説明

アンカーコーティング剤および該アンカーコーティング剤を用いた積層フィルム

【課題】アルミニウムなどの金属フィルム、アルミナなどの金属酸化物、シリカなど無機酸化物を蒸着したフィルムやPETフィルム、ポリエチレンなどのポリオレフィン系フィルムなどに押出しラミネートによって接着性樹脂層を設けた際に、実用上十分なラミネート強度を与えることができるアンカーコーティング剤の提供。
【解決手段】α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)、および酸価50〜300mgKOH/gである粘着付与樹脂(B)が溶剤に溶解もしくは分散されてなるアンカーコーティング剤であって、(A)と(B)との重量比が(A)/(B)=90/10〜60/40であり、かつ、固形分濃度が1〜20重量%であることを特徴とするアンカーコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出しラミネートや活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ(以下、硬化インキと略記する場合がある)に使用するアンカーコーティング剤(以下、AC剤と略記する場合がある)に関し、さらに詳しくは、アルミニウム(以下、ALと略記する場合がある)フィルムやポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系フィルムの表面に接着性樹脂を押出しラミネートする場合や活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを印刷する場合に好適に用いられるアンカーコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺やカップスープ、スナック菓子、ヨーグルトやゼリーなどの冷菓などには紙ポリエチレン(以下、紙ポリと略記する場合がある)製容器やポリプロピレン製容器、ポリスチレン製容器などのプラスチック製容器や鉄やアルミニウムなどの金属製容器が使用される。これらのプラスチック製容器や金属製容器の蓋材には通常、容器と接着する接着性樹脂を最外層に積層した積層フィルムが使用される場合が多い。積層フィルムの構成例としては、紙/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレン/接着性樹脂、PET/アルミニウム/ポリエチレン/接着性樹脂などといったものが挙げられる。
上記構成例の蓋材においては、その接着性樹脂が、ヒートシールによって容器本体と接着される。
【0003】
しかし近年、押出しラミネートによって製造される積層フィルムにおいて薄膜化や低コスト化、製造工程の簡素化などの要求が高くなっている。その一環として、積層フィルム中の接着性樹脂の前に積層されるポリエチレンを省き、アルミニウム面やポリエステル面にダイレクトに接着性樹脂を積層した紙/ポリエチレン/アルミニウム/接着性樹脂やPET/アルミニウム/接着性樹脂、PET/接着性樹脂という構成品への変更要求が出てきている。
【0004】
紙ポリエチレン製容器やポリプロピレン製容器、ポリスチレン製容器などのプラスチック製容器や鉄やアルミニウムなどの金属製容器の蓋材に求められる性能としてイージーピール性、封緘性、糸曳き性などが挙げられるが、これらの性能を発現させるために、接着性樹脂には複数の原料をブレンドしたものが用いられる場合が多い。
【0005】
アルミニウムフィルムやポリエステルフィルムに樹脂を押出しラミネートしてラミネート強度を得る方法としては、(1)イソシアネート系やポリエステル系と言われる従来から多用される2液硬化型AC剤を使用し、樹脂を300℃以上の高温で押出しラミネートする方法、(2)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のようなアルミニウムへの接着性を有する樹脂を押出しラミネートする方法などが挙げられる。
従来からある2液硬化型AC剤を使用する場合は樹脂温度を300℃以上の高温にする必要があり、使用可能な樹脂はポリエチレンなどのように300℃以上でも分解や劣化が起こりにくい一部の樹脂に限られる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体のように240℃以上にすると脱酢酸が起こるような樹脂には使用できない。また、紙ポリエチレン製容器の蓋材用の接着性樹脂にはポリエチレンを主原料として使用することが多い。しかし、ポリエチレンだけでは強接着となり、開封し難く蓋材や容器が破断してしまうなどの不具合がある。よって易剥離性などを持たせるためにポリエチレンへの接着性が低い樹脂をブレンドして作られていることが多い(例えば、特開2009−46545号公報など)。しかし、このようなブレンド樹脂は樹脂温度を300℃以上にしてもポリエチレンへの接着性が低い樹脂が阻害要因となり2液硬化型AC剤を使用してもアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムへの実用上十分なラミネート強度を得ることができない。
【0006】
同様に、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体だけを押出しラミネネートして作成した蓋材はポリエチレンに対して強接着であるため、開封し難く蓋材や容器が破断してしまう。そこでポリエチレンへの接着性が低い樹脂をブレンドして易剥離性を持たせても、ポリエチレンへの接着性が低い樹脂が阻害要因となり、アルミニウムフィルムやポリエステルフィルムへの実用上十分なラミネート強度は得られない。
【0007】
