説明

アーマチャピン及び組み立て方法

【課題】品質に優れ、生産性が高いアーマチャピン組立体及び該アーマチャピン組立体の製造方法の提供。
【解決手段】ピン部材12の第一の部分18を、ピン部材12の第二の部分16の一部がダイキャビティ102から露出する状態となるようダイキャビティ102内に配置した後、ピン部材12の第一の部分18及び第二の部分16の残りの部分とを包み込み得る量の金属粉末300をダイキャビティ102内に充填する。次に、圧縮部材302により金属粉末を圧縮することにより単一体のアーマチャピン組立体10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、アーマチャ、より具体的には、アーマチャが形成されるとき、ピンが金属粉末にてインサート成形されるアーマチャピン組立体、及び該アーマチャピン組立体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドル速度の制御、排気ガスの再循環弁、燃料蒸気排出弁、及び同様のものを含むが、これらにのみ限定されない、自動車の用途にて多数の機能を提供するため、電磁弁が使用されている。従来の電磁弁の基本構造は、典型的に、アーマチャ部材を備え、該アーマチャ部材は、該部材から伸びるピン部材(例えば、ステム部材)とを有している。従来の電磁弁のその他の主要な構成要素は、極片と、コイルと、磁束管と、空隙を画成する領域とを含む。空隙は、全体として、アーマチャと極片の向い合う面間の可変空間として画成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、アーマチャ部材及びピン部材は、典型的に、別個に製造され、次に、アーマチャ部材の表面に形成されたオリフィス(例えば、穴)内にピン部材を取り付けることにより(例えば、プレスにて押し込むことにより)互いに接続されていた。残念なことに、この方法は、コスト及び労力的に格別効率良くなく、場合によっては、アーマチャ部材及び(又は)ピン部材の何れかを損傷させる(例えば、曲がったピンにする)。更に、構成要素の整合狂い、材料の汚れ、変化する大きいプレス力レベル、及び同様のものを含むような性能上の問題が従来の方法により製造したアーマチャピン組立体にて観察されていた。
【0004】
従って、新規で且つ、改良されたアーマチャピン組立体及び該ピン組立体を製造する方法が必要とされている。
本発明の全体的な教示によって、新規で且つ、改良されたアーマチャピン組立体及び該アーマチャピン組立体を製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の実施の形態によれば、(1)キャビティが内部に形成されたダイを提供する工程と、(2)ピン部材を提供する工程と、(3)ピン部材をキャビティ内に配置する工程と、(4)ピン部材の少なくとも一部分を包囲し得るようにある量の金属材料をキャビティ内に充填する工程と、(5)ピン部材の周りにアーマチャ部材を形成し得るよう金属材料を圧縮し、ピン部材がアーマチャ部材に締結されるようにする工程とを備える、アーマチャピン組立体を形成する方法が提供される。
【0006】
本発明の第二の実施の形態によれば、(1)キャビティが内部に形成され、キャビティが金属材料を受け入れるよう作用可能であるダイと、(2)ダイの表面に形成された穴を画成する領域であって、該穴は、ピン部材が少なくとも部分的にキャビティ内に配置されるようにピン部材を少なくとも部分的に受け入れるよう作用可能である領域と、(3)圧縮装置であって、キャビティがピン部材を少なくとも部分的に包囲し得るように金属材料を受け入れるよう作用可能であり、圧縮装置が作動されたとき、金属材料と接触し、ピン部材の周りにアーマチャ部材を形成し、ピン部材がアーマチャ部材に締結される、圧縮装置とを備える、アーマチャピン組立体を形成する装置が提供される。
【0007】
本発明の第三の実施の形態によれば、(1)ピン部材と、(2)アーマチャ部材とを備える、アーマチャピン組立体が提供され、該アーマチャ部材は、(a)キャビティが内部に形成されたダイを提供する工程と、(b)ピン部材をキャビティ内に配置する工程と、(c)ピン部材の少なくとも一部分を包囲し得るようにある量の金属材料をキャビティ内に充填する工程と、(d)ピン部材の周りにアーマチャ部材を形成し得るように金属材料を圧縮し、ピン部材がアーマチャ部材に締結されるようにする工程とを備える方法により形成される。
【0008】
