インク供給装置
【課題】記録ヘッド内の負圧変動を抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を提供すること。
【解決手段】ヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変更する。
【解決手段】ヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録装置に用いられるインク供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置では、一般にインクが吐出される複数のノズルが高密度に形成された小型の記録ヘッドを用いて高精細な記録が行われる。また、この小型の記録ヘッドを複数配置して各記録ヘッドに異なる色のインクを供給することにより、比較的安価でかつ小型な構成で、記録媒体にカラー記録を行うことができる。そのためインクジェット記録装置は、業務用、家庭用を問わず、プリンタ、ファクシミリおよび複写機など、様々な記録装置に用いられている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドからのインク吐出動作を安定させるために、記録ヘッド内のインクを所定の負圧に維持する(記録ヘッド内のインクに作用する圧力を所定の負圧に保つ)ことが重要である。このため、一般のインクジェット記録装置は、記録ヘッドにインクを供給するインク供給系の中に負圧発生手段を備え、その負圧発生手段によって負圧が付与されたインクを記録ヘッドに供給している。
【0004】
負圧発生手段として特許文献1には、インクタンク内に収容したスポンジ状のインク吸収体の毛管作用を利用して負圧を発生する構成が開示されている。また他の負圧発生手段として特許文献2には、可撓性のインクバッグと弓形ばねとを備えた構成が開示されている。さらに他の負圧発生手段として特許文献3には、記録ヘッドよりも下方にインクタンクを配置し、記録ヘッドとインクタンクとの水頭差を利用してインクに負圧を付与する構成が開示されている。
【0005】
特許文献1から特許文献3のような負圧発生手段を備えたインク供給系では、記録ヘッドからのインク吐出に伴って、記録ヘッド内の負圧は上昇する。この上昇する負圧を利用して、インクタンクから記録ヘッドへインクが供給される。このため、単位時間当りに記録ヘッドから吐出されるインクの量が多いときには、インクタンクから記録ヘッドへのインク供給が追いつかず、記録ヘッド内の負圧が所定の負圧より大きくなることがある。
【0006】
このような課題に対して特許文献4では、記録ヘッドへのインク供給はポンプにより行うとともに、記録ヘッド内の負圧制御は負圧発生手段としてのファンによりを行い、インクの供給と負圧の制御とを別々に行う構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−001988号公報
【特許文献2】特開平06−198904号公報
【特許文献3】特開2003−011380号公報
【特許文献4】特開2006−326855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4のように記録ヘッドへのインク供給と記録ヘッド内の負圧制御を個別に行っても、負圧制御を行うファンが一定速度で回転しているため、インク供給時に生じる記録ヘッド内の負圧変動は避けられない。そのため、インクの吐出が不安定になってしまうことがある。
【0009】
本発明は、記録ヘッド内の負圧変動を抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインク供給装置は、内部に貯留したインクを吐出可能なヘッドユニットと、該ヘッドユニットの内部に前記インクを供給可能な供給ポンプと、前記ヘッドユニット内の圧力を調整可能な負圧発生手段と、前記ヘッドユニット内の前記インクの量を検知する検知手段と、を備えたインク供給装置において、前記検知手段が、前記ヘッドユニット内の前記インクの量が所定量よりも少なくなったと検知した場合に、前記供給ポンプは駆動を開始し、前記供給ポンプ駆動開始後の単位時間当たりの前記ヘッドユニット内の前記インクの消費量が、所定量よりも多い場合に、前記供給ポンプは前記インクの供給量を増やすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればインク供給装置は、検知手段が、ヘッドユニット内のインク量が所定量よりも少なくなったと検知すると、供給ポンプが駆動を開始する。そして、駆動開始後の単位時間当たりのヘッドユニット内のインクの消費量が、所定量よりも多い場合に、供給ポンプはインクの供給量を増やす。これによって、記録ヘッド内の負圧変動を抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態を適用可能なインクジェット記録装置を模式的に示した正面図である。
【図2】図1の記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】インクタンクからヘッドユニットまでのインクの通る経路を示した図である。
【図4】吐出口面をクリーニングする際の手順を示したフローチャートである。
【図5】(a)から(c)は吐出面からワイパによってインクを拭き取る手順を示す模式図である。
【図6】ヘッドユニットとその周囲を拡大して示した図である。
【図7】第1の実施形態における供給ポンプの速度のテーブルを示した図である。
【図8】第1の実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】第2の実施形態におけるファンの速度のテーブルを示した図である。
【図10】第2の実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】(a)、(b)は、図10のステップS714のポンプ停止シーケンスを示したものである。
【図12】第3の実施形態のヘッドユニットとその周辺を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を模式的に示した正面図である。記録装置10はホストPC12と接続されており、ホストPC12から送信される記録情報に基づいて、4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yから記録媒体(以下、ロール紙ともいう)Pにインクを吐出することで記録を行う。4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは、記録媒体Pの搬送方向(矢印A方向)に沿って配置されている。各ヘッドユニットは搬送方向に黒インク用ヘッドユニット22K、シアンインク用ヘッドユニット22C、マゼンタインク用ユニットヘッド22M、イエローインク用ヘッドユニット22Yの順で配置されている。ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは所謂ラインヘッドであり、記録媒体搬送方向に対して記録幅全域に亘ってそれぞれを平行に並べた状態で設けられている。記録装置が記録を行う際は、各ヘッドユニットを移動させることなく、ヘッドユニットに設けられたヒータを駆動することによってノズルからインクを吐出して記録を行う。
【0015】
ヘッドユニットは記録に伴って、ノズルを有する面(以下、インク吐出口面ともいう)22Ks、22Cs、22Ms、22Ysにゴミやインク滴等の異物が付着することで吐出状態が変わり、記録に影響を与えることがある。そのため、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、記録装置10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によるインク吐出口面のクリーニングを定期的に行うことによって、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのノズルからのインク吐出状態を初期の良好なインク吐出状態に回復することができる。回復ユニット40には、クリ−ニング動作のときに4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのインク吐出口面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャップ50が備えられている。キャップ50は各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、ブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0016】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0017】
記録を行う際には、搬送中のロール紙Pがブラックのヘッドユニット22Kの下に到達すると、ホストPC12から送られた記録情報に基づいて、ヘッドユニット22Kからブラックインクが吐出される。同様にヘッドユニット22C、ヘッドユニット22M、ヘッドユニット22Yの順に、各色のインクが吐出されてロール紙Pへのカラー記録が完成する。
【0018】
