説明

アルコール濃度検出装置

【課題】内燃機関に供給される燃料に含まれるアルコールの濃度を精度良く検出する。
【解決手段】このアルコール濃度検出装置は、光源42と、光源42から入射される光を伝搬するコアを有する光ファイバー44と、光ファイバー44によって伝搬された光を受光する受光部46と、受光部で受光した光の強度を用いて燃料に含まれるアルコール濃度を決定する演算部と、を備えている。光ファイバーのコアの少なくとも一部分が表面に露出しており、その露出した部分に表面プラズモン現象を発生する金属膜が形成されており、その金属膜が形成された部分が燃料中に浸漬されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(例えば、自動車用エンジン)に供給される燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に供給される燃料を適切な空燃比で燃焼させるためには、燃料の性状を正確に判定する必要がある。このため、燃料性状を判定するための装置が開発されている(特許文献1)。特許文献1の判定装置は、光源からの光を伝搬するコアを有する光ファイバーと、その光ファイバーにより伝搬された光を受光する受光部と、その受光部で受光した光の強度から燃料性状を判定する燃料性状判定部を備えている。コアの一部は、内燃機関に供給される燃料と接触している。このため、コアを伝搬する光の一部(エバネッセント波)は燃料によって吸収され、燃料によって吸収されなかった光が受光部で受光される。燃料によって吸収される光の強度は、燃料の屈折率によって変化する。燃料の屈折率は、燃料性状によって変化する。このため、燃料性状判定部は、受光部で受光した光の強度から燃料の屈折率を決定し、その決定した屈折率から燃料性状(重質燃料か軽質燃料か)を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−172466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アルコール(例えば、バイオエタノール等)を含有する燃料を内燃機関の燃料として使用することが検討されている。アルコール含有燃料を内燃機関の燃料として使用する場合においても、アルコール含有燃料を適切な空燃比で燃焼させるためには、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出する必要がある。上述した燃料性状判定装置は、受光部で受光される光の強度から燃料の屈折率を求め、求めた屈折率から燃料性状を判定している。燃料中のアルコール濃度が変化しても燃料の屈折率は変化するため、上述した燃料性状判定装置によって燃料中のアルコール濃度を判定することが理論上は可能である。しかしながら、燃料のアルコール濃度変化に対して燃料の屈折率変化が小さいため、上述した燃料性状判定装置では、燃料のアルコール濃度変化に対して受光部で受光される光の強度変化が小さい。このため、上述した燃料性状判定装置では、燃料中のアルコール濃度を精度良く判定することができないという問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができるアルコール濃度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願のアルコール濃度検出装置は、内燃機関に供給される燃料に含まれるアルコールの濃度を検出する。このアルコール濃度検出装置は、光源と、光源から入射される光を伝搬するコアを有する第1の光ファイバーと、第1の光ファイバーによって伝搬された光を受光する第1の受光部と、第1の受光部で受光した光の強度を用いて燃料に含まれるアルコール濃度を決定する演算部を備えている。そして、第1の光ファイバーのコアの少なくとも一部分が表面に露出しており、その露出した部分に表面プラズモン現象を発生する金属膜が形成されており、その金属膜が形成された部分が燃料中に浸漬されている。
このアルコール濃度検出装置は、光ファイバーのコアの表面に金属膜が形成され、コアを伝搬する光の一部(エバネッセント波)が表面プラズモン共鳴によって吸収される。表面プラズモン共鳴によって吸収される光の強度は燃料の屈折率によって大きく変化する。したがって、燃料の屈折率の変化に対して、受光部で受光される光の強度変化を大きくする。これによって、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができる。
【0007】
