説明

インクジェット塗布方法及びインクジェット塗布装置

【課題】 塗布対象にインク液滴を塗布する方式の自由度が高くなるインクジェット塗布方法を提供する。
【解決手段】 インクジェット塗布方法は、インクジェットヘッドの全ノズルの各々と、相対移動の幅に含まれる複数の位置の各々との組合せに対応づけられた噴射情報が記録されている噴射パターン情報を、相対移動ごとに、記憶する記憶ステップと、インクジェットヘッドが相対移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、上記相対移動に対応する噴射パターン情報を選択する選択ステップS25,S160と、選択工程で選択された噴射パターン情報に記録されている噴射情報に従って、インクジェットヘッドの全ノズルの各々に、上記複数の位置の各々に対して、液滴を噴射させて塗布させるか又は液滴を噴射させない塗布ステップS90とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの液滴を噴射して塗布対象にインクを塗布するインクジェット塗布方法及びインクジェット塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ等においては、その表示装置として例えば、液晶ディスプレイが用いられている。この液晶ディスプレイの製造工程においては、ノズルから微小な液滴を噴射するようになされたいわゆるインクジェット塗布装置を用いて、透明基板上の各ドットにR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のインクを順次塗布することにより、これら各色のドットが順次配列されてなるカラーフィルタを作成するようになされている。
【0003】
このような表示装置の製造工程においては、インク液滴を噴射するためのノズルを有するインクジェットヘッドを塗布対象である基板の塗布対象開始位置に対向する位置まで移動させた後、インクジェットヘッド及び基板の相対位置を移動させながら、所定の塗布対象位置でノズルからインクを順次噴射して塗布させるようにしている。
【0004】
ここで、例えば、インクジェット塗布装置のメモリには、塗布対象上における各塗布対象位置に対して、それぞれ、インク液滴の噴射に関する情報である噴射情報(例えば、ノズルの圧電素子に印加する電圧波形など)が記憶されており、ノズルを制御するノズル制御部は、各塗布対象位置に対応する噴射情報に基づいて、インクジェットヘッドの各ノズルを用いて、上記各塗布対象位置に、インク液滴を噴射させて塗布させていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−1438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、ノズル制御部は、各塗布対象位置に対応する噴射情報に基づいて、インク液滴の噴射を各ノズルに行わせ、各塗布対象位置に対して、順番にインク液滴を塗布させていくことしかできなかった。このため、例えば、塗布対象領域上の同じ塗布対象位置を、複数の異なるノズルでインク液滴を塗布させるような複雑な塗布方式を行うことはできず、塗布対象にインク液滴を塗布する方式の自由度が低くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、塗布対象にインク液滴を塗布する方式の自由度が高くなるインクジェット塗布方法、インクジェット塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の問題点を解決するために、本発明は、液滴を噴射するためのノズルを複数有するインクジェットヘッドを塗布対象に対して相対移動させながら、前記塗布対象に各ノズルから前記液滴を噴射させて塗布するインクジェット塗布方法であって、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々と、前記相対移動の幅に含まれる複数の位置の各々との組合せに対応づけられた前記液滴の噴射に関する情報が記録されている噴射パターン情報を、前記相対移動ごとに、記憶する記憶工程と、前記インクジェットヘッドが前記相対移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、前記相対移動に対応する噴射パターン情報を選択する選択工程と、前記インクジェットヘッドが前記相対移動を行う場合、前記選択工程で選択された噴射パターン情報に記録されている前記液滴の噴射に関する情報に従って、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々に、前記複数の位置の各々に対して、前記液滴を噴射させて塗布させるか又は前記液滴を噴射させない塗布工程とを有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明は、液滴を噴射するためのノズルを複数有するインクジェットヘッドを塗布対象に対して相対移動させながら、前記塗布対象に各ノズルから前記液滴を噴射させて塗布するインクジェット塗布装置であって、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々と、前記相対移動の幅に含まれる複数の位置の各々との組合せに対応づけられた前記液滴の噴射に関する情報が記録されている噴射パターン情報を、前記相対移動ごとに、記憶する記憶部(例えば、メモリ102)と、前記インクジェットヘッドが前記相対移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、前記相対移動に対応する噴射パターン情報を選択し、前記インクジェットヘッドが前記相対移動を行う場合、選択された噴射パターン情報に記録されている前記液滴の噴射に関する情報に従って、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々に、前記複数の位置の各々に対して、前記液滴を噴射させて塗布させるか又は前記液滴を噴射させない制御部(例えば、インク噴射制御回路100)を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、塗布対象にインク液滴を塗布する方式の自由度が高くなるインクジェット塗布方法、インクジェット塗布装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(本発明の実施形態)
(インクジェット塗布装置の構成)
図1は、インクジェット塗布装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット塗布方法を実施するためのインクジェット塗布装置1は、ノズルからインクの液滴を噴射するインクジェットヘッド42を用いて基板30にインクを塗布するインク塗布ボックス3と、このインク塗布ボックス3にインクを補給するインク補給ボックス4とを備えている。インクジェットヘッド42の各々の基板と対向する表面には、インク液滴を噴射するためのノズルが所定間隔離間して複数配列されている。
【0012】
インク塗布ボックス3においては、架台2の上面にY軸方向ガイド板20が固定されており、このY軸方向ガイド板20の上面には、Y軸方向に複数のガイド溝21が延設されている。このガイド溝21にはY軸方向移動テーブル22の下面に設けられたガイド用の突起部(図示せず)が係合され、これによりY軸方向移動テーブル22は、ガイド溝21にガイドされてY軸方向に移動自在に支持されている。このY軸方向移動テーブル22は、Y方向移動モータ(図示せず)を用いた駆動機構によりガイド溝21に沿ってY軸方向に移動される。
