インターフェロンγ様タンパク質
本発明は、INSP037と称する、本発明において4-ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であることが同定されたタンパク質に関連しており、また疾患の診断、予防及び治療における前記タンパク質及びそれをコードする遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明において4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として同定されたINSP037と称するタンパク質に関し、また、疾患の診断、予防及び治療における前記タンパク質及びそれをコードする遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
薬剤の発見プロセスにおいて、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えるのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力及び精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼度をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関及び企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究及び薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子及びそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
(分泌タンパク質に関する導入部)
細胞外タンパク質を生成及び分泌する細胞の能力は、多くの生物学的過程の中核である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は、すべて細胞によって分泌される。前記過程は、分泌小胞と形質膜との融合を介する。全てではないが、多くの場合、タンパク質は、シグナルペプチドによって小胞体に向けられて分泌小胞内へと導かれる。シグナルペプチドは、細胞質から分泌小胞のような膜結合区画へのポリペプチド鎖輸送に作用するシス作動性配列である。分泌小胞へ導かれるポリペプチドは、細胞外マトリックスに分泌されるか、又は形質膜に保持される。形質膜に保持されるポリペプチドは、1つ又は2つ以上の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能で中核的役割を果す分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(粘着分子)、プロテアーゼ、並びに増殖因子及び分化因子である。
【0004】
(サイトカインに関する導入部)
サイトカインは、白血球から主要に分泌される増殖因子ファミリーであり、ナノモル以下の濃度で細胞内の一連の反応を実行することができる強力な調節物質として作用するメッセンジャータンパク質である。インターロイキン、ニューロトロフィン、増殖因子、インターフェロン及びケモカインは全て、細胞性レセプターと共に働いて細胞の増殖及び分化を調節するサイトカインファミリーと定義される。それらのサイズは、サイトカインが迅速に体内のあちこちに輸送され、必要なときには分解されることを可能にする。広範囲の細胞機能、特に免疫応答及び細胞増殖を制御することにおけるそれらの役割は、ここ20年にわたる多くの研究によって明らかにされている(S.B. Boppana (1996) Indian. J. Pediatr. 63(4):447-52)。サイトカインは、他の増殖因子のように、1つの特異的な組織又は腺ではなく多数の異なる種類の細胞によって生産されるという事実によって古典的ホルモンとは区別され、また、標的細胞上に位置する特異的な高親和性レセプターとの相互作用を介して広範囲の細胞に効果を及ぼす。
全サイトカインのコミュニケーション系は、多面作用性(1つのメッセンジャーが多種の作用を引き起こす)及び重複性(各作用が2つ以上のメッセンジャーに引き起こされる)の両方を示す(G. Tringali et al. (2000) Therapie. 55(1):171-5; L. Tessarollo (1998)) Cytokine Growth Factor Rev. 9(2):125-137)。1個の細胞に対する個々のサイトカインの作用はまた、前記サイトカインの濃度、他のサイトカインの濃度、サイトカインの時間的順序、及び細胞の内部状態(細胞周期、隣接する細胞の存在、癌性)にも左右されるであろう。
【0005】
サイトカインは典型的には小さな(200アミノ酸未満)タンパク質であるが、それらは、翻訳後にスプライシングされるさらに大きな前駆体からしばしば生成される。mRNAの選択的スプライシング経路に加えて、前記スプライシングによって、各サイトカインの広範な変種が提供され、その各々は生物学的作用において実質的に異なり得る。多くのサイトカインの膜及び細胞外マトリックス結合型も、単離されている(M. Okada-Ban et al. (2000) Int. J. Biochem. Cell Biol. 32(3):263-267;S.P. Atamas (1997) Life Sci. 61(12):1105-1112)。
サイトカインは複数のファミリーに分類され得るが、大部分は無関係である。配列類似性はしばしば非常に低いので、分類は通常、二次構造組成を基にしている。前記ファミリーは、例えばIFN様、IL2様、IL1様、IL6様及びTNF様といった原型メンバーに因んで命名されている(A. Zlotnik et al. (2000) Immunity 12(2):121-127)。
サイトカインは、多細胞生物における多くの重要な反応、例えば免疫応答調節(J. Nishihira (1998) Int. J. Mol. Med. 2(1):17-28)、炎症(P.K. Kim et al. (2000) Surg. Clin. North. Am. 80(3):885-894)、創傷治癒(R.A. Clark (1991) J. Cell Biochem. 46(1):1-2)、胚発生及び発育、並びにアポトーシス(H.D. Flad et al. (1999) Pathobiology 67(5-6):291-293)に関与することが、研究によって示されている。
HIV及びカポジ肉腫随伴ウイルスのような病原性生物(ウイルス及び細菌)は、抗サイトカイン因子及びサイトカインファミリー類似体をコードしており、これによって前記因子及び前記類似体がサイトカインレセプターと相互作用して体の免疫応答を制御することが可能となる(S. Sozzani et al. (2000) Pharm. Acta. Helv. 74(2-3):305-312; Y. Aoki et al. (2000) J. Hematother. Stem. Cell Res. 9(2):137-145)。ウイルスがコードするサイトカインであるウィロカイン(virokine)は、宿主の免疫系を模倣して破壊するという能力のために、ウイルスの病原性発揮に必要とされることが示されている。
【0006】
サイトカインは、以下を含む病状及び疾患の治療、予防及び/又は診断に有用であり得る:免疫異常、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性紅斑性狼瘡及び多発性硬化症、炎症性疾患、例えばアレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、敗血症、内毒素ショック、敗血症性ショック、悪疫質、筋肉痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス感染後消耗症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性塞栓性肺疾患、気道炎症、創傷治癒、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、腫瘍性疾患、例えばメラノーマ、肉腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、血液疾患、骨髄増殖性疾患、ホジキン病、骨粗しょう症、肥満、糖尿病、痛風、心脈管系疾患、再灌流障害、アテローム性硬化症、虚血性心疾患、心不全、発作、肝疾患、エイズ、エイズ関連合併症、神経障害、男性不妊症、加齢及び感染(マラリア原虫感染、細菌感染及びウイルス感染を含む)。
サイトカインの臨床的利用は、免疫系の調節物質としての役割に焦点が当てられており(F.H. Rodriguez et al. (2000) Curr. Pharm. Des. 6(6):665-680)、例えば甲状腺癌に対する応答の促進においてである(C. Schmutzler et al. (2000) 143(1):15-24)。サイトカインの細胞増殖及び細胞分化の制御により、サイトカインはまた抗癌標的にもなっている(E. Lazar-Molnar et al. (2000) Cytokine. 12(6):547-554; K. Gado (2000) 24(4):195-209)。サイトカイン及びサイトカインレセプターにおける新規な変異は、いくつかの事例で疾患に対する抵抗性を付与することが示されている(S.J. van Deventer et al. (2000) Intensive Care Med. 26(Suppl1):S98-S102)。活性を調節して潜在的副作用を除去するために、合成サイトカイン(ミューテイン)を作製することも、また重要な研究方法であった(A.B. Shanafelt et al. (1998) 95(16):9454-9458)。
このように、サイトカイン分子は、多数が疾患の進行に役割を果たし得る多様な生理学的機能において役割を果たすことが示されている。サイトカイン分子の活性を変更することは疾患の表現型を変えるための手段であり、新規なサイトカイン分子が上記で特定した疾患及び他の症状の治療でも役割を果たし得る且つ前記治療の開発においても有用であり得ることから、新規なサイトカイン分子を同定すること自体、極めて適切である。
【0007】
(インターフェロンに関する導入部)
インターフェロンは、4−へリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーである。インターフェロンは、その構造と酸性媒体中での安定性とに応じて、I型又はII型に分類される。I型インターフェロンは、その配列に基づいて以下の5つの群に分類される:インターフェロン-アルファ(IFN-α)、インターフェロン‐ベータ(IFN-β)、インターフェロン‐オメガ(IFN-θ)及びインターフェロン‐タウ(IFN-τ)。これまでに同定されている唯一のII型インターフェロンはインターフェロン‐ガンマ(IFN-γ)であって、活性化T細胞及びNK細胞によって産生される。
I型インターフェロンの遺伝子は、ヒトの第9染色体上にクラスターを形成している。ヒトでは、少なくとも14のIFN-α非対立遺伝子が存在しており、天然に存在するIFN-αタンパク質の数はIFN-α遺伝子の対立形質によってさらに増加すると推定されている(Jussain et al, 1996, J. Interferon Cytokine Res. 16:853-9)。
インターフェロンは、細胞表面の特異的な膜レセプターと結合することによってその細胞活性を発揮して、複雑な一連の細胞内事象を開始させる。I型インターフェロンは、抗ウイルス作用、免疫調節作用及び抗増殖作用を含む多種多様な生物学的応答を誘導し、これら作用の結果として、多様な疾患及び症状の治療に有効であることが判明している。
【0008】
インターフェロンは強力な抗ウイルス物質であり、α‐インターフェロンは特に、ヒトパピローマウイルス感染、B型及びC型肝炎感染を含む多様なウイルス感染の治療に有用であることが見出されている(Jaeckel et al, 2001, 345(2):1452-7)。I型インターフェロンはまた細胞増殖も阻害し、α‐インターフェロンは長年、以下を含む多様な悪性腫瘍の治療に臨床的に用いられている:毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性リンパ腫、軽度リンパ腫、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、腎細胞癌及び卵巣癌。さらに、I型インターフェロンは自己免疫疾患の治療に有用であって、インターフェロン‐βは多発性硬化症の治療について承認されている。
インターフェロン‐τは、反芻動物の受胎産物ホモジェネートで最初に同定されたが、それ以来ヒトで同定されている(WO96/35789参照)。インターフェロン‐τは、他のI型インターフェロンと類似する多くの活性を示すが、いくつかの異なる作用も示す。特にインターフェロン‐τは、妊娠の成立及び維持を促進する抗黄体融解作用を有する(Martal et al, Reprod Fertil Dev, 1997, 9(3):355-80)。さらに、ウイルスによるインターフェロン‐α及びβの誘導が一過性(数時間持続)である一方、ウイルスによるインターフェロン‐τ発現の誘導は数日間持続でき、HIV-1に対する抗レトロウイルス作用を有することが見出されている(Dereuddre-Bosquet et al, J. Acquir. Immune Defic Syndr. Hum. Retrovirol, 1996, 11(3):241-6)。
【0009】
II型インターフェロン(インターフェロンγを含む)は、次に挙げるような病状及び疾患の治療、予防及び/又は診断に有用であり得る:免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及び他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症などの真菌病、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)。
要約すると、4−へリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーである分泌タンパク質は、多様な生理学的機能において役割を果たすことが示されており、前記機能の多くが疾患過程において役割を果たし得る。特にインターフェロンは、種々の生理学的過程において重要な役割を果たすことが見出されており、その結果として、広範囲の疾患の治療において有用であることが判明している。しかしながら、疾患(上述する疾患を含む)の治療及び予防のための新薬の開発を可能にする新規なインターフェロンを同定する必要性は、依然として存在している。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、INSP037タンパク質が4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるという発見に基づいている。
本発明の第一の特徴の一態様では、次のようなポリペプチドが提供される:
(i) 配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、若しくは(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)の断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)若しくは(ii)の機能的等価物である、ポリペプチド。
本発明の第一の特徴の第二態様によると、次のようなポリペプチドが提供される:
(i) 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、若しくは(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)の断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)若しくは(ii)の機能的等価物である、ポリペプチド。
【0011】
配列番号2に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降では“INSP037ポリペプチド”と称される。INSP037は、また本明細書中でIPAAA44548とも呼ばれている。
好ましくは、本発明の第一の特徴のINSP037ポリペプチドは、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として機能する。当業者であれば、“4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質”という用語を理解するだろうし、また本技術分野で既知の種々のアッセイの一つを用いて、ポリペプチドがこの部類のメンバーとして機能するかどうかを容易に確かめることができるであろう。4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドの存在は、タンパク質の配列及び二次構造の解析によって同定することができる。インターフェロン活性は、しばしば、抗ウイルス活性又は癌細胞の抗増殖活性として測定される。そのアッセイの例は、文献に見出すことができる(Schiller J.H., J Interferon Res 1986; 6(6):615-25, Gibson, U.E. et al., J Immunol Methods (1989) 20; 125(1-2):105-13 and Chang et al., J. Biol. Chem. (2002) 277(9):7118-7126)。
