説明

アンテナ装置

【課題】本発明は上記点に鑑み、アンテナ装置において、反射導体を必須とせず、指向性の打ち上がりを抑えることを目的とする。
【解決手段】グラウンド導体11と、グラウンド導体11の一方側に、グラウンド導体11と非接続に配置された第1のアンテナ素子13と、グラウンド導体11の一方側とは反対側に、グラウンド導体11と非接続に配置された第2のアンテナ素子14と、を備え、第1のアンテナ素子13および第2のアンテナ素子14は、同じ給電点12から給電され、グラウンド導体11は、当該給電点12の周囲に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、モノポールアンテナにおける指向性の打ち上がりについて、図19および図20を用いて説明する。図19に示すように、給電点83から給電されるモノポールアンテナ84は、グラウンド81が理想的な無限グラウンドならば、指向性85の最大利得方向86がグラウンド81と同一面方向(水平方向)となり、垂直面で見ると八の字指向性となる。しかし、現実には無限グラウンドは存在せず、グラウンド81のサイズが有限ならば、グラウンド81と同一面方向の利得が低下し、指向性87の最大利得方向88がグラウンド面よりも上側に打ちあがる。これが指向性の打ち上がり現象である。
【0003】
この現象は、図20に示すように、回折によって生じる。すなわち、給電点83からモノポールアンテナ84への給電によって発生する電界101が、グラウンド81の端部105において、電界103のように、グラウンド81の下側に回り込んでしまうため、指向性の打ち上がりが発生する。なお、矢印102、104、106は、ポインティングベクトルの方向を示す。指向性の打ち上がり現象については、非特許文献1に記載されている。
【0004】
これに対し、従来、図21に示すように、グラウンド導体91の一方側にアンテナ素子92を配置し、グラウンド導体91付近の給電部93からアンテナ素子92に給電すると共に、反射導体94を設けたアンテナ装置が知られている(特許文献1参照)。このアンテナ装置においては、グラウンド導体91からみてアンテナ素子92の反対側に反射導体94を設けることで、グラウンド導体91と反射導体94の間で空間的結合を生じさせている。そして、これらグラウンド導体91および反射導体94について、形状および位置を変更することで、垂直面(アンテナ素子92を含む面)での電波の指向性の調整を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−134026号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】電子情報通信学会編、「アンテナ工学ハンドブック」、第1版、オーム社、発行年月日1992年12月30日、P53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明においては、指向性の打ち上がりをある程度抑えることも可能である。しかし、上記のようなアンテナ装置では、グラウンドと同一面方向の利得を向上することができず、また、指向性の打ち上がりを抑えるために、グラウンド導体の他にも反射導体を必要とするので、アンテナ装置の体格が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、アンテナ装置において、反射導体を必須とせず、指向性の打ち上がりを抑え、グラウンドと同一面方向の利得を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、グラウンド導体(11)と、前記グラウンド導体(11)の一方側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第1のアンテナ素子(13)と、前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第2のアンテナ素子(14)と、を備え、前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)は、同じ給電点(12)から給電され、前記グラウンド導体(11)は、前記給電点(12)の周囲に配置されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0010】
このように、グラウンド導体(11)の一方側および反対側にそれぞれ第1のアンテナ素子(13)および第2のアンテナ素子(14)を配置し、同じ給電点(12)からそれらアンテナ素子(13、14)に給電し、その給電点(12)の周囲にグラウンド導体(11)を配置することで、グラウンド導体(11)の一方側で電界(以下、表面側電界という)が発生すると共にグラウンド導体(11)の反対側で電界(以下、裏面側電界)が発生し、それら表面側電界および裏面側電界がグラウンド導体(11)の外縁で相互作用することで、グラウンド導体(11)の反対側に電界がない場合(単なるモノポールアンテナの場合)に比べ、指向性の打ち上がりを抑えることができ、また、グラウンド導体(11)と同一面方向の利得を向上することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記グラウンド導体(11)は、穴を形成する内周縁(11a)を有し、前記穴を通して前記給電点(12)から前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)に給電されることを特徴とする。
【0012】
このようになっていることで、グラウンド導体(11)に空けられた穴を通して給電点(12)から両アンテナ素子(13、14)に給電することで、穴を通さない場合(例えばグラウンド導体(11)に切り欠きを設け、その切り欠きを通して給電点(12)から両アンテナ素子(13、14)に給電する場合)に比べ、グラウンド導体(11)の欠損を少なくすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のアンテナ装置において、前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)は、同じ長さであり、かつ、前記給電点(12)から、前記グラウンド導体(11)に対して垂直かつ互いに逆方向に伸びていることを特徴とする。このようになっていることで、表面側電界と裏面側電界が同位相および同強度となるので、より効果的に指向性の打ち上がりを低減することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアンテナ装置において、前記第2のアンテナ素子(14)は、前記給電点(12)から前記第1のアンテナ素子(13)に対して逆方向に距離Lだけ伸びた後、折れ曲がっていることを特徴とする。
【0015】
