説明

アンカー基を含むスクアリリウム色素

【課題】本発明は、アンカー基を含むスクアリリウム色素、上記色素の合成方法、上記色素を含む電子機器、および上記色素の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造内にアンカー基を含むスクアリリウム色素、上記色素の合成方法、上記色素を含む電子機器、および上記色素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池(DSSC)(B.O’Regan and M.Graetzel,Nature 353(1991)737;国際公開第91/16719(A)号)は、低コストで高いエネルギー変換効率を提供する光起電機器である。半導体が吸光および電荷担体輸送の両方の仕事を担うシリコンベースのシステムとは対照的に、DSSCではこれらの機能は分離されている。光は、ナノ結晶TiOなどの半導体の表面に固定されている増感色素によって吸収される。電荷の分離は、この色素から半導体の伝導帯内への光誘起電子注入によって界面で発生する。色素分子は、電解質内のレドックス対によって対極から再生される。レドックス対は順に対極で再生され、回路は外部負荷を通しての電子伝達によって完結される。
【0003】
DSSCの効率は、集められて注入された光子の数によって、したがって色素増感剤によって吸収される光によって決定される。高い効率のためには、理想的な増感剤は、広範囲の太陽スペクトルにわたって効率的に吸収しなければならない。さらに、効率的電子注入のためには、半導体表面上に(化学吸着によって)吸着できなければならない。光励起されると、理想的な増感材は単一の量子収量で半導体の伝導帯内へ電子を注入しなければならない。電子伝達中のエネルギー損失を最小限に抑えるためには、その励起状態のエネルギーレベルは半導体の伝導帯の下界と良好に適応しなければならない。そのレドックス電位は、電子供給による色素再生が可能となるようにレドックス対と良好に適応しなければならない。
【0004】
最善の太陽光発電性能は、これまではルテニウムのポリピリジル錯体(赤色色素および黒色色素として公知である)を含有するカルボキシル基を用いて達成されてきた[1]。Ru錯体の光励起は、分子内金属−リガンド電荷移動(MLCT)遷移を生じさせる。ビピリジルリガンド内に位置する光励起電子は、カルボキシル−アンカー基によって半導体の伝導帯内に極めて効率的に注入することができる。このプロセスは、極めて高速であることが証明されている[2]。これとは対照的に、これらの錯体についてのTiO中の注入された電子と色素−カチオンとの間の組換えプロセスは、緩徐なプロセスである。この緩徐な組換えは、ビピリジルリガンドによる半導体とRu3+との間の大きな分離の結果であると考えられる。そこで、これらのRu錯体の分子設計は、効率的な電荷分離、したがって高いエネルギー変換効率において成功が得られる。しかし、DSSCのエネルギー変換効率は、これらのRu色素が太陽光を吸収する集光能力によって制限される。光起電機器の光活性領域は太陽スペクトルの可視部分に、およびその中の、短波長領域内に減少させられる。長波長領域の光子は集光されないので、電気エネルギーに変換させることができない。
【0005】
太陽電池の光から電気への全変換効率を改善するためには、光応答が太陽スペクトルの長波長領域内へ拡大されなければならない。そこで、600nmを超える吸収帯を備える新規な色素が必要とされる。この目的のために一般に使用されるルテニウム錯体の合成修飾は限定されている。
【0006】
このため、光増感剤として複数の利点:a)それらは強度の吸収作用(Ru錯体より10〜100倍高い減衰係数)を有するので、大量に集光するための材料がほとんど必要とされない;b)それらの物理的特性は、化学構造修飾によって修飾/調整されることに従順である;c)それらはルテニウムなどの金属を含有していないのでより安価である、を有する新規な有機色素を開発することが望ましい。
【0007】
しかし、ポリピリジルRu錯体を用いて達成されるほど高い効率を有機色素で達成するためには、Ru錯体について上述した、洗練された分子設計が必要とされる。DSSCのために例えばクマリン、メロシアニンおよびポリエン色素などの多数の有機色素が既に開発されてきたが、これまでに報告された大多数の色素は一般に使用される赤色色素と同一範囲内(600nm未満)の光を吸収する[3]。そこで、長波長領域の光子は、依然として光変換で失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、色素増感太陽電池において使用できる新規な色素を提供することであった。さらに、本発明の1つの目的は、太陽スペクトルの可視および長波長領域内で強度の吸収を示す、容易に入手でき、安定性であり、そして可溶性の機能的材料を提供することであった。さらに、本発明の1つの目的は、太陽スペクトルの可視およびIR(赤外線)領域内で>10L mol−1cm−1の吸収係数を備える強度の吸収を示す光安定性色素を提供することであった。さらに本発明の1つの目的は、太陽スペクトルの広範囲をカバーし、それによりその広範囲にわたって集光できる他の色素と組み合わせることのできる色素を提供することであった。さらにまた、本発明の1つの目的は、そのバンドギャップおよびエネルギーレベルを調整でき、光活性層のナノ多孔性表面へ効率的に化学吸着させることのできる色素を提供することであった。さらに本発明の1つの目的は、色素増感太陽電池において使用できる改良された色素を提供することであった。
【0009】
注目に値するのは、結合したアクリル酸基を有する、良好な効率を備える複数の有機色素が報告されているという事実である[5]。しかし前述のように、それらは赤色色素の範囲内でしか集光しない。本出願に報告する色素は、長波長領域内においても集光することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、式I:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
Gはアンカー基であり、前記アンカー基は前記色素の表面、例えばナノ多孔性半導体層の表面への共有結合を可能にし、前記アンカー基は−COOH、−SOH、−PO、−BO、−SH、−OH、−NH、好ましくは−COOHから選択され、
Aは、H、−CN、−NO、−COOR、−COSR、−COR、−CSR、−NCS、−CF、−CONR、−OCF、C5−m(式中、m=1〜5、好ましくは−CNもしくは−CFであり、RはHまたは一般式−CH2n+1(式中、n=0〜12、好ましくは0〜4である)の任意の直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖である)を含む基から選択され、
31、R32、R33、R34、R35、R36は、各存在時には、Hまたは一般式−(CHCH、−(CH−COOR、(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、n=0〜12、好ましくは0〜6であり、p=1〜4であり、Rは上記に規定したとおりである)の任意の直鎖もしくは分枝鎖から独立して選択される、または任意の置換もしくは未置換フェニルもしくはビフェニルである)によって表される色素によって解決されるが、
このとき前記共役系は、式II:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
およびn=0〜12であり、好ましくはn=0〜3およびn=1〜7であり、
は、H、−(CHCH、−(CH−COOR、−(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、p=1〜4であり、n=0〜12である、Rは上記に規定したとおりである)から選択され、
は、ハロゲン、例えばCl、Br、F、I、またはNO、NH、CN、SOH、OH、H、−(CHCH、−(CH−COOR、−(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、p=1〜4であり、n=0〜12である、Rは上記に規定したとおりである)などから選択される)に示した成分、または式IIによって表される成分のいずれかの組み合わせによって表される。
【0015】
1つの実施形態では、本発明による色素は、可視光線および/またはIR光線の波長範囲内、好ましくは300〜1,200nm、またはその部分範囲、好ましくは580〜850nmで吸光することができる。
【0016】
1つの実施形態では、本発明による色素は、式III:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、
31、R32、R33、R34、R35、R36は、各存在時には、Hまたは一般式−(CHCH、−(CH−COOR、(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、n=0〜12、好ましくは0〜6であり、p=1〜4である、Rは上記に規定したとおりである)の任意の直鎖もしくは分枝鎖から独立して選択される、または任意の置換もしくは未置換フェニルもしくはビフェニルであり、
A、Rおよびnは上記に規定したとおりである)を有する。
【0019】
1つの実施形態では、本発明による色素は、式IV:
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、
31、R32、R33、R34、R35、R36は、各存在時に、Hまたは一般式−(CHCH、−(CH−COOR、−(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、n=0〜12、好ましくは0〜6であり、p=1〜4である、Rは上記に規定したとおりである)の任意の直鎖もしくは分枝鎖から独立して選択される、または任意の置換もしくは未置換フェニルもしくはビフェニルである)を有する。
【0022】
1つの実施形態では、本発明による色素は、式V:
【0023】
【化5】

