説明

アンテナ共用器、ならびに、それを用いた高周波モジュールおよび通信機器

【課題】 平衡型端子を有する半導体デバイスに直接接続することができるアンテナ共用器を提供すること。
【解決手段】 送信フィルタ101に接続される送信端子Txおよび受信フィルタ103に接続される受信端子Rxの内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子である。送信フィルタ101および受信フィルタ103は、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成である。平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタ700が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ共用器に関し、より特定的には、送信フィルタと受信フィルタとを備えるアンテナ共用器に関する。また、本発明は、アンテナ共用器を用いた高周波モジュールおよび通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信の発展に伴い、使用されるデバイスの高性能化、小型化が期待されている。アンテナ共用器に関しても、弾性表面波フィルタ(Surface Acoustic Wave filter:SAWフィルタ)や薄膜音響共振器(Film Bulk Acoustic Resonator:FBAR)を用いたフィルタによって、小型化が進んでいる。また、半導体デバイスにおいては、デバイス間のクロストークなどに対する雑音特性の良好化を目的として、ミキサーや低雑音アンプなどのデバイスの平衡化が進んでいる。これらの半導体デバイスに接続されるアンテナ共用器に関しても、平衡化が必要となってきている。
【0003】
図15は、特許文献1に記載されているアンテナ共用器の構成を示す図である。図15に示すように、従来のアンテナ共用器として、FBARの梯子型回路によって構成される帯域通過フィルタを用いるものがあった。従来のアンテナ共用器10は、アンテナ端子11と、送信端子12と、受信端子13と、送信フィルタ14と、移相器15と、受信フィルタ16とを備える。アンテナ端子11は、送信フィルタ14を介して送信端子12に接続されると共に、直列構成をなす90°移相器15および受信フィルタ16を介して受信端子13に接続される。送信フィルタ14は、梯子型回路を形成するように接続された直列FBAR14a、14b、14cと、並列FBAR14d、14eとによって構成されている。受信フィルタ16は、梯子型回路を形成するように接続された直列FBAR16a、16b、16cと、並列FBAR16d、16e、16f、16gとによって構成されている。
【0004】
例えば、PCS(Personal Communication System)の場合、送信フィルタ14の高周波阻止帯域が受信フィルタ16の通過帯域と重なり、受信フィルタ16の低域周波数阻止帯域が送信フィルタ14の通過帯域に重なるように、送信フィルタ14および受信フィルタ16は、構成されている。
【0005】
図16は、特許文献2に記載されているアンテナ共用器の構成を示す図である。図16に示すように、従来のアンテナ共用器として、SAW共振器の梯子型回路によって構成される帯域通過フィルタを用いるものがあった。従来のアンテナ共用器20は、アンテナ端子11と、送信端子12と、受信端子13と、送信フィルタ21と、移相器15と、受信フィルタ22とを備える。アンテナ端子11は、送信フィルタ21を介して送信端子12に接続されると共に、直列構成をなす90°移相器15および受信フィルタ22を介して受信端子13に接続される。送信フィルタ21は、梯子型回路を形成するように接続された直列SAW共振器21a、21b、21cと、並列SAW共振器21d、21eとによって構成されている。受信フィルタ22は、受信端子13に並列に接続されたSAW共振器22a、22bによって構成されている。
【0006】
例えば、PCS(Personal Communication System)の場合、送信フィルタ21の高周波阻止帯域が受信フィルタ22の通過帯域と重なり、受信フィルタ22の低域周波数阻止帯域が送信フィルタ21の通過帯域に重なるように、送信フィルタ21および受信フィルタ22は、構成されている。
【特許文献1】特開2001−24476号公報
【特許文献2】特開2003−249842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来のアンテナ共用器は、FBARの梯子型回路またはSAW共振器によって構成されている。しかし、従来のアンテナ共用器における送信端子および受信端子は、それぞれ、不平衡型である。そのため、平衡型端子を有する半導体デバイス等を、直接アンテナ共用器に接続することができなかった。また、従来のアンテナ共用器は、不平衡型端子によって構成されているので、クロストークなどの雑音の影響によって、特性が劣化してしまう。
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、平衡型端子を有する半導体デバイスに直接接続することができるアンテナ共用器を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなアンテナ共用器を用いた高周波モジュールおよび通信機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、アンテナ端子と、送信端子と、受信端子と、アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと、アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとを備えるアンテナ共用器であって、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、送信フィルタおよび受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されている。
【0010】
本発明によれば、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子である。したがって、平衡型端子を有する半導体デバイスに、バランなどを用いることなく直接接続することができるアンテナ共用器が提供されることとなる。結果、アンテナ共用器が適用される装置全体が小型化する。平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されている。これによって、効率的な平衡−不平衡変換が可能となる。
【0011】
好ましくは、送信フィルタおよび受信フィルタの内、不平衡型端子側のフィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を用いた梯子型フィルタであるとよい。
【0012】
このように、梯子型フィルタを不平衡型端子側のフィルタに用いることによって、低損失なフィルタ特性を得ることができ、所望の周波数応答を容易に得ることができる。
【0013】
好ましくは、送信フィルタおよび受信フィルタの内、平衡型端子側のフィルタは、縦モード結合型の弾性表面波フィルタとアンテナ端子との間に、少なくとも一つの弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を直列に接続しているとよい。
