説明

イソブチレンのコポリマーを含有する水系組成物

【課題】官能性コポリマーを含有する水系熱硬化性組成物を開発する。
【解決手段】硬化可能な水性フィルム形成組成物が提供され、この組成物は、以下の(a)および(b)を含む:(a)反応性官能基を含み、かつ交互構造単位−[DM−AM]−を有する残基を少なくとも30mol%を含むコポリマーであって、この構造単位において、DMは、ドナーモノマー由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を示し、このコポリマーの少なくとも15mol%は、構造(I)を有するドナーモノマーを含み、構造(I)において、Rは、直鎖または分枝鎖のC〜Cアルキルであり、Rは、メチル、直鎖、環状または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルから選択される、コポリマー;ならびに(b)(a)の反応性官能基と反応性の官能基を有する硬化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、一般に、ビニルモノマーのコポリマーを含有する水系熱硬化性組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、イソブチレン系モノマーを含む官能性コポリマーを含有する水系熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
特に、使用中に揮発性有機物の空気中への放出に関連したコーティング組成物の環境への影響を少なくすることは、近年、研究開発中の領域である。従って、高固形分の液体および粉末コーティングは、一部には、それらに固有の低揮発性有機含量(VOC)であり、これが、塗布工程での空気への放出を著しく低下させるために、これらへの関心が高まっている。熱可塑性および熱硬化性の両方のコーティング組成物が市販されているが、熱硬化性コーティングは、典型的には、物理的特性(例えば、硬度および溶媒耐性)が優れているために、望ましい。
【0003】
低VOCコーティングは、使用するコーティングの容量が比較的に高いために、自動車のオリジナル設備製造(OEM)市場で特に望ましい。しかしながら、低VOCレベルの要件に加えて、自動車業者は、使用するコーティングについて、非常に厳しい性能要件を有する。例えば、自動車のOEMクリアトップコートは、典型的には、良好な外部耐久性、酸腐食耐性および水スポット耐性、および優れた光沢および外観の組合せを有する必要がある。液体トップコート(これは、例えば、キャップポリイソシアネートおよびポリオール成分を含有する)は、このような特性を提供できるものの、さらに高い固形分の液体または粉末コーティング(これらは、VOCレベルが事実上ゼロである)と比べて、VOCレベルが高いという望ましくない欠点がある。
【0004】
液体、粉末および電着可能コーティング組成物で使用される官能性ポリマーは、典型的には、ランダムコポリマーであり、これらは、官能基含有アクリルおよび/またはメタクリルモノマーを含有する。このような官能性コポリマーは、個々の官能基の当量およびポリマー鎖の構造が変わるポリマー分子の混合物を含有する。このようなコポリマーでは、これらの官能基は、そのポリマー鎖に沿ってランダムに位置している。さらに、官能基の数は、これらのポリマー分子のうちで均等に分割されておらず、その結果、一部のポリマー分子は、実際には、官能性を有し得ない。
【0005】
熱硬化性組成物では、三次元架橋ネットワークの形成は、その官能基の当量だけでなく、それを含む個々のポリマー分子の構造にも依存している。殆どまたは全く反応性官能基を有しない(またはそれらの位置がポリマー鎖に沿っているために、架橋反応と関与しそうにない官能基を有する)ポリマー分子は、この三次元架橋ネットワークの形成に殆どまたは全く寄与せず、その結果、架橋密度が低下し、また、最終的に形成された熱硬化コーティングの物理的特性が最適とは言えなくなる。
【0006】
多くの特許では、コーティング組成物においてイソブチレン含有ポリマーを使用する可能性が述べられている。例えば、Vicariらの米国特許第6,114,489号は、以下を含有するコーティング組成物を開示している:官能性アクリル樹脂バインダー;共反応剤であって、これは、このアクリルバインダーの官能基と反応できる;脱気剤;および超分枝ポリエステル流動レベリング剤。イソブチレンは、長いモノマーのリストの一部として、このアクリルバインダー中で使用できる可能性があるコモノマーとして、示唆されている。Clarkらの米国特許第5,552,487号は、粉末コーティング組成物を開示しており、これらは、反応性官能基および適切な架橋剤を有するコポリマーを含有し、この架橋剤は、このコポリマーの反応性官能基と反応できる。このコポリマーは、官能性モノマーと他のモノマーとを共重合することにより製造され、イソブチレンは、潜在的なコモノマーとして列挙された多くのもののうちの1つである。この特許では2つだけが論及されているものの、イソブチレン系コモノマーを使用する可能性を述べた多くの特許では、このようなコポリマーの作用実施例を実際に示したり開示したりしているものはない。
【0007】
コーティング組成物においては、イソブチレン系モノマー含有コポリマーの例を見出すことができないという事実は、イソブチレンがアクリルおよびメタクリルモノマーと一般的に非反応性であることに最も原因がありそうである。モノマーの反応性比は、the Alfrey−Price Q−e値(Robert Z.Greenley,Polymer Handbook,Fourth Edition,Brandrup,Immergut and Gulke,editors,Wiley & Sons,New
York,NY,pp.309−319(1999))を使用して計算できる。これらの計算は、式IおよびIIを使用して実行され得る:
I r=(Q/Q)exp{−e(e−e)}
II r=(Q/Q)exp{−e(e−e)}
ここで、rおよびrは、モノマー1および2の各反応性比であり、そしてQおよびQならびにeおよびeは、各モノマーの各反応性値および極性値である(Odian,Principals of Polymerization,第3版,Wiley−Interscience,New York,NY,Chapter 6,pp.452−467および489−491(1991))。表1は、イソブチレンを備えた選択モノマーの算出反応性比を示す:
【0008】
【表1】

高分子化学の当業者が理解できるように、rがほぼ0であり、そしてrが10以上の値を有するとき、モノマー2は、両方のモノマーに対して反応性であり、そしてモノマー1は、いずれのモノマーに対しても反応性ではない。言い換えれば、相当な量の両モノマーを有するコポリマーを調製することは、非常に困難である。イソブチレン系モノマー含有コポリマーを含むコーティング組成物の例は、これらのモノマーが共重合する傾向にないので、見出すことができないことは、驚くべきことではない。
【0009】
ある場合には、容易に単独重合しないモノマーは、互いに急速な共重合反応を受けることができることが認められている。最も典型的な状況は、強力な電子ドナーモノマーを強力な電子アクセプターモノマー(そこから、フリーラジカル開始後、規則的な交互コポリマーが生じる)と混合するとき、起こる。無水マレイン酸は、強力な電子アクセプターモノマーの広く使用されている例である。スチレンおよびビニルエーテルは、電子ドナーモノマーの典型的な例である。無水マレイン酸−スチレンのような系は、電荷移動錯体を形成することが知られており、これらは、それらのモノマーを開始前に交互配列で配置する傾向にある。フリーラジカル開始剤を塗布すると、並べられたモノマーが共に「結合されて」、交互コポリマーを形成する(非特許文献1)。
【0010】
Hanfordの米国特許第2,378,629号およびSackmanらの米国特許第4,151,336号は、電子供与性が温和なモノマー(例えば、ジイソブチレン)を強力な電子アクセプターモノマー(例えば、無水マレイン酸)と共重合したときでも、交互コポリマーが得られることを開示している。
【0011】
電子供与性が温和なモノマー(例えば、ジイソブチレン)を電子受容性が温和なモノマー(例えば、アクリルエステル)と共重合したとき、その電子ドナーモノマーの取り込みが乏しくなる。例えば、イソブチレン(IB)およびアクリルモノマーをフリーラジカル共重合することにより、IBの連鎖移動が低下するために、20〜30%以下のIBを含有し分子量が低いコポリマーが得られた。IBのこのような共重合の例は、Sparksらの特許文献1およびBrubakerらの特許文献2で開示されている。
【0012】
共役モノマー(例えば、アクリルエステルおよびアクリロニトリル)は、ルイス酸(例えば、ハロゲン化アルキルアルミニウム)の存在下にて、プロピレン、イソブチレンおよびスチレンのようなモノマーと反応して、1:1の交互コポリマーを生じることが明らかとなっている。これらの交互コポリマーは、アクリルエステルに対するこのルイス酸の濃度比が0.9であり、IBの濃度がアクリルエステルの濃度よりも高いときに、得られた(Hirookaら、J.Polym.Sci.Polym.Chem.,11,1281(1973))。これらのハロゲン化金属は、モノマーと錯化することにより、これらのモノマーの反応性を変える。その電子ドナーモノマー−電子アクセプターモノマー−ハロゲン化金属錯体は、交互コポリマーを生じる(Mashitaら、Polymer,Vol.36,No.15,pp.2973−2982,(1995))。
【0013】
IBおよびアクリル酸メチル(MA)のコポリマーはまた、開始系としてエチルアルミニウムセスキクロライドおよび2−メチルペンタノイルペルオキシドを使用することにより、得られた。得られたコポリマーは、EtAlClの存在下(MAに対してモル%)にて、低い(Kuntzら、J.Polym.Sci.Polym.Chem.,16,1747(1978))または高い(Florjanczykら、Makromol.Chem.,183,1081(1982))アイソタクチシティーを有する交互構造を有していた。
【0014】
アクリルエステルとのIBコポリマーを製造する他の方法には、ハロゲン化アルキルホウ素が関与しており、これは、交互コポリマーを形成する際に、ハロゲン化アルキルアルミニウムよりもずっと活性が高いことが見出された。得られるコポリマーは、エラストマーであり、これは、引っ張り強度および熱分解温度が高く、特に、高温において、オイル耐性が良好である(Mashitaら、Polymer,36,2983(1995))。
【0015】
Matyjaszewskiらの米国特許第5,807,937号は、原子移動ラジカル重合(ATRP)プロセスを使用してイソブチレンおよびアクリル酸メチルの交互コポリマーを製造する方法を開示している。この方法には、その重合プロセスの複雑なレドックス開始および成長段階を実行するために、配位子(例えば、2,2’−ビピリジル)と共に、適切なATPP開始剤(例えば、臭化1−フェニルエチル)および適切な遷移金属塩(例えば、CuBr)を使用する必要がある。
【0016】
IBおよびアクリル酸エステルの量が比較的に高い(>30mol%)コポリマーは、ルイス酸またはATRP開始系を使用するとき、フリーラジカル重合によってのみ得られた。このようなプロセスから生じるポリマーには、その遷移金属塩および/またはルイス酸残渣を除去してポリマーを商業的に有用にするために、費用および時間のかかる洗浄が必要である。
【0017】
そのコポリマーと混ぜられたルイス酸および/または遷移金属を含有するコポリマー組成物は、コーティング組成物中にて商業的に使用するとき、多数の欠点を有し得る。第一に、一部のルイス酸および遷移金属は、毒性であり、このコポリマーから浸出して環境に入ると、環境に悪影響を及ぼす。第二に、コーティング用途では、これらのルイス酸および遷移金属は、そのコーティングをUV光に晒したときに色安定性に乏しくなり得るか、または、単に、他の反応または相互作用によって、このコーティングが脱色し得る。さらに、これらのルイス酸および遷移金属は、コーティング処方物中の他の成分と反応し得、所定のコーティング処方物に対して、望ましくない特性(例えば、短い寿命)を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第2,411,599号明細書
【特許文献2】米国特許第2,531,196号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Cowie,Alternating Copolymers,Plenum,New York(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
十分に規定されたポリマー鎖構造を有する官能性コポリマーを含有する水系熱硬化性組成物を開発することが望まれている。特に、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まないイソブチレン系モノマーを含有する交互コポリマーが望まれている。このような組成物は、VOCレベルが低く、また、特に、コーティング用途における好ましい性能特性の組合せを有する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
硬化可能な水性フィルム形成組成物であって、該組成物は、以下:
(a)2つ以上の反応性官能基を含むポリマーバインダーとして作用するコポリマーであって、該コポリマーは、以下の交互構造単位:
−[DM−AM]−
を有する残基を少なくとも30mol%含み、
該構造単位において、DMは、ドナーモノマー由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を示し、該コポリマーの少なくとも15mol%は、以下の構造(I):
【化1】


