説明

アンテナ内蔵車両外装品

【課題】車両外部に取り付けられるアンテナ内蔵車両外装品において、車体への取り付けが容易で、アンテナの接地を確実に行うことを目的とする。
【解決手段】中空の筐体2を有するエアスポイラ1000は、その内部に取り付けられ、同軸ケーブル15の芯線が接続されたアンテナエレメントと、この同軸ケーブル15のシールド線が接続されたブラケット11と、ブラケット11を車体1に締結するボルト11aと、ブラケット11と車体1の間に挟まれて、ブラケット11と車体1とを電気的に接続するカラー30とを備え、エアスポイラ1000の筐体2は、車体1への固定側に設けられ、カラー30よりも大きな内径を有し、ボルト11aが挿通される長孔20pと、筐体2の内面との間にブラケット11を挟み込む爪20d,20e,20f,20gと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両外部に取り付けられるアンテナ内蔵車両外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、ラジオ等の受信用アンテナを車両用エアスポイラや車両用バンパー等の樹脂製中空体からなる外装品内に設けることによって、スペースの共用化並びに外観上の車両全体の見栄えの向上を図ったものが知られている。
【0003】
特許文献1には、内部にアンテナを有するスポイラにインサート成形され、ボルトが取り付けられた導電性ブラケットを、アンテナのGND線と接続し、車体にスポイラをボルト止めすることによりアース接地を行う車両用アンテナが記載されている。また、同文献にはスポイラ内部にブラケットを設けず、GND線を直接車体へビス止めすることによりアース接地を行う車両用アンテナについても記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−309413
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術では、ブラケットがスポイラにインサート成形されているため、車体へのスポイラ取り付け時に、スポイラに設けられた他の車体固定用ボルトによって、車体に対するスポイラの位置が所定の取付位置からずれた状態で固定されると、ブラケットに取り付けられたボルトの位置と車体に設けられた取付孔との位置にずれが生じる場合がある。ボルト位置のずれによって、ボルトが締まりきらない状態が起こると、ブラケットと車体との接触不良によってアース接地が不完全になり、アンテナ性能の劣化を引き起こす場合がある。また、取り付け後において、樹脂部品であるスポイラの熱収縮、熱膨張による歪みやたわみなどにより、スポイラにインサート成形されたブラケットに設けられたボルト位置と車体の取付孔の位置ずれが起こると、ボルトの軸力低下を招くため、ボルト止めに緩みが発生し、アース接地が不完全になり、同様にアンテナ性能の劣化を引き起こす場合がある。また、特許文献1に記載されているように、スポイラ内部にブラケットが設けられていない場合、スポイラの取り付けとは別に、アンテナの接地作業が必要になるため、作業が煩雑化する。
【0006】
本発明は、車両外部に取り付けられるアンテナ内蔵車両外装品において、車両への取り付けが容易で、アンテナの接地を確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品は、車両の外部に固定され、中空の筐体を有する車両外装品と、車両外装品の内部に取り付けられ、同軸ケーブルの芯線が電気的に接続されたアンテナエレメントと、車両外装品の内部に設けられ、アンテナエレメントに芯線が接続された同軸ケーブルのシールド線が電気的に接続されたブラケットと、ブラケットに設けられ、ブラケットを車両に締結するボルトと、を備えるアンテナ内蔵車両外装品であって、車両外装品の筐体は、車両への固定側に設けられ、ボルトの外径よりも大きな内径を有し、ボルトが挿通される孔と、車両への固定側に設けられ、筐体の内面との間にブラケットを挟み込む爪と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品において、ブラケットと車両の間に挟まれて、ブラケットと車両とを電気的に接続するカラーと、を備え、孔はカラーよりも大きな内径を有することを特徴としても好ましい。
【0009】
