説明

アリルプロピオン酸系ビタミンCステアレート、その調製方法及びそれらを含有する薬物

本発明はイブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなどのアリルプロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬のビタミンCステアレート系誘導体及びそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩を設計及び合成する。イブプロフェンを代表とする非ステロイド性抗炎症薬は常用の解熱鎮痛薬物の1種類である。抗炎作用以外に、さらに顕著な鎮痛、解熱作用及び非常によい安全性を有し、成年者だけでなく、老人及び赤ちゃん、幼児の服用にも適用する。それをビタミンCステアレート系誘導体及びそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩に転化すれば、その水溶性を改善でき、静脈投与しやすく、効果発現時間を短縮し、生物学的利用能を向上し、胃腸管に対するその刺激作用を減少し、その血液脳関門を通過する能力を増強し、新型の薬物として消炎、解熱、鎮痛、関節炎・月経痛・多発性硬化症・嚢胞性肺線維症・早産児動脈管開存症の治療、脳卒中・虚血性脳障害・アルツハイマー型認知症及び一部のガンの予防及び治療するに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しい非ステロイド性抗炎症薬のエステル系誘導体、その調製方法及びそれらを含有する薬物組成物に係る。具体的に言うと、アリルプロピオン酸系ビタミンCステアレート及びそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩、その調製方法及びそれらを含有する薬物組成物に属する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェンを代表とする非ステロイド性抗炎症薬は、近年来最も成功する解熱鎮痛薬物の1つである。それらは抗炎作用以外に、さらに顕著な鎮痛、解熱作用及び非常によい安全性を有し、成年者だけでなく、老人及び赤ちゃん、幼児の服用にも同様に適用する。国外においてイブプロフェンはすでに解熱鎮痛薬の主な品目になっており、安全性要求が非常に高い非処方薬(一般用医薬品OTC)に汎用されており、パラセタモール、アスピリンよりさらに発展前景を有する1つの品目であることに視されている。
【0003】
但し、この種類の薬物は水溶性が比較的悪く、胃腸管を刺激し、吸収が遅く、生物的利用能が低く、効果発現が比較的遅いなどの不足が普遍に存在しており、児童、老人及び固体製剤を飲むことができない患者に対して多くの不便を与えた。
【0004】
製剤の製品溶解性及び投与経路の問題を改善し、製品の安定性及び生物的利用能を向上し、効果発現を快速化するため、従来の技術において大量の各種の改良技術が開示された。CN99800474.Xは水溶性ケトン基イブプロフェン塩を含有する薬用製剤及びその応用を開示し;CN00807563.8は飲用可能なイブプロフェン薬物懸濁液を開示し;CN02109536.1はイブプロフェンリバビリンエステル及びその調製方法並びに用途を開示し;CN02110476.Xはケトプロフェンとβ-シクロデキストリンまたはその誘導体との包接化合物の調製方法を開示し;CN02115459.7はポリカプロラクトン −イブプロフェン組成物及びその調製方法並びに用途を開示し;CN02821502.8はイブプロフェン塩乳化剤及びそれを含むクリーム剤を開示し;CN03139116.8はイブプロフェン糖類共役物及びその調製方法並びに応用を開示し;CN03144095.9はイブプロフェン及び塩酸プソイドエフェドリンを含有する液体軟カプセルを開示し;CN03145504.2はアルギニン−イブプロフェン混合物の調製方法及び用途を開示し;CN03805774.3は硬カプセルに用いられるイブプロフェン溶液を開示し;CN200410014369.4はイブプロフェンアルギニン塩を調製する1つの新しい方法を開示し;CN200410021005.9はイブプロフェンエステル、薬用可能の塩、及びその調製方法並びにその薬物組成物を開示し;CN200410021590.2はイブプロフェンオイゲノールエステル薬用化合物及びその製剤並びに調製方法を開示し;CN200510024043.4はイブプロフェン糖類誘導体及びその調製方法並びに応用を開示し;CN200510026269.8は2-アリールラクチレート及びナプロキセン、イブプロフェンを調製する方法を開示し;CN200510040242.4はフェノプロフェンカルシウムの清潔生産方法を開示し;CN200510096990.4はデクスイブプロフェンアミノ酸塩の調製方法及び応用を開示し;CN200610038794.6はグルコン酸亜鉛、イブプロフェン及びマレイン酸クロルフェニラミンを含有する軟カプセル組成物を開示し;CN200610044134.9はイブプロフェンを含有する注射剤及びその調製方法を開示し;CN200610044528.4はケトプロフェンを含有する注射剤及びその調製方法を開示し;CN200610090025.0は児童に適用するアルギニンイブプロフェン薬剤を開示し;CN200610129620.0はアルギニンイブプロフェン塩の調製方法を開示し;CN200610130587.3はイブプロフェン口腔用錠剤及びその調製方法を開示し;CN200610170923.7はイブプロフェン輸液製剤及びその調製方法を開示し;CN200680001752.3はイブプロフェンを含む有効成分とするシロップ剤組成物及びその調製方法を開示し;CN200680016935.2は溶解補助されたイブプロフェンを開示し;CN200710004659.4は改善の溶出性能を有するフィッシャーイブプロフェン薬物組成物及びその調製方法を開示し;CN200810000637.5はイブプロフェンアミノ酸塩注射液及びその調製方法を開示し;CN200810102110.3はイブプロフェンアルギニン塩の調製方法を開示し;CN200810105086.9はフィッシャーイブプロフェンのアミノ酸塩及びその薬用組成物を開示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、イブプロフェン系非ステロイド性抗炎症薬をアスコルビン酸と結合して、ビタミンCステアレートに転化し、それを薬用可能な酸またはアルカリと塩を形成することを利用してその溶解特性、効果発現速度、生物的利用能及び血液脳関門を通過する能力を改善する研究は、今まではまだ報告されなかった。
【0006】
本発明は、イブプロフェン系非ステロイド性抗炎症薬のエステル系誘導体新品目、イブプロフェン系非ステロイド性抗炎症薬のビタミンCステアレート、及びそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩を発明する。本発明の化合物は新しい構造を有するため、新規であり、特に溶解性がよく、生物的利用能が高く、効果発現が速く、血液脳関門を通過する能力が強いなどの価値を有する薬物動態学特性、及び、早産児動脈管開存症、脳卒中、虚血性脳障害、アルツハイマー型認知症及び一部のガンの治療の薬物とする薬理学特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より具体的に言うと、本発明は式(I)化合物、その異性体、ラセミ混合物もしくは非鏡像異性体、またはそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩に係る。
【化1】