を有するドナーモノマーを含み、
該構造(I)において、Rは、直鎖または分枝鎖のC〜Cアルキルであり、Rは、メチル、直鎖、環状または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される、コポリマー;ならびに
(b)(a)の反応性官能基と反応性の少なくとも2つの官能基を有する硬化剤、
を含有する、組成物。
(項目2)
上記コポリマーの少なくとも15モル%が、アクセプターモノマーとしてアクリルモノマーを含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目3)
上記コポリマーが、少なくとも1つの塩の基または塩形成基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目4)
上記コポリマーが、ヒドロキシル官能基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目5)
上記コポリマーが、マレエートモノマーセグメントおよびフマレートモノマーセグメントを実質的に含まない、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目6)
上記コポリマー組成物が、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目7)
上記ドナーモノマーが、必要に応じて、スチレン、置換したスチレン、メチルスチレン、置換したスチレン、ビニルエーテル、およびビニルピリジンと組み合わせて、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、およびイソプレノールからなる群から選択される1つ以上である、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目8)
上記構造Iのドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目9)
上記構造Iドナーモノマーの基Rが、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメート、およびアミドからなる群から選択される1つ以上の官能基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目10)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーが、
以下の構造(II):
【化2】


によって記載される1つ以上のものを含み、ここで、Wは、−CN、−X、および−C(=O)−Yからなる群より選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(カプロラクトン)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアルカリール、およびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基であり、そしてXは、ハライドである、組成物。
(項目11)
項目2に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクリルモノマーは、以下の構造(III):
【化3】

によって記載される1つ以上であり、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基である、組成物。
(項目12)
項目11に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、Yは、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロックイソシアネート、カルバメート、およびアミンからなる群より選択される少なくとも1つの官能基を含む、フィルム形成組成物。
(項目13)
上記塩の基が、カルボン酸塩、アミン塩、4級アンモニウム、4級ホスホニウム、および3級スルホニウムからなる群から選択される、項目3に記載のフィルム形成組成物。
(項目14)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、250〜100,000の分子量を有する、組成物。
(項目15)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、4未満の多分散性指数を有する、組成物。
(項目16)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記交互構造単位は、少なくとも50モル%のコポリマーを含む、組成物。
(項目17)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、クロロトリフルオロエチレン、グリシジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドからなる群より選択される1つ以上のものである、組成物。
(項目18)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、以下の一般式V:
【化4】


の他のエチレン性不飽和モノマー由来の1つ以上の残基を含み、ここで、R11、R12およびR14は、独立して、H、CF、1〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル、アリール、2〜10個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル、ハロゲンで置換された2〜6個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から選択され、R13は、H、C〜Cアルキル、およびCOOR15からなる群から選択され、ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基およびアリールからなる群から選択される、組成物。
(項目19)
上記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群から選択される1つ以上のものである、項目18に記載のフィルム形成組成物。
(項目20)
上記ポリマーバインダー(a)の官能基が、ヒドロキシル基、カルバメート基、ブロックイソシアネート基、1級アミン基、2級アミン基、アミド基、尿素基、ウレタン基、ビニル基およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目21)
項目20に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、カルバメート官能基を含む、組成物。
(項目22)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、以下の反応物:
(1)後に塩基で少なくとも部分的に中和されてカルボン酸塩の基を形成する酸官能基を含む、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和モノマー;および
(2)酸官能基を含まない、少なくとも1つの重合可能な官能基含有エチレン性不飽和モノマー、
の反応生成物を含む、組成物。
(項目23)
反応物(1)が、カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含む、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目24)
反応物(1)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目25)
反応物(1)が、50mgKOH/gまでの酸価を提供するのに十分な量で上記ポリマーバインダー(a)中に存在する、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目26)
項目22に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、反応物(2)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1個のヒドロキシアルキル官能性モノマーを含む、組成物。
(項目27)
反応物(2)が、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを含む、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目28)
項目27に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、以下:
(1)エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーおよび少なくとも5個の炭素原子を有する飽和カルボン酸;および
(2)エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよび該エチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合可能でない少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物、
からなる群より選択される反応物の反応生成物を含む、組成物。
(項目29)
上記ポリマーバインダー(a)が形成される上記反応物が、反応物(3)として、(1)および(2)とは異なる少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目30)
反応物(3)が、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目29に記載のフィルム形成組成物。(項目31)
上記ポリマーバインダー(a)の酸価が、0〜50mgKOH/gの範囲である、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目32)
上記ポリマーバインダー(a)が、上記フィルム形成組成物中の全樹脂固体重量に基づいて、55〜99重量%の範囲の量で該フィルム形成組成物に存在する、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目33)
上記架橋剤(b)が、ブロックイソシアネート、アミノプラスト樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目34)
上記架橋剤(b)が、3,5−ジメチルピラゾールで可逆的にブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである、項目33に記載のフィルム形成組成物。
(項目35)
上記架橋剤(b)が、上記フィルム形成組成物中に存在する全樹脂固体重量に基づいて、1〜45重量%の範囲の量で該フィルム形成組成物中に存在する、項目22に記載のフィルム形成組成物。
(項目36)
多成分複合コーティング構成物であって、該構成物は着色したフィルム形成組成物から堆積したベースコートおよび該ベースコート上に塗布された透明トップコート組成物を含み、該透明トップコートは、有機溶媒を実質的に含まないクリアフィルム形成組成物から堆積され、該トップコートフィルム形成組成物は、硬化可能な水性フィルム形成組成物を含み、該硬化可能な水性フィルム形成組成物は、以下:
(a)2つ以上の反応性官能基を含むポリマーバインダーとして作用するコポリマーであって、該コポリマーは、以下の交互構造単位:
−[DM−AM]−
を有する残基を少なくとも30mol%含み、
該構造単位において、DMは、ドナーモノマー由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を示し、該コポリマーの少なくとも15mol%は、以下の構造(I):
【化5】


を有するドナーモノマーを含み、
該構造(I)において、Rは、直鎖または分枝鎖のC〜Cアルキルであり、Rは、メチル、直鎖、環状または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される、コポリマー;ならびに
(b)(a)の反応性官能基と反応性の少なくとも2つの官能基を有する硬化剤、
を含有する、
多成分複合コーティング構成物。
(項目37)
上記コポリマーの少なくとも15モル%が、アクセプターモノマーとしてアクリルモノマーを含む、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目38)
上記コポリマーが、少なくとも1つの塩の基または塩形成基を含む、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目39)
上記コポリマーが、ヒドロキシル官能基を含む、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目40)
上記コポリマーが、マレエートモノマーセグメントおよびフマレートモノマーセグメントを実質的に含まない、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目41)
上記コポリマー組成物が、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目42)
上記ドナーモノマーが、必要に応じて、スチレン、置換したスチレン、メチルスチレン、置換したスチレン、ビニルエーテル、およびビニルピリジンと組み合わせて、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、およびイソプレノールからなる群から選択される1つ以上のものである、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目43)
上記構造Iのドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目44)
上記構造Iのドナーモノマーの基Rが、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメート、およびアミドからなる群から選択される1つ以上の官能基を含む、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目45)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーが、以下の構造(II):
【化6】


によって記載される1つ以上を含み、ここで、Wは、−CN、−X、および−C(=O)−Yからなる群より選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(カプロラクトン)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアルカリールおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基であり、そしてXは、ハライドである、多成分複合コーティング構成物。
(項目46)
項目37に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記アクリルモノマーは、以下の構造(III):
【化7】


によって記載される1つ以上のものであり、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基である、多成分複合コーティング構成物。
(項目47)
項目46に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、Yは、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロックイソシアネート、カルバメート、およびアミンからなる群より選択される少なくとも1つの官能基を含む、多成分複合コーティング構成物。
(項目48)
上記塩の基が、カルボン酸塩、アミン塩、4級アンモニウム、4級ホスホニウム、および3級スルホニウムからなる群から選択される、項目38に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目49)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記コポリマーは、250〜100,000の分子量を有する、多成分複合コーティング構成物。
(項目50)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記コポリマーは、4未満の多分散性指数を有する、多成分複合コーティング構成物。
(項目51)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記交互構造単位は、少なくとも50モル%のコポリマーを含む、多成分複合コーティング構成物。
(項目52)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、クロロトリフルオロエチレン、グリシジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドからなる群より選択される1つ以上である、多成分複合コーティング構成物。
(項目53)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記コポリマーは、以下の一般式V:
【化8】