【0013】
また、Y軸方向移動テーブル22の上面には、X軸方向に複数のガイド溝(図示せず)が延設されている。このガイド溝には、X軸方向移動テーブル23の下面に設けられたガイド用の突起部(図示せず)が係合され、これによりX軸方向移動テーブル23は、このガイド溝にガイドされてX軸方向に移動自在に支持されている。このX軸方向移動テーブル23は、X方向移動モータ(図示せず)を用いた駆動機構によりガイド溝に沿ってX軸方向に移動される。
【0014】
X軸方向移動テーブル23の上面には、基板保持テーブル26が固定されており、この基板保持テーブル26の上面には把持機構27が設けられており、インクの塗布対象である基板30を把持して固定し得るようになされている。なお、基板30の固定手段として、把持機構27による把持に代えて、例えば、吸着機構を設けるようにしてもよい。
【0015】
基板保持テーブル26のX方向への移動量は、X方向エンコーダ(図示せず)のパルス状の出力信号に基づいて検出することができ、基板保持テーブル26のY方向への移動量は、Y方向エンコーダ(図示せず)のパルス状の出力信号に基づいて検出することができる。
【0016】
また、インク塗布ボックス3において、架台2の上面には、インクジェットヘッドユニット40がX軸方向、Y軸方向及び上下方向であるZ軸方向に移動自在に支持されている。即ち、インク塗布ボックス3において、架台2の上面には、Y軸方向スライド板20を挟む位置に1組のコラム33a、33bが立設されており、このコラム33a、33bの上部にはX方向ガイド板35が横架されている。
【0017】
X方向ガイド板35の前面には、X方向にガイド溝36が延設されており、このガイド溝36には、複数のインクジェットヘッドユニット40を垂設するベース板41の突起部が係合されている。これによりベース板41は、このガイド溝36にガイドされてX軸方向に移動自在に支持されている。このベース板41は、ヘッドユニット移動用モータ(図示せず)を用いた駆動機構によりガイド溝36に沿ってX軸方向に移動される。
【0018】
インク塗布ボックス3においては、インクジェット塗布装置1の動作を制御する制御部10により、これらY方向移動テーブル22のY方向への移動、X方向移動テーブル23のX方向への移動及びベース板41のX方向への移動をそれぞれ制御し、これにより基板保持テーブル26に保持された基板30とベース板41に垂設されたインクジェットヘッドユニット40との相対位置を種々に変化させることができる。
【0019】
またベース板41には、複数(例えば3つ)のインクジェットヘッドユニット40が垂設されており、このインクジェットヘッドユニット40において、その下端部に設けられたインクジェットヘッド42により下方にインクを噴射するようになされている。これら複数のインクジェットヘッドユニット40は、それぞれ同一の構成を有する。
【0020】
図2は、インクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。図2に示すように、インクジェットヘッドユニット40においては、ベース板41に支持され、移動部44aをZ方向(上下方向)に移動自在に支持するZ方向移動機構44と、このZ方向移動機構44の移動部44aに支持され、移動部45aをY方向に移動自在に支持するY方向移動機構45と、このY方向移動機構45の移動部45aに支持され、回転部46aをZ方向周りの回転方向であるθ方向に回転自在に支持するθ方向回転機構46と、このθ方向回転機構46の回転部46aに垂下されるインクジェットヘッド42とを有し、Z方向移動機構44によりインクジェットヘッド42の位置を基板30に対してZ方向に調整し得ると共に、Y方向移動機構45によりインクジェットヘッド42の位置を基板30に対してY方向に調整し得る。また、θ方向回転機構46によりインクジェットヘッド42の向きを基板30に対してθ方向に回転し得るようになされている。なお、Y方向移動機構45及びZ方向移動機構44には、それぞれヘッド調整用モータ(図示せず)が設けられ、これらによりインクジェットヘッド42をモータ駆動によってY方向、Z方向へ移動させることができる。また、θ方向回転機構46には、θ方向回転モータ(図示せず)が設けられており、これによりインクジェットヘッド42をモータ駆動によってθ方向に回転させることができる。またインクジェットヘッド42のθ方向への回転量は、θ方向エンコーダ(図示せず)のパルス状の出力信号に基づいて検出することができる。
【0021】
このようにインクジェットヘッドユニット40においては、基板保持テーブル26に対するインクジェットヘッド42の位置を種々に調整し得るようになされている。
【0022】
図3は、インクジェットヘッド42を示す斜視図である。図3に示すように、このインクジェットヘッドユニット40の下端部に設けられたインクジェットヘッド42において、その下方に向けられたノズル面48には複数のノズルがそれぞれノズル噴射口50を下方に向けるようにして一定の間隔を隔てて直列に穿設されている。
【0023】
インクジェットヘッド42の内部には、各ノズルに連通してなるインクタンクが設けられており、このインクタンクの上面にはダイアフラム及び圧電素子が設けられている。制御部10からの噴射制御信号によってこの圧電素子を駆動させることにより、インクタンク内の圧力を変化させて該インクタンク内のインクをノズルより噴射させるようになされている。インクジェットヘッドユニット40では、このようにしてノズル噴射口から下方にインク液滴を噴射させることにより、インクジェットヘッド42の下方において基板保持テーブル26に保持された基板30の上面にインクを塗布する。
【0024】
なお、本実施形態では、一例として、ベース板41は固定されており、Y方向移動テーブル23、X方向移動テーブル22が移動可能な場合の説明を行う。但し、ベース板41がY方向及びX方向に移動して、Y方向移動テーブル23、X方向移動テーブル22が固定している場合や、ベース板41がY方向及びX方向に移動して、Y方向移動テーブル23、X方向移動テーブル22が移動している場合に対しても、本発明の適用は可能である。
【0025】
そして、Y方向移動テーブル23又はX方向移動テーブル22がベース板41に対して移動することにより、インクジェットヘッド42が基板30に対して相対的に移動することになる。以下、このような移動を、インクジェットヘッド42が基板30に対して相対的に移動するという。この際、インクジェットヘッド42は、そのノズル面48と基板30との間のZ方向上の距離が所定距離離間するようにしながら、基板30に対して相対的に移動する。
【0026】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド42が、Y方向に沿った複数のドット位置がX方向に複数配置された所定領域(後述の図5参照)に対して、相対的に移動することが行われる。この移動の詳細な説明は後述する。
【0027】
次に、インク液滴の塗布処理を制御する制御部10について説明する。図4は、制御部10のブロック構成を示す図である。図4に示すように、制御部10においては、基板保持テーブル26及びインクジェットヘッド42を移動制御するとともにインクジェットヘッド42におけるインクの噴射を制御するインク噴射制御回路100が設けられている。このインク噴射制御回路100には、X方向移動モータ、Y方向移動モータ及びθ方向回転モータを駆動させるためのモータ駆動回路101が接続されている。
