノース、またはキシロースおよびアラビノースおよびグルコースからなる利用可能な炭素源の50%よりも多い)として、最も好ましくは唯一の炭素源として利用可能である条件下で、異種プロモーター(ヌクレオチド配列に対して)は、コード配列に対してネイティブであるプロモーターよりも高い定常状態レベルの、コード配列を含む転写物を産生することができる(あるいは、単位時間あたりにより多くの転写物分子、すなわちmRNA分子を産生することができる)ことが好ましい。これに関連して適切なプロモーターは、構成的および誘導性の天然プロモーターならびに操作されたプロモーターを含む。本発明で使用するための好ましいプロモーターはさらに異化産物(グルコース)抑制に対して非感受性であり、そして/あるいは、好ましくは誘導のためにアラビノースおよび/またはキシロースを必要としないであろう。
【0036】
これらの特徴を有するプロモーターは広く利用可能であり、当業者に知られている。このようなプロモーターの適切な例としては、例えば、酵母または糸状菌からのホスホフルクトキナーゼ(PPK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD、TDH3またはGAPDH)、ピルベートキナーゼ(PYK)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーターなどの解糖遺伝子からのプロモーターが挙げられ、このような酵母からのプロモーターについてのさらなる詳細は、(国際公開第93/03159号パンフレット)において見出すことができる。その他の有用なプロモーターは、リボソームタンパク質コード遺伝子プロモーター、ラクターゼ遺伝子プロモーター(LAC4)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADH1、ADH4など)、エノラーゼプロモーター(ENO)、グルコース−6−リン酸イソメラーゼプロモーター(PGI1、ハウフ(Hauf)ら、2000年)、またはヘキソース(グルコース)トランスポータープロモーター(HXT7)、もしくはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(TDH3)である。PGI1プロモーターの配列は配列番号51で与えられる。HXT7プロモーターの配列は配列番号52で与えられる。TDH3プロモーターの配列は配列番号49で与えられる。その他のプロモーター、(構成的および誘導性の両方)およびエンハンサーまたは上流活性化配列は当業者には既知であろう。本発明の宿主細胞において使用されるプロモーターは所望される場合にはその制御特性に影響を与えるように改変されてもよい。
【0037】
本発明の好ましい細胞は、L.プランタルム(L.plantarum)のaraA、araBおよびaraD遺伝子で形質転換された真核細胞である。より好ましくは、真核細胞は酵母細胞であり、さらにより好ましくは、L.プランタルム(L.plantarum)のaraA、araBおよびaraD遺伝子で形質転換されたS.セレビシエ(S.cerevisiae)菌株である。最も好ましくは、細胞はCBS120327またはCBS120328のいずれかであり、いずれも2006年9月27日にCBS Institute(オランダ国)に寄託された。
【0038】
所与の(組換え)核酸またはポリペプチド分子と、所与の宿主生物体または宿主細胞との間の関係を示すために使用される場合の「相同」という用語は、本質的に、核酸またはポリペプチド分子が同じ種、好ましくは同じ変種または菌株の宿主細胞または生物体によって産生されることを意味するものと理解される。宿主細胞に対して相同であれば、ポリペプチドをコードする核酸配列は、通常、自然の環境におけるよりも、別のプロモーター配列、あるいは適用できる場合には別の分泌性シグナル配列、および/または終結配列に作動可能に連結されるであろう。2つの核酸配列の関連性を示すために使用される場合、「相同」という用語は、1つの一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列とハイブリッド形成し得ることを意味する。ハイブリッド形成の程度は、配列間の同一性の量、ならびに前に示したような温度および塩濃度などのハイブリッド形成条件を含む多数の因子に依存し得る。好ましくは、同一性の領域は約5bpよりも大きく、より好ましくは同一性の領域は10bpよりも大きい。
【0039】
核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質に関連して使用される場合の「異種」という用語は、それが存在している生物体、細胞、ゲノム、もしくはDNAまたはRNA配列の一部として天然に存在しない核酸またはタンパク質、あるいはそれが天然に見出されるものとは異なる細胞、あるいはゲノムもしくはDNAまたはRNA配列内の1つまたは複数の位置において見出される核酸またはタンパク質を指す。異種核酸またはタンパク質は、それが導入された細胞に対して内因性でなく、別の細胞から得られたか、あるいは合成または組換えで産生されたものである。一般に、必ずしも必要ではないが、このような核酸は、DNAが転写または発現される細胞によって普通は産生されないタンパク質をコードする。同様に、外因性RNAは、外因性RNAが存在する細胞において普通は発現されないタンパク質をコードする。異種核酸およびタンパク質は、外来性核酸またはタンパク質と呼ばれることもある。それを発現する細胞に対して異種または外来性であると当業者が認識し得る核酸またはタンパク質は、本明細書では、異種核酸またはタンパク質という用語によって包含される。異種という用語は、核酸またはアミノ酸配列の天然でない組み合わせ、すなわち、組み合わせられた配列のうちの少なくとも2つが互いに外来性である組み合わせにも適用される。
【0040】
[L−アラビノースおよびキシロースを使用および/または転換することができる好ましい真核細胞]
より好ましい実施形態では、araA、araBおよびaraDを発現する本発明の細胞は、L−アラビノースを使用し、そして/あるいはそれをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または本明細書において前に定義したような所望の発酵産物に転換することができ、さらに、キシロースを使用し、そして/あるいはキシロースをキシルロースに転換する能力を示す。キシロースのキシルロースへの転換は、好ましくは一段階の異性化ステップ(キシロースからキシルロースへの直接異性化)である。従って、このタイプの細胞は、L−アラビノースおよびキシロースの両方を使用することができる。キシロースを「使用する」は、好ましくは、本明細書において前に定義されたL−アラビノースを「使用する」と同じ意味を有する。
【0041】
キシロースイソメラーゼ(EC5.3.1.5)、キシルロースキナーゼ(EC2.7.1.17)、リブロース5−リン酸エピメラーゼ(5.1.3.1)、リブロース5−リン酸イソメラーゼ(EC5.3.1.6)、トランスケトラーゼ(EC2.2.1.1)、トランスアルドラーゼ(EC2.2.1.2)、およびアルドースレダクターゼ(EC1.1.1.21)についての酵素の定義は、国際公開第06/009434号パンフレットにおいて使用された通りである。
【0042】
好ましい実施形態では、本明細書において前に定義したaraA、araBおよびaraDを発現する本発明の真核細胞は、例えば国際公開第03/0624430号パンフレットまたは国際公開第06/009434号パンフレットに記載されるように、キシロースをキシルロースに異性化する能力を有する。キシロースをキシルロースに異性化する能力は、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物による宿主細胞の形質転換によって宿主細胞に与えられる。キシロースをキシルロースに異性化する形質転換宿主細胞の能力は、キシロースからキシルロースへの直接異性化である。これは、キシロースレダクターゼおよびキシリトールデヒドロゲナーゼによりそれぞれ触媒されるキシリトール中間体を介するキシロースからキシルロースへの2段階の転換とは対照的に、キシロースイソメラーゼにより触媒される単一の反応でキシロースがキシルロースに異性化されることを意味するものと理解される。
【0043】
ヌクレオチド配列は、本発明の形質転換宿主細胞内で好ましくは活性型で発現されるキシロースイソメラーゼをコードする。従って、宿主細胞内のヌクレオチド配列の発現は、30℃でタンパク質1mgあたり少なくとも10Uのキシロースイソメラーゼ活性、好ましくは、30℃で1mgあたり少なくとも20、25、30、50、100、200、300または500Uの比活性を有するキシロースイソメラーゼを産生する。形質転換宿主細胞において発現されるキシロースイソメラーゼの比活性は、本明細書では、宿主細胞の無細胞ライセート、例えば無酵母細胞ライセートのタンパク質1mgあたりのキシロースイソメラーゼ活性単位の量と定義される。キシロースイソメラーゼ活性の決定は、本明細書において以前に既に記載された。
【0044】
好ましくは、宿主細胞内のキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列の発現は、50、40、30または25mM未満であるキシロースに対するKを有するキシロースイソメラーゼを産生し、より好ましくは、キシロースに対するKは約20mM以下である。
【0045】
キシロースイソメラーゼをコードする好ましいヌクレオチド配列は、
(e)配列番号7または配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、
(f)配列番号8または配列番号16のヌクレオチド配列と少なくとも40、50、60、70、80、90、95、97、98、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列と、
(g)その相補鎖が(a)または(b)の核酸分子配列とハイブリッド形成するヌクレオチド配列と、
(h)遺伝暗号の縮重のためにその配列が(c)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列と
からなる群から選択することができる。
【0046】
キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、原核生物または真核生物のキシロースイソメラーゼ、すなわち、原核または真核生物体中に天然に存在するキシロースイソメラーゼと同一であるアミノ酸配列を有するキシロースイソメラーゼのどちらもコードすることができる。本発明者らは、キシロースをキシルロースに異性化する能力を真核宿主細胞に与える特定のキシロースイソメラーゼの能力は、イソメラーゼが原核生物起源または真核生物起源のどちらを有するかにあまり依存しないことを発見した。むしろ、これは、ピロミセス(Piromyces)配列(配列番号7)に対するイソメラーゼのアミノ酸配列の関連性に依存する。驚くことに、真核生物ピロミセス(Piromyces)イソメラーゼは、他の既知の真核生物イソメラーゼよりも原核生物のイソメラーゼに関連する。そのため、好ましいヌクレオチド配列は、上記で定義したピロミセス(Piromyces)配列に関連するアミノ酸配列を有するキシロースイソメラーゼをコードする。好ましいヌクレオチド配列は、真菌キシロースイソメラーゼ(例えば、担子菌(Basidiomycete)から)、より好ましくは嫌気性真菌からのキシロースイソメラーゼ、例えば、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)科、カエコミセス(Caecomyces)科、ピロミセス(Piromyces)科、オルピノミセス(Orpinomyces)科、またはルミノミセス(Ruminomyces)科に属する嫌気性真菌からのキシロースイソメラーゼをコードする。あるいは、好ましいヌクレオチド配列は、細菌キシロースイソメラーゼ、好ましくはグラム陰性細菌、より好ましくはバクテロイデス(Bacteroides)綱、またはバクテロイデス(Bacteroides)属、最も好ましくはB.テタイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)(配列番号15)からのイソメラーゼをコードする。
