説明

イソブチレン、ジオレフィンモノマーおよびスチレン系モノマーのハロゲン化ターポリマー

【課題】C4〜C8モノオレフィンモノマーおよびC4〜C14マルチオレフィンモノマーを含むモノマー混合物から誘導されたコポリマーをハロゲン化することにより製造されたポリマーと比べて、向上した特性を有するハロゲン化ターポリマーを提供する。
【解決手段】80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーからなるハロゲン化ブチルターポリマーであって、該ターポリマーは、分子量分布を有しており、該モノマーは、分子量分布全体にわたって組成が等質であるターポリマーを形成するようにランダムに分布している、ハロゲン化ブチルターポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つの側面において、本発明はハロゲン化ブチルポリマーに関する。もう1つの側面において、本発明はブチルポリマーの耐熱性の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルポリマーまたはゴムは、技術分野において、特にタイヤの製造用途において良く知られている。
さらにハロゲン化ブチルゴムの使用も知られている。なぜならそのようなゴムは特に有利な接着挙動、曲げ強度、実用寿命並びに空気および水に対する不透性を有するからである。
【0003】
これにもかかわらず改良の余地がある。特に、タイヤの製造者保証が明確に増加し続けるにつれ、タイヤの有用な実用寿命を拡大させるさらなる要求および需要が存在する。これは、ゴム(例えばハロゲン化ブチルゴム)成分を含むタイヤ成分の特性を改良させる要求となる。これは、タイヤ更正用途において特に重要になっている。
従って該分野では、とりわけ向上した硬化性および/または耐老化性を有するハロゲン化ブチルゴムに対する絶え間ない要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規ハロゲン化ブチルポリマーを提供することである。
本発明の別の目的は、ハロゲン化ブチルポリマーの新規製造方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ハロゲン化ブチルポリマーから誘導された新規加硫ゴムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って1つの側面において本発明は、80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーからなるハロゲン化ブチルターポリマーであって、該ターポリマーは、分子量分布を有しており、該モノマーは、分子量分布全体にわたって組成が等質であるターポリマーを形成するようにランダムに分布している、ハロゲン化ブチルターポリマーを提供する
【0006】
別の側面において本発明は、80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーからなるハロゲン化ブチルターポリマーであって、該ターポリマーは、分子量分布を有しており、該モノマーは、分子量分布全体にわたって組成が等質であるターポリマーを形成するようにランダムに分布している、ハロゲン化ブチルターポリマーを含んでなる加硫ゴムを提供する。
【0007】
さらに別の側面において本発明は、80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーを混合し、
生成したモノマー混合物を、触媒の存在下に重合して、分子量分布を有しており、該モノマーが、分子量分布全体にわたって組成が等質になるようにランダムに分布しているターポリマーを得、
該ターポリマーをハロゲン化してハロゲン化ブチルターポリマーを得る
工程を含む、ポリマーの耐熱性の改良方法を提供する。
【0008】
本明細書において、用語「ブチルゴム」、「ブチルポリマー」および「ブチルゴムポリマー」は、本明細書を通して交替的に使用され、それぞれは、C4〜C8モノオレフィンモノマー、C4〜C14マルチオレフィンモノマーおよびスチレン系モノマーを含むモノマー混合物を反応させることにより調製したポリマーを表すことを意味する。
【発明の効果】
【0009】