【0024】
を有する。
【0025】
1つの実施形態では、本発明による色素は、式VI:
【0026】
【化6】

【0027】
を有する。
【0028】
1つの実施形態では、本発明による色素は、式VII:
【0029】
【化7】

【0030】
を有する。
【0031】
本発明の目的は、本発明による色素の合成方法であって、
a)ハロゲン化スクアリリウム色素と、その構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系とを、スキームI:
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は請求項1〜7のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
1はハロゲン化スクアリリウム色素であり、2aはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
または
金属化スクアリリウム色素と、その構造内にカルボキシアルデヒド成分を含むハロゲン化共役系とを、スキームII:
【0034】
【化9】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキル、R31−R36であり、前記の共役系は請求項1〜7のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
7は金属化スクアリリウム色素であり、2bはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含むハロゲン化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
およびb)工程a)の生成物と一般式A−CH−Gの試薬との、スキームIII:
【0035】
【化10】

【0036】
(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は上記に規定したとおりである)によって表されるような縮合反応と、を含む方法によっても解決される。
【0037】
本発明の目的は、本発明による色素の合成方法であって、
a)ハロゲン化スクアリリウム色素と金属化共役系とを、スキームIV:
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は上記に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
1はハロゲン化スクアリリウム色素であり、2cはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
または
金属化スクアリリウム色素とハロゲン化共役系とを、スキームV:
【0040】
【化12】

【0041】
(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は上記に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
1は金属化スクアリリウム色素であり、2cはハロゲン化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
およびb)カルボキシアルデヒド成分を反応a)の生成物へ、好ましくはスキームVI:
【0042】
【化13】

【0043】
(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は上記に規定した共役系である)によって表される反応によって導入する工程と、
およびc)工程b)の生成物と一般式A−CH−Gの試薬との、スキームVII:
【0044】
【化14】

【0045】
(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は上記に規定した共役系である)によって表されるような縮合反応と、を含む方法によっても解決される。
【0046】
本発明の目的は、上記に規定したハロゲン化スクアリリウム色素1の合成方法であって、
a)スクアリン酸誘導体1cのハロもしくはアルキルエステルをスキームVIII:
【0047】
【化15】

【0048】
(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
Rは、任意のアルキル基、好ましくはC−Cアルキルであり、R31、R33およびR34は上記に規定したとおりである)によって表されるように形成する工程と、
b1)アルキルエステルからヒドロキシル基へスキームIX:
【0049】
【化16】

【0050】
によって表されるように脱保護し、引き続いて中間体1dおよび化合物1eの間の、スキームX:
【0051】
【化17】

【0052】
によって表されるように縮合反応させる工程と、
または
b2)工程a)からの生成物と化合物1eとの間のスキームXI:
【0053】
【化18】

【0054】
によって表されるように直接反応させる工程と、を含む方法によっても解決される。
【0055】
本発明の目的はさらに、上記に規定した色素を含む電子機器によっても解決される。
【0056】
1つの実施形態では、前記機器は、太陽電池、好ましくは色素増感太陽電池である。本発明による色素を含む電子機器の例には、携帯型電子機器およびディスプレイ、例えば、携帯電話、ノートブック、ラップトップ、携帯型オーディオテーププレイヤ、MP3プレイヤ、リモートコントロール、e−カード、e−ブック、e−リーダ、携帯型CDプレイヤ、携帯型DVDプレイヤ、カメラ、デジカメ、GPS機器、携帯型センサ、電子機器に統合されたディスプレイなどのためのエネルギー供給機器が含まれる。本発明による電子機器の例には、さらにまた上記の機器のいずれかのバッテリのための携帯型ソーラ充電器も含まれる。さらに、本発明による電子機器には、特別にはグリッド接続が可能ではない、例えばキャンピングカー、ボートなどの領域におけるスマートウィンドウ、オンルーフ用途が含まれる。本発明による電子機器がエネルギー供給機器であり、前記エネルギー供給機器が太陽電池パネルである場合は、そのようなパネルは好ましくは色素増感太陽電池パネル(DSSCパネル)である(図13も参照されたい)。
【0057】
色素増感太陽電池における1つの好ましい実施形態では、前記色素は、光活性半導体層へ化学吸着させられる。
【0058】
1つの実施形態では、本発明による機器は、少なくとも1つの他の色素をさらに含む。好ましくは、本発明による色素および前記少なくとも1つの他の色素は、混合される。好ましくは、本発明による色素および前記少なくとも1つの他の色素は、各々別個の層の上もしくは中にはなく、むしろ1つの光活性半導体層へ化学吸着させられている。
【0059】
1つの実施形態では、前記少なくとも1つの他の色素は、赤色色素もしくは黒色色素または前記2つの組み合わせである。
【0060】
好ましくは、前記色素は溶液中に存在する、または前記色素はフィルム中に存在する。
【0061】
1つの実施形態では、本発明による電子機器は、発色センサである。
【0062】
本発明の目的は、好ましくは、少なくとも1つの他の色素と一緒に、色素増感太陽電池中の増感剤であると上記に規定した色素の使用によっても解決される。
【0063】
1つの実施形態では、前記少なくとも1つの他の色素は、上記に規定した本発明による色素、赤色色素もしくは黒色色素または前記2つの組み合わせである。
【0064】
本発明の目的は、さらにまたセンサとしての本発明による色素の使用によっても解決されるが、このとき好ましくは、前記色素のスペクトル特性は存在する分析物の存在、非存在もしくは量およびそれに伴う変化に左右される。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明による機器は、好ましくは下記の仕様のうちの1つもしくは複数を備える、半導体多孔性材料を含む。
【0066】
−半導体多孔性材料は、10〜100nm、好ましくは15〜40nmの厚さを有する。
−半導体多孔性材料は、1つ以上の層からなる。
−半導体多孔性材料は、1nm〜40nm、好ましくは15〜30nmの範囲内にある平均径または長さを有する粒子を含有する。
−半導体多孔性材料は、複数の種類の粒子の混合物であり、前記1つの種類の粒子は1nm〜30nmの範囲内の平均径または長さを有し、前記第2種類の粒子は30nm〜100nmの範囲内の平均径および/または100nm〜5μmの範囲内の長さを有する。
−半導体多孔性材料は、TiO、SnO、ZnO、Nb、ZrO、CeO、WO、Cr、CrO、CrO、SiO、Fe、CuO、Al、CuAlO、SrTiO3、SrCu、ZrTiOであってもよい。
−本機器は、液体、ポリマーゲルベースまたは固体電解質であってもよい電荷輸送剤を含有する光起電機器であってもよい。
−本機器の調製中には、色素分子は、色素溶液もしくは色素混合物溶液からの自己集合によってナノ多孔性粒子に吸着させられる。
【0067】
本発明の目的は、さらにまた以下の式:
【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
【化21】

