説明

インサイドポンプを備えるエンドレス・コアレス四軸押出機及び四軸駆動装置

【課題】低炭素型材料加工プロセス、特にコンパウンドや造粒を始めとするポリマー加工プロセスの省エネと二酸化炭素排出量低減を図れるように考案した、昇圧押出能力と混練分散性能が共に高く、フィード性能とベント性能が共に優れ、高度な省エネとコンパクトの性格を有する押出機を提供する。
【解決手段】かみ合い型同方向回転多軸押出機のセルフクリ−ニング性を最大限に生かし、4本の二条スクリュをそれらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように、エンドレスで、コアレスで配置し、これによりスクリュ構成の中センター領域に4つのかみ合い領域を形成し、単位スクリュ当たりのかみ合い領域を二軸押出機の1.5倍程多くし、四軸スクリュのセンター領域に形成されるチェーン状セル構造によりインサイドポンプが構成される四軸押出機、回転動力の仲介に内歯車を適用することによるシンプルかつコンパクトで回転動力伝達損失の少ない四軸駆動装置である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーや食材や建材やセラミックなどの材料加工、特にポリマーのコンパウンドや造粒に適用する新規スクリュ式押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かみ合い型同方向回転二軸押出機は、50年以上の歴史があり、すでにポリマー加工や食品加工や建材加工などの分野において汎用されている。
かみ合い型同方向回転二軸押出機は、ただかみ合い型同方向回転多軸押出機の一種である。その他のエンドレスタイプのかみ合い型同方向回転多軸押出機に関しては、
1953年に、ドイツ特許DE862668、DE872732により公告されているエンドレス・コアレス三軸押出機;
2002年に、中国特許実用新案CN2471622Yにより、公告されている三条スクリュ適用可能なエンドレス・コアレス三軸押出機;
1955年に、カナダ特許CA517911により、公告されているコアありで、エンドレス六軸押出機;
1951年に、アメリカ特許US2563396により、公告されているコアありで、エンドレス八軸押出機;
1998年に、アメリカ特許US5836682により、公告されているコアありで、エンドレス十軸押出機;
2001年に、アメリカ特許US66196711B1により公開されているコアありで、エンドレス十二軸押出機;
2008年に、Journal of Reinforced Plastics and Composites(Vol.27,P.321)により紹介されている3条スクリュ適用のエンドレス四軸押出機という発明が挙げられる。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】

【非特許文献】
【非特許文献】 1、Zhu,X.Z.,Xie,Y.J.and Yuan H.Q.:Journal of Reinforced Plastics and Composites,Vol.27,p.321
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二軸押出機は、昇圧押出能力が低く、単位スクリュ当たりのかみ合い領域数がすくないことにより、混合分散性能が低い。
【0005】
また、従来のエンドレス・コアレス三軸押出機は、単位スクリュ当たりのかみ合い領域が多いことにより、二軸押出機より混合分散性能が高いが、浅溝タイプの三条スクリュと一条スクリュしか適用できないため、単位スクリュ当たりの処理能力が低い。
【0006】
また、上述したエンドレス型六、八、十、十二軸押出機は、単位スクリュ当たりのかみ合い領域が多いため、二軸押出機より混合分散性能が高いが、コアがあり、スクリュ流路が多いため、フィード部とベント部の設計が難しく、原料供給の場合、スクリュと同数のスクリュ流路、特にコア側スクリュ流路へのフィードが困難であり、飢餓状態のスクリュ流路が存在するため、単位スクリュ当たりの処理能力が低下し、また、脱揮や排気の場合、ベント開口部において曝されていないスクリュ流路、特に閉じ込められるコア側スクリュ流路からの脱揮、排気能力が低い。
【0007】