このように、従来の方法ではアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムに接着性樹脂を押出しラミネートした場合に実用上十分なラミネート強度を有し、且つ易剥離性などの蓋材として優れた性能を有するものが得られない。
【0008】
実用上十分なラミネート強度とは、プラスチック製容器に接着性樹脂を最外層とする蓋材をヒートシールしたものを開封した場合に糸曳き、紙剥け、接着性樹脂がアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムから剥がれるデラミネーションなどの不具合が起こらないほどの強固なラミネート強度を有したものを言う。
【0009】
従来の積層フィルムの構成として多いアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムと接着性樹脂との間にポリエチレンを積層する理由のひとつは、従来の2液硬化型AC剤でもポリエチレンを300℃以上の温度で押出しラミネートすればアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムとポリエチレンとが強固なラミネート強度を有するものが得られるからである。アルミニウム/ポリエチレン積層フィルムやポリエステル/ポリエチレン積層フィルムのポリエチレン面であればポリエチレンとポリエチレンへの接着性が低い樹脂をブレンドした接着性樹脂でも300℃以下の押出しラミネート温度で実用上十分なラミネート強度を得ることができる。さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着性樹脂においても脱酢酸が起こらない240℃以下の樹脂温度で押出しラミネートして実用上十分なラミネート強度を得ることができる。
【0010】
これらのことは紙ポリエチレン製容器だけでなく、ポリプロピレン製容器やポリスチレン製容器、ポリエステル製容器などとのプラスチック製容器に対しても同様なことがいえる。
紙ポリエチレン製容器以外にもプラスチック容器としてポリプロピレン製容器やポリスチレン製容器、ポリエステル製容器などがあるが、これらの蓋材に積層される接着性樹脂はエチレン系共重合体に粘着付与樹脂等を添加したものが使用されることが多い(例えば、特開2008−94869号公報など)。エチレン系共重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた場合、押出しラミネート時の樹脂温度は240℃以下であり、従来の2液硬化型AC剤を使用してもラミネート強度は弱く、またこの場合の接着性樹脂自身のアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムへの接着性は非常に低い。このような理由で接着性樹脂を押出しラミネーターで押出しラミネートしても強固なラミネート強度を得ることができないという問題があった。
【0011】
従来のAC剤がラミネート強度を発現するのは、押出される樹脂を300℃以上の高温まで加熱溶融し、ダイスと呼ばれる押出機から押出され空気に触れることにより溶融樹脂の表面が酸化されるため2液硬化型AC剤との接着性が発現するといわれている。よって、300℃以上の高温まで加熱すると分解や劣化が起こるような樹脂を接着性樹脂として利用しようとしても、2液硬化型AC剤を使った押出しラミネートができない。押出しラミネート用樹脂の原料として使用されることが多いエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記する場合がある)は240℃以上の温度になると脱酢酸が起こるため、2液硬化型AC剤を使った押出しラミネートができない。
【0012】
また、近年はアルミニウムやポリエステルだけでなく、アルミナなどの金属酸化物、シリカなど無機酸化物を蒸着したフィルムも用いられており、これらのフィルムと接着性樹脂層との間の、実用上問題のないラミネート強度を得ることができるアンカーコーティング剤が求められている。
【0013】
特許文献1には、エチレン−不飽和エステル共重合体、および、酸価が200〜300mgKOH/gの粘着付与樹脂を含んでなる接着性樹脂が提案されている。これらの樹脂はアルム面に押出しラミネートした場合、実用上十分なラミネート強度を得ることができるが、アンカーコーティング剤として用いた場合にはアルミニウム面に対する十分なラミネート強度が得られない。
【0014】
特許文献2には、マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体とロジン系粘着付与樹脂を溶剤に溶解してなるプライマー組成物が提案されているが、アンカーコーティング剤として用いた場合には押出しラミネートにおいて接着性樹脂との実用上十分なラミネート強度を得ることができない。
【0015】
特許文献3には、有機酸基を有するスチレン系ブロック共重合体、有機酸基を有しないスチレン系ブロック共重合体、及び充填剤を含有することを特徴とするヒートシールラッカー組成物が提案されているが、アンカーコーティング剤として用いた場合には十分なラミネート強度を得ることができない。
【0016】
特許文献4および5には、一般式がA−B−Aで表されるブロック共重合体と一般式がA−Bで表されるブロック共重合体(但しAはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロックを水素添加して得られるオレフィン系重合体ブロックを言う)の酸変性物を基材層と粘着剤層の中間層として使用することが提案されているが、アルミニウムやポリエステルなどへの接着強度が不足する。
【0017】
特許文献6にはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物のマレイン酸変性物と粘着付与樹脂の混合物を粘着剤層とする表面保護フィルムが提案されているが、アンカーコーティング剤として用いた場合にはアルミニウムやポリエステルへの接着強度が不足する。