【0047】
キシロースイソメラーゼが酵母などの真核宿主細胞において活性型で発現される可能性を増大せるために、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列は、本明細書において前に定義された真核宿主細胞に対してそのコドン使用を最適化するように適応され得る。
【0048】
上記のキシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列で形質転換するための宿主細胞は、好ましくは、細胞内への能動的または受動的なキシロース輸送が可能な宿主である。宿主細胞は、好ましくは、活性な解糖を含有する。宿主細胞はさらに内因性ペントースリン酸経路を含有することができ、そしてキシロースから異性化されたキシルロースがピルベートに代謝されるような内因性キシルロースキナーゼ活性を含有することができる。宿主はさらに、好ましくは、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質またはセファロスポリンなどの所望の発酵産物にピルベートを転換するための酵素を含有する。好ましい宿主細胞は、アルコール発酵、好ましくは嫌気性アルコール発酵が自然に可能な宿主細胞である。宿主細胞はさらに、好ましくは、エタノールに対する高い耐性、低pH(すなわち、5、4、3、または2.5よりも低いpHで増殖することができる)、ならびに乳酸、酢酸またはギ酸のような有機酸およびフルフラールやヒドロキシ−メチルフルフラールなどの糖分解産物に対する高い耐性、そして高温に対する高い耐性を有する。宿主細胞のこれらの特徴または活性はどれも宿主細胞内に天然に存在してもよいし、あるいは遺伝子改変によって導入または改変されてもよい。適切な細胞は、例えば真菌のような真核微生物であるが、宿主細胞として最も適切なのは酵母または糸状菌である。好ましい酵母および糸状菌は、本明細書において既に定義されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、宿主細胞という表現は細胞と同じ意味を有する。
【0050】
本発明の細胞は、好ましくは、キシロースイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物で形質転換される。使用するのが好ましい核酸構築物は、araA、araBまたはaraDをコードするヌクレオチド配列を含んで使用される核酸構築物と同じである。
【0051】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、
本明細書において前に定義したように、araA、araBおよびaraDを発現し、そしてキシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示す
本発明の細胞は、さらに、国際公開第06/009434号パンフレットに記載されるように、ペントースリン酸経路のフラックスを増大させる遺伝子改変を含む。特に、遺伝子改変は、非酸化的部分のペントースリン酸経路のフラックスの増大を引き起こす。ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスの増大を引き起こす遺伝子改変は、本明細書では、遺伝子改変がフラックスの増大を引き起こす以外は遺伝的に同一である菌株におけるフラックスと比べて、少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、10または20倍にフラックスを増大させる改変を意味すると理解される。ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスは、単独の炭素源としてのキシロース上で改変宿主を増殖させ、キシロース比消費速度を決定し、そしてキシリトールが産生される場合にはキシロース比消費速度からキシリトール比産生速度を差し引くことによって測定することができる。しかしながら、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスは、唯一の炭素源としてのキシロースにおける増殖速度に比例し、好ましくは、唯一の炭素源としてのキシロースにおける嫌気性増殖速度に比例する。唯一の炭素源としてのキシロースにおける増殖速度(μmax)と、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスとの間には直線的な関係がある。糖におけるバイオマスの収率は一定なので、キシロース比消費速度(Q)は、糖におけるバイオマスの収率(Yxs)によって除した増殖速度(μ)に等しい(所与の一連の条件:嫌気性、増殖培地、pH、菌株の遺伝的背景などの下で、すなわちQ=μ/Yxs)。そのため、ペントースリン酸経路の非酸化的部分のフラックスの増大は、これらの条件下での最大増殖速度の増大から推定することができる。好ましい実施形態では、細胞はペントースリン酸経路のフラックスを増大させる遺伝子改変を含み、少なくとも346mgキシロース/gバイオマス/hであるキシロース比消費速度を有する。
【0052】
ペントースリン酸経路のフラックスを増大させる遺伝子改変は、様々な方法で宿主細胞内に導入することができる。これらには、例えば、キシルロースキナーゼおよび/または非酸化的部分のペントースリン酸経路の1つまたは複数の酵素のより高い定常状態活性レベル、ならびに/もしくは非特異的なアルドースレダクターゼ活性の低減された定常状態レベルを達成することが含まれる。定常状態活性レベルにおけるこれらの変化は、変異体(自発性、あるいは化学物質または放射線により誘発)の選択によって、そして/あるいは組換えDNA技術によって、例えば、それぞれこれらの遺伝子を調節する酵素または因子をコードする遺伝子の過剰発現または不活性化によってもたらされ得る。
【0053】
より好ましい宿主細胞では、遺伝子改変は、(非酸化的部分の)ペントースリン酸経路の少なくとも1つの酵素の過剰発現を含む。好ましくは、酵素は、国際公開第06/009434号パンフレットに記載されるように、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼをコードする酵素からなる群から選択される。
【0054】
(非酸化的部分の)ペントースリン酸経路の酵素の種々の組み合わせが過剰発現されてもよい。例えば、過剰発現される酵素は、少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびリブロース−5−リン酸エピメラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびトランスケトラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸エピメラーゼおよびトランスケトラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸エピメラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともトランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、およびトランスアルドラーゼの酵素、または少なくともリブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、およびトランスケトラーゼの酵素であり得る。本発明の1つの実施形態では、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼの酵素のそれぞれが宿主細胞において過剰発現される。より好ましいのは、遺伝子改変がトランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼの両方の酵素の過剰発現を少なくとも含む宿主細胞であり、それは、このような宿主細胞は既にキシロースにおける嫌気性増殖が可能だからである。実際、いくつかの条件下では、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼのみを過剰発現する宿主細胞は既に、4つ全ての酵素、すなわちリブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼを過剰発現する宿主細胞と同じキシロースにおける嫌気性増殖速度を有することが発見された。さらに、リブロース−5−リン酸イソメラーゼおよびリブロース−5−リン酸エピメラーゼの両方の酵素を過剰発現する宿主細胞は、イソメラーゼのみまたはエピメラーゼのみを過剰発現する宿主細胞よりも好ましく、それは、これらの酵素のうちの1つだけの過剰発現は、代謝の不均衡を生じ得るからである。
【0055】
当該技術分野には本発明の細胞における酵素の過剰発現のために利用可能な種々の手段がある。特に、宿主細胞において酵素をコードする遺伝子のコピー数を増大させることによって、例えば、宿主細胞のゲノムに遺伝子の追加のコピーを組み込むことによって、エピソームマルチコピー発現ベクターから遺伝子を発現することによって、あるいは遺伝子の多数のコピーを含むエピソーム発現ベクターを導入することによって、酵素を過剰発現させることができる。
【0056】
あるいは、本発明の宿主細胞における酵素の過剰発現は、過剰発現される酵素をコードする配列に対してネイティブでないプロモーター、すなわち作動可能に連結されたコード配列に対して異種であるプロモーターを用いることによって達成することもできる。この目的で適切なプロモーターは本明細書において既に定義されている。
【0057】
酵素の過剰発現のために使用されるコード配列は、好ましくは、本発明の主細胞と相同である。しかしながら、国際公開第06/009434号パンフレットで言及されるように、本発明の宿主細胞に対して異種であるコード配列も同様に適用することができる。
【0058】
本発明の宿主細胞においてリブロース−5−リン酸イソメラーゼの過剰発現のために使用されるヌクレオチド配列はリブロース−5−リン酸イソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号17と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号18のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0059】
本発明の宿主細胞においてリブロース−5−リン酸エピメラーゼの過剰発現のために使用されるヌクレオチド配列はリブロース−5−リン酸エピメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号19と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号20のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0060】
本発明の宿主細胞においてトランスケトラーゼの過剰発現のために使用されるヌクレオチド配列はトランスケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号21と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号22のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0061】
本発明の宿主細胞においてトランスアルドラーゼの過剰発現のために使用されるヌクレオチド配列はトランスアルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号23と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号24のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0062】
