説明

インストルメントパネル構造

【課題】簡単な構造で容易にディスプレイの角度調整が可能なインストルメントパネル構造を提供する。
【解決手段】ブラケット70のビード部74A及びブラケット62の凹部64Aは、摺動抵抗によってパイプ56の外周面56Aに沿って当該パイプ56の軸線回りに回動可能にかつ所定の位置で停止可能に設けられている。ブラケット62にはディスプレイ12が取り付けられているため、ブラケット70及びブラケット62を介してディスプレイ12をパイプ56の軸線回りに停止させることができる。つまり、ブラケット70及びブラケット62を介して手動でディスプレイ12を回動させ、簡単な構造で容易にディスプレイ12の角度調整ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両幅方向に延在された強度部材としてのピラーツーピラー部材(インストルメントパネルリインフォースメント)にブラケットが連結されており、当該ブラケットによって車載電子機器(ディスプレイ)が支持されたインストルメントパネル構造が開示されている。しかし、この先行技術では、車載電子機器の角度調整についての記載がない。
【0003】
これに対して、特許文献2には、カーテレビ本体(ディスプレイ)の角度調整における構成が開示されている。具体的には、カーステレオ本体とダッシュボードとの間に取付片が挿着固定され、当該取付片の先端部に棒状のL字型のアームの一端側が保持されている。このアームの他端側にカーテレビが取り付けられており、当該アームによってカーテレビ本体の傾斜角度、上下位置、水平左右位置および回動位置の調整が可能とされている。なお、この他にも特許文献3〜7にインストルメントパネル構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205766号公報
【特許文献2】実開平5−5597号公報
【特許文献3】特開平4−121243号公報
【特許文献4】特開2003−301654号公報
【特許文献5】特開2000−320227号公報
【特許文献6】実開昭63−127182号公報
【特許文献7】特開平7−26825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この先行技術では、ボルトの締結によってカーテレビ本体の移動をそれぞれ規制し、当該カーテレビ本体の位置を固定するようになっている。つまり、カーテレビ本体の位置を調整するには、ボルトの締結状態を解除させる必要があり、面倒である。また、部品点数も多く構造が複雑である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構造で容易にディスプレイの角度調整が可能なインストルメントパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、車室前部に設けられたインストルメントパネルと、車両幅方向に沿って前記インストルメントパネルに配設され、軸線回りに円弧面が形成された棒状部材と、前記棒状部材を挟持すると共に、前記円弧面に接触した状態で当該棒状部材の軸線回りに回動可能にかつ所定の位置で停止可能に形成されたブラケットと、前記ブラケットに取り付けられ、当該ブラケットと共に移動するディスプレイと、
を有している。
【0008】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、車室前部に設けられたインストルメントパネルに棒状部材が車両幅方向に沿って配設されており、当該棒状部材にはその軸線回りに円弧面が形成されている。また、棒状部材はブラケットによって挟持されており、当該ブラケットが棒状部材の円弧面に接触した状態で、ブラケットは棒状部材の軸線回りに回動可能にかつ所定の位置で停止可能となる。また、ブラケットにはディスプレイが取り付けられており、当該ブラケットと共に移動するようになっている。つまり、ブラケットを介して、ディスプレイは棒状部材の軸線回りに角度調整が可能となっている。
【0009】
ディスプレイは、太陽光の反射などにより日中見え難くなる場合があり、車両幅方向に沿った軸線回りにディスプレイの角度調整を必要とする場合が多い。これ以外にも乗員の目の高さによっても当該ディスプレイの角度調整を必要とする場合がある。このため、車両幅方向を軸線方向とする棒状部材の軸線回りに回動可能なブラケットにディスプレイを取り付けることで、太陽の位置や乗員の目の高さに合わせてディスプレイの角度調整を簡単に行うことできる。
【0010】
