説明

イオンチャンネルモジュレーター

本発明は、化合物、化合物を含む組成物および化合物および組成物の使用方法に関する。本発明の化合物、組成物および方法は、イオンチャンネル機能の治療的モジュレーションおよび疾患および病徴、特にあるカルシウムチャンネルサブタイプターゲットにより介在される疾患の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
全ての細胞は、細胞膜を横切る無機イオンの制御された動きに依存し、本質的な生理学的機能をする。電気興奮性、シナプス可塑性、およびシグナル伝達は、イオン濃度の変化が重要な役割を果たすプロセスの例である。一般に、これらの変化を許容するイオンチャンネルは、1または複数のサブユニットからなるタンパク質孔であり、それぞれは、2以上の膜貫通ドメインを含有する。殆どのイオンチャンネルは、サイズおよび電荷についての物理的優先傾向のために、特定のイオン、主にNa、K、Ca2+またはClに対して選択性を有する。能動輸送よりも、電気化学力が膜を横切ってイオンを推進し、かくして1つのチャンネルが1秒当たり数百万のイオンの通過を可能にする。チャンネルの開口、すなわち「通門(gating)」は、チャンネルのサブクラスに応じて、電圧における変化によるか、またはリガンド結合により、厳重に抑制される。イオンチャンネルは、多くの生理学的プロセスに関与するので、魅力的な治療標的であるが、特定の組織タイプにおける特定のチャンネルについての特異性を有する医薬の調製は依然として主な課題である。
【0002】
電位依存性イオンチャンネルは、膜電位の変化に応じて開く。例えば、興奮性細胞、例えば、ニューロンの脱分極の結果、Naイオンの一時的流入が起こり、これは神経インパルスを増大させる。このようなNa濃度における変化は、電位依存性Kチャンネルにより察知され、次にKイオンを流出させる。Kイオンの流出は、膜を再分極化させる。他の細胞タイプは、電位依存性Ca2+チャンネルに依存し、活動電位を生じる。電位依存性イオンチャンネルは、非興奮性細胞においても、分泌の制御、恒常性、および有糸分裂促進プロセスなどにおいて重要な働きをする。リガンド依存性イオンチャンネルは、細胞外刺激、例えば、神経伝達物質(例えば、グルタメート、セロトニン、アセチルコリン)または細胞内刺激(例えば、cAMP、Ca2+、およびリン酸化)により開くことができる。
【0003】
電位依存性カルシウムチャンネルのCa2ファミリーは、3つの主なサブタイプCa2.1(PまたはQ−タイプカルシウム流)、Ca2.2(N−タイプカルシウム流)およびCa2.3(R−タイプカルシウム流)からなる。これらの流れは、ほぼ例外なく、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)および神経内分泌細胞において見られ、シナプス前電位依存性カルシウム流の優性型を構成する。シナプス前カルシウムエントリーは、多くの型のG−蛋白質共役受容体(GPCR)によりモジュレートされ、Ca2チャンネルのモジュレーションは、広範囲に及び、神経伝達の調節の高効果的手段である。Ca2チャンネルのサブユニット組成物は、孔を形成し、電圧感知性ゲート(α2.1、α2.2およびα2.3、それぞれα1A、α1Bおよびα1Eともいう)を含有するそのαサブユニット、ならびにβ、αδおよびγサブユニットにより規定される。
【0004】
イオンチャンネル機能における遺伝子的または薬理学的摂動は、劇的な臨床的結果を有し得る。QT延長症候群、癲癇、嚢胞性線維症および一過性運動失調症は、イオンチャンネルサブユニットにおける突然変異の結果の遺伝性疾患の数例である。有害な副作用、例えば、不整脈および癲癇発作は、ある種の医薬により引き起こされるが、イオンチャンネル機能障害による(Sirois, J.E. and, Atchison, W.D., Neurotoxicology 1996; 17(1):63-84; Keating, M.T., Science 1996 272:681-685)。医薬は、イオンチャンネル活性の治療的調節に有用であり、高血圧、狭心症、心筋虚血、喘息、過活動膀胱、脱毛症、疼痛、心不全、月経困難症、II型糖尿病、不整脈、移植片拒絶、癲癇発作、痙攣、癲癇、卒中、胃運動亢進症、精神病、癌、筋ジストロフィーおよびナルコレプシーをはじめとする多く病的状態の治療において使用される(Coghlan, M.J., et al. J. Med. Chem. 2001, 44:1627-1653; Ackerman. M.J., and Clapham, D.E. N. Eng. J. Med. 1997, 336:1575-1586)。より多くの同定されたイオンチャンネルおよびその複雑さの理解は、イオンチャンネル機能を変更する治療での今後の取り組みにおいて役立つであろう。
【0005】
Ca2チャンネル活性の治療的モジュレーションは、多くの病状の治療に適用される。すべての一次感覚球心性神経は、脊髄後角および後角の後根神経節のニューロンに入力し、Ca2.2チャンネルを介するカルシウム流入は、脊髄のシナプス前神経末端からの神経伝達物質の放出を引き起こす。したがって、これらのチャンネルが、痛みを介在する種々の受容体からの共通経路ダウンストリームにあるので、Ca2.2チャンネルの遮断は、広く効果があると考えられる(Julius, D. and Basbaum, A.I. Nature 2001, 413:203-216)。実際に、Ca2.2選択的コノペプチドジコニチド(ziconitide)(SNX−111)のくも膜下注入は、動物およびヒトにおける神経性の痛みおよび炎症性の痛みの両方に対して広く効果的であることが示されている(Bowersox, S.S. et al, J Pharmacol Exp Ther 1996, 279:1243-1249)。また、ジコノチド(Ziconotide)は、全体または局所的虚血のラットモデルにおいて神経保護剤として高い効果を示している(Colburne, F. et al, Stroke 1999, 30:662-668)。かくして、Ca2.2のモジュレーションが、神経保護/卒中の治療に影響を与えると考えることは理にかなっている。
【0006】
Ca2.2チャンネルは末梢において見られ、交感神経ニューロンおよび副腎クロム親和性細胞からのカテコールアミン放出を介在する。いくつかの形態の高血圧は、交感神経性の緊張の上昇により生じ、Ca2.2モジュレーターは、この障害の治療において特に効果的であり得る。Ca2.2の完全な遮断は、低血圧症を引き起こし、あるいは圧受容体反射を弱めうるが、Ca2.2モジュレーターによる部分的な阻害は、反射性頻脈を最小限にして高血圧を減少させることができる可能性がある(Uneyama, O.D. Int. J. Mol. Med. 1999 3:455-466)。
【0007】
過活動膀胱(OAB)は、膀胱における排尿筋の過活動の結果起こる貯蔵症状、例えば、尿意逼迫、頻尿および夜尿症(急迫性尿失禁を伴うかまたは伴わない)により特徴づけられる。OABは、急迫性尿失禁につながり得る。OABおよび膀胱痛症候群の病因はわからないが、神経、平滑筋および尿路上皮の障害がOABを引き起こし得る(Steers, W. Rev Urol, 4:S7-S18)。膀胱過活動の低下は、Ca2.2および/またはCa1チャンネルの阻害により間接的に影響を受け得ることを示唆する証拠がある。
【0008】
脊髄後角の表面膜におけるCa2.1チャンネルの局在化は、ある種の型の痛みの認識および維持おける、これらのチャンネルの関与を示唆している(Vanegas, H. and Schaible, H. Pain 2000, 85:9-18)。Ca2.1カルシウム流の完全な排除は、シナプス伝達を改変し、その結果重大な失調を生じさせる。ガバペンチンは、癲癇のアドオン療法として、長年臨床的に用いられてきた。近年、これは、神経性の痛みの優れた治療として浮上してきた。臨床試験により、ガバペンチンが、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、三叉神経痛、片頭痛および線維筋痛の治療に有効であることが示されている(Mellegers, P.G. et al Clin J Pain 2001, 17:284-295)。ガバペンチンは、代謝的に安定なGABA模倣剤として設計されたが、ほとんどの研究において、GABA受容体への影響が見られなかった。Ca2.1チャンネルのαδサブユニットは、CNSにおけるガバペンチンに関する高アフィニティ結合部位として同定されている。ガバペンチンが、αδサブユニットの機能を阻害し、それによりシナプス前カルシウム流を阻害することにより脊髄における神経伝達を阻害することができることを示唆する証拠がある。
【0009】
発明の概要
本発明は、ヘテロサイクリック化合物、前記化合物を含む組成物、および前記化合物および化合物組成物の使用法に関する。この化合物およびこれを含む組成物は、イオンチャンネルが介在するか、イオンチャンネルに関連するものをはじめとする疾患または病徴の治療に有用である。
【0010】
一の態様において、式(I):
【化1】

