説明

アンテナ装置

【課題】可動部を設けることなく電波の放射方向を変更可能なアンテナ装置を提供することである。
【解決手段】本発明にかかるアンテナ装置は、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波の指向性を制御可能なアレイアンテナ10と、曲率半径が各々異なる複数の反射面21〜23を備える反射器20と、を有する。本発明にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナ10から放射される電波を反射器20が備える反射面21〜23に選択的に放射することで電波の放射方向を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置に関し、特に放射される電波の指向性を制御可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置において、電波(ビーム)を放射および受信するためのアンテナは重要な構成要素の一つである。特に、高周波、低電力の通信においては、アンテナで生じる利得や放射される電波の指向性の制御は通信の品質に影響を与える。一般的に、放射されるビームの指向性を制御するために、次の2つのアンテナが用いられる。
【0003】
1つ目は、パラボラアンテナに代表される開口面アンテナのように、アンテナ自体が高い指向性を有するアンテナである。2つ目は、複数のアンテナ素子を備えるアレイアンテナのように、アンテナ自体は高い指向性を持たないが複数のアンテナ素子から異なる位相の電波を放射し空間合成することで指向性を持たせるアンテナである。
【0004】
開口面アンテナはアンテナの開口面がビームの放射方向になっているため、一度アンテナを設置してしまうとその放射方向を変更することはできない。開口面アンテナにおいてビームの放射方向を変更するためには、物理的にアンテナの開口面を回転する必要があり、アンテナ装置の装置規模が増加し、また耐久性が低下する。
【0005】
アレイアンテナは、放射される電波に指向性を持たせるために、複数のアンテナ素子から放射される電波の位相を制御するための位相制御手段が必要となる。また、アレイアンテナは複数のアンテナ素子をパッチアンテナで構成することが一般的であり、電波天文や衛星通信のような超長距離通信でない限り、アンテナの構成は比較的小さくなる。特に高周波の場合、アンテナ素子間の距離は狭くなる傾向にある。これは、アンテナ素子間の距離が波長に依存するからである。
【0006】
無線通信において、通信相手の位置が判別している場合、高指向性のアンテナを用いることで効率的に信号を伝送することができる。これは、通信開始時にビームフォーミングにより最適な放射方向を決定する方式(ミリ波通信など)でも同様である。例えば、開口面アンテナを用いた場合、アンテナの放射面積が広いためアレイアンテナを用いた場合よりも高利得、高指向性の通信を実現することができる。しかし、開口面アンテナでは電波の放射方向を変更するためにアンテナを物理的に移動する必要がある。このような問題は、電波を受信する場合でも同様に生じる。特許文献1には、このような問題を解決する技術が開示されている。
【0007】
特許文献1には、パラボラアンテナの方向を変えることなく、また複数のパラボラアンテナを設置することなく、互いに異なる位置に停止している放送衛星からの電波を受信できる技術が開示されている。図14に示すように、特許文献1にかかるアンテナは、反射器101と受信部102とを備える。反射器101は、矢印A方向からの電波を反射する曲面部分101Aと、矢印B方向からの電波を反射する曲面部分101BとをC点で接合して形成されている。曲面部分101Aで反射されるA方向からの電波と、曲面部分101Bで反射されるB方向からの電波とでは受信部102へ入射する方向が相違する。よって、受信部102は、受信部102における受信レベルが最大となるように受信部102の方向を調整する機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−037231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1にかかる技術では、曲面部分101Aで反射されるA方向からの電波と、曲面部分101Bで反射されるB方向からの電波とをそれぞれ受信するために、受信部102の方向を調整する機構が必要となる。また、特許文献1にかかるパラボラアンテナからビームを放射する場合も同様に、パラボラアンテナから指向性のあるビームを放射するために、受信部102(この場合は、送信部として機能する)の方向を調整する機構が必要となる。このように、受信部(送信部)に可動部を設けるとアンテナのメンテナンス作業が必要となり、また、アンテナ自体の寿命が短くなるという問題がある。
【0010】
上記課題に鑑み本発明の目的は、可動部を設けることなく電波の放射方向を変更可能なアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるアンテナ装置は、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波の指向性を制御可能なアレイアンテナと、曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える第1の反射器と、を有し、前記アレイアンテナから放射される電波を前記第1の反射器が備える前記反射面に選択的に放射することで前記電波の放射方向を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、可動部を設けることなく電波の放射方向を変更可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかるアンテナ装置の断面図である。