また、上述した三条スクリュ適用のエンドレス四軸押出機は、4本のスクリュに囲まれるセンター領域が軸方向に連通する中空状態なので、融体材料加工時には、バックフローの圧力流が大きく、押出能力も低いし、センター領域における材料に対する混合分散能力も低いことにより、実用性はないと見られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるインサイドポンプを備えるエンドレス・コアレス四軸押出機は、主に、エンドレスで、コアレスでかみ合って同方向回転可能な4本のスクリュ、バレルとダイからなる押出機本体、駆動装置とモータより構成され、前記押出機本体においてフィード部を備え、必要に応じてベント部を設置可能であり、二条スクリュと一条スクリュを適用し、4本のセルフクリニング性二条スクリュを適用する場合、これらのスクリュに囲まれるセンター領域において軸方向分布のセル構造のチェーンが存在し、このセル構造がインサイドポンプの働きを有し、4本のセルフクリニング性一条スクリュを適用する場合、これらのスクリュにより囲まれるセンター領域において軸方向の螺旋状インサイド流路が存在し、
【0009】
また、前記フィード部の開口領域を、軸方向に4つ以上のスクリュ流路または二条スクリュの2リード以上の長さを有するように構成し、また、前記フィード部の開口領域において、4本の二条スクリュにより囲まれるセンター領域における軸方向分布のセルが、原料供給可能な状態におかれるように、少なくとも上方設置のスクリュに非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用し、
【0010】
また、前記ベント部の開口領域を、軸方向に4つ以上のスクリュ流路または二条スクリュの2リード以上の長さを有するように構成し、また、前記ベント部の開口領域において、4本の二条スクリュにより囲まれるセンター領域における軸方向分布のセルが、排気可能な状態におかれるように、少なくとも上方設置のスクリュに非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用し、
【0011】
また、前記押出機本体において前記ベント部を含む脱揮ゾーンを設置可能であり、前記脱揮ゾーンにおいて、スクリュ構成のセンター領域におけるセルをバレル側のスクリュ流路に曝せるように、少なくとも上方設置のスクリュに非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントスクリュエレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用する、というものであり;
【0012】
また、以下に述べる本発明の四軸駆動装置を適用するものであり;
【0013】
本発明の四軸駆動装置は、主に、4本の出力軸、少なくとも1つの内歯車と主動軸より構成され、前記4本の出力軸を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置して、その中の1つの出力軸を一次軸とし、その始端部に第1歯車を設け、前記第1歯車の下流側に第2歯車を内歯車の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸を二次軸とし、それらの始端部にそれぞれの所用歯車を内歯車の内ギアとかみ合わせるように設け、また内歯車にスラスト軸受を装着してその回転位置を固定し、また主動軸の終端部にその所用歯車を、前記一次軸の出力軸始端部の第1歯車とかみ合わせるように設け、主動軸の始端部をモータ軸とカップリングにより連結され、
【0014】
その回転動力の伝達方式は、モータ軸からの回転動力を、主動軸を介して一次軸の出力軸に伝達し、後者をモータ軸の回転速度より減速で異方向回転させる同時に、内歯車を介して二次軸のその他3本の出力軸に伝達し、これらの出力軸を、一次軸の出力軸と同速で同方向回転させ、このようにして、4本の出力軸をモータ軸に対してすべて減速で、異方向に同方向回転させるというものであり;
【0015】
あるいは4本の出力軸と少なくとも1つの内歯車より構成され、前記4本の出力軸を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置して、その中の1つの出力軸を一次軸とし、その始端部を、モータ軸とカップリングにより直接に連結することができ、動力伝達方向から見れば、その始端部の下流側に第2歯車を内歯車の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸を二次軸とし、それらの出力軸の始端部にそれぞれの所用歯車を内歯車の内ギアとかみ合わせるように設け、また内歯車にスラスト軸受を装着してその回転位置を固定し、
【0016】
その回転動力の伝達方式は、モータ軸の回転動力を、直接に一次軸の出力軸に伝達し、これを減速せずに同方向回転させる同時に、内歯車を介して、二次軸のその他3本の出力軸に伝達し、これらの出力軸を減速せずに同方向回転させ、このようにして、4本の出力軸をモータ軸の回転に対してすべて減速せずに同方向回転させるというものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるエンドレス・コアレス四軸押出機は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、