[式中:
は、ArまたはAr−X−Yであり、ここに、
各々Arは、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
Xは、NR、C(RまたはOであり;
Yは、C=Oまたは低級アルキルであり;
は、Ar、またはArにより置換されていてもよい低級アルキルであり;
各々Arは、独立して、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
各々Rは、(CHC(O)OR、(CHC(O)Ar、(CHC(O)NR、(CHNR、(CHArまたは(CHArから独立して選択され;
各々Rは、Hまたは低級アルキルから独立して選択され;
各々Rは、H、低級アルキルまたは(CHArから独立して選択され;
mは、1または2であり;
nは、2または3であり;
pは、0または1であり;
各々Arは、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
Ar、ArおよびArに関する置換基は、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、S(O)OR、NR、シクロアルキル、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cペルフルオロアルコキシ、1,2−メチレンジオキシ、C(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)NR、C(NR)NR、NRC(NR)NR、S(O)NR、R、C(O)R、NRC(O)R、S(O)RまたはS(O)から独立して選択され;
各々Rは、水素、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々Rは、水素、(CHAr、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々、Rは、(CHAr、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々Arは、C−Cシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから独立して選択され、各々、ハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく;
qは、0または1である]
【0011】
他の態様において、該化合物は、本発明の式で示されるいずれかの化合物である(そのいずれもの組合せを含む):
式中、
はArであり、RはArである;
【0012】
式中、
は、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
は、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;
【0013】
式中、
は(CHC(O)OR、(CHC(O)Arまたは(CHC(O)NRである;
【0014】
式中、
は(CHArであり、Arはアリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;
【0015】
式中、
は(CHC(O)NRであり、Rは、独立して、(CHArであり、ここに、Arはアリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;
【0016】
式中、
は(CHNRまたは(CHArである;
【0017】
式中、
mは2であり、Arは、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい炭素原子およびN、OおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する5員環を含むヘテロアリールである;
【0018】
式中、
Arは、ピロリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリルまたはベンゾチアゾリルであり、ここに、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;または
【0019】
ここに、式Iで示される化合物は、下記表1〜6のいずれかに記載の化合物またはその医薬的塩である。
【0020】
他の態様において、式Iで示される化合物および医薬上許容される担体を有する組成物を提供する。組成物は、さらに付加的な治療剤を有しうる。
【0021】
他の態様において、治療を必要とする対象の疾患または病徴の治療方法であって、該対象に有効量の本明細書に記載の式で示されるいずれかの化合物を投与することを含む方法を提供する。該方法は、疾患または病徴が、Cav2.2を含むカルシウムチャンネルCav2によりモジュレート(例えば、阻害、拮抗、作用)されるものであり得る。疾患または病徴は、狭心症、高血圧、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、糖尿病、尿失禁、卒中、痛み、外傷性脳損傷またはニューロン障害でありうる。
【0022】
他の態様において、本発明は、カルシウムチャンネル活性をモジュレート(例えば、阻害、拮抗、作用)する方法であって、カルシウムチャンネルを、本明細書に記載の式で示されるいずれかの化合物と接触させることを含む方法;それを必要とする対象のカルシウムチャンネルCav2(例えば、Cav2.2)活性をモジュレートする方法であって、該対象に、治療的に有効な量の本明細書のいずれかの式で示される化合物(またはその組成物)を投与することを含む方法である。
【0023】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の式で示されるいずれかの化合物、付加的な治療剤および医薬上許容される担体を含む組成物に関する。付加的な治療剤は、心血管疾患剤および/または神経性疾患剤でありうる。神経性疾患剤は、末梢神経系(PNS)疾患剤および/または中枢神経系(CNS)疾患剤を意味する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、疾患または病徴(限定するものではないが、狭心症、高血圧、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、糖尿病、尿失禁、卒中、痛み、外傷性脳損傷またはニューロン障害を含む)を有する対象(例えば、哺乳動物、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ)の治療方法に関する。該方法は、該対象(かかる治療を必要とすることが同定された対象を含む)に有効量の本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の組成物を投与して効果を発揮させることを含む。かかる治療を必要とする対象の同定は、対象またはヘルスケアの専門家の判断であってもよく、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能である)であってもよい。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、イオンチャンネル介在疾患または病徴(限定するものではないが、狭心症、高血圧、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、糖尿病、尿失禁、卒中、痛み、外傷性脳損傷またはニューロン障害を含む)を有する対象(例えば、哺乳動物、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ)の治療方法に関する。該方法は、対象(かかる治療を必要とすることが同定された対象を含む)に、有効量の本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の組成物を投与し、効果を発揮させることを含む。かかる治療を必要とする対象の同定は、対象またはヘルスケアの専門家の判断であってもよく、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能である)であってもよい。
【0026】
また、本発明は、本明細書に記載の化合物の製造方法であって、本明細書のスキームまたは実施例に記載のいずれもの反応または試薬を含む方法に関する。別法として、該方法は、本明細書に記載の中間体化合物のいずれか1つを得、それを1つのまたはそれ以上の化学物質と、1つまたはそれ以上の工程で反応させて、本明細書に記載の化合物を得ることを含む。
【0027】
また、本発明の範囲には、パッケージされた製品も含まれる。パッケージ化製品は、容器、容器中の前記化合物のうちの1つ、ならびに容器に添付され、イオンチャンネル調節に関連する障害を治療するための化合物の投与に関連する説明書(例えば、ラベルまたは挿入物)を含む。
【0028】
他の具体例において、本明細書において示される化合物、組成物および方法は、本明細書の表に示されるいずれかの化合物またはこれらを含む方法である。
【0029】
本発明の1以上の具体例の詳細を以下の添付の図面および説明において記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および請求の範囲から明らかであろう。
【0030】
発明の詳細な記載
本明細書において用いられる場合、「ハロ」なる用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の任意のラジカルである。
「アルキル」なる用語は、表示された数の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖であってよい炭化水素鎖である。例えば、C−Cは、1〜5個(両端を含む)の炭素原子をその中に有する基を示す。「低級アルキル」なる用語は、C−Cアルキル鎖である。「アリールアルキル」なる用語は、アルキル水素原子がアリール基により置換されている部分である。
【0031】
「アルコキシ」なる用語は、−O−アルキルラジカルである。「アルキレン」なる用語は、二価アルキル(すなわち、−R−)である。「アルキレンジオキソ」なる用語は、−O−R−(式中、Rはアルキレンを表す)の構造を有する二価種である。
本明細書において用いられる「シクロアルキル」なる用語は、3〜12個、好ましくは3〜8個の炭素、さらに好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和および部分不飽和環状炭化水素基を包含する。
【0032】
「アリール」なる用語は、6員単環または10〜14員多環芳香族炭化水素環系であり、ここにおいて、各環の0、1、2、3または4個の原子は置換基により置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0033】
「ヘテロサイクリル」なる用語は、単環ならば1〜3個のヘテロ原子、二環ならば1〜6個のヘテロ原子、三環ならば1〜6個のヘテロ原子を有する、非芳香族5〜8員単環、8〜12員二環または11〜14員三環式環系を意味し、前記ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば、炭素原子および単環、二環または三環ならばそれぞれ1〜3、1〜6または1〜9個の、N、OまたはSのヘテロ原子)、ここにおいて、0、1、2または3個の各環の原子は置換基により置換されていてもよい。
【0034】
「ヘテロアリール」なる用語は、単環ならば1〜3個のヘテロ原子、二環ならば1〜6個のヘテロ原子、三環ならば1〜9個のヘテロ原子を有する、芳香族5〜8員単環、8〜12員二環または11〜14員三環式環系を意味し、前記ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば、炭素原子および、単環、二環または三環ならば、それぞれ1〜3、1〜6または1〜9個のN、OまたはSのヘテロ原子)、ここにおいて、0、1、2、3または4個の各環の原子は置換基により置換されていてもよい。
【0035】
「オキソ」なる用語は、炭素と結合した場合にカルボニルを形成し、窒素と結合した場合にN−オキシドを形成し、硫黄と結合した場合にスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子である。
「アシル」なる用語は、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロサイクルカルボニルまたはヘテロアリールカルボニルであり、その任意のものは置換基によりさらに置換されていてもよい。
【0036】
「置換基」なる用語は、基の任意の原子のアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリール基で「置換された」基を意味する。好適な置換基としては、制限なく、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、S(O)OR、NR、C−Cパーフルオロアルキル、C−Cパーフルオロアルコキシ、1,2−メチレンジオキシ、C(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)NR、C(NR)NR、NRC(NR)NR、S(O)NR、R、C(O)R、NRC(O)R、S(O)RまたはS(O)が挙げられる。各Rは、独立して、水素、C−CアルキルまたはC−Cシクロアルキルである。各Rは独立して、水素、C−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、C−Cアルキル、あるいはC−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールで置換されたC−Cアルキルである。各Rは独立して、C−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリール、C−Cアルキル、あるいはC−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールで置換されたC−Cアルキルである。各R、RおよびRにおける各C−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリル、ヘテロアリールおよびC−Cアルキルは所望により、ハロゲン、CN、C−Cアルキル、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、C−Cパーフルオロアルキル、C−Cパーフルオロアルコキシまたは1,2−メチレンジオキシで置換されていてもよい。
【0037】
他の態様において、ある基の置換基は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、SOH、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル(C1−C6直鎖または分枝鎖)、アルコキシ(C1−C6直鎖または分枝鎖)、O−ベンジル、O−フェニル、フェニル、1,2−メチレンジオキシ、カルボキシル、モルホリニル、ピペリジニル、アミノまたはOC(O)NRである。各RおよびRは前記のとおりである。
【0038】
「治療する」または「治療された」なる用語は、疾患または疾患の症状、または疾患の傾向を治療、治癒、緩和、軽減、変更、矯正、改良、改善または影響を及ぼす目的で、本明細書に記載される化合物を対象者に投与することである。
「有効量」とは、治療される対象者に対して治療的効果を付与する化合物の量を意味する。治療効果は、客観的(すなわち、試験またはマーカーにより測定可能)または客観的(すなわち、対象者が効果の徴候を示すかまたは効果を感じる)であり得る。前記化合物の有効量は、約0.1mg/Kg〜約500mg/Kgの範囲である。有効量は、投与経路、ならびに他の薬剤の同時使用の可能性によっても変わる。
【0039】
組成物および方法において有用な代表的化合物を示す:
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
【表11】