【0028】
また、インク噴射制御回路100には、メモリ102が接続されている。このメモリ102には、インクジェットヘッド42の全ノズルの各々と、Y方向に沿った複数のドット位置の各々との組合せに対応づけられたインク液滴の噴射に関する情報(以下、噴射情報という)が記録されている噴射パターン情報が、相対移動の回数ごとに記憶されている。ここで、Y方向に沿った複数のドット位置とは、相対移動の幅に含まれる複数の位置のことである。
【0029】
相対移動とは、インクジェットヘッド42の全ノズルの各々が、特定領域内のY方向に沿った複数のドット位置を対向可能なように、インクジェットヘッド42が上記特定領域に対して相対的に移動することをいう。そして、本実施形態のインクジェット塗布方法では、特定領域を異ならせて上述の相対移動(以下、相対移動をスキャン移動という)を複数回行いながら、基板30にインク液滴を塗布させることが行われる。
【0030】
噴射情報は、例えば、ノズルからインク液滴の噴射を行うか否かを示す噴射オン/オフ情報、塗布位置の補正量を示す位置補正情報、ノズルの圧電素子に印加する電圧波形の情報を示す電圧波形情報から構成されている。ノズルの圧電素子に印加される電圧波形を変化させることにより、インクジェットヘッド42のノズルから噴射されるインクの液滴量を制御可能であることから、各ドット位置に応じて最適な電圧波形情報がメモリ102に記憶される。なお、噴射情報としては、インク液滴の噴射条件に関する他の複数の情報が含まれていてもよい。
【0031】
以下に、図5、図6、図7を用いながら、噴射パターン情報の詳細な説明の一例を行う。図5に示すように、基板30の領域(図5中の斜線が施された領域)を含む所定領域(図5中の最も外側の実線で囲まれた領域)内には、後述する特定領域K1(図5中の点線で囲まれた領域)、特定領域K2(図5中の斜線が施された領域)、特定領域K3(図5中の一点鎖線が施された領域)が含まれている。そして、所定領域内には、例えば、Y方向に沿った100個のドット位置がX方向に100個配置されている。ここで、各ドット位置は、所定領域内の最も左頂部に存在するドット位置を、原点とした場合に、Y方向において上記各ドット位置までに存在するドット位置の数(原点のドット位置を除く)を示すY座標と、X方向において上記各ドット位置までに存在するドット位置の数(原点のドット位置を除く)を示すX座標とにより特定される。例えば、(0,1)により特定されるドット位置とは、X方向における1番上の100個のドット位置のうち、最も左側のドット位置の隣のドット位置(図5参照)である。ここで、例えば、インクジェットヘッド42のノズルが、ノズルn1、ノズルn2、....ノズルn49、ノズルn50であるとする。そして、特定領域K1は、例えば、X座標が0から49の各々と、Y座標が0から99の各々との組合せ(例えば、(0,0)、...(49,99))の座標により特定されるドット位置が配置されている領域のことである。
【0032】
また、特定領域K2は、例えば、X座標が25から74の各々と、Y座標が0から99の各々との組合せ(例えば、(25,0)、...(74,99))の座標により特定されるドット位置が配置されている領域のことである。この特定領域K1は、基板30の領域に相当する。
【0033】
また、特定領域K3は、例えば、X座標が50から99の各々と、Y座標が0から99の各々との組合せ(例えば、(50,0)、...、(99,99)など)の座標により特定されるドット位置が配置されている領域のことである。
【0034】
そして、図6(a)に示すように、1回目のスキャン移動として、インクジェットヘッド42が特定領域K1に対してスキャン移動を行う場合には、ノズルn26からノズルn50の各々が、基板30上のY方向の100個のドット位置を対向しながら通過するように、インクジェットヘッド42が基板30に対して相対的に移動する。また、図6(b)に示すように、2回目のスキャン移動として、インクジェットヘッド42が特定領域K2に対してスキャン移動を行う場合には、ノズルn1からノズルn50の各々が、基板30上のY方向の100個のドット位置を対向しながら通過するように、インクジェットヘッド42が基板30に対して相対的に移動する。また、図6(c)に示すように、3回目のスキャン移動として、インクジェットヘッド42が特定領域K3に対してスキャン移動を行う場合には、ノズルn1からノズル25の各々が、基板30上のY方向の100個のドット位置を対向しながら通過するように、インクジェットヘッド42が基板30に対して相対的に移動する。
【0035】
そして、図7(a)に示すように、1回目のスキャン移動に対応する噴射パターン情報P1には、ノズルn1と、座標(0,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−0(噴射オン/オフ情報はオフ)、...、ノズルn1と、座標(0,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−99(噴射オン/オフ情報はオフ)、、、、、ノズルn25と、座標(24,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報25−0(噴射オン/オフ情報はオフ)、....、ノズルn25と、座標(24,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報25−99(噴射オン/オフ情報はオフ)、ノズルn26と、座標(25,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報26−0(噴射オン/オフ情報はオン)、...、ノズルn26と、座標(25,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報26−99(噴射オン/オフ情報はオン)、、、、、ノズルn50と、座標(49,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−0(噴射オン/オフ情報はオン)、....、ノズルn50と、座標(49,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−99(噴射オン/オフ情報はオン)が含まれている。
【0036】
また、図7(b)に示すように、2回目のスキャン移動に対応する噴射パターン情報P2には、ノズルn1と、座標(25,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−0(噴射オン/オフ情報はオン)、...、ノズルn1と、座標(25,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−99(噴射オン/オフ情報はオン)、、、、、、、ノズルn50と、座標(74,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−0(噴射オン/オフ情報はオン)、....、ノズルn50と、座標(74,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−99(噴射オン/オフ情報はオン)が含まれている。