の他のエチレン性不飽和モノマーから誘導される1つ以上の残基を含み、ここで、R11、R12およびR14は、独立して、H、CF、1〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル、アリール、2〜10個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル、ハロゲンで置換された2〜6個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から選択され、R13は、H、C〜Cアルキル、およびCOOR15からなる群から選択され、ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基およびアリールからなる群から選択される、多成分複合コーティング構成物。
(項目54)
上記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群から選択される1つ以上である、項目53に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目55)
上記ポリマーバインダー(a)の官能基が、ヒドロキシル基、カルバメート基、ブロックイソシアネート基、1級アミン基、2級アミン基、アミド基、尿素基、ウレタン基、ビニル基およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目36に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目56)
項目55に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、カルバメート官能基を含む、多成分複合コーティング構成物。
(項目57)
項目36に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、以下の反応物:
(1)後に塩基で少なくとも部分的に中和されてカルボン酸塩の基を形成する酸官能基を含む、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和モノマー;および
(2)酸官能基を含まない、少なくとも1つの重合可能な官能基含有エチレン性不飽和モノマー、
の反応生成物を含む、多成分複合コーティング構成物。
(項目58)
反応物(1)が、カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含む、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目59)
反応物(1)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目58に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目60)
反応物(1)が、50mgKOH/gまでの酸価を提供するのに十分な量で上記ポリマーバインダー(a)中に存在する、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目61)
項目57に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、反応物(2)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1個のヒドロキシアルキル官能性モノマーを含む、多成分複合コーティング構成物。
(項目62)
反応物(2)が、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを含む、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目63)
項目62に記載の多成分複合コーティング構成物であって、ここで、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、以下:
(1)エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーおよび少なくとも5個の炭素原子を有する飽和カルボン酸;および
(2)エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよび該エチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合可能でない少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物、
からなる群から選択される反応物の反応生成物を含む、多成分複合コーティング構成物。(項目64)
上記ポリマーバインダー(a)が形成される上記反応物が、反応物(3)として、(1)および(2)とは異なる少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目65)
反応物(3)が、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目64に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目66)
上記ポリマーバインダー(a)の酸価が、0〜50mgKOH/gの範囲である、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目67)
上記ポリマーバインダー(a)が、上記クリアフィルム形成組成物の全樹脂固体重量に基づいて、55〜99重量%の範囲の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在する、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目68)
上記架橋剤(b)が、ブロックイソシアネート、アミノプラスト樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目69)
上記架橋剤(b)が、3,5−ジメチルピラゾールで可逆的にブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである、項目68に記載の多成分複合コーティング構成物。
(項目70)
上記架橋剤(b)が、上記クリアフィルム形成組成物中に存在する全樹脂固体重量に基づいて、1〜45重量%の範囲の量で該クリアフィルム形成組成物中に存在する、項目57に記載の多成分複合コーティング構成物。
(発明の要旨)
本発明は、コポリマー組成物および架橋剤を含むコポリマー組成物を含む水系熱硬化性組成物に関する。特に、硬化性の水性フィルム形成組成物が提供され、これは、以下を含む:
(a)2つ以上の反応性官能基を含む、ポリマーバインダーとして働くコポリマーであって、このコポリマーは、以下の交互構造単位:
−[DM−AM]−
を有する少なくとも30mol%の残基を含み、ここで、DMは、ドナーモノマーに由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマーに由来の残基を示す、コポリマー;および
(b)(a)の反応性官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する、硬化剤。このコポリマーの少なくとも15mol%は、以下の構造(I):
【0022】
【化9】

を有するドナーモノマーを含み、ここで、Rは、直鎖または分枝のC〜Cアルキルであり;Rは、メチル、直鎖、環状または分枝C〜C20のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される。
【0023】
特定の実施形態において、このコポリマーの少なくとも15mol%は、アクリル酸モノマーを、アクセプターモノマーとして含有する。このコポリマーは、水分散性において補助するように、少なくとも1つの塩の基または塩形成基を含み得る。このコポリマー組成物は、好ましくは、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない。
【0024】
本発明はまた、着色フィルム形成組成物から堆積したベースコートおよびこのベースコート上に塗布された透明トップコートを含む多成分複合コーティング構成物に関する。このトップコートは、上記フィルム形成組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
操作実施例以外において、または他のように示されない限りは、本明細書中および特許請求の範囲において使用される、成分、反応条件などの量に言及するすべての数字または表現は、すべての場合に用語「約(およそ)」により修飾されると理解されるべきである。種々の数値範囲が、本特許出願において開示される。これらの範囲は連続的であるので、これらの数または表現は、最小値と最大値との間のあらゆる値を包含する。別途明示的に示されない限り、本明細書中で特定される種々の数的範囲は、近似値である。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「コポリマー組成物」との用語は、合成コポリマーだけでなく、そのコポリマーの合成に伴うがそのコポリマーに共有結合的には組み込まれていない開始剤、触媒および他の要素に由来の残渣を含むことを意味する。このコポリマー組成物の一部と見なされるこのような残渣および他の要素は、典型的には、容器間または溶媒間もしくは分散媒体間で移動したときにコポリマーと共に残る傾向があるように、そのコポリマーと混合(mixまたはco−mingle)される。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「実質的に含まない」との用語は、ある物質が偶発的な不純物として存在することを示すことを意味する。言い換えれば、その物質は、示された組成物に意図的に加えられるのではないが、意図した組成物の成分の一部として、不純物として残留するので、少量レベルまたは僅かなレベルで存在し得る。
【0028】
「ドナーモノマー」および「アクセプターモノマー」との用語は、本願全体にわたって使用される。本発明に関して、「ドナーモノマー」との用語は、エチレン性二重結合における電子密度が比較的に高い重合可能エチレン性不飽和基を有するモノマーを意味いい、そして、「アクセプターモノマー」との用語は、エチレン性二重結合における電子密度が比較的に低い重合可能エチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。この概念は、the
Alfrey−Price Q−eスキームにより、ある程度数量化されている(Robert Z.Greenley,Polymer Handbook,第4版,Brandrup,Immergut and Gulke,編者,Wiley & Sons,New York,NY,pp.309−319(1999))。本明細書中で列挙した全てのe値は、他に明記しない限り、the Polymer Handbookで見られるものである。
【0029】
このQ−eスキームでは、Qは、モノマーの反応性を反映し、そしてeは、モノマーの極性(これは、所定モノマーの重合可能エチレン性不飽和基の電子密度を示す)を示す。正のe値は、あるモノマーが、無水マレイン酸(これは、3.69のe値を有する)の場合のように、比較的に電子密度が低く、アクセプターモノマーであることを一般に示す。低いまたは負のe値は、あるモノマーが、ビニルエチルエーテル(これは、−1.80のe値を有する)の場合のように、比較的に電子密度が高く、ドナーモノマーであることを一般に示す。
【0030】
本明細書中で言及する場合、強力なアクセプターモノマーとは、2.0より高いe値を備えたモノマーを含むことを意味する。「温和なアクセプターモノマー」との用語は、0.5より高いe値を備えたモノマーから2.0のe値を備えたモノマーまで(それらのモノマーを含めて)を含むことを意味する。逆に、「強力なドナーモノマー」との用語は、−1.5より低いe値を備えたモノマーを含むことを意味し、また、「温和なドナーモノマー」との用語は、0.5未満のe値を備えたモノマーから−1.5のe値を備えたモノマーまでを含むことを意味する。
【0031】
本発明は、ポリマーバインダーとして作用するコポリマーを含む水系(waterborne)熱硬化性組成物に関し、この組成物は、以下の構造:
−[DM−AM]−
の交互モノマー残基単位を有するドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互配列由来のコポリマーの残基の、少なくとも30モル%、多くの場合に少なくとも40モル%、代表的に少なくとも50モル%、いくつかの場合に少なくとも60モル%、その他の場合に少なくとも75モル%を有する官能基含有コポリマーを含み、ここで、DMは、ドナーモノマー由来の残基を表し、そしてAMは、アクセプターモノマー由来の残基を表す。コポリマーは、DMおよびAMの100%交互コポリマーであり得る。さらに特に、少なくとも15モル%のコポリマーが、ドナーモノマーを含み、このドナーモノマーはイソブチレン型モノマーであり、以下の構造(I)を有する:
【0032】
【化10】

ここで、Rは、直鎖状または分岐のC〜Cアルキルであり;Rは、1つ以上のメチル、直鎖状、環状または分岐のC〜C20アルキル、アルケニル、アリール、アルカリル、およびアラルキルである。特定の実施形態において、少なくとも15モル%のコポリマーが、アクセプターモノマーとしてアクリルモノマーを含む。R基は、以下から選択される1つ以上の官能基を含み得る:ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメートおよびアミド。
【0033】
本発明の熱硬化性組成物は、しばしば、4重量%未満、典型的には、3.5重量%未満、多くの場合、3重量%未満のVOC含量を有する。
【0034】
本発明の1実施形態において、このコポリマー架橋剤が、構造Iで記載された温和なドナーモノマーおよび温和なアクセプターモノマー(これは、アクリルモノマーである)の交互残基の相当部分を取り込む。本発明の構造Iで記載されたモノマーとして含まれ得るモノマーおよび本発明のアクリルモノマーの公開e値の非限定的なリストは、表2で示す。
【0035】
(表2)
選択モノマーのAlfrey−Price e値
モノマー e値
構造1のモノマー
イソブチレン −1.20
ジイソブチレン 0.49
アクリルモノマー
アクリル酸 0.88
アクリルアミド 0.54
アクリロニトリル 1.23
アクリル酸メチル 0.64
アクリル酸エチル 0.55
アクリル酸ブチル 0.85
アクリル酸ベンジル 1.13
アクリル酸グリシジル 1.28

