説明

アルカンおよび/またはアルケンの有益な酸素化物への選択的酸化

本発明は触媒とその製造方法、さらにメタクロレインとメタクリル酸の少なくとも1つ以上の生成にその触媒を利用する製造方法に関する。その製造方法において、例えば、イソブタン、イソブチレンまたはその混合物を空気や酸素の存在下で蒸気相触媒酸化する。イソブタンだけを空気や酸素の存在下、蒸気相触媒酸化する場合、生成物は、少なくともイソブチレン、メタクロレイン、およびメタクリル酸のうちの一つ以上となる。触媒は、式AaBbXxYyZzOoで表される化合物からなり、このうちAは、Mo、WとZrから選択される1つ以上の元素であり、BはBi、Sb、SeとTeから選択される1つ以上の元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Nb、Sn、WとZnから選択される1つ以上の元素であり、Yは、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、Ti、VとZrから選択される1つまたは複数の元素であり、Zは該Xの群またはYの群、またはAs、Ba、Pd、PtとSrまたはその混合物から選択される1つまたは複数の元素であり、また、a=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5および0<z<0.2であり、oは、他の元素の酸化状態によって決定される化合物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年1月19日付け出願の米国仮特許出願第60/885767号の利益を主張するものであり、その全内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(連邦支援の研究または開発に関する声明)
本発明は、米国エネルギー省から受けた基金(助成金第DE-FG02-02ER83420号)を使用してなされた。よって、米国政府も本発明について一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、炭素数が6から2のアルカンかアルケン、またはアルカンとアルケンの混合物を、一種以上の触媒の存在下、空気や酸素を酸化剤として蒸気相酸化し、不飽和酸素化物を製造するための触媒反応法に関する。そのアルカンまたはアルケンは、直鎖構造でも分岐鎖構造でもよい。得られる酸素化物は炭素数がC6からC2の不飽和カルボン酸、アルデヒド、またはその混合物でもあり得る。本発明は、また、上記の、不飽和酸素化物の製造に役立つ単数または複数の触媒の製造工程に関するものである。本発明は、さらに、単数または複数の触媒自体に関するものである。
【0004】
特に、本発明は空気や酸素を酸化剤として使用する触媒酸化反応法で、イソブタンかつ/またはイソブチレンをそれに対応する不飽和アルデヒドかつ/またはカルボン酸、例えば、メタクロレインかつ/またはメタクリル酸に効果的かつ効率的に転化する。アルカンだけ、あるいは、特にイソブタンだけを本発明の触媒酸化反応に使用する場合は、同じ触媒酸化工程の中で、アルケン、または、特にイソブチレンも他の酸素化物と一緒に生成される。
【背景技術】
【0005】
アクロレイン、アクリル酸、メタクロレインやメタクリル酸のような不飽和アルデヒドおよびカルボン酸は、実用性の高いポリマー製品を製造するために同種のモノマー同士の重合や、異種のモノマーとの重合に適した化学構造の組立てブロックのようなものである。これらの不飽和アルデヒドや酸は、それに対応するアルキルアクリル酸やアルキルメタクリル酸のようなエステルを製造するための原材料としても利用され、さらに、プラスチックシートや部品、塗料やその他の皮膜材、接着剤、コークス、シーラント、プラスチック助剤、洗剤など幅広いポリマー製品の製造に役立つ。
【0006】
具体的には、メタクリル酸やメタクリル酸メチルの製造には、ACH法として知られる3段階反応が使用されている。ACH法は1930年代に商用化した。今でも、ACH法は、メタクリル酸かつ/またはその誘導体、およびメタクリル酸メチルの工業生産に、世界中で最もよく使用されている製造方法である。ACH法の第1段階は、原料としてアセトンとシアン化水素を使用する。ACH法の第2段階は、触媒および溶媒として、過剰な量の濃硫酸を使用する。第3段階は、メタクリル酸を生成する加水分解段階、またはメタノールを使用してメタクリル酸メチルを生成するエステル化段階である。このACH法の大きな欠点は、原料にHCNという高価で有毒な材料を使用すること、また、腐食性の高い硫酸を大量に使用する上リサイクルもしなければならないこと、さらに、重硫酸塩アンモニウムやその他の有害廃棄物を大量に発生することである。
【0007】
1980年代から、ACH法に代わるべく、幾つかの異なる原料を使用する方法が試みられた。(例えば、F. CavaniらのCatalysis Today、71(2001)97-110掲載論文、および、K.永井のApplied Catalysis A:General、221(2001)、367-377掲載論文参照)。これら他の方法の大部分はまだ開発中である。しかし、イソブチレンを原料として使用する製造方法が1980年代から日本で開発され、商用化されている。
【0008】
原料にイソブチレンまたはt−ブタノールを使用する製造方法は2段階法である。安部らの米国特許第4954650号の記載によれば、イソブチレンまたはt−ブタノールを、例えば、第1反応装置の第1触媒で酸化してメタクロレインを得、得られたメタクロレインを、第2反応装置2の第2触媒でさらに酸化してメタクリル酸を得ることにより、イソブチレンがほぼ完全に転化し、ワンパスでメタクリル酸全体の69%まで得られるという。しかし、メタクリル酸やメタクリル酸メチルの工業生産は、今日でも、世界のどこでもほとんどACH法で行われているため、この2段階−イソブチレン法に魅かれる製造業者はほとんどいないようである。
【0009】
他に、イソブタンガスを気相でワンステップ触媒酸化してもメタクリル酸やメタクリル酸メチルを製造することができる。一般的に、アルカン、特にイソブタンは、ACHで使用するアセトンやHCN、または商用イソブチレン法で使用するイソブチレンのような他の原料より著しく安価なため、そのような方法は、3段階ACH法や2段階イソブチレンまたはt−ブタノール法と比べても、特に好ましく、有利である。