【0037】
また、図7(c)に示すように、3回目のスキャン移動に対応する噴射パターン情報P3には、ノズルn1と、座標(50,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−0(噴射オン/オフ情報はオン)、...、ノズルn1と、座標(50,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報1−99(噴射オン/オフ情報はオン)、、、、、ノズルn25と、座標(74,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報25−0(噴射オン/オフ情報はオン)、....、ノズルn25と、座標(74,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報25−99(噴射オン/オフ情報はオン)、ノズルn26と、座標(75,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報26−0(噴射オン/オフ情報はオフ)、...、ノズルn26と、座標(75,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報26−99(噴射オン/オフ情報はオフ)、、、、、ノズルn50と、座標(99,0)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−0(噴射オン/オフ情報はオフ)、....、ノズルn50と、座標(99,99)で特定されるドット位置とに対応する噴射情報50−99(噴射オン/オフ情報はオフ)が含まれている。
【0038】
この結果、1回目のスキャン移動、3回目のスキャン移動では、特定領域のうち、基板30の領域以外の領域に含まれるドット位置に対応する噴射オン/オフ情報はオフであり、基板30の領域に含まれるドット位置に対応する噴射オン/オフ情報はオンであるので、基板30の領域以外の領域内の各ドット位置に、インク液滴が塗布されず、基板30の領域内の各ドット位置には、インク液滴が塗布される。
【0039】
また、2回目のスキャン移動では、特定領域は、基板30の領域に相当し、その領域に含まれるドット位置に対応する噴射オン/オフ情報はオンであるので、基板30の領域内の各ドット位置には、インク液滴が塗布される。
【0040】
また、制御部10において、インク噴射制御回路100には、Y方向移動モータの駆動により移動する基板保持テーブル26の移動量を検出するためのY方向エンコーダからのパルス信号の数をカウントする、スタートカウンタ103、ドットカウンタ104、ノズルカウンタ105と、X方向移動モータの駆動により移動する基板保持テーブル26の移動量を検出するためのX方向カウンタ(図示せず)と、θ方向エンコーダからのパルス信号をカウントするθ方向カウンタ(図示せず)とが接続されている。これらのカウンタは、インク噴射制御回路100からのスタート信号によってカウント動作が開始される。ここで、Y方向エンコーダ、X方向エンコーダは、例えば、基板保持テーブル26が1μm移動するごとにパルス信号を出力する。また、θ方向エンコーダは、インクジェットヘッド42がθ方向に1°回転するごとにパルス信号を出力する。
【0041】
これにより、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101に、各モータに対して駆動信号を送出させた際に、各モータの駆動結果によって所定領域に対して相対的に移動するインクジェットヘッド42の移動結果を各エンコーダからのパルス出力によって検出することができる。
【0042】
スタートカウンタ103には、インクジェットヘッド42がスキャン移動を開始する前の待機中において、ノズルn1から、スキャン移動が開始してからノズルn1が最初に到達するドット位置までの距離に対応するカウント値が設定されている。例えば、1、2,3回目のスキャン移動の場合、図8に示すように、インクジェットヘッド42の待機位置は、ノズル1が、座標(0,0)、座標(25,0)、座標(50,0)で特定されるドット位置からY方向に距離Aだけ離れた位置に設定されており、スタートカウンタ103においては、この距離Aに対応するカウント値が設定されている。スタートカウンタ103は、インク噴射制御回路100を通して入力されるスタート信号によりカウント動作を開始し、Y方向エンコーダから出力されるパルスをカウントする。そして設定されているカウント値に達すると、ノズルn1が最初に到達するドット位置に到達したことを表す信号をインク噴射制御回路100に出力する。
【0043】
ドットカウンタ104は、各ノズルごとに対応して設けられている。ドットカウンタ104には、Y方向におけるドット位置間の距離に対応するカウント値(例えば、図8に示す距離dに対応するカウント値)が設定される。ドットカウンタ104は、インク噴射制御回路100を通して入力されるスタート信号によりカウント動作を開始し、所定領域に対してインクジェットヘッド42が相対的に移動することに伴ってY方向エンコーダから出力されるパルスをカウントし、このカウント結果が予め設定されているカウント値に達したとき、所定領域に対してインクジェットヘッド42の位置がドット位置間隔の距離d1だけY方向に進んだことを表す信号をインク噴射制御回路100に出力する。また、ドットカウンタ104は、カウント結果が予め設定されているカウント値に達するごとに、カウント結果をクリアしてカウント動作を繰り返す。これにより図8に示すように、所定領域に対して、インクジェットヘッド42がY方向へ相対的に移動することに伴って、Y方向に隣接する各ドット位置を順次検出することができる。
【0044】
ノズルカウンタ105においては、スキャン移動が開始してからあるノズルが最初に到達するドット位置に到達してから、そのノズルに隣接するノズルが、スキャン移動が開始してからあるノズルが最初に到達するドット位置に到達するまで、インクジェットヘッド42が所定領域に対して相対的に移動する移動距離Bに対応するカウント値が設定されている。また、ノズルカウンタ105も、インク噴射制御回路100を通して入力されるスタート信号によりカウント動作を開始する。図8に示すように、インクジェットヘッド42をθ方向に回転させて、各ノズルのX方向のピッチj1をドット位置のX方向のピッチj2と一致させた場合、直線状に配列されたノズルn1、n2、n3……は、X方向に対してある角度αだけ傾斜した状態となる。即ち、各ノズルn1、n2、n3……のY方向の位置は、傾斜した分だけずれた状態となる。従って、この状態で、インクジェットヘッド42をY方向に所定領域に対して相対的に移動させながら、各ノズルn1、n2、n3……が、それぞれ対応するドット位置(スキャン移動が開始してから各ノズルが最初に到達するドット位置)に対向する位置に到達するためには、インクジェットヘッド42の傾斜に応じた各ノズルn1、n2、n3……のY方向のずれ量に対応するカウント値を設定しておき、Y方向エンコーダから出力されるパルスをカウントし、カウントした値が、設定されたカウント値に到達するごとに、カウント結果をクリアしてカウント動作を繰り返す。これにより、各ノズルn1、n2、n3……ごとの、上述した最初に到達するドット位置を検出するようになされている。
【0045】