【0012】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
好ましくは、前記精製核酸分子が、配列番号1に記載の核酸配列(INSP037ポリペプチドをコードしている)を含む。好ましくは、前記精製核酸分子が、配列番号1に記載の核酸配列(INSP037ポリペプチドをコードしている)から成るか、又はその配列の余剰的(redundant)等価物若しくは断片である。
第三の特徴では、高ストリンジェンシー条件下で本発明の第二の特徴の核酸分子とハイブリダイズする精製核酸分子を提供する。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二又は第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。本発明の好ましいベクターには、pDEST14-IPAAA44548-6HIS(図10参照)、PCRII-TOPO-IPAAA44548(図11参照)、pDEST14-IPAAA44548-6HIS(図12参照)及びpEAK12D-IPAAA44548-6His(図13参照)が含まれる。
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0013】
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと特異的に結合し、且つ好ましくは前記ポリペプチドの分泌タンパク質活性を抑制し、より好ましくは4−へリックスバンドルサイトカイン活性を抑制し、さらに好ましくはインターフェロンγ様活性を抑制するリガンドを提供する。
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するために有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、又は低下させ得る(アンタゴニスト作用)。
重要なことには、INSP037エクソンポリペプチド及びINSP037ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定し得るスクリーニング方法のデザインが可能になる。本発明の第六及び第七の特徴のリガンド及び化合物は、そのような方法を用いて同定され得る。これらの方法は、本発明の特徴として含まれる。これらの方法を用いれば、臨床応用においてin vivoでINSP037活性を改変するのに有益であり得る、例えばモノクローナル抗体などのINSP037の阻害剤又はアンタゴニストをすぐに同定できるであろう。そのような化合物は、INSP037ポリペプチドのIFNγ様活性を打ち消すのにも有用であると思われる。
【0014】
第八の特徴では、本発明は、インターフェロンが関与している疾患の治療又は診断で使用するために、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第五の特徴の宿主細胞、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供し、特にはIFNγ様ポリペプチドを提供する。そのような疾患としては、次のものが挙げられるが、これだけに限られない:免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)。
【0015】
本発明のこれら第一、第二、第三、第四、第五、第六又は第七の特徴の一部は、上記疾患の治療用薬物の製造にも用いることができる。
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性のレベルを前記患者由来の組織で評価する工程、及び前記発現レベル又は活性を対照のレベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記対照のレベルと異なるレベルは疾患を示している。前記の方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様な方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され得る。この場合、時間の経過にしたがってポリペプチド又は核酸分子の発現レベル若しくは活性のレベルが対照のレベルに向かって変化することは、疾患の緩解を示している。
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド(例えば抗体)と生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
当業者には、本発明の第九の特徴の方法に、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは明らかであろう。同様な方法を短期又は長期ベースで用いて、モニターされる疾患の治療を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0016】
好ましくは、本発明の第九の特徴の方法によって診断される疾患は、上述するような、インターフェロンが関与している疾患である。
第十の特徴では、本発明は、4−へリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質としての本発明の第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。INSP037の適切な使用の一つは、充分に確立されている治療法と組合せての、細菌感染、真菌感染又はウイルス感染におけるアジュバントとしての使用である。考えられる他の使用としては、マクロファージを活性化するためのINSP037の使用、並びにMHC分子及び抗原プロセッシング成分の発現を増加させるためのINSP037の使用が挙げられる。本明細書に含まれる実験結果は、INSP037の予測されるINFγ様活性を確かめている。この発見は、本発明のポリペプチドを、抗癌用途などのINFγの既知用途での使用に対する適合性について試験できるという点で(例えば、Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701を参照)、タンパク質それ自体の一連の興味深い治療的用途を開拓している。同様に、in vivoでのINSP037活性の更なる研究又は臨床応用に有益であり得る、INSP037の阻害剤又はアンタゴニスト(例えばモノクローナル抗体など)をすぐに同定できるであろう。
第十一の特徴では、本発明は医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を、医薬として許容できる担体と組合せて含有する。
第十二の特徴では、本発明は、インターフェロンが関与している疾患の診断又は治療のための医薬品の製造で使用するために、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二の若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。そのような疾患としては、本発明の第八の特徴に関連して上述されるものが挙げられる。
【0017】
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を患者に投与することを含む。
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に罹患している患者で低下する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、リガンド又は化合物が、アゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現又は前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に罹患している患者で上昇する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、リガンド又は化合物がアンタゴニストであるべきである。前記アンタゴニストの例には、アンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド(例えば抗体)が含まれる。
好ましくは、そのような疾患が、インターフェロンが関与している上述のような疾患である。
第十四の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドを高レベル若しくは低レベルで発現するように、又は全く発現しないように形質転換したトランスジェニック又は遺伝子ノックアウト非ヒト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
好ましくは、そのような疾患が、インターフェロンが関与している上述のような疾患である。
【0018】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び方法の要旨は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に個々の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、リコンビナントDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられるであろう。前記技術は当業者の技術範囲内である。
前記のような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II ( D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I−IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds. 1986)。
【0019】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合によって互いに結合した2つ又は3つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。前記改変ペプチド結合によるものは、すなわちペプチドイソスターである。この用語は、短鎖(ペプチド及びオリゴペプチド)及び長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-又はプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-又はプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質でもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-又はプレプロ-配列がリーダー配列若しくは分泌配列であっても、又は成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1つ又は2つ以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利である。前記付加アミノ酸配列は、分泌若しくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、又は例えばリコンビナント形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、又は前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0020】
ポリペプチドは、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセッシング)によって、又は本技術分野で周知の化学的改変技術によって改変された、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)及びユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合改変によるポリペプチドのアミノ末端若しくはカルボキシ末端又はその両端の閉塞(blockage)は、天然に存在するポリペプチド及び合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
【0021】
ポリペプチド内に存在する改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の関数であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質及び程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後改変能力及び問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、又は前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP037ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、2つのポリペプチドは、前記ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性又は類似性を有する場合、“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性及び類似性の度合いは、容易に計算できる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。好ましくは、本明細書で言及される同一性比率は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター:the National Center for Biotechnology Information; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメータを用いるBLASTバージョン2.1.3を使用して決定される [Blosum 62 matrix; ギャップオープンペナルティ=11及びギャップ伸長ペナルティ=1]。
【0022】
従って、相同なポリペプチドには、INSP037ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種又は地理的変種)及び変異体(例えばアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む変異体)が含まれる。前記変異体は、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにそのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、Leu及びIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;又は芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつか(すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、又は単に1つ)のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失又は付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性及び活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。
前記変異体にはまた、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0023】
典型的には、2つのポリペプチド間で80%を越える同一性が、機能的等価物の指標であると考えられる。好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP037ポリペプチド又はそれらの活性な断片と、80%を越える配列同一性の度合いを有する。より好ましいポリペプチドは、それぞれ90%、95%、98%又は99%を越える同一性の度合いを有する。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドはまた、構造についてのアラインメントの1つ又は2つ以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム(Biopendium)検索データベースの作製に用いられる検索ツールの一角を構成するインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(WO 01/69507として公表されているPCT出願を参照されたい)、INSP037ポリペプチドと比較して低い配列同一性しかもたないが、INSP037ポリペプチド配列との顕著な構造的相同性を共有するために、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質と予測される、現在は機能が未知のポリペプチドを同定することができる。“顕著な構造的相同性”とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダーが、2つのタンパク質は10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP037ポリペプチドの断片並びにこれらポリペプチドの機能的等価物の断片を含むが、ただし、これら断片がインターフェロンγ様活性を保持するか又はこれらポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
