説明

アリールアルケニルエーテルオリゴマー及びポリマー並びに難燃剤の製造におけるそれらの使用

アリールアルケニルエーテルオリゴマーは、ポリハロアルケンのポリヒドロキシアリール化合物との反応により生成される。得られたオリゴマーをハロゲン化することにより、芳香族臭素基及び脂肪族臭素基の両方を有する難燃剤を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールアルケニルエーテルオリゴマー及びポリマー、並びにハロゲン化難燃剤の製造におけるそれらの合成及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デカブロモジフェニルオキシド(デカ)及びデカブロモジフェニルエタン(デカDPE)は、種々のポリマー樹脂系を難燃化するのに広く使用される市販の物質である。これらの物質の構造は以下の通りである。
【化1】

【0003】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及びポリオレフィンなど、難燃化するのが難しいポリマー樹脂にデカ及びデカDPEを使用する利点の1つは、これらの物質が非常に高い(82〜83%)臭素含量を有していることである。これにより、配合物全体におけるより低い添加量が可能になり、それはポリマーの機械的特性に対する難燃剤のいかなる悪影響をも最小化するのに役立つ。
【0004】
デカの商業的成功にも拘わらず、分子量がより高いオリゴマー又はポリマーである、代替のハロゲン化難燃性物質の開発に、かなりの関心が依然として残されている。そのようなオリゴマー又はポリマーは向上した性質、例えば、非ブルーミング性(non−blooming)配合物、又はより良好な機械的特性を提供する。例えば、これらのタイプの物質は、樹脂と難燃剤との間の相溶性に応じてベース樹脂ポリマーマトリックスに絡み合うようになる傾向があり、したがってブルーミングする傾向が少なくなるはずである。これは概して、より本質的に「環境にやさしい」物質を与えるであろう。なぜなら周囲環境に容易に移らないであろうからである。
【0005】
ハロゲン化アリールモノマーのオリゴマー又はポリマーと考えられる多くの市販の難燃性物質がある。これらのモノマーの例としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)及びジブロモスチレン(DBS)があり、これらは以下の構造を有する。
【化2】

【0006】
商業的には、TBBPA及びDBSは一般に、それらのモノマー形態では使用されず、オリゴマー又はポリマーの化学種に変換される。オリゴマーの1つのクラスはTBBPAに基づく臭素化カーボネートオリゴマーである。これらは、Chemtura社から(例としてはGreat Lakes BC−52(商標)、Great Lakes BC−52HP(商標)、及びGreat Lakes BC−58(商標)がある)、及び帝人化成により(FireGuard 7500及びFireGuard 8500)市販されている。これらの製品は、ポリカーボネート及びポリエステルの難燃剤として主に使用されている。
【0007】
TBBPAとエピクロロヒドリンの縮合に基づく臭素化エポキシオリゴマーは市販されており、Dainippon Ink and ChemicalsによりEpiclon(登録商標)シリーズとして、またICL Industrial Products(例としてはF−2016及びF−2100である)及び他の供給会社により販売されている。臭素化エポキシオリゴマーは、単独で、及び他の難燃剤とブレンドされての両方で、種々の熱可塑性樹脂用難燃剤としての使用を見出している。
【0008】
TBBPAに基づく臭素化ポリマー難燃剤の別のクラスは、Teijin FG−3000、TBBPAと1,2−ジブロモエタンのコポリマーにより例示される。このアラルキルエーテルは、ABS及び他のスチレンポリマーに使用を見出している。このポリマー上のアリール又はメトキシなどの代替末端基はまた、米国特許第4,258,175号及び米国特許第5,530,044号に記載の物質により例示されるように知られている。非反応性の末端基が、難燃剤の熱安定性を改良するため特許請求されている。
【0009】
TBBPAはまた、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの反応による、他の二官能エポキシ樹脂化合物との連鎖延長反応によって、多くの他の異なるタイプのエポキシ樹脂コポリマー及び/又はオリゴマーに変換される。これらのタイプのエポキシ樹脂生成物の代表例は、Dow Chemical社による、D.E.R(商標)539であり、或いはHexion社によるEpon(商標)828である。これらの製品は主に、プリント回路基板の製造に使用される。
【0010】
DBSはChemtura社によって自家消費用に作製されており、ポリ(ブロモスチレン)タイプの難燃剤を作製するための、幾つかの異なるポリマー種(Great Lakes PDBS−80(商標)、Great Lakes PBS−64HW(商標)、及びFiremaster CP44−HF(商標)として販売されている。これらの物質はホモポリマー又はコポリマーを表す。更に、類似の臭素化ポリスチレンタイプの難燃剤は、Albemarle Chemical社から市販されている(Saytex(登録商標)HP−3010、Saytex(登録商標)HP−7010、及びPyroChek 68PB)。これら全てのポリマー生成物は、ポリアミド及びポリエステルなどの熱可塑性樹脂を難燃化するのに使用される。
【0011】
本発明者らの米国特許出願公開第2008/0269416号において、本発明者らは、以下の繰返しモノマー単位を含むハロゲン化アリールエーテルオリゴマーに基づく難燃性物質のシリーズを提案している。
【化3】


