説明

イソオキサゾール誘導体及び代謝型グルタミン酸受容体ポテンシエーターとしてのその使用

式(I)(式中、R1、R2、R3及びR4は明細書に定義された通りである)に従う化合物、薬学的に許容されるその塩、その製造方法、それを含む医薬組成物、及びその使用方法が提供される。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミン酸受容体のポテンシエーターとして機能するイソオキサゾール誘導体、それらの製造法、それらを含む医薬組成物、及び治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は、GTP結合タンパク質(G−タンパク質)に連結した受容体ファミリーを構成し、それはグルタミン酸によって活性化され、神経可塑性、神経発達及び神経退化を含む中枢神経系におけるシナプス活性に重要な役割を持つ。
【0003】
正常な哺乳類のニューロンにおけるmGluRの活性化は、以下の1つ又はそれ以上の反応を誘発する:ホスホリパーゼCの活性化;ホスホイノシチド(PI)加水分解の亢進;細胞内カルシウム放出;ホスホリパーゼDの活性化;アデニルシクラーゼの活性化又は阻害、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)形成の増加又は減少;グアニル酸シクラーゼの活性化;サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)形成の増加;ホスホリパーゼA2の活性化;アラキドン酸放出の増加;及び電位及びリガンド依存性イオンチャンネルの増加又は減少(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
8種のmGluRサブタイプが確認されており、それらは一次配列の類似性、情報伝達連鎖、及び薬理学的特性に基づいて、3グループに分けられる。グループIには、mGluR1及びmGluR5が含まれ、それらはホスホリパーゼCを活性化し、細胞内カルシウムシグナル発生を活性化する。グループII(mGluR2及びmGluR3)及びグループIII(mGluR4、mGluR6、mGluR7、及びmGluR8)のmGluR類は、アデニルシクラーゼ活性の阻害及びサイクリックAMPレベルを仲介する。概説については、非特許文献5を参照されたい。
【0005】
mGluRファミリー受容体の活性は、哺乳動物のCNSにおける多くの正常な過程に関与し、そして様々な神経及び精神障害を処置するための化合物の重要な標的である。mGluRの活性化は、海馬長期増強及び小脳長期抑圧の誘導に必要である(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。痛覚及び無痛覚にmGluRの活性化が果たす役割も、また、実証されている(非特許文献10、非特許文献11)。また、mGluRの活性化は、シナプス伝達、神経発達、アポトーシスの神経細胞死、シナプス可塑性、空間学習、嗅覚記憶、心臓活動の集中制御、歩行、運動制御及び前庭動眼反射を含む様々な他の正常過程において、調節的な役割を演じることが示唆されている(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schoepp et al., 1993, Trends Pharmacol. Sci., 14:13
【非特許文献2】Schoepp, 1994, Neurochem. Int., 24:439
【非特許文献3】Pin et al., 1995, Neuropharmacology 34:1
【非特許文献4】Bordi & Ugolini, 1999, Prog. Neurobiol. 59:55
【非特許文献5】Pin et al., 1999, Eur. J. Pharmacol., 375:277-294
【非特許文献6】Bashir et al., 1993, Nature, 363:347
【非特許文献7】Bortolotto et al., 1994, Nature, 368:740
【非特許文献8】Aiba et al., 1994, Cell, 79:365
【非特許文献9】Aiba et al., 1994, Cell, 79:377
【非特許文献10】(Meller et al., 1993, Neuroreport, 4: 879
【非特許文献11】Bordi & Ugolini, 1999, Brain Res., 871:223
【非特許文献12】Nakanishi, 1994, Neuron, 13:1031
【非特許文献13】Pin et al., 1995, Neuropharmacology, supra
【非特許文献14】Knopfel et al., 1995, J. Med. Chem., 38:1417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近のmGluRの神経生理学的役割の解明の進展は、これらの受容体を、急性及び慢性の神経及び精神障害並びに慢性及び急性の疼痛性障害の治療における有望な薬剤標的として確立した。mGluRは生理学的及び病態生理学的に意義がある故、mGluRの機能を調節することができる新規な薬剤及び化合物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、mGluRの機能を調節する一群の化合物を同定した。1つの形態では、本発明は、式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物若しくはエナンチオマーを提供する。
【0009】
従って、1つの実施態様では、本発明は、式I:
【化1】

(式中、
1は、C1-3アルキル又はハロゲンから選択され;
2は、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はC3-6シクロアルキルから選択され;
3及びR4は、各存在で独立に、水素、C1-3アルキル、C1-3ヒドロキシアルキル、C3-6カルボシクリル、ヘテロシクリル若しくはヘテロアリールから選択され、又はR3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ、ピロリジニル若しくはピペラジニルから選択される環状部分を形成する)
に従う化合物を含む組成物を提供する。
【0010】
特定の態様では、この実施態様は、R2がメチルである式I:
【化2】

又はR2がトリフルオロメチル若しくはシクロプロピルであり、実質的に他のエナンチオマーが無い式II:
【化3】

(式中、
1は、メチル又はクロロから選択され;
3及びR4は、各存在で独立に、水素、メチル、イソプロピル、2−ヒドロキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピペリジニル、又はピラゾリルから選択され、又はR3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ、ピロリジニル若しくはピペラジニルから選択される環状部分を形成する)
の化合物を提供する。
【0011】
別の特定の態様では、この実施態様は式I:
式中、
1及びR2は、メチルであり;
3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ又はピロリジニルから選択される環状部分を形成する;
に従う化合物を提供する。
【0012】
更に別の特定の態様では、この実施態様は、式II:
式中、
1は、クロロであり;
2は、トリフルオロメチル又はシクロプロピルであり;
3及びR4は、存在する場合はそれぞれ独立に、水素、メチル又はイソプロピルから選択される;
に従い、実質的に他のエナンチオマーが無い化合物を提供する。
【0013】
別の態様では、この実施態様は、式II:
式中、
1は、メチル又はクロロから選択され;
2は、トリフルオロメチル又はシクロプロピルから選択され;
3は、水素又はメチルであり;そして
4は、水素、メチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択される;
に従い、実質的に他のエナンチオマーが無い化合物を提供する。
【0014】
具体的には、この実施態様は、本明細書の実施例に記載される以下のような化合物:
5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N,N−ジメチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−(2−イソプロピル−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸メチルアミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(ピロリジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
5−〔7−メチル−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸シクロペンチルアミド;
7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−5−〔3−(ピペラジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
5−〔7−クロロ−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾー
ル−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;及び
7−クロロ−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
を提供する。
【0015】
同様に、式I又は式IIの化合物の製造方法が提供される。
さらに、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に式I又は式IIに記載の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
別の実施態様では、グルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害を処置又は予防する方法を、そのような処置を必要とする動物において行う方法が提供される。その方法には、治療的有効量の式I又は式IIの化合物を、又はそのような量を含む医薬組成物を、動物に投与するステップが含まれる。
【0017】
本発明は、また、本明細書に記述される状態を処置するための薬剤の製造における、式I又は式IIに記載の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、治療に使用するための、式I又はIIの化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0019】
本明細書に記載の化合物は、代謝型グルタミン酸受容体の調節剤としての活性を示し、そしてより具体的には、mGluR2受容体のポテンシエータとしての活性を示す。本化合物は、治療における医薬品として有用になり得る、特にグルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害の処置に有用になり得ることが目論まれる。
【0020】
定義
本明細書内で特に断らない限り、本明細書で使用する命名法は、一般に、Nomenclature
of Organic Chemistry, Sections A, B, C, D, E, F and H, Pergamon Press, Oxford, 1979中に記述された例及び規則に従うが、この文献は、例示的な化学構造名及び化学構造命名の規則に関して、参照することにより本明細書に組み込まれている。場合により、化合物の名前は、化学物質命名プログラム:ACD/ChemSketch, Version 5.09/September 2001, Advanced Chemistry Development, Inc., Toronto, Canadaを使用して作成してもよい。
【0021】
本明細書で用いられる「C1-3アルキル」という用語は、1〜3個の炭素原子を有し、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素ラジカルを意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、及びシクロプロピルが含まれる。
【0022】
本明細書で用いられる「C1-3ハロアルコキシル」という用語は、1〜3個の炭素原子
及び少なくとも1つのハロ置換基を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシルラジカルを意味し、フルオロメトキシル、トリフルオロメトキシル、フルオロエトキシル、トリフルオロプロピルオキシル、フルオロイソプロピルオキシルなどが含まれる。
【0023】
本明細書で用いられる「ハロ」という用語は、ハロゲンを意味し、放射性及び非放射性の両形態のフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードが含まれる。
本明細書で用いられる場合の記号Δは、加熱又は熱付加を意味する。
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者への投与に適合した酸付加塩又は塩基付加塩の何れかを意味する。
【0024】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、式Iで表される化合物の、毒性の無い有機酸又は無機酸付加塩のいずれかである。好適な塩を形成する実例となる無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸、並びにオルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムのような酸金属塩が挙げられる。好適な塩を形成する実例となる有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸が挙げられる。そのような酸の実例は、例えば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、並びにメタンスルホン酸及び2−ヒドロキシエタンスルホン酸などの他のスルホン酸である。化学的に可能性のある場合は、一酸塩又は二酸塩を形成することができ、そのような塩は水和した形態、溶媒和した形態又は実質的に無水の形態のいずれかで存在することができる。一般に、これらの化合物の酸付加塩は、水及び各種の親水性有機溶媒に対してより溶解性であり、一般的に遊離塩基の形態と比較して高い融点を示す。他の塩、例えば、シュウ酸塩は、例えば、実験室使用のための式Iの化合物の単離のために、又はその後の薬学的に許容される酸付加塩への変換のために使用することができる。
【0025】
「溶媒和物」は、好適な溶媒分子が結晶格子内に組み込まれた式Iの化合物、又は薬学的に許容される式Iの化合物の塩を意味する。好適な溶媒は、溶媒和物として投与される用量において生理学的に耐容である。好適な溶媒の例は、エタノール、水などである。水が溶媒の場合は、その分子は水和物と呼ばれる。
【0026】
「立体異性体」という用語は、個々の分子の原子の空間的な幾何学的配置だけが異なるすべての異性体に対する総称的な用語である。それには、鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体及び1つ以上のキラル中心を持ち互いに鏡像ではない異性体(ジアステレオマー)が含まれる。
【0027】
「処置する」又は「処置」という用語は、症状を和らげる、症状の原因を一時的若しくは永久的の何れかで取り除く、又は指定された疾患又は状態の症状の出現を阻止する若しくは遅らせることを意味する。
【0028】
「治療的有効量」という用語は、指定された疾患又は状態の処置に有効である化合物の量を意味する。
【0029】
「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物即ち患者に投与できる投与形態の形成を可能にするために、活性成分と混合させる毒性の無い溶媒、分散剤、賦形剤、助剤又は他の材料を意味する。そのような担体の一例は、非経口的な投与のために一般に用いられる薬学的に許容されるオイルである。
【0030】
記述される各実施態様の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又はそれらの組み合
わせは、本発明の範囲とするように意図される。
【0031】
本発明の化合物の光学的に活性な形態は、例えば、ラセミ体のキラルクロマトグラフィーによる分離、光学活性物質からの合成、又は不斉合成によって製造することができる。