【図2】実施の形態1にかかるアンテナ装置が備えるアレイアンテナの一例を示す断面図である。
【図3】実施の形態1にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。
【図4】実施の形態1にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。
【図5】実施の形態1にかかるアンテナ装置で受信される電波の方向を示す断面図である。
【図6】実施の形態1にかかるアンテナ装置で受信される電波の方向を示す断面図である。
【図7】実施の形態2にかかるアンテナ装置を備える通信装置を示す図である。(a)は通信装置の断面図であり、(b)は通信装置の上面図である。
【図8】実施の形態2にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。
【図9】実施の形態2にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。
【図10】実施の形態2にかかるアンテナ装置の応用例を示す上面図である。
【図11】実施の形態3にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。
【図12】実施の形態4にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。
【図13】実施の形態5にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。
【図14】特許文献1に開示されているアンテナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかるアンテナ装置の断面図である。図1に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、アレイアンテナ10と反射器(第1の反射器)20とを備える。
【0015】
アレイアンテナ10は、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波(ビーム)の指向性を制御可能に構成されている。図2は本実施の形態にかかるアンテナ装置が備えるアレイアンテナ10の一例を示す断面図である。図2に示すように、アレイアンテナ10はアレイアンテナ本体11と複数のアンテナ素子12〜16とを備える。複数のアンテナ素子12〜16は1次放射器を構成する。例えば、アレイアンテナ10はフェーズドアレイアンテナであり、アンテナ素子12〜16はパッチアンテナである。
【0016】
アレイアンテナ10は、アレイアンテナ10が備える複数のアンテナ素子12〜16に給電される信号の位相を変更することで放射される電波の指向性を制御することができる。例えば、アンテナ素子13からアンテナ素子16に給電される信号の位相をアンテナ素子12に給電される信号の位相よりも次第に遅らせることで、アレイアンテナ10から放射される電波の指向性を下方に傾けることができる。逆に、アンテナ素子15からアンテナ素子12に給電される信号の位相をアンテナ素子16に給電される信号の位相よりも次第に遅らせることで、アレイアンテナ10から放射される電波の指向性を上方に傾けることができる。
【0017】
このように、アレイアンテナ10を用いることで、可動部を設けることなくアレイアンテナから放射される電波の指向性を変更することができる。なお、アレイアンテナ10が備える複数のアンテナ素子は1次元に配列されてもよく、また2次元に配列されてもよい。また、アンテナ素子の数も任意に決定することができる。すなわち、本実施の形態にかかるアンテナ装置で用いられるアレイアンテナ10は、機械的な可動部を備えていない構成でかつ放射される電波の指向性を制御することができるアンテナであればどのようなアンテナでもよい。
【0018】
反射器20は、曲率半径が各々異なる複数の反射面21〜23を備える。反射器20が備える複数の反射面21〜23の各焦点は、アレイアンテナ10が配置されている位置と一致している。また、反射器20とアレイアンテナ10は、互いに対向するように配置されている。図1に示すアンテナ装置では、複数の反射面21〜23は互いに接合されて一体で形成されている。しかし、複数の反射面21〜23は互いに分離されていてもよい。また、曲率半径が各々異なる複数の反射面は一方向に(1次元に)配列されていてもよく、または2次元に配列されていてもよい。
【0019】
そして、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナ10から放射される電波を反射器20が備える反射面21〜23に選択的に放射することで、電波の放射方向を制御している。図3、図4は、本実施の形態にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。例えば、図3に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、アレイアンテナ10から放射される電波を反射器20が備える反射面21に放射することで、方向31に指向性を有する電波を放射することができる。同様に、図4に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、アレイアンテナ10から放射される電波を反射器20が備える反射面22に放射することで、方向32に指向性を有する電波を放射することができる。
【0020】