つまり、ディスプレイにおいて、車両幅方向に沿った軸線回り(棒状部材の軸線回り)の角度調整が可能であれば機能的としては十分であり、ディスプレイの回動方向をこの方向に絞ることによって当該ディスプレイの角度調整における構成を簡易にすることができる。なお、ここでの棒状部材は、パイプであっても良いし円柱体であっても良く、これらの場合棒状部材の外周面がそのまま円弧面となる。
【0011】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1に記載のインストルメントパネル構造において、前記ブラケットと前記棒状部材との間に摺動抵抗付与手段が設けられている。
【0012】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、ブラケットと棒状部材との間に摺動抵抗付与手段が設けられているため、当該摺動抵抗付与手段による摺動抵抗によりブラケットを介してディスプレイを所定の位置で停止させることができる。そして、当該摺動抵抗より大きいトルクが作用すると、ブラケットが棒状部材の円弧面に沿って回動し、当該ブラケットを介してディスプレイを手動で簡単に回動させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2に記載のインストルメントパネル構造において、断面形状がU字状を成すようにして前記ブラケットが形成され、当該ブラケットの両端部に前記ディスプレイの裏面に取り付けられる取付片がそれぞれ設けられ、前記摺動抵抗付与手段は、前記ブラケットに設けられ前記取付片間に位置し前記円弧面と接触するビード部である。
【0014】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、ブラケットの断面形状がU字状を成しており、当該ブラケットの両端部には取付片がそれぞれ設けられ、当該取付片がディスプレイの裏面に取り付けられている。そして、ブラケットの取付片と取付片との間には棒状部材の円弧面と接触するビード部が設けられており、当該ビード部が摺動抵抗付与手段となっている。
【0015】
なお、ビード部は直接円弧面と接触することで当該円弧面との間で摺動抵抗が得られるようにしても良いし、ビード部の表面にコーティングを施したりゴム部材を設けたりする等して円弧面との間で摺動抵抗が得られるようにしても良い。
【0016】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2又は3に記載のインストルメントパネル構造において、前記摺動抵抗付与手段は、前記ディスプレイの裏面側に設けられ、前記円弧面と接触する凹部である。
【0017】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、ディスプレイの裏面側に円弧面と接触する凹部が設けられ、当該凹部が摺動抵抗付与手段となっている。
【0018】
なお、凹部は直接円弧面に接触することで当該円弧面との間で摺動抵抗が得られるようにしても良いし、凹部の表面にコーティングを施したりゴム部材を設けたりする等して円弧面との間で摺動抵抗が得られるようにしても良い。
【0019】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記ディスプレイに入力された衝撃荷重によって当該ディスプレイを車両前方側へ移動させる移動機構が設けられている。
【0020】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、移動機構が設けられており、ディスプレイに入力された衝撃荷重によって当該ディスプレイを車両前方側へ移動可能としている。これにより、車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突すると、この移動機構によってディスプレイが車両前方側へ移動することで、衝撃荷重による衝撃エネルギーが吸収される。
【0021】
なお、ここでの衝撃エネルギーの吸収方法としては、例えば、ディスプレイが車両前方側へ移動する過程で生じる抗力(摺動抵抗)による方法の他、棒状部材等の変形(弾性変形や塑性変形)による方法などが挙げられる。
【0022】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項5に記載のインストルメントパネル構造において、前記移動機構が、前記棒状部材の長手方向の両端部に設けられ、車両前後方向に沿って形成された長孔と、前記長孔に挿通され前記インストルメントパネルに締結される締結部材と、を含んで構成されている。