(1)4本のスクリュにより囲まれるセンター領域における軸方向分布のセル構造のチェーンは、約1つのスクリュ流路の容積を持ってインサイドポンプを形成し、セル中の材料の受けられるせん断速度がバレル側スクリュ流路内のそのものより約倍ほどであり、加えて、バックフローが殆どなく、昇圧能力と押出能力が極めて高い。例えば、バレル側4つのスクリュ流路中のバックフローである圧力流が牽引流の二分の一の場合、前記インサイドポンプの押出能力は、約押出機全体の押出能力の半分程度である。
【0018】
(2)前記(1)の効果により、単位スクリュ当たりの処理能力が同様の場合、二軸押出機より、昇圧押出ゾーン所用スクリュ長さは、顕著に短縮できる。
(3)単位スクリュ当たりのかみ合い領域が、二軸押出機のそのものの1.5倍程多く、4つのかみ合い領域が4本のスクリュに囲まれるセンター領域に集中しているため、混合分散性エレメントを適用するその混合分散ゾーンにおいては、分配混合と分散混合が共に良いことにより、単位スクリュ、単位スクリュ長さ当たりの総括混合分散性能は、極めて高い。
【0019】
(4)前記(3)の効果により、単位スクリュ当たりの処理能力が同様の場合、二軸押出機より、混合分散ゾーン所用スクリュ長さは、顕著に短縮できる。
(5)前記(1)のインサイドポンプの効果により、二軸押出機より、バックフローである圧力流を低減し、押出能力が高いため、押出所要比エネルギが低く、加えて、前記(3)の単位スクリュ、単位スクリュ長さ当たりの総括混合分散性能が高いという効果により、混合分散ゾーン所要スクリュ長さが短くでき、これにおける混合分散所用比エネルギが低減でき、そのため、押出所要比エネルギと混合分散所用エネルギからなるトータル比エネルギを大幅に低減できる。
【0020】
(6)前記(2)、(4)の昇圧押出ゾーンと混合分散ゾーンのそれぞれの所用スクリュ長さが顕著に短縮可能という効果により、押出機全体は、二軸押出機より、所用スクリュ長さが大幅に短縮でき、コンパクトになれる。
(7)前記(5)の混合分散所要トータル比エネルギが低いという効果により、コンパウンド時に、加工される材料に余計なエネルギを加えず、これにより低温混合分散あるいは低温混練が可能となり、材料の分解が少なく、材料に優しい。
(8)前記(3)の高混合分散性能という効果により、二軸押出機より押出加工された材料の品質がよく、あるいは二軸押出機により得られない高品質材料または新材料の創出が期待できる。
(9)前記(1)の昇圧・押出能力が高いという効果により、高い先端圧力を求められる場合でも、押出補助用ギヤポンプが不要可能となる。
【0021】
また、初歩的理論推算の結果より、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、二軸押出機より、スクリュ長さが30〜50パーセント以上短縮でき、省エネが10〜30パーセント程であることが分かる。従って、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、インサイドポンプを備える真の押出機であり、省エネまたは低炭素型加工プロセスを求められる次世代スクリュ式押出機である。
【0022】
また、本発明の四軸駆動装置に関しては、以下のような効果を得られる。つまり
1、適用される仲介歯車が少なく、動力伝達の仲介回数が少ないことにより、回転動力伝達損失が少なく、回転機構がシンプルかつコンパクトとなる。
2、交流モータや直流モータの適用により、省エネを図るためのインバータやパルス幅調整などのモータ電源制御によってモータ速度の制御を行うことによるスクリュ回転数制御に極めて適している。
3、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機に適用する場合、より一層の比エネルギ低減あるいは省エネの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機
【図2】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機に二条スクリュの適用による押出機本体の断面構成、4本スクリュの回転状態及びスクリュ構成のセンター領域において分布されるセルの断面形状
【図3】 セルフクリーニング性二条スクリュ構成のセンター領域において軸方向に分布しているチェーン状セル構造のイメージ
【図4】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機所要スクリュ構成におけるかみ合い領域の分布
【図5】 ねじれ角45°のニーディングディスクが装着される4本スクリュの配置状態及びスクリュ構成のセンター領域におけるセルとバレル側スクリュ流路の連通状態