【0010】
アルカンの触媒酸化による不飽和アルデヒド/酸の製造を商業的に実現するには、アルカンを十分に転化し、また目的の不飽和アルデヒドや酸に相応しい選択性を有し、その結果、酸化物を十分な収率で生成する触媒の開発が必要である。また、反応条件に相応しい安定性と耐久性を有することも、商業化に不可欠である。しかし、原料にイソブタンを使用するどの先行技術の製造方法も、商業化に必要な活性、選択性、耐久性を満たしそうな触媒を提供していないようである。
【0011】
Kreigerらの米国特許第4260822号には、イソブタンからメタクリル酸を製造する1段階法が開示されている。ここに開示された触媒はP、MoとSbからなるヘテロポリ化合物(HPC)で、それぞれイソブタン転化率10%、メタクリル酸収率5%およびメタクロレイン収率2%を達成した。同様に、Yamamatsuらの欧州特許第418657A3号、欧州特許第495504A2号と米国特許第5191116号、またBielmeierらの米国特許第5380932号には、P、MoとVを含有するHPC触媒が、メタクリル酸とメタクロレインを合わせて約70%の選択性と、約10%のイソブタン転化率を達成したことが開示されている。しかし、高温でイソブタンの転化が進むにつれて、選択性が直線的に減少するため、これらの触媒を使用して生産性を向上するにはもともと限界がある。(K.永井の上記議論参照)。低生産性の問題に加えて、触媒反応に要求される高温条件では、寿命が短いこともHPC触媒の欠点のひとつとされている。
【0012】
一方、松浦らは米国特許第5329043号に、ピロリン酸ジバナジルを含む一般式P-V-XYZで表される触媒は、ヘテロポリ化合物触媒に比べ、イソブタン転化率が多少良いが、メタクリル酸とメタクロレインを合わせた選択性が僅かに劣ると報告している。
【0013】
Ushikuboらは、米国特許第5380933号(‘933特許)に、Mo、V、TeとNbを含み、22.1°、28.2°、36.2°、45.2°、50.0 °2Θの独特のX線回折ピークを持ち、プロパン(C3アルカン)で触媒酸化するアクリル酸生産に非常に効果的であることが認められた、混合金属酸化物触媒の製造法を開示している。また、'933特許には、不飽和酸素化物の製造において、その触媒がC4アルカン、すなわちイソブタンとn-ブタンに対して高い選択酸化効果があることも仄めかしている。しかし、n−ブタン(C4アルカンのひとつ)を酸化すると、C4酸素化物は全く生成せず、それどころか報告された唯一の不飽和酸素化物としてアクリル酸(C3)を選択性20%未満で生成した('933特許実施例9および10参照)。'933特許には、イソブタンの酸化実際例についても全く記述されていないばかりか、アクリル酸以外には何も予想生成物として不飽和酸は報告も示唆もされてない。
【0014】
さらに、Linらの米国特許第6180825号、第6514901号、第6514903号は全て、'933特許と同じX線回折ピークを持つMo-V-Te-Nb混合金属酸化物触媒の改良製造方法を開示した特許である。Linの米国特許第6812366号は、プロパンやプロペンおよびその他のC3酸素化物からアクリル酸の製造方法で使用する、一連のX線回折パターンの特徴も‘933特許に指定されたものと同じMo-V-Te-Nb触媒を開示している。Borgmeierらの米国特許第7012157と第7019169号のどちらも、‘933特許に開示されたMo-V-Te-Nbを含む混合金属酸化物の改良製造方法を開示している。これらの改善された製造方法で製造された触媒は、プロパンからアクリル酸を製造するのに有効であることを説明している。しかし、特許請求された混合金属触媒を使用してC4アルカン(例えば、n−ブタンまたはイソブタン)を触媒酸化した実際例は先のどちらの特許にも記述がなく、また、C4酸素化物の生成も全く報告されていない。先のどちらの特許も、新しい触媒に注目している訳でなく、‘933特許に開示された触媒と同じMo-V-Te-Nb触媒を異なる方法で生成しただけであるから、それは意外なことではない。
【0015】
‘933特許やその他の特許に開示されているようなMo-V-Te-Nb混合金属酸化物触媒やMo-V-Sb-Nb触媒を使用して実際にイソブチレンを触媒酸化し、C4酸素化物を生成した例がOkusakoらの2つの特許、日本国公開特許第09−278680号と第10−128112号に開示されている。ここに開示されている触媒のイソブタン転化率は5−6%の範囲で、メタクリル酸とメタクロレインを組み合わせたときの収率範囲はたった1−1.8%で、上記のHPC触媒の達成レベルに比べて著しく低く、明らかに実用には不向きである。
【0016】
この他、Berndtらの米国特許第6933407号には、原料であるイソブタンから、3種の触媒と、3つの別々の反応装置を使用して、メタクリル酸を生成する3段階法が開示されている。第1反応装置はPtなどを含む金属含有触媒を使用する脱水素炉である。その脱水素炉では、イソブタンがイソブチレンとH2ガスに転化し、H2ガスは、イソブチレンと未反応イソブタンの生成混合物が第2反応装置に誘導される前に除去される。第2反応装置ではイソブタンを残しつつ、イソブチレンが金属酸化物を含有する触媒を使用してメタクロレインに転化し、生成メタクロレインは、その後、未反応イソブタンから分離され、第3反応装置に供給され、ここで、第2金属酸化物触媒とは異なる金属酸化物を含む第3触媒を使用して、メタクリル酸に転化する。全体として、イソブタンのワンパス転化率は約25%、メタクリル酸のワンパス全体収率は約9%と報告された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4954650号
【特許文献2】米国特許第4260822号
【特許文献3】欧州特許第418657A3号
【特許文献4】欧州特許第495504A2号
【特許文献5】米国特許第5191116号
【特許文献6】米国特許第5380932号
【特許文献7】米国特許第5329043号
【特許文献8】米国特許第5380933号
【特許文献9】米国特許第6180825号