【0032】
当業者には当然ながら、いくつかの本発明の化合物は、無水の形態と同様、溶媒和した、例えば、水和した形態で存在し得る。さらに当然ながら、本発明は、式I又は式IIの化合物のそのような溶媒和した全ての形態を包含する。
【0033】
本発明の範囲内にあるものは、同様に、式I又は式IIの化合物の塩である。一般に、薬学的に許容される本発明の化合物の塩は、業界によく知られた標準的な手法を用いて得られる。
【0034】
本発明の1つの実施態様では、式I又は式IIの化合物は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩のような、薬学的に許容されるそれらの塩又は溶媒和物に変換されてもよい。
【0035】
化合物の製造方法
式Iに記載の化合物は、一般に本明細書で説明される合成方法によって製造することできる。特定の構造的特徴及び/又は置換基の選択は、1つの方法から別の方法への選択に影響する可能性があり、そしてその方法が実施される条件に影響を及ぼす可能性がある。
【0036】
これらの一般的なガイドラインの規定内で、本明細書に記載される方法は、本発明の典型的な化合物を製造するために使用することができる。他に指示がない限り、記載されたスキーム及び方法における可変部分は、式I及び式IIに与えられたものと同じ定義を有する。また疑義を避けるために、一般に式Iに言及する場合は、当然ながら式IIの化合物をも包含する。
【0037】
従って、当業者は、式Iに従う他の化合物は、本明細書に開示した1つ又はそれ以上の方法に適応する改変及び付加によって作ることができることを理解することができる。
【実施例】
【0038】
本発明は、ここで、本発明の幾つかの実施態様を記載する実施例によってさらに説明される。実施例1及び2に示される合成スキーム及び合成手順は、例示の目的で示されるが、それが発明を制限するものとして解釈すべきではない。例示された以外の化合物が、説明した方法と類似の方法によって容易に製造できることは、当業者には明白である。
【0039】
一般的方法
出発物質は、市販されているか又は文献に記載されている。
1H及び13CNMRスペクトルは、Bruker 300、Bruker DPX400又は Varian +400スペクトロメータ上のいずれかで記録し、1HNMRについてはそれぞれ300、400及び500MHzで操作し、TMS又は残留溶媒のシグナルを標準として使用し、特に他の指示がない限り重水素化クロロホルムの溶媒中で測定した。全ての報告された化学シフトは、デルタスケールでのppmであり、記録に現れたシグナルの微細な分裂(s:シングレット、brs:ブロードシングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット)である。
【0040】
後に質量スペクトル検出が続く分析用インライン液体クロマトグラフィー分離は、Alliance 2795(LC)及び ZQ single quadrapole mass spectrometer で構成されるWaters
LCMS で記録した。質量分析計は、正及び/又は負イオン方式で作動するエレクトロスプレーイオン源を装備していた。イオンスプレー電圧は、±3kVであり、質量分析計は走査時間0.8秒でm/z100〜700を走査した。X-Terra MS, Waters、C8、2.1×50mm、3.5mmのカラムに、10mMの酢酸アンモニウム(水溶液)中、又は0.05〜0.1%ギ酸(水溶液)中、5%〜100%アセトニトリルの直線グラジエントを適用した。
【0041】
生成物の精製は、ISCO 自動フラッシュクロマトグラフィーシステム上で、Silicycle SilicaFlash Catridges (cat # FLH-R10030B)を用いて、又はシリカ充填ガラスカラムのフラッシュクロマトグラフィーで行った。
【0042】
マイクロ波加熱は、2450MHzで連続的な照射を行うEmrys Optimizer Single-modeマイクロ波キャビティー(Personal Chemistry AB, Uppsala, Sweden)中で行った。
【0043】
LC−MS・HPLCの条件:
方法A:カラム:Waters Acquity UPLC BEH-C18、1.7μm、内径2.1mm×50mm、流速:1.0mL/分。グラジエント条件:0.9分かけて95%A〜95%B、標準の直線グラジエントの後0.3分保持、0.1分かけて95%Aに一定比率で下げる。ここで、A=0.1%ギ酸を含む水中2%アセトニトリルの溶液、B=0.05%ギ酸を含むアセトニトリル中2%水の溶液。UV−DADは210〜400nm。
方法B:カラム:Agilent Zorbax SB-C8、5μm、内径2.1mm×50mm、流速:1.4mL/分。グラジエント条件:3分かけて95%A〜90%B、標準の直線グラジエントの後1分保持、1分かけて95%Aに一定比率で下げる、そして1分保持。ここで、A=0.1%ギ酸を含む水中2%アセトニトリルの溶液、B=0.05%ギ酸を含むアセトニトリル中2%水の溶液。UV−DADは210〜400nm。
【0044】
本明細書に記載の機器、方法及び条件は、説明の目的で示されるもので、本発明を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、記載された測定を行い又は分離を達成するために、他の機器及び方法を使ってもよいことを理解するであろう。
【0045】
合成方法:
スキーム1は、市販の前駆体から6−置換4−ブロモ−2−ブロモメチル−安息香酸メチルエステルの代表的な合成を説明するものであって、それぞれの反応ステップには、以下の通り:(a)NaNO2、HCl水溶液;(b)NaCN、CuCN及びHCl;(c)NaOH;(d)ニトロソ硫酸;(e)MeI及びK2CO3;及び(f)NBS及び(PhCO22を含む。簡単にいうと、4−ブロモ−アニリンはSandmeyer反応の条件下でジアゾ化でき、続いてシアン化ナトリウム及びシアン化銅を用いてニトリルに変換する。次いで、ニトリルを塩基性加水分解によってアミドに加水分解する。次いで、アミドをニトロソ硫酸で加水分解して安息香酸を得ることができ、それを標準的な条件下でメチルエステルに変換し得る。ベンジル型のメチル基を、過酸化ベンゾイルをラジカル開始剤として用い、N−ブロモスクシンイミドでモノブロム化し、目的の6−置換−4−ブロモ−2−ブロモメチル−安息香酸メチルエステルを得る。
【0046】
【化4】

【0047】
6−置換−4−ブロモ−2−ブロモメチル−安息香酸メチルエステルは、スキーム2に示されるように、アミン又はキラル化合物が所望される場合キラルアミン、(g)CH3CHR2NH2、K2CO3、B(OH)3でイソインドロンに環化することができる。
【0048】
【化5】

【0049】
式I(又は式II)の化合物は、以下のように、スキーム3に示されるような一連の反応ステップによってイソインドロンから製造することができる:(h)ジイソプロピルアミン中Pd(BnCN)2Cl2、TMS−≡、Cu(OAc)2、PPh3、穏やかな加熱下2時間;(i)KOH、EtOH/H2O、室温で1時間;(j)エチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタート、KHCO3、EA/H2O、室温で16時間;及び(k)NaOH、MeOH/H2O、室温で1時間;続いて(l)THF中、IBCF、NMM、R34NH、−20℃。簡潔に言うと、4−ブロモ−イソインドロンは、ソノガシラ(Sonagashira)の条件下で保護アセチレンと反応させることができる。塩基によるアセチレンの脱保護、続くエチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタートとの反応で、イソオキサゾールエステルを生成する。最後に、エステルから酸への加水分解、及びイソブチルクロロホルメート、N−メチルモルホリン及び適切なアミンを用いたアミド化によって所望のアミドが生成される。あるいは、アミドはイソオキサゾールエステルを介して、ステップ(m)のエタノール中アミン、R34NHとの反応及び加熱によって直接生成させることができる。
【0050】
【化6】

【0051】
[実施例1]:5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N,N−ジメチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド
【化7】