酵素の過剰発現は、遺伝子改変宿主細胞における酵素の産生に関する場合、同一条件下で非改変宿主細胞と比較してより高い酵素比活性レベルで酵素が産生されることを意味する。通常これは、同一条件下で非改変宿主細胞と比較して、酵素活性タンパク質(または多サブユニット酵素の場合はタンパク質)がより多量に、というよりもより高い定常状態レベルで産生されることを意味する。同様にこれは通常、同一条件下で非改変宿主細胞と比較して、酵素活性タンパク質をコードするmRNAがより多量、というよりもやはりより高い定常状態レベルで産生されることを意味する。従って、酵素の過剰発現は、好ましくは、本発明において記載される適切な酵素アッセイを用いて宿主細胞内の酵素の比活性レベルを測定することによって決定される。あるいは、酵素の過剰発現は、例えば酵素に特異的な抗体を用いて酵素タンパク質の特異的な定常状態レベルを定量化することによって、あるいは酵素をコードするmRNAの特異的な定常レベルを定量化することによって間接的に決定されてもよい。後者は、酵素のための基質が市販されていないために酵素アッセイが容易に実行できないペントースリン酸経路の酵素のために特に適切であり得る。本発明の宿主細胞において、過剰発現される酵素は、過剰発現を引き起こす遺伝子改変以外は遺伝的に同一である菌株と比べて少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、10または20倍過剰発現されるのが好ましい。これらの過剰発現レベルは、酵素活性の定常状態レベル、酵素タンパク質の定常状態レベル、および酵素をコードする転写物の定常状態レベルにも適用することができると理解されるべきである。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、
araA、araBおよびaraDを発現し、そしてキシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示し、そして任意で
本明細書において前に定義したように、ペントース経路のフラックスを増大させる遺伝子改変を含む
本発明の宿主細胞は、さらに、特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる遺伝子改変を含む。好ましくは、遺伝子改変は、例えば、キシルロースキナーゼをコードするヌクレオチド配列の過剰発現によってキシルロースキナーゼの過剰発現を引き起こす。キシルロースキナーゼをコードする遺伝子は宿主細胞に対して内因性であってもよいし、あるいは宿主細胞に対して異種のキシルロースキナーゼであってもよい。本発明の宿主細胞においてキシルロースキナーゼの過剰発現のために使用されるヌクレオチド配列は、キシルロースキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号25と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号26のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0064】
特に好ましいキシルロースキナーゼは、国際公開第03/0624430号パンフレットで言及されるピロミセス(Piromyces)からのキシルロースキナーゼxylBに関連するキシロースキナーゼである。本発明の宿主細胞においてキシルロースキナーゼの過剰発現で使用するためにより好ましいヌクレオチド配列は、キシルロースキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号27と少なくとも45、50、55、60、65、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号28のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0065】
本発明の宿主細胞において、特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる遺伝子改変は上記のペントースリン酸経路のフラックスを増大させる改変のいずれかと組み合わせることができるが、この組み合わせは本発明に必須ではない。従って、本明細書において定義されるaraA、araBおよびaraD酵素の発現に加えて、特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる遺伝子改変を含む本発明の宿主細胞は特に本発明に含まれる。本発明の宿主細胞においてキシルロースキナーゼの過剰発現を達成および分析するために当該技術分野において利用可能な種々の手段は、ペントースリン酸経路の酵素について上記で記載されたものと同じである。本発明の宿主細胞において、過剰発現されるキシルロースキナーゼは、過剰発現を引き起こす遺伝子改変以外は遺伝的に同一である菌株と比べて少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、10または20倍過剰発現されるのが好ましい。これらの過剰発現レベルは、酵素活性の定常状態レベル、酵素タンパク質の定常状態レベル、および酵素をコードする転写物の定常状態レベルにも適用することができると理解されるべきである。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、本明細書において前に定義したように、
araA、araBおよびaraDを発現し、そしてキシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示し、そして任意で
ペントース経路のフラックスを増大させる遺伝子改変を含み、そして/あるいは
特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる遺伝子改変をさらに含む
本発明の宿主細胞は、さらに、宿主細胞において非特異的なアルドースレダクターゼ活性を低下させる遺伝子改変を含む。好ましくは、非特異的なアルドースレダクターゼ活性は、国際公開第06/009434号パンフレットに記載されるように、非特異的なアルドースレダクターゼをコードする遺伝子の発現を低下させるまたは不活性化する1つまたは複数の遺伝子改変によって宿主細胞において低下される。好ましくは、遺伝子改変は、宿主細胞において非特異的なアルドースレダクターゼをコードする遺伝子のそれぞれの内因性コピーの発現を低下させるまたは不活性化する。宿主細胞は、二倍性、倍数性または異数性の結果として、非特異的なアルドースレダクターゼをコードする遺伝子の多数のコピーを含むことができ、そして/あるいは宿主細胞は、アミノ酸配列が異なり、異なる遺伝子によってそれぞれコードされるアルドースレダクターゼ活性を有するいくつかの異なる(イソ)酵素を含有することができる。このような場合にも、非特異的なアルドースレダクターゼをコードする各遺伝子の発現は低下または不活性化されるのが好ましい。好ましくは、遺伝子は、遺伝子の少なくとも一部の欠失によって、あるいは遺伝子の破壊によって不活性化され、これに関連して、遺伝子という用語はコード配列の上流側または下流側の任意の非コード配列も含み、その(部分的な)欠失または不活性化は、宿主細胞における非特異的なアルドースレダクターゼ活性の発現の低下をもたらす。本発明の宿主細胞においてその活性が低下されるべきアルドースレダクターゼをコードするヌクレオチド配列は、アルドースレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であり、好ましくは、このポリペプチドが、配列番号29と少なくとも50、60、70、80、90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいはヌクレオチド配列が中程度の条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で配列番号30のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。
【0067】
本発明の宿主細胞において、本明細書において定義されるaraA、araBおよびaraD酵素の発現は、非特異的なアルドースレダクターゼ活性を低下させる遺伝子改変と組み合わせられる。非特異的なアルドースレダクターゼ活性の低下をもたらす遺伝子改変は、上記の宿主細胞において、ペントースリン酸経路のフラックスを増大させる改変のいずれか、および/または特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる改変のいずれかと組み合わせることができるが、これらの組み合わせは本発明に必須ではない。従って、非特異的なアルドースレダクターゼ活性を低下させる付加的な遺伝子改変を含むaraA、araB、およびaraDを発現する宿主細胞は特に本発明に含まれる。
【0068】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、2006年9月27日にCBS Institute(オランダ国)に寄託されたCBS120327である。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおいて、好ましくは唯一の炭素源としてのL−アラビノースおよび任意でキシロースにおいて、より好ましくは嫌気条件下で増殖するために自発性の変異体または誘発された変異体(例えば、放射線または化学物質によって)を選択することによって、L−アラビノース(L−アラビノースを使用する、そして/あるいはそれをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する)および任意でキシロースの利用にさらに適応された改変宿主細胞に関する。変異体の選択は、例えば、カイパー(Kuyper)ら(2004年、FEMS Yeast Res.4:655−664頁)によって記載されるような培養物の連続継代によって、および/または国際公開第06/009434号パンフレットの実施例4に記載されるようなケモスタット培養物における選択圧下での培養によって実施することができる。この選択工程は必要な限り継続させることができる。この選択工程は、好ましくは、1週間から1年までの間実行される。しかしながら、選択工程は必要であればより長い期間実行されてもよい。選択工程の間、細胞は、好ましくは、約20g/lのL−アラビノースおよび/または約20g/lのキシロースの存在下で培養される。この選択工程の最後に得られる細胞は、L−アラビノースおよび/またはキシロースを使用する、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換するその能力に関して改善されることが予想される。これに関連して、「改善された細胞」は、得られた細胞が、それが由来する細胞よりも効率的な方法でL−アラビノースおよび/またはキシロースを使用できることを意味し得る。例えば、得られる細胞は、より良く増殖する(同じ条件下でそれが由来する細胞よりも少なくとも2%の比増殖速度の増大)ことが予想される。好ましくは、増大は、少なくとも4%、6%、8%、10%、15%、20%、25%またはそれ以上である。比増殖速度は、当業者には知られているようにOD660から計算することができる。そのため、OD660を監視することによって比増殖速度を推定することができる。これに関連して、「改善された細胞」は、得られた細胞が、それが由来する細胞よりも効率的な方法でL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換することも意味し得る。例えば、得られる細胞は、より大量のL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)を産生する(同じ条件下でそれが由来する細胞よりも、これらの化合物の少なくとも1つの増大が少なくとも2%である)ことが予想される。好ましくは、増大は少なくとも4%、6%、8%、10%、15%、20%、25%またはそれ以上である。これに関連して、「改善された細胞」は、得られた細胞が、それが由来する細胞よりも効率的な方法でキシロースをキシルロースおよび/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換することも意味し得る。例えば、得られる細胞は、より大量のキシルロースおよび/または所望の発酵産物(エタノールなど)を産生する(同じ条件下でそれが由来する細胞よりも、これらの化合物の少なくとも1つの増大が少なくとも2%である)ことが予想される。好ましくは、増大は、少なくとも4%、6%、8%、10%、15%、20%、25%またはそれ以上である。
