アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置
【課題】ラゲージアウタパネルなどの自動車車体アウタパネルであって、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位5、6を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板30をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部2を成形する第一のパンチ11と、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチ15とを設け、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、ダイス22側に変位させて、第二のパンチ15を板の非接触外周部位35、36と接触させるように、これらパンチ同士を連動させる。
【解決手段】 パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位5、6を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板30をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部2を成形する第一のパンチ11と、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチ15とを設け、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、ダイス22側に変位させて、第二のパンチ15を板の非接触外周部位35、36と接触させるように、これらパンチ同士を連動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体アウタパネルなどの、成形が難しい大型形状のパネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置に関する。以下、アルミニウムをAlとも言う。
【背景技術】
【0002】
自動車のフード(ボンネット)、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等には、周知の通り、鋼製(鋼板)パネルに代わり、アルミニウム合金製パネルも使用されている。これらアルミニウム合金製パネルは、鋼板と同様に、アルミニウム合金板 (ブランク、パネル成形用素材板) を金型によりプレス成形した、パネル成形品 (プレス成形品:以下、単にパネルとも言う) が使用されている。
【0003】
この中でも、フードやラゲージなどのアウタパネルは、近年の自動車(パネル) 設計の多様化にもより、特にプレス成形が難しくなっている。この理由は、鋼板に比してアルミニウム合金板の成形性が劣ることと、これらアウタパネルの形状自身に起因する。
【0004】
ラゲージアウタパネルの一例を、図11に自動車車体の後部の斜視図で示す。図11のように、ラゲージアウタパネル1は、パネル中央部(頂部)に、車体幅方向に延在する高い(大きな)稜線部(峰部)2と、この稜線部2を囲む、二つ以上の長い(広大な)曲面部(あるいは凸状周縁部、輪郭部)3、4とを有する。そして、この稜線部2は、車体のデザイン上、図11に示すように、平面的に半円弧状の(湾曲した)形状のキャラクタラインを有していることが多い。なお、図11において、9はナンバープレートが装着されるライセンス座(凹部)である。
【0005】
このような半円弧状の大きな稜線部を有するラゲージアウタパネル1を、成形素材板であるアルミニウム合金板から、プレス装置により張出成形して製造する場合、成形品パネルの成形面表面に、特にしわが生じやすい。即ち、後述する図10のプレス成形品パネルのように、曲面部3、4から稜線部2にかけてXで示す部位にしわが生じやすい。
【0006】
このようなしわの発生は、半円弧状の大きな稜線部2を有するラゲージアウタパネル1のような製品形状を、アルミニウム合金板にて張出成形する場合に特有の問題である。これは、稜線部2が素材板を不均一に引張り、かつ、材料流入による肉余りが生じやすく、端部の素材板部分が下死点近傍までパンチと接触せず(以下、非接触外周部位とも言う)、自由に変形するためである。このようなしわの発生の問題は、前記非接触外周部位を有する成形品パネル特有の問題である。即ち、このような非接触外周部位の無い、あるいは稜線部2や曲面部3、4形状ではない、通常の平板状パネル成形品では、このようなしわの発生の問題は生じにくい。
【0007】
このようなラゲージアウタパネル1をプレス装置により張出成形する場合の、通常の方法をプレス中の板およびプレス装置の状態を示す図12(a)、(b)で説明する。図12(a)はプレス途中におけるアルミニウム合金板の変形状態を表す斜視図、図12(b)は、図12(a)の断面Bにおいてプレス装置およびアルミニウム合金板を切断してみた斜視図である。通常では、ダイス22とブランクホルダー(しわ押さえ部材)20によって、アルミニウム合金板30の周縁部31を挟持した上で、ボルスタ(基台)21上に固定されたパンチ11に向けて、ダイス22を相対的に移動(下降)させ、アルミニウム合金板30を成形する。
【0008】
この際、成形中のアルミニウム合金板30において、ラゲージアウタパネルの稜線部2に相当する頂部32と、ブランクホルダー20によって挟持された周縁部31との間の板33、34の部分はラゲージアウタパネルの曲面部3、4に相当する。
【0009】
図12(a)に示す成形途上のパネルにおいて、製品中央部における断面Aはパネルの稜線が略円弧状であることから、製品中央からはずれた位置にある断面Bよりもその頂部が高い形状になっている。言い換えると断面Aの線長lA(lA’)は断面Bの線長lB (lB ’)よりも長く、両断面A、Bの間には線長差が生じる。このように隣接する2断面に線長差が生じる際には、前述のように不均一な引張力が作用しやすく、肉余りも生じやすいため、端部の素材板部分が下死点近傍までパンチと接触しない、前記非接触外周部位が生じる。この非接触外周部位は自由に変形するために、前記した通り、図中に示すXなどにしわが生じやすくなる。
【0010】
これに対する対策としては、図13にプレス装置の断面を部分的に示すように、ブランクホルダー20よりも内側に、余肉形成部19、26を設けて、板30に対し余肉成形に伴う張力を作用させる方法が一般的である。即ち、板30の周辺部に、この余肉を設けることで、プレス成形の早い段階から板30が余肉部を形成する金型と接触し、かつ、余肉形成時に張力を加えることにより前記しわ発生を防止する方法が汎用されている。
【0011】
また、この他、大きな折り曲げ部分を端部に有するようなアルミニウム合金フードアウタパネルをプレス成形する場合に、しわ押さえ開始前もしくはしわ押さえ開始時に、しわの原因となる凹部の発生が予想される、板の成形面中心部を予め成形することも提案されている(例えば、特許文献1参照) 。この方法では、パンチのパネル(製品)成形面の高さを、しわ押さえ部材の上面よりも所定寸法だけ高くして、板の成形面中心部を予め成形する。
【0012】
更に、大きな折り曲げ部分を有し、この折り曲げ部分とパネル本体部分とを結ぶ輪郭線がパネル本体前方に向かって湾曲した形状を持つ自動車フードアウタパネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照) 。即ち、この方法は、板端部の前記折り曲げ部分に相当する部分の内、プレス成形時のしわ押さえ面に相当する部分が、プレス成形時のしわ押さえ部材面形状に適応する形状になるように、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工して曲げ部を形成した後、この曲げ部のしわ押さえ面に相当する部分を含めてしわ押さえしながら、プレス成形する方法である。そして、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工を、パネル本体の成形のためのパンチ部分とは独立して動く、分割されたパンチによって行うことも提案されている。
【特許文献1】特開2001-58218号公報 (全文)
【特許文献2】特開2004-188445 号公報 (全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記した素材板の周辺に形成された余肉部を成形する汎用的なしわ発生防止方法、即ち、図13において、前記した板30の周辺部分に余肉成形を行うことで素材板に張力を加える方法では、しわ抑止効果を十分に発揮することはできない。即ち、この方法では、余肉成形に寄与する余肉形成部19がパンチ11と一体に形成されていることから、パンチ11がダイス22に十分接近しないと余肉成形が開始されない。このため、この方法では、成形の比較的後期になるまで、製品端部近傍において金型と素材板とが接触せず、しわ発生につながる前記非接触外周部位の自由な変形を拘束できない。更に、この素材板と金型との接触タイミングが成形後期になるため、しわ抑止において重要な成形の初期段階での張力も発生せず、しわ抑止効果を十分に発揮することはできない。
【0014】
これに対して、成形の前半から、余肉部分の金型を素材板と接触させ、素材板に対しての変形拘束や張力効果を得ようとするとすれば、パンチ11上に設けられた余肉形成部19の凸部高さやダイスに設けられた余肉形成部26の凹部深さを極端に大きくする必要がある。但し、そのようにする場合には、成形の下死点近くでは、板30の周辺部に、極めて深い余肉が成形されてしまい、板30には過大な張力が作用することになる。このため、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、ラゲージアウタパネルの稜線部2あるいは余肉部15等に相当する部分の板厚減少の傾向がより大きくなり、場合によっては、板の破断を招く恐れがある。
【0015】
このように、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、しわを防止するために必要な余肉を設けると、この板厚減少の傾向が無視できないほどに大きくなり、パネル稜線部2や、余肉部15等での割れが生じやすくなる。したがって、素材板の周辺に形成された余肉部を成形する汎用的なしわ発生防止方法では、しわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができない。
【0016】
また、特許文献1 の方法は、パネル稜線部2の輪郭が、前記した半円弧形状(湾曲形状)ではなく、略直線的であるパネルの場合には、しわの抑制に一応有効である。しかし、本発明が対象とするような、ラゲージアウタパネルに対しては、やはり、しわ発生につながる前記非接触外周部位が存在し、この非接触外周部位の自由な変形を拘束できず、しわ発生防止効果が薄い。更に、特許文献2の方法は、ラゲージアウタパネルにおける稜線部2を、分割パンチにより、板の前後方向(車体長手方向)への曲げ加工により形成する点がユニークである。しかし、この板の前後方向の曲げ加工条件や分割パンチの設計条件の設定が難しく、この点で実用的ではない問題がある。
【0017】
なお、このような分割パンチによる成形方法としては、他に、割れ防止のために汎用される「呼び込み成形方法」がある。これは、パンチ側のパネル本体成形部分(例えば中央部分)に局部的(部分的)な可動部分を設け、この局部的な可動パンチ部分によって、ブランクを押し上げ、周囲から金型内への材料の流入量を増し、割れを防止するものである。しかし、この割れ防止方法では、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、しわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができない。即ち、前記局部的な可動パンチ部分により金型内への材料流入量が増すために、ブランクの余り、即ち、前記したパネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位が反対に大きくなって、成形パネルにしわが一層生じやすくなる。
【0018】
一方、これらの成形上の問題が依然ある中で、ベークハード性やリサイクル性に優れ、耐力が高いAl−Mg−Si系(6000系)などのアルミニウム合金板の自動車車体アウタパネルへの適用のニーズは、地球環境保護のための自動車の軽量化やエネルギー吸収性による車体安全性強化の必要性のために、益々高まっている。