【0050】
【表12】

【0051】
【表13】

【0052】
【表14】

【0053】
【表15】

【0054】
【表16】

【0055】
【表17】

【0056】
【表18】

【0057】
【表19】

【0058】
【表20】

【0059】
【表21】

【0060】
【表22】

【0061】
【表23】

【0062】
【表24】

【0063】
【表25】

【0064】
【表26】

【0065】
【表27】

【0066】
【表28】

【0067】
【表29】

【0068】
【表30】

【0069】
【表31】

【0070】
【表32】

【0071】
【表33】

【0072】
【表34】

【0073】
【表35】

【0074】
【表36】

【0075】
【表37】

【0076】
【表38】

【0077】
【表39】

【0078】
【表40】

【0079】
【表41】

【0080】
【表42】

【0081】
【表43】

【0082】
【表44】

【0083】
【表45】

【0084】
【表46】

【0085】
【表47】

【0086】
【表48】

【0087】
【表49】

【0088】
【表50】

【0089】
【表51】

【0090】
【表52】

【0091】
【表53】

【0092】
【表54】

【0093】
【表55】

【0094】
【表56】

【0095】
【表57】

【0096】
【表58】

【0097】
【表59】

【0098】
【表60】

【0099】
イオンチャンネルモジュレーティング化合物は、インビトロ(例えば、細胞および非細胞系)およびインビボ法の両方により同定することができる。これらの方法の代表例を本明細書の実施例において記載する。
【0100】
本発明により想定される置換基および変数の組み合わせは、結果として安定な化合物が形成されるものだけである。本明細書において用いられる「安定な」なる用語は、製造を可能にするために十分な安定性を有し、本明細書において詳細に記載される目的(例えば、対象者に対する治療的または予防的投与)に関して十分な時間、有用であるために化合物の一体性を維持する化合物を意味する。
【0101】
本明細書において示される化合物は、本明細書のスキームにおいて示されるように、通常の方法を用いて合成することができる。本明細書のスキームにおいて、特に記載しない限り、化学式における変数は本明細書の他の式において定義した通りである。例えば、スキームにおけるAr、Ar、R、RおよびRは、スキームにおいて特に定義する場合を除いては、本明細書における任意の式においてと同様に定義される。
【0102】
スキーム1
【化2】

【0103】
ブロモメチル化合物をアジ化ナトリウムで処理して、アジドメチル化合物(I)を得た。(I)を、還元条件下、例えば、HCl水溶液中、H雰囲気下炭素担持パラジウムで処理して、アミン(II)を得る。(II)をイソチオシアネート(III)で処理して、イミダゾール(IV)を得る。(IV)を3−ブロモ−プロピオネートまたは4−ブロモ−ブチレート(V)と反応させて、N−アルキル化イミダゾール(V1a)を得る。エステル(VIa)で鹸化して、カルボン酸(VIb)を得る。
【0104】
スキーム2
【化3】

【0105】
別法として、イミダゾール(IV)を、以下のように調製する。エチルジエトキシアセテート(VII)をヒドラジンで、溶媒(例えば、エタノール)中で処理して、ヒドラジド(VIII)を得る。(VIII)をチオイソシアネート(III)で、水性塩基性条件下で処理して、イミダゾール(IX)を得、これを、水性酸性条件下に付してアルデヒド(X)を得る。(X)およびアミン(XI)の還元アミノ化により(IV)を得る。
【0106】
スキーム3
【化4】

【0107】
カルボン酸(VIb)を、標準的なカップリング条件下で、適当な置換アミンと反応させて、所望のアミド(XII)を得る。アミドを、通常の還元条件下(例えば、ジボランまたは水素化アルミニウムリチウム)で還元して、対応するアミン(XIII)を得る。別法として、(VIb)をWeinreb剤で処理し、アミド(XIV)を得る。アミド(XIV)を、標準的な条件下で、有機金属触媒(例えば、アリールリチウムまたはアリールマグネシウムhalide)で処理して、ケトン(XV)を得る。ケトンを種々の条件下で還元して所望の生成物(XVI)を得る。
【0108】
スキーム4
【化5】

【0109】
エステル(VIa)を標準的な還元条件(例えば、水素化アルミニウムリチウム)で処理して、アルコール(XVII)を得る。(XVII)を標準的なエーテル形成条件下(例えば、NaH、ベンジルブロマイド)で処理して、(XVIII)を得る。
【0110】
スキーム5
【化6】