更に記録装置10には各ヘッドユニットに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、各ヘッドユニットにインクを供給可能なポンプや、後述するクリーニング動作をするためのポンプ(図3等参照)などが備えられている。
【0019】
図2は、図1の記録装置10の制御系を示すブロック図である。ホストPC(ホスト装置)12から送信された記録情報やコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。
【0020】
CPU100は、記録装置10の記録情報の受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前に行う動作処理では、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yをキャップ50から離して記録位置に移動させる。またCPU100は、後述するように、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Y内の圧力を適切な値に調整可能な負圧発生手段としてのファンのファンモータの回転を、圧力センサによって得られた圧力情報に基づいて随時補正する制御を行う。さらにCPU100は、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ126およびロール紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する制御を行う。
【0021】
記録を行う際は、一定速度で搬送されるロール紙Pにインクを吐出するタイミング(記録タイミング)を決定するため、先端検知センサ109でロール紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から記録情報を順次読み出し、この読み出した記録情報を各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに、ヘッドユニット制御回路112経由して転送する。
【0022】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラムおよびテーブルなどが記憶されている。また、CPU100は作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。さらにCPU100は、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧および吸引等の制御を行う。
【0023】
図3は、本実施形態の記録装置におけるインクタンク28Kからヘッドユニット22Kまでのインクの通る経路を模式的に示した図である。各ヘッドユニットは同じ構造であるため、以下、例としてブラックインク用ヘッドユニット22Kについてのみ説明を行う。
【0024】
記録装置10には、ヘッドユニット22Kにインクを供給するインク供給装置60が組み込まれており、ヘッドユニット22Kは、吐出部22KSiにインクを供給する液室としての貯留部22Krとインクを吐出可能な吐出部22KSiとを備えている。インク供給装置60は、記録装置10の本体に着脱自在なインクタンク28Kと、このインクタンク28Kとヘッドユニット22Kとをつなぐインク供給路62の途中に配置されたインク供給ポンプ72などから構成されている。供給ポンプ72は、インクフィルタ90を介して貯留部22Krへのインク供給を担う。
【0025】
貯留部22Krには、貯留されているインク(以下、貯留インクともいう)の液面22Krsのレベルを検知する液面検知センサ86が取り付けられている。また、貯留部22Kr下方では、ヘッドユニット22Kのノズル22Knと、ノズル22Knへのインク供給口が形成された吐出部22KSiとが接続されている。
【0026】
貯留部22Kr上部には、空気で満たされた空間(以下、空気室という)66にエアーフィルタ95を介して空気流路64が接続されており、その空気流路64には、大気バルブ84および圧力を測定可能な圧力検出センサ81が備えられている。圧力検出センサ81は空気室66内の圧力を検出することが可能である。また、空気流路64のエアーフィルタ95が設けられている一方端部とは反対の他方端部は、減圧流路65とT字状に接続されており、その減圧流路65は、一端が大気開放、他端はファン68に接続されている。
【0027】
インクタンク28Kには、このインクタンク28K内のインクの有無を検出する検出センサ(不図示)が取り付けられている。また、インクタンク28Kには、インクタンク28Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ74が取り付けられている。
【0028】
貯留部22Krの液面検知センサ86の測定結果でインク量が所定量以下であると判断した時は、インクタンク28Kの大気開放バルブ74が開放され、供給ポンプ72を稼動してインクタンク28Kからインクを吸引する。そして、吸引したインクを貯留部22Kr内に供給する。一方、液面検知センサ86が一定レベル以上のインク液面22Krsを検知したときは、供給ポンプ72が停止し、インクタンク28Kの大気解放バルブ74が密閉されてインクの供給は停止される。
【0029】
ところで、供給ポンプ72にはチューブポンプが用いられており、供給ポンプ72が非稼動時にはインク供給路62は遮断される(インクタンク28Kと貯留部22Krとの間の流路が遮断される)。
【0030】
図4は、ヘッドユニット22Kの吐出口面22Ksをクリーニングする際の手順を示したフローチャートである。また、図5は、吐出面22Ksからワイパ52によってインクを拭き取る手順を示す模式図であり、(a)は拭き取り開始前を示し、(b)は拭き取り終了直後を示し、(c)は拭き取り終了後の待機状態を示す図である。ここでいうクリーニングとはヘッドユニット22Kのインク吐出を良好な状態に継続的に維持するために行われる動作をいい、経過時間や吐出状況等の条件を満たした場合、または、記録品位に異常が見られる場合等に自動的にもしくは任意で実施される動作である。以下、クリーニングの動作について順に説明する。
【0031】
ステップS401でクリーニング指令を受信すると、ステップS402で大気開放バルブ84を解放する。その後、ステップS403でクリーニングポンプ92がキャップ50内を減圧させる方向に駆動し、貯留部22Kr内のインクをノズル22Knからキャップ50に引き込んで排出させる。このインクの排出によって、記録動作中等にノズル22Knの周囲部に溜まった微細な気泡や、ヘッドユニットの吐出口面22Ks上に付着したゴミ等の異物を除去することができる。そして一定時間経過後、ステップ404でクリーニングポンプ92の駆動を停止し、ステップ405で大気バルブ84を閉じる。
【0032】
なお、この状態ではヘッドユニット22Kの各ノズル22Knの開口を含む吐出口面22Ksに、まだインクが付着していることがある。そこで、この汚れを除去するために、後述するように、キャップ50と共に設けられたワイパ52で吐出口面22Ksを拭く。その際、先ずステップS406で図5(a)に示すように、ヘッドユニット22Kが回復キャップ50の上方へと移動する。その後、ステップS407でキャップ50が矢印B方向に移動することにより、図5(b)に示すように、フェイス面22Ksに付着しているインクなどの汚れがワイパ52で拭き取られる。この動作をワイピング動作と呼び、ワイピング動作終了後は、ステップS408で図5(c)に示すように、ヘッドユニット22Kは再びキャッピングされて待機状態になる。この待機状態にあるヘッドユニット22Kはフェイス面22Ksがキャップ当接部54でキャッピングされている(塞がれている)ので、キャップ50内での空気の対流がほとんど無く、ノズル22Knにあるインクが増粘するのを防止することができる。ヘッドユニット22Kが待機状態になってクリーニング動作は終了となる。
【0033】
なお、ノズル22Knから排出されたインク(廃インク)はキャップ50に受容されて吸引ポンプ92(図3参照)によって吸引される。吸収された廃インクは、廃インクタンク71(図3参照)に圧送される。廃インクタンク71には微小な大気開放口75が設けられており、廃インク(および気泡)の流入に伴い変化する廃インクタンク71内の圧力を大気へと解放する役割を担う。
【0034】
図6は、ヘッドユニット22Kとその周囲を拡大して示した図である。記録時にはノズル22Knにメニスカスを形成するためにヘッドユニット22Kに適正な負圧を付与する必要がある。そのため、記録時には大気バルブ84を開放状態にして、ファン68をC方向への空気の流れを作るように作動させることによって、ヘッドユニット22K内の空気室66が減圧される。その結果、貯留部22Krを介してノズル22Kn内も同様に減圧される。
【0035】
本実施形態では大気と連通した貯留部22Krが、吐出部22Ksの上方に配置されているので、大気バルブ84が開くことによりノズル22Kn先端の開口部には液面22Krsからの水頭圧力Hの正圧力がノズル22Kn開口部に作用する。そのため、ファン68による空気室66内への減圧量は水頭圧力H以上に設定される。これによりヘッドユニット22Kのノズル22Knに負圧が付与される。この結果、ノズル22Knの開口部においてインクのメニスカスが形成されることになる。
