説明

アントラサイクリンのグルクロニドプロドラッグのエステル及び調製方法及び腫瘍選択的化学療法における使用

【課題】抗腫瘍剤として有用なアントラサイクリンプロドラッグ及び該アントラサイクリンプロドラッグの効率的な調製法を提供する。
【解決手段】プロドラッグ合成の最終工程(即ち、親薬物分子へのグルクロニドスペーサー部分のカップリング)において、糖ヒドロキシルの保護を必要としない方法、及び該方法を用いた水溶性を有するアントラサイクリングルクロニドプロドラッグのいくつかの新規エステル合成と、腫瘍選択的化学療法における該アントラサイクリングルクロニドプロドラッグの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規エステル、特にアントラサイクリンのグルクロニドプロドラッグのいくつかの新規水溶性エステル、それらの合成及び腫瘍選択的化学療法における使用に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、アントラサイクリン誘導体
【0003】
【化1】

【0004】
に関し、式中、R、R、R、n、p、x及びアルキルは、請求項1で規定した通りである。
【背景技術】
【0005】
驚くべきことに、これらのエステルは、調製プロセスのいずれの工程においても、糖ヒドロキシル基の保護を必要とせずに調製できることがここで見出された。
【0006】
当業者には通常、副反応を防ぐために糖ヒドロキシル基を合成工程の間保護することが必要であると考えられているため、これは全く予測されなかったことである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はまた、いくつかの特定のアントラサイクリンプロドラッグエステルの調製プロセスに関し、このプロセスは、アントラサイクリンを、保護されていない糖ヒドロキシル基及び活性化ベンジルヒドロキシル(benzylic hydroxyl)基を有するグルクロニドスペーサー部分にカップリングすることを含む。さらに、このスペーサー部分は単一の部分に限定されず、必要に応じて、当業者に公知の数種の部分の組み合わせからなってもよい。
【0008】
本発明者らは、プロドラッグが例えば鎖長の異なるモノ−メトキシ−ポリエチレングリコール基を有する場合、本発明のエステルの水溶性が「調整(tune)」され得ることをさらに見出した。これに関して、「調整(tuning)」とは、保護されていない糖部分のエステル部分に存在するポリエチレングリコール基の鎖長の適切な選択によって、水溶性が、低い水溶性から良好な水溶性まで変化し得ることを示す意味である。高い収率で化合物を提供する、このような「調整可能な(tunable)」エステルの非常に効率的な調製プロセスもまた、開示される。
【0009】
別の態様において、本発明はさらに、保護されていない糖ヒドロキシル基及び活性化ベンジルヒドロキシル基を有する上記グルクロニドスペーサー部分の調製に関する。
【0010】
別の態様において、本発明はさらに、保護されていない糖ヒドロキシル基及び活性化ベンジルヒドロキシル基を有する上記グルクロニドスペーサー部分にカップリングされた、以下に規定するアミノカンプトテシン(aminocampthotecin)プロドラッグエステルに関する。
【0011】
より具体的には、本発明は、式1:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
=H又はOCH
=H又はOH;
R=CH
CH=CH−CH−;又は
CH≡C−(CH−)を有するアントラサイクリンのグルクロニドプロドラッグのエステルの調製プロセスに関し、このプロセスは、それぞれ式11a11b又は11cを有する化合物:
【0014】
【化3】

【0015】
を得るための、保護されていない糖ヒドロキシル基を有する式10a10b又は10cの化合物:
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数である)の、p−ニトロフェニルクロロホルメートとの反応と、その後の、
を有するアントラサイクリンプロドラッグエステル(式中、Rは、CH、アリル又は(CH−C≡CHである)を得るための、式21のアントラサイクリン:
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、R及びRは上記規定の通りである)との反応とを含む。R=(CHC≡CHであるプロドラッグは、所望に応じて、対応するモノメトキシポリエチレングリコールトリアジルエステル(その水溶性が調整され得る)を得るための、メトキシポリエチレングリコールアジドとの反応による、特定の水溶性エステルの調製のために使用され得る。
【0020】
本発明のプロドラッグの調製における第1の重要な工程は、式10a又は10bの化合物の調製であり、これは、それぞれ式13a又は13bの化合物:
【0021】
【化6】

【0022】
を得るための、式のイソシアネート:
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリル保護基を示す)
の、それぞれ式9a又は9b全く保護されていないグルクロン酸エステル:
【0025】
【化8】

【0026】
との反応と、その後の、
それぞれ式10a又は10b
【0027】
【化9】

【0028】
の化合物を得るための、シリル保護基の脱保護と、による。
【0029】
本発明のプロドラッグの調製における第2の重要な工程は、式10c
【0030】
【化10】

【0031】
を有する化合物の調製であり、これは、式13a又は13bの化合物:
【0032】
【化11】

【0033】
の、式CH≡C−(CH−OHのアルコール(式中、xは、好ましくは1〜5の整数である)との、塩基の存在下での反応と、その後の、
10cの化合物を得るための、シリル保護基の酸性除去と、による。
【0034】
さらに、上記のような式(式中、Rは式:
【0035】
【化12】

【0036】
(式中、x、n及びアルキルは請求項1で規定した通りである)を有する残基である)を有するアントラサイクリン誘導体の調製プロセスが提供され、これは、式の対応するモノ−アルコキシ−ポリエチレングリコールトリアゾールエステルを得るための、式の化合物(式中、RはCH≡C−(CH−である)の、銅触媒の存在下でのN−(CHCHO)−アルキルとの反応による。
【0037】
アントラサイクリンの1例は、以下の式:
【0038】
【化13】

【0039】
(式中、R=OMe、R=OH)を有するドキソルビシンであり、以下、DOXと示す。以下で議論するDOXのいくつかの誘導体は、以下の通りである:
【0040】
【化14】

【0041】
DOX−GA3 (R=OMe、R=OH、R=Na、H)
DOX−mGA3 (R=OMe、R=OH、R=Me)
DOX−alGA3 (R=OMe、R=OH、R=アリル)
DOX−proparGA3(R=OMe、R=OH、R=プロパルギル)
DOX−mPEGn−GA3(R=OMe、R=OH、Rは、
【0042】
【化15】

