説明

イヤホン装置

【課題】 体に装着しても違和感がないイヤホン装置に、脈拍計や体温計を実装し、運動を妨げることなく、体調管理を行うことができるイヤホン装置を提供する。
【解決手段】 イヤホン装置は、音響信号を拡声出力する音響スピーカ(33)と、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段(32)と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段(31)との少なくとも二つをケース(29)に収めて一体化したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホン装置に関し、詳しくは、音声や音楽等の音源を聞くことができるとともに、体調管理にも資することができるイヤホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の雑音に影響されることなく、音声や音楽等の音源を聞くことができるイヤホン装置は、携帯型の音響装置やラジオ受信機などに多用されているが、それ以外にも、たとえば、補聴器、無線受信機、ゲーム機などの様々な機器にも使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他方、近年、健康増進等の観点からスポーツジム等で汗を流す機会も増えつつあり、運動をしながら、脈拍(心拍ともいう。以下、脈拍で代表する。)や体温の変化をリアルタイムに管理したいという要求がある。この要求に応えるためには、脈拍計や体温計といった単体の計測具を体に取り付けなければならず、運動の妨げになるという不都合がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、体に装着しても違和感がないイヤホン装置に、脈拍計や体温計を実装し、運動を妨げることなく、体調管理を行うことができるイヤホン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、音響信号を拡声出力する音響スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをケースに収めて一体化したことを特徴とするイヤホン装置である。
請求項2記載の発明は、音響信号を振動に変換して出力する骨伝導スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをケースに収めて一体化したことを特徴とするイヤホン装置である。
請求項3記載の発明は、音響信号を拡声出力する音響スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをワイヤーフレーム上に滑動可能に取り付けて一体化したことを特徴とするイヤホン装置である。
請求項4記載の発明は、音響信号を振動に変換して出力する骨伝導スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをワイヤーフレーム上に滑動可能に取り付けて一体化したことを特徴とするイヤホン装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、音響信号を拡声出力する音響スピーカ(または、音響信号を振動に変換して出力する骨伝導スピーカ)と、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つを一体化したので、たとえば、スピーカと体温検出手段の二つ、又は、スピーカと脈拍検出手段の二つ、若しくは、スピーカと体温検出手段と脈拍検出手段の三つを一体化すれば、スピーカによって音声等を聞くことができるだけでなく、体温や脈拍といった体調管理も同時に行うことができる効果が得られ、たとえば、スポーツジム等における運動管理に用いてきわめて好適なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における様々な細部の特定ないし実例および数値や文字列その他の記号の例示は、本発明の思想を明瞭にするための、あくまでも参考であって、それらのすべてまたは一部によって本発明の思想が限定されないことは明らかである。また、周知の手法、周知の手順、周知のアーキテクチャおよび周知の回路構成等(以下「周知事項」)についてはその細部にわたる説明を避けるが、これも説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0008】