【0111】
ヘテロアリール誘導体を得るための別の経路は、(VIb)の活性化酸を、適当な物質と反応させ、ついで、環化して、所望の生成物を得る。例えば、スキーム5に記載のほうに、(VIb)の活性化酸をベンゼン−1,2−ジアミンと反応させて、中間体アミド(XIX)を得、これを環化して、ベンズイミダゾール誘導体(XX)を得る。
【0112】
合成された化合物は、反応混合物から分離することができ、さらに、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、または再結晶などの方法により精製することができる。当業者には理解できるように、本発明の式の化合物を合成するさらなる方法は、当業者には明らかであろう。さらに、様々な合成段階は、代替順序または所望の化合物を得るための順序で行うことができる。本明細書において記載される化合物の合成において有用な合成化学変化および保護基方法論(保護および脱保護)は当該分野において公知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd. Ed., Wiley-VCH Publishers (1999); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd. Ed., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John WileyおよびSons (1999);およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)およびその後の版に記載されているものを包含する。
【0113】
本発明の化合物は、1以上の不斉中心を含有し、従って、ラセミ化合物およびラセミ混合物、1つのエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として存在する。これらの化合物のすべてのこのような異性体形態は、明らかに本発明に含まれる。本発明の化合物は、複数の互変異性形態において表すことができ、このような場合、本発明は明らかに本明細書において記載される化合物の全ての互変異性形態を包含する(例えば、環系のアルキル化の結果、複数の部位でアルキル化が起こり、本発明は明らかにこのような反応生成物を全て包含する)。かかる化合物のこのような異性体形態はすべて明らかに本発明に含まれる。本明細書に記載される化合物のすべての結晶形態は明らかに本発明に含まれる。
【0114】
本明細書において用いられる場合、本明細書において記載される式の化合物を包含する本発明の化合物は、医薬的に許容される誘導体、またはそのプロドラッグを包含すると定義される。「医薬的に許容される誘導体またはプロドラッグ」なる用語は、本発明の化合物の任意の医薬的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味し、これは受容者に投与されると、本発明の化合物を(直接または間接的に)提供することができる。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、親種と比較して、かかる化合物が哺乳動物に投与された場合に、本発明の化合物のバイオアベイラビリティーを増大させるか(例えば、経口投与された化合物がより容易に血中に吸収されることを許容することによる)、または親化合物の生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への送達を増大させる。好ましいプロドラッグは、水性溶解度または腸膜を通る能動輸送を向上させる基が、本明細書において記載される式の構造に付与される誘導体を包含する。例えば、Alexander, J. et al. Journal of Medicinal Chemistry 1988, 31, 318-322; Bundgaard, H. Design of Prodrugs; Elsevier: Amsterdam, 1985; pp 1-92; Bundgaard, H.; Nielsen, N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30, 451-454; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; Harwood Academic Publ.: Switzerland, 1991; pp 113-191; Digenis, G. A. et al. Handbook of Experimental Pharmacology 1975, 28, 86-112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design amd evelopment; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996; pp 351-385; Pitman, I. H. Medicinal Research Reviews 1981, 1, 189-214; Sinkula, A. A.; Yalkowsky. Journal of Pharmaceutical Sciences 1975, 64, 181-210; Verbiscar, A. J.; Abood, L. G Journal of Medicinal Chemistry 1970, 13, 1176-1179; Stella, V. J.; Himmelstein, K. J. Journal of Medicinal Chemistry 1980, 23, 1275-1282; Bodor, N.; Kaminski, J. J. Annual Reports in Medicinal Chemistry 1987, 22, 303-313を参照。
【0115】
本発明の化合物は、適当な官能基を付加することにより修飾して、選択的生物学的特性を向上させることができる。このような修飾は、当該分野において公知であり、所定の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、神経系)中への生物学的透過を増大させ、経口利用可能性を増大させ、注射による投与を可能にするために溶解度を増大させ、代謝を変更し、放出速度を変更するものを包含する。
【0116】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩は、医薬的に許容される無機および有機酸および塩基から誘導されるものを包含する。好適な酸塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸、例えば、シュウ酸は、それ自体は医薬的に許容されないが、本発明の化合物およびその医薬的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において用いることができる。適当な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN−(アルキル)塩が挙げられる。本発明はさらに、本明細書に開示されている化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を含む。水または油溶性、または分散性生成物は、かかる四級化により得ることができる。
【0117】
本明細書において記載される式の化合物は、例えば、注射、静脈内、動脈内、表皮下、腹腔内、筋肉内、または皮下的に;あるいは経口、口腔内、経鼻、経粘膜、局所、点眼薬、または吸入により、体重1kgあたり約0.5〜約100mg、あるいは各投与あたり1mgから1000mgの間の用量で、4〜120時間ごとに、または特定の医薬の要件に従って投与することができる。本明細書において記載される方法は、所望の、または所定の効果を達成するための、有効量の化合物、または化合物組成物の投与を意図する。典型的には、本発明の医薬組成物は、1日あたり約1〜約6回、または連続注入として投与される。かかる投与は、慢性または急性療法として用いることができる。担体物質と組み合わせて1回量にすることができる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与様式によって変わるであろう。典型的な製剤は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有する。あるいは、かかる製剤は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。
【0118】
前記よりも少ないかまたは多い用量が必要とされ得る。任意の特定の対象者についての特定の投与量および治療計画は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与回数、放出速度、医薬の組み合わせ、疾患、状態または症状の重篤度および経過、患者の疾患、状態または症状に対する傾向、および治療する医師の判断をはじめとする様々な因子に依存する。
患者の状態が改善されると、維持量の本発明の化合物、組成物または組み合わせを必要に応じて投与することができる。その後、用量または投与の頻度、または両方を、症状の関数として、症状が所望のレベルに軽減された場合に改善された状態が持続されるレベルに減少させ、治療を中止すべきである。しかしながら、患者は、病徴の再発に基づいて長期に断0続的治療を必要とする場合がある。
【0119】