【0071】
【化22】

【0072】
【化23】

【0073】
(式中、
31−R36、R、Halおよび前記共役系は、請求項7〜8のいずれか一項に規定されたとおりである)のうちの1つによって表される化合物によって解決される。
【0074】
本明細書で使用する用語「アンカー基」は、そのようなアンカー基が属する実体が表面に、例えば太陽電池内のナノ多孔性半導体層の表面に共有結合(化学吸着)することを可能にする任意の官能基を意味することが意図されている。
【0075】
「スクアリリウム色素」は、スクアリン酸誘導体に結合した1つまたは複数の芳香族環系を有する分子であり、その芳香族環系は、そのような環系が複数存在する場合は、同一であっても相違していてもよい。
【0076】
「共役系」は、その原子中心間に交互二重結合および一重結合を有する分子である。共役系の最も単純な例は、一重結合によって分離された2つの二重結合が存在するブタジエンである。
【0077】
本明細書で使用する用語「分子構造」は、分子の構造を意味する。例えば、「色素の分子構造」は、前記色素の分子の構造である。色素の分子構造に含まれる「アンカー基」は、前記分子構造の一部を形成する。
【0078】
色素は、その色素がそれに共有結合している場合は、層もしくは表面に「化学吸着している」と言われる。
【0079】
用語「赤色色素」および「黒色色素」は、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)−ルテニウム(II)ビス−テトラブチルアンモニウム(文献においては、ルテニウム535−ビスTBA、N719またはB2としても公知である)およびトリス(イソチオシアナト)−ルテニウム(II)−2,2’:6’,2”−テルピリジン−4,4’,4”−トリカルボン酸、トリス−テトラブチルアンモニウム塩(ルテニウム620−1H3TBA、ルテニウム620またはN−749としても公知である)である、色素増感太陽電池のために一般に使用される色素を意味する。
【0080】
本明細書で使用する用語「その分子構造内にアンカー基を含む色素」は、その構造内にはただ1つのアンカー基が存在するというシナリオ、および複数のアンカー基が存在するというシナリオの両方を意味することが意図されている。
【0081】
本明細書で使用する用語「共有結合」は、用語「化学吸着」と互換的に使用される。
【0082】
式Iでは、文字「G」は、そのような基がそのような基から解離させることのできる陽子を有するという意味において、好ましくは酸性基である基を意味する。好ましくは、Gは、COOH、SOH、PO、BO、SH、OH、NHから選択される。Aは、H、−CN、−NO、−COOR、−COSR、−COR、−CSR、−NCS、−CF、−CONR、−OCF、C5−m(式中、m=1〜5である)を含む基から選択される。
【0083】
本明細書で使用する用語「可視および/またはIR光線の波長範囲内で吸収できる分子」は、指示された全範囲の一部もしくは複数部においてのみ、または全範囲にわたって吸光することのできる分子を意味することが意図されている。例えば、ある分子は、500〜700nmの範囲内でのみ吸収できるが、他方、他の分子は750〜1,000nmの範囲内で吸収することができ、他方第3の分子は300〜1,200nmの範囲にわたって吸収できる。そのような言い回しによって、これら全部のシナリオが含まれることが意図されている。
【0084】
本発明による「共役系」を例示する式IIを参照して、用語「成分の組み合わせは式IIによって表される」が使用されている。これは、式IIに示された構造の1つもしくは複数がさらに「共役系」を生成するように相互に共有結合している任意の分子を含むことが意図されている。
【0085】
本明細書で使用する「官能化共役系」は、そのような共役系が他の分子と反応することを可能にする化学官能基が与えられている共役系を意味することが意図されている。そのような官能化共役系についての例は、その官能化共役系中にアンカー基を導入することのできるアルデヒド基を有する金属化共役系である。
【0086】
用語「置換フェニル/ビフェニル」は、水素が例えばハロゲン、NO、NH、OHもしくはその他の官能基などの置換基で置換されている任意のフェニル/ビフェニルを意味することが意図されている。そのような置換基は、例えば上記で、その置換基がさらにまたフェニルもしくはビフェニルでの置換基であってもよいRであると規定されている。
【0087】
本発明者らは、驚くべきことに、太陽スペクトルの>600mmの長波長領域を使用することによって、およびDSSCに組み込まれた場合に、極めて優れた性能、つまり>6%、好ましくは>8.5%のDSSCの高効率を示す色素、最も注目すべきは式Iによる化合物、例えば化合物5および27を見いだした。
【0088】
本発明者らは、驚くべきことにさらに、式Iによって表される分子構造を有する有機色素を与えると、これらの色素が色素増感太陽電池およびセンサ機器において使用するのに極めて良好に適合することを見いだした。本発明者らは、そのような色素を生成するための合成方法を考案したが、これらの色素は例えばTiOなどのナノ多孔性半導体層上に効果的に吸着し、それらは可視領域だけではなく標準ルテニウムベースの色素、赤色および黒色色素、ならびにその他の21および22などの有機色素が活性ではない領域である太陽スペクトルの赤色/IR領域においても活性増感剤である。さらに、本発明による色素は、太陽スペクトルの長波長領域内を除いて標準赤色色素の量子効率に類似する高い量子効率を示す。このため本発明の色素を他の色素と、例えば有機色素もしくは標準赤色色素もしくは標準黒色色素と結合すると、広範囲の太陽スペクトルを集光することができる。それは本発明の色素を他の色素、例えば有機色素、標準赤色色素もしくは標準黒色色素または相違する波長で吸収極大を備える本発明のまた別の色素などと一緒に使用することを極めて前途有望にする。本発明による色素、およびそれに加えて、1つ以上のまた別の色素を含む色素増感太陽電池は、本明細書では多重色素増感太陽電池(M−DSSC)とも呼ぶ。好ましくは、前記1つ以上のまた別の色素もまた、本発明による色素である。
【0089】
さらに、有機色素は、高い吸収係数を有する。これは、それが同一量の光を吸収するために必要とされる色素の量が少ないことを意味する。表面上の1つの色素の量がより少なくなることは、相違する吸収特性を備えるより多くの色素、理想的には太陽光の全範囲を吸収する色素の混合物の使用を可能にする。
【0090】
さらに、本発明による色素では、アンカー基は、一般式:
【0091】
【化24】