【0019】
本発明はこのような事情に着目して、ラゲージアウタパネルなどの自動車車体アウタパネルであって、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法の要旨は、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとを設けるとともに、ダイス外周に設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、このプレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記非接触外周部位と接触させるように、これらパンチ同士を連動させることである。
【0021】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法の好ましい態様としては、前記第二のパンチが接触する前記非接触外周部位が前記成形品パネルの余肉部であることとする。また、前記第二のパンチが前記第一のパンチの周囲に配置された略環状の形状を有することとする。
【0022】
別の好ましい態様として、更に、前記アルミニウム合金板のプレス成形を開始する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させていることとする。また、前記第二のパンチを前記非接触外周部位に接触させた後に、前記第一のパンチにより前記パネルの中央部を成形することとする。
【0023】
別の好ましい態様として、また、前記第二のパンチのアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設け、これと対応する前記ダイス側のアルミニウム合金板との接触面にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けたこととする。また、前記第二のパンチのダイス側への相対的な変位量が80mm以下であることとする。
【0024】
本発明が対象とする成形品パネルは、中央部に稜線を持ち、その稜線を囲む少なくとも2つ以上の曲面で構成されていることが好ましい。そして、成形品パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有することが好ましい。このような成形品パネルとして、フード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフから選択される自動車車体アウタパネルであることが好ましい。
【0025】
一方、前記プレス成形されるアルミニウム合金板が、0.2%耐力が130MPa以上のAl−Mg−Si系アルミニウム合金であることが好ましい。
【0026】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス装置の要旨は、上記要旨または上記好ましい要旨か後述する好ましい要旨のプレス成形方法に用いられ、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形するプレス装置であって、成形品パネルの中央部を成形する第一のパンチと、第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとが設けられ、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位して、アルミニウム合金板における前記非接触外周部位に接触できるように、これらパンチ同士が連動されていることである。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、上記要旨のように、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチに対して、これと別個に変位できる第二のパンチを少なくとも一つ以上用いて、成形パネル中央部の更に外側(外周部)の、前記非接触外周部位と接触させることを特徴とする。
【0028】
即ち、本発明では、先ず、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触する第二のパンチとを設ける、あるいは成形用のパンチをこれら第一と第二のパンチとに分割し、第二のパンチは第一のパンチに対して別個に変位できるものとして構成する。
【0029】
なお、本発明では、第一のパンチが成形する範囲は、前記パネルの中央部のみだけではなく、その中央部近傍や中央部周囲の成形必要部位を含むものであって当然良い。したがって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと言う表現は、前記パネルの中央部のみか、前記パネルの中央部近傍や中央部周囲を含めて成形する第一のパンチと言う意味である。
【0030】
以上の構成を前提として、本発明では、成形パネル中央部を形成する第一のパンチが、ダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的位置を、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、プレス下死点での相対的位置に比べてダイス側に変位させる。言い換えると、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位しているように、これらパンチ同士を連動させる。
【0031】
これによって、第一のパンチがダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、第一のパンチの周辺に配置された、少なくとも一つ以上の第二のパンチが、成形の早い段階で、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触あるいは更に進んでこの部位を成形し、素材端部のしわ変形を拘束するとともに素材板に与える張力を制御することが可能となる。なお、本発明で言う、前記非接触外周部位には、成形品パネルの非接触外周部位と、これに対応する、成形素材であるアルミニウム合金板における非接触外周部位との両方の意味があり、本発明ではこれらを適宜使い分ける。
【0032】
つまり、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどのように、前記した図12における、稜線の張り出し高さが高く、断面A、Bの線長差が大きい場合にでも、前記非接触外周部位を解消して、この板(成形中のパネル)の領域全般に亙って、張力を作用させることができる。このため、成形の比較的初期から発生するしわに対しても抑制効果を発揮できる。
【0033】
また、さらに複数の第二のパンチを用いて、それぞれ独立的に、各非接触外周部位との接触のタイミングを制御すれば、製品の形状に応じて、製品内の場所ごとに、素材板に与える張力をきめ細かく制御することができる。この効果を最大限に発揮するためには、第二のパンチは、製品周囲に設けられる余肉部に対応する部分に設けることが好ましい。
【0034】
そして、本発明では、以上説明したしわ抑制の作用効果(第二のパンチによる素材板の拘束と張力付与の機能)の他に、第二のパンチによる、製品(成形パネル)の破断を防止できる効果も有している。即ち、第一のパンチによる成形工程の早い段階から、第二のパンチが素材板(非接触外周部位)と接触するので、素材板の変形拘束と張力付与を行うことができる。この一方で、プレス下死点では、第二のパンチのダイスに対する相対位置が、プレス成形中に比べて、パンチ側の方に移動する。これによって、余肉の高さが低くなり、破断しやすいプレス下死点近傍において、張力を過大に増大させない効果を奏する。
【0035】
言い換えると、本発明では、しわが発生するか否かを律する成形工程の前半から、成形されるパネルの前記稜線を囲む曲面部(3、4)に相当する素材板部分の変形を拘束し、十分な張力を板に作用させることができる。この結果、成形工程の前半ではしわ発生を防止するとともに、成形工程の後半においては、張力レベルを一定値以下に制御できることで、下死点近くにおいて、材料が極端に板厚減少し、破断することを防止できる。
【0036】
特に、プレス成形開始時点における、第二のパンチの、第一のパンチに対する相対的位置を、プレス下死点での相対的位置に比べて、予めダイス側に変位させておく態様は、設備上好ましい。このような態様では、成形が進行して第一のパンチが下死点に近づくにつれて、第二のパンチのダイスに向かう移動を停止させ、ダイスとの間に板を挟持した状態を維持しながら成形する。このような成形の態様は、可動金型とダイクッションとを組み合わせることで可能であり、比較的単純な金型構成で達成可能であり、設備上好ましいといえる。
【0037】
一方、これに対して、第一のパンチに対して、第二のパンチの変位を独立的に制御する機構を設けた場合、プレス装置は設備的に複雑になるが、より積極的に素材板と金型との接触および張力付与のタイミングを制御可能であり、より成形の難しい(しわ、破断の生じやすい)製品(成形パネル)をプレス成形するのに好適である。
【0038】
以上のように、本発明では、前記難成形におけるしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができ、ラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルであって、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態について、図1〜10を用いて詳細に説明する。
【0040】
(プレス装置)
先ず、本発明で用いるプレス装置を、図2〜8を用いて説明する。図2は上型(ダイス:図2では成形品中央に相当する中央部を取り除いた周辺部のみ表示)22と、下型である第一のパンチ11、第二のパンチ15、ブランクホルダー(しわ押さえ部材)20とを組み合わせた態様を示している。
【0041】
(下型)
図3は、下型のみを示し、第一のパンチ(本体パンチ)11と、この第一のパンチ11と分割され、独立した動き(変位)をなす、第二のパンチ(分割パンチ)15とを組み合わせた態様を示している。これらパンチ11、15の上面には、上型であるダイス22中央の成形形成面と係合される、製品形成面を各々有する。
【0042】
即ち、第一のパンチ11は、本体パンチとして、成形パネル(素材板)の中央部を成形する。具体的には、第一のパンチ11は、図4に斜視図で部分的に示すように、製品形成面として、パネル中央部の稜線部(図11の2)を形成する稜線部12と、このパネルの稜線部12を囲む平面部(図11の3、4)を形成する、平面部13、14とを有する。
【0043】
また、第二のパンチ15は、分割されたパンチとして、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)と接触するか、更に進んで、この非接触外周部位を積極的に成形する。具体的には、第二のパンチ15は、図5に斜視図で部分的に示すように、製品形成面(後述する余肉形成面)として、第一のパンチ11の周囲に配置された略環状の形状を有している。
【0044】
但し、この第二のパンチ15の周囲形状(輪郭)や数は、第一のパンチ11の周囲形状(輪郭)に応じて決められるべきものであり、必ずしも図5のような円環状や1個のみでなくとも良い。この点、例えば、第一のパンチ11の周囲を部分的に囲む複数のパンチあるいはパーツ(部分)からなる、部分的な環状形状でも良い。
【0045】
これらのパンチ11、15の取り付け状態を、パンチ11、15をボルスタ上に取り付けた状態の斜視図8で示す。パンチ11は、ボルスタ上に剛体的に取り付けられる。一方第二のパンチ15は、その必要箇所に必要数配置されたガススプリング18などを介してボルスタに結合されており、第二のパンチ15に上方から圧縮力が作用すれば下方に沈み込む構造となっている。別の態様として、第二のパンチ15を、前記した通り、複数個設け、各々別個の油圧などの駆動装置を介して、上型に対して、各々別個に進退可能(昇降可能)なように構成しても良い。
【0046】
図6に斜視図で示すように、上型のダイス22は、成形品中央に相当する中央部と、しわ押さえ面23、23を各々有している。また、図7に斜視図で示すようにブランクホルダー(しわ押さえ部材)20は各々24、24のしわ押さえ面を有している。そして、ブランクホルダー20は、クッションピン( 図示しない) により保持されており、プレス装置の下部の油圧機構で発生する上向きの力がクッションピンを介してブランクホルダー20に伝えられ、しわ押さえ力としてブランクを保持するのに使われる。