【0024】
本明細書において用いる、“断片”という用語は、INSP037、ポリペプチド又はその機能的等価物の1つのいずれかのアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記断片は、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7又はそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20又はそれより大きい)。小さな断片は、抗原決定基を構成することができる。
そのような断片は、“独立的存在(free-standing)”(すなわち、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部に融合されているのでもない)であってもよく、又はより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分又は領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明の断片は、最も好ましくは連続するただ1つの領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記断片のアミノ末端に融合したプレ−及び/又はプロ−ポリペプチド領域を有する断片、及び/又は前記断片のカルボキシ末端に融合した付加的領域を有する断片に関する。しかしながら、いくつかの断片がただ1つのより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
本発明のポリペプチド又はその免疫原性断片(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用いて、例えばポリクローナル又はモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用いて、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離若しくは同定するか、又はアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的又は治療的補助としても用いることができる。
【0025】
“免疫特異的”という用語は、前記抗体が、従来技術における他の近縁ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるその断片、例えばFab、F(ab’)2及びFvも指す。従って、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
“実質的に強い親和性”とは、既知の細胞表面受容体に対する親和性と比較して、本発明のポリペプチドに対する親和性の測定可能な増加が存在することを意味する。
好ましくは、本発明のポリペプチドに対する親和性が、既知のIFNγ様ポリペプチドに対する親和性より、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍も又はそれ以上に強い。
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類(例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマ)が、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、リコンビナントDNA技術によって誘導されてもよく、又は化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記担体結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法(例えばイムノアフィニティークロマトグラフィー)にしたがって処理される。
【0026】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に生成できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:G. Kohler & C. Milstein, Nature 256:495−497(1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72(1983); Cole et al., 77−96 “Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合又は融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
【0027】
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature,321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988); Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991); Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989); Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991); Hodgson et al., Bio/Technology 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸及び選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。従って、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、前記抗体が、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインは異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、又は未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., (1990) Nature 348:552−554; J. Marks et al., (1992) Biotechnology 10:779−783)。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., (1991) Nature 352:624−628)。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子又は酵素)で標識することができる。
【0028】
本発明の第二及び第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号2に記載のポリペプチド配列及び機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法及び用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10又はそれより大きい(例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40又はそれより大きい)。
本発明の核酸分子は、上記で述べた核酸分子に相補的な配列も含む(例えばアンチセンス又はプローブとしての目的のために)。
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、又はDNA(例えばcDNA、合成DNA又はゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成によって、又はそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノム又はcDNAライブラリーから、又は生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって作製され得る。
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNA及びRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、並びにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子又は抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含む。前記ペプチド骨格は好ましくはリジンで終わり、前記末端リジンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよい{細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNA及びRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al. (1993) Anticancer Drug Des. 8:53−63)}。
【0029】
配列番号2のポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1に示す核酸分子のコード配列と同一であり得る。これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号2をコードする配列と異なる配列を有することもある。そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列及び付加コード配列(例えばリーダー配列又は分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-又はプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴なって、又は伴なわないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’及び3’配列を含む)を伴なう成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記の非コード5’及び3’配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合及びmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
本発明の第二及び第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチド及び断片の機能的等価物及びそれらの断片もコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種(例えば天然に存在する対立形質変種)であっても、又は前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞又は生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
【0030】
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失又は挿入には、1つ又は2つ以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域又は非コード領域又はその両方において変化していてもよい。コード領域における変化は、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、欠失又は挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシング及び/又は発現の改変が挙げられる。ランダム断片化によるDNAシャッフリング並びに遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変化、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0031】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二又は第三の特徴に包含される。例えば、本発明のポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるようにデザインすることができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435(1989); J. Okano, Neurochem. 56:560(1991); J. O’ Connor, Neurochem. 56:560(1991); Lee et al., Nucleic Acids Res. 6:3073(1979); Cooney et al., Science 241:456(1988); Dervan et al., Science 251:1360(1991))。
【0032】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類及び体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、又はBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストラン又はポリエチレングリコール);及びハイブリダイゼーションに続く洗滌条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。従って、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:399−407; A.R. Kimmel, 1987, Methods Enzymol. 152:507−511)で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適したハイブリダイゼーション反応の条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗滌すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件が高ストリンジェンシー条件である。
【0033】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP037ポリペプチド(配列番号2)をコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも70%同一である核酸分子、及びそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、配列番号1によって生じる核酸分子の全長にわたって少なくとも80%同一の領域又はそれらと相補的な核酸分子を含む。これに関しては、そのような核酸配列の全長にわたって少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%又は99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP037ポリペプチドと同じ生物学的機能又は活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0034】
本発明に従って利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNA又はゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP037ポリペプチドをコードする完全長cDNA及びゲノムクローンを単離し、さらにINSP037ポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子又はオーソログ遺伝子のcDNA又はゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で既知の他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができる。これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシング及び解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、又はポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリスト並びに373及び377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0035】