【0036】
本実施形態では、ファン68を作動させることで発生する負圧が、直接空気室66に掛かるのではなく、大気を導入可能な吸入口61(空気導入部)を設けていることで、負圧は間接的に空気室66に掛かることになる。また本実施形態では、ファン68を作動させることにより、吸入口61から取り込まれた空気の流れが減圧流路65に生じ、その減圧流路65に接続された空気流路64内の空気は、主にエジェクタの原理により、減圧流路65の空気の流れに引き込まれる。この結果、空気室66に負圧が生じることになる。
【0037】
ヘッドユニット22Kに配置されている貯留部22Krは、記録に使用されるインクをノズル22Knに供給するためバッファーであり、貯留部22Kr内のインク量はインク上限レベルおよびインク下限レベルが設定されている。そして、ヘッドユニット22K内では、常に上限レベルから下限レベルの範囲にインク量を保持する様に液面上限レベル検知センサ86aおよび液面下限レベル検知センサ86bによって監視されている。供給ポンプ72は、ヘッドユニット22Kに供給するインク流量を、5段階の速度で動作することで調整可能であり、速度の遅い方から第1速度、第2速度となり、最高速度が第5速度となっている。供給ポンプ72はKCMY各色に対して独立して動作可能であり、必要に応じて各ポンプをそれぞれ動作させる。
【0038】
図7は、本実施形態における供給ポンプ72の速度のテーブルを示した図である。本実施形態において、供給ポンプ72は5段階の速度Npで動作するようになっているが、必要に応じて段階数を増減しても構わない。ヘッドユニット22Kからインクを吐出することで貯留部22Krのインクが消費され、液面下限レベル検知センサ86bによって液面22Krsの低下が検知されると、まず供給ポンプ72を第1速度(Np=1)で動作させて、インクをインクタンク28Kから液室へ供給する。供給ポンプ72を動作させて貯留部22Krへインク供給を開始後、所定時間待機後に、再度液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認する。液面下限レベル検知センサ86bにより、貯留部22Kr内のインク量が液室のインク下限レベルを上回った事を確認すると、供給ポンプ72は現在の速さでインクを供給し続ける。そして、液面上限レベル検知センサ86aによって貯留部22Kr内のインクがインク上限レベルに達した事を検知すると、供給ポンプ72を停止する。
【0039】
再度液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認した際、液室内のインク量がインク下限レベルを上回らないときは、インク供給量がインク消費量よりも少ないと判断し、供給ポンプ72の速度Npを1段階上げて(Np=2)インク供給量を増加させる。供給ポンプ72の速度を1段階上げた後、再び所定時間後に液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認し、インク量がインク下限レベルを上回ったかどうかを確認する。つまり、ここで所定時間に消費されるヘッドユニット内のインクの消費量が多いか少ないかを判断している。所定時間内のインク消費量が多く、インク下限レベルを上回らない場合、再度供給ポンプ72の速度Npを上げる処理が行われる。つまり、供給ポンプ72の速度Npによるインク供給量が記録処理に伴うインク消費量(貯留部22Kr内のインク減少量)を上回るまで供給ポンプ72の速度は上げられる。従って、図7の単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値となっている。
【0040】
このように、本実施形態ではヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変えることで、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制している。
【0041】
なお、第5速度でのインク流量は、記録ヘッドの全ノズル22Knが同時に吐出した時の消費量よりも多く設定されていることで、インク供給量がインク消費量を上回ることが可能となる。その後、記録終了まで貯留部22Kr内のインクレベルを監視し続けて、貯留部22Kr内のインクレベルを一定範囲に保たせる。
【0042】
本実施形態では、貯留部22Krのインク量は液面上限レベル検知センサ86aおよび液面下限レベル検知センサ86bによって監視しているが、それ以外の手段によりインク量を随時監視して、供給ポンプ72の流量を随時コントロールしても構わない。
【0043】
図8は、本実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。通常、記録装置を使用していない状態では、ノズルKnからのインクの漏れを防止する目的で大気バルブ84は閉じられている。記録を開始する場合には、先ず大気バルブ84が閉じられている状態で、CPU100は、ファン68を作動させて、減圧流路65および空気流路64内を減圧させてから、大気バルブ84を開く。以下、このフローチャートに沿って本実施形態の記録処理を説明する。
【0044】
ステップS701で記録装置10が記録信号を受信すると、CPU100はステップS702へ進みファン68を作動させる。次にステップS703で、CPU100は、ファン68による減圧が正常に行われているか否かを確認するために空気流路64内の圧力を圧力検出センサ81で確認する。ここで、所定の圧力が得られていない場合には、CPU100は、ステップS704へ進み、ファン68の回転数の補正を行う。CPU100は、ステップS703で所定の圧力が得られていればステップS705へと移行して大気バルブ84を解放する。大気バルブ84の解放によって空気室66が減圧されて、ノズル22Knにも負圧が作用するようになり、ノズルKnの開口(吐出口)にはメニスカスが最適な状態で形成される。
【0045】
次に、CPU100は、ステップS706でヘッドユニット22Kをワイピング位置へ移動させて、ステップS707でヘッドユニット22Kの吐出口面22Ksのワイピングを行う。その後、CPU100は、ステップS708で記録を行うためヘッドユニット22Kを下降させてから記録位置へ移動させる。ステップS709で記録媒体Pに対して記録を行う。そして、記録媒体Pに対して記録を行う事で貯留部22Kr内のインクが消費されステップS710で、液面下限レベル検知センサ86bが液面22Krsの下限レベルを検知すると、CPU100は、ステップS720で供給ポンプ72の速度を1段階上げる。この時、供給ポンプが停止状態Np=0の場合、供給ポンプ72の速度は、第1速度Np=1になる。そして、CPU100は、ステップS711で供給ポンプ72を駆動させる。供給ポンプ72の駆動開始後、CPU100は、ステップS721で所定時間待機して、再度ステップS710に戻り、貯留部22Kr内のインクが下限以下であるかを確認する。液面が依然として下限以下である場合、CPU100は、インクが下限レベルを上回るまで、ステップS720からステップS721を繰り返して、供給ポンプ72の速度を上げる。
【0046】
そして、CPU100は、ステップS710で貯留部22Kr内のインクが下限レベルを上回っている事を確認すると、ステップS712で供給ポンプ72が動作中であるかの確認を行う。供給ポンプ72が動作中のとき、CPU100は、ステップS713で液面上限レベル検知センサ86aを確認して、上限になっていない場合は、ステップS719で所定時間待機して再度ステップS713で液面が上限に有るかどうかを確認する。CPU100は、液面が上限になったらステップS714で供給ポンプ72を停止させる。供給ポンプ72が停止中の時は、CPU100は、ステップS712からステップS715に移行して、記録動作終了の確認を行い、記録が終了でない場合は、記録終了までステップS710からS715を繰り返す。記録動作終了後は、CPU100は、ステップS716でヘッドユニット22Kを上昇させて、待機位置まで移動して再びキャップ50によってキャッピングされる。その後、CPU100は、ステップS717で大気バルブ84を閉じて、ステップS718でファン68の作動を停止し、再び待機モードとなってこのフローチャートを終了する。
【0047】
なお、ヘッドユニット22Kのインク吐出ドット数をカウントし、単位時間あたりのインク吐出ドット数から単位時間あたりのインク消費量(貯留部22Kr内のインク減少量)を計算して供給ポンプ動作速度を決定してもかまわない。この場合においても、単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とする。ここで、供給ポンプ72のインク供給量を、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とし、供給ポンプ72の動作速度を一定速度で動作させる方法も考えられる。しかし、上記のように供給ポンプ72の動作速度を一定速度で動作させると、単位時間あたりのインク消費量が小さい場合、貯留部22Krにインクが急激に流入するため、空気室66の負圧が所定の負圧よりも急激に小さくなってしまう可能性がある。しかし、本実施形態のように、インクの消費量に合わせて供給ポンプ72によるインクの供給量を制御することにより、上記のような問題を抑えることができる。