Polymer Handbook,第4版(1999)
Rzaevら、Eur.Polym.J.,Vol.24,No.7,pp.981−985(1998)。
【0036】
代表的には、本発明のフィルム形成組成物においてポリマーバインダー(a)として使用されるコポリマーは、マレエートモノマー残基およびフマレートモノマー残基(これらは、典型的には、2.0より高いe値を有する)を実質的に含まない。これらの種類の多官能性モノマーは、そのコポリマーに対して、多すぎる官能基を提供する。これは、例えば、このコポリマーの過度な官能性が原因で熱硬化性組成物の寿命が短くあり得るコーティングにおいて、問題を引き起こし得る。
【0037】
さらに、本発明のコポリマー組成物は、遷移金属およびルイス酸(これらは、上述のように、温和なドナーモノマーおよび温和なアクセプターモノマーの交互コポリマーを製造するために、従来技術で使用されている)を実質的に含まない。本発明は、本発明のコポリマー組成物を調製する際に、遷移金属またはルイス酸の補助剤を使用せず、従って、重合後にそれらを除去する必要がなく、得られたコポリマー組成物は、遷移金属またはルイス酸を含有するものに固有の欠点がない。
【0038】
任意の適切なドナーモノマーが、コポリマーの調製において使用され得る。使用され得る適切なドナーモノマーとしては、強力なドナーモノマーおよび温和なドナーモノマーが挙げられる。温和なドナーモノマーは、使用される交互コポリマーを調製するのに特に有用である。本発明のコポリマーは、構造Iで記載された温和なドナーモノマー(例えば、イソブチレンおよびジイソブチレン、ジペンテンおよびイソプレノール)を含有し、さらに、他の適切な温和なドナーモノマーを含有し得る。構造Iのドナーモノマーは、官能基を有し得る。例えば、構造Iのドナーモノマーの基Rは、1つ以上の官能基(例えば、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメート、およびアミド)を含み得る。構造Iの温和なドナーモノマーは、このコポリマー組成物中にて、少なくとも15モル%、ある場合には、少なくとも25モル%、代表的には、少なくとも30モル%、ある場合には、少なくとも35モル%のレベルで存在している。構造Iの温和なドナーモノマーは、このコポリマー組成物中にて、50モル%まで、ある場合には、47.5モル%まで、代表的には、45モル%まで、ある場合には、40モル%までのレベルで、存在している。使用される構造Iの温和なドナーモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。構造Iの温和なドナーモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0039】
本発明で使用され得る他の適切なドナーモノマーには、エチレン、ブテン、スチレン、置換スチレン、メチルスチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルエステルには、カルボン酸のビニルエステルが挙げられ、これらには、酢酸ビニル、酪酸ビニル、3,4−ジメトキシ安息香酸ビニルおよび安息香酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。他のドナーモノマーの使用は任意である。他のドナーモノマーが存在しているとき、それらは、このコポリマー組成物の少なくとも0.01モル%、しばしば、少なくとも0.1モル%、代表的には、少なくとも1モル%、ある場合には、少なくとも2モル%のレベルで存在している。これらの他のドナーモノマーは、25モル%まで、ある場合には、20モル%まで、代表的には、10モル%まで、ある場合には、5モル%までで存在し得る。使用される他のドナーモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれる特性により、決定される。他のドナーモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0040】
このコポリマー組成物は、そのコポリマー鎖に沿って、交互ドナーモノマーアクセプターモノマー単位の一部として、アクセプターモノマーを含有する。このコポリマーの調製において使用されるようなアクセプターモノマーは、ルイス酸(これの触媒としての使用は、上記考察のように、本発明において所望されない)と解釈されないことを理解すべきである。任意の適切なアクセプターモノマーが使用され得る。適切なアクセプターモノマーには、強力なアクセプターモノマーおよび温和なアクセプターモノマーが挙げられる。適切なアクセプターモノマーの非限定的な種類には、構造(II)で記載されたものがある:
【0041】
【化11】

ここで、Wは、−CN、−Xおよび−C(=O)−Yからなる群から選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NRおよび−ORからなる群から選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキルオールからなる群から選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル、アルキルオール、アリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20フルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、およびポリシロキサンラジカルからなる群から選択され、Rは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル連結基であり、そしてXは、ハロゲン化物である。
【0042】
このコポリマー組成物に含まれる種類の温和なアクセプターモノマーは、アクリルアクセプターモノマーである。適切なアクリルアクセプターモノマーには、構造(III)で記載されたものが挙げられる:
【0043】
【化12】

ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NRおよび−ORからなる群から選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキルオールからなる群から選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル、アルキルオール、アリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20フルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ポリシロキサンラジカルからなる群から選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル連結基である。
【0044】
特に有用な種類のアクリルアクセプターモノマーには、構造IIIで記載されたものがあり、ここで、Yは、以下から選択される少なくとも1個の官能基を含む:ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロック化イソシアネート、カーバメートおよびアミン。Y基は、カルボン酸塩、アミン塩、四級化アンモニウム、四級化ホスホニウムおよび三級スルホニウムから選択される塩の基に変換され得る。
【0045】
適切なアクセプターモノマーの例には、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、アクリル酸パーフルオロメチルエチル、アクリル酸パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロブチルエチル、アクリル酸トリフルオロメチルベンジル、パーフルオロアルキルエチル、アクリロキシアルキル末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシアルキルトリス(トリメチルシロキシシラン)、アクリロキシアルキルトリメチルシロキシ末端ポリエチレンオキシド、クロロトリフルオロエチレン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
構造IIIのアクリルアクセプターモノマーは、このコポリマー組成物中にて、少なくとも15mol%、ある場合には、少なくとも25mol%、典型的には、少なくとも30mol%、ある場合には、少なくとも35mol%のレベルで存在し得る。構造IIIのアクリルアクセプターモノマーは、このコポリマー組成物中にて、50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までのレベルで、存在し得る。使用される構造IIIのアクリルアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれるべき特性により、決定される。構造IIIのアクリルアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0047】
コポリマー中で使用され得る他の適切な温和なアクセプターモノマーには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン化ビニル、クロトン酸、スルホン酸ビニルアルキルおよびアクロレインが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化ビニルには、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンが挙げられるが、これらに限定されない。他の温和なアクセプターモノマーの使用は任意であり、他の温和なアクセプターモノマーが存在しているとき、それらは、このコポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、しばしば、少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のアクセプターモノマーは、35mol%まで、ある場合には、25mol%まで、典型的には、15mol%まで、ある場合には、10mol%までで存在し得る。使用される他のアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれるべき特性により、決定される。他のアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0048】
このコポリマーは、少なくとも250、多くの場合、少なくとも500、典型的には、少なくとも1,000、ある場合には、少なくとも2,000の分子量を有する。本発明のコポリマーは、1,000,000まで、多くの場合、500,000まで、典型的には、100,000まで、ある場合には、50,000までの分子量を有し得る。特定の用途には、本発明のコポリマーの分子量が30,000を超えない、ある場合には、25,000を超えない、他の場合には、20,000を超えない、特定の場合には、16,000を超えないことが必要である。このコポリマーの分子量は、そのコポリマー組成物に組み込まれるべき特性に基づいて、選択される。このコポリマーの分子量は、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0049】
このコポリマーの多分散指数(PDI)は、常に重要である訳ではない。このコポリマーの多分散指数は、通常、4未満、多くの場合、3.5未満、典型的には、3.0未満、ある場合には、2.5未満である。本明細書中および請求の範囲で使用する「多分散指数」は、以下の等式から決定される:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))。単分散ポリマーは、1.0のPDIを有する。さらに、本明細書中で使用するMnおよびMwは、ポリスチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーから決定される。
【0050】
本発明の1実施形態では、コポリマー組成物中のドナーモノマーアクセプターモノマー対の交互配列は、交互構造IVを有する残基である:
【0051】
【化13】

ここで、R、RおよびWは、上で定義したとおりである。以下のものは、特に好ましい実施形態である:W基を含むモノマー残基は、1種またはそれ以上のアクリルモノマーから誘導され、そしてR基およびR基を含むモノマー残基は、ジイソブチレン、イソブチレン、ジペンテンおよびイソプレノールの1種または組合せから誘導される。本発明のコポリマー組成物はまた、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含有し得る。
【0052】
本発明の水系フィルム形成組成物中でポリマーバインダー(a)として使用されるコポリマーは、組み込んだモノマー残基の全てを交互構造で有し得る。ジイソブチレン(DIIB)およびアクリルモノマー(Ac)の100%交互構造を有するコポリマーセグメントの非限定的な例は、構造Vで示されている:
(V) −Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−
しかしながら、大ていの場合、このコポリマーは、構造VIで示すように、交互セグメントおよびランダムセグメントを含み、DIIB、Acおよび他のモノマーMのコポリマーである:
【0053】
【化14】

構造VIは、コポリマーが、囲みで示した交互セグメントおよび下線を引いて示したランダムセグメントを含み得る、本発明の1実施形態を示す。
【0054】
このコポリマーのランダムセグメントは、交互構造によってこのコポリマー組成物に組み込まれていないドナーモノマー残基またはアクセプターモノマー残基を含み得る。このコポリマー組成物のランダムセグメントは、さらに、他のエチレン性不飽和モノマーに由来の残基を含み得る。本明細書中で列挙したように、ドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互配列から誘導されたポリマーセグメントへの全ての言及は、構造VIの囲みで示したもののようなモノマー残基のセグメントを含むことを意味している。
【0055】
他のエチレン性不飽和モノマーには、アクセプターモノマーまたはドナーモノマーには伝統的に分類されない任意の適切なモノマーが挙げられる。
【0056】
他のエチレン性不飽和モノマー、すなわち、構造VIの残基Mは、少なくとも1種のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導される。本明細書中および請求の範囲で使用する「エチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマー」および類似の用語は、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィン、およびラジカル重合可能でドナーモノマーまたはアクセプターモノマーには分類されない他のエチレン性不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0057】
Mが誘導され得る種類のビニルモノマーには、一般式VIIのモノマーから誘導されたモノマー残基が挙げられるが、これらに限定されない:
【0058】
【化15】