【0014】
縦モード結合型のSAWフィルタは、多モード結合によってフィルタ特性を有するので、少なくとも一つの弾性表面波共振器または音響薄膜共振器が、縦モード結合型の弾性表面波フィルタとアンテナ端子との間に接続されていれば、所望のフィルタ特性を得ることができる。
【0015】
好ましくは、送信フィルタおよび受信フィルタの内、平衡型端子側のフィルタは、縦モード結合型の弾性表面波フィルタとアンテナ端子との間に、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器によって構成される梯子型フィルタを有するとよい。
【0016】
これにより、より所望のフィルタ特性を得ることができる。
【0017】
好ましくは、送信フィルタとアンテナ端子との間の部分、または、受信フィルタとアンテナ端子との間の部分の少なくともどちらか一方の部分に、送信フィルタまたは受信フィルタのインピーダンスの位相を調整するための移相器をさらに備えるとよい。
【0018】
これにより、信号の回り込みを防止することができる。
【0019】
たとえば、移相器は、ストリップ線路または集中定数素子によって構成されているとよい。
【0020】
これにより、移相器が接続されるフィルタの位相の調整が実現される。
【0021】
好ましくは、送信フィルタおよび受信フィルタの内、アンテナ端子側に移相器が接続されているフィルタは、移相器に接続される音響薄膜共振器を含むとよい。
【0022】
このように、音響薄膜共振器が移相器に直列に接続されることによって、移相器での高出力の信号の回り込みに対する耐圧を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、移相器と移相器に接続される音響薄膜共振器とは、同一基板上に形成されているとよい。
【0024】
これにより、移相器の低損失化が実現され、さらに、信号の回り込みに対する耐圧が向上することとなる。
【0025】
一実施形態において、送信フィルタの送信端子は、不平衡型端子であるとよい。
【0026】
これにより、平衡型端子を用いることの多い受信側の低雑音増幅器を当該アンテナ共用器の平衡型端子に接続することができる。また、受信側を平衡型端子とすることによって、対雑音特性が向上することとなる。
【0027】
好ましくは、送信フィルタにおける不平衡型端子である送信端子には、音響薄膜共振器が接続されているとよい。
【0028】
これにより、送信端子に接続されるパワーアンプからの高出力の送信信号に対して、耐電力性が向上する。
【0029】
好ましくは、送信フィルタは、梯子型フィルタであり、梯子型フィルタの直列共振器は、音響薄膜共振器であるとよい。
【0030】
これにより、アンテナ端子側から見た送信フィルタのインピーダンスの位相がオープンに近づくこととなるので、受信信号の送信側への漏れの低減、さらには、送信側の位相回路を簡略化、あるいは送信側の位相回路の省略を実現することができる。
【0031】
好ましくは、梯子型フィルタの並列共振器は、音響薄膜共振器であるとよい。
【0032】
このように、送信フィルタにおいて、音響薄膜共振器で構成される梯子型フィルタを用いることによって、所望のフィルタ特性が得やすくなる。
【0033】
好ましくは、受信フィルタにおいて、縦モード結合型の弾性表面波フィルタ以外の弾性波共振器は、音響薄膜共振器であるとよい。
【0034】
これにより、受信フィルタにおいて、所望のフィルタ特性が得やすくなる。
【0035】
好ましくは、送信フィルタと受信フィルタとは、同一の実装基板上に実装されているとよい。
【0036】
これにより、アンテナ共用器の小型化が図られることとなる。
【0037】
一実施形態において、送信フィルタおよび/または受信フィルタは、実装基板上にフェースダウン実装されているとよい。
【0038】
これにより、低背なアンテナ共用器が提供される。
【0039】
好ましくは、送信フィルタの厚みと、受信フィルタの厚みとが実質上等しいとよい。
【0040】
これにより、実装時におけるピックアップツールへの吸着が可能となる
【0041】
一実施形態において、送信フィルタおよび受信フィルタは、樹脂モールドされているとよい。
【0042】
これにより、アンテナ共用器の上部を平らにすることができる。
【0043】
好ましくは、樹脂モールドされている上面は、実質上平らであるとよい。
【0044】
これにより、実装時におけるピックアップツールへの吸着が可能となる
【0045】
また、本発明は、アンテナ共用器と半導体デバイスとを同一の実装基板上に実装している高周波モジュールであって、アンテナ共用器は、アンテナ端子と、送信端子と、受信端子と、アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと、アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとを備え、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、送信フィルタおよび受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されている。
【0046】
これによって、優れた特性を有する小型な高周波デバイスが提供されることとなる。
【0047】
たとえば、半導体デバイスは、低雑音増幅器である。
【0048】
これにより、受信特性の優れた高周波デバイスが提供されることとなる。
【0049】
たとえば、半導体デバイスは、スイッチである。
【0050】
これにより、マルチモードまたはマルチバンドに対応することができるアンテナ共用器を含む高周波デバイスが提供されることとなる。
【0051】
また、本発明は、アンテナ共用器を備える通信機器であって、アンテナ共用器は、アンテナ端子と、送信端子と、受信端子と、アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと、アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとを備え、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、送信フィルタおよび受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されている。
【0052】
これによって、受信特性および送信特性に優れた小型な通信機器が提供されることとなる。
【発明の効果】
【0053】
以上のように、本発明によれば、平衡型端子を有する高周波デバイスに直接接続することができるアンテナ共用器が提供されることとなる。また、そのようなアンテナ共用器を用いた高周波モジュールおよび通信機器が提供されることとなる。
【0054】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0056】
