説明

インクジェット記録装置

【課題】記録ムラを低減することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】ノズル230を複数備えた記録ヘッドモジュール210のノズル230からインク粒子130を吐出して被記録体P上に着弾させるインクジェット記録装置において、前記複数のノズル230からそれぞれ吐出するインク粒子130が、前記被記録体Pの同一の画素位置に着弾できるように、前記インク粒子130の吐出方向を偏向することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばライン走査型インクジェット記録装置などのインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録用紙に高速印刷する高速インクジェット記録装置として、ライン走査型インクジェット記録装置が提案されている。この装置は、記録用紙の幅方向に幅全体に延びる長尺インクジェット記録ヘッドを有し、該記録ヘッドにはインク粒子吐出用のノズル孔が列状に形成されている。
【0003】
このような記録ヘッドを記録用紙面に対向させた状態で、前記ノズル孔からインク粒子を吐出させ、同時に記録用紙を連続移動させて主走査を行う。主走査は、記録用紙の移動方向への走査を意味し、各ノズル孔が対向する記録用紙の主走査方向の線を主走査線と呼ぶ。このような制御により、記録用紙の主走査線へ選択的に記録ドットを形成し、記録用紙上に記録画像が形成される。
このようなライン走査型インクジェット記録装置には、コンティニュアスインクジェット方式の記録ヘッドを使用するものと、オンデマンドインクジェット方式の記録ヘッドを使用するものがある。オンデマンド方式のインクジェット記録装置はコンティニュアス方式の記録装置に比べて記録速度では及ばないが、インクシステムが非常に簡単である等のため、普及型の高速記録装置を提供するのに適している。
特開平11−78013号公報には、オンデマンド方式のインクジェット記録装置で使用される代表的な記録ヘッドが開示されている。該記録ヘッドには、記録用紙の各主走査線に1:1で対応するように、すなわち主走査線の数だけのノズルが列状(ライン状)に形成されている。各ノズルはノズル孔を開口とするインク室を有する。そして圧電素子或いは発熱素子へ駆動電圧を印加することにより、該インク室中のインクに圧力を加え、ノズル孔からインク粒子を吐出させる。このような構成により、高速記録装置を簡便に構成できる。
しかしながら、主走査線数分のノズルを使用するため、例えば18インチ幅の記録用紙に300dpiの記録ドット密度で記録するには、5400本の主走査線が必用となる。従って、1色印刷用の記録装置でも5400個のノズルが必要となる。また、4色インクで記録するカラー記録装置においては21600個のノズルを搭載する必要がある。
オンデマンドインクジェット方式記録ヘッドでは、ノズルを高集積度で作成できるため、このような多数のノズル配置を実現することは可能である。しかし、このような多数のノズルのうち1ノズルでも故障すると、記録できない主走査線が生じてしまい、記録すべき情報が欠落してしまう致命的な問題を起こしていた。
故障の要因としては、ノズル孔目詰まりやノズルへの気泡滞留によるインク粒子吐出不能、あるいはノズル孔半詰まりやノズル孔周辺部のインクによる不均一な濡れに伴うインク吐出方向の曲がり等様々な要因が考えられる。
【0004】
しかしながら、このような故障要因を多数のノズルについて、記録装置運転中、常に起こさぬようにすることは非常に困難であり、これにより記録の信頼性を確保することが困難であった。
また、記録画像の品質を確保する上での問題も生じていた。つまり、上記多数のノズルを同一寸法に製作することは困難であり、製造バラツキ等の要因で各ノズルのインク吐出特性にバラツキが出る。
例えば、隣接するノズル孔から吐出するインク粒子について大きさや形状等に無視できない不揃いがあると、筋ムラや濃度ムラ等記録ムラが生じる。シリアル型記録ヘッドであれば、記録ヘッドのスキャン領域を変更するなどして、インク粒子の大きさの不揃いを目立たないように対策することは可能である。しかし、ライン型記録ヘッドのようにヘッドを固定して使用する場合、隣接するノズルは固定されているため、このような不揃いノズルを有する記録ヘッドを使用することはできない。
【0005】
その一方で、多数のノズルを問題のないレベルにバラツキなく揃えた記録ヘッドを製造するとなると製造歩留まりが極端に悪くなる。また、当初ノズル特性が揃っていても、記録装置の稼動中に何らかの原因で吐出特性が隣接ノズル間で不揃いになってしまうこともあった。このように記録品質を確保する上でも問題があった。
一方、米国特許第5、975、683号明細書(特開平8−332724号公報に対応)にはインク粒子を電界操作するライン走査型インクジェット記録装置が開示されている。この装置では、電界走査によって、吐出されたインク粒子を左右方向に偏向させることによって、一つの画素内にある水平方向のドット数を増加させ、高解像度の画像を形成している。以下、添付の図面を参照して詳述する。
図1に示す印字ヘッド18は、アクチュエータ11によって開口部13からインク粒子10を印刷基面15に向けて噴射する。このとき、インク中の正イオンは印刷基面15の背後に設けられた電極14の高い負電圧(−1000V)に反応して、インク表面12に集中し、インク粒子10がインク表面12から分離する時点でインク粒子10は正に帯電している。それぞれの開口部13を挟む両側には一対の方向制御電極16,17が設けられている。
【0006】
このような構成において、方向制御電極16を−100V、方向制御電極17を+100Vとすると、開口部13から吐出されるインク10は、周知の静電法則に従って、図中矢印の方向に偏向して飛翔する。また、方向制御電極16を+100V、方向制御電極17を−100Vとすると、インク10はこれとは逆方向に偏向して飛翔する。電極16、17の双方の電位を0Vにすると、インク粒子10は左右何れにも偏向せずに飛翔する。
【0007】
このように方向制御電極16,17の電位を制御することにより、図2に示すように、一つの画素内に右側ドット、中央ドット、左側ドットの3つのドットを形成することができ、水平方向において解像度の高い画像を形成することができる。
しかしながら、このように印刷基面15と方向制御電極16,17間の電界を制御する偏向電界制御方式においては、個々のインク粒子を独立に偏向制御することができない。これは、偏向制御電界が及ぶ範囲に先に偏向制御したインク粒子が存在する場合には、それらのインク粒子にも現在印加中の偏向電界の作用が及んでしまうためである。そのため、偏向作用の独立性に劣り、高速記録や、記録精度の上で不利である。
また、このような記録装置においても、1ノズルでも故障すると、記録できない主走査線が生じてしまい、記録すべき情報が欠落してしまう点においては、前述の装置と変わらない。
【特許文献1】特開平11−78013号公報
【特許文献2】米国特許第5、975、683号明細書
【特許文献3】特開平10−76665号公報
【特許文献4】特開平10−119290号公報
【特許文献5】特開平11−28827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、記録ムラを低減することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、ノズルが故障しても記録情報の欠落を引き起こすことなく記録が続行可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、ノズルを複数並設した記録ヘッドの前記ノズルからインク粒子を吐出して被記録体上に着弾させるインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドのノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させる例えば後述する偏向電極などからなる吐出方向偏向手段と、
