説明

インクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェットヘッドアセンブリ、これを備えるインクジェット記録装置およびインクジェットヘッドのメンテナンス方法

【課題】インク液滴を吐出する複数の吐出口が吐出口プレートに列状に形成された、複数のインクジェットヘッドユニットが吐出口の配列方向を一致させて支持フレームに配設されたインクジェットヘッドのメンテナンス時に、インクジェットヘッドユニットの配置位置のずれを防止する。
【解決手段】インクジェットヘッドの支持フレームに対向して配置される支持板と、吐出口と対向する面に、配列方向を長手方向とするスリット状吸引口が形成された吸引部材を備え、支持板の支持フレーム側の、複数のインクジェットヘッドユニットのそれぞれに対応する位置に配設される複数の除去ユニットと、支持板に設けられ、支持フレームに当接して、対応する除去ユニットとヘッドユニットとが対向し、かつ、非接触となる位置に、支持フレームに対して支持板および複数の除去ユニットを位置決めする位置決め部材とを有するインクジェットヘッドのメンテナンス装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを液滴として吐出するインクジェットヘッドのメンテナンスの分野に係り、より詳しくは、インク液滴を吐出する吐出部が複数形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置、メンテナンス装置を有するインクジェットヘッドアセンブリ、これを備えるインクジェット記録装置およびインクジェットヘッドのメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体に画像を記録する方法としては、インク液滴を吐出させる吐出口を有するインクジェットヘッドを用い、画像信号に応じて吐出口からインク液滴を吐出させる記録方法がある。
【0003】
このような吐出口からインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドでは、吐出口(ノズル)が形成されているノズルプレート(吐出口プレート)の表面にインク液滴が付着することがある。
このようなインク液滴がノズルプレートの特に吐出口周りに付着すると、インクの吐出方向が不安定になり、高画質な画像を形成することができないという問題がある。
このノズルプレートの表面に付着するインク液滴、汚れを除去する方法としては、柔軟な材質を用いた板状のブレードで表面を擦って除去したり、インク液滴、汚れ等の吸収性を有する部材をノズルプレートに接触させて吸収する方法がある。
しかしながら、ヘッド製造時のノズル孔製作精度向上のためにノズルプレートの材料としてあまり硬質ではない、つまり硬度の低い材料を用いる場合や、ノズルプレート表面に撥液処理が施されている場合は、物理的な接触を伴う上述したようなブレードや吸収体を用いる方法は、ノズルの縁部構造を破壊したり、撥液処理面を傷つけたりしてしまう可能性がある。
ノズルの縁部構造が破壊されたり、撥液処理面が傷つけられたりすると、インク液滴の吐出に乱れが生じ、高画質な画像を形成することができない。
ここで、ノズルプレートの表面に付着したインク液滴を除去する装置としては、例えば、特許文献1および2に示すメンテナンス装置がある。
【0004】
特許文献1には、ヘッド本体内に多数のノズルが配列形成されてヘッド本体端部が平面状に形成されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、大気圧より低い負圧を生成する負圧生成手段と、この負圧生成手段に連通接続され、吸引用開口が一若しくは数個単位のノズル領域に面した大きさに形成される局所吸引手段と局所吸引手段の吸引用開口をノズルの配列方向に向かって相対的に移動させる吸引用開口移動手段とを備えるインクジェットヘッドのメンテナンス装置が記載されている。また、特許文献1には、この局所吸引手段を位置決めガイドで保持し、この位置決めガイドによってヘッド本体に対して局所吸引手段を位置決めした状態で、吸引用開口をノズルの配列方向に相対的に移動させることも記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ノズルプレートにインクが付着するなど、メンテナンスが必要な場合に、キャップが移動され、キャップゴムとヘッド前面のノズルプレート面との距離Lが所定距離となる位置まで離し、この状態でポンプを駆動することにより、ノズルプレート面上のインクを、キャップ内に吸引するインク噴射装置が記載されている。
また、このインク噴射装置は、ノズルプレート状の撥水性膜が劣化することなくインクの除去を行うことができると記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平05−201028号公報
【特許文献2】特開平08−58103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載されているように、ノズルプレートから一定距離離間した位置から吸引することにより、メンテナンス時にノズルプレート表面を傷つけることを防止できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置は、吸引用開口移動手段により、局所吸引手段の吸引口をノズル(吐出口)の配列方向に向かって相対的に移動する必要があるため、処理に時間がかかり、かつ装置が複雑になるという問題点がある。ノズルプレート上に多数の吐出口が形成されているインクジェットヘッドの場合は、この問題が顕著になる。
【0009】
また、特許文献1に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置は、位置決めガイドをヘッド本体に当接させて、ヘッド本体に対して局所吸引手段を位置決めする。これにより、ヘッド本体の設置位置が変わる場合がある。
図23(A)に、一方向に配列されたノズル(吐出口)304を有するヘッドユニット302A,302B,302Cを、ノズル304の配列方向が互いに平行となるように配列させて、被記録媒体Pの1辺の全域に対応して記録可能に構成されたインクジェットヘッド300を示す。このインクジェットヘッド300は、打滴点の間隔が均一となるように各ヘッドユニットの位置を調整された状態で用いられる。
ここで、メンテナンスの際に、局所吸引手段をヘッドユニットに接触させて、ヘッドユニットに対して位置決めすると、各ヘッドユニットの位置がそれぞれ変化する場合がある。図23(B)に示すように、ノズルの配列方向に隣接するヘッドユニット302間でのノズル間隔(例えば、図23(B)中のA5のノズルとB1のノズルとのノズルの配列方向における間隔)が、ヘッドユニット302A,302B,302Cのそれぞれにおけるノズル間隔と異なる値となる。このような状態で、描画すると画像にすじむらが発生するという問題がある。
【0010】
また、複数のヘッドユニットのそれぞれが、その配置位置を調整するためのヘッドアライメント調整機構を介して支持板等に配設される場合、ヘッドユニットの配置位置の調整や補正を容易に行うことができる。しかしながら、特許文献1のように、位置決めガイドをヘッド本体に当接させて、すなわち、ヘッドアライメント調整機構を有するヘッドユニットのそれぞれに対して局所吸引手段を位置決めする場合は、ヘッドアライメント調整機構によるヘッドユニットの設置位置安定性のばらつきによる影響を受けて、各ヘッドユニットの設置位置がそれぞれずれて記録画像にすじむらが発生しやすくなる場合があるという問題がある。このような問題を防止するために、ヘッドアライメント調整機構のヘッドの設置位置安定性を向上させると、装置構成が複雑になったり装置が高価になってしまうという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に記載のインク噴射装置では、ノズル(吐出口)を複数形成した場合の問題点については、何ら記載されていない。
ここで、例えば、複数のノズルに対して1つのキャップを配置した場合は、隣接するノズル間のインクがノズルプレート上に残ってしまうことがあるという問題がある。
また、例えば、複数のノズル毎にキャップを設けた場合は、装置構成が複雑になるという問題がある。特にノズルを微細な間隔で配置したインクジェットヘッドでは、キャップを形成することが困難であるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、複数のヘッドユニットを配列して構成されるインクジェットヘッドであっても、各ヘッドユニット間の設置位置が変化することなく、インクジェットヘッドの保守を行うことができるインクジェットメンテナンス装置、インクジェットヘッドアセンブリ、インクジェット記録装置、およびインクジェットメンテナンス方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、効率よく、短時間で、確実にかつノズルプレートを損傷させることなく、インクジェットヘッドの保守を行うことができるインクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェットヘッドアセンブリ、インクジェット記録装置、およびインクジェットメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、それぞれ、インク液滴を吐出する複数の吐出口が吐出口プレートに列状に形成された、複数のインクジェットヘッドユニットが前記吐出口の配列方向を一致させ、前記複数のインクジェットヘッドユニット間の相対位置を調整するアライメント調整機構によって支持フレームに配設されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、
前記支持フレームに対向して配置される支持板と、
前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記吐出口の配列方向を長手方向とするスリット状吸引口が形成された吸引部材を備え、前記支持板の前記支持フレーム側の、前記複数のインクジェットヘッドユニットのそれぞれに対応する位置に配設される複数の除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプと、
前記支持板からこれに直交する方向に突出し、前記アライメント調整機構によって調整された前記複数のヘッドユニット間の相対位置が変化しないように前記支持フレームに当接して、対応する前記除去ユニットと前記ヘッドユニットとが対向し、かつ、非接触となる位置に、前記支持フレームに対して前記支持板および前記複数の除去ユニットを位置決めする位置決め部材とを有することを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス装置を提供するものである。
【0014】
ここで、前記位置決め部材は、前記支持板と反対側の先端部に凸部が形成され、前記支持フレームは、前記凸部が当接する位置に凹部が形成されることが好ましい。
【0015】
また、前記吸引部材は、前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つの第1吸引口が形成された第1吸引部材と、前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つの第2吸引口が形成された第2吸引部材とを有することが好ましい。
また、前記吸引部材の前記第1吸引口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記吐出口の一方の端部に対向する位置に配置され、前記吸引部材の前記第2吸引口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記吐出口の他方の端部に対向する位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
ここで、前記除去ユニットは、さらに、前記吸引部材に隣接して配置され、前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記インクジェットヘッドの前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つのスリット状吹出口が開口された吹出部材を有し、さらに、前記吹出部材に空気を供給する吹出ポンプを有することが好ましく、また、前記吹出部材の前記吹出口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記第1吸引口と前記第2吸引口との間に配置されていることが好ましい。
【0017】
さらに、前記支持板と前記支持フレームとを近接させる移動機構を有することが好ましい。
さらに、前記吐出口からインクを排出させ、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面をインクで濡らす浸漬機構を有することが好ましく、また、前記浸漬機構は、さらに、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記吐出口プレートと接触しない位置に配置され、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面との間に前記インクジェットヘッドから排出されたインクの流路を形成する液流ガイドを有することが好ましい。
【0018】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明の第2の態様は、インク液滴を吐出する複数の吐出口が列状に形成された吐出口プレートと、前記複数の吐出口のそれぞれに対応して配設され、各々の吐出口から前記インク液滴を吐出する複数の吐出手段とを備える、複数のインクジェットヘッドユニット、および、前記複数のインクジェットヘッドユニットを前記吐出口の配列方向を揃えて配置する支持フレームを有するインクジェットヘッドと、
上記本発明の第1の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置とを有することを特徴とするインクジェットヘッドアセンブリを提供するものである。
【0019】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明の第3の態様は、上記本発明の第2の態様に係るインクジェットヘッドアセンブリと、
前記インクジェットヘッドアセンブリの複数のインクジェットヘッドの前記複数の吐出口から前記インク液滴を吐出する被記録媒体を、前記インクジェットヘッドアセンブリに対して、相対的に移動させる相対移動手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を提供するものである。
【0020】
上記課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明の第4の態様は、それぞれ、インク液滴を吐出する複数の吐出口が吐出口プレートに列状に形成された複数のインクジェットヘッドユニットが前記吐出口の配列方向を一致させ、前記複数のインクジェットヘッドユニット間の相対位置を調整するアライメント調整機構によって支持フレームに配設されたインクジェットヘッドのメンテナンス方法であって、
前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記吐出口の配列方向を長手方向とするスリット状吸引口が形成された吸引部材を備える除去ユニットが前記複数のインクジェットヘッドユニットのそれぞれに対応する位置に配置される支持板を、前記アライメント調整機構によって調整された前記複数のヘッドユニット間の相対位置が変化しないように、前記支持フレームを基準として位置決めして、前記複数の除去ユニットのそれぞれを対応する前記インクジェットヘッドユニットと対向し、かつ、非接触となる位置に近接させることを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供するものである。
ここで、さらに、前記吸引部材と同時に、前記吐出口の配列方向が長手方向となるスリット状吹出口を有し、前記吹出口から空気を射出させる吹出部材を、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面の複数の前記吐出口に接触しない位置に近接させ、
前記吹出口から前記吐出口周辺に空気を射出させつつ、前記吸引口から空気およびインクの少なくとも一方を吸引し、前記吐出口プレートの前記吐出口周辺の付着物を吸引するが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のヘッドユニットを配列して構成されるインクジェットヘッドであっても、各ヘッドユニット間の設置位置が変化することなく、インクジェットヘッドの保守を行うことができるインクジェットメンテナンス装置、インクジェットヘッドアセンブリ、インクジェット記録装置、およびインクジェットメンテナンス方法を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、ヘッド基板の吐出口が形成されている面の吐出口周りのインク液滴、汚れを効率よくかつ短時間で除去することができる。これにより、短時間でかつ効率よくインクジェットヘッドのメンテナンスを行うことができる。さらに、装置を安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置、第2の態様に係るインクジェットヘッドアセンブリ、第3の態様に係るインクジェット記録装置および第4の態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス方法について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明の第1の態様のインクジェットヘッドのメンテナンス装置を備える本発明の第3の態様のインクジェット記録装置を用いるデジタルラベル印刷装置について説明する。
図1は、デジタルラベル印刷装置100の一実施例を示す概略構成図であり、図2は、図1に示すデジタルラベル印刷装置100に用いるラベル印刷用被記録媒体の一例の縦断面図であり、図3は、図1に示したデジタルラベル印刷装置100の描画部112を拡大して示す概略斜視図である。
【0025】
本実施形態のデジタルラベル印刷装置100は、活性エネルギ線(活性光線)硬化型インクである紫外線硬化型インクを用いた紫外線硬化型インクジェットデジタルラベル印刷装置であり、箔押し部を有し、箔押し印刷可能なラベル印刷装置である。
ここで、箔押し印刷とは、例えば、書籍の表紙や背表紙などに金色箔、銀色箔、色箔などの箔を、加熱した凸版により相手部材に押圧して箔を加熱圧着(箔押し)させるもので、ホットスタンプとも言う。
【0026】
図1に示すように、デジタルラベル印刷装置100は、基本的に搬送部110と、下塗部111と、描画部112と、メンテナンス部114と、平滑化部116と、箔押し部118と、ラベル抜き部120と、制御部121とを有する。制御部121は、搬送部110、下塗り部111、描画部112、メンテナンス部114、平滑化部116、箔押し部118およびラベル抜き部120の各種動作を制御する。
【0027】
ここで、搬送部110は、連続紙状のラベル印刷用被記録媒体(以下「被記録媒体」という。)Pを、一定方向(図1では左から右方向)に搬送するものであり、描画部112、平滑化部116、箔押し部118およびラベル抜き部120は、被記録媒体Pの搬送方向に沿って、つまり上流から下流方向に沿って、描画部112、平滑化部116、箔押し部118およびラベル抜き部120の順に配置されている。また、描画部112の被記録媒体Pを介して対向する位置には、本発明の特徴部分であるメンテナンス部114が配置されている。
ここで、本実施形態の被記録媒体Pは、図2に示すように、裏面に粘着剤180aが塗布された粘着シート180を、台紙である剥離紙182上に重ねて貼り合わせた2枚構造である。
【0028】
搬送部110は、供給ロール122と、搬送ローラ対124、126、128、130、132と、製品巻取部134とを有する。
供給ロール122には、被記録媒体Pがロール状に巻き取られている。搬送ローラ対124、126、128、130、132は、図示しない搬送モータにより回転駆動され、被記録媒体Pを供給ロール122から繰り出して、描画部112、平滑化部116、箔押し部118およびラベル抜き部120へと順次搬送する。
製品巻取部134は、被記録媒体Pの搬送方向の最下流に配置され、搬送ローラ対124、126、128、130および132により搬送され、描画部112、平滑化部116、箔押し部118およびラベル抜き部120を通過した被記録媒体Pを巻き取る。
【0029】
下塗部111は、被記録媒体Pに下塗り液を塗布する塗布ロール190と、塗布ロール190を回転させる駆動部191と、塗布ロール190に付着する下塗り液の量を調整するブレード192と、塗布ロール190に対して被記録媒体Pが所定位置となるように被記録媒体Pを支持する位置決め部194と、下塗り液が塗布され、下塗り液の層(以下、下塗り層ともいう)が形成された被記録媒体Pに紫外線を照射して下塗り液(下塗り層)を半硬化状態とする下塗り液半硬化部197とを有する。
【0030】
塗布ロール190は、被記録媒体Pの搬送経路において供給ロール122の下流側に、被記録媒体Pの画像が形成される側の面に当接して配置されている。
塗布ロール190は、被記録媒体Pの幅よりも幅の広いロールであり、その表面(外周面)に一定間隔毎に、つまり、均等に凹部が形成されている、いわゆるグラビアローラである。
ここで、塗布ロール190に形成する凹部の形状は特に限定されず、円形、矩形、多角形、星型等の種々の形状とすることができる。また、凹部は、塗布ロールの全周に溝状に形成してもよい。
【0031】
駆動部191は、塗布ロール190と接続されており、塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは、逆の方向に回転させる(図1中時計周り)。
駆動部191による駆動方法は特に限定されず、ギア駆動、プーリ駆動、ベルト駆動、ダイレクト駆動等の種々の塗布ロール190を回転させる方法を用いることができる。
【0032】
ブレード192は、被記録媒体Pの搬送方向の下流側の塗布ロール190の表面に当接して配置されている。
また、塗布ロール190とブレード192との当接部(接触部)の上部に形成される空間(以下「貯留部193」という。)には、下塗り液が貯留されている。また、貯留部193には、必要に応じて図示しない供給タンクから下塗り液が供給される。
これにより、塗布ロール190は、貯留部193に下塗り液に浸漬された後、かつ、被記録媒体Pと接触する。
ブレード192は、塗布ロール190が貯留部193に浸漬することで、付着した下塗り液のうち必要以上に付着した下塗り液を掻き落とし、塗布ロール190に付着した下塗り液の付着量を一定量にする。具体的には、ブレード192は、塗布ロール190の表面に形成されている凹部に保持された下塗り液を除いて、塗布ロール190の他の部分に付着した下塗り液を掻き落とす。
これにより、塗布ロール190の被記録媒体Pと接触する部分に保持されている下塗り液は、凹部に保持されている下塗り液のみとすることができる。つまり、被記録媒体Pと接触する下塗り液の量を一定にすることができる。
【0033】