【0092】
によって表される、色素の主要コアへ共役系によって直接的または任意で架橋されている基からなる。
何らかの理論によって拘束することを望まなくても、本発明者らは、この種類のアンカー基は、光励起後に高速の電子注入が発生するように電子密度分布に影響を及ぼすと考えている。本色素は、例えばTiO表面などの半導体表面へ、アンカー基のG基によって直接結合させられる。同時に、上記に示した、電子受容体を有するアンカー基のA基は、色素から半導体への電子注入にプラスの作用を及ぼすと考えられる。再び、任意の特定の機序に制限されることを望まなくても、本発明者らは、基底状態では、電子密度は半導体表面からははるか遠くに離れた発色団もしくは色素成分上に局在すると考えており、そして分子軌道計算は、本発明者らの想定を支持している。光励起後、効果的な電荷分離、ならびに色素成分から隣接するアンカー基への、存在する場合は共役系による、さもなければ直接的な電子の高速移動が発生する。このプロセスは、アンカー基のA基の受容体特性によって促進される。電子分布は、電子密度がアンカー基の近位で最高になるような方法で変化する。ここから半導体の伝導帯への電子移動は、このため高速である。光励起によって誘導されるこの仮説的な分子内電子密度再配置は、標準赤色色素における分子内金属−リガンド電荷移動に類似する。
【0093】
有機色素のエネルギーレベル(HOMO/LUMO)は、それらがDSSCの他の成分と適応するような方法で化学構造修飾によって組織的に調整することができる:半導体の誘導体を備える色素の励起状態のエネルギーレベル(LUMO)およびレドックス対のレドックス電位を備える色素の基底状態エネルギーレベル(HOMO)。共役系が存在する場合は、その役割はその系を通る高速の電子流、したがって光励起後の分布再配置を可能にすることである。さらに、拡大されたπ共役は、追加の吸収のレッドシフトを生じさせる。
【0094】
以下、図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明による色素の1つの実施形態の合成スキームであって、ハロゲン化発色団はその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系と反応させられ、その後にカルボキシアルデヒド成分がアンカー基へ変換される合成スキームの例を示す図である。
【図2】本発明による色素の1つの実施形態の合成スキームであって、金属化発色団はその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含むハロゲン化共役系と反応させられ、その後にカルボキシアルデヒド成分がアンカー基へ変換される合成スキームの例を示す図である。
【図3】本発明による色素の1つの実施形態の合成スキームであって、最初に金属化共役系はハロゲン化共役系と反応させられ、その後にカルボキシアルデヒド成分が導入され、その後にアンカー基へ変換される合成スキームの例を示す図である。
【図4】本発明による1つの実施形態の合成スキームであって、最初にハロゲン化共役系は金属化共役系と反応させられ、その後にカルボキシアルデヒド成分が導入され、その後にアンカー基へ変換される合成スキームの例を示す図である。
【図5】本発明による1つの実施形態の合成スキームであって、一般式Iのハロゲン化スクアリリウム色素である中間体が生成される合成スキームの例を示す図である。
【図6】本発明による色素の合成スキームであって、発色団に直接的に結合したアンカー基としてシアノアクリル酸成分を有し、一般式I(式中、n=0)によって表されるスクアリリウム色素の合成スキームを示す図である。
【図7】本発明による1つの実施形態の合成スキームであって、増感剤色素27が生成される合成スキームの例を示す図である。
【図8】本発明によって調製される様々な増感剤色素の構造を示す図である。
【図9】DSSCにおける増感剤と比較するために調査され、M−DSSCにおいて本発明による増感剤色素との混合物中で使用された様々な色素の構造を示す図である:21、22=メロシアニン色素のクラスからの有機色素;23=標準黒色色素および24=DSSCにおいて使用される従来型増感剤である標準赤色色素;14および17=スクアリリウム色素と類似するクラス由来であるが、一般式Iによって与えられる相違する分子構造(特異的アンカー基を有していない)を有する増感剤色素。
【図10】基底および励起状態における本発明による色素5の電子分布を示す図である;分子モデリングが実施され、計算はAccelrys社製のMaterials Studioソフトウエアを用いる密度関数理論に基づいている。
【図11】基底および励起状態における本発明による色素26の電子分布を示す図である;分子モデリングが実施され、計算はAccelrys社製のMaterials Studioソフトウエアを用いる密度関数理論に基づいている。
【図12】理論計算によって入手される本発明による様々な増感剤色素のエネルギーレベルを示す図である;計算(真空中の分子数)は、Accelrys社製のMaterials Studioソフトウエアを用いる密度関数理論に基づいている。
【図13】例えばDSSCパネルなどの、本発明によるエネルギー供給機器を含む、本発明による電子機器の様々な電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下では、さらに本発明を限定するためではなく例示するための実施例を参照する。
【0097】
(実施例)
以下では、色素およびそれらの中間体の合成、DSSCにおける増感剤としての前記色素の特性付けおよび用途について記載する。
【0098】
(実施例1)
請求項1〜5に記載されており、上述した2つの相違する合成経路によって共役系としてのチオフェンを介してアンカー基としてスクアリリウム色素へ結合されたシアノアクリル酸成分を有する、一般式Vを備える増感剤色素5の合成
【0099】
1)これは、図1に示した一般合成スキームの1つの実施例:
【0100】
【化25】

【0101】
(式中、
1は、ハロゲン化発色団であり、
2は、その構造内にカルボキシアルデヒドを含む金属化共役系である)である。
工程a)結果として化合物4の形成を生じさせるパラジウム媒介性カップリング反応による1および2の反応;工程b)標的5への4とシアノ酢酸との反応によるカルボキシアルデヒド成分からアンカー基への変換。
【0102】
工程a)不活性雰囲気下で、トルエン/メタノール混合液中の発色団1、1モル%の触媒Pd(PPhの混合液に1.2当量のチオフェン−カルバルデヒドホウ酸を加えた。この反応混合液を12時間にわたり120℃で攪拌した。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で除去した。この混合液をジクロロメタンにより抽出し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物の精製を(6/4)ジクロロメタン/アセトンを用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって実施すると、純粋チオフェン−カルバルデヒド由来4が得られた。
【0103】
工程b)アセトニトリル中の化合物4およびシアノアクリル酸の混合液を少量のピペリジンの存在下で12時間にわたり80℃へ加熱する。冷却後、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物は(5/5)アセトン/エチルアセテートを用いてシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製すると、赤緑色に輝く粉末として色素5が得られる。
【0104】
2)これは、図3に示した一般合成スキームの1つの実施例:
【0105】
【化26】

【0106】
(式中、
1は、ハロゲン化発色団であり、
2は、金属化共役系である)である。
【0107】
工程a)化合物3の形成を結果として生じさせるパラジウム媒介性カップリング反応による1および2の反応;工程b)カルボキシアルデヒド成分をVils−maier−Haak反応によって化合物3へ導入する;および工程c)カルボキシアルデヒド成分は、結果として標的5を生じさせる4とシアノ酢酸との反応によってアンカー基へ変換される。
【0108】
工程a)不活性雰囲気下で、発色団1、1モル%の触媒Pd(PPh、トルエン中の1当量のCsFの混合液に1.2当量のトリブチルスタンニル−チオフェンを加えた。この反応混合液を12時間にわたり120℃で攪拌した。室温へ冷却した後、ジクロロメタンを加えた。この反応中に形成された白色塩(BuSnF)を濾過して除去し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物の精製を(4/6)ジクロロメタン/エチルアセテートを用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製すると、純粋チオフェン由来スクアリリウム色素3が得られた。
【0109】
工程b)不活性雰囲気下で、化合物3は無水DMF中に溶解させる。1当量のPOClを緩徐に加え、この混合液を4時間で70℃で攪拌する。この混合液を室温へ冷却するに任せ、氷および水ならびに中和のためのNaOH水溶液を加えた。この混合液をジクロロメタンにより抽出し、溶媒を減圧下で除去する。粗生成物を(2/8)アセトン/エチルアセテートを用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製すると、純粋化合物4が得られた。
【0110】
工程c)アセトニトリル中の化合物4およびアクリル酸の混合液を少量のピペリジンの存在下で12時間にわたり80℃へ加熱した。冷却後、溶媒は減圧下で除去し、粗生成物は(5/5)アセトン/エチルアセテートを用いてシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製すると、赤緑色に輝く粉末として色素5が得られた。
【0111】
(実施例2)
上述し、図5に示した経路によるハロゲン化スクアリリウム色素1の合成
工程a)スクアリン酸誘導体1cのアルキルエステルの形成
【0112】
【化27】