【0047】
(上型)
一方、上型は、図1(a)を用いて説明すると、ダイス22は昇降装置に連結されたスライド( 図示しない) に取り付けられている。このダイス22の下面には製品形成面22aが形成されている。また、ダイス22の最外周部には、前記下型のブランクホルダー20のしわ押さえ面24、24と各々対向する位置に、枠状のしわ押さえ面23、23が形成されている。
【0048】
そして、ダイス22の、前記下型の第二のパンチ15の余肉形成面16、17に対応する位置に、第二のパンチ15と協働して、板30の平面部33、34の更に外縁側の各余肉部35、36を各々成形するための余肉形成面22b、22cが各々設けられている。
【0049】
(成形方法)
プレス装置の断面図である図1(a)、(b)、(c)、(d)を用いて、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法を説明する。なお、この図1のプレス装置は、前提として、下側のパンチ11は、ボルスタ21に固定されて動かず、成形は、上側のダイス22の方が下降して(下向きの矢印で示す)行なうものである。この点、下側のパンチ11側を上昇させるようにしても良く、要は、パンチ11とダイス22とが相対的に移動するものであれば良い。
【0050】
図1(a)は、プレス装置にアルミニウム合金板30をセットした、パンチによる成形開始前の状態を示す。この図1(a)では、板30の最周縁部31が、ダイス22の周辺部に位置するしわ押さえ面23、23と、ブランクホルダー20のしわ押さえ面24、24とによって、適当なしわ押さえ力で挟持される。このしわ押さえ力は、通常のアルミニウム合金板のプレス成形で用いられる範囲で良い。ここで、ブランクホルダー20は、アルミニウム合金板30がセットされる前は、各々クッションピン25により、上限位置に保持されている。
【0051】
(第二パンチの作用)
図1(b)は、ダイス22が成形の下死点位置より上方65mmの位置まで下降した状態を示す。このダイス22の下降にあわせて、ブランクホルダー20は、その一部であるしわ押さえ面24と、ダイス22の周辺に位置するしわ押さえ面23との協働によりアルミニウム合金板30を挟持した状態のまま、沈み込む動きをする。
【0052】
この図1(b)では、第一のパンチ11の成形に先立ち、第二のパンチ15が前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)である、板の余肉部35、36(後述する成形品パネルの余肉部5、6に対応)との接触、あるいは成形を開始した状態を示す。
【0053】
この状態では、ダイス22の余肉形成面22b、22cが、第二のパンチ15の余肉形成面16、17に対応し、第二のパンチ15とダイス22とが協働して、板30の各余肉部35、36(平面部33、34の更に外縁側)への接触、あるいは、更に進んでこの部位の成形を各々開始する。
【0054】
このためには、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態としている。即ち、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め変位させている。
【0055】
ここで、前記非接触外周部位を解消して、素材板端部のしわ変形を拘束するとともに、素材板に与える張力を制御できる効果を発揮できれば、第二のパンチ15を、板余肉部(前記非接触外周部位)35、36へ、単に接触させるか、あるいは積極的にこの部位を成形するかは、適宜選択される。通常のプレス成形条件では、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触するだけではなく、更に進んでこの部位を成形する方が、前記非接触外周部位を解消して、素材板端部のしわ変形を拘束するとともに、素材板に与える張力を制御できる効果を発揮しやすい。
【0056】
(第一パンチによる板の成形)
この図1(b)の状態では、第一のパンチ11は、板30の中央部である稜線部相当部位32(2)の成形を未だ開始していない。但し、ダイス22は第一のパンチ11に向かって引き続き下降し、この図1(b)の状態以降、第一のパンチ11が板30の成形を開始している。即ち、第一のパンチ11の製品形成面12、13、14が、ダイスの製品形成面22aとの協働で、パネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)と、このパネルの稜線部2を囲む平面部3、4(板の相当部位33、34)とを成形する。
【0057】
この際、前記した通り、既に板30の各余肉部35、36の成形を開始している第二のパンチ15とダイス22とは、第一のパンチ11により成形される板30に対し、第二のパンチ15の余肉形成面16、17と、ダイス22の余肉形成面22b、22cとの各接触点2箇所で拘束する。即ち、第一のパンチ11による成形の際に、板30におけるパネル中央部の稜線部2に相当する部位32に対し、周囲から張力を与えるよう機能する。
【0058】
これによって、第一のパンチ11が、ダイス22との協働で、アルミニウム合金板30を成形する際に、板30におけるパネルの曲面部3、4に相当する部位32に対し、周囲から張力を与えて拘束しながら成形することが可能となる。
【0059】
しかも、第二のパンチ15による、板30の各余肉部35、36の位置や成形度合いを調整することによって、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどのように、前記した図12における、上記張力が作用すべき板30の断面A、Bの線長差が大きくても、パネル全般に亙って張力を作用させることができる。
【0060】
このため、例え、板30の断面A、Bの線長差が大きくても、第一のパンチ11やダイス22によって成形される際に、前記非接触外周部位を解消して、ラゲージアウタパネルの平面部3、4に相当する部分にしわが生じにくくなる。
【0061】
図1bの例では、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板の成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態とし、第一のパンチでの成形が始まる前に、第二のパンチ15での接触、成形を開始するようにしている。
【0062】
このためには、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態としている。即ち、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め変位させている。
【0063】
ここで、第一のパンチ11が成形を開始した後に、第二のパンチ15の成形が始まるように、第二のパンチ15の位置を設定していても良い。また、成形中の一時点で第二のパンチ15を第一のパンチ11に比べてダイス側に変位させることで、素材と第二のパンチを早期に素材と接触させても良い。この第二のパンチと素材の接触タイミングは、成形する製品に加える張力に応じて便宜選択される。重要なことは、下死点での破断の防止と、プレス成形中の早い段階で素材の拘束および張力付与の両立が可能なように、プレス成形中の一時点において可動パンチの第一のパンチに対する相対的位置が、プレス下死点における位置に比べてダイス側に変位していることにある。
【0064】
図1(c)は、上記図1(b)の状態以降で、引き続き、ダイス22が第一パンチ11に向かって、成形下死点から32mm上方の位置まで移動(下降)した状態を示す。この状態では、第二のパンチ15によるしわ抑制作用、即ち、第二パンチ15による板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形の機能は、接触あるいは成形の進行とともに増大する。
【0065】
そして、ダイス22の余肉形成面22b、22cと、第二のパンチ15の余肉形成面16、17とが、アルミニウム合金板30に形成される余肉部(前記非接触外周部位)35、36を隙間なく挟持する位置で最大となる。しかし、この機能は、これ以降の成形工程で、さらに増大させる必要は無く、それ以降はほぼ同程度で良い。即ち、この図1(c)の第一のパンチ11が、ダイス22に向かって32mmまで相対的に移動(上昇)した状態より以降は、同程度の張力を与えるだけでよい。前記した通り、ラゲージアウタパネルの平面部3、4に相当する部分にしわが発生するか否かは、第一のパンチ11によるこの図1(c)までの成形工程の前半で決まる。
【0066】
(第二のパンチの下降)
この点、本発明では、この成形工程の後半では、成形が進行してダイス22が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15を、ダイス22と連動して、アルミ合金板30を挟持した状態のまま下降させる。即ち、図1(c)の、ダイス22が、余肉形成面22b、22cと第二のパンチ15の余肉形成面16、17との協働で、アルミニウム合金板30に形成される余肉部35、36を挟持する上記位置まで移動(下降)した状態以降、成形が進行して、ダイス22が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15を、ダイス22と連動して、アルミ合金板30を挟持した状態のまま下降させる。この下降は、ダイス22の下降により、第二のパンチ15を支持するガススプリング18を縮ませることにより行なう。
【0067】
これによって、第二のパンチ15とダイス22による、前記余肉部の35、36の成形乃至上記張力付与の(拘束)機能を一定レベルで維持する。即ち、成形が進行して第一のパンチ11が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15はダイス22に向かう移動を停止させ、ダイス22との間に板を挟持した状態を維持する。これによって、板33、34の部分に対する、成形後半の無用の張力の増大を無くし、この状態で第一のパンチ11による後半の成形を行なわせ、図1(d)のように、パネルの張出成形を終了させる。このため、板厚を大きく減少させずに、板厚減少率を通常の張出成形と同程度に抑制することが可能となる。
【0068】
なお、図1(c)では、第二のパンチ15とダイス22により、素材を完全に挟持した状態で成形しているが、必ずしも完全に挟持する必要はない。例えば、第二のパンチ15とダイス22の間に所定のクリアランスを設けた状態、即ち、第二のパンチ15が単に板に接触した状態、あるいは上記クリアランスを設けた状態で第二のパンチ15により板を成形しても良い。
【0069】
このような、第二のパンチ15が単に板に接触した状態、あるいは上記クリアランスを設けた状態で第二のパンチ15により板を成形した状態では、図1(c)のように完全に挟持する場合に比べて、素材板に加わる張力は小さくなる。しかし、素材板との第二のパンチが接触していることにより、素材板の変形拘束効果と摩擦抵抗による張力付与効果は得られる。このように、第二のパンチの動きは、素材板の破断としわの発生双方を両立させるために、成形条件に応じて、便宜選択することができる。
【0070】
仮に、前記のような第二パンチの下降動作を使わずに、成形の初期からの余肉成形による上記張力付与の機能を得るには、図13のようなパンチと一体に形成される余肉形成部19、ダイスの余肉形成部26において、前記した通り、特に余肉の高さを高くすることになる。しかしこの方法では、成形の下死点近くでは、余肉形成部26、19での成形深さが極めて深くなるため、過大な張力をアルミニウム合金板に作用させてしまうこととなる。よって、これも前記した通り、板厚減少率が大きくなり、成形中の板の割れの原因となる。
【0071】
図1(d)では、張出成形の最終段階(成形下死点での状況)を図示している。即ち、この図1(d)に示すパネル成形品1において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。また、5、6が、分割パンチ15の余肉形成面16、17と、ダイス22の余肉形成面22b、22cとによって成形された、特徴的な余肉部(板の相当部位35、36:前記非接触外周部位)である。
【0072】