位置決め部194は、位置決めロール195および196を有し、塗布ロール190と接触する位置の被記録媒体Pが所定の位置となるように被記録媒体Pを支持する。つまり、位置決め部194は、塗布ロール190と被記録媒体Pとが接触する位置における被記録媒体Pの搬送経路を所定の位置とする。
位置決めロール195は、被記録媒体Pの画像が形成される面(下塗り液が塗布される面、以下、表面ともいう)とは反対側の面(以下、裏面ともいう)側で、かつ、被記録媒体Pの搬送方向において、搬送ローラ対124と塗布ロール190との間に配置されている。
位置決めロール196は、被記録媒体Pの裏面側で、かつ、被記録媒体Pの搬送方向において、塗布ロール190と後述する下塗り液半硬化部197との間に配置されている。
つまり、位置決めロール195および196は、それぞれ被記録媒体Pを介して塗布ロール190とは反対側に、被記録媒体Pの搬送方向において塗布ロール190を挟むように、つまり、塗布ロール190の上流側と下流側にそれぞれ配置されている。
この位置決めロール195および196は、被記録媒体Pの裏面から被記録媒体Pを支持する。
【0034】
下塗部111は、以上のような構成であり、駆動部191が、塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させる。回転している塗布ロール190の表面は、貯留部193に貯留された下塗り液に浸漬された後、ブレード192と当接し、表面に保持された下塗り液の量を一定量とされた後、被記録媒体Pと接触し、被記録媒体P上に下塗り液を塗布する。このように、塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは逆回転させて、被記録媒体Pに下塗り液を塗布することで、平滑化され、かつ、ムラのない良好な塗布面状の下塗り液の層(以下「下塗り層」ともいう。)を被記録媒体P上に形成することができる。
被記録媒体Pと接触した塗布ロール190は、さらに回転し、再び貯留部193の下塗り液に浸漬される。
このようにして、下塗部111は、塗布ロール190を回転させて、被記録媒体Pの表面に下塗り液を塗布することで、被記録媒体Pの表面に下塗り層を形成する。
【0035】
ここで、塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させることで、被記録媒体P上に面状が改善された下塗り層Uを形成することができる。つまり、被記録媒体P上に表面粗さが小さい下塗り層を形成することができ、これにより高画質な画像を形成することができる。
【0036】
下塗り液半硬化部197は、UVランプを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向して配置されている。ここで、UVランプは、紫外線を射出する光源であり、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等、種々の紫外線光源を用いることができる。
下塗り液半硬化部197は、対向する位置を通過する被記録媒体Pの幅方向の全域に紫外線を照射する。
【0037】
下塗り液半硬化部197は、対向する位置を通過する、表面に下塗り液が塗布された被記録媒体Pに紫外線を照射し、被記録媒体Pの表面に塗布された下塗り液を半硬化状態にする。つまり、下塗り液半硬化部197は、被記録媒体P上に塗布された下塗り液を、半硬化した状態とする。下塗り液が半硬化された状態については、後ほど詳細に説明する。
【0038】
描画部112は、記録ヘッドユニット135と、インク貯蔵/装填部137と、紫外線照射部138とを有する。
記録ヘッドユニット135は、記録ヘッド(以下「インクジェットヘッド」ともいう。)136W,136C,136M,136Yおよび136Kを有し、被記録媒体Pの搬送経路に対向する位置、つまり、インク液滴を吐出する吐出部先端が被記録媒体Pに対向して配置されている。
【0039】
記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kは、それぞれ、吐出部からホワイト(W)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(K)色のインクを吐出するインクジェットヘッドであり、被記録媒体Pの搬送方向の上流から下流に向かって、記録ヘッド136W,記録ヘッド136C,記録ヘッド136M,記録ヘッド136Y,記録ヘッド136Kの順に配置されている。また、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kは、インク貯蔵/装填部137および制御部121に接続されている。
記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kは、図3に示すように、被記録媒体Pの搬送方向に直交する方向の幅が、搬送する被記録媒体Pの最大幅を越える領域にまで複数の吐出部(ノズル)が配置されているフルライン型のインクジェットヘッドである。記録ヘッドの構造は、後ほど詳細に説明する。
【0040】
本実施形態のように、記録ヘッドをフルライン型とすることで、被記録媒体Pと描画部112を記録ヘッドの吐出部の延在方向と直交する方向(副走査方向)に相対的に1度、移動させることで(すなわち1回の走査で)、被記録媒体Pの全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
また、被記録媒体Pを搬送しつつ、各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kからそれぞれ色インクを吐出することにより被記録媒体P上にカラー画像を形成することができる。
【0041】
インク貯蔵/装填部137は、各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンクを有する。
インク供給タンクとしては、例えば、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示せず)からタンク内にインクを補充する方式や、タンクごと交換するカートリッジ方式を用いることができる。
インク貯蔵/装填部137の各インク供給タンクは、図示しない管路を介して各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kと連通されており、各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kにインクを供給する。
【0042】
紫外線照射部138は、活性エネルギ線照射光源で構成され、各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kに対応して、それぞれの記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kの下流側に配置されている。紫外線照射部138としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UVLED、蛍光灯等の種々の紫外線光源を用いることができる。
各紫外線照射部138は、各記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kを対向する位置を通過し、画像が形成された被記録媒体Pに紫外線を照射する。つまり、紫外線照射部138は、記録ヘッドから吐出され被記録媒体P上に乗ったインクが直後に硬化するエネルギを被記録媒体上のインクに与え、被記録媒体P上のインクを半硬化、または硬化させる。
【0043】
ここで、各紫外線照射部138は、射出した紫外線を被記録媒体Pに乗ったインクには照射し、かつ、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kのインクの吐出口には照射しない位置または構成とすることが好ましい。このように、インクの吐出口に紫外線が照射されるのを防止することで、吐出口でインクが硬化することを防止できる。
また、紫外線照射部138近傍の各部には、光反射防止の処置(例えば、つや消しの黒色処理)を施すのが好ましい。
【0044】
メンテナンス部114は、被記録媒体Pの搬送経路を介して記録ヘッドユニット135に対向する位置に配置されている。メンテナンス部114は、被記録媒体Pの画像が形成されない面側(裏面側)で、かつ記録ヘッドユニット135に対向する位置に配置されている。
メンテナンス部114は、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kに対応して複数のメンテナンス装置30が配置されている。
メンテナンス部114と、メンテナンス装置30については、後ほど詳細に説明する。
【0045】
次に、平滑化部116は、被記録媒体Pの搬送方向において、描画部112の下流側に配置され、被記録媒体P表面に透明な活性エネルギ線(本実施形態では紫外線)硬化型液(以下「活性エネルギ硬化型透明液」または、単に「透明液」ともいう。)を供給する透明液供給手段であるニスコータ142と、被記録媒体Pの後述する箔供与範囲を押圧して平滑にする平面加圧部材146と、透明液に活性エネルギ線を照射して硬化させる活性エネルギ照射手段である紫外線照射部148とを有する。
【0046】
ニスコータ142は、一対の塗布ロール144,145を有する。
塗布ロール144,145は、表面に透明液が付着して(含浸されて)おり、搬送手段110により搬送される被記録媒体Pを挟持する位置に配置されている。塗布ロール144,145は、被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの移動に対応して(同期して)回転することで、描画部112を通過し画像が形成された被記録媒体Pの表面(画像が形成されている面)に透明液を塗布する。
【0047】
ここで、ニスコータ142によって塗布される透明液は、紫外線照射により硬化可能な活性エネルギ線硬化型透明液であり、主成分として、少なくとも重合性化合物と光開始剤を含む、例えば、カチオン重合系組成物、ラジカル重合系組成物、水性組成物などである。
【0048】
平面加圧部材146は、被記録媒体Pの搬送方向において、ニスコータ142の下流側に、平滑な表面146aを被記録媒体Pに向けて、上下方向(図に示す矢印方向)に移動可能な状態で配置されている。
平面加圧部材146は、上下方向に移動し、被記録媒体Pと接触して、平滑な表面146aで少なくとも被記録媒体Pの箔供与範囲の表面(画像面)を押圧し、被記録媒体Pの表面に吐出され、画像を形成するインクを平滑にする。
なお、平滑な表面146aは、少なくとも箔供与範囲より大きな面積を有する。
【0049】
紫外線照射部148は、被記録媒体Pの搬送方向において、平面加圧部材146の下流側に配置されている。紫外線照射部148は、活性エネルギ線(本実施形態では、紫外線)を被記録媒体Pに照射して、被記録媒体Pの表面に塗布され且つ平滑化された透明液を硬化させる。紫外線照射部148としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、UV―LEDなどを用いることができる。
【0050】
なお、ニスコータ142および紫外線照射部148は、被記録媒体Pの箔供与範囲を平滑にするための必須装置ではないが、透明液を塗布した方が、良好な平滑面が得られるため設置することが好ましい。
【0051】
箔押し部118は、箔供給ロール150と、箔巻取ロール152と、ローラ154,156と、箔158と、ホットスタンプ版160とを有し、被記録媒体Pの搬送方向において、平滑化部116の下流側に配置されている。
箔供給ロール150と箔巻取ロール152とは、所定間隔離間して配置されている。また、ローラ154とローラ156とは、所定間隔離間して、ローラ154とローラ156を結んだ面が被記録媒体Pの表面と平行となり、かつ、箔供給ロール150と箔巻取ロール152よりも被記録媒体Pに近接した位置に配置されている。また、ローラ154およびローラ156は、被記録媒体Pに非常に近い位置に配置されている。
箔158は、箔供給ロール150から供給され、ローラ154およびローラ156に巻き掛けられた後、箔巻取ロール152に巻き取られるように張架されている。ここで、ローラ154とローラ156との間の箔158は、被記録媒体Pと平行となる。
【0052】
ホットスタンプ版(凸版)160は、ローラ154とローラ156との間で、箔158を介して被記録媒体Pと対向する位置に配置されている。ホットスタンプ版160は、被記録媒体P側の面に箔158と接触し、箔押しする凸版部160aを備え、亜鉛、真鍮等で形成されている。さらに、ホットスタンプ版160は、凸版部160aを加熱する加熱装置と、ホットスタンプ版160を被記録媒体Pに接近または離間する方向に移動させる移動機構とを有する。
ホットスタンプ版160は、被記録媒体Pの搬送を停止させた状態で、加熱した状態の凸版部160aを箔158を介して被記録媒体Pと接触させ、押圧することにより、凸版部160aの形状に従って、箔158を被記録媒体P上に加熱圧着する、すなわち、箔押し処理を施す。箔押しが終了したら、次に箔押し処理が施される被記録媒体Pの領域が、凸版部160aに対向する位置に到達するまで、被記録媒体Pが搬送される。つまり、箔押し部116では、被記録媒体Pは間欠搬送される。
【0053】
ここで、本実施形態では、平滑化部116と箔押し部118との間に、搬送バッファが設けられている。
搬送バッファを設けることで、箔押し部118の上流に配設される平滑化部116と、被記録媒体Pを間欠搬送して箔押しを行う箔押し部118との搬送速度の差によって生じる連続紙状の被記録媒体Pの弛みを吸収することができ、効率よくラベルを製造することができる。
【0054】
ラベル抜き部120は、被記録媒体Pの搬送方向において、紫外線照射部164の下流側に配置されており、活性エネルギ線硬化型透明液(本実施形態では、紫外線硬化型透明液)を画像面に塗布して光沢を改善するためのニスコータ162および紫外線照射部164と、連続紙状の被記録媒体Pにラベル形状の切れ目を入れるダイカッタ166と、不要部剥離部であるカス取り部172とを有する。
【0055】
ニスコータ162は、被記録媒体Pの搬送方向において、箔押し手段118の下流側に配置されている。
ニスコータ162は、その表面に紫外線硬化型透明液が付着した(含浸された)一対の塗布ロールを有し、被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの移動に対応して(同期して)回転することで、箔押しされた被記録媒体Pの表面(画像が形成されている面)に紫外線硬化型透明液を塗布する。
紫外線照射部164は、被記録媒体Pの搬送方向において、ニスコータ162の下流側に配置されている。紫外線照射部164は、活性エネルギ線(本実施形態では、紫外線)を被記録媒体Pに照射して、被記録媒体Pの表面に塗布された紫外線硬化型透明液を硬化させる。
被記録媒体Pの表面に紫外線硬化型透明液を塗布し、硬化することで、被記録媒体Pの画像面に光沢を付与することができ、また、画像面を保護することができ、画像品質を向上することができる。
【0056】
ダイカッタ166は、図2に示すように、印刷された連続紙状の被記録媒体Pの粘着シート180のみに、所望のラベル形状の切れ目180bを入れるものであり、被記録媒体Pの搬送方向において、紫外線照射部164の下流側に配置され、被記録媒体Pの画像面側に配置されたシリンダカッタ168と、被記録媒体Pを挟んでシリンダカッタ168の反対側に配置された受けローラ170とを有する。
シリンダカッタ168は、円筒形状のシリンダ168aと、シリンダ168aの円筒面上に巻き付けられ、ラベル状に形成された複数の切抜き刃168bとで構成される。
【0057】
ダイカッタ166は、シリンダカッタ168と受けローラ170とで被記録媒体Pを挟持しつつ、被記録媒体Pの搬送速度に同期して間欠的に揺動回転することにより、切抜き刃168bが被記録媒体Pの粘着シート180のみにラベル形状の切れ目を入れる。
【0058】
ここで、ダイカッタ166が間欠的に揺動回転するのは、シリンダ168aの円筒面の円周方向長さと、必要とされる切抜き刃168bの長さとの不一致により生じる問題を解消するためである。即ち、ダイカッタ166を連続回転させてラベル形状の切れ目180bを入れると、シリンダカッタ168の切抜き刃168bがない部分に対応する被記録媒体Pも空送りされて、被記録媒体Pが無駄になる。しかし、ダイカッタ166を揺動回転させることにより、切れ目180bを連続して形成させることができ、被記録媒体Pの無駄をなくすことができる。
【0059】
カス取り部172は、ラベル(製品)Lとならない粘着シート180の不要部分(ラベルLの周辺部)を、剥離紙182から剥離させて巻き取る。
不要部分が巻き取られた被記録媒体P、つまり、ラベルLのみが剥離紙182に貼付された状態の被記録媒体Pは、製品巻取部134に巻き取られて製品とされる。
【0060】
以下、描画部112の記録ヘッドユニット135およびメンテナンス部114について詳細に説明する。
まず、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kの構造について詳細に説明する。ここで、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kは、吐出するインクの色を除いて、構成は同一であるので、以下、代表して記録ヘッド136Kについて説明する。
【0061】
図4(A)は、記録ヘッド136Kの概略構成を示す正面図であり、図4(B)は、図4(A)のB−B線断面図である。
これらの図に示すように、記録ヘッド136Kは、複数のインクジェットヘッドユニット(以下、ヘッドユニットとする)70と、支持フレーム72と、アライメント調整機構74を有し、各ヘッドユニット70がアライメント調整機構74を介して支持フレーム72に配置されている。なお、本実施形態では、記録ヘッド136Kは、4つのヘッドユニット70を有する。
ヘッドユニット70は、一方向に配列した複数のノズル16の先端開口16a(吐出口)からインクを液滴を吐出するものであり、詳細については後に説明する。
【0062】
支持フレーム72は、被記録媒体の搬送方向と直交する方向(すなわち、被記録媒体の幅方向)を長手方向として被記録媒体の搬送経路と対向して配置され、複数のヘッドユニット70(本実施形態では4つのヘッドユニット70)を被記録媒体の搬送経路に向けて支持する部材である。
支持フレーム72は、並列する2つの溝部76および77を形成するように、長手方向に平行に3列に配設される平板状部材72a、72bおよび72cと、これらの平板状部材72a、72bおよび72cの幅方向の一方の端面を固定する板状支持部材72dと、平板状部材72a、72bおよび72cの長手方向の両端面を固定する側面固定部材72eおよび72fとを備えている。平板状部材72bは、平板状部材72aと72cとの間に平行に、2つの溝部76と77とを隔てる隔壁として配設され、図示例では、その厚みが平板状部材72aと72cより薄くなっている。
【0063】
平板状部材72a、72bおよび72cによって形成される2つの溝部76および77において、4つのヘッドユニット70が、それぞれ、アライメント調整機構74を介して板状支持部材72dに取り付けられている。なお、これらの2つの溝部76および77においては、4つのヘッドユニット70は、そのノズル16(先端開口16a)の配列方向と支持フレーム72の長手方向(溝部76、77の延在方向)とを一致させて、支持フレーム72の長手方向において溝部76および溝部77に交互に配置される。図示例においては、溝部76に配置されたヘッドユニット70の一方の端部と、これに隣接する溝部78に配置されたヘッドユニット70の他方の端部とが、長手方向において部分的に重なるように配置される。
【0064】
ここで、アライメント調整機構74は、ヘッドユニット70の位置および/または角度を調整した後に、ヘッドユニット70を固定することにより、複数のヘッドユニット70間の相対位置を調整するものである。アライメント調整機構74は、複数のヘッドユニット70間の相対位置を調整して、ノズルの配列方向におけるインクの打滴位置を調整する、すなわち、アライメント調整を行う。アライメント調整機構74は、ヘッドユニット70の位置調整を手動で行うものでも良いし、自動で行うものであっても良い。
このようなアライメント調整機構74としては、例えば、各ヘッドユニット70毎に配置された台座にヘッドユニット70を角度変更可能に軸支し、この台座をボールネジ等を用いた移動手段で配列方向や配列方向と直交する方向に移動可能に支持フレームに配設したものが挙げられるが、これに限定されず各種の機構を用いることができる。
【0065】
支持フレーム72の両側の平板状部材72a、72bおよび72cには、その被記録媒体の搬送経路側の端面の長手方向の両端および中間位置において、それぞれ凹部78が形成されている。この凹部78は、図示例では、長手方向と直交する方向の断面がV字形状の溝である。凹部78は、後述する除去手段の突き当て部材の先端部が当接してその形状が一致する。この点については後に説明する。
このように構成された記録ヘッド136Kは、ヘッドユニット70の先端開口16aの配列方向を被記録媒体の幅方向とを一致させ、ヘッドユニット70の先端開口16aが形成された側の面を被記録媒体の搬送経路に向けて配置される。
【0066】
本実施形態のように、複数のヘッドユニット70を2列に交互に配置することにより、複数のヘッドユニット70を配置した場合でも、先端開口の配列方向において全先端開口の間隔を略均一とすることができる。
また、本実施形態では、上述のように、ヘッドアライメント調整機構74を介して、ヘッドユニット70を配設することにより、ヘッドユニット70の位置を調整して、ヘッドユニット70の配列方向における隣接するヘッドユニット70の境界においても、先端開口16aの間隔を均一もしくは略均一とすることができる。こうして、隣接するヘッドユニット70間において発生する位置ずれを防止し、位置ずれによって記録画像のすじむらなどの欠陥の発生を防止することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、記録ヘッド136Kは、2つの溝部に2列にわたって交互にヘッドユニット70を配置したが、これに限定されず、3列以上の複数列にわたってヘッドユニットを配置してもよく、また、複数のヘッドユニットを1列に配置してもよい。
【0068】
図5(A)は、ヘッドユニット70の概略構成を示す側面図であり、図5(B)は、ヘッドユニット70の吐出部12(先端開口16a)の配置パターンを示す底面図であり、図5(C)は、図5(A)のヘッドユニット70の吐出部の概略構成を示すC−C線断面図である。
【0069】
ヘッドユニット70は、図5(A)および(B)に示すように、ヘッド基板13およびノズルプレート14から構成され、インク液滴を吐出させる複数の吐出部12(先端開口16a)が、一定間隔で列状に形成されている。ここで、ヘッド基板13およびノズルプレート14は、それぞれ、複数の吐出部12に共通の板状部材である。ヘッド基板13には、インク液滴を吐出させる吐出手段となる複数のアクチュエータ24(図5(C)参照)が形成され、ノズルプレート14は、ヘッド基板13の複数のアクチュエータ24のそれぞれに対応する複数の先端開口(以下、ノズルともいう)16aが形成されている。ノズルプレート14は、その複数のノズル16が、それぞれヘッド基板13の複数のアクチュエータ24の各々に対応するように、貼り付け等によりヘッド基板13上に取り付けられる。