本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品において、筐体の外面に、孔の開口を覆うように取り付けられ、カラーを孔の内面に保持するクッション材と、を備えることを特徴としても好ましい。
【0010】
本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品において、孔は長孔状で、ブラケットは、孔にボルトを挿通した状態で、筐体の内面に沿って移動して、爪と筐体の内面との間に差し込まれ、カラーは、ブラケットが爪と筐体の内面との間に差し込まれた後に、ボルトと孔の差し込み方向と反対方向の内面との間に取り付けられ、その差し込み方向の厚さは孔の差し込み方向と反対方向の内面から爪の差し込み方向と反対方向の端面までの長さと、ボルトの差し込み方向と反対方向の端からブラケットの差し込み方向の差込端まで長さとの差より大きいことを特徴としても好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両外部に取り付けられるアンテナ内蔵車両外装品において、車両への取り付けが容易で、アンテナの接地を確実に行うことができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品は、カラーを孔に挿通させて、爪に対する差し込み方向と反対方向へのブラケットの動きを制限することによって、車両外装品の筐体からのブラケットの脱落を防止できるという効果を奏する。また、本発明に係るアンテナ内蔵車両外装品は、クッション材を筐体の外面に、孔の開口を覆うように取り付けて、カラーを孔の内面に保持することによって、アンテナ内蔵車両外装品を車両へ取り付ける時までにカラーが孔から脱落することを防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアンテナ内蔵車両外装品の好適な実施形態であるアンテナ内蔵エアスポイラ1000を、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、車体1の後部上方に、アンテナが内蔵された車両外装品であるエアスポイラ1000が、固定されている。
【0015】
図2に示すように、エアスポイラ1000の筐体2は、樹脂材料の成形加工部品である中空体であって、底面に開口する第1、第2、第3の窓2a,2b,2cが形成されている。また、筐体2の底面は取付面となっており、車体取り付け用のボルトやクリップ等の固定具3が複数設けられている。さらに、筐体2の内部には、UHF、VHF、FMなどの各種電波受信用のアンテナエレメント4と、このアンテナエレメント4を筐体2に内部から保持するリテーナ5と、リテーナ5を筐体2に固定するためのアンテナ用ブラケット6と、一端がアンテナエレメント4に固定された給電線としてのケーブル7と、ケーブル7の他端が接続されたコネクタ8とを備えている。ケーブル7は中途にアースコンタクト18を備えており、このアースコンタクト18は、筐体2の内面側に設けられたブラケット保持凹部20に保持されたブラケット11に接続されている。ブラケット11にはボルト11aが設けられており、このボルト11aは、ブラケット保持凹部20に設けられた長孔20pから筐体2の外部に向けて突出している。ブラケット11には筐体2の外部から、ボルト11aの外径と長孔20pの内周の間にカラー30が挿入されている。なお、図2は、エアスポイラ1000の車体中央付近から車体左側に位置する部位の底面図であるが、車体中央付近から車体右側に位置する部位に関しても、左右対称であるため、同様の構成および形状を有する。また、第1の窓2aは後述するアンテナユニットを挿通できる大きさを有し、第2の窓2bは、ブラケット11を挿入可能であり、人間の手を差し入れてブラケット保持凹部20にブラケット11を組み付けることが可能な大きさを有している。
【0016】
図3を用いて、アンテナエレメント4について詳細に説明する。アンテナエレメント4は、例えば、黄銅スズメッキ、リフロースズメッキ、から形成されており、その一端には、図3に示すように、後述のケーブル7のリング状の接続端子12を接続するための突起4aが設けられている。また、アンテナエレメント4の適宜複数箇所には、折り曲げ可能な舌片4bが立ち上げられている。さらに、アンテナエレメント4は突起4aを設けた一端側に比べて他端側の幅を徐々に狭くした短冊状のモノポールアンテナとなっている。このような形状を有することにより、VHF用(90〜220MHz)とUHF用(470〜770MHz)の2つの周波数帯域を良好に受信することができる。また、VHF用の周波数帯域に隣接するFM帯域(70〜90MHz)においても、受信可能とすることができる。尚、アンテナエレメント4は同じ構成で左右対称にしたものがエアスポイラ内部右側に設置され、これによりダイバーシティが構成されている。