【0048】
このように、本実施形態のインク供給装置は、ヘッドユニット22K内のインクの減少に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変える。これによって、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができた。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本実施形態におけるファン68の速度のテーブルを示した図である。本実施形態におけるファン68は、その回転速度Nfを図9に示すように6段階の速度で動作可能であり、速度の遅い方から第1速度、第2速度となり、最高速度が第6速度となっている。本実施形態において、ファン68の回転速度Nfは、6段階の速度としているがこれに限定するものではなく、必要に応じて加減しても構わない。本実施形態では、ヘッドユニット22Kからインクを吐出することによって貯留部22Krのインクが消費されると、液面下限レベルセンサ86bが、貯留部22Kr内のインクが所定インク量を下回った事を検知する。液面下限レベルセンサ86bが下回った事を検知すると、供給ポンプ72を第1速度で動作させて、インクをインクタンク28Kから液室へ供給を開始する。そのとき、ファン68は供給ポンプ72の動作速度が変更されるのをトリガとして回転速度を1段階上げて負圧力を大きくする。同様に供給ポンプ72の速度が1段階上がる毎にファン68の回転速度も1段階上がる。供給ポンプ72の速度とファン68の回転速度とは、貯留部22Krの負圧が常に一定となるような関係で制御することが望ましい。
【0051】
図10は、本実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。通常、記録装置を使用していない状態では、ノズルKnからのインクの漏れを防止する目的で大気バルブ84は閉じられている。記録を開始する場合には、CPU100は、先ず大気バルブ84が閉じられている状態で、ファン68を作動させて、減圧流路65および空気流路64内を減圧させてから、大気バルブ84を開く。以下、このフローチャートに沿って本実施形態の記録処理を説明する。なおステップS701からステップS709までは、第1の実施形態と同様であるため、以下ではステップS710以降の処理について説明する。
【0052】
ステップS709の記録動作によって、貯留部22Kr内のインクが減少。ステップS710で、貯留部22Kr内の液面下限レベル検知センサ86bが液面の下限レベルを検知すると、CPU100は、ステップS720で供給ポンプ72の速度を1段階上げる(供給ポンプが停止状態Np=0の場合は、第1速度Np=1になる)。そして、CPU100は、ステップS711で供給ポンプ72を駆動させる。CPU100は、その後ステップS722でファン68の回転速度Nfを1段階上げて、ステップS723でファン68を駆動させる。なお、初期の段階では供給ポンプ72の速度はNp=0であり、ファン68の回転速度はNf=1となっている。CPU100は、ステップS723でファン68を駆動させた後、ステップS721で所定時間待機して、再度ステップS710に戻り、貯留部22Kr内のインクが下限以下であるかを確認する。液面が依然として下限以下である場合、CPU100は、インクが下限レベルを上回るまで、ステップS720からステップS721を繰り返して、供給ポンプ72の速度Npおよびファン68の回転速度Nfを上げる。
【0053】
そして、CPU100は、ステップS710で貯留部22Kr内のインクが下限レベルを上回っている事を確認すると、ステップS712で供給ポンプ72が動作中であるかの確認を行う。供給ポンプ72が動作中のときは、CPU100は、ステップS713で液面上限レベル検知センサ86aを確認して、上限になっていない場合は、ステップS719で所定時間待機して再度ステップS713で液面が上限に有るかどうかを確認する。CPU100は、液面が上限になったらステップS714で供給ポンプ72を停止する。供給ポンプ72が停止中の時は、CPU100は、ステップS712からステップS715に移行して、記録動作終了の確認を行い、記録が終了でない場合は、記録終了までステップS710からS715を繰り返す。記録動作終了後は、CPU100は、ステップS716でヘッドユニット22Kを上昇させて、待機位置まで移動して再びキャップ50によってキャッピングされる。その後、CPU100は、ステップS717で大気バルブ84を閉じて、ステップS718でファン68の作動を停止し、再び待機モードとなってこのフローチャートを終了する。
【0054】
図11(a)、(b)は、ステップS714のポンプ停止シーケンスを示したものである。(a)に示すように、供給ポンプ72は一定の速度で減速して停止する。それに合わせてファン68も、一定の速度で減速して停止する。また、(b)に示すような一定間隔での矩形状のテーブルにて段階的に停止してもよい。
【0055】
なお、本実施形態では第1の実施形態同様、ヘッドユニット22Kのインク吐出ドット数をカウントし、単位時間あたりのインク吐出ドット数から単位時間あたりのインク消費量を計算して供給ポンプ72の動作速度を決定してもかまわない。この場合においても、単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とする。
【0056】
このように、ヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度とファン68の回転速度とを変える。これによって、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができた。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0058】
図12は、本実施形態のヘッドユニットとその周辺を示した図である。ファン68による負圧制御手段は、本実施形態のように、複数のヘッドユニット22Y、22M、22C、22Kに接続されていてもよい。
【0059】
なお、本明細書でいう、「記録」(画像形成とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成するものに限らない。つまり記録とは、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含むものとする。
【0060】
また、「記録媒体」(ロール紙とも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含むものとする。
【0061】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。つまりインクとは、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を含むものとする。
【0062】
また、上記各実施形態では、負圧発生手段としてプロペラタイプのファンを用いているが、これに限定するものではなく、可撓性のインクバッグと弓形ばねを用いた負圧発生手段や、容積型のポンプ等を用いてもよい。また、本発明の装置にインク以外の液体を用いてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
22K ヘッドユニット
60 インク供給装置
68 ファン
72 供給ポンプ
74 大気開放バルブ
84 大気バルブ
86 液面検知センサ
86a 液面上限レベル検知センサ
86b 液面下限レベル検知センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録装置に用いられるインク供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置では、一般にインクが吐出される複数のノズルが高密度に形成された小型の記録ヘッドを用いて高精細な記録が行われる。また、この小型の記録ヘッドを複数配置して各記録ヘッドに異なる色のインクを供給することにより、比較的安価でかつ小型な構成で、記録媒体にカラー記録を行うことができる。そのためインクジェット記録装置は、業務用、家庭用を問わず、プリンタ、ファクシミリおよび複写機など、様々な記録装置に用いられている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、記録ヘッドからのインク吐出動作を安定させるために、記録ヘッド内のインクを所定の負圧に維持する(記録ヘッド内のインクに作用する圧力を所定の負圧に保つ)ことが重要である。このため、一般のインクジェット記録装置は、記録ヘッドにインクを供給するインク供給系の中に負圧発生手段を備え、その負圧発生手段によって負圧が付与されたインクを記録ヘッドに供給している。
【0004】
負圧発生手段として特許文献1には、インクタンク内に収容したスポンジ状のインク吸収体の毛管作用を利用して負圧を発生する構成が開示されている。また他の負圧発生手段として特許文献2には、可撓性のインクバッグと弓形ばねとを備えた構成が開示されている。さらに他の負圧発生手段として特許文献3には、記録ヘッドよりも下方にインクタンクを配置し、記録ヘッドとインクタンクとの水頭差を利用してインクに負圧を付与する構成が開示されている。