このようにすることで、モノポールアンテナに比べて指向性の打ち上がりを低減することができると共に、グラウンド導体(11)に垂直な方向のアンテナ装置のサイズを低減することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置において、当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)は、前記車両の外殻を構成する導体に空けられた穴を通って前記車両の内部に伸び、前記車両の内部において折れ曲がっていることを特徴とする。このようにすることで、第2のアンテナ素子(14)が車内の物体(例えば内張り)と位置的に干渉する可能性を低減することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置において、当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)の少なくとも一部(21)は、前記アンテナ装置を前記車両の外殻に固定するための固定部材として用いられることを特徴とする。このようになっていることで、第2のアンテナ素子(14)専用の穴を車両の外殻に空ける必要がなくなるので、車両の外殻に空ける穴の数を減らすことができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置において、当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)の少なくとも一部(23)は、前記アンテナ装置を前記車両の外殻に対して位置決めするための位置決め部材として用いられることを特徴とする。このようになっていることで、第2のアンテナ素子(14)専用の穴を車両の外殻に空ける必要がなくなるので、車両の外殻に空ける穴の数を減らすことができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、穴が空いたグラウンド導体(11、51)と、前記グラウンド導体(11、51)の一方側に、前記グラウンド導体(11、51)と非接続に配置されたアンテナ素子(13)と、前記グラウンド導体(11)の近傍に配置される位相制御器(15)と、を備え、前記グラウンド導体(11)内で前記アンテナ素子(13)に一番近い位置と、前記グラウンド導体(11)内で前記位相制御器(15)に一番近い位置と、の間に、前記グラウンド導体(11)の前記穴が位置しており、前記アンテナ素子(13)に給電されたときに前記グラウンド導体(11)の前記一方側に発生する電界(以下、表面側電界という)が、前記穴によって前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側(以下、他方側)にも電界(以下、裏面側電界という)を発生させると共に、前記表面側電界の一部および前記裏面側電界の一部のうち一方または両方が前記位相制御器(15)を通過することで、前記グラウンド導体(11)の外縁で前記表面側電界および前記裏面側電界の位相差Xが−90°+360°×n<X<90°+360°×n(ただしnは整数)となっていることを特徴とするアンテナ装置である。このようになっていることで、アンテナ素子(13)から穴の方向における指向性の打ち上がりを抑えることができ、また、グラウンド導体(11)と同一面方向の利得を向上することができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のアンテナ装置において、当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記グラウンド導体(11、51)は前記車両のルーフであり、前記穴は、前記ルーフに設けられた天窓であることを特徴とする。このように、車両のルーフおよび天窓をグラウンド導体(11)およびグラウンド導体(11)の穴として用いることで、アンテナ装置の部品点数を抑えることができる。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、グラウンド導体(11)と、前記グラウンド導体(11)の一方側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第1のアンテナ素子(13)と、前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第2のアンテナ素子(14)と、を備え、前記第1のアンテナ素子(13)は、前記グラウンド導体(11)から見て前記第1のアンテナ素子(13)側にある第1の給電点(12)から給電され、前記第2のアンテナ素子(14)は、前記グラウンド導体(11)から見て前記第2のアンテナ素子(14)側にある第2の給電点(16)から給電されることを特徴とするアンテナ装置である。
【0022】
このように、グラウンド導体(11)の一方側および反対側にそれぞれ第1のアンテナ素子(13)および第2のアンテナ素子(14)を配置し、それぞれの給電点(12、16)から各アンテナ素子(13、14)に給電することで、グラウンド導体(11)の一方側で電界(以下、表面側電界という)が発生すると共にグラウンド導体(11)の反対側で電界(以下、裏面側電界)が発生し、それら表面側電界および裏面側電界がグラウンド導体(11)の外縁で相互作用することで、グラウンド導体(11)の反対側に電界がない場合(単なるモノポールアンテナの場合)に比べ、指向性の打ち上がりを抑えることができ、また、グラウンド導体(11)と同一面方向の利得を向上することができる。
【0023】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図2】給電点12からアンテナ素子13、14に給電することで発生する磁界111、112を示す図である。
【図3】アンテナ装置1の寸法例を示す図である。
【図4】グラウンド導体のサイズと水平方向利得との関係の実験結果を示すグラフである。
【図5】第2実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図6】第1、第2実施形態における垂直面内の指向性の実験結果を示すグラフである。
【図7】第2のアンテナ素子の垂直部の長さLと水平方向利得との関係の実験結果を示すグラフである。
【図8】車両50に取り付けられるアンテナ装置1を示す図である。
【図9】第3実施形態における、ルーフ51に対するアンテナ装置の取り付け構造を示す模式図である。
【図10】第4実施形態における、ルーフ51に対するアンテナ装置の取り付け構造を示す模式図である。
【図11】第4実施形態における、ボルト21周辺の断面図である。
【図12】第5実施形態における、ルーフ51に対するアンテナ装置の取り付け構造を示す模式図である。
【図13】第6実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図14】給電点12からアンテナ素子13に給電することで発生する磁界121、123を示す図である。
【図15】アンテナ装置1の寸法例を示す図である。
【図16】第6実施形態における垂直面内の指向性の実験結果を示すグラフである。
【図17】第7実施形態に係るアンテナ装置1の取り付け状態を示す図である。
【図18】第8実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【図19】モノポールアンテナ84による指向性の打ち上がりを示す図である。
【図20】指向性の打ち上がりの原因となる電界の回折を示す図である。
【図21】従来のアンテナ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るアンテナ装置1の主要構成を概略的に示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態のアンテナ装置1は、グラウンド導体11、給電点12から給電されるアンテナ素子13、同じく給電点12から給電されるアンテナ素子14を有している。
【0026】