少なくとも2つの異なるノズルから前記吐出方向偏向手段によってそれぞれ異なる方向にインク粒子を吐出することにより、前記被記録体上の同じ画素位置に着弾できるように制御する例えば後述する偏向制御信号発生回路、タイミング信号発生回路、インク吐出制御回路などからなる吐出制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の第2の手段は、ノズルを複数並設した記録ヘッドの前記ノズルからインク粒子を吐出して被記録体上に着弾させるインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルを有し、
前記ノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させることのできる吐出方向偏向手段と、
前記ノズルから前記吐出方向偏向手段によってそれぞれ異なる方向にインク粒子を吐出させることのできる吐出制御手段を備え、
前記吐出方向偏向手段と吐出制御手段によって、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体上の第1の画素位置に着弾可能であって、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体上の第2の画素位置に着弾可能であるとともに、前記第1の画素位置にも着弾可能であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記吐出制御手段による吐出制御が、前記記録ヘッドに対する前記被記録媒体の1回の相対移動毎に行われることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の手段は前記第1または第2の手段において、前記インク粒子が前記同じ画素位置に部分的に重なって着弾可能であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4の手段において、前記同じ画素位置に同じノズルから吐出したインク粒子が着弾しないことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第5の手段において、前記複数のノズルからそれぞれ吐出するインク粒子が同じ画素位置に重ねて着弾して1画素を形成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第5の手段において、前記複数のノズルのうちいずれか1つのノズルから吐出したインク粒子を着弾して第1の画素を形成し、その第1の画素と隣接する第2の画素を前記複数のノズルのうちの前記ノズルとは異なるノズルから吐出したインク粒子を着弾して形成することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第8の手段は前記第1または第2の手段において、前記複数のノズルのうち故障してインク粒子が吐出できないノズルが分担していた画素位置に、他のノズルから吐出するインク粒子を振り向けて着弾することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第9の手段は前記第8の手段において、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルとCのノズルを、前記Bのノズルが前記AのノズルとCのノズルの間に配置されるように設け、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の画素位置に着弾できるように、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1、第2の画素位置に着弾できるように、
前記Cのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第2の画素位置に着弾できるようになっており、
前記Bのノズルが故障したときに、
そのBのノズルが分担していた前記第1の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Aのノズルで代替できるように、
また前記Bのノズルが分担していた前記第2の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Cのノズルで代替できるように分けて、
前記AのノズルならびにCのノズルからのインク粒子を振り向けて着弾することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第10の手段は前記第1ないし第9の手段において、前記1つのノズルから吐出するインク粒子の偏向量が偏向量0を含んで複数段にわたって設定可能になっていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第11の手段は前記第1ないし第10の手段において、前記インク粒子の偏向方向が前記ノズルの配列方向に対してほぼ直角であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第12の手段は前記第1ないし第11の手段において、前記画素を構成する記録ドットの割り当て数が切り替え可能になっていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第13の手段は前記第1ないし第12の手段において、前記複数のノズルからそれぞれ吐出するインク粒子の体積が制御可能になっていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第14の手段は前記第8または第9の手段において、前記故障したノズルへのインク粒子吐出駆動パルスの供給を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は前述のような構成になっており、多重打ち込みを行うことで、ノズルの製造バラツキ等に起因するインク吐出特性のバラツキによる記録ムラを軽減することができる。
また、故障ノズルのバックアップを行うことが可能となり、記録すべき情報が欠落するといった事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の第1の形態に係わるライン走査型インクジェット記録装置100について図3乃至図9を参照して説明する。図3はライン走査型インクジェット記録装置100の構成を示す斜視図及び制御ブロック図であり、図4は図3の丸で囲んだ記録部領域1を拡大した部分拡大図であって、記録動作原理を説明するものである。
ライン走査型インクジェット記録装置100は、所定記録速度で図3の矢印Bで示される主走査方向に連続移動する連続記録用紙P(以下、「記録用紙P」という。)上に、図4の主走査線110の密度を一定として(例えば、Ds=300dpi)画像を高速記録する装置である。主走査線110の密度とは、記録用紙Pの幅方向Wの単位長さ当たりの主走査線110の本数である。
図3に示すように、ライン走査型インクジェット記録装置100は、記録ヘッド200と、背面電極体300と、偏向制御信号発生回路400と、インク吐出制御回路500とを備える。
記録ヘッド200は複数個のリニア記録ヘッドモジュール210と、この複数個の記録ヘッドモジュール(以下、「モジュール」と称する)を所定の位置関係で並べて保持する枠体220を備える。複数個のモジュール210はそれぞれ同一構造を有する。
図4に示すように、各モジュール210には、一列に配置されたn個のノズル230からなるノズル列211を備える。各ノズル230にはノズル孔231が形成されており、ノズルピッチはPnである。