【0023】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、棒状部材の長手方向の両端部に、車両前後方向に沿って形成された長孔が設けられている。この長孔には締結部材が挿通され、インストルメントパネルに締結されるようになっている。移動機構は長孔と締結部材とを含んで構成され、車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突すると、締結部材を基準として長孔に沿って棒状部材が車両前方側へ移動する。このとき、締結部材と長孔の周縁部との間で摺動抵抗が発生し、これによって、衝撃エネルギーが吸収される。
【0024】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜6の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記棒状部材の車両上方を覆うカバーが設けられている。
【0025】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、棒状部材の車両上方を覆うカバーを設けることで、棒状部材が外部へ露出しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、簡単な構造で容易にディスプレイの角度調整ができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、摺動抵抗付与手段による摺動抵抗を利用し、手動によってディスプレイを円弧面に沿って回動させ、或いは所定の位置で停止させることができる、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、ブラケットと棒状部材の円弧面との間で容易に摺動抵抗を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0029】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、ディスプレイの裏面側と棒状部材の円弧面との間で容易に摺動抵抗を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができる、という優れた効果を有する。
【0031】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、ディスプレイが移動するときの荷重を設定しやすい、という優れた効果を有する。
【0032】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、インストルメントパネルの美観を損なわないようにすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたディスプレイや当該ディスプレイを支持する支持部材等を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断された断面図である。
【図3】インストルメントパネル構造の要部となるディスプレイの取付構造を示す分解斜視図である。
【図4】図2で示す要部を拡大した断面図であり、(A)はディスプレイを回動させる前の状態を示す断面図であり、(B)はディスプレイを回動させた後の状態が実線で示された断面図である。
【図5】(A)はパイプの長孔に沿って切断された図4(A)に相当する断面図であり、ディスプレイが車両前方側へ移動する前の状態が示され、(B)にはディスプレイが車両前方側へ移動した状態が示されている。
【図6】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造の変形例を示す図3に相当する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車両幅方向をそれぞれ示す。
【0035】
(インストルメントパネルの構造)
図1には本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネル10を車室内側から見た斜視図が示されており、図2には、図1の2−2線に沿って切断された断面図が示されている。
【0036】
図2に示されるように、車室前部に設けられた樹脂製のインストルメントパネル10は、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインストルメントパネルリインフォースメント14(以下、「インパネリインフォース14」という)に取り付けられており、空調装置26等を車両上側から覆っている。なお、ここでは、図1に示されるように、インストルメントパネル10の車幅方向左側にコンビネーションメータ16が設けられており、この車両11は左ハンドル仕様となっているが、右ハンドル仕様でも良い。