【0005】
特許文献1から特許文献3のような負圧発生手段を備えたインク供給系では、記録ヘッドからのインク吐出に伴って、記録ヘッド内の負圧は上昇する。この上昇する負圧を利用して、インクタンクから記録ヘッドへインクが供給される。このため、単位時間当りに記録ヘッドから吐出されるインクの量が多いときには、インクタンクから記録ヘッドへのインク供給が追いつかず、記録ヘッド内の負圧が所定の負圧より大きくなることがある。
【0006】
このような課題に対して特許文献4では、記録ヘッドへのインク供給はポンプにより行うとともに、記録ヘッド内の負圧制御は負圧発生手段としてのファンによりを行い、インクの供給と負圧の制御とを別々に行う構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−001988号公報
【特許文献2】特開平06−198904号公報
【特許文献3】特開2003−011380号公報
【特許文献4】特開2006−326855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4のように記録ヘッドへのインク供給と記録ヘッド内の負圧制御を個別に行っても、負圧制御を行うファンが一定速度で回転しているため、インク供給時に生じる記録ヘッド内の負圧変動は避けられない。そのため、インクの吐出が不安定になってしまうことがある。
【0009】
本発明は、記録ヘッド内の負圧変動を抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインク供給装置は、内部に貯留したインクを吐出可能なヘッドユニットと、該ヘッドユニットの内部に前記インクを供給可能な供給ポンプと、前記ヘッドユニット内の圧力を調整可能な負圧発生手段と、前記ヘッドユニット内の前記インクの量を検知する検知手段と、を備えたインク供給装置において、前記検知手段が、前記ヘッドユニット内の前記インクの量が所定量よりも少なくなったと検知した場合に、前記供給ポンプは駆動を開始し、前記供給ポンプ駆動開始後の単位時間当たりの前記ヘッドユニット内の前記インクの消費量が、所定量よりも多い場合に、前記供給ポンプは前記インクの供給量を増やすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればインク供給装置は、検知手段が、ヘッドユニット内のインク量が所定量よりも少なくなったと検知すると、供給ポンプが駆動を開始する。そして、駆動開始後の単位時間当たりのヘッドユニット内のインクの消費量が、所定量よりも多い場合に、供給ポンプはインクの供給量を増やす。これによって、記録ヘッド内の負圧変動を抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態を適用可能なインクジェット記録装置を模式的に示した正面図である。
【図2】図1の記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】インクタンクからヘッドユニットまでのインクの通る経路を示した図である。
【図4】吐出口面をクリーニングする際の手順を示したフローチャートである。
【図5】(a)から(c)は吐出面からワイパによってインクを拭き取る手順を示す模式図である。
【図6】ヘッドユニットとその周囲を拡大して示した図である。
【図7】第1の実施形態における供給ポンプの速度のテーブルを示した図である。
【図8】第1の実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】第2の実施形態におけるファンの速度のテーブルを示した図である。
【図10】第2の実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】(a)、(b)は、図10のステップS714のポンプ停止シーケンスを示したものである。
【図12】第3の実施形態のヘッドユニットとその周辺を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を模式的に示した正面図である。記録装置10はホストPC12と接続されており、ホストPC12から送信される記録情報に基づいて、4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yから記録媒体(以下、ロール紙ともいう)Pにインクを吐出することで記録を行う。4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは、記録媒体Pの搬送方向(矢印A方向)に沿って配置されている。各ヘッドユニットは搬送方向に黒インク用ヘッドユニット22K、シアンインク用ヘッドユニット22C、マゼンタインク用ユニットヘッド22M、イエローインク用ヘッドユニット22Yの順で配置されている。ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは所謂ラインヘッドであり、記録媒体搬送方向に対して記録幅全域に亘ってそれぞれを平行に並べた状態で設けられている。記録装置が記録を行う際は、各ヘッドユニットを移動させることなく、ヘッドユニットに設けられたヒータを駆動することによってノズルからインクを吐出して記録を行う。
【0015】
ヘッドユニットは記録に伴って、ノズルを有する面(以下、インク吐出口面ともいう)22Ks、22Cs、22Ms、22Ysにゴミやインク滴等の異物が付着することで吐出状態が変わり、記録に影響を与えることがある。そのため、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、記録装置10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によるインク吐出口面のクリーニングを定期的に行うことによって、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのノズルからのインク吐出状態を初期の良好なインク吐出状態に回復することができる。回復ユニット40には、クリ−ニング動作のときに4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのインク吐出口面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャップ50が備えられている。キャップ50は各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、ブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0016】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0017】
記録を行う際には、搬送中のロール紙Pがブラックのヘッドユニット22Kの下に到達すると、ホストPC12から送られた記録情報に基づいて、ヘッドユニット22Kからブラックインクが吐出される。同様にヘッドユニット22C、ヘッドユニット22M、ヘッドユニット22Yの順に、各色のインクが吐出されてロール紙Pへのカラー記録が完成する。
【0018】
更に記録装置10には各ヘッドユニットに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、各ヘッドユニットにインクを供給可能なポンプや、後述するクリーニング動作をするためのポンプ(図3等参照)などが備えられている。
【0019】
図2は、図1の記録装置10の制御系を示すブロック図である。ホストPC(ホスト装置)12から送信された記録情報やコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。
【0020】
CPU100は、記録装置10の記録情報の受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前に行う動作処理では、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yをキャップ50から離して記録位置に移動させる。またCPU100は、後述するように、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Y内の圧力を適切な値に調整可能な負圧発生手段としてのファンのファンモータの回転を、圧力センサによって得られた圧力情報に基づいて随時補正する制御を行う。さらにCPU100は、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ126およびロール紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する制御を行う。
【0021】
記録を行う際は、一定速度で搬送されるロール紙Pにインクを吐出するタイミング(記録タイミング)を決定するため、先端検知センサ109でロール紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から記録情報を順次読み出し、この読み出した記録情報を各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに、ヘッドユニット制御回路112経由して転送する。