式(I)中、Rは下記のいずれかを示す。
【化2】

【0008】
薬用可能な酸において、非限定性方法で言及できるのは、リン酸、メタリン酸、トリポリリン酸などである。
【0009】
薬用可能なアルカリにおいて、非限定性方法で言及できるのは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどである。
【0010】
本発明の好ましい化合物は、L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル、L-アスコルビン酸-6-O-(S)-ケトプロフェンエステル、L-アスコルビン酸-6-O-(S)-ナプロキセンエステル、L-アスコルビン酸-6-O-(S)-インドメタシンエステルなどの化合物である。
【0011】
本発明の好ましい化合物の異性体、ラセミ混合物、非鏡像異性体、及びそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩も、本発明を構成する1つの重要な部分である。
【0012】
本発明はさらに式(I)化合物の調製方法に係り、L-アスコルビン酸を基質として、リパーゼの触媒下で、特定の反応システムにおいて、他の基質である式(II)化合物とを、以下の反応方程式に基づいてエステル化反応を行って得られる、
【化3】

【化4】

式(II)中、Rは前記のように定義される。
【0013】
該方法は、(1)リパーゼを触媒として、特定の反応システムにおいて、L-アスコルビン酸の6-ヒドロキシル基を、式(II)化合物とエステル化反応させて、L-アスコルビン酸の6-O-エステルを生成し、原料であるL-アスコルビン酸、式(II)化合物、及び反応生成物L-アスコルビン酸の6-O-酸エステル、並びに水によって構成される平衡混合物を得るステップと、(2)該平衡混合物に対して分離抽出を行い、目的産物、式(I)化合物を得るステップと、によって構成される。
【0014】
我々は、媒体として用いられることができるリパーゼは、Novozym435、膵リパーゼなど市場から入手できる普通のリパーゼ品目であってもよいこと;反応媒体は、アセトン、tert-ブタノール(2-メチル-2-プロパノール)、tert-アミルアルコール(2-メチル-2-ブタノール)、ヘキサン、カプリル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イオン液体、超臨界流体など、リパーゼがそれにおいて該反応を触媒して行わせることができる液体または流体であってもよいこと;エステル化反応は、反応温度−30〜200℃、反応圧力0.0001〜0.5 MPaの条件下で行われるべきであること;分離抽出は、リーチング、結晶化、カラムクロマトグラフィー、溶剤回収及び反応混合物から純物質を得るその他のいずれかの必要のルーチン操作プロセスを含み、温度−30〜200℃、圧力0.0001〜3.5MPaの条件下で行われるべきであること、を発見した。
【0015】
式(I)化合物は、重要な薬物動態学及び薬理学性能を有する。それらの薬用可能な酸またはアルカリの付加塩は良好な水溶解性、非常に優れた生物的利用能及び血液脳関門を通過する能力を有し、効果発現が速く、有効量が低く、中枢神経システム及び脳血管において作用を発揮できる。それらの性能は、それらを医療上に、消炎、解熱、鎮痛、関節炎・月経痛・多発性硬化症・嚢胞性肺線維症・早産児動脈管開存症の治療、脳卒中・虚血性脳障害・アルツハイマー型認知症及び一部のガンの予防及び治療するに用いられることができるようにする。
【0016】
本発明はさらに式(I)化合物、その異性体、またはそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩そのもの;またはそれと、1種または複数種の不活性かつ無毒の賦形剤または担体との組み合わせ、を含む薬物組成物に係る。
【0017】