図1は、人体の耳部断面図である。この図において、人体の耳部は、外界から頭内部に向かって、外耳1、中耳2、内耳3及び聴神経4に分けられる。外耳1は耳たぶ5と耳穴6及び外耳道7を含み、中耳3は外耳道7の最深部の鼓膜8と耳小骨9を含む。また、内耳3は蝸牛10を含み、聴神経4は蝸牛神経11を含む。また、これらの外耳1、中耳2、内耳3及び聴神経4は、頭蓋骨12、13によって保護されており、それらの頭蓋骨12、13は皮膚14、15で覆われている。
【0009】
このような構造の人体の耳部において、外界からの音は、耳穴6から外耳道7を通って鼓膜8に到達し、鼓膜8を振動させる。鼓膜8の振動は蝸牛10で増幅され、この蝸牛10につながる蝸牛神経11を介して図示しない脳に伝達されることにより、音として知覚される。
【0010】
本発明のイヤホン装置は、かかる構造の人体の耳部に適用されるものであり、以下、その詳細を説明する。
【0011】
図2は、本発明に係るイヤホン装置の全体外観図である。イヤホン装置20は、耳穴6に装着されるイヤホン部21と、このイヤホン部21にケーブル22で接続される本体部23とからなる。本体部23は、特にそれに限定されないが、たとえば、携帯に適した形状のケース24の一側面に電源スイッチ25を配すると共に、その表面に体温表示部26、脈拍表示部27及びマイク部28を配して構成されている。なお、この本体部23には、必要に応じて、ケース24の一側面に設けられた外部信号入力端子24aを介して、任意の外部音源からの外部信号を入力できるようになっている。
【0012】
図3は、イヤホン部の一例の構成図である。この図において、イヤホン部21は、主部29と筒部30とを、たとえば、プラスチック素材等で一体成形して構成されており、主部29の内部に脈拍センサ31、体温センサ32、音響スピーカ33及び信号分配部34を実装している。
【0013】
具体的には、脈拍センサ31は、発光部31aと受光部31bとを主部29の人体の皮膚に接する部分に実装して構成されており、発光部31aからの光Paを人体の皮膚に照射し、その皮膚からの反射光Pbを受光部31bで受光することにより、光学的に皮膚直下の血脈を検出して、その検出信号を信号線31cを介して信号分配部34に出力する。なお、信号分配部34から発光部31aにつながる信号線31dは、発光部31aを発光させるための駆動信号線である。
【0014】
体温センサ32は、筒部30に形成された一端開放の中空孔30aの他端側(図面の右側)に装着されており、人体の外耳道7奥の鼓膜8の放射温度(赤外線Pcによって放射される温度)を計測し、その検出信号を信号線32aを介して信号分配部34に出力する。ここで、本実施形態における体温センサ32は、いわゆる「赤外線式」の体温センサである。つまり、あらゆる物体(正確には−273度の絶対零度以上の物体)は、その表面から電磁波の一種の波長1μm〜1000μmの熱エネルギー波(赤外線)を放射しており、赤外線式の体温センサは、人体から放射される熱エネルギー波を、サーモバイル等のセンサで検出して体温を測定するというものである。ちなみに、鼓膜8の温度を測定する理由は、鼓膜8の温度は脇の下等の体表面温度に比べて、体深部(脳幹等)の温度に近く、しかも安定しているからである。
【0015】
音響スピーカ33は、筒部30に形成された中空孔30aの分岐部30bの奥に装着されており、信号線33aを介して信号分配部34から送られてきた音響信号を拡声し、その拡声音波Pdを分岐部30b及び中空孔30aを通して鼓膜8に届けるものである。
【0016】
図4は、イヤホン部21と本体部23のブロック図である。この図において、本体部23は、信号分配部35、体温測定部36、体温表示部26、脈拍測定部37、脈拍表示部27、音響信号増幅部38及びマイク部28を備える。なお、これら各部(及びイヤホン部21の各部)に電源を供給する電源部も備えるが、図面では省略している。
【0017】
体温測定部36は、イヤホン部21で測定された体温信号(体温センサ32からの信号)をケーブル22及び信号分配部35を介して取り込み、所要の温度体系(摂氏又は華氏)の値に変換して、温度表示部26に出力する。脈拍測定部37は、イヤホン部21で測定された脈拍信号(脈拍センサ31からの信号)をケーブル22及び信号分配部35を介して取り込み、所要の単位系(毎分当たりの心拍数)の値に変換して、脈拍表示部27に出力する。
【0018】