【0043】
(式中、x=1;n=4、7、12;アルキル=OMe)である)
【0044】
アントラサイクリンは、プロドラッグの開発に広く使用されている抗癌剤のクラスに相当する(総説:F.Kratzら、Curr.Med.Chem.2006,13,477−523)。
【0045】
アントラサイクリンのグルクロニドプロドラッグ(例えば、DOX−GA3(式1))は、細胞外ヒトβ−グルクロニダーゼによって、腫瘍において選択的に活性化されて、親薬物ドキソルビシンよりも良好な治療係数を生じ得る(総説:M.de Graafら、Curr Pharm Des 2002,8,1391−1403)。10%の体重減少に基づく腫瘍保持マウスにおけるDOX−GA3の最大耐用量(MTD)は、ドキソルビシンの8mg/kgと比較して、約500mg/kg(静脈内)であった(P.H.Houbaら、Br J Cancer 2000,84,1−8)。腫瘍保持マウスへのMTDの半分の投与は、血漿中のドキソルビン(doxorubine)濃度の有意な低下を生じたが、一方で腫瘍組織中の濃度は、ドキソルビンの投与後よりも高かった(P.H.Houbaら、Br J Cancer 2000,84,1−8)。DOX−GA3などの親水性プロドラッグの不利な点は、腎臓による迅速な排泄である。腫瘍保持ヌードマウスにおける初期の実験では、DOX−GA3は、250mg/kgのこのプロドラッグの投与後4時間以内に血漿から完全に消失することが示された。これは、非常に高い用量が必要であることを意味するので、これは癌治療における使用に関する主要な問題を提起している(P.H.Houbaら、Br J Cancer 2000,84,1−8)。最近、DOX−GA3のメチルエステル(以下DOX−mGA3で示す)が検討された。DOX−GA3のメチルエステルはより脂溶性が高く、従って酵素プロドラッグ治療においてよりよく使用されるであろうとの仮説が立てられた。他のメチル化グルクロニドプロドラッグのメチルエステルは、カルボキシルエステラーゼによって加水分解されることが報告されている。DOX−mGA3投与後のDOX−GA3の徐放がこの方法で生じるであろうと予測された。実際、DOX−mGA3は酵素的にDOX−GA3に変換されるが、ヒト血漿中の2.5時間に対して、マウス血漿中約05分の半減期であった。マウス血漿におけるDOX−GA3へのその速い変換にもかかわらず、DOX−mGA3は、マウスにおいて改善された薬物動態を示した(M.de Graafら、Biochem Pharmacol 2004,68,2273−2281)。しかし、水中での溶解性が非常に低いことは依然不利なままである。つまり、DOX−mGA3は、ある種の過敏感反応を引き起こすと考えられているCremophore ELを含むビヒクル中で投与しなければならない(A.Sharmaら、Cancer Letters 1996,107,265−272)。
【0046】
上記の不利な点は、アントラサイクリンの特定のグループのグルクロニドプロドラッグによって回避できることが、今回見出された。例えば、本発明者らは、例えばモノ−メトキシ−ポリエチレングリコール基とコンジュゲート化され得るDOX−GA3のプロパルギルエステルを調製して、水溶性DOX−GA3エステルを得るための新規経路を見出した。異なる鎖長を有するモノ−メトキシ−ポリエチレングリコール基を導入することによって、溶解性が調整できる。さらに、これらのエステルは、酵素によってより緩徐に加水分解される。
【0047】
本発明は、活性アミノ基を有する薬物の例としてアントラサイクリン ドキソルビシン(DOX)によって以後説明するが、本発明はアントラサイクリンに限定されず、以下に説明するように、活性アミノ基を有する他の薬物(例えば、アミノカンプトテシンなど)、或いはより一般的に、保護されていない糖ヒドロキシル基を有するグルクロニドスペーサー部分のベンジルヒドロキシル基にカップリングされ得る化合物にも、適用可能である。
【0048】
従って、対応するアミノカンプトテシンプロドラッグは、親薬物分子にカップリングされた同じ脱離基に起因して、アントラサイクリンプロドラッグに匹敵する溶解性及び加水分解プロフィールを有する。
【0049】
単純化のために、以下の反応スキームの説明におけるpの値は、ほとんどの化合物で1に等しいが、本発明がp=1の化合物に限定されるべきでないことは明らかであろう。
【0050】
実験の節
先験的に(A priory)。アントラサイクリン−GA3エステルは、スキーム1に概説したDOX−mGA3の調製と同様に調製され得るが、ここでは、適切なエステル基を有するグルクロン酸エステル前駆体を使用する(M.de Graafら、Biochem Pharmacol 2004,68,2273−2281)。しかし、最後の工程においてアセテート基を選択的に除去することが非常に困難であることが証明された。これは、メタノール中の塩基により最も良好に達成されるが、メトキシ基によるグルクロン酸エステル基の交換もまた引き起こす。エステル基に対応するアルコール中の塩基の使用を含む種々の他の方法は、収率が低く、副反応が多かった。
【0051】
【化16】

【0052】
しかし、本発明者らは、塩基の存在下でDOX−mGA3を大過剰のアルコールで処理することによって、種々のアルコールを用いてDOX−mGA3からのトランスエステル化が可能であることを見出した(スキーム2)。変換及びシリカを用いた中和の後、過剰のアルコールは、真空内での蒸発又はエーテルでの抽出によって除去する必要がある。残念ながら、出発メチルエステルを含まない単離されたエステルを得ることは困難なようであった。
【0053】
【化17】

【0054】
この方法は、モノ−メトキシ−ポリエチレングリコールなどのより大きいアルコールを使用すると、さらに効率が低くなる。収率は非常に低く、この問題を全て回避できるポリエチレングリコールエステル基の導入のための新規且つ一般的な方法を本発明者らが探索することは非常に困難であると、精製により証明された。次いで、本発明者らは、ポリエチレングリコール基が、プロパルギルエステルについてスキーム3に概説した通り、プロパルギル又はより長い鎖の末端アルキンエステルで開始するクリック反応(この手順は、H.C.Kolbら、Drugs Discovery Today 2003,8,1128−1137;J.A.Opsteenら、Chem.Comm.2005,57−59から自体公知である)を介して導入できることを見出した。
【0055】
【化18】

【0056】
実際、プロパルギルエステル1(R=プロパルギル)を銅触媒の存在下でモノ−メトキシ−ポリエチレングリコールアジドで処理することによって、対応するモノ−メトキシ−ポリエチレングリコールトリアジルエステル1(x=1)が、中程度〜良好な収率で得られた。
【0057】
これらの結果は、アントラサイクリンアルキニルエステル(Rは(CHC≡CHである)のより効率的な合成について研究する刺激を本発明者らに与えた。なぜなら、スキーム2に記載した交換反応では、40%を上回る収率を得ることは決してできず、また、メチルエステル1を含まない純粋な生成物を生じなかったからである。
【0058】
合成の改善を達成するために、本発明者らは、この交換反応の出発化合物としてメチルエステルの代わりにアリルエステルを選択した。通常、アリルオキシ基は、メトキシ基よりも良い脱離基である。さらに、ここで出発物質として使用したグルクロン酸アリルは、グルクロン酸メチルよりもより簡便に良好な収率で入手可能である。
【0059】
最後に、最後の工程における糖保護基(通常はアセテート基)の除去がもはや必要でない合成を見出す必要があった。
【0060】
驚くべきことに、本発明者らは、スキーム4に記載したように、DOX−GA3アリルエステル又はDOX−mGA3エステルの合成において糖ヒドロキシル基の保護が実際必要ないことを見出した。
【0061】
【化19】

【0062】
本発明者らは、驚くべきことに、アノマーヒドロキシル基、及びより低い程度までならベンジルヒドロキシル基も、二次糖ヒドロキシル基よりも十分に反応性が高いようであり、その結果、糖ヒドロキシル基の保護が回避できることを見出した。しかし、最も重要なことは、グルクロニドスペーサー部分の最終的な変換(例えば、11への変換)において、糖ヒドロキシルの保護はもはや必要ないという点である。
【0063】
残念ながら、グルクロン酸プロパルギルは、グルクロン酸から、グルクロン酸アリルと同じ方法では調製できず(A.Abdessamama Elら、J.Org.Chem.2006,71,9628−36)、d(+)−グルクロン−3,6−ラクトンからグルクロン酸メチルと同じ方法で調製することもできない(Bollenbackら;J.Am.Chem.Soc.1955,77,3310−15)。
【0064】
本発明者らは、スキーム5及び6に概説したように、メチルエステル5a及び13a又はアリルエステル5b及び13bからの、プロパルギルアルコールを用いたトランスエステル化によって、この問題を解決した。
【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
スキーム5の反応シーケンスは、スキーム6のシーケンスよりも工程が多いが、化合物13a中の水の存在におそらくは起因して、スキーム5の後の全体的な収率はかなり高かった。これは、塩基性トランスエステル化の間のエステル基の部分的加水分解を導く。従って、13aからのより効率的な水の除去は、スキーム6による収率を増加させ得る。
【0068】
化合物11cは、メチル誘導体(11a)又はアリル誘導体(11b)についてスキーム4で記載したのと同じ方法で、良好な収率でアントラサイクリンとカップリングされた。
【0069】
本特許に記載した知見は、この分野における種々の関連した反応に強力な影響を与える。今日まで、一般的な手順では、TBDMS基が選択的に除去され、ベンジルOHがカップリング反応のために活性化される前に、13などの化合物が糖部分で保護される必要があった。アノマー糖ヒドロキシルとのカップリングの関連する多数の場合において、他の糖ヒドロキシルの保護は、もはや必要でない可能性がある。本発明者らは、二重スペーサーを有するプロドラッグの合成についても、二重スペーサー部分を有するプロドラッグの合成についてスキーム8で示したように、二重スペーサー−糖部分をアントラサイクリンとカップリングさせる前に糖ヒドロキシルの保護が必要ないこともまた見出した。
【0070】
二重スペーサー−糖部分15a、b、cの合成をスキーム7に記載する。
【0071】
【化22】