【0070】
本発明の好ましい宿主細胞では、変異体の選択によって得られる改変を含む上記の遺伝子改変の少なくとも1つは、炭素源として、好ましくは唯一の炭素源としてのL−アラビノースおよび任意でキシロースにおいて、そして好ましくは嫌気条件下で増殖する能力を宿主細胞に与える。好ましくは、改変宿主細胞は本質的にキシリトールを産生せず、例えば産生されるキシリトールは検出限界よりも低く、あるいは例えばモルベースで消費される炭素の5、2、1、0.5、または0.3%未満である。
【0071】
好ましくは、改変宿主細胞は、好気条件下少なくとも0.001、0.005、0.01、0.03、0.05、0.1、0.2、0.25または0.3h−1の速度で、あるいは適用できる場合には、嫌気条件下少なくとも0.001、0.005、0.01、0.03、0.05、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.15または0.2h−1の速度で、唯一の炭素源としてのL−アラビノースおよび任意でキシロースにおいて増殖する能力を有する。好ましくは、改変宿主細胞は、好気条件下少なくとも0.001、0.005、0.01、0.03、0.05、0.1、0.2、0.25または0.3h−1の速度で、あるいは適用できる場合には、嫌気条件下少なくとも0.001、0.005、0.01、0.03、0.05、0.1、0.12、0.15、または0.2h−1の速度で、唯一の炭素源としてのグルコースおよびL−アラビノースおよび任意でキシロース(1:1重量比)の混合物において増殖する能力を有する。
【0072】
好ましくは、改変宿主細胞は、少なくとも346、350、400、500、600、650、700、750、800、900または1000mg/g細胞/hであるL−アラビノースおよび任意でキシロースの比消費速度を有する。好ましくは、改変宿主細胞は、グルコースにおける発酵産物(エタノールなど)の宿主細胞の収率の少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、85、90、95または98%である、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおける発酵産物(エタノールなど)の収率を有する。より好ましくは、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおける発酵産物(エタノールなど)の改変宿主細胞の収率は、グルコースにおける発酵産物(エタノールなど)の宿主細胞の収率に等しい。同様に、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおける改変宿主細胞のバイオマス収率は、好ましくは、グルコースにおける宿主細胞のバイオマス収率の少なくとも55、60、70、80、85、90、95または98%である。より好ましくは、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおける改変宿主細胞のバイオマス収率は、グルコースにおける宿主細胞のバイオマス収率に等しい。グルコースにおける収率と、L−アラビノースおよび任意でキシロースにおける収率との比較において、両方の収率は好気条件または嫌気条件下で比較されると理解される。
【0073】
より好ましい実施形態では、宿主細胞は、2006年9月27日にCBS Institute(オランダ国)に寄託されたCBS120328、または2007年9月20日にCBS Institute(オランダ国)に寄託されたCBS121879である。
【0074】
好ましい実施形態では、細胞は、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される少なくとも1つの発酵産物を産生する能力を細胞に与える1つまたは複数の酵素を発現する。より好ましい実施形態では、本発明の宿主細胞は、エタノールの産生ための宿主細胞である。もう1つの好ましい実施形態では、本発明は、エタノール以外の発酵産物の産生のための形質転換宿主細胞に関する。このような非エタノール性発酵産物には、原則として、酵母または糸状菌などの真核微生物によって産生可能なバルクまたはファインケミカルが含まれる。このような発酵産物としては、例えば、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンがある。非エタノール性発酵産物の産生のための本発明の好ましい宿主細胞は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性の低下をもたらす遺伝子改変を含有する宿主細胞である。
【0075】
[方法]
さらなる態様では、本発明は、L−アラビノース源および任意でキシロース源を含む炭素源の発酵のために本発明の宿主細胞が使用される発酵方法に関する。好ましくは、L−アラビノース源およびキシロース源は、L−アラビノースおよびキシロースである。さらに、発酵培地中の炭素源は、グルコース源を含むこともできる。L−アラビノース源、キシロース源またはグルコース源は、L−アラビノース、キシロースまたはグルコース自体でもよいし、あるいは例えばリグノセルロース、キシラン、セルロース、デンプン、アラビナンなどのL−アラビノース、キシロースまたはグルコース単位を含む炭水化物オリゴマーまたはポリマーでもよい。このような炭水化物からキシロースまたはグルコース単位を放出するために、適切なカルボヒドラーゼ(キシラナーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼなど)が発酵培地に添加されるか、あるいは改変宿主細胞によって産生され得る。後者の場合、改変宿主細胞は、このようなカルボヒドラーゼを産生および排出するように遺伝子操作され得る。オリゴマーまたはポリマーのグルコース源を用いる付加的な利点は、例えば、律速量のカルボヒドラーゼを用いることによって、発酵中に(より)低い濃度の遊離グルコースを保持できることである。これは、次に、キシロースなどの非グルコース糖の代謝および輸送のために必要とされる系の抑制を防止するであろう。好ましい方法では、改変宿主細胞はL−アラビノース(任意でキシロース)およびグルコースの両方を好ましくは同時に発酵させ、この場合、ジオーキシー増殖を防止するためにグルコース抑制に対して非感受性である改変宿主細胞が使用されるのが好ましい。炭素源としてのL−アラビノース源、任意でキシロース(およびグルコース)源に加えて、発酵培地はさらに、改変宿主細胞の増殖のために必要とされる適切な成分を含み得る。酵母または糸状菌などの微生物の増殖のための発酵培地の組成は当該技術分野においてよく知られている。
【0076】
好ましい方法では、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される発酵産物を産生するための方法が提供され、この方法は、
(a)本明細書において定義される改変宿主細胞によりL−アラビノース源および任意でキシロース源を含有する培地を発酵させるステップであって、宿主細胞がL−アラビノースおよび任意でキシロースを発酵産物に発酵させるステップと、任意で
(b)発酵産物を回収するステップと
を含む。
【0077】
発酵方法は、例えば、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質(例えば、ペニシリンGまたはペニシリンV、およびその発酵誘導体)、および/またはセファロスポリンのような発酵産物を産生するための方法である。発酵方法は、好気性発酵方法でも嫌気性発酵方法でもよい。嫌気性発酵方法は、本明細書では、酸素を存在させずに実行される発酵方法、あるいは実質的に酸素が消費されない、好ましくは5、2.5または1mmol/L/h未満、より好ましくは0mmol/L/hが消費される(すなわち、酸素消費が検出できない)発酵方法、そして有機分子が電子供与体および電子受容体としての機能を果たす発酵方法であると定義される。酸素が存在せずに解糖およびバイオマス形成において産生されるNADHは、酸化的リン酸化によって酸化させることができない。この問題を解決するために、多くの微生物は電子受容体および水素受容体としてピルベートまたはその誘導体の1つを使用し、それによりNADが再生される。従って、好ましい嫌気性発酵方法では、電子(および水素受容体)としてピルベートが使用され、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンなどの発酵産物に還元される。好ましい実施形態では、発酵方法は嫌気性である。嫌気性の方法は好気性の方法よりも安価であり、あまり特別な装置が必要とされないので有利である。さらに、嫌気性の方法は、好気性の方法よりも高い産物収率を与えることが予想される。好気条件下では、通常、バイオマス収率は嫌気条件下よりも高い。結果として、通常好気条件下で予想される産物収率は、嫌気条件下よりも低い。本発明者らによると、本発明の方法は、これまでに開発されたL−アラビノース源を含む培地による最初の嫌気性発酵方法である。
【0078】
もう1つの好ましい実施形態では、発酵方法は酸素制限条件下で行われる。より好ましくは、発酵方法は好気性であり、酸素制限条件下で行われる。酸素制限発酵方法は、気体から液体への酸素の転移によって酸素消費が制限される方法である。酸素制限の程度は、入ってくるガス流の量および組成と、使用される発酵装置の実際の混合/物質移動特性とによって決定される。好ましくは、酸素制限条件下での方法において、酸素消費速度は、少なくとも5.5、より好ましくは少なくとも6、さらにより好ましくは少なくとも7mmol/L/hである。
【0079】
発酵方法は、好ましくは、改変細胞にとって最適な温度で実行される。従って、ほとんどの酵母または真菌細胞のために、発酵方法は、42℃よりも低い、好ましくは38℃よりも低い温度で実施される。酵母または糸状菌宿主細胞のために、発酵方法は、35、33、30または28℃よりも低い温度、そして20、22、または25℃よりも高い温度で実施されるのが好ましい。
【0080】
好ましい方法はエタノールの産生のための方法であり、この方法は、(a)本明細書において定義される改変宿主細胞によりL−アラビノース源および任意でキシロース源を含有する培地を発酵させるステップであって、宿主細胞がL−アラビノースおよび任意でキシロースをエタノールに発酵させるステップと、任意で(b)エタノールを回収するステップとを含む。発酵培地は、グルコース源(これもエタノールに発酵される)を含むこともできる。好ましい実施形態では、エタノールを産生するための発酵方法は嫌気性である。嫌気性は既に、本明細書において前に定義されている。もう1つの好ましい実施形態では、エタノールを産生するための発酵方法は好気性である。もう1つの好ましい実施形態では、エタノールを産生するための発酵方法は酸素制限条件下で行われ、より好ましくは好気性であり、酸素制限条件下で行われる。酸素制限条件は既に、本明細書において前に定義されている。
【0081】
この方法において、エタノールの容積生産性は、好ましくは、1時間に1リットルあたり少なくとも0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5.0または10.0gのエタノールである。この方法においてL−アラビノースおよび任意でキシロース、ならびに/もしくはグルコースにおけるエタノール収率は、好ましくは、少なくとも20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95または98%である。エタノール収率は、本明細書では、理論的な最大収率の百分率であると定義され、グルコースおよびL−アラビノースおよび任意でキシロースについては、グルコースまたはキシロース1gあたり0.51gのエタノールである。もう1つの好ましい実施形態では、本発明は、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される発酵産物を産生するための方法に関する。この方法は、好ましくは、(a)本明細書において上記で定義した改変宿主細胞によりL−アラビノース源および任意でキシロース源を含有する培地を発酵させるステップであって、宿主細胞が、L−アラビノースおよび任意でキシロースを発酵産物に発酵させるステップと、任意で(b)発酵産物を回収するステップとを含む。好ましい方法では、培地はグルコース源も含有する。