5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)イソオキサゾール−3−カルボキシラート(29.59g、78.94mmol)のエタノール(500mL)溶液を、エタノール性ジメチルアミン(352mL、1973.6mmol)の33%溶液で処理した。生じた淡緑色の溶液を、溶液を透明に維持するのに十分な加熱(約50℃)で、約3時間穏やかに加温した。反応液を室温に冷却し、揮発物を減圧下で除去した。この物質を、塩化メチレン中0〜50%酢酸エチルのグラジエントで溶離するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで精製し、目的の化合物を得た。次いで、分離した生成物を、エタノール中の結晶化による更なる精製工程にかけた。5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)−N,N−ジメチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド(34.88g、93.30mmol)をエタノール(約350mL)に溶かし、全ての生成物が溶解するまで70〜80℃に加温した。この溶液を中程度のガラスフリットで素早く濾過し、加温して70〜80℃に戻し、そして濾紙(Whatman #1)で濾過した。濾液を再び70〜80℃に加熱して溶液の透明性を確保し、そして室温に徐々に冷却するにまかせた(最終的な溶媒の量は450mLであった)。一晩静置した後、標記の生成物の細かい結晶が形成された。混合物を冷蔵庫でさらに2時間冷却した。結晶を濾過によって単離し、冷エタノールで洗浄し、そして室温、高真空下で乾燥して、小さな白色針状晶(2
7.21g、78%)を得た。Mp143.5℃。1HNMR(300MHz,DMSO−d6)δppm:0.21−0.32(m,1H)0.35−0.50(m,2H)0.53−0.67(m,1H)1.16(dd,1H)1.30(d,3H)3.06(s,3H)3.14(s,3H)3.59(dd,1H)4.62(s,2H)7.50(s,1H)8.06(s,1H)8.11(s,1H)。MS・ESI、m/z=374(M+H)。HPLC(方法B):0.70分。
【0052】
中間体化合物は以下のように製造した:
a)エチル5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)イソオキサゾール−3−カルボキシラート
7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−5−エチニルイソインドリン−1−オン(28.66g、110.35mmol)及び炭酸水素カリウム(110.0g、1103.45mmol)を酢酸エチル(1,200mL)及び水(400mL)から成る溶液に溶解した。この溶液に、エチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタート(66.9g、441.38mmol)を添加した。エチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタートを酢酸エチル(160mL)溶液として、室温でシリンジポンプを介して5mL/時間の速度で添加した。エチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタートの添加に続いて、反応液の室温での撹拌をさらに12時間継続させた。酢酸エチル層を分液ロート中で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この物質を、ヘキサン中0〜25%酢酸エチルのグラジエントで溶離するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色固体の標記化合物を得た(17.05g、41.2%)。1HNMR(300MHz,CDCl3)δppm:0.36−0.53(m,3H)0.63−0.73(m,1H)0.98−1.12(m,1H)1.38(d,3H)1.47(t,3H)3.80(dq,1H)4.43−4.65(m,4H)7.05(s,1H)7.83(s,2H)。MS・ESI、m/z=375(M+H)。HPLC(方法B):0.82分。
【0053】
b)7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−5−エチニルイソインドリン−1−オン
7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−5−(2−(トリメチルシリル)エチニル)イソインドリン−1−オン(40.88g、123.17mmol)をエタノール(250mL)に溶解し、室温で攪拌した。反応混合物に水酸化カリウム(0.10g、1.85mmol)の水(20mL)溶液を添加した。反応液は直ちに黒色に変わり、そして室温での撹拌を90分間継続した。揮発物を減圧下で除去し、生成物を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサン中0〜40%酢酸エチルのグラジエントで溶離して精製した。これにより、淡黄褐色固体として所望の生成物(20.75g、69.7%)を得た。1HNMR(300MHz,CDCl3)δppm:0.34−0.50(m,3H)0.58−0.69(m,1H)0.93−1.07(m,1H 1.34(d,3H)3.22(s,1H)3.76(dq,1H)4.31−4.54(m,2H)7.45(s,1H)7.51(s,1H)。MS・ESI、m/z=260(M+H)。HPLC(方法B):0.80分。
【0054】
c)7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−5−(2−トリメチルシリル)エチニル)イソインドリン−1−オン
5−ブロモ−7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)イソインドリン−1−オン(5.0g、15.89mmol)を内部熱電対を取り付けた三つ口フラスコに入れ、そして脱気したジイソプロピルアミン(150mL)に溶解した。この溶液に酢酸銅(II)(0.14g、0.79mmol)、トリフェニルホスフィン(0.417g、1.59mmol)及びビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)(0.3g、0.79mmol)を添加した。最後に、エチニルトリメチルシラン(4.84mL、34.96
mmol)を20分かけて滴下して加えた。シランの添加を完了した後、反応混合物を65℃に加熱し、出発原料が消費されるまで(LC/MSによって監視して)この温度に保った。反応液を室温に冷却するにまかせ、揮発物を減圧下で除去した。次いで、この物質をガラスフリットを通して濾過し、フリット中の残留固形物をジエチルエーテルで濯いだ。揮発物を再び減圧下で除去し、濃縮した残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサン中0〜40%酢酸エチルで溶離して精製した。これにより、黄褐色固体として標記の化合物を得た(4.90g、93%)。1HNMR(300MHz,CDCl3)δppm:0.18−0.22(m,9H)0.29−0.43(m,3H)0.53−0.62(m,1H)0.88−1.01(m,1H)1.27(d,3H)3.69(dq,1H)4.33(q,2H)7.35(d,1H)7.42(s,1H)。MS・ESI、m/z=332(M+H)。HPLC(方法A):1.05分。
【0055】
[実施例2]:5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド
【化8】

エチル5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソイソインドリン−5−イル)イソオキサゾール−3−カルボキシラート(4.00g、10.67mmol)を200mLの圧力容器に入れ、続いてエタノール(20mL)及び33%のエタノール性メチルアミン(57.2mL、320.16mmol)を添加した。溶液を55℃に加温してその温度に10分間保ち、次に室温に冷却した。形成した沈殿物を濾過して集め、40℃の真空オーブンで1晩乾燥した。残留エタノールは、固形物を最少量の塩化メチレンに溶解した後、揮発物を減圧下で除去することによって単離した生成物から除去し、標記の化合物(3.46g、90%)、Mp212.3℃を得た。1HNMR(300MHz,CDCl3)δppm:0.28−0.46(m,3H)0.54−0.64(m,1H)0.90−1.02(m,1H)1.30(d,3H)2.98(d,3H)3.64−3.80(m,1H)4.35−4.57(m,2H)6.76(d,1H)7.00(s,1H)7.69(s,1H)7.75(s,1H)。MS・APCI、m/z=360(M+H)。HPLC(方法B):2.19分。