【0072】
【化23】

【0073】
スキーム3に示したクリックケミストリーによる本発明者らの結果は、分岐ポリエチレングリコールのアジド若しくは実にアジド官能基を含むデンドリマー(例えば、E.Fernandez−Megiaら、Biomacromolecules 2006,7,3104−3111を参照のこと)を用いたクリック反応において(Rは(CHC≡CHである)にも、又は対応するトシレートから容易に入手可能であり得る(Jian−Sen Liら、European J.Org.Chem.2000,485−490)化合物17及び18にも、適用できる。
【0074】
【化24】

【0075】
ベンジルスペーサーに連結されたグルクロン酸エステル(例えば、化合物11及び16)はまた、アントラサイクリン以外のアミノ基含有薬物(例えば、9−アミノカンプトテシン(19))とカップリングされて、それぞれ化合物20a及び20bを生じ得る。
【0076】
【化25】

【0077】
緩衝液中及び血漿中でのプロドラッグエステルの加水分解(スキーム9)。
本特許に記載したエステルは、実際、β−グルクロニダーゼにより活性化されるグルクロニドプロドラッグの前駆体である。より高い(かつ調整可能な)その脂溶性に起因して、これらは、エステルDOX−mGA3について既に実証されたように、腫瘍組織における対応するグルクロニドプロドラッグのより良好な分布を引き起こし得る(M.de Graafら、Biochem Pharmacol 2004,68,2273−2281)。
【0078】
プロドラッグエステル(式中、Rは
【0079】
【化26】

【0080】
である)は、のエステル基のよりよい脱離能に起因して、DOX−mGA3などのアルキルエステルよりも速く加水分解されると予測できる。これは、トリアゾール官能基の電子求引特性によって引き起こされる。実際、pH=7.33のリン酸塩緩衝液中で、DOX−mGA3が完全に加水分解されるには、室温で24時間を要した。それにもかかわらず、のDOX誘導体(DOX−mPEG7GA3及びDOX−mPEG12GA3(式中、n=7又は12、x=1))は、これらの状況下で4時間以内に既に加水分解された。
【0081】
トリアゾール基の電子求引能の影響は、トリアゾール基を保有するアルキルテイルを伸長させることにより低減され、その結果、この基の電子求引効果は、x>1のときに弱まる。このように、本発明のエステルの水溶性は、所望により、プロドラッグの要求される(即ち所望される)溶解性プロフィールに基づいて、改変(調整)され得る。
【0082】
これらのトリアゾールは、対応するエステル(それぞれ、Rは3−ブチニル及び4−ペンチニルである)から調製できる。
【0083】
実験により、エステラーゼの添加は、DOX−トリアゾールエステルの加水分解に対して弱い影響だけしか与えなかったことが示された。
【0084】
【化27】

【0085】
1の水中での溶解性
DOX−mGA3は水中で完全に不溶性であるが、対応するDOX−トリアゾールエステルは、nが増加するにつれて増分で十分溶解するようになる。DOX−トリアゾールエステル(DOX−mPEG4GA3)について、約0.6mgのプロドラッグが1mlの水中に溶解するが、DOX−mPEG7GA3については、既に2.5mgが1mlの水中に溶解し、DOX−mPEG12GA3については、1mlの水中に15mgより多くが溶解した。
【0086】
OVCAR−3細胞におけるin vitro抗増殖効果
プロドラッグの毒性を、OVCAR−3細胞で試験した。細胞を、種々のプロドラッグDOX−alGA3、DOX−mPEG4−GA3、DOX−mPEG7−GA3と共に、また比較のためにドキソルビシンと共に、ウシβ−グルクロニダーゼ(GUS)の存在下又は非存在下で、ウシ胎仔血清(FBS)中で3日間インキュベートした。プロドラッグについて使用した濃度は、0.001μM〜50μMの範囲であった。
【0087】
IC50値を以下の表に示す:
【0088】
【表1】

【0089】
この表の結果は、GUSなしのとき、このプロドラッグがドキソルビシンと比較して150〜300分の1の毒性であったことを実証している。GUSの存在下では、プロドラッグDOX−alGA3及びDOX−mPEG4−GA3はドキソルビシンに匹敵する毒性を有し、DOX−mPEG7−GA3は僅かに毒性が低かった。
【実施例】
【0090】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。
【0091】
一般的言及:H−NMRは、Bruker AC−300で記録した。NMRスペクトルは、示されたとおりの溶媒を使用して、298Kで記録した。化学シフトは、テトラメチルシランに対するppm低磁場で記録した。結合定数(J)はヘルツ(Hz)で示す。質量スペクトルは、aVG7070Eダブルフォーカス質量分析計で記録した。
【0092】
アントラサイクリンプロドラッグのNMRピークの帰属のために、以下の図中の番号付けを使用している。
【0093】
【化28】