驚くべきかつ予測できなかったことに、C4〜C8モノオレフィンモノマー、C4〜C14マルチオレフィンモノマーおよびスチレン系モノマーを含むモノマー混合物から誘導されたハロゲン化ターポリマーは結果として、C4〜C8モノオレフィンモノマーおよびC4〜C14マルチオレフィンモノマーを含むモノマー混合物から誘導されたコポリマーをハロゲン化することにより製造されたポリマーと比べて、向上した特性を有するポリマーを生ずることを発見した。向上した特性には、より速い硬化、より高い最大トルク、より高いデルタトルク、超過時間で比較的安定なモジュラス、向上した耐熱空気老化性および向上した老化曲げ特性が含まれる。これらの向上した特性は、ハロゲン化ブチルゴムを加硫するために添加した架橋剤による、ポリマー主鎖中のスチレン系部分間の直接相互作用から生ずると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のターポリマーGPCクロマトグラムのRI(ラマン赤外線)およびUV(紫外線)(256nm)トレースを示す図である。
【図2】本発明のターポリマーGPCクロマトグラムのRI(ラマン赤外線)およびUV(紫外線)(256nm)トレースを示す図である。
【図3】様々な臭素含有構造の描写を示す図である。
【図4】通常のポリマーの硬化挙動を示す図である。
【図5】本発明のターポリマーの硬化挙動を示す図である。
【図6】本発明のターポリマーの硬化挙動を示す図である。
【図7】本発明のターポリマーの耐熱空気老化性を示す図である。
【図8】本発明のターポリマーの耐熱空気老化性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施態様を、添付図面を参照しながら記載する。
【0012】
本発明の方法は、C4〜C8モノオレフィンモノマー、C4〜C14マルチオレフィンモノマーおよびスチレン系モノマーを含むモノマー混合物の使用に関する。
【0013】
好ましくは、モノマー混合物は、約80〜約99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、約0.5〜約5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび約0.5〜約15質量%のスチレン系モノマーを含む。より好ましくはモノマー混合物は、約85〜約99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、約0.5〜約5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび約0.5〜約10質量%のスチレン系モノマーを含む。最も好ましくはモノマー混合物は、約87〜約94質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、約1〜約3質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび約5〜約10質量%のスチレン系モノマーを含む。
【0014】
好ましいC4〜C8モノオレフィンモノマーは、イソブチレン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ブテン、4-エチル-1-ペンテンおよびこれらの混合物を含む群から選択され得る。最も好ましいC4〜C8モノオレフィンモノマーはイソブチレンを含む。
【0015】
好ましいC4〜C14マルチオレフィンモノマーは、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニルシクロヘキサジエンおよびこれらの混合物を含む群から選択され得る。最も好ましいC4〜C14マルチオレフィンモノマーはイソプレンを含む。
【0016】
好ましいスチレン系モノマーは、p-メチルスチレン、スチレン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-メトキシスチレン、インデン(インデン誘導体を含む。)およびこれらの混合物を含む群から選択され得る。最も好ましいスチレン系モノマーは、スチレン、p-メチルスチレンおよびこれらの混合物を含む群から選択され得る。
【0017】
上記のように、ブチルポリマーはハロゲン化されている。好ましくは、ブチルポリマーは臭素化または塩素化されている。ハロゲン量は、好ましくはポリマーの約0.1〜約8質量%、より好ましくは約0.5〜約4質量%、最も好ましくは約1.5〜約3質量%の範囲である。
【0018】