【0056】
表1に示した構造式入りの実施例3〜21の化合物は、本明細書に記載した方法に従って、好適な中間体を使用することによって合成した。
【0057】
[実施例3]:5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド。
【0058】
[実施例4]:5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド。
【0059】
[実施例5]:5−(2−イソプロピル−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−
1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド。
【0060】
[実施例6]:5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸メチルアミド。
【0061】
[実施例7]:5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド。
【0062】
[実施例8]:5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド。
【0063】
[実施例9]:7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(ピロリジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン。
【0064】
[実施例10]:5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド。
【0065】
[実施例11]:5−〔7−メチル−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド。
【0066】
[実施例12]:5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド。
【0067】
[実施例13]:5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド。
【0068】
[実施例14]:5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸シクロペンチルアミド。
【0069】
[実施例15]:7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン。
【0070】
[実施例16]:2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−5−〔3−(ピペラジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン。
【0071】
[実施例17]:5−〔7−クロロ−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド。
【0072】
[実施例18]:5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド。
【0073】
[実施例19]:5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド。
【0074】
[実施例20]:7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン。
【0075】
[実施例21]:7−クロロ−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン。
【0076】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0077】
RTは、HPLCにおける保持時間(分)。方法Aは実施例1に、方法Bは実施例2〜21(両端含めて)に使用した。
【発明を実施するための形態】
【0078】
医薬組成物
本明細書に記載される化合物は、一般に、式Iの化合物又はその薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含む医薬組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される担体は、固体又は液体の何れであってもよい。固形形態の製剤としては、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、及び坐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
固体の担体は、1つ又はそれ以上の物質であってもよく、それは、また、稀釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、又は錠剤崩壊剤として働いてもよい。固体の担体は、また、カプセル化材料であってもよい。
【0080】
散剤では、担体は、微粉末化した固体であり、それは微粉末化した本発明化合物活性成分との混合した状態で存在する。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適した比率で混合され、所望の形状とサイズに圧縮される。
【0081】
坐剤組成物の調製のためには、最初に脂肪酸グリセリド及びカカオ脂の混合物のような低融点ワックスを融解し、活性成分を、例えば撹拌によってその中に分散させる。次に溶融した均一混合物を都合のよい大きさの型に注入し、冷却して固化させる。
【0082】
好適な担体としては、例えば炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス及びカカオ脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
組成物という用語は、また、カプセルを与える担体としてのカプセル化材料との活性成分の製剤であって、その単体の中に活性化合物(他の担体と共に又はなしで)を担体が囲み、そのようにして活性化合物と関係するカプセル化材料との製剤を含むものとする。同様に、カシェ剤も含まれる。
【0084】
錠剤、散剤、カシェ剤及びカプセル剤は、経口投与に適した固形投与形態として使用することができる。
【0085】
液体形態の組成物としては、液剤、懸濁剤及び乳剤が挙げられる。例えば、活性化合物の滅菌水又は水プロピレングリコール溶液は、非経口投与に適した液体製剤であり得る。液体組成物は、また、水性ポリエチレングリコール溶液として製剤化することができる。
【0086】
経口投与用の水性溶液は、活性成分を水に溶解し、所望に応じて適した着色剤、着香剤、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用のための水性懸濁剤は、微粉末化した活性成分を、天然、合成ゴム、樹脂、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのような粘性物質及び医薬製剤技術で公知の他の懸濁化剤と一緒に水に分散させることによって作ることができる。経口使用を意図した典型的な組成物は、1つ又はそれ以上の着色剤、甘味剤、着香剤及び/又は保存剤を含んでもよい。
【0087】
投与方式に依存するが、医薬組成物は約0.05%w(質量パーセント)〜約99%w、特に、約0.1%w〜50%wの本発明の化合物を含むことができ、ここで、すべてのパーセントは、組成物の全質量に基づく質量パーセントである。
【0088】
本発明を実施するための治療的有効量は、当業者によって、それぞれの患者の年齢、体重及び反応を含む既知の基準を用いて決定することができ、処置又は予防する疾患の脈絡の中で解釈される。
【0089】
医学的用途
本明細書に開示される化合物は、代謝型グルタミン酸受容体の調節剤としての活性、とりわけ、mGluR2受容体のポテンシエーターとしての活性を示す。本化合物は、医薬品として治療に、特に、動物、特にヒトにおけるグルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害の処置に有用であり得る。