INSP037ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブ又は人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds). Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、適切なコード遺伝子(配列番号1)に由来する核酸配列に一致するか、又は前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、及び検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類又は他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプ及び/又はサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0036】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5’末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、又は短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーター及び調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知の種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988) 85:8998−9002)に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar (1993) PCR Methods Applic. 2:318−322)。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅すること又は伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186)。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNA断片のPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al. (1991) PCR Methods Applic. 1:111−119)。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、パーカーの方法である(J.D. Parker et al.(1991) Nucleic Acids Res. 19:3055−3060)。さらに、ゲノムDNAを少しずつ移動して調べるためにPCR、入れ子(nested)プライマー及びプロモーターファインダーTM(PromoterFinderTM)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
【0037】
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random−primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患又は症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子又は調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体又は罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0038】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために貴重である。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術及びヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的又は量的性質を有する場合もある。
遺伝子サイレンシングアプローチを実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロッティングによる)、又はTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0039】
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクト又は形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中の前記ポリペプチドをコードする核酸分子の発現によって、リコンビナント形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)及びFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene expression systems. Using nature for the art of expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
【0040】
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖又は発現に適したいずれの系又はベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、及び場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系及びウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、又は上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミド及びファージミドを含む)。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドに包含させ発現させるよりも大きいDNA断片を搬送するのに用いることができる。
【0041】
特に適切な発現系には、リコンビナントバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)及び上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入又は感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)又は永続的(染色体組込み)であり得る。
【0042】
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチド又はリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、又は異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
制御配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的又は物理的刺激(調節化合物の存在を含む)又は多様な温度若しくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーター並びに5’及び3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写及び翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度及び特異性を変化させることができる。利用されるベクター系及び宿主に依存して、多くの適切な転写及び翻訳エレメント(構成性及び誘発性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘発性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)又はpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリン(polyhedrin)プロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えば熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)又は植物ウイルスに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えばウイルスプロモーター又はリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来又は哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40又はEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0043】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築される。前記コード配列の調節配列に関する位置及び向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置及び向きである(すなわち制御配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
制御配列及び他の調節配列は、ベクターへの挿入の前に核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、制御配列及び適切な制限部位を既に含む発現ベクターへ、コード配列を直接クローニングすることができる。
リコンビナントポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定に発現する細胞株は、ウイルスの複製起点及び/又は内因性発現エレメント並びに選択マーカー遺伝子を同じ又は別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1−2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖及び回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0044】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞及び他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養及び植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号及び5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk (1991) Phytochemistry 30:3861−3863)。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって導入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実及び他の樹木、マメ類及び野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞又は培養組織から再生させることができる。
【0045】
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))及びアスペルギルス細胞が含まれる。
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al.(1977) Cell 11:223−32)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al.(1980) Cell 22:817−23)の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk−又はaprt±細胞で用いることができる。
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性又は除草剤耐性を選択基準として用いてもよい。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567−70)、nptはアミノグリコシド系ネオマイシン及びG−418に対する耐性を付与し(F. Colbere−Garapin et al.(1981) J. Mol. Biol. 150:1−14)、さらにals又はpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
【0046】
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在及び発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、ただ1つのプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘発又は選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーション及びタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸又はタンパク質の検出及び/又は定量のためにメンブレン、溶液又はチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;及びD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211−1216)。
【0047】
多様な標識及び結合技術が当業者に知られており、種々の核酸及びアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識又はPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3又はSP6)及び標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI); Promega (Madison, WI); U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素及び蛍光、化学発光又は色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0048】
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物(特にげっ歯類動物)の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、又は遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレーターとして有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
ポリペプチドは、周知の方法によってリコンビナント細胞培養物から回収し精製することができる。前記周知の方法には、硫安又はエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離及び精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
【0049】
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製促進ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子又はエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263−281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al.(1993) DNA Cell Biol. 12:441−453)。
【0050】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合、一般的には、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の培地中に前記ポリペプチドが分泌されることが好ましい。この場合、本発明のポリペプチドは、スクリーニングアッセイでの使用に先立って、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィーなどの標準的なタンパク質精製技術を用いて、収集することもできる。タンパク質精製の適切な方法の例は、本明細書の実施例において提供される。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