式中、Rは、水素又はアルキル、特にCからCアルキルであり、Halはハロゲン、通常は臭素であり、mは、少なくとも1であり、nは、0から3であり、xは、少なくとも2、例えば3から100,000である。オリゴマー前駆体は、ブロモフェノールなどのヒドロキシハロアリール物質のオリゴマー化によって生成されるか、又はジブロモベンゼンなどのジハロアリール物質とレゾルシノールなどのジヒドロキシアリール物質との、ウルマン(Ullmann)エーテル合成などのエーテル合成法を使用した反応によって生成される。現在入手可能な他のオリゴマー難燃剤よりも高度にハロゲン化され、かつHIPS及びポリオレフィンなどの樹脂、並びにポリアミド及びポリエステルなどのエンジニアリング熱可塑性樹脂と合わせた場合に優れた機械的特性を提供する物質が、上で得られたオリゴマーを臭素化することで生成する。ハロゲン化がより低い場合であっても、これらのアリールエーテルオリゴマーは許容可能な機械的特性を有する配合物を与えることも分かっている。
【0012】
上記で論じたポリマー難燃性物質又はオリゴマー難燃性物質の全ては、芳香族臭素に基づいており、これは脂肪族臭素物質よりも高い熱安定性を有する。この理由のため、現存するハロゲン化芳香族ポリマー難燃剤の不都合の1つは、比較的高温でのホスト樹脂物質の燃焼性を低下させることのみに有効であることである。ポリオレフィンなど、一定のホスト樹脂物質では、臭素化ポリマーの物理的性質を示すが、従来のハロゲン化芳香族ポリマーよりも低温で有効な難燃メカニズムを有する難燃剤を含有することが望ましいであろう。
【0013】
本発明によれば、ポリハロアルケンをポリヒドロキシアリール化合物、又はより好ましくはハロゲン化ポリヒドロキシアリール化合物、例えばテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)と反応させることにより、アリールアルケニルエーテルオリゴマー/ポリマーを生成できることが今般分かった。このオリゴマーはオレフィン性不飽和を含有し、よってハロゲン化、特に臭素化すると、脂肪族ハロゲン化物基及び芳香族ハロゲン化物基の両方を有するハロゲン化アリールアルキルエーテルオリゴマー/ポリマーを生成する。その結果、このハロゲン化生成物は、従来のハロゲン化芳香族ポリマーの好都合な物理的特性及び高温難燃特性とハロゲン化脂肪族分子の低温難燃特性とを併せ持つ。
【0014】
米国特許第4,079,034号は、芳香族ジカルボン酸及び次式を有するハロゲン化ビスフェノールの芳香族ポリエステルを含む難燃性添加物を開示している。
【化4】