各ノズル230は同一構成を有し、ノズル孔231と、ノズル孔231を開口端とするインク加圧室232、このインク加圧室232にインクを導くインク流入孔233、このインク流入孔233にインクを供給するマニホールド234、アクチュエータとしてのPZT等の圧電素子235を備える。本実施の形態では、圧電素子235として、PZTが使用される。PZT235はインク加圧室232に取り付けられており、インク加圧室232の体積を記録信号の印加に応じて変化させる。
ノズル列211のノズル列方向Aは、主走査線110の主走査方向Bに対して角度θ=tan−1(1/5);約11.3度であり、幅方向WにおけるノズルピッチPn=(2/300)・(sin(1/5))−1インチ;約0.034インチとなっている。また、ノズル数nは96(n=96)である。
【0026】
図3に示すように、本実施の形態では、記録用紙Pの幅方向記録領域をカバーするように13個のモジュール210が、記録用紙Pの幅方向Wに配列され、枠体220に固定される。該幅方向Wは主走査方向Bに対し直角である。また記録ヘッド200は、記録用紙Pの表面と各ノズル孔231との距離が所定間隔、例えば1〜2mm程度になるように記録用紙Pの表面と対向する。このようなノズル配置により、記録用紙Pの幅方向Wにおけるノズルピッチを2/300インチ、主走査線方向Bの隣接ノズルピッチPnを10/300インチに設定でき、幅方向Wにおいて主走査線110の1本置きにノズル孔231を1個対応するように設定できる。
背面電極体300は、複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320、電極配置基板330、正極性偏向電極端子341、負極性偏向電極端子342により構成される。
図3乃至図5に示すように、複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320は、記録用紙Pの背面に、ノズル列211を挟む位置に設置されている。同極性の電極同士は電極配置基板330上で束ねられ、正極性偏向電極端子341と負極性偏向電極端子342にそれぞれ接続されている。
偏向制御信号発生回路400は、荷電信号作成回路410、正極性偏向電圧源421、負極性偏向電圧源422、正極性バイアス回路431、負極性バイアス回路432を備えている。
【0027】
荷電信号作成回路410は、荷電信号を発生させる。正極性偏向電圧源421と負極性偏向電圧源422は、偏向電圧を発生させる。正極性バイアス回路431は、正極性偏向電圧源421からの偏向電圧に荷電信号発生回路410からの信号電圧を重畳し、偏向制御信号電圧を生成し、これを図6に示す荷電・偏向信号(A)として正極性偏向電極310に印加する。また、負極性バイアス回路432は、負極性偏向電圧源422からの偏向電圧に荷電信号発生回路410からの信号電圧を重畳し、偏向制御信号電圧を生成し、これを図6に示す荷電・偏向信号(B)として負極性偏向電極320に印加する。
インク粒子吐出制御回路500は、記録信号作成回路510、タイミング信号発生回路520、PZT駆動パルス作成回路530、PZTドライバ回路540を有する。記録信号作成回路510は入力データに基づき画像の画素データを作成し、タイミング信号発生回路520はタイミング信号を発生させる。PZT駆動パルス作成回路530は、記録信号作成回路510からの画素データとタイミング信号発生回路520からのタイミング信号に基づき、各ノズル230のPZT235の駆動パルスを発生する。PZTドライバ回路540は、この駆動パルスをPZT駆動のために十分な信号レベルに増幅させる。PZTドライバ回路540からの駆動パルスはPZT駆動信号として各ノズル230のPZT235に加えられ、インク粒子を所定のタイミングで吐出させる。
図6は記録用紙にベタ黒を印刷する場合、すなわち画素全てに記録ドットを形成する場合の電荷・偏向電極310、320に印加する荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)と、各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートを示し、図7は図6の記録ドット形成状態を示した図である。
以下、図6及び図7を参照しながら記録動作を説明する。
図6において、荷電・偏向電極310、320に荷電・偏向信号(A)、(B)がそれぞれ印加されると、正極性電極310には+H、負極性電極320には−Hの偏向電圧がかかると共に、時間間隔Tごと1/2・VCずつ、0〜±VC間で変化する荷電電圧が加わる。この印加により、偏向用の静電場と荷電用の電場が形成される。
一方、記録ヘッド200中のインクはアース電位、すなわち0電位に落としてある。従って、荷電・偏向電極310、320に前記の荷電電圧が印加されると、各ノズル孔231内のインクにも同様の荷電電圧が印加されることになる。そして、インクの導電性が数百ΩCm以下と良好である場合には、インク粒子130がノズル孔231中のインクから分離する時に、インク粒子130は印加されている荷電電圧に応じて帯電し、記録用紙Pに向かって飛行することになる。
【0028】
この時、帯電インク粒子130は、その帯電量に応じて前記偏向用静電場で図7に示す偏向方向Cに偏向される。偏向方向Cはノズル列方向Aに対し直角である。
図6において、荷電電圧が0のとき、吐出されるインク粒子の偏向量は0であり、荷電電圧が+VC、+1/2・VC、−1/2・VC、−VCのときの偏向量はそれぞれ+2、+1、−1、−2である。
図7において、ノズル孔231Aより噴出したインク粒子130は、上述の偏向制御により、主走査線110n+1から110n+5上に着弾可能で、記録ドット140An+1から140An+5を形成できる。同様にノズル孔231Bから噴出したインク粒子130は主走査線110n+3から110n+7に着弾可能で、ノズル孔231Cから噴出したインク粒子130は主走査線110n+5から110110n+9に着弾可能である。
【0029】
従って、主走査線110n+5上においては、ノズル孔231A、231B、231Cの3ノズル孔から吐出されるインク粒子のいずれであっても記録可能であり、主走査線110n+4においては231A、231Bの2ノズル孔、主走査線110110n+6においては231B、231Cの2ノズル孔から吐出されるインク粒子で記録可能である。
【0030】
これにより、例えばノズル孔231Bのノズル230Bが故障して吐出できなくてもノズル孔231A、231Cを有するノズル230A、230Cで記録をカバーすることが可能になる。
次に図6(a)〜(d)のPZT駆動信号時の記録動作を説明する。
図7は記録用紙P上のドット記録状態であり、ノズル位置231A’、231B’、231C’は図4に示されるノズル孔231A、231B、231Cの記録用紙Pへの投影位置である。
本発明においては、記録用紙Pが主走査方向Bに一定速度で移動されつつ、時間間隔Tで各ノズル孔231からインク粒子130の吐出制御と吐出したインク粒子130の偏向制御との組み合せにより記録が行われる。
図7において、記録動作中は例えばノズル231B’は記録用紙Pに対し、主走査線110n+5上を主走査方向Bと反対の方向B’に相対的に移動する。ここで、図中、主走査線110n+5からは主走査方向Bに対して等間隔に複数の時分割・偏向参照線Tが偏向方向Cに延びている。
【0031】
これら時分割・偏向参照線Tは主走査方向Bに等間隔を開けて延び、この時分割・偏向参照線T毎にノズル孔231Bからインク粒子130が吐出される。また、各時分割・偏向参照線Tの長さは偏向量を表しており、この時分割・偏向参照線Tの端部が記録ドットの形成位置である。従って、ノズル位置231B’からインク粒子130が吐出されない個所における時分割線・偏向参照線Tの先端では、記録ドットは形成されていない。