ここで、R11、R12およびR14は、別個に、H、CF、1個〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、アリール、2個〜10個の炭素原子を有する不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル、2個〜6個の炭素原子を有する不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニル(これは、ハロゲン、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルで置換されている)からなる群から選択され;R13は、H、C〜CアルキルおよびCOOR15(ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基、グリシジルおよびアリールからなる群から選択される)からなる群から選択される。
【0059】
コポリマー(a)で使用され得る他のモノマーMの特定の例には、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーが挙げられる。残基Mは、そのアルキル基内に1個〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートの少なくとも1種から誘導され得る。残基Mが誘導され得る,アルキル基内に1個〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートの特定の例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレートだけでなく、官能性メタクリレート(例えば、ヒドロキシアルキルメタクリレート、オキシラン官能性メタクリレートおよびカルボン酸官能性メタクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
残基Mはまた、1個より多いメタクリレート基を有するモノマー(例えば、無水メタクリル酸およびジエチレングリコールビス(メタクリレート))から選択され得る。
【0061】
本明細書中および請求の範囲で使用される「アリルモノマー」とは、置換および/または非置換のアリル官能性基、すなわち、以下の一般式VIIIにより表わされる1個またはそれ以上のラジカルを含むモノマーを意味する:
(VIII) HC=C(R10)−CH
ここで、R10は、水素、ハロゲン、またはC〜Cアルキル基である。最も一般的には、R10は、水素またはメチルであり、結果的に、一般式VIIは、非置換(メタ)アリルラジカルを表わし、これは、アリルラジカルおよびメタリルラジカルの両方を包含する。アリルモノマーの例には、(メタ)アリルアルコール;(メタ)アリルエーテル(例えば、メチル(メタ)アリルエーテル);カルボン酸のアリルエステル(例えば、酢酸(メタ)アリル、酪酸(メタ)アリル、3,4−ジメトキシ安息香酸(メタ)アリルおよび安息香酸(メタ)アリル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
フィルム形成組成物中でポリマーバインダー(a)として使用されるコポリマー組成物は、以下の工程を包含する方法により、調製される:(a)構造Iの1種またはそれ以上のドナーモノマーを含有するドナーモノマー組成物を提供する工程;(b)1種またはそれ以上のアクセプターモノマーを含有するエチレン性不飽和モノマー組成物を(a)と混合して、マレエート型モノマーおよびフマレート型モノマーを実質的に含まない全モノマー組成物を形成する工程;ならびに(c)フリーラジカル開始剤の存在下にて、遷移金属およびルイス酸の実質的に非存在下で、この全モノマー組成物を重合させる工程。本発明の実施形態では、このエチレン性不飽和モノマー組成物は、構造IIIのモノマーを含む。
【0063】
本発明の1実施形態では、構造Iのモノマーは、アクリルアクセプターモノマーの量に基づいて、モル過剰で存在している。所望の交互構造の形成を促すために、このコポリマーを作製する際に、構造Iの過剰モノマーの任意の量が使用され得る。構造Iのモノマーの過剰量は、アクリルアクセプターモノマーの量に基づいて、少なくとも10mol%、ある場合には、25mol%まで、典型的には、50mol%まで、ある場合には、100mol%までであり得る。構造Iのモノマーのモル過剰が高すぎるとき、そのプロセスは、商業規模では、経済的ではないかもしれない。
【0064】
本発明のさらなる実施形態では、このアクリルアクセプターモノマーは、その全モノマー組成物の少なくとも15mol%、ある場合には、17.5mol%まで、典型的には、少なくとも20mol%、ある場合には、25mol%の量で存在している。このアクリルアクセプターモノマーは、さらに、その全モノマー組成物の50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までの量で、存在し得る。使用されるアクリルアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。これらのアクリルアクセプターモノマーは、このモノマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0065】
エチレン性不飽和モノマー組成物は、Mおよび上記で指定した他のモノマーだけでなく、上記のような他のドナーモノマーを含有し得る。他の温和なアクセプターモノマーの使用は任意である。他の温和なアクセプターモノマーが存在しているとき、それらは、そのコポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、しばしば、その全モノマー組成物の少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のアクセプターモノマーは、その全モノマー組成物の35mol%まで、ある場合には、25mol%まで、典型的には、15mol%まで、ある場合には、10mol%まで存在し得る。使用される他のアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれる特性により、決定される。他のアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0066】
本発明の実施形態では、コポリマーの調製において構造Iのモノマーの過剰量が使用され、構造Iの未反応モノマーは、エバポレーションにより、得られたコポリマー組成物から除去される。未反応モノマーの除去は、典型的には、反応容器に真空を適用することにより、促進される。
【0067】
任意の適切な遊離ラジカル開始剤が、コポリマーの調製において使用され得る。適切な遊離ラジカル開始剤の例には、熱遊離ラジカル開始剤、光開始剤およびレドックス開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な熱ラジカル開始剤の例には、過酸化物化合物、アゾ化合物および過硫酸塩化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
適切な過酸化物化合物開始剤の例には、過酸化水素、過酸化メチルエチルケトン、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジ−t−アミル、過酸化ジクミル、過酸化ジアシル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
適切なアゾ化合物の例には、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(バレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩および2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の実施形態では、このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、別々および同時に加えられ、そしてドナーモノマー組成物と混合される。このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、少なくとも15分間、ある場合には、少なくとも20分間、典型的には、少なくとも30分間、ある場合には、少なくとも1時間の時間にわたって、このドナーモノマー組成物に加えられ得る。このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、さらに、24時間まで、ある場合には、18時間まで、典型的には、12時間まで、ある場合には、8時間までの時間にわたって、このドナーモノマー組成物に加えられ得る。このエチレン性不飽和モノマーを加える時間は、未反応アクリルアクセプターモノマーよりも適切に過剰な構造Iのドナーモノマーを維持してドナーモノマーアクセプターモノマー交互セグメントの形成を促すのに十分でなければならない。この添加時間は、そのプロセスを商業規模で経済的に実行できなくするほどには長くない。この添加時間は、上で述べたものを含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0071】
混合後、または添加中および混合後にて、これらのモノマーの重合が起こる。この重合方法は、任意の適切な温度で実行できる。本発明の方法に適切な温度は、室温、少なくとも50℃、多くの場合、少なくとも60℃、典型的には、少なくとも75℃、ある場合には、少なくとも100℃であり得る。本方法に適切な温度は、300℃まで、多くの場合、275℃まで、典型的には、250℃まで、ある場合には、225℃までとして、さらに記述され得る。この温度は、典型的には、使用するモノマーおよび開始剤から良好な反応性を引き出すのに十分に高い。しかしながら、これらのモノマーの揮発性および対応する分圧により、温度の実用的な上限が生じ、これは、その反応容器の圧力評点により、決定される。その重合温度は、上で述べたものを含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0072】
重合は、任意の適切な圧力で、実行できる。本方法に適切な圧力は、常圧、少なくとも1 psi、多くの場合、少なくとも5 psi、典型的には、少なくとも15 psi、ある場合には、少なくとも20 psiであり得る。本方法に適切な圧力は、さらに、200 psiまで、多くの場合、175 psiまで、典型的には、150 psiまで、ある場合には、125 psiまでであると記載され得る。この圧力は、典型的には、これらのモノマーおよび開始剤を液相で維持するのに十分に高い。使用する圧力は、使用する反応容器の圧力評点に基づいた実用的な上限を有する。重合温度の間の圧力は、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0073】
重合から生じるコポリマーは、当該技術分野で公知の方法による官能基変換を使用することにより、他のポリマーの調製用の出発物質として、利用され得る。これらの方法により導入できる官能基には、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、イソシアネート、カーバメート、アミン、アミン塩、四級アンモニウム、チオエーテル、スルフィド、スルホニウム、ホスホニウムおよびホスフェートがある。
【0074】
例えば、コポリマー(これは、メチルアクリレートを含む)は、カルボメトキシ基を含有する。これらのカルボメトキシ基は、カルボキシル基に加水分解され得るか、アルコールとエステル交換してアルコールの対応するエステルを形成できる。アンモニアを使用して、上述のメチルアクリレートコポリマーは、アミドに変換でき、または第一級または第二級アミンを使用して、対応するN−置換アミドに変換できる。同様に、エチレンジアミンのようなジアミンを使用して、本方法の上述のコポリマーをN−アミノエチルアミドに変換でき、またはエタノールアミンを使って、N−ヒドロキシエチルアミドに変換できる。このN−アミノエチルアミド官能性は、さらに、脱水により、オキサゾリンに変換できる。このN−アミノエチルアミドは、さらに、炭酸プロピレンのような炭酸エステルと反応されて、対応するウレタン官能性コポリマーを形成できる。これらの変換は、そのカルボメトキシ基の全てを変換するように実行できるか、一部には、それらのカルボキシメチル基の一部をそのままにして、実行できる。
【0075】
このコポリマーには、そのコポリマーの調製においてグリシジルアクリレートを使用することにより直接的に、または官能基変換により間接的に、エポキシ基が導入できる。間接方法の一例には、このコポリマー中の残留不飽和を、過酸(例えば、過酢酸)を使用して、エポキシ基に酸化することがある。あるいは、上記のような加水分解によりカルボキシ官能性コポリマーを調製し、そのカルボキシ官能性コポリマーをエピクロロヒドリンに次いでアルカリで処理して、このエポキシ官能性コポリマーを生成できる。これらの変換はまた、完全にまたは部分的に実行できる。得られたエポキシ官能性コポリマーは、さらに、適切な活性水素含有試薬と反応されて、アルコール、アミンまたはスルフィドを形成できる。