本発明による薬物組成物のうち、経口投与、非経口投与、経鼻投与、直腸投与、舌下投与、眼への投与又は呼吸を利用する投与に、そして特に錠剤または糖剤、舌下用錠剤、カシェー、パケット(paquet)、ゼラチンカプセル、グロセット(glossett)、口内錠、坐剤、クリーム、軟膏、皮膚用ゲル、注射用または飲用に適した製剤、エアロゾル、点眼薬または点鼻薬に適した薬剤組成物が特に挙げられる。
【0018】
有効用量は患者の年齢及び体重、投与経路、治療適応症の性質及びいずれかの関連治療に基づいて決定され、範囲は0.1mg/d〜800mg/dであり、一回または複数回に分けて投与する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をよりよく理解するため、以下は実施例に合わせて説明を行うが、本発明の内容を限定するではない。
【0020】
[実施例1]L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル
【化5】

【0021】
栓を有する1つの500ml三角フラスコに、0.85gL−アスコルビン酸及び60ml 25%(w/v)の(S)-イブプロフェンtert-アミルアルコール溶液を加え、その後恒温空気浴振動器に入れて加熱を行い、材料を55℃とする。その後、1gのNovozym 435を加え、200rpmの振回し下でシステムを12hrs反応させ、その後1gの分子篩A4を加え、同様な条件下で続けて12rs振回して、反応混合物を得る。
【0022】
熱いうちにろ過を行い、未反応の反応物及び酵素を除去して、澄明なろ液を得る。ろ液を等量の飽和食塩水で4〜5回洗浄し、且つ減圧の条件下で49℃にてtert-アミルアルコールを回転蒸発し、得た固体を量り、10%の量に基づいてシクロヘキサンを加え、45℃の水浴において微熱し、十分に撹拌溶解し、その後4℃の冷蔵庫に入れて1夜放置して、結晶を得る。ケーキをシクロヘキサンで複数回に洗い流し、ケーキを回収し、室温でケーキを乾燥し、標題の化合物を得る。
【0023】
融点:145〜146℃
元素微量分析:
計算値%:C: 62.64; H: 6.63
実測値%:C: 62.68; H: 6.69
【0024】
[実施例2]実施例1の標題化合物の構造確認
構造確認の結果、得た生成物はL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルであった。その特徴の理化及び構造分析パラメータは:
m.p.145〜146℃
[α] = +21.8°(c=0.00232g/ml,CHOH)。0.1003g、50ml(c=0.00611g/ml,CHOH)
IR(KBr,cm−1):3395.52,3222.26,3022.03,2954.93,2876.59,2954.93,2876.59,1761.60,1709.72,1665.92,1665.92,1510.01,1463.13,1382.85
H NMR(400MHz,CDOD):7.20(d,2H),7.11(d,2H),4.39(d,1H),4.12(t,2H),3.99(t,1H),3.75(t,1H),2.44(d,2H),1.82(t,1H),1.47(d,3H),0.88(t,6H)
13CNMR(400MHz,CDOD):(ppm)18.8533(C8),22.8453,22.7906(C+C1’),31.6083(C),46.3302,46.1564(C+C),65.7436(C12),67.7221(C11),76.8915(C13),120.1202(C15),128.4167(C+C5’),130.5936(C+C6’),141.9723,139.4376(C+C),154.1888(C14),173.2871,176.1047(C10+C16
MS(m/z):365.4(M+H),363.3(M−1)。
【化6】

溶解性:メタノール、エタノール、プロパンジオールに溶けやすく、クロロフォルム、シクロヘキサン、水に溶けにくい。
【0025】
[実施例3]L-アスコルビン酸-6-O-イブプロフェンエステル
【化7】