ハロゲン化ブチルポリマーを、上記モノマー混合物から誘導され、あらかじめ製造されたブチルポリマーをハロゲン化することにより製造し得る。ブチルポリマーを製造する方法は通常のものであり、当業者の理解できる範囲内である。即ちブチルポリマーの製造方法を、ブチルポリマーを製造する際に通常の温度(例えば約−100〜約+50℃の範囲、通常は−90℃未満)で通常の触媒(例えば三塩化アルミニウム)の存在下で行い得る。ブチルポリマーを、通常の方法で、溶液重合により、またはスラリー重合法により製造し得る。重合を好ましくは懸濁液中で行う(スラリー法)。
【0019】
ブチルポリマーの製造についてのさらなる情報について、例えば以下のものが参照される:
1. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (第5版、完全改定版、第A23巻、編者 Elvers ら)
2. Joseph P. Kennedy による "Cationic Polymerization of Olefins: A Critical Inventory" (John Wiley & Sons, Inc. (コピーライト) 1975年)
3. Maurice, Morton による "Rubber Technology" (第3版)、第10章(Van Nostrand Reinhold Company (コピーライト) 1987年)。
【0020】
次いでブチルポリマーを通常の方法でハロゲン化し得る。例えば米国特許第 5,886,106 号を参照。即ち、微分散ブチルゴムをハロゲン化剤、例えば塩素または臭素、好ましくは臭素を用いて処理することにより、あるいは混合装置内で臭素化剤、例えばN-ブロモスクシンイミドとあらかじめ製造したブチルゴムとを激しく混合することによって臭素化ブチルゴムを製造することにより、ハロゲン化ブチルゴムを製造し得る。代わりにハロゲン化ブチルゴムを、適当な有機溶媒中のあらかじめ製造したブチルゴム溶液または懸濁液を対応する臭素化剤で処理することにより製造し得る。より詳細には、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (第5版、完全改定版、第A23巻、編者 Elvers ら)および/または Maurice, Morton による "Rubber Technology" (第3版)、第10章(Van Nostrand Reinhold Company (コピーライト) 1987年)を参照。
【0021】
この手順中のハロゲン化剤量を、最終ターポリマーが上記の好ましいハロゲン量を有するように制御し得る。ポリマーにハロゲンを付与する特別な形態は、特に限定されず、上記以外の形態を使用して本発明の利点を獲得し得ることを当業者は認識するであろう。
【0022】
本発明のハロゲン化ブチルゴムを、加硫ゴム製品を製造するために使用し得る。例えば有用な加硫ゴムを、ハロゲン化ブチルゴムとカーボンブラックおよび/または他の既知成分(添加剤)とを混合し、通常の硬化剤を用いて通常の方法で混合物を架橋することにより製造し得る。
【0023】
(実施例)
本発明の実施態様を、以下の実施例を参照しながら説明するが、この実施例は本発明の範囲を解釈または限定するために使用されるべきではない。実施例中で「pbw」は質量部を意味し、「phr」はゴムまたはポリマー生成物100質量部あたりの質量部を意味する。
【0024】
実施例1〜7
実施例においてイソブチレン(IB、Matheson、99%)および塩化メチル(MeCl、Matheson、99%)を受け取ったまま使用した。イソプレン(IP、Aldrich、99.9%)、p-メチルスチレン(p-MeSt、Aldrich、97%)およびスチレン(St、Aldrich、99%)を、使用前にt-ブチルカテコール阻害剤除去剤に通した。三塩化アルミニウム(Aldrich、99.99%)、ステアリン酸(NBS、工業グレード)および酸化亜鉛(Midwest Zinc Co.、工業グレード)を受け取ったまま使用した。
【0025】
すべての重合を、MBraun MBTM 150B-G-I 乾燥ボックス内で行った。
飽和触媒溶液を、AlCl3約1gとMeCl 100mLとを組合せることにより調製した。この溶液を−30℃の温度で30分間攪拌した。
【0026】
IB、IP、p-MeStおよびStを、表1で報告する濃度どおりに、ステンレススチール製攪拌器および熱電対を備え付けた2Lバッフルガラス反応器に装填した。モノマーを含有する反応器を−95℃に冷却し、その後触媒溶液10mLを反応器に導入した。重合を、最大温度に達するまで行った。反応器にエタノール10mLを添加することにより重合を停止させた。ポリマーを、ヘキサンに溶解させ、次いでエタノール凝集により回収した。次いでポリマーを減圧オーブン内40℃で、恒量に達するまで乾燥した。
