説明

アンロック検出回路

【課題】2つの信号間の位相差の発生を正確に検出するアンロック検出回路を提供する。
【解決手段】アンロック検出回路は、論理値を基準信号の変化に応じて記憶する第1フリップフロップと、論理値を入力信号の変化に応じて記憶する第2フリップフロップと、当該第1及び第2フリップフロップの出力の否定論理積を算出するNAND回路とを備えた位相比較器と、第1フリップフロップの出力を基準信号の変化に応じて記憶する第3フリップフロップと、第2フリップフロップの出力を入力信号の変化に応じて記憶する第4フリップフロップとを備えた第1アンロック検出器と、NAND回路の出力を基準信号の変化に応じて記憶する第5フリップフロップと、NAND回路の出力を入力信号の変化に応じて記憶する第6フリップフロップとを備える第2アンロック検出器と、第3、第4、第5及び第6フリップフロップの出力の論理和を算出するOR回路とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop;位相同期ループ)回路におけるアンロック検出に関する。
【背景技術】
【0002】
PLL回路は、通信機をはじめとして多くのシステムに用いられている。PLL回路には、基準信号源から出力される基準信号と、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)から出力される出力信号との間に位相差が生じているか否かを判定するアンロック検出回路が用いられている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1によれば、図5に示すようなアンロック検出回路900が開示されている。アンロック検出回路900は、位相比較器901と、アンロック検出器902と、OR回路93とを具備する。
位相比較器901は、基準信号REFと、入力信号VCOとが入力され、基準信号REFと入力信号VCOとの位相差を検出し、検出結果を示す信号PDU及び信号PDDを出力する。また、位相比較器901は、基準信号REFの位相に対して入力信号VCOの位相が遅れている場合、信号PDUをH(High;ハイ)レベルにすると共に信号PDDをL(Low;ロー)レベルを維持する。また、位相比較器901は、基準信号REFの位相に対して入力信号VCOの位相が進んでいる場合、信号PDUをLレベルを維持すると共に信号PDDをHレベルにする。
【0004】
アンロック検出器902は、基準信号REFと、入力信号VCOと、位相比較器901の出力である信号PDUと信号PDDとが入力され、基準信号REFと入力信号VCOとそれぞれの位相差が生じるアンロック状態を検出する。また、アンロック検出器902は、信号QRと信号QSとを出力し、アンロック状態を検出すると信号QR及び信号QSの少なくとも一方をHレベルにする。
OR回路93は、アンロック検出器902が出力する信号QRと信号QSとの論理和演算の結果示す信号UNLOCK_OUTを出力する。
【0005】
また、位相比較器901は、フリップフロップ91、92と、NAND回路94とを備えている。フリップフロップ91は、クロック端子CKに基準信号REFが入力され、入力端子DにHレベルの信号を示す電源電圧が入力され、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいてHレベルの信号を記憶し、出力端子Qから記憶した信号を示す信号PDUを出力する。フリップフロップ92は、クロック端子CKに入力信号VCOが入力され、入力端子DにHレベルの信号を示す電源電圧が入力され、入力信号VCOの立ち下がりエッジにおいて、Hレベルの信号を記憶し、記憶した信号を示す信号PDDを出力端子Qから出力する。NAND回路94は、信号PDUと信号PDDとの否定論理積演算の結果を示す信号PD_RESETを出力する。また、フリップフロップ91、92は、リセット端子に信号PD_RESETが入力され、信号PD_RESETがLレベルのとき、リセットされて出力信号がLレベルになる。
【0006】
また、アンロック検出器902は、フリップフロップ95、96を備えている。フリップフロップ95は、クロック端子CKに基準信号REFが入力され、入力端子Dに信号PDUが入力され、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、入力端子Dに入力された信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QRを出力端子Qから出力する。フリップフロップ96は、クロック端子CKに入力信号VCOが入力され、入力端子Dに信号PDDが入力され、入力信号VCOの立ち下がりエッジにおいて、入力端子Dに入力された信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QSを出力端子Qから出力する。