なお、この図1(d)では、第二のパンチ15の余肉形成面16、17は上面が平坦な形状となっているが、この形状は平坦でなくとも良く、上面が略半円状の凸形状でも良い。また、第二のパンチ15のアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設けても良い。更に、これと対応するダイス22側の余肉形成面22b、22c(アルミニウム合金板との接触面)にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けても良い。これら凹凸あるいは段差などによって、下死点近傍で板部位を成形することで、板に積極的に張力が加わり、パネル成形品の面ひずみを消して、形状精度をより向上させるなどの効果が期待できる。
【0073】
以上のように張出成形されたパネル成形品は、更に、その後、ナンバープレートが装着される凹部(座)5が成形されたり、前記余肉部分5、6や最周縁部などがトリミング加工されて除去され、パネル製品として、前記図11に示したラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルなどに仕上げられる。
【0074】
本発明では、以上説明したように、パネル張出成形時のしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができる。この結果、ラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルであって、前記パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有するなど、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。したがって、本発明は、これら成形が難しい形状の大型パネルの代表例である、フード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフなどから選択されるアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルに適用されて好ましい。
【0075】
(アルミニウム合金)
本発明で用いるアルミニウム合金は、剛性、強度、成形性、耐食性など、パネル用途の要求特性に応じた、AA乃至JIS規格に規定される乃至含まれる、3000系、5000系、6000系、7000系などから選択されるアルミニウム合金材料が適宜選択される。ただ、これらの中でも、アルミニウム合金製自動車車体アウタパネルなどに汎用され、ベークハード性に優れさせるために、0.2%耐力が130MPa以上の高強度で張出成形され、前記成形性改善の要求が高い、Al−Mg−Si系(6000系)アルミニウム合金板に適用されて好適である。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明の実施例を説明する。アルミニウム合金の中でも、張出成形がより難しい、AA6061−T4材の高強度アルミニウム合金板を、図11に示した形状のラゲージアウタパネル1に張出成形した。そして、成形品のしわ発生状況を調査した。このアルミニウム合金板の0.2%耐力は150MPa、板厚は1.0mm、大きさは、幅:1840mm×長さ:1450mmであった。
【0077】
成形したラゲージアウタパネル1は、パネル中央部(頂部)に、車体幅方向に延在する高さ200 mmの大きな稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3(長さ380 mm)、4(長さ420 mm)とを有する。そして、この稜線部2は、平面部3と4とのなす折り曲げ角度が100 °、平面的には、曲率半径が3000mm、長さ1250mmの半円弧状形状のキャラクタラインを有している。
【0078】
発明例で使用したプレス装置は、図1、図2〜8で説明した、余肉成形用のパンチを分割したプレス装置10を用いて、張出成形試験した。発明例の下死点上65mmと32mmにおけるパネル成形品を図9(a)、(b)に斜視図で各々示す。図9(a)、(b)に示すパネル成形品において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。また、5、6が第二のパンチ15によって成形された、特徴的な余肉部(板の相当部位35、36:前記非接触外周部位)である。
【0079】
図9(a)、(b)に示す通り、発明例では、下死点上65mmと32mmとにおいて、また、図示はしないが、下死点における成形品パネルにも、パネル中央部の稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3、4には、前記しわが発生しやすい部位Xを含めて、しわ、割れは生じていなかった。また、最終パネル成形品表面の平滑性や稜線部のキャラクタラインを含めた形状精度にも優れていた。
【0080】
更に、この発明例の、下死点における成形品パネルの、最も板厚減少が大きくなる稜線部2の最大板厚減少率(元の板厚に対する板厚減少率)は、後述する従来例の最大板厚減少率よりも若干大きい18.7%程度であった。これは、アルミニウム合金製ラゲージアウタパネルの張出成形における、割れが発生しやすくなる上限の板厚減少率の20%よりも小さく、許容範囲内である。
【0081】
一方、従来例は、図12で説明した、従来の、通常の一体型パンチ11を用いたプレス装置を用いて、張出成形試験した。この従来例のパネル成形品を図10(a)、(b)に斜視図で各々示す。図10(a)、(b)に示す従来のパネル成形品において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。
【0082】
図10(a)、(b)に示す通り、従来例では、下死点上65mmと32mmとにおいて、また、図示はしないが、下死点における成形品パネルにも、パネル中央部の稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3、4の、前記しわが発生しやすい部位Xに、多くの大きなしわが発生している。この結果、最終パネル成形品表面の平滑性や稜線部のキャラクタラインを含めた形状精度にも劣っていた。なお、下死点における従来例成形品パネルの稜線部2の最大板厚減少率は16.7 %であり、割れが発生しやすくなる上限の板厚減少率20%に近かった。
【0083】
これらの実施例から、本発明成形方法の、難成形パネルを成形するに際してのしわを抑制する効果が裏付けられる。なお、本実施例では、最も成形が困難な6000系について、成形性向上効果を裏付けている。この結果、6000系よりも成形しやすい、3000系や5000系のAl合金板に適用された場合にも、成形性は確実に向上する。これらAl合金は合金組成や調質 (熱処理) 条件によって、引張強さ、耐力、伸びなどの機械的性質は勿論異なる。このため、前記したしわの発生の程度は異なるものの、しわの発生機構自体は、これら機械的性質によらず、共通しており、これに対する本発明のしわ抑制機構も共通するからである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、ラゲージアウタパネルなどの自動車車体アウタパネルであって、前記非接触外周部位を有し、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置を提供することができる。このため、自動車などのアウタパネル成形品用途に、成形素材としてのアルミニウム合金板の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明成形方法の一実施態様を段階的に示すプレス装置の断面図である。
【図2】本発明に係る金型の一実施態様を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る金型の一実施態様を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るパンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る分割パンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る板押さえの一実施態様を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る板押さえの一実施態様を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る分割パンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図9】本発明成形方法による成形品を示す斜視図である。
【図10】従来の成形方法による成形品を示す斜視図である。
【図11】ラゲージアウタパネルの一例を示す斜視図である。
【図12】従来の成形方法を示すプレス装置の断面図である。
【図13】従来の成形方法を示すプレス装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1:ラゲージアウタパネル、2:稜線部、3、4:平面部、
5、6:成形品パネルの非接触外周部位(成形品パネルの余肉部)、
10:プレス装置、11:第一のパンチ、12:パンチ稜線部、
13、14:パンチ平面部、15:第二の分割パンチ、
16、17:余肉形成面、18:ガススプリング、19、26:余肉形成部、
20:ブランクホルダー、21:ボルスタ、22:ダイス、
23、24:しわ押さえ面、25:クッションピン、30:板、
31:板の最周縁部、32:板の稜線部2相当部位、
33、34:板の平面部3、4相当部位、
35、36:板の非接触外周部位(板の余肉部)、
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体アウタパネルなどの、成形が難しい大型形状のパネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置に関する。以下、アルミニウムをAlとも言う。
【背景技術】
【0002】
自動車のフード(ボンネット)、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等には、周知の通り、鋼製(鋼板)パネルに代わり、アルミニウム合金製パネルも使用されている。これらアルミニウム合金製パネルは、鋼板と同様に、アルミニウム合金板 (ブランク、パネル成形用素材板) を金型によりプレス成形した、パネル成形品 (プレス成形品:以下、単にパネルとも言う) が使用されている。
【0003】
この中でも、フードやラゲージなどのアウタパネルは、近年の自動車(パネル) 設計の多様化にもより、特にプレス成形が難しくなっている。この理由は、鋼板に比してアルミニウム合金板の成形性が劣ることと、これらアウタパネルの形状自身に起因する。
【0004】
ラゲージアウタパネルの一例を、図11に自動車車体の後部の斜視図で示す。図11のように、ラゲージアウタパネル1は、パネル中央部(頂部)に、車体幅方向に延在する高い(大きな)稜線部(峰部)2と、この稜線部2を囲む、二つ以上の長い(広大な)曲面部(あるいは凸状周縁部、輪郭部)3、4とを有する。そして、この稜線部2は、車体のデザイン上、図11に示すように、平面的に半円弧状の(湾曲した)形状のキャラクタラインを有していることが多い。なお、図11において、9はナンバープレートが装着されるライセンス座(凹部)である。
【0005】
このような半円弧状の大きな稜線部を有するラゲージアウタパネル1を、成形素材板であるアルミニウム合金板から、プレス装置により張出成形して製造する場合、成形品パネルの成形面表面に、特にしわが生じやすい。即ち、後述する図10のプレス成形品パネルのように、曲面部3、4から稜線部2にかけてXで示す部位にしわが生じやすい。
【0006】
このようなしわの発生は、半円弧状の大きな稜線部2を有するラゲージアウタパネル1のような製品形状を、アルミニウム合金板にて張出成形する場合に特有の問題である。これは、稜線部2が素材板を不均一に引張り、かつ、材料流入による肉余りが生じやすく、端部の素材板部分が下死点近傍までパンチと接触せず(以下、非接触外周部位とも言う)、自由に変形するためである。このようなしわの発生の問題は、前記非接触外周部位を有する成形品パネル特有の問題である。即ち、このような非接触外周部位の無い、あるいは稜線部2や曲面部3、4形状ではない、通常の平板状パネル成形品では、このようなしわの発生の問題は生じにくい。
【0007】