【0037】
このインストルメントパネル10の車両幅方向両側には、サイドレジスタ18、20がそれぞれ設けられており、インストルメントパネル10の車両幅方向中央部には、一対のセンターレジスタ22、24が設けられている。図2に示されるように、空調装置26には当該空調装置26によって温度調整された空気を送出する送出口としてのセンターレジスタ用送出口28とデフロスタ用送出口30とが設けられている。
【0038】
図1及び図2に示されるように、デフロスタ用送出口30にはダクト32が取り付けられており、当該ダクト32を介してデフロスタ用送出口30とデフロスタ31とが接続されている。また、センターレジスタ用送出口28にはダクト34が取り付けられている。ダクト34の根元部36は1つとなっており、当該根元部36からは一対のダクト部40が分岐している。ダクト部40はそれぞれ直線状に形成されており、一方のダクト部40はセンターレジスタ22に接続され、他方のダクト部40はセンターレジスタ24に接続されている。
【0039】
なお、サイドレジスタ18、20は、空調装置26に設けられた図示しないサイドレジスタ用送出口に取り付けられたダクトを介して、当該サイドレジスタ用送出口と接続されている。そして、デフロスタ31、センターレジスタ22、24及びサイドレジスタ18、20からは、空調装置26によって温度調整された空気が吹き出される。
【0040】
また、センターレジスタ22、24の下方側には、空調装置26の温度や風量を設定したり、空気が送出されるレジスタの位置を特定したりする操作スイッチ42が設けられた空調操作部43が設けられている。そして、空調操作部43の下方側には、車両幅方向の中央部に設けられたセンタークラスタ44にオーディオ装置46が設けられている。なお、空調操作部43の位置にオーディオ装置46が設けられても良い。
【0041】
一方、図1に示されるように、インストルメントパネル10の表側10A(車室内側)の車両幅方向中央部には、センターレジスタ22、24の上方側に位置して、インストルメントパネル10の表側10Aの意匠面から車両上方側へ突出する突設部52が設けられている。
【0042】
突設部52の側壁52Aは、インストルメントパネル10の意匠面から略垂直に立ち上がる縦壁となっている。側壁52Aの高さは、車両前方側へ向かうにつれて徐々に低くなっており、突設部52の上壁52Bは、インストルメントパネル10の前端側へ向かって概ね平坦状に形成されている。また、突設部52の車両後方側には開口部52Cが設けられており、当該開口部52C内には、例えばナビゲーション情報や車両情報などが表示されるディスプレイ12が配置可能とされている。なお、ここでは、当該ディスプレイ12は、車両幅方向に沿った軸線回りに開口部52C内で角度を変え、衝撃荷重が作用すると車両前方側へ移動可能となるように開口部52C内へ嵌め込まれている。
【0043】
ここで、図3には本実施形態に係るインストルメントパネル構造の要部となるディスプレイ12の取付構造を示す分解斜視図が示されている。図3に示されるように、突設部52の側壁52Aの内面からは、取付フランジ54がそれぞれ略水平に張り出している。この取付フランジ54には、棒状部材としての金属製のパイプ56の両端部がそれぞれ取付可能とされている。パイプ56の両端部には平板状に形成された取付片58がそれぞれ設けられている。この取付片58は、例えばパイプ56の両端部がプレス等によって押圧されることによって形成されている。また、これ以外にも、パイプ56の両端部に別部品として溶接などによって取付片58が当該パイプ56に一体化されても良い。
【0044】
取付片58の中央部には、移動機構の一部を構成する長孔58Aが車両前後方向に沿うようにして取付片58を貫通している。この長孔58Aには移動機構の一部を構成する締結部材としてのボルト59が挿通可能とされており、当該ボルト59は取付フランジ54の中央部に形成された貫通孔54Aへ挿通される。
【0045】
なお、ここでは、金属製のパイプ56に設けられた取付片58に対して、取付フランジ54は樹脂で形成されているため、取付フランジ54には断面形状が略U字状を成すケースナット60が装着され、取付フランジ54を覆って当該取付フランジ54の破損を抑制するようにしている。
【0046】
このケースナット60を介して、取付片58と取付フランジ54とが対向配置される。この状態で、長孔58A、ケースナット60に形成された締結孔60A及び貫通孔54Aへボルト59が挿入されナット61へ螺号される。そして、ボルト59及びナット61によって、当該取付片58が取付フランジ54にそれぞれ固定される。
【0047】