式中、Eは、二価のアルキレン、ハロアルキレン、シクロアルキレン、ハロシクロアルキレン、アリーレン、ハロアリーレン、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−SO−、−CO−、
【化5】


又はRN<であり、Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、ハロアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアリールアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、R及びRは、独立に、水素、R及びORから選択され、mは、0からE上の置き換え可能な水素原子の数までの整数であり、a、b、c及びdは、0から4であり、a+bは1から4であり、c+dは1から4である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本発明は、ポリハロアルケンのポリヒドロキシアリール化合物との反応により生成されたアリールアルケニルエーテルオリゴマーである。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、ポリハロアルケンとポリヒドロキシアリール化合物の反応生成物をハロゲン化することによって生成された難燃性ハロゲン化アリールエーテルオリゴマーである。
【0017】
好都合には、ポリヒドロキシアリール化合物は、ハロゲン化、好ましくは臭素化されており、一般にジヒドロキシアリール化合物である。一実施形態では、ポリヒドロキシアリール化合物は、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化ビスフェノール化合物である。
【0018】
好都合には、ポリハロアルケンは1,4−ジブロモ−2−ブテン又は1,4−ジクロロ−2−ブテンである。
【0019】
なおさらなる態様では、本発明は、次式を有するアリールアルケニルエーテルオリゴマーである。
【化6】


式中、各Halは、存在する場合、ハロゲン化物基であり、
は、存在する場合、O、S、SO、単結合及びアルキリデン基から選択され、
各A及びAは、CからCアルキル基、特にCからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、0から4であり、
xは、0又は1である。
【0020】
なおさらなる態様では、本発明は、次式を有する難燃性ハロゲン化アリールアルキルエーテルオリゴマーである。
【化7】


式中、各Halはハロゲン化物基であり、
は、存在する場合、O、S、SO、単結合及びアルキリデン基から選択され、
各A及びAは、CからCアルキル基、特にCからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、1から4であり、
xは、0又は1である。
【0021】
好都合には、各Halは臭化物基である。
【0022】
好都合には、xは1であり、Aは約1から約6個の炭素原子を有するアルキリデン基であり、通常はイソプロピリデン基である。
【0023】
一実施形態では、オリゴマーはブロモフェノール基で終端している(末端基がブロモフェノール基である)。
【0024】
別の態様では、本発明は、ベース樹脂及び本明細書で記載した通りの難燃性ハロゲン化アリールアルキルエーテルオリゴマーを含む難燃性樹脂組成物である。
【0025】
好都合には、ベース樹脂は、ポリオレフィン及びポリスチレンの少なくとも1つ、特に耐衝撃性ポリスチレンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
用語「オリゴマー」及び「ポリマー」は、本明細書で交換可能に使用されて、繰返し単位の数に関係なく、モノマー(単数又は複数)から誘導された前記繰返し単位を持つように、1種又は複数の前記モノマーのオリゴマー化によって形成された化合物を意味する。本難燃剤を製造するのに使用するアリールアルケニルエーテル前駆体はオリゴマー化プロセスによって生成されるので、前駆体及びハロゲン化生成物は一般に分子量の分布を有することになろう。特に、このオリゴマーは一般に、平均少なくとも3個の繰返し単位及び通常少なくとも5個の繰返し単位を有し、ハロゲン化オリゴマーの平均分子量は最大100,000ダルトンである。
【0027】
本明細書で記載したのは、ポリハロアルケンのポリヒドロキシアリール化合物との反応により生成されたアリールアルケニルエーテルオリゴマーである。本明細書で記載したのはまた、得られたアリールアルケニルエーテルオリゴマーをハロゲン化することにより、難燃剤として有用なハロゲン化アリールエーテルオリゴマーを生成することである。
【0028】
アリールアルケニルエーテルオリゴマー前駆体の生成に使用するのに適切なポリハロアルケンは、約2から約10個の炭素原子を有するジハロアルケンであり、特に次式のα,ω−ジハロアルケンである。
【化8】