また、X方向カウンタには、ある回数目のスキャン移動の開始の前にインクジェットヘッド42が待機するX方向における位置と、次の回数目のスキャン移動の開始の前にインクジェットヘッド42が待機するX方向における位置との差に相当するカウント値が設定されている。X方向カウンタは、所定領域に対してインクジェットヘッド42がX方向に相対的に移動することに伴ってX方向エンコーダから出力されるパルスをカウントし、このカウント結果が予め設定されているカウント値に達したとき、所定領域に対してインクジェットヘッド42の位置が、設定されたカウント値に対応する距離DだけX方向に進んだことを表す信号をインク噴射制御回路100に出力する。またX方向カウンタは、カウント結果が予め設定されているカウント値に達するごとに、カウント結果をクリアしてカウント動作を繰り返すようになされている。
【0046】
またθ方向カウンタは、インクジェットヘッド42がX方向に対して傾斜する傾斜角度αに対応するカウント値が設定されている。θ方向カウンタは、インクジェットヘッド42の回転に伴ってθ方向エンコーダから出力されるパルスをカウントし、このカウント結果が予め設定されているカウント値に達したとき、傾斜角度αだけインクジェットヘッド42が回転したことを表す信号をインク噴射制御回路100に出力する。
【0047】
また、インク噴射制御回路100には、ノズル指定カウンタ(図示せず)と、スキャン回数カウンタ(図示せず)と、各ノズルにそれぞれ対応する移動回数カウンタ(図示せず)とが含まれている。ノズル指定カウンタとは、後述するステップ90におけるノズル制御の対象となるノズルの数をカウントするものである。スキャン回数カウンタとは、スキャン移動の回数をカウントするものであり、初期値は1とする。各ノズルにそれぞれ対応する移動回数カウンタとは、所定領域に対して、各ノズルがY方向へ相対的に移動する場合に、各ノズルが通過したドット位置の数をカウントするものである。
【0048】
インク噴射制御回路100には、インクジェットヘッド42の各ノズルの圧電素子に電圧を印加するためのノズル駆動回路106が接続されている。インク噴射制御回路100は、所定領域に対するインクジェットヘッド42の所定のノズルの相対位置が、インク液滴を塗布する対象のドット位置に到達した際に、そのドット位置に対応した電圧波形データを読み出してノズル駆動回路106に出力する。ノズル駆動回路106は、電圧波形データに基づいて電圧を発生させて上記所定のノズルの圧電素子に印加する。これにより基板30のインク塗布位置に移動されたインクジェットヘッド42のノズルからインクを噴射させることができる。
【0049】
また、インク噴射制御回路100は、インクジェットヘッド42が所定の回数目のスキャン移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、所定の回数に対応する噴射パターン情報を選択し、選択した噴射パターン情報に記録されている噴射情報に従って、インクジェットヘッド42の全ノズル(例えば、ノズルn1からノズルn50)の各々に、Y方向に沿った複数のドット位置(例えば、図5に示すY方向に沿った100個のドット位置)の各々に対して、インク液滴を噴射させて塗布させるか又は噴射させない機能を有する。
【0050】
インク噴射制御回路100が、インク液滴の噴射のためにノズル駆動回路に対して行う処理の具体的な説明の一例は以下の通りである。インクジェットヘッド42が塗布領域K1に対して、1回目のスキャン移動を開始する場合、インク噴射制御回路100は、メモリ102から、複数の噴射パターン情報のうち、スキャン移動回数1に対応する噴射パターン情報P1を選択して、読み出す。インク噴射制御回路100は、1回目のスキャン移動により、インクジェットヘッド42のノズルn1の位置が、座標(0,0)により特定されるドット位置に到達した際に、読み出した噴射パターン情報に含まれる噴射情報1−0に従ってノズルn1がインク液滴の噴射動作を行わないための情報をノズル駆動回路106に出力する。また、インク噴射制御回路100は、1回目のスキャン移動により、インクジェットヘッド42のノズルn50の位置が、座標(49,0)により特定されるドット位置に到達した際に、読み出した噴射パターン情報に含まれる噴射情報50−0に従ってノズルn50がインク液滴の噴射動作を行うための電圧波形情報をノズル駆動回路106に出力する。
【0051】
また、インク噴射制御回路100は、空打ち処理を実行するように指示する信号が送られると、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータ、Y方向移動モータの駆動により、基板保持テーブル26を、インクジェットヘッド42と対向しない位置に退避させる。空打ち処理とは、インクジェットヘッド42のノズルの各々からインク液滴を噴射させて塗布対象である基板30に対する塗布処理が行われていない期間において、塗布対象とは別の領域(本実施形態では空打ち用のケース)に向かって、各ノズルからインク液滴を噴射させ続ける処理のことである。
【0052】
そして、空打ち用のケース(図示せず)を、インクジェットヘッド42と対向する位置に移動させる。そして、インク噴射制御回路100は、ノズル駆動回路106を介して、インクジェットヘッド42の全ノズルに、インク液滴を空打ち用ケースに噴射させる(空打ち処理)。その後、インク噴射制御回路100は、空打ち用ケースを、空打ち処理が行われる前の位置に退避させる。なお、空打ち用のケースの存在が塗布対象に対する塗布処理に影響を与えない場合には、空打ち用のケースを進退させる機構は不要である。
【0053】
(インクジェット塗布方法)
次に、上述のインクジェット塗布装置を用いたインクジェット塗布方法について説明する。ここでは、一例として、図5に示すようなドット位置が配置された所定領域に対して、インクジェットヘッド42が相対的に移動する場合を考える。また、インクジェットヘッド42のノズルは、上述したようなノズルn1、ノズルn2、....ノズルn50であるとする。そして、インクジェットヘッド42が、塗布領域K1に対して、1回目のスキャン移動を行い、塗布領域K2に対して、2回目のスキャン移動を行い、塗布領域K3に対して、3回目のスキャン移動を行う場合を考える。
【0054】
また、ここでは、1つのインクジェットヘッド42(例えば、R(赤)用のインク液滴を噴射するインクジェットヘッド42)の塗布方法の説明を例にして、行うが、他の2つのインクジェットヘッド42(例えば、G(青)用のインク液滴を噴射するインクジェットヘッド42、B(青)用のインク液滴を噴射するインクジェットヘッド42)を用いたインク液滴の塗布方法も、同様にして行われる。
【0055】
先ず、作業者が、各スキャン移動の回数に対応する噴射パターン情報に必要な情報を図示しない情報入力部を用いて入力すると、インク噴射制御回路100に送られ、インク噴射制御回路100は、各スキャン移動の回数ごとの噴射パターン情報を生成し、メモリ102に記憶させる。
【0056】
次に、基板30にインク液滴を塗布する方法について、図9,10に示すフローチャート図を用いて説明する。
【0057】