【図6】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機に一条スクリュを適用することによる押出機本体の断面構成、4本スクリュの回転状態及びスクリュ構成のセンター領域におけるインサイド流路の断面形状
【図7】 セルフクリーニング性一条スクリュ構成のセンター領域における軸方向の螺旋状インサイド流路のイメージ
【図8】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機所要フィード部開口領域またはベント部開口領域の形状と、脱揮、排気にも適用する矩形流路スクリュエレメントより構成されるスクリュ構成−a、開口領域の断面図;b、開口領域の俯瞰図
【図9】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機所要フィード部開口領域またはベント部開口領域の断面図と、脱揮、排気にも適用する半矩形流路スクリュエレメントより構成されるスクリュ構成
【図10】 本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機所要フィード部開口領域またはベント部開口領域の断面図と、脱揮、排気にも適用する一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントより構成されるスクリュ構成−a、開口領域の断面図;b、開口領域の俯瞰図
【図11】 本発明の押出機本体においてポリマーの脱揮、排気を行うために設けられるベント部を含む脱揮ゾーンのイメージ
【図12】 本発明の4軸押出機用駆動装置の第1と第2実施形態の正面図
【図13】 本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態の右側面図
【図14】 本発明の4軸押出機用駆動装置の第2実施形態の右側面図
【図15】 本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態を適用する本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機の動力伝達方式の実施形態
【図16】 本発明の4軸押出機用駆動装置の第2実施形態を適用する本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機の動力伝達方式の実施形態
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、低炭素型材料加工プロセス、特にコンパウンド、造粒を始めとするポリマー加工プロセスの省エネと二酸化炭素排出量低減を図るため、かみ合い型同方向回転多軸押出機のセルフクリ−キング性回転機構を最大限に生かして考案した、エンドレスでコアレスで構成され、インサイドポンプを備えることによる高押出能力と、単位スクリュ当たりのかみ合い領域が二軸押出機のそのものの1.5倍程多いことによる高混合分散性能を有するエンドレス・コアレス四軸押出機、動力回転の仲介に内歯車を採用することによるユニックかつシンプルで動力伝達損失の少ない四軸駆動装置と、この様な四軸駆動装置を適用する究極のエンドレス・コアレス四軸押出機を提供することを目的とする。
【実施例】
【0025】
図1には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機を示す。図示のように、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、主に、4本のスクリュ4、バレル2とダイ3からなる押出機本体1、駆動装置5とモータ6より構成され、また、押出機本体1においてフィード部8も備え、ベント部9も設けることができる。
【0026】
図2には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機本体の構成と所要スクリュ構成を示す。図1、2に示したように、押出機本体1は、バレル2内にエンドレスで、コアレスで配置される4本の二条スクリュ4a、4b、4c、4dを、隣接のスクリュ同士がかみ合って同方向回転できるように設けて構成されるものである。また、図2a〜eには、それぞれ4本のセルフクリニング性二条スクリュ4a、4b、4c、4dが、スクリュ回転スタート時の回転角を0°とする回転状態(a)、回転角がπ/4(b)、π/2(c)、3π/4(d)、π(e)になる回転状態を示している。図示のように、4本の二条スクリュ4a、4b、4c、4dにより囲まれるセンター領域においては、スクリュの回転により、断面形状と大きさが変化するセル20が存在している。
【0027】