式中、各Halは、ハロゲン化物基、例えば臭化物基又は塩化物基であり、x及びyのそれぞれは0から6の間の整数である。一般に、x及びyのそれぞれは0から2の間の整数である。一実施形態では、ジハロアルケンは、1,4−ジブロモ−2−ブテン又は1,4−ジクロロ−2−ブテンを含む。一定の場合、ジハロアルケンは、共役又は非共役の多数の二重結合を含有してよい。これはブロモ−アリール/ブロモ−アルキル比の選択を助け、よって最終的なハロゲン化アリールエーテルオリゴマーの難燃特性の制御を助ける。
【0029】
アリールアルケニルエーテルオリゴマー前駆体の生成に使用するのに適切なポリヒドロキシアリール化合物は、次式の置換された又は置換されていないジヒドロキシアリール化合物である。
【化9】


式中、各Halは、存在する場合、ハロゲン化物基、例えば臭化物基又は塩化物基、好ましくは臭化物基であり、nは0から4であり、xは0又は1であり、Aは、存在する場合、O、S、SO、単結合、及び好ましくはイソプロピリデン基である通常約1から約6個の炭素原子を有するアルキリデン基から選択される。一実施形態では、xは1であり、ポリヒドロキシアリール化合物はハロゲン置換されたビスフェノール化合物、例えばテトラブロモビスフェノールAである。
【0030】
本難燃剤を製造するために、上記のポリハロアルケン及びポリヒドロキシアリール化合物はまず、Williamsonエーテル合成を使用して一緒に反応させる。これは通常、フェノール物質を塩基と、次いでジハロオレフィンを加えて、通例、反応温度100℃未満で反応させることを含む。テトラブロモビスフェノールA及び1,4−ジブロモ−2−ブテンに基づくこの反応の説明をスキーム(I)に示し、ここで、得られたオリゴマーは続いて臭素と反応させる。
スキーム(I) 反応の説明
【化10】

【0031】
好都合には、反応は、水性有機エマルジョン重合プロセスとして、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩などの相間移動触媒を使用し、トルエン−水などの多相系中で実施することができる。或いは、反応は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの単相溶媒中で実施することができる。
【0032】
エーテル合成反応で使用した塩基は、ポリヒドロキシアリール化合物上の酸性フェノール基(即ち、ヒドロキシル基)からプロトンを除くことができる。除かれるプロトンは、塩基からのカチオン、特に一価のカチオンで置換されて塩を形成し得る。適切な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウムがある。ポリヒドロキシアリール化合物は、塩基を加えることによって塩に変換される。塩は、一塩(即ち、1つの末端一価カチオン及び1つの末端ヒドロキシル基を有する化合物)又は二塩(即ち、2つの末端一価カチオンを有し、末端ヒドロキシル基を有さない化合物)又は一塩と二塩の混合物であり得る。
【0033】
エーテル合成反応の生成物は、ポリハロアルケン出発物質のアルケン部分由来のオレフィン性不飽和を含有するアリールアルケニルエーテルオリゴマーである。ポリハロアルケンとの反応に使用されるポリヒドロキシアリール化合物に応じて、生成物はまた、芳香族不飽和を含有し得る。通常、生成物は次式を有する。
【化11】