あるいは、本発明のポリペプチドは、好ましくは細胞表面融合タンパク質として発現されてもよい。この場合、スクリーニングアッセイでの使用に先立って、宿主細胞を、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアフィニティー技術などの技術を用いて、収集することができる。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、又は阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー又は天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニスト又はアンタゴニストは、天然又は改変された基質、リガンド、酵素、レセプター、若しくは構造的若しくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
【0051】
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘発しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害又は消滅させる小型有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、又は細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞又は細胞膜を用いることを含み、前記細胞又は細胞膜をテスト化合物と接触させて、結合又は機能的応答の刺激若しくは阻害を観察する。続いて前記テスト化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記テスト化合物と接触させなかった対照細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルをテスト化合物がもたらすか否かを、適切な検出系を用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイを行われ、テスト化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
【0052】
本発明のIFNγ様ポリペプチドのリガンドを同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)推定上の結合パートナーに対する本発明のポリペプチドの結合に応答して(又は本発明のポリペプチドの結合に応答して検出可能なシグナルを提供し得る第二の成分に関連する)検出可能なシグナルを提供し得る、本発明のIFN様ポリペプチドの推定上の結合パートナーを細胞表面に発現している細胞を、推定上の結合パートナーに対する結合を可能にする条件下で、スクリーニング対象の本発明のポリペプチドと接触させる工程;及び、
(b) 本発明のポリペプチドと推定上の結合パートナーとの相互作用から生じるシグナルのレベルを測定することによって、本発明のポリペプチドが推定上の結合パートナーに結合して、その推定上の結合パートナーを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
本発明のIFNγ様ポリペプチドのリガンドを同定する更に好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a) 推定上の結合パートナーに対する本発明のポリペプチドの結合に応答して(又は本発明のポリペプチドの結合に応答して検出可能なシグナルを提供し得る第二の成分に関連する)検出可能なシグナルを提供し得る、本発明のIFNγ様ポリペプチドの推定上の結合パートナーを細胞表面に発現している細胞を、推定上の結合パートナーに対する結合を可能にする条件下で、本発明のポリペプチドと接触させる工程;及び、
(b) 本発明のポリペプチドと推定上の結合パートナーとの相互作用から生じるシグナルのレベルを、本発明のポリペプチドが存在しない場合のシグナルのレベルと比較することによって、本発明のポリペプチドが推定上の結合パートナーに結合して、その推定上の結合パートナーを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
【0053】
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、標識した又は標識していないINSP037ポリペプチドの存在下で、アゴニスト又はアンタゴニストの同定を行うことをさらに含み得る。
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法の別の態様では:ポリペプチドがリガンドに結合することを可能にする条件で、候補化合物の存在下、表面にリガンドを発現している細胞又は前記リガンドを含む細胞膜に対する本発明のポリペプチドの結合の阻害を決定する工程;及び、リガンドに結合したポリペプチドの量を決定する工程を含む。本発明のポリペプチドの結合を低下させ得る化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。本発明のポリペプチドは標識されているのが好ましい。
より詳細には、アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物をスクリーニングする方法は、以下の工程を含む:
(a) 本発明の標識ポリペプチドと、本発明のリガンドを細胞表面上に発現している細胞まるごと又は本発明のリガンドを含む細胞膜をインキュベートする工程;
(b) 細胞丸ごと又は細胞膜に結合している標識ポリペプチドの量を測定する工程;
(c) 工程(a)の標識ポリペプチドと細胞丸ごと又は細胞膜との混合物に候補化合物を添加して、その混合物を平衡状態に到達させる工程;
(d) 工程(c)の後で細胞丸ごと又は細胞膜に結合している標識ポリペプチドの量を測定する工程;及び、
(e) 工程(b)で結合している標識ポリペプチドと工程(d)で結合している標識ポリペプチドとの差を比較する工程、
を含み、工程(d)での結合を低下させる化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。
【0054】
前記ポリペプチドは、上記のアッセイにおいて用量依存的な様式で多様な生理学的及び病理学的プロセスを調節することが判明するであろう。従って、本発明の“機能的等価物”には、上記アッセイにおいて用量依存的な様式で同じ調節的活性のいずれかを示すポリペプチドが含まれる。用量依存的活性の程度は本発明のポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいて本発明のポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
あるいは、単純な結合アッセイを用いてもよい。この場合、テスト化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的又は間接的にテスト化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、又は標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合についてテスト化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切のテスト化合物の存在を検出することができる。
【0055】
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加テスト化合物の影響を検出するアッセイをデザインすることもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナル又はポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベル又は細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞又は組織からのポリペプチド生成を阻害又は増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被検化合物との結合複合体の形成を測定することができる。
また本発明の用語の範囲内のアッセイ方法は、過剰発現アッセイ又は除去(ablation)アッセイで本発明の遺伝子及びポリペプチドの使用を必要とするものも含む。前記のアッセイは、これら遺伝子/ポリペプチドの細胞内レベルの操作及びこの操作事象による前記被操作細胞の生理機能に対する影響の評価を含む。例えばそのような実験によって、特定の遺伝子/ポリペプチドが関与するシグナル伝達経路及び代謝経路の詳細が明らかにされ、本研究対象のポリペプチドが相互作用するポリペプチドのアイデンティティーに関する情報がもたらされ、さらに関連遺伝子及びタンパク質を調節する方法についての手がかりが提供される。
【0056】
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際特許出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型のテスト化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
当技術分野で公知の標準的なレセプター結合技術により膜結合レセプター又は可溶性レセプターを同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ得る。前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイ及び架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、又はその検出若しくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上のレセプター供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物又は体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴(Biacore AB, Uppsala, Swedenにより供給されている)及び分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、レセプターの精製及びクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとそのレセプターとの結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0057】
本発明はまた、上記で述べるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質及び酵素、並びに上記で述べる方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性又は抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記で詳細に説明するように、治療用若しくは診断用試薬として、ワクチンとして、又は他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いられる専門用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物{X}を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%又は99質量%を構成する。
【0058】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患又は症状を治療、緩和若しくは予防するために、又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)又は動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ又はブタ)のいずれかで見積もることができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量及び投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重及び性別、食事、投与時間及び投与回数、併用薬剤、反応感受性及び治療に対する許容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、又は他の薬剤、医薬品又はホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0059】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体及び他のポリペプチド、遺伝子並びに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
【0060】
いったん製剤化されたら、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト対象者が治療され得る。
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃又はハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液又は懸濁剤のいずれか)として調製できる。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液又は懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内に注射することによって達成されるか、又は組織の間隙腔に送達されるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも複数回投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含む。前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、レセプターの結合を遮断することによって、又は第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストが抗体である。最も好ましくは、そのような抗体が、先に記載するような免疫原性を最少にするキメラ抗体及び/又はヒト化抗体である。
【0061】
別のアプローチでは、リガンド、基質、酵素、レセプターに対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持する断片の形態で投与することができる。
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成される又は別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5’領域又は調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサー及びイントロン)に対して相補的な配列又はアンチセンス分子(DNA、RNA又はPNA)をデザインすることによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列又はアンチセンス分子をデザインし、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0062】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然又は合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527−533)。合成リボザイムをデザインして、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格及び天然の塩基を用いて合成され得る。或いは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2’-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また改変塩基を含んでいてもよい。
RNA分子は、細胞内安定性及び半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5’及び/又は3’末端へのフランキング配列の付加、又は分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエート又は2’-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成にも受け継がれ、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(gueosine)及びブトシン(butosine)のような非慣用塩基、並びにアセチル-、メチル-、チオ-及び同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン及びウリジンの包含によってPNA分子の全てに広げられ得る。
【0063】
本発明のポリペプチド及びその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上記で述べたアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