【0076】
このコポリマーでは、ヒドロキシ官能性モノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)を使用して直接的にか、または官能基変換により、水酸基が導入できる。上記カルボキシ官能性コポリマーをエポキシで処理することにより、ヒドロキシル官能性ポリマーが生成できる。適切なエポキシドには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびグリシジルネオデカノエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
ヒドロキシル官能性モノマーは、コポリマーの調製において特に好ましい。いずれの理論によっても束縛されることを意図しないが、コポリマー中のヒドロキシル官能基(特に、一級ヒドロキシル官能基)は、基材への塗布の際に本発明の硬化可能なフィルム形成組成物によって示されるたわみ制御および改善された水平化に寄与し、そして補助的な流動制御剤の必要性を排除し得ると、考えられる。
【0078】
上記ヒドロキシル官能性コポリマーは、さらに、反応されて、他のコポリマーを形成できる。例えば、ヒドロキシエチル基を含有するコポリマーは、カルバミル化剤(例えば、カルバミン酸メチル)で処理されて、対応するカーバメート官能性コポリマーを生成できる。ジケテンまたはアセト酢酸t−ブチルを使って、これらの水酸基はまた、アセト酢酸エステルに変換できる。
【0079】
イソシアネート官能性コポリマーもまた、生成できる。コポリマー(これは、2個またはそれ以上の水酸基を含有する)は、ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート)で処理されて、イソシアネート官能性ポリマーを生成できる。上記の第一級アミン官能性コポリマーは、ホスゲン化されて、イソシアネート官能性を生じることができる。
【0080】
コポリマーには、当業者に公知の任意の手段により、イオン性官能性が導入できる。このコポリマー中のエステル基を加水分解することに続いて塩基と反応させることにより、カルボキシレート基が導入できる。本発明のコポリマーをアミン官能性アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート)で調製することに続いてアミノ基を酸でプロトン化することにより、アミン塩が導入できる。グリシジル官能性コポリマーをアンモニアまたは活性水素含有アミンと反応させることに続いて酸でプロトン化することにより、アミン塩が導入できる。本発明の方法のエポキシ官能性コポリマーを、プロトン酸の存在下にて、それぞれ、第三級アミンまたはスルフィドで処理することにより、四級アミン官能基または四級スルホニウム基をコポリマーに導入できる。
【0081】
本発明の水系フィルム形成組成物を調製するために、ポリマーバインダー(a)は、いくつかの方法のいずれかによって調製され得る。コポリマーは、水性エマルジョン重合技術によって調製され、そして水性コーティング組成物の調製において直接使用される得るか、または塩を形成し得る基(例えば、酸基またはアミン基)を用いた有機溶液重合技術によって調製され得る。塩基または酸を用いた、これらの基の中和の際に、これらのコポリマーは、水性媒体中に分散され得る。一般に、当該分野で認識される量のモノマーを利用する、このようなポリマーを生成する、当業者に公知の任意の方法が、使用され得る。
【0082】
本発明の別の実施形態において、このポリマーバインダー(a)は、アクリル材料と、ドナーモノマー−アクセプターモノマー型のコポリマー(すなわち、上記のような構造−[DM−AM]−を含むもの)とのブレンドとして、ホモジェナイザーを使用する高圧技術により微粒子形態で調製し得る。この技術は、米国特許第5,071,904号(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0083】
この技術において、ポリマーバインダー(a)は、水性媒体中の混合物を形成することにより調製されたポリマー微粒子を含むラテックスである。この混合物は、エチレン性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和モノマーの混合物を、30重量%より多くのドナーモノマー−アクセプターモノマー型のコポリマーと共に含む。重量%は、エチレン性不飽和モノマーおよびコポリマーの総重量に基づく。このドナーモノマー−アクセプターモノマー型のコポリマーは、溶液重合のような公知技術を使用して最初に調製される。このことは、このコポリマーをアクリルモノマーと合わせる前の溶媒除去を有利に可能にする。モノマーおよびコポリマーは、ホモジェナイザーを使用する高圧技術により、次いで、エチレン性不飽和モノマーを重合して水性媒体中で安定に分散されるポリマー微粒子を形成することにより、微粒子に粒状化される。これらの微粒子は、ミクロゲルを形成するように内部で架橋され得る。
【0084】
一般に、ポリマーバインダー(a)は、フィルム形成組成物中の樹脂固体の全重量に基づき、約55〜約99重量%、代表的には約55〜約90重量%、よりしばしば約55〜約85重量%の範囲の量で存在する。
【0085】
上述したように、本発明の水系フィルム形成組成物は、ポリマーバインダー(a)の官能基と反応性である少なくとも2個の官能基を有する(b)架橋剤をさらに含む。適切な架橋剤として、アミノプラスト、ポリイソシアネート、ポリ酸、無水物、およびそれらの混合物が挙げられる。有用なアミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒドの、アミノ基含有物質またはアミド基含有物質との付加生成物に基づいている。アルコールおよびホルムアルデヒドのメラミン、尿素またはベンゾグアナミンとの反応から得られた縮合生成物は、本明細書において最も一般的で好ましい。使用されるアルデヒドは、最もしばしばホルムアルデヒドである一方で、他の同様の縮合生成物は、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド(crotonaldehyde)、アクロレイン(acrolein)、ベンズアルデヒド、フルフラル(furfural)、グリオキサールなどのような他のアルデヒドから作製され得る。
【0086】
他のアミンおよびアミドの縮合生成物、例えば、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアニジン、グアナミン、ならびにこのような化合物のアルキル置換誘導体およびアリール置換誘導体(アルキル置換尿素およびアリール置換尿素、ならびにアルキル置換メラミンおよびアリール置換メラミンを含む)のアルデヒド縮合物もまた、使用され得る。このような化合物の非限定的な例として、N,N’−ジメチル尿素、ベンゾ尿素、ジシアンジアミド、ホルマグアナミン、アセトグアナミン、グリコルリル(glycoluril)、アンメリン(ammeline)、3,5−ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2−メルカプト−4,6−ジアミノピリミジンおよび式C3N3(NHCOXR)3(ここで、Xは窒素、酸素または炭素であり、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルのような、1〜12個の炭素原子を有する低級アルキル基または低級アルキル基の混合物である)のカルバモイルトリアジンが挙げられる。このような化合物およびそれらの調製は、米国特許第5,084,541号(これは、本明細書中において参考として援用される)に詳細に記載されている。
【0087】
このアミノプラスト樹脂は、好ましくは、メチロール基または同様のアルキロール基を含み、ほとんどの場合、これらのアルキロール基の少なくとも一部は、アルコールとの反応によってエーテル化される。任意の一価アルコールは、この目的のために使用され得、一価アルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ならびにベンジルアルコールおよび他の芳香族アルコール、シクロヘキサノールのような環状アルコール、グリコールのモノエーテル、ならびに3−クロロプロパノールおよびブトキシエタノールのようなハロゲン置換アルコールまたは他の置換アルコールが挙げられる。好ましいアミノプラスト樹脂は、メタノールまたはブタノールで部分的にアルキル化されている。
【0088】
ポリイソシアネート架橋剤は、種々のイソシアネート含有物質から調製され得る。ほとんどの場合、このポリイソシアネートは、ブロックポリイソシアネートである。適切なポリイソシアネートの例として、以下のジイソシアネートから調製したトリマーが挙げられる:トルエンジイソイアネート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの異性体混合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネート。さらに、ポリエステルポリオールのような種々のポリオールのブロックポリイソシアネートプレポリマーもまた、使用され得る。適切なブロック剤の例として、メタノールを含む低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトオキシム(methyl ethyl ketoxime)のようなオキシム、カプロラクタムのようなラクタムおよび3,5−ジメチルピラゾールのようなピラゾールのような、高温でブロックしない物質が挙げられる。
【0089】
本発明の水性の硬化可能なフィルム形成組成物における架橋剤としての使用に適切なポリカルボン酸の例として、米国特許第4,681,811号の第6欄第45行〜第9欄第54行に記載されたものが挙げられる。適切なポリ無水物として、米国特許第4,798,746号第10欄第16〜50行および米国特許第4,732,790号第3欄第41〜57行に開示されたものが挙げられる。
【0090】
一般に、架橋剤(b)は、フィルム形成組成物中の樹脂固体の全重量に基づき、約1〜約45重量%、代表的には約10〜約45重量%、よりしばしば約15〜約45重量%の範囲の量で存在する。
【0091】
本発明の水系熱硬化性組成物の非限定的な例には、このコポリマーの官能基がヒドロキシであり架橋剤の官能基がキャップポリイソシアネートであるものがあり、この場合、このキャップポリイソシアネート架橋剤のキャップ基は、ヒドロキシ官能性化合物、1H−アゾール、ラクタム、ケトオキシム、およびそれらの混合物の1種またはそれ以上である。このキャップ基は、フェノール、安息香酸p−ヒドロキシメチル、1H−1,2,4−トリアゾール、1H−2,5−ジメチルピラゾール、2−プロパノンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、e−カプロラクタム、またはそれらの混合物であり得る。このキャップポリイソシアネート架橋剤のポリイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、α,α’−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、これらのポリイソシアネートのダイマー、またはこれらのポリイソシアネートのトリマーの1種またはそれ以上である。
【0092】
このコポリマーは、ヒドロキシ官能性を有するとき、典型的には、100〜10,000グラム/当量のヒドロキシ当量を有する。このキャップポリイソシアネート架橋剤中のイソシアネート当量とヒドロキシ官能性コポリマー中のヒドロキシ当量との当量比は、典型的には、1:3〜3:1の範囲内である。この実施形態では、このキャップポリイソシアネート架橋剤は、この液体熱硬化性組成物中にて、樹脂固形分の全重量に基づいて、1〜45重量%の量で存在しており、このヒドロキシ官能性コポリマーは、樹脂固形分の全重量に基づいて、55〜99重量%の量で、存在している。
【0093】
本発明の水系熱硬化性組成物の別の非限定的な例には、そのコポリマーがエポキシ官能基を有し架橋剤が4個〜20個の炭素原子を有するカルボン酸官能性化合物であるものがある。このカルボン酸架橋剤は、アゼライン酸、アジピン酸、1,6−ヘキサンジオン酸、コハク酸、ピメリン酸、セバシン酸、マレイン酸、クエン酸、イタコン酸またはアコニット酸の1種またはそれ以上であり得る。
【0094】
本発明の水系熱硬化性組成物のさらなる非限定的な例には、そのコポリマーがカルボン酸官能基を有し架橋剤がβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物であるものがある。この水系フィルム形成組成物は、さらに、C〜C20脂肪族カルボン酸、ポリマーポリ無水物、ポリエステル、ポリウレタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される第二のポリカルボン酸官能性物質を含有し得る。このβ−ヒドロキシアルキルアミドは、以下の構造IXにより表わされ得る:
【0095】
【化16】