【0027】
示すように、p-MeStまたはStのいずれも実施例1では使用しなかった。従ってこの実施例は、比較の目的のためだけに提供されたものであり、本発明の範囲外である。また、実施例5〜7も、p-MeStを使用していないので、本願発明の範囲外であり、比較例である。
【0028】
分子量および分子量分布を、紫外線(UV)およびラマン赤外線(RI)検出器を備えたGPCにより、35℃に調温している6本の Waters Ultrastyragel カラム(100、500、103、104、105および106Å)を使用して測定した。移動相はTHFであり、流量は1mL/分であった。流量を、内部標識として硫黄元素を使用して監視した。計器を、14個の精密なMWD PS標準を用いて較正した。平均分子量を、汎用較正原理(Universal Calibration Principle)を使用し、KPSt=1.12×10-4dl/g、αPSt=0.725、KPIB=2.00×10-4dl/gおよびαPIB=0.67を用いて計算した。ステアリン酸カルシウム、ESBOおよびEXOの値をFTIRにより測定した。500MHzの1H-NMRスペクトルを通常の方法で得て、得られたスペクトルの評価を通常の方法で行った(例えば、(i)Chu ら、Macromolecules 18, 1423 (1985年) および(ii)Chu ら、Rubber Chem. Technol. 60, 626 (1987年) を参照)。臭素含有量を酸素フラスコ燃焼により測定し、Tg値をDSCにより測定した。熱空気老化の検討を、ASTM-D576-81 に従い行った。
【0029】
図1および2は、それぞれ、p-MeStターポリマー(実施例4)およびStターポリマー(実施例7)のGPCクロマトグラムに対するRIおよびUV(256nm)トレースを示す。RIおよびUVトレースを比較することにより、分子量の関数として、ポリマーの組成等質性に対する情報が得られる。RIシグナルは、ポリマー主鎖の全質量に比例する。UVシグナルは、主鎖に組み込まれた芳香族モノマー単位の数に比例する。なぜならIBおよびIP単位のUV吸収は、256nmにおいて芳香環のものと比べて無視できるからである。
【0030】
p-MeStターポリマーのRIおよびUVトレースは、ほとんど完全な重なりを示す。所定分子量画分のp-MeSt含有量に比例するUV/RI比は、全分子量範囲で実質的に一定である。これらの結果により、IBおよびp-MeStの反応性がイソブチレンキャップ生長カチオンに対し非常に似ていることが確認される。
【0031】
対照的にStターポリマーは、重ならないUVおよびRIトレース示す。UV/RI比、即ちポリマーのスチレン含有量は、分子量が減少する(溶離体積が上昇)するにつれ約4の係数で増加する。これは、Stが連鎖移動剤として機能し、IBキャップ生長カチオンに対する反応性がIBより低いことを示す。
前述の分析により、ランダムコポリマーの形成が確認される。
【0032】
製造したポリマー生成物の各バッチを次の方法で臭素化した。
ポリマー生成物をヘキサンに溶解させてポリマーセメントを製造し、これに0.08phrのオクチル化ジフェニルアミン(ODPA)および0.017phrの IrganoxTM 1010を添加した。その後セメントを溶媒ストリッピングし、ミル乾燥した。
【0033】
得られた均一ゴムをもう一度断片に切断し、ヘキサンに再溶解させた。次いでそのように製造したポリマーセメントを、機械的攪拌機および2つのシリンジポットを備え付けた12Lバッフル反応器に移した。セメント容器をヘキサンおよびジクロロメタンですすいだ。次いで水を反応器に添加し、混合物を数分間攪拌した。
【0034】
ポリマー生成物の臭素化を、適当量の臭素を反応器に注入することにより開始した。4分の反応時間後、苛性溶液(6.4質量%のNaOH)を注入することにより反応を停止させた。混合物をさらに10分間攪拌したままにし、次いで0.25phrのエポキシド化ダイズ油(ESBO)、0.02phrのODPAおよび0.003phrの IrganoxTM 1076 を含有する安定剤溶液を混合物に添加した。次いで臭素化ゴム混合物を3回洗浄し、その後に追加のESBO(0.65phr)およびステアリン酸カルシウム(1.5phr)を蒸気ストリッピング前にセメントに添加した。最後にポリマーをホットミルで乾燥した。