一方、ディスプレイ12の裏面12Aには、例えば当該ディスプレイ12の(車両幅方向に沿った)幅方向の両側にブラケット62がそれぞれ取り付けられている。このブラケット62の断面形状は、ディスプレイ12の裏面12A側を開口とする矩形波形状に形成されており、当該ディスプレイ12の(車両上下方向に沿った)上下方向に沿って配置されている。
【0048】
ブラケット62は、ディスプレイ12の裏面12Aと対面する座部64と、ディスプレイ12の裏面12Aに取り付けられ当該座部64を支持する脚片65と、を含んで構成されている。そして、座部64の車両上部側には、ディスプレイ12の裏面12A側へ向かって凹む、摺動抵抗付与手段としての円弧状の凹部64Aが形成されている。
【0049】
この凹部64Aの曲率半径はパイプ56の半径と略同一となるように設定されており、当該凹部64Aはパイプ56の円弧面としての外周面56Aに接触可能(面接触可能)とされている。そして、凹部64Aとパイプ56の外周面56Aとの間には所定の摺動抵抗が得られるように設定されている。
【0050】
また、凹部64Aの車両上部側及び下部側にはそれぞれ貫通孔66が形成されており、ボルト68が挿通可能とされている。一方、パイプ56の外周面56Aには、ブラケット70が装着可能とされている。このブラケット70の断面形状は略U字状を成しており、ブラケット70の中央部にはパイプ56の外周面に沿って円弧状に形成された円弧部74が設けられている。この円弧部74の両端部からは互いに離間する方向へ向かって取付片72が張り出している。
【0051】
取付片72の中央部には貫通孔72Aが形成されており、ボルト68が挿通可能とされている。また、ブラケット70の貫通孔72Aの位置は、ブラケット62の貫通孔66の位置と対向するようにそれぞれ設けられている。そして、ブラケット70の円弧部74(後述する)をパイプ56の外周面56Aに接触させた状態で、ブラケット70の取付片72がブラケット62の座部64に接触可能となる。ブラケット70の取付片72をブラケット62の座部64に接触させた状態で、ブラケット70の貫通孔72A、ブラケット62の座部64の貫通孔66へボルト68が挿通されナット76へ螺号される。これにより、ボルト68及びナット76によって、ブラケット70がブラケット62に締結される。この状態で、パイプ56はブラケット70及びブラケット62によって挟持される。
【0052】
ここで、ブラケット70における円弧部74の内面側の幅方向の中央部には、摺動抵抗付与手段としてのビード部74Aが当該円弧部74の周方向に沿って突設されている。このビード部74Aの曲率半径はパイプ56の半径と略同一となるように設定されており、当該ビード部74Aはパイプ56の外周面56Aに接触可能(線接触可能)とされている。そして、ビード部74Aとパイプ56の外周面56Aとの間には所定の摺動抵抗が得られるように設定されている。
【0053】
そして、ここでは、ビード部74A及び凹部64Aが摺動抵抗付与手段とされるため、ビード部74A及び凹部64Aの表面摩擦係数は略同じとなるように設定される。但し、ビード部74A又は凹部64Aが摺動抵抗付与手段とされる場合は、この限りではない。
【0054】
以上のような構成により、図2に示されるように、ブラケット70及びブラケット62を介して、ディスプレイ12がパイプ56に取り付けられる(支持される)。この状態で、ブラケット70のビード部74A及びブラケット62の凹部64Aとパイプ56の外周面56Aとの間で設定された摺動抵抗より大きいトルクが作用したとする。すると、図4(A)、(B)に示されるように、ブラケット70及びブラケット62は、パイプ56の外周面56Aに沿って当該パイプ56の軸線回りを回動する。なお、図4(A)、(B)は、図2で示す要部を拡大した断面図であり、図4(A)はディスプレイ12を回動させる前の状態を示し、図4(B)はディスプレイ12を回動させた後の状態を実線で示している。
【0055】
そして、ここでの摺動抵抗は、例えば、車両走行中の振動によりディスプレイ12がパイプ56の軸線回りを回動することがない程度に設定され、当該摺動抵抗より大きいトルクは、手動でディスプレイ12をパイプ56の軸線回りを回動させることができる程度に設定される。
【0056】
ところで、図3に示されるように、突設部52の上壁52Bの車両後方部には矩形孔78が形成されており、略箱状のカバー82によって閉塞可能とされている。矩形孔78の内縁下部からは略矩形状を成す係合部80が張り出しており、係合部80の中央部には係合孔80Aが貫通している。また、カバー82の上部には収納凹部82Aが凹設されており、収納凹部82Aの周縁部からはフランジ部84が外側へ向かって張り出している。フランジ部84の下面からは係合片86が垂下しており(例えばここでは、車両前方側に3個、車両後方側に2個)、係合片86は係合孔80A内へ挿通可能としている。