式中、各Halは、存在する場合、ハロゲン化物基、好ましくは臭化物基であり、
は、存在する場合、O、S、SO、単結合、及びアルキリデン基、特に約1から約6個の炭素原子を有するアルキリデン基、例えばイソプロピリデン基から選択され、
各A及びAは、CからCアルキル基、特にCからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、0から4であり、
xは、0又は1である。
【0034】
所望の難燃剤を製造するために、生成物は次いで、ハロゲンがオレフィン基と反応して脂肪族ハロゲン化物置換基を生成する、好ましくはまた、任意の芳香族不飽和基と反応していくつかの又は追加の芳香族ハロゲン化物置換基を生成するような条件下で、ハロゲン化、通常は臭素化される。
【0035】
アリールアルケニルエーテルオリゴマーのハロゲン化は一般に、臭素をオリゴマーに加えることによって達成して(好都合にはオリゴマーは有機溶媒に溶解している)、反応組成物を形成し、次いでそれを約20℃から約80℃の間の温度で反応させて、所望の臭素化アリールエーテルオリゴマー、溶媒及び未反応臭素を含有するハロゲン化生成物を形成する。反応は、通常約2から約4時間後、臭素取込みが停止するときに、又はアリールが同時に臭素化する場合、反応組成物からの臭化水素の放出が停止するときに完了する。放出された任意の臭化水素は、スクラバーで除去される。
【0036】
一般に、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を反応組成物に加えて、特にアリール臭素化も所望される場合、ハロゲン化反応を促進させる。これは、臭素を加える前に触媒をオリゴマー前駆体溶液に加えることで、触媒を臭素と合わせ、この合わせたものをオリゴマー前駆体溶液に加えることにより、又は、ハロゲン化反応の始め若しくは反応の途中、例えば臭化水素の初期の遊離速度が低下し始めるときのいずれかにて、触媒を反応組成物に加えることにより、達成することができる。
【0037】
ハロゲン化反応が完了したら、任意の未反応臭素を反応生成物から、一般に蒸留により、又は還元剤での中和により除去する。適切な還元剤としては、ヒドラジン水溶液及び亜硫酸水素ナトリウム水溶液が含まれる。
【0038】
未反応臭素を除去した後、メタノール又はイソプロパノールなどの非溶媒に沈殿させることによって反応生成物を単離して、ハロゲン化アリールアルキルエーテルオリゴマー混合物のスラリーを生成する。或いは、反応生成物を温水で処理して溶媒をフラッシュオフし、スラリー水溶液として生成物を残してもよい。次いで、ハロゲン化アリールエーテルオリゴマーを、スラリーから濾過及び乾燥によって回収することができる。通常、得られた生成物は次式を有する。
【化12】


式中、各Halはハロゲン化物基であり、
は、存在する場合、O、S、SO、単結合及びアルキリデン基、特に約1から約6個の炭素原子を有するアルキリデン基、例えばイソプロピリデン基から選択され、
各A及びAは、CからCアルキル基、特にCからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、1から4であり、
xは、0又は1である。
【0039】
一実施形態では、オリゴマーは、フェノール、モノブロモフェノール、ジブロモフェノール及び/又はトリブロモフェノールなどの単官能物質を加えることにより、フェノール、又はより好ましくはブロモフェノール基で終端している。この物質はオリゴマー連鎖反応を終結させ、分子量を制御する1つの手段を提供する。
【0040】
得られたハロゲン化アリールエーテルオリゴマーは、任意の可燃性高分子物質の難燃剤として使用できるが、250℃未満など、比較的低温で有効な難燃特性を必要とするポリマー樹脂系で特に有用である。適切な樹脂系の例としては、ポリスチレン、例えば耐衝撃性ポリスチレン、発泡及び押出しポリスチレン、ポリオレフィン、オレフィン系コポリマー、例えばABS樹脂及びポリプロピレンコポリマー、並びに、当業者により難燃性が必要とされると理解されている他の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂がある。特に、好ましい樹脂系としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、及び/又は耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)がある。このようなポリマーでは、Underwriters Laboratoriesの燃焼性試験プロトコールにかけた場合にV−0分類に入るのに必要なポリマー配合物中のハロゲン化オリゴマーの量は一般に、以下の範囲内である。
【表1】