上述の構成により、アンロック検出回路900は、構成する各ロジック回路が伝達遅延時間0の理想回路であれば、基準信号REFと入力信号VCOとの位相差情報を正確に検出できる。さらに、信号PD−RESETよりフリップフロップ91,92がリセットされた後、基準信号REFの立下りエッジが来て次の基準信号REFの立下りエッジが来る1周期以内、言い換えると、基準信号REFの位相角が2π以内に入力信号VCOの立下りエッジが来ない場合及び、逆に入力信号VCOの立下がりエッジが来て次の入力信号VCOの立下がりエッジが来る1周期以内、言い換えると入力信号VCOの位相角が2π以内に基準信号REFの立下りエッジが来ない場合、アンロック検出器902でアンロックとして検出し、UNLOCK_OUTからL論理のアンロック検出信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−243736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のアンロック検出回路の構成では、実際には構成する各ロジック回路に固有の伝達遅延が発生するため、正確な位相差を検出できないデッドゾーンが発生し、アンロック検出を正確にできなくなる問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、2つの信号間の位相差が正確に検出できないデッドゾーンに入ったときにおいても正確にアンロック検出が行なえるアンロック検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、論理値を基準信号の変化に応じて記憶する第1フリップフロップと、論理値を入力信号の変化に応じて記憶する第2フリップフロップと、当該第1及び第2フリップフロップの出力の否定論理積を算出するNAND回路とを備えた位相比較器と、前記第1フリップフロップの出力を前記基準信号の変化に応じて記憶する第3フリップフロップと、前記第2フリップフロップの出力を前記入力信号の変化に応じて記憶する第4フリップフロップとを備えた第1アンロック検出器と、前記NAND回路の出力を前記基準信号の変化に応じて記憶する第5フリップフロップと、前記NAND回路の出力を前記入力信号の変化に応じて記憶する第6フリップフロップとを備える第2アンロック検出器と、前記第3、第4、第5及び第6フリップフロップの出力の論理和を算出するOR回路とを具備し、前記NAND回路の出力に応じて前記第1及び第2フリップフロップがリセットされることを特徴とするアンロック検出回路である。
【0011】
(2)また、本発明は、上記記載の発明において、前記第1、第3及び第5フリップフロップは、前記基準信号の立ち下がりにおいて信号を記憶し、前記第2、第4及び第6フリップフロップは、前記入力信号の立ち下がりにおいて信号を記憶することを特徴とする。
【0012】
(3)また、本発明は、上記記載の発明において、前記第1フリップフロップと、前記第3フリップフロップとの間に第1遅延素子が設けられ、前記第2フリップフロップと、前記第4フリップフロップとの間に第2遅延素子が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、2つの信号間の約2π以上の位相差の発生を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態におけるアンロック検出回路100の構成とアンロック検出回路100に接続される回路を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態におけるクロック同期回路104の一構成例を示す回路図である。
【図3】本実施形態におけるアンロック検出回路100の一動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】本実施形態におけるアンロック検出回路100の一動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】アンロック検出回路900の構成を示した図である。
【図6】位相比較器101の別の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<発明の概要>
発明者は、図5に示すアンロック検出回路900が基準信号REFと入力信号VCOとの間に位相差が生じたこと(アンロック状態)を検出できない場合について解析した結果、次の原因を見出した。アンロック検出回路900は、内部の信号PD_RESETの立ち下がりと、入力される基準信号REF又は入力信号VCOの立ち下がりとがある間隔で連続して生じると、位相比較器901が基準信号REFと入力信号VCOとの位相差の関係を正しく出力せず、アンロック状態を正しく検出することができない。
そこで、発明者は、新たなアンロック検出器を設計して正確に位相差を検出することができた。以下、詳しく説明する。
【0016】
以下、本発明の一実施形態によるアンロック検出回路100を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるアンロック検出回路100の構成とアンロック検出回路100に接続される回路を示す概略ブロック図である。また、アンロック検出回路100は、基準信号REFと入力信号VCOとが入力され、基準信号REFと入力信号VCOとに約2π以上の位相差が生じているか否かを検出し、検出した結果を示す信号ALMXをクロック同期回路104を介して出力する。また、アンロック検出回路100は、信号PDUと信号PDDとを出力する。信号PDUと信号PDDとは、それぞれの値の組み合わせにより入力信号VCOが基準信号REFに対して位相が進んでいるか或いは遅れているか示す。
【0017】
クロック同期回路104は、アンロック検出回路100から信号ALMXが入力され、外部よりリセット信号RSTとクロック信号CLKが入力され、クロック信号CLKに同期した信号UNLOCK_OUTを出力する。
なお、リセット信号RSTは、アンロック検出回路100が動作する前に外部よりHレベルのパルスが入力され、クロック同期回路104をリセットする。