上記のアルコール濃度検出装置は、光源から入射される光を伝搬するコアを有する第2の光ファイバーと、第2の光ファイバーによって伝搬された光を受光する第2の受光部をさらに備えることができる。第2の光ファイバーは、第1の光ファイバーと同一部分が表面に露出しており、その露出した部分には金属膜が形成されていない。そして、演算部は、第1の受光部で受光した光の強度と第2の受光部で受光した光の強度の差を用いて、燃料に含まれるアルコール濃度を決定することが好ましい。
このような構成によると、光源の経時変化や電圧変化等によって受光部で受光される光の強度が変化しても、第1の光ファイバーに入射される光の強度と第2の光ファイバーで入射される光の強度が同様に変化する。そのため、これらの影響をキャンセルすることができ、アルコール濃度を精度良く検出することができる。
なお、上記の構成を採る場合は、第1の光ファイバーと第2の光ファイバーを同一の剛体(取付プレート)に取付けることが好ましい。このような構成によると、光ファイバーが取付けられている取付プレートが変形しても、第1の光ファイバーと第2の光ファイバーが同様に変形するため、その影響をキャンセルすることができる。これによって、アルコール濃度を精度良く検出することができる。
また、第1の光ファイバーを伝搬する光を受光する受光部(第1の受光部)と、第2の光ファイバーを伝搬する光を受光する受光部(第2の受光部)を同一の受光部とすることができる。このように構成することで、受光部の経時変化による影響がキャンセルされ、アルコール濃度を精度良く検出することができる。この場合、第1の光ファイバーを伝搬される光を受光部に導く状態と、第2の光ファイバーを伝搬される光を受光部に導く状態とに切換え可能としてもよいし、あるいは、第1の光ファイバーに光を入射する状態と、第2の光ファイバーに光を入射する状態とに切換え可能としてもよい。
【0008】
上記のアルコール濃度検出装置は、燃料の温度を検出する温度センサをさらに備えることができる。そして、演算部は、温度センサで検出した燃料温度に基づいてアルコール濃度を補正することが好ましい。このような構成によると、燃料の温度による影響が補正されるため、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができる。
【0009】
上記のアルコール濃度検出装置では、第1の光ファイバーのコアの金属膜が形成された部分が水分分離膜で覆われていることが好ましい。このような構成によると、燃料中の水分の影響が低減されるため、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができる。
【0010】
上記のアルコール濃度検出装置は、燃料性状の種類を入力する手段と、燃料性状の種類毎に屈折率とアルコール濃度の関係を記憶する記憶手段をさらに有することができる。そして、演算部は、入力された燃料性状の種類に対応する屈折率とアルコール濃度の関係を用いてアルコール濃度を決定することが好ましい。このような構成によると、燃料性状の種類が変わっても、アルコール濃度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係るアルコール濃度検出装置が取付けられている燃料供給系の構成を示す図。
【図2】燃料タンク内の構成を拡大して示す図。
【図3】アルコール濃度検出装置の構成を示す図。
【図4】アルコール濃度検出装置の取付状態を示す模式図。
【図5】光ファイバーのコアの一方の表面に金薄膜が形成されている状態を示す図。
【図6】屈折率とアルコール濃度(エタノール濃度)の関係を示すグラフ。
【図7】本発明の他の実施例を説明する図であり、検出用光ファイバーと補償用光ファイバーが取付プレートに取付けられた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)光ファイバーは、コアと、コアの周囲に形成されたクラッドを有する。
(形態2)コアの表面には、金薄膜が形成されている。
(形態3)演算部は、温度センサで検出した燃料温度に基づいて燃料の密度を補正し、補正した燃料密度に基づいてアルコール濃度(屈折率)を補正する。
【実施例】
【0013】
(第1実施例) 本発明を具現化した一実施例に係るアルコール濃度検出装置について、図面を参照して説明する。まず、本実施例のアルコール濃度検出装置が装備される内燃機関の燃料供給系の構成について説明する。図1に示すように、本実施例の燃料供給系は、燃料を貯留する燃料タンク26を備えている。燃料タンク26に貯留されている燃料には、アルコール(本実施例ではエタノール)が含まれている。燃料タンク26内には燃料供給装置28が収容されている。燃料供給装置28は、燃料タンク26内の燃料を昇圧し、昇圧した燃料を燃料タンク26外に吐出する。燃料供給装置28には、燃料供給路(38a,38b)の一端が接続されている。燃料供給路(38a,38b)の他端は、インジェクタ12に接続されている。燃料供給装置28から吐出された燃料は、燃料供給路(38a,38b)を通ってインジェクタ12に供給される。