【0113】
1a、スクアリン酸のジエチルエステル誘導体1b、エタノール中のトリエチルアミンの混合液を12時間にわたり70℃へ加熱した。溶媒を除去し、粗生成物は溶離液としてジクロロメタンを用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製した。純粋スクアリン酸誘導体1cがオレンジ色の固体として単離された。
【0114】
工程b)最初に1dを生じさせるためのアルキルエステル基の脱保護、これに続く臭素化スクアリリウム色素1を得るための1eとの反応
【0115】
【化28】

【0116】
セミスクアリン酸誘導体1cをエタノール中に注入し、数滴の0.5M NaOH水溶液を加えた。この混合液を70℃で3時間攪拌した。冷却後、1M HClを加えた。溶媒を蒸発させた後、生成物1dを黄色固体として単離する。1dはその後、ピリジンの存在下で1−ブタノール/トルエンの1:1混合液中の1当量の1eとさらに反応させた。還流(130℃)下で、この反応は水を生成したので、これは共沸蒸留によって、またはモレキュラーシーブによって除去した。1時間の反応時間後、スクアリリウム色素の形成は、青緑色の外観によって指示された。130℃で12時間後、反応混合液を室温へ冷却するに任せ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を溶離剤として(8/2)ジクロロメタン/エチルアセテートを用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製した。純粋生成物1は、緑色固体として単離された。
【0117】
(実施例3)
上述した色素および中間体の分析データ
【0118】
化合物1についての分析データ
3539BrN(599.60)
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.35−7.20(m,4H,arH),7.09(t,1H,arH),6.95(d,1H,arH),6.74(d,1H,arH),5.92(s,1H,=CH−),5.84(s,1H,=CH−),4.05,3.83(brs,4H,N−CH),1.96−1.70(m,16H,CH−プロピル,CH−Hex,6H,CH),1.21(t,6H,CH−Et),1.26−1.23(brs,12H,CH),0.95(t,3H,CH−HexまたはCH−プロピル),0.80(t,3H,CH−HexまたはCH−プロピル)
ESI MS m/z=601.3[M+]
UV/VIS(アセトニトリル):λmax=636nm
【0119】
化合物3についての分析データ
3944S(604.84)
H NMR(400MHz,MeOD):δ=7.71(s,1H,arH),7.62(d,1H,arH),7.43(d,1H,arH),7.39−7.34(m,3H,arH),7.25−7.18(m,3H,arH),7.08(t,1H,arH),5.83(d,1H,H−7),5.98(s,1H,=CH−),5.94(s,1H,=CH−),4.09(q,4H,N−CH),1.81−1.23(m,8H,CH−Hex),1.74(s,6H,CH),1.21(t,6H,CH−Et),1.24 1.72(brs,12H,CH),1.06(t,6H,CH−HexまたはCH−プロピル),0.91(t,6H,CH−HexまたはCH−プロピル)
ESI MS m/z=605.3[M+]
UV/VIS(アセトニトリル):λmax=645nm
【0120】
4についての分析データ
4044S(632.85)
H NMR(400MHz,CDCl):δ=9.89(s,1H,H−アルデヒド),7.76(d,1H,arH),7.64(m,2H,arH),7.42−7.32(m,4H,arH),7.19(t,1H,arH),7.05(d,1H,arH),6.97(s,1H,arH),5.98(s,1H,=CH−),5.34(s,1H,=CH−),4.02(brs,2H,N−CH),3.95(brs,2H,N−CH),1.81−1.23(m,8H,CH−Hex),1.74(s,6H,CH),1.21(t,6H,CH−Et),1.24 1.72(brs,12H,CH),1.06(t,6H,CH−HexまたはCH−プロピル),0.91(t,6H,CH−Hex または CH−プロピル)
ESI MS m/z=633.4[M+]
UV/VIS(アセトニトリル):λmax=654nm
【0121】
5についての分析データ
4345S(699.31)
H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.18(s,1H,=CH−),7.79(d,1H,arH),7.31(d,1H,arH),7.42−7.32(m,4H,arH),7.19(dd,1H,arH),7.01(d,1H,arH),6.95(s,1H,arH),5.98(s,1H,=CH−),5.34(s,1H,=CH−),4.02(brs,2H,N−CH),3.95(brs,2H,N−CH),1.81−1.23(m,8H,CH−Hex),1.74(s,6H,CH),1.21(t,6H,CH−Et),1.24 1.72(brs,12H,CH),1.06(t,6H,CH−HexまたはCH−プロピル),0.91(t,6H,CH−HexまたはCH−プロピル)
ESI MS m/z=700.3[M+]
UV/VIS(アセトニトリル):λmax=665nm
【0122】
(実施例4)
分子モデリング−共役系としてのチオフェンを介した発色団としてのスクアリリウム色素へのアンカー基として結合したシアノアクリル酸成分を有する色素5の理論的計算
【0123】
分子モデリングは、密度関数理論に基づくMaterials Studio 4.0 DMol3ソフトウエアを使用することによって実施した。この色素は、以下に記載する物理特性を示す。DSSCにおける増感剤としてのこの色素の高性能は、本発明による、そして一般式Iによって表される色素の構造に帰せられる。
【0124】
図12は、比較のためにDSSCの他の構成成分であるレドックス対および半導体の伝導帯のエネルギーレベルを含む、本発明による様々な色素のエネルギーレベルを示している。色素の構造は、図8に示した。増感剤色素は>630nmの範囲内の光を吸収し、これらの増感剤を用いて調製されたDSSCの効率は、>6%の効率を示す。これらの色素のエネルギーレベルは、半導体およびレドックス対と良好に適合する。これらの特性は、発色団および共役系の性質と強度に関連している。
【0125】
図10は、増感剤色素5の基底状態および励起状態における電子分布を示しており、図11は増感剤26について示している。両方について、アンカー基の性質は光励起による電子密度の分子内再配置を許容する。各々、図の左側では基底状態の分子は、電子密度が半導体表面からはるか遠くの発色団上で最高であることを示している。右側では、分子のLUMOが示されている。これは光励起後の分子の電子密度と相関している。光励起後、電子密度はナノ多孔性半導体との直接的カップリングを可能にするアンカー基の近位で極めて高い。本発明者らは、この状況が極めて高速の電子注入を可能にすると考えている。
そこで全体として、本出願においては、安定性であり、太陽スペクトルの可視およびIR領域内での強力な吸収および発光を特徴とする色素が開示されており、これらの色素は、これらの領域のためにDSSC内の増感剤として有用である。標準赤色色素、標準黒色色素またはその他の有機色素と組み合わせると、それらは太陽スペクトルの広範囲にわたって太陽光を集光することができる。本発明者らは、色素増感太陽電池における性能を向上させるためのこれらの色素の分子設計について記載する。アンカー基は色素−増感剤のナノ多孔性半導体表面上への効率的吸着について責任を担っていると考えられ、任意に共役系によって色素の主要コアへ架橋されるアクリル酸成分からなる。この種類のアンカー基は、光誘起機器における増感剤のより優れた性能を生じさせる有機色素の光励起誘導性分子内電子密度再配置を可能にすると考えられる。
【0126】
(実施例5)
増感剤色素5ならびに比較のための標準黒色色素23および標準赤色色素24のエタノール溶液のUV−Vis
【0127】
【表1】