【0017】
図3を用いてリテーナ5について詳細に説明する。リテーナ5は、例えば、ABS樹脂等から構成されている。リテーナ5には、複数の切欠若しくは孔状の被係合部5aが複数設けられており、この被係合部5aにアンテナエレメント4の舌片4bを位置させて折り返すことでアンテナエレメント4とリテーナ5とが重畳状態で結合される。また、リテーナ5の一端にはアンテナ用ブラケット6を固定するためのネジ孔5bが形成されており、このネジ孔5bとアンテナ用ブラケット6のネジ穴6aとを一致させた状態で図示しないネジを挿入することでアンテナ用ブラケット6がリテーナ5に固定される。また、アンテナエレメント4とリテーナ5とは、重畳状態で図示しないクッションに挟持されることによって耐振動吸収処理が施される。
【0018】
図4を用いてケーブル7について詳細に説明する。ケーブル7は、アンテナエレメント4の突起4aと係合するリング状の接続端子12を一端に設けたAV線13と、コネクタ8を一端に設けた同軸ケーブル15と、これらAV線13と同軸ケーブル15の他端同士を接続する接続部16とを備えている。AV線13は、外被と芯線とを備え、同軸ケーブル15は、外被と、外被を除去することによって露出する網目状のシールド線15bと、シールド線を除去することによって露出する絶縁体と、絶縁体に被覆された芯線とを備えている。接続部16は、チューブ17に内包された、AV線13の芯線と同軸ケーブル15の芯線の半田による接続部分を保持するアースコンタクト18から構成されている。このアースコンタクト18は、導電性金属材料からなり、同軸ケーブル15のシールド線15bの縒り合わせた先端部分が、半田付けまたはネジ止めによって接続されている。また、後述するビス19によってブラケット11に固定するための、固定孔18hを有している。
【0019】
図5から図7を用いて、エアスポイラ1000の接地構造100について詳細に説明する。図5に示すように筐体2に設けられたブラケット保持凹部20の凹部側壁20bには爪20d,20eが、凹部側壁20cには爪20f,20gが設けられ、この爪20d,20e,20f,20gとブラケット保持凹部底面20iの間にブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lが図6、図7に示すように差し込まれている。爪20d,20e,20f,20gは、保持凹部底面20iとの間に、ブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lの厚さよりも大きな間隙を有している。凹部側壁20bに設けられた爪20d,20eの、スロープ20aから凹部側壁20hに向かう方向(以下、差し込み方向とする)の間隔は、図5に示すようにブラケット11の差込部11iの差し込み方向の長さよりも長く、爪20eの差し込み方向の長さは、ブラケット11の切り欠き11hの差し込み方向の長さよりも短い。これらは、凹部側壁20cに設けられた爪20f,20gに関しても同様である。なお、爪20d、20e、20f、20gの差し込み方向の長さはすべて同じ長さである。
【0020】
保持凹部底面20i中央には、差し込み方向に長さを有する長孔20pが設けられている。長孔20pは、ブラケット11に設けられたボルト11aを保持凹部底面20iに向けて、ブラケット11の切り欠き11g,11hがそれぞれ爪20g,20eが嵌るように重ね合わせた際に、ボルト11aが保持凹部底面20iから筐体2の外に突出し得る位置に設けられ、さらにその位置から差し込み方向に伸張して形成されている。長孔20pの短手方向の長さは後述するカラー30の直径よりも長く、長孔20pの内周とボルト11aの外径との間にカラー30が挿入される。
【0021】