次に、ノズル孔231Aからのインク粒子吐出に注目する。
図6に示されるT1の時間帯では、荷電・偏向信号(A)、(B)の荷電電圧が0Vであり、ノズル230AへのPZT駆動信号はONであるので、ノズル孔231Aから吐出したインク粒子103は荷電されず直進し、例えば、図7の主走査線110n+3上の画素120T1に着弾して記録ドット120AT1を記録する。
【0032】
引き続く時間帯T2(図7において時分割線Tが反対方向B’に1ライン移動した状態)では、ノズル230AへのPZT駆動信号はOFFであるため、インク粒子130は吐出されず、記録ドットは形成されない。
【0033】
の時間帯では荷電電圧が−VCであり、ノズル230AへのPZT駆動信号はONであるので、ノズル孔231Aから吐出したインク粒子103の偏向量は−2となり、主走査線110n+5上の画素120T3の位置に着弾し、記録ドット120AT3を形成する。
【0034】
の時間帯ではノズル230AへのPZT駆動信号はOFFであるためノズル孔231Aによる記録ドットは形成されない。Tの時間帯では荷電電圧は+1/2VCでありPZT駆動信号はONであるので、インク粒子130の偏向量は+1となり、主走査線110n+5上の画素120T5の位置に着弾し、記録ドット120AT5を形成する。このような記録動作を231B、231C、231D等他のノズルについても行うことで、図7のように各画素を記録ドットで埋めていく。
以上のように、本発明によると、被記録体の1回の主走査移動を通じて、各主走査線について、複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。そして、複数のノズル孔から吐出され、同一の主走査線上に振り分け可能なインク粒子を、主走査方向と該方向に垂直な方向あるいはこれら2方向のいずれかの方向に、異なるノズル孔からのインク粒子により形成される記録ドットが、交互に並ぶようにインク粒子の吐出タイミングを制御する。
【0035】
これによりノズル個性による記録ドット大きさのバラツキによる筋ムラ、濃度ムラ等の記録ムラを軽減でき、従来ライン走査型インクジェット記録装置の重要な問題点を解決できる。
また、図7からも分かるように、本実施の形態では、時分割・偏向参照線T毎にインク粒子130の吐出制御と荷電・偏向制御をし、主走査方向B及び幅方向Wにおいて等間隔で並ぶ画素位置にインク粒子130を割り当て記録できるようにノズル孔配置を工夫している。これにより、記録ヘッド200の応答性を必要以上に要求する必要がなくなる。あるいは、同じ周波数応答性のノズルでも高速記録が可能となる。このように制御が可能なのは、画素位置に対するノズル列の傾きやノズルピッチ等、ノズル孔配置を適切に設定したためである。
また、ノズル231A、231B、231Cを使用した従来方式の記録装置では、110n+3、110n+5、110n+7の3つの主走査線にしか記録ドットを着弾させられなかった。これに対し、本発明による記録装置ではその間の主走査線上にも記録ドットを形成可能である。すなわち、ノズル数を従来に対して1/2に削減できる。
図8は、ノズル231Bが故障した時、ノズル231Bを使わないでべた黒を印刷する動作例である。図6の正常動作時と比べると、荷電・偏向信号(A)(B)は同じであるが、PZT駆動信号(a)〜(d)が異なる。
すなわち、ノズル231Bは使用しないのでノズル231Bに駆動信号は与えない。つまりノズル231Bは常時offされる。その代わり、ノズル231Aで吐出させたインク粒子130を偏向レベル−1で偏向して、図9に示すように120AT2等の画素位置に着弾させたり、偏向レベル−2に偏向して120AT8等の画素位置に着弾させる。また、ノズル231Cで吐出させたインク粒子130を偏向レベル+2で偏向して120CT9等の画素位置に着弾させたり、偏向レベル+1に偏向して120AT10等の画素位置に着弾させる。
【0036】
このように、ノズルが231Bで分担していた画素をノズル231A、231Cが代替えして記録する。この場合でも、出来るだけ隣接記録ドットが異なるノズル231で記録されるように各ノズル231へのPZT駆動信号が設定される。これにより、全画素位置への記録ドット配置が可能になり、故障ノズルのバックアップ機能が達成できる。
以上では1個のノズルが故障の場合についての動作を述べたが、奇数番目のノズルが同時に多数故障した場合や、偶数番目のノズルが同時に多数故障した場合にも前記動作を故障個所に適応することによりバックアップ可能である。
また、連続して2個のノズルが故障した場合にも両側の健全ノズルでカバーすることは可能である。3つ以上の連続ノズルの同時故障に対応するには、インク粒子の偏向量、偏向レベルを対応できるように大きくとるようにし、ノズルのインク吐出応答周波数を向上させることで対応できる。
更に、前記実施の形態では主走査線1本置きにノズル孔を対応させて設置してノズル数を1/2に削減したが、更に削減率を上げるためには、N本(N=2以上)の主走査線毎にノズル孔1個づつの割合で列状に配置する。そして、ノズル孔のピッチやノズル列の主走査線に対する配置角度を適値に設定する。また偏向手段は、インク粒子が少なくともN本の主走査線上の全てに着弾できるように偏向量を制御する。そして、前記主走査線上の全の画素位置にインク粒子を着弾可能なようにインク粒子吐出タイミングを制御する。
【0037】
これにより、ノズル数を1/Nに削減することが可能になる。この削減によりノズル増に伴うノズル故障の頻度増による記録信頼性の低下を防止できる。また、ヘッド価格はノズルの数で大きく左右されるため、この削減で記録装置のヘッド価格を低下させることも可能である。
更に、このノズル数を1/Nに出来る特徴を次のように活用することも可能である。すなわち、同じノズル配置ピツチの記録ヘッドでも、従来の構成に比べてN倍高精細な記録が可能になる。この特徴を発展させると、同じ記録ヘッドで、記録ヘッドの配置を変えることなく、偏向や走査仕様を変更するだけで高精細記録を達成できる記録装置の実現も可能である。
あるいは、同じ精細度の記録を行うための記録ヘッドを製作する場合、本発明を使用すると、ノズル配置のピツチを広げることができるので、記録ヘッドの製作が容易になり、ノズル間での干渉に伴う吐出特性変動も少なくなるので記録品質を向上させることが可能である。
次に、本発明による第2の実施の形態について図10乃至図20を参照して説明する。なお、前述の実施の形態におけるライン走査型インクジェット記録装置100と重複する部分には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
本実施の形態によるライン走査型インクジェット記録装置100Aは、所定記録速度で主走査方向Bに移動する記録用紙P上に、図11の主走査線110の密度Ds=300dpiで画像を高速記録する装置である。
図10に示すように、ライン走査型インクジェット記録装置100Aは、記録ヘッド200と、中間電極体300と、偏向制御信号発生回路400と、インク粒子吐出制御回路500とを備える。
記録ヘッド200は、ノズル列方向Aが主走査方向Bに対して角度θ=tan−1(1/6);約9.46度であり、幅方向WにおけるノズルピッチPn=(2/300)・(sin(1/6))−1インチ;約0.04インチである点で第1の実施の形態の記録ヘッド200と異なる。なお、n=96である。また、幅方向Wにおけるノズルピッチは2/300インチ、主走査線方向Bにおけるノズルピッチは12/300インチに設定されており、主走査線110の1本置きにノズル孔231を1個対応するように設定されている。
