説明

インクジェット記録ヘッド

【課題】 インクジェット記録ヘッドで電気配線テープとコンタクト基板の接続部において、耐インク性封止剤でシーリングしているが、接続部表裏をシーリングする必要があるため分割して行っていることと、段差のあるコーナー部への塗布となるため安定してシーリングすることが課題であった。
【解決手段】 本発明は、電気配線テープ近傍にスリットを設けることにより一括にシーリングが可能となり且つ、安定的にシーリングすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出して記録動作を行うインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドに関し、特にインクジェット記録ヘッドのインク吐出のために電気信号を印加する配線テープとインクジェット記録装置から電気信号を受け取るためのコンタクト基板との接続部近傍の構成とその接続部を耐インク性封止剤で保護されているインクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、ランニングコストが安く、装置の小型化も可能であり、さらに、複数色のインクを用いてカラー画像記録に対応することも容易であることから、コンピュータ関係の出力機器等に幅広く利用され、商品化されている。
【0003】
一方、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子としては、ピエゾ素子などの電気機械変換体を用いたもの、レーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用でインク滴を吐出させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によって液体を加熱させるもの等がある。
【0004】
その中でも熱エネルギを利用してインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録方式のヘッドは、吐出口を高密度に配列することができるため高解像度の記録が可能である。その中でも電気熱変換素子をエネルギ発生素子として用いた記録ヘッドは、小型化も容易であり、かつ最近の半導体分野における技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術の長所を十二分に活用でき、高密度実装化が容易で製造コストも安価なことから有利である。
【0005】
従来、特開2000−127404号公報のように、インクを吐出するため電気信号を記録素子に印加するための、ポリイミドフィルム上に銅箔を接着して、この銅箔をパターニングし金メッキした配線テープと、インクジェット記録装置から電気信号を受け取るためのコンタクト基板とが、導電粒子と絶縁性接着剤とからなる異方性導電フィルムを用いて接続せれた構成となっている。
【0006】
また、図2にように、接続部をインクのミストやインクの漏れ・外的衝撃から保護する目的で耐インク性封止剤で封止されている構成となっており、同様に図2裏面側(コンタクト基板と電気配線テープ接続部裏面側)も封止を行っている構成である。
【特許文献1】特開2000-127404
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような複数の記録素子基板を有し、電気配線テープとインクジェット記録装置から電気信号を受け取るコンタクト基板の電気接続を異方性導電フィルムで接続しその接続部を耐インク性封止剤で封止するという構成のインクジェット記録ヘッドにおいては、以下に述べる課題があった。
【0008】
(1)コンタクト基板の配線パターンの構成上、金メッキのためのメッキリード部が基板先端端面まで達しているため、電気配線テープとの電気接続のために使用している異方性導電フィルムでメッキリード部まで覆い隠すことができず(図3−a)、インク吐出時のインクのミストやインクの漏れなどから電気的ショートを防ぐため、耐インク性封止剤で異方性導電フィルム周辺をシーリングしていた。(図3−c,図−3d)
(2)図3に示すように、耐インク性封止剤はシリコーンRTVなどの封止剤を使用しており、その第2の封止剤塗布時図3−dの部分に塗布するため(C−C断面部裏面)、塗布装置の塗布位置バラツキや封止剤の粘度バラツキなどによって、異方性導電フィルム周辺部を完全にシーリングできないという不良が発生し、インクなどの漏れ等により電気的ショートを引き起こす場合があった。
【0009】
(3)また、コンタクト基板と電気配線テープ接続部のシーリングは図3−cの様に、接続部表側も第1の封止剤にて封止する必要があり、上記(2)の裏面部分の封止剤とは粘度異なる封止剤を使用している。そのため製造装置のコストアップや工程増による製造工程要員の増員などによる製品コストアップなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑み、電気配線テープの一部分にベースフィルムとカバーフィルムを除去した切り欠き部を形成し、コンタクト基板と電気配線テープの接続部の耐インク性封止剤によるシーリングの安定性を確保し、安価な生産ラインで製造できる構成と信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のインクジェット記録ヘッドは、記録液を吐出する複数の記録素子、および前記各記録素子に対応する複数の電極を有する複数の記録素子基板と、前記記録素子基板を保持固定する支持部材からなる記録素子ユニットで、記録素子にインクを吐出するための電気信号を印加する電気配線テープとインクジェット記録装置から電気信号を受け取るためのコンタクト基板を備える構成で、前記電気配線テープの構成としてベースフィルムとベースフィルムの接着剤と電気導体層とカバーフィルム接着剤とカバーフィルムからなり、前記電気配線テープとコンタクト基板とは異方性導電フィルムを用いて電気的に接続し、前記異方性導電フィルムの接続部は耐インク封止剤で封止されているインクジェット記録ヘッドにおいて、前記コンタクト基板と電気配線テープとの電気接続部近傍部の電気配線テープ配線パターン部が幅方向に一部分、前記ベースフィルムとカバーフィルムが広く除去されて、所定の形状の切り欠き部が形成されている構成である。