カラー30は導電性金属材料からなり、その内径は、ボルト11aの外径よりも大きく、その外径は、長孔20pの短手方向の長さを直径とする円の円周よりも小さい。また、カラー30の軸方向の長さは保持凹部底面20i部分の筐体2の厚さよりも長く、径方向の厚さは、長孔20pの差し込み方向と反対方向の内面から爪20d,20e,20f,20gの差し込み方向と反対方向の端面までの長さと、ブラケット11のボルト11aの差し込み方向と反対方向の端部から差込部11i,11j,11k,11lの差し込み方向の端面までの長さとの各々の差よりも大きい。つまり、カラー30の径方向の厚さは長孔20pにボルト11aを挿通した状態から、ブラケット11が、爪20d,20e,20f,20gとブラケット保持凹部底面20iの間にブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lが差し込まれるまでに移動する距離よりも大きい。このカラー30は、筐体2の外側から、シート状の導電性のクッション材40を、長孔20pを覆うように貼り付けることで長孔20pの内側に保持されている。さらに、車体1に設けられた取付孔1a,1bにボルト11aを挿通し、車体1内部から、ナット1cで締結することによってブラケット11が車体1に固定されている。なお、ブラケット11にはビス19によってAV線13の芯線と同軸ケーブル15の芯線の接続部分を保持し、同軸ケーブル15のシールド線15bが接続されたアースコンタクト18が固定され、導通している。
【0022】
図8を用いて、筐体2のブラケット保持凹部20について詳細に説明する。ブラケット保持凹部20は、図2に示した筐体2の第2の窓2b近傍に位置し、筐体2の内面側に開口するように設けられた、ブラケット11の平板部の面積よりも大きな底面積を有する四角形状の凹部であって、そのひとつの側壁は、筐体2内面から凹部底面に向かう、スロープ20aとなっている。スロープ20aに隣接する2つの凹部側壁20b,20cのうち、凹部側壁20bには、取付面に沿った方向で20cに向けて突出する爪20d,20eが設けられ、凹部側壁20cにも同様の爪20f,20gが設けられている。爪20dと爪20fは対向するように位置し、各々の一端はスロープ20aに向き合う凹部側壁20hに連結している。爪20e,20gは爪20d,20fよりもスロープ20aに近い位置で対向するように位置し、各々の一端は保持凹部底面20iに向けて曲折し連結している。また、爪20d,20e,20f,20gの位置に対応する部分の保持凹部底面20iには、孔20l,20m,20n,20oが設けられている。
【0023】
図9を用いて、ブラケット11について詳細に説明する。ブラケット11は導電性金属材料からなり、ボルト11a、平板部11b、アースコンタクト取付部11cから構成される。ボルト11aは平板部11bに対して略垂直に突出するように固定されている。平板部11bは、四角形の板状であり、1つの端部11dはボルト11aの突出している方向と反対の方向に約45度反り上がっている。また、反り上がった端部11dと隣接する2つの端部11e,11fは、切り欠き11g,11hをそれぞれ有し、各々2つの差込部11i,11j、差込部11k,11lを形成している。アースコンタクト取付部11cは、反り上がった端部11cに対向する端部11mに、平板部11bの中央よりの部分から、ボルト11aの突出している方向と反対の方向に約45度を反り上げた舌片11nにより構成される。この舌片11nにはアースコンタクト18をビス19によって固定できるよう、アースコンタクト固定孔11oを有している。
【0024】
ブラケット保持凹部20は、ブラケット11の平板部11bの面積よりも、大きな底面積を有する四角形状の凹部であるため、図7に示すように、ブラケット11が爪20d、20e、20f、20gと保持凹部底面20iの間に差し込まれた状態において、ブラケット11の端部11eと11fの端面、具体的には差込部11i,11j,11k,11lの端面が、ブラケット保持凹部20の2つの凹部側壁20b,20cに対して、隙間を有している。このため、ブラケット11は凹部側壁20bから凹部側壁20cの方向に移動可能に保持されている。また、長孔20pの内周よりもカラー30の外径は小さく、カラー30の内径よりもブラケット11に設けられたボルト11aの外径が小さいため、図6に示すように、長孔20pの内周とカラー30の外周の間と、カラー30の内周とボルト11aの外周の間に隙間が存在し、長孔20pに対しボルト11aは移動可能に保持されている。
【0025】
エアスポイラ1000の組立および車体1への取り付けについて説明する。
【0026】