【0041】
本ハロゲン化アリールエーテルオリゴマーを難燃剤として含有するポリマー配合物の典型的な用途としては、自動車成形品、接着剤及びシーラント、織地裏コーティング、電線及びケーブル外被、並びに電気及び電子ハウジング、コンポーネント及びコネクターがある。建築及び建設の領域では、本難燃剤の典型的な使用としては、ポリスチレン断熱板、自己消火ポリフィルム、ワイヤ及びケーブルのワイヤ外被、カーペット及び壁処理を含む織地の裏コーティング、木材及び他の天然繊維充填構造コンポーネント、ルーフィング膜を含むルーフィング材料、ルーフィング複合材料、並びに複合材料の構築に使用される接着剤がある。一般の消費者製品において、本難燃剤は、燃焼性要件が求められる有人及び無人の両方の電気器具の電気器具部品、ハウジング及びコンポーネントのための配合物に使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、以下の実施例を参照して本発明をさらに具体的に記載する。
【0043】
実施例では、熱重量分析(TGA)は、試料10mgについて窒素下において10℃/分の加熱速度でTA instrumentsのTGA Q500型装置を使用して実施した。分子量の決定は、ポリスチレン標準に対してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、Viscotek屈折率検出器を有するWaters 2690 HPLCシステムを使用して実施した。報告した結果は、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(pd)である。
【0044】
(例1)
TBBPAと1,4−ジブロモ−2−ブテン(DBB)のオリゴマー
冷却器、機械撹拌、温度プローブ及び加熱マントルを備えた12Lフラスコに、1.7Lの脱イオン化された(DI)HO、201.6gのNaOH(5.04mol)、及び560.0gのテトラブロモビスフェノールA(TBBPA、1.03mol)を窒素下で装入した。得られた反応混合物を38℃まで加熱した。別々に、215.6gのtrans−1,4−ジブロモ−2−ブテン(DBB、1.01mol)を910mLのトルエンに溶解し、濾過し、窒素下で維持した。次に、980mLのトルエンを反応混合物に加え、混合物を50℃まで加熱後、17.4gのTBAHS(テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩97%)を加えた。次いでDBB/トルエン溶液を反応混合物に添加漏斗を介して21分間かけて加えた。得られたクリーム色のスラリーを70℃まで加熱し、激しく撹拌しながら4時間維持し、次いで周囲温度まで冷却した。反応混合物をメタノールに沈殿させ、固体を濾過し、メタノールで洗浄した。次いで生成物固体を水でスラリー化し、濃HClを加えて、pHを6〜7に調整した。固体を塩化メチレンに溶解し、メタノールに再沈殿させ、濾過し、洗浄し、乾燥して(70℃)、563.4gの白色の固体生成物(収率91.8%)を得た。分析:有機臭素52.4%、融点174℃、5%TGA235℃(窒素)、Tg71℃(DSC)、GPC Mw=12,600、pd=2.24、構造と一致したNMR。
【0045】
(例2)
TBBPA−DBBオリゴマーの臭素化
冷却器、機械撹拌、温度プローブ及び加熱マントルを備えた12Lフラスコに、5.6LのCHCl及び560.0gのTBBPA/DBBオリゴマーを窒素下で装入した。混合物を35℃まで加熱し、73.9gのエタノールを加えた。臭素(180.2g)を添加漏斗を介して6分間かけて加え、混合物を35℃で4時間撹拌した。混合物を20分間わずかに冷却させ、35%ヒドラジン水溶液を加えて残りの臭素をクエンチし、オフホワイト色の曇った混合物を得、これを30分間撹拌した。反応混合物をメタノールに沈殿させ、得られたスラリーを濾過し、追加のメタノール及び水で洗浄した。固体を塩化メチレンに溶解し、メタノールに再沈殿させ、濾過し、洗浄し、乾燥して、699.5g(収率98.4%)の白色の固体生成物を得た。分析:有機臭素61.2%、融点188℃、5%TGA290℃(窒素)、Tg125℃(DSC)、GPC Mw=9,490、pd=3.06、構造と一致したNMR。
【0046】
(例3)
TBBPA−DBBのトリブロモフェノール末端キャップされたオリゴマー
冷却器、機械撹拌、温度プローブ及び加熱マントルを備えた500mLフラスコに、92mLのDI HO、11.0gのNaOH、30.0gのTBBPA及び7.3gの2,4,6−トリブロモフェノール(TBP)を装入した。得られた混合物を50℃まで加熱し、52mLのトルエン及び0.936gのTBAHSを加えた。DBB(14.2g)を59mLのトルエンに溶解し、濾過し、添加漏斗を介して反応混合物に加えた。スラリーを70℃まで加熱し、撹拌しながら4時間維持した。反応混合物をわずかに冷却し、メタノールにゆっくりと注いで、生成物を沈殿させた。反応混合物を濾過し、固体をメタノールで洗浄した。次いで生成物固体を水でスラリー化し、濃HClを加えて、pHを6〜7に調整した。固体を塩化メチレンに溶解し、メタノールに再沈殿させ、濾過し、洗浄し、乾燥して(55℃)、39.2gの白色の固体生成物を得た。分析:有機臭素54.7%、融点179℃、5%TGA211℃(窒素)、Tg50℃(DSC)、GPC Mw=5,010、pd=2.66、構造と一致したNMR。
【0047】
(例4)
低分子量TBBPA−DBBオリゴマー
この反応は、DBB/TBBPAのモル比を1:1から1:1.5(即ち、DBBが過剰に使用された)に変えたことが例1とは異なる。水酸化ナトリウムの量も、5:1のNaOH:TBBPAから2.9:1のモル比に減少させた。
【0048】
冷却器、機械撹拌、温度プローブ及び加熱マントルを備えた500mLフラスコに、53mLのDI HO、6.4gのNaOH及び30.0gのTBBPAを装入した。混合物を50℃まで加熱し、50mLのトルエン及び0.936gのTBAHSを加えた。DBB(17.7g)を75mLのトルエンに溶解し、濾過し、添加漏斗を介して反応混合物に加えた。スラリーを55℃で撹拌しながら3.5時間保持した。反応混合物をわずかに冷却し、迅速に撹拌しながらメタノールにゆっくりと注いで、生成物を沈殿させた。例1で記載の通りに生成物を単離し、50℃で乾燥して、33.4gの白色の固体生成物を得た。分析:有機臭素53.4%、融点168℃、5%TGA224℃(窒素)、Tg53.5℃(DSC)、GPC Mw=3,390、pd=1.87、構造と一致したNMR。
【0049】
前の実施例及び行った他の同様の反応に基づいて、生成物分子量に影響を与える変数を表1に要約する。
【表2】