【特許文献10】米国特許第6514901号
【特許文献11】米国特許第6514903号
【特許文献12】米国特許第6812366号
【特許文献13】米国特許第7012157号
【特許文献14】米国特許第7019169号
【特許文献15】特開平09−278680号
【特許文献16】特開平10−128112号
【特許文献17】米国特許第6933407号
【特許文献18】米国特許第5380933号
【特許文献19】米国特許第6933407号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】F. CavaniらのCatalysis Today、71(2001)97-110
【非特許文献2】K.NagaiのApplied Catalysis A:General、221(2001)、367-377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上をまとめると、一段階法によるイソブタン触媒酸化によるメタクロレインやメタクリル酸の製造技術はどちらかといえば開発段階といえよう。(上記K.Nagaiの論文参照)。これまでに開示されたほとんどのヘテロポリ化合物タイプの触媒は、イソブタン転化率が好ましくない低さとなり、寿命も短い。一方、米国特許第5380933号の主題のようなMo-V-Te-NbタイプやMo-V-Sb-Nbタイプの混合金属酸化物触媒は、プロパンからアクリル酸を製造するには効果的だが、イソブタンからメタクロレインやメタクリル酸製造に限っては無効であることがわかった。この他、米国特許第6933407号に開示された方法は、脱水素反応装置を含む複数の反応装置を必要とするだけでなく、各段階の後、生成物を煩雑な手順で分離しなければならないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の様相のひとつは、次式
AaBbXxYyZzOo
で表される化合物から成る固体の金属酸化物触媒を提供することである。上記式において、Aは、Mo、WとZrから選択される1つ以上の元素で、BはBi、Sb、SeとTeから選択される1つ以上の元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Nb、Sn、WとZnから選択される1つ以上の元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、Ti、VとZrから選択される1つ以上の元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群またはYの群、あるいはAs、Ba、Pd、Pt、Srまたはその混合物から選択される1つ以上の元素であり、ここで、a=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5、0<z<0.2であり、oは、他の元素の酸化状態によって決定される。
【0021】
本発明の他の様相は、次の工程からなる上記の触媒の製造方法を提供することである。
【0022】
(a)前記元素のうち選択された元素をa、b、x、yおよびzの所定比率で含有するように、それぞれの原料を適量ずつ混合して混合物とし、さらに、一種以上の液体物質を加えて前記原料を含む溶液またはスラリーとする。
【0023】
(b)前記混合物から前記液体物質を一部または全部除去して触楳前駆体を得る。さらに、
【0024】
(c)上記触媒前駆体を、酸素または不活性ガスあるいはその混合物含有の大気中、150oCから90OoCで焼成する。
【0025】
さらに別の本発明の様相は、不飽和アルデヒドかつ/または不飽和カルボン酸を、炭素数が同じアルカンかつ/またはアルケンから製造するために上記触媒を使用する方法を提供することである。この方法は、アルカン、アルケン、またはその混合物を含む混合原料ガスと、空気または酸素と1種以上の不活性希釈ガスとを前述の組成を持つ触媒を介して、加熱した反応装置で前述の蒸気酸化する。アルカンだけを蒸気相酸化する場合は、少なくともアルケン、不飽和アルデヒド、および炭素数が同じ不飽和酸のうちの一種以上が生成物となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、複合金属酸化触媒と、その製造方法、およびその複合金属酸化触媒を使用する、メタクロレインかつ/またはメタクリル酸のような不飽和アルデヒドかつ/または不飽和カルボン酸の製造方法に関する。この製造方法はイソブタン、イソブチレンまたはその混合物のような適切なアルカンかつ/またはアルケンを、特定の組成の触媒を使用して、空気や酸素の存在下、一定の酸化条件で気相酸化するものである。また、その触媒は、バルク固体物質でも、高表面積担持体上かつ/または担持体内に分散したものでもよい。本発明は、様々なC2−C6アルカンかつ/またはアルケンに対応し、これらと同じ炭素数の酸素化物の生成に適用できる。しかし、炭素数が元のアルカンまたはアルケンと同じかそれより少ないアルケンかつ/またはその他の酸素化物は、酸化物の一部としても存在する。例えば、イソブタンだけを本発明の蒸気相で触媒酸化すると、イソブチレン、メタクロレインおよびメタクリル酸のうち1つ以上が生成される。さらに、生産経済性や原料の利用効率を高めるために、未反応アルカン、アルケンかつ/または生成物ストリームのアルケン(未反応不飽和カルボン酸とアルデヒドが別々にまたは混合物として一緒に分離された後)はリサイクルすることも、また、新鮮なアルカンかつ/またはアルケンと混合して混合原料にすることもできる。
【0027】
本発明の実施は、適切なアルカンおよび/またはアルケンを、次の一般式で表される金属酸化複合体触媒の存在の下、ガス相酸化して行う。
AaBbXxYyZzOo
上記式において、A、B、X、Y、Z、O、a、b、x、y、zは、先に定義した通りとする。
【0028】
本発明の化学組成、しいては、得られる化学構造と触媒特性は、先行技術と比べはっきりした違いがある。具体的には、本発明の触媒は、ヘテロポリ酸や塩ではない。また、その組成も‘933特許や他の関連特許に開示され、イソブタンからメタクロレインかつ/またはメタクリル酸を生成するには効果がないことが分かったMo−V−Te−Nb−OタイプおよびMo−V−Sb−Nbタイプの金属酸化物触媒とは異なる。一般式、Aabxyzoで表される化合物からなる混合金属酸化触媒は、以下で説明するように、イソブタンかつ/またはイソブチレンからメタクロレインかつ/またはメタクリル酸を生成するときに限って有効である。Aabxyzoで表される化合物からなる混合金属酸化物触媒は、次のように製造する。