音響信号増幅部38は、マイク28で拾った音をそのまま増幅し、又は、雑音を除去してから増幅し、その増幅信号を、信号分配部35及びケーブル22を介して、イヤホン部21に出力する。また、この音響信号増幅部38には、必要に応じて外部音源からの信号も入力できるようになっており、外部音源からの信号が入力された場合、音響信号増幅部38は、マイク28からの信号の代わりに、外部音源からの信号を増幅してイヤホン部21に出力するようになっている。したがって、このイヤホン装置20は、マイク28を使用することにより、いわゆる「補聴器」として利用できるばかりでなく、マイク28の代わりに外部音源を使用することにより、たとえば、携帯型音響装置等のイヤホンとして、あるいは、スポーツジム等におけるインストラクターの指示音声の伝達用途などとしても幅広く利用することができる。
【0019】
以上のとおり、本実施形態におけるイヤホン装置20は、イヤホン部21に脈拍センサ31、体温センサ32及び音響スピーカ33を実装しているので、音声等を聞くことができるだけでなく、体温や脈拍といった体調管理も同時に行うことができる利点があり、たとえば、スポーツジム等における運動管理に用いてきわめて好適なものとすることができる。
【0020】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、その技術思想の範囲において様々な変形例や発展例を包含することはもちろんであり、たとえば、以下のようにしてもよい。
【0021】
図5は、他の実施形態を示す図である。この図において、先の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付してある。つまり、この図におけるイヤホン部20も、脈拍センサ31と体温センサ32を備える点で先の実施形態と共通するが、音響スピーカ33の代わりに骨伝導スピーカ39を備えている点で相違する。
【0022】
骨伝導スピーカ33は、信号線39aを介して信号分配部34から供給される音響信号に従って振動し、その振動Peを人体頭部の骨(図1の頭蓋骨12又は13参照)に伝えることにより、人間の脳に直接、音を知覚させるものである。
【0023】
このように、音響スピーカ33の代わりに骨伝導スピーカ39を備えるようにしてもよい。骨伝導スピーカ39は、音響スピーカ33に比べて周囲の雑音の影響を受けにくいので、とりわけ、騒音の激しい場所での使用に好ましいものとすることができる。
【0024】
また、以上の各実施形態では、一体型のイヤホン部20の例を示したが、たとえば、以下のような別体型の構成であってもよい。
【0025】
図6は、別体型のイヤホン部を示す図である。このイヤホン部40は、耳たぶ41に掛け渡されるワイヤーフレーム42と、そのワイヤーフレーム42の要所要所に移動可能に取り付けられた骨伝導スピーカ43、体温センサ44及び脈拍センサ45を備える。
【0026】
図7は、体温センサ44の取り付け構造図である。なお、この図は、人体の頭部を上から見下ろした俯瞰図である。この図において、体温センサ44は、先の実施形態と同様に「赤外線式」のものであり、外耳道7に差し込まれて用いられ、鼓膜8から放射される赤外線Pcの強度(つまり、温度)を検出するものである。この体温センサ44は、止め具44a、44bによってワイヤーフレーム42の上を滑動できるようになっており、各人ごとの耳穴に合わせて体温センサ44の位置を自在に調節できるようになっている。
【0027】
図8は、脈拍センサ45の取り付け構造図である。なお、この図は、人体の耳たぶ41を厚み方向から見た図である。この図において、脈拍センサ45は、先の実施形態と同様に、発光部45aと受光部45bとからなり、発光部45aからの光Paを耳たぶ41に照射し、その透過光を受光部45bで受光することにより、光学的に耳たぶ41の内部の血脈を検出するというものである。上記の体温センサ44と同様に、これらの発光部45aと受光部45bも、止め具45c、45d、45e、45fによってワイヤーフレーム42の上を滑動できるようになっており、各人ごとの耳たぶ41の形に合わせて、発光部45aと受光部45bの位置を自在に調節できるようになっている。また、発光部45aと受光部45bは、弾性部材45gで互いに連結されており、この弾性部材45gの弾性力によって適当な圧力で耳たぶ41を挟み込むようになっている。なお、弾性部材45gは、長さ又はその弾性力を調節できるようになっていることが望ましい。耳たぶ41の厚みに個人差があるからである。
【0028】
図9は、骨伝導スピーカ43の取り付け構造図である。なお、この図も、人体の頭部を上から見下ろした俯瞰図である。この図において、骨伝導スピーカ43は、先の実施形態と同様に、音響信号に従って振動し、その振動Peを人体頭部の骨(図1の頭蓋骨12又は13参照)に伝えることにより、人間の脳に直接、音を知覚させるものである。