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態におけるアンテナ共用器100の構成を示すブロック図である。図1Aにおいて、アンテナ共用器100は、アンテナ端子ANTと、送信端子Txと、受信端子Rxと、送信フィルタ101と、移相器102と、受信フィルタ103とを備える。アンテナ端子ANTは、不平衡型端子である。受信端子Rxは、平衡型端子である。送信端子Txは不平衡型端子である。アンテナ端子ANTは、送信フィルタ101を介して送信端子Txに接続されている。また、アンテナ端子ANTは、移相器102および受信フィルタ103を介して、受信端子Rxに接続されている。受信フィルタ103は、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタである。これにより、不平衡型端子であるアンテナ端子ANTからの受信入力信号(不平衡信号)は、平衡信号(差動モード信号:differential mode signal)として受信端子Rxに伝えられる。
【0057】
このように、アンテナ共用器100は、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタを用いることによって、平衡型端子Rxを実現する。アンテナ共用器100は、バランなどの平衡−不平衡変換器を介することなく、低雑音増幅器などの平衡型の半導体デバイス(図示せず)に、直接接続することができる。
【0058】
図1Bは、アンテナ共用器100の具体的な回路構成を示す図である。図1Bにおいて、送信フィルタ101は、梯子型に接続された直列FBAR201,202,203および並列FBAR204,205を含む。受信フィルタ103は、梯子型に接続された直列FBAR401,402および並列FBAR403と、直列FBAR402と受信端子Rxとの間に接続された縦モード結合型の弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタという)700とを含む。
【0059】
移相器102は、送信信号が受信フィルタ103に回り込むのを防ぐために、受信フィルタ103のインピーダンスの位相を調整するための素子である。移相器102は、ストリップ線路または集中定数素子によって構成されている。
【0060】
図1Bに示すように、平衡型端子(ここでは、受信端子Rx)には、縦モード結合型のSAWフィルタ700が接続されている。このように、縦モード結合型のSAWフィルタを用いることによって、効率的に、不平衡信号を平衡信号に変換することが可能となる。
【0061】
なお、図1Aおよび図1Bでは、受信フィルタ103が平衡−不平衡変換機能を有するフィルタとしている。しかし、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタは、送信側にあってもよい。図1Cは、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタが送信側にある場合のアンテナ共用器100aの構成を示すブロック図である。図1Cにおいて、アンテナ共用器100aは、アンテナ端子ANTと、送信端子Txと、受信端子Rxと、送信フィルタ101aと、移相器102aと、受信フィルタ103aとを備える。アンテナ端子ANTは、不平衡型端子である。受信端子Rxは、不平衡型端子である。送信端子Txは、平衡型端子である。アンテナ端子ANTは、送信フィルタ101aを介して送信端子Txに接続されている。また、アンテナ端子ANTは、移相器102aおよび受信フィルタ103aを介して、受信端子Rxに接続されている。送信フィルタ101aは、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタである。これにより、平衡型端子である送信端子Txからの平衡信号は、不平衡信号に変換され、アンテナ端子ANTから出力される。
【0062】
このように、アンテナ共用器100aは、平衡−不平衡変換機能を有するフィルタを用いることによって、平衡型端子Txを実現する。アンテナ共用器100aは、バランなどの平衡−不平衡変換器を介することなく、パワーアンプなどの平衡型の半導体デバイス(図示せず)に、直接接続することができる。
【0063】
図1Dは、アンテナ共用器100aの具体的な回路構成を示す図である。図1Dにおいて、受信フィルタ103aは、梯子型に接続された直列FBAR201a,202a,203aおよび並列FBAR204a,205aを含む。送信フィルタ101aは、梯子型に接続された直列FBAR401a,402aおよび並列FBAR403aと、直列FBAR402aと送信端子Txとの間に接続された縦モード結合型のSAWフィルタ700aとを含む。
【0064】
移相器102aは、送信信号が受信フィルタ103aに回り込むのを防ぐために、受信フィルタ103aのインピーダンスの位相を調整するための素子である。移相器102aは、ストリップ線路または集中定数素子によって構成されている。
【0065】
図1Dに示すように、平衡型端子(ここでは、送信端子Tx)には、縦モード結合型のSAWフィルタ700aが接続されている。このように、縦モード結合型のSAWフィルタを用いることによって、効率的に、不平衡信号を平衡信号に変換することが可能となる。
【0066】
上記のように、第1の実施形態において、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子である。平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されている。これによって、効率的な平衡−不平衡変換が可能となる。
【0067】
図2Aは、FBARおよびSAW共振器の回路記号を示す図である。図1Bおよび図1Dでは、送信フィルタおよび受信フィルタにおいて、弾性波共振器として、FBARが用いられることとしたが、SAW共振器が用いられてもよい。
【0068】
図2Bは、FBARの構成を示す断面図である。図2Bにおいて、FBAR300は、基板301上に形成された下部電極302と、圧電体薄膜303と、上部電極304とを含む。下部電極302の下方の基板301内には、キャビティ305が設けられている。これにより、エネルギー閉じ込め型の共振器が実現される。ここで、上部電極304および下部電極302は、FBAR単体の入出力電極に対応する。基板301には、Siなどが用いられる。また、上部電極304および下部電極302には、Al、Mo、Au、Cu、Tiなどが用いられる。また、圧電体薄膜303には、AlN、ZnOなどが用いられる。
【0069】
図2Cは、SAW共振器の構成を示す図である。図2Cにおいて、SAW共振器310は、圧電基板311上に形成された櫛型電極であるIDT電極312と、IDT電極312の両側に配置された反射器電極313、314とを含む。IDT電極312を構成する櫛型電極312a、312bにおける端子T1およびT2は、弾性表面波共振器単体の入出力電極に対応する。IDT電極312によって励振された表面弾性波は、反射器電極313、314によって閉じ込められる。したがって、SAW共振器310は、エネルギー閉じ込め型の共振器として実現される。圧電基板311には、LiTaO3、LiNbO3、水晶などが用いられる。また、IDT電極312、および反射器電極313、314には、Al、Ti、Cu、Al−Cuなどが用いられる。特に、送信フィルタに適用する場合には、IDT電極312には、耐電力性に優れた電極材料が用いられるとよい。
【0070】