【0018】
特許文献7には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体またはその水素添加物にα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合した酸基を有する樹脂を有機溶剤に溶解してなるプライマー組成物が提案されている。しかし、アンカーコーティング剤として用いた場合には実用上十分なラミネート強度を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−94869号公報
【特許文献2】特開2007−153364号公報
【特許文献3】特開2003−226836号公報
【特許文献4】特開平7−26211号公報
【特許文献5】特開平7−224256号公報
【特許文献6】特開平7−26210号公報
【特許文献7】特開昭61−192743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者らが検討を重ねた結果、本願の(A)成分および(B)成分が、本願で特定される成分同士の組み合わせである場合、すなわち、酸変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)、酸価の高い粘着付与樹脂(B)を溶剤に溶解もしくは分散してなるアンカーコーティング剤をアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムに塗布したものに接着性樹脂を押出しラミネートした場合に強固なラミネート強度が得られることを見出した。
【0021】
本発明は、アルミニウムなどの金属フィルム、アルミナなどの金属酸化物、シリカなど無機酸化物を蒸着したフィルムやPETフィルム、ポリエチレンなどのポリオレフィン系フィルムなどに押出しラミネートによって接着性樹脂層を設けた際に、実用上十分なラミネート強度を与えることができるアンカーコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すなわち、本発明は、α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)、および酸価50〜300mgKOH/gである粘着付与樹脂(B)が溶剤に溶解もしくは分散されてなるアンカーコーティング剤であって、
(A)と(B)との重量比が(A)/(B)=90/10〜60/40であり、かつ、
固形分濃度が1〜20重量%であることを特徴とするアンカーコーティング剤に関する。
【0023】
また、本発明は、上記アンカーコーティング剤から形成されるアンカー層の上に、押出しラミネートにより接着性樹脂層が形成されてなる積層フィルムに関する。
【0024】
また、本発明は、接着性樹脂層を形成する樹脂が、エチレン−不飽和エステル共重合体、エチレン−不飽和エステル共重合体と粘着付与樹脂とを含んでなる樹脂組成物、またはポリエチレンとブテン−エチレン共重合体とを含んでなる樹脂組成物のいずれかであることを特徴とする上記の積層フィルムに関する。
【0025】
さらに、本発明は、エチレン−不飽和エステル共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である上記の積層フィルムに関する。
【0026】
さらに、本発明は、上記アンカーコーティング剤から形成されるアンカー層の上に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが印刷されてなる印刷フィルムに関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、アルミニウムなどの金属フィルム、アルミナなどの金属酸化物、シリカなど無機酸化物を蒸着したフィルムやPETフィルムなどに押出しラミネートによって接着性樹脂層を設けた際に、実用上十分なラミネート強度を与えることができるアンカーコーティング剤を提供できる。
さらに、従来の2液硬化型AC剤に必要なエージング(例えば、40℃−24時間など)が本発明のAC剤には必要ない。エージングとは2液が硬化するのに必要な熱処理であるが、本発明におけるAC剤はラミネート直後から十分なラミネート強度を有している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)、および酸価が50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の粘着付与樹脂(B)を溶剤に溶解もしくは分散してなるアンカーコーティング剤である。
【0029】
本発明に用いられるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体で酸価0.1〜50mgKOH/gにグラフト変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)とは、一般的にはスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン、EP)があり、
ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。本発明では、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS)等が好ましく、より好ましくはスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)である。また、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)とスチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEB)との混合物(SEBS/SEB)も好ましく用いることができる。