図11及び図12に示されるように、中間電極体300の複数対の正極性偏向電極310と負極性偏向電極320は、記録ヘッド200の各リニアヘッド記録モジュール210のノズル列を挟む位置に、記録用紙Pと記録ヘッド200との間に設置される。各極性同士は電極配置基板330上で束ねられ、正極性偏向電極端子341と負極性偏向電極端子342に接続されている。これらの電極320、321には偏向制御信号発生装置400からの荷電・偏向信号(A)、(B)(図13)が印加される。
【0038】
ここで、前記実施の形態では荷電・偏向電極310、320は記録用紙Pの裏側に設置され、インクミストによる電極の汚れに強い構造となっていた。しかし、その反面、記録用紙Pの電気的特性で偏向量が変化することがあった。これを避けるため、本実施の形態では荷電・偏向電極310、320を記録用紙Pの表面上に設置してある。
【0039】
このように構成することにより、インク粒子の偏向量が記録用紙Pの特性に左右されず安定になる。また。荷電・偏向電極310、320がノズル孔231に近くなるため、インク粒子の偏向感度を上げることが可能であり、荷電・偏向電圧を大幅に小さくできる。電極材料としては、ステンレス繊維等の導電性の繊維を固めた板材等を用いることで、インクミストに対する問題も軽減できる。
インク粒子吐出制御回路500のPZT駆動パルス作成装置530は、画素毎複数ノズル用PZT駆動パルス生成装置531とPZT駆動パルスタイミング調整装置532を備える。画素毎複数ノズル用PZT駆動パルス生成装置531は、PZT駆動パルス信号を生成する。PZT駆動パルス信号は各ノズルのPZTに印加され、これにより各ノズルからインク粒子が吐出される。
【0040】
なお、本例では、異なるノズルから吐出された複数インク粒子を同一画素位置に着弾させ、一記録ドットを形成するようにPZT駆動パルス信号が生成される。PZT駆動パルスタイミング調整装置532は、PZT駆動パルス信号のタイミングを調整するものである。ここでは、前記PZT駆動パルス信号により吐出される複数のノズルからのインク粒子を、各画素位置に着弾させて1画素を形成するように調整している。
【0041】
図13は記録用紙にベタ黒を印刷する場合、すなわち画素全てに記録ドットを形成する場合の荷電・偏向電極310、320に印加する荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図14はその記録ドット形成状態を示した図である。
以下、図11、図13及び図14を参照しながら記録動作を説明する。
荷電・偏向電極310、320に荷電・偏向信号(A)(B)が印加されると、図13に示すように正電極310には+H、負電極320には−Hの偏向電圧がかかると共に、0〜±VC間で変化する荷電電圧が加わるようになる。この荷電電圧は時間間隔Tごとに電圧が1/5・VCずつ変化している。この印加により、偏向用の静電場と、荷電用の電場が形成される。
【0042】
一方、記録ヘッド200中のインクはアース電位、すなわち0電位に落としてある。従って、各ノズル孔231から吐出されるインク粒子130と荷電・偏向電極310、320に前記の荷電電圧が印加されることになる。そして、インクの導電性が数百ΩCm以下と良好である場合には、インク粒子130がノズル孔231中のインクから分離する時に、印加されている荷電電圧に応じて帯電し、記録用紙Pに向かって飛行する。この帯電インク粒子130は、その帯電量に応じて前記偏向用静電場で偏向方向Cの方向に偏向される。
図11において、ノズル孔231Aから噴出したインク粒子130は偏向により主走査線110から110n+5上に着弾可能で、記録ドット140Aから140An+5の形成が可能である。同様にノズル孔231Bから噴出したインク粒子は偏向により主走査線110n+2から110n+7上に着弾可能であり、ノズル孔231Cから噴出したインク粒子は偏向により主走査線110n+4から110n+9上に着弾可能である。
【0043】
従って、主走査線110n+5上の画素位置にはノズル孔231A、231B、231Cの3ノズル孔のいずれのノズル孔よりインク粒子を吐出させても記録ドットを形成することが可能である。また同様に、他の全ての主走査線上における画素位置にも、異なる3つのノズル孔からのインク粒子により記録ドットを形成することができる。
次に、図13 (a)〜(d)のPZT駆動信号時の記録動作について、ノズル孔231Aからのインク粒子吐出に注目して説明する。
図13のTの時間帯では(a)に示すように荷電電圧が−1/5VCであるので、ノズル231AのPZTへのPZT駆動信号パルス印加で吐出したインク粒子は、例えば、図14の主走査線110n+3上の画素120αn+3に着弾して記録ドットを形成する。引き続く時間帯Tでは、(a)に示すように荷電電圧が−3/5・VCであるので、ノズル231AのPZTへのPZT駆動信号パルス印加で吐出したインク粒子は、例えば、図14の主走査線110n+4上の画素120αn+4に着弾して記録ドットを形成する。
【0044】
同様にして、ノズル231Aで吐出させたインク粒子130を主走査線110〜110n+5上に順次振り分け、6列分の画素位置全てにインク粒子130を着弾させ、記録ドットを形成させることができる。
また、ノズル231B、231C等他のノズル231についても同様に、各ノズル231は夫々に対応して主走査線上110の画素位置全てにインク粒子130を着弾させ、記録ドットを形成させることができる。従って、例えば画素120αn+4位置にはノズル231Cで吐出させたインク粒子130によって記録ドットが形成された後、走査を通じて同じ画素120αn+4位置にノズル231Bによる記録ドット、そしてノズル231Aによる記録ドットが順次形成されることとなる。他の各画素についても同様に、走査が進むと最終的には、隣接する3ノズルから吐出させたインク粒子130を1個づつ、合計3個のインク粒子130を着弾させたベタ黒の記録ができる。
図15は記録用紙Pに任意の記録パターンを印刷する例として、短線パターンを印刷する場合の荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図16はその際の記録ドット形成状態を示した図である。以下、その記録動作について説明する。なお、本例では、図16に示すように、画素120βn+4、120βn+5、120βn+6の3画素からなる短線パターンを印刷するものとする。
記録用紙Pと記録ヘッド200の相対的な走査方向移動により、まず最初にノズル231Cの隣(図11において左隣)に配置されたノズル231D(図示せず)により吐出されたインク粒子を図16の画素120βn+6に着弾させ、記録ドットを形成する。次に、図15(C)に示す3個のPZT駆動パルスにより、ノズル231Cから順次3個のインク粒子130を吐出させる。この時、荷電・偏向電極310、320には図15(A)、(B)に示す偏向制御信号電圧が印加されているので、吐出したインク粒子130は夫々+3レベル、+2レベル、+1レベル偏向され120βn+4、120βn+5、120βn+6の画素位置に着弾する。
【0045】
引き続いて74T後に、図15(B)に示す3個のPZT駆動パルスによりノズル231Bから順次3個のインク粒子130を吐出させる。そして、これら3個のインク粒子130は夫々+1レベル、−1レベル、−2レベル偏向され120βn+4、120βn+5、120βn+6の画素位置に着弾する。同様に、ノズル231Aからの2個のインク粒子130を120βn+4、120βn+5の画素位置に着弾する。その後、ノズル231Aの右隣のノズルからのインク粒子130が画素120βn+4に着弾する。
以上のように、記録ヘッド200の各ノズル230から吐出するインク粒子130が、予め定められた複数の主走査線110上のいずれにも着弾可能なように、インク粒子130の飛行方向を主走査線方向Bと直角な方向成分を持つ偏向方向Cに偏向し、かつ記録ヘッド200と記録用紙Pの1回の相対的な主走査移動を通じて、各主走査線110について複数のノズル孔231から吐出されるインク粒子130を同一の主走査線110上に着弾可能である。