【0128】
化合物5の吸光度は、664nmで最大となり、強度にレッドシフトしている。DSSCにおいて使用される従来型増感剤である、ルテニウムをベースとする色素23および24と比較すると、色素5は、ほぼ15倍高い減衰係数を伴う強度の吸光度を有する。
【0129】
(実施例6)
太陽電池を調製するための、以下を使用する一般プロトコール
【0130】
a)0.24cmの活性面積を備えるTiO半導体粒子からなる厚さ10〜20μmのモノ印刷された多孔質層
b)0.1882cmの活性面積を備えるTiO半導体粒子からなる厚さ20〜30μmのマルチ印刷された多孔質層
【0131】
DSSCは、以下のように組み立てる:厚さ30nmのバルクTiOブロッキング層をFTO上に形成する(ガラスまたはフレキシブル基板上で約100nm)。半導体粒子の厚さ10〜30μmの多孔質層をブロッキング層上にスクリーン印刷し、30分間にわたり450℃で焼結させる。色素分子は、色素溶液から自己集合させることによってナノ多孔質粒子へ吸着させる。色素溶液は、単一色素、または単一色素および例えばデオキシコール酸などの添加物、または様々な比率にある色素の混合物、または様々な比率にある色素の混合物および添加物からなる。多孔質層には、ドロップキャスティング(drop casting)法によって、a)液体電解質、b)レドックス対(15mM)としてI/Iを含有するポリマーゲル電解質を充填する。反射型白金背後電極は多孔質層から6μmの間隔をあけて取り付ける。
【0132】
(実施例7)
本発明の方法によって製造された増感剤色素の少なくとも1つを含有するDSSCの効率の測定。色素の各構造は、図8および9に示した。
【0133】
電池の品質は、
a)100mWcm−2の強度を備える硫黄ランプ(IKL Celsius、Light Drive 1000)。他に特に言及しない場合は、結果は3つの電池の平均値である。
b)100mWcm−2の強度を備える太陽シミュレータ(AM1.5G YSS−150)からの光線を用いた照明下で、電流密度(J)および電圧(V)特性によって評価する。他に特に言及しない場合は、結果は3つの電池の平均値である。
【0134】
光起電機器の効率は、以下のように計算する:
η=Pout/Pin=FF×(Jsc×Voc)/(L×A)
(式中、
FF=Vmax×Imax/Voc×Isc
FF=フィルファクタ
oc=開路電圧
sc=短絡電流密度
L=照度=100mW/cm
A=活性面積=0.24cm
max=最大電力点電圧
max=最大電力点電流)
【0135】
DSSCにおける増感剤としての色素の性能を判定するために重要なパラメータは、IPCE曲線である。IPCE曲線は、様々な波長での増感剤色素の光活性を反映する(IPCE=入射光子対電流効率)。
【0136】
大多数の場合において本発明の増感剤色素を含有するDSSCの効率を測定することによってより明確な比較を行うために、参照として、市販の標準赤色色素(いわゆるbisTBA−Ru535もしくはN719)または黒色色素(いわゆるRu620−1H3TBAまたはN749)を含有する電池を同一条件下で準備する。
【0137】
(実施例8)
スクアリリウム色素5、14および17を各々使用することによるDSSCの効率の比較
DSSCは、実施例6aに記載した方法によって調製し、7aに記載した方法によって測定した。
3つの色素は、同一クラスの色素、つまりスクアリリウム色素に属する。色素5および14は、スクアリリウム色素コアに結合したチオフェン成分を有し、これは太陽スペクトルのより赤色の領域へ吸光を転移させる。色素5および17は、どちらもアンカー基を1つしか有していないが、増感剤色素5は請求項1〜5のいずれか一項に記載の分子構造、特別にはアンカー基を有する。
【0138】
【表2】

【0139】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(20mM)からのTiO色素コーティング
[2]0.3mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(20mM)からのTiO色素コーティング
【0140】
増感剤色素5を用いて調製したDSSCの効率は、他の2つの色素を用いて調製した増感剤色素よりはるかに高い効率(>6%)を示す。これは、>600nmの太陽スペクトルの長波長範囲における光線を吸収する有機色素を用いることによって調製された機器についてこれまで報告されたDSSCの最高効率である。
【0141】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造を備える増感剤色素、例えば5または27を他の有機色素に比較した優位性は、この増感剤色素が、他の増感剤色素との混合物で使用することができ、単一増感剤色素を使用した場合よりも太陽電池の高い効率を生じさせるという事実に反映されている。本発明者らは、1つより多い色素が集光するための増感剤として使用されるこのタイプの太陽電池機器を多重色素増感太陽電池(M−DSSC)と名付ける。
【0142】
(実施例9)
実施例6aに記載した方法によって調製し、実施例7aに記載したように測定した、増感剤色素5および標準黒色色素23を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いて調製するDSSCを調製し、測定した。
【0143】
【表3】

【0144】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]0.375mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(20mM)からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素23(0.375mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
【0145】
色素が1:3の比率で混合される溶液を使用することによって、DSSCの効率は増加する。これは、大部分は短絡電流密度が上昇することに起因する。
【0146】
通常は、DSSCの分野では、太陽スペクトルの長波長範囲内の高い光活性が必要とされる場合には、好ましくは黒色色素23が標準赤色色素24の代わりに使用される。色素5および標準黒色色素23のIPCE曲線を比較することによって、請求項1による構造を有する色素5が550〜750nmの範囲内で黒色色素23よりもはるかに高い光活性を示すことを見て取ることができる。
【0147】
さらに、IPCE曲線では、2つの色素5および23の入射−光子変換効率が相加的方法で挙動することを見て取ることができる;このため、色素混合物は単一色素より優れた性能を有する。
【0148】
これは、そのような現象が実現された最初である。
【0149】
【表4】

【0150】
(実施例10)
実施例6aに記載した方法によって調製し、実施例7aに記載したように測定した、増感剤色素5および有機色素21を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いて調製するDSSCを調製し、測定した。
【0151】
【表5】

【0152】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素21(0.125mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
【0153】
どちらの色素も高い効率を示す。色素が1:1の比率で混合される溶液を使用することによって、DSSC deviseの効率は増加する。これは、大部分は短絡電流密度が上昇することに起因する。
【0154】
色素5および色素21のIPCE曲線を比較することによって、色素5が550〜750nmの範囲内で光活性であることを見て取ることができるが、このとき標準色素23および24およびさらに有機色素21は、この領域ではこれほど高い光活性を有していない、または全く有していない。
【0155】
色素混合物のIPCE曲線は、単一色素の相加的IPCE曲線を反映している。
【0156】
これは、色素混合物が単一色素より良好に機能することの理由である。
【0157】
これは、そのような純粋有機色素の混合物がDSSCにおけるより高い効率を生じさせることについての最初の報告である。
【0158】
【表6】

【0159】
(実施例11)
実施例6aに記載した方法によって調製し、実施例7aに記載したように測定した、増感剤色素5および有機色素22を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いて調製するDSSCを調製し、測定した。
【0160】
【表7】

【0161】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素22(0.125mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
【0162】
どちらの色素も高い効率を示す。色素が1:1の比率で混合される溶液を使用することによって、DSSC deviseの効率は増加する。これは、個々の短絡電流密度の相加的挙動に起因する。
【0163】
色素5および色素22のIPCE曲線を比較することによって、色素5が550〜750nmの範囲内で光活性であることを見て取ることができるが、このとき標準色素23および24はこれほど高い光活性を有しておらず、有機色素22は、光活性を全く有していない。
【0164】
【表8】