本明細書において示される組成物は、本明細書において示される式の化合物、ならびにもし存在するならば追加の治療薬を、イオンチャンネルが介在する障害、またはその症状を包含する疾患または病徴の調節を達成するために有効な量で含む。追加の治療薬の例を含む参考文献は次のものである:1)Burger’s Medicinal Chemistry & Drug Discovery 6th edition, by Alfred Burger, Donald J. Abraham, ed., Volumes 1 to 6, Wiley Interscience Publication, NY, 2003;2)Ion Channels and Disease by Francis M. Ashcroft, Academic Press, NY, 2000;および3)Calcium Antagonists in Clinical Medicine 3rd edition, Murray Epstein, MD, FACP, ed., Hanley & Belfus, Inc., Philadelphia, PA, 2002 。追加の治療薬は、これらに限定されないが、心血管疾患(例えば、高血圧、狭心症など)、代謝性疾患(例えば、X症候群、糖尿病、肥満)、痛み(例えば、急性の痛み、炎症性の痛み、神経性の痛み、片頭痛など)、腎臓または尿生殖器疾患(例えば、糸球体腎炎、尿失禁、ネフローゼ症候群)、異常細胞成長(例えば、癌、線維症)、神経性疾患(例えば、癲癇、卒中、片頭痛、外傷性脳損傷またはニューロン性障害など)、気管支疾患(例えば、喘息、COPD、肺高血圧)およびその病徴の治療用医薬を包含する。心血管疾患および病徴の追加の治療薬の例は、これらに限定されないが、抗高血圧剤、ACE抑制剤、アンギオテンシンIIレセプター拮抗物質、スタチン、β遮断薬、酸化防止剤、抗炎症薬、抗血栓薬、抗凝固剤、または抗不整脈剤を包含する。代謝性疾患および病徴を治療するための追加の治療薬の例は、ACE抑制剤、アンギオテンシンII拮抗物質、フィブレート、チアゾリジンジオンまたはスルホニル尿素抗糖尿病薬を包含するが、これに限定されない。痛みおよびその徴候の治療用の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、非ステロイド系抗炎症剤(「NSAIDS」、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルミゾール、アセトアミノフェンなど)、オピオイド(例えば、モルフィン、フェンタニル、オキシコドン)およびガバペンチン、ジコニチド、トラマドール、デキストロメトロファン、カルバマゼピン、ラモトリジン、バクロフェンまたはカプサイシンのような薬剤が挙げられる。腎臓および/または尿生殖器症候群およびその症状を治療するための追加の治療薬の例は、これらに限定されないが、アルファ−1アドレナリン作用性拮抗物質(例えば、ドキサゾシン)、抗ムスカリン作用薬(例えば、トルテロジン)、ノルエピネフリン/セロトニン再摂取阻害剤(例えば、デュロキセチン)、三環系抗鬱薬(例えば、ドキセピン、デシプラミン)またはステロイドを包含する。異常細胞成長症候群およびその徴候の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、抗サイトカイン治療剤(例えば、抗TNFおよび抗IL−1生物製剤、p38MAPK阻害剤)、エンドセリン−1アンタゴニストまたは幹細胞治療剤(例えば、前駆細胞)が挙げられる。卒中疾患およびその徴候の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、神経保護剤および抗凝血剤(例えば、アルテプラーゼ(TPA)、アブシキシマブ)が挙げられる。癲癇およびその徴候の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、GABAアナログ、ヒダントイン、バルビツレート、フェニルトリアジン、スクシニミド、バルプロ酸、カルバマゼピン、ファルバメートおよびレベラセタムが挙げられる。片頭痛の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、セロトニン/5−HT受容体アゴニスト(例えば、スマトリプタンなど)が挙げられる。気管支疾患およびその徴候の付加的な治療剤の例としては、限定するものではないが、抗コリン作用剤(例えば、チオトロピウム)、ステロイド、抗炎症剤、抗サイトカイン剤またはPDE阻害剤が挙げられる。
【0120】
「医薬的に許容される担体またはアジュバント」なる用語は、患者に本発明の化合物とともに投与することができ、治療的量の化合物を送達するために十分な量で投与された場合に、その薬理活性を損なわず、非毒性である担体またはアジュバントを意味する。
【0121】
本発明の医薬組成物において用いることができる医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルは、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化性薬物送達系(SEDDS)、例えば、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩、医薬形態において用いられる界面活性剤、例えば、Tweensまたは他の類似のポリマー送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を包含する。シクロデキストリン、例えば、α、β、およびγ−シクロデキストリン、またはその化学的に修飾された誘導体、例えば、2−および3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、または他の可溶化誘導体をはじめとするヒドロキシアルキルシクロデキストリンも、本明細書において記載される式の化合物の送達を向上させるために有利に用いることができる。
【0122】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻、頬、膣または埋込貯蔵器により、好ましくは経口投与、または注射による投与により投与することができる。本発明の医薬組成物は、通常の非毒性の医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含有することができる。場合によっては、処方された化合物またはその送達形態の安定性を向上させるために、処方のpHは医薬的に許容される酸、塩基または緩衝剤で調節することができる。本明細書において用いられる非経口なる用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、鞘内、病変内および頭蓋内注射、または注入技術を包含する。
【0123】
医薬組成物は、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液としてなどの滅菌注射可能な製剤の形態であってよい。この懸濁液は、当該分野において公知の技術に従って、好適な分散または湿潤剤(例えば、Tween80)および懸濁化剤を用いて処方することができる。無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中溶液であってもよい。使用できる許容されるビヒクルおよび溶媒のうち、マンニトール、水、リンガー液および等張性塩化ナトリウム溶液が溶媒または懸濁媒体として通常用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドをはじめとする任意の刺激のない固定油を用いることができる。脂肪酸、例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体、例えば、天然の医薬的に許容される油、例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化物が、注射物の調製において有用である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロース、または医薬的に許容される投与形態、例えば、エマルジョンおよび懸濁剤の処方において一般的に用いられる類似の分散剤も含有することができる。他の一般的に用いられる界面活性剤、例えば、TweensまたはSpansおよび/または医薬的に許容される固体、液体、または他の投与形態の製造において通常用いられる他の類似の乳化剤またはバイオアベイラビリティー向上剤も、処方の目的で使用することができる。
【0124】
本発明の医薬組成物は、これらに限定されないが、カプセル、錠剤、エマルジョンおよび水性懸濁液、分散液および溶液をはじめとする任意の経口的に許容される投与形態において、経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、通常用いられる担体は、ラクトースおよびコーンスターチを包含する。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムも典型的に添加される。カプセル形態における経口投与に関して、有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを包含する。水性懸濁液および/またはエマルジョンが経口投与される場合、活性成分は、油性相中に懸濁または溶解させることができ、乳化剤および/または懸濁化剤と組み合わせられる。所望により、ある種の甘味料および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加することができる。
【0125】
本発明の医薬組成物は、直腸投与のための坐剤の形態においても投与できる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温で固体であるが、直腸温度で液体であり、従って直腸中で溶融して、活性成分を放出する、適当な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。かかる物質としては、これらに限定されないが、カカオ脂、ミツロウおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0126】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所投与により容易に接近可能な部分または器官を含む場合に有用である。皮膚への局所投与に関して、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適当な軟膏で処方すべきである。本発明の化合物の局所投与用担体は、これらに限定されないが、鉱油、液体石油、白石油、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水を包含する。あるいは、医薬組成物は、適当な乳化剤と共に担体中に懸濁または溶解された活性化合物を含有する適当なローションまたはクリームで処方することができる。適当な担体としては、これらに限定されないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤処方によるかまたは適当な浣腸剤で下部腸管に局所投与することもできる。局所−経皮貼付剤も本発明に含まれる。