また、ノズル孔は、この偏向制御手段と、記録ヘッドと記録用紙との相対移動による1回の主走査移動により、記録用紙上に所定の間隔で画素が配置可能で、かつ前記複数のノズル孔のから吐出され同一の走査線上に着弾可能なように偏向されたインク粒子が、同一の画素位置に着弾可能なように、ノズル列方向におけるノズルピッチと、主走査方向に対するノズル列方向のなす傾き角度を設定している。
更に、インク粒子吐出制御手段は、記録用紙上の所定画素の位置に記録ドットを形成する場合には、ノズル孔の配置と偏向制御手段及び主走査移動により決定される、個々の画素の記録を受け持つ複数のノズルについて、1画素を形成するタイミングで複数個のノズル孔よりインク粒子が吐出するのを制御する。このようにして、複数のノズルにより吐出されたインク粒子を、各画素位置に着弾させて、1画素を形成する。
図17及び図18はベタ黒印刷時において、ノズル231Bが故障してインク粒子を吐出できなくなった時の状態を示すもので、図の正常状態印刷時に対応する図である。すなわち、図17はベタ黒を印刷する場合の荷電・偏向電極に印加する荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図18はその記録ドット形成状態を示した図である。
図19及び図20は、図15の正常印刷時に対応する図で、3画素からなる短線の印刷において、ノズル231Bが故障してインク粒子を吐出できなくなった時の状態を示した図である。すなわち、図19は短線パターンを印刷する場合の荷電・偏向信号(A)、(B)と、各ノズル用のPZT駆動信号(a)〜(d)、そして各インク粒子の偏向量(a’)〜(d’)の制御方法を示すタイミングチャートであり、図20はその際の記録ドット形成状態を示した図である。
従来の各ノズルに1本の主走査線を対応させて記録する方式においては、このような故障ノズルが生じると、主走査線の抜けが生じて、記録すべき情報が欠落してしまうという致命的な問題が発生した。
【0046】
しかし、本発明によれば、図17及び図19からも分かるように、主走査線110n+2〜110n+7線上の画素のうち、ノズル231Bが受け持っていた画素へのインク粒子の吐出が出来なくなるが、隣接ノズルにより吐出したインク粒子による画素への記録ドット形成は継続される。従って、例えば図20の画素120βn+4、120βn+5、120βn+6のように2個の記録ドットで画素が形成でき、正常記録時の3個記録ドット形成による画素記録に比べて幾分薄めの記録にはなるが、従来の重大な問題であった記録情報の欠落は無くなり、記録の信頼性を確保出来る。
以上説明したように、本発明によれば、故障ノズルがあることを検知しなくても、記録情報の欠落を引き起こすことなく記録を継続可能である。もちろん、故障ノズルがあることを検知して故障ノズルへのPZT駆動パルス信号供給を停止して、信号を図17、図19の(b−1)から(b−2)のように切り替えても良い。
また、本発明により記録される記録画素は、複数の隣接ノズルにより記録される記録ドットで構成されるため、画素の大きさや位置が平均化される。従って、従来の技術において問題とされていたノズル個性による記録ドット大きさのバラツキによる筋ムラ、濃度ムラ等の記録ムラも軽減でき、従来のライン走査型インクジェット記録装置の重要な問題点を解決できる。
以上の例では、1画素に3記録ドットを割り当て、ノズルの数を1主走査線毎に割当てたが、これは本発明に限定を加えるものではなく、設定したい割当て数に応じて前記で述べた本発明の手段を調整することで達成可能である。
記録ドットの大きさは、画素の大きさと、画素を構成する記録ドットの割当て数とを適切に設定することで、記録品質を向上させることが可能である。記録ドットが大き過ぎると、解像度が劣化するものの、故障ノズル発生による画像への影響は少なくなる。一方、記録ドットが小さ過ぎると、解像度に劣化はないが、故障ノズル発生時の画像への影響は大きくなり、また記録濃度不足になる。従って、これらの得失や印刷装置の応用面等を考慮し、記録ドット大きさを設定するのが望ましい。
なお、個々のインク粒子が記録用紙に記録された時のドット径は、吐出インク粒子の体積、インクの記録用紙への滲み具合等で決まるため、インクと記録用紙が固定の場合には、吐出インク粒子の体積を適切に設定する必要がある。インク粒子の体積を所定値に設定するには、ノズル孔径やインク粒子吐出制御手段のPZT駆動パルス波形を適値に設定する。すなわち、ノズル孔径を小さくするほど、インク粒子の体積を小さく出来る。また、一般にPZT駆動パルスの幅を狭くしたり、パルスの高さを低くすることでインク粒子の体積を小さく出来る。更に飛躍的に体積を小さくするには、駆動パルス波形を、ノズル孔にできるインクの境界面であるメニスカスを急峻にノズル内側に引っ込めるように設定することで、引き続いて微小粒子を発生させることも可能である。
【0047】
このような記録ドット径の調整方法により、本発明のノズル及びインク粒子吐出制御手段は、複数のノズルにより吐出されたインク粒子を振り分け1画素を形成するのに好適な体積のインク粒子を吐出するように設定される。また、1画素を構成するインク粒子の着弾位置については、厳密な意味での同一位置に止まらず、記録ドットの重なりを保ちながら積極的に適量ずらしてもよく、それを含んで同じ画素位置に着弾するという。
また、図13及び図14からも分かるように、本発明では、等時間間隔Tで、インク粒子の吐出制御と荷電・偏向制御をして、縦、横、等間隔で並ぶ画素にインク粒子を割り当て記録できるようにノズル孔の配置を工夫している。これにより、記録ヘッドの応答性を必要以上に要求する必要がなくなる。あるいは同じ周波数応答性のノズルでも高速記録が可能となる。このように制御が可能なのは、画素位置に対するノズル列の傾きやノズルピッチ等、ノズル孔配置を適切に設定したためである。
【0048】
記録ヘッドの周波数応答性に余裕のある場合には、ノズル孔の配置やヘッド配置がより柔軟に設定できるようになる。また、帯電インク粒子の静電場による加速や帯電粒子間の静電力干渉、あるいはノズルのインク粒子吐出特性の周波数依存性、ノズル間の吐出干渉等でインク粒子の飛行速度に差が出る場合には、これらを考慮してノズル孔配置や吐出タイミング制御を行う。
本発明の偏向制御手段は静電力を活用するものであり、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された荷電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた電場形成手段を備える。図3、図10の例では、これらの手段が一対の電極と、これら電極とノズル内インクの間に荷電信号電圧と偏向電圧を重畳して印加することで、電極構造等を簡易に構成している。しかし、この例は本発明に制限を与えるものではなく、荷電用電極と偏向用の電場形成電極を別々に設ける通常の電極構造に対して、電極や電圧印加方法に変形を加えた他の構成であってもよい。
また、前記例で説明したように、本発明によれば、主走査方向、幅方向の隣接する画素を、異なるノズルで記録し、記録ムラを低減させることが出来るが、このような記録ムラ低減機能を実現するには、偏向制御手段は、被記録体の1回の主走査移動を通じて、各主走査線について、複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。
【0049】
また、インク粒子吐出制御手段は、複数のノズル孔から吐出され、同一の主走査線上に振り向け可能なインク粒子を、主走査方向と該方向に垂直な方向あるいは該2方向のいずれかの方向に、複数ノズル孔の異なるノズル孔から吐出されたインク粒子により形成される記録ドットが、交互に並ぶようにインク粒子の吐出タイミングを制御する。
【0050】
ノズル孔は、偏向制御手段とインク粒子吐出制御手段により記録される記録ドット位置が、所定間隔の画素位置になるように配置されることが重要である。