このようなラゲージアウタパネル1をプレス装置により張出成形する場合の、通常の方法をプレス中の板およびプレス装置の状態を示す図12(a)、(b)で説明する。図12(a)はプレス途中におけるアルミニウム合金板の変形状態を表す斜視図、図12(b)は、図12(a)の断面Bにおいてプレス装置およびアルミニウム合金板を切断してみた斜視図である。通常では、ダイス22とブランクホルダー(しわ押さえ部材)20によって、アルミニウム合金板30の周縁部31を挟持した上で、ボルスタ(基台)21上に固定されたパンチ11に向けて、ダイス22を相対的に移動(下降)させ、アルミニウム合金板30を成形する。
【0008】
この際、成形中のアルミニウム合金板30において、ラゲージアウタパネルの稜線部2に相当する頂部32と、ブランクホルダー20によって挟持された周縁部31との間の板33、34の部分はラゲージアウタパネルの曲面部3、4に相当する。
【0009】
図12(a)に示す成形途上のパネルにおいて、製品中央部における断面Aはパネルの稜線が略円弧状であることから、製品中央からはずれた位置にある断面Bよりもその頂部が高い形状になっている。言い換えると断面Aの線長lA(lA’)は断面Bの線長lB (lB ’)よりも長く、両断面A、Bの間には線長差が生じる。このように隣接する2断面に線長差が生じる際には、前述のように不均一な引張力が作用しやすく、肉余りも生じやすいため、端部の素材板部分が下死点近傍までパンチと接触しない、前記非接触外周部位が生じる。この非接触外周部位は自由に変形するために、前記した通り、図中に示すXなどにしわが生じやすくなる。
【0010】
これに対する対策としては、図13にプレス装置の断面を部分的に示すように、ブランクホルダー20よりも内側に、余肉形成部19、26を設けて、板30に対し余肉成形に伴う張力を作用させる方法が一般的である。即ち、板30の周辺部に、この余肉を設けることで、プレス成形の早い段階から板30が余肉部を形成する金型と接触し、かつ、余肉形成時に張力を加えることにより前記しわ発生を防止する方法が汎用されている。
【0011】
また、この他、大きな折り曲げ部分を端部に有するようなアルミニウム合金フードアウタパネルをプレス成形する場合に、しわ押さえ開始前もしくはしわ押さえ開始時に、しわの原因となる凹部の発生が予想される、板の成形面中心部を予め成形することも提案されている(例えば、特許文献1参照) 。この方法では、パンチのパネル(製品)成形面の高さを、しわ押さえ部材の上面よりも所定寸法だけ高くして、板の成形面中心部を予め成形する。
【0012】
更に、大きな折り曲げ部分を有し、この折り曲げ部分とパネル本体部分とを結ぶ輪郭線がパネル本体前方に向かって湾曲した形状を持つ自動車フードアウタパネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照) 。即ち、この方法は、板端部の前記折り曲げ部分に相当する部分の内、プレス成形時のしわ押さえ面に相当する部分が、プレス成形時のしわ押さえ部材面形状に適応する形状になるように、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工して曲げ部を形成した後、この曲げ部のしわ押さえ面に相当する部分を含めてしわ押さえしながら、プレス成形する方法である。そして、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工を、パネル本体の成形のためのパンチ部分とは独立して動く、分割されたパンチによって行うことも提案されている。
【特許文献1】特開2001-58218号公報 (全文)
【特許文献2】特開2004-188445 号公報 (全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記した素材板の周辺に形成された余肉部を成形する汎用的なしわ発生防止方法、即ち、図13において、前記した板30の周辺部分に余肉成形を行うことで素材板に張力を加える方法では、しわ抑止効果を十分に発揮することはできない。即ち、この方法では、余肉成形に寄与する余肉形成部19がパンチ11と一体に形成されていることから、パンチ11がダイス22に十分接近しないと余肉成形が開始されない。このため、この方法では、成形の比較的後期になるまで、製品端部近傍において金型と素材板とが接触せず、しわ発生につながる前記非接触外周部位の自由な変形を拘束できない。更に、この素材板と金型との接触タイミングが成形後期になるため、しわ抑止において重要な成形の初期段階での張力も発生せず、しわ抑止効果を十分に発揮することはできない。
【0014】
これに対して、成形の前半から、余肉部分の金型を素材板と接触させ、素材板に対しての変形拘束や張力効果を得ようとするとすれば、パンチ11上に設けられた余肉形成部19の凸部高さやダイスに設けられた余肉形成部26の凹部深さを極端に大きくする必要がある。但し、そのようにする場合には、成形の下死点近くでは、板30の周辺部に、極めて深い余肉が成形されてしまい、板30には過大な張力が作用することになる。このため、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、ラゲージアウタパネルの稜線部2あるいは余肉部15等に相当する部分の板厚減少の傾向がより大きくなり、場合によっては、板の破断を招く恐れがある。
【0015】
このように、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、しわを防止するために必要な余肉を設けると、この板厚減少の傾向が無視できないほどに大きくなり、パネル稜線部2や、余肉部15等での割れが生じやすくなる。したがって、素材板の周辺に形成された余肉部を成形する汎用的なしわ発生防止方法では、しわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができない。
【0016】
また、特許文献1 の方法は、パネル稜線部2の輪郭が、前記した半円弧形状(湾曲形状)ではなく、略直線的であるパネルの場合には、しわの抑制に一応有効である。しかし、本発明が対象とするような、ラゲージアウタパネルに対しては、やはり、しわ発生につながる前記非接触外周部位が存在し、この非接触外周部位の自由な変形を拘束できず、しわ発生防止効果が薄い。更に、特許文献2の方法は、ラゲージアウタパネルにおける稜線部2を、分割パンチにより、板の前後方向(車体長手方向)への曲げ加工により形成する点がユニークである。しかし、この板の前後方向の曲げ加工条件や分割パンチの設計条件の設定が難しく、この点で実用的ではない問題がある。
【0017】
なお、このような分割パンチによる成形方法としては、他に、割れ防止のために汎用される「呼び込み成形方法」がある。これは、パンチ側のパネル本体成形部分(例えば中央部分)に局部的(部分的)な可動部分を設け、この局部的な可動パンチ部分によって、ブランクを押し上げ、周囲から金型内への材料の流入量を増し、割れを防止するものである。しかし、この割れ防止方法では、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどでは、しわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができない。即ち、前記局部的な可動パンチ部分により金型内への材料流入量が増すために、ブランクの余り、即ち、前記したパネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位が反対に大きくなって、成形パネルにしわが一層生じやすくなる。
【0018】
一方、これらの成形上の問題が依然ある中で、ベークハード性やリサイクル性に優れ、耐力が高いAl−Mg−Si系(6000系)などのアルミニウム合金板の自動車車体アウタパネルへの適用のニーズは、地球環境保護のための自動車の軽量化やエネルギー吸収性による車体安全性強化の必要性のために、益々高まっている。
【0019】
本発明はこのような事情に着目して、ラゲージアウタパネルなどの自動車車体アウタパネルであって、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法の要旨は、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとを設けるとともに、ダイス外周に設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、このプレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記非接触外周部位と接触させるように、これらパンチ同士を連動させることである。
【0021】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法の好ましい態様としては、前記第二のパンチが接触する前記非接触外周部位が前記成形品パネルの余肉部であることとする。また、前記第二のパンチが前記第一のパンチの周囲に配置された略環状の形状を有することとする。
【0022】
別の好ましい態様として、更に、前記アルミニウム合金板のプレス成形を開始する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させていることとする。また、前記第二のパンチを前記非接触外周部位に接触させた後に、前記第一のパンチにより前記パネルの中央部を成形することとする。
【0023】
別の好ましい態様として、また、前記第二のパンチのアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設け、これと対応する前記ダイス側のアルミニウム合金板との接触面にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けたこととする。また、前記第二のパンチのダイス側への相対的な変位量が80mm以下であることとする。
【0024】
本発明が対象とする成形品パネルは、中央部に稜線を持ち、その稜線を囲む少なくとも2つ以上の曲面で構成されていることが好ましい。そして、成形品パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有することが好ましい。このような成形品パネルとして、フード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフから選択される自動車車体アウタパネルであることが好ましい。
【0025】
一方、前記プレス成形されるアルミニウム合金板が、0.2%耐力が130MPa以上のAl−Mg−Si系アルミニウム合金であることが好ましい。
【0026】
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス装置の要旨は、上記要旨または上記好ましい要旨か後述する好ましい要旨のプレス成形方法に用いられ、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形するプレス装置であって、成形品パネルの中央部を成形する第一のパンチと、第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとが設けられ、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位して、アルミニウム合金板における前記非接触外周部位に接触できるように、これらパンチ同士が連動されていることである。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、上記要旨のように、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチに対して、これと別個に変位できる第二のパンチを少なくとも一つ以上用いて、成形パネル中央部の更に外側(外周部)の、前記非接触外周部位と接触させることを特徴とする。
【0028】
即ち、本発明では、先ず、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触する第二のパンチとを設ける、あるいは成形用のパンチをこれら第一と第二のパンチとに分割し、第二のパンチは第一のパンチに対して別個に変位できるものとして構成する。
【0029】
なお、本発明では、第一のパンチが成形する範囲は、前記パネルの中央部のみだけではなく、その中央部近傍や中央部周囲の成形必要部位を含むものであって当然良い。したがって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと言う表現は、前記パネルの中央部のみか、前記パネルの中央部近傍や中央部周囲を含めて成形する第一のパンチと言う意味である。
【0030】