【0057】
また、係合片86の先端部には係合爪86Aが形成されており、係合孔80A内へ挿通された後、当該係合爪86Aは係合孔80Aの周辺部(係合部80)に係止される。この状態で、フランジ部84が矩形孔78の周辺部に当接すると共に(図4(A)参照)、当該カバー82によって矩形孔78は被覆される。なお、係合爪86Aが係合孔80Aの周辺部(係合部80)に係止された状態で、フランジ部84と突設部52の上壁52Bとが面一の状態となるようにしても良い。
【0058】
(インストルメントパネル構造の作用・効果)
次に、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造の作用・効果について説明する。
【0059】
図2及び図3に示されるように、本実施形態では、ブラケット70及びブラケット62を介して、ディスプレイ12がパイプ56に取り付けられるようになっている。具体的には、ディスプレイ12の裏面12Aにはパイプ56の外周面56Aと接触可能な凹部64Aが形成された一対のブラケット62が取り付けられている。また、ブラケット70にはパイプ56の外周面56Aと接触可能なビード部74Aが形成されており、パイプ56の外周面56Aにビード部74Aが接触された状態でブラケット70がブラケット62に取り付けられる。そして、ブラケット70がブラケット62に取り付けられた状態で、パイプ56の外周面56Aには、ブラケット70のビード部74A及びブラケット62の凹部64Aが接触する。
【0060】
ここで、ブラケット70のビード部74A及びブラケット62の凹部64Aは、摺動抵抗によってパイプ56の外周面56Aに沿って当該パイプ56の軸線回りに回動可能にかつ所定の位置で停止可能に設けられている。ブラケット62にはディスプレイ12が取り付けられているため、ブラケット70及びブラケット62と共にディスプレイ12は移動する。つまり、ブラケット70及びブラケット62を介して、ディスプレイ12をパイプ56の軸線回りに停止させることができる。そして、当該摺動抵抗より大きいトルクが作用すると、ブラケット70及びブラケット62を介してディスプレイ12をパイプ56の外周面56Aに沿って当該パイプ56の軸線回りに回動させることができる。つまり、図4(A)、(B)に示されるように、当該ディスプレイ12の角度調整が可能となる。
【0061】
摺動抵抗より大きいトルクは、ここでは手動でディスプレイ12をパイプ56の軸線回りを回動させることができる程度に設定されるため、パイプ56の軸線回りにディスプレイ12を手動で回動させるだけで、当該ディスプレイ12の角度調整が可能となる。
【0062】
ディスプレイ12は、太陽光の反射などにより日中見え難くなる場合があり、車両幅方向に沿った軸線回りにディスプレイ12の角度調整を必要とする場合が多い。これ以外にも乗員の目の高さによっても当該ディスプレイ12の角度調整を必要とする場合がある。このため、車両幅方向を軸線方向とするパイプ56の軸線回りに回動可能なブラケット70及びブラケット62を介してディスプレイ12を取り付けることで、太陽の位置や乗員の目の高さに合わせてディスプレイ12の角度調整を手動で簡単に行うことできる。
【0063】
つまり、本実施形態によれば、簡単な構造で容易にディスプレイ12の角度調整ができる。ディスプレイ12において、車両幅方向に沿った軸線回り(パイプ56の軸線回り)の角度調整が可能であれば機能的としては十分であり、ディスプレイ12の回動方向をこの方向に絞ることによって当該ディスプレイ12の角度調整における構成を簡易にすることができる。
【0064】
また、ブラケット70において、円弧部74とパイプ56の外周面56Aとの面接触の場合、円弧部74A全体において高い精度を出すように形成することは大変である。このため、本実施形態では、ブラケット70の円弧部74の内面側にビード部74Aが突設され、当該ビード部74Aがパイプ56の外周面56Aに接触可能(線接触可能)とされている。これにより、ビード部74Aのみ高い精度が出るようにブラケット70を形成すれば良いため、ブラケット70が作りやすくなる。
【0065】
また、本実施形態では、パイプ56の軸線回りにディスプレイ12が回動可能であるため、当該ディスプレイ12の上端部及び下端部は拘束されておらず自由状態となっている。つまり、インストルメントパネル10側にディスプレイ12を取り付けるための取付部が当該ディスプレイ12の上端部及び下端部には設けられていない。