【0026】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、ラセミ体イブプロフェンで(S)-イブプロフェンを代替する。
融点:145〜146℃
元素微量分析:
計算値%:C: 62.64; H: 6.63
実測値%:C: 62.65; H: 6.70
[α]D = 0° (c =0.00611g/ml,CHOH)
【0027】
[実施例4]L-アスコルビン酸-6-O-(S)-ケトプロフェンエステル
【化8】

【0028】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、(S)-ケトプロフェンで(S)−イブプロフェンを代替する。
融点:165〜166℃
元素微量分析:
計算値%:C:64.07;H:4.88
実測値%:C:64.15;H:4.90
[α]D = +20.3° (c =0.00311g/ml,CHOH)
【0029】
[実施例5]L-アスコルビン酸-6-O-ロキソプロフェンエステル
【化9】

【0030】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、ラセミ体ロキソプロフェンで(S)-イブプロフェンを代替する。
融点:168〜169℃
元素微量分析:
計算値%:C: 62.36; H: 5.98
実測値%:C: 62.45; H: 6.13
[α]D = 0° (c =0.00231g/ml,CHOH)
【0031】
[実施例6]L-アスコルビン酸-6-O-プラノプロフェンエステル
【化10】

【0032】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、ラセミ体プラノプロフェンで(S)-イブプロフェンを代替する。
融点:198〜199℃
元素微量分析:
計算値%:C: 61.01; H: 4.63; N: 3.39
実測値%:C: 61.05; H: 4.73; N: 3.41
[α]D = 0° (c =0.00231g/ml,CHOH)
【0033】
[実施例7]L-アスコルビン酸-6-O-(S)-ナプロキセンエステル
【化11】

【0034】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、(S)-ナプロキセンで(S)-イブプロフェンを代替する。
融点:215〜216℃
元素微量分析:
計算値%:C: 61.85; H: 5.15
実測値%:C: 61.87; H: 5.18
[α]D = +18.5° (c =0.00511g/ml,CHOH)
【0035】
[実施例8]L-アスコルビン酸-6-O-イトドレクメチルエステル
【化12】

【0036】
方法は実施例1に用いられた方法と同様であるが、イトドレクメチルで(S)-イブプロフェンを代替する。
融点:218〜219℃
元素微量分析:
計算値%:C: 62.01; H: 6.06; N: 3.14
実測値%:C: 62.07; H: 6.10; N: 3.21
[α]D = 0° (c =0.00201g/ml,CHOH)
【0037】
[実施例9]L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩の調製
連続撹拌する条件下で、0.05mol/LのL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル・メタノール溶液100mlを取って、等容積等モル濃度の水酸化ナトリウム・メタノール溶液と混合する。その後、回転蒸発装置において元の容積の1/3まで減圧濃縮を行い、4℃下で1夜放置し、ろ過を行い、標題の化合物を得る。測定結果、水におけるその溶解度が12.8gである。
【0038】
[実施例10]L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩:動静脈ループ血栓
正常ラット、メス・オスそれぞれ半分で、表1に基づいて群をランダムに分け、連続3日に胃管を用いてL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩水溶液(pH7.4)及び空白対照群(等pH 生理食塩水)を強制投与する。最終回の投与後から1時間経過後に、8%抱水クロラール350mgkg−1を腹腔内注射して麻酔を行い、仰臥位に固定して、右側総頚動脈と左側外頚静脈とを分離する。
【0039】
10cm長さのポリエチレン管の中部に事前に重量を測った1本の7号縫合糸(長さ約8cm)を入れて且つ生理食塩水を充満し、その両端にはヘパリヌス充満のカニューレ(長さ約3cm)が連接され、片端を頚静脈に挿入し、他端を頚動脈に挿入する。動脈クランプを開けた後、体外ループ血流を形成する。15分後血流を中断し、直ちに血栓を取り出して計量を行い、該重量からはぶ糸重量を引くと血栓の湿重量を得る。
【0040】
血栓抑制率:(空白群血栓湿重量−投与群血栓湿重量)/空白群血栓湿重量
統計学処理:実験データはx±sで表示し、一元配置分散分析法で有意差があるか否かを判断する。tは空白対照群とL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩との間のt検定結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から分かるように、L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩の血栓抑制率は、対照群と有意差が認められる(P<0.01)。L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム塩は血栓の形成を抑制し、その抗凝血機能を増強することができる。L-アスコルビン酸-6-O-(S)−イブプロフェンエステルナトリウム塩の血栓抑制率は12.9%に達している。
【0043】
[実施例11]枚毎にL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル300mgを含有する錠剤
1000錠を調製するための処方:
L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル 300g
小麦澱粉 300g
ジャガイモ澱粉 300g
乳糖 1000g
ステアリン酸マグネシウム 50g
二酸化けい素 20g
ヒドロキシプロピルセルロース 30g
【0044】
[実施例12]アンプル毎にL-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム200mgを含有する注射剤
1000アンプルを調製するための処方:
L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステルナトリウム 200g
乳糖 200g