【0090】
とりわけ、神経及び精神障害としては、心臓バイパス手術及び移植後の脳障害(cerebral deficit)、脳卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部外傷、周産期低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、認知症(エイズ誘発認知症を含む)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼損傷、網膜症、認知障害、特発性及び薬剤誘発性パーキンソン病、筋肉痙攣及び震えを含む筋痙直に関連する障害、てんかん、痙攣、長期化した癲癇の二次的な脳障害(cerebral deficit)、偏頭痛(片頭痛を含む)、尿失禁、物質耐性、物質離脱(麻薬、ニコチン、たばこ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、睡眠薬などの物質を含む)、精神病、統合失調症、不安(全般性不安障害、パニック障害、社会恐怖、強迫神経症、及び外傷後ストレス障害(PTSD)を含む)、気分障害(うつ病、躁病、双極性障害を含む)、概日リズム障害(ジェットラグ及び交代勤務を含む)、三叉神経痛、聴力損失、耳鳴、眼の黄斑変性、嘔吐、脳浮腫、疼痛(急性及び慢性疼痛状態、激痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、及び外傷後疼痛を含む)、遅発性ジスキネジー、睡眠障害(ナルコレプシーを含む)、注意欠陥/多動性障害、及び行為障害などの疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本発明は、従って、上記で議論したあらゆる状態を処置する薬剤の製造のための、式Iに従う化合物、薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の何れかの使用を提供する。
【0092】
また、本発明は、上で論じた状態の何れかに苦しむ対象の処置方法であって、そのような処置を必要とする患者に、式Iに従う化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物の有効量を投与することによる処置方法を提供する。本発明は、また、上記で治療における使用のために定義したような、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0093】
本明細書との関連で、「治療」という用語は、特定の表示がない限り、さらに「予防」を含む。「治療上の」及び「治療的に」という用語は、相応に解釈されるべきである。本発明の枠の中で「治療」という用語は、さらに急性若しくは慢性の既存の病状を軽減する
ため、又は再発性の状態を軽減するために、本発明の化合物の有効量を投与することを包含する。この定義は、また、再発性の状態を防止するための予防的治療、及び慢性疾患のための持続的治療を包含する。
【0094】
ヒトのような温血動物における治療のための使用において、本発明の化合物は、従来の医薬組成物の形態で、経口的、筋肉内、皮下、局所、鼻腔内、腹腔内、胸腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、脳室内を含む任意の経路によって、又は関節内への注射によって投与することができる。本発明の好ましい実施態様では、投与の経路は経口、静脈内又は筋肉内である。
【0095】
投与量は、投与経路、病気の重篤度、患者の年齢及び体重、並びに個別の投薬計画及び特定の患者のために最も適切な用量レベルを決める主治医が通常考える他のあらゆる要因に依存する。
【0096】
上記のように、本明細書に記載の化合物は、経口使用に好適な形態、例えば、錠剤、トローチ剤、硬若しくは軟カプセル、水溶液、油性溶液、エマルジョン、及び懸濁液で供給又は送達されてもよい。或いは、本化合物は、局所投与用に、例えば、クリーム、軟膏、ジェル、スプレー、又は水溶液、油性溶液、エマルジョン若しくは懸濁液として製剤化されてもよい。本明細書に記載の化合物は、また、鼻腔内投与に好適な形態で、例えば、鼻腔スプレー、点鼻剤、又は乾燥粉末として供給されてもよい。本化合物は、坐剤の形態で膣又は直腸に投与することができる。本明細書に記載の化合物は、また、非経口的に、例えば、静脈内、血管内、皮下、又は筋肉内の注射若しくは注入によって投与されてもよい。本化合物は、吹き付けによって(例えば、微粉末として)投与することができる。本化合物、また、経皮的又は舌下的に投与されてもよい。
【0097】
治療薬への使用の他に、式Iの化合物又はその塩は、新しい治療薬探索の一環として、実験動物でmGluR関連活性阻害剤の作用を評価するための、生体外及び生体内試験システムの開発及び標準化における薬理学的な道具として有用である。その様な動物としては、例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット及びマウスが挙げられる。
【0098】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物若しくは生体内加水分解可能なエステル、又は式Iの化合物を含む医薬組成物若しくは製剤は、別の薬学的に活性な化合物又は下記より選択される化合物と共に、同時に、逐次的に又は別々に投与されてもよい:
(i)抗うつ薬の、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エルザソナン、エスシタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、ジェピロン、イミプラミン、イプサピロン、マプロチリン、ノルトリプチリン、ネファゾドン、パロキセチン、フェネルジン、プロトリプチリン、レボキセチン、ロバルゾタン、セルトラリン、シブトラミン、チオニソキセチン、トラニルシプロマイン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(ii)非定型抗精神病薬の、例えば、クエチアピン及び薬学的に活性なその異性体及び代謝物;
(iii)抗精神病薬の、例えば、アミスルピリド、アリピプラゾール、アセナピン、ベンジソキシジル、ビフェプルノックス、カルバマゼピン、クロザピン、クロルプロマジン、デベンザピン、ジバルプロエックス、デュロキセチン、エスゾピクロン、ハロペリドール、イロペリドン、ラモトリジン、ロクサピン、メソリダジン、オランザピン、パリペリドン、ペルラピン、ペルフェナジン、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ピモジド、プロクロルペラジン、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、スプロクロン、スリクロン、チオリダジン、トリフルオペラジン、トリメトジン、バルプロアート、バ
ルプロ酸、ゾピクロン、ゾテピン、ジプラシドン、及び同等、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
【0099】