図3Aは、縦モード結合型のSAWフィルタ700または700aの回路記号を示す図である。図3Bは、縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の構成を示す図である。図3Bにおいて、縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)は、圧電基板701上に、第1、第2、第3のIDT電極702、703、704と、第1、第2の反射器電極705、706とを含む。第1のIDT電極702の上側の電極指は、平衡型端子を構成する2つの出力端子の内、一方の出力端子OUT1に接続されている。第1のIDT電極702の下側の電極指は、平衡型端子を構成する2つの出力端子の内、他方の出力端子OUT2に接続されている。ここで、入力端子INは、図1BにおけるFBAR402側(または、図1DにおけるFBAR402a側)に対応する。出力端子OUT1、OUT2は、図1Bにおける受信端子Rx側(または、図1Dにおける送信端子Tx側)に対応する。また、IDT電極703、704の電極指の一方は、不平衡型端子を構成する入力端子INに接続される。IDT電極703、704の電極指の他方は、接地される。以上の構成により、平衡−不平衡変換機能を有する縦モード結合型の弾性表面波フィルタが実現される。
【0071】
ここで、縦モード結合型のSAWフィルタは、表面弾性波の伝搬方向(図3Bにおける横方向)と同じ方向に発生する複数のモード(対称モードおよび反対称モード)を音響的に結合させて、重ね合わせることによって、フィルタ特性を得ることができる。このようなSAWフィルタは、縦モード結合型SAWフィルタまたはダブルモードSAW(DMS)フィルタと呼ばれる。ちなみに、伝搬方向に対して垂直に発生するモードを利用するSAWフィルタは、横モード結合型SAWフィルタと呼ばれる。第1のIDT電極702において、交差する上下の電極指から、位相が180度異なる信号が得られるので、入力不平衡端子と出力平衡端子との間でモードを結合させることによって、平衡−不平衡変換を実現することができる(詳しくは、T.Morita, Y.Watanabe, M.Tanaka and Y.Nakazawa “Wideband Low Loss Double Mode SAW Filters”, Proc.IEEE Ulterason. Symp. (1992) pp.95−104参照)。
【0072】
図3Cは、縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の他の構成を示す図である。図3Cに示す縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)と図3Bに示す縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)とが違う点は、平衡型端子を構成する第1のIDT電極702が2つのIDT電極901、902に分割されている点である。
【0073】
図3Dは、縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の他の構成を示す図である。図3Dに示す縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)と図3Bに示す縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)とが違う点は、第1のIDT電極702が不平衡型端子を構成する入力端子INに接続され、第2、第3のIDT電極703、704がそれぞれ平衡型端子を構成する出力端子OUT1、OUT2に接続される点である。
【0074】
図4は、図3Bに示した縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の周波数応答を示すグラフである。IDT電極の電極指間隔や交差幅、IDT電極同士の間隔、電極膜厚などを調整することによって、縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)は、所望の通過帯域801を有する帯域通過型の特性となる。
【0075】
図5Aは、梯子型回路のフィルタの回路図である。図5Aに示すように、梯子型回路のフィルタは、直列に接続された弾性波共振器によって構成される直列共振器と、直列共振器に並列に接続された弾性波共振器によって構成される並列共振器とを含む。
【0076】
図5Bは、図5Aに示す梯子型フィルタの特性を説明するための図である。図5Bにおいて、点線は、直列共振器および並列共振器の特性を示す図である。このように、直列共振器および並列共振器は、それぞれ、共振点および反共振点を有する。このような直列共振器および並列共振器を接続することによって、図5Bの実線で示したように、帯域周波数応答が得られる。
【0077】
図5Cは、直列共振器のQ値を高くしたときの梯子型フィルタの周波数特性を示す図である。図5Cに示すように、直列共振器のQ値を高くすると、高域側の減衰を急峻にすることができる。
【0078】
図5Dは、並列共振器のQ値を高くしたときの梯子型フィルタの周波数特性を示す図である。図5Dに示すように、並列共振器のQ値を高くすると、低域側の減衰を急峻にすることができる。
【0079】
このように、梯子型フィルタを用いれば、所望の周波数応答を容易に得ることができる。図5Eは、弾性波共振器としてSAW共振器を用いたときの梯子型フィルタの周波数応答を示す概念図である。図5Fは、弾性波共振器としてFBARを用いたときの梯子型フィルタの周波数応答を示す概念図である。SAW共振器よりもFBARの方がQ値が高く、図5Cおよび図5Dに示すように、低損失、急峻な減衰特性を実現することができる。したがって、図5Eおよび図5Fに示すように、弾性波共振器として、FBARを用いた方が、急峻なフィルタフィルタ特性を得ることができる。好ましくは、図1Bに示すように、送信フィルタを梯子型フィルタとして、直列共振器および並列共振器をFBARによって構成することによって、急峻なフィルタ特性を得ることができる。なお、直列共振器のみがFBARであってもよい。
【0080】
梯子型回路構成の送信フィルタ101において、直列に接続される弾性波共振器であるFBAR201、202、203の方が、並列に接続される弾性波共振器であるFBAR204、204よりも数を多くすることにより、高周波数側を減衰させるのに適した構成となる(図5C参照)。これは、弾性波共振器において、反共振周波数は共振周波数よりも高く、直列共振器の共振周波数が通過帯域として利用され、直列共振器の反共振周波数が減衰帯域として利用されているからである。さらに、並列に接続される弾性波共振器において、接地との間にインダクタンスを配置することにより、通過帯域の高周波数側の減衰量を大きくしたり、通過帯域を低周波数側に広げたりすることができる。
【0081】
また、送信フィルタ101は、パワーアンプ(図示せず)から送信電力が入力される。そのため、送信フィルタ101には、耐電力性が必要となる。送信フィルタ101にFBARの梯子型回路を用いることによって、耐電力性が向上することとなる。なお、送信フィルタ101において、弾性波共振器は、FBARまたはSAW共振器であればよい。しかし、耐電力性を向上させるには、少なくとも、不平衡型端子である送信端子Txに接続される弾性波共振器は、FBARであることが好ましい。
【0082】
また、梯子型フィルタである送信フィルタ101において、アンテナ側に接続される弾性波共振器はアンテナ端子ANTに直列に接続されことによって、高周波数側にある受信通過帯域のインピーダンスの位相は、オープンに近づくこととなる。
【0083】