以上の構成を前提として、本発明では、成形パネル中央部を形成する第一のパンチが、ダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的位置を、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、プレス下死点での相対的位置に比べてダイス側に変位させる。言い換えると、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位しているように、これらパンチ同士を連動させる。
【0031】
これによって、第一のパンチがダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、第一のパンチの周辺に配置された、少なくとも一つ以上の第二のパンチが、成形の早い段階で、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触あるいは更に進んでこの部位を成形し、素材端部のしわ変形を拘束するとともに素材板に与える張力を制御することが可能となる。なお、本発明で言う、前記非接触外周部位には、成形品パネルの非接触外周部位と、これに対応する、成形素材であるアルミニウム合金板における非接触外周部位との両方の意味があり、本発明ではこれらを適宜使い分ける。
【0032】
つまり、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどのように、前記した図12における、稜線の張り出し高さが高く、断面A、Bの線長差が大きい場合にでも、前記非接触外周部位を解消して、この板(成形中のパネル)の領域全般に亙って、張力を作用させることができる。このため、成形の比較的初期から発生するしわに対しても抑制効果を発揮できる。
【0033】
また、さらに複数の第二のパンチを用いて、それぞれ独立的に、各非接触外周部位との接触のタイミングを制御すれば、製品の形状に応じて、製品内の場所ごとに、素材板に与える張力をきめ細かく制御することができる。この効果を最大限に発揮するためには、第二のパンチは、製品周囲に設けられる余肉部に対応する部分に設けることが好ましい。
【0034】
そして、本発明では、以上説明したしわ抑制の作用効果(第二のパンチによる素材板の拘束と張力付与の機能)の他に、第二のパンチによる、製品(成形パネル)の破断を防止できる効果も有している。即ち、第一のパンチによる成形工程の早い段階から、第二のパンチが素材板(非接触外周部位)と接触するので、素材板の変形拘束と張力付与を行うことができる。この一方で、プレス下死点では、第二のパンチのダイスに対する相対位置が、プレス成形中に比べて、パンチ側の方に移動する。これによって、余肉の高さが低くなり、破断しやすいプレス下死点近傍において、張力を過大に増大させない効果を奏する。
【0035】
言い換えると、本発明では、しわが発生するか否かを律する成形工程の前半から、成形されるパネルの前記稜線を囲む曲面部(3、4)に相当する素材板部分の変形を拘束し、十分な張力を板に作用させることができる。この結果、成形工程の前半ではしわ発生を防止するとともに、成形工程の後半においては、張力レベルを一定値以下に制御できることで、下死点近くにおいて、材料が極端に板厚減少し、破断することを防止できる。
【0036】
特に、プレス成形開始時点における、第二のパンチの、第一のパンチに対する相対的位置を、プレス下死点での相対的位置に比べて、予めダイス側に変位させておく態様は、設備上好ましい。このような態様では、成形が進行して第一のパンチが下死点に近づくにつれて、第二のパンチのダイスに向かう移動を停止させ、ダイスとの間に板を挟持した状態を維持しながら成形する。このような成形の態様は、可動金型とダイクッションとを組み合わせることで可能であり、比較的単純な金型構成で達成可能であり、設備上好ましいといえる。
【0037】
一方、これに対して、第一のパンチに対して、第二のパンチの変位を独立的に制御する機構を設けた場合、プレス装置は設備的に複雑になるが、より積極的に素材板と金型との接触および張力付与のタイミングを制御可能であり、より成形の難しい(しわ、破断の生じやすい)製品(成形パネル)をプレス成形するのに好適である。
【0038】
以上のように、本発明では、前記難成形におけるしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができ、ラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルであって、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態について、図1〜10を用いて詳細に説明する。
【0040】
(プレス装置)
先ず、本発明で用いるプレス装置を、図2〜8を用いて説明する。図2は上型(ダイス:図2では成形品中央に相当する中央部を取り除いた周辺部のみ表示)22と、下型である第一のパンチ11、第二のパンチ15、ブランクホルダー(しわ押さえ部材)20とを組み合わせた態様を示している。
【0041】
(下型)
図3は、下型のみを示し、第一のパンチ(本体パンチ)11と、この第一のパンチ11と分割され、独立した動き(変位)をなす、第二のパンチ(分割パンチ)15とを組み合わせた態様を示している。これらパンチ11、15の上面には、上型であるダイス22中央の成形形成面と係合される、製品形成面を各々有する。
【0042】
即ち、第一のパンチ11は、本体パンチとして、成形パネル(素材板)の中央部を成形する。具体的には、第一のパンチ11は、図4に斜視図で部分的に示すように、製品形成面として、パネル中央部の稜線部(図11の2)を形成する稜線部12と、このパネルの稜線部12を囲む平面部(図11の3、4)を形成する、平面部13、14とを有する。
【0043】
また、第二のパンチ15は、分割されたパンチとして、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)と接触するか、更に進んで、この非接触外周部位を積極的に成形する。具体的には、第二のパンチ15は、図5に斜視図で部分的に示すように、製品形成面(後述する余肉形成面)として、第一のパンチ11の周囲に配置された略環状の形状を有している。
【0044】
但し、この第二のパンチ15の周囲形状(輪郭)や数は、第一のパンチ11の周囲形状(輪郭)に応じて決められるべきものであり、必ずしも図5のような円環状や1個のみでなくとも良い。この点、例えば、第一のパンチ11の周囲を部分的に囲む複数のパンチあるいはパーツ(部分)からなる、部分的な環状形状でも良い。
【0045】
これらのパンチ11、15の取り付け状態を、パンチ11、15をボルスタ上に取り付けた状態の斜視図8で示す。パンチ11は、ボルスタ上に剛体的に取り付けられる。一方第二のパンチ15は、その必要箇所に必要数配置されたガススプリング18などを介してボルスタに結合されており、第二のパンチ15に上方から圧縮力が作用すれば下方に沈み込む構造となっている。別の態様として、第二のパンチ15を、前記した通り、複数個設け、各々別個の油圧などの駆動装置を介して、上型に対して、各々別個に進退可能(昇降可能)なように構成しても良い。
【0046】
図6に斜視図で示すように、上型のダイス22は、成形品中央に相当する中央部と、しわ押さえ面23、23を各々有している。また、図7に斜視図で示すようにブランクホルダー(しわ押さえ部材)20は各々24、24のしわ押さえ面を有している。そして、ブランクホルダー20は、クッションピン( 図示しない) により保持されており、プレス装置の下部の油圧機構で発生する上向きの力がクッションピンを介してブランクホルダー20に伝えられ、しわ押さえ力としてブランクを保持するのに使われる。
【0047】
(上型)
一方、上型は、図1(a)を用いて説明すると、ダイス22は昇降装置に連結されたスライド( 図示しない) に取り付けられている。このダイス22の下面には製品形成面22aが形成されている。また、ダイス22の最外周部には、前記下型のブランクホルダー20のしわ押さえ面24、24と各々対向する位置に、枠状のしわ押さえ面23、23が形成されている。
【0048】
そして、ダイス22の、前記下型の第二のパンチ15の余肉形成面16、17に対応する位置に、第二のパンチ15と協働して、板30の平面部33、34の更に外縁側の各余肉部35、36を各々成形するための余肉形成面22b、22cが各々設けられている。
【0049】
(成形方法)
プレス装置の断面図である図1(a)、(b)、(c)、(d)を用いて、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法を説明する。なお、この図1のプレス装置は、前提として、下側のパンチ11は、ボルスタ21に固定されて動かず、成形は、上側のダイス22の方が下降して(下向きの矢印で示す)行なうものである。この点、下側のパンチ11側を上昇させるようにしても良く、要は、パンチ11とダイス22とが相対的に移動するものであれば良い。
【0050】
図1(a)は、プレス装置にアルミニウム合金板30をセットした、パンチによる成形開始前の状態を示す。この図1(a)では、板30の最周縁部31が、ダイス22の周辺部に位置するしわ押さえ面23、23と、ブランクホルダー20のしわ押さえ面24、24とによって、適当なしわ押さえ力で挟持される。このしわ押さえ力は、通常のアルミニウム合金板のプレス成形で用いられる範囲で良い。ここで、ブランクホルダー20は、アルミニウム合金板30がセットされる前は、各々クッションピン25により、上限位置に保持されている。
【0051】
(第二パンチの作用)
図1(b)は、ダイス22が成形の下死点位置より上方65mmの位置まで下降した状態を示す。このダイス22の下降にあわせて、ブランクホルダー20は、その一部であるしわ押さえ面24と、ダイス22の周辺に位置するしわ押さえ面23との協働によりアルミニウム合金板30を挟持した状態のまま、沈み込む動きをする。
【0052】
この図1(b)では、第一のパンチ11の成形に先立ち、第二のパンチ15が前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)である、板の余肉部35、36(後述する成形品パネルの余肉部5、6に対応)との接触、あるいは成形を開始した状態を示す。
【0053】
この状態では、ダイス22の余肉形成面22b、22cが、第二のパンチ15の余肉形成面16、17に対応し、第二のパンチ15とダイス22とが協働して、板30の各余肉部35、36(平面部33、34の更に外縁側)への接触、あるいは、更に進んでこの部位の成形を各々開始する。
【0054】
このためには、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態としている。即ち、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め変位させている。
【0055】
ここで、前記非接触外周部位を解消して、素材板端部のしわ変形を拘束するとともに、素材板に与える張力を制御できる効果を発揮できれば、第二のパンチ15を、板余肉部(前記非接触外周部位)35、36へ、単に接触させるか、あるいは積極的にこの部位を成形するかは、適宜選択される。通常のプレス成形条件では、前記非接触外周部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と接触するだけではなく、更に進んでこの部位を成形する方が、前記非接触外周部位を解消して、素材板端部のしわ変形を拘束するとともに、素材板に与える張力を制御できる効果を発揮しやすい。
【0056】
(第一パンチによる板の成形)
この図1(b)の状態では、第一のパンチ11は、板30の中央部である稜線部相当部位32(2)の成形を未だ開始していない。但し、ダイス22は第一のパンチ11に向かって引き続き下降し、この図1(b)の状態以降、第一のパンチ11が板30の成形を開始している。即ち、第一のパンチ11の製品形成面12、13、14が、ダイスの製品形成面22aとの協働で、パネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)と、このパネルの稜線部2を囲む平面部3、4(板の相当部位33、34)とを成形する。
【0057】
この際、前記した通り、既に板30の各余肉部35、36の成形を開始している第二のパンチ15とダイス22とは、第一のパンチ11により成形される板30に対し、第二のパンチ15の余肉形成面16、17と、ダイス22の余肉形成面22b、22cとの各接触点2箇所で拘束する。即ち、第一のパンチ11による成形の際に、板30におけるパネル中央部の稜線部2に相当する部位32に対し、周囲から張力を与えるよう機能する。