(iv)抗不安薬の、例えば、アルネスピロン、アザピロン系、ベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系の例えば、アジナゾラム、アルプラゾラム、バレゼパム、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロチゾラム、ブスピロン、クロナゼパム、クロラゼパート、クロルジアゼポキシド、シプラゼパム、ジアゼパム、ジフェンヒドラミン、エスタゾラム、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フォサゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メプロバマート、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、レクラゼパム、トラカゾラート、トレピパム、テマゼパム、トリアゾラム、ウルダゼパム、ゾラゼパム、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(v)抗痙攣薬の、例えば、カルバマゼピン、バルプロアート、ラモトロジン、ガバペンチン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(vi)アルツハイマー病治療薬の、例えば、ドネペジル、メマンチン、タクリン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(vii)パーキンソン病治療薬の、例えば、デプレニル、L−ドーパ(L-dopa)、レクイップ(Requip)、ミラペックス(Mirapex)、MAOB阻害剤のセレジン及びラサギリンなど、comP阻害剤のタスマー(Tasmar)、A−2阻害剤、ドーパミン再取り込阻害剤、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、及びニューロンの一酸化窒素シンターゼ阻害剤、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(viii)片頭痛治療薬の、例えば、アルモトリプタン、アマンタジン、ブロモクリプチン、ブタルビタール、カベルゴリン、ジクロラールフェナゾン、エレトリプタン、フロバトリプタン、リスリド、ナラトリプタン、ペルゴリド、プラミペキソール、リザトリプタン、ロピニロール、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ゾミトリプタン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(ix)脳梗塞治療薬の、例えば、アブシキシマブ、アクチバーゼ、NXY−059、シチコリン、クロベニチン、デスモテプラーゼ、レピノタン、トラキソプロジル、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(x)尿失禁の治療薬の、例えば、ダラフェナシン、ファルボキサート、オキシブチニン、プロピヴェリン、ロバルゾタン、ソリフェナシン、トルテロジン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
【0100】
(xi)神経障害性疼痛治療薬の、例えば、ガバペンチン、リドデルム、プレガブリン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(xii)侵害受容性疼痛治療薬の、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ジクロフェナック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、パラセタモール、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など;
(xiii)不眠症治療薬の、例えば、アロバルビタール、アロニミド、アモバルビタール、ベンゾクタミン、ブタバルビタール、カプリド、クロラール、クロペリドン、クロレタート(clorethate)、デクスクラモール、エトクロルビノール、エトミダート、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、メクロカロン、メラトニン、メフォバルビタール、メタカロン、ミダフルール、ニソバメート、ペントバルビタール、フェノバルビタール、プロポフォール、ロレタミド、トリクロホス、セコバルビタール、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など、又は
(xiv)気分安定剤の、例えば、カルバマゼピン、ジバルプロエックス、ガバペンチン、ラモトリジン、リチウム、オランザピン、クエチアピン、バルプロアート、バルプロ酸、ベラパミル、及び同等物、並びに薬学的に活性なその異性体及び代謝物など。
【0101】
その様な配合製品には、本明細書に記載の用量範囲の本発明の化合物、及び他の薬学的に活性な化合物又は化合物類が、承認された用量範囲及び/又は関連する出版物に記載の用量内で使用される。
【0102】
生物学的アッセイ
本発明の化合物の薬理学的特性は、機能活性用の標準的なアッセイを用いて分析することができる。グルタミン酸受容体アッセイの例は、例えばAramori et al., 1992, Neuron, 8:757;Tanabe et al., 1992, Neuron, 8:169;Miller et al., 1995, J. Neuroscience, 15:6103; Balazs, et al., 1997, J. Neurochemistry, 1997,69:151に記載のように、当該技術の分野でよく知られている。これらの刊行物に記載されている方法は、参照により本明細書に組み込まれる。好都合なことに、本発明の化合物は、mGluR2を発現する細胞の細胞内カルシウム動員、[Ca2+iを測定するアッセイ手段で検討することができる。
【0103】
hERG活性は、Bridgland-Taylor, M.H., et al, J. Pharm. Tox. Methods 54 (2006) 189-199に記載された方法を用いて評価した。
【0104】
溶解性は、25℃で24時間平衡化した後、pH7.4のリン酸緩衝液で測定し、定量化のためにHPLC−UV及びLC−MSMSを使用した。
【0105】
35S]−GTP(S結合アッセイは、mGluR2受容体活性化の機能的アッセイに使用した。化合物のヒトmGluR2受容体でのアロステリックなアクチベーター活性は、ヒトmGluR2を安定的に発現するCHO細胞から調製した膜による[35S]−GTP(S結合アッセイを用いて測定した。アッセイは、アゴニストがG−タンパク質共役受容体に結合して、G−タンパク質でのGDP−GTP交換を刺激するという原理に基づく。[35S]−GTP(Sは非加水分解性のGTP類似体であるため、GDP−GTP交換の、従って受容体活性化の指標を与えるために使用することができる。GTP(S結合アッセイは、従って、受容体活性化の定量的な手段を提供する。
【0106】
膜は、ヒトmGluR2が安定的にトランスフェクトされたCHO細胞から調製した。膜(30μgのタンパク質)は、1μMのグルタミン酸添加に先立って、試験化合物(3nM〜300nM)と室温で15分間インキュベートし、そして30μMのGDP及び0.1nMの[35S]−GTP(S(1250Ci/mmol)を含むアッセイ緩衝液(20mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのMgCl2)(500μL)中、30℃で30分間インキュベートした。反応は、2mLのポリプロピレン製96ウェルプレート中で3つ組で(intriplicate)行った。反応は、Packardの96ウェルハーベスタ及びUnifilter-96、GF/Bフィルターマイクロプレートを用いた減圧濾過によって停止させた。フィルタープレートは、氷冷した洗浄緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4)(4×1.5mL)で洗浄した。フィルタープレートを乾燥し、35μLのシンチレーション液(Microscint 20)を各ウェルに添加した。結合した放射能の量は、Packard TopCountでプレートをカウントすることによって測定した。データは、GraphPad Prismを用いて解析し、EC50及びEmax値(最大グルタミン酸作用に対して)は、非線形回帰を用いて計算した。
【0107】
下の表2に示した通り、一般に本明細書に記載した化合物は、好ましい溶解性、低い能力のhERGイオンチャンネル活性化能を有し、本明細書に記載したmGluR2調節剤活性のアッセイにおいて、示される通りのEC50値を有する高い活性であった。
【0108】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
1は、C1-3アルキル又はハロゲンから選択され;
2は、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はC3-6シクロアルキルから選択され;
3及びR4は、各存在で独立に、水素、C1-3アルキル、C1-3ヒドロキシアルキル、C3-6カルボシクリル、ヘテロシクリル若しくはヘテロアリールから選択され、又はR3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ、ピロリジニル又はピペラジニルから選択される環状部分を形成する)
に従う化合物。
【請求項2】