【0094】
実施例1.
プロパルギルアルコールを用いたDOX−mGA3の、DOX−propGA3 (R=Me、R=OH、R=プロパルギル)への変換。
【0095】
フレーム乾燥した反応容器中、5mlの乾燥THF及び30mlのプロパルギルアルコール中にDOX−mGA3(100mg、0.108mmol)を溶解し、減圧下で炭酸カリウムから蒸留した。この混合物に、12mgのNa及び5mlのプロパルギルアルコールから調製した溶液1.5mlを添加した。この混合物を1.5時間室温で維持し、次いで2gのシリカを添加することによって中和した。室温で真空内での溶媒除去後、反応化合物が吸着した残留シリカをシリカカラムに添加する。クロマトグラフィー(溶離液:10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)。収率:70mg(58%)のDOX−propGA3 (R=プロパルギル)。NMRにより、得られたプロパルギルエステルが、約15%の出発化合物DOX−mGA3をなお含有していることが示された。
(M+Na)calc=973.24907
(M+Na)fnd=973.2490
【0096】
同じ方法で、R=CHCHOMeのDOX−GA3エステルを調製した。
収率:53%(約15%の出発化合物を含む)
(M+Na)cal=993.27529
(M+Na)fnd=993.28255
また、R=CHCHOHのDOX−GA3エステルを調製した。
塩基としてLiO−C−C−OHを用いる。
収率:50%(約10%の出発化合物を含む)
(M+Na)cal=979.25964
(M+Na)fnd=979.26535
【0097】
実施例2.
メチル 3,4,5,6−テトラヒドロキシ−テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート9aからの、メチル 6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート13aの合成(スキーム6)。
フレーム乾燥した反応容器中、最初に4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)フェニルイソシアネートを、40mlの乾燥トルエン中に2g(7.52mmol)のHOOC−Ph−CHOTBDMSを溶解し、0.9g(8.9mmol)のEtN及び2.45g(8.9mmol)の(DPPA)ジフェニルホスホリルアジドを添加することによって調製した。この混合物を一晩アルゴン雰囲気下で維持し、その後油浴中85度で2.5時間加熱した。
反応混合物を室温まで冷却した後、15mlのアセトニトリル中に溶解した1.32gの9a(4.8mmol)を添加し、この反応混合物を一晩室温に置いた。真空内での溶媒の蒸発(35度/0.8mm)後、残渣をカラムクロマトグラフィー(10%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:0.85g(38%)の13a
質量:494(M+Na);965(2M+Na)
NMR:CDOD;δ0.09(s,6H,Si−Me),0.93(s,9H,Si−tBut),3.38−3.60(m,3H,Glu 2,3,4−H),3.76(s,3H,COOCH),3.96(d,J=9.2Hz,Glu 5−H),4.68(s,2H,ArCH),4.83(s,Glu 2,3,4−OH),5.48(d,1H,J=5.9Hz,Glu 1−H),7.24(d,2H,J=8.2Hz,Ar),7.40(d,2H,J=8.2Hz,Ar)
【0098】
同じ方法で、アリル 6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート13bを、アリル 3,4,5,6−テトラヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート9bから調製した。
フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル/メタノール=70/30/2)による精製。
収率:40%の13b
(M+Na)cal=520.19788
(M+Na)fnd=520.19780
NMR:CD3OD;δ0.10(s,6H,Si−Me),0.94(s,9H,Si−tBut),3.40−3.62(m,3H,Glu 2,3,4−H),4.00(d,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.66−4.70(m,4H,OCH−C=C及びArCH),4.8(s,Glu 2,3,4−OH),5.20−5.25(m,1H,アリル),5.33−5.40(m,1H,アリル),5.50(d,1H,J=7.7Hz,Glu−1H),5.89−6.02(m,1H,アリル),7.25(d,2H,J=2.9Hz,Ar),7.41(d,2H,J=2.9Hz,Ar)
【0099】
実施例3.
アリル 3,4,5,6−テトラヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート9bからの、アリル 3,4,5−トリヒドロキシ−6−([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート10bの合成(スキーム4)。
2g(7.52mmol)のHOOC−Ph−CH−OTBDMSから実施例2に記載したように調製した4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)フェニルイソシアネートに、15mlのアセトニトリル中に溶解した1.32g(5.65mmol)の9bを添加した。この混合物を一晩撹拌し、次いで0.5NのKHSO溶液で酸性化した。真空内での溶媒除去後、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(3%メタノール/酢酸エチル、その後5%メタノール/酢酸エチル)で精製した。
収率:0.6g(31%)の10b
(M+Na)cal=406.11140
(M+Na)fnd=406.11018
NMR:CDOD;δ3.40−3.47(m,3H,Glu 2,3,4−H),3.99(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.54(s,2H,2H,Ar−CH),4.67−4.70(m,2H,−OCH−C=C),4.84(s,Glu 2,3,4−OH,ArC−OH),5.20−5.25(m,1H,アリル),5.33−5.44(m,1H,アリル),5.49(d,1H,J=7.6Hz,Glu 1−H),5.91−6.00(m,1H,アリル),7.27(d,2H,J=8.7Hz,Ar),7.42(d,2H,J=8.4,Ar)
【0100】
実施例4.
アリル 3,4,5,6−テトラヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート10bからの、DOX−alGA3 (R=OMe、R=OH、R=アリル)の合成(スキーム4)。
フレーム乾燥した反応容器中で、5mlのアセトニトリル中に100mg(0.26mmol)の10bを溶解した。この溶液に、56mg(0.28mmol)の4−ニトロフェニルクロロホルメート及び25mg(0.32mmol)のピリジンを添加した。室温で30分後、再度28mg(0.14mmol)の4−ニトロフェニル−クロロホルメート及び13mg(0.16mmol)のピリジンを添加した。室温で1時間後、TLCにより、出発化合物がほぼ消失したことが示された。この反応混合物を真空内で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(8%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:58mgのアリル 6−([4−([(4−クロロフェノキシ)カルボニル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート11b(41%)。
(M+Na)cal=571.11761
(M+Na)fnd=571.11728
NMR:CDOD;δ3.40−3.61(m,3H,Glu 2,3,4−H),3.99(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.67−4.70(m,2H,−OCH−C=C),4.84(s,4H,Glu 2,3,4−OH,ArC−OH),5.20−5.25(m,3H,アリル及びArCH),5.33−5.40(m,1H,アリル),5.52(d,1H,J=7.6Hz,Glu 1−H),5.89−6.02(m,1H,アリル),7.38−7.52(m,6H,Ar),8.30(m,2H,Ar−NO
【0101】
フレーム乾燥した反応容器中で、3mlの乾燥DMF中に55mg(0.1mmol)の11bを溶解した。この溶液に、58mg(0.1mmol)のDOX.HCl及び10.1mg(0.1mmol)のトリエチルアミンを添加した。この反応混合物をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌し、その後溶媒を真空内で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:72mg(75%)のDOX−alGA3 (R=OMe、R=OH、R=アリル)。
(M+Na)cal=975.26472
(M+Na)fnd=975.26785
NMR:(CDSO;δ1.12(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.88(m,1H,2’ax−H),2.08−2.23(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.90−3.04(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.15−3.50(m,4H,4’−H,Glu 2,3,4−H),3.64−3.78(m,1H,3’−H),3.91(d,1H,J=9.2Hz,Glu 5−H),3.99(s,3H,4−OMe),4.15(q,1H,J=6.3Hz,5’−H),4.57(d,2H,J=6.1Hz,14−CH),4.61(d,2H,J=5.5Hz,−OCH−C=C),4.68(d,1H,J=5.3Hz,4’−OH),4.83(t,1H,J=5.8Hz,14−OH),4.88(s,2H,ArCH),4.94(bt,1H,7−H),5.18−5.45(m,8H,1’−H,Glu1−H,2xアリル,9−OH,Glu 2,3,4−OH),5.86−5.92(m,1H,アリル),6.83(d,1H,J=7.9Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.42(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90−7.92(m,2H,1,2−H),9.97(s,1H,Ar N−H),13.25(bs,1H,11−OH),14.09(bs,1H,6−OH)
【0102】
実施例5.
アリル 3,4,5,6−テトラヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート9bからの、プロパルギルグルクロニドスペーサー部分であるアリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート5bの合成(スキーム5)。
25mlのピリジン中に2g(8.55mmol)の9bを溶解し、この溶液に、25mlの無水酢酸を添加した。この混合物を冷蔵庫に一晩置き、次いで30℃/0.8mmで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=7/3)で精製した。
収率:3g(87%)のアリル 3,4,5,6−テトラ(アセチルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート12b
【0103】
α異性体とβ異性体との混合物、β異性体のNMRは文献と同一(M.Tosinら、J.Org.Chem.2005,70,4096−4106)。
NMR:CDCl α−異性体;δ4.44(d,1H,J=9.2Hz,Glu 1−H),6.40(d,1H,J=1.2Hz,Glu 1−H)
【0104】
乾燥DMF中に3g(7.46mmol)の12bを溶解し、この溶液に0.7gの炭酸アンモニウムを添加した。室温で40時間撹拌した後、この混合物を20mlの0.5N KHSO溶液で酸性化し、20mlの水を添加した。この混合物を30mlのジクロロメタンで3回抽出し、引き続いてそのジクロロメタン層を30mlのKHSO溶液で3回洗浄し、その後30mlのブラインで2回洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の蒸発後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=3/2)で精製した。
収率:1.56g(58%)のアリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート4b
(M+Na)cal=383.09542
(M+Na)fnd=383.09448
NMR:CDCl;δ2.01(s,3H,OAc),2.03(s,3H,OAc),2.08(s,3H,OAc),3.98(bs,1H,1−OH),4.55−4.69(m,3H,Glu 5−H,−OCH−C=C),4.91(dd,1H,J=10.0Hz,3.6Hz,Glu 2−H),5.16−5.39(m,3H,Glu 4−H,アリル),5.54−5.62(m,2H,Glu 1,3−H),5.82−5.96(m,1H,アリル)
【0105】
4.65g(17.5mmol)のHOOC−Ph−CH−OTBDMSから実施例2に記載したように調製した4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)フェニルイソシアネートに、4.72g(31.1mmol)の4bを添加した。18時間の撹拌後、この混合物を300mlのジエチルエーテルで希釈し、60mlの0.5N KHSOで3回洗浄し、その後60mlのNaHCO飽和溶液(3回)及びブライン(2回)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで真空内で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=5/2)で精製した。
収率:6.29g(77%)の5b
(M+Na)cal=646.22957
(M+Na)fnd=646.22639