ステップ10では、インク噴射制御回路100は、空打ち処理を行う。具体的には、作業者が、空打ち処理の実行のための所定の操作ボタン(インクジェット塗布装置に設けられている操作ボタン、図示せず)を操作することにより、操作信号がインク噴射制御回路100に送られる。インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、基板保持テーブル26を、インクジェットヘッド42と対向しない位置に退避させるとともに、空打ち用のケース(図示せず)を、インクジェットヘッド42と対向する位置に移動させる。そして、インク噴射制御回路100は、ノズル駆動回路106を介して、インクジェットヘッド42の全ノズルに、インク液滴を空打ち用ケースに噴射させる(空打ち処理)。これにより、インクジェットヘッド42の各ノズルにおいて空打ちが行われて強制的にインクが噴射され、これらのノズルの詰まり等の防止が可能となる。その後、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、空打ち用ケースを、空打ち処理が行われる前の位置に退避させる。
【0058】
ステップ20では、インク噴射制御回路100は、所定領域に対するインクジェットヘッド42の相対位置を初期位置に設定する。具体的には、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータの駆動、Y方向移動モータの駆動、θ方向移動モータの駆動により、図8に示すように、インクジェットヘッド42をX方向に対して角度αだけ傾斜させるとともに、インクジェットヘッド42のノズルn1と、座標(0,0)により特定されるドット位置との間の距離が距離A離間するような位置に、インクジェットヘッド42を配置させる。これにより、インクジェットヘッド42が所定領域に対して、X方向に相対的に移動すると、塗布領域K1に対して、1回目のスキャン移動を行うことになる。
【0059】
ステップ25では、インク噴射制御回路100は、メモリ102にアクセスして、複数の噴射パターン情報P1,P2,P3のうち、スキャン回数カウンタの値1(1回目のスキャン移動)に対応する噴射パターン情報P1を選択して読み出し、設定する。
【0060】
ステップ30では、インク噴射制御回路100は、スタートカウンタ103によるカウント動作を開始させるとともに、モータ駆動回路101を介して、Y方向移動モータの駆動によりインクジェットヘッド42を所定領域に対してY方向に相対的に移動させることを開始する。なお、この移動は、後述のステップ120まで継続して行われる。スタートカウンタ103は、上述したように、距離Aに対応するカウント値が設定されており、インク噴射制御回路100を介して入力されるスタート信号により、カウント動作を開始し、Y方向エンコーダから出力されるパルス数をカウントする。
【0061】
ステップ40では、インク噴射制御回路100は、スタートカウンタ103のカウント動作によるカウント値が、距離Aに対応するカウント値に達したか否かを判定し、距離Aに対応するカウント値に達した場合には、ステップ50の処理が行われ、距離Aに対応するカウント値に達していない場合には、ステップ30の処理が繰り返される。
【0062】
ステップ50では、インク噴射制御回路100は、ノズル指定カウンタのカウント値が全ノズル数(ここでは、50)に対応するカウント値に達したか否かを判定し、全ノズル数に対応するカウント値に達した場合には、ステップ100の処理が行われ、全ノズル数に対応するカウント値に達してない場合には、ステップ55の処理が行われる。
【0063】
ステップ55では、インク噴射制御回路100は、スキャン回数カウンタのカウント値が2以上であるか否かを判定し、2以上である場合には、ステップ57の処理を行い、1である場合には、ステップ60の処理を行う。
【0064】
ステップ57では、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、Y方向移動モータの駆動によりインクジェットヘッド42を所定領域に対してY方向に相対的に移動させることを開始する。なお、この移動は、後述のステップ120まで継続して行われる。
【0065】
ステップ60では、インク噴射制御回路100は、ノズル指定カウンタのカウント値に1を加算する。その後、ステップ70の処理を行うとともに、ステップ90の処理も並行して行う。
【0066】
ステップ70では、インク噴射制御回路100は、ノズルカウンタ105によるカウント動作を開始させる。ノズルカウンタ105には、上述したように、移動距離Bに対応するカウント値が設定されている。ノズルカウンタ105は、インク噴射制御回路100を介して入力されるスタート信号により、カウント動作を開始し、Y方向エンコーダから出力されるパルスをカウントする。
【0067】
ステップ80では、インク噴射制御回路100は、ノズルカウンタ105のカウント動作によるカウント値が、移動距離Bに対応するカウント値に達したか否かを判定し、移動距離Bに対応するカウント値に達した場合には、ステップ85で、ノズルカウンタのカウント値がリセットされた後、ステップ50の処理に戻り、移動距離Bに対応するカウント値に達していない場合には、ステップ70の処理が繰り返される。
【0068】
ステップ90では、インク噴射制御回路100は、ノズル指定カウンタのカウント値がノズル番号であるようなノズルの制御処理(以下、ノズル制御処理)を行う。このノズル制御処理は、ステップ60で、ノズル指定カウンタのカウント値が新たな値となるごとに、行われる。即ち、インクジェットヘッド42の全ノズルに対して、ノズル制御処理が行われる。このノズル制御処理の詳細な説明を図10に示すフローチャート図を用いて説明する。
【0069】
ステップ90−1では、インク噴射制御回路100は、ステップ60で設定されたノズル指定カウンタのカウント値(即ち、ノズル番号)に対応するドットカウンタ104によるカウント動作を開始させる。各ドットカウンタ104には、Y方向におけるドット位置間の距離dに対応するカウント値が設定されている。各ドットカウンタ104は、インク噴射制御回路100を介して入力されるスタート信号により、カウント動作を開始し、Y方向エンコーダから出力されるパルス数をカウントする。
【0070】
ステップ90−2では、インク噴射制御回路100は、ドットカウンタ104のカウント動作によるカウント値が、距離dに対応するカウント値に達したか否かを判定し、距離dに対応するカウント値に達した場合には、ステップ90−3の処理が行われ、距離dに対応するカウント値に達していない場合には、ステップ90−2の処理が繰り返される。
【0071】
ステップ90−3では、インク噴射制御回路100は、移動回数カウンタのカウント値に1を加算する。
【0072】
ステップ90−4では、インク噴射制御回路100は、現在設定されている噴射パターン情報を参照して、移動回数カウンタのカウント値から1を引いた値をY座標とし、ノズル指定カウンタのカウント値から1を引いた値をX座標とした場合における(X座標、Y座標)により特定されるドット位置と、ノズル制御の対象であるノズルとに対応する噴射情報を取得する。そして、インク噴射制御回路100は、取得した噴射情報に従って、ノズル制御の対象であるノズルが、上記ドット位置に対して、インク液滴を噴射して塗布するための情報、又は、インク液滴を噴射しないための情報を、ノズル駆動回路106に出力する。これにより、これにより、ノズル駆動回路106からの信号により、上記ノズルに対応する圧電素子が駆動され、上記ノズルからインク液滴が上記ドット位置に噴射され塗布されるか、又は、ノズル駆動回路106からの信号により、上記ノズルに対応する圧電素子が駆動されず、上記ノズルからインク液滴が上記ドット位置に噴射されないことになる。
【0073】