【0030】
本発明に用いられるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)の、α、β−不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。この中でもマレイン酸が好適に用いられる。
α、β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸エステル、酸アミド、酸ハロゲン化物などが挙げられる。この中では、酸無水物が好ましい。
【0031】
本発明に用いられるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)の酸価は0.1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。好ましくは1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下である。
メルトフローレイト(以下MFRと略記する場合がある)は1〜100g/10分である。好ましくは10〜30g/10分、より好ましくは10〜20g/10分である。メルトフローレイトはJIS K 7210に準拠して測定される、200℃、5kg荷重での10分間の流出量(g/10分)である。
1g/10分未満では溶剤への溶解が困難もしくは長時間かかり、100g/10分より大きいと押出しラミネートにおける接着性樹脂との十分なラミネート強度および活性エネルギー線硬化型インクジェットインキとの密着強度が得にくい。
【0032】
スチレン系ブロック共重合体にα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせたものを用いることもできる。スチレン系ブロック共重合体にα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせる方法は特開平11−335427号公報等を応用することができる。
【0033】
ラジカル開始剤はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられるものであればよい。中でも、1分間半減期温度が120〜200℃の範囲にあるものが好ましく、具体的には、過酸化物系開始剤としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、アゾジイソブチロニトリル等のジアゾ化合物が挙げられる。特にα,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が好ましい。
【0034】
本発明におけるα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)の市販品としては、例えばクレイトンFG1901GT、クレイトンFG1924(クレイトンポリマー社製)、タフテックM1913、タフテックM1943(旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明における酸価が50〜300mgKOH/gの粘着付与樹脂(B)はフィルムと接着性樹脂の接着力(すなわち、ラミネート強度)を強くし、さらに活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを使用する場合には、密着強度が強くなりし、インキの滲みが生じにくくなる。
例えば、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油系樹脂やテルペン系樹脂、ロジン系樹脂が挙げられる。中でも、接着性(密着性)を考慮するとロジン系が好ましい。
ロジンは松から得られる琥珀色、無定形の天然樹脂で、製造の違いでガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに分けられる。その主成分は、3つの環構造、共役2重結合、カルボキシル基を有するアビエチン酸とその異性体の混合物であり、反応性に富んだバルキーな構造を有している。反応性が高いために熱安定性が悪く、一般的にロジンに水素を添加し、安定性を良好にしている(水添ロジン)。酸価が50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤としては、例えば酸価を有する生ロジン(変性処理されていないロジン)、水添ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、水添(メタ)アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、水添マレイン酸変性ロジン、フマール酸変性ロジン、水添フマール酸変性ロジン等が挙げられる。中でも、好ましくは水添ロジンまたは(水添)アクリル酸変性ロジン等であり、より好ましくは酸変性および/または水素添加を行なったロジンであり、更に好ましくは水素添加したロジンである。
粘着付与樹脂(B)の酸価が50mgKOH/g未満であるとフィルムとAC剤との接着力が弱くなってしまうという問題が生じ、一方、300mgKOH/gよりも高いと、軟化点が高くなり、接着性樹脂が押出しラミネートされた際に粘着付与樹脂が溶融せずに濡れ性が低下するという問題や、フィルムに塗布・乾燥した後のべたつきなどの問題が生じる。酸価が150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であると、フィルムとの接着性、接着性樹脂への濡れ性、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキとの密着性などが特に良い。