【0022】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラムおよびテーブルなどが記憶されている。また、CPU100は作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。さらにCPU100は、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧および吸引等の制御を行う。
【0023】
図3は、本実施形態の記録装置におけるインクタンク28Kからヘッドユニット22Kまでのインクの通る経路を模式的に示した図である。各ヘッドユニットは同じ構造であるため、以下、例としてブラックインク用ヘッドユニット22Kについてのみ説明を行う。
【0024】
記録装置10には、ヘッドユニット22Kにインクを供給するインク供給装置60が組み込まれており、ヘッドユニット22Kは、吐出部22KSiにインクを供給する液室としての貯留部22Krとインクを吐出可能な吐出部22KSiとを備えている。インク供給装置60は、記録装置10の本体に着脱自在なインクタンク28Kと、このインクタンク28Kとヘッドユニット22Kとをつなぐインク供給路62の途中に配置されたインク供給ポンプ72などから構成されている。供給ポンプ72は、インクフィルタ90を介して貯留部22Krへのインク供給を担う。
【0025】
貯留部22Krには、貯留されているインク(以下、貯留インクともいう)の液面22Krsのレベルを検知する液面検知センサ86が取り付けられている。また、貯留部22Kr下方では、ヘッドユニット22Kのノズル22Knと、ノズル22Knへのインク供給口が形成された吐出部22KSiとが接続されている。
【0026】
貯留部22Kr上部には、空気で満たされた空間(以下、空気室という)66にエアーフィルタ95を介して空気流路64が接続されており、その空気流路64には、大気バルブ84および圧力を測定可能な圧力検出センサ81が備えられている。圧力検出センサ81は空気室66内の圧力を検出することが可能である。また、空気流路64のエアーフィルタ95が設けられている一方端部とは反対の他方端部は、減圧流路65とT字状に接続されており、その減圧流路65は、一端が大気開放、他端はファン68に接続されている。
【0027】
インクタンク28Kには、このインクタンク28K内のインクの有無を検出する検出センサ(不図示)が取り付けられている。また、インクタンク28Kには、インクタンク28Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ74が取り付けられている。
【0028】
貯留部22Krの液面検知センサ86の測定結果でインク量が所定量以下であると判断した時は、インクタンク28Kの大気開放バルブ74が開放され、供給ポンプ72を稼動してインクタンク28Kからインクを吸引する。そして、吸引したインクを貯留部22Kr内に供給する。一方、液面検知センサ86が一定レベル以上のインク液面22Krsを検知したときは、供給ポンプ72が停止し、インクタンク28Kの大気解放バルブ74が密閉されてインクの供給は停止される。
【0029】
ところで、供給ポンプ72にはチューブポンプが用いられており、供給ポンプ72が非稼動時にはインク供給路62は遮断される(インクタンク28Kと貯留部22Krとの間の流路が遮断される)。
【0030】
図4は、ヘッドユニット22Kの吐出口面22Ksをクリーニングする際の手順を示したフローチャートである。また、図5は、吐出面22Ksからワイパ52によってインクを拭き取る手順を示す模式図であり、(a)は拭き取り開始前を示し、(b)は拭き取り終了直後を示し、(c)は拭き取り終了後の待機状態を示す図である。ここでいうクリーニングとはヘッドユニット22Kのインク吐出を良好な状態に継続的に維持するために行われる動作をいい、経過時間や吐出状況等の条件を満たした場合、または、記録品位に異常が見られる場合等に自動的にもしくは任意で実施される動作である。以下、クリーニングの動作について順に説明する。
【0031】
ステップS401でクリーニング指令を受信すると、ステップS402で大気開放バルブ84を解放する。その後、ステップS403でクリーニングポンプ92がキャップ50内を減圧させる方向に駆動し、貯留部22Kr内のインクをノズル22Knからキャップ50に引き込んで排出させる。このインクの排出によって、記録動作中等にノズル22Knの周囲部に溜まった微細な気泡や、ヘッドユニットの吐出口面22Ks上に付着したゴミ等の異物を除去することができる。そして一定時間経過後、ステップ404でクリーニングポンプ92の駆動を停止し、ステップ405で大気バルブ84を閉じる。
【0032】
なお、この状態ではヘッドユニット22Kの各ノズル22Knの開口を含む吐出口面22Ksに、まだインクが付着していることがある。そこで、この汚れを除去するために、後述するように、キャップ50と共に設けられたワイパ52で吐出口面22Ksを拭く。その際、先ずステップS406で図5(a)に示すように、ヘッドユニット22Kが回復キャップ50の上方へと移動する。その後、ステップS407でキャップ50が矢印B方向に移動することにより、図5(b)に示すように、フェイス面22Ksに付着しているインクなどの汚れがワイパ52で拭き取られる。この動作をワイピング動作と呼び、ワイピング動作終了後は、ステップS408で図5(c)に示すように、ヘッドユニット22Kは再びキャッピングされて待機状態になる。この待機状態にあるヘッドユニット22Kはフェイス面22Ksがキャップ当接部54でキャッピングされている(塞がれている)ので、キャップ50内での空気の対流がほとんど無く、ノズル22Knにあるインクが増粘するのを防止することができる。ヘッドユニット22Kが待機状態になってクリーニング動作は終了となる。
【0033】
なお、ノズル22Knから排出されたインク(廃インク)はキャップ50に受容されて吸引ポンプ92(図3参照)によって吸引される。吸収された廃インクは、廃インクタンク71(図3参照)に圧送される。廃インクタンク71には微小な大気開放口75が設けられており、廃インク(および気泡)の流入に伴い変化する廃インクタンク71内の圧力を大気へと解放する役割を担う。
【0034】
図6は、ヘッドユニット22Kとその周囲を拡大して示した図である。記録時にはノズル22Knにメニスカスを形成するためにヘッドユニット22Kに適正な負圧を付与する必要がある。そのため、記録時には大気バルブ84を開放状態にして、ファン68をC方向への空気の流れを作るように作動させることによって、ヘッドユニット22K内の空気室66が減圧される。その結果、貯留部22Krを介してノズル22Kn内も同様に減圧される。
【0035】
本実施形態では大気と連通した貯留部22Krが、吐出部22Ksの上方に配置されているので、大気バルブ84が開くことによりノズル22Kn先端の開口部には液面22Krsからの水頭圧力Hの正圧力がノズル22Kn開口部に作用する。そのため、ファン68による空気室66内への減圧量は水頭圧力H以上に設定される。これによりヘッドユニット22Kのノズル22Knに負圧が付与される。この結果、ノズル22Knの開口部においてインクのメニスカスが形成されることになる。
【0036】
本実施形態では、ファン68を作動させることで発生する負圧が、直接空気室66に掛かるのではなく、大気を導入可能な吸入口61(空気導入部)を設けていることで、負圧は間接的に空気室66に掛かることになる。また本実施形態では、ファン68を作動させることにより、吸入口61から取り込まれた空気の流れが減圧流路65に生じ、その減圧流路65に接続された空気流路64内の空気は、主にエジェクタの原理により、減圧流路65の空気の流れに引き込まれる。この結果、空気室66に負圧が生じることになる。
【0037】
ヘッドユニット22Kに配置されている貯留部22Krは、記録に使用されるインクをノズル22Knに供給するためバッファーであり、貯留部22Kr内のインク量はインク上限レベルおよびインク下限レベルが設定されている。そして、ヘッドユニット22K内では、常に上限レベルから下限レベルの範囲にインク量を保持する様に液面上限レベル検知センサ86aおよび液面下限レベル検知センサ86bによって監視されている。供給ポンプ72は、ヘッドユニット22Kに供給するインク流量を、5段階の速度で動作することで調整可能であり、速度の遅い方から第1速度、第2速度となり、最高速度が第5速度となっている。供給ポンプ72はKCMY各色に対して独立して動作可能であり、必要に応じて各ポンプをそれぞれ動作させる。
【0038】
図7は、本実施形態における供給ポンプ72の速度のテーブルを示した図である。本実施形態において、供給ポンプ72は5段階の速度Npで動作するようになっているが、必要に応じて段階数を増減しても構わない。ヘッドユニット22Kからインクを吐出することで貯留部22Krのインクが消費され、液面下限レベル検知センサ86bによって液面22Krsの低下が検知されると、まず供給ポンプ72を第1速度(Np=1)で動作させて、インクをインクタンク28Kから液室へ供給する。供給ポンプ72を動作させて貯留部22Krへインク供給を開始後、所定時間待機後に、再度液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認する。液面下限レベル検知センサ86bにより、貯留部22Kr内のインク量が液室のインク下限レベルを上回った事を確認すると、供給ポンプ72は現在の速さでインクを供給し続ける。そして、液面上限レベル検知センサ86aによって貯留部22Kr内のインクがインク上限レベルに達した事を検知すると、供給ポンプ72を停止する。