上記例は送信時の例であるが、本実施の形態にかかるアンテナ装置を用いて電波を受信する場合も同様である。この場合、アレイアンテナ10はアレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、受信する電波の指向性を制御可能に構成されている。そして、本実施の形態にかかるアンテナ装置を用いて受信する場合、複数の反射面のうちの一つから反射された電波をアレイアンテナ10で選択的に受信する。
【0021】
図5、図6は、本実施の形態にかかるアンテナ装置で受信される電波の方向を示す断面図である。図5に示すように、方向33からの電波を受信するには、アレイアンテナ10の指向性を反射面23に合わせる。これにより、方向33からの電波をアレイアンテナ10にて選択的に受信することができる。
【0022】
また、図6に示すように、方向33からの電波を受信している際に、方向34から干渉波が伝搬してきた場合、反射面21はアレイアンテナ10へ干渉波を反射する。この場合は、アレイアンテナ10の指向性を反射面23としておくことで受信時に干渉波を除去することができる。
【0023】
以上で説明したように、本実施の形態にかかるアンテナ装置が備えるアレイアンテナ10はアレイ状に配列された複数のアンテナ素子を有し、放射する電波の指向性を制御可能に構成されている。また、反射器20は、曲率半径が各々異なる複数の反射面21〜23を備える。そして、アレイアンテナ10から放射される電波を反射器20が備える反射面21〜23に選択的に放射することで、電波の放射方向を制御している。
【0024】
よって、本実施の形態にかかるアンテナ装置により可動部を設けることなく電波の放射方向を変更可能なアンテナ装置を提供することができる。本実施の形態にかかるアンテナ装置に用いられるアレイアンテナは可動部を備えないため、アンテナのメンテナンス作業の負担を軽減でき、またアンテナ自体の寿命も長くなる。
【0025】
更に、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナから放射された電波を比較的面積の広い反射器で反射し、所定の方向に電波を放射している。また、電波を受信する際は、比較的面積の広い反射器で電波を反射し、当該反射された電波を指向性を備えるアレイアンテナで受信している。このように、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、指向性を備えるアレイアンテナだけで構成するのではなく、指向性を備えるアレイアンテナと比較的面積の広い反射器とを組み合わせているので高利得のアンテナを実現することができる。
【0026】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図7(a)は本実施の形態にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。図7(b)は本実施の形態にかかるアンテナ装置を備える通信装置の上面図である。図7(a)、(b)に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、通信装置40、44に取り付けられている。通信装置40、44は例えば天井55に設置されている。
【0027】
通信装置40はアンテナ装置としてアレイアンテナ41〜43と反射器51とを備える。反射器51は固定アーム56を用いて通信装置40に固定されている。同様に、通信装置44はアンテナ装置としてアレイアンテナ45〜47と反射器52とを備える。反射器52は固定アーム57を用いて通信装置44に固定されている。通信装置40、44には、各アレイアンテナから放射される電波を生成するための回路や、受信した電波を電気信号に変換する回路等が設けられている。
【0028】
本実施の形態にかかるアンテナ装置が備えるアレイアンテナ41〜43、45〜47は、実施の形態1で説明したアレイアンテナ10と同様の構成である。つまり、アレイアンテナ41〜43、45〜47は、各々、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波の指向性を制御可能に構成されている。また、本実施の形態にかかるアンテナ装置が備える反射器51、52は、実施の形態1で説明した反射器20と同様の構成である。つまり、反射器51、52はそれぞれ、曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える。反射器51、52が備える複数の反射面の各焦点は、アレイアンテナ41、47が配置されている位置と一致している。
【0029】
図8は、本実施の形態にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。図8に示すように、通信装置40が通信装置40の下方に位置する通信端末(不図示)と通信する場合は、アレイアンテナ42から方向36へ直接電波を放射する。通信装置40と下方に位置する通信端末との距離は、通信装置40、44間の距離よりも近いため、アンテナの利得が低くても通信可能である。よって、アレイアンテナ42から方向36へ直接電波を放射しても通信端末と通信することができる。
【0030】
なお、アレイアンテナ42は通信端末と直接通信をすることができればよいため、電波の放射方向を下方に固定してもよい。この場合、アレイアンテナ42として指向性を備えないアンテナを用いてもよい。
【0031】
一方、図8に示した例ではアレイアンテナ42から方向36へ直接電波を放射して通信端末と通信しているが、電波の放射角度によっては反射器51でアレイアンテナ42からの電波を反射してもよい。この場合は、アレイアンテナ42として指向性を備えるアンテナを用いる。
【0032】