【0018】
アンロック検出回路100は、位相比較器101と、アンロック検出器102(第1アンロック検出器)と、アンロック検出器103(第2アンロック検出器)と、OR回路12、13とNOR回路14とを具備している。
位相比較器101は、フリップフロップ1(第1フリップフロップ)と、フリップフロップ2(第2フリップフロップ)と、遅延素子3と、NAND回路4とを備えている。フリップフロップ1は、クロック端子CKに基準信号REFが入力され、入力端子DにHレベル(論理値)の信号を示す電源電圧が入力され、基準信号REFの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力された信号を記憶し、記憶した信号を示す信号PDUを出力端子Qから出力する。フリップフロップ2は、クロック端子CKに入力信号VCOが入力され、入力端子DにHレベルの信号を示す電源電圧が入力され、入力信号VCOの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力された信号を記憶し、記憶した信号を示す信号PDDを出力端子Qから出力する。
【0019】
NAND回路4は、信号PDUと信号PDDとの否定論理積演算の結果を示す信号DLINを遅延素子3に出力する。遅延素子3は、入力される信号DLINを遅延させて信号PD_RESETとして出力する。
また、フリップフロップ1、2は、リセット端子Rに信号PD_RESETが入力され、信号PD_RESETがLレベルのとき、リセットされて出力がLレベルになる。
位相比較器101は、上述の構成により、入力信号VCOの位相が基準信号REFの位相より遅れている場合、信号PDUにその位相差に比例したパルス幅を有するパルスを出力し、入力信号VCOの位相が基準信号REFの位相より進んでいる場合、信号PDDにその位相差に比例した幅を有するパルスを出力する。
【0020】
アンロック検出器102は、フリップフロップ5(第1フリップフロップ)と、フリップフロップ6(第6フリップフロップ)と、遅延素子7、8とを備えている。遅延素子7は、信号PDUを遅延させ、フリップフロップ5の入力端子Dに信号PDUAとして出力する。遅延素子8は、信号PDDを遅延させ、フリップフロップ6の入力端子Dに信号PDDAとして出力する。
フリップフロップ5は、クロック端子CKに基準信号REFが入力され、入力端子Dに信号PDUAが入力され、基準信号REFの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力されている信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QRを出力端子Qから出力する。
【0021】
フリップフロップ6は、クロック端子CKに入力信号VCOが入力され、入力端子Dに信号PDDAが入力され、入力信号VCOの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力されている信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QSを出力端子Qから出力する。
信号QR及び信号QSは、Hレベルのときアンロック状態を検出したことを示し、Lレベルのときアンロック状態を検出していないことを示す。
【0022】
アンロック検出器103は、フリップフロップ10(第5フリップフロップ)と、フリップフロップ11(第6フリップフロップ)を備える。フリップフロップ10は、クロック端子CKに基準信号REFが入力され、入力端子Dに反転された信号PD_RESETが入力され、基準信号REFの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力されている信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QERを出力端子Qから出力する。
【0023】
フリップフロップ11は、クロック端子CKに入力信号VCOが入力され、入力端子Dに反転された信号PD_RESETが入力され、入力信号VCOの立ち下がりにおいて入力端子Dに入力されている信号を記憶し、記憶した信号を示す信号QESを出力端子Qから出力する。
信号QER及び信号QESは、Hレベルのときアンロック状態を検出したことを示し、Lレベルのときアンロック状態を検出していないことを示す。
【0024】
OR回路12は、アンロック検出器103が出力する信号QERと信号QESとの論理和演算の結果を出力する。OR回路13は、アンロック検出器102が出力する信号QRと信号QSとの論理和演算の結果を出力する。NOR回路14は、OR回路12の出力と、OR回路13の出力との否定論理和演算の結果を示す信号ALMXを出力する。
信号ALMXは、Lレベルのときアンロック状態を検出したことを示し、Hレベルのときアンロック状態を検出していないことを示す。
【0025】
ここで、遅延素子3の遅延時間は、位相比較器101が基準信号REFと入力信号VCOが同位相でもPDU,PDDに必要十分な幅のパルスを出力する時間であり、シミュレーションやタイミング解析により予め定められた値である。
また、遅延素子3は、フリップフロップ10において、NAND回路4を介して入力されるフリップフロップ1が出力する信号と、基準信号REFとの間のレーシングを回避する役割もある。また、遅延素子3は、フリップフロップ11において、NAND回路4を介して入力されるフリップフロップ2が出力する信号と、入力信号VCOとの間のレーシングを回避する役割もある。