【0058】
これによって、第一のパンチ11が、ダイス22との協働で、アルミニウム合金板30を成形する際に、板30におけるパネルの曲面部3、4に相当する部位32に対し、周囲から張力を与えて拘束しながら成形することが可能となる。
【0059】
しかも、第二のパンチ15による、板30の各余肉部35、36の位置や成形度合いを調整することによって、本発明が対象とするラゲージアウタパネルなどのように、前記した図12における、上記張力が作用すべき板30の断面A、Bの線長差が大きくても、パネル全般に亙って張力を作用させることができる。
【0060】
このため、例え、板30の断面A、Bの線長差が大きくても、第一のパンチ11やダイス22によって成形される際に、前記非接触外周部位を解消して、ラゲージアウタパネルの平面部3、4に相当する部分にしわが生じにくくなる。
【0061】
図1bの例では、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板の成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態とし、第一のパンチでの成形が始まる前に、第二のパンチ15での接触、成形を開始するようにしている。
【0062】
このためには、第二のパンチ15を、第一のパンチ11よりも先に板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形を開始すべく、ボルスタ21よりガススプリング18によって、予め浮かせた状態としている。即ち、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め変位させている。
【0063】
ここで、第一のパンチ11が成形を開始した後に、第二のパンチ15の成形が始まるように、第二のパンチ15の位置を設定していても良い。また、成形中の一時点で第二のパンチ15を第一のパンチ11に比べてダイス側に変位させることで、素材と第二のパンチを早期に素材と接触させても良い。この第二のパンチと素材の接触タイミングは、成形する製品に加える張力に応じて便宜選択される。重要なことは、下死点での破断の防止と、プレス成形中の早い段階で素材の拘束および張力付与の両立が可能なように、プレス成形中の一時点において可動パンチの第一のパンチに対する相対的位置が、プレス下死点における位置に比べてダイス側に変位していることにある。
【0064】
図1(c)は、上記図1(b)の状態以降で、引き続き、ダイス22が第一パンチ11に向かって、成形下死点から32mm上方の位置まで移動(下降)した状態を示す。この状態では、第二のパンチ15によるしわ抑制作用、即ち、第二パンチ15による板余肉部(前記非接触外周部位)35、36への接触あるいは成形の機能は、接触あるいは成形の進行とともに増大する。
【0065】
そして、ダイス22の余肉形成面22b、22cと、第二のパンチ15の余肉形成面16、17とが、アルミニウム合金板30に形成される余肉部(前記非接触外周部位)35、36を隙間なく挟持する位置で最大となる。しかし、この機能は、これ以降の成形工程で、さらに増大させる必要は無く、それ以降はほぼ同程度で良い。即ち、この図1(c)の第一のパンチ11が、ダイス22に向かって32mmまで相対的に移動(上昇)した状態より以降は、同程度の張力を与えるだけでよい。前記した通り、ラゲージアウタパネルの平面部3、4に相当する部分にしわが発生するか否かは、第一のパンチ11によるこの図1(c)までの成形工程の前半で決まる。
【0066】
(第二のパンチの下降)
この点、本発明では、この成形工程の後半では、成形が進行してダイス22が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15を、ダイス22と連動して、アルミ合金板30を挟持した状態のまま下降させる。即ち、図1(c)の、ダイス22が、余肉形成面22b、22cと第二のパンチ15の余肉形成面16、17との協働で、アルミニウム合金板30に形成される余肉部35、36を挟持する上記位置まで移動(下降)した状態以降、成形が進行して、ダイス22が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15を、ダイス22と連動して、アルミ合金板30を挟持した状態のまま下降させる。この下降は、ダイス22の下降により、第二のパンチ15を支持するガススプリング18を縮ませることにより行なう。
【0067】
これによって、第二のパンチ15とダイス22による、前記余肉部の35、36の成形乃至上記張力付与の(拘束)機能を一定レベルで維持する。即ち、成形が進行して第一のパンチ11が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15はダイス22に向かう移動を停止させ、ダイス22との間に板を挟持した状態を維持する。これによって、板33、34の部分に対する、成形後半の無用の張力の増大を無くし、この状態で第一のパンチ11による後半の成形を行なわせ、図1(d)のように、パネルの張出成形を終了させる。このため、板厚を大きく減少させずに、板厚減少率を通常の張出成形と同程度に抑制することが可能となる。
【0068】
なお、図1(c)では、第二のパンチ15とダイス22により、素材を完全に挟持した状態で成形しているが、必ずしも完全に挟持する必要はない。例えば、第二のパンチ15とダイス22の間に所定のクリアランスを設けた状態、即ち、第二のパンチ15が単に板に接触した状態、あるいは上記クリアランスを設けた状態で第二のパンチ15により板を成形しても良い。
【0069】
このような、第二のパンチ15が単に板に接触した状態、あるいは上記クリアランスを設けた状態で第二のパンチ15により板を成形した状態では、図1(c)のように完全に挟持する場合に比べて、素材板に加わる張力は小さくなる。しかし、素材板との第二のパンチが接触していることにより、素材板の変形拘束効果と摩擦抵抗による張力付与効果は得られる。このように、第二のパンチの動きは、素材板の破断としわの発生双方を両立させるために、成形条件に応じて、便宜選択することができる。
【0070】
仮に、前記のような第二パンチの下降動作を使わずに、成形の初期からの余肉成形による上記張力付与の機能を得るには、図13のようなパンチと一体に形成される余肉形成部19、ダイスの余肉形成部26において、前記した通り、特に余肉の高さを高くすることになる。しかしこの方法では、成形の下死点近くでは、余肉形成部26、19での成形深さが極めて深くなるため、過大な張力をアルミニウム合金板に作用させてしまうこととなる。よって、これも前記した通り、板厚減少率が大きくなり、成形中の板の割れの原因となる。
【0071】
図1(d)では、張出成形の最終段階(成形下死点での状況)を図示している。即ち、この図1(d)に示すパネル成形品1において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。また、5、6が、分割パンチ15の余肉形成面16、17と、ダイス22の余肉形成面22b、22cとによって成形された、特徴的な余肉部(板の相当部位35、36:前記非接触外周部位)である。
【0072】
なお、この図1(d)では、第二のパンチ15の余肉形成面16、17は上面が平坦な形状となっているが、この形状は平坦でなくとも良く、上面が略半円状の凸形状でも良い。また、第二のパンチ15のアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設けても良い。更に、これと対応するダイス22側の余肉形成面22b、22c(アルミニウム合金板との接触面)にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けても良い。これら凹凸あるいは段差などによって、下死点近傍で板部位を成形することで、板に積極的に張力が加わり、パネル成形品の面ひずみを消して、形状精度をより向上させるなどの効果が期待できる。
【0073】
以上のように張出成形されたパネル成形品は、更に、その後、ナンバープレートが装着される凹部(座)5が成形されたり、前記余肉部分5、6や最周縁部などがトリミング加工されて除去され、パネル製品として、前記図11に示したラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルなどに仕上げられる。
【0074】
本発明では、以上説明したように、パネル張出成形時のしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができる。この結果、ラゲージアウタパネルなどのアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルであって、前記パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有するなど、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。したがって、本発明は、これら成形が難しい形状の大型パネルの代表例である、フード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフなどから選択されるアルミニウム合金製自動車車体アウタパネルに適用されて好ましい。
【0075】
(アルミニウム合金)
本発明で用いるアルミニウム合金は、剛性、強度、成形性、耐食性など、パネル用途の要求特性に応じた、AA乃至JIS規格に規定される乃至含まれる、3000系、5000系、6000系、7000系などから選択されるアルミニウム合金材料が適宜選択される。ただ、これらの中でも、アルミニウム合金製自動車車体アウタパネルなどに汎用され、ベークハード性に優れさせるために、0.2%耐力が130MPa以上の高強度で張出成形され、前記成形性改善の要求が高い、Al−Mg−Si系(6000系)アルミニウム合金板に適用されて好適である。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明の実施例を説明する。アルミニウム合金の中でも、張出成形がより難しい、AA6061−T4材の高強度アルミニウム合金板を、図11に示した形状のラゲージアウタパネル1に張出成形した。そして、成形品のしわ発生状況を調査した。このアルミニウム合金板の0.2%耐力は150MPa、板厚は1.0mm、大きさは、幅:1840mm×長さ:1450mmであった。
【0077】
成形したラゲージアウタパネル1は、パネル中央部(頂部)に、車体幅方向に延在する高さ200 mmの大きな稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3(長さ380 mm)、4(長さ420 mm)とを有する。そして、この稜線部2は、平面部3と4とのなす折り曲げ角度が100 °、平面的には、曲率半径が3000mm、長さ1250mmの半円弧状形状のキャラクタラインを有している。
【0078】
発明例で使用したプレス装置は、図1、図2〜8で説明した、余肉成形用のパンチを分割したプレス装置10を用いて、張出成形試験した。発明例の下死点上65mmと32mmにおけるパネル成形品を図9(a)、(b)に斜視図で各々示す。図9(a)、(b)に示すパネル成形品において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。また、5、6が第二のパンチ15によって成形された、特徴的な余肉部(板の相当部位35、36:前記非接触外周部位)である。
【0079】
図9(a)、(b)に示す通り、発明例では、下死点上65mmと32mmとにおいて、また、図示はしないが、下死点における成形品パネルにも、パネル中央部の稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3、4には、前記しわが発生しやすい部位Xを含めて、しわ、割れは生じていなかった。また、最終パネル成形品表面の平滑性や稜線部のキャラクタラインを含めた形状精度にも優れていた。
【0080】
更に、この発明例の、下死点における成形品パネルの、最も板厚減少が大きくなる稜線部2の最大板厚減少率(元の板厚に対する板厚減少率)は、後述する従来例の最大板厚減少率よりも若干大きい18.7%程度であった。これは、アルミニウム合金製ラゲージアウタパネルの張出成形における、割れが発生しやすくなる上限の板厚減少率の20%よりも小さく、許容範囲内である。