【0066】
したがって、当該取付部をインストルメントパネル10に取り付けるための取付けスペースを当該インストルメントパネル10において確保する必要が無い。ここで、ディスプレイ12の下方側にはレジスタ22、24(図1参照)が設けられている。この場合、図示はしないが、当該取付けスペースを確保するとなると、レジスタは取付けスペースの下方側に配置されることとなり、その分、レジスタの大きさが小さくなってしまう。しかし、本実施形態では、インストルメントパネル10において当該取付けスペースの確保が不要であるため、その分レジスタ22、24を大きくすることができる。したがって、空調性能が向上することとなる。
【0067】
一方、パイプ56の両端部には取付片58が設けられており、当該取付片58の中央部には車両前後方向に沿うように長孔58Aが形成されている。この長孔58Aを介してパイプ56がインストルメントパネル10側に設けられた取付フランジ54に締結されている。
【0068】
このため、車両の衝突時に乗員がディスプレイ12に二次衝突すると、当該ディスプレイ12及びブラケット62を介してパイプ56には車両前方側へ衝撃荷重が入力(図2で示す矢印F)される。このとき、当該パイプ56にボルト59及びナット76の締結力(軸力)以上の衝撃荷重が入力されると、図5(A)、(B)に示されるように、ボルト59を基準としてパイプ56の取付片58に形成された長孔58Aに沿って当該パイプ56が車両前方側へ移動する。
【0069】
なお、図5(A)は、パイプ56の長孔58Aに沿って切断された図4(A)に相当する断面図(なお、インストルメントパネル10の図示は省略)であり、ディスプレイ12が車両前方側へ移動する前の状態が示されている。また、図5(B)にはディスプレイ12が車両前方側へ移動した状態が示されている。
【0070】
このように、ボルト59を基準としてパイプ56の取付片58に形成された長孔58Aに沿って当該パイプ56が車両前方側へ移動することで、ボルト59と長孔58Aの周縁部との間で摺動抵抗が発生し、これによって、衝撃荷重による衝撃エネルギーが吸収される。したがって、車両11の衝突時に乗員がディスプレイ12から受ける衝撃を緩和することができる。また、ボルト59及びナット61の締結力(軸力)によって、ディスプレイ12が移動するときの荷重を容易に設定することができる。
【0071】
また、本実施形態では、インストルメントパネル10に突設された突設部52の上壁52Bに矩形孔78を設けている。これにより、当該矩形孔78を通じてパイプ56の取り付けが可能となる。そして、この矩形孔78はカバー82によって閉塞可能とされている。このため、パイプ56が外部へ露出することはなく、インストルメントパネル10の美観を損なわないようにすることができる。なお、ここではカバー82の上部に収納凹部82Aが凹設されているが、パイプ56が外部へ露出することを防止することができれば良いため、必ずしもこの収納凹部82Aは必要ではない。
【0072】
ところで、本実施形態では、図3に示されるように、インストルメントパネル10にパイプ56を取り付けるようにしたが、当該パイプ56を介してディスプレイ12の角度を調整することができれば良いため、パイプ56は必ずしもインストルメントパネル10に取り付けられなければならないというものではない。
【0073】
例えば、図6に示されるように、インストルメントパネル10の裏側に設けられ車両幅方向に沿って延在されたインパネリインフォース14に金属製の支持ブラケット88を取り付け、当該支持ブラケット88にパイプ56を取り付けるようにしても良い。この場合、支持ブラケット88の先端部にはボルト59が挿通可能な貫通孔88Aが形成される。支持ブラケット88及びパイプ56は金属製であるため、図3で示すケースナット60は不要となり、長孔58A、貫通孔88Aへボルト59が挿入された後、当該ボルト59はナット61へ螺号される。
【0074】
一般的に、インパネリインフォース14は強度及び剛性の高い部材で形成されている。このため、支持ブラケット88を介して、当該インパネリインフォース14によってディスプレイ12を支持するため、ディスプレイ12が大型化し質量が大きくなったとしても当該ディスプレイ12を十分に支持することができる。
【0075】
(実施形態の補足)
本実施形態では、図3に示されるように、棒状部材としてパイプ56が用いられたが、棒状部材は円柱体であっても良い。また、棒状部材として角柱体が用いられても良く、この場合当該角柱体の外面の一部に円弧面が形成される。また、パイプ56はインストルメントパネル10に開口部52C内に配設されているが、意匠によってはこのパイプ56がインストルメントパネル10の表側10Aに取り付けられても良い。