図9は、本実施の形態にかかるアンテナ装置から放射される電波の放射方向を示す断面図である。図9に示すように、通信装置40から通信装置44へ電波を放射する場合は、通信装置40が備えるアレイアンテナ41から反射器51が備える所定の反射面に電波を放射する。所定の反射面で反射された電波は方向37へ伝搬され、反射器52の所定の反射面で反射されてアレイアンテナ47へ到達する。アレイアンテナ47は、反射器52の所定の反射面で反射された電波を選択的に受信できるように指向性を調整されている。よって、アレイアンテナ47で反射器52の所定の反射面で反射された電波を受信することができる。
【0033】
通信装置40と通信装置44との距離は比較的離れている。このため、例えばアレイアンテナ43からアレイアンテナ45へ直接電波を放射しても、アンテナの利得が低くいため通信装置40と通信装置44は通信することができない。一方、上述のように、比較的面積の広い反射器51と反射器52とを用いて電波を伝搬した場合、アンテナの利得を向上させることができるので、距離が離れている通信装置40と通信装置44との間でも通信することができる。
【0034】
換言すると、本実施の形態にかかるアンテナ装置はアレイアンテナ(第1のアレイアンテナ)41とアレイアンテナ(第2のアレイアンテナ)42とを含む。そして、アレイアンテナ41から放射され、反射器51が備える反射面で反射された電波(図9の方向37に伝搬される電波)は、空間の伝搬特性が一様であった場合、アレイアンテナ42から直接放射された電波(図8の方向36に放射された電波)を用いた通信よりも遠距離の通信(つまり、通信装置間の通信)で用いられる。
なお、本実施の形態にかかるアンテナ装置ではアンテナの利得を向上させることができるので、例えば空間の伝搬特性が比較的良くない場合(気象条件が悪い場合など)であっても、通信装置間で通信することができる。
【0035】
本実施の形態にかかるアンテナ装置では、通信装置40の通信対象の位置によって指向性を変更する必要があるため、反射器51は曲率半径が各々異なる複数の反射面を備えている。これにより、通信装置を設置する際の装置校正が容易になる。
【0036】
なお、図7に示したアンテナ装置では、通信装置一台に対して反射器を一つ設置した例を示した。しかし、アレイアンテナと反射器との組み合わせは、図10に示すように通信装置の四方に一組ずつ設置してもよい。このように、通信装置の四方にアンテナ装置を一組ずつ設置することで、通信装置の周囲に配置された複数の通信装置との通信を実現することができる。なお、反射器51の取り付け位置は、通信装置間を伝搬する電波の妨げとならない位置に取り付ける。
【0037】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図11は本実施の形態にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。図11に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は通信装置70に内蔵されている。
【0038】
図11に示すように、アンテナ装置を構成する反射器74は通信装置本体78に内蔵されている。また、アンテナ装置を構成するアレイアンテナ71、72は固定アーム73を用いて通信装置本体78に固定されている。反射器74は、曲率半径が各々異なる複数の反射面75〜77を備える。本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナを2つ設けている。例えば、アレイアンテナ71は反射面75へ電波を放射するように構成し、アレイアンテナ72は反射面76または反射面77へ電波を放射するように構成する。この場合は、反射面75の焦点をアレイアンテナ71が配置されている位置とする。また、反射面76、77の焦点をアレイアンテナ72が配置されている位置とする。
【0039】
本実施の形態にかかるアンテナ装置は、実施の形態2で説明したアンテナ装置が備えるアレイアンテナ41と反射器51とが入れ替わった構成となっている。本実施の形態にかかるアンテナ装置においても、アレイアンテナ71、72から反射器74が備える反射面75〜77に電波を選択的に放射することで電波の放射方向を制御することができる。なお、本実施の形態にかかるアンテナ装置の動作は実施の形態1および2の場合と同様である。
【0040】
また、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、2つのアレイアンテナ71、72を備えている。よって、例えばアレイアンテナ71から反射面75へ電波を放射すると共に、アレイアンテナ72から反射面77へ電波を放射することで通信装置70から2つの指向性のある電波を放射することができる。また、例えば反射面75で反射された電波をアレイアンテナ71で受信すると共に、アレイアンテナ72から反射面77へ電波を放射することで、通信装置70において電波の送信と受信を同時に実施することができる。ただし、この場合は通信装置70が複数の信号を送信もしくは受信できるものとする。
【0041】
なお、上記電波の送受信の組み合わせは一例であり、適宜変更することができる。また、上記の説明では、アレイアンテナ71、72を固定アーム73を用いて通信装置本体78の上側に固定した例を示した。しかし、アレイアンテナ71、72を固定アームを用いて取り付ける位置は通信装置本体78のどの位置でもよく、また、通信装置本体78以外の場所に固定してもよい。
【0042】
本実施の形態にかかるアンテナ装置では、通信装置70の表面に反射器74を設置しているので、実施の形態2の構成と比べて装置構成を小さくすることができる。また、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナ71とアレイアンテナ72との距離をある程度離して設けているので、アンテナ装置の放射角度を広くすることができる。