本発明の更なる適用可能な分野は、以下に掲げた詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の実施の形態を示す一方にて、単に説明のみを目的とし、また、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
本発明は、詳細な説明及び添付図面から一層完全に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態の以下の説明は、性質上、単に一例であり、本発明、その適用又は用途を何ら制限することを意図するものではない。
図面を全体として、特に、図1を参照すると、全体として、本発明の教示によるアーマチャピン組立体10が示されている。該組立体10は、主として、ピン部材12と、該ピン部材の周りに形成されたアーマチャ部材14とを有している。すなわち、ピン部材12は、アーマチャ部材14に形成された開口内に押し込まれず又は配置されず(従来のアーマチャピン組立体の場合のように)、アーマチャ部材14は、ピン部材12の周りに成形され又はその他の方法にて形成され、2つの構成要素は、単一体の組立体を形成し得るよう互いに締結されている。
【0010】
ピン部材が、該ピン部材の周りにアーマチャ部材14が形成されるのを受け入れ、また、組立体10が形成されたならば、アーマチャ部材14からの分離に更に抵抗することができるならば、ピン部材12の正確な寸法は、本発明が成功するために重要であることは考えられない。
【0011】
本発明の1つの特徴によれば、ピン部材12には、第一の端部分16と、第二の端部分18とが設けられ、ここで「第一の」及び「第二の」という語は、単に説明の目的のためにのみ使用される。本発明の特定の作用理論にのみ拘束されることなく、ピン部材12の一端部分は、アーマチャ部材14の本体内に没入させ、ピン部材12の他端部分がアーマチャ部材14の本体から外方に伸びるようにする。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、ピン部材12には、アーマチャ部材14の材料に対し係止配置状態を形成する領域を提供し得るようその面に沿って形成された切欠き20が設けられる。切欠き20は、連続的とし(例えば、ピン部材12の全周に沿って伸びる凹状領域を形成する)、又は不連続的とする(ピン部材12の全周に沿って伸びない少なくとも1つの凹状領域を形成する)ようにすることができる。
【0013】
本発明の組立体10を形成するため、本発明の1つの実施の形態によれば、全体として、図2に示したダイ部材100が採用される。ダイ部材100は、キャビティ102を画成する領域と、キャビティ102と連けいした穴104(例えば、貫通穴)を画成する領域とを有している。本発明の特定の作用理論に拘束されることなく、キャビティ102の全体的な寸法及び形態は、本発明のアーマチャ部材14を形成するのに適している。
【0014】
図3において、本発明の1つの代替的な実施の形態によれば、ダイ部材100と作用可能に関係した選択可能な突き出し装置200が示されている。突き出し装置200は、穴104と連けいしており、例えば、突き出し装置200の少なくとも一部分は穴104内に受け入れられる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、突き出し装置200は、突き出し部材202と、突き出し部材が配備されるように、すなわち穴104を通ってキャビティ102に向けて上方に伸びるように選択的に作用可能である作動装置204とを有している。
【0016】
ダイ部材100及び選択可能な突き出し装置200が適正に配置されたならば、ピン部材12が穴104の下方部分104bと近接する突き出し部材202と接触し且つ、該突き出し部材202上に休止するようにピン部材12は穴104の上方部分104a内に配置される。キャビティ102の一部分を穴104から密封し、又はこれと代替的に、ピン部材12を支持するため、シール、軸受又は同様のものを使用することが可能であることを理解すべきである。本発明の特定の作用理論に拘束されることなく、開口部104cとピン部材12との間の許容公差が実質的に小さく、近接する材料が穴104内に容易に入ることができないようにする。
【0017】