まず、図2に示すように、アンテナエレメント4とリテーナ5とを重ね合わせた状態でアンテナ用ブラケット6とクッションを装着することでアンテナユニットを構成し、アンテナユニットのアンテナエレメント4に設けられた突起4aにケーブル7のリング状接続端子12を嵌めてアンテナユニットにケーブル7を接続する。ケーブル7とアンテナユニットを接続後、ケーブル7側を始端として第1の窓2aから筐体2内部に挿入し、第2の窓2bからケーブル7のアースコンタクト18を引き出す。
【0027】
次に、図5から図7に示すように、ブラケット11に設けられたアースコンタクト取付部11cのアースコンタクト取付孔11oをアースコンタクト18の固定孔18hに重ね合わせて、これらを、ビス19によって締結固定する。アースコンタクト18およびブラケット11は導電性金属材料であるため、以上の作業により、同軸ケーブル15のシールド線15bと、アースコンタクト18と、ブラケット11とが接触導通する。
【0028】
次に、アースコンタクト18が取り付けられたブラケット11を図2に示した第2の窓2bから内部へ挿入し、図10に示すように、ブラケット11の切り欠き11g,11hを爪20g,20eの位置に合わせ、図11に示すように、筐体2の内側から、ブラケット保持凹部20の長孔20pにブラケット11のボルト11aを挿通すると共に、切り欠き11g,11hに爪20g,20eを嵌るように通し、ブラケット11の平板部11bのボルト11aが突出している側の面を保持凹部底面20iに密着させた後、図12に示すようにブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lがそれぞれ爪20d,20e,20f,20gと保持凹部底面20iとの間に挟まれるように、差し込み方向にスライドさせ、ブラケット保持凹部20にブラケット11を取り付ける。この際、筐体2の外側から、保持凹部底面20iに設けられた孔20l,20m,20n,20oを覗くことによって、ブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lが図12に示すように適正に差し込まれているか、確認することができる。
【0029】
図13に示すように、次に長孔20pから突出したボルト11aに筐体2の外側からカラー30を挿通して、長孔20pの内周に嵌るようにブラケット11の平板部11bのボルト11aが突出している側の面に密着させる。次に、長孔20pより大きな面積を有し、中央にボルト11aの外径よりも大きな孔が設けられ、外縁に接着剤が塗布されたシート状の導電性のクッション材40を、筐体2の外側から、長孔20pを覆うように貼り付けて、カラー30が脱落しないようにする。さらに、図2に示した第1の窓2aと第3の窓2cでアンテナユニットの位置決めをし、アンテナ用ブラケット6等によって筐体2内に固定する。なお、第3の窓2cは、ケーブル7とアンテナユニットの接続テストや接続の修正などの際にも用いることができる。
【0030】
図14に示すように筐体2に組み付けられたブラケット11に設けられたボルト11aを車体1に設けられた取付孔1a,1bに挿入させ、図6に示すように、車体1の内側からナット1cを用いて締結することによってアンテナが内蔵されたエアスポイラ1000の車体1への取り付けを行う。なお、図13および図14では、クッション材40はカラー30の軸方向の長さよりも厚みを有しているが、エアスポイラ1000が車体1に取り付けられた状態においては、図6に示すように、ボルト締結によって車体1の取付面と筐体2の取付面に押しつぶされて、0.1mm程度になる。
【0031】
以上の作業により、エアスポイラ1000の車体1への取り付け作業完了後、図6に示すように、アースコンタクト18が取り付けられたブラケット11と、カラー30と、クッション材40と、車体1の取付面とが、接触導通して、車体1にアース接地がなされる。
【0032】
上記の構成を有する本実施形態のエアスポイラ1000は、図13に示すように、ブラケット11を筐体2のブラケット保持凹部20に組み付けた後、長孔20pにボルト11aを挿通した状態から、ブラケット11が、爪20d,20e,20f,20gとブラケット保持凹部底面20iの間にブラケット11の差込部11i,11j,11k,11lが差し込まれるまでに移動する距離よりも大きい径方向の厚さを有するカラー30を長孔20pに挿入するため、ブラケット11の差し込み方向と反対の方向、つまり抜け方向の動きが制限され、ブラケット保持凹部20からブラケット11が脱落することはなくなるという効果を奏する。
【0033】