【0043】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図12は本実施の形態にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。図12に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は通信装置80に内蔵されている。
【0044】
図12に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、アレイアンテナ81、反射器(第1の反射器)82、および反射器(第2の反射器)84を備える。アレイアンテナ81は、通信装置本体88側に取り付けられている。反射器82は、固定アーム83を用いて通信装置本体88に固定されている。反射器84は、通信装置本体88に内蔵されている。アレイアンテナ81と反射器82は互いに対向するように配置されている。また、反射器82と反射器84も互いに対向するように配置されている。
【0045】
反射器82は、曲率半径が各々異なる複数の反射面82_1〜82_3を備える。反射器82が備える複数の反射面82_1〜82_3の各焦点は、アレイアンテナ81が配置されている位置と一致していてもよく、またアレイアンテナ81が配置されている位置から若干ずれていてもよい(図12では、反射面82_3の焦点が、アレイアンテナ81が配置されている位置から若干ずれている場合を示す)。また、反射器84は、曲率半径が各々異なる複数の反射面85〜87を備える。反射器84が備える複数の反射面85〜87の各焦点は、反射器82が備える複数の反射面82_1〜82_3の位置と一対一に対応している。例えば、反射器84が備える反射面85の焦点は、反射器82が備える反射面82_1の位置と一致している。反射器84が備える反射面86の焦点は、反射器82が備える反射面82_2の位置と一致している。反射器84が備える反射面87の焦点は、反射器82が備える反射面82_3の位置と一致している。
【0046】
本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナ81から放射される電波を反射器82が備える反射面82_1〜82_3に選択的に放射し、反射器82で反射された電波を更に反射器84の反射面85〜87のいずれか一つで反射することで、電波の放射方向を制御することができる。
【0047】
例えば、アレイアンテナ81から反射器82の反射面82_3へ放射された電波は、反射器82の反射面82_3で反射され、更に反射器84の反射面87で反射されて方向38へと伝搬される。同様に、アレイアンテナ81から反射器82の反射面82_2へ放射された電波は、反射器82の反射面82_2で反射され、更に反射器84の反射面86で反射される。同様に、アレイアンテナ81から反射器82の反射面82_1へ放射された電波は、反射器82の反射面82_1で反射され、更に反射器84の反射面85で反射される。
【0048】
このように、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、2つの反射器82、84を設け、反射器82で反射された電波を反射器84が備える反射面85〜87のうちのいずれか一つの反射面で反射している。これにより、アレイアンテナ81の放射角度が狭い場合であっても、アンテナ装置から放射される電波の範囲を広くすることができる。
【0049】
なお、上記の説明では、反射器82を固定アーム83を用いて通信装置本体88の上側に固定した例を示した。しかし、反射器82を固定アーム83を用いて取り付ける位置は通信装置本体88のどの位置でもよく、また、通信装置本体88以外の場所に固定してもよい。また、上記の本実施の形態にかかる説明では、アンテナ装置が通信装置80に内蔵されている例を示した。しかし、本実施の形態にかかるアンテナ装置は通信装置と別に設けられていてもよい。
【0050】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図13は本実施の形態にかかるアンテナ装置を備える通信装置の断面図である。図13に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は通信装置90に内蔵されている。本実施の形態にかかるアンテナ装置では、図7(a)に示した実施の形態2にかかるアンテナ装置を小型化した構成である。これ以外は実施の形態2にかかるアンテナ装置と同様であるので重複した説明は適宜省略する。
【0051】
図13に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ装置は、アレイアンテナ91〜93と反射器94、95とを備える。アレイアンテナ91、92は、通信装置本体96の図面左右方向に延在する部分の下部表面に取り付けられている。アレイアンテナ93は、通信装置本体96の下部表面に取り付けられている。反射器94、95は、通信装置本体96の側面に取り付けられている。また、反射器94、95が向いている方向とアレイアンテナ91、92が向いている方向は互いに略垂直となるように配置されている。
【0052】
アレイアンテナ91〜93は各々、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波の指向性を制御可能に構成されている。反射器94、95はそれぞれ、曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える。反射器94が備える複数の反射面の各焦点は、アレイアンテナ91が配置されている位置と一致している。反射器95が備える複数の反射面の各焦点は、アレイアンテナ92が配置されている位置と一致している。