また、図3には、軸方向に分布しているチェーン状セル構造のイメージを示す。図2、3に示したセル20は、以下のような特徴を持っている。
(1)セル20はスクリュの回転角によって、最大断面と最小断面を持ち、最小断面は、スクリュチップ角αにより制約され、原理的に、スクリュ直径/スクリュ底部径=2.41の場合、ゼロ値となる。
(2)セル20の断面は、スクリュの回転により縮小過程と増大過程があり、縮小過程においては、スクリュ回転角π/2を経て最大値から最小値になり、増大過程においてはスクリュ回転角π/2を経て最小値から最大値になり、よって、セル断面積変化の周期がスクリュの半回転すなわち回転角πである。
(3)セル20の断面の縮小過程と増大過程により、セル20内の材料がスクリュ先端方向へ押出され、最小断面が極小さいため、セル20内の流れは牽引流だけであると見られる。
(4)スクリュ直径/スクリュ底部径=1.55の場合、チェーン状セル構造は、1つのスクリュ流路に相当する容積を有する。
(5)スクリュ直径/スクリュ底部径=1.55の場合、充満状態のセル内の材料が受ける平均せん断速度は、バレル側スクリュ流路内のそのものより倍ほど大きい。
(6)前記3〜4の特徴により、チェーン状セル構造によるインサイドポンプが形成され、高い押出能力を持てるようになる。
【0028】
図4には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機におけるかみ合い領域25の分布を示す。図示のように、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は4つのかみ合い領域25があり、つまり、単位スクリュ当たりのかみ合い領域数が二軸押出機のそのもの1.5倍程多く、4本のスクリュ4により囲まれるセンター領域に集中して分布されている。
【0029】
図5には、ねじれ角45°のニーディングディスクが装着される4本のスクリュの配置状態と、セル20とバレル側スクリュ流路との連通状態を示す。ここで、図5−a〜eは、それぞれ、スクリュ回転スタート時の回転角を0°とする状態(a)と、回転角がπ/4(b)、π/2(c)、3π/4(d)、スクリュ半回転π(e)の状態を示している。図示のように、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、ニーディングディスク等の混合分散性エレメントを適用する場合、センター領域のセル20がバレル側スクリュ流路に連通するため、そのセル自体が存在しなくなり、また、4つのかみ合い領域25における混合分散効果と、これによる4つのバレル側スクリュ流路とセンター領域内間の流れ交換による分配混合効果により、総括混合分散性能が高い。
【0030】
図6、7には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、一条スクリュ4e、4f、4g、4hが装着される場合、バレル1内におけるその4本スクリュの回転状態と、それらのスクリュに囲まれるインサイドスクリュ流路21の状態を示す。図6、7を図2、3に比べて分かるように、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機において、一条スクリュを用いる場合、二条スクリュ構成のセル20に代わって軸方向の螺旋状インサイドスクリュ流路21が存在する。また、図6−a〜iには、それぞれスクリュ回転スタート時の回転角を0°とする状態(a)と、回転角がπ/4(b)、π/2(c)、3π/4(d)、半回転π(e)、5π/4(f)、3π/2(g)、7π/4(h)と1回転2π(i)の状態を示している。同様に、インサイドスクリュ流路21内は、バレル側スクリュ流路内より、スクリュ同士の相対回転によるせん断速度が高いため、そこでの押出機能力が高く、また、一条タイプの混合分散性エレメントが使われる場合でも、4つのかみ合い領域25の混合分散効果と、これによるインサイドスクリュ流路21とバレル側のスクリュ流路間の分配混合効果を合わせる総括混合分散性能が高くなる。
【0031】
また、図8〜10には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機所要フィード部8の開口領域8aまたはベント部9の開口領域9aの設計と適用するスクリュのタイプに関して説明するものである。図8に示したよう、本発明のエンドレス・コアレス四軸スクリュ構成の場合、バレル1側に4つのスクリュ流路があるため、原料供給の場合、これら4つのスクリュ流路内への均一なフィードができるように、あるいは脱揮・排気の場合、これら4つのスクリュ流路がベント部9の開口領域9aに連通するように、フィード部8の開口領域8aまたはベント部9の開口領域9aについて、4つ以上のスクリュ流路または二条スクリュの2リード以上の長さを設ける必要であり、また、フィード部8の開口領域8aまたはベント部9の開口領域9aにおいては、セル20内へのフィードやその中からの排気を図るため、図8に示した矩形流路スクリュや図9に示した半矩形流路スクリュや図10に示した一条フライト欠けの二条型スクリュを適用することができる。