ヘッド基板13およびノズルプレート14としては、樹脂材料、高分子材料、ガラス、シリコン等の種々の材料を用いることができる。
【0070】
以下、1つの吐出部12について説明する。
吐出部12は、図5(C)に示すように、ヘッド基板13に形成された複数の吐出部12に共通な共通流路22およびアクチュエータ24と、アクチュエータ24に対応してノズルプレート14表面に形成され、被記録媒体Pと対向する先端開口16aに連通するノズル16とを有する。
【0071】
ノズル16は、図5(C)に示すように、ヘッド基板13のアクチュエータ24に対応してインク液滴を吐出する管状部材であり、一方の開口がヘッド基板13の表面に形成され、被記録媒体Pと対向しており、他方の開口が共通流路22に接続している。このノズル16のヘッド基板13の表面に形成された開口が先端開口16aとなる。
ノズル16は、先端開口16a側の一部が、先端開口16aに向かうに従って径が小さくなる形状である。
共通流路22は、図5(A)に示すように、ヘッド基板13の内部に形成され、複数の吐出部12のノズル16と接続し、さらに、供給配管61を介してインクタンク60とも接続している。
【0072】
次に、アクチュエータ24は、ヘッド基板13の、ノズル16の先端開口16aと対抗する位置に配置され、加圧板26と、個別電極28とを有する。
このアクチュエータ24は、個別電極28に駆動電圧を印加することで、加圧板26が変形し、ノズル16内のインクを先端開口16aからインク液滴として吐出する。
【0073】
ここで、供給配管61を介してヘッド基板13内の共通流路22と接続されているインクタンク60は、上述したインク貯蔵/装填部137の一部であり、記録ヘッド136Kにインクを供給する。
また、インクタンク60と記録ヘッド136Kとを接続している供給配管61には、フィルタ62と、メンテナンス部114のインク加圧機構64および電磁弁66とが配置されている。
フィルタ62は、インクタンク60から記録ヘッド136Kに供給されるインクに混入している異物や気泡を除去する。フィルタ62としては、メッシュサイズを、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一例としては、20μm以下)とすることが好ましい。
インク加圧機構64および電磁弁66については、後ほど説明する。
【0074】
吐出部12のインク吐出方法について説明する。
まず、インクタンク60からインクが供給される。
インクタンク60から供給されたインクは、共通流路22を通過し、ノズル16に充填される。
ノズル16にインクが満ちている状態で、個別電極28に駆動電圧が印加されると、加圧板26が変形し、ノズル16のインクが加圧されて、ノズル16の先端開口16aからインクが吐出される。つまり、アクチュエータ24を駆動させることでノズル16の先端開口16aからインク液滴が吐出される。
また、ノズル16からインク液滴が吐出されると、ノズル16内に負圧が生じ、共通流路22からインクが供給される。
このように、描画部112は、ノズル16の先端開口16aからインク液滴を吐出することにより被記録媒体P上に画像を形成する。
【0075】
なお、ヘッドユニット70は、ノズルと共通流路とが直接接続され、ノズル内にアクチュエータが配置されるとしたが、これに限定されない。例えば、ヘッドユニットは、ノズルと共通流路とが圧力室を介して接続され、この圧力室にアクチュエータが配置され、アクチュエータでノズルおよび圧力室内のインクを加圧することにより、ノズル内のインクを加圧して先端開口からインク液滴を吐出するようにしてもよい。
【0076】
次に、メンテナンス部114について詳細に説明する。
図6は、描画部112の記録ヘッドユニット135の記録ヘッド136Kとメンテナンス部114のメンテナンス装置30との概略構成を示す斜視図である。
【0077】
メンテナンス部114は、上述したように複数、本実施形態では5つのメンテナンス装置30を有し、メンテナンス装置30は、それぞれ記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kに対応して配置されている。
各メンテナンス装置30は、同一の機能、形状であるので、代表して記録ヘッド136Kに対向する位置に配置されているメンテナンス装置30について説明する。
【0078】
メンテナンス装置30は、図6に示すように、記録ヘッド136Kのヘッドユニット70のノズルプレート14の先端開口16aが形成されている面(以下「ノズルプレート14の吐出面」ともいう。)に対向して配置されている。つまり、メンテナンス装置30は、記録ヘッド136Kの被記録媒体Pの搬送経路側に配置されている。
【0079】
ここで、図7は、図6に示したメンテナンス装置30の概略構成を示す断面図であり、図8は、記録ヘッド136Kのヘッドユニット70とメンテナンス装置30の除去ユニット80との概略構成を示す側面図であり、図9は、図7に示した吸引部材の形状を示す概略斜視図である。
メンテナンス装置30は、図7に示すように、除去手段32と、除去機構移動手段34とを有する。
また、除去手段32は、複数の除去ユニット80と、支持板82と、複数の突き当て部材84とを有する。また、除去手段32は、図7には示していないが、インク加圧機構64と、電磁弁66(図5参照)とを有する。ここで、本実施形態では、除去手段32は、4つの除去ユニット80を有する。なお、除去手段32、除去機構移動手段34、インク加圧機構64および電磁弁66は、それぞれ制御部121(図1参照)と接続しており、制御部121により各種動作が制御されている。
【0080】
除去ユニット80は、それぞれ、ヘッドユニット70に対向する位置で保持部材86に保持されて支持板82に配置され(図8参照)、各ヘッドユニット70のヘッド面に付着したインク等の付着物を除去するものである。
【0081】
除去ユニット80は、第1吸引部材36と、第2吸引部材37と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48とを有する。
第1吸引部材36は、図7に示すように、ヘッドユニット70の吐出面に対向して配置され、吐出面側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、第1吸引部材36は、吐出面側の先端にスリット38が形成されており、スリット38が形成されている面とは反対側の面(対向する面)の一部に接続管40が設けられている。
【0082】
第2吸引部材37は、ヘッドユニット70吐出部12に対向し、かつ、第1吸引部材36に対して先端開口16aの配列方向に直交する方向に並列配置されている。
第2吸引部材37は、第1吸引部材36と先端開口16aの配列方向に平行かつノズルプレート14の吐出面に直交する面を軸として、対称な形状である。つまり、第2吸引部材37は、ヘッドユニット70の吐出面に対向して配置され、吐出面側の一部が吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、第2吸引部材37も、吐出面側の先端にスリット39が形成されており、スリット39が形成されている面とは反対側の面(対向する面)の一部に接続管41が設けられている。
【0083】
ここで、第1吸引部材36のスリット38と第2吸引部材のスリット39とは、先端開口16aの配列方向と直交する方向に互いに離間して配置されている。
また、第1吸引部材36のスリット38は、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、先端開口16aの一方の端部に対向する位置に配置され、第2吸引部材37のスリット39は、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、先端開口16aの他方の端部に対向する位置に配置されている。つまり、2つのスリット38、39は、それぞれ先端開口16aの両端部に対向して配置されている。すなわち、スリット38は、その開口が先端開口16aの一方の端部を挟む位置に配置されており、スリット39は、その開口が先端開口16aの他方の端部を挟む位置に配置されている。
【0084】
また、第1吸引部材36および第2吸引部材37は、図9に示すように、記録ヘッド136Kの長手方向、つまり先端開口16aの配列方向の任意の位置における断面形状が、一部にチューブ45と接続する接続管40、41が形成されている点を除いて略同一形状である。
スリット38およびスリット39は、列状に配置された複数の先端開口16aに対向して配置されている。
【0085】
チューブ45は、一方の端部が2つに分岐した三方管(チューブ)であり、分岐した2つの端部が接続管40、41と接続し、他方の端部が吸引ポンプ48とも接続している。つまり、チューブ45は、第1吸引部材36、第2吸引部材37と吸引ポンプ48とを連通させる。なお、本実施形態では、チューブ45は、複数の除去ユニット80それぞれに対して設けられ、1つのインクトラップ機構46を介して1つの吸引ポンプ48に接続されるが、これに限定されない。例えば、チューブ45は、一端が1対のインクトラップ機構46および吸引ポンプ48に接続され、他端が複数に枝分かれして各除去ユニット80に接続されるものでもよい。また、各除去ユニット80のそれぞれに、チューブ45、インクトラップ機構46および吸引ポンプ48を設けてもよい。
【0086】
吸引ポンプ48は、真空ポンプ、エアーポンプ等の空気を吸引するポンプであり、チューブ45を介して、第1吸引部材36内および第2吸引部材37内の空気を吸引し、第1吸引部材36の内部および第2吸引部材37の内部を負圧にする。
【0087】
このように構成された複数の除去ユニット80は、ヘッドユニット70に対向する位置で保持部材86に保持されて、記録ヘッド136Kに対向する支持板82の記録ヘッド136K側の面に設置される。
保持部材86は、第1吸引部材36および第2吸引部材37を一体的に保持して支持板82上に配置する筒状の部材である。保持部材86は、記録ヘッド136K側の端部が開口し、支持板82側の端部が支持板82に接続する。
【0088】
図6に示すように、複数の除去ユニット80のそれぞれが、複数のヘッドユニット70のそれぞれに対向する位置で、ヘッドユニット70の先端開口の配列方向と第1吸引口および第2吸引口の長手方向とが一致するように支持板82上に配置されている。
すなわち、複数の除去ユニット80は、スリット38,39の長手方向と直交する方向に2列に配置され、各列間で吸引口の長手方向に交互に配置される。
【0089】
なお、支持板82は、各除去ユニット80の接続管40、41を貫通させる開口が形成される。除去ユニット80の接続管40、41は、支持板82のヘッドユニット70が配置される側とは反対側でチューブ45に接続される。
【0090】
突き当て部材84は、支持フレーム72の凹部78と対向する位置に、本実施形態では、支持板82の記録ヘッド136K側の面の、支持板82の角、各辺の中間部、および中央部に配置され、支持フレーム72に向かって支持板82に直交する方向に延在する柱状の部材である。突き当て部材84の先端部は、支持板82から離れるにしたがって、長手方向と直交する方向の幅が短くなる形状である。
【0091】
ここで、図6(B)に示すように、各突き当て部材84は、支持フレーム72に形成された対応する凹部78に当接する。このとき、突き当て部材84の先端は、凹部78と一致する形状である。
突き当て部材84は、対応する除去ユニット80とヘッドユニット70とが対向し、かつ、非接触となるように、除去ユニット80が配置された支持板82を支持フレーム72に対して位置決めする。
すなわち、除去手段32は、複数の除去ユニット80が対応するヘッドユニット70に対向し、かつ、除去ユニット80の記録ヘッド136K側の端部が対応するヘッドユニットに接触しない(非接触となる)位置に、支持フレーム72を基準として位置決めされる。
【0092】
除去手段32は、このような構成であり、各除去ユニット80の第1吸引部材36のスリット38からスリット38の周囲の空気を吸引部材36内部に吸引することで、スリット38に対向する位置のヘッドユニット70のノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引し、第2吸引部材37のスリット39からスリット39の周囲の空気を第2吸引部材37内部に吸引することで、スリット39に対向する位置のノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れ(付着物)を吸引する。この点については、後ほど詳細に説明する。
【0093】
インクトラップ機構46は、第1吸引部材36および第2吸引部材37と、吸引ポンプ48との間のチューブ45に配置されている。インクトラップ機構46は、吸引ポンプ48が空気を吸引することにより、スリット38および39から吸引され、チューブ45内を通過する空気に混入している異物、例えば、インク、ゴミ等を除去し、吸引ポンプ48に異物が付着、混入することを防止する。
【0094】
次に、除去機構移動手段34は、支持台50と、ドライブスクリュ52と、ガイドレール54と連結体56とを有し、第1吸引部材36、第2吸引部材37および支持体42をノズルプレート14の吐出面に対して直交する方向(図7中矢印Y方向)に移動させる。
したがって、除去機構移動手段34は、除去手段32と記録ヘッド136Kとを近接、離隔させることができ、第1吸引部材36および第2吸引部材37をノズルプレート14の吐出面と所定距離離間した待機位置から、ノズルプレート14に近接した位置まで移動させる。
【0095】
支持台50は、図示しない筐体等の所定位置に固定されている。
ドライブスクリュ52は、雄ねじ部を持つボールねじであり、ノズルプレート14の吐出面に対して直交する方向が軸方向となる向きで、支持台50に回転自在に支持されている。
ドライブスクリュ52は、支持台50の内部に配置された駆動部(図示せず)により、回転される。
ガイドレール54は、ドライブスクリュ52に隣接して、かつ、ドライブスクリュ52と平行に支持台50に配置されている。
連結体56は、ボルトネジ等の固定部材、または接着剤等により支持板82と接合している。この連結体56は、雌ねじ部および穴部を有し、雌ねじ部にドライブスクリュ52が螺合され、穴部にガイドレール54が貫通されている。
連結体56は、ドライブスクリュ52が回転することで、吐出面に対して直交する方向に移動される。また、連結体56は、ガイドレール54が貫通されているため、向きを変えることなく移動される。
【0096】
除去機構移動手段34は、ドライブスクリュ52を回転させることで、連結体56をノズルプレート14の吐出面に対して直交する方向に移動させる。このように連結体56を移動させることで、支持板82および支持板82により支持されている除去ユニット80の第1吸引部材36および第2吸引部材37も、支持フレーム72に配置されるヘッドユニット70のノズルプレート14の吐出面に対して直交する方向に移動される。
除去機構移動手段34は、このようにして、第1吸引部材36および第2吸引部材37を、吐出部12に対して離接させることができる。つまり、第1吸引部材36のスリット38および第2吸引部材37のスリット39と、吐出部12の先端開口16aとの距離を調整することができる。
このように除去手段32を移動させることで、メンテナンス装置30の使用時は、第1吸引部材36および第2吸引部材37を記録ヘッド136Kのヘッドユニット70に近接させ、使用しない時は、第1吸引部材36および第2吸引部材37を記録ヘッド136Kのヘッドユニット70から離すことで、具体的には、第1吸引部材36および第2吸引部材37を被記録媒体Pの搬送経路よりも記録ヘッド136から離すことで、ラベル作成時にメンテナンス装置30が被記録媒体Pの搬送および被記録媒体Pへの画像描画に影響を与えること、つまり、被記録媒体Pの搬送および被記録媒体Pへの画像描画の障害となることを防止できる。
なお、本実施形態では、ドライブスクリュ等を用いて除去手段を移動させたが、その移動手段は、特に限定されず、例えば、エアシリンダ機構、ダイレクト機構等も用いることができる。
【0097】
次に、インク加圧機構64は、圧縮ポンプ等の加圧手段であり、記録ヘッド136aの各吐出部12にインクを供給する供給配管61に配置されている。
インク加圧機構64は、供給配管61内のインクを加圧することで、記録ヘッド136Kの各吐出部12の先端開口16aからインクを排出させる。
【0098】
電磁弁66は、供給配管61のインク加圧機構64よりもインク流れ方向に上流側に配置されている。つまり、電磁弁66は、インクタンク60とインク加圧機構64との間の供給配管61に配置されている。
このように供給配管61に電磁弁66を設け、インク加圧機構64による供給配管61内のインクの加圧時に供給配管61を封止することで、供給配管61内のインクがインクタンク60に逆流することを防止できる。
これにより、先端開口16aから所望の量のインク液滴を排出させることができる。
なお、電磁弁は、本実施形態に限定されない。例えば、電磁弁を三方弁とし、供給配管61とインク加圧機構64との連結部に設け、必要に応じて、ヘッドユニット70とインク加圧機構64とが連通している状態と、ヘッドユニット70とインクタンク60とが連通している状態とを切り換えるようにしてもよい。
デジタルラベル印刷装置100は、基本的に以上のような構成である。
【0099】
次に、デジタルラベル印刷装置100によりラベルを作成する方法を説明する。
ここで、図10(A)は、画像面に凹凸がある被記録媒体の要部を示す断面図であり、図10(B)は、平滑化せずに箔押しされた被記録媒体の要部を示す断面図であり、図10(C)は、平滑化部により凹凸を平滑化して箔押した被記録媒体の要部を示す断面図である。
図1に示すように、ロール状に巻かれた供給ロール122から送り出された被記録媒体Pは、搬送部110(搬送ローラ対124,126)により、下塗部111に搬送される。
【0100】
搬送部110により下塗部111に搬送された被記録媒体Pは、下塗部111の塗布ロール190と接触し、表面に下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成される。
ここで、塗布ロール190は、駆動部191により被記録媒体Pの搬送方向と逆方向に回転させられている。すなわち、駆動部191は、塗布ロール190を、塗布ロール190と被記録媒体Pとの接触位置における、塗布ロール190表面の移動方向と、被記録媒体Pの移動方向とが逆方向となる方向に回転させている。
【0101】
下塗り液が塗布され、下塗り層Uが形成された被記録媒体Pは、搬送部110の搬送ロール対124、126によりさらに搬送され、下塗り液半硬化部197に対向する位置を通過する。
下塗り液半硬化部197は、対向する位置を通過する下塗り液が塗布された被記録媒体Pに紫外線を照射し、被記録媒体P上の下塗り層Uを半硬化させる。半硬化については後ほど詳述する。
【0102】
下塗り層が形成された被記録媒体Pは、搬送部110の搬送ローラ対124、126により描画部112に搬送される。
【0103】
記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kは、制御部121による制御に基づいて、対向する位置を通過する被記録媒体Pに紫外線硬化型インクのインク液滴を吐出する。インクが吐出された被記録媒体Pは、さらに搬送され、紫外線照射部138に対向する位置を通過し、紫外線が照射され、インクが半硬化、または硬化される。
つまり、被記録媒体Pは、記録ヘッド136W,136C,136Mおよび136Yに対向する位置の通過時に、記録ヘッド136W,136C,136Mおよび136Yから被記録媒体Pに向け、インク液滴が吐出され、その後、紫外線照射部138から紫外線が照射され、被記録媒体P上に着弾した各インクが半硬化される。さらに、被記録媒体Pは、記録ヘッド136Kを対向する位置の通過時に、記録ヘッド136Kから被記録媒体Pに向けてインク液滴が吐出され、その後、紫外線照射部138から紫外線が照射され、被記録媒体P上に着弾した全てのインクおよび下塗り液を硬化させる。
これにより、被記録媒体Pの表面に画像が形成される。
【0104】
画像記録された被記録媒体Pは、平滑化部116に搬送され、ニスコータ142により、図10(A)に示すように、被記録媒体P上に形成された画像184の全体を覆うように厚さ5〜30μm程度(乾燥膜厚)の透明液186が塗布される。
【0105】
透明液186が塗布された被記録媒体Pは、平面加圧部材146に対向する位置に搬送される。平面加圧部材146は、被記録媒体Pに近づく方向に移動し、平滑な表面146aにより被記録媒体Pを押圧する。平滑な表面146aで被記録媒体Pを押圧することで、被記録媒体P上のインクは押し潰される。これにより、被記録媒体P上のインク(画像)は、平滑になる。ここで、平面加圧部材146の平滑な表面146aの面積は、箔供与範囲よりも大きい。
【0106】
画像が平滑化された被記録媒体Pは、搬送バッファ経由し、箔押し部118に搬送される。箔押し部118に搬送された被記録媒体Pは、箔158を介してホットスタンプ版160により押圧される。ホットスタンプ版160により押圧された被記録媒体Pには、その表面上にホットスタンプ版160の凸版部160aの形状に従って箔158が加熱圧着される。
【0107】
箔158が加熱圧着された、つまり箔押しされた被記録媒体Pは、ラベル抜き部120に搬送されて、ニスコータ162により紫外線硬化型透明液が塗布され、その後、紫外線照射部164により紫外線が照射されて塗布された紫外線硬化型透明液が硬化される。
【0108】
紫外線硬化型透明液が硬化された被記録媒体Pは、ダイカッタ166に搬送され、シリンダカッタ168と、受けローラ170によって粘着シート180にのみラベルLの形状に切れ目180bが入れられる。
このとき、ダイカッタ166は、上述したように、間欠的に揺動しながらラベルLの形状の切れ目180bを入れるので、切れ目180bを連続して形成することができ、被記録媒体Pに無駄になる部分が発生することはない。
その後、被記録媒体Pの粘着シート180のラベルL以外の不要部分は、剥離紙182から剥離されてカス取り部172によって巻き取られる。ラベルLのみが剥離紙182上に貼付された状態の被記録媒体Pは、製品巻取部134に巻き取られて製品となる。
以上のようにして、ラベルが作成される。
【0109】
ここで、図10(A)に示すように、被記録媒体Pの画像面は、硬化した複数色のインク184が重なり合って盛り上り、立体的になっている。インクの盛上り高さは、被記録媒体Pのインク吸収性によっても異なるが(吸収性が低いほど高くなる)、一色あたり略10μm程度であり、一箇所の多色のインクが使用された場合には、略40μmとなる場合もある。そして、被記録媒体Pの画像面は、凹凸となっている。この凹凸は、被記録媒体Pの画像面に箔押しするとき、箔158と被記録媒体P(より詳細には、被記録媒体P上のインク184)との密着性に大きな影響を与える。
【0110】
つまり、図10(B)に示すように、箔供与範囲が平滑化されていない画像面(換言すれば、描画部112において紫外線硬化型インクが吐出、硬化されたままの状態)に箔押しすると、箔158は凹凸の山部分にのみ加熱圧着され、谷部分には圧着されていない状態となる。即ち、箔158と被記録媒体Pとの密着度は低く、剥がれやすい。
【0111】
これに対して、本実施形態は、平面加圧部材146によって予め箔供与範囲を平滑化した後に、被記録媒体Pに箔押しする。これにより、図10(C)に示すように、箔158を広い面積の平滑な面に加熱圧着することができ、被記録媒体Pと箔158との密着度が高く剥がれ難い箔押しを行うことができる。