【0029】
最初の段階は、触媒前駆体の製造である。前駆体は、固体で、全ての必須金属元素を含み、高温加熱焼成した後、混合金属酸化物触媒を得る。その前駆体の製造に使用する各元素は、その元素または金属元素の微粉を含む酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、アルコキシド、蓚酸塩、水酸化物、酢酸塩、またはその他の様々な有機金属化合物を含む広範囲な元素から選択することができる。これらの材料は、液体、溶液、スラリーまたは固体のどの形態でもよい。このように、ソース材料の混合は、1つ以上の液体、溶液、スラリーや固形物の混合を伴う。すべての元素が固体の形で導入される場合、得られた固体混合物をさらに粉砕して元素を十分混ぜ合わせることができる。1つ以上の元素を溶液またはスラリーとして導入する場合、ソース材料の溶液やスラリーの製造に適した液状物質を、水や他のアルコール、ケトン、エーテル、酸、脂肪族化合物や芳香族化合物のような様々な有機液体から選択することができる。固体の触媒前駆体は、その混合溶液から液体物質または溶媒を完全に除去した後、得ることができる。液体物質や溶媒は、空気乾燥、凍結乾燥、スプレー乾燥、濾過、回転蒸発または減圧かつ/または種々の温度での蒸発等様々な方法で除去することができる。本発明が属する技術分野で知られる、水熱合成、ゾル−ゲル法、共ゲル(co[l]-gel)法のような他の様々なテクニックや様々な沈殿テクニックもまた触媒前駆体の製造のために適用することができる。
【0030】
こうして得られた触媒前駆体を、各段階に適した時間と雰囲気の下で、その段階に相応した温度で焼成する。適切な雰囲気は、各焼成段階によって異なることもあり、窒素やアルゴン(後者がより好ましい)などの不活性ガス、または空気のような酸化力のあるガス、または水素のように還元力のあるガスを使用できる。焼成は、通常、室温付近で開始する。その後、各段階が異なる焼成温度となるように、約150℃190℃の範囲に昇温する。後段階の焼成温度は450℃から700℃が好ましい。同様に、焼成時間も各段階によって異なる。典型的な焼成時間は、全体で1時間〜30時間である。式Aabxyzoで表される目的の混合金属酸化触媒を得るには、焼成の高温段階が2時間から10時間であることが好ましい。ただし、前期式中A、B、X、Y、Z、およびa、b、x、y、z、oは上記で定義された通りとする。先述のモル比(o)、すなわち、最終的に得られた触媒に含まれる酸素量(O)は、酸化段階によって、また触媒に含まれる他の元素、例えばA、B、X、Y、Zの比率によっても異なる。
【0031】
こうしてバルク固体触媒として得られた混合金属酸化物はそのままで使用した場合、優れた触媒としての特性を発揮する。しかし、得られた混合金属酸化物を粉砕して微粒子にすることによって触媒としての性能が向上する。また、こうして得られた混合金属酸化物を、本発明の属する分野に周知の様々なテクニックを使用して、様々な製造段階において、高表面積を持つ担持体上かつ/または担持体内に取り込むこともできる。担持体に適する材料は限定しないが、Al、Mg、Nb、Si、Te、Zrやその複合物から選ばれる1つ以上の元素の酸化物、炭化物、窒化物が挙げられる。担持体は、粒子、繊維、セラミック発泡体、石(monolith)、および布から選択されるどの構造形態であってもよい。酸化物触媒の元素は、湿潤、共ゲル、ゾル−ゲル、含浸、沈殿、共沈殿、イオン交換、蒸着、逆マイクロエマルジョン析出またはその組み合わせなどの、本発明の属する分野に周知の様々な方法で、適切な担持体上かつ/または担持体内に分散できる。また、得られた担持された触媒は、反応装置の形とサイズ次第で適切な形とサイズに成形できる。
【0032】
本発明の別の様相は、気相のアルカンやアルケン、または、その混合物を、前述の混合金属酸化物を入れた反応装置に導入し、空気や酸素ガスと、随意に、希釈ガスの存在下、目的の不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸またはその混合物を生成することである。アルカンだけを蒸気相触媒酸化する場合、炭素数が同じかそれより少ない、アルケン、不飽和アルデヒド、不飽和酸のうちの1つ以上の生成物ができる。水蒸気またはスチームを適量、混合原料ガスに導入することもできる。こうすれば、水蒸気が希釈ガスとして機能するため、目的の酸素化物の選択性を高めることができる。また、必要に応じて、窒素、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスや二酸化炭素などの疑似不活性ガスも希釈ガスとして、混合原料ガスに取り入れることができる。メタクロレインまたはメタクリル酸またはその混合物を生成する場合、反応系に供給する原料ガスは、次のガスを適切な比率での混合した物とする。そのガスは、A)新鮮なイソブタンまたはイソブチレンまたはその混合物、B)酸素または空気、C)窒素、アルゴン、ヘリウムや二酸化炭素などの希釈不活性ガス、D)スチーム、さらに、E)リサイクルする場合は、供給原料からの未反応イソブタンかつ/またはイソブチレン、かつ/またはイソブタンからの生成物イソブチレンは、反応装置の出口ストリームに存在する。炭化水素/(酸素または空気)/希釈不活性ガス/スチーム(A+E):B:C:Dで表される混合原料ガスのモル比は、(1):(0.1から20):(0から20):(0から70)であればよい。また、原料ガス内と同様に反応領域と出口の炭化水素対酸素比がその混合物の発火領域外に維持されるよう特に注意する必要がある。イソブタンだけを空気や酸素の存在下、蒸気相で触媒酸化する場合、産出物は、少なくともイソブチレン、メタクロレインおよびメタクリル酸のうちの1つとなる。
【0033】