遺伝子治療を用い、対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivo又はex vivoで実施することができる。ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製、治療用遺伝子の導入、及び遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製を必要としない。
【0064】
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、又は、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39−66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルス若しくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97−129及び米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現させるために、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され得る。その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するため及びin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic−based Therapeutic Approaches, Chapter 20(及びその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.P. Read, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0065】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流又は筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチド又は核酸分子が疾患を引き起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患を引き起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチド又は核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を、通常は上記で述べた医薬的に許容できる担体と組合せて含む。前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原又は免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)及び他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内又は皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤には、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに水性及び非水性の無菌懸濁剤が含まれる。前記無菌注射溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでいてもよく、前記無菌懸濁剤は、懸濁剤又は増粘剤を含んでもよい。
【0066】
本発明のワクチン製剤は、単位用量又は複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプル及びバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、型どおりの検査によって容易に決定することができる。
例えば、国際特許出願WO 98/55607に記載されるような、本発明のポリペプチドに結合する抗体の遺伝的送達も有効であり得る。
ジェット式注射と呼ばれる技術(例えば、www.powderject.comを参照)も、ワクチン組成物の製剤形態に有用であり得る。
ワクチン接種に適する方法の幾つか及びワクチン送達システムは、国際特許出願WO 00/29428に記載されている。
本発明はまた、本発明の核酸分子の診断薬としての使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現又は位置的若しくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、又はそのような疾患に対する感受性の診断を規定するか又はそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検又は剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、又はPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)若しくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163−166(1986); Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301−334(1991); Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117−126(1991); Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291−294(1990))。
【0067】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、及び前記発現レベルを対照のレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供する。この場合、前記対照レベルと異なるレベルは疾患を示唆する。前記方法は、以下の工程を含み得る:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、対照サンプルを前記プローブと接触させる工程;及び、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
この場合、対照サンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患を示唆する。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;及び、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
【0068】
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失及び挿入が検出される。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、又は溶融温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、及び、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
【0069】
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異及び他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシング又は一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874−879(1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物又は改変PCRによって作製された一本鎖テンプレート分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、又は蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。
この方法の感受性は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異及び他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上記のように検出することができる。
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下又は非存在下でのゲル内のDNA断片の電気泳動移動度における変化によって、又は直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNase及びS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、又は化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
【0070】
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動及びDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA(1993))。
すなわち、細胞内のDNA又はRNA配列は、それらを単離及び/又はメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);及びTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異及び多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖及び遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996) , Vol 274, pp610-613)。
【0071】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法に従って調製され使用される(PCT出願WO95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al.(1996) Nat. Biotech. 14:1675−1680;M. Schena et al.(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619)。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロン又は他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド若しくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法及びインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(又はスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的又は化学的結合方法を用いて基質表面にcDNA断片又はオリゴヌクレオチドを配置すること及び連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、又は利用可能な装置(スロットブロット又はドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)及び機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536又は6144個のオリゴヌクレオチド、又は2つから100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0072】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチド又はmRNAの異常な増加又は低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下又は発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法及び他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA、RIA及びFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコルは、ポリペプチド発現の変化レベル又は異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液又は細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0073】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる症状又は疾患の診断のために、又は本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上記で述べたのと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体及び標識を用いてヒトの体液又は細胞若しくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、又は改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合又は非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で公知の多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、対照及び疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無及び過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験又は個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0074】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;又は
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットが、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1つ又は2つ以上の抗体;及び、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0075】
そのようなキットは、疾患又は疾患に対する感受性、特に、免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)又はこれらに対する感受性を診断することに有用であろう。
本発明の種々の特徴及び態様は、特にINSP037ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0076】
(実施例1:INSP037の同定)
配列番号2から得られるポリペプチド配列はINSP037のエクソンの翻訳を表しており、PDBデータベースに存在するタンパク質構造に対するインファーマティカ=ゲノムスレッダーツールでクエリー(query)として前記ポリペプチド配列を用いた。最もマッチングするものは、4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーの構造である。前記の最もマッチングするものは、前記クエリー配列とのアラインメントで84%のゲノムスレッダー信頼度を示した(図1)。図2は、INSP037クエリー配列と、4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーであるウシインターフェロンγの配列(PDB-1d9g)(Randal et al., Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 2000 (Jan;56), (Pt 1):14-24)とのアラインメントを示している。INSP037ポリペプチド配列が、図2では“IPAAA445”と称されていることを注記しておく。4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリータンパク質のメンバーは、治療上重要である。
図16Bは、INSP037がホモ・サピエンスの第3染色体上に見出せることを示している。上述するように、全てのI型インターフェロンは、第9染色体上に密集している。従って、第3染色体上のINSP037遺伝子の位置は(3q25.33, chr3:157121275-157121511 (on hg15/build 33))、INFγ様インターフェロンであるという本発明でのアノテーションと合致しており、だからII型インターフェロンであるとアノテーションされる。
【0077】
(実施例2:cDNAライブラリーからのINSP037(IPAAA44548)のクローニング)
{cDNAライブラリー}