【0112】
つまり、本実施形態のデジタルラベル印刷装置100によれば、箔押し部118の上流に被記録媒体P上の少なくとも箔供与範囲のインク184、透明液186を平面加圧部材146により平滑にする平滑化部116を配置することで、平滑化部116により平滑にされた範囲に箔158を供与して箔押しすることができる。
これにより、被記録媒体Pと箔158との密着度を向上させて良好な箔押し印刷を行うことができる。また、平面加圧部材146により平滑にするので、短時間で平滑化することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0113】
また、平滑化部116に、被記録媒体P上の画像面に透明な活性エネルギ線硬化型液を供給する透明液供給手段(ニスコータ)142と、供給後の活性エネルギ線硬化型液(透明液)に活性エネルギ線を照射する活性エネルギ線照射手段(紫外線照射部)148とを設け、画像面表面を透明な活性エネルギ線硬化型液で覆って平滑化することで、画像面が大きな凹凸を有していても、平面度の良好な箔供与範囲を形成することができる。
【0114】
更に、透明液供給手段としてニスコータを用いることで、簡単且つ安価な機構で、凹凸のある画像が形成された被記録媒体Pの表面に安定して透明液186を塗布することができる。
【0115】
ここで、ニスコータ162および紫外線照射部164による紫外線硬化型透明液の膜の形成は、画像面に光沢を付与して高画質の画像とするのが目的であるので必ずしも必要ではなく、光沢付与が不要の場合、紫外線硬化型透明液の膜の形成を行わないように設定することもできる。
【0116】
また、被記録媒体上に下塗り層を形成することで、被記録媒体上に着弾したインク液滴が被記録媒体にしみ込み、画像ににじみが生じることを防止でき、高画質な画像を形成することが可能となる。また、インク液滴との密着性が低い、つまり、着弾したインク液滴をはじいてしまう被記録媒体も用いることが可能となる。言い換えれば、種々の被記録媒体への画像記録が可能となる。
【0117】
次に、下塗り液及びインク液の半硬化について説明する。
本発明において、「半硬化」とは、部分的な硬化(partially cured; partial curing)を意味し、下塗り液および/またはインク液(つまり、着色液)が部分的に硬化しているが完全に硬化していない状態をいう。なお、被記録媒体(基材)P上に塗布された下塗り液または下塗り液上に吐出されたインク液が半硬化している場合、硬化の程度は不均一であってもよく、下塗り液および/またはインク液は深さ方向に硬化が進んでいることが好ましい。ここで、本実施形態において、半硬化させる下塗り液は、下塗り層を形成している下塗り液であり、半硬化させるインク液は、下塗り層または被記録媒体に着弾しインク層を形成するインク液滴である。
【0118】
例えば、空気中または部分的に不活性ガスで置換した空気中で、ラジカル重合性の下塗り液またはインク液を硬化させると、酸素のラジカル重合抑制作用のために、下塗り液またはインク液の表面においてラジカル重合が阻害される傾向がある。この結果、半硬化は不均一となり、下塗り液またはインク液の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
【0119】
本発明において、ラジカル光重合性の下塗り液またはインク液を、ラジカル重合抑制的な酸素の共存下で使用して、部分的に光硬化することで、下塗り液および/またはインク液の硬化度は外部よりも内部の方が高くすることができる。
【0120】
また、湿気を有する空気中で、カチオン重合性の下塗り液またはインク液を硬化させる場合にも、水分のカチオン重合阻害作用があるために、下塗り液またはインク液の内部でより硬化が進行し、表面の硬化が遅れる傾向となる。
このカチオン重合性の下塗り液またはインク液を、カチオン重合阻害作用がある湿度条件下で使用して、部分的に光硬化することでも、下塗り液および/またはインク液の硬化度は外部よりも内部の方が高くすることができる。
【0121】
このように、下塗り液またはインク液を半硬化させ、半硬化の状態の下塗り液上にインク液を打滴させる、または、半硬化の状態のインク液上にこれとは色相の異なるインク液を打滴させると、得られる印刷物の品質に好ましい技術的効果を得ることができる。また、その作用機構を印刷物の断面観察により確認できる。
【0122】
以下、下塗り液(つまり、下塗り液で被記録媒体上に形成された下塗り層)の半硬化について、詳細に説明する。なお、以下では、被記録媒体P上に設けられた、厚さが約5μmの厚さの半硬化状態の下塗り液上に約12pLのインク液(つまり、インク液滴)を打滴した場合の高濃度部分を一例として説明する。
図11は、半硬化された下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図12(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図12(C)は、完全に硬化させた状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【0123】
本発明によれば、下塗り液は半硬化されることで、被記録媒体P側の硬化度が表面層の硬化度よりも高くなる。この場合には、3つの特徴が観察される。すなわち、図11に示すように半硬化された下塗り液Uにインク液dを打滴すると、(1)インク液dの一部は、下塗り液Uの表面に出ている、(2)インク液dの一部は下塗り液Uに潜り込んでいる、かつ、(3)インク液dの下側と被記録媒体Pの間には下塗り液が存在する。
このように、下塗り液にインク液を打滴した時、下塗り液とインク液とが上記の(1)、(2)及び(3)の状態を満たす場合には、下塗り液が半硬化状態であると言える。
下塗り液を半硬化させること、つまり、上記の(1)、(2)及び(3)を満たすように下塗り液を硬化させることで、高密度に打液されたインク液の液滴(つまり、インク液滴)が相互に繋がってインク液の膜層(つまり、インク液膜、インク層)を形成し、均一で高い色濃度を与える。
【0124】
これに対して、未硬化状態の下塗り液にインク液を打滴した場合は、図12(A)に示すようにインク液dの全部が下塗り液Uに潜り込むか、および/または、図12(B)に示すようにインク液dの下層には下塗り液Uが存在しない状態となる。
この場合は、高密度にインク液を付与しても、液滴同士が独立するため、色濃度が低下する原因となる。
【0125】
また、完全に硬化した下塗り液にインク液を打滴した場合は、図12(C)に示すように、インク液dは下塗り液Uに潜り込まない状態となる。
この場合は、打滴干渉の発生し、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性を高くすることができない(つまり色再現性の低下を招く)。
【0126】
ここで、高密度にインク液の液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液の膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりの下塗り液(つまり下塗り層)の未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液の最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、下塗り液層の未硬化部の単位面積当たりの重量M(M(下塗り液)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量m(m(インク液)ともいう。)との関係は、(m/30)<M<mを満たすことが好ましく、(m/20)<M<(m/3)を満たすことがさらに好ましく、(m/10)<M<(m/5)を満たすことが特に好ましい。ここで、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量とは、1色当たりの最大重量である。
(m/30)<Mとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、M<mとすることで、インク液の液層を均一に形成でき、濃度の低下を防止できる。
【0127】
ここで、単位面積当たりの下塗り液の未硬化部の重量は、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギ線の照射後)であってインク液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態の下塗り液に押し当てて、浸透媒体に転写した下塗り液の量を重量測定によって測定し、測定した値を下塗り液の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液の最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mは、0.04g/cmとなる(なお、インク液の密度は、約1.1g/cmとする。)。従って、この場合は、下塗り液の単位面積当たりの未硬化部の重量Mを、0.0013g/cmより大きく0.04g/cm未満とすることが好ましく、0.002g/cmより大きく0.013g/cm未満とすることがさらに好ましく、0.004g/cmより大きく0.008g/cmとすることが特に好ましい。
【0128】
次に、インク液(つまり、被記録媒体または下塗り層上に着弾させたインク液滴、または着弾させたインク液滴により形成したインク層)の半硬化について説明する。
図13は、半硬化されたインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体を示す模式的断面図であり、図14(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、図14(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
インク液dを打滴した後に、インク液dの上にインク液dを打滴して2次色を形成する時は、半硬化状態のインク液d上にインク液dを付与することが好ましい。
ここで、インク液dの半硬化状態とは、上述した下塗り液の半硬化状態と同様であり、図13に示すように、インク液d上にインク液dを打滴した場合に、(1)インク液dの一部がインク液dの表面に出ており、(2)インク液dの一部がインク液dに潜り込み、かつ、(3)インク液dの下層にはインク液dが存在する状態である。
このようにインク液を半硬化させることで、インク液dの硬化膜(着色膜A)及びインク液dの硬化膜(着色膜B)を好適に積層させることができ、良好な色再現が可能となる。
【0129】
これに対して、未硬化状態のインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図14(A)に示すようにインク液dの全部がインク液dに潜り込むか、および/または、図14(B)に示すようにインク液dの下層にはインク液dが存在しない状態となる。この場合は、高密度にインク液d液滴を付与しても、液滴同士が独立するため、2次色の彩度低下の原因となる。
【0130】
また、完全に硬化したインク液d上にインク液dを打滴した場合は、図14(C)で示すようにインク液dはインク液dに潜り込まない状態となる。この場合は、打滴干渉の発生の原因となり、均一なインク液の膜層が形成できず、色再現性の低下を招く。
【0131】
ここで、高密度にインク液dの液滴を付与した場合に液滴同士が独立することなく、均一なインク液dの膜層を形成する観点、および、打滴干渉の発生を抑制する観点から、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の量は、単位面積当たりに付与するインク液dの最大液滴量よりも少ないことが好ましく、十分に少ないことがより好ましい。すなわち、インク液d層の未硬化部の単位面積当たりの重量Mda(M(インク液A)ともいう。)と単位面積当たりに吐出するインク液の最大重量mdb(m(インク液B)ともいう。)との関係は、(mdb/30)<Mda<mdbを満たすことが好ましく、(mdb/20)<Mda<(mdb/3)を満たすことがさらに好ましく、(mdb/10)<Mda<(mdb/5)を満たすことが特に好ましい。
(mdb/30)<Mdaとすることで打滴干渉の発生を防止でき、さらに、ドットサイズ再現性を高くすることができる。また、Mda<mdbとすることで、インク液dの膜層を均一に形成ができ、濃度の低下を防止できる。
【0132】
ここで、単位面積当たりのインク液dの未硬化部の重量は、上述した下塗り液の場合と同様に、転写試験により求めるものである。具体的には、半硬化過程の終了後(例えば、活性エネルギ線の照射後)であってインク液dの液滴を打滴する前に、普通紙などの浸透媒体を半硬化状態のインク液d層に押し当てて、浸透媒体に転写したインク液dの量を重量測定によって測定し、測定した値をインク液の未硬化部の重量と定義するものである。
例えば、インク液dの最大吐出量を、600×600dpiの打滴密度で、1画素当たり12ピコリットルとすると、単位面積当たりに吐出するインク液dの最大重量mdbは、0.04g/cmとなる(なお、インク液dの密度は、約1.1g/cm3とする。)。従って、この場合は、インク液d層の単位面積当たりの未硬化部の重量Mdaを、0.0013g/cmより大きく0.04g/cm未満とすることが好ましく、0.002g/cmより大きく0.013g/cm未満とすることがさらに好ましく、0.004g/cmより大きく0.008g/cm未満とすることが特に好ましい。
【0133】
前記下塗り液および/またはインク液の半硬化状態を活性エネルギ線の照射や加熱によって開始する重合性化合物の重合反応によって実現する場合は、印刷物の擦過性を向上させる観点から、非重合率(つまり、A(重合後)/A(重合前))は、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
【0134】
ここで、A(重合前)は、重合反応前の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度であり、A(重合後)は、重合反応後の重合性基による赤外吸収ピークの吸光度である。
例えば、下塗り液および/またはインク液の含有する重合性化合物がアクリレートモノマーもしくはメタクリレートモノマーである場合は、810cm−1付近に重合性基(アクリレート基、メタクリレート基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸光度で、前記重合率を定義することが好ましい。また、重合性化合物がオキセタン化合物である場合は、986cm−1付近に重合性基(オキセタン環)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、前記重合率を定義することが好ましい。重合性化合物がエポキシ化合物である場合は、750cm−1付近に重合性基(エポキシ基)に基づく吸収ピークが観測でき、該ピークの吸収光度で、前記重合率を定義することが好ましい。
【0135】
また、赤外吸収スペクトルを測定する手段としては、市販の赤外分光光度計を用いることができ、透過型および反射型のいずれでも良く、サンプルの形態で適宜選択することが好ましい。例えば、BIO−RODO社製赤外分光光度計FTS−6000を用いて測定することができる。
【0136】
また、エチレン性不飽和化合物または環状エーテルに基づく硬化反応の場合には、未重合率をエチレン性不飽和基または環状エーテル基の反応率により定量的に測定することができる。
【0137】
また、下塗り液および/またはインク液を半硬化させる方法としては、(1)酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、または塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、(2)下塗り液および/またはインク液を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、(3)高粘度に調製した下塗り液および/またはインク液を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、(4)下塗り液および/またはインク液に活性エネルギ線または熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。中でも(4)下塗り液および/またはインク液に活性エネルギ線または熱を与えて硬化反応を起こさせる方法が好ましい。
【0138】
なお、活性エネルギ線または熱を与えて半硬化反応を起こさせる方法とは、被記録媒体に付与された下塗り液および/またはインク液の表面における重合性化合物の重合反応を不充分に行う方法である。前記下塗り液および/またはインク液の表面においてはその内部と比べて空気中の酸素の影響で重合反応が阻害され易い。したがって活性エネルギ線または熱の付与条件を制御することにより、下塗り液および/またはインク液の半硬化反応を起こさせることができる。
【0139】
下塗り液および/またはインク液の半硬化に必要なエネルギ量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、活性エネルギ線によりエネルギを付与する場合には、一般には1〜500mJ/cm程度が好ましい。また、加熱によりエネルギを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
【0140】
活性光や加熱などの活性エネルギ線または熱の付与により、重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性または架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
また、増粘(粘度上昇)も、活性光の照射、または加熱によって好適に行うことができる。
【0141】
また、本実施形態のように、下塗り液半硬化部により下塗り層を半硬化させることで、インク液滴が互いに重なり部分を有して被記録媒体上に着弾しても、下塗り液とインク液滴の相互作用により、これら隣接したインク液滴間の合一を抑えることができる。
つまり、被記録媒体上に半硬化した下塗り液の層を形成することにより、記録ヘッドから吐出されたインク液滴が被記録媒体上に近接して着弾した場合、例えば、単一色のインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合や、色違いのインク液滴が重なり部分を有して被記録媒体上に着弾した場合もインク液滴が移動することを防止できる。
これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一および着色面の色ムラの発生を効果的に防止することができ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、反転文字など打滴密度の高いインクジェット画像の記録を細線等の微細像を再現よく行うことができる。つまり、被記録媒体により高画質な画像を形成することが可能となる。
【0142】
また、各記録ヘッド間に、紫外線照射ユニットを配置し、各記録ヘッドにより被記録媒体上に着弾させたインク液つまり画像を半硬化させることで、近接した位置に着弾した異なる色のインク液滴が重なることや、着弾したインク液滴が移動することを防止できる。また、インク液を半硬化することにより、均一なインク層を形成でき、インク液滴同士の干渉を防止でき、複数の異なるインク層を好適に積層させることができる。
なお、紫外線照射ユニットは、記録ヘッドにより被記録媒体上にインク液滴が着弾された後、数百ミリ秒から5秒の間に紫外線を照射し、被記録媒体に着弾したインク液滴を半硬化させることが好ましい。
インク液滴の着弾後、数百ミリ秒から5秒の間にインク液滴を半硬化させることで、被記録媒体上のインク液滴の形状が崩れることを防止でき、高画質な画像を形成することができる。
【0143】
ここで、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の内部層の粘度(25℃)は、5000mPa・s以上とすることが好ましい。
また、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の表面層の粘度(25℃)は、100mPa・s以上5000mPa・s以下とすることが好ましい。
また、半硬化した下塗り層および/またはインク液滴の内部層の粘度(25℃)は、半硬化したおよび/またはインク液滴の表面層の粘度(25℃)の1.5倍以上とすることが好ましく、2倍以上とすることがより好ましく、3倍以上とすることがさらに好ましい。
上記範囲とすることで、下塗り層および/またはインク液滴を好適に半硬化させることができる。
【0144】
また、内部硬化した下塗り液(下塗り層)および/またはインク液滴の表面における重合性化合物の重合度は、1%以上70%以下とすることが好ましく、5%以上60%以下とすることがより好ましく、10%以上50%以下とすることが特に好ましい。ここで、重合度はIRなどによって測定できる。
上記範囲とすることで、下塗り層を好適に半硬化させることができる。
【0145】
また、塗布ロール190を用い、さらに塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させて、被記録媒体P上に下塗り液を塗布することで、被記録媒体P上に面状が改善された下塗り層Uを形成することができる。つまり、塗布ロール190を被記録媒体Pの搬送方向とは逆方向に回転させることで、塗布ロール190が被記録媒体Pに下塗り液を塗布した後、塗布ロール190が被記録媒体Pと離れるときに被記録媒体P上に塗布した下塗り液の表面を乱すことを防止でき、被記録媒体P上に表面が滑らかな、つまり、表面粗さが小さい下塗り層Uを形成することができる。
【0146】
次に、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kのそれぞれのノズルプレート14の吐出面、特に先端開口16aの周りに付着した液滴、汚れを除去する本発明の第4の態様のインクジェットヘッドのメンテナンス方法について説明する。
なお、インクジェットヘッド(記録ヘッド)のメンテナンス方法は、記録ヘッド136W,136C,136M,136Yおよび136Kのいずれにおいても同様の方法であるので、代表して記録ヘッド136Kの場合について説明する。
図15(A)および(B)は、メンテナンス部114による記録ヘッドのメンテナンス方法を説明するための工程図である。
【0147】
まず、記録ヘッド136Kにより画像が記録されている、つまり、ラベルが作製されている間、吸引部材36(および支持部材等の除去手段32)は、図15(A)に示すように、記録ヘッドと離れた位置に待機されている、具体的には、被記録媒体Pの搬送の障害とならない位置で待機されている。
ラベル印刷装置100によるラベルの作製が終了し、記録ヘッド136Kのメンテナンスを行う場合は、まず、メンテナンス装置30は、除去機構移動手段34により、図15(B)に示すように、除去ユニット80および突き当て部材84が配置された支持板82を凹部78が形成された支持フレーム72に向けて移動させる。つまり、除去機構移動手段34は、突き当て部材84を支持フレーム72の凹部78に向かって移動させる。突き当て部材84の先端部と凹部78とが当接すると、除去機構移動手段34が停止する。