【0012】
前記電気配線テープの切り欠き部は、独立した所定の形状が複数からなる構成であっても良い。
【0013】
前記電気配線テープの幅方向の両端部は、ベースフィルムとカバーフィルムが除去されていない構成であっても良い。
【0014】
さらに前記電気配線テープ切り欠き部は、前記異方性導電フィルムで電気的に接続された部分と同じ耐インク封止剤を用いて封止されており、本発明の電気配線テープ切り欠き部上面から封止剤を流し込むことにより、コンタクト基板と電気配線テープ接続裏面部のシーリングを確実に行うことができる構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンタクト基板と電気配線テープとの電気接続部を確実に表裏ともにシーリングさせるため、接続部近傍の電気配線テープ側に切り欠きを設けその上面から封止剤を流し込むことにより、裏面側のコンタクト基板メッキリード部(図3−a)を確実に封止できるため、封止剤の粘度バラツキによるシーリングミスや封止の位置ズレによるコンタクト基板メッキリード部への封止剤不足などを防ぐことができ、インクジェット記録ヘッド吐出時のインクミストやインク付着による電気的ショートをなくすことができ信頼性を高めることができる。また、図3−c部の接続部表側も封止するが、電気配線テープ上面側から一括でシーリングできる形態となり、生産設備のコストダウンや工程削減による製造要員の削減等製品のコストダウンを図ることができ、安価で信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図4〜図11は、本発明が実施もしくは適用される好適なヘッドカートリッジ、記録ヘッド、インクタンクのそれぞれ及びそれぞれの関係を説明するための説明図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0017】
本発明の記録ヘッドH1001は、図4(a)および図4(b)の斜視図でわかるように、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と記録ヘッドH1001に着脱自在に設けられたインクタンクH1900(ブラックインクタンクH1901、シアンインクタンクH1902、マゼンタインクタンクH1903、イエローインクタンクH1904)とで構成されている。この記録ヘッドカートリッジH1000は、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能となっている。ブラックインクタンクH1901はブラックのインク用、シアンインクタンクH1902はシアンのインク用、マゼンタインクタンクH1903はマゼンタのインク用、イエローインクタンクH1904はイエローのインク用である。この様に各インクタンクH1901、H1902、H1903、H1904のそれぞれが記録ヘッドH1001に対して着脱自在で、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクの交換が必要となったインクタンクのみを交換することができ、よって、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0018】
次に記録ヘッドH1001に関してさらに詳しく記録ヘッドを構成しているそれぞれの構成要素毎に順を追って説明する。
【0019】
(1)記録ヘッド
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じせしめるための熱エネルギを生成する電気熱変換体を用いて記録を行う、バブルジェット(登録商標)方式のサイドシュータ型とされる記録ヘッドである。
【0020】
記録ヘッドH1001は、図5の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002と、インク供給ユニットH1003と、タンクホルダH2000とから構成される。
【0021】
さらに、図6の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002は、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線テープH1300、電気コンタクト基板H2200、および第2のプレートH1400で構成されており、また、インク供給ユニットH1003は、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントゴムH2300、フィルタH1700、およびシールゴムH1800から構成されている。
【0022】
(1−1)記録素子ユニット
図7は、第1の記録素子基板H1100の構成を説明するために一部分解した斜視図である。
【0023】