【0081】
一方、従来例は、図12で説明した、従来の、通常の一体型パンチ11を用いたプレス装置を用いて、張出成形試験した。この従来例のパネル成形品を図10(a)、(b)に斜視図で各々示す。図10(a)、(b)に示す従来のパネル成形品において、2がパネル中央部の稜線部2(板の相当部位32)、3、4がこの稜線部2を囲む平面部(板の相当部位33、34)である。
【0082】
図10(a)、(b)に示す通り、従来例では、下死点上65mmと32mmとにおいて、また、図示はしないが、下死点における成形品パネルにも、パネル中央部の稜線部2と、この稜線部2を囲む平面部3、4の、前記しわが発生しやすい部位Xに、多くの大きなしわが発生している。この結果、最終パネル成形品表面の平滑性や稜線部のキャラクタラインを含めた形状精度にも劣っていた。なお、下死点における従来例成形品パネルの稜線部2の最大板厚減少率は16.7 %であり、割れが発生しやすくなる上限の板厚減少率20%に近かった。
【0083】
これらの実施例から、本発明成形方法の、難成形パネルを成形するに際してのしわを抑制する効果が裏付けられる。なお、本実施例では、最も成形が困難な6000系について、成形性向上効果を裏付けている。この結果、6000系よりも成形しやすい、3000系や5000系のAl合金板に適用された場合にも、成形性は確実に向上する。これらAl合金は合金組成や調質 (熱処理) 条件によって、引張強さ、耐力、伸びなどの機械的性質は勿論異なる。このため、前記したしわの発生の程度は異なるものの、しわの発生機構自体は、これら機械的性質によらず、共通しており、これに対する本発明のしわ抑制機構も共通するからである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、ラゲージアウタパネルなどの自動車車体アウタパネルであって、前記非接触外周部位を有し、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス装置を提供することができる。このため、自動車などのアウタパネル成形品用途に、成形素材としてのアルミニウム合金板の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明成形方法の一実施態様を段階的に示すプレス装置の断面図である。
【図2】本発明に係る金型の一実施態様を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る金型の一実施態様を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るパンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る分割パンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る板押さえの一実施態様を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る板押さえの一実施態様を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る分割パンチの一実施態様を示す斜視図である。
【図9】本発明成形方法による成形品を示す斜視図である。
【図10】従来の成形方法による成形品を示す斜視図である。
【図11】ラゲージアウタパネルの一例を示す斜視図である。
【図12】従来の成形方法を示すプレス装置の断面図である。
【図13】従来の成形方法を示すプレス装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1:ラゲージアウタパネル、2:稜線部、3、4:平面部、
5、6:成形品パネルの非接触外周部位(成形品パネルの余肉部)、
10:プレス装置、11:第一のパンチ、12:パンチ稜線部、
13、14:パンチ平面部、15:第二の分割パンチ、
16、17:余肉形成面、18:ガススプリング、19、26:余肉形成部、
20:ブランクホルダー、21:ボルスタ、22:ダイス、
23、24:しわ押さえ面、25:クッションピン、30:板、
31:板の最周縁部、32:板の稜線部2相当部位、
33、34:板の平面部3、4相当部位、
35、36:板の非接触外周部位(板の余肉部)、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとを設けるとともに、ダイス外周に設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、このプレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記非接触外周部位と接触させるように、これらパンチ同士を連動させることを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項2】
前記第二のパンチが接触する前記非接触外周部位が前記成形品パネルの余肉部である請求項1に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項3】
前記第二のパンチが前記第一のパンチの周囲に配置された略環状の形状を有する請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項4】
前記アルミニウム合金板のプレス成形を開始する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項5】
前記第二のパンチを前記非接触外周部位に接触させた後に、前記第一のパンチにより前記パネルの中央部を成形する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項6】
前記第二のパンチのアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設け、これと対応する前記ダイス側のアルミニウム合金板との接触面にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けた請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項7】
前記第二のパンチのダイス側への相対的な変位量が80mm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項8】
前記成形品パネルが、中央部に稜線を持ち、その稜線を囲む少なくとも2つ以上の曲面で構成されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項9】
前記成形品パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項10】
前記成形品パネルがフード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフから選択される自動車車体アウタパネルである請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項11】
前記プレス成形されるアルミニウム合金板が、0.2%耐力が130MPa以上のAl−Mg−Si系アルミニウム合金である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項のプレス成形方法に用いられ、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形するプレス装置であって、成形品パネルの中央部を成形する第一のパンチと、第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとが設けられ、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位して、アルミニウム合金板における前記非接触外周部位に接触できるように、これらパンチ同士が連動されていることを特徴とするアルミニウム合金板のプレス装置。
【請求項1】
パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチと、この第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとを設けるとともに、ダイス外周に設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、このプレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記非接触外周部位と接触させるように、これらパンチ同士を連動させることを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項2】
前記第二のパンチが接触する前記非接触外周部位が前記成形品パネルの余肉部である請求項1に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項3】
前記第二のパンチが前記第一のパンチの周囲に配置された略環状の形状を有する請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項4】
前記アルミニウム合金板のプレス成形を開始する際に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項5】
前記第二のパンチを前記非接触外周部位に接触させた後に、前記第一のパンチにより前記パネルの中央部を成形する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項6】
前記第二のパンチのアルミニウム合金板との接触面に凹凸あるいは段差を設け、これと対応する前記ダイス側のアルミニウム合金板との接触面にも、前記凹凸あるいは段差に対応する凹凸あるいは段差を設けた請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項7】
前記第二のパンチのダイス側への相対的な変位量が80mm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項8】
前記成形品パネルが、中央部に稜線を持ち、その稜線を囲む少なくとも2つ以上の曲面で構成されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項9】
前記成形品パネルの稜線部が半円弧状のキャラクタラインを有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項10】
前記成形品パネルがフード、フェンダー、ドア、ラゲージ(トランクリッド)、ルーフから選択される自動車車体アウタパネルである請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項11】
前記プレス成形されるアルミニウム合金板が、0.2%耐力が130MPa以上のAl−Mg−Si系アルミニウム合金である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項のプレス成形方法に用いられ、パネルの中央部を成形するパンチと下死点近傍まで接触しない非接触外周部位を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形するプレス装置であって、成形品パネルの中央部を成形する第一のパンチと、第一のパンチに対して別個に変位できる第二のパンチとが設けられ、プレス成形開始時から下死点までの間の少なくとも一時点で、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位して、アルミニウム合金板における前記非接触外周部位に接触できるように、これらパンチ同士が連動されていることを特徴とするアルミニウム合金板のプレス装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−268608(P2007−268608A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301813(P2006−301813)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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