図4において、ピン部材12が穴104内に適正に配置されたならば、金属粉末を含むが、金属粉末に限定されないある量の金属材料300をキャビティ102内に充填し又はその他の方法にて配置し、該金属材料はピン部材12の露出部分(この場合、ピン部材12の第一の端部16)を少なくとも実質的に包み込む又はその他の方法にて取り囲むようにする。上述したように、ピン部材12は、該ピン部材が例えば、切欠き20に近接して金属材料300と係止する配置状態を形成することが可能である限り、任意の数の形状にて形成することができる。金属材料300はキャビティ102を完全に充填するものとして示されているが、組み立て過程の特定の必要条件に対応して、この量よりも少ない量を使用することが可能であることを理解すべきである。
【0018】
図5において、十分な量の金属材料300がキャビティ102内に充填されたならば、圧縮装置400を採用して金属材料300を圧縮して、例えば、アーマチャ部材14のような所定の形状体及び(又は)所定の形態とする。本発明の1つの形態によれば、圧縮装置400は、例えば、圧縮部材402(例えば、ポンチ、プレス又は同様のもの)を有しており、該圧縮部材は、金属材料300を例えば、アーマチャ部材14のような適宜な形状体及び(又は)形態に圧縮し、圧密化し又はその他の方法にて形成し得るよう十分な力にて下方に向けて金属材料300と接触するよう選択的に作動可能である。
【0019】
図6において、金属材料300が適正に圧縮されたならば、組立体10は形成されたものとみなされる、すなわち、アーマチャ部材14は単一体部材を形成し得るようピン部材12の周りに形成されている。上述したように、例えば、金属材料300が圧縮されたとき、金属材料300は、ピン部材12の切欠き20に近接する領域に浸透し、係止する配置状態を形成する。この時点にて、組立体10は任意の数の適宜な方法によりダイ部材100のキャビティ102から除去される。
【0020】
図7において、完成した組立体10をダイ部材100のキャビティ102から除去するため、突き出し装置200は配備される。本発明の特定の作用理論に拘束されることなく、突き出し部材202は、作動装置204によって配備させ(例えば、キャビティ102に向けて上方に)、突き出し部材202は、組立体10がキャビティ102から押し出されるようにするのに十分な力にてピン部材12と接触するようにする。このようにして、組立体10の色々な部分の操作は最小限とされ、これにより、キャビティ102から取り出す過程の間、組立体に対する損傷を防止することが可能となる。
【0021】
図8において、ダイ部材100から完全に突き出されており、また、使用し且つ(又は)更なる加工を行う準備が整った組立体10が示されている。次に、ダイ部材10を使用して組立体10の追加的なユニットを形成することができる。更なる加工に関して、組立体10は、突き出した後、未加工状態にあるため、組立体10は焼結することができる。非限定的な例として、典型的な焼結工程中、未加工の圧密化した部品は、焼結される特定の合金に対応する制御された率にて加熱炉又は同様のものを通って移動するコンベア又は同様の装置の上に配置される。この焼結過程は、典型的に、金属材料の粒子間接合を完了させ、冷却したとき、最終部品となるようにする。
【0022】
本発明の説明は、性質上、単に一例であり、従って、本発明の要旨から逸脱しない変更例を本発明の範囲に含めることを意図するものである。かかる変更例は、本発明の精神及び範囲から逸脱するものとみなされるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の全体的な教示によるアーマチャピン組立体の斜視図である。
【図2】本発明の1つの実施の形態によるアーマチャピン組立体を製造するダイ部材の斜視図である。
【図3】選択可能な突き出し装置を備え、ピン部材は本発明の1つの代替的な実施の形態によってダイ部材内に配置された状態にて示された、図2に示したダイ部材の切断斜視図である。
【図4】本発明の1つの代替的な実施の形態により、ピン部材の露出部分を包み込み得るようにある量の金属材料がダイキャビティ内に充填された、図3に示したダイ部材の切断斜視図である。
【図5】本発明の1つの代替的な実施の形態により、圧縮部材が金属材料と接触するようにされた、図4に示したダイ部材の切断斜視図である。
【図6】本発明の1つの代替的な実施の形態により、金属材料が圧縮された、図5に示したダイ部材の切断斜視図である。
【図7】本発明の1つの代替的な実施の形態により、アーマチャピン組立体が突き出し装置によりダイ部材から突き出された、図6に示したダイ部材の切断斜視図である。
【図8】本発明の1つの代替的な実施の形態により、図7に示したダイ部材から完全に突き出されたアーマチャピン組立体の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 アーマチャ組立体 12 ピン部材