ここで、R24は、HまたはC〜Cアルキルであり;R25は、H、C〜Cアルキル構造Xである:
【0096】
【化17】

ここで、R24は、上で記述したとおりであり、Eは、化学結合または一価もしくは多価の有機ラジカルであり、これは、2個〜20個の炭素原子を含有する置換炭化水素ラジカルを含む飽和、不飽和または芳香族の炭化水素ラジカルから誘導され、mは、1または2であり、nは、0〜2であり、そしてm+nは、少なくとも2である。
【0097】
本発明の水系熱硬化性組成物は、好ましくは、フィルム形成(コーティング)組成物として使用され、そしてこのような組成物中で通常使用される補助成分を含有し得る。この組成物中には、任意の成分(例えば、可塑剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、ガス発生防止剤、酸化防止剤、UV光吸収剤、および当該技術分野で通常の類似の添加剤)が含有され得る。これらの成分は、典型的には、樹脂固形分の全重量に基づいて、約40重量%までで存在している。本発明のフィルム形成組成物におけるポリマーバインダー(a)としての、上に記載されたコポリマーの使用は、この組成物における流動制御添加剤の必要性を減少させるか、または排除さえし得ると考えられる。
【0098】
本発明の水系熱硬化組成物は、カチオン性、アニオン性、または非イオン性であり得るが、代表的にはアニオン性である。この組成物は、典型的には、約40〜約80重量%の全固形分含量を有する。本発明の水系熱硬化性組成物は、しばしば、4重量%未満、典型的には、3.5重量%未満、多くの場合、3重量%未満のVOC含量を有する。
【0099】
本発明の熱硬化性組成物は、表面コーティングで通常使用される着色料を含有し得、そしてモノコート(すなわち、着色コーティング)として使用され得る。適切な着色料には、例えば、無機着色料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛およびカーボンブラック)および有機着色料(例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン)が挙げられる。上記着色料の混合物もまた、使用され得る。適切な金属着色料には、特に、アルミニウムフレーク、青銅フレーク、および金属酸化物被覆マイカ、ニッケルフレーク、スズフレーク、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0100】
一般に、この着色料は、コーティング固形分の全重量に基づいて、約80重量%までの量で、このコーティング組成物中に取り込まれる。この金属着色料は、コーティング固形分の全重量に基づいて、約0.5〜約25重量%の量で、使用される。
【0101】
本発明では、この熱硬化性組成物は、水性媒体に分散した樹脂相を含む。この樹脂相は、非ゲル化コポリマー組成物を含み、これは、上記コポリマー組成物(これは、1個またはそれ以上の活性水素基および適切なイオン性基を含有する官能基を有する);および硬化剤(これは、そのコポリマーの活性水素基と反応性の少なくとも2個の官能基を有する)を含有する。適切なイオン性基には、アニオン性基およびカチオン性基が挙げられる。適切なカチオン性基の非限定的な例には、オニウム塩の基がある。この活性水素基含有コポリマーは、典型的には、1,000〜30,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0102】
この官能性コポリマーは、100〜5,000グラム/当量の当量を有し、硬化剤中の官能基と官能性コポリマーの官能基との当量比は、1:3〜3:1の範囲内である。
【0103】
本発明の硬化可能なフィルム形成組成物は、水性分散体の形態である。「分散体」との用語は、2相の透明、半透明または不透明な樹脂系であると考えられ、ここで、その樹脂は、分散相にあり、その水は、連続相にある。この樹脂相の平均粒径は、一般に、1.0ミクロン未満、通常、0.5ミクロン未満、好ましくは、0.15ミクロン未満である。
【0104】
これらのオニウム塩官能性モノマーは、典型的には、四級アンモニウム塩および三級スルホニウム塩の1種またはそれ以上である。その残基が本発明の官能性コポリマーに含有され得るオニウム塩官能性モノマーの非限定的な例には、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー(これは、重合後、アミン酸塩と後反応された)、ジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタクリレートのアミン酸塩、および少なくとも1種のエポキシ基含有モノマー(これは、重合後、酸の存在下にて、スルフィドと後反応された)が挙げられる。
【0105】
上記熱硬化性組成物は、それらが接着する種々の基板に塗布でき、これらには、木材;金属(例えば、鉄基板およびアルミニウム基板);ガラス;プラスチック、プラスチックおよびシート成形化合物ベースのプラスチックが挙げられる。
【0106】
組成物は、従来の手段(ブラッシング、浸漬、フローコーティング、スプレーなどを含む)によって塗布され得るが、これらは、最も頻繁には、スプレーによって塗布される。エアスプレーおよび静電スプレーならびに手動または自動のいずれかの方法のための通常のスプレー技術および装置が、使用され得る。本発明の方法によってコーティングされ得る基材としては、例えば、木、金属、ガラス、およびプラスチックが挙げられる。
【0107】
基材上への塗布の際、この組成物は、基材上に実質的に連続したフィルムを形成するように融合される。代表的には、フィルム厚さは、約0.01〜約5ミル(約0.254 ミクロン〜約127ミクロン)であり、好ましくは、約0.1ミル〜約2ミル(約2.54〜約50.8ミクロン)の厚さである。フィルムは、加熱によって、または風乾期によって、フィルムから水および任意のくっついた溶媒を排出させることによって、基材の表面に形成される。好ましくは、加熱は、続いて塗布されるどのコーティングが組成物を溶解することなくフィルムに適用され得ることを確実にするのに十分な短い時間の間のみである。適切な乾燥条件は特定の組成物に依存するが、一般に、約68〜250°F(約20〜121℃)の温度で約1〜5分の乾燥時間が十分である。組成物の1つより多くの被膜が、最適な外観を開発するために適用され得る。被膜の間に、以前に適用された被膜がフラッシュ(flash)、すなわち、約1〜20分の間、周囲条件に曝露され得る。
【0108】
次に、融合された熱硬化性組成物は、熱の適用によって硬化される。本明細書中および特許請求の範囲で使用される場合、「硬化された」とは、共有結合形成、例えば、架橋剤の遊離イソシアネート基とポリマーのヒドロキシ基との間での共有結合形成によって形成された三次元架橋網を意味する。本発明の熱硬化性組成物が硬化する温度は可変性であり、用いる触媒のタイプおよび量に部分的に依存する。代表的には、熱硬化性組成物は、130℃〜160℃の範囲の硬化温度(例えば、140℃〜150℃)を有する。
【0109】
本発明に従って、着色フィルム形成組成物から堆積されたベースコート;およびベースコートの上に適用された透明トップコートを含む、多成分複合コーティング構成物がさらに提供される。ベースコートまたは透明トップコートのいずれか、またはその両コートが、上記の水系熱硬化性組成物を含み得る。本明細書中に記載の多成分複合コーティング構成物は、一般に、着色透明(color−plus−clear)コーティング組成物と言われる。
【0110】
ベースコートが堆積される着色フィルム形成組成物は、本発明のフィルム形成組成物であり得るか、またはコーティング適用(特に、着色透明コーティング組成物がもっぱら使用される自動車適用)において有用な任意の他の組成物のいずれかであり得る。着色フィルム形成組成物は、従来、着色料として作用するために、樹脂製バインダーおよび色素を含む。特に有用な樹脂製バインダーは、アクリルポリマー、アルキドを含むポリエステル、ポリウレタン、および本発明のコポリマー組成物である。
【0111】
着色フィルム形成ベースコート組成物のための樹脂製バインダーは、有機溶媒ベースの材料(例えば、米国特許第4,220,679号(第2欄、24行から第4欄、40行を参照のこと)に記載の材料)であり得る。また、水ベースのコーティング組成物(例えば、米国特許第4,403,003号、第4,147,679号、および第5,071,904号に記載のような組成物)も、着色フィルム形成組成物におけるバインダーとして使用され得る。
【0112】
着色フィルム形成ベースコート組成物は、着色され、そしてまた、金属色素を含み得る。適切な色素の例は、米国特許第4,220,679号、第4,403,003号、第4,147,679号、および第5,071,904号に見出され得る。
【0113】
着色フィルム形成ベースコート組成物中に必要に応じて存在し得る成分は、表面コーティングの処方の分野で周知である成分であり、そして界面活性剤、流動制御剤、チキソトロープ剤、充填剤、ガス発生防止剤、有機共溶媒、触媒、および他の慣用の補助剤を含む。 これらの任意材料および適切な量の例は、上述の米国特許第4,220,679号、第4,403,003号、第4,147,769号、および第5,071,904号に記載される。
【0114】
着色フィルム形成ベースコート組成物は、任意の従来のコーティング技術(例えば、ブラッシング、スプレー、浸漬、またはフローイング)によって基材に適用され得るが、最も頻繁には、スプレーによって適用される。エアスプレー、エアレススプレー、および静電スプレー(手動法または自動法のいずれかを用いる)のための通常のスプレー技術および装置が、使用され得る。着色フィルム形成組成物は、代表的に0.1〜5ミル(2.5〜125ミクロン)、好ましくは0.1〜2ミル(2.5〜50ミクロン)のフィルム厚さを有するベースコートを提供するのに十分な量で塗布される。
【0115】
基材上への着色フィルム形成ベースコート組成物の堆積後、かつ透明トップコートの塗布前に、ベースコートは、硬化され得るか、または代替的に乾燥され得る。堆積されたベースコートの乾燥の際に、有機溶媒および/または水は、加熱によって、またはその表面上での空気の通過によって、ベースコートフィルムから排出される。適切な乾燥条件は、使用される特定のベースコート組成物に依存し、そして特定の水ベース組成物の場合、周囲湿度に依存する。一般に、堆積されたベースコートの乾燥は、1〜15分の期間にわたって、21℃〜93℃の温度で、実施される。
【0116】
透明トップコートは、コーティングが適用されることが知られる方法のいずれかによって、堆積されたベースコートの上に塗布される。本発明の実施形態において、透明トップコートは、静電スプレー塗布によって塗布される。透明トップコートが、乾燥された堆積されたベースコートの上に塗布される場合、2つのコーティングが共硬化されて、本発明の多成分複合コーティング構成物を形成し得る。ベースコートおよびトップコートの両方ともが一緒に加熱されて、2つの層を共同に硬化する。代表的には、20〜30分の期間の間の130℃〜160℃の硬化条件が使用される。透明トップコートは、代表的に、0.5〜6ミル(13〜150ミクロン)(例えば、1〜3ミル(25〜75ミクロン))の範囲の厚さを有する。
【0117】
本発明は、以下の実施例により詳細に記載されている。これらの実施例は、例示のみを意図している。なぜならば、それらにおいて多くの改変および変更が当業者に明らかであるからである。そうでないことが示されない限り、全ての部分およびパーセンテージは、重量による。
【実施例】
【0118】
(実施例A)
実施例Aは、本発明によるイソブチレンを含むコポリマーの調製を示す。反応体は、以下のように組み合わせた。
【0119】
【表2】

チャージ#1を、攪拌器、熱電対、および窒素入口を装備した反応ベッセルに添加した。このベッセルをシールし、溶液を、窒素ブランケットの下に配置し、そして160℃まで加熱した。チャージ#2を、この反応ベッセルに2.5時間に亘って添加した。チャージ#2を開始した15分後、2時間に亘るチャージ#3およびチャージ#4を開始した。これらの添加期間の間、リアクター温度は140〜160℃で維持し、そして圧力は40psiから340psiまで変動した。チャージ#2の終了後、反応混合物を、140〜150℃で2時間保持した。次いで、反応混合物を<60℃まで冷却し、そして残存圧力を解放し、そして任意の未反応イソブチレンを、60℃、<100mmHg減圧で1時間の間減圧除去した。減圧蒸留が終了した後、反応混合物を、周囲温度まで冷却した。固形分を、サンプルを110℃で1時間保持することにより測定し、そして重量損失を算出した。分子量は、ポリスチレン標準を用いてゲル透過クロマトグラフィーにより決定した。COOH当量は、0.1Nメタノール性KOHでの滴定により測定し、そして処理された固形分で2472グラム/COOHであることが見出された。ヒドロキシル数は、STM−0217によって測定し、そして134であることが見出された。
【0120】
714グラムの脱イオン水を4リットルベッセルにチャージし、そして60℃に加熱した。60℃で、21.2グラムのジメチルエタノールアミンを水に添加し、そして、3インチのハイリフト攪拌ブレードで、水およびDMEAを含むベッセルに激しい攪拌を付与した。611.5グラムの上記コポリマーを水/アミン混合物に添加した。さらなる791.7グラムの水を添加した。固形分を、サンプルを110℃で1時間保持することにより測定し、そして重量損失を算出した。
【0121】
(実施例B)
この実施例は、硬化可能な膜形成性組成物中の樹脂製バインダーとして用いられるアクリルラテックスの調製を示す。
【0122】
【表3】