【0036】
なお、酸価は、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。これは、例えば、次のような方法により測定される。まず試料を精密に量り、250mLのフラスコに入れ、エタノールまたはエタノールおよびエーテルの等容量混液50mLを加え、加温して溶かし、必要に応じて振り混ぜながら0.1N水酸化カリウム液で滴定する(指示薬:フェノールフタレイン)。滴定の終点は、液の淡紅色が30秒持続する点とする。次いで、同様の方法で空試験を行なって補正し、次の式から酸価の値を求める。
酸価=〔0.1N水酸化カリウム液の消費量(mL)×5.611〕/〔試料量(g)〕
【0037】
本発明は、α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)、および酸価50〜300mgKOH/gである粘着付与樹脂(B)を溶剤に溶解もしくは分散してなるアンカコーティング剤において、成分(A)/成分(B)=90重量%/10重量%〜60重量%/40重量%の比で混合されるのがよい。
成分(A)が90重量%よりも多く、成分(B)が10重量%よりも少ないと接着強度が低下する。一方、成分(A)が60重量%よりも少なく、成分(B)が40重量%よりも多いとAC剤の凝集力が低下し、接着性樹脂のラミネート強度が低下する。
【0038】
本発明のアンカーコーティング剤は溶剤にα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)と酸価50〜300mgKOH/gである粘着付与樹脂(B)が溶解または分散されていればよい。好ましくは溶解した状態である。用いられる溶剤としては特に制限はなく、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、石油系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を適量使用することができ、単独および混合して使用することができる。
【0039】
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
また、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン等が挙げられる。また、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3-メトキシブチル、γ−ブチルラクトン等が挙げられ、脂肪族系溶剤としては、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが挙げられ、アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、石油系溶剤としては、ナフタレン系炭化水素溶剤、パラフィン系炭化水素溶剤等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネートが挙げられる。上記溶剤は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0040】
AC剤の固形分濃度は1重量%以上20重量%以下がよい。好ましくは3重量%以上15重量%以下、より好ましくは5重量%以上12重量%以下である。1重量%未満では塗布量が少なくなり十分なラミネート強度を得るのが難しい。20重量%よりも高いと、成分(A)および(B)を十分に溶解もしくは分散することが難しくなり均一な塗布がしにくい。
【0041】
他の添加剤として、必要により各種のものが使用可能である。例えば着色剤やブロッキング防止剤、酸化防止剤などである。着色剤としては酸化チタンなどが挙げられる。ブロッキング防止剤としてはシリコーン、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミドなどが挙げられる。酸化防止剤としては、高分子量ヒンダード多価フェノール、トリアジン誘導体、高分子量ヒンダード・フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、2、2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、4、4−メチレン−ビス−(2、6−ジ−第三−ブチルフェノール)、2、6−ジ−第三−ブチルフェノール−p−クレゾール、2、5−ジ−第三−ブチルヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、2、2、4−トリメチル−1、2−ジヒドロキノン、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、4、4−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0042】
さらにフィルム状基材にオゾン処理やコロナ放電処理、フレーム処理などを施すことにより、ラミネート強度を向上させることも可能である。
【0043】
本発明のアンカーコーティング剤(以下、AC剤ともいう)を使用して接着性樹脂が積層されるフィルム状基材はPET/アルミニウム等のように一般的には複数の素材が積層されたものであるが、特に接着性樹脂とのラミネート強度が得難い基材に有用である。アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、塩化ビニリデンなどである。
【0044】