グラウンド導体11は、平板形状を有する導体であり、中心部に、穴を形成する円形の内周縁11aを有すると共に、内周縁11aと同心の円形である外周縁11bを有している。
【0027】
アンテナ素子13(第1のアンテナ素子の一例に相当する)は、内周縁11aによって形成された穴の中心にある給電点12から、グラウンド導体11の一方側に、グラウンド導体11の面に対して垂直に伸びた、直線形状の導体アンテナである。なお、アンテナ素子13とグラウンド導体11とは非接続である。アンテナ素子13の長さは、アンテナ装置1を用いて送受信を行う信号の波長をλとすると、例えばλ/4である。
【0028】
アンテナ素子14(第2のアンテナ素子の一例に相当する)は、内周縁11aによって形成された穴の中心にある給電点12から、グラウンド導体11の一方側とは反対側に、グラウンド導体11の面に対して垂直に伸びた、直線形状の導体アンテナである。なお、アンテナ素子14とグラウンド導体11とは非接続である。アンテナ素子14の長さは、例えばアンテナ素子13と同じλ/4である。
【0029】
つまり、アンテナ素子13、14は、グラウンド導体11に囲まれた同じ給電点12から、グラウンド導体11の穴を通して互いに逆方向に、同強度かつ同位相で給電されることになる。
【0030】
ここで、これらグラウンド導体11、アンテナ素子13、およびアンテナ素子14の組み付け構造の例について説明する。グラウンド導体11、アンテナ素子13、およびアンテナ素子14は、上記のような位置関係を実現できれば、どのような組み付け構造を採用してもよい。
【0031】
例えば、グラウンド導体11は、樹脂から成る基板(以下、第1基板という)の表面にプリントされていてもよい。この場合、内周縁11aによってできた穴(グラウンド導体11の穴)には、第1基板が存在していることになる。そして、当該穴の中心において、第1基板にスルーホールが形成されており、このスルーホールの内周に導体を貼り付け、貼り付けた導体を給電点12とする。
【0032】
そして、アンテナ素子13が、一端においてこのスルーホール内周の導体に導通かつ固定された状態で、グラウンド導体11の上記一方側に、グラウンド導体11に対して垂直に立てられている。このアンテナ素子13は、例えば、第1基板に対して垂直に立てられた基板(以下、第2基板という)の表面にプリントされたものであってもよい。
また、アンテナ素子14が、一端においてこのスルーホール内周の導体に導通かつ固定された状態で、グラウンド導体11の上記反対側に、グラウンド導体11に対して垂直に立てられている。このアンテナ素子14は、例えば、第1基板に対して垂直に立てられた基板(以下、第3基板という)の表面にプリントされたものであってもよい。
【0033】
このようになっていることで、スルーホール内周の給電点12からスルーホールを通してアンテナ素子13およびアンテナ素子14に給電される。なお、信号源から給電点12への給電は、図示しない信号ケーブルを介して実現される。
【0034】
以下、上記のような構成のアンテナ装置1の作動について説明する。同じ給電点12からアンテナ素子13、14に給電されると、図2に示すように、グラウンド導体11から見てアンテナ素子13側(以下、表面側という)および、グラウンド導体11から見てアンテナ素子14側(以下、裏面側という)に、同強度かつ同位相の電界が発生する。これは、グラウンド導体11を対称面としてアンテナ素子13およびアンテナ素子14が対象に配置しており、かつ、両アンテナ素子13、14が同一給電点12から給電されているからである。
【0035】
すると、グラウンド導体11の表面側の電界111と裏面側の電界112とで電界が対称的になり、その結果、グラウンド導体11の外縁11bにおける回折がなくなり、指向性の打ち上がりが解消され、ポインティングベクトル113、114、115に示すように、指向性の最大利得の方向が、水平方向(グラウンド導体11に平行な方向)となる。
【0036】
ここで、図3に、アンテナ装置1の各部の寸法について一例を示す。波長λの信号を給電点12から給電するようになっているアンテナ装置1において、図3に示すように、グラウンド導体11の外縁11bの直径を2.3λとし、アンテナ素子13とアンテナ素子14の全長をλ/2とし、内周縁11aの直径をλ/20とする。
【0037】
以上説明した通り、グラウンド導体11の一方側および反対側にそれぞれアンテナ素子13およびアンテナ素子14を配置し、同じ給電点12からそれらアンテナ素子13、14に給電し、その給電点12の周囲にグラウンド導体11を配置することで、グラウンド導体11の一方側で表面側電界が発生すると共にグラウンド導体11の反対側で裏面側電界が発生し、それら表面側電界および裏面側電界がグラウンド導体11の外縁11bで相互作用することで、グラウンド導体11の反対側に電界がない場合(単なるモノポールアンテナの場合)に比べ、回折が抑えられ、その結果、指向性の打ち上がりを抑えることができ、また、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。
【0038】
また、グラウンド導体11は、穴を形成する内周縁11aを有し、当該穴を通して給電点12からアンテナ素子13、14に給電される。このようになっていることで、グラウンド導体11に空けられた穴を通して給電点12から両アンテナ素子13、14に給電することで、穴を通さない場合(例えばグラウンド導体11に切り欠きを設け、その切り欠きを通して給電点12から両アンテナ素子13、14に給電する場合)に比べ、グラウンド導体11の欠損を少なくすることができる。
【0039】
また、アンテナ素子13、14は、互いに同じ長さであり、かつ、給電点12から、グラウンド導体11に対して垂直かつ互いに逆方向に伸びている。このようになっていることで、表面側電界と裏面側電界が同位相および同強度となるので、より効果的に指向性の打ち上がりを低減することができる。
【0040】
ここで、本実施形態の図3の例における、グラウンド導体11のサイズ(具体的には直径)と水平方向の利得116の関係についての実験結果を、図4に示す。この図に示すように、グラウンド導体11の直径にかかわらず、本実施形態のようにアンテナ素子13、14でダイポール化することで、モノポールの例115に比べ、例水平方向の利得116の向上効果を得ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2に、本実施形態に係るアンテナ装置1の主要構成を斜視図で示す。本実施形態のアンテナ装置1が第1実施形態のアンテナ装置1と異なるのは、アンテナ素子14の構成のみである。
【0042】
本実施形態のアンテナ素子14は、アンテナ素子13と共通の給電点12から、内周縁11aによって形成された穴を通って、給電されており、給電点12からアンテナ素子13と反対方向に伸び、アンテナ素子13と同じ長さとなっている点は、第1実施形態と同じである。
【0043】
しかし、本実施形態のアンテナ素子14は、給電点12からアンテナ素子13と反対方向に伸びる第1の部分(垂直部)14aに加え、当該第1の部分14から90°折れ曲がってグラウンド導体11に対して平行に伸びる第2の部分(水平部)14bを有している。