【0165】
(実施例12)
3つの増感剤の混合物:増感剤色素5、標準黒色色素23および有機色素21を使用して、実施例6aに記載の方法によって調製し、実施例7aによって測定したM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いて調製するDSSCを調製し、測定した。
【0166】
【表9】

【0167】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素22(0.125mM)+色素23(0.375mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
【0168】
これら3つの色素は、単一増感剤として類似の効率を有する。これらの色素を混合することによって、DSSCのより高い効率が達成される。色素が1:1:1の比率で混合される溶液を使用することによって、DSSC deviseの効率は増加する。これらの色素は、太陽スペクトルの相違する領域において光活性である。混合物のIPCE曲線は、黒色色素の作用に起因して赤色領域へ拡大され、色素5に起因して580〜780nmの範囲内でより強度である。
【0169】
【表10】

【0170】
これは、3つの色素の混合物を使用することに起因して増加した効率を備えるDSSCについて報告された最初である。
【0171】
通常、2つ以上の色素が混合される場合は、第2色素による集光の添加によって達成される利得は、第1色素の性能の減少に起因して失われる。これを証明するために、以下では本発明者らが調査した3つの実施例について開示する。
【0172】
以前のMSL−Sonyの特許出願である国際公開第2005/024866号「Tandem cell」では、発明者らは2つの色素を使用した場合の上記の損失を回避する可能性について開示している[6]。
【0173】
DSSC効率を増加させるために、国際公開第2005/024866号の機器は、「タンデム形状(Tandem)」で構築する必要がある。この場合、色素は混合されず、それらは2つのナノ多孔質層上にコーティングされ、機器内の2つの別個の区画で使用される。実際の大量生産のためには、これは現実には経済的に実施可能ではない機器組み立てであるが、それは大量生産のためには、複雑すぎて費用のかかる方法であるためである。
【0174】
(実施例13)
実施例6bに記載した方法によって調製し、実施例7aに記載したように測定した、有機増感剤色素24および14を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いてDSSCを調製し、測定した。ナノ多孔性TiOコーティングのために使用した色素溶液濃度は、以前に決定した最適濃度である。
【0175】
【表11】

【0176】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(20mM)からのTiO色素コーティング
[2]添加物を加えていない0.3mM色素溶液からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素14(0.125mM)+色素24(0.3mM)+添加物なし)からのTiO色素コーティング
【0177】
データから、色素を混合することによってDSSC機器のより高い効率が達成されないことを見て取ることができる。これは主として、14の添加による標準増感剤色素24の短絡電流密度の減少に起因する。
【0178】
これは、IPCE曲線を記録することによって確認される。この場合には、赤色色素24単独は、増感剤色素14と混合した場合より単独色素として使用した場合の方がはるかに高い光活性を有する。相加的挙動は見られない。
【0179】
【表12】

【0180】
(実施例14)
実施例6aに記載した方法によって調製し、実施例7bに記載したように測定した、有機増感剤色素24および17を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いてDSSCを調製し、測定した。ナノ多孔性TiOコーティングのために使用した色素溶液の濃度は、以前に決定した最適濃度である。
【0181】
【表13】

【0182】
[1]0.3mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(20mM)からのTiO色素コーティング
[2]添加物を加えていない0.3mM色素溶液からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素17(0.3mM)+色素24(0.3mM)+添加物なし)からのTiO色素コーティング
【0183】
標準赤色色素24に色素17を加えることによって、効率およびIPCE曲線の減少を明らかに見て取ることができる。
【0184】
【表14】

【0185】
(実施例15)
実施例6bに記載した方法によって調製し、実施例7aに記載したように測定した、増感剤色素5および27を使用することによるDSSCの効率
【0186】
【表15】

【0187】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
【0188】
(実施例16)
実施例6bに記載した方法によって調製し、実施例7bに記載したように測定した、有機増感剤色素24および5を含有するM−DSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いてDSSCを調製し、測定した。
【0189】
【表16】

【0190】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]添加物を加えていない0.3mM色素溶液からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素24(0.3mM)+10mM DCA)からのTiO色素コーティング
【0191】
これは、DSSCの効率が標準赤色色素および有機色素の混合物を使用することによって増加した最初である。
【0192】
(実施例17)
増感剤色素5を用いて実施例6bに記載した方法によって調製し、実施例7bによって測定し、他の有機増感剤色素21および22と比較したDSSCの効率
【0193】
【表17】

【0194】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
【0195】
色素21および22は類似のアンカー基を有するが、それらは色素5のような太陽スペクトルの長波長範囲において活性を全く有していない。
【0196】
増感剤色素5を用いて調製したDSSCの効率は、他の有機色素21および22よりはるかに高い効率を示す。
【0197】
6.09%は、太陽シミュレータ照明下で、>600nmの太陽スペクトルの長波長範囲における光線を吸収する有機色素を用いることによって測定されたDSSCについてこれまで報告された最高効率である。例えば21または22などのDSSCにおいて優れた性能を示す他の全ての有機色素は、300〜550nmの範囲内で光線を吸収する。
【0198】
(実施例18)
色素5、21、22および23の単独または混合物を用いて、実施例6bに記載した方法によって調製し、実施例7bによって測定したDSSCの効率。比較のために、さらにまた各単一増感剤色素を用いて調製するDSSCを調製し、測定した。
【0199】
【表18】

【0200】
[1]0.125mM色素溶液+添加物のデオキシコール酸(12.5mM)からのTiO色素コーティング
[2]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素21(0.125mM)または色素23(0.125mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
[3]色素混合物溶液(色素5(0.125mM)+色素21(0.125mM)または色素23(0.375mM)+添加物のデオキシコール酸(20mM))からのTiO色素コーティング
【0201】
色素が混合される溶液を使用することによって、DSSCの効率は増加する。これは、大部分は短絡電流密度が上昇することに起因する。
【0202】
(実施例19)
共役系としてのチオフェンを介して発色団としてのスクアリリウム色素に結合したアンカー基としてのトリフルオロメチルアクリル酸を用いた請求項1〜5に記載の色素26の合成スキーム
【0203】
これは、図1に示した一般合成スキームの1つの実施例:
【0204】
【化29】