第1の記録素子基板H1100は、例えば、厚さ0.5〜1mmのSi基板H1110にインク流路として長溝状の貫通口からなるインク供給口H1102がSiの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成され、インク供給口H1102を挟んだ両側に電気熱変換素子H1103がそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列され、電気熱変換素子H1103と、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の不図示の電気配線が成膜技術により形成されている。さらに、電気配線に電力を供給するための電極部H1104が電気熱変換素子H1103の両外側に配列されており、電極部H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている。そして、Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に対応したインク流路を形成するためのインク流路壁H1106と吐出口H1107が樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりに形成され、吐出口群H1108を形成している。
【0024】
インク流路H1102から供給されたインクは、電気熱変換素子H1103により発生した気泡により、電気熱変換素子H1103に対向して設けられている吐出口H1107から吐出される。
【0025】
また、図8は第2の記録素子基板H1101の構成を説明するために一部分解した斜視図である。
【0026】
第2の記録素子基板H1101は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを吐出させるための記録素子基板であり、3個のインク供給口H1102が並列して形成されており、それぞれのインク供給口を挟んだ両側に電気熱変換素子H1103と吐出口H1107が形成されている。もちろん第1の記録素子基板H1100と同じようにSi基板H1110にインク供給口H1102や電気熱変換素子H1103、電気配線、電極部H1104などが形成されており、その上に樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりインク流路や吐出口H1107が形成されている。
【0027】
また、第1の記録素子基板H1100と同様に電気配線に電力を供給するための電極部H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている。
【0028】
次に、第1のプレートH1200に関して説明する。
【0029】
第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al2O3)材料で形成されている。なお、第1のプレートH1200の素材は、アルミナに限られることなく、記録素子基板H1100の材料の線膨張率と同等の線膨張率を有し、かつ、記録素子基板H1100の材料の熱伝導率と同等もしくは同等以上の熱伝導率を有する材料で作られてもよい。第1のプレートH1200の素材は、例えば、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちいずれであってもよい。第1のプレートH1200には、第1の記録素子基板H1100にブラックのインクを供給するためのインク供給口H1201と第2の記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローのインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されており、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101の各インク供給口1102が第1のプレートH1200のインク供給口H1201にそれぞれ対応し、かつ、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101はそれぞれ第1のプレートH1200に対して位置精度良く接着固定される。接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。第1の接着剤は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤であり、接着層の厚みは50μm以下が望ましい。
【0030】
電気配線テープH1300は、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、それぞれの記録素子基板を組み込むための複数の開口部と、それぞれの記録素子基板の電極部H1104に対応する電極端子H1302と、この電気配線テープH1300の端部に位置し、本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有した電気コンタクト基板H2200と電気的接続をおこなうための電極端子部H1303を有しており、電極端子H1302と電極端子H1303は連続した銅箔の配線パターンでつながっている。
【0031】
電気配線テープH1300と第1の記録素子基板1100と第2の記録素子基板H1101は、それぞれ電気的に接続されており、接続方法は、例えば、第1の記録素子基板H1100の電極部H1104のバンプH1105と、第1の記録素子基板H1100の電極部H1104に対応する電気配線テープH1300の電極端子H1302とが熱超音波圧着法により電気接合され、同様に、第2の記録素子基板H1101の電極部H1104のバンプH1105と、第2の記録素子基板H1101の電極部H1104に対応する電気配線テープH1300の電極端子H1302とが熱超音波圧着法により電気接合されているものであってもよい。
【0032】
第2のプレートH1400は、例えば、厚さ0.5mm〜1mmの一枚の板状部材であり、例えばアルミナ(Al2O3)等のセラミックや、Al、SUSなどの金属材料で形成されており、その形状は、第1のプレートH1200に接着固定された第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101の外形寸法よりも大きな開口部をそれぞれ有する形状となっている。また、第2のプレートH1400は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300を平面的に電気接続できるように、第1のプレートH1200に第2の接着剤により接着されており、電気配線テープH1300の裏面が第3の接着剤により接着固定される。