【0044】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、グラウンド導体11の一方側および反対側にそれぞれアンテナ素子13およびアンテナ素子14を配置し、同じ給電点12からそれらアンテナ素子13、14に給電し、その給電点12の周囲にグラウンド導体11を配置することで、グラウンド導体11の一方側で表面側電界が発生すると共にグラウンド導体11の反対側で裏面側電界が発生し、それら表面側電界および裏面側電界がグラウンド導体11の外縁11bで相互作用することで、グラウンド導体11の反対側に電界がない場合(単なるモノポールアンテナの場合)に比べ、回折が抑えられ、その結果、指向性の打ち上がりを抑えることができる。
【0045】
なお、図5には、本実施形態のアンテナ装置1の寸法例も記載している。具体的には、アンテナ素子14の全長は、アンテナ素子13と同じくλ/2であるが、第1の部分14aの長さLは、λ/2よりも短く、また、第2の部分14bの長さは、λ/2−Lとなる。
【0046】
ここで、図6に、図3の寸法例で示した第1実施形態のアンテナ装置1の例、および、本実施形態のアンテナ装置1において第1の部分14aの長さLとして各種の値を採用した複数例についての、垂直面内(アンテナ素子13、14を含み、グラウンド導体11に垂直な面内)における垂直偏波の指向性の実験結果を示す。
【0047】
実線71が、第1実施形態の図3のアンテナ装置1における実験結果を示し、点線72が、第2実施形態の図5においてL=3λ/10としたアンテナ装置1における実験結果を示し、破線73が、第2実施形態の図5においてL=2λ/10としたアンテナ装置1における実験結果を示し、太実線74が、第2実施形態の図5においてL=λ/10としたアンテナ装置1における実験結果を示す。また、太点線75が、参考例として、図19に示したアンテナ装置(モノポールアンテナ84の寸法はλ/4、円盤形状のグラウンド導体81の直径は2.3λ)における実験結果を示す。なお、利得の単位はdBiであり、図6中の左右方向が水平方向(グラウンド導体11に平行な方向)である。また、図7に、第1の部分(垂直部)14aの長さLと、その長さLを採用したときの水平方向の利得の実験結果を示す。
【0048】
これらの図に示すように、第1実施形態の例71(図7においてλ=0.25λの場合の例)は、参考例75(図7においてλ=0の場合の例)より水平方向利得が3.2dB向上し、ダイポール相当の2.14dBiとなり、指向性の打ちあがりを矢印77のように抑制できることがわかる。また、線72〜74に示すように、アンテナ素子13の第1の部分14aの長さLがλ/4より小さい場合でも、すなわち、アンテナ素子13が逆L状の場合でも、参考例と比較したときの指向性の打ち上がりを抑える効果を得ることができるが、その効果は、長さLが長いほど顕著である。
【0049】
しかも、アンテナ素子13が途中で折れ曲がっていることで、参考例のモノポールアンテナに比べて指向性の打ち上がりを低減することができ、また、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。具体的には、図7に示した通り、垂直部の長さLが非常に小さくても(0.025λ以上)、利得増加の効果が認められる。また、グラウンド導体11に垂直な方向のアンテナ装置のサイズを低減することができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態のアンテナ装置1の搭載位置を具体的にした実施形態である。図8に示すように、本実施形態のアンテナ装置1は、車両50の外殻(具体的にはルーフ)に取り付けられてフィンアンテナとなる。なお、アンテナ装置1におけるグラウンド導体11、給電点12、アンテナ素子13の取り付け構造は、第2実施形態と同じである。なお、車両50の外殻は、導体である。
【0051】
図9は、車両50のルーフ部分に対するアンテナ装置1の取り付け構造を模式的に示す側面図である。この図に示すように、固定部材(具体的にはボルト21およびナット22)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に一点で固定し、さらに、位置決め部材23(具体的にはポール)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に位置決めすると共にルーフ51に対するグラウンド導体11の回転を規制する。
【0052】
このために、ルーフ51には、ボルト21と係合するためのねじ穴、および、ポール23を通すための穴が形成されている。そして、ボルト21およびポール23は、グラウンド導体11を下から保持する部材(例えば、第1実施形態の第1基板)に対し、例えばかしめ固定等によって固定されている。
【0053】
そして、図9に示すように、ボルト21をルーフ51のねじ穴に嵌合させると共に、ポール23をルーフ51のポール用の穴に挿入することで、アンテナ装置1をルーフ51に対して固定することができる。
【0054】
なおこの際、グラウンド導体11の下側のアンテナ素子14は、ルーフ51にあらかじめ空けられたアンテナ素子14用の穴を貫通して、車内に入り、ルーフ51の次にある内装用の内張り部材52に当たる前に、90°折れ曲がって水平に伸びている。このようにすることで、アンテナ素子14が車内の物体(例えば内張り)と位置的に干渉しなくなる。
【0055】
なお、ボルト21およびポール23のうちいずれか一方または両方は、グラウンド導体11と導通する金属であり、さらに、同じく金属であるルーフ51とも導通する。したがって、ルーフ51自体も、グラウンド導体として作用する。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、第3実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態のアンテナ装置1は、第3実施形態のアンテナ装置1と同様、車両50の外殻(具体的にはルーフ)に取り付けられてフィンアンテナとなる。なお、アンテナ装置1におけるグラウンド導体11、給電点12、アンテナ素子13の取り付け構造は、第2実施形態と同じである。
【0057】
図10は、車両50のルーフ部分に対するアンテナ装置1の取り付け構造を模式的に示す側面図である。この図に示すように、固定部材(具体的にはボルト21およびナット22)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に一点で固定し、さらに、位置決め部材23(具体的にはポール)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に位置決めすると共にルーフ51に対するグラウンド導体11の回転を規制する点は、第3実施形態と同じである。
【0058】
しかし、本実施形態では、第3実施形態とは違い、アンテナ素子14専用の穴をルーフ51に空けず、ボルト21用にルーフ51に空けられた穴を通じて、アンテナ素子14が車内にまで伸びている。
【0059】
このために、アンテナ素子14の一部として、アンテナ装置1をルーフ51に固定するためのボルト21を用いている。具体的には、アンテナ素子14の第1の部分として、金属製のボルト21を流用する。これにより、ボルト21が、固定部材としての役割に加え、アンテナ素子としての役割も有するようになる。そして、このようになっていることで、アンテナ素子14専用の穴をルーフ51に空ける必要がなくなるので、ルーフ51に空ける穴の数を減らすことができる。
【0060】
ただし、金属製のボルト21とグラウンド導体11が導通したり、ボルト21とルーフ51が導通したりすると、アンテナ素子13、14もグラウンド導体11またはルーフ51に導通してしまう。そこで、ボルト21とグラウンド導体11とを電気的に非接続とし、かつ、ボルト21とルーフ51とを電気的に非接続とする必要がある(図10の×印参照)。