【0029】
骨伝導スピーカ43には、この骨伝導スピーカ43を頭部に押しつけるための弾性部材(たとえば、プラスチック製のアーム状部材又はバネ部材若しくはその他の弾性部材)43cが取り付けられている。そして、この弾性部材43cが、止め具43a、43bによってワイヤーフレーム42の上を滑動できるようになっており、上記の体温センサ44や脈拍センサ45と同様に、各人ごとの耳たぶ41の形に合わせて骨伝導スピーカ43の位置を自在に調節できるようになっている。
【0030】
なお、ワイヤーフレーム42は、フレキシブルな素材で形成され、且つ、内部が中空になっており、その中空部分に骨伝導スピーカ43、体温センサ44及び脈拍センサ45への信号線が収納されている。
【0031】
このような別体型のイヤホン部40であっても、そのイヤホン部40に、脈拍センサ45、体温センサ44及び骨伝導スピーカ43を実装することができるので、音声等を聞くことができるだけでなく、体温や脈拍といった体調管理も同時に行うことができるという利点が得られるから、たとえば、スポーツジム等における運動管理に用いてきわめて好適なものとすることができる。
【0032】
また、ワイヤーフレーム42の要所要所に、脈拍センサ45、体温センサ44及び骨伝導スピーカ43を移動可能に取り付けられるので、個人差を吸収して、脈拍センサ45、体温センサ44及び骨伝導スピーカ43の位置を調整することができる。なお、骨伝導スピーカ43の代わりに音響スピーカを取り付けてもよい。この場合、音響スピーカの取り付け位置を耳穴付近とすべきことはもちろんである。
【0033】
また、別体型のイヤホン部40は、前記“一体型”のイヤホン部20に比べて、脈拍センサ45、体温センサ44及び骨伝導スピーカ43の大きさの影響を受けにくく、実装が容易で製品化しやすいというメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】人体の耳部断面図である。
【図2】本発明に係るイヤホン装置(一体型)の全体外観図である。
【図3】一体型のイヤホン部の一例の構成図である。
【図4】一体型のイヤホン部21と本体部23のブロック図である。
【図5】一体型のイヤホン部の他の実施形態を示す図である。
【図6】別体型のイヤホン部を示す図である。
【図7】別体型の体温センサ44の取り付け構造図である。
【図8】別体型の脈拍センサ45の取り付け構造図である。
【図9】別体型の骨伝導スピーカ43の取り付け構造図である。
【符号の説明】
【0035】
20 イヤホン装置
29 主部(ケース)
31 脈拍センサ(脈拍検出手段)
32 体温センサ(体温検出手段)
33 音響スピーカ
39 骨伝導スピーカ
42 ワイヤーフレーム
43 骨伝導スピーカ
44 体温センサ(体温検出手段)
45 脈拍センサ(脈拍検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号を拡声出力する音響スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをケースに収めて一体化したことを特徴とするイヤホン装置。
【請求項2】
音響信号を振動に変換して出力する骨伝導スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをケースに収めて一体化したことを特徴とするイヤホン装置。
【請求項3】
音響信号を拡声出力する音響スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをワイヤーフレーム上に滑動可能に取り付けて一体化したことを特徴とするイヤホン装置。
【請求項4】
音響信号を振動に変換して出力する骨伝導スピーカと、赤外線方式により人体の体温を検出する体温検出手段と、人体の血管を流れる血液の脈動を光学的に検出する脈拍検出手段との少なくとも二つをワイヤーフレーム上に滑動可能に取り付けて一体化したことを特徴とするイヤホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−136556(P2008−136556A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323635(P2006−323635)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(304018749)株式会社アイボックス (3)
【出願人】(505022976)株式会社コスモテック (4)
【Fターム(参考)】