【0026】
また、遅延素子7は、フリップフロップ5において、フリップフロップ1から出力される信号PDUと、基準信号REFとのレーシングを回避するために設けられている。遅延素子7の遅延時間は、シミュレーション、タイミング解析などの結果から定められる。
また、遅延素子8は、フリップフロップ6において、フリップフロップ2から出力される信号PDDと、入力信号VCOとのレーシングを回避するために設けられている。遅延素子8の遅延時間は、遅延素子7と同様に、シミュレーション、タイミング解析などの結果から定められる。
【0027】
図2は、本実施形態におけるクロック同期回路104の一構成例を示す回路図である。図示するようにクロック同期回路104は、フリップフロップ17、19、21と、NAND回路15と、NOT回路18と、NOR回路20、NOT回路31とを備えている。フリップフロップ17、19、21それぞれには、外部から入力されるクロック信号CLKがクロック端子CKに入力されている。
NAND回路15は、アンロック検出回路100が出力する信号ALMXと、NOT回路18の出力との否定論理積演算の結果をフリップフロップ17の入力端子Dに出力する。フリップフロップ17は、クロック信号CLKの立ち上がりにおいて、NAND回路15が出力する信号を記憶し、記憶した信号をNOT回路18に出力する。
【0028】
NOT回路18は、フリップフロップ17の出力する信号を反転し、反転した信号をフリップフロップ19の入力端子Dに出力する。フリップフロップ19は、クロック信号CLKの立ち上がりにおいて、NOT回路18が出力する信号を記憶し、記憶した信号をNOR回路20に出力する。
NOR回路20は、NOT回路18が出力する信号と、フリップフロップ19が出力する信号との否定論理和演算の結果を出力する。NOT回路31は、NOR回路20の出力する信号を反転し、反転した信号をフリップフロップ21の入力端子Dに出力する。フリップフロップ21は、クロック信号CLKの立ち上がりにおいて、NOT回路31が出力する信号を記憶し、記憶した信号を信号UNLOCK_OUTとして出力する。
【0029】
また、フリップフロップ17は、リセット端子Rに信号ALMXが入力され、信号ALMXがHレベルのときリセットされて出力する信号がLレベルになる。フリップフロップ19、21は、リセット端子Rにリセット信号RSTが入力され、リセット信号RSTがHレベルのときリセットされて出力する信号がLレベルになる。
クロック同期回路104は、上述の構成により、基準信号REF或いは入力信号VCOが変化するタイミングで出力される信号ALMXを、クロック信号CLKに同期させて信号UNLOCK_OUTとして出力する。
【0030】
また、クロック同期回路104において、初段のフリップフロップ17とNAND回路15とにより信号ALMX検出回路を構成し、フリップフロップ17、19、21によりシフトレジスタを構成している。また、クロック同期回路104は、NOR回路20の反転した出力により、入力された信号ALMXのパルス幅を少なくともクロック信号CLKの2周期分のパルス幅に引き伸ばしてクロック信号CLKに同期させた信号UNLOCK_OUTを生成する。
【0031】
以下、図3、図4のタイミングチャートを参照して、本実施形態におけるアンロック検出回路100の動作を説明する。ここでは、入力信号VCOの位相が基準信号REFの位相より進んでいる「進み位相」と、入力信号VCOの位相が基準信号REFの位相より遅れている「遅れ位相」との2つの場合に分けて説明する。
【0032】
<進み位相の検出>
図3は、本実施形態におけるアンロック検出回路100の一動作例を示すタイミングチャートである。なお、進み位相とは、入力信号VCOの周波数が基準信号REFの周波数より高い場合のことである。また、エッジE1〜E13は、入力信号VCOの立ち下がりエッジを示している。
入力信号VCOの立ち下がりから基準信号REFの立ち下がりまでの時間、即ち、位相差をφとし、入力信号VCOの周期をTとし、遅延素子3の遅延時間とtとし、遅延素子8の遅延時間とtとする。更に以下の4つの場合に分けて説明する。
[1]φ≧T−t
[2]T−t>φ≧T−t−t
[3]T−t−t>φ≧T−2t
[4]T−2t>φ
【0033】
[1]φ≧T−tの場合(例えば、図3において立ち下がりエッジE3、E6の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ6は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Hレベルの信号PDDAが入力されて、Hレベルの信号QSを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ11は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、位相比較器101から出力されたHレベルの信号PD_RESETが入力されて、Lレベルの信号QESを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0034】