【0076】
また、ここでは、ブラケット70のビード部74Aは、直接パイプ56の外周面56Aと接触し当該外周面56Aとの間で摺動抵抗が得られるようにしたが、ビード部74Aにコーティングを施したりゴム部材を設けたりする等して外周面56Aとの間で摺動抵抗が得られるようにしても良い。また、ブラケット62の凹部64Aもビード部74Aと同様、ここでは当該凹部64Aが直接パイプ56の外周面56Aと接触し当該外周面56Aとの間で摺動抵抗が得られるようにしたが、凹部64Aの表面にコーティングを施したりゴム部材を設けたりする等して外周面56Aとの間で摺動抵抗が得られるようにしても良い。また、凹部64Aにブラケット70と同様のビード部74Aを設けても良い。なお、ブラケット62は必ずしも必要ではなく、ディスプレイ12の裏面側に直接ブラケット70を取り付けると共に、当該ディスプレイ12の裏面側に凹部64Aを形成するようにしても良い。
【0077】
さらに、本実施形態では、衝撃エネルギーの吸収方法として、ディスプレイ12が車両前方側へ移動する過程で生じる摺動抵抗による例を挙げたが、これ以外にも、他の部材による変形(弾性変形や塑性変形)によって衝撃エネルギーを吸収しても良い。例えば、車両の衝突時に乗員がディスプレイ12に二次衝突すると、ブラケット62の脚片65が変形し衝撃エネルギーが吸収されるようにしても良い。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
10 インストルメントパネル
12 ディスプレイ
14 インパネリインフォース(インストルメントパネルリインフォースメント)
56 パイプ(棒状部材)
56A 外周面(円弧面)
58A 長孔(移動機構)
59 ボルト(締結部材、移動機構)
62 ブラケット
64A 凹部(摺動抵抗付与手段)
70 ブラケット
74A ビード部(摺動抵抗付与手段)
82 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に設けられたインストルメントパネルと、
車両幅方向に沿って前記インストルメントパネルに配設され、軸線回りに円弧面が形成された棒状部材と、
前記棒状部材を挟持すると共に、前記円弧面に接触した状態で当該棒状部材の軸線回りに回動可能にかつ所定の位置で停止可能に形成されたブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられ、当該ブラケットと共に移動するディスプレイと、
を有するインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記ブラケットと前記棒状部材との間に摺動抵抗付与手段が設けられた請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
断面形状がU字状を成すようにして前記ブラケットが形成され、当該ブラケットの両端部に前記ディスプレイの裏面に取り付けられる取付片がそれぞれ設けられ、
前記摺動抵抗付与手段は、前記ブラケットに設けられ前記取付片間に位置し前記円弧面と接触するビード部である請求項2に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項4】
前記摺動抵抗付与手段は、前記ディスプレイの裏面側に設けられ、前記円弧面と接触する凹部である請求項2又は3に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項5】
前記ディスプレイに入力された衝撃荷重によって当該ディスプレイを車両前方側へ移動させる移動機構が設けられた請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項6】
前記移動機構が、前記棒状部材の長手方向の両端部に設けられ、車両前後方向に沿って形成された長孔と、前記長孔に挿通され前記インストルメントパネルに締結される締結部材と、を含んで構成された請求項5に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項7】
前記棒状部材の車両上方を覆うカバーが設けられた請求項1〜6の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100022(P2013−100022A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244792(P2011−244792)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】