【0050】
以下の実施例では、反応は単相溶媒系で行った。
【0051】
(例5)
TBBPAと1,4−ジブロモ−2−メチル−2−ブテン(DBMB)のオリゴマー
TBBPA(228.3g、0.419mol)、炭酸ナトリウム(132.5g、1.25mol)、及び1.5LのDMFを反応器に装入した。DBMB(95.7g、0.419mol)を撹拌しながら反応器に装入し、混合物を70℃で5時間加熱した。反応混合物を3Lの水に注いだ。混合物を濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した。ケーキを100℃で3時間乾燥して、259.0gの白色の粉末を得た。粉末を1,380gの塩化メチレンに溶解し、メタノールに再沈殿させて、生成物を得た。生成物を濾過し、乾燥して、215.6gの白色の粉末を得た、分析:有機臭素51.7%、5%TGA240℃(窒素)、GPC Mw=46,800、pd13.5。
【0052】
(例6)
TBBPA−DBMBオリゴマーの臭素化
例5のオリゴマー(100g)を1Lの塩化メチレンに溶解した。臭素(26.2g、0.164mol)を40分間かけて撹拌溶液に室温で加えた。塩化メチレン反応混合物を3.5Lのイソプロピルアルコールに加えることにより生成物を得た。生成物を濾過し、80℃で5時間乾燥して、131.1gの黄褐色の粉末を得た。分析:有機臭素58.9%、5%TGA185℃(窒素)、加水分解性臭化物:11.0%。
【0053】
(例7)
HIPS樹脂中の例2の臭素化TBBPA−DBBオリゴマーのコンパウンディング
例2で記載した通りに調製した材料を耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂配合物と、バレル温度195〜205℃で操作する25mm二軸押出機を使用してコンパウンディング(compounding)し、コンパウンディングした材料を210℃の試験棒に射出成形した。同様の試験棒を標準のデカブロモジフェニルオキシド(DE−83R)難燃性配合物を使用して製造した。成形した試験体を表2に示した通りの種々の機械的特性を標準のASTM法によって試験した。これらの結果から、衝撃強さ及び引張伸びを除いて、DE−83R配合物と比較して、例2の臭素化オリゴマーで匹敵する機械的特性が得られることを示すことができる。これらのデータはまた、このオリゴマーが難燃性物質として機能し得ることを証明している。
【表3】