[2]T−t>φ≧T−t−tの場合(例えば、図3において、立ち下がりエッジE9の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ6は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Hレベルの信号PDDAが入力されて、Hレベルの信号QSを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ11は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Lレベルの信号PD_RESETが入力されて、Hレベルの信号QESを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0035】
[3]T−t−t>φ≧T−2tの場合(例えば、図3において立ち下がりエッジE12の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ6は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Lレベルの信号PDDAが入力されて、Lレベルの信号QSを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ11は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Lレベルの信号PD_RESETが入力されて、Hレベルの信号QESを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0036】
[4]T−2t>φの場合(例えば、図3において立ち下がりエッジE5の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ6は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Lレベルの信号PDDAが入力されて、Lレベルの信号QSを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ11は、入力信号VCOの立ち下がりにおいて、Hレベルの信号PD_RESETが入力されて、Lレベルの信号QESを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示さないHレベルの信号ALMXを出力する。
【0037】
以上のように、アンロック検出回路100は、入力信号VCOと基準信号REFとの相対的な位相差φがφ≧T−2tを満たす場合、アンロック検出器102或いはアンロック検出器103の少なくとも一方がアンロック状態を検出することができるので、アンロック検出器102、103の出力の論理和演算結果を出力することにより、検出したアンロック状態をクロック同期回路104に出力することができる。
【0038】
<遅れ位相の検出>
図4は、本実施形態におけるアンロック検出回路100の一動作例を示すタイミングチャートである。なお、遅れ位相とは、入力信号VCOの周波数が基準信号REFの周波数より低い場合のことである。また、エッジE21〜32は、参照信号REFの立ち下がりエッジを示している。
ここで、基準信号REFの立ち下がりから入力信号VCOの立ち下がりまでの時間、即ち、位相差をφとし、基準信号REFの周期をTとし、遅延素子3の遅延時間をtとし、遅延素子7の遅延時間をtとする。更に以下の4つの場合に分けて説明する。
[5]φ≧T−t
[6]T−t>φ≧T−t−t
[7]T−t−t>φ≧T−2t
[8]T−2t>φ
【0039】
[5]φ≧T−tの場合(例えば、図4において立ち下がりエッジE23、E26の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ5は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Hレベルの信号PDUAを記憶してHレベルの信号QRを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ10は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Hレベルの信号PD_RESETが入力されてLレベルの信号QERを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0040】
[6]T−t>φ≧T−t−tの場合(例えば、図4において立ち下がりエッジE29の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ5は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Hレベルの信号PDUAを記憶してHレベルの信号QRを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ10は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Lレベルの信号PD_RESETが入力されてHレベルの信号QERを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0041】