図1Bに示す受信フィルタ103において、図4に示すように、通過帯域801の高周波数側に減衰の劣化が見られる一方、低周波数側に急峻な減衰特性が見られる。すなわち、送信フィルタ101の通過帯域が受信フィルタ103の通過帯域801よりも周波数が低い場合、本実施形態のアンテナ共用器は、高性能なアンテナ共用器として提供されることとなる。
【0084】
また、受信側に配置される低雑音増幅器は、通信機器の対雑音特性向上のために平衡型端子となっていることが多い。図1Bに示すように、受信フィルタ103に平衡−不平衡変換機能を有するフィルタを用いることによって、アンテナ共用器の受信端子を平衡型端子とすることができる。したがって、アンテナ共用器の後段に配置される低雑音増幅器とアンテナ共用器とを、バランなどの平衡−不平衡変換器を介して接続することなく、直接接続することができる。
【0085】
このように、送信通過帯域の周波数が低く、受信通過帯域の周波数が高いシステムとして、PCSやW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)などが挙げられる。このようなシステムに、本発明の構成を適用することによって、より高性能なアンテナ共用器が実現できる。さらに、このようなアンテナ共用器を備える通信機器は、小型化、クロストーク削減などの高性能化を実現できる。
【0086】
なお、弾性波共振器の構成を最適化することによって、送信通過帯域の周波数が高く、受信通過帯域の周波数が低い他のシステムにおいても、本発明を適用することができる。
【0087】
なお、送信フィルタ101、101aおよび受信フィルタ103、103aにおいて、弾性波共振器の数や配置に関しては、図1Bおよび図1Dに示した例に限られるものではない。本発明において、送信フィルタに接続される送信端子および受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、送信フィルタおよび受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されていれば、送信フィルタおよび受信フィルタにおける縦モード結合型の弾性表面波フィルタ以外の構成は、特に限定されるものではない。好ましくは、送信フィルタおよび受信フィルタの内、不平衡型端子側のフィルタ(図1Bでは、送信フィルタ101、図1Dでは、受信フィルタ103a)は、SAW共振器またはFBARを用いた梯子型フィルタであるとよい。これにより、良好なフィルタ特性が得られる。
【0088】
なお、上記では、ラダー型フィルタにおける並列共振器にインダクタを接続してもよいとしたが、インダクタンスの配置および接続に関しては、特に限定されるものではなく、所望のフィルタ特性に対して最適化されていればよい。当該インダクタは、送信(受信)フィルタ内の配線を利用することによって実現されてもよいし、実装基板に内層されることによって実現されてもよい。また、ボンディングワイヤを当該インダクタとして利用してもよい。
【0089】
なお、上記では、FBARとして、図2Bに示すように、キャビティを用いる構成を示したが、音響ミラーを用いた構成あってもよく、その他弾性波共振器を実現することができる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0090】
なお、本実施形態で示した縦モード結合型のSAWフィルタには、他の縦モード結合型のSAWフィルタが縦列接続されていてもよいし、弾性波共振器が接続されていてもよい。例えば、縦モード結合型のSAWフィルタにFBARを直列あるいは並列に接続させることによって、受信フィルタとしての耐電力特性がより向上する。
【0091】
図6は、第1の実施形態の変形例に係るアンテナ共用器の構成を示す図である。図6に示すように、移相器102と移相器102に接続されるFBAR401とは、同一基板404上に形成されているとよい。このように、Si基板上に移相器を実現することによって、移相器の低損失化が実現され、さらに、高出力の送信信号の回り込みに対する耐圧が向上することとなる。
【0092】
図7は、第1の実施形態の変形例に係るアンテナ共用器の構成を示す図である。図7に示すように、移相器102と縦モード結合型のSAWフィルタ700との間には、少なくとも1つの直列弾性波共振器405が接続されていればよい。なぜなら、縦モード結合型のSAWフィルタは、多重モードによって、フィルタ特性を有するからである。図7に示す受信フィルタは、送信端子が平衡型端子のときの送信フィルタとしても利用可能である。なお、好ましくは、移相器102と縦モード結合型のSAWフィルタ700との間には、SAW共振器またはFBARからなる梯子型フィルタが接続されているとよい。さらに、当該梯子型フィルタを構成する弾性波共振器は、全て、FBARであるとよい。縦モード結合型のSAWフィルタ700が受信フィルタに含まれる場合、縦モード結合型のSAWフィルタ700以外の弾性波共振器は、FBARであるとよい。
【0093】
なお、アンテナ端子ANTに接続されるアンテナ(図示せず)の構成によっては、アンテナ端子ANTが平衡型端子となるような構成されていてもよい。
【0094】
なお、移相器の挿入位置は、図1Aおよび図1Cに記載した例に限定されるものではない。図8に示すように、アンテナ端子ANTと送信フィルタ101との間に、第1の移相器104が挿入され、アンテナ端子ANTと受信フィルタ103との間に、第2の移相器105が挿入されていてもよい。また、図9に示すように、アンテナ端子ANTと送信フィルタ101との間にのみ移相器106が挿入されていてもよい。このように、送信フィルタとアンテナ端子との間の部分、または、受信フィルタとアンテナ端子との間の部分の少なくともどちらか一方の部分に、送信フィルタまたは受信フィルタのインピーダンスの位相を調整するための移相器が挿入されることによって、送信信号および/または受信信号の回り込みが防止される。
【0095】
なお、移相器が接続されている側のフィルタは、FBARを当該移相器に接続させているとよい。これにより、高出力信号の回り込みに対する耐性を向上させることができる。なお、好ましくは、図6でも示したように、当該移相器と当該FBARとは、同一基板上に形成されているとよい。これにより、移相器の低損失化が実現され、さらに、信号の回り込みに対する耐圧が向上することとなる。
【0096】
なお、送信信号および/または受信信号の回り込みを防止するために、図10に示すように、スイッチ回路107によって、送信信号がアンテナ端子ANTに切り換えされ、受信信号が受信フィルタ103に切り換えられてもよい。なお、スイッチ回路107として、MEMS−SW(Micro Electoro Mechanical Systems−SWitch)が用いられてもよい。
【0097】
なお、送信フィルタまたは受信フィルタのインピーダンスの位相があらかじめ調整されていれば、移相器を省略することもできる。すなわち、移相器は、本発明において、必須の構成ではない。
【0098】
なお、送信フィルタおよび受信フィルタの内、平衡型端子を有するフィルタにおいて、平衡型端子に接続された縦モード結合型のSAWフィルタ以外の弾性波共振器がFBARである場合を考える。この場合、FBARと縦モード結合型のSAWフィルタとが同一基板に平面的に形成されているのが好ましい。これにより、チップ間の接続ロスを最小限にすることができる。しかし、フィルタの通過帯域が2GHz帯以上になると、単結晶基板上でSAW共振器を実現するのは困難である。したがって、AlNなどの高音速薄膜上で縦モード結合型のSAWフィルタを実現するとよい。ただし、FBARだけで平衡−不平衡変換を行うと損失が大きくなってしまうので、FBARを形成するプロセスとコンパチブルなプロセスを用いて、縦モード結合型のSAWフィルタを実現するとよい。