ステップ90−5では、インク噴射制御回路100は、移動回数カウンタのカウント値が、所定領域内のY方向における総ドット位置の数(ここでは、100)に達したか否かを判定し、上記Y方向における総ドット位置の数に達した場合には、ステップ90−6で、移動回数カウンタのカウント値がリセット(0にリセット)された後、本ノズル制御処理が終了し、達していない場合には、再度、ステップ90−1の処理以降の処理が行われる。
【0074】
ステップ100では、インク噴射制御回路100は、全ノズルに対応するノズル制御処理が終了したか否かを判定し、終了していない場合には、ノズル制御処理が終了していないノズルについてステップ90の処理を行い、終了した場合には、ステップ110の処理が行われる。
【0075】
ステップ110では、インク噴射制御回路100は、ノズル指定カウンタのカウント値を0にリセットする。
【0076】
ステップ120では、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、Y方向移動モータの駆動によるインクジェットヘッド42のY方向への相対的な移動を停止させる。
【0077】
ステップ130では、インクジェット噴射制御回路は、スキャン回数カウンタのカウント値に1を加算する。
【0078】
ステップ140では、インク噴射制御回路100は、スキャン回数カウンタの値が、総スキャン移動回数(ここでは、3)に達したか否かを判定し、総スキャン移動回数に達した場合には、ステップ145の処理が行われ、総スキャン回数に達しない場合には、ステップ160の処理が行われる。
【0079】
ステップ145では、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータ、Y方向移動モータの駆動により、インクジェットヘッド42の相対位置を、初期設定位置(ステップ10が行われる前の初期位置)に戻す。
【0080】
ステップ150では、インク噴射制御回路100は、スキャン回数カウンタのカウント値を1にリセットし、インクジェット塗布処理を終了する。
【0081】
ステップ160では、インクジェット噴射制御回路は、メモリ102にアクセスして、複数の噴射パターン情報P1,P2,P3のうち、スキャン回数カウンタの値(2回目のスキャン移動又は3回目のスキャン移動)に対応する噴射パターン情報を選択して読み出し、既に設定している噴射パターン情報に代えて、新たに読み出した噴射パターン情報を設定する。
【0082】
ステップ170では、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、Y方向移動モータの駆動により、所定領域に対するインクジェットヘッド42の相対位置を、今回のスキャン移動を開始する前に、インクジェットヘッド42が待機していた位置(例えば、1回目のスキャン移動が終了した場合には、ステップ20における初期位置)に、戻す。
【0083】
具体的には、インク噴射制御回路100は、X方向移動モータの駆動により、1回目のスキャン移動終了の場合には座標(0,0)により特定されるドット位置とインクジェットヘッド42のノズルn1との間の距離が距離A離間するような位置に、2回目のスキャン移動終了の場合には座標(25,0)により特定されるドット位置とインクジェットヘッド42のノズルn1との間の距離が距離A離間するような位置に、インクジェットヘッド42を所定領域に対して相対的に配置させる。
【0084】
そして、ステップ180では、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータの駆動により、所定領域に対するインクジェットヘッド42の相対位置を、X方向に距離Dだけ進ませる。具体的には、インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータの駆動を開始させる。そして、X方向カウンタは、所定領域に対してインクジェットヘッド42がX方向に相対的に移動することに伴ってX方向エンコーダから出力されるパルスをカウントし、設定値に達したとき、所定領域に対してインクジェットヘッド42の位置が、設定されたカウント値に対応する距離DだけX方向に進んだことを表す信号をインク噴射制御回路100に出力する。インク噴射制御回路100は、モータ駆動回路101を介して、X方向移動モータの駆動を停止させる。なお、ステップ170の処理、ステップ180の処理は、動作方向を独立させて、同時に実施されるようにしてもよい。また、あるスキャン移動の終了から、次のスキャン移動の開始までの間におけるインクジェットヘッド42の移動の仕方は、上述の移動の仕方に限定されず、他の移動の仕方であってもよい。
【0085】
そして、ステップ30以降の処理が行われることにより、以下のような処理が行われることになる。インクジェットヘッド42が塗布領域K2に対して、2回目のスキャン移動を行うことになり、ノズルn1からノズルn50が、基板30上の各ドット位置を対向しながら通過して、基板30上の各ドット位置に対して、インク液滴を噴射して塗布することになる。また、インクジェットヘッド42が塗布領域K3に対して、3回目のスキャン移動を行うことになり、ノズルn1からノズルn25が、基板30上の各ドット位置を対向しながら通過して、基板30上の各ドット位置に対して、インク液滴を噴射して塗布することになる。
【0086】
なお、上述した特定領域(特定領域K1,K2,K3)、スキャン移動の回数(3)、各噴射情報の設定は、上述の場合に限られず、種々に設定することができる。また、本実施形態のインクジェットヘッド42は、3つのヘッドに限定されず、複数のヘッドであればよい。また、上述したスキャン移動の方法は、一例であり、他の方法で行われてもよい。例えば、1回目のスキャン移動が終了した時点で、そのまま、インクジェットヘッド42はX方向に相対的に移動し、その後、インクジェットヘッド42がX方向(1回目のスキャン移動の方向とは逆方向)への2回目のスキャン移動を開始するようにしてもよい。また、本実施形態のインクジェット塗布方法により、基板30上における塗布対象の各ドット位置に、異なる2つのノズルで、それぞれインク液滴を2回塗布させるようにしたが、これに限定されず、基板30上における塗布対象の各ドット位置に、異なる複数(2以上)のノズルで、それぞれインク液滴を複数回(2回以上)塗布させることができる。
【0087】
(作用効果)
以上説明した本実施形態のインクジェット塗布方法によれば、従来技術のように、塗布対象領域(基板30上の領域)上の塗布対象位置(インク塗布対象のドット位置)だけに対応する噴射情報が記録された噴射パターン情報を記憶するのではなく、インクジェットヘッド42の全ノズルの各々と、基板30の領域を含む所定領域のY方向における複数のドット位置の各々と、の組合せに対応づけられた噴射情報が記録されている噴射パターン情報を、スキャン移動の回数ごとに、記憶することができる。
【0088】
そして、インクジェットヘッド42が各回数目のスキャン移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、各回数に対応する噴射パターン情報を選択し、選択した噴射パターン情報に記録されている噴射情報に従って、インクジェットヘッド42の全ノズルの各々に、上記Y方向における複数のドット位置の各々に対して、インク液滴を噴射させて塗布させるか又は噴射させないようにしている。
【0089】