【0051】
従って、上記例に止まらず、主走査線に対するノズルの割り当て数、ノズル列の主走査線に対する角度、偏向レベル数、インクの吐出制御、吐出タイミング制御を変形させて本発明を実施することが可能である。
また前記例により説明したバックアップ機能を実現するには、偏向制御手段は、1回の走査を通じて、各主走査線について複数のノズル孔から吐出されるインク粒子を同一の主走査線上に着弾可能なように制御する。
【0052】
また、インク粒子吐出制御手段は、前記複数のノズル孔のうち、どのノズル孔から吐出されたインク粒子で記録ドットを形成する場合でも、同一の画素位置に着弾可能なように、複数のノズルからのインク粒子の吐出タイミングを制御する。
【0053】
ノズル孔の配置は、前記複数のノズル孔のうち、どのノズル孔から吐出されたインク粒子で記録ドットを形成する場合でも、同一の画素位置に着弾可能なように設定することが重要である。
【0054】
従って、上記実施の形態に止まらず、主走査線に対するノズルの割り当て数、ノズル列の主走査線に対する角度、偏向レベル数、インクの吐出制御、吐出タイミング制御を変形させて本発明を実施することが可能である。
また、ノズル孔の配置として、前記例では図7、図14からも分かるように等時間間隔で吐出したインク粒子で、等間隔で配置した画素にインク粒子が振り分け可能となるように、画素位置に対するノズル列の傾きを適切に設定した。
【0055】
しかし、記録ヘッドの周波数応答性に余裕のある場合には、ノズル孔配置やヘッド配置がより柔軟に設定できるようになる。また、帯電インク粒子の静電場による加速や帯電粒子間の静電力干渉、あるいはノズルのインク粒子吐出特性の周波数依存性、ノズル間の吐出干渉等でインク粒子の飛行速度に差が出る場合にはこれらを考慮してノズル孔配置や吐出タイミング制御を行う。
本発明での偏向手段は静電力を活用するものであり、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された荷電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた電場形成手段を備える。図3、図10の例では、これらの手段が一対の電極と、これら電極およびノズル中インクへの荷電信号電圧の印加や偏向電圧の印加の工夫で、電極構造等を簡易に構成した実施の形態を示した。しかし、この例は本発明に制限を与えるものではなく、以下の変形例でもよい。
図21に示す電極配置では、偏向電極310、320には偏向電圧源421、422からの偏向用直流電圧のみを印加し、荷電のための荷電信号源411からの荷電制御信号をノズル孔231中のインクに印加する。このように構成することにより、インクのグラウンドからの電気絶縁が必要になるが、バイアス回路431、432が不要になる利点を持つ。
図22は前記図21の例と、図12に示す第2変形例における電極配置を組み合わせた例である。つまり、荷電・偏向電極310、320を記録用紙Pと上に配置し、荷電信号源411を備える一方、バイアス回路431、432を構成要件から外している。
図23は電極をインク粒子の帯電量を制御する荷電制御専用電極315と偏向電場形成専用電極311、321に分け、設置したものである。電極が増える分、インク粒子の飛行距離が伸びてしまうが、バイアス回路は不要になる。また、インクをグラウンドからの電気に絶縁する必要もなくなる。
図24はノズル列の片側に偏向電極310を設置し、偏向制御信号源400からの矩形波状等の高電圧パルスを印加する他の例を示すものである。インク粒子130は高電圧パルスで荷電されるとともに、同パルスの電場で偏向される。インク粒子130の飛翔間隔が狭い場合の偏向制御の独立性に難点はあるが、電極構造、偏向制御信号源が簡単である点に利点がある。
以上のように、本発明によると、インク粒子を所定量偏向するため、インク粒子に電荷を与える荷電手段と、該荷電手段により荷電された帯電インク粒子を偏向するように、インク粒子の飛行経路に設けた静電場形成手段を備えていればよく、他の電極構造と電圧印加もあり得る。例えば、電極は必ずしもノズル列に平行でなくても良いし、ノズル夫々に対応して電極を設置してもよい。
以上の例ではライン走査型インクジェット記録装置への適用例に付いて述べたが、シリアル走査型インクジェット記録装置への適用も可能である。
【0056】
すなわち、記録用紙の連続方向と交叉する横方向に、前記本発明実施の形態で記載のインク粒子吐出偏向制御をしながら、記録ヘッドを移動(主走査)して1行分を記録し、その後記録用紙の連続方向に記録用紙を所定量紙送り(副走査)し、続いて次の行の画像を主走査して記録する。この主走査と副走査を繰り返して画像を記録する。
【0057】
このように記録ヘッドを移動させるため、記録ヘッドを構成するリニア記録ヘッドモジュールの個数を少なくし、偏向電極配置は図12で示したように記録用紙の前面に配置し記録ヘッドと共に移動することで好適になる。これによりライン走査型インクジェット記録装置への適用時と同様の効果を得ることができる。更に偏向記録により記録ヘッドの移動速度を低く設定出来るため、記録ヘッドの加速減速時間等の非記録時間を実質記録時間に比べて短く設定可能であり、記録ヘッドからの吐出インク粒子を記録に有効に使用して高速記録が可能になる。
以上の例ではインク粒子の偏向に静電力を使用したが、インクに磁性インクを使用すれば、偏向力に磁力を使用することができる。またノズルとしては、前述したPZT等の圧電素子を用いたオンデマンドインクジェット方式のノズルに限らず、前述した発熱素子へ駆動電圧を印加することにより、インク室中のインクに圧力を加えて、ノズル孔からインク粒子を吐出させるなど他の原理や構造に基づきインク粒子を吐出制御するオンデマンドインクジェット方式のノズルにも適用可能である。
本発明の第1の手段は前述のような構成になっており、多重打ち込みを行うことで、ノズルの製造バラツキ等に起因するインク吐出特性のバラツキによる記録ムラを軽減することができる。
本発明の第2,3の手段は前述のような構成になっており、故障ノズルのバックアップを行うことが可能となり、記録すべき情報が欠落するといった事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来のインクジェットヘッドの構成を示す概略図である。
【図2】図1の従来のインクジェットヘッドで形成したドットパターンを示す図である。
【図3】本発明の第一の形態によるライン走査型インクジェット記録装置の構成図である。
【図4】図3の記録動作部の部分拡大図である。
【図5】図3のライン操作型インクジェット記録装置の偏向電極配置を示す図である。
【図6】図3のライン走査型インクジェット記録装置の動作を説明する図である。
【図7】図6の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図8】図3のライン走査型インクジェット記録装置の動作を説明する図である。
【図9】図8の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図10】本発明の第二の形態によるインクジェット記録装置の斜視図及び制御ブロック図である。
【図11】図10の記録ヘッド部の拡大斜視図である。
【図12】図10のライン操作型インクジェット記録装置の偏向電極配置を示す図である。
【図13】図10のインクジェット記録装置の制御を示すタイミングチャートである。
【図14】図13の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図15】図10に示すインクジェット記録装置の制御を示すタイミングチャートである。
【図16】図15の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図17】図10に示すインクジェット記録装置の制御を示すタイミングチャートである。