【0061】
そのため、本実施形態では、図11の断面図に示すように、グラウンド導体11および第1基板25に穴を空け、その穴の内縁全体を覆うように、非導電性材料(例えば樹脂)から成るカバーリング53を配置し、そのカバーリング53の内縁にボルト21を通して(かしめ固定等で)固定し、このボルト21にアンテナ素子13を接続する。これにより、グラウンド導体11とボルト21が非接続となる。
【0062】
また、図11の断面図に示すように、ルーフ51にボルト21用の穴を空け、その穴の内縁全体を覆うように、非導電性材料(例えば樹脂)から成るカバーリング54を配置し、そのカバーリング54の内縁にねじ穴を形成し、そのねじ穴にボルト21を嵌合させて固定する。これにより、グラウンド導体11とボルト21が非接続となる。
【0063】
なお、本実施形態では、金属製のポール23を介してグラウンド導体11とルーフ51とが導通するので、第3実施形態と同様、ルーフ51自体も、グラウンド導体として作用する。
【0064】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、第3実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態のアンテナ装置1は、第3実施形態のアンテナ装置1と同様、車両50の外殻(具体的にはルーフ)に取り付けられてフィンアンテナとなる。なお、アンテナ装置1におけるグラウンド導体11、給電点12、アンテナ素子13の取り付け構造は、第2実施形態と同じである。
【0065】
図12は、車両50のルーフ部分に対するアンテナ装置1の取り付け構造を模式的に示す側面図である。この図に示すように、固定部材(具体的にはボルト21およびナット22)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に一点で固定し、さらに、位置決め部材23(具体的にはポール)を用いて、グラウンド導体11をルーフ51に位置決めすると共にルーフ51に対するグラウンド導体11の回転を規制する点は、第3実施形態と同じである。
【0066】
しかし、本実施形態では、第3実施形態とは違い、アンテナ素子14専用の穴をルーフ51に空けず、ポール23用にルーフ51に空けられた穴を通じて、アンテナ素子14が車内にまで伸びている。
【0067】
このために、アンテナ素子14の一部として、アンテナ装置1をルーフ51に位置決めしてアンテナ装置1の回転を規制するためのポール23を用いている。具体的には、アンテナ素子14の第1の部分として、金属製のポール23を流用する。これにより、ポール23が、固定部材としての役割に加え、アンテナ素子としての役割も有するようになる。そして、このようになっていることで、アンテナ素子14専用の穴をルーフ51に空ける必要がなくなるので、ルーフ51に空ける穴の数を減らすことができる。
【0068】
ただし、金属製のポール23とグラウンド導体11が導通したり、ポール23とルーフ51が導通したりすると、アンテナ素子13、14もグラウンド導体11またはルーフ51に導通してしまう。そこで、ポール23とグラウンド導体11とを電気的に非接続とし、かつ、ポール23とルーフ51とを電気的に非接続とする必要がある(図10の×印参照)。
【0069】
そのため、本実施形態では、第4実施形態のカバーリング54、54を、ボルト21葉の穴でなく、ポール23用の穴に配置する。具体的には、グラウンド導体11および第1基板に穴を空け、その穴の内縁全体を覆うように、非導電性材料(例えば樹脂)から成るカバーリングを配置し、そのカバーリングの内縁にポール23を通して(かしめ固定等で)固定し、このポール23にアンテナ素子13を接続する。これにより、グラウンド導体11とポール23が非接続となる。
【0070】
また、ルーフ51にポール23用の穴を空け、その穴の内縁全体を覆うように、非導電性材料(例えば樹脂)から成るカバーリングを配置し、そのカバーリングの内縁にポール23を挿入させて位置決めおよび回転規制する。これにより、グラウンド導体11とポール23が非接続となる。
【0071】
なお、本実施形態では、金属製のボルト21を介してグラウンド導体11とルーフ51とが導通するので、第3実施形態と同様、ルーフ51自体も、グラウンド導体として作用する。
【0072】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図13は、本実施形態に係るアンテナ装置1の主要構成を概略的に示す斜視図である。
【0073】
この図に示すように、本実施形態のアンテナ装置1は、グラウンド導体11、給電点12から給電されるアンテナ素子13、および位相制御器15を有している。本実施形態においては、グラウンド導体11から見てアンテナ素子13とは反対側には、アンテナ素子は配置されていない。
【0074】
グラウンド導体11は、平板形状(具体的には円盤形状)を有する導体であり、端部付近に、穴を形成する内縁11cを有すると共に、円形の外周縁11bを有している。
【0075】
アンテナ素子13は、グラウンド導体11の一方側に、グラウンド導体11の面に対して垂直に伸びた、直線形状のアンテナである。このアンテナ素子13に対しては、グラウンド導体11の中央の上記一方側(アンテナ素子13と同じ側)に配置された給電点12から給電される。なお、アンテナ素子13とグラウンド導体11とは非接続である。アンテナ素子13の長さは、アンテナ装置1を用いて送受信を行う信号の波長をλとすると、例えばλ/4である。
【0076】
位相制御器15は、グラウンド導体11のアンテナ素子13側とは反対側に取り付けられる部材である。この位相制御器15は、誘電体であっておいし、表面が凹凸構造となっている導体であってもよい。
【0077】
また、アンテナ素子13と、内縁11cによって形成された穴と、位相制御器15との位置関係に関しては、グラウンド導体11内でアンテナ素子13に一番近い位置と、グラウンド導体11内で位相制御器15に一番近い位置と、の間に、グラウンド導体11の当該穴が位置するようになっている。
【0078】
ここで、これらグラウンド導体11、アンテナ素子13、および位相制御器15の組み付け構造の例について説明する。グラウンド導体11、アンテナ素子13、および位相制御器15は、上記のような位置関係を実現できれば、どのような組み付け構造を採用してもよい。
【0079】
例えば、グラウンド導体11は、樹脂から成る基板(以下、第1基板という)の下側面に形成されていてもよい。そして、グラウンド導体11の上側面において、グラウンド導体11の中央に最も近い位置に、アンテナ素子13が、グラウンド導体11に対して垂直に立てられている。また、グラウンド導体11の当該下側面に、位相制御器15が(例えば接着剤等で)固定されている。アンテナ素子13、例えば、第1基板に対して垂直に立てられた第2基板の表面にプリントされたものであってもよい。
【0080】
以下、上記のような構成のアンテナ装置1の作動について説明する。給電点12からアンテナ素子13に給電されると、図14に示すように、グラウンド導体11から見てアンテナ素子13側(以下、表面側という)に電界が発生するが、この電界のうち、アンテナ素子13から見て内縁11bによって空けられた穴の方向の電界121は、グラウンド導体11の外縁(端部)11bに達する前に、当該穴を介して一部がグラウンド導体11の裏面側(グラウンド導体11から見てアンテナ素子13とは反対側)に引き込まれ、電界123となる。