【0054】
特定の実施形態を参照して本発明を記載及び説明してきたが、本明細書で必ずしも説明していない変形に本発明が適することは当業者には分かるであろう。よって、この理由により、本発明の真の範囲を決定する目的のためには添付の特許請求の範囲のみを参照するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリハロアルケンのポリヒドロキシアリール化合物との反応により生成されたアリールアルケニルエーテルオリゴマー。
【請求項2】
ポリヒドロキシアリール化合物がジヒドロキシアリール化合物であり、好ましくはハロゲン化されており、より好ましくはハロゲン化ビスフェノール化合物であり、最も好ましくはテトラブロモビスフェノールAである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項3】
ポリハロアルケンが、1,4−ジブロモ−2−ブテン又は1,4−ジクロロ−2−ブテンを含む、請求項1又は請求項2に記載のオリゴマー。
【請求項4】
次式を有するアリールアルケニルエーテルオリゴマー。
【化1】


[式中、各Halは、存在する場合、ハロゲン化物基、好ましくは臭化物基であり、
は、存在する場合、O、S、SO、単結合及びアルキリデン基から選択され、
各A及びAはCからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、0から4、好ましくは少なくとも1であり、
xは、0又は1である。]
【請求項5】
xが1であり、Aが、約1から約6個の炭素原子を有するアルキリデン基、好ましくはイソプロピリデン基である、請求項4に記載のオリゴマー。
【請求項6】
請求項7に記載の、末端基がブロモフェノール基であるオリゴマー。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のオリゴマーの反応生成物をハロゲン化することによって生成された、難燃性ハロゲン化アリールエーテルオリゴマー。
【請求項8】
請求項7に記載の、次式を有する難燃性ハロゲン化アリールエーテルオリゴマー。
【化2】


[式中、各Halは、ハロゲン化物基、好ましくは臭化物基であり、
は、O、S、SO、単結合及びアルキリデン基から選択され、
各A及びAは、CからCアルキル基であり、
各R及びRは、独立に、水素及びCからCアルキル基から選択され、
mは、2から約100であり、
nは、1から4であり、
xは、0又は1である。]
【請求項9】
ベース樹脂、及び請求項7又は請求項8に記載の難燃性ハロゲン化アリールエーテルオリゴマーを含む、難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
ベース樹脂が、ポリオレフィン及びポリスチレンの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の樹脂組成物。

【公表番号】特表2012−524836(P2012−524836A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507480(P2012−507480)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038618
【国際公開番号】WO2010/147946
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】