また、ブラケット11が筐体2に組み付けられた状態において、ブラケット11の端部11eと11fの端面、具体的には差込部11i,11j,11k,11lの端面が、ブラケット保持凹部20の2つの凹部側壁20b、20cに対して、隙間を有し、移動可能に保持され、ブラケット保持凹部20の長孔20pに対しボルト11aは移動可能に保持されているため、エアスポイラ1000において、ボルト11aを含むブラケット11は、筐体2に固定されず、車体1への取り付け前においては上記隙間の分だけ取付面に沿った方向に移動可能である。
【0034】
本実施形態のエアスポイラ1000によれば、筐体2に設けられた車体取り付け用のボルトやクリップ等の固定具3によって、車体1に対する筐体2の位置が所定の取付位置からずれた状態で固定された場合であっても、ボルト11aを含むブラケット11は、筐体2に固定されず、取り付け面に沿った方向に移動可能であるため、車体1の取付面に設けられた取付孔1a,1bの位置に合うようにボルト11aの位置を調整し、締結を行うことができる。よって、ボルト位置のずれによって、ボルトが締まりきらない状態を回避することができ、ブラケット11と車体1との接触によるアース接地を確実に行うことができる。
【0035】
また、取り付け後において、樹脂部品である筐体2の熱収縮、熱膨張による変形などにより、ブラケット保持凹部20や長孔20pの位置と車体1の取付孔1a,1bの位置にずれが生じた場合においても、前述のようにボルト11aを含むブラケット11の平板部11bは取付面に沿った方向に隙間を有して車体1に固定されており、また、カラー30の軸方向の長さは筐体2の保持凹部底面20iの厚さよりも長いため、筐体2の変形が、ボルトの軸力低下を招くことはなく、ボルト止めの緩みを回避することができ、ブラケット11と車体1との接触による確実なアース接地を維持することができる。
【0036】
また、カラー30と導電性のクッション材40によってボルト11aを有するブラケット11が筐体2内部にブラケット11が保持された状態を維持することができるため、アンテナ内蔵エアスポイラ1000の車体1への締結作業のみによって、アンテナの接地がなされ、接地作業が容易である。
【0037】
上記実施の形態では、車両後部上方に固定された、アンテナが内蔵された車両外装品であるエアスポイラ1000を開示したが、例えば、フロントバンパースポイラー、サイドスポイラー、リアバンパースポイラー、リアウイングスポイラーなど、車両装備の中空品(特に、樹脂成形品)全般に適用されるものであってもよい。また、クッション材40を導電性であるものとしたが、エアスポイラ1000の組立後から車体1への取り付け時までのカラー30脱落防止を目的として、筐体2の外側から、長孔20pを覆うように一時的に貼り付ける、導電性を有さないクッション材としてもよい。この場合、エアスポイラ1000の車体1への取り付け作業完了後、ブラケット11と、カラー30と、車体1の取付面とが、接触導通して、車体1にアース接地がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラを装着した車体の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラの左端の底面図である。
【図3】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラに内蔵されたアンテナユニット主要部の斜視図である。
【図4】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのケーブルの正面図である。
【図5】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラの接地構造の平面図である。
【図6】図5中のA−A’方向の断面図である。
【図7】図5中のB−B’方向の断面図である。
【図8】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのカラーとブラケット保持凹部のエアスポイラ内側からの斜視図である。
【図9】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのブラケットの斜視図である。
【図10】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのブラケット組み付けを示す説明図である。