ここで、突き当て部材84の長さを適宜設定して、各除去ユニット80の吸引部材36のスリット38,39を、対応するヘッドユニット70の吐出部12の先端開口16aに近接させることができる。言いかえれば、スリット38を先端開口16a側に先端開口16aと接触しない位置まで移動させることができる。
【0148】
次に、メンテナンス装置30は、吸引ポンプ48により、第1吸引部材36および第2吸引部材37の内部の空気を吸引し負圧にすることでスリット38、39の周りの空気を吸引する。
【0149】
このようにして、メンテナンス装置30は、突き当て部材84を凹部78に当接させることにより、支持板82に配置された複数の除去ユニット80がヘッドユニット70に近接し、非接触となる位置(接触しない位置)に、支持フレーム72を基準として支持板82および除去ユニット80を位置決めすることができる。
【0150】
また、メンテナンス装置30は、突き当て部材88の先端部を凹部78に当接させて、支持フレーム72を基準として、ヘッドユニット70に接触することなく、支持板82および除去ユニット80を位置決めすることができる。これにより、従来技術のように、ヘッドユニット70を基準として除去ユニット80を位置決めする場合に比べて、特に、アライメント調整機構74を介して支持フレーム72に取り付けられたヘッドユニット70を基準として除去ユニットを位置決めする場合に比べて、ヘッドユニット70の配置位置のズレが生じることを防止できる。すなわち、アライメント調整機構74を介して支持フレーム72に取り付けられたヘッドユニット70を基準とせずに、アライメント調整機構と干渉しない部材である支持フレーム72を基準として、この支持フレーム72に突き当て部材84を当接させて位置決めするため、ヘッドユニット70の配置位置にズレが生じることを防止できる。
また、ヘッドユニット70の位置ずれの発生を防止できることにより、先端開口の配列方向において隣接するヘッドユニット70のそれぞれが異なる大きさおよび方向に位置ずれすることを防止でき、この各ヘッドユニット70の位置ずれの差により生じる、各ヘッドユニット70の境界での記録画像のスジむらの発生を防止することができる。
【0151】
また、突き当て部材84の先端の形状と、支持フレーム72の凹部78との形状を一致させることにより、支持フレーム72に対してメンテナンス装置30を確実に位置決めすることができる。
【0152】
このように、空気を吸引する状態のスリット38をノズルプレート14の吐出面に近接させて先端開口16aの両端部にそれぞれ配置されたスリット38、39からスリット38、39の周りの空気を吸引することで、ノズルプレート14の吐出面の先端開口周りに付着しているインク液滴、汚れを吸引し、除去することができる。
【0153】
このように、先端開口16aの両端部に対向する位置にそれぞれスリット38、39を配置し、空気とともに先端開口16a周りのインク(インク液滴)、汚れを吸引し、除去することで、先端開口16aから吐出されるインク液滴の吐出方向を一定方向とすることができる。つまり、インク液滴の着弾位置にずれが生じることを防止できる。
これにより、被記録媒体上に高画質な画像を安定して形成することができる。
【0154】
また、先端開口16aの両端部に対向する位置に、それぞれスリット38、39を配置し、吸引することにより、各スリットの開口径を小さくすることができる。つまり、スリットを両端部に配置することで開口径の小さいスリットでも、先端開口周りのインク液滴、汚れ(固着物)を除去することができる。
このように、スリットの開口径を小さくすることで、安価なポンプを用いることができる。吸引力が小さいポンプを用いた場合でも、スリットの開口径を小さくすることで、スリットから吸引する空気の吸引力は、高くすることができる。さらに、スリットから吸引する吸引力を高くすることで、先端開口周りのインク液滴、固着物をより確実に吸引することができる。
【0155】
また、吸引部材のスリットを先端開口の配列方向に長い形状とすることで、つまり、複数の先端開口に共通のスリットを形成することで、1つの吸引部材のスリットにより、ヘッド基板上に列状に形成された複数の先端開口周りに付着しているインク液滴、汚れを同時に吸引し、除去することができ、短時間で記録ヘッドをメンテナンスすることができる。
特に、本実施形態のように、吸引部材の配列方向の長さを、ヘッド基板の長さと同じ長さとすることで、つまり、本実施形態では吸引部材のスリットの配列方向の長さを列状に配置された全ての先端開口を覆う長さとすることで、1つの吸引部材でノズルプレートに列状に形成された全ての先端開口を同時にメンテナンスすることができ、さらに、吸引部材を先端開口の配列方向に移動させることなく、記録ヘッドをメンテナンスすることができる。
【0156】
また、ノズルプレートの吐出面と接触することなく、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りに付着しているインク液滴、固形物を除去することができるため、ノズルプレートの吐出面を損傷させることを防止できる。
【0157】
このように、本実施形態によれば、短時間で効率よく先端開口周りのインク液滴、汚れを吸引、除去することができ、さらに、装置構成を簡単にすることができ、装置を安価にすることができる。
【0158】
ここで、本実施形態では、支持板82に複数の柱状の突き当て部材84を配設し、支持フレーム72の突き当て部材が配置された位置と対向する位置に凹部78を設けて、突き当て部材を凹部78に当接させたが、本発明はこれに限定されない。本発明の突き当て部材84は、その本数や、支持板82上の配設位置について特に制限的でなく、支持フレーム72の凹部78に当接して支持フレーム72に対して支持板82および除去ユニット80を位置決めできるものであればよい。例えば、支持板82の端辺の全長に沿って支持板82と直交する方向に延在する部材を支持フレーム72に当接させてもよい。
また、突き当て部材82における支持フレーム72に当接する当接面の少なくとも一部に凸部を形成し、支持フレーム72における凸部が当接する位置に凹部を形成してもよい。これにより、支持フレーム72に対する支持板82および除去ユニット80の位置決めを確実に行うことができる。
【0159】
また、本実施形態では、凹部78は、支持フレーム72における突き当て部材84の当接位置にのみ形成したが、これに限定されず、先端開口の配列方向にそって支持フレームの全長にわたって形成されるものでもよい。
なお、本実施形態では、支持フレーム72に凹部78が形成され、突き当て部材84が凹部78に当接するとしたが、これに限定されず、支持フレーム72に凸部が形成され、突き当て部材84に凹部が形成され、この凹部と凸部とを当接させるようにしてもよい。
【0160】
また、吸引部材(第1吸引部材36、第2吸引部材37)は、先端開口の配列方向に直交する方向におけるスリット(後述する吸引口)の大きさを、1mm以下とすることが好ましい。
スリットの大きさが上記範囲を満足する形状とすることで、上述した効果をより好適にえることができる。
【0161】
ここで、本実施形態では、吐出面の先端開口周りに付着したインク液滴、汚れをより効率よく除去することができるため、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、スリット38をその開口が先端開口16aの一方の端部を挟む位置に配置し、スリット39をその開口が先端開口16aの他方の端部を挟む位置に配置したが、本発明はこれに限定されず、先端開口16aのそれぞれの端部に対応してスリットが配置されていればよく、つまり、先端開口の両端に別々のスリットが形成されていればよく、例えば、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、それぞれのスリットの開口が先端開口の端部よりも外側となる位置に配置してもよい。
【0162】
また、第1吸引部材36と第2吸引部材37とは、先端開口の開口径をR[mm]、先端開口の配列方向に直交する方向の前記吸引口の大きさをL[mm]とすると、スリット38とスリット39との先端開口16aの配列方向に直交する方向の間隔が(R+L+2)[mm]以下を満たす位置に配置することが好ましい。
スリット38とスリット39との間隔を上記範囲とすることで、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りのインク液滴、汚れをより短時間でかつ確実に除去することができる。
【0163】
なお、本実施形態では、除去手段として、第1吸引部材36と第2吸引部材37とを設けて、先端開口の配列方向に直交する方向に離間し互いに平行に形成された、先端開口16aの配列方向を長手方向とする2つのスリットを形成したが、本発明はこれに限定されず、先端開口の配列方向に直交する方向に離間し互いに平行に形成された、先端開口16aの配列方向を長手方向とする2つのスリットを形成した種々の形態の吸引部材を用いることができる。
例えば、吸引部材を2つに分離する分岐管を有する形状とし、夫々の分岐管にスリットを形成してもよく、ノズルプレートの吐出面に対向する面を幅広の面として、先端開口16aの配列方向に直交する方向に所定距離離間して2つのスリットを形成した構成としてもよい。
【0164】
次に、記録ヘッドのメンテナンス方法の他の一例を説明する。
図16(A)〜(E)は、記録ヘッドのメンテナンス方法の他の一例を説明するための工程図であり、説明のために、記録ヘッド136Kの一つのヘッドユニット70、およびこのヘッドユニット70に対応する一つの除去ユニット80について示している。
【0165】
メンテナンス開始時は、図16(A)に示すように、各ヘッドユニット70のノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周りにインク液滴等が付着している。
【0166】
この状態から、まず、図16(B)に示すように、インク加圧機構64から供給配管61内のインクを加圧し、ヘッドユニット70の全ての先端開口16aからインク液滴を排出させる。なお、この際、電磁弁66の弁を閉めて供給配管61を封止する。これにより、インク加圧機構64により気供給配管61内のインクを加圧した場合に、供給配管61内部のインクが、インクタンク60に逆流することを防止する。
【0167】
ヘッドユニット70の全ての先端開口16aからインクを排出させることにより、図16(C)に示すように、ノズルプレート14の吐出面の全体にインクが付着した状態、つまり、インクに濡れた(インクで塗らされた)状態にする。
【0168】
その後、図16(D)に示すように、上述した方法と同様に除去ユニット80により、ノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引する。
具体的には、スリットを先端開口に近接させ、空気を吸引する状態のスリットを移動させ、ノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引する。
【0169】
除去ユニット80により、ノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引することで、図16(E)に示すように、ノズルプレート14の吐出面にインク液滴、汚れが付着していない状態となる。
【0170】
以上のように、インク加圧機構により、先端開口からインク液滴を排出し、ノズルプレート14の吐出面をインクで濡らすことで、インク液滴を吸引しやすい状態とすることができる。
また、ノズルプレート14の吐出面の先端開口周りに付着した汚れを、先端開口からのインクの排出と共に除去することができ、また汚れ(付着物)をインクで濡らすことにより吸引しやすい状態とすることができる。
【0171】
このように、本実施形態によれば、ノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れ(付着物)をより吸引しやすい状態にすることができ、ノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れをより確実に除去することができる。
【0172】
ここで、先端開口からインクを排出させる場合は、図17に示すように、ノズルプレート14の吐出面に対向する位置に板状の液流ガイド68を配置することが好ましい。
このように、ノズルプレート14の吐出面に対向する位置に液流ガイド68を配置し、ノズルプレート14の吐出面と液流ガイドとの間に、先端開口から排出されたインクの流路を形成することができる。
このように、液流ガイド68を配置することにより、ノズルプレート14の吐出面をより簡単にかつ少量のインクで濡らすことが可能となる。
また、ノズルプレート14の吐出面と液流ガイド68との間に形成された流路を流れるインクの液流によりノズルプレート14の吐出面に付着した汚れ(付着物)を吸引しやすい状態とすること、または、洗い流すことができ、より確実に吐出面に付着した汚れ(付着物)を除去することが可能となる。
なお、液流ガイド68は、図示しない移動機構により、使用時のみノズルプレートの吐出面の先端開口に対向する位置に配置すればよい。
また、液流ガイド68は、各ヘッドユニット70毎に個別に設けられてもよく、各記録ヘッドの複数のヘッドユニット70に共通して設けられてもよい。
【0173】
なお、本実施形態では、インク加圧機構64により供給配管61内のインクを加圧することで先端開口16aからインクを排出させたが、ノズルプレート14の吐出面にインクを付着させる方法は、これに限定されず、通常の記録動作と同様の方法で全ての吐出部12のアクチュエータ24を駆動させて連続的にインク液滴を吐出させてもよく、また、加圧手段によりインクタンクから各吐出部にインクを供給し、各先端開口から排出させてもよい。
【0174】
次に、図18は、本発明のメンテナンス装置の他の一例を示す概略構成図である。
なお、図18に示すメンテナンス装置202は、除去手段204の除去ユニット205の構成を除いて他の部分は、図7に示すメンテナンス装置30と同様の構成であるので、同一の部分には、同一の符号を付して、その説明は省略し、以下、メンテナンス装置204に特有の点を重点的に説明する。
【0175】
メンテナンス装置202は、除去手段204と、除去機構移動手段34とを有する。
除去手段204は、複数の除去ユニット205と、吸引部材36と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48、吹出部材206と、吹出ポンプ214とを有する。インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48とは、上述したメンテナンス装置30と同様の構成であるのでその詳細な説明は省略する。なお、除去手段204、除去機構移動手段34、インク加圧機構64および電磁弁66は、それぞれ制御部121(図1参照)と接続しており、制御部121により各種動作が制御されているのも同様である。
【0176】
吸引部材36は、記録ヘッド136Kのヘッドユニット70の吐出部12に対向して配置され、吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。吸引部材36は、第1吸引部材36と同様の形状、構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0177】
吹出部材206は、吸引部材36に対して先端開口16aの配列方向に直交する方向に所定間隔離間して配置されている。吹出部材206は、先端開口16aの配列方向に平行かつノズルプレート14の吐出面に直交する面を軸として、吸引部材36と対称な形状である。つまり、吹出部材206は、ヘッドユニット70の吐出部12(ノズルプレート14の吐出面)に対向して配置され、吐出部12側の一部が吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、吹出部材206は、吐出部12側の先端にスリット208が形成されており、スリット208が形成されている面とは反対側の面(対向する面)の一部に接続管210が設けられている。
【0178】
ここで、吸引部材36のスリット38は、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、先端開口16aの一方の端部に対向する位置に配置され、吹出部材206のスリット208は、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、先端開口16aの他方の端部に対向する位置に配置されている。つまり、2つのスリット38、208は、それぞれ先端開口16aの両端部に対向して配置されている。すなわち、スリット38は、その開口が先端開口16aの一方の端部を挟む位置に配置されており、スリット208は、その開口が吐出部16aの他方の端部を挟む位置に配置されている。
また、吸引部材36および吹出部材206も、ヘッドユニット70の長手方向、つまり先端開口16aの配列方向の任意の位置における断面形状が、一部にチューブ45と接続する接続管40およびチューブ212と接続する接続管210が形成されている点を除いて略同一形状である。つまり、スリット38およびスリット208は、列状に配置された複数の先端開口16aに対向して配置されている。すなわち、1つのスリット38および1つのスリット208がそれぞれ複数の先端開口16aに対向して配置されている。
【0179】
チューブ45aは、両端がそれぞれ吸引部材36、吸引ポンプ48と接続している。つまりチューブ45aは、吸引部材36と吸引ポンプ48とを連通させている。
吸引ポンプ48は、チューブ45aを介して、吸引部材36内の空気を吸引し、吸引部材36の内部を負圧にする。
【0180】
また、吹出部材206は、チューブ212を介して、吹出ポンプ214と接続されている。より具体的には、チューブ212は、一方の端部が吹出部材206の接続管210に接続され、他方の端部が吹出ポンプ214と接続されている。このように、吹出部材206と吹出ポンプ214は、チューブ212により連通されている。
【0181】
吹出ポンプ214は、圧縮ポンプ、エアーポンプ等の空気を供給するポンプであり、チューブ212を介して、吹出部材206に空気を供給する。
【0182】
除去手段204は、このような構成であり、吹出部材206に吹出ポンプ214から空気が供給されると、吹出部材206のスリット208から空気が吹き出される。
ここで、吹出部材206のスリット206は、ノズルプレート14の吐出面に対向する面に形成されている。したがって、吹出部材206のスリット208から吹き出された空気は、ノズルプレート14の吐出面に吹き付けられる。
一方、吸引部材36は、上述した第1吸引部材36と同様に、スリット38からスリット38周囲の空気を吸引部材36内部に吸引し、スリット38に対向する位置のノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引する。
つまり、除去手段204は、吹出部材206のスリット208からノズルプレート14の吐出面に形成された先端開口16aの周辺に空気を吹き付け、吹出部材206に隣接して配置した吸引部材36のスリット38から先端開口16aの周辺の空気を吸引することで、ノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周りに付着したインク液滴、汚れ(付着物)を吸引する。
【0183】
このように、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りに空気を吹き付けつつ先端開口周りの空気を吸引することでも、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りに付着したインク液滴、汚れを除去することができる。
また、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りに空気を吹き付けることで、インク液滴、汚れを先端開口周りからより確実に除去することができ、さらに、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りの空気を吸引することで、インク液滴、汚れが他の部分に飛散することを防止できる。
【0184】
ここで、本実施形態でも、吐出面の先端開口周りに付着したインク液滴、汚れをより効率よく除去することができるため、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、スリット38をその開口が先端開口16aの一方の端部を挟む位置に配置し、スリット208をその開口が先端開口16aの他方の端部を挟む位置に配置したが、本発明はこれに限定されず、先端開口16aのそれぞれの端部に対向してスリットが配置されていればよく、先端開口の両端に別々のスリットが形成されていればよく、例えば、先端開口16aの配列方向に直交する方向において、それぞれのスリットの開口が先端開口の端部よりも外側となる位置に配置してもよい。
【0185】
また、吹出部材は、先端開口の配列方向に直交する方向のスリットの大きさを、吸引部材のスリットと同じ大きさとすることが好ましい。
吹出部材のスリットの大きさを吸引部材のスリットと同じ大きさとすることで、ノズルプレートに効率よく空気を吹き付けることができ、上述した効果をより好適に得ることができる。
【0186】
また、吹出部材206は、先端開口の開口径をR[mm]、前記先端開口の配列方向に直交する方向の吹出口の大きさをL[mm]とすると、先端開口16aの配列方向に直交する方向におけるスリット208とスリット38との間隔が(R+L+2)[mm]以下を満たす位置に配置することが好ましい。
スリット38とスリット208との間隔を上記範囲とすることで、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りのインク液滴、汚れをより短時間でかつ確実に除去することができる。
【0187】
図19は、メンテナンス装置の他の一例の概略構成を示す部分断面図である。
なお、図19に示すメンテナンス装置220は、除去手段222の除去ユニット223の構成を除いて他の部分は、図7に示すメンテナンス装置30と同様の構成であるので、同一の部分には、同一の符号を付して、その説明は省略し、以下、メンテナンス装置220に特有の点を重点的に説明する。
【0188】
メンテナンス装置220は、除去手段222と、除去機構移動手段34とを有する。
除去手段222は、複数の除去ユニット223と、第1吸引部材36と、第2吸引部材37と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48、吹出部材224と、吹出ポンプ214とを有する。第1吸引部材36と、第2吸引部材37と、インクトラップ機構46と、吸引ポンプ48とは、上述したメンテナンス装置30と同様の構成であるのでその詳細な説明は省略する。
なお、除去手段222、除去機構移動手段34、インク加圧機構64および電磁弁66は、それぞれ制御部121(図1参照)と接続しており、制御部121により各種動作が制御されているのも同様である。
また、第1吸引部材36と第2吸引部材37とは、構成、機能等は同様であるが、互いの配置間隔は、メンテナンス装置30に示した第1吸引部材36と第2吸引部材37との配置間隔よりも広く配置されている。
【0189】