【0014】
インジェクタ12は、燃料供給装置28から供給された燃料を噴射する。インジェクタ12は、インテークマニホールド14に取付けられている。インテークマニホールド14は、エンジン10の吸気側に取付けられている。インテークマニホールド14には、スロットルバルブ16が配設されている。スロットルバルブ16は、インテークマニホールド14を流れる空気流量を調節する。スロットルバルブ16を制御することで、エンジン10に供給される空気量が制御される。スロットルバルブ16の上流側には吸気温センサ18が配置され、下流側には流量センサ20が配置されている。吸気温センサ18は、インテークマニホールド14内を流れる空気の温度を検出する。流量センサ20は、インテークマニホールド14内を流れる空気の流量を検出する。また、エンジン10には、ノッキングの発生の有無を検出するノックセンサ22が取付けられている。各センサ18,20,22は、ECU24に電気的に接続されている。
【0015】
ECU24には、上記した各センサ18,20,22及び後で詳述するアルコール濃度検出センサ40からの出力が入力される。ECU24は、アルコール濃度検出センサ40の出力から、燃料に含まれるアルコール濃度を算出する。また、ECU24は、算出したアルコール濃度と、各センサ18,20,22の出力に基づいて、インジェクタ12から噴射する燃料流量や、インジェクタ12から燃料を噴射するタイミング等を制御する。ECU24によるアルコール濃度を算出する手順については、後で詳述する。
【0016】
次に、燃料タンク26内に収容される燃料供給装置28について説明する。図2に示すように、燃料供給装置28は、リザーブタンク30と、リザーブタンク30内に収容される燃料ポンプ32を有している。リザーブタンク30は、燃料タンク26内の燃料を一時的に貯留する。燃料ポンプ32は配線32cによりECU24に接続されている。ECU24から配線32cを介して燃料ポンプ32に電力が供給されると、燃料ポンプ32は、リザーブタンク30内の燃料を吸引し、その吸引した燃料を昇圧し、その昇圧した燃料を吐出する。燃料ポンプ32の吸入ポート32aにはサクションフィルタ34が取付けられている。燃料ポンプ32の吐出ポート32bには高圧フィルタ36が取付けられている。このため、燃料ポンプ32には、サクションフィルタ34によって異物が除去された燃料が吸引され、また、燃料ポンプ32から吐出される燃料は高圧フィルタ36でさらに異物が除去されることとなる。高圧フィルタ32には燃料供給路38aの一端が接続されている。燃料供給路38aの他端はアルコール濃度検出センサ40に接続されている。アルコール濃度検出センサ40には燃料供給路38bの一端が接続され、燃料供給路38bの他端はインジェクタ12に接続されている(図1参照)。したがって、高圧フィルタ36で異物が除去された燃料は、燃料供給路38aを通ってアルコール濃度検出センサ40に流れ、アルコール濃度検出センサ40から燃料供給路38bを通ってインジェクタ12に流れる。なお、アルコール濃度検出センサ40には高圧フィルタ36によって異物が取り除かれた燃料が供給されるため、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができる。また、アルコール濃度検出センサ40を燃料タンク26内に配置することで、外気温の影響を低減することができる。
【0017】
図3,4に示すように、アルコール濃度検出センサ40は、LED42と光ファイバー44とフォトダイオード46を備えている。図4に示すように、LED42と光ファイバー44とフォトダイオード46は、燃料流路を形成するハウジング41内に配置されている。このため、燃料ポンプ32から燃料が吐出される状態では、LED42と光ファイバー44とフォトダイオード46が燃料中に浸漬された状態となる。
【0018】
LED42は、配線44aによりECU24に接続されている。ECU24は、LED42のオン/オフを制御する。LED42がオンすると、LED42から光が出射される。LED42は、光ファイバー44の一方の端面に近接した位置に配置されている。このため、LED42から出射される光は、光ファイバー44の一端面に入射される。なお、本実施例では、光源としてLED42を用いたが、その他の光源(例えば、レーザー等)を用いることができる。
【0019】