本発明のAC剤は押出しラミネーターのACコーターと言われる部分で基材に塗布される。通常、グラビアコートやロールコートなどの方法で塗布される。その後、50〜100℃雰囲気のドライヤーを通ることによって溶剤が乾燥される。ドライヤーの滞留時間は加工速度によって決まるが通常は数秒〜数十秒である。塗布量は固形分換算で0.1〜2g/m2である。好ましくは0.1〜1g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜0.5g/m2である。
【0045】
本発明においては、アルミニウムフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムなどへの接着性が低く、300℃以上の高温塗工ができない樹脂あるいは300℃以上の高温でも2液硬化型AC剤(例えば、東洋モートン社製オリバインEL−530A/オリバインEL−530Bなど)を使用してもラミネート強度が得られない樹脂を、接着性樹脂として使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−マレイン酸ジメチル共重合体、エチレン−マレイン酸ジエチル共重合体等のエチレン−不飽和エステル共重合体や、エチレン−α−オレフィン共重合体等のエチレン系共重合体やポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー(SIS)、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS)等のスチレン系ブロック共重合体等を挙げることができる。さらにこれらの樹脂にロジン、テルペン、石油樹脂等の粘着付与剤をブレンドしたものでもよい。また、特開2009−46545号公報にあるようにポリエチレンとポリエチレンへの接着性が低い樹脂をブレンドしたものなどが挙げられる。
【0046】
上記のポリエチレンへの接着性が低い樹脂としては、具体的には、ポリプロピレンやポリブテン、プロピレン−エチレン共重合体、ブテン−エチレン共重合体などが挙げられるが、特にブテン−エチレン共重合体(例えば、三井化学社製タフマーBLシリーズなど)が好適に用いられる。
【0047】
さらに、ポリエチレンなどは2液硬化型AC剤を塗布した面に樹脂温度300℃以上で押出しラミネートすることによってアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムとの間で強固なラミネート強度が発現するが、本発明のAC剤を使用すると樹脂温度300℃以下でもアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムとの間で強固なラミネート強度を得ることができる。
【0048】
押出しラミネートは押出しラミネーターと呼ばれる塗工機を用いて行なわれる。ダイスと言われる部分から加熱溶融した樹脂をフィルム状に押出しアルミニウムフィルムやポリエステルフィルムと貼り合わせられる。
【0049】
押出しラミネートされる接着性樹脂層の膜厚は一般的には10〜100μmである。接着性樹脂と被着材(容器本体など)をヒートシールした場合の接着力は接着性樹脂の膜厚によって変化する(通常は膜厚が厚くなると接着力は強くなり、薄くなると弱くなる)ため、接着性樹脂の膜厚は所望の接着力が得られる膜厚に調整される。好ましくは15〜50μmであり、より好ましくは20〜30μmである。
【0050】
本発明のアンカーコーティング剤は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキの密着性向上のために使用することも好ましい。すなわち、本発明の印刷フィルムは、フィルム状基材の表面に設けられた、アンカーコーティング剤から形成されるアンカー層の上に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ層が形成されてなることが好ましい。本発明の印刷フィルムは、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキとフィルム状基材の密着性向上のみならず、インキの滲みが生じにくい。
【0051】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、一般に単官能あるいは2官能などの重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤、増感剤、顔料分散体などから成り、これらと本発明のある一定以上の酸価を持つスチレン系ブロック共重合体および粘着付与樹脂を特定の割合で配合したアンカーコーティング剤が酸価部分を介して強固に密着するものと考えられる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を具体的に示す。なお例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
【0053】
<グラフト変性物の作成>
スチレン系ブロック共重合体(商品名「クレイトンG1726」クレイトンポリマー社製、SEBS/SEB、MFR65g/10分(200℃−5kg荷重))100部に対し、無水マレイン酸10部、ラジカル開始剤として、ビス(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(商品名「パーブチルP」日油社製)0.3部を加えヘンシェルミキサーにて5分間プリブレンドした。
ホッパーにプリブレンド物を投入し、スクリューフィーダを用いて押出機に供給した。ベント口から、真空ポンプにより減圧度760mmHgとして未反応モノマーを除去した。
得られた押出物を精製し、未反応モノマーを除去し評価したところMFR14g/10分、酸価12mgKOH/gであった。
押出機:アイ・ケー・ジー社製同方向回転二軸押出機PMT32−40.5
バレル温度:200℃(供給口160℃)