NMR:CDCl;δ0.08(s,6H,Si−Me),0.93(s,9H,Si−tBut),2.02(s,3H,OAc),2.04(s,3H,OAc),2.06(s,3H,OAc),4.22(d,1H,J=9.7Hz,Glu 5−H),4.53−4.67(m,2H,−OCH−C=C),4.70(s,2H,ArCH),5.17−5.36(m,5H,Glu 2,3,4−H,アリル),5.80(d,1H,J=8.0Hz,Glu 1−H),5.81−5.94(m,1H,アリル),6.83(bs,1H,NH),7.25−7.37(m,4H,Ar)
【0106】
実施例6.
アリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート5bからの、プロパルギルグルクロニドスペーサー部分である2−プロピニル 3,4,5−トリヒドロキシ−6−([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート10cの合成。
フレーム乾燥した容器中の乾燥プロパルギルアルコール25mlに、20mg(0.087mmol)のナトリウムを添加した。このアルコラート溶液に、0.5g(0.8mmol)の5bを添加し、この混合物を1.5時間撹拌した後、8mlの水中0.16g(1.2mmol)のKHSOで酸性化した。35℃/0.8mmでの溶媒の蒸発後、残渣をカラムクロマトグラフィー(6%メタノール/ジクロロメタン、その後12%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:156mg(51%)の10c
(M+Na)calc=404.09575
(M+Na)fnd=404.09449
NMR:CDOD;δ2.94(t,J=2.5Hz,−C≡CH),3.40−3.61(m,3H,Glu 2,3,4−H),4.01(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.54(s,2H,ArCH),4.78(d,1H,J=2.6Hz,−OCH−C≡C),4.79(d,1H,J=2.3Hz,−OCH−C≡C),4.85(s,Glu 2,3,4−OH,Ar−OH),5.51(d,1H,J=7.9Hz,Glu−1H),7.29(d,2H,J=8.9Hz,Ar),7.42(d,2H,J=8.5Hz,Ar)
【0107】
実施例7.
2−プロピニル 3,4,5−トリヒドロキシ−6−([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート10cからの、DOX−propGA3 (R=OMe、R=OH、R=プロパルギル)の合成。
化合物10cを、アセトニトリル/トルエン中に繰り返し溶解し、溶媒を真空内で除去することによって乾燥させた。5mlの乾燥アセトニトリル中に溶解した100mg(0.26mmol)の乾燥10cに、56mg(0.28mmol)の4−ニトロフェニルクロロホルメート及び25mg(0.32mmol)のピリジンを添加した。室温で30分間撹拌した後、再度28mg(0.14mmol)の4−ニトロフェニルクロロホルメート及び13mg(0.16mmol)のピリジンを添加した。撹拌を室温で1時間続けた後、この混合物を真空内で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(8%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:74mg(52%)の2−プロピニル 6−([4−([(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート11c
cal=569.10196
fnd=569.10173
NMR:CDOD;δ2.95(t,J=2.5Hz,−C≡CH),3.40−3.61(m,3H,Glu 2,3,4−H),4.01(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.54(s,2H,ArCH),4.78(d,1H,J=2.6Hz,−OCH−C≡C),4.79(d,1H,J=2.6Hz,−OCH−C≡C),4.84(s,Glu 2,3,4−OH,Ar−OH),5.25(s,2H,ArCH),5.52(d,1H,J=7.9Hz,Glu−1H),7.39−7.52(m,6H,Ar),8.27−8.33(m,2H,Ar−NO
【0108】
DOX−proparGA3 (R=OMe、R=OH、R=プロパルギル):
5mlの乾燥DMF中70mg(0.13mmol)の11cに、74mg(0.13mmol)のDOX.HCl及び12.9mg(0.13mmol)のトリエチルアミンを添加した。この混合物をアルゴン雰囲気下室温で一晩撹拌し、次いで真空内で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:96mg(79%)のDOX−proparGA3 (R=OMe、R=OH、R=プロパルギル)。
(M+Na)cal=973.24907
(M+Na)fnd=973.24885
NMR:(CDSO;δ1.11(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.90(m,1H,2’ax−H),2.05−2.26(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.90−3.04(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.15−3.50(m,4H,4’−H,Glu 2,3,4−H),3.57(t,1H,J=2.6Hz,−C≡CH),3.64−3.78(m,1H,3’−H),3.94(d,1H,J=9.6Hz,Glu 5−H),3.99(s,3H,4−OMe),4.15(q,1H,J=6.3Hz,5’−H),4.57(d,2H,J=6.1Hz,14−CH),4.68(d,1H,J=5.3Hz,4’−OH),4.75(t,2H,J=2.6Hz,−OCH−C≡C,4.83(t,1H,J=5.8Hz,14−OH),4.88(s,2H,ArCH),4.94(bt,1H,7−H),5.20(d,J=2.9Hz,1’−H),5.32(d,J=4.8Hz,Glu−OH),5.40−5.47(m,4H,Glu1−H,9−OH,2xGlu OH),6.83(d,1H,J=7.9Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.42(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90−7.92(m,2H,1,2−H),9.97(s,1H,Ar N−H),13.25(bs,1H,11−OH),14.09(bs,1H,6−OH)
【0109】
同じ方法で、DAU−proparGA3 (R=OMe、R=H、R=プロパルギル)を、11c及びDAU.HClから調製した。
溶離液(10%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:74%のDAU−proparGA3 (R=OMe、R=H、R=プロパルギル)。
(M+Na)cal=957.25416
(M+Na)fnd=957.25342
NMR:(CDSO;δ1.12(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.90(m,1H,2’ax−H),2.05−2.26(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.26(s,3H,13−CH),2.89−3.02(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.15−3.50(m,4H,4’−H,Glu 2,3,4−H),3.57(t,1H,J=2.6Hz,−C≡CH),3.64−3.78(m,1H,3’−H),3.94(d,1H,J=9.6Hz,Glu 5−H),3.99(s,3H,4−OMe),4.15(bq,1H,J=6.3Hz,5’−H),4.68(d,1H,J=5.3Hz,4’−OH),4.75(t,2H,J=2.6Hz,−OCH−C≡C),4.88(s,2H,ArCH),4.94(bt,1H,J=4.8Hz,7−H),5.21(d,J=2.5Hz,1’−H),5.32(d,J=4.8Hz,Glu−OH),5.39−5.47(m,3H,Glu 1−H,2xGlu−OH),5.53(s,1H,9−OH),6.83(d,1H,J=7.7Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.42(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90−7.92(m,2H,1,2−H),9.97(s,1H,Ar N−H),13.29(s,1H,11−OH),14.03(s,1H,6−OH)
【0110】
実施例8.
プロパルギルエステル(R=OMe、R=OH、R=プロパルギル)の、対応するトリアゾールエステル(R=OMe、R=OH、n=4及び7、x=1)への変換(スキーム3)。
【0111】
Me(OCHCHOHのMe(OCHCHへの変換
メトキシポリエチレングリコールは純粋化合物としては手に入らず、通常はn+(1−3)誘導体及びn−(1−3)誘導体の混合が伴う。
従って、本発明者らは、n=7について市販の化合物を蒸留し、90%より多くの主要化合物を含むn=4及びn=7の画分を単離した。n=12の化合物を市販混合物として使用した。
【0112】
一般手順:2mlのピリジン中に溶解した8mmolの乾燥Me(OCHCHOHに、3.8g(20mmol)の塩化トシルを添加した。この混合物を一晩撹拌し、その後氷中に注いだ。全体をジクロロメタンで抽出し、このジクロロメタン溶液を6N HCl及び水で2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、ジクロロメタンを蒸発させ、残渣をさらに精製することなく使用した。この方法で、n=4、7及び12のMe(OCHCHを調製した。
【0113】
2.5mlのTHF/水(4/1)中に溶解した70mg(0.074mmol)のDOX−proparGA3に、70mg(4eq)のMe(OCHCH、3mg(25mol%)のCuSO及び7.3mg(50mol%)のアスコルビン酸ナトリウムを添加した。アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した後、この混合物を35度/0.8mmで濃縮し、残渣をジエチルエーテルで数回洗浄して、過剰のアジドを除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(溶離液:10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)で精製した。
収率:65mg(73%)のトリアゾールエステル(R=OMe、R=OH、n=4、x=1)
(M+Na)calc=1206.38663
(M+Na)fnd=1206.38008
NMR:(CDSO;δ1.12(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.88(m,1H,2’ax−H),2.08−2.23(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.90−3.04(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.17−3.52(m,18H,4’−H,Glu 2,3,4−H,(O−C−C)),3.31(s,3H,OCH),3.64−3.78(m,1H,3’−H),3.79(t,2H,J=5.1Hz,CH トリアジル),3.89(d,1H,J=9.1Hz,Glu 5−H),3.99(s,3H,4−OMe),4.15(q,1H,J=5.9Hz,5’−H),4.51(t,2H,J=5.4Hz,COOCH),4.57(d,2H,J=5.9Hz,14−CH),4.68(d,1H,J=5.8Hz,4’−OH),4.83(t,1H,J=5.9Hz,14−OH),4.87(s,2H,ArCH),4.93−4.98(m,1H,7−H),5.17−5.24(m,2H,1’−H,Glu−OH),5.31(d,1H,J=4.8Hz,Glu−OH),5.37−5.48(m,3H,Glu1−H,9−OH,Glu−OH),6.82(d,1H,J=8.0Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.41(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.89−7.95(m,2H,1,2−H),8.12(s,1H,トリアジル),9.96(s,1H,Ar N−H),13.28(bs,1H,11−OH),14.04(bs,1H,6−OH)
【0114】
同じ方法で以下を調製した:
トリアゾールエステル(R=OMe、R=OH、n=7、x=1)
溶離液(5%メタノール/ジクロロメタン、その後12%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:51%
(M+Na)calc=1338.4627
(M+Na)fnd=1338.4565
NMR:(CDSO;δ1.11(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.77−1.90(m,1H,2’ax−H),2.08−2.23(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.90−3.04(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.18−3.52(m,30H,4’−H,Glu 2,3,4−H,(−O−CHCH),3.64−3.78(m,1H,3’−H),3.79(t,2H,J=5.1Hz,CH トリアジル),3.89(d,1H,J=9.2Hz,Glu 5−H),3.99(s,3H,4−OMe),4.15(q,1H,J=6.9Hz,5’−H),4.51(t,2H,J=5.2Hz,COOCH),4.57(d,2H,J=5.9Hz,14−CH),4.68(d,1H,J=5.5Hz,4’−OH),4.83(t,1H,J=5.9Hz,14−OH),4.87(s,2H,ArCH),4.95(t,1H,7−H),5.17−5.24(m,2H 1’−H,Glu−OH),5.31(d,1H,J=4.1Hz,Glu−OH),5.37−5.48(m,3H,Glu1−H,Glu−OH,9−OH),6.82(d,1H,J=8.4Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.41(d,2H,J=8.0Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.68(m,1H,3−H),7.89−7.95(m,2H,1,2−H),8.11(s,1H,トリアジル),9.96(s,1H,Ar N−H),13.28(bs,1H,11−OH),14.04(bs,1H,6−OH)