【0039】
再度液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認した際、液室内のインク量がインク下限レベルを上回らないときは、インク供給量がインク消費量よりも少ないと判断し、供給ポンプ72の速度Npを1段階上げて(Np=2)インク供給量を増加させる。供給ポンプ72の速度を1段階上げた後、再び所定時間後に液面下限レベル検知センサ86bの状態を確認し、インク量がインク下限レベルを上回ったかどうかを確認する。つまり、ここで所定時間に消費されるヘッドユニット内のインクの消費量が多いか少ないかを判断している。所定時間内のインク消費量が多く、インク下限レベルを上回らない場合、再度供給ポンプ72の速度Npを上げる処理が行われる。つまり、供給ポンプ72の速度Npによるインク供給量が記録処理に伴うインク消費量(貯留部22Kr内のインク減少量)を上回るまで供給ポンプ72の速度は上げられる。従って、図7の単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値となっている。
【0040】
このように、本実施形態ではヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変えることで、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制している。
【0041】
なお、第5速度でのインク流量は、記録ヘッドの全ノズル22Knが同時に吐出した時の消費量よりも多く設定されていることで、インク供給量がインク消費量を上回ることが可能となる。その後、記録終了まで貯留部22Kr内のインクレベルを監視し続けて、貯留部22Kr内のインクレベルを一定範囲に保たせる。
【0042】
本実施形態では、貯留部22Krのインク量は液面上限レベル検知センサ86aおよび液面下限レベル検知センサ86bによって監視しているが、それ以外の手段によりインク量を随時監視して、供給ポンプ72の流量を随時コントロールしても構わない。
【0043】
図8は、本実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。通常、記録装置を使用していない状態では、ノズルKnからのインクの漏れを防止する目的で大気バルブ84は閉じられている。記録を開始する場合には、先ず大気バルブ84が閉じられている状態で、CPU100は、ファン68を作動させて、減圧流路65および空気流路64内を減圧させてから、大気バルブ84を開く。以下、このフローチャートに沿って本実施形態の記録処理を説明する。
【0044】
ステップS701で記録装置10が記録信号を受信すると、CPU100はステップS702へ進みファン68を作動させる。次にステップS703で、CPU100は、ファン68による減圧が正常に行われているか否かを確認するために空気流路64内の圧力を圧力検出センサ81で確認する。ここで、所定の圧力が得られていない場合には、CPU100は、ステップS704へ進み、ファン68の回転数の補正を行う。CPU100は、ステップS703で所定の圧力が得られていればステップS705へと移行して大気バルブ84を解放する。大気バルブ84の解放によって空気室66が減圧されて、ノズル22Knにも負圧が作用するようになり、ノズルKnの開口(吐出口)にはメニスカスが最適な状態で形成される。
【0045】
次に、CPU100は、ステップS706でヘッドユニット22Kをワイピング位置へ移動させて、ステップS707でヘッドユニット22Kの吐出口面22Ksのワイピングを行う。その後、CPU100は、ステップS708で記録を行うためヘッドユニット22Kを下降させてから記録位置へ移動させる。ステップS709で記録媒体Pに対して記録を行う。そして、記録媒体Pに対して記録を行う事で貯留部22Kr内のインクが消費されステップS710で、液面下限レベル検知センサ86bが液面22Krsの下限レベルを検知すると、CPU100は、ステップS720で供給ポンプ72の速度を1段階上げる。この時、供給ポンプが停止状態Np=0の場合、供給ポンプ72の速度は、第1速度Np=1になる。そして、CPU100は、ステップS711で供給ポンプ72を駆動させる。供給ポンプ72の駆動開始後、CPU100は、ステップS721で所定時間待機して、再度ステップS710に戻り、貯留部22Kr内のインクが下限以下であるかを確認する。液面が依然として下限以下である場合、CPU100は、インクが下限レベルを上回るまで、ステップS720からステップS721を繰り返して、供給ポンプ72の速度を上げる。
【0046】
そして、CPU100は、ステップS710で貯留部22Kr内のインクが下限レベルを上回っている事を確認すると、ステップS712で供給ポンプ72が動作中であるかの確認を行う。供給ポンプ72が動作中のとき、CPU100は、ステップS713で液面上限レベル検知センサ86aを確認して、上限になっていない場合は、ステップS719で所定時間待機して再度ステップS713で液面が上限に有るかどうかを確認する。CPU100は、液面が上限になったらステップS714で供給ポンプ72を停止させる。供給ポンプ72が停止中の時は、CPU100は、ステップS712からステップS715に移行して、記録動作終了の確認を行い、記録が終了でない場合は、記録終了までステップS710からS715を繰り返す。記録動作終了後は、CPU100は、ステップS716でヘッドユニット22Kを上昇させて、待機位置まで移動して再びキャップ50によってキャッピングされる。その後、CPU100は、ステップS717で大気バルブ84を閉じて、ステップS718でファン68の作動を停止し、再び待機モードとなってこのフローチャートを終了する。
【0047】
なお、ヘッドユニット22Kのインク吐出ドット数をカウントし、単位時間あたりのインク吐出ドット数から単位時間あたりのインク消費量(貯留部22Kr内のインク減少量)を計算して供給ポンプ動作速度を決定してもかまわない。この場合においても、単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とする。ここで、供給ポンプ72のインク供給量を、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とし、供給ポンプ72の動作速度を一定速度で動作させる方法も考えられる。しかし、上記のように供給ポンプ72の動作速度を一定速度で動作させると、単位時間あたりのインク消費量が小さい場合、貯留部22Krにインクが急激に流入するため、空気室66の負圧が所定の負圧よりも急激に小さくなってしまう可能性がある。しかし、本実施形態のように、インクの消費量に合わせて供給ポンプ72によるインクの供給量を制御することにより、上記のような問題を抑えることができる。
【0048】
このように、本実施形態のインク供給装置は、ヘッドユニット22K内のインクの減少に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度を変える。これによって、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができた。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本実施形態におけるファン68の速度のテーブルを示した図である。本実施形態におけるファン68は、その回転速度Nfを図9に示すように6段階の速度で動作可能であり、速度の遅い方から第1速度、第2速度となり、最高速度が第6速度となっている。本実施形態において、ファン68の回転速度Nfは、6段階の速度としているがこれに限定するものではなく、必要に応じて加減しても構わない。本実施形態では、ヘッドユニット22Kからインクを吐出することによって貯留部22Krのインクが消費されると、液面下限レベルセンサ86bが、貯留部22Kr内のインクが所定インク量を下回った事を検知する。液面下限レベルセンサ86bが下回った事を検知すると、供給ポンプ72を第1速度で動作させて、インクをインクタンク28Kから液室へ供給を開始する。そのとき、ファン68は供給ポンプ72の動作速度が変更されるのをトリガとして回転速度を1段階上げて負圧力を大きくする。同様に供給ポンプ72の速度が1段階上がる毎にファン68の回転速度も1段階上がる。供給ポンプ72の速度とファン68の回転速度とは、貯留部22Krの負圧が常に一定となるような関係で制御することが望ましい。
【0051】
図10は、本実施形態における記録処理の流れを示したフローチャートである。通常、記録装置を使用していない状態では、ノズルKnからのインクの漏れを防止する目的で大気バルブ84は閉じられている。記録を開始する場合には、CPU100は、先ず大気バルブ84が閉じられている状態で、ファン68を作動させて、減圧流路65および空気流路64内を減圧させてから、大気バルブ84を開く。以下、このフローチャートに沿って本実施形態の記録処理を説明する。なおステップS701からステップS709までは、第1の実施形態と同様であるため、以下ではステップS710以降の処理について説明する。