スクリュー回転速度:100rpm
供給速度:5kg/hr
【0054】
<酸変性されたスチレン系ブロック共重合体およびその他の樹脂>
P−1:前記クレイトンG1726のグラフト変性物(MFR14g/10分、酸価12mgKOH/g)
P−2:クレイトンFG1901GT(クレイトンポリマー社製、無水マレイン酸変性SEBS、MFR5g/10分、酸価10mgKOH/g)
P−3:クレイトンFG1924(クレイトンポリマー社製、無水マレイン酸変性SEBS/SEB、MFR11g/10分、酸価5mgKOH/g)
P−4:タフテックM1913(旭化成ケミカルズ社製、無水マレイン酸変性SEBS、MFR4.0g/10分、酸価11mgKOH/g)
P−5:タフテックM1943(旭化成ケミカルズ社製、無水マレイン酸変性SEBS、MFR6.0g/10分、酸価11mgKOH/g)
P−6:HPR VR105−1(三井・デュポンポリケミカル社製、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、MFR15g/10分(190℃−2.16kg荷重)、酸価10mgKOH/g)
P−7:クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製、SEBS、MFR10g/10分)
P−8:ニュクレルN1525(三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量15wt%、MFR25g/10分(190℃−2.16kg荷重)、酸価100mgKOH/g)
【0055】
<粘着付与樹脂>
TF−1:KE−604(荒川化学工業社製、ロジン系粘着付与樹脂、酸価240mgKOH/g、軟化点125℃)
TF−2:フォーラルAXE(イーストマンケミカル社製、完全水添ロジン系粘着付与樹脂、酸価168mgKOH/g、軟化点82℃)
TF−3:Sylvaros PRRX(アリゾナケミカル社製、ロジン系粘着付与樹脂、酸価146mgKOH/g、軟化点74℃)
TF−4:ネオトール125PK(ハリマ化成社製、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、酸価105mgKOH/g、軟化点130℃)
TF−5:タマノル901(荒川化学工業社製、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、酸価75mgKOH/g、軟化点127℃)
TF−6:ネオトールG2K(ハリマ化成社製、ロジンエステル系粘着付与樹脂、酸価41mg/KOH、軟化点100℃)
TF−7:スーパーエステルA−125(荒川化学工業社製、ロジンエステル系粘着付与樹脂、酸価20mgKOH/g以下、軟化点125℃)
TF−8:アルコンP−90(荒川化学工業社製、脂環族飽和炭化水素系粘着付与樹脂、酸価0mgKOH/g、軟化点90℃)
TF−9:クリアロンP−125(ヤスハラケミカル社製、テルペン系粘着付与樹脂、酸価1mgKOH/g以下、軟化点125℃)
【0056】
<2液硬化型AC剤>
オリバインEL−530A(東洋モートン社製、組成:ポリイソシアネート系、不揮発分:50±2%)/オリバインEL−530B(東洋モートン社製、組成:ポリエステル系、不揮発分50±2%)/酢酸エチルを1/1/8の重量比で混合した(固形分濃度10%)。
<押出ラミネート用樹脂>
EXT−1:ペトロセン204(東ソー社製、低密度ポリエチレン)
EXT−2:ペトロセン204(東ソー社製、低密度ポリエチレン)/タフマーBL3110(三井化学社製、ブテン−エチレン共重合体)=80重量%/20重量%の割合で二軸押出機で混合した。
EXT−3:ペトロセン204(東ソー社製、低密度ポリエチレン)/タフマーBL3110(三井化学社製、ブテン−エチレン共重合体)=60重量%/40重量%の割合で二軸押出機で混合した。
EXT−4:ウルトラセン625(東ソー社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体)/アルコンP−125(荒川化学工業社製、脂環族飽和炭化水素系粘着付与樹脂)=90重量%/10重量%の割合で二軸押出機で混合した。
【0057】
<溶剤>
S−1:トルエン/酢酸エチル=1/1の混合溶剤
S−2:シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1の混合溶剤
【0058】
<アンカーコーティング剤の調製>
攪拌機を備えたステンレスビーカーにトルエン(もしくはシクロヘキサン)を加え、これに酸変性されたスチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与樹脂(B)をそれぞれ表1に示す重量比になるように秤り取り室温で溶解(もしくは分散)した。これにトルエン(もしくはシクロヘキサン)と同量の酢酸エチルを加えアンカーコーティング剤を調製した。
同様にして、表3の配合にて、比較例用のアンカーコーティング剤を調製した。
なお、比較例12〜15は、2液硬化型のAC剤を使用した例である。
【0059】
エチレン−メタクリル酸共重合体は以下のようにしてアンカーコーティング剤を調製した。攪拌機を備えた高圧釜に、エチレン−メタクリル酸共重合体/粘着付与樹脂/アンモニア水(28%)/水を8/2/3/87の重量比になるように秤り入れ、160℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し水分散系アンカーコーティング剤(比較例3)を調製した。
【0060】
<積層フィルムの作製方法>
アルミニウム箔(35μm)あるいはPETフィルム(25μm)にアンカーコーティング剤をメイヤーバーコーター#10を使って塗布し、60℃オーブン中で乾燥し溶剤を除去した。押出しラミネーターを用いて、厚さ30μmで接着性樹脂を積層し積層フィルムを作成した。以下に加工条件を示した。