【0127】
本発明の医薬組成物は、鼻エアゾルまたは吸入により投与することができる。かかる組成物は、医薬処方の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適当な保存料、バイオアベイラビリティーを向上させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当該分野において公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、食塩水中溶液として調製することができる。
【0128】
本発明の式の化合物および追加の医薬(例えば、治療薬)を有する組成物は、埋込可能な装置を用いて投与することができる。埋込可能な装置および関連する技術は当該分野において公知であり、本明細書において示される化合物または組成物の連続、または時限放出性送達が望ましい送達系として有用である。さらに、埋込可能な装置送達系は、化合物または組成物送達の特定地点(例えば、局所部位、器官)のターゲティングに有用である。Negrin et al., Biomaterials, 22(6):563 (2001)。交互送達法を含む時限放出性技術も本発明において用いることができる。例えば、ポリマー技術に基づく時限放出性処方、持続放出技術およびカプセル封入技術(例えば、ポリマー、リポソーム)も、本明細書において示される化合物および組成物の送達に有用である。
【0129】
本発明の活性化学療法組成物を送達するための貼付剤も本発明の範囲内に含まれる。貼付剤は、物質層(例えば、ポリマー、布、ガーゼ、包帯)および本明細書において示される式の化合物を含む。物質層の片面は、化合物または組成物の通過に抵抗するための、これに接着された保護層を有し得る。貼付剤はさらに、対象上の位置に貼付剤を保持するための接着剤を含む。接着剤は、天然または合成起源のいずれかのものであって、対象の皮膚と接触した場合、一時的に皮膚に接着するものを包含する組成物である。これは耐水性であり得る。接着剤は、貼付剤上に配置され、これを長時間、対象の皮膚と接触した状態に保持することができる。接着剤は、装置を対象が偶発的に接触しても所定の位置に装置を保持するが、積極的行動(例えば、引き裂いたり、剥がしたり、または他の故意に除去すること)により、装置または接着剤自体に加えられた外部圧力により接着性を失い、接着しなくなるような粘着性、または接着強度を有するように調製することができる。接着剤は、感圧性であり得る。すなわち、接着剤または装置上に圧力を加えること(例えば、押したり、こすったり)により、皮膚に対して接着剤を配置する(そして、装置を皮膚に接着させる)ことが可能である。
【0130】
本発明の組成物が、本明細書における式の化合物および1以上の追加の治療薬または予防薬の組み合わせを含む場合、化合物および追加の医薬はどちらも、単剤療法において通常投与される用量の約1〜100%の間、さらに好ましくは約5〜95%の投与量で存在する。追加の医薬は、本発明の化合物とは別に、複数投与計画の一部として、投与することができる。別法として、これらの医薬は、単一投与形態の一部として、単一組成物中、本発明の化合物と混合することができる。
【0131】
本発明を以下の実施例においてさらに説明する。これらの実施例は例示の目的のみであって、本発明をなんら制限するものではない。
【0132】
実施例1
卵母細胞検定
本明細書における式の代表的化合物を、本質的に、Neuron January 1997, 18(11): 153-166, Lin et. al.;J. Neurosci. July 1, 2000,20(13):4768-75, J. Pan and D. Lipsombe;およびJ. Neurosci., August 15, 2001, 21(16):5944-5951, W. Xu and D. Lipscombeにおいて記載されるような検定において、Xenopus oocyte異種発現系を用いて、カルシウムチャンネルターゲットに対する活性についてスクリーンする。検定は、様々なカルシウムチャンネル(例えば、Ca2.2サブファミリー)に関して行い、これにより、各化合物についてカルシウムチャンネルの調節を測定する。
【0133】
実施例2
HEKアッセイ
HEK−293T/17細胞を、FuGENE 6 Package Insert Version 7, April 2002, Roche Applied Science, Indianapolis, INにおいて記載されているのと同様にして、一時的にトランスフェクトさせる。細胞を、インキュベーターにおいて、6穴プレート中、2mL中2.5×10細胞で、一夜プレートし、30〜40%のコンフルーエンスを達成する。無菌細管中に、合計体積100μLにするために十分な無血清培地をFuGENEトランスフェクション試薬(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)の希釈剤として添加する。3μLのFuGENE6試薬を直接この培地中に添加する。混合物を静かにたたいて混合する。2μgのDNA溶液(0.8〜2.0μg/μL)をあらかじめ希釈された前記のFuGENE6試薬に添加する。DNA/Fugene6混合物を静かにピペットで吸引して内容物を混合し、約15分間、室温でインキュベートする。複合体混合物を次にHEK−293T/17細胞に添加し、これを穴の周りに分布させ、かき混ぜて確実に均一に分散させる。細胞をインキュベーターに24時間戻す。トランスフェクトされた細胞を次に2.5×10の密度で、5のガラス製カバースリップを有する35mm皿中に再度プレートし、低血清(1%)培地中で24時間成長させる。カバースリップを細胞から取り除き、次にチャンバー中に移し、カウンタースクリーニングのためにカルシウムチャンネル(例えば、Lタイプ、Nタイプなど)流れまたは他の流れを一時的にトランスフェクトされたHEK−293T/17細胞から記録する。
【0134】
本質的ににThompson and Wong (1991) J. Physiol., 439: 671-689より記載されているようにして、電圧依存性流を評価するために、パッチクランプ技術の全細胞電圧クランプ配置を用いる。化合物の抑制効力(定常状態濃度−応答分析)を評価するためにカルシウムチャンネル(例えば、Lタイプ、Nタイプなど)流を記録するために、5パルスの約+10mV(電流電圧関係のピーク)までの20〜30ms電圧段階を、−100mVの保持電位から30秒ごとに5Hzで供給する。化合物の評価は、本質的にSah DW and Bean BP (1994) Mol Pharmacol.45(1):84-9により記載されているようにして行う。
本明細書における式の代表的化合物を、カルシウムチャンネルターゲットに対する活性について評価した。
【0135】
実施例3
ホルマリン試験
本明細書における式の代表的化合物をホルマリン試験において活性についてスクリーンする。ホルマリン試験は、急性および持続性炎症性疼痛のモデルとして広く用いられている(Dubuisson & Dennis, 1977 Pain 4:161-174;Wheeler-Aceto et al, 1990, Pain 40:229-238; Coderre et al, 1993, Pain 52:259-285)。この試験は、ラット後足に希ホルマリン溶液を投与し、続いて、末梢神経活性および中枢性感作の両方を反映するホルマリン応答の「後期(late phase)」(注射後11〜60分)の間、行動の徴候(すなわち、縮みあがったり、かみついたり、なめたりする)をモニターすることを含む。体重約225〜300gのオスSprague−Dawlyラット(Harlan, Indianapolis, IN)を、各処置群についてn=6〜8で使用する。
【0136】
薬物動力学的特性および投与経路によって、ビヒクルまたは試験化合物を、腹腔内または経口経路により各ラットにホルマリンの前30〜120分に投与する。ホルマリン投与の60分前に各動物を実験室に順化させ、50μLの5%溶液を、300μLマイクロシリンジおよび29ゲージ針を用いて、後足の足底表面中に注射する。動物の足の観察を高めるために、鏡を実験室の後ろ側に向ける。縮あがる回数(素速く足を震わせながらながら、または震わせずに足を持ち上げる)および傷つけられた後足にかみつく、および/または舐めるために費やす時間を、各ラットについて連続して2分間、5分毎に、ホルマリン投与後、合計60分間記録する。終末部血液サンプルを、血漿化合物の濃度の分析のために採取する。早期または後期の間の縮む合計回数またはかみつきおよび/または舐めるのに費やす時間のグループ間の比較を、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて行う。
【0137】
実施例4
化合物15
3−(2−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)エチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1−p−トリル−1H−イミダゾール−2(3H)−チオン
【0138】
スキーム6
【化7】