ヒトcDNAライブラリー(バクテリオファージラムダ(λ)ベクター中に含まれている)は、Stratagene若しくはClontechから購入するか、又はSerono Pharmaceutical Research Instituteで製造元(Stratagene)のプロトコルに従ってλZAP若しくはλGT10ベクター中に調製した。バクテリオファージλDNAは、感染させた大腸菌宿主株の小規模培養物から製造元(Promega, Corporation, Madison WI.)の指示にしたがいWizard Lambda Preps DNA精製系を用いて調製した。用いたライブラリー及び宿主株のリストは、表Iに示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
{PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー}
仮想的cDNAの完全長配列を増幅するために、プライマーデザイナーソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用いて、下の表2に示すように、18〜25塩基の長さを有するPCRプライマー対をデザインした。PCRプライマーは、55±10℃に近いTm及び40〜60%のGC含量をもつように最適化した。標的配列IPAAA44548に対して高い選択性を有するプライマー(ほとんど又は全く非特異的プライミングを示さない)を選択した。
【0080】
【0081】
{ファージライブラリーDNAに由来する仮想的cDNAのPCR}
IPAAA44548(図3)をコードする完全長の仮想的cDNAは、遺伝子特異的クローニングプライマー(CP1及びCP2、図3及び表2)を用いて264bpのPCR増幅産物(図4)として得られた。PCRは、1XのAmpliTaq(登録商標)緩衝液、200μMのdNTP、各々50ピコモルのクローニングプライマー、2.5ユニットのAmpliTaq(登録商標)(Perkin Elmer)及び各々100ngのファージライブラリープールDNAを含む最終容積50μLで、次のようにプログラムしたMJリサーチDNAエンジンを用いて行った:94℃にて1分;94℃にて1分、x℃にてy分、及び72℃、を40サイクル(ここでxは最低Tm−5℃で、yは産物1kbにつき1分である);続いて72℃にて1分を1サイクル行ってから、4℃にて保持サイクル。
増幅産物は、1xのTAE緩衝液(Life Technology)中0.8%のアガロースゲルで可視化し、予測される分子量で移動したPCR産物をWizard PCR Preps DNA精製系(Promega)を用いてゲルから精製した。50μLの滅菌水に溶出させたPCR産物を、直接サブクローニングするか、又は20℃で保存した。
{PCR産物のサブクローニング}
PCR産物を、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)から購入したTOPO TAクローニングキットを用い製造元に指定されている条件を用いて、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCRII TOPO)中にサブクローニングした(それぞれカタログ番号K4575-01及びK4600-01)。簡単に記すと、ヒト下垂体ライブラリー(ライブラリー番号3)増幅に由来する4μLのゲル精製PCR産物を、1μLのTOPOベクター及び1μLの塩溶液とともに室温にて15分間インキュベートした。続いて前記反応混合物で大腸菌株TOP10(Invitrogen)を次のように形質転換した。ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを氷上で解凍してから、2μLのTOPO反応物を添加した。前記混合物を氷上で15分間インキュベートし、続いて42℃にて正確に30秒間のインキュベーションによってヒートショック処理した。サンプルを氷上に戻し、250μLの温SOC培地(室温)を添加した。サンプルを、振盪しながら(220rpm)37℃にて1時間インキュベートした。続いて形質転換混合物をアンピシリン(100μg/mL)含有L-ブロス(LB)プレート上に蒔いて、37℃で一晩インキュベートした。cDNA挿入物を含むアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRによって同定した。
【0082】
{コロニーPCR}
滅菌つま楊枝を用いて、コロニーを50μLの滅菌水に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、使用したプライマー対がSP6(5’)及びT7であったことを除き上述のように20μLの全反応容積でPCRを行った。サイクリング条件は以下のとおりであった:94℃にて2分;94℃にて30秒、47℃にて30秒及び72℃にて1分、を30サイクル;72℃にて7分を1サイクル。続いて更なる分析の前にサンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1xのTAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予測されるPCR産物サイズ(264bpのcDNA+187bp(マルチクローニングサイト又はMCSのため))を示すコロニーを、アンピシリン(50μg/mL)含有L-ブロス(LB)5mL中で、220rpmにて振盪しながら37℃にて一晩増殖させた。
{プラミドDNAの調製及びシークエンシング}
MiniprepプラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600自動システム(Qiagen)又はWizard Plus SV Miniprepキット(Promega Cat.# 1460)を用い、製造元の指示に従って5mLの培養物から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems Cat.# 4390246)を用い製造元の指示にしたがいながら、プラスミドDNA(200−500ng)をT7及びSP6プライマーと共にDNAシークエンシングした。Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore cat.#LSKS09624)を用いてシークエンシング反応物を精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0083】
(実施例3:HEK293/EBNA細胞におけるINSP037(IPAAA44548)発現用プラスミドの構築)
続いて、DNAシークエンシングによって同定したIPAAA44548の完全なコード配列(ORF)を含むpCRII-TOPOクローン(図5)を用いて、ゲートウェイ(Gateway)(登録商標)クローニング法(Invitrogen)により、前記挿入物を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図6)中にサブクローニングした。前記クローン化配列は、ただ1つのヌクレオチド置換A134Gを含む(図4)。
{インフレーム6HISタグ配列に融合させたゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFの作製}
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は二工程PCR反応を必要とし、これによって5’末端にattB1組換え部位及びコザック配列がフランキングし、3’末端にインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグをコードする配列、終止コドン及びattB2組換え部位がフランキングするIPAAA44548のORF(ゲートウェイ適合性cDNA)が作製される。第一のPCR反応物(最終容積50μL)は以下を含む:25ngのpCRII TOPO-IPAAA44548(プラスミド13124、図5)、2μLのdNTP(5mM)、5μLの10xのPfxポリメラーゼ緩衝液、各々0.5μLの遺伝子特異的プライマー(100μM)(EX1フォワード及びEX2リバース)及び0.5μLのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)。PCR反応は、95℃で2分の最初の変性工程に続いて、94℃で15秒及び68℃で30秒を12サイクル、で実施した。Wizard PCR prepDNA精製システム(Promega)を用い製造元の指示に従って、反応混合物から直接、PCR産物を精製した。
第二のPCR反応物(最終容積50μL)は、以下を含んでいた:10μLの精製PCR産物、2μLのdNTP(5mM)、5μLの10xのPfxポリメラーゼ緩衝液、各々0.5μLのゲートウェイ変換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)、及び0.5μLのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ。第二のPCR反応の条件は、以下のとおりであった:95℃にて1分;94℃で15秒、45℃で30秒及び68℃で3.5分を4サイクル;及び、94℃にて15秒、55℃にて30秒及び68℃にて3.5分を25サイクル。PCR産物は、上述のように精製した。
あるいはE.coliにおいてIPAAA44548を発現させるために、第一のPCRの遺伝子特異的プライマー(EX3-フォワード及びEX2-リバース)、並びにGCPF及びGCPRプライマーを用い、上記と同じ条件を用いて、メチオニン開始コドンの上流にシャイン-ダルガーノ配列を含むORFを作製した。得られたPCR産物をSD-IPAAA44548と称した。
【0084】
{ゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR201及び発現ベクターpEAK12dへのサブクローニング}
ゲートウェイクローニング方法の第二段階は、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR201(Invitrogen, 図7)へのサブクローニングを含む。前記サブクローニングは、以下のようである:5μLの精製PCR産物を、1.5μLのpDONR201ベクター(0.1μg/μL)、2μLのBP緩衝液及び1.5μLのBPクロナーゼ(clonase)酵素ミックス(Invitrogen)とともに、室温で1時間インキュベートした。この反応をプロテイナーゼK(2μg)の添加によって停止させ、さらに10分間37℃でインキュベートした。バイオラド=ジーンパルサー(Biorad Gene Pulser)を用いるエレクトロポレーションによって、前記の反応物のアリコート(2μL)を大腸菌DH10B細胞へ形質転換した。形質転換体をLB-カナマイシンプレート上に蒔いた。Wizard Plus SV Miniprepsキット(Promega)を用いて、得られたコロニーの1−4からプラスミドミニ-プレップDNAを調製し、続いて1.5μLの前記プラスミド溶出物を組換え反応物に用いた。前記組換え反応物は、最終容積10μL中に、1.5μLのpEAK12dベクター(図6)(0.1μg/μL)、2μLのLR緩衝液及び1.5μLのLRクロナーゼ(Invitrogen)を含んでいた。この混合物を室温で1時間インキュベートし、プロテイナーゼK(2μg)の添加によって反応を停止させ、さらに10分間37℃でインキュベートした。この反応物のアリコート(1μL)を用いて、エレクトロポレーションにより、大腸菌DH10B細胞を形質転換した。
正しい挿入物を含むクローンを、pEAK12dプライマー(pEAK12d F及びpEAK12d R)をPCRに用いたことを除き、上に記載するようにコロニーPCRを行うことによって同定した。Qiaprep Turbo 9600自動化システム(Qiagen)を用いるか、又はWizard Plus SV miniprepsキット(Promega)により手動で、正しい挿入物を含むクローンからプラスミドmini prep DNAを単離して、pEAK12d F及びpEAK12d Rプライマーを用いて配列を確認した。
配列を確認したクローンの500mL培養物から、プラスミドpEAK12d-IPAAA44548-6His(プラスミド番号11775、図8)のCsCl勾配精製maxi-prepDNAを調製して(J. Sambrook, et al., in Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)、滅菌水に1μg/μLの濃度で再懸濁して-20℃で保存した。
【0085】
{発現ベクターpEAK12dの構築}
ベクターpEAK12dは、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12(Edge Biosystemsから購入)のゲートウェイクローニング系適合型である。pEAK12では、対象cDNAがヒトEF1αプロモーターの制御下で発現される。pEAK12dは、下記のように作製した。
pEAK12は、制限酵素HindIII及びNotIで消化し、クレノウ(Klenow)(New England Biolabs)を用いて平滑末端にし、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Roche)を用いて脱リン酸化した。脱リン酸化後、平滑末端のゲートウェイリーディングフレームカセットC(ゲートウェイベクター変換系、Invitrogen cat#11828-019)に前記ベクターを連結して、大腸菌DB3.1細胞(ccdB遺伝子を含むベクターの増殖を許容する)を形質転換した。前記カセットは、ccdB遺伝子にフランキングなAttR組換え部位を含み、クロラムフェニコール耐性を有する。前記ベクターを連結した前記カセットで、Wizard Plus SV Miniprepsキット(Promega)を用いていくつかの耐性コロニーからMini prep DNAを単離し、AseI/EcoRIで消化して、前記カセットが正しい方向性で挿入されたことを示している670bpの断片が生じるコロニーを同定した。得られたプラスミドをpEAK12d(図6)と名付けた。
{ゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR201及び大腸菌発現ベクターpDEST14へのサブクローニング}
インフレーム3’6HISタグコード配列及び5’上流シャイン-ダルガーノ配列を含むゲートウェイ適合性SD-IPAAA44548 ORFを、BPクロナーゼ(clonase)を用いてpDONR201へサブクローニングした。次に、得られたプラスミドは、上述のLRクロナーゼを使用して、大腸菌発現ベクターpDEST14(Invitrogenより購入、図9)とともに組換え反応に用いた。得られた発現プラスミド(pDEST14-IPAAA44548-6HIS)(図10、プラスミド12896)を、上述のように配列確認した。大腸菌での発現のために、CsCl精製maxi-prep DNAで大腸菌宿主株BL21を再形質転換させた。挿入されたcDNAの発現は、T7プロモーターの制御下にある。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例4:IPAAA44548を含むcDNAライブラリーの同定)
CP1及びCP2を用いて得られ且つ正しいサイズ(264bp)で移動するPCR産物を、ライブラリー3、8及び12(それぞれ下垂体、脳皮質及び胎児腎)において同定した。
(実施例5:クローン化IPAAA44548-S-6HIS(プラスミド番号12118)の哺乳類細胞での発現)
{細胞培養}
エプスタイン=バーウイルスの核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)は、Ex細胞VPRO無血清培地(シードストック、維持培地、JRH)に懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前(−1日目)に、細胞を2つのT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコ当たり50mL)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(登録商標)試薬を用いてトランスフェクションを行った(プラスミドDNA2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、113μgのプラスミド番号12118を2.3μgのGFP(蛍光レポーター遺伝子)とコトランスフェクトした。トランスフェクション混合物を2つの前記T225フラスコに加え、37℃(5% CO2)で6日間インキュベートした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目及び6日目に定量的蛍光試験によって実施した(Axiovert 10 Zeiss)。
【0088】
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清(100mL)をプールし、遠心分離して(4℃、400g)、固有の識別標を付したポットに入れた。
6Hisタグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、アリコート(500μL)を保持した。
スケールアップしたバッチを、“懸濁細胞のPEIトランスフェクション”と呼ばれるプロトコルにしたがい(BP/PEI/HH/02/04を参照)、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミン(Polysciencesより入手)を用いて生産した。