【0099】
上記のように、FBARと縦モード結合型のSAWフィルタとを同一基板上で実現する場合、好ましくは、FBARは、縦モード結合型のSAWフィルタの伝搬方向延長上に、配置されないようにするとよい。これにより、弾性波の干渉を抑圧し、不要スプリアスを除去することができる。
【0100】
また、好ましくは、縦モード結合型のSAWフィルタとFBARとの間の部分におけるAlNなどの上記高音速薄膜である圧電薄膜は、エッジングによって除去されているとよい。これにより、表面弾性波の干渉を抑圧し、不要スプリアスを除去することができる。
【0101】
また、好ましくは、圧電薄膜表面の粗さが、1nm以下であるとよい。これにより、縦モード結合型のSAWフィルタでの伝搬損失を抑えることができる。
【0102】
また、FBARと縦モード結合型のSAWフィルタとが立体的に形成されている場合もあり得る。この場合、縦モード結合型のSAWフィルタの上に、FBARをフリップチップ実装することによって、チップ間の接続ロスを最小限にすることができる。また、逆に、FBARの上に、縦モード結合型のSAWフィルタをフリップチップ実装することによって、チップ間の接続ロスを最小限にすることができる。
【0103】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態におけるアンテナ共用器1100の構成を示す図である。図11において、アンテナ共用器1100は、実装基板1101上に、送信フィルタ1102と、受信フィルタ1103とがフェースダウン実装さている構造である。実装基板1101には、配線、移相器、および外部端子(それぞれ図示せず)が内蔵されている。実装基板1101と、送信フィルタ1102および受信フィルタ1103とは、バンプ1104a、1104b、1105a、1105bを介して電気的に接続される。送信フィルタ1102は、FBARを用いたフィルタである。受信フィルタ1103は、縦モード結合型のSAWフィルタを含むフィルタである。送信フィルタ1102および受信フィルタ1103は、それぞれ個別のチップとなっている。なお、言うまでもなく、第1の実施形態で示したあらゆる変形例は、図11の送信フィルタ1102および受信フィルタ1103においても適用可能である。
【0104】
送信フィルタ1102および受信フィルタ1103は、シールド1106および1107などによって覆われて気密封止されている。さらに、送信フィルタ1102と受信フィルタ1103との上部は、耐熱性の接着テープ1108によってテーピングされている。この場合、送信フィルタ1102の厚みと受信フィルタ1103の厚みとを実質上等しくすることによって、接着テープ1108を平らにすることができる。これにより、実装時におけるピックアップツールへの吸着が可能となる。以上のような構成にすることによって、平衡型端子を有するアンテナ共用器が実現されることとなる。
【0105】
図12は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ共用器1200の他の構成例を示す図である。図12において、アンテナ共用器1200は、実装基板1201上に、送信フィルタ1202および受信フィルタ1203がフェースダウン実装されている構成である。実装基板1201には、配線、移相回路、および外部端子(ぞれぞれ図示せず)が内蔵されている。実装基板1201と、送信フィルタ1202および受信フィルタ1203とは、バンプ1204a、1204b、1205a、1205bを介して電気的に接続される。送信フィルタ1202は、FBARを用いたフィルタである。受信フィルタ1203は、縦モード結合型のSAWフィルタを含みフィルタである。送信フィルタ1202および受信フィルタ1203は、それぞれ個別のチップとなっている。なお、言うまでもなく、第1の実施形態で示したあらゆる変形例は、図12の送信フィルタ1202および受信フィルタ1203においても適用可能である。
【0106】
送信フィルタ1202および受信フィルタ1203は、シールド1206および1207などによって覆われて気密封止されている。ここで、送信フィルタ1202の厚みと受信フィルタ1203の厚みとは異なるものとする。さらに、実装基板1201は、送信フィルタ1202および受信フィルタ1203を覆うように、樹脂材料1208などによってモールドされている。樹脂材料1208の上面は、実質上平らになるように構成されている。これにより、実装時におけるピックアップツールへの吸着が可能となる。以上のような構成にすることによって、平衡型端子を有するアンテナ共用器が実現されることとなる。
【0107】
なお、第2の実施形態において、実装基板に内蔵される配線、移相器、および外部端子は、所望のアンテナ共用器の特性によって最適化されている。
【0108】
なお、図11および図12において、シールドは、送信フィルタおよび受信フィルタをそれぞれ個別に覆うこととしたが、送信フィルタおよび受信フィルタを共通に覆ってもよい。また、シールド材の形状も、図示した例に限るものではなく、送信フィルタおよび受信フィルタを気密封止することができる形状であればよい。
【0109】
なお、図12において、送信フィルタ1202の厚みと受信フィルタ1203の厚みとは異なるとしたが、これらは、同じ厚みであってもよい。
【0110】
なお、送信フィルタおよび受信フィルタは、フェースダウン実装されているとしているが、これらは、ワイヤ実装されて、気密封止されてもよい。すなわち、送信フィルタと受信フィルタとは、同一の実装基板上に実装されて、上面が実質上平らになるように、樹脂モールドされていればよい。
【0111】
なお、第2の実施形態において、一つの送信フィルタと一つの受信フィルタとが実装基板上に実装されたアンテナ共用器を説明したが、複数の送信フィルタと複数の受信フィルタとが同一基板上に実装されて、複数のアンテナ共用器が構成されていれもよい。この場合、半導体スイッチや分波器を用いることによって、マルチモードまたはマルチバンドの携帯電話に対応したアンテナ共用器が提供されることとなる。
【0112】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係る高周波モジュール1300の構成を示す図である。図13において、図12に示す構成と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。図13において、高周波モジュール1300は、実装基板1301上に、送信フィルタ1202および受信フィルタ1203がフェースダウン実装され、半導体デバイス1304がワイヤ実装された構成である。実装基板1301には、配線、移相器、および外部端子(それぞれ図示せず)が含まれる。実装基板1301と、送信フィルタ1202または受信フィルタ1203とは、バンプ1204a、1204b、1205a、1205bを介して電気的に接続される。実装基板1301と半導体デバイス1304とは、ワイヤ1307a、1307bを介して電気的に接続される。半導体デバイス1304と、送信フィルタ1202および/または受信フィルタ1203とは、実装基板1301に内蔵される配線を介して接続される。実装基板1301は、送信フィルタ1202、受信フィルタ1203、および半導体デバイス1304を覆うように樹脂材料1310などによりモールドされている。樹脂材料1310の上面は、実質上平らになるように構成されている。これにより、これにより、実装時におけるピックアップツールへの吸着が可能となる。以上のような構成にすることによって、平衡型端子を有するアンテナ共用器と半導体デバイスとを同一基板上に実装している高周波モジュールが実現されることとなる。