本発明の触媒酸化反応の詳細なメカニズムはまだ完全に解明されていないが、原料ガスに存在する(空気や酸素からの)分子酸素によって酸化反応が保たれていると考えられる。しかし、イソブタン、イソブチレンまたはその混合物は分子酸素が不在でも気相酸化させることができる。その場合、金属酸化物触媒の格子酸素原子が、触媒が還元されるにつれて炭化水素の酸化中に消費されるのである。このように、気相中に分子酸素がない場合でも、目的の不飽和アルデヒドかつ/または不飽和カルボン酸に対する選択性を強化することができる。ただし、その際、触媒の再生用に別の段階が必要になる。還元金属酸化物触媒は、適切な条件の下、分子酸素を含む大気または他の酸素源に晒すことによって再生成することができる。
【0034】
上述のイソブタンかつ/またはイソブチレンの酸化は、固定床式システムまたは流動床式システムを活用する。反応は大気圧下でも高圧下でも起こすことができる。反応温度は200℃から600℃が適切であるが、300℃から550℃が好ましい。供給ガスは空間速度(SV)360から36000hr-1の範囲で流し、これに相応した供給ガスと触媒の接触時間は、10秒から0.1秒の範囲である。
【0035】
イソブタンを本発明に従って触媒酸化すると、メタクロレインとメタクリル酸が目的生成物となる。しかし、上述のように、炭素酸化物、酢酸、アセトン、アクリル酸やイソブチレンのような他の酸化物や部分酸化産出物も、副産物として生成する。これらの副産物のうち、イソブチレンは、酸化中間物で、メタクロレインまたはメタクリル酸にさらに酸化することができる。従って、イソブチレンや未反応イソブタンを、反応装置出口ストリームの他の成分から隔離し、流入してきた混合原料ガスに混入してリサイクルするのが有益である。化学業界では、効率と生産性を向上し、貴重な原料の無駄を避けるために、未反応の原料かつ/または中間産物をリサイクルするのが普通である。この場合、イソブタンからイソブチレンを分離するのは非常に難しいので、イソブタンのリサイクルストリームに生成物ストリームに生成したイソブチレンを混入するのが経済的で便利である。それに比べて、イソブタンとイソブチレンの混合物を他の酸素化物から分離することは、従来の分離技術でかなり簡単にできる。これは、イソブタンとイソブチレンの沸騰点が近接しており、また生成物ストリームにおける他のC2やC4の酸素化物に比べて著しく低いからである。リサイクルを通じて、リサイクルされたイソブタンやイソブチレンからさらに多量のメタクロレインやメタクリル酸が得られる。これにより、メタクロレインとメタクリル酸の全体の収率を大きく高めることができるだけでなく、イソブタンとイソブチレンの活用もできる。このように、この発明は、イソブタンかつ/またはイソブチレンとその混合物からメタクロレインかつ/またはメタクリル酸を生成する方法を提供するものである。
【0036】
最後に、メタクロレインをメタクリル酸から分離することは、従来の技術でも簡単にできる。それはこの2つのC4酸素化物の沸騰点がそれぞれ約69℃と163℃と大きく離れているからである。また、メタクロレインは、不飽和アルデヒドの酸化に適した従来の触媒を使用して、さらにメタクリル酸に転化することができるからである。
実施例
【0037】
本発明を実施例と比較実施例を参照してさらに詳しく説明する。
転化率(Conv)、選択性(Sel)、および収率(Y)の定義は次の通りである。
転化率(%)=(炭化水素消費モル/新鮮な供給炭化水素モル)x100
選択性(%)=(生成物モル/消費炭化水素モル)x100
収率(%)=(生成物モル/新鮮な供給炭化水素モル)x100
【0038】
これらの実施例は例示に過ぎず、本発明は別添の特許請求の範囲を決して制限するものではない。
実施例1
【0039】
Mo1.0Sb0.5Ce0.1の経験式で表される触媒を以下の通り製造した。フラスコに3.217gのアンチモン(III)酢酸(Strem Chemical)と20gの酢酸(J. T. Baker製)を入れ、透明な溶液を得るまで80℃に加熱した。別のフラスコに、3.800gの七モリブデン酸アンモニウム四水和物(Strem Chemical)を25gの水に溶かし、また別のフラスコに1.180gの硝酸セリウム(IV)アンモニウム(Strem Chemical)を20gの水に溶かした。そのアンチモン溶液をモリブデン溶液に加え、勢いよく攪拌した後、セリウム溶液を加えてスラリーとした。得られたスラリーを回転させ、水と酢酸を蒸発により除去し、固体の前駆体を得た。これをさらにオーブンに入れ、80℃に熱して16時間乾燥させた。6gの乾燥前駆体をるつぼに入れて蓋をし、不活性ガス(N2またはAr、ただし、Arが好ましい)の雰囲気中で焼成した。反応装置は、室温から350℃まで、10℃/分の割合で加熱し、350℃の状態を2時間保った。次に、温度を650℃まで10℃/分の割合で加熱し、650℃の状態で2時間保った。焼成後、こうして得られた金属酸化物触媒(約5g)を粉砕して微粉とし、金型に入れてプレスし、その後、砕いて、12−20メッシュで篩い、顆粒を得た。約1.5gの顆粒を内径4mmの石英管状反応装置に充填し、触媒性能を評価した。触媒試験は、温度プログラムできる管状反応装置を使用し、500℃で行った。大気圧よりわずかに高い圧力で、混合原料ガスであるイソブタン/空気/窒素および水蒸気(またはスチーム)を1/10/10/0.7の体積比で、かつ空間速度約2,700hr-1で触媒床を通過させた。反応廃液は、ガスクロマトグラフィー(「GC」)を使用して、イソブタンの転化率、収率、および酸化生成物の選択性を直接決定した。その結果を表1に示す。
実施例2
【0040】
経験式Mo1.0Sb0.5Bi0.1Sn0.01で表される触媒において、硝酸セリウム(IV)アンモニウムを約5gの希硝酸(13%)水溶液に溶かした1.044gの硝酸ビスマス(III)(Aldrich Chemical)に置き換え、また、希硝酸(13%)を数滴落とした30gの酸性水に入った0.041gの塩化スズ(II)(Aldrich Chemical)も混合スラリーに加えた以外は、実施例1の説明と同様にして製造した。触媒テストも実施例1の説明と同様にして実施し、結果を表1に示した。
実施例3
【0041】
経験式Mo1.0Sb0.5Ce0.09Ag0.003の触媒を、0.011gの硝酸銀(Aldrich Chemical)を含む30gの水溶液も混合スラリーに加えた以外は、実施例1の説明と同様にして製造した。触媒試験も、混合原料ガスであるイソブタン/空気/窒素と水蒸気(またはスチーム)を体積比1/5/10/0.5とし、空間速度を約2,000hr-1で流した以外は実施例1の説明と同様にして実施した。その試験結果を表1に示す。
実施例4
【0042】
経験式Mo1.0Sb0.5Ce0.09Sn0.005Ag0.001で表される触媒を、実施例2の説明と同様の方法で経験式に従って製造した塩化スズ(II)(Aldrich Chemical)を適量含有する水溶液を、混合スラリーに加えた以外は、実施例3の説明と同様にして製造した。触媒試験も、混合原料ガスであるイソブタン/空気/窒素と水蒸気(またはスチーム)の体積比を1/43/0/1.3とし、試験温度を525℃とした以外は、実施例1の説明と同様にして実施した。その試験結果を表1に示す。
【表1】


実施例5
【0043】
実施例4で製造した触媒を、混合原料ガスをイソブチレン/空気/窒素と水蒸気(またはスチーム)とし、その体積比を1/43/0/1.3とした以外は、実施例1の記載と同様にして触媒試験した。その試験結果を表2に示す。
実施例6
【0044】
実施例4で製造した触媒において、混合原料ガスの体積比を1/20/0/6.8とした以外は、実施例5の記載と同様にして触媒試験を実施した。その試験結果を表2に示す。
【表2】


実施例7
【0045】
実施例4で製造した触媒を実施例4および5に従って酸化反応させることができたが、反応廃液から未反応イソブタンおよび生成イソブチレンを従来の方法で分離し、リサイクルし、新鮮なイソブタンと混合して、原料ストリームの炭化水素とした。(iBA+iBE)/空気/N2/H2Oの投入比を1/43/0/1.3として、平衡状態を維持しつつ、新鮮なイソブタンを体積比で0.21供給し、継続的に消費した。そのうち、体積比0.137がメタクロレインに転化し、体積比0.003がメタクリル酸に転化した。新しく供給されかつ消費されたイソブタンについては、メタクロレインの収率は69%で、メタクリル酸の収率は1.5%である。実施例4および5で得られたデータに基づいて計算した予想結果を、表3に示す。
実施例8
【0046】
実施例4で製造した触媒を実施例4および5に従って酸化反応させることができたが、反応廃液から未反応イソブタンおよび生成イソブチレンを従来の方法で分離し、リサイクルし、新鮮なイソブタンと混合して、原料ストリームの炭化水素とした。(iBA+iBE)/空気/N2/H2Oの投入比を1/20/0/6.8として平衡状態を維持しつつ、新鮮なイソブタンを体積比0.21で供給し、継続的に消費した。そのうち、体積比0.127がメタクロレインに転化し、体積比0.0084がメタクリル酸に転化した。新しく供給されかつ消費されたイソブタンについては、メタクロレインの収率は62%で、メタクリル酸の収率は4.8%である。実施例4および6で得られたデータに基づいて計算した予想結果を、表3に示す。
【表3】


[比較例1]
【0047】
経験式Mo1.0V0.3Sb0.7Nb0.1で表される触媒をJP 09-278680とJP10-128112に開示された方法に従って製造した。MoとSbは実施例1に記載の原料を使用し、VとNBはそれぞれメタバナジン酸アンモニウム(Aldrich Chemical)と蓚酸ニオブアンモニウム(CBMM Chemical Company)を原料とした。触媒試験は、温度を430℃とし、混合原料ガスであるイソブタン/空気/窒素と水蒸気(またはスチーム)を体積比を1/10/10/5.7、空間速度約3,200hr-1で流した以外は、実施例1説明と同様にして実施した。テスト結果は、表4に示すように、JP09-278680の開示と似ている。
[比較例2]
【0048】
経験式Mo1.0V0.3Te0.16Nb0.1で表される触媒をJP 09-278680とJP10-128112に開示された方法に従って製造した。Mo、VおよびNbは比較実施例1に記載の原料を使用し、Teはテルル酸(Aldrich Chemical)を原料とした。触媒試験は、実施例1の説明と同様にして実施した。テスト結果は、表4に示すように、JP09-278680の開示と似ている。
[比較例3]
【0049】
経験式Mo1.0V0.3Te0.16Nb0.2で表される触媒を、比較例2の説明と同様に製造した。触媒試験を390℃で実施した以外は、比較例1の説明と同様に実施した。このテスト結果を表4に示す。
[比較例4]
【0050】
経験式Mo1.0V0.3Nb0.1で表される触媒を、この触媒がTeを全く含有しないことを除き、比較例2の記述と同様にして製造した。触媒試験は温度を350℃とし、混合原料ガスであるイソブタン/空気/窒素と水蒸気(またはスチーム)の体積比を1/20/0/5.7とした以外は、比較例1の記述と同様に実施した。そのテスト結果を表4に示す。
【表4】

【0051】
明細書で先述した特許や雑誌記事の開示は全て、引用による補充参照である。
【0052】
本発明の特定の実施例は説明かつ/または例であり、当該技術において通常の技量を有する者にはこの他にも多様な実施例が可能であることが明らかであろう。よって、本発明は、記述された特定の実施例、かつ/または例に限定されることなく、請求の範囲から逸脱しないで、かなりの変化や変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカン、アルケン、またはその混合物と、空気あるいは酸素とを含み、一種以上の希釈ガスを含んでいてもよい混合原料ガスを、次式:
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[式中、Aは、Mo、WとZrから選択される1つ以上の元素であり、BはBi、Sb、SeまたはTeから選択される1つ以上の元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Sn、WまたはZnから選択される1つ以上の元素、Yは、若し存在するならば、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群、Yの群、As、Ba、Pd、Pt、Srまたはその混合物から選択される少なくとも1つの元素であり、ここで、a=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5、0<z<0.2であり、またoは他の元素の酸化状態により決定される]
で表される化合物を含む固体触媒の存在下、高温反応装置中、気相酸化に付すことにより、不飽和アルデヒドおよび不飽和カルポン酸の少なくとも1つを製造する方法。
【請求項2】
前記混合原料ガスが、アルカンと、空気または酸素とを含み、1種以上の希釈ガスを含んでいてもよく、得られる生成物が、炭素数が同数またはそれ以下の不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸の少なくとも1つまたは複数である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応装置が、管状または流動床炉で、その温度が200〜600oCの範囲に保たれ、前記混合原料ガスと前記触媒の接触時間が0.1〜10秒の範囲内である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
該少なくとも1つのアルカンとアルケンの炭素数が2ないし6である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記混合原料ガスがイソブタンまたはイソブチレンまたはその混合物を含み、得られる不飽和のアルデヒドが2-メチル-2-プロペン-1-アル(メタクロレイン)で、かつ不飽和酸がメタクリル酸である、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記原料ガスがイソブチレンと、空気または酸素とを含み、一種類以上の希釈ガスを含んでもよく、得られる生成物がイソブチレン、メタクロレインまたはメタクリル酸の少なくとも1つである、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合原料ガスが希釈ガスとして蒸気かつ/または窒素を含有し、それにより不飽和アルデヒドかつ/または不飽和カルボン酸の生産を助成する、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
生成物ストリームに存在するアルカン、アルケンまたはその混合物を分離し、かつ再循環して混合原料ガスの一部を形成させる、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
AがMoかWまたはその混合物であり、BがBiとSbの群から選択される少なくとも1つの元素であり、XがBi、Ca、Ce、Co、Ga、Mg、Ni、SnとZnの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Yが、若し存在するならば、Ag、Au、La、Mn、P、Pb、Sn、TeとZrの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Zが、若し存在するならば、該Xの群、Yの群、Al、B、Ba、K、Na、PdまたはSrから選択される少なくとも1つの元素である、請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
AがMo、BがSbであり、XがBiとCeから選択される少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、AuとZnから選択される少なくとも1つの元素であり、Zは、若し存在すれば、該Xの群またはYの群、またはAl、B、Ba、K、Na、PdとSrから選択される少なくとも1つの元素である、請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
a=1、0.05<b<1、0.01<x<0.3、0<y<0.1、0<z<0.05であり、oが他の元素の酸化状態によって決定される、請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
前記触媒を高表面積担持体上、かつ/または担持体内に分散させる、請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
次式:
AaBbXxYyZzOo
[式中、AはMo、WとZrの群から選択される少なくとも1つの元素であり、BはBi、Sb、SeとTeの群から選択される少なくとも1つの元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Sn、WとZnの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、TiとZrの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群、Yの群、あるいはAs、Ba、Pd、Pt、Sr、またはその混合物の少なくとも1つの元素であり、ここで、a=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5、0<z<0.2であり、oは他の元素の酸化状態によって決定される]
で表される化合物を含む、固体触媒。
【請求項14】
AがMo、またはW、あるいはその混合物であり、BがBiとSbの群の少なくとも1つの元素であり、XがBi、Ca、Ce、Co、Ga、Mg、Ni、SnとZnの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すればAg、Au、La、Mn、P、Pb、Sn、Te、TiとZrの群の少なくとも1つの元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群、Yの群、Al、B、Ba、K、Na、Pd、Srとその混合物のうちの少なくとも1つの元素である、請求項13記載の触媒。
【請求項15】
AがMoであり、BがSbであり、XがBiとCeの群の少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、AuとSnの群の少なくとも1つの元素であり、Zは、若し存在すれば、該Xの群、Yの群、Al、B、Ba、K、Na、Pd、Srとその混合物から選択される少なくとも1つの元素である、請求項13記載の触媒。
【請求項16】
a=1、0.05<b<1、0.01<x<0.3、0<y<0.1、0<z<0.05であり、oが他の元素の酸化状態によって決定される、請求項13記載の触媒。
【請求項17】
高表面積担持体上かつ/または担持体内に分散される、請求項13記載の触媒。
【請求項18】
前記担持体が高表面積を有し、かつAl、Mg、Nb、Si、Ti、Zrとその複合物からなる群より選択される少なくとも1つの元素の酸化物、炭化物または窒化物を含む、請求項17記載の触媒。
【請求項19】
前記担持体がアルミナ、ニオビア、シリカ、炭化珪素、シリコンニトリル、チタニア、ゼオライト、ジルコニア、またはその複合物を含む、請求項17記載の触媒。
【請求項20】
次式:
AaBbXxYyZzOo
[式中、AはMo、WとZrの群の少なくとも1つの元素であり、BはBi、Sb、SeとTeの群の少なくとも1つの元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Sn、WとZnの群の少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、TiとZrの群から選択される1つ以上の元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群またはYの群、またはAs、Ba、Pd、Pt、Sr、またはその混合物から選択される少なくとも1つの元素であり、ここで、a=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5、0<z<0.2であり、oは他の元素の酸化状態によって決定される]
で表される化合物を含む固体触媒の製造方法であって、
(a)上記した元素のうち選択された元素を所定の割合a、b、x、yおよびzにて提供するように該元素を含有する適量の原料を乾式混合に付すことで、一の混合物を形成し;および
(b)上記混合物を酸素または不活性ガスまたはその混合物含有の大気中、150oCから90OoCで焼成して固体触媒を得るところの、製造方法。
【請求項21】
次式:
AaBbXxYyZzOo
[式中、AはMo、WとZrの群から選択される少なくとも1つの元素であり、BはBi、Sb、SeとTeの群から選択される少なくとも1つの元素であり、XはAl、Bi、Ca、Ce、Co、Fe、Ga、Mg、Ni、Sn、WとZnの群から選択される少なくとも1つの元素であり、Yは、若し存在すれば、Ag、Au、B、Cr、Cs、Cu、K、La、Li、Mg、Mn、Na、Nb、Ni、P、Pb、Rb、Re、Ru、Sn、Te、TiとZrの群から選択される1つ以上の元素であり、Zは、若し存在すれば、前記Xの群またはYの群、あるいはAs、Ba、Pd、Pt、Srまたはその混合物から選択される少なくとも1つの元素であり、ここでa=1、0.05<b<1.5、0.01<x<1、0<y<0.5、0<z<0.2であり、oは他の元素の酸化状態によって決定される]
で表される化合物を含む固体触媒の製造方法であって、
(a)前記した元素のうち選択された元素を所定の割合a、b、x、yおよびzにて提供するように該元素を含有する適量の原料と、少なくとも1種の液体物質の混合物を形成して、該原料を含有する溶液またはスラリーを形成し、
(b)前記混合物から前記液体物質を一部または全部除去して触楳前駆体を得、また、
(c)前記触媒前駆体を酸素または不活性ガスまたはその混合物含有の大気中、150oCから90OoCで焼成して固体触媒を得る、製造方法。
【請求項22】
触媒前駆体が複数の焼成工程を通して製造され、その焼成工程が少なくとも1回の低温段階(150oCから350oC)と少なくとも1回の高温段階(350oCから900oC)を含む、請求項20または21記載の製造方法。
【請求項23】
前記高温段階の温度を450oCから700oCとする、請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
前記焼成が、不活性ガスを使用し、かつ不活性ガスはアルゴンと窒素のうち少なくとも1つとする、請求項20または21記載の製造方法。
【請求項25】
前記不活性ガスがアルゴンである、請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
前記液体物質が、水かつ/またはアルコール、ケトン、エーテル、酸、脂肪族化合物や芳香族化合物のような有機液体の1つまたはその混合物とする、請求項20または21記載の製造方法。
【請求項27】
前記触媒を高表面積担持体上かつ/または担持体内に分散させる、請求項20または21記載の製造方法。
【請求項28】
前記触媒担持体が高表面積を有し、かつAl、Mg、N、Nb、Si、Ti、Zrとその複合物の群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物、炭化物、窒化物を含む、請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
前記触媒担持体が、アルミナ、炭素、ニオビア、シリカ、炭化珪素、シリコンニトリル、チタニア、ゼオライト、ジルコニア、またはその複合物を含む、請求項28記載の製造方法。
【請求項30】
前記触媒の元素を、湿潤、含浸、ゾル−ゲル、共ゲル、沈殿、イオン交換、蒸着、逆マイクロエマルジョン析出、またはその組み合わせから選択される方法により、前記担持体の上かつ/または前記担持体内に分散させる、請求項27記載の製造方法。

【公表番号】特表2010−526765(P2010−526765A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546532(P2009−546532)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/051420
【国際公開番号】WO2008/089398
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509202972)エバーヌ・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】EVERNU TECHNOLOGY LLC
【Fターム(参考)】