【0082】
エタノールの産生をもたらす本発明の発酵方法では、既知のエタノール発酵方法との比較によって、いくつかの利点:
嫌気性の方法が可能であること
酸素制限条件も可能であること
より高いエタノール収率およびエタノール産生速度を得ることができること
使用される菌株がL−アラビノースおよび任意でキシロースを使用可能であり得ることに言及することができる。
【0083】
上記の発酵方法の代わりに、本発明のさらなる態様としてもう1つの発酵方法が提供され、L−アラビノース源、キシロース源およびグルコース源からなる群から選択される(しかし、これらに限定されない)少なくとも2種の炭素源を含む炭素源の発酵のために少なくとも2種の別個の細胞が使用される。この発酵方法において、「少なくとも2種の別個の細胞」は、この方法が好ましくは共発酵方法であることを意味する。1つの好ましい実施形態では、2種の別個の細胞が使用され、一方は前に定義した本発明の細胞であり、L−アラビノースを使用することができ、そして/あるいはそれをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物(エタノールなど)に転換することができ、そして任意でキシロースを使用することができる。他方の細胞は、例えば、国際公開第03/062430号パンフレットおよび/または国際公開第06/009434号パンフレットに定義されるように、キシロースを使用することができ、そして/あるいはそれをエタノールなどの所望の発酵産物に転換することができる菌株である。キシロースを使用することができる細胞は、好ましくは、本明細書において前に定義したように、キシロースをキシルロースに直接異性化する(1段階で)能力を示す菌株である。これらの2種の別個の菌株は、好ましくは、L−アラビノース源、キシロース源および任意でグルコース源の存在下で培養される。少なくとも1種の細胞が存在する少なくとも1種の炭素源を使用することができる、そして/あるいはそれをエタノールなどの所望の発酵産物に転換することができるならば、3種以上の別個の細胞が共培養されてもよく、そして/あるいは3種以上の炭素源が使用されてもよい。「少なくとも1種の炭素源を使用する」という表現は、「L−アラビノースの使用」という表現と同じ意味を有する。「それ(すなわち、炭素源)を所望の発酵産物に転換する」という表現は、「L−アラビノースを所望の発酵産物に転換する」と同じ意味を有する。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明は、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される発酵産物を産生するための方法に関し、この方法は、
(a)本明細書において前に定義された本発明の細胞と、キシロースを使用することができ、そして/あるいはキシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示す細胞とによって、少なくともL−アラビノース源およびキシロース源を含有する培地を発酵させるステップであって、各細胞がL−アラビノースおよび/またはキシロースを発酵産物に発酵させるステップと、任意で
(b)発酵産物を回収するステップと
を含む。
【0085】
上記の発酵方法の全ての好ましい実施形態はこのさらなる発酵方法の好ましい実施形態(発酵産物の同一性、L−アラビノース源およびキシロース源の同一性、発酵条件(好気条件または嫌気条件、酸素制限条件、方法が実行されている温度、エタノールの生産性、エタノールの収率))でもある。
【0086】
[遺伝子改変]
上記の本発明の宿主細胞において酵素を過剰発現させるため、そして宿主細胞、好ましくは酵母をさらに遺伝子改変するために、宿主細胞は、当該技術分野においてよく知られている方法によって、本発明の種々の核酸構築物で形質転換される。このような方法は、例えば、サムブルック(Sambrook)およびラッセル(Russel)(2001年)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、またはF.オースベル(Ausubel)ら編、「Current protocols in molecular biology」、Green Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987年)などの標準的なハンドブックから分かる。真菌宿主細胞の形質転換および遺伝子改変のための方法は、例えば、欧州特許出願公開第A−0635574号明細書、国際公開第98/46772号パンフレット、国際公開第99/60102号パンフレットおよび国際公開第00/37671号パンフレットから分かる。
【0087】
本発明の宿主細胞において酵素の過剰発現のために核酸構築物において使用するためのプロモーターについては上記に記載した。過剰発現のための核酸構築物において、酵素をコードするヌクレオチド酸配列の3’末端は、好ましくは、転写終結配列に作動可能に連結される。好ましくは、終結配列は、例えば選択した酵母種などの選択した宿主細胞において作動可能である。いずれの場合も、ターミネーターの選択は重要ではなく、例えば、酵母遺伝子から選択され得るが、非酵母真核生物遺伝子から選択されてもターミネーターは機能することもある。転写終結配列は、さらに、ポリアデニル化シグナルを含むことが好ましい。好ましい終結配列は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)およびPGI1ターミネーターである。より好ましくは、ADH1およびPGI1ターミネーターはいずれもS.セレビシエ(S.cerevisiae)に由来する(それぞれ、配列番号50および配列番号53)。
【0088】
任意で、選択可能なマーカーが核酸構築物中に存在してもよい。本明細書で使用される場合、「マーカー」という用語は、マーカーを含有する宿主細胞の選択またはスクリーニングを可能にする形質または表現型をコードする遺伝子を指す。マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子であることが可能であり、形質転換されていない細胞の中から形質転換細胞を選択するために適切な抗生物質を使用することができる。しかしながら、好ましくは、栄養要求性マーカー(URA3、TRP1、LEU2)などの非抗生物質耐性マーカーが使用される。好ましい実施形態では、核酸構築物で形質転換された宿主細胞は、マーカー遺伝子を含まない。組換えマーカー遺伝子を含まない微生物宿主細胞を構築するための方法は欧州特許出願公開第A−0635574号明細書に開示されており、双方向性マーカーの使用に基づく。あるいは、緑色蛍光タンパク質、lacZ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−グルクロニダーゼなどのスクリーニング可能なマーカーが本発明の核酸構築物に取り込まれて、形質転換細胞のスクリーニングを可能にしてもよい。
【0089】
本発明の核酸構築物中に存在し得る任意でさらなる要素には、1つまたは複数のリーダー配列、エンハンサー、組込み因子、および/またはレポーター遺伝子、イントロン配列、セントロメア、テロメアおよび/またはマトリックス結合(MAR)配列が含まれるが、これらに限定されない。本発明の核酸構築物は、さらに、ARS配列などの自己複製のための配列を含むことができる。適切なエピソーム核酸構築物は、例えば、酵母2μまたはpKD1(フリールら、1991年、Biotechnology 9:968−975頁)プラスミドに基づくことができる。あるいは、核酸構築物は、好ましくは相同組換えによって組込みのための配列を含むこともできる。従って、このような配列は、宿主細胞のゲノムにおける組込みのための標的部位に対して相同の配列であり得る。本発明の核酸構築物は、核酸/核酸配列の制限および連結などの技術を通常含む本質的に既知の方法で提供することができ、そのために、サムブルックおよびラッセル(2001年)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Pressなどの標準的なハンドブックが参照される。
【0090】
酵母または真菌における不活性化および遺伝子破壊の方法は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、フィンチャム(Fincham)、1989年、Microbiol Rev.53(1):148−70頁および欧州特許出願公開第A−0635574号明細書を参照)。
【0091】
本明細書およびその特許請求の範囲において、「含む」という動詞およびその活用はその非限定的な意味で使用され、その語句に続く項目が含まれるが、明確に言及されていない項目が排除されないことを意味する。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素の言及は、内容が明らかに1つおよびただ1つの要素の存在を必要としない限り、1つよりも多い要素が存在する可能性を排除しない。従って、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0092】
本発明は、本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない以下の実施例によってさらに記載される。
【0093】
[実施例]
[プラスミドおよび菌株の構築]
[菌株]
この研究で記載されるL−アラビノース消費性サッカロミセス・セレビシエ(Sachharomyces cerevisiae)菌株は、菌株RWB220に基づいており、それ自体はRWB217の誘導体である。RWB217は、ペントースリン酸経路における酵素の発現をコードする4つの遺伝子、TAL1、TKL1、RPE1、RKI1が過剰発現されているCEN.PK菌株である(カイパーら、2005年a)。さらにアルドースレダクターゼをコードする遺伝子(GRE3)が欠失されている。菌株RWB217は、キシルロキナーゼ(XKSl)の過剰発現のためのLEU2マーカーを有する単一コピープラスミドと、キシロースイソメラーゼXylAの発現のためのマーカーとしてのURA3を有するエピソームマルチコピープラスミドとの2つのプラスミドも含有する。カイパーら(2005年b)に記載されるキシロースにおける増殖の改善のための選択手順をRWB217に受けさせた。この手順によって、RWB218(カイパーら、2005年b)およびRWB219の2種の純粋な菌株を得た。RWB218とRWB219の間の違いは、選択手順の後、RWB218は炭素源としてグルコースを有するミネラル培地におけるプレーティングおよび再ストリーキングによって得られたが、RWB219のためにはキシロースを使用したことである。
【0094】
両方のプラスミドの損失を促進するために、炭素源としてグルコースを有するYP(YPD)において菌株RWB219を非選択的に増殖させた。YPD上にプレーティングした後、ウラシルおよびロイシンの栄養要求性を見ることによってプラスミド損失について単一のコロニーを試験した。RKI1過剰発現構築物を組み込んだ後でも存在するKanMXカセットを除去するために、両方のプラスミドを失った菌株を、creリコンビナーゼを含有するpSH47で形質転換した(グルデネル(Guldener)ら、1996年)。プラスミドを有するコロニーを、1%のガラクトースを有する酵母ペプトン培地(YP)(10g/lの酵母抽出物および20g/lのペプトン、いずれもBD Difco ベルギーから)中に再懸濁させ、30℃で1時間インキュベートした。約200個の細胞をYPD上にプレーティングした。得られたコロニーをKanMXマーカー(G418耐性)およびpSH47(URA3)の損失について検査した。次に、KanMXマーカーおよびpSH47プラスミドの両方を失った菌株をRWB220と命名した。本特許において試験される菌株を得るために、pRW231およびpRW243(表2)でRWB220を形質転換し、菌株IMS0001を得た。