【0032】
図11には、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機の押出機本体(1)において、材料の脱揮または排気押出加工、例えばポリマーからのの脱揮を行うために設けられるベント部9を含む脱揮ゾーン22の様子を示す。二条スクリュ4a、4b、4c、4dを適用する脱揮ゾーン22においては、脱揮ゾーンの上下流側に抵抗性スクリュエレメントの適用により、融体23による充満ゾーン(陰)が形成され、両充満ゾーン間におけるスクリュ構成のセンター領域におけるセル20内の融体をバレル側スクリュ流路に曝せるように、少なくとも上方設置のスクリュ4に非セルフクリニング性エレメント、例えば図8〜10に示したように、矩形流路スクリュエレメントや半矩形流路スクリュエレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用することができる。
【0033】
図12、13には、本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態を示す。図示のように、本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態は、基本的に4本の出力軸10、11、12、13、内歯車14と主動軸15より構成され、4本の出力軸10、11、12、13を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置して、その中の出力軸10を一次軸とし、出力軸10の始端部にその第1歯車10aを設け、動力伝達方向から見れば、その下流側にその第2歯車10bを内歯車14の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸11、12、13を二次軸とし、それらの出力軸の始端部にそれぞれの所要歯車11b、12b、13bを内歯車14の内ギアとかみ合わせるように設け、また内歯車14にスラスト軸受24を装着してその回転位置を固定し、また、主動軸15の終端部にその歯車15aを、一次軸の出力軸10の始端部にあるその第1歯車10aとかみ合わせるように設け、主動軸15の始端部をモータ軸16とカップリング17により連結されるものである。
【0034】
そして、本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態の回転動力の伝達方式は、モータ軸16からの回転動力を、主動軸15を介して一次軸の出力軸10に伝達して、これを、主動軸15の終端部歯車15aと一次軸の出力軸10の始端部にあるその第1歯車10aとのギヤ数比により、モータ軸16の回転に対して減速で異方向回転させる同時に、内歯車14を介して、二次軸のその他3本の出力軸11、12、13に伝達してこれらの出力を回転させ、このようにして、4本の出力軸10、11、12、13を、モータ軸16の回転に反対し、すべて減速で異方向回転させるものである。
【0035】
また、図12、14には、本発明の4軸押出機用駆動装置の第2実施形態を示す。図示のように、本発明の4軸押出機用駆動装置の第2実施形態は、基本的に4本の出力軸10、11、12、13、内歯車14より構成され、4本の出力軸10、11、12、13を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置し、その中の出力軸10を主動軸である一次軸とし、出力軸10の始端部をカップリング17によりモータ軸16と連結できるような構造にし、その始端部の下流側に歯車10bを内歯車14の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸11、12、13を二次軸とし、それらの出力軸の始端部にそれぞれの歯車11b、12b、13bを内歯車14の内ギアとかみ合わせるように設け、内歯車14にスラスト軸受24を装着してその回転位置を固定するように構成されるものである。
【0036】
そして、本発明の4軸押出機用駆動装置の第1実施形態の回転動力伝達方式は、モータ軸16からの回転動力を、直接に一次軸の出力軸10に伝達してこれを、モータ軸16と同速で同方向回転させてから、内歯車14を介して、二次軸のその他3本の出力軸11、12、13に伝達してこれらの出力軸を同速で同方向回転させ、このようにして、4本の出力軸10、11、12、13をすべてモータ軸16と同速で同方向回転させるものである。
【0037】