このプロトコルは、以下の比率を基準にした:
400mLスピナーの場合;1%FBSを含むFEME200mL中に1×106個のHEK293EBNA細胞;
10mLのFEME1%にプラスミド(番号12118)400μgを希釈し、800μgのPEIを添加した。トランスフェクション後90分してFEME1%培地を添加し、全量を400mLにした。スピナーは、採集まで6日間培養し続けた。
【0089】
{精製方法}
C-末端6Hisタグを有するリコンビナントタンパク質を含む培養液サンプル100mL又は400mLを、冷緩衝液A(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グルセロール;pH7.5)を用いて、それぞれ最終容積200mL及び800mLに希釈した。0.22μmの滅菌フィルター(Millipore, 500mLフィルターユニット)で前記サンプルをろ過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃にて維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃にて実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20MC(Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm、0.83mL)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1.0x10cm)でのゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mMのEDTA;1MのNaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiSO4溶液で洗浄してNiイオンを再荷電し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グリセロール;400mMのイミダゾール;pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Labomaticサンプル添加装置でサンプルを200mLのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10mL/分で装荷した。400mLのスケールアップサンプルの場合、前記の移して装荷する工程を4回繰り返した。その後、前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液A(20mMイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMイミダゾール洗浄の間に、ゆるく付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。リコンビナントHisタグ付加タンパク質を、流速2mL/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を1.6mL画分で採集した。
【0090】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを2mLの緩衝液D(1.137MのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに統合されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2mL/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。脱塩サンプルを2.2mL画分で回収した。前記画分を、0.22μmの滅菌遠心分離フィルター(Millipore)でろ過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗His抗体を用い、クーマシー染色及びウェスタンブロットによってSDS-PAGE(4−12%NuPAGEゲル;Novex)で分析した。
クーマシー染色:NuPAGEゲルを0.1%のクーマシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)中で室温にて1時間染色し、続いてバックグラウンドが除かれてタンパク質のバンドが鮮明に見えるようになるまで、20%メタノール/7.5%酢酸中で脱染した。
ウェスタンブロット:電気泳動に続いて、タンパク質を4℃にて1時間、290mAでゲルからニトロセルロースメンブレンへ電気的に移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;0.1%トゥイーン20(pH7.4))で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中で2つのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18及びH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)とともに4℃で一晩インキュベートした。室温でさらに1時間インキュベートした後、前記メンブレンを緩衝液Eで洗滌し(10分、3回)、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP結合抗ウサギ二次抗体(DAKO、HRP0399)と室温で2時間インキュベートした。緩衝液Eで洗滌(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
タンパク質アッセイ:クーマシー染色によって検出可能なタンパク質バンドを示すサンプル中の標準物質としてのウシ血清アルブミンと共に、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0091】
{細菌細胞でのIPAAA44548-SEC-6HIS(プラスミド番号12896)の発現}
下記の方法では、タンパク質を産生させるための大腸菌BL-21 DE3細菌株の使用について記述する。“BL21 DE3”は、リコンビナントタンパク質を過剰発現させるために広く使用されているT7RNAポリメラーゼを用いる発現系の一環である。
{細菌株BL21(DE3)の形質転換}
TSS法の手順を使用した。前記方法のプロトコルは以下の文献から得た:C.T. Chug et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1989) 86:2172-2175。
リコンビナントプラスミドNo.12896のDNA10−100ng(2μL)をTSS法のためのコンピテントなBL21に添加して、氷上に20分静置した。SOC培地(0.8mL)を添加し、そのチューブを37℃、200rpmで1時間インキュベートした。この培養物から20μL及び200μLを採取して、アンピシリン(最終濃度40μg/mL)含有LBプレート上に蒔いて、37℃にて一晩静置した。
翌日、3コロニーを単離して、グリセロールストックの調製に用い、形質転換産物をファーメンター内に移す前に振盪フラスコ実験で発現についてテストした(前記3コロニーは振盪フラスコ実験において同じ性能であったので、前記3コロニーのうちの1つをラージスケール用に選択した)。
【0092】
{リコンビナント大腸菌株の長期保存用シードストックの調製}
アンピシリン(最終濃度40μg/mL)含有LB培地が入っている5mLチューブに、新鮮な寒天プレートからただ一つのコロニーを接種した。細菌を37℃、200rpmで一晩増殖させた。翌朝一晩培養物の50μLを採取し、新たな5mL LBチューブ(+抗生物質)に接種し、細菌を指数増殖期に移行させるために37℃、200rpmで2−3時間インキュベートした。
続いて20%グリセロール5mLを前記培養物に添加して、混合した。5本の低温貯蔵バイアルに1.5mLずつ分注して、-80℃にて保存してシードストックとした(内部グリセロールストック)。
{5リットルスケールでの発現}
前記リコンビナント株を5リットルのバイオラフィット(Biolafitte)攪拌タンクリアクターで増殖させた。操作時に前記タンクリアクターは、適切な抗生物質(最終濃度40μg/mL)と、T7プロモーターの前誘発を避けるための0.5%グルコースとを含む5リットルのECPM 1培地(表IVに示す組成を有する)を含んでいた。リサーチグレード・ラン2464のみを調製して、精製にまわした。
接種物は、500mLのLB(+抗生物質、0.5%グルコース)振盪フラスコで、凍結細菌1ループ(グリセロールシードストックバイアルの1つから掻きとる)から出発し自動的接種の前に9時間増殖させて調製した。細胞がOD10に達したとき(通常は7から9時間の増殖後)、IPTG(最終濃度1mM)を用いて、タンパク質産生を誘導した。誘導は3時間続けた。
増殖及び誘導までのファーメンター設定条件は、以下のように設定した:溶解酸素濃度50%、酸素圧に応じて300から700rpm、pH7.0。酸素圧はエアスパージング+/−酸素(25mL/分)で維持した。1時間毎に5mLのサンプルを採取し、600nmにて光学密度を測定した。
細胞を収穫し、4000rpm(Sorvall RC 3B)で遠心分離した。そのペレットを、更なる処理まで-20℃で凍結保存した。
細胞抽出物におけるタンパク質の存在を、SDS-PAGEのクーマシー染色によって評価した。
【0093】
【0094】
【0095】
{精製方法}
67gの凍結細菌ペーストを、完全にEDTAフリーのプロテアーゼインヒビター(Roche)を1錠/50mLで補充した270mLの緩衝液A(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;1mMのPMSF;1mMのベンズアミジン;8.7%(w/v)のグリセロール、pH7.5)に懸濁させた。Z-プラス細胞破砕装置(Constant Cell Disruption Systems)に1300barにて2回通すことによって、前記細菌を破砕した。
続いて、このサンプルを36,000xgで30分遠心分離した。その上清(300mL)を、緩衝液Aで平衡化したNi-NTA-アガロースカラム(2.5x3.0cm)に4mL/分の流速で装荷した。
前記カラムを100mLの緩衝液Aで洗浄し、続いて20mMイミダゾールを含む緩衝液A 85mLで洗浄した。タンパク質は、3mL/分の流速にて20mMから250mMイミダゾールを含む緩衝液Aの300mL直線グラジエントによって溶出させて、7.5mLずつ画分を集めた。1秒毎の画分のサンプルを還元性SDS-サンプル緩衝液で1/6に希釈し、4−12%NuPageゲル(Novex)にウェル当たり15μLを装荷し、電気泳動後に前記ゲルをクーマシーブルーで染色した。
最も高いIPAAA44548濃度を有する画分(画分36−42)をプールし、その総容積は53mLであった(プールN1)。より低い純度及び濃度を有するプールN1の両側の画分(画分32−35及び画分43−44)は、44mLの容積を有するプールN2としてプールした。
【0096】
Ni-カラムから得たプールを、緩衝液B(50mMトリス-HCl、1mMベンズアミジン、pH7.5)で平衡化したQ-セファロースファストフローカラム(1.5x12cm)でさらに精製した。52mLのプールN1を300mLの緩衝液B及び648mLのH2Oで希釈して、最終容積1000mLを得た。前記サンプルを流速5mL/分にてカラムに装荷し、前記カラムを150mLの緩衝液Bで洗浄し、0mM-400mMのNaClを含む緩衝液Bの160mL直線グラジエントを用いてタンパク質を溶出させた。画分を2mLずつ集め、上記に記載したようにクーマシー染色SDS-PAGEによって分析した。画分28−30(プールQ1)は、9.6kDaの予測される分子量の位置に1つのタンパク質バンドを含んでいた。画分31−33(プールQ2)は加えて、ダイマーの形成を示す約20kDaの位置にタンパク質バンドを含んでいた。
Ni-カラムから得たプールN2の43mLを、300mLの緩衝液B及び657mLのH2Oで1000mLに希釈した。前記サンプルをQ-セファロースカラムに装荷し、タンパク質を溶出させて、その画分をプールN1について記載するように分析した。分画28−30(プールQ3)は、9.6kDaの予測される分子量の位置に1つのタンパク質バンドを含んでいた。各Qプールの容積は5.5mLであった。
Q-セファロースカラムから得たプールを、スーパーデックス(Superdex)G75ゲルろ過カラム(HiLoad16/60, Pharmacia)に通した。前記カラムを0.5MのNaOHで洗浄し、PBSで平衡化させた。前記カラムを流速1mL/分で流して、5mLのプールを前記カラムに装荷した。画分を2mLずつ集め、上記に記載するようにクーマシー染色SDS-PAGEにより分析した。
【0097】
IPAAA44548は、プールQ1からは画分31−35(9.5mL)(S1)に溶出し、プールQ2からは2つのピーク、画分31−34(7.5mL)(S2)及び画分26−28(5.8mL)(S3)に溶出し、プールQ3からは画分32−35(7.5mL)(S4)に溶出した。非還元性SDS-PAGEで分析したとき、プールS3は80%を越えるタンパク質をダイマーとして含むことを示し、一方、他のプールはダイマーを微量のみ含んでいた。プールS1及びS2は類似する純度及び濃度を有しており、それらを1つのプールS1b(9.5+7.5=17mL)にプールした。
タンパク質濃度は、280nmでの吸収を測定し、モル吸光係数の計算値7,090及び分子量9,625を用いて決定した。タンパク質の分子量を質量分析により決定し、プールS1b及びS4ではタンパク質の分子量が9,624.6であることが見出された。プールS3でのタンパク質分子量は19,252.2であると決定され、このプールにはジスルフィド架橋を有するダイマーが存在することが確認された。これらのプールは、LPSについてアッセイを行って1.1 U/mgから3.4 U/mgを含んでいた。
【0098】
【0099】
(実施例6:IPAAA44548(INSP037)のin vivoでの特徴付け)
IPAAA44548(INSP037)タンパク質(IPAAA44548-6-HIS及びIPAAA44548-ATT-6HIS)は、コンカナバリンA(ConA)及びフィトヘマグルチニン(PHA)刺激したヒト末梢血単核細胞(hPBMC)によるIFNγ分泌をin vitroで誘導することが示された(予備データ、データは示さず)。これらのデータに基づいて、下に説明するように、in vivo ConAモデルで電気的導入(エレクトロトランスファー:electrotransfer)によりIPAAA44548(INSP037)の活性を試験することを決定した。
{肝臓のコンカナバリンA(ConA)誘導性肝炎}
中毒性肝臓疾患は、薬理的療法が未だ発見されていないため、人類における全世界的な健康問題を代表している。例えば、肝臓の肝硬変をもたらす急性慢性肝炎は、活性化されたT細胞によって肝臓の実質細胞が徐々に破壊されてゆく疾病状態である。ConA誘導性肝臓毒性は、マウスにおけるT細胞依存性アポトーシス性及びネクローシス性肝障害の3つの実験的モデルの1つである。Gal N(D-ガラクトサミン)感作マウスを、重篤なアポトーシス性肝傷害と二次的なネクローシス肝傷害が表れる活性化抗CD3モノクローナルAB又はスーパー抗原SEBのいずれかに曝露させた(Kusters S, Gastroenterology. 1996 Aug;111(2):462-71)。T細胞分裂促進性の植物レクチンであるConAを未感作マウスに注射しても、肝臓のアポトーシスを生じる結果となり、ネクローシスに進行する。ConAは、全身的なTNFα、IFNγ及びその他種々のサイトカインの放出を誘導する。TNFα及びIFNγの両方は、肝傷害の重要なメディエーターである。トランスアミナーゼ放出8時間後に、傷害が重篤な肝臓破壊を引き起こす。
肝臓の損傷には種々の種類の細胞が関与していることが示されており、そのような種類の細胞としては、CD4 T細胞、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞が挙げられる(Kaneko J Exp Med 2000, 191, 105-114)。抗CD4抗体は、T細胞の活性化と、結果として引き起こされる肝臓の損傷を遮断する(Tiegs et al. 1992, J Clin Invest 90, 196-203)。CD8に対するモノクローナル抗体を用いたマウスの前処置は防護に失敗したが、一方マクロファージの除去は肝炎の誘導を妨害した。
【0100】
肝臓のConA誘導性肝炎におけるIFNγ様タンパク質IPAAA44548の役割について調べるために、研究を行った。種々のサイトカインは、ConA誘導性肝臓損傷の誘導又はConA誘導性肝臓損傷からの防護の付与のいずれかにおいて重要であることが示されている。例えば、TNFαは、ConA注射後最初に産生されるサイトカインの一つであり、抗TNFα抗体は疾患に対する防護を付与する(Seino et al. 2001, Annals of surgery 234, 681)。抗IFNγ抗血清が、ConA処理した動物の血中でのトランスアミナーゼレベルの低下によって測定して、マウスを有意に保護するという理由から、IFNγも肝傷害の重要なメディエーターであると考えられる(上記Kustersらの文