押出しラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーター
アンカーコーティング剤塗布量(乾燥後):0.1〜1.0g/m2
ダイ直下樹脂温度:230〜310℃(接着性樹脂のMFR等により適宜調整した)
加工速度:15m/分
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20℃
【0061】
<ラミネート強度の測定方法>
積層フィルムを15mm幅に断裁したもののラミネート強度(接着性樹脂層と、アルミニウム箔もしくはPETフィルムとの剥離強度)を引張強度試験機で180度角剥離、引張速度200mm/分、23℃−65%RH雰囲気下で測定した。
2N/15mm以上:○、1N/15mm〜2N/15mm未満:△、1N/15mm未満:×とした。
引張強度試験機:オリエンテック社製テンシロンRTA−100型
【0062】
<プラスチック容器での接着性評価>
積層フィルムを蓋材として、カップシーラーで紙ポリエチレン製容器もしくはポリプロピレン(PP)製容器にヒートシールした。引張強度試験機で蓋材を開封したときの(1)開封強度(○:10〜20N、×:10N未満、もしくは20Nを超える)、(2)接着性樹脂のデラミネーション(○:デラミネーションなし、×:デラミネーション発生)、(3)蓋材の破断(○:蓋材の破断なし、×:蓋材破断)、(4)糸曳き(○:糸曳きなし、×:糸曳き発生)、(5)紙ポリエチレン製容器の場合の容器フランジ部の紙剥け(○:容器フランジ部の20%以下、△:容器フランジ部の20%を超え、50%未満、×:容器フランジ部の50%以上)を評価した。
カップシーラー:トーワテクノ社製MODEL2005
容器外径:71mmφ
シール温度:160℃
シール圧力:100kgf/カップ
シール時間:1秒
引張強度試験機:オリエンテック社製テンシロンRTA−100型
開封条件:開封角度45度、開封速度300mm/分
測定雰囲気:23℃−65%RH
【0063】
<印刷フィルムの作製方法>
PETフィルム(25μm)あるいはポリエチレンフィルム(20μm)にアンカーコーティング剤をメイヤーバーコーター#10を使って塗布し、60℃オーブン中で乾燥し溶剤を除去した。UVランプを積んだ市販のインクジェットプリンターを用いて、印字した。以下に加工条件を示した。
UVランプ:ノードソン製メタルハライドランプ(140W/cm)
印刷速度:50m/分
ヘッド:
ヘッド温度:40℃
アンカーコーティング剤塗布量(乾燥後):0.1〜1.0g/m2
【0064】
<UV硬化型インクジェットインキの密着強度の測定方法>
硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットした部分にセロハンテープを貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハンテープの塗工面への密着を十分に行った後、セロハンテープを90°で剥離させたときの塗膜の基材への密着の程度から判断した。
硬化膜が全く剥がれない:◎、硬化膜が75%以上100%未満残る:○、硬化膜が75%未満残る:△、硬化膜が100%剥がれる:×とした。
【0065】
<インキ滲みの評価方法>
印刷フィルムのインキの滲みを目視で評価した。
印刷が鮮明で滲みなし:○、印刷が不鮮明で滲みあり:×
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性された酸価0.1〜50mgKOH/gであるスチレン系ブロック共重合体(A)、および酸価50〜300mgKOH/gである粘着付与樹脂(B)が溶剤に溶解もしくは分散されてなるアンカーコーティング剤であって、
(A)と(B)との重量比が(A)/(B)=90/10〜60/40であり、かつ、
固形分濃度が1〜20重量%であることを特徴とするアンカーコーティング剤。
【請求項2】
フィルム状基材の表面に設けられた、請求項1記載のアンカーコーティング剤から形成されるアンカー層の上に、押出しラミネートにより接着性樹脂層が形成されてなる積層フィルム。
【請求項3】
接着性樹脂層を形成する樹脂が、エチレン−不飽和エステル共重合体、エチレン−不飽和エステル共重合体と粘着付与樹脂とを含んでなる樹脂組成物、またはポリエチレンとブテン−エチレン共重合体とを含んでなる樹脂組成物のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の積層フィルム。
【請求項4】
エチレン−不飽和エステル共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項3記載の積層フィルム。
【請求項5】
フィルム状基材の表面に設けられた、請求項1記載のアンカーコーティング剤から形成されるアンカー層の上に、活性エネルギー線硬化型インクジェットインキ層が形成されてなる印刷フィルム。

【公開番号】特開2012−136688(P2012−136688A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196639(P2011−196639)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【特許番号】特許第4951714号(P4951714)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【出願人】(711004506)トーヨーケム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】