光ファイバー44は、一端面に入射された光を他端面に伝搬する。図5に示すように、光ファイバー44は、コア52とクラッド54を有している。コア52とクラッド54はともに、光に対して透過率が高い石英ガラス又はプラスチックで形成されている。コア52の屈折率は、クラッド54の屈折率よりも大きくされている。これによって、光ファイバー44に入射された光の多くが、コア52を伝搬することとなる。クラッド54は、コア52の外周面に設けられている。クラッド54は、その一部が除去されている。クラッド54が除去された部分では、コア52が表面に露出している。コア52が表面に露出した部分においては、コア52の表面(本実施例では片側半面(図5の上側の面))に金の薄膜50(以下、金薄膜50という)が形成されている。金薄膜50は、真空蒸着法によって形成することができる。金薄膜50の厚みは1〜200nmとされ、表面プラズモン共鳴現象が起こり易い厚みに形成されている。
なお、本実施例では、表面プラズモン共鳴現象を生じさせるために金薄膜50を形成したが、コア52の表面に形成する薄膜の材料には他の金属(例えば、銀、銅、アルミニウム等)を用いることができる。また、金と、これらの金属を積層した薄膜を用いることもできる。
【0020】
フォトダイオード46は、光ファイバー44を伝搬した光を受光し、その受光した光を電流に変換する。フォトダイオード46で変換される電流は、受光した光の強度に比例している。この電流は、抵抗Rにより電圧に変換される。抵抗Rによって変換された電圧は、電圧計48で計測される。電圧計48で計測された電圧値は、配線44bを介してECU24に入力される。
【0021】
ECU24は、電圧計48で計測された電圧値から燃料の屈折率を決定し、その屈折率から燃料中のアルコール濃度を決定する。すなわち、光ファイバー44(コア52)は燃料に浸漬されているため、コア52の金薄膜50は燃料に接している。このため、光ファイバー44(コア52)に光を入射すると、金薄膜50によって表面プラズモン共鳴現象が発生し、入射した光の一部が吸収される。表面プラズモン共鳴現象によって吸収される光の強度は、金薄膜50に接する燃料の屈折率によって異なる。このため、ECU24は、電圧計48で計測された電圧値(即ち、フォトダイオード46で受光した光の強度)から、燃料の屈折率を決定する。燃料の屈折率と燃料中のアルコール濃度の間には図6に示す関係が成立する(アルコール濃度が高くなると、屈折率が低くなる。)。このため、ECU24は、決定した屈折率から燃料中のアルコール濃度を決定する。
【0022】
上述した説明から明らかなように、本実施例のアルコール濃度検出装置では、光ファイバー44のコア52の表面に金薄膜50を形成し、コア52を伝搬する光の一部が表面プラズモン共鳴現象によって吸収されるようになっている。このため、燃料の屈折率の変化に対してフォトダイオード46で受光する光の強度が大きく変化し、燃料の屈折率を精度良く決定することができる。これによって、燃料中のアルコール濃度も精度良く検出することができる。
【0023】
(第2実施例) 次に、本発明の第2実施例に係るアルコール濃度検出装置を説明する。第2実施例のアルコール濃度検出装置は、第1実施例とは異なり、内燃機関の燃料として種類の異なる燃料(例えば、重軽質が異なる燃料)が使用され、使用される燃料性状の種類(例えば、重軽質)に応じてアルコール濃度が検出可能となっている点で相違する。なお、アルコール濃度検出装置のハード構成については、第1実施例と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0024】
第2実施例では、重軽質が異なる3種類の燃料A,B,Cが用いられる。図6から明らかなように、燃料A,B,Cの「屈折率−アルコール濃度」の特性(関係)は略同一の特性を有している。すなわち、燃料の重軽質が異なっていても、燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係は略同一となる。
そこで、ECUには、燃料性状の種類A,B,Cのそれぞれの「屈折率−アルコール濃度」の関係のうちの一つが記憶される。具体的には、種類Bの燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係が予め記憶される。種類Bの燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係は、種類Aの燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係と種類Bの燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係の略中間の特性を示すためである。