注釈:
19.90:10.15:30.30:11.00:28.65の重量比のヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、アクリル酸、CARDURA E(第三級脂肪族カルボン酸の混合物のグリシジルエステル、Shell Chemical Companyから市販される)から調製したコポリマー、メチルイソブチルケトン中64重量%の固体
メチルイソブチルケトン中70%固体での、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(Baxenden Chemicals Limited,Englandから市販される)
Ciba−Geigy Corporationから入手可能
立体的に妨げられた第3級アミン光安定化剤(Ciba Geigy Corporationから入手可能)
BYK Chemie USAから入手可能
DuPontから60%固体溶液として入手可能
Air Products and Chemicals Co.から入手可能なアセチレン性アルコール界面活性剤
Crucible Chemicalから入手可能な脂肪族炭化水素。
【0123】
チャージ#1および#2を、反応フラスコに順に添加し、そして均一になるまで混合した。チャージ#4を、別に、350rpmで、25℃まで加熱した。チャージ#1および#2の混合物を、チャージ#4中に1時間に亘って添加した。添加が終了したとき、チャージ#3を、リンスとしてフラスコに添加し、そして混合物を少なくとも30分間保持した。この混合物を、冷却水を用いて11,500psiで、Microfluidizer(登録商標)ホモジナイザー(Microfluidics Corporationから入手可能)を通過させた。チャージ#5を、ホモジナイザーを通じてリンスとして続け、そして全部の混合物を、総蒸留のためにセットアップした。次に、チャージ#6を、攪拌下(350rpm)でバッチに添加した。窒素掃引を開始し、450〜550mmHg減圧が続いた。このバッチを、40℃まで加熱し、必要に応じて温度を増加した(最大60℃)。泡を制御するためにNを用い、減圧を必要に応じて;>100mmHgにゆっくりと増加した。必要に応じて脱イオン水を添加し、固形分を46.0±1.5%に調節した。反応生成物を、<40℃まで冷却し、次に、5ミクロン(ジャケット付)フィルターバッグを通じて濾過した。得られる分散物は、約46%の樹脂固形分、8.7のpH、および約1600オングストロームの粒子サイズを有していた。
【0124】
(実施例C)
この実施例は、約3〜4の重合度、すなわち、(Si−O)〜(Si−O)のペンタシロキサンのヒドロシリル化の生成物である、水性ポリシロキサンポリオール分散物の調製を記載する。このポリシロキサンポリオールは、以下の成分の混合物から調製された:
【0125】
【表4】

BASF Corporationから市販されるポリシロキサン含有水素化シリコン二塩化水銀決定に基づく当量
窒素ブランケットを維持するための手段を装備した適切な反応ベッセルに、チャージIおよび総モノマー固形分の20〜25ppmに相当する量の重炭酸ナトリウムを、周囲条件で添加し、そして窒素ブランケット下で温度を段階的に75℃まで増加した。その温度で、攪拌下で5.0%のチャージIIを添加し、総モノマー固形分を基に活性白金の10ppmに当量のチャージIIIの添加を続けた。次に、反応を、95℃まで発熱させ、その時点で、チャージIIの残りを、温度が95℃を超えないような速度で添加した。この添加の終了後、反応温度を95℃に維持し、そしてシリコンヒドリド吸収バンド(Si−H、2150cm−1)の消失を赤外分光法によってモニターした。
【0126】
上記の反応生成物を、無水メチルヘキサヒドロフタル酸と、81%ポリシロキサン:19%無水メチルヘキサヒドロフタル酸の重量比で後反応させた。その後、酸基を、ジメチルエタノールアミンで中和し、水中の分散を可能にした。最終の分散生成物は、41%ポリシロキサン、無水9.6%メチルヘキサヒドロフタル酸、5.8%ジメチルエタノールアミンおよび43.6%水の重量組成を有していた。
【0127】
実施例1および実施例2は、硬化可能フィルム形成組成物の調製を例示する。実施例1は、本発明に従う、イソブチレン含有コポリマーを使用する硬化可能フィルム形成組成物の調製を例示する。実施例2は、コントロールであり、イソブチレン型モノマーのコポリマーを含まない。
【0128】
以下に記載のように成分を合わせた。
【0129】
(実施例1)
【0130】
【表5】

Cymel(登録商標)327:イソブタノール中の、高度にメチル化された、高イミノ含有メラミンホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries,Inc.から入手可能)
Aerosil(登録商標)200溶融シリカ(Degussa Corporationから入手可能)。
【0131】
第1の前混合物において、Cymel(登録商標)327を撹拌し、そしてAerosil(登録商標)200を、90:10の比(Cymel (登録商標)327:Aerosil(登録商標)200)で添加した。次いで、この混合物を、顔料分散ミル(Eigerミル)中で混合して、7+のHegan値を達成した。第2の前混合物において、0.2部のドデシルベンゼンスルホン酸を撹拌しながら、ジメチルエタノールアミン(脱イオン水中50%)をゆっくりと添加した。
【0132】
アクリルラテックスを撹拌し、そして脱イオン水を添加した。この混合物を撹拌して、完全な組み込みを確実にした。次いで、前混合物1および前混合物2を、各々の添加の後に別々に、撹拌しながら添加した。最終組成は、28%の固体顔料、および# 4’ DINカップで測定した場合、30秒の粘度を有した。
【0133】
(実施例2(コントロール))
硬化可能フィルム形成組成物を、実施例1に記載される方法と類似の方法を使用して調製した。以下に記載されるように成分を合わせた。
【0134】
【表6】

BYK−Chemie USAから入手可能な添加剤
BYK−Chemie USAから入手可能な傷防止添加剤
水系ポリウレタン(イソホロンジイソシアネートを、分子量2000を有するメトキシポリエチレングリコールと、1:1の当量比で反応させることにより調製)
Cymel(登録商標)327:イソブタノール中の、高度にメチル化された、高イミノ含有メラミンホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries,Inc.から入手可能)
Aerosil(登録商標)200:溶融シリカ(Degussa Corporationから入手可能)
ヘキサメトキシメチルメラミンホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries,Inc.から入手可能)
Borchi Gel(登録商標)LW 44(Borchersから入手可能)。
【0135】
第1の前混合物において、Cymel(登録商標)327を撹拌し、そしてAerosil(登録商標)200を、90:10の比(Cymel (登録商標)327:Aerosil(登録商標)200)で添加した。次いで、この混合物を、顔料分散ミル(Eigerミル)中で混合して、7+のHegan値を達成した。第2の前混合物において、0.2部のドデシルベンゼンスルホン酸を撹拌しながら、ジメチルエタノールアミン(脱イオン水中50%)をゆっくりと添加した。第3の前混合物において、0.24部のBorchi Gel(登録商標)LW 44を撹拌し、同時に、この前混合物が均一になるまで脱イオン水を添加した。
【0136】
アクリルラテックスを撹拌し、そしてBYK(登録商標)325、BYK(登録商標)345および水系ポリシロキサンを添加した。この混合物を、撹拌した完全な組み込みを確実にした。次いで、2、2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートおよびブチルアセテートを、順に、穏やかに撹拌しながら添加した。この混合物を再び撹拌して、完全な組み込みを確実にした。次いで、以下の成分を、各添加の後に、撹拌しながら別々に添加した:脱イオン水、イソホロンジイソシアネート混合物、前混合物1、Cymel(登録商標)303、および前混合物2。前混合物3を、粘度を調整するために使用した。
【0137】
実施例1および実施例2のフィルム形成組成物を、特性試験のために、プライムコーティングされたスチール基板パネルおよびベースコーティングされたスチール基板パネルの2つの別個のセットに塗布した。この基板に使用したプライマーは、PPG Industries,Inc.から市販されており、1177225ARとして特定される。1セットのパネルにおいて、基板に使用したベースコートは、PPG Industries,Inc.から市販されており、EWB Reflex Silverとして特定される。第2のセットのパネルにおいて、基板に使用したベースコートは、PPG Industries,Inc.から市販されており、EWB Obsidian Blackとして特定される。実施例1および実施例2のフィルム形成組成物を、約75°F(24℃)の温度で、スチールパネルに2回コーティングした。2回のコーティングの間に、約90秒のフラッシュ時間をはさんだ。次いで、得られたコーティングを、75°F(24℃)で10分間のエアフラッシュに供し、その後焼き付けて、このフィルム形成組成物を硬化した。硬化条件は、293°F(145℃)で22分間の焼き付けであった。
【0138】
コーティングしたパネルの外観および物理的特性を、以下の試験で記載されるようにして測定した。DOI(画像の鮮明度)を、Dorigon II(登録商標)DOIメーター(Hunter Lab製)を使用して測定した。20°における反射光沢およびヘイズを、BYK Gardner(登録商標)Haze−Gloss Meterによって測定した。より大きな数字は、より良好な性能を示す。クリアコートの滑らかさを、Byk Wavescan Plus(登録商標)機器を使用して測定し、ここで結果を、長波数および短波数として報告する。より低い長波数および短波数は、より滑らかなフィルムを示す。
【0139】
硬化された組成物の試験結果を、以下の表に示す。
【0140】
【表7】

これらの表のデータは、本発明に従って調製された硬化可能フィルム形成組成物が、バインダーとしてイソブチレン型コポリマーを含まないコントロールと比較して、改善された滑らかさを示すことを示し、このことは、長波スキャン測定値および短波スキャン測定値の減少、他の必須の特性(例えば、光沢、DOIおよび酸エッチング耐性)を有意に失わないことにより証明される。
【0141】
本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細を参照して記載されている。このような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲内に包含される範囲を除いて、それらが包含される程度まで、本発明の範囲に対する制限とみなされるようには意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化可能な水性フィルム形成組成物。

【公開番号】特開2009−155664(P2009−155664A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100406(P2009−100406)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【分割の表示】特願2007−175684(P2007−175684)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】