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリルプロピオン酸ビタミンCステアレートにおいて、
式(I)に適合する化合物、その異性体、ラセミ混合物もしくは非鏡像異性体、またはそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩であることを特徴とする、アリルプロピオン酸系ビタミンCステアレート。
【化1】

式(I)中、Rは下記のいずれかを示す。
【化2】

【請求項2】
L-アスコルビン酸-6-O-(S)-イブプロフェンエステル、L-アスコルビン酸-6-O-イブプロフェンエステルのラセミ混合物、またはそれと薬用可能な酸またはアルカリとの付加塩である、請求項1に記載の式(I)化合物。
【請求項3】
L-アスコルビン酸を基質として、リパーゼの触媒下で、特定の反応媒体において、他の基質である式(II)化合物を、以下の反応方程式に基づいてエステル化反応を行って、アリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートを得る方法であって、
【化3】

【化4】

式(II)中、Rは前記のように定義され、
前記方法は、
(1)リパーゼを触媒として、特定の反応媒体において、L-アスコルビン酸の6−ヒドロキシル基を式(II)化合物とエステル化反応させて、L-アスコルビン酸の6-O-酸エステルを生成し、原料であるL-アスコルビン酸、式(II)化合物、及び反応生成物であるL−アスコルビン酸の6−O−酸エステル、並びに水によって構成される平衡混合物を得るステップと、
(2)該平衡混合物に対して分離抽出を行い、目的産物である式(I)化合物を得るステップと、
によって構成されることを特徴とする、請求項1に記載のアリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートの調製方法。
【請求項4】
前記リパーゼは、Novozym435、膵リパーゼなど市場から入手できる普通のリパーゼ品目であることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記反応媒体は、アセトン、tert-ブタノール(2-メチル-2-プロパノール)、tert-アミルアルコール(2-メチル-2-ブタノール)、ヘキサン、カプリル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イオン液体、超臨界流体、またはリパーゼがそれにおいて該反応を触媒して行わせることができるその他のいずれかの液体もしくは流体であることを特徴とする、
請求項3に記載のアリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートの調製方法。
【請求項6】
前記エステル化反応は、反応システムが温度−30〜200℃、反応圧力0.0001〜0.5MPaの条件下で行われ、リパーゼ、触媒基質を利用して化学変化を発生して反応産物を生成するプロセスであることを特徴とする、
請求項3に記載のアリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートの調製方法。
【請求項7】
前記分離抽出は、リーチング、結晶化、カラムクロマトグラフィー、溶剤回収及び反応混合物から純物質を得るその他のいずれかの必要の操作プロセスであることを特徴とする、
請求項3に記載のアリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートの調製方法。
【請求項8】
前記分離抽出は、温度−30〜200℃、圧力0.0001〜3.5MPaの条件下で行われることを特徴とする、
請求項7に記載のアリルプロピオン酸系ビタミンCステアレートの調製方法。
【請求項9】
活性成分としての、請求項1または2に記載の化合物の1種そのもの、または
前記化合物の1種そのものと、一または複数種の不活性かつ無毒の薬用可能な賦形剤または担体との組み合わせ
を含む、薬物組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の非ステロイド性抗炎症薬の少なくとも1種の活性成分を含み、
消炎、解熱、鎮痛、関節炎・月経痛・多発性硬化症・嚢胞性肺線維症・早産児動脈管開存症の治療、脳卒中・虚血性脳障害・アルツハイマー型認知症及び一部のガンの予防及び治療をするために用いられる、請求項9に記載の薬物組成物。


【公表番号】特表2012−526151(P2012−526151A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510092(P2012−510092)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075994
【国際公開番号】WO2010/130139
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511273355)▲無▼▲錫▼宏瑞生物医▲薬▼科技有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】WUXI HONGRUI BIOMEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.100 Jinxi Road, Wuxi, Jiangsu 214122, China
【出願人】(511273366)
【氏名又は名称原語表記】TANG,Ning
【住所又は居所原語表記】14−6−201,Laoqingyuan Wuxi, Jiangsu 214044, China
【Fターム(参考)】