吹出部材224は、第1吸引部材36と第2吸引部材37との間に配置されている、つまり先端開口の中心に対向する位置に配置されている。
吹出部材224は、記録ヘッド136Kのヘッドユニット70の吐出部12(ノズルプレート14の吐出面)に対向して配置され、吐出部12側の一部が吐出部12側に向かうに従って幅が小さくなる中空の箱型形状である。
また、吹出部材224は、吐出部12側の先端にスリット226が形成されており、スリット226が形成されている面とは反対側の面(対向する面)の一部に接続管228が設けられている。
ここで、吹出部材224も、ヘッドユニット70の長手方向、つまり先端開口16aの配列方向の任意の位置における断面形状が、チューブ212と接続する接続管228が形成されている点を除いて略同一形状である。つまり、スリット226は、列状に配置された複数の先端開口16aに対向して配置されている。すなわち、1つのスリット228がそれぞれ複数の先端開口16aに対向して配置されている。
また、吹出部材224には、上述したメンテナンス装置202の吹出部材206と同様に、チューブ212を介して吹出ポンプ214が接続されている。
【0190】
除去ユニット223は、このような構成であり、吹出部材224に吹出ポンプ214から空気が供給されると、吹出部材224のスリット226から空気が吹き出される。吹出部材224のスリット226から吹き出された空気は、ノズルプレート14の吐出面に対向する面に吹き付けられる。
一方、第1吸引部材36、第2吸引部材37は、スリット38およびスリット39からスリット38およびスリット39の周囲の空気を第1吸引部材36内部および第2吸引部材37に吸引し、スリット38およびスリット39に対向する位置のノズルプレート14の吐出面に付着したインク液滴、汚れを吸引する。
【0191】
つまり、除去ユニット223は、吹出部材224のスリット226からノズルプレート14の吐出面に形成された先端開口16aの周辺に空気を吹き付け、吹出部材224の先端開口16aの配列方向に直交する方向の両側にそれぞれ隣接して配置された第1吸引部材36のスリット38および第2吸引部材37のスリット39から先端開口16aの周辺の空気を吸引することで、ノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周りに付着したインク液滴、汚れ(付着物)を吸引する。
【0192】
メンテナンス装置220に示すように、第1吸引部材36と第2吸引部材37との間に吹出部材224を配置し、中央からノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周辺に向けて空気を吹き付け、両側面からノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周辺に吸引することにより、ノズルプレート14の吐出面の先端開口16a周りに付着したインク液滴、汚れを除去することができる。
空気を吹き付ける吹出部材224のスリット226の両側面に空気および/またはインク(吐出面に付着しているインク)を吸引する第1吸引部材36のスリット38と第2吸引部材37のスリット39とを配置することで、ノズルプレート14の吐出面に空気を吹き付けることで、吐出面から取り除かれたインク液滴、汚れが、飛散することをより確実に防止することができる。
【0193】
なお、スリットの開口の大きさ、また、第1吸引部材36と第2吸引部材37との好適な位置関係等は上述したメンテナンス装置30の場合と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0194】
ここで、本実施形態では、吸引口から空気および/またはインクを吸引させる前においてつまり、吸引ポンプの休止時に、除去機構移動手段により、除去手段の吸引部材、もしくは、吸引部材および吹出部材(除去手段)をノズルプレートの吐出面に直交する方向に移動させることで、ノズルプレートの吐出面近傍にスリットを配置したが、つまり、吸引口もしくは、吸引口および吹出口と吐出面との距離を一定距離以下としたが、これに替えて、もしくは、さらに、除去手段をノズルプレートの吐出面に平行で、かつ先端開口の配列方向に平行に移動させてもよい。
つまり、図20(A)および(B)に示すように、除去手段の待機位置を、ノズルプレートの吐出面に対向する位置から、先端開口の配列方向と平行な方向に所定距離離間した位置、具体的には、被記録媒体Pの搬送経路の幅方向よりも外側とし、除去機構移動機構が除去手段を待機位置(図20(A)中実線)からノズルプレートに対向する位置(図20(A)中点線)まで移動させるようにしてもよい。
ここで、図20(A)および(B)では、図示を省略したが、除去手段を先端開口の配列方向と平行な方向に移動させる移動機構は特に限定されず、例えば、吸引部材(除去手段)をノズルプレートの吐出面に直交する方向に移動させる方法と同様にボールネジを用いた方法、リニア駆動、ベルト搬送等種々の移動手段を用いることができる。
このように、除去手段の待機位置を被記録媒体の搬送経路よりも外側とし、メンテナンス装置をノズルプレートの吐出面に平行で、かつ先端開口の配列方向に平行に移動させることでも、移動装置が大型化し、装置全体としても大きくなるが、画像記録時にメンテナンス装置が被記録媒体Pの搬送の障害になることを防止できる。
【0195】
ここで、図20(A)および(B)に示すように、除去手段の待機位置を被記録媒体Pの搬送経路よりも外側とした場合は、画像記録時は、除去手段を待機位置に保持し、メンテナンス開始時に、除去機構移動機構により、除去手段を待機位置(図20(A)中の実線)からノズルプレートに対向する位置(図20(A)中の点線)まで移動させる。その後の動作は、上述したメンテナンス方法と同様である。
【0196】
ここで、メンテナンス開始時に、除去機構移動機構により、除去手段を待機位置(図20(A)中の実線)からノズルプレートに対向する位置(図20(A)中の点線)まで移動させ、その後、上述したメンテナンス方法でメンテナンスを行うとしたが、これに限定されない。例えば、除去機構移動機構により除去手段を待機位置(図20(A)中の実線)で待機させた状態で、図16(B)で示すように、先端開口からインクを排出させ、排出を停止した後に、待機位置からノズルプレートに対向する位置(図20(A)中の点線)まで除去手段を移動させ、その後にメンテナンスを行うようにしてもよい。これにより、インクの排出時にメンテナンス装置30にインクがかかることを防止することができる。
【0197】
また、メンテナンス装置30を待機位置に待機させた状態でインクを排出させる場合は、インク排出時にノズルプレートに対向する位置に、排出されたインクが印刷装置内部に漏出することを防止する漏出防止装置を配置し、排出を停止した後にこの漏出防止装置を退避させて、メンテナンス装置30をノズルプレートに対向する位置に移動させるようにしてもよい。漏出防止装置を設けることにより、ラベル印刷装置100内部にインクが漏れて装置内部がインクで汚れることを防止することができる。なお、漏出防止装置は、例えば、記録ヘッドの先端開口が形成された全領域に対応する大きさの支持体上に、インクを吸収する部材を配置したインク受け機構と、このインク受け機構を移動させる移動機構とを有する。
【0198】
また、上記実施形態では、いずれも記録ヘッドの各ヘッドユニットを先端開口(吐出部)が1列にライン状に配置されるとしたが、単列配置に限定されず、図21に示すように、ヘッドユニット640を、複数列の先端開口(吐出部)を一定ピッチずつずらして千鳥状に配置した構成としてもよい。このように先端開口(吐出部12)を千鳥状に配置し、1列の打滴点を複数列の吐出部で形成することで、より高い解像度の画像を形成することが可能となる。
【0199】
ここで、図21に示すように、記録ヘッドの吐出部を2次元配置、つまりマトリックス配置する場合は、メンテナンス装置を記録ヘッドの吐出部の列毎に設けてもよく、メンテナンス装置を先端開口(吐出部)の配列方向に直交する方向、つまり、行方向に移動させる移動機構を設け、1つのメンテナンス装置を行方向に移動させて複数列の吐出部を有する記録ヘッドのノズルプレートの吐出面の先端開口周りのインク液滴、汚れを吸引し、除去するようにしてもよい。
【0200】
また、本実施形態では、短時間にメンテナンスを行えるため、メンテナンス装置を記録ヘッド毎に配置したが、本発明はこれに限定されず、メンテナンス装置に各記録ヘッド間を移動する移動機構を設け、1つのメンテナンス装置により、複数の記録ヘッドのメンテナンス、つまり、ノズルプレートの吐出面の先端開口周りに付着したインク液滴、汚れの除去を行ってもよい。このようにメンテナンス装置を1つとすることで、装置構成を簡単にすることができ、装置を安価にすることができる。
【0201】
また、本実施形態では、吸引部材の吸引口として、列状に配置された全先端開口に対応する1つのスリットを形成したが、本発明はこれに限定されず、スリットを複数に分割した形状の吸引口としてもよい。例えば、列状に配置されている各先端開口毎に吸引口を設け、ノズルプレートの吐出面のそれぞれの吐出部周りに付着したインク液滴、汚れを吸引するようにしてもよい。
また、吹出部材の吹出口も、列状に配置された全先端開口に対応する1つのスリットを形成したが、同様にこれに限定されず、スリットを複数に分割した形状の吹出口としてもよい。例えば、列状に配置されている各先端開口毎に吹出口を設け、ノズルプレートの吐出面のそれぞれの吐出部周りに空気を吹き付けるようにしてよい。
【0202】
吸引部材の吸引口は、吐出部の配列方向と直交する方向に分割することが好ましい。つまり、吸引部材の先端開口に配列方向と平行な方向に仕切り板を配置することが好ましい。
このように、吸引口を吐出部の配列方向と直交する方向に分割することで、吸引時に吸引口の一部がインク液滴、汚れにより詰まった場合でも他の吸引口から、インク液滴、汚れを吸引することができる。これにより、より確実に先端開口周りのインク液滴、汚れを除去することができる。
【0203】
次に、デジタルラベル印刷装置の他の一例を図22に基づいて説明する。
図22に示すデジタルラベル印刷装置101は、バッファの位置を除いて他の構成は、図1に示すデジタルラベル印刷装置100と同じ構成のものである。従って、両者で同一の構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、以下に、デジタルラベル印刷装置101に特有の点を重点的に説明する。
図22に示すデジタルラベル印刷装置101は、描画部112と平滑化部116との間バッファが配置されている。このように、搬送バッファの位置は特に限定されず、種々のいちとすることができる。
【0204】
また、本実施形態では、インクとして活性エネルギ線硬化型インクを用い、記録ヘッドから活性エネルギ線硬化型インクを吐出させ、被記録媒体P上に活性エネルギ線硬化型インクの画像を形成し、その後、活性光光線を照射し、画像を硬化させて、被記録媒体上に画像を定着させるデジタルラベル印刷装置として説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、被記録媒体P上に記録した画像を加熱・加圧することで、被記録媒体P上に画像を定着させるインクジェット記録装置も用いることができる。
【0205】
なお、記録ヘッドの構成は、上述した実施形態に限定されず、種々の構造とすることができる。例えば、いわゆるサイドシュート方式を用いる記録ヘッドとしても、他のトップシュータ方式の記録ヘッドとしてもよい。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式としたが、本発明はこれに限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒーターなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種のインクを吐出させる方式を用いた記録ヘッドを用いることができる。
【0206】
なお、本実施形態では、より高画質な画像を形成できる等の効果を得ることができるため、下塗部を設け、描画部により画像を形成する前に、被記録媒体上に下塗り液を塗布し下塗り層を形成したが、下塗部は、必ずしも設ける必要はなく、被記録媒体上に下塗り層を形成することなく、描画部に画像を形成してもよい。
また、下塗り液は、より均一に塗布することができるため、本実施形態のように塗布ロールを逆回転させて塗布することが好ましいが、下塗り液の塗布方法も特に限定されず、スプレー塗布、インクジェット記録方式を用いた塗布等種々の方法を用いることができる。
【0207】
また、上述した実施形態では、いずれもデジタルラベル印刷装置にメンテナンス装置(装置)を配置した構成としたが、メンテナンス装置をインクジェットヘッドに対して着脱可能な独立した装置としてもよい。
また、メンテナンス装置をインクジェットヘッドとを1つのユニットすること、つまり、メンテナンス装置を有するインクジェットヘッドとすることもできる。
さらに、本実施形態のデジタルラベル印刷装置のように、少なくともインクジェットヘッドとメンテナンス装置を有するインクジェット記録装置とすることもできる。
【0208】
また、上記実施形態では、本発明をデジタルラベル印刷装置に用いた場合として説明したが、本発明はこれに限定されず、普通氏、金属、樹脂材料等、種々の記録媒体にインクジェット記録方式で画像を記録する装置、例えば、プリンター、製版装置等のメンテナンス装置、メンテナンス方法として用いることができる。
【0209】
以下、本発明のインクジェット記録装置に好適に用いることができる被記録媒体、下塗り液およびインク、特に半硬化させる場合に好適に用いることができる下塗り液およびインクについて説明する。
【0210】
以下、本発明のインクジェット記録装置に好適に用いることができる被記録媒体、下塗り液及びインク、特に半硬化させる場合に好適に用いることができる下塗り液及びインクについて説明する。
【0211】
(インク及び下塗り液の物性)
ここで、被記録媒体上に吐出されるインク(液滴)の物性としては、装置により異なるが一般には25℃での粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。また、下塗り液の内部硬化前の粘度(25℃)は、10〜500mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・s以内であることがより好ましい。
【0212】
本発明においては、被記録媒体上に目的の大きさのドットを形成する観点から、下塗り液は、界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)及び(C)の全てを満たすことがさらに好ましい。
(A)下塗り液の表面張力は、被記録媒体上に吐出されるいずれかのインクの表面張力よりも小さい。
(B)下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m)
の関係を満たす。
(C)下塗り液の表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2
の関係を満たす。
【0213】
ここで、γsは、下塗り液の表面張力の値である。γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0214】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液の表面張力γsを、いずれかのインクの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間のインクドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)であることがより好ましく、γs<γk−5(mN/m)であることが特に好ましい。
また、フルカラーの画像を形成(印字、描画)する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、下塗り液の表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有するインクの表面張力よりも小さくすることが好ましく、全てのインクの表面張力より小さくすることがより好ましい。なお、視感度の高い着色剤としては、マゼンタ、ブラック及びシアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、吐出適正の観点から、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsとは、インクの表面張力γkと下塗り液の表面張力γsの値が上記の関係を満たし、かつ、それぞれ15mN/m以上50mN/m以下の範囲内であることが好ましく、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内であることがより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内であることが特に好ましい。
両者の値を15mN/m以上とすることで、インクジェットヘッドによる打滴時に液滴を好適に形成することができ、不吐出が生じることを防止できる。つまり、インク液滴を好適に吐出させることができる。また、50mN/m以下とすることで、インクジェットヘッドとの濡れ性を高くすることができ、インク液滴を好適に吐出させることができる。つまり、液滴の不吐出が生じることを防止できる。両者の値を、18mN/m以上40mN/m以下の範囲内、さらには、20mN/m以上38mN/m以下の範囲内とすることで、上記効果をより好適に得ることができ、インク液滴を確実に吐出させることができる。
ここで、本実施形態において、表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0215】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、下塗り液は、少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。下塗り液に少なくとも一種類以上の界面活性剤を含有させることで、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットをより確実に形成させることができる。なお、この場合は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>0(mN/m) …条件(B)
さらに、下塗り液の表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2 …条件(C)
【0216】
既述のように、γsは、下塗り液の表面張力の値である。また、γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに表面張力が飽和した該液の表面張力の値である。γs(飽和)maxは、下塗り液に含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0217】
なお、前記γs(0)は、下塗り液の組成のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。また、前記γs(飽和)は、下塗り液に含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させた場合に、界面活性剤濃度の変化に対する表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0218】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)maxについて具体的に説明する。
例えば、下塗り液(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合性材料(ジプロピレングリコールジアクリレート、Akcros社製)、重合開始剤(TPO、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファックF475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、及び、γs(飽和)maxは、下記の通りとなる。
【0219】
【化1】

【0220】
即ち、γs(0)は、下塗り液のうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液に前記フッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に前記炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0221】
前記下塗り液(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和))の2つの値をとり得る。ここでγs(飽和)maxは、前記γs(飽和)及びγs(飽和)のうちの最大値であることから、γs(飽和)の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)max=30.5mN/m
【0222】
以上の結果から、上記具体例の場合下塗り液の表面張力γsは、
γs<(γs(0)+γs(飽和)max)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、下塗り液の表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)−γs(飽和)max}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)max
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0223】
インク及び下塗り液は、所望の表面張力が得られるように組成を選択すればよいが、これらの液体は界面活性剤を含有することが好ましい。既述のように、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、下塗り液は少なくとも1種の界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤について以下に説明する。
【0224】
(界面活性剤)
本発明において界面活性剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質を用いることが好ましい。
【0225】
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ溶媒(0)を測定する。前記γ溶媒(0)を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%ずつ増加させ、該化合物濃度の変化に対する表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ溶媒(飽和)を測定する。前記γ溶媒(0)と前記γ溶媒(飽和)の関係が、
γ溶媒(0) − γ溶媒(飽和) > 1 (mN/m)
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断することができる。
【0226】
下塗り液に含有する界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0227】
(インク及び下塗り液の硬化感度)