【0113】
なお、第3の実施形態において、実装基板に内蔵される配線、移相器、および外部端子は、所望のアンテナ共用器の特性によって最適化されている。
【0114】
なお、第3の実施形態において、送信フィルタおよび受信フィルタは、フェースダウン実装されているとしたが、これらは、ワイヤ実装されて、気密封止される構成であってよい。送信フィルタおよび受信フィルタは、樹脂材料などによりモールドされて上面が実質上平らになるように実装されていればよい。
【0115】
なお、第3の実施形態において、半導体デバイスは、ワイヤ実装されているとしたが、フェースダウン実装されていてもよい。半導体デバイスは、送信フィルタおよび受信フィルタと共に樹脂モールドされ、上面が実質上平らになるように実装されていればよい。
【0116】
なお、第3の実施形態において、送信フィルタおよび受信フィルタは、第1の実施形態で示したあらゆる変形例を用いることができる。
【0117】
なお、半導体デバイス1304として、低雑音増幅器を用いることが一例として考えられる。その他、半導体デバイスとして、スイッチが用いられてもよい。例えば、複数の送信フィルタと複数の受信フィルタと半導体スイッチとを同一基板上に実装して、マルチモードに対応した高周波モジュールを提供することができる。
【0118】
(第4の実施形態)
図14は、本発明の第4の実施形態に係る通信機器160の機能的構成を示すブロック図である。図14において、通信機器160は、アンテナ110と、アンテナ共用器100と、低雑音増幅器(LNA)120と、受信回路130と、パワーアンプ(PA)140と、送信回路150とを備える。送信回路150から出力された送信信号は、パワーアンプ140で増幅されて、アンテナ共用器100に入力される。アンテナ共用器100は、パワーアンプ140からの信号の内、送信帯域の信号のみを通過して、アンテナ110に伝搬する。アンテナ110は、当該送信信号を電波として放出する。アンテナ110が受信した信号は、アンテナ共用器100に入力される。アンテナ共用器100は、受信帯域の信号のみを通過して、平衡信号に変換して、低雑音増幅器120に当該信号を入力する。低雑音増幅器120は、入力された平衡信号を増幅して、受信回路130に入力する。受信回路130は、入力された信号に基づいて、復調処理を行う。
【0119】
第4の実施形態によれば、平衡型端子を有する低雑音増幅器120に直接接続されたアンテナ共用器100を備える通信機器160が提供されることとなる。
【0120】
なお、通信機器において、アンテナ共用器として、第1の実施形態で示したあらゆる変形例を用いることができる。平衡型端子が送信側または受信側のいずれに必要かに応じて、適切な構成のアンテナ共用器を用いればよい。
【0121】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係るアンテナ共用器は、平衡型端子を有しており、平衡型端子を有する半導体デバイスなどとの直接接続が可能な高周波デバイスとして有用である。本発明に係るアンテナ共用器は、高周波モジュールや通信機器などの用途に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1A】本発明の第1の実施形態におけるアンテナ共用器100の構成を示すブロック図
【図1B】アンテナ共用器100の具体的な回路構成を示す図
【図1C】平衡−不平衡変換機能を有するフィルタが送信側にある場合のアンテナ共用器100aの構成を示すブロック図
【図1D】アンテナ共用器100aの具体的な回路構成を示す図
【図2A】FBARおよびSAW共振器の回路記号を示す図
【図2B】FBARの構成を示す断面図
【図2C】SAW共振器の構成を示す図
【図3A】縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の回路記号を示す図
【図3B】縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の構成を示す図
【図3C】縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の他の構成を示す図
【図3D】縦モード結合型のSAWフィルタ700(または700a)の他の構成を示す図
【図4】図3Bに示した縦モード結合型のSAWフィルタ700の周波数応答を示すグラフ
【図5A】梯子型回路のフィルタの回路図
【図5B】図5Aに示す梯子型フィルタの特性を説明するための図
【図5C】直列共振器のQ値を高くしたときの梯子型フィルタの周波数特性を示す図
【図5D】並列共振器のQ値を高くしたときの梯子型フィルタの周波数特性を示す図
【図5E】弾性波共振器としてSAW共振器を用いたときの梯子型フィルタの周波数応答を示す概念図
【図5F】弾性波共振器としてFBARを用いたときの梯子型フィルタの周波数応答を示す概念図
【図6】第1の実施形態の変形例に係るアンテナ共用器の構成を示す図
【図7】第1の実施形態の変形例に係るアンテナ共用器の構成を示す図
【図8】移相器の挿入位置の他の例を示す図
【図9】移相器の挿入位置の他の例を示す図
【図10】スイッチ回路107を備えるアンテナ共用器のブロック図
【図11】本発明の第2の実施形態におけるアンテナ共用器1100の構成を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ共用器1200の他の構成例を示す図
【図13】本発明の第3の実施形態に係る高周波モジュール1300の構成を示す図
【図14】本発明の第4の実施形態に係る通信機器160の機能的構成を示すブロック図
【図15】特許文献1に記載されているアンテナ共用器の構成を示す図
【図16】特許文献2に記載されているアンテナ共用器の構成を示す図
【符号の説明】
【0124】
100,100a アンテナ共用器
101,101a 送信フィルタ
102,102a,104,105,106 移相器
103,103a 受信フィルタ
107 スイッチ回路
110 アンテナ
120 低雑音増幅器
130 受信回路
140 パワーアンプ
150 送信回路
160 通信機器
201,202,203,401,402 直列FBAR
204,205,403 並列FBAR
300 FBAR
301 基板
302 下部電極
303 圧電体薄膜
304 上部電極
305 キャビティ
310 SAW共振器
311 圧電基板
312 IDT電極
312a,312b 櫛型電極
313,314 反射器電極
700,700a 縦モード結合型のSAWフィルタ
701 圧電基板
702 第1のIDT電極
703 第2のIDT電極
704 第3のIDT電極
705 第1の反射器電極
706 第2の反射器電極
801 受信フィルタの通過帯域
901,902 IDT電極
1100 アンテナ共用器
1101 実装基板
1102 送信フィルタ
1103 受信フィルタ
1104a,1104b,1105a,1105b バンプ
1106,1107 シールド
1108 接着テープ
1200 アンテナ共用器