【0095】
構築中、複合YP:10gl−1の酵母抽出物(BD Difco)、20gl−1のペプトン(BD Difco)、またはプレートの場合は炭素源としてグルコース(2%)が補充された合成培地(MY)(YPDまたはMYD)(ヴァーダイン(Verduyn)ら、1992年)および1.5%の寒天上に菌株を保持した。プラスミドによる形質転換の後、菌株をMYD上にプレーティングした。
【0096】
酵母の形質転換は、ギーツ(Gietz)およびウッズ(Woods)(2002年)に従って行った。エシェリキア・コリ(Escherichia coli)菌株XL−1ブルー(Stratagene、米国カリフォルニア州ラホーヤ)においてプラスミドを増幅した。イノウエ(Inoue)ら(1990年)に従って形質転換を実施した。プラスミドを単離するためにLB(Luria−Bertani)プレートまたは液体TB(Terrific Broth)培地において大腸菌を増殖させた(サムブルックら、1989年)。
【0097】
[プラスミド]
L−アラビノースにおいて増殖するために、酵母は3種の異なる遺伝子、L−アラビノースイソメラーゼ(AraA)、L−リブロキナーゼ(AraB)、およびL−リブロース−5−P4−エピメラーゼ(AraD)を発現する必要がある(ベッカーおよびボーレス、2003年)。この研究では、S.セレビシエ(S.cerevisiae)において、乳酸菌ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)からのAraA、AraB、およびAraDを発現させることが選択された。最終的な目的は、D−キシロースのような他の糖と組み合わせてL−アラビノースを消費することなので、同じプラスミドにおいて、細菌L−アラビノース経路をコードする遺伝子を、D−キシロース消費をコードする遺伝子と組み合わせた。
【0098】
高レベルの発現を得るために、L.プランタルム(L.plantarum)のAraAおよびAraD遺伝子をプラスミドpAKX002(2μXylAを支持する支持プラスミド)内に連結させた。
【0099】
SpeI5’Ptdh3および5’AraAPtdh3を有するTDH3プロモーター(配列番号49)、Ptdh5’AraAおよびTadh3’AraAを有するAraA遺伝子、ならびに3’AraATadh1および3Tadh1−SpeIを有するADH1ターミネーター(配列番号50)の切断バージョンを増幅することによって、AraAカセットを構築した。ゲルから3種の断片を抽出し、ほぼ等モル量で混合した。この混合物において、SpeI−5’Ptdh3および3’Tadh1SpeIオリゴを用いてPCRを実施した。得られたPTDH3−AraA−TADH1カセットをゲル精製し、5’および3’SpeI部位で切断し、次にNheIで切断したpAKX002内に連結させ、プラスミドpRW230を得た。
【0100】
AraD構築物は、まず、オリゴSalI5’Phxt7および5’AraDPhxtを有するHXT7プロモーター(配列番号52)、Phxt5’AraDおよびTpgi3’AraDを有するAraD遺伝子、ならびに3’AraDTpgiおよび3’TpgiSalIオリゴを有するGPI1ターミネーター(配列番号53)領域の切断バージョンを増幅することによって作成した。得られた断片をゲルから抽出し、ほぼ等モル量で混合し、その後、SalI5’Phxt7および3’Tpgi1SalIオリゴを用いてPCRを実施した。得られたPHXT7−AraD−TPGI1カセットをゲル精製し、5’および3’SalI部位で切断し、次に、XhoIで切断したpRW230内に連結させ、プラスミドpRW231(図1)を得た。
【0101】
L−リブロキナーゼの高すぎる発現は増殖に有害なので(ベッカーおよびボーレス、2003年)、組込みプラスミドにおいて、AraB遺伝子を、キシルロキナーゼをコードするXKS1遺伝子と組み合わせた。このために、p415ADHXKSおよびpRS305の両方をPvuIで切断し、p415ADHXKSからのADHXKS含有PvuI断片をpRS305からのベクター骨格に連結させることによって、まずp415ADHXKS(カイパーら、2005年a)をpRW229に変化させ、pRW229を得た。
【0102】
SacI5’Ppgi1および5’AraBPpgi1オリゴを有するPGI1プロモーター、Ppgi5’AraBおよびTadh3’AraBオリゴを有するAraB遺伝子、ならびに3’AraBTadh1および3’Tadh1SacIオリゴを有するADH1ターミネーターを増幅することによって、PGI1プロモーター(配列番号51)とADH1ターミネーター(配列番号50)との間にL.プランタルム(L.plantarum)のAraB遺伝子を含有するカセットを作成した。ゲルから3種の断片を抽出し、ほぼ等モル量で混合した。この混合物において、SacI−5’Ppgi1および3’Tadh1SacIオリゴを用いてPCRを実施した。得られたPPGI1−AraB−TADH1カセットをゲル精製し、5’および3’SacI部位で切断し、次にSacIで切断したpRW229内に連結させ、プラスミドpRW243(図1)を得た。
【0103】
pRW231およびpRW243(表2)で菌株RWB220を形質転換し、菌株IMS0001を得た。
【0104】
制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs、米国マサチューセッツ州ビバリー、およびRoche、スイス国バーゼル)およびDNAリガーゼ(Roche)は、製造業者の仕様書に従って使用した。Qiaprep spin miniprepキット(Qiagen、独国ヒルデン)を用いて、大腸菌からのプラスミドの単離を実施した。1×TBE中の1%アガロース(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)ゲルにおいてDNA断片を分離した(サムブルックら、1989年)。Qiaquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いてゲルからの断片の単離を実行した。AraA、AraBおよびAraDカセット(の要素)の増幅は、製造業者の仕様書に従ってVentDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて行った。テンプレートは、プロモーターおよびターミネーターについてはS.セレビシエ(S.cerevisiae)CEN.PK113−7D、あるいはAra遺伝子についてはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)DSM20205の染色体DNAであった。以下の設定:55℃、60℃または65℃で1分のアニーリング、予想される断片サイズに応じて75℃で1〜3分の延長、そして94℃で1分の変性の30サイクルを有するBiometra TGradient Thermocycler(Biometra、独国ゲッティンゲン)においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。
【0105】
[培養および培地]
振とうフラスコ培養を合成培地において30℃で実施した(ヴァーダインら、1992年)。滅菌の前に、2MのKOHで培地のpHを6.0に調整した。固体合成培地の場合は1.5%の寒天を添加した。500mlの振とうフラスコ内の適切な糖を含有する100mlの培地に凍結貯蔵培養物を播種することによって前培養物を調製した。オービタルシェーカー(200rpm)における30℃でのインキュベーションの後、この培養物を用いて、振とうフラスコ培養物または発酵槽培養物のいずれかに播種した。嫌気性培養のための合成培地に、エタノール中に溶解した0.01gl−1のエルゴステロールおよび0.42gl−1のTween80を補充した(アンドレアセン(Andreasen)およびスティア(Stier)、1953年、アンドレアセンおよびスティア、1954年)。1lの作業容積を有する2lの実験用発酵槽(Applikon、オランダ国スヒーダム)において30℃で嫌気性(連続)バッチ培養を実行した。2MのKOHの自動添加によって培養物のpHをpH5.0に保持した。培養物を800rpmで攪拌し、0.5l分−1の窒素ガスでスパージした(10ppm未満の酸素)。酸素の拡散を最小限にするために、発酵槽にノルプレン(Norprene)管類を備えた(Cole Palmer Instrument company、米国バーノンヒルズ)。酸素電極を用いて溶解した酸素を監視した(Applisens、オランダ国スヒーダム)。約0.05l分−1におけるヘッドスペースの通気によって、同じ実験設定で酸素制限条件を達成した。
【0106】
[乾燥重量の決定]
予め秤量したニトロセルロースフィルタ(細孔サイズ0.45lm、Gelman laboratory、米国アナーバー)によって培養サンプル(10.0ml)をろ過した。培地を除去した後、フィルタを脱塩水で洗浄し、360Wの電子レンジ(Bosch、独国シュトゥットガルト)で20分間乾燥させて秤量した。2通りの決定の変動は1%未満であった。
【0107】
[ガス分析]
排出ガスを冷却器(2℃)で冷却し、Permapure乾燥器タイプMD−110−48P−4(Permapure、米国トムズリバー)で乾燥させた。NGA2000アナライザー(Rosemount Analytical、米国オービル)でO2およびCO2の濃度を決定した。既に記載されたように、排出ガス流の速度および酸素の比消費速度および二酸化炭素産生速度を決定した(バン・ウルク(Van Urk)ら、1988年、ウォイスイス(Weusthuis)ら、1994年)。これらのバイオマス比速度の計算において、培養サンプルを取り除くことにより生じる容積変化を考慮した。
【0108】
[代謝産物の分析]
BioRad HPX 87Hカラム(BioRad、米国ハーキュリーズ)、Waters2410屈折率検出器、およびWaters2487UV検出器が搭載されたWaters Alliance 2690HPLC(Waters、米国ミルフォード)を用いるHPLCによって、グルコース、キシロース、アラビノース、キシリトール、有機酸、グリセロールおよびエタノールを分析した。0.6ml/分の流速で0.5gl−1の硫酸によりカラムを60℃で溶出させた。
【0109】
[キシルロース5−リン酸のためのアッセイ(サルジバル(Zaldivar)J.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.、(2002年)、59:436−442頁)]
キシルロース5−リン酸などの細胞内代謝産物の分析のために、グルコースの枯渇の前(22および26時間の培養)およびグルコースの枯渇の後(42、79および131時間の培養)に、反応器から5mlのブロスを2通り採取した。
【0110】
代謝の停止、代謝産物の固相抽出および分析のための手順は、スミツ(Smits)H.P.ら(Anal.Biochem.、261:36−42頁(1998年))によって詳細に記載されている。しかしながら、細胞抽出物を分析するために使用されるパルスアンペロメトリック検出法と結合した高圧イオン交換クロマトグラフィによる分析を少し修正した。使用した溶液は、溶離液A(75mMのNaOH)および溶離液B(500mMのNaAc)であった。溶離溶液中の炭酸塩の汚染を防止するために、NaOHペレットの代わりに炭酸塩濃度の低い50%のNaOH溶液(Baker Analysed、オランダ国デーベンテール)を使用した。溶離液をヘリウム(He)で30分間脱気してから、He雰囲気下に保持した。グラジエントポンプをプログラムして、以下のグラジエントを生じさせた:100%Aおよび0%B(0分)、70%までのAの直線的減少および30%までのBの直線的増加(0〜30分)、30%までのAの直線的減少および70%までのBの直線的増加(30〜70分)、0%までのAの直線的減少および100%までのBの直線的増加(70〜75分)、0%Aおよび100%B(75〜85分)、100%までのAの直線的増加および0%までのBの直線的減少(85〜95分)。移動相を1ml/分の流速で流した。他の条件は、スミツら(1998年)に従った。