【0115】
トリアゾールエステル(R=OMe、R=H、n=4、x=1)
溶離液(10%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:69%
(M+Na)calc=1190.39172
(M+Na)fnd=1190.40091
NMR:(CDSO;δ1.12(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.45(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.90(m,1H,2’ax−H),2.05−2.26(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.26(s,3H,13−CH),2.89−3.02(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.17−3.52(m,18H,4’−H,Glu 2,3,4−H,(O−CHCH),3.66−3.78(m,1H,3’−H),3.79(t,2H,J=5.1Hz,CH2 トリアジル),3.89(d,1H,J=9.2Hz,Glu 5−H),3.98(s,3H,4−OMe),4.16(bq,1H,J=6.3Hz,5’−H),4.51(t,2H,J=5.1Hz,COOCH),4.68(d,1H,J=5.9Hz,4’−OH),4.88(s,2H,ArCH),4.94(bt,1H,J=4.1Hz,7−H),5.12−5.25(m,2H,1’−H,Glu−OH),5.28−5.36(m,Glu−OH),5.39−5.47(m,2H,Glu−1H,Glu−OH),5.53(s,1H,9−OH),6.81(d,1H,J=8.1Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.42(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90−7.92(m,2H,1,2−H),8.12(s,1H,トリアジル),9.97(s,1H,Ar N−H),13.29(bs,1H,11−OH),14.03(bs,1H,6−OH)
【0116】
トリアゾールエステル(R=OMe、R=H、n=7、x=1)
溶離液(10%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:52%
(M+Na)calc=1322.47036
(M+Na)fnd=1322.46150
NMR:(CDSO;δ1.12(d,3H,J=6,6Hz,5’−CH),1.45(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.90(m,1H,2’ax−H),2.05−2.26(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.26(s,3H,13−CH),2.89−3.02(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.18−3.52(m,30H,4’−H,Glu 2,3,4−H,(−O−CHCH),3.66−3.78(m,1H,3’−H),3.79(t,2H,J=5.2Hz,CH トリアジル),3.89(d,1H,J=9.2Hz,Glu 5−H),3.98(s,3H,4−OMe),4.16(bq,1H,J=6.3Hz,5’−H),4.51(t,2H,J=5.4Hz,COOCH),4.68(d,1H,J=5.9Hz,4’−OH),4.88(s,2H,ArCH),4.93(bt,1H,J=4.0Hz,7−H),5.12−5.25(m,2H,1’−H,Glu−OH),5.32(d,J=4.8Hz,Glu−OH),5.38−5.47(m,2H,Glu 1−H,Glu−OH),5.53(s,1H,Glu−OH),6.81(d,1H,J=8.1Hz,3’−NH),7.24(d,2H,J=8.4Hz,Ar 3,5−H),7.42(d,2H,J=8.4Hz,Ar 2,6−H),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90−7.92(m,2H,1,2−H),8.12(s,1H,トリアジル),9.97(s,1H,Ar N−H),13.29(bs,1H,11−OH),14.03(bs,1H,6−OH)
【0117】
トリアゾールエステル(R=OMe、R=OH、n=12、x=1)
n=12の誘導体は約60%だけ含まれた。
溶離液(10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:46%
(M+Na)calc=1558.59635
(M+Na)fnd=1558.59630
【0118】
実施例9.
アリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート6bからの、プロパルギルグルクロニドジ−スペーサー部分である2−プロピニル 3,4,5−トリヒドロキシ−6−[(4−[([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)メチル]アニリノカルボニル)オキシ]テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート15cの合成。
2g(3.2mmol)のアリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート5bを、90mlのテトラヒドロフラン/水/酢酸=1/1/1中で加水分解した。4時間後、反応混合物を50mlのジクロロメタンで抽出した(3回)。ジクロロメタン層を、引き続いて30mlの水(2回)、その後30mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2回)及び30mlのブライン(2回)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで真空内で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=1/1)で精製した。
収率:1.45gr(89%)の6b
(M+Na)cal=532.14309
(M+Na)fnd=532.14142
NMR:CDCl;δ2.02(s,3H,OAc),2.04(s,3H,OAc),2.05(s,3H,OAc),4.22(d,1H,J=8.5Hz,Glu 5−H),4.53−4.67(m,4H,−OCH−C=C,ArCH),5.13−5.37(m,5H,Glu 2,3,4−H,アリル),5.76(d,1H,J=8.0Hz,Glu 1−H),5.81−5.91(m,1H,アリル),7.05(bs,1H,NH),7.26−7.39(m,4H,Ar)
【0119】
0.8g(3mmol)のHOOC−Ph−CH−OTBDMSから実施例2に記載したように調製した4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)フェニルイソシアネートに、1g(2mmol)の6bを添加した。18時間の撹拌後、この混合物を真空内で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=2/1)で精製した。
収率:1g(66%)のアリル 3,4,5−トリ(アセチルオキシ)−6−([4−([1−(tert−ブチル)−1,1−ジメチルシリル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート14b
(M+Na)cal=795.27725
(M+Na)fnd=795.27285
NMR:CDCl;δ0.08(s,6H,Si−Me),0.93(s,9H,Si−tBut),2.02(s,3H,OAc),2.04(s,3H,OAc),2.05(s,3H,OAc),4.22(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.53−4.63(m,2H,−OCH−C=C),4.68(s,2H,ArCH),5.13(s,2H,ArCH),5.13−5.39(m,5H,Glu 2,3,4−H,アリル),5.78(d,1H,J=8.0Hz,Glu 1−H),5.82−5.94(m,1H,アリル),6.69(bs,1H,ArNH),7.02(bs,1H,ArNH),7.25(d,2H,J=8.7Hz,Ar),7.31−7.40(m,6H,Ar)
【0120】
フレーム乾燥した容器中の25mlの乾燥プロパルギルアルコールに、24mg(1.1mmol)のナトリウムを添加した。このアルコラート溶液に、0.75g(0.97mmol)の14bを添加し、この混合物を1.5時間撹拌した後、10mlの水中0.17g(1.2mmol)のKHSOで酸性化した。35℃/0.8mmでの溶媒除去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(2%メタノール/酢酸エチル)で精製した。
収率:230mg(44%)の15c
(M+Na)calc=404.09575
(M+Na)fnd=404.09449
NMR:CDOD;δ2.93(t,J=2.3Hz,−C≡CH),3.39−3.60(m,3H,Glu 2,3,4−H),4.00(d,1H,J=9.5Hz,Glu 5−H),4.52(s,2H,ArCH−OH),4.76−4.79(m,2H,−OCH−C≡C),4.83(s,Glu 2,3,4−OH,Ar−OH),5.11(s,2H,ArCH),5.50(d,1H,J=7.7Hz,Glu−1H),7.25(d,2H,J=8.5Hz,ArCH),7.24−7.42(m,6H,Ar)
【0121】
実施例10.
2−プロピニル 3,4,5−トリヒドロキシ−6−[(4−[([4−(ヒドロキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)メチル]アニリノカルボニル)オキシ]テトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート15cからの、(R=OMe、R=OH、R=プロパルギル、p=2)の合成。
まず、2−プロピニル 6−[(4−[([4−([(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オキシメチル)アニリノ]カルボニルオキシ)メチル]アニリノカルボニル)オキシ]−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−2−ピランカルボキシレート16cを、10c11cへの変換について記載したのと同様にして、15cから調製した。
溶離液:(メタノール/酢酸エチル=1/99)。
収率:50%の16c
(M+Na)cal=718.14964
(M+Na)fnd=718.14820
NMR:CDOD;δ2.93(t,J=2.6Hz,1H,−C≡CH),3.45(m,3H,Glu 2,3,4−H),4.00(d,J=9.5Hz,1H,Glu 5−H),4.75−4.80(m,2H,COOCH),4.85(s,Glu 2,3,4−OH),5.12(s,2H,ArCH),5.22(s,2H,ArCH),5.50(d,J=7.7Hz,1H,Glu 1−H),7.27−7.48(m,10H,Ar),8.26−8.32(m,2H,Ar−NO
【0122】
16c(R=OMe、R=OH、R=プロパルギル、p=2)への変換を、11cのDOX−proparGA3 への変換と同様に実施した。
溶離液:(10%メタノール/ジクロロメタン、その後15%メタノール/ジクロロメタン)。
収率:74%の(R=OMe、R=OH、R=プロパルギル、p=2)
(M+Na)calc=1122.29675
(M+Na)fnd=1122.29075
NMR:(CDSO;δ1.11(d,3H,J=6,2Hz,5’−CH),1.47(bdd,1H,2’eq−H),1.78−1.90(m,1H,2’ax−H),2.05−2.26(m,2H,8ax−及び8eq−H),2.90−3.04(bABパターン,2H,10eq−及び10ax−H),3.15−3.50(m,4H,4’−H,Glu 2,3,4−H),3.58(t,J=2.4Hz,1H,−C≡CH),3.64−3.75(m,1H,3’−H),3.96(d,J=8.0Hz,1H,Glu 5−H),3.96(s,3H,4−OMe),4.12(bq,1H,5’−H),4.57(d,2H,J=5.9Hz,14−CH),4.66(d,1H,J=5.5Hz,4’−OH),4.76(t,J=2.6Hz,2H,−OCH−C≡C,4.78−4.88(m,3H,14−OH,ArCH),4.92(bt,1H,7−H),5.02(bs,2H,ArCH),5.18(bd,1’−H),5.30(bd,Glu−OH),5.39−5.47(m,4H,Glu1−H,9−OH,2xGlu OH),6.81(bd,1H,3’−NH),7.21(d,J=8.4Hz,2H,Ar),7.33−7.44(m,4H,Ar),7.48(d,J=8.8Hz,2H,Ar),7.62−7.66(m,1H,3−H),7.90(d,J=4.4Hz,2H,1,2−H),9.97(s,1H,Ar N−H),13.27(bs,1H,11−OH),14.02(bs,1H,6−OH)
【0123】
実施例11.
DOX−mGA3及びDOX−トリアゾールエステル(n=、7及び12、x=1)の加水分解。
DOXエステルの加水分解を、逆相TLC(RP18)で定性的に追跡した。pH=7.33のリン酸塩緩衝液(KHPO/NaHPO)中、アセトニトリル/水:42/58の溶離液を用いた。
0.29mgのDOX−mGA3を、DOX−mGA3を溶解したままにしておくために数滴のDMSOと共に、1mlの緩衝液中に溶解した。出発化合物が消失するまで24時間かかった。この水溶液の濃縮後、残留化合物はその質量スペクトルからしてDOX−GA3と思われた。
同じ方法で、DOX−トリアゾールエステル(n=、7及び12、x=1)の加水分解を、緩衝液1ml中、0.35mg及び0.45mgについて追跡した。両方のエステルが、4時間以内に完全に加水分解された。
【0124】
実施例12
GUS及びFBSによるプロドラッグの活性化
ウシβ−グルクロニダーゼ(GUS)の存在下又は非存在下で、種々の(プロ)−ドラッグDOX、DOX−alGA3、DOX−mPEG4−GA3及びDOX−mPEG7−GA3と共に3日間インキュベーションした後の、OVCAR−3細胞におけるin vitro抗増殖効果
【0125】
【表2】