【0081】
そして、この電界123の一部は、位相制御器15を通過する。具体的には、位相制御器15が誘電体の場合は、位相制御器15の内部を通過し、位相制御器15が表面凸凹構造の導体である場合は、位相制御器15の表面(凸凹面)を通過する。これにより、グラウンド導体11の裏面側から外縁11bに達した電界と、グラウンド導体11の表面側から外縁11bに達した電界とは、向きが同方向、すなわち、位相差Xが−90°+360°×n<X<90°+360°×n(ただしnは整数)となる。これにより、指向性の打ち上がりを抑えることができる。
【0082】
つまり、グラウンド導体11の裏面側から外縁11b(ただし、アンテナ素子13から見て穴を越えた先にある外縁)に達した電界の位相と、グラウンド導体11の表面側から当該外縁11bに達した電界の位相とが、上記のような関係になるよう、位相制御器15の形状、大きさ、材質をあらかじめ決めておく。例えば、位相差Xが360°×nとなるよう、位相制御器15の形状、大きさ、材質をあらかじめ決めておけば、両面からの電界の位相が、外縁11bで一致し、指向性の打ち上がりの低減効果が最も高くなる。なお、図14中の→122、124は、ポインティングベクトルの方向を示す。
【0083】
ここで、図15に、アンテナ装置1の各部の寸法について一例を示す。波長λの信号を給電点12から給電するようになっているアンテナ装置1において、図15に示すように、グラウンド導体11の外縁11bの直径を2.3λとし、アンテナ素子13の全長をλ/2とし、内縁11bの形状を、半径0.58λ、中心角60°の円弧と、半径0.35λ、中心角60°の円弧と、それら2つの円弧の両端を繋ぐ2つの放射状の直線からなる形状とする。そして、位相制御器15は、外縁11bの一点において、位相差Xが360°×nとなるよう、位相制御器15の形状、大きさ、材質をあらかじめ決めておく。
【0084】
ここで、図16に、図15の寸法例で示した本実施形態のアンテナ装置1の例についての、垂直面内(アンテナ素子13を含み、グラウンド導体11に垂直な面内)における垂直偏波の指向性の実験結果を示す。
【0085】
実線76が、本実施形態の図15のアンテナ装置1における実験結果を示し、点線77が、参考例として、図19に示したアンテナ装置(モノポールアンテナ84の寸法はλ/4、円盤形状のグラウンド導体81の直径は2.3λ)における実験結果を示す。なお、利得の単位はdBiであり、図16中の左右方向が水平方向(グラウンド導体11に平行な方向)であり、右方向(90°の方向)が、給電点12から位相制御器15への方向(アンテナ素子13から穴への方向)である。
【0086】
この図に示すように、アンテナ素子13から穴の方向(90°の方向)における利得が、モノポールよりも向上しており、指向性の打ち上がりが押さえられていることがわかる。これにより、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。
【0087】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態は、第6実施形態のアンテナ装置1の搭載位置を車両とする実施形態である。図17(a)に示すように、本実施形態のアンテナ装置1は、車両50の外殻(具体的にはルーフ)に取り付けられてフィンアンテナとなる。第7実施形態と同じである。
【0088】
本実施形態のアンテナ装置1は、車両50のルーフ51をグラウンド導体として用いる。具体的には、図17(b)に示すように、ルーフ51の上方に、全長がλ/4のアンテナ素子13が、ルーフ51に対して垂直に立っている。ここで、アンテナ素子13は、ルーフ51とは電気的に非接続とするため、ルーフ51とアンテナ素子13との間には、樹脂等の物質を介在させる。そして、アンテナ素子13のルーフ51側の端部に、給電点12を配置し、この給電点12に対して、図示しないケーブルを介して、図示しない信号源から給電を行う。これにより、給電点12からアンテナ素子13に給電が行われる。
【0089】
また、ルーフ51のアンテナ素子13に最も近い位置(図17(b)においては給電点12に対応する位置)よりも前方に、ルーフ51の内縁51bが形成され、これにより、内縁51bの内側に天窓が空けられている。この天窓が、第6実施形態におけるグラウンド導体11の穴と同じ役割を果たす。
【0090】
そして、天窓よりも前方のルーフの裏面(下面)に、第6実施形態と同様の位相制御器15が配置される。これにより、ルーフ51のアンテナ素子13に最も近い位置と、ルーフ51の位相制御器15に最も近い位置との間に、天窓(ルーフ51の穴)が位置することになる。なお、この天窓には、通常はガラス等の不導体が配置される。
【0091】
以下、上記のような構成のアンテナ装置1の作動は、第6実施形態と同様である。すなわち、給電点12からアンテナ素子13に給電されると、グラウンド導体であるルーフ51から見てアンテナ素子13側(以下、表面側という)に電界が発生するが、この電界のうち、アンテナ素子13から見て内縁11bによって空けられた天窓の方向の電界は、ルーフの前端11dに達する前に、当該天窓を介して一部がルーフ51の裏面側(ルーフ51から見てアンテナ素子13とは反対側)に引き込まれ、裏面側の電界となる。
【0092】
そして、この裏面側の電界一部は、位相制御器15を通過する。これにより、ルーフ51の裏面側から前端11dに達した電界と、ルーフ51の表面側から前端11dに達した電界とは、向きが同方向、すなわち、位相差Xが−90°+360°×n<X<90°+360°×n(ただしnは整数)となる。これにより、指向性の打ち上がりを抑えることができる。
【0093】
つまり、ルーフ51の裏面側から前端11d(ただし、アンテナ素子13から見て天窓を越えた先にある外縁)に達した電界の位相と、ルーフ51の表面側から当該前端11dに達した電界の位相とが、上記のような関係になるよう、位相制御器15の形状、大きさ、材質をあらかじめ決めておく。例えば、位相差Xが360°×nとなるよう、位相制御器15の形状、大きさ、材質をあらかじめ決めておけば、両面からの電界の位相が、外縁11bで一致し、指向性の打ち上がりの低減効果が最も高くなる。
【0094】
このようになっていることで、第6実施形態と同様、アンテナ素子13から穴(天窓)の方向における指向性の打ち上がりを抑えることができ、また、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。
【0095】
また、本実施形態のアンテナ装置1は、車両50に取り付けられ、グラウンド導体であるルーフ51は車両50のルーフであり、穴は、ルーフ51に設けられた天窓となっていることで、アンテナ装置1の部品点数を抑えることができる。
【0096】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。図18は、本実施形態に係るアンテナ装置1の主要構成を概略的に示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態のアンテナ装置1は、グラウンド導体11、アンテナ素子13、アンテナ素子14を有している。
【0097】
グラウンド導体11は、平板形状(より具体的には円盤形状)を有する導体であり、穴は空いておらず、外周縁11bを有している。
【0098】