【0111】
[炭素の回収率]
炭素の回収率は、形成された産物中の炭素を消費した糖炭素の全量で除したものとして計算し、48%のバイオマスの炭素含量に基づいた。発酵中のエタノールの蒸発を補正するために、産生したエタノールの量は、測定したCOの累積的産生量から、バイオマス合成により生じたCO産生量(バイオマス1グラムあたり5.85mmolのCO(ヴァーダインら、1990年))と、アセテート形成に関連するCOとを引いた値に等しいと仮定した。
【0112】
[L−アラビノースにおける増殖のための選択]
キシロース(XylAおよびXKS1)およびアラビノース(AraA、AraB、AraD)の両方の代謝のための経路をコードする遺伝子を含有する菌株IMS0001(27/09/06にCBSに寄託されたCBS120327)を上記の手順に従って構築した。キシロースにおいて増殖することができる(データは示されない)が、菌株IMS0001は、2%のL−アラビノースが補充された固体合成培地において増殖することができないようであった。L−アラビノースを増殖のための炭素源として用いることができるIMS0001の変異体を、振とうフラスコにおける連続転移および発酵槽における連続バッチ培養(SBR)によって選択した。
【0113】
連続転移実験のために、0.5%のガラクトースを含有する100mlの合成培地を含有する500mlの振とうフラスコに、菌株IMS0001または基準菌株RWB219のいずれかを播種した。72時間後(660nmにおける光学濃度が3.0)、培養物を用いて、0.1%のガラクトースおよび2%のアラビノースを含有する新しい振とうフラスコに播種した。較正標準としてD−リブロースを用いたHPLC決定に基づいて、ガラクトース/アラビノース混合物を含有する培地における菌株IMS0001の最初の培養中に既に、アラビノースの一部はリブロースに転換され、続いて上澄みに排出されることが決定された。これらのHPLC分析は、BioRad HPX 87Hカラム(BioRad、米国ハーキュリーズ)、Waters2410屈折率検出器、およびWaters2487UV検出器が搭載されたWaters Alliance 2690HPLC(Waters、米国ミルフォード)を用いて実施した。0.6ml/分の流速の0.5gl−1の硫酸を用いて60℃でカラムを溶出させた。基準菌株RWB219とは対照的に、菌株IMS0001の培養物のOD660は、ガラクトースの枯渇後に増大した。約850時間後に菌株IMS0001によるアラビノースにおける増殖が観察された場合(図2)には、この培養物を、2%アラビノースを含有する振とうフラスコに1.7のOD660で連続的に移した。次に、2〜3のOD660で2%のアラビノースを含有する新しい培地に培養物を移した。アラビノースの利用は、時折HPLCによってアラビノース濃度を測定することによって(データは示されない)確認した。これらの培養物の増殖速度は、約3600時間で0から0.15h−1まで上昇した(図3)。
【0114】
酸素制限条件下でのバッチ発酵は、2%のアラビノースが補充された1lの合成培地に、2%のL−アラビノースにおける最大増殖速度が約0.12h−1のアラビノース増殖IMS0001細胞の100ml振とうフラスコ培養物を播種することによって開始した。アラビノースにおける増殖が観察される場合には、窒素ガスでスパージすることによって培養物を嫌気条件にさらした。嫌気性バッチ培養の連続サイクルは、手動または自動のいずれかで20gl−1のアラビノースを有する合成培地で培養物の90%を置換することによって開始した。SBR発酵中のそれぞれのサイクル毎に、COプロファイルから指数関数的な増殖速度を評価した(図4)。13サイクルで、指数関数的な増殖速度は0.025から0.08h−1まで増大した。20サイクルの後、サンプルを採取し、2%のL−アラビノースを補充した固体合成培地にプレーティングし、30℃で数日間インキュベートした。別個のコロニーをL−アラビノースを有する固体合成培地に2回再ストリーキングした。最後に、2%のL−L−アラビノースを有する合成培地を含有する振とうフラスコに単一のコロニーを播種し、30℃で5日間インキュベートした。この培養物は、菌株IMS0002と命名した(27/09/06にCentraal Bureau voor Schimmelculturen(CBS)に寄託されたCBS120328)。培養サンプルを採取し、30%のグリセロールを添加し、サンプルを−80℃で貯蔵した。
【0115】
[混合培養物の発酵]
工業バイオテクノロジーのための所望の原料であるバイオマス加水分解物は、種々の糖からなり、その中でもグルコース、キシロースおよびアラビノースが一般にかなりの画分で存在する複雑な混合物を含有する。グルコースおよびアラビノースだけでなくキシロースのエタノール発酵も達成するために、アラビノース発酵性菌株IMS0002およびキシロース発酵性菌株RWB218の混合培養物を用いて嫌気性バッチ発酵を実施した。30gl−1のD−グルコース、15gl−1のD−キシロース、および15gl−1のL−アラビノースが補充された800mlの合成培地を含有する嫌気性バッチ発酵槽に100mlの菌株IMS0002の前培養物を播種した。10時間後、100mlのRWB218の播種菌を添加した。唯一の菌株IMS0002による混合糖発酵とは対照的に、グルコースの枯渇後にキシロースおよびアラビノースの両方が消費された(図5D)。混合培養物は全ての糖を完全に消費し、80時間以内に564.0±6.3mmoll−1のエタノール(CO産生から計算)が産生され、糖1gあたり0.42gという高い全収率であった。キシリトールは、4.7mmolL−1の濃度までのほんの少量で産生された。
【0116】
[菌株IMS0002の特徴付け]
唯一の炭素源としてのL−アラビノースか、あるいはグルコース、キシロースおよびL−アラビノースの混合物のいずれかを有する合成培地における嫌気性バッチ発酵中に菌株IMS0002の増殖および産物形成を決定した。菌株IMS0002の−80℃の凍結貯蔵物を播種し、30℃で48時間インキュベートすることによって、2%のL−アラビノースを有する100mlの合成培地を含有する振とうフラスコ中で、これらの嫌気性バッチ発酵のための前培養物を調製した。
【0117】
図5Aは、菌株IMS0002が約70時間の嫌気性バッチ発酵中に20gl−1のL−アラビノースをエタノールに発酵できることを示す。唯一の炭素源としてL−アラビノースを有する嫌気条件下での比増殖速度は、0.05±0.001h−1であった。バッチ発酵中のエタノールの蒸発を考慮して、20gl−1のアラビノースからのエタノール収率は、0.43±0.003gg−1であった。蒸発補正をしないと、エタノール収率、はアラビノースの0.35±0.01gg−1であった。アラビノースにおける嫌気性増殖中、アラビニトールの形成は観察されなかった。
【0118】
図5Bには、菌株IMS0002による20gl−1のグルコースおよび20gl−1のL−アラビノースの混合物のエタノール発酵が示される。L−アラビノースの消費はグルコースの枯渇後に始まった。70時間以内に、グルコースおよびL−アラビノースの両方が完全に消費された。糖全体からのエタノール収率は、0.42±0.003gg−1であった。
【0119】
図5Cには、菌株IMS0002による30gl−1のグルコース、15gl−1のD−キシロース、および15gl−1のL−アラビノースの混合物の発酵プロファイルが示される。アラビノースの消費はグルコースの枯渇後に始まった。80時間以内に、グルコースおよびアラビノースの両方が完全に消費された。菌株IMS0002によって100mMのキシロースからわずか20mMしか消費されなかった。さらに、20mMのキシリトールの形成が観察された。明らかに、菌株IMS0002によってキシロースはキシリトールに転換された。従って、糖全体からのエタノール収率は上記の発酵の場合よりも低く、0.38±0.001gg−1であった。グルコースおよびアラビノース全体からのエタノール収率は他の発酵と同様であり、0.43±0.001gg−1であった。
【0120】
表1は、菌株IMS0002の嫌気性バッチ発酵について観察されたアラビノース消費速度およびエタノール産生速度を示す。アラビノースは、バイオマス乾燥重量1gあたり0.23〜0.75gh−1の速度で消費された。アラビノースから産生されるエタノールの速度は、バイオマス乾燥重量1gあたり0.08〜0.31gh−1で変動した。
【0121】
初めは、構築された菌株IMS0001はキシロースを発酵することができた(データは示されない)。我々の予想とは対照的に、選択した菌株IMS0002はキシロースをエタノールに発酵することができなかった(図5C)。キシロースを発酵させる能力を取り戻すために、菌株IMS0002のコロニーを、2%のD−キシロースを有する固体合成培地に移し、嫌気性のビンの中、30℃で25日間インキュベートした。続いて、2%のアラビノースを有する固体合成培地にコロニーを再度移した。30℃でのインキュベーションの4日後、2%のアラビノースを有する合成培地を含有する振とうフラスコにコロニーを移した。30℃で6日間インキュベーションした後、30%のグリセロールを添加し、サンプルを採取し、−80℃で貯蔵した。2%のアラビノースを有する100mlの合成培地を含有する振とうフラスコをこのような凍結貯蔵物で播種し、20gl−1のキシロースおよび20gl−1のアラビノースを有する合成培地における嫌気性バッチ発酵のための前培養物として使用した。図6には、このバッチ発酵の発酵プロファイルが示される。キシロースおよびアラビノースは同時に消費された。アラビノースは70時間以内に完了されたが、キシロースは120時間で完全に消費された。エタノールの蒸発を考慮に入れずに、糖全体から少なくとも250mMのエタノールが産生された。3.2gl−1の最終バイオマス乾燥重量を仮定する(糖1gあたり0.08gのバイオマス収率を仮定)と、累積的なCOの産生(355mmoll−1)から見積もった最終エタノール濃度は約330mmoll−1であり、ペントース糖1gあたり0.41gのエタノール収率に相当した。エタノール、グリセロール、および有機酸に加えて、少量のキシリトールが産生された(約5mM)。
【0122】
[菌株IMS0003の選択]
最初は、構築された菌株IMS001はキシロースを発酵することができた(データは示されない)。我々の予想とは対照的に、選択した菌株IMS0002はキシロースをエタノールに発酵することができなかった(図5C)。キシロースを発酵させる能力を取り戻すために、菌株IMS0002のコロニーを、2%のD−キシロースを有する固体合成培地に移し、嫌気性のビンの中、30℃で25日間インキュベートした。続いて、2%のアラビノースを有する固体合成培地にコロニーを再度移した。30℃でのインキュベーションの4日後、2%のアラビノースを有する合成培地を含有する振とうフラスコにコロニーを移した。30℃で6日間インキュベーションした後、30%のグリセロールを添加し、サンプルを採取し、−80℃で貯蔵した。
【0123】
この凍結貯蔵物から、2%のL−アラビノースを有する固体合成培地にサンプルを広げ、30℃で数日間インキュベートした。L−アラビノースを有する固体合成培地に別個のコロニーを2回再ストリーキングした。最後に、2のL−アラビノースを有する合成培地を含有する振とうフラスコに単一のコロニーを播種し、30℃で4日間インキュベートした。この培養物は、菌株IMS0003と命名した(20/09/07にCBSに寄託されたCBS121879)。培養サンプルを採取し、30%のグリセロールを添加し、サンプルを−80℃で貯蔵した。
【0124】
[菌株IMS0003の特徴付け]