【0126】
プロドラッグについて使用した濃度は0.001μMから50μMの範囲であり、GUS酵素は10単位/μlの最終濃度になるよう添加した。この隣で、プロドラッグで処理した細胞をGUSなしでインキュベートした。インキュベーションは、加湿5%COインキュベータ中で3日間37℃で実施した。細胞増殖をクリスタルバイオレットアッセイによって測定する。未処理の細胞を100%とする。これらの実験で見出されたIC50値を以下の表に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
実験条件は以下の通りであった:
材料
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、トリプシン及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)は、Invitrogenから購入した。ウシ胎仔血清(FBS)は、PAA laboratoriesから購入した。ウシ肝臓由来のβ−グルクロニダーゼ(GUS)は、Sigma Aldrichから購入した。クリスタルバイオレットは、Fluka Chemikaから購入した。アセトニトリル及びメタノールはBiosolveから購入し、エタノールはMerckから購入した。
【0129】
細胞ベースの抗増殖効果
ヒト卵巣癌(OVCAR3)細胞株を、10%の熱非働化FBS及び1%のP/Sを補充したDMEM中で維持した。ドキソルビシンプロドラッグDox−アリル、Dox−mGA3、Dox−mPEG4及びDox−mPEG7によるOVCAR細胞株の増殖の阻害を、クリスタルバイオレットアッセイを使用して決定した。このアッセイは96ウェルプレートで実施した。トリプシン処理により回収した細胞を、1ウェル当たり100μlの培地中5.000細胞で播種した。この96ウェルプレートを、加湿5%COインキュベータ中37℃で一晩インキュベートした。種々のプロドラッグを、0.001μM〜50μMの濃度で添加した。その後、10単位/μlの最終濃度になるようにGUS酵素を添加した。この混合物を加湿5%COインキュベータ中37℃で3日間インキュベートした。その後、70%エタノール中1%のクリスタルバイオレット(50μl)で細胞を染色し、固定した。細胞を水で洗浄し、100μlの1%SDS中に再度可溶化した。この後、吸光度を550nmで読み取った。ブランク吸光値を、細胞を播種していないウェルに対して決定し、シグナルから差し引いた。阻害濃度50%(IC50)は、種々の濃度のプロドラッグで細胞増殖の阻害をプロットし、非線形曲線フィッティングすることから導き出された。
【0130】
プロドラッグの活性化
プロドラッグがドキソルビン(doxorubin)に変換される速度を、HPLC解析によって決定した。プロドラッグ及びGUS酵素を、プロドラッグについて10μM、酵素について10単位/μlの最終濃度でFBS中に混合した。FBS中に存在するエステラーゼによるプロドラッグの加水分解もまた研究した。この場合において、プロドラッグ(10μM)を100μLのFBS中に希釈し、37℃でインキュベートした。反応を、300μLの氷冷メタノールを添加することによって、種々の時点(5時間以下)で停止させた。サンプルを16.1 RCFで5分間遠心分離した。サンプルをさらに使用するまで−20℃で保存した。上清をHPLCで解析した。
【0131】
HPLC
HPLC装置は、オートサンプラー、ポンプ及び蛍光検出器(励起:450、発光:550)から構成された。10μlのサンプルを注入し、逆相カラム(Waters sunfire C18、粒径:5μm、4.6mm×150mmカラム)上にロードした。使用した移動相は、66:34のリン酸塩緩衝液(pH7、0.01M):アセトニトリルであった。
β−グルクロニダーゼ