【0035】
臭素濃度、ゴム濃度(固体)、水分および反応時間をすべて一定に維持した。臭素化中、30体積%のジクロロメタンを、反応度に対し充分に制御するため、それによりすべての臭素化ポリマー生成物中で同じ濃度(約1.0mol%)の臭素構造を得るために、極性補助溶媒として使用した。臭素化ターポリマーの安定剤および酸化防止剤濃度を一定に維持した。ステアリン酸カルシウム濃度を1.5phr、ESBO濃度を0.9phrに設定した。
【0036】
500MHzのH-NMRにより測定した臭素化ターポリマーの組成を表2に報告する。臭素化前後で測定したp-MeStおよびSt含有量は、実質的に相互で一致する。その結果より、第1級臭素化構造の量は、ターポリマーの場合は対照物の場合より低く、その量はp-MeStまたはStの増加とともに減少する。これは、1,4-IP鎖につながれることに加えて、芳香環が臭素化を経験することのしるしであると考えられる。臭素化芳香環の存在は、物質収支から見積もられた〔(試料の全臭素含有量)−(1,4-IP単位に結合した臭素量)〕。試料の全臭素含有量を酸素フラスコ燃焼より測定した。さらに、1,4-IP単位に結合した臭素量をH-NMRの結果から計算した。特に、臭素含有構造の合計(エキソ+転位エキソ+エンド+臭化水素付加物、これら種々の臭素含有構造の描写について図3を参照)から計算を誘導した。結果を表3で報告する。
【0037】
表3に関して、臭素含有量に対する2つの値は実施例2において合理的に調和し、これは芳香環の臭素化は無視できることを示す。実施例3および4それぞれに関して臭素含有量の2つの値は離れており、これは芳香環が臭素化を経験したことを示す。2つの値のずれは、スチレンターポリマー(即ち、実施例5〜7)の場合にさらにはっきりする。これは驚くことではない。なぜなら立体障害の観点からより接近しやすいパラ位がスチレンの場合ブロックされておらず、オルトおよびパラ配向がアルキル基(ポリマー主鎖)に影響を及ぼすからである。
【0038】
それぞれの実施例に対し加硫ゴムを、40℃に設定したミルで1phrのステアリン酸および5phrの酸化亜鉛を臭素化ポリマーに添加することにより製造した(即ち、加硫中にフィラーおよびオイルを使用しなかった)。硬化挙動を、ODR Monsanto レオメーターにより測定した(3度アーク、166℃)。フルサイズ(6×6インチ)およびハーフサイズ(3×3インチ)のマクロシートを、これらのコンパウンドから、コンパウンドを166℃で30分間硬化することにより製造した。
【0039】
図4、5および6はそれぞれ、実施例1(対照物)、2(p-MeSt低含有量ターポリマー)および6(中度のSt含有量ターポリマー)におけるポリマーの硬化挙動を示す。すべてのコンパウンドに対し得られた硬化時間およびトルクの値を表4に掲げる。
【0040】
レオメトリーチャートの通りに、実施例1で製造したゴムは硬化開始前に大きな谷または長い誘導時間を示す。特に実施例1で製造したコポリマーは約13分でTc50点(半硬化状態)に到達し、約20分でTc90点に到達する。他方、実施例2(p-MeSt低含有量ターポリマー)および6(中度のSt含有量ターポリマー)で製造したターポリマーは狭いトルク曲線を有し、実施例2および6のターポリマーは実施例1のコポリマーより10〜35%少ないエキソを有するにもかかわらず、半分の時間未満でTc50点に達することが観察される。これは芳香環が硬化反応に参加することの証拠である。
【0041】
実施例2(p-MeSt低含有量ターポリマー)および6(中度のSt含有量ターポリマー)で製造したターポリマーのMhおよびMh-Ml値は、p-MeStまたはSt含有量が増加するにつれエキソ含有量が減少することにより、減少する。しかしながら得られたトルク値は、対照物のものと少なくとも同じかまたはそれ以上でさえであった。最も意味のある比較を、実施例1のコポリマー(エキソ=0.97mol%)と、実施例2のターポリマー(エキソ=0.87mol%、p-MeSt=2.69mol%)および実施例6のターポリマー(エキソ=0.85mol%、St=1.81)とのデルタトルク値を比較することにより行うことができる。デルタトルク値を比較することにより、ムーニーの効果を明らかにし得る。表4に報告した結果から、ターポリマーの両方は実施例1(10.8dNm)より高いデルタトルク値(実施例2では14.0dNmおよび実施例6では12.4dNm)を与えた。この違いはまた、芳香環が架橋反応に参加する証拠である。