また、図15、16には、それぞれ本発明の四軸駆動装置の第1、第1実施形態を適用する本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機の動力伝達方式を示す。ここで、四軸押出機の4本出力軸10、11、12、13をカップリング18により、押出機本体1のバレル2内に設置される4本のスクリュ4と接続されている。
【0038】
図示のように、本発明のエンドレス・コアレス四軸押出機は、本発明の四軸駆動装置の第1、第2実施形態を適用することにより、2通りの駆動方式の実施形態を有し、両駆動方式の差異は、図15と図16を比べて分かるように、図16に示した駆動方式が図15に示したそのものより、モータ軸16からの回転動力が、後者の主動軸15の終端部歯車15aと一次軸の出力軸10の始端部にあるその歯車10aを介しないことにより、回転動力伝達損失が小さくなりかつ構造的にコンパクトになるという2点である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のインサイドポンプを備えるかみ合い型同方向回転エンドレス・コアレス四軸押出機は、高い押出能力、高い混合分散性能、高度な省エネとコンパクトの性格を持ち、ポリマーや食材や建材やセラミック材等の押出加工、特にコンパウンド、造粒を始めとするポリマーの押出加工に関する究極のスクリュ押出機であり、本発明の四軸駆動装置は、構造的にシンプルかつコンパクトであり、回転動力損失が少ないという性格を有し、本発明に関するこのような四軸駆動装置を適用するエンドレス・コアレス四軸押出機は、ポリマー加工を始めとする材料加工の低炭素型プロセスあるいはその産業分野に極めて適しており、省エネと装置のコンパクト化あるいは省材料と省スペースを図られる次世代スクリュ式押出機である。
【符号の説明】
1 押出機本体
2 バレル
3 ダイ
4 スクリュ
4a、4b、4c、4d セルフクリニング性二条スクリュ
4e、4f、4g、4h セルフクリニング性一条スクリュ
5 駆動装置
6 モータ
8 フィード部
8a フィード部開口領域
9 ベント部
9a ベント部開口領域
10 一次軸の出力軸
11、12、13 二次軸の出力軸
10a 一次軸の出力軸の第1歯車
10b 一次軸の出力軸の第2歯車、
11b、12b、13b 出力軸11、12、13の歯車
11、12、13 二次軸の出力軸
14 内歯車
15 主動軸
16 モータ軸
17、17a カップリング
20 セルまたはインサイドポンプ流路
21 軸方向の螺旋状インサイド流路
22 脱揮ゾーン
23 融体
24 スラスト軸受
25 かみ合い領域
α スクリュチップ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に、エンドレスで、コアレスで、かみ合って同方向回転可能な4本のスクリュ(4)、バレル(2)とダイ(3)からなる押出機本体(1)、駆動装置(5)とモータ(6)より構成され、押出機本体(1)においてフィード部(8)を備え、必要に応じてベント部(9)を設置可能であり、二条スクリュと一条スクリュを適用し、4本のセルフクリニング性二条スクリュ(4a、4b、4c、4d)を適用する場合、これらのスクリュにより囲まれるセンター領域において軸方向分布のチェーン状セル(20)構造が存在し、このセル(20)構造がインサイドポンプの働きを有し、4本のセルフクリニング性一条スクリュ(4e、4f、4g、4h)を適用する場合、これらのスクリュにより囲まれるセンター領域において軸方向の螺旋状インサイド流路(21)が存在するという特徴を有するエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項2】
前記フィード部(8)の開口領域(8a)を、軸方向に4つ以上のスクリュ流路または二条スクリュの2リード以上の長さを有するように構成するという特徴を有する前記請求項1記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項3】
前記フィード部(8)の開口領域(8a)において、前記4本のスクリュ(4)により囲まれるセンター領域における軸方向分布のセル(20)が、原料供給可能な状態におかれるように、少なくとも上方設置のスクリュ(4)に非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用するという特徴を有する前記請求項1、2記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項4】
前記ベント部(9)の開口領域(9a)を、軸方向に4つ以上のスクリュ流路または二条スクリュの2リード以上の長さを有するように構成するという特徴を有する前記請求項1記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項5】