ECUは、アルコール濃度検出センサのフォトダイオードから出力される電圧値から燃料の屈折率を決定すると、まず、記憶している「屈折率−アルコール濃度」の関係を読出す。そして、その読出した「屈折率−アルコール濃度」の関係と決定した屈折率から、燃料のアルコール濃度を決定する。これによって、燃料性状の種類A,B,C(例えば、燃料の重軽質)が異なっても、燃料中に含有するアルコールの濃度を精度良く検出することができる。
なお、上述した実施例では、種類Bの燃料の「屈折率−アルコール濃度」の関係に基づいて種類A,Cの燃料のアルコール濃度まで決定していたが、種類A,B,C毎に「屈折率−アルコール濃度」の関係を記憶するようにしてもよい。この場合、燃料の種類を入力する手段を設けることが好ましい。そして、ECUは、入力された燃料の種類から、対応する「屈折率−アルコール濃度」の関係を特定し、次いで、その特定した「屈折率−アルコール濃度」の関係とセンサで測定された屈折率から燃料のアルコール濃度を決定することができる。
【0025】
(第3実施例) 次に、本発明の第3実施例に係るアルコール濃度検出装置を説明する。第3実施例のアルコール濃度検出装置は、第1実施例と異なり、金薄膜が形成された光ファイバーとは別に補償用の光ファイバーを有する点で相違する。その他の点は、第1実施例と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0026】
図7に示すように、本実施例のアルコール濃度検出装置は、LED(図示しない)からの光が入射される第1光ファイバー44と、LED(図示しない)からの光が入射される第2光ファイバー47を備えている。第1光ファイバー44は、第1実施例と同様に、コア52の一部が表面に露出しており、その部分に金薄膜50が形成されている。第2光ファイバー47は、第1光ファイバー44と同様、コア53の一部が表面に露出しているが、コア53には金薄膜が形成されていない。第1光ファイバー44を伝搬した光はフォトダイオード(図示しない)で受光され、第2光ファイバー47を伝搬した光はフォトダイオード(図示しない)で受光される。これら第1光ファイバー44と第2光ファイバー47は取付プレート56に固定されている。
【0027】
本実施例のECUは、第1光ファイバー44で伝搬された光を受光したフォトダイオードの出力(すなわち、第1光ファイバー44で伝搬された光の強度)と第2光ファイバー47で伝搬された光を受光したフォトダイオードの出力(すなわち、第2光ファイバー47で伝搬された光の強度)の両者を用いて、燃料の屈折率を決定する。具体的には、第1光ファイバー44で伝搬された光の強度から第2光ファイバー47で伝搬された光の強度を減算し、その減算値から燃料の屈折率を決定する。第1光ファイバー44と第2光ファイバー47は同一の取付プレート56に固定されているため、第1光ファイバー44と第2光ファイバー47は同じ様に変形している。このため、第1光ファイバー44と第2光ファイバー47の出力の差を採ることで、第1光ファイバー44が変形することによる光強度の変化を補償することができる。これによって、燃料の屈折率(アルコール濃度)を精度良く検出することができる。
【0028】
なお、第1光ファイバー44に光を入射するLEDと、第2光ファイバー47に光を入射するLEDを、同一のLEDとすることができる。このような構成とすれば、LEDの経時変化や電圧変化等によってフォトダイオードで受光される光の強度が変化しても、第1光ファイバー44に入射される光の強度と第2光ファイバー47に入射される光の強度が同様に変化するため、その影響をキャンセルすることができる。これによって、燃料の屈折率(アルコール濃度)を精度良く求めることができる。この場合、入射光学系に切替えミラーを配置すること等によって、第1光ファイバー44に光が入射される状態と、第2光ファイバー47に光が入射される状態とに切り替えるようにすることができる。
【0029】
また、第1光ファイバー44を伝搬した光を受光するフォトダイオードと、第2光ファイバー47を伝搬した光を受光するフォトダイオードを、同一のフォトダイオードとすることもできる。このような構成とすると、フォトダイオードの経時変化による影響がキャンセルされ、燃料の屈折率(アルコール濃度)を精度良く求めることができる。
この場合、受光光学系に切り替えミラーを配置すること等によって、第1光ファイバー44を伝搬する光をフォトダイオードに導く状態と、第2光ファイバー47を伝搬する光をフォトダイオードに導く状態とに切換え可能とすることができる。あるいは、入射光学系に切り替えミラーを配置すること等によって、第1光ファイバー44に光が入射される状態と、第2光ファイバー47に光が入射される状態とに切り替えるようにしてもよい。