本発明において、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度と同等又はそれ以上とすることが好ましい。また、インクの硬化感度は、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の4倍以下とすることがより好ましく、下塗り液の硬化感度以上かつ下塗り液の硬化感度の2倍以下とすることが更に好ましい。
ここで硬化感度とは、水銀灯(超高圧、高圧、中圧等、好ましくは超高圧水銀灯)を使用してインク及び/又は下塗り液を硬化する場合において、完全に硬化するために必要なエネルギ量をいい、エネルギ量が小さいほど高感度である。したがって硬化感度が2倍であるとは、完全に硬化するために必要なエネルギ量が1/2であることを意味する。
また、硬化感度が同等であるとは、比較する両者の硬化感度の差が2倍以下であり、より好ましくは1.5倍以下であることをいう。
【0228】
(被記録媒体)
本実施形態のインクジェット記録装置においては、被記録媒体として、浸透性の被記録媒体、非浸透性の被記録媒体、及び緩浸透性の被記録媒体のいずれも使用することができる。中でも、被記録媒体として、非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いた場合は、本発明の効果をより顕著に得ることができる。ここで、浸透性の被記録媒体とは、例えば、10pL(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以下である被記録媒体をいう。また、非浸透性の被記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、例えば、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性の被記録媒体とは、10pLの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以上である被記録媒体をいう。
【0229】
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙及びその他液を吸収できる被記録媒体が挙げられる。
非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器及び木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
【0230】
合成樹脂の被記録媒体としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状としては、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0231】
この合成樹脂の被記録媒体としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状の各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることも好ましい。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム、PPフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0232】
樹脂コート紙の被記録媒体としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体を用いることが好ましい。
【0233】
金属の被記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等及びステンレス等、並びにこれらの複合材料を好適に用いることができる。
【0234】
また更に、被記録媒体としては、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能である。この場合は、いわゆるレーベル面側に画像を記録することが好ましい。
【0235】
(インク及び下塗り液)
以下、本発明に好適に用いることができるインク及び下塗り液について詳細に説明する。
【0236】
インクは、少なくとも画像を形成するための組成となる構成であり、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成される。
下塗り液は、重合性又は架橋性材料を少なくとも1種含み、必要に応じて重合開始剤、親油性溶剤、着色剤及び他の成分を用いて構成されることが好ましい。また、下塗り液は、インクと組成が異なるように構成することが好ましい。
【0237】
重合開始剤は、活性エネルギ線によって重合反応又は架橋反応を開始させ得るものであることが好ましい。これにより、被記録媒体に付与された下塗り液を活性エネルギ線の照射によって硬化させることができる。
また、下塗り液は、ラジカル重合性組成物を含むことが好ましい。本発明において、ラジカル重合性組成物とは、少なくとも1種のラジカル重合性材料と少なくとも1種のラジカル重合開始剤とを含む組成物である。下塗り液がラジカル重合性組成物を含むことで、下塗り液の硬化反応を高感度に短時間で行うことができる。
また、インクは、着色剤を含有するものであることが好ましい。また、このインクと組み合わせて用いられる下塗り液は、着色剤を含有しないもしくは着色剤の含有量が1質量%未満の構成、又は、下塗り液が着色剤として白色顔料を含む構成のいずれかであることが好ましい。
以下、インク及び/又は下塗り液を構成する各成分について詳述する。
【0238】
(重合性又は架橋性材料)
重合性又は架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0239】
重合性又は架橋性材料としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起する重合性又は架橋性材料を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
重合性又は架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0240】
本発明における重合性又は架橋性材料としては、特に、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーを用いることが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかをさし、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかをさす。
【0241】
(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0242】
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0243】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0244】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0245】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0246】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0247】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0248】
また、(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0249】
芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0250】
ビニルエーテル類の具体例としては、単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0251】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
なお、ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点からジ又はトリビニルエーテル化合物を用いることが好ましく、特にジビニルエーテル化合物を用いることがより好ましい。
【0252】
また、上記以外に、ラジカル重合性モノマーとしては、更に、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
【0253】
上記のうち、ラジカル重合性モノマーとしては、硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類を用いることが好ましく、特に硬化速度の点から、4官能以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。更には、インク組成物の粘度の観点から、多官能(メタ)アクリレートと、単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドとを併用することが好ましい。
【0254】
重合性又は架橋性材料のインク及び下塗り液中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲とすることが好ましく、70〜99.0質量%の範囲とすることがより好ましく、80〜99.0質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲とすることが好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0255】
(重合開始剤)
また、少なくとも下塗り液、または、インク及び下塗り液は、少なくとも1種の重合開始剤を含有することが好ましい。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性又は架橋性材料の重合又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0256】
重合性の態様において、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、さらに、光重合開始剤であることが特に好ましい。
光重合開始剤は、光の作用、増感色素の電子励起状態との相互作用によって化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル発生剤であることが好ましい。
【0257】
本発明における光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0258】
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も使用することができる。
【0259】
好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0260】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等が挙げられる。
【0261】
ここで、(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号各公報記載の化合物を好適に使用することができる。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0262】
また、(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系を用いることが好ましい。
【0263】
また、(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0264】
また、(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0265】
また、(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
また、(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群が上げられる。
【0266】
また、(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体が挙げられる。
【0267】
チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等が挙げられる。
【0268】
また、(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンジルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0269】
また、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等が挙げられる。
【0270】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等も挙げられる。さらに、ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等も挙げられる。
【0271】
本発明における光重合開始剤としては、例えば、以下に例示する化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0272】
【化2】

【0273】
【化3】

【0274】
【化4】

【0275】
【化5】

【0276】
【化6】

【0277】
【化7】

【0278】
【化8】

【0279】
【化9】

【0280】
なお、重合開始剤としては、感度に優れるものが好ましいが、保存安定性の観点から、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を用いることが好ましい。
【0281】
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0282】
重合開始剤の下塗り液中における含有量としては、経時安定性と硬化性及び硬化速度との観点から、下塗り液中の重合性材料に対して0.5〜20質量%の範囲内とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがさらに好ましく、3〜10質量%とすることが特に好ましい。含有量を上記範囲内とすることで、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることを抑制できる。
【0283】
なお、重合開始剤を下塗り液に含有すると共にインクに含有させてもよく、この場合には、インクの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。この場合は、インク液滴中の含有量は、インク中の重合性又は架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0284】
(増感色素)
また、インク及び/または下塗り液には、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加することが好ましい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げられる。
【0285】
具体的には、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)が挙げられる。
【0286】
また、より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0287】
【化10】

【0288】
式(IX)中、A1は硫黄原子又は−NR50−を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、Aは硫黄原子又は−NR59−を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0289】
式(XII)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Aは酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0290】
また、一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0291】
【化11】

【0292】
【化12】

【0293】
(共増感剤)
さらに、インク及び/または下塗り液には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えることが好ましい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0294】
別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0295】
(着色剤)
少なくともインク、もしくは、インク及び下塗り液は、少なくとも一種の着色剤を含有する。なお、着色剤はインク以外に下塗り液やその他の液体に含有してもよい。
【0296】
着色剤としては、特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料、及び顔料等から適宜選択して用いることができる。中でも、本発明の効果を好適に得ることができる非水溶性の有機溶剤系でインク及び下塗り液を構成する場合は、着色剤としては、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料を用いることが好ましい。
【0297】
着色剤は、インク中の含有量を1〜30質量%とすることが好ましく、1.5〜25質量%とすることがさらに好ましく、2〜15質量%とすることが特に好ましい。また、着色剤として下塗り液に白色顔料を含有させる場合には、下塗り液中の着色剤の含有量を2〜45質量%とすることが好ましく、4〜35質量%とすることがより好ましい。
【0298】
以下、本発明に好適な顔料を中心に説明する。
〈顔料〉
着色剤として、顔料を用いる態様が好ましい。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
【0299】
有機顔料としては、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン系顔料及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0300】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメント・レッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメント・レッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメント・バイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメント・レッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメント・バイオレット42、C.I.ピグメント・レッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメント・レッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメント・レッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメント・レッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメント・オレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメント・ブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメント・バイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメント・イエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメント・イエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメント・オレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメント・レッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメント・イエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメント・イエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメント・イエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメント・イエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメント・オレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメント・オレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメント・オレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメント・レッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメント・レッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメント・レッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメント・レッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメント・レッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメント・レッド248M.I.ピグメント・レッド262、もしくはC.I.ピグメント・ブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
【0301】