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
=H又はOCH
=H又はOH;
R=CH=CH−CH−;
CH≡C−(CH−;
HO−CH−CH−;
CHO−CH−CH又は式
【化2】

(nは、1〜40、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6の整数であり;
pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
xは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
アルキルは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖のアルキル残基である)を有する残基)を有する、アントラサイクリンプロドラッグエステル。
【請求項2】

【化3】

(式中、
=H又はOCH
=H又はOH;
R=CH
CH=CH−CH−;又は
CH≡C−(CH−)を有するアントラサイクリンプロドラッグエステルの調製プロセスであって、
それぞれ式11a11b又は11cを有する化合物:
【化4】

を得るための、保護されていない糖ヒドロキシル基を有する式10a10b又は10cの化合物:
【化5】

(式中、pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数である)の、p−ニトロフェニルクロロホルメートとの反応と、その後の、
を有するアントラサイクリンプロドラッグエステル(式中、Rは、CH、アリル又は(CH−C≡CHである)を得るための、式21のアントラサイクリン:
【化6】

(式中、R及びRは上記の通りである)との反応とを含む、プロセス。
【請求項3】
10a又は10bを有する化合物(式中pは1である)が、それぞれ式13a又は13bを有する化合物:
【化7】

を得るための、式を有するイソシアネート:
【化8】

(式中、TBDMSはt−ブチルジメチルシリル保護基を示す)
の、それぞれ式9a又は9bを有する全く保護されていないグルクロン酸エステル:
【化9】

との反応と、その後の、
それぞれ式10a又は10bの化合物を得るための、シリル保護基の脱保護と、
によって調製される、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
10cを有する化合物(式中pは1である):
【化10】

が、式13a又は13bを有する化合物:
【化11】

の、式CH≡C−(CH−OHのアルコール(式中、xは請求項1で規定した通りである)との、塩基の存在下での反応と、その後の、
10cの化合物を得るための、シリル保護基の酸性除去と、
によって調製される、請求項2記載のプロセス。
【請求項5】
塩基存在下での、式14a又は14bを有する化合物:
【化12】

の、アルコールROH(式中、Rは、Me、アリル又は(CH−C≡CHである)との反応と、その後の、
それぞれ式15a15b又は15cの化合物を得るための、シリル保護基の除去と、
による、式15a15b又は15cを有する化合物:
【化13】

の調製プロセス。
【請求項6】
対応する式のモノ−アルコキシ−ポリエチレングリコールトリアジルエステル(式中、R、R、p、x及びアルキルは上記規定の通りであり、アルコキシは上記規定のアルキルを含む)を得るための、請求項2記載のプロセスによって得られる式を有する化合物(式中、RはCH≡C−(CH−であり、R、R、p及びxは上記規定の通りである)の、銅触媒の存在下でのN−(CHCHO)−アルキルとの反応による、式を有するアントラサイクリンプロドラッグエステル:
【化14】

(式中、
=H、OCH
=H、OH;
Rは、式:
【化15】

(nは、1〜40、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6の整数であり;
Pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
xは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
アルキルは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖のアルキル残基である)を有する残基である)の調製プロセス。
【請求項7】
を有するプロドラッグエステル(式中、それぞれR=HO−CH−CHOH又はHO−CH−CH−OCH)を得るための、塩基存在下での、請求項2記載のプロセスによって得られる式を有するプロドラッグ(式中R=CH)の、それぞれ式HO−CH−CHOH又はHO−CH−CH−OCHのアルコールとの反応による、式を有するアントラサイクリンプロドラッグエステル:
【化16】

(式中、
=H又はOCH
=H又はOH;
R=CH−CHOH又はCH−CH−OCH)の調製プロセス。
【請求項8】
標的組織治療で使用するための医薬の製造における、請求項2〜7のいずれか1項記載のプロセスによって得られる式を有するアントラサイクリンプロドラッグエステル(式中、R、R及びRは、請求項2〜7に規定の通りである)の使用であって、該エステルは加水分解され、その後、標的組織に特異的な抗体にカップリングされた酵素によって選択的に活性化される、使用。
【請求項9】
加水分解されたプロドラッグエステルが内因性酵素によって活性化される、請求項8記載の使用。
【請求項10】
加水分解されたプロドラッグエステルが外因性酵素によって活性化される、請求項8記載の使用。
【請求項11】
酵素がβ−グルクロニダーゼである、請求項8〜10記載の使用。
【請求項12】
抗体が癌細胞に対する特異性を有する、請求項8〜11記載の使用。
【請求項13】
有効成分としての式のアントラサイクリン誘導体:
【化17】

(式中、
=H、OCH
=H、OH;
R=CH=CH−CH−;
CH≡C−(CH−;
HO−CH−CH−;
CHO−CH−CH又は式:
【化18】

(式中、nは、1〜40、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の整数であり;
Pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
xは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
アルキルは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖のアルキル残基である)を有する残基);及び所望に応じて医薬的に許容される担体を含む、経口投与、局所投与又は注射による投与のための、抗腫瘍組成物。
【請求項14】
20を有するアミノカンプトテシンプロドラッグエステル:
【化19】

(式中、
R=CH
CH=CH−CH−;
CH≡C−(CH−;
HO−CH−CH−;
CHO−CH−CH−;又は式:
【化20】

(式中、nは、1〜40、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の整数であり;
Pは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
xは、1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2の整数であり;
アルキルは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖のアルキル残基である)を有する残基)。
【請求項15】
請求項14記載のアミノカンプトテシンプロドラッグエステル(式中、Rは、Me、アリル又は(CH−C≡CHである)の調製プロセスであって、
20a又は20bのアミノカンプトテシンプロドラッグエステル:
【化21】

(式中、Rは、Me、アリル又は(CH−C≡CHであり、pは1又は2である)を得るための、請求項2に記載のプロセスによって得られた式11a11b11c又は16a16b及び16cの化合物:
【化22】

の、式19の9−アミノカンプトテシン:
【化23】

との反応を含む、プロセス。
【請求項16】
有効成分としての式20a又は20bのアミノカンプトテシンプロドラッグエステル(式中、R、n、x、p及びアルキルは、請求項14で規定した通りである)、及び所望に応じて医薬的に許容される担体を含む、経口投与、局所投与又は注射による投与のための、抗腫瘍組成物。


【公開番号】特開2009−215295(P2009−215295A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−53821(P2009−53821)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(591246034)
【Fターム(参考)】