アンテナ素子13(第1のアンテナ素子の一例に相当する)は、グラウンド導体11の一方側に、グラウンド導体11の面に対して垂直に伸びた、直線形状のアンテナである。このアンテナ素子13に対しては、グラウンド導体11の中央の上記一方側(アンテナ素子13と同じ側)に配置された給電点12(第1の給電点の一例に相当する)から給電される。なお、アンテナ素子13とグラウンド導体11とは非接続である。アンテナ素子13の長さは、アンテナ装置1を用いて送受信を行う信号の波長をλとすると、例えばλ/4である。
【0099】
アンテナ素子14(第2のアンテナ素子の一例に相当する)は、グラウンド導体11の一方側とは反対側に、グラウンド導体11の面に対して垂直に伸びた、直線形状のアンテナである。このアンテナ素子14に対しては、グラウンド導体11の中央の上記反対側(アンテナ素子14と同じ側)に配置された給電点16(第2の給電点の一例に相当する)から給電される。なお、アンテナ素子14とグラウンド導体11とは非接続である。アンテナ素子14の長さは、例えばアンテナ素子13と同じλ/4である。
【0100】
つまり、アンテナ素子13、14は、それぞれ、グラウンド導体11の同じ位置(中央)の両面側(一方側および反対側)に位置する給電点12、16から、互いに逆方向に、同強度かつ同位相で給電されることになる。
【0101】
ここで、これらグラウンド導体11、アンテナ素子13、およびアンテナ素子14の組み付け構造の例について説明する。グラウンド導体11、アンテナ素子13、およびアンテナ素子14は、上記のような位置関係を実現できれば、どのような組み付け構造を採用してもよい。
【0102】
例えば、グラウンド導体11は、樹脂から成る多層基板(以下、第1基板という)の中間層に形成されていてもよい。そして、グラウンド導体11の当該中間層よりも上記一方側にある表面層において、グラウンド導体11の中央に最も近い位置に、アンテナ素子13が、グラウンド導体11に対して垂直に立てられている。また、グラウンド導体11の当該中間層よりも上記反対側にある裏面において、グラウンド導体11の中央に最も近い位置に、アンテナ素子14が、グラウンド導体11に対して垂直に立てられている。これらアンテナ素子13、14は、例えば、第1基板に対して垂直に立てられた第2、第3基板の表面にプリントされたものであってもよい。
【0103】
そして、給電点12は、アンテナ素子13の上記表面層側端部に設けられ、この給電点12に、信号源から信号ケーブルを介して給電されることで、給電点12からアンテナ素子13に給電され、また、給電点16は、アンテナ素子14の上記裏面層側端部に設けられ、この給電点16に、上記信号源から、信号ケーブルを介して給電されることで、給電点16からアンテナ素子14に給電される。このとき、給電点12からアンテナ素子13への給電と、給電点16からアンテナ素子14への給電は、同強度かつ同位相となる。
【0104】
以下、上記のような構成のアンテナ装置1の作動について説明する。給電点12、16からアンテナ素子13、14に同強度かつ同位相で給電されると、第1実施形態において図2を用いて説明したのと同様、グラウンド導体11から見てアンテナ素子13側(以下、表面側という)および、グラウンド導体11から見てアンテナ素子14側(以下、裏面側という)に、同強度かつ同位相の電界が発生する。これは、グラウンド導体11を対称面としてアンテナ素子13およびアンテナ素子14が対象に配置しているからである。したがって、グラウンド導体11の表面側の電界と裏面側の電界とで電界が対称的になり、その結果、グラウンド導体11の外縁11bにおける回折がなくなり、指向性の打ち上がりが解消され、指向性の最大利得の方向が、水平方向(グラウンド導体11に平行な方向)となり、また、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。
【0105】

なお、アンテナ装置1の各部の寸法としては、例えば、波長λの信号を給電点12から給電するようになっているアンテナ装置1において、グラウンド導体11の外縁11bの直径を2.3λとし、アンテナ素子13とアンテナ素子14の全長をλ/2とする。
【0106】
以上説明した通り、グラウンド導体11の一方側および反対側にそれぞれアンテナ素子13およびアンテナ素子14を配置し、それぞれ別個に設けられた給電点12、16から各アンテナ素子13、14に給電することで、グラウンド導体11の一方側で表面側電界が発生すると共にグラウンド導体11の反対側で裏面側電界が発生し、それら表面側電界および裏面側電界がグラウンド導体11の外縁11bで相互作用することで、グラウンド導体11の反対側に電界がない場合(単なるモノポールアンテナの場合)に比べ、指向性の打ち上がりを抑えることができる。
【0107】
また、アンテナ素子13、14は、互いに同じ長さであり、かつ、それぞれ給電点12、16から、グラウンド導体11に対して垂直かつ互いに逆方向に伸びている。このようになっていることで、表面側電界と裏面側電界が同位相および同強度となるので、より効果的に指向性の打ち上がりを低減することができ、また、グラウンド導体11と同一面方向の利得を向上することができる。
【0108】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0109】
(1)上記第1〜第5、第8実施形態では、アンテナ素子13、14の位置は、グラウンド導体11を対称面として対称的になっていた。すなわち、アンテナ素子13に最も近いグラウンド導体11上の位置と、アンテナ素子14に最も近いグラウンド導体11上の位置とは、一致していた。
【0110】
しかし、必ずしもこのようになっている必要はない。第1〜第5、第8実施形態のようになっていれば、水平面内のどの方向においても、指向性の打ち上がりを低減し、水平方向の利得を向上することができるが、水平面内の特定の方向においてのみ、指向性の打ち上がりを低減し、水平方向の利得を向上すればよい場合もある。
【0111】
このように、アンテナ素子13から見て所望の方向のみ利得を向上したい場合には、アンテナ素子13から見て当該所望の方向におけるグラウンド導体11の端部で表面電界(アンテナ素子13側の電界)と裏面電界(アンテナ素子14側の電界)の向きが同方向、すなわち、両者の電界の位相差Yが−90°+360°×n<X<90°+360°×n(ただしnは整数)となるよう、アンテナ素子13に最も近いグラウンド導体11上の位置Aと、アンテナ素子14に最も近いグラウンド導体11上の位置Bとを、ずらしてもよい。このためには、位置Aと位置Bが、当該所望の方向に沿ってずれており、そのずれ量Lは、−λ/4×n<L<λ/4×nであればよい。
【0112】
(2)また、上記第8実施形態では、給電点13、16のそれぞれが、同位相および同強度でアンテナ素子13、アンテナ素子14に給電するようになっている。しかし、給電の位相および強度のいずれか一方または両方について、給電点13、16間で異なるようにしてもよい。このようにすることで、水平面内の特定の方向(位相および強度のいずれか一方または両方に依存する方向)のみにおける指向性の内借り低減および水平面内の利得向上を実現することも可能である。
【0113】
(3)また、上記第1〜第5実施形態においては、グラウンド導体11に空けられた穴に換えて、グラウンド導体11に設けられた切り込みを採用してもよい。
【0114】