C.I.ピグメント・イエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメント・イエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメント・イエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメント・レッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメント・レッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメント・イエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメント・イエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメント・レッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメント・レッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメント・オレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメント・レッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメント・ブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメント・グリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメント・グリーン36(C.I.番号74265)、ピグメント・グリーン37(C.I.番号74255)、ピグメント・ブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメント・ブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント・ブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメント・ブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメント・バイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメント・バイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメント・レッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメント・レッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメント・レッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメント・レッド264、C.I.ピグメント・レッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメント・オレンジ71、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメント・レッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメント・イエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメント・オレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメント・イエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメント・オレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノ
ン系顔料、C.I.ピグメント・オレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメント・レッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、又はC.I.ピグメント・バイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
また着色剤としては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0302】
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。さらに、樹脂被覆された顔料も使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販品が入手可能である。
【0303】
液中に含有される顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、10〜250nmの範囲であることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの粒径分布測定装置により測定することができる。
【0304】
着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0305】
(その他成分)
また、インク及び/または下塗り液には、上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
【0306】
〈貯蔵安定剤〉
インク及び下塗り液(特にインク)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することが好ましい。貯蔵安定剤は、重合性又は架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0307】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシルアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0308】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性又は架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算を、0.005〜1質量%とすることが好ましく、0.01〜0.5質量%とすることがより好ましく、0.01〜0.2質量%とすることがさらに好ましい。
【0309】
〈導電性塩類〉
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0310】
〈溶剤〉
本発明においては、必要に応じて公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
高沸点有機溶媒としては、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有するものが好ましい。
具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルを用いることが好ましい。
【0311】
公知の溶剤としては、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0312】
溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量を各液中0〜20質量%とすることが好ましく、0〜10質量%とすることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。本発明に係るインク及び下塗り液に水を実質的に含まないことで、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性を向上させ、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性も高くすることができる。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0313】
〈その他添加剤〉
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0314】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係るインクと下塗り液とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
ここで、1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0315】
以上、本発明に係るインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0316】
例えば、上述したように、被記録媒体上に形成する画像をより高画質にできるため、下塗り液を半硬化することが好ましいが、本発明はこれに限定されず、被記録媒体上に塗布した下塗り液を完全に硬化させた後、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成してもよく、または、被記録媒体上に塗布した下塗り液を硬化させずに、インク液滴を被記録媒体上(正確には下塗り層上)に吐出させ、画像を形成し、その後、活性光線を照射し、被記録媒体上の画像部と下塗り層を同時に硬化させてもよい。
【0317】
また、下塗り液(下塗り層)および/またはインクを半硬化させる方法も上記方法に限定されず、酸性ポリマーに対して、塩基性化合物を付与する、または塩基性ポリマーに対して、酸性化合物、金属化合物を付与するなど、いわゆる凝集現象を用いる方法、下塗り液(インク)を予め高粘度に調製し、これに低沸点有機溶媒を添加することによって低粘化しておき、低沸点有機溶媒を蒸発させて元の高粘度に戻す方法、高粘度に調製した下塗り液(インク)を加熱しておき、冷却することによって元の高粘度に戻す方法、下塗り液(インク)に熱を与えて硬化反応を起こさせる方法など、既知の増粘方法が挙げられる。
なお、下塗り液およびインクを半硬化させる方法としては、熱を与えるまたは、上述した活性エネルギ線を照射することにより硬化反応を起こさせる方法を用いることが好ましい。
【0318】
また、本実施形態では、下塗り液およびインクとして、活性光硬化型の下塗り液およびインクを用い、下塗り液およびインクに活性光線を照射させることで硬化させたが、本発明はこれに限定されず、活性光線硬化型以外の下塗り液およびインクを用いてもよい。例えば、熱硬化型のインクを用い、従来公知の手段で画像を形成してもよい。また、下塗り液として熱硬化型の液体を用いてもよい。
【0319】
以上、本発明に係るインクジェットヘッドのメンテナンス装置、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッドのメンテナンス方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1】本発明のメンテナンス装置を用いることができるデジタルラベル印刷装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図2】被記録媒体の層構成を示す縦断面図である。
【図3】図1に示したデジタルラベル印刷装置の描画部を拡大して示す概略斜視図である。
【図4】(A)は、記録ヘッドの概略構成を示す正面図であり、(B)は、(A)の記録ヘッドのB−B線断面図である。
【図5】(A)は、ヘッドユニットの概略構成を示す側面図であり、(B)は、ヘッドユニットの吐出部の配置パターンを示す底面図であり、(C)は、(A)の記録ヘッドの概略構成を示すC−C線断面図である。
【図6】記録ヘッドおよび記録ヘッドに対向して配置されるメンテナンス装置の除去手段の概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示したメンテナンス装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図8】図1に示したデジタルラベル印刷装置の記録ヘッドのヘッドユニットおよびメンテナンス装置の除去ユニットの概略構成を示す側面図である。
【図9】図7に示した吸引部材の形状を示す概略斜視図である。
【図10】箔押し状態を示し、(A)は画像面に大きな凹凸がある被記録媒体の要部断面図、(B)は平滑化せずに箔押しされた被記録媒体の要部断面図、(C)は平滑化手段により凹凸を平滑化して箔押した被記録媒体の要部断面図である。
【図11】半硬化された下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図12】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態の下塗り液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図13】半硬化されたインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図14】(A)及び(B)は、それぞれ未硬化状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図であり、(C)は、完全に硬化させた状態のインク液上にインク液を打滴した被記録媒体の一例を示す模式的断面図である。
【図15】(A)および(B)は、それぞれ記録ヘッドのメンテナンス方法を説明するための工程図である。
【図16】(A)〜(E)は、それぞれ記録ヘッドのメンテナンス方法の他の一例を説明するための工程図である。
【図17】記録ヘッドのメンテナンス方法の他の一例を説明するための工程図である。
【図18】メンテナンス装置の他の一例の概略構成を示す断面図である。
【図19】メンテナンス装置の他の一例の概略構成を示す断面図である。
【図20】(A)は、ラベル印刷装置の他の一例のメンテナンス装置周辺を示す上面図であり、(B)は、(A)の正面図である。
【図21】記録ヘッドの吐出部の配置パターンの他の一例を示す底面図である。
【図22】本発明のメンテナンス装置を用いるデジタルラベル印刷装置の他の一例の概略構成を示す正面図である。
【図23】複数のヘッドユニットを有する記録ヘッドで描画した場合に、すじむらが発生する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0321】
12 吐出部
13 ヘッド基板
14 ノズルプレート
16 ノズル
16a 先端開口
18 圧力室
22 共通流路
24 アクチュエータ
26 加圧板
28 個別電極
30、202、220 メンテナンス装置
32、204、222 除去手段
36 第1吸引部材
36a 吸引部材
37 第2吸引部材
38、39、208、226 スリット
40、41、210、228 接続管
44 吸引部材移動機構
45、45a、212 チューブ
46 インクトラップ機構
48 吸引ポンプ
50 支持台
52 ドライブスクリュ
54 ガイドレール
56 連結体
60 インクタンク
61 供給配管
62 フィルタ
64 インク加圧機構
66 電磁弁
68 液流ガイド
70 ヘッドユニット
72 支持フレーム
74 アライメント調整機構
76、77 溝部
78 凹部
80 除去ユニット
82 支持板
84 突き当て部材
86 保持部材
100 デジタルラベル印刷装置
110 搬送部
111 下塗部
112 描画部
114 メンテナンス部
116 平滑化部
118 箔押し部
120 ラベル抜き部
121 制御部
122 供給ロール
124、126、128、130、132 搬送ローラ対
134 製品巻取部
135 記録ヘッドユニット
136W、136C、136M、136Y、136K 記録ヘッド(インクジェットヘッド)
137 インク貯蔵/装填部
138 紫外線照射部
142 ニスコータ
144、145 塗布ローラ
146 平面加圧部材
148 紫外線照射部
150 箔供給ロール
152 箔巻取ロール
154、156 ローラ
158 箔
160 ホットスタンプ版
162 ニスコータ
164 紫外線照射部
166 ダイカッタ
168 シリンダカッタ
170 受けローラ
172 カス取り部
190 塗布ロール
191 駆動部
192 ブレード
194 位置決め部
197 下塗り液半硬化部
206、224 吹出部材
214 吹出ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、インク液滴を吐出する複数の吐出口が吐出口プレートに列状に形成された、複数のインクジェットヘッドユニットが前記吐出口の配列方向を一致させ、前記複数のインクジェットヘッドユニット間の相対位置を調整するアライメント調整機構によって支持フレームに配設されたインクジェットヘッドのメンテナンス装置であって、
前記支持フレームに対向して配置される支持板と、
前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記吐出口の配列方向を長手方向とするスリット状吸引口が形成された吸引部材を備え、前記支持板の前記支持フレーム側の、前記複数のインクジェットヘッドユニットのそれぞれに対応する位置に配設される複数の除去ユニットと、
前記吸引部材内の空気を吸引する吸引ポンプと、
前記支持板からこれに直交する方向に突出し、前記アライメント調整機構によって調整された前記複数のヘッドユニット間の相対位置が変化しないように前記支持フレームに当接して、対応する前記除去ユニットと前記ヘッドユニットとが対向し、かつ、非接触となる位置に、前記支持フレームに対して前記支持板および前記複数の除去ユニットを位置決めする位置決め部材とを有することを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記支持板と反対側の先端部に凸部が形成され、
前記支持フレームは、前記凸部が当接する位置に凹部が形成される請求項1に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項3】
前記吸引部材は、前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つの第1吸引口が形成された第1吸引部材と、前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つの第2吸引口が形成された第2吸引部材とを有する請求項1または2に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項4】
前記吸引部材の前記第1吸引口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記吐出口の一方の端部に対向する位置に配置され、
前記吸引部材の前記第2吸引口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記吐出口の他方の端部に対向する位置に配置されている請求項3に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記除去ユニットは、さらに、前記吸引部材に隣接して配置され、前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記インクジェットヘッドの前記吐出口の配列方向を長手方向とする少なくとも1つのスリット状吹出口が開口された吹出部材を有し、
さらに、前記吹出部材に空気を供給する吹出ポンプを有する請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
前記吹出部材の前記吹出口は、前記吐出口の配列方向に直交する方向において、前記第1吸引口と前記第2吸引口との間に配置されている請求項5に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項7】
さらに、前記支持板と前記支持フレームとを近接させる移動機構を有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッドメンテナンス装置。
【請求項8】
さらに、前記吐出口からインクを排出させ、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面をインクで濡らす浸漬機構を有する請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項9】
前記浸漬機構は、さらに、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面に対向し、かつ、前記吐出口プレートと接触しない位置に配置され、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面との間に前記インクジェットヘッドから排出されたインクの流路を形成する液流ガイドを有する請求項8に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置。
【請求項10】
インク液滴を吐出する複数の吐出口が列状に形成された吐出口プレートと、前記複数の吐出口のそれぞれに対応して配設され、各々の吐出口から前記インク液滴を吐出する複数の吐出手段とを備える、複数のインクジェットヘッドユニット、および、前記複数のインクジェットヘッドユニットを前記吐出口の配列方向を揃えて配置する支持フレームを有するインクジェットヘッドと、
請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッドのメンテナンス装置とを有することを特徴とするインクジェットヘッドアセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェットヘッドアセンブリと、
前記インクジェットヘッドアセンブリの複数のインクジェットヘッドの前記複数の吐出口から前記インク液滴を吐出する被記録媒体を、前記インクジェットヘッドアセンブリに対して、相対的に移動させる相対移動手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
それぞれ、インク液滴を吐出する複数の吐出口が吐出口プレートに列状に形成された複数のインクジェットヘッドユニットが前記吐出口の配列方向を一致させ、前記複数のインクジェットヘッドユニット間の相対位置を調整するアライメント調整機構によって支持フレームに配設されたインクジェットヘッドのメンテナンス方法であって、
前記吐出口プレートの前記吐出口と対向する面に前記吐出口の配列方向を長手方向とするスリット状吸引口が形成された吸引部材を備える除去ユニットが前記複数のインクジェットヘッドユニットのそれぞれに対応する位置に配置される支持板を、前記アライメント調整機構によって調整された前記複数のヘッドユニット間の相対位置が変化しないように、前記支持フレームを基準として位置決めして、前記複数の除去ユニットのそれぞれを対応する前記インクジェットヘッドユニットと対向し、かつ、非接触となる位置に近接させることを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス方法。
【請求項13】
さらに、前記吸引部材と同時に、前記吐出口の配列方向が長手方向となるスリット状吹出口を有し、前記吹出口から空気を射出させる吹出部材を、前記吐出口プレートの前記吐出口が形成されている面の複数の前記吐出口に接触しない位置に近接させ、
前記吹出口から前記吐出口周辺に空気を射出させつつ、前記吸引口から空気およびインクの少なくとも一方を吸引し、前記吐出口プレートの前記吐出口周辺の付着物を吸引する請求項12に記載のインクジェットヘッドのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−246726(P2008−246726A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88231(P2007−88231)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】