【0033】
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308(図12参照)により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。第1の封止剤H1307は、主に電気配線テープH1300の電極端子H1302と記録素子基板のバンプH1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止し、第2の封止剤H1308は、上述の接続部の表側を封止している。
【0034】
さらに、電気配線テープH1300の端部に本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有した電気コンタクト基板H2200が、異方性導電フィルム等を用いて熱圧着して電気的に接続される。
【0035】
そして、電気配線テープH1300は、第1のプレートH1200の一側面で折り曲げられ、第1のプレートH1200の側面に第3の接着剤H1306で接着される。第3の接着剤H1306は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした厚さ10μm〜100μmの熱硬化接着剤が使用される。
【0036】
図2に示すように、電気配線テープH1300と電気コンタクト基板H2200の電気接続部を、耐インク性第1の封止剤H2500でシーリングし、インクの漏れやミストから保護している。また図3−bのように接続部裏面についても第2の封止剤H2501で保護している。この耐インク性封止剤は、例えば、シリコーンRTVなどが使用される。
【0037】
(1−2)インク供給ユニット
インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形により形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0038】
図6、図9に示すように、インク供給部材H1500は、インクタンクH1900から記録素子ユニットH1002にインクを導くためのインク供給ユニットH1003の一構成部品であり、流路形成部材H1600を超音波溶着することによりインク流路H1501を形成している。また、インクタンクH1900と係合するジョイントH1517には、外部からのゴミの進入を防ぐためのフィルタH1700が溶着により接合されており、さらに、ジョイントH1517部からのインクの蒸発を防止するために、シールゴムH1800が装着されている。
【0039】
また、インク供給部材H1500は、着脱自在のインクタンクH1900を保持する機能も一部有しており、インクタンクH1900の第2の爪H1910と係合する第1の穴H1503が形成されている。また、記録ヘッドカートリッジH1000をインクジェット記録装置本体のキャリッジの装着位置に案内するための装着ガイドH1601、記録ヘッドカートリッジH1000をヘッドセットレバーによりキャリッジに装着固定するための係合部、およびキャリッジの所定の装着位置に位置決めするためのX方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1509、Y方向(記録メディア搬送方向)の突き当て部H1510、Z方向(インク吐出方向)の突き当て部H1511を備えている。また、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200を位置決め固定する端子固定部H1512を有し、端子固定部H1512およびその周囲には複数のリブが設けられ、端子固定部H1512を有する面の剛性を高めている。
【0040】
(1−3)記録ヘッドユニットとインク供給ユニットの結合
図5に示した通り、記録ヘッドH1001は、記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合し、さらにタンクホルダH2000と結合することにより完成する。これらの結合は以下のように行われる。
【0041】
記録素子ユニットH1002のインク供給口(第1のプレートH1200のインク供給口H1201)とインク供給ユニットH1003のインク供給口(流路形成部材H1600のインク供給口H1602)をインクが漏洩しないように連通させるため、ジョイントゴムH2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。この際同時に、記録素子ユニットH1002はインク供給ユニットH1003のX方向、Y方向、Z方向の基準位置に対して正確に位置決めがされ固定される。
【0042】
そして記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給部材H1500の一側面に、端子位置決めピンH1515(2ヶ所)と端子位置決め穴H1309(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法は、例えば、インク供給部材H1500に設けられた端子結合ピンH1515をかしめることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定してもよい。このようにしてインク供給ユニットH1003に記録素子ユニットH1002が組み付けられた状態を図10に示すさらにインク供給部材H1500のタンクホルダH2000との結合穴および結合部をタンクホルダH2000に嵌合させ結合することにより記録ヘッドH1001が完成する。図11に、タンクホルダH2000にインク供給ユニットH1003および記録素子ユニットH1002を組み付けられることで完成した記録ヘッドH1001を示す。