【0139】
工程1.2−アジド−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノンの調製
DMSO中の2−ブロモ−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノン(1等量)の溶液を、10℃で激しく撹拌し、アジ化ナトリウム(1.25等量)を加えた。混合物を1時間撹拌し、ついで、水でクエンチし、酢酸エチル(2×)で抽出した。合した有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、2−アジド−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノンを得た。
【0140】
工程2.2−アミノ−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノン塩酸塩の調製
エタノール中の2−アジド−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノンの溶液に、濃HCl(等量)および10%Pd/C(10mol%)を加えた。混合物を、水素(H)雰囲気下45psiで1時間撹拌した。混合物をセライトにより濾過し、セライトケークを多量のメタノールで洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を、ジエチルエーテルでトリチュレートし、濾過し、乾燥して、2−アミノ−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノン塩酸塩を得た。
【0141】
工程3.1−(4−クロロ−フェニル)−5−(4−フルオロ−フェニル)−1H−イミダゾール−2−チオールの調製
エタノール中の2−アミノ−1−(4−フルオロ−フェニル)−エタノン塩酸塩(1等量)、4−クロロフェニルイソチオシアネート(1等量)および炭酸水素ナトリウム(1.5等量)の混合物を、90℃で2時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を1Nの水酸化ナトリウム水溶液中に再び溶解し、100℃で一晩加熱した。熱混合物を濾過し、冷却し、注意深く6NのHClで酸性下でして、得られた混合物を濾過して、1−(4−クロロ−フェニル)−5−(4−フルオロ−フェニル)−1H−イミダゾール−2−チオールを得た。
【0142】
工程4.3−(5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソ−1−p−トリルイミダゾール−3−イル)プロパンニトリルの調製
ジオキサン中の5−(4−フルオロフェニル)−1−p−トリル−1H−イミダゾール−2−チオール(1等量)の混合物を撹拌し、トリトンBを加えた。混合物を70℃に加熱し、アクリロニトリル(1等量)を加え、3時間加熱した。冷却した混合物を、0.1NのHClおよび酢酸エチル間で分配した。有機層を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム、乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去させた。フラッシュクロマトグラフィー(SiO)に付して、3−(5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソ−1−p−トリルイミダゾール−3−イル)プロパンニトリルを得た。
【0143】
工程5.3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオンイミド酸エチルエステルの調製
1:1のエタノールジエチルエーテル中のプロピオニトリルの溶液を氷水浴で冷却し、HCl(g)を10〜20分間溶液に注意深くバブリングした。反応混合物を室温にて2〜4時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去して、3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオンイミド酸エチルエステルを得た。
【0144】
工程6.3−(2−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)エチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1−p−トリル−1H−イミダゾール−2(3H)−チオンの調製
エタノール中のプロピオンイミド酸エチルエステルおよびベンゼン−1,2−ジアミンの混合物を撹拌し、60℃で一晩加熱した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を、酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液間で分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去させた。フラッシュクロマトグラフィー(SiO)に付し、ついで、HCl塩形成(メタノールおよび2Mのエーテル性HCl)して、3−(2−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)エチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1−p−トリル−1H−イミダゾール−2(3H)−チオン塩酸塩を得た。
【0145】
化合物22
3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸エチルエステル
【0146】
スキーム7
【化8】