2がメチルである式Iに従う請求項1に記載の化合物、又はR2がトリフルオロメチル若しくはシクロプロピルである、式II:
【化2】

(式中、
1は、メチル又はクロロから選択され;
3及びR4は、各存在で独立に、水素、メチル、イソプロピル、2−ヒドロキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピペリジニル若しくはピラゾリルから選択され、又はR3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ、ピロリジニル若しくはピペラジニルから選択される環状部分を形成する)
に従う請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Iに従う請求項1に記載の化合物であって、式中、
1及びR2は、メチルであり;
3及びR4は、それらが結合する窒素と一緒に、モルホリノ又はピロリジニルから選択される環状部分を形成する;
上記化合物。
【請求項4】
式IIに従う請求項2に記載の化合物であって、式中、
1は、クロロであり;
2は、トリフルオロメチル又はシクロプロピルであり;
3及びR4は、各存在で独立に、水素、メチル又はイソプロピルから選択される;
上記化合物。
【請求項5】
式IIに従う請求項2に記載の化合物であって、式中、
1は、メチル又はクロロから選択され;
2は、トリフルオロメチル又はシクロプロピルから選択され;
3は、水素又はメチルであり;そして
4は、水素、メチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルから選択される;
上記化合物。
【請求項6】
以下の化合物:
5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
5−(7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピルエチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドリン−5−イル)−N,N−ジメチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−(2−イソプロピル−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸メチルアミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(ピロリジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
5−〔7−メチル−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド;
5−〔2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
5−(7−クロロ−2−イソプロピル−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソイ
ンドール−5−イル)−イソオキサゾール−3−カルボン酸シクロペンチルアミド;
7−クロロ−2−イソプロピル−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−7−メチル−5−〔3−(ピペラジン−1−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
5−〔7−クロロ−1−オキソ−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸ジメチルアミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸イソプロピル−メチル−アミド;
5−〔7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル〕−イソオキサゾール−3−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;
7−クロロ−2−((S)−1−シクロプロピル−エチル)−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;又は
7−クロロ−5−〔3−(モルホリン−4−カルボニル)−イソオキサゾール−5−イル〕−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エチル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン;
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的に許容される塩の形態の、請求項1、2、3、4、5又は6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、
4−ブロモ−アニリンをサンドマイヤー反応の条件下で対応するニトリルに変換し;
ニトリルを塩基で加水分解してアミドに変換し;
アミドをジアゾ化し、次いでニトロソ硫酸で加水分解して安息香酸にし;
安息香酸をメチルエステルとして保護し;
過酸化ベンゾイルをラジカル開始剤として用い、N−ブロモスクシンイミドでベンジル位のメチル基をモノブロム化して、6−置換−4−ブロモ−2−ブロモメチル−安息香酸メチルエステルを得;
6−置換−4−ブロモ−2−ブロモメチル−安息香酸メチルエステルをアミンで環化して4−ブロモ−イソインドロンにし;
4−ブロモ−イソインドロンを、ソノガシラ(Sonagashira)の条件下で保護アセチレンと反応させ;
塩基でアセチレンを脱保護し;
脱保護したアセチレンをエチル2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセタートと反応させてイソオキサゾールエステルを生成させ;そして
エステルを加水分解して酸にし、イソブチルクロロホルメート、N−メチルモルホリン及び適切なアミンを用いてアミド化して、式Iのアミドを生成させる;
又は、
イソオキサゾールエステルからアミンと加熱して反応させることによって式Iのアミドを生成させる;
ことを含む上記方法。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6又は7の何れか1項に記載の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
薬剤として使用するための、請求項1、2、3、4、5、6又は7の何れか1項に記載の化合物。
【請求項11】
グルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1、2、3、4、5、6又は7の何れか1項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
障害が統合失調症である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
グルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害を処置又は予防する方法で、そのような処置を必要とする動物の方法であって、治療的有効量の請求項1、2、3、4、5、6又は7の何れか1項に記載の化合物を、上記の動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項14】
グルタミン酸機能不全に関連する神経及び精神障害を処置又は予防する方法で、そのような処置を必要とする動物の方法であって、治療的有効量の請求項9に記載の医薬組成物を、該動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項15】
障害が統合失調症である請求項13又は14に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522816(P2011−522816A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512416(P2011−512416)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050682
【国際公開番号】WO2009/148403
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】