【0043】
(2)記録ヘッドカートリッジの説明
図4(a)、図4(b)に示したように、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する記録ヘッドH1001に装着されたブラックインクタンクH1901、シアンインクタンクH1902、マゼンタインクタンクH1903、イエローインクタンクH1904のそれぞれの内部には、上述したように、対応する色のインクが収納されている。また、図6に示すようにそれぞれのインクタンクH1901、H1902、H1903、H1904には、各インクタンクH1901、H1902、H1903、H1904内のインクを記録ヘッドH1001に供給するためのインク供給口H1907が形成されている。例えばインクタンクH1901が記録ヘッドH1001に装着されると、ブラックインクタンクH1901のインク供給口H1907が記録ヘッドH1001のジョイントH1517に設けられたフィルタH1700と圧接され、ブラックインクタンクH1901内のブラックインクがインク供給口H1907から記録ヘッドH1001のインク流路H1501を介して第1のプレートH1200を通り第1の記録素子基板H1100に供給される。
【0044】
そして、電気熱変換素子H1103と吐出口H1107のある不図示の発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子H1103に与えられる熱エネルギによって被記録媒体である記録用紙に向けて吐出される。
【実施例1】
【0045】
図1−aは、本発明の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの電気配線テープH1300であり、コンタクト基板配線との電気接続部近傍に幅方向に一部分、ベースフィルムとカバーフィルムが除去され切り欠き部が形成されていることを示した斜視図である。またその切り欠き部は独立した所定の形状が複数からなる構成でもあり、更に電気配線テープ幅方向の両端部は切り欠きの無い状態を表した斜視図でもある。
【0046】
従来、コンタクト基板配線パターンH501は、図3−aに示す通りコンタクト基板先端部までパターンが達しており、且つ基板端面(側面)まで達しているため、耐インク性封止剤でシーリングが必要であり、インクジェット記録ヘッド吐出時のインクミストやインクの漏れなどから電気的ショートならないよう保護していた。
【0047】
実際には、図3−c,図3―dに示す通り電気接続部周辺を耐インク性封止剤にて電気配線テープ上面側とc‐c断面部のように電気配線テープの裏面側と両面シーリングしていた。しかしながら、図3−dのように電気接続部裏面側を封止する際、第2の封止剤H2501にてシーリングするが、コンタクト基板と電気配線テープとの段差や表面の濡れ性の違いまた、封止剤の粘度バラツキなどにより図3−aに示すコンタクト基板メッキリード部H2201を完全に覆い隠すことができない不良が発生することがあり、インクの漏れやミストなどにより電気的ショートを起こす恐れがあった。
【0048】
また、図3−cと図3−dを封止剤にてシーリングする際、粘度の違う2種類の封止剤を使用しており、工程増による生産設備の投資アップや製品のコストアップなど引き起こしていた。
【0049】
したがって、本発明の実施形態にあるように電気配線テープのコンタクト基板との電気的接続部近傍にベースフィルムとカバーフィルムを除去した切り欠き部を形成し、その切り欠き部上面からH2501の封止剤を流し込むことにより確実に裏面側のコンタクト基板メッキリード部H2201を完全に覆い隠すことができる。(図1−a、図1−b、図1−c)
また、電気配線テープとコンタクト基板の電気接続部である表側についても同一方向からシーリングすることができ、且つH2501の封止剤を使用することにより、工程削減と封止剤統一によるコストダウンを図ることができる。
【0050】
さらに、電気配線テープの切り欠き部は幅方向の両端部まで達しておらず、両端部の構成は、カバーフィルムとベースフィルムが削除されていないため、電気配線テープのねじれ方向の外的応力がかかってとしても、強度的に保たれ電気導体層パターンのパターン断線などを防止することもできる。
【実施例2】
【0051】
図1−a下部の斜視図は、本発明の形態である電気配線テープの幅方向に独立した複数の切り欠き部を示した斜視図である。
【0052】
このように、独立した複数からなる切り欠き部の構成であれば電気配線テープのねじれ方向の応力に対し更に有利であり、インクジェット記録ヘッド組立生産設備的にも従来の構成をそのまま流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態である電気配線テープの外観斜視図である。(b)本発明の第1の実施形態である電気配線テープとコンタクト基板の接続部を封止した状態の斜視図である。(c)本発明の第1の実施形態である電気配線テープとコンタクト基板接続部を封止した状態の図1−bのD−D断面図である。
【図2】コンタクト基板と電気配線テープ接続部を封止した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)コンタクト基板と電気配線テープの接続部の状態を裏面から示した斜視図である。(b)コンタクト基板と電気配線テープとを電機接続する異方性導電フィルムとの状態を示した斜視図である。(c)コンタクト基板と電気配線テープを接続し、封止剤にてシーリングした状態を示した斜視図である。(d)電気接続部裏面をシーリングしている状態を示した図3−cのC−C線での一部断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の記録ヘッドカートリッジの外観斜視図である。