【0147】
3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸エチルエステルの調製
DMF中の1−(4−クロロ−フェニル)−5−(4−フルオロ−フェニル)−1H−イミダゾール−2−チオール(1等量)の溶液に、THF(1等量)中のリチウムbis(トリメチルシリル)アミドの1Mの溶液およびエチル3−ブロモプロピオネート(1等量)を室温にて加えた。混合物を60℃で2時間加熱し、室温に冷却した。混合物を水でクエンチして、酢酸エチルで抽出した。有機物を乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカのクロマトグラフィーにより精製して、3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸エチルエステルを得た。
【0148】
化合物26
3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)−1−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オン
【0149】
スキーム8
【化9】

【0150】
工程1.3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸の調製
3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸エチルエステル(1等量)および水酸化リチウム水和物(1.2等量)の混合物を、1,4−ジオキサン:水(4/1:v/v)中に溶解し、室温にて3時間撹拌した。反応混合物を、2NのHCl水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機相を乾燥し、減圧下で濃縮して、3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸を得た。
【0151】
工程2.3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)−1−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オンの調製
THF中の3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)プロピオン酸(1等量)、1−3−(ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.7等量)およびモルホリン(1.7等量)の溶液を、一晩室温にて撹拌した。反応を水でクエンチして、酢酸エチルで抽出した。有機相を乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカのクロマトグラフィーにより精製して、3−(1−(4−クロロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,2−ジヒドロ−2−チオキソイミダゾール−3−イル)−1−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オンを得た。
【0152】
化合物を、実質的に上記した方法および一般スキームに従って調製する。
化合物は本質的に前記および一般的スキームに記載されるようにして調製される。
【0153】
本明細書において記載される、要約、記事、雑誌、刊行物、テキスト、論文、インターネットウェブサイト、データベース、特許および特許公開物を包含するが、これらに限定されない全ての参考文献は、印刷物、電子、コンピューターに読み込み可能な記憶媒体または他の形態のいずれであっても、明確に、全体として本発明の一部として参照される。
【0154】
本発明を詳細な記載に関連して記載したが、前記記載事項は本発明を説明することを意図され、添付の請求の範囲により規定される本発明の範囲を制限することを意図されない。他の態様、利点、および修正は、特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
は、ArまたはAr−X−Yであり、ここに、
各々Arは、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
Xは、NR、C(RまたはOであり;
Yは、C=Oまたは低級アルキルであり;
は、Ar、またはArにより置換されていてもよい低級アルキルであり;
各々Arは、独立して、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
各々Rは、(CHC(O)OR、(CHC(O)Ar、(CHC(O)NR、(CHNR、(CHArまたは(CHArから独立して選択され;
各々Rは、Hまたは低級アルキルから独立して選択され;
各々Rは、H、低級アルキルまたは(CHArから独立して選択され;
mは、1または2であり;
nは、2または3であり;
pは、0または1であり;
各々Arは、シクロアルキル、アリール、ヘテロサイクリルまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
Ar、ArおよびArに関する置換基は、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、S(O)OR、NR、シクロアルキル、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cペルフルオロアルコキシ、1,2−メチレンジオキシ、C(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、NRC(O)NR、C(NR)NR、NRC(NR)NR、S(O)NR、R、C(O)R、NRC(O)R、S(O)RまたはS(O)から独立して選択され;
各々Rは、水素、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々Rは、水素、(CHAr、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々、Rは、(CHAr、またはハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択され;
各々Arは、C−Cシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールから独立して選択され、各々、ハロゲン、OH、C−Cアルコキシ、NH、C−Cアルキルアミノ、C−CジアルキルアミノもしくはC−Cシクロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく;
qは、0または1である]
で示される化合物またはその医薬的塩。
【請求項2】
がArであり、RがArである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく;
が、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が(CHC(O)OR、(CHC(O)Arまたは(CHC(O)NRである、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
が(CHArであり、Arがアリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
が(CHC(O)NRであり、Rが、独立して、(CHArであり、ここに、Arがアリールまたはヘテロアリールであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
が(CHNRまたは(CHArである、請求項1〜3いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
表1〜6のいずれかに記載の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
請求項1記載の式Iで示される化合物および医薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項10】
さらに付加的な治療剤を含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
該治療を必要とする対象の疾患または病徴の治療方法であって、該対象に有効量の請求項1〜8いずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項12】
疾患または病徴が、カルシウムチャンネルCav2によりモジュレートされる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
疾患または病徴が、カルシウムチャンネルCav2.2によりモジュレートされる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
疾患または病徴が、狭心症、高血圧、鬱血性心不全、心筋虚血、不整脈、糖尿病、尿失禁、卒中、痛み、外傷性脳損傷またはニューロン障害である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
カルシウムチャンネル活性をモジュレートする方法であって、カルシウムチャンネルを請求項1に記載の式Iで示される化合物と接触させることを含む方法。
【請求項16】
それを必要とする対象のカルシウムチャンネルCav2活性をモジュレートする方法であって、該対象に治療的に有効な量の請求項1〜8いずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項17】
それを必要とする対象のカルシウムチャンネルCav2活性をモジュレートする方法であって、該対象に治療的に有効な量の請求項9に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項18】
mが2であり、Arが、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素原子およびN、OおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する5員環を含むヘテロアリールである、請求項5記載の化合物。
【請求項19】
Arが、ピロリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリルまたはベンゾチアゾリルであり、各々、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、請求項18記載の化合物。

【公表番号】特表2007−527910(P2007−527910A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502985(P2007−502985)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007896
【国際公開番号】WO2005/086892
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】