14 アーマチャ部材 16 ピン部材の第一の端部分
18 ピン部材の第二の端部分 20 切欠き
100 ダイ部材 102 キャビティ
104 穴 200 突き出し装置
202 突き出し部材 204 作動装置
300 金属材料 400 圧縮装置
402 圧縮部材/ポンチ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチャピン組立体(10)を形成する装置において、
キャビティ(102)が内部に形成され、キャビティ(102)が金属材料(300)を受け入れるよう作用可能であるダイ(100)と、
ダイ(100)の表面に形成された穴(104)を画成する領域であって、該穴(104)は、ピン部材(12)が少なくとも部分的にキャビティ(102)内に配置されるようにピン部材(12)を少なくとも部分的に受け入れるよう作用可能である、領域と、
圧縮装置(400)とを備え、
キャビティ(102)は、ピン部材(12)を少なくとも部分的に包囲し得るように金属材料(300)を受け入れるよう作用可能であり、
圧縮装置(400)が作動されたとき、圧縮装置は、金属材料(300)と接触し、ピン部材(12)の周りにアーマチャ部材(14)を形成するよう作用可能であり、
ピン部材(12)はアーマチャ部材(14)に締結される、アーマチャピン組立体を形成する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、突き出し装置(200)を更に備え、突き出し装置(200)は穴(104)と連けいしており、該突き出し装置(200)はピン部材(12)と接触するよう選択的に作用可能である、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、圧縮装置(400)は、金属材料(300)と接触するよう選択的に作用可能であるポンチ部材(402)を備える、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、ピン部材(12)の一部分及び金属材料(300)は係止配置状態にある、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、ピン部材(12)は、凹状部分(20)を画成する領域を有し、金属材料(300)は凹状部分(20)内に侵入し、金属材料と凹状部分の間にて係止配置状態を形成し得るよう作用可能である、装置。
【請求項6】
アーマチャピン組立体(10)において、
ピン部材(12)と、
アーマチャ部材(14)とを備え、
該アーマチャ部材(14)は、キャビティ(102)が内部に形成されたダイ(100)を提供する工程と、
ピン部材(12)をキャビティ(102)内に配置する工程と、
ピン部材(12)の少なくとも一部分を包囲し得るようにある量の金属材料(300)をキャビティ(102)内に充填する工程と、
ピン部材(12)の周りにアーマチャ部材(14)を形成し得るように金属材料(300)を圧縮する工程とにより形成され、
ピン部材(12)は、アーマチャ部材(14)に締結されている、アーマチャピン組立体。
【請求項7】
請求項6に記載の組立体において、ダイ(100)と作用可能に関係付けられた突き出し装置(200)を更に備え、突き出し装置(200)はキャビティ(102)の面に形成された穴(104)を画成する領域と連けいしており、突き出し装置(200)はピン部材(12)と接触するよう選択的に作用可能である、組立体。
【請求項8】
請求項6に記載の組立体において、圧縮する工程は、ポンチ部材(402)にて金属材料(300)に選択的に接触する工程を備える、組立体。
【請求項9】
請求項6に記載の組立体において、ピン部材(12)の少なくとも一部分及び金属材料(300)が係止配置状態にある、組立体。
【請求項10】
請求項6に記載の組立体において、ピン部材(12)は凹状部分(20)を画成する領域を有し、金属材料(300)は凹状部分(20)内に侵入し、金属材料と凹状部分の間にて係止配置状態を形成し得るよう作用可能である、組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−187804(P2006−187804A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325754(P2005−325754)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】