【図5】図1に示した記録ヘッドカートリッジの分解斜視図である。
【図6】図2に示したインク供給ユニットおよび記録素子ユニットの分解斜視図である。
【図7】図3に示した第1の記録素子基板の一部破断がなされた斜視図である。
【図8】図3に示した第2の記録素子基板の一部破断がなされた斜視図である。
【図9】図1に示した記録ヘッドカートリッジの側断面図である。
【図10】インク供給ユニットに記録素子ユニットを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図11】タンクホルダにインク供給ユニットおよび記録素子ユニットを組み付けることで完成した記録ヘッドを示す斜視図である。
【図12】記録素子ユニットの、図2に示すB−B線での一部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
H500 電気コンタクト基板空きスペース
H501 電気コンタクト基板配線パターン
H502 電気コンタクト基板独立した凸部
H503 異方性導電フィルム
H504 電気コンタクト基板凸部
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット
H1100、H1100’、H1100” 第1の記録素子基板
H1101、H1101’、H1101” 第2の記録素子基板
H1101C シアン用第2の記録素子基板
H1101M マゼンタ用第2の記録素子基板
H1101Y イエロー用第2の記録素子基板
H1102 インク供給口
H1103 電気熱変換素子
H1104、H1104” 電極
H1105、H1105” バンプ
H1106 インク流路壁
H1107 吐出口
H1108 吐出口列
H1110 Si基板
H1200 第1のプレート
H1201 インク供給口
H1300、H1300’、H1300” 電気配線テープ
H1301 外部信号入力端子
H1302、H1302’、H1302a、H1302b 電極端子
H1303 電極端子部
H1304 熱硬化接着樹脂
H1305 第1の折り曲げ部
H1306 第3の接着剤
H1307 第1の封止剤
H1308 第2の封止剤
H1309 端子位置決め穴
H1310 端子結合穴
H1311 電気配線テープ ベースフィルム
H1312 電気配線テープ カバーフィルム
H1313 電気配線テープ 電気導体層
H1400 第2のプレート
H1500 インク供給部材
H1501 インク流路
H1502 タンク位置決め穴
H1503 第1の穴
H1504 第2の穴
H1505 第3の穴
H1506 開口部
H1508 係合部
H1509 X突き当て部
H1510 Y突き当て部
H1511 Z突き当て部
H1512 端子固定部
H1514 色間リブ
H1515 端子位置決めピン
H1516 端子結合ピン
H1517 ジョイント
H1600 流路形成部材
H1601 装着ガイド
H1602 インク供給口
H1700 フィルタ
H1800 シールゴム
H1900 インクタンク
H1901 ブラックインクタンク
H1902 シアンインクタンク
H1903 マゼンタインクタンク
H1904 イエローインクタンク
H1907 インク供給口
H1908 タンク位置決めピン
H1909 第1の爪
H1910 第2の爪
H1911 第3の爪
H1912 可動レバー
H2000 タンクホルダ
H2200 電気コンタクト基板
H2201 電気コンタクト基板メッキリード部
H2300 ジョイントシール部材
H2400 ビス
H2500 耐インク性第1の封止剤
H2501 耐インク性第2の封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液を吐出する複数の記録素子、および前記各記録素子に対応する複数の電極を有する複数の記録素子基板と、前記記録素子基板を保持固定する支持部材からなる記録素子ユニットで、記録素子にインクを吐出するための電気信号を印加する電気配線テープとインクジェット記録装置から電気信号を受け取るためのコンタクト基板を備える構成で、前記電気配線テープの構成としてベースフィルムとベースフィルムの接着剤と電気導体層とカバーフィルム接着剤とカバーフィルムからなり、前記電気配線テープとコンタクト基板とは異方性導電フィルムを用いて電気的に接続し、前記異方性導電フィルムの接続部は耐インク封止剤で封止されているインクジェット記録ヘッドにおいて、前記コンタクト基板と電気配線テープとの電気接続部近傍部の電気配線テープ配線パターン部が幅方向に一部分、前記ベースフィルムとカバーフィルムが広く除去されて、所定の形状の切り欠き部が形成されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記電気配線テープの切り欠き部は、独立した所定の形状が複数からなる構成である請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記電気配線テープの幅方向の両端部は、ベースフィルムとカバーフィルムが除去されていない構成の請求項1〜2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記電気配線テープ切り欠き部は、前記異方性導電フィルムで電気的に接続された部分と同じ耐インク封止剤を用いて封止されていることを特徴とする請求項1〜3に記載のインクジェット記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−313831(P2007−313831A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148195(P2006−148195)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】