(4)また、上記第4実施形態においては、ボルト21とグラウンド導体11およびルーフとを絶縁するための部材53、54を用いる代わりに、中心に穴が空いた樹脂製のボルト21を採用し、そのボルト21の中心に金属棒を挿入し、この金属棒をアンテナ素子14の一部として用いるようになっていてもよい。
【0115】
(5)同様に、上記第5実施形態においては、ポール23とグラウンド導体11およびルーフとを絶縁するための部材53、54を用いる代わりに、中心に穴が空いた樹脂製のポール23を採用し、そのポール23の中心に金属棒を挿入し、この金属棒をアンテナ素子14の一部として用いるようになっていてもよい。
【0116】
(6)また、第2〜第5実施形態においては、アンテナ素子14の折れ曲がり角度は90°であったが、90°以外の折れ曲がりでも、グラウンド導体11に垂直な方向におけるアンテナ素子14のサイズを低減することができる。
【0117】
(7)また、上記各実施形態において、アンテナ素子13、14はグラウンド導体11に垂直に伸びているが、垂直以外の角度で伸びていてもよい。
【0118】
(8)また、第8実施形態においても、アンテナ素子14が、第2実施形態のような折れ曲がった形状を有するようになっていてもよい。その場合は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0119】
(9)また、アンテナ装置1は、ルーフ以外の車両の外殻(例えば、リヤトランクの上端)に取り付けられていても良い。
【0120】
(10)また、上記第6、第7実施形態では、位相制御器15はグラウンド導体11(またはルーフ51)の裏面(アンテナ素子13の反対側の面)のみに設けられていたが、裏面ではなく表面(アンテナ素子13と同じ側の面)に設けられていてもよいし、表面と裏面の両方に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 アンテナ装置
11 グラウンド導体
11a、11c 内縁
11b 外縁
11d 前端
12、16 給電点
13、14 アンテナ素子
15 位相制御器
21 ボルト
22 ナット
23 ポール
21、22 固定部材
23 位置決め部材
51 車両のルーフ
52 内張り部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウンド導体(11)と、
前記グラウンド導体(11)の一方側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第1のアンテナ素子(13)と、
前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第2のアンテナ素子(14)と、を備え、
前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)は、同じ給電点(12)から給電され、
前記グラウンド導体(11)は、前記給電点(12)の周囲に配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記グラウンド導体(11)は、穴を形成する内周縁(11a)を有し、
前記穴を通して前記給電点(12)から前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)に給電されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナ素子(13)および前記第2のアンテナ素子(14)は、同じ長さであり、かつ、前記給電点(12)から、前記グラウンド導体(11)に対して垂直かつ互いに逆方向に伸びていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2のアンテナ素子(14)は、前記給電点(12)から前記第1のアンテナ素子(13)に対して逆方向に距離Lだけ伸びた後、折れ曲がっていることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)は、前記車両の外殻を構成する導体に空けられた穴を通って前記車両の内部に伸び、前記車両の内部において折れ曲がっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)の少なくとも一部(21)は、前記アンテナ装置を前記車両の外殻に固定するための固定部材として用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、前記第2のアンテナ素子(14)の少なくとも一部(23)は、前記アンテナ装置を前記車両の外殻に対して位置決めするための位置決め部材として用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
穴が空いたグラウンド導体(11、51)と、
前記グラウンド導体(11、51)の一方側に、前記グラウンド導体(11、51)と非接続に配置されたアンテナ素子(13)と、
前記グラウンド導体(11)の近傍に配置される位相制御器(15)と、を備え、
前記グラウンド導体(11)内で前記アンテナ素子(13)に一番近い位置と、前記グラウンド導体(11)内で前記位相制御器(15)に一番近い位置と、の間に、前記グラウンド導体(11)の前記穴が位置しており、
前記アンテナ素子(13)に給電されたときに前記グラウンド導体(11)の前記一方側に発生する電界(以下、表面側電界という)が、前記穴によって前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側(以下、他方側)にも電界(以下、裏面側電界という)を発生させると共に、前記表面側電界の一部および前記裏面側電界の一部のうち一方または両方が前記位相制御器(15)を通過することで、前記グラウンド導体(11)の外縁で前記表面側電界および前記裏面側電界の位相差Xが−90°+360°×n<X<90°+360°×n(ただしnは整数)となっていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
当該アンテナ装置は、車両に取り付けられ、
前記グラウンド導体(11、51)は前記車両のルーフであり、
前記穴は、前記ルーフに設けられた天窓であることを特徴とする請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
グラウンド導体(11)と、
前記グラウンド導体(11)の一方側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第1のアンテナ素子(13)と、
前記グラウンド導体(11)の前記一方側とは反対側に、前記グラウンド導体(11)と非接続に配置された第2のアンテナ素子(14)と、を備え、
前記第1のアンテナ素子(13)は、前記グラウンド導体(11)から見て前記第1のアンテナ素子(13)側にある第1の給電点(12)から給電され、
前記第2のアンテナ素子(14)は、前記グラウンド導体(11)から見て前記第2のアンテナ素子(14)側にある第2の給電点(16)から給電されることを特徴とするアンテナ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−98763(P2013−98763A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240074(P2011−240074)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】