[7]T−t−t>φ≧T−2tの場合(例えば、図4において立ち下がりエッジ32の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ5は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Lレベルの信号PDUAを記憶してLレベルの信号QRを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ10は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Lレベルの信号PD_RESETが入力されてHレベルの信号QERを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示すLレベルの信号ALMXを出力する。
【0042】
[8]T−2t>φの場合(例えば、図4において立ち下がりエッジE25の場合)
アンロック検出器102において、フリップフロップ5は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Lレベルの信号PDUAを記憶してLレベルの信号QRを出力する。一方、アンロック検出器103において、フリップフロップ10は、基準信号REFの立ち下がりエッジにおいて、Hレベルの信号PD_RESETが入力されてLレベルの信号QERを出力する。
その結果、アンロック検出回路100は、NOR回路14からアンロック状態を示さないHレベルの信号ALMXを出力する。
【0043】
以上のように、アンロック検出回路100は、入力信号VCOと基準信号REFとの相対的な位相差φがφ≧T−2tを満たす場合、アンロック検出器102或いはアンロック検出器103の少なくとも一方がアンロック状態を検出することができるので、アンロック検出器102、103の出力の論理和演算結果を出力することにより、検出したアンロック状態をクロック同期回路104に出力することができる。
【0044】
また、入力信号VCO或いは基準信号REFの立ち下がりにおいて信号PD_RESETがLレベルの場合のアンロック検出は、図5に示したアンロック検出回路900では正確に行えずPLL回路が不安定になる原因となっていた。
本実施形態のアンロック検出回路100は、アンロック検出器103を具備したことにより、入力信号VCO或いは基準信号REFの立ち下がりにおいて信号PD_RESETがLレベルの場合のアンロック検出を正確に行うことができる。
【0045】
また、アンロック検出回路100は、入力信号VCOと基準信号REFとの相対的な位相差φに基づいてアンロック状態の検出を行っているので、入力信号VCOと基準信号REFとそれぞれの周波数に関わらず広帯域に亘って動作することができる。
【0046】
なお、本発明は、以上述べた実施形態に限定されない。例えば、位相比較器101の構成において、フリップフロップの構成を図6に示したようにNAND回路の組合せで置き換えても良い。
【符号の説明】
【0047】
1、2、5、6、10、11、17、19、21…フリップフロップ
3、7、8、97、119…遅延素子
4、15…NAND回路
12、13…OR回路
14…NOR回路
18、30、31、98…NOT回路
20…NOR回路
100…アンロック検出回路
101…位相比較器
102、103…アンロック検出器
104…クロック同期回路
110、111、112、113、114、115、116、117、118…NAND回路
91、92、95、96…フリップフロップ
93…OR回路
94…AND回路
900…アンロック検出回路
901…位相比較器
902…アンロック検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
論理値を基準信号の変化に応じて記憶する第1フリップフロップと、論理値を入力信号の変化に応じて記憶する第2フリップフロップと、当該第1及び第2フリップフロップの出力の否定論理積を算出するNAND回路とを備えた位相比較器と、
前記第1フリップフロップの出力を前記基準信号の変化に応じて記憶する第3フリップフロップと、前記第2フリップフロップの出力を前記入力信号の変化に応じて記憶する第4フリップフロップとを備えた第1アンロック検出器と、
前記NAND回路の出力を前記基準信号の変化に応じて記憶する第5フリップフロップと、前記NAND回路の出力を前記入力信号の変化に応じて記憶する第6フリップフロップとを備える第2アンロック検出器と、
前記第3、第4、第5及び第6フリップフロップの出力の論理和を算出するOR回路とを具備し、
前記NAND回路の出力に応じて前記第1及び第2フリップフロップがリセットされる
ことを特徴とするアンロック検出回路。
【請求項2】
前記第1、第3及び第5フリップフロップは、前記基準信号の立ち下がりにおいて信号を記憶し、
前記第2、第4及び第6フリップフロップは、前記入力信号の立ち下がりにおいて信号を記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンロック検出回路。
【請求項3】
前記第1フリップフロップと、前記第3フリップフロップとの間に第1遅延素子が設けられ、
前記第2フリップフロップと、前記第3フリップフロップとの間に第2遅延素子が設けられた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンロック検出回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176611(P2011−176611A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39012(P2010−39012)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】