【0042】
それぞれの実施例において、ゴムを166℃で30分間硬化させた。硬化シートを、標準的試験法(ASTM D412-68)に従う引張試験片にそれらを切断する前に、室温で16時間おいた。各加硫ゴムを、2つの異なる条件(120℃で168時間および140℃で168時間)下での熱空気老化試験(ASTM D573-81
)に付した。
【0043】
実施例1〜3および5〜7で製造したゴムに対する熱空気老化試験の結果を、表5で報告する。さらに、図7は100%伸びでのモジュラスを示す。未老化ターポリマーは、対照物に対し約15%高いモジュラスを示し、これは測定した高いトルク値と一致する。対照試料の100%モジュラスは140℃で168時間の熱空気老化に対し約50%減少する。ターポリマーはより良好な耐老化性を示す(100%モジュラスは約25%だけ減少する)。図8は、140℃で168時間の熱空気老化前後における300%伸びでのモジュラスを示す。実施例のコポリマーの300%モジュラスは老化に対し36%の減少を示す。対照的に、ターポリマーの300%モジュラスは約2〜5%だけ減少する。
【0044】
表5は、Stターポリマーの未老化応力歪の結果、およびSt低含有量ターポリマー(実施例5)を使用して行った限定熱空気老化の検討結果もまとめる。ここでもターポリマーのモジュラスは対照物のものより幾分高い。168時間/140℃の熱空気老化の結果として、Stターポリマーの100%モジュラスは30%減少し、300%モジュラスは16%減少する。これは実施例1のコポリマーよりも良好な耐老化性を示す。
【0045】
本発明を、好ましく、特別に例示した実施態様を参照しながら記載したが、これら好ましい例示の実施態様に対する種々の変形を本発明の意図および範囲から離れずになし得ることは当業者は当然に理解するであろう。
【0046】
本明細書で参照した全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許または特許出願が特別かつ個々にその全てを参照して組み込むように示される場合と同程度に、それら全てを参照することにより組み込まれる。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーからなるハロゲン化ブチルターポリマーであって、該ターポリマーは、分子量分布を有しており、該モノマーは、分子量分布全体にわたって組成が等質であるターポリマーを形成するようにランダムに分布している、ハロゲン化ブチルターポリマー。
【請求項2】
80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーからなるハロゲン化ブチルターポリマーであって、該ターポリマーは、分子量分布を有しており、該モノマーは、分子量分布全体にわたって組成が等質であるターポリマーを形成するようにランダムに分布している、ハロゲン化ブチルターポリマーを含んでなる加硫ゴム。
【請求項3】
80〜99質量%のC4〜C8モノオレフィンモノマー、0.5〜5質量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマーおよび0.5〜15質量%のp-メチルスチレンモノマーを混合し、
生成したモノマー混合物を、触媒の存在下に重合して、分子量分布を有しており、該モノマーが、分子量分布全体にわたって組成が等質になるようにランダムに分布しているターポリマーを得、
該ターポリマーをハロゲン化してハロゲン化ブチルターポリマーを得る
工程を含む、ポリマーの耐熱性の改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62492(P2012−62492A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222(P2012−222)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2001−525244(P2001−525244)の分割
【原出願日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【出願人】(504351677)ランクセス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Inc.
【Fターム(参考)】