1201 実装基板
1202 送信フィルタ
1203 受信フィルタ
1204a,1204b,1205a,1205b バンプ
1206,1207 シールド
1208,1310 樹脂材料
1300 高周波モジュール
1301 実装基板
1304 半導体デバイス
1307a,1307b ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、送信端子と、受信端子と、前記アンテナ端子と前記送信端子との間に配置される送信フィルタと、前記アンテナ端子と前記受信端子との間に配置される受信フィルタとを備えるアンテナ共用器であって、
前記送信フィルタに接続される送信端子および前記受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、
前記平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されていることを特徴とする、アンテナ共用器。
【請求項2】
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの内、前記不平衡型端子側のフィルタは、前記弾性表面波共振器または前記音響薄膜共振器を用いた梯子型フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ共用器。
【請求項3】
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの内、前記平衡型端子側のフィルタは、前記縦モード結合型の弾性表面波フィルタと前記アンテナ端子との間に、少なくとも一つの前記弾性表面波共振器または前記音響薄膜共振器を直列に接続していることを特徴とする、請求項2に記載のアンテナ共用器。
【請求項4】
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの内、前記平衡型端子側のフィルタは、前記縦モード結合型の弾性表面波フィルタと前記アンテナ端子との間に、前記弾性表面波共振器または前記音響薄膜共振器によって構成される梯子型フィルタを有することを特徴とする、請求項3に記載のアンテナ共用器。
【請求項5】
前記送信フィルタと前記アンテナ端子との間の部分、または、前記受信フィルタと前記アンテナ端子との間の部分の少なくともどちらか一方の部分に、前記送信フィルタまたは前記受信フィルタのインピーダンスの位相を調整するための移相器をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載のアンテナ共用器。
【請求項6】
前記移相器は、ストリップ線路または集中定数素子によって構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のアンテナ共用器。
【請求項7】
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの内、前記アンテナ端子側に前記移相器が接続されているフィルタは、前記移相器に接続される音響薄膜共振器を含むことを特徴とする、請求項6に記載のアンテナ共用器。
【請求項8】
前記移相器と前記移相器に接続される音響薄膜共振器とは、同一基板上に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のアンテナ共用器。
【請求項9】
前記送信フィルタの前記送信端子は、前記不平衡型端子であることを特徴とする、請求項8に記載のアンテナ共用器。
【請求項10】
前記送信フィルタにおける前記不平衡型端子である前記送信端子には、前記音響薄膜共振器が接続されていることを特徴とする、請求項9に記載のアンテナ共用器。
【請求項11】
前記送信フィルタは、梯子型フィルタであり、
前記梯子型フィルタの直列共振器は、前記音響薄膜共振器であることを特徴とする、請求項10に記載のアンテナ共用器。
【請求項12】
前記梯子型フィルタの並列共振器は、前記音響薄膜共振器であることを特徴とする、請求項11に記載のアンテナ共用器。
【請求項13】
前記受信フィルタにおいて、前記縦モード結合型の弾性表面波フィルタ以外の弾性波共振器は、前記音響薄膜共振器であることを特徴とする、請求項12に記載のアンテナ共用器。
【請求項14】
前記送信フィルタと前記受信フィルタとは、同一の実装基板上に実装されていることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ共用器。
【請求項15】
前記送信フィルタおよび/または前記受信フィルタは、前記実装基板上にフェースダウン実装されていることを特徴とする、請求項14に記載のアンテナ共用器。
【請求項16】
前記送信フィルタの厚みと、前記受信フィルタの厚みとが実質上等しいことを特徴とする、請求項15に記載のアンテナ共用器。
【請求項17】
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタは、樹脂モールドされていることを特徴とする、請求項14に記載のアンテナ共用器。
【請求項18】
前記樹脂モールドされている上面は、実質上平らであることを特徴とする、請求項17に記載のアンテナ共用器。
【請求項19】
アンテナ共用器と半導体デバイスとを同一の実装基板上に実装している高周波モジュールであって、
前記アンテナ共用器は、
アンテナ端子と、
送信端子と、
受信端子と、
前記アンテナ端子と前記送信端子との間に配置される送信フィルタと、
前記アンテナ端子と前記受信端子との間に配置される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタに接続される送信端子および前記受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、
前記平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されていることを特徴とする、高周波モジュール。
【請求項20】
前記半導体デバイスは、低雑音増幅器であることを特徴とする、請求項19に記載の高周波モジュール。
【請求項21】
前記半導体デバイスは、スイッチであることを特徴とする、請求項19に記載の高周波モジュール。
【請求項22】
アンテナ共用器を備える通信機器であって、
前記アンテナ共用器は、
アンテナ端子と、
送信端子と、
受信端子と、
前記アンテナ端子と前記送信端子との間に配置される送信フィルタと、
前記アンテナ端子と前記受信端子との間に配置される受信フィルタとを備え、
前記送信フィルタに接続される送信端子および前記受信フィルタに接続される受信端子の内、一方の端子が平衡型端子であり、他方の端子が不平衡型端子であり、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタは、弾性表面波共振器または音響薄膜共振器を含む構成であり、
前記平衡型端子には、縦モード結合型の弾性表面波フィルタが接続されていることを特徴とする、通信機器。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−74749(P2006−74749A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223758(P2005−223758)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】