30gl−1のグルコース、15gl−1のD−キシロースおよび15gl−1のL−アラビノースの混合物を有する合成培地における嫌気性バッチ発酵中の菌株IMS0003の増殖および産物形成を決定した。菌株IMS0003の−80℃の凍結貯蔵物を播種し、30℃で48時間インキュベートすることによって、2%のL−アラビノースを有する100mlの合成培地を含有する振とうフラスコ中で、この嫌気性バッチ発酵のための前培養物を調製した。
【0125】
図7には、菌株IMS0003による30gl−1のグルコース、15gl−1のD−キシロース、および15gl−1のL−アラビノースの混合物の発酵プロファイルが示される。アラビノースの消費はグルコースの枯渇後に始まった。70時間以内に、グルコース、キシロースおよびアラビノースが完全に消費された。キシロースおよびアラビノースは同時に消費された。エタノールの蒸発を考慮に入れずに、糖全体から少なくとも406mMのエタノールが産生された。累積的なCO産生から計算される最終エタノール濃度は572mmoll−1であり、糖全体1gあたり0.46gのエタノール収率に相当した。菌株IMS0002によるグルコース、キシロースおよびアラビノースの混合物の発酵(図5C)、あるいは菌株IMS0002およびRWB218の混合培養(図5D)とは対照的に、菌株IMS0003は検出可能な量のキシリトールを産生しなかった。
【0126】
[表]
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
【表5】

【0132】
参考文献リスト
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のヌクレオチド配列:
(a)アラビノースイソメラーゼ(araA)をコードするヌクレオチド配列であって、
i.配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも55%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraAをコードするヌクレオチド配列、
ii.配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
iii.その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
iv.遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(b)L−リブロキナーゼ(araB)をコードするヌクレオチド配列であって、
i.配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも20%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraBをコードするヌクレオチド配列、
ii.配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
iii.その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
iv.遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(c)L−リブロース−5−P−4−エピメラーゼ(araD)をコードするヌクレオチド配列であって、
i.配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むaraDをコードするヌクレオチド配列、
ii.配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列
iii.その相補鎖が(i)または(ii)の配列の核酸分子とハイブリッド形成するヌクレオチド配列、
iv.遺伝暗号の縮重のためにその配列が(iii)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と
を発現することができる真核細胞であって、これらのヌクレオチド配列の発現が、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する能力を細胞に与える真核細胞。
【請求項2】
前記araA、araBおよびaraDヌクレオチド配列のうちの1つ、2つまたは3つが、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、好ましくはラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種から生じる請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記細胞が、酵母細胞、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属、クリベロミセス(Kluyveromyces)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、クロエケラ(Kloeckera)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属またはヤロウイア(Yarrowia)属のうちの1つに属する酵母細胞である請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
前記酵母細胞が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)種、S.ブルデリ(S.bulderi)種、S.バルネッチ(S.barnetti)種、S.エクシグウス(S.exiguus)種、S.ウバラム(S.uvarum)種、S.ディアスタティカス(S.diastaticus)種、K.ラクティス(K.lactis)種、K.マルキシアヌス(K.marxianus)種またはK.フラギリス(K.fragilis)種のうちの1つに属する請求項3に記載の細胞。
【請求項5】
araA、araBおよび/またはaraDをコードする前記ヌクレオチド配列が、L−アラビノースを使用する能力、そして/あるいはL−アラビノースをL−リブロースおよび/またはキシルロース5−リン酸および/または所望の発酵産物に転換する能力を細胞に与えるために細胞内の対応するヌクレオチド配列の十分な発現を引き起こすプロモーターに作動可能に連結された請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記細胞が、キシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示す請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項7】
前記細胞が、ペントースリン酸経路のフラックスを増大させる遺伝子改変を含む請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
前記遺伝子改変が、ペントースリン酸経路の非酸化的部分の少なくとも1つの遺伝子の過剰発現を含む請求項6または7に記載の細胞。
【請求項9】
前記遺伝子が、リブロース−5−リン酸イソメラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼをコードする遺伝子からなる群から選択される請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
前記遺伝子改変が、少なくとも、トランスケトラーゼおよびトランスアルドラーゼをコードする遺伝子の過剰発現を含む請求項8に記載の細胞。
【請求項11】
前記細胞が、さらに、特異的なキシルロースキナーゼ活性を増大させる遺伝子改変を含む請求項8〜10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
前記遺伝子改変が、キシルロースキナーゼをコードする遺伝子の過剰発現を含む請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
過剰発現される前記遺伝子が、前記細胞に内因性である請求項8〜12のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
前記細胞が、細胞内の非特異的なアルドースレダクターゼ活性を低下させる遺伝子改変を含む請求項5〜13のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項15】
前記遺伝子改変が、非特異的なアルドースレダクターゼをコードする遺伝子の発現を低下させるか、あるいは不活性化する請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記遺伝子が、前記遺伝子の少なくとも一部の欠失によって、あるいは前記遺伝子の破壊によって不活性化される請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
非特異的なアルドースレダクターゼをコードする前記細胞内の各遺伝子の発現が、低下または不活性化される請求項14または15に記載の細胞。
【請求項18】
前記発酵産物が、エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される請求項1〜17のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項19】
araAをコードする核酸配列、araBをコードする核酸配列、および/またはaraDをコードする核酸配列(全て、請求項1または2において定義される)を含む核酸構築物。
【請求項20】
エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される発酵産物を産生するための方法であって、
(a)請求項1〜18のいずれか一項に記載の改変された細胞を用いてアラビノース源および任意でキシロース源を含有する培地を発酵させ、前記細胞がアラビノースおよび任意でキシロースを発酵産物に発酵させることと、任意で
(b)前記発酵産物を回収することと
を含む方法。
【請求項21】
エタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリンからなる群から選択される発酵産物を産生するための方法であって、
(a)請求項1〜18のいずれか一項に記載の細胞と、キシロースを使用することができる、そして/あるいはキシロースをキシルロースに直接異性化する能力を示す細胞とを用いて、少なくともL−アラビノース源およびキシロース源を含有する培地を発酵させ、各細胞がL−アラビノースおよび/またはキシロースを発酵産物に発酵させることと、任意で
(b)前記発酵産物を回収することと
を含む方法。
【請求項22】
前記培地が、グルコース源も含有する請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記発酵産物が、エタノールである請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
エタノールの容積生産性が、1時間に1リットルあたり少なくとも0.5gのエタノールである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エタノールの収率が少なくとも30%である請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が嫌気性である請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が好気性であり、好ましくは、酸素制限条件下で実施される請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−505411(P2010−505411A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531330(P2009−531330)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/NL2007/000246
【国際公開番号】WO2008/041840
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】