【図11】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのブラケット組み付けを示す説明図である。
【図12】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのブラケット組み付けを示す説明図である。
【図13】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラのブラケット組み付けを示す説明図である。
【図14】本発明に係る実施形態におけるアンテナ内蔵エアスポイラの車体への取り付けについての説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 車体、1a,1b 取付孔、1c ナット、2 筐体、2a 第1の窓、2b 第2の窓、2c 第3の窓、3 車体取り付け用固定具、4 アンテナエレメント、4a 突起、4b アンテナエレメントの舌片、5 リテーナ、5a 被係合部、5b アンテナ用ブラケット固定用ネジ孔、6 アンテナ用ブラケット、6a アンテナ用ブラケットのネジ穴、7 ケーブル、8 コネクタ、11 ブラケット、11a ボルト、11b 平板部、11c アースコンタクト取付部、11d,11e,11f,11m 端部、11g,11h 切り欠き、11i,11j,11k,11l 差込部、11n 舌片、11o アースコンタクト取付孔、12 接続端子、13 AV線、15 同軸ケーブル、15b シールド線、16 接続部、17 チューブ、18 アースコンタクト、18h 固定孔、19 ビス、20 ブラケット保持凹部、20a スロープ、20b,20c,20h 凹部側壁、20d,20e,20f,20g 爪、20i 保持凹部底面、20l,20m,20n,20o 保持凹部底面の孔、20p 長孔、30 カラー、40 導電性のクッション材、100 エアスポイラの接地構造、1000 エアスポイラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部に固定され、中空の筐体を有する車両外装品と、
車両外装品の内部に取り付けられ、同軸ケーブルの芯線が電気的に接続されたアンテナエレメントと、
車両外装品の内部に設けられ、アンテナエレメントに芯線が接続された同軸ケーブルのシールド線が電気的に接続されたブラケットと、
ブラケットに設けられ、ブラケットを車両に締結するボルトと、
を備えるアンテナ内蔵車両外装品であって、
車両外装品の筐体は、車両への固定側に設けられ、ボルトの外径よりも大きな内径を有し、ボルトが挿通される孔と、
車両への固定側に設けられ、筐体の内面との間にブラケットを挟み込む爪と、
を備えることを特徴とするアンテナ内蔵車両外装品。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ内蔵車両外装品であって、
ブラケットと車両の間に挟まれて、ブラケットと車両とを電気的に接続するカラーと、
を備え、
孔はカラーよりも大きな内径を有することを特徴とするアンテナ内蔵車両外装品。
【請求項3】
請求項2記載のアンテナ内蔵車両外装品であって、
筐体の外面に、孔の開口を覆うように取り付けられ、カラーを孔の内面に保持するクッション材と、
を備えることを特徴とするアンテナ内蔵車両外装品。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ内蔵車両外装品であって、
孔は長孔状で、
ブラケットは、孔にボルトを挿通した状態で、筐体の内面に沿って移動して、爪と筐体の内面との間に差し込まれ、
カラーは、ブラケットが爪と筐体の内面との間に差し込まれた後に、ボルトと孔の差し込み方向と反対方向の内面との間に取り付けられ、その差し込み方向の厚さは、孔の差し込み方向と反対方向の内面から爪の差し込み方向と反対方向の端面までの長さと、ボルトの差し込み方向と反対方向の端からブラケットの差し込み方向の差込端まで長さとの差より大きいことを特徴とするアンテナ内蔵車両外装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−158990(P2009−158990A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331322(P2007−331322)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】