【0205】
(式中、
1は、ハロゲン化発色団である、
2aは、その構造内にカルボキシアルデヒドを含む金属化共役系である)である。
工程a)結果として化合物4の形成を生じさせるパラジウム媒介性カップリング反応による1および2aの反応;工程b)標的26への4とトリフルオロプロピオン酸との反応による変換。
【0206】
[1]M.K.Nazeeruddin,A.Kay,I.Rodicio,R.Humphry−Baker,E.Mueller,P.Liska,N.Vlachoppoulos,M.Graetzel,J.Am.Chem.Soc,1993,115,6382.
[2]Y.Tachibana,J.E.Moser,M.Graetzel,D.R.Klug,J.R.Durrant,J.Phys.Chem,1996,100,20056.
[3]a)T.Horiuchi,H.Miura,S.Uchida,Chem.Commun.2003,3036;b)K.Sayama,S.Tsukagoshi,K.Hara,Y.Ohga,A.Shinpou,Y.Abe,S.Suga,H.Arakawa,J.Phys.Chem B,2002,106,1363;c)K.Hara,T.Kinoshita,K.Sayama,H.Sugihara,H.Arakawa,Sol.Energy Mater.Sol.Cells.2000,64,115.
[4]a)K.G.Thomas,P.V.Kamat,Acc Chem.Res.2003,36,888;b)K.Y.Law,Chem.Rev.1993,93,449−486;c)Kim,Sung−Hoon;Han,Sun−Kyung,High performance squarylium dyes for high−tech use.Coloration Technology(2001),117(2),61−67;d)Chu,et al.Benzpyrylium squarylium and croconylium dyes,and processes for their preparation and use,US1999/065350;e)Satsuki,Makoto;Oga,Yasuyo;Shinpo,Akira;Suga,Sadaharu,Squarylium indole cyanine dyes with good solubility in organic solvents,preparation thereof,and light absorbers therefrom,特開2002−294094号公報;f)Lin,Tong;Peng,Bi−Xian,Synthesis and spectral characteristics of some highly soluble squarylium cyanine dyes,Dyes and Pigments 1997,35(4),331−338.
[5]a)K.Hara,T.Sato,R.Katoh,A.Furube,T.Yoshihara,M.Murai,M.Kurashige,S.Ito,A.Shinpo,S.Suga,H.Arakawa,Adv.Funct.Mater.2005,15,246;b)K.Hara,Z.Wang,T.Sato,A.Furube,R.KAtoh,H.Sugihara,Y.Dan−oh,A.Shinpo,S.Suga,J.Phys.Chem 2005,109,15476.
[6]国際公開2005/024866号,Michael Duerr et al.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
Gはアンカー基であり、前記アンカー基は前記色素の表面、例えばナノ多孔性半導体層の表面への共有結合を可能にし、前記アンカー基は−COOH、−SOH、−PO、−BO、−SH、−OH、−NH、好ましくは−COOHから選択され、
Aは、H、−CN、−NO、−COOR、−COSR、−COR、−CSR、−NCS、−CF、−CONR、−OCF、C5−m(式中、m=1〜5、好ましくは−CNもしくは−CFであり、RはHまたは一般式−CH2n+1(式中、n=0〜12、好ましくは0〜4である)の任意の直鎖状もしくは分枝状アルキル鎖である)を含む基から選択され、
31、R32、R33、R34、R35、R36は、各存在時には、Hまたは一般式−(CHCH、−(CH−COOR、(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、n=0〜12、好ましくは0〜6であり、p=1〜4であり、Rは上記に規定したとおりである)の任意の直鎖もしくは分枝鎖から独立して選択される、または任意の置換もしくは未置換フェニルもしくはビフェニルである)によって表される色素であって、
前記共役系は、式II:
【化2】

(式中、
およびn=0〜12であり、好ましくはn=0〜3およびn=1〜7であり、
は、H、−(CHCH、−(CH−COOR、−(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、p=1〜4であり、n=0〜12である、Rは上記に規定したとおりである)から選択され、
は、ハロゲン、例えばCl、Br、F、I、またはNO、NH、CN、SOH、OH、H、−(CHCH、−(CH−COOR、−(CH−OR、−(CH−SR、−(CH−NR、−((CH−O)−CH(式中、p=1〜4であり、n=0〜12である、Rは上記に規定したとおりである)などから選択される)に示した成分、または式IIによって表される成分のいずれかの組み合わせによって表される色素。
【請求項2】
可視光線および/またはIR光線の波長範囲内、好ましくは300〜1,200nm、またはその部分範囲、好ましくは580〜850nmで吸光することができる、請求項1に記載の色素。
【請求項3】
式III:
【化3】

を有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の色素。
【請求項4】
式IV:
【化4】

を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素。
【請求項5】
式Vまたは式VIまたは式VII
【化5】

を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素の合成方法であって、
a)ハロゲン化スクアリリウム色素と、その構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系とを、スキームI:
【化6】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
および1はハロゲン化スクアリリウム色素であり、2aはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
または
金属化スクアリリウム色素と、その構造内にカルボキシアルデヒド成分を含むハロゲン化共役系とを、スキームII:
【化7】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
および7は金属化スクアリリウム色素であり、2bはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含むハロゲン化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
およびb)工程a)の生成物と一般式A−CH−Gの試薬との、スキームIII:
【化8】

(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は、請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりである)によって表されるような縮合反応と、を含む方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素の合成方法であって、
a)ハロゲン化スクアリリウム色素と金属化共役系とを、スキームIV:
【化9】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
および1はハロゲン化スクアリリウム色素であり、2cはその構造内にカルボキシアルデヒド成分を含む金属化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
または
金属化スクアリリウム色素とハロゲン化共役系とを、スキームV:
【化10】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
M=Sn(アルキル)、B(OR)、MgHal、ZnRであり、Rはこの場合にはHまたは任意のアルキル基、好ましくはC−C12アルキルであり、R31−R36および前記の共役系は請求項1〜7のいずれか一項に規定されたとおりであり、
[Cat]は、そのような遷移金属触媒カップリング反応において一般に使用される触媒、好ましくはパラジウム、ニッケルもしくは銅触媒を表し、
および1は金属化スクアリリウム色素であり、2cはハロゲン化共役系である)によって表されるようにカップリングさせる工程と、
およびb)カルボキシアルデヒド成分を反応a)の生成物へ、好ましくはスキームVI:
【化11】

(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は、請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりである)によって表される反応によって導入する工程と、
およびc)工程b)の生成物と一般式A−CH−Gの試薬との、スキームVII:
【化12】

(式中、G、A、R31−R36および前記共役系は、請求項1〜5のいずれか一項に規定されたとおりである)によって表されるような縮合反応と、を含む方法。
【請求項8】
請求項6〜7のいずれか一項に規定のハロゲン化スクアリリウム色素1の合成方法であって、
a)スキームVIII:
【化13】

(式中、
Hal=Br、I、Cl、トシルであり、
Rは、任意のアルキル基、好ましくはC−Cアルキルであり、R31、R33およびR34は請求項1〜5のいずれか一項に規定したとおりである)によって表される、スクアリン酸誘導体1cのハロもしくはアルキルエステルを形成する工程と、
およびb1)アルキルエステルからヒドロキシル基へスキームIX:
【化14】

によって表されるように脱保護し、引き続いて中間体1dおよび化合物1eの間の、スキームX:
【化15】

によって表されるように縮合反応させる工程と、
または
b2)工程a)からの生成物と化合物1eとの間のスキームXI

【化16】

によって表されるように直接反応させる工程と、を含む方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に規定の色素を含む電子機器。
【請求項10】
太陽電池、好ましくは色素増感太陽電池である、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
色素増感太陽電池であって、前記色素は前記色素増感太陽電池における光活性半導体多孔質材料に化学吸着されている、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
少なくとも1つの他の色素をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の機器。
【請求項13】
前記少なくとも1つの他の色素は、赤色色素もしくは黒色色素または前記2つの組み合わせである、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
前記色素は、溶液中に存在する、または前記色素はフィルム中に存在する、請求項9〜13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
色素増感太陽電池における増感剤としての請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素の使用。
【請求項16】
少なくとも1つの他の色素と一緒の請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1つの他の色素は、請求項1〜5のいずれか一項に規定した色素、赤色色素もしくは黒色色素または前記2つの組み合わせである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
以下の式:
【化17】

【化18】

【化19】

(式中、R31−R36、R、Halおよび前記共役系は、請求項7〜8のいずれか一項に規定されたとおりである)の1つによって表される化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−504190(P2011−504190A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530352(P2010−530352)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009074
【国際公開番号】WO2009/053107
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】