このため、スキャン移動の回数ごとに、特定領域を塗布対象領域に限らず所定領域内で様々に設定することができ、上記組合せに対して、噴射情報を様々に設定することができる。これにより、基板30に対するインク液滴を塗布する方式として、例えば、基板30上における同じ塗布対象位置に、異なる複数のノズルで、それぞれインク液滴を複数回塗布させるような複雑な塗布方式を行わせたい場合、各スキャン移動に対応する特定領域の設定と、上記組合せに対応する噴射情報の設定とを適切に行う(例えば、本実施形態のように設定する)ことにより、実現が可能となる。
【0090】
従って、本実施形態によれば、塗布対象である基板30にインク液滴を塗布する方式の自由度が高くなるインクジェット塗布方法を提供することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、基板30上における各ドット位置に、異なる複数のノズルで、複数回インク液滴を塗布させることが可能となるので、基板30上でインクのにじみが生じないような場合でも、基板30上で、インクが広がっているように視認されるので、各ノズルによるインク塗布位置の誤差があっても、誤差がないように視認されることが可能となる。これにより、ノズルの製造のばらつきによるインク塗布位置の誤差のために、表示装置の画像表示性能が低下してしまうことが回避される。
【0092】
(変更例)
なお、2回目以降の所定回数目のスキャン移動に対応する噴射パターン情報の選択は、上記所定回数の前の回数のスキャン移動が行われている間に、行われるようにしてもよい。即ち、上述の実施形態では、インクジェットヘッド42がスキャン移動を終了するごとに、インクジェットヘッド42のスキャン移動が停止され(ステップ120)、その停止中に、メモリ102からスキャン移動回数に対応する噴射パターン情報が選択され設定されていたが(ステップ160)、本変更例では、インクジェットヘッド42がスキャン移動を行っている間に、メモリ102から次のスキャン移動回数に対応する噴射パターン情報が選択され、インクジェットヘッド42がスキャン移動を終了した際に、選択した噴射パターン情報が新たに設定される。
【0093】
具体的には、例えば、図9に示すフローチャート図において、ステップ160の処理は行われない。そして、ステップ50からステップ100までの処理の間のいずれかの処理で、現在行われているスキャン移動の次のスキャン移動に対応する噴射パターン情報の選択が行われ、ステップ170の前の処理で、選択した噴射パターン情報の設定が行われる。
【0094】
このような本変更例によれば、インクジェットヘッド42によるスキャン移動の停止中に、噴射パターン情報の選択が行なわれず、インクジェットヘッド42のスキャン移動中に噴射パターン情報の選択が行われるので、インクジェットヘッド42の停止時間を必要以上に長くする必要がなく、例えば、スキャン移動回数が非常に多い場合における停止時間のためのタイムロスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態のインクジェット塗布装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のインクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。
【図3】本実施形態のインクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。
【図4】本実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態の噴射パターン情報を説明するための補足図である。
【図6】本実施形態の噴射パターン情報を説明するための補足図である。
【図7】本実施形態の噴射パターン情報を説明するための補足図である。
【図8】本実施形態のインクジェットヘッドのスキャン移動前における配置を説明するための補足図である。
【図9】本実施形態のインクジェット塗布方法を説明するためのフローチャート図である。
【図10】本実施形態のインクジェット塗布方法のうち、ノズル制御処理を説明するためのフローチャート図である。
【符号の説明】
【0096】
1…インクジェット塗布装置、2…架台、3…インク塗布ボックス、4…インク補給ボックス、1…インクジェット塗布装置、10…制御部、30…基板、40…インクジェットヘッドユニット、42…インクジェットヘッド42、48…ノズル面、49…フレームカバー、50…ノズル、100…インク噴射制御回路、101…モータ駆動回路、102…メモリ、103…スタートカウンタ、104…ドットカウンタ、105…ノズルカウンタ、106…ノズル駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するためのノズルを複数有するインクジェットヘッドを塗布対象に対して相対移動させながら、前記塗布対象に各ノズルから前記液滴を噴射させて塗布するインクジェット塗布方法であって、
前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々と、前記相対移動の幅に含まれる複数の位置の各々との組合せに対応づけられた前記液滴の噴射に関する情報が記録されている噴射パターン情報を、前記相対移動ごとに、記憶する記憶工程と、
前記インクジェットヘッドが前記相対移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、前記相対移動に対応する噴射パターン情報を選択する選択工程と、
前記インクジェットヘッドが前記相対移動を行う場合、前記選択工程で選択された噴射パターン情報に記録されている前記液滴の噴射に関する情報に従って、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々に、前記複数の位置の各々に対して、前記液滴を噴射させて塗布させるか又は前記液滴を噴射させない塗布工程とを有することを特徴とするインクジェット塗布方法。
【請求項2】
液滴を噴射するためのノズルを複数有するインクジェットヘッドを塗布対象に対して相対移動させながら、前記塗布対象に各ノズルから前記液滴を噴射させて塗布するインクジェット塗布装置であって、
前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々と、前記相対移動の幅に含まれる複数の位置の各々との組合せに対応づけられた前記液滴の噴射に関する情報が記録されている噴射パターン情報を、前記相対移動ごとに、記憶する記憶部と、
前記インクジェットヘッドが前記相対移動を開始する場合、複数の噴射パターン情報のうち、前記相対移動に対応する噴射パターン情報を選択し、前記インクジェットヘッドが前記相対移動を行う場合、選択された噴射パターン情報に記録されている前記液滴の噴射に関する情報に従って、前記インクジェットヘッドの全ノズルの各々に、前記複数の位置の各々に対して、前記液滴を噴射させて塗布させるか又は前記液滴を噴射させない制御部を有することを特徴とするインクジェット塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−159037(P2006−159037A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351865(P2004−351865)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】