【0052】
ステップS709の記録動作によって、貯留部22Kr内のインクが減少。ステップS710で、貯留部22Kr内の液面下限レベル検知センサ86bが液面の下限レベルを検知すると、CPU100は、ステップS720で供給ポンプ72の速度を1段階上げる(供給ポンプが停止状態Np=0の場合は、第1速度Np=1になる)。そして、CPU100は、ステップS711で供給ポンプ72を駆動させる。CPU100は、その後ステップS722でファン68の回転速度Nfを1段階上げて、ステップS723でファン68を駆動させる。なお、初期の段階では供給ポンプ72の速度はNp=0であり、ファン68の回転速度はNf=1となっている。CPU100は、ステップS723でファン68を駆動させた後、ステップS721で所定時間待機して、再度ステップS710に戻り、貯留部22Kr内のインクが下限以下であるかを確認する。液面が依然として下限以下である場合、CPU100は、インクが下限レベルを上回るまで、ステップS720からステップS721を繰り返して、供給ポンプ72の速度Npおよびファン68の回転速度Nfを上げる。
【0053】
そして、CPU100は、ステップS710で貯留部22Kr内のインクが下限レベルを上回っている事を確認すると、ステップS712で供給ポンプ72が動作中であるかの確認を行う。供給ポンプ72が動作中のときは、CPU100は、ステップS713で液面上限レベル検知センサ86aを確認して、上限になっていない場合は、ステップS719で所定時間待機して再度ステップS713で液面が上限に有るかどうかを確認する。CPU100は、液面が上限になったらステップS714で供給ポンプ72を停止する。供給ポンプ72が停止中の時は、CPU100は、ステップS712からステップS715に移行して、記録動作終了の確認を行い、記録が終了でない場合は、記録終了までステップS710からS715を繰り返す。記録動作終了後は、CPU100は、ステップS716でヘッドユニット22Kを上昇させて、待機位置まで移動して再びキャップ50によってキャッピングされる。その後、CPU100は、ステップS717で大気バルブ84を閉じて、ステップS718でファン68の作動を停止し、再び待機モードとなってこのフローチャートを終了する。
【0054】
図11(a)、(b)は、ステップS714のポンプ停止シーケンスを示したものである。(a)に示すように、供給ポンプ72は一定の速度で減速して停止する。それに合わせてファン68も、一定の速度で減速して停止する。また、(b)に示すような一定間隔での矩形状のテーブルにて段階的に停止してもよい。
【0055】
なお、本実施形態では第1の実施形態同様、ヘッドユニット22Kのインク吐出ドット数をカウントし、単位時間あたりのインク吐出ドット数から単位時間あたりのインク消費量を計算して供給ポンプ72の動作速度を決定してもかまわない。この場合においても、単位時間当たりに最も多い量を供給する速度であるNp=5における供給ポンプ72のインク供給量(最大供給量)は、ヘッドユニット22Kにおけるインクの単位時間当たりの最大消費量を上回る値とする。
【0056】
このように、ヘッドユニット22K内のインクの消費に伴って、インクを供給する供給ポンプ72の速度とファン68の回転速度とを変える。これによって、ヘッドユニット22K内に負圧の大きな変動が生じるのを抑制し、安定的にインクを吐出させることが可能なインク供給装置を実現することができた。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0058】
図12は、本実施形態のヘッドユニットとその周辺を示した図である。ファン68による負圧制御手段は、本実施形態のように、複数のヘッドユニット22Y、22M、22C、22Kに接続されていてもよい。
【0059】
なお、本明細書でいう、「記録」(画像形成とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成するものに限らない。つまり記録とは、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含むものとする。
【0060】
また、「記録媒体」(ロール紙とも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含むものとする。
【0061】
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。つまりインクとは、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を含むものとする。
【0062】
また、上記各実施形態では、負圧発生手段としてプロペラタイプのファンを用いているが、これに限定するものではなく、可撓性のインクバッグと弓形ばねを用いた負圧発生手段や、容積型のポンプ等を用いてもよい。また、本発明の装置にインク以外の液体を用いてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
22K ヘッドユニット
60 インク供給装置
68 ファン
72 供給ポンプ
74 大気開放バルブ
84 大気バルブ
86 液面検知センサ
86a 液面上限レベル検知センサ
86b 液面下限レベル検知センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯留したインクを吐出可能な吐出部と、前記吐出部にインクを供給する液室と、前記液室にインクを供給する供給ポンプと、前記液室内の圧力を調整可能な負圧発生手段と、前記液室のインクの量を検知する検知手段と、を備えたインク供給装置において、
前記検知手段が、前記ヘッドユニット内のインクの量が所定量よりも少なくなったと検知した場合に、前記供給ポンプは動作を開始し、前記供給ポンプの動作開始後の単位時間当たりの前記液室のインクの減少量が、所定量よりも多い場合に、前記供給ポンプは前記液室へのインクの供給量を増やすことを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記供給ポンプは、段階的に前記液室へのインクの供給量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記供給ポンプによる前記液室への供給量は、前記液室のインクの単位時間あたりのインク消費量基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記供給ポンプによる単位時間当たりの最大供給量は、前記吐出部が単位時間当たりに吐出する最大消費量よりも多いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記負圧発生手段は、前記供給ポンプによるインクの供給量の増加に伴って、負圧力を上げることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項1】
内部に貯留したインクを吐出可能な吐出部と、前記吐出部にインクを供給する液室と、前記液室にインクを供給する供給ポンプと、前記液室内の圧力を調整可能な負圧発生手段と、前記液室のインクの量を検知する検知手段と、を備えたインク供給装置において、
前記検知手段が、前記ヘッドユニット内のインクの量が所定量よりも少なくなったと検知した場合に、前記供給ポンプは動作を開始し、前記供給ポンプの動作開始後の単位時間当たりの前記液室のインクの減少量が、所定量よりも多い場合に、前記供給ポンプは前記液室へのインクの供給量を増やすことを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記供給ポンプは、段階的に前記液室へのインクの供給量を増加させることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記供給ポンプによる前記液室への供給量は、前記液室のインクの単位時間あたりのインク消費量基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記供給ポンプによる単位時間当たりの最大供給量は、前記吐出部が単位時間当たりに吐出する最大消費量よりも多いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記負圧発生手段は、前記供給ポンプによるインクの供給量の増加に伴って、負圧力を上げることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【公開番号】特開2012−11643(P2012−11643A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149588(P2010−149588)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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