【0053】
例えば、方向97へ電波を放射する場合は、アレイアンテナ91から反射器94の所定の反射面に電波を放射する。反射器94の所定の反射面に放射された電波は、当該反射面で反射されて方向97へと伝搬する。本実施の形態においても、アレイアンテナ91、92から放射される電波を反射器94、95が備える反射面に選択的に放射することで、アンテナ装置から放射される電波の方向を変更することができる。
【0054】
通信装置90が通信装置90の下方に位置する通信端末(不図示)と通信する場合は、アレイアンテナ93から方向98へ直接電波を放射する。通信装置90と下方に位置する通信端末との距離は、通信装置同士の距離よりも近いため、アンテナの利得が低くても通信可能である。よって、アレイアンテナ93から方向98へ直接電波を放射しても通信端末と通信することができる。
【0055】
なお、アレイアンテナ93は通信端末と直接通信をすることができればよいため、電波の放射方向を下方に固定してもよい。この場合、アレイアンテナ93として指向性を備えないアンテナを用いてもよい。
【0056】
以上で説明したように、本実施の形態にかかるアンテナ装置では、アレイアンテナ91、92を通信装置本体96の図面左右方向に延在する部分の下部表面に取り付けている。また、反射器94、95を通信装置本体96の側面に取り付けている。このような構成とすることで、アンテナ装置を備える通信装置を小型化することができる。
【0057】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 アレイアンテナ
11 アレイアンテナ本体
12、13、14、15、16 アンテナ素子
20 反射器
21、22、23 反射面
40、44 通信装置
41、42、43、44、45、46、47 アレイアンテナ
51、52 反射器
56、57 固定アーム
70 通信装置
71、72 アレイアンテナ
73 固定アーム
74 反射器
75、76、77 反射面
78 通信装置本体
80 通信装置
81 アレイアンテナ
82 反射器
82_1、82_2、82_3 反射面
83 固定アーム
84 反射器
85、86、87 反射面
88 通信装置本体
90 通信装置
91、92、93 アレイアンテナ
94、95 反射器
96 通信装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、放射する電波の指向性を制御可能なアレイアンテナと、
曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える第1の反射器と、を有し、
前記アレイアンテナから放射される電波を前記第1の反射器が備える前記反射面に選択的に放射することで前記電波の放射方向を制御する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の反射器が備える複数の反射面の各焦点は、前記アレイアンテナが配置されている位置である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える第2の反射器を更に備え、
前記第1の反射器で反射された電波を前記第2の反射器が備える反射面のうちのいずれか一つの反射面で反射する、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2の反射器が備える複数の反射面の各焦点は、前記第1の反射器が備える各反射面の位置と一対一に対応している、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の反射器と前記第2の反射器とが対向するように配置されている、請求項3または4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の反射器が向いている方向と前記アレイアンテナが向いている方向とが互いに略垂直となるように、前記第1の反射器と前記アレイアンテナとが配置されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置は複数のアレイアンテナを備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ装置は第1のアレイアンテナと第2のアレイアンテナとを含み、
前記第1のアレイアンテナから放射され、前記第1の反射器が備える前記反射面で反射された電波は、前記第2のアレイアンテナから直接放射された電波を用いた通信よりも遠距離の通信で用いられる、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アレイアンテナは、前記アレイアンテナが備える複数のアンテナ素子に給電される信号の位相を変更することで放射される電波の指向性を制御する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を備え、受信する電波の指向性を制御可能なアレイアンテナと、
曲率半径が各々異なる複数の反射面を備える第1の反射器と、を有し、
前記複数の反射面のうちの一つから反射された電波を前記アレイアンテナで選択的に受信する、
アンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−178793(P2012−178793A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41777(P2011−41777)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】