【図18】図17の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図19】図10に示すインクジェット記録装置の制御を示すタイミングチャートである。
【図20】図19の記録動作により形成された記録ドット形成状態を示す図である。
【図21】本発明の他の例となる偏向電極配置を示す図である。
【図22】本発明の他の例となる偏向電極配置とその動作を説明する図である。
【図23】本発明の他の例となる偏向電極配置とその動作を説明する図である。
【図24】本発明の他の例となる偏向電極配置とその動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0059】
100:ライン走査型インクジェット記録装置、110:主走査線、120T:画素、120AT:記録ドット、130:インク粒子、200:記録ヘッド、210:リニア記録ヘッドモジュール、211:ノズル列、220:枠体、ノズル230、231:ノズル孔、232:インク加圧室、233:インク流入孔、234:マニホールド、235:圧電素子(PZT)、300:背面電極体、310:正極性偏向電極、320:負極性偏向電極、330:電極配置基板、341:正極性偏向電極端子、342:負極性偏向電極端子、400:偏向制御信号発生回路、410:荷電信号作成回路、421:正極性偏向電圧源、422:負極性偏向電圧源、431:正極性バイアス回路、432:負極性バイアス回路、500:インク吐出制御回路、510:記録信号作成回路、520:タイミング信号発生回路、530:PZT駆動パルス作成回路、540:PZTドライバ回路、P:連続記録用紙、W:記録用紙の幅方向、T:時間間隔、B:主走査方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを複数並設した記録ヘッドの前記ノズルからインク粒子を吐出して被記録体上に着弾させるインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドのノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させる吐出方向偏向手段と、
少なくとも2つの異なるノズルから前記吐出方向偏向手段によってそれぞれ異なる方向にインク粒子を吐出することにより、前記被記録体上の同じ画素位置に着弾できるように制御する吐出制御手段を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
ノズルを複数並設した記録ヘッドの前記ノズルからインク粒子を吐出して被記録体上に着弾させるインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルを有し、
前記ノズルから吐出されるインク粒子の吐出方向を複数の方向に偏向させることのできる吐出方向偏向手段と、
前記ノズルから前記吐出方向偏向手段によってそれぞれ異なる方向にインク粒子を吐出させることのできる吐出制御手段を備え、
前記吐出方向偏向手段と吐出制御手段によって、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体上の第1の画素位置に着弾可能であって、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体上の第2の画素位置に着弾可能であるとともに、前記第1の画素位置にも着弾可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出制御手段による吐出制御が、前記記録ヘッドに対する前記被記録媒体の1回の相対移動毎に行われることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記インク粒子が前記同じ画素位置に部分的に重なって着弾可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記同じ画素位置に同じノズルから吐出したインク粒子が着弾しないことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記複数のノズルからそれぞれ吐出するインク粒子が同じ画素位置に重ねて着弾して1画素を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記複数のノズルのうちいずれか1つのノズルから吐出したインク粒子を着弾して第1の画素を形成し、その第1の画素と隣接する第2の画素を前記複数のノズルのうちの前記ノズルとは異なるノズルから吐出したインク粒子を着弾して形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記複数のノズルのうち故障してインク粒子が吐出できないノズルが分担していた画素位置に、他のノズルから吐出するインク粒子を振り向けて着弾することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドが少なくともAのノズルとBのノズルとCのノズルを、前記Bのノズルが前記AのノズルとCのノズルの間に配置されるように設け、
前記Aのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1の画素位置に着弾できるように、
前記Bのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第1、第2の画素位置に着弾できるように、
前記Cのノズルから吐出したインク粒子が前記被記録体の第2の画素位置に着弾できるようになっており、
前記Bのノズルが故障したときに、
そのBのノズルが分担していた前記第1の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Aのノズルで代替できるように、
また前記Bのノズルが分担していた前記第2の画素位置へのインク粒子の着弾を前記Cのノズルで代替できるように分けて、
前記AのノズルならびにCのノズルからのインク粒子を振り向けて着弾することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記1つのノズルから吐出するインク粒子の偏向量が偏向量0を含んで複数段にわたって設定可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インク粒子の偏向方向が前記ノズルの配列方向に対してほぼ直角であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記画素を構成する記録ドットの割り当て数が切り替え可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記複数のノズルからそれぞれ吐出するインク粒子の体積が制御可能になっていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項8または9に記載のインクジェット記録装置において、前記故障したノズルへのインク粒子吐出駆動パルスの供給を停止することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−74116(P2008−74116A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319644(P2007−319644)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【分割の表示】特願2005−379026(P2005−379026)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】