前記ベント部(9)開口領域(9a)において、前記4本のスクリュ4により囲まれるセンター領域における軸方向分布のセル(20)が、排気可能な状態におかれるように、少なくとも上方設置のスクリュ(4)に非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用するという特徴を有する前記請求項1、4記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項6】
前記押出機本体(1)において、前記ベント部(9)が設置される脱揮ゾーン(22)を設け、前記脱揮ゾーン(22)において、センター領域のセル(20)をバレル側のスクリュ流路に曝せるように、少なくとも上方設置のスクリュ(4)に非セルフクリニング性エレメント、特に半矩形流路スクリュエレメントや矩形流路エレメントスクリュエレメントや一条フライト欠けの二条型スクリュエレメントを適用するという特徴を有する前記請求項1〜5記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。
【請求項7】
主に、4本の出力軸(10、11、12、13)、少なくとも1つの内歯車(14)と主動軸(15)より構成され、前記4本の出力軸(10、11、12、13)を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置して、その中の1つの出力軸(10)を一次軸とし、その始端部にその第1歯車(10a)を設け、第1歯車(10a)の下流側に第2歯車(10b)を内歯車(14)の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸(11、12、13)を二次軸とし、それらの出力軸の始端部にそれぞれの所用歯車(11b、12b、13b)を内歯車(14)の内ギアとかみ合わせるように設け、また内歯車(14)にスラスト軸受(24)を装着してその回転位置を固定し、また主動軸(15)の終端部にその所用歯車(15a)を、前記一次軸の出力軸(10)の始端部にある第1歯車(10a)とかみ合わせるように設け、主動軸(15)の始端部をモータ軸(16)とカップリング(17)により連結され、回転動力の伝達方式として、モータ軸(16)からの回転動力を、主動軸(15)を介して一次軸の出力軸(10)に伝達し、これをモータ軸(16)の回転に対して減速で異方向回転させる同時に、内歯車(14)を介し、二次軸のその他3本の出力軸(11、12、13)に伝達し、同様にこれらの出力軸を減速で異方向回転させ、このようにして、4本の出力軸(10、11、12、13)を、モータ軸(16)の回転に対し、すべて減速で、異方向に同方向回転させることができるという特徴を有する4軸駆動装置。
【請求項8】
4本の出力軸(10、11、12、13)と少なくとも1つの内歯車(14)より構成され、前記4本の出力軸(10、11、12、13)を、それらの軸中心が正方形の頂点に置かれるように配置して、その中の1つの出力軸(10)を一次軸とし、その始端部を、モータ軸(16)とカップリング(17)により直接に連結できる構造にし、動力伝達方向から見れば、その始端部の下流側にその歯車(10b)を内歯車(14)の内ギアとかみ合わせるように設け、またその他3本の出力軸(11、12、13)を二次軸とし、それらの出力軸の始端部にそれぞれの歯車(11b、12b、13b)を内歯車(14)の内ギアとかみ合わせるように設け、また内歯車(14)にスラスト軸受(24)を装着してその回転位置を固定し、回転動力の伝達方式として、モータ軸(16)の回転動力を、直接に一次軸の出力軸(10)に伝達してこれを減速せずに同方向回転させる同時に、内歯車(14)を介して、二次軸のその他3本の出力軸(11、12、13)に伝達し、同様にこれらの出力軸を減速せずに同方向回転させ、このようにして、4本の出力軸(10、11、12、13)を、モータ軸(16)の回転に対し、すべて減速せずに同方向回転させることができるという特徴を有する4軸駆動装置。
【請求項9】
前記請求項3または請求項4記載の4軸駆動装置を適用するという特徴を有する前記請求項1〜6記載のエンドレス・コアレス4軸押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−255657(P2011−255657A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156214(P2010−156214)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(504186828)
【Fターム(参考)】