【0030】
なお、上述した各アルコール濃度検出装置では、燃料の温度を検出する温度センサをさらに備えることができる。そして、ECU24は、温度センサで検出した燃料温度に基づいてアルコール濃度を補正することができる。燃料の密度は燃料の温度によって変化し、燃料の密度が変化すると燃料の屈折率が変化する。燃料の温度によってアルコール濃度を補正することで、燃料中のアルコール濃度を精度良く検出することができる。
【0031】
また、上述した各アルコール濃度検出装置では、光ファイバー44(詳細にはコア52)の金薄膜50が形成された部分が水分分離膜で覆われているようにしてもよい。金薄膜50が水分分離膜で覆われることで、燃料中の水分の影響が低減され、燃料中のアルコール濃度を精度良く決定することができる。なお、水分分離膜としては、例えばゼオライト膜等を用いることができる。
【0032】
さらに、上述したアルコール濃度検出装置では、LED42とフォトダイオード46が燃料流路内に配置されていたが、これらを燃料流路外に配置するようにしてもよい。このような構成によると、LED42及びフォトダイオード46が燃料中に浸漬しなくなるため、これらに耐燃料性が不要となり、装置の信頼性が向上する。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
10:エンジン
12:インジェクタ
14:インテークマニホールド
16:スロットル
18:センサ
20:センサ
22:上死点センサ
24:ECU(制御装置)
26:燃料タンク
28:燃料供給装置
30:リザーブカップ
32:燃料ポンプ
34:サクションフィルタ
36:高圧フィルタ
38a,38b:燃料供給路
40:アルコール濃度検出センサ
41:ハウジング
42:LED
44:光ファイバー
46:フォトダイオード
47:補償用光ファイバー
48:電圧計
50:金薄膜
52:コア
54:クラッド
56:取付プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に供給される燃料に含まれるアルコールの濃度を検出する装置であり、
光源と、
光源から入射される光を伝搬するコアを有する第1の光ファイバーと、
第1の光ファイバーによって伝搬された光を受光する第1の受光部と、
第1の受光部で受光した光の強度を用いて燃料に含まれるアルコール濃度を決定する演算部と、を備えており、
第1の光ファイバーのコアの少なくとも一部分が表面に露出しており、その露出した部分に表面プラズモン現象を発生する金属膜が形成されており、その金属膜が形成された部分が燃料中に浸漬されていることを特徴とするアルコール濃度検出装置。
【請求項2】
光源から入射される光を伝搬するコアを有する第2の光ファイバーと、第2の光ファイバーによって伝搬された光を受光する第2の受光部をさらに備えており、
第2の光ファイバーは、第1の光ファイバーと同一部分が表面に露出しており、その露出した部分には金属膜が形成されておらず、
演算部は、第1の受光部で受光した光の強度と第2の受光部で受光した光の強度の差を用いて、燃料に含まれるアルコール濃度を決定することを特徴とする請求項1に記載のアルコール濃度検出装置。
【請求項3】
燃料の温度を検出する温度センサをさらに備えており、
演算部は、温度センサで検出した燃料温度に基づいてアルコール濃度を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール濃度検出装置。
【請求項4】
第1の光ファイバーのコアの金属膜が形成された部分が水分分離膜で覆われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコール濃度検出装置。
【請求項5】
燃料性状の種類を入力する手段と、燃料性状の種類毎に屈折率とアルコール濃度の関係を記憶する記憶手段をさらに有しており、
演算部は、入力された燃料性状の種類に対応する屈折率とアルコール濃度の関係を用いてアルコール濃度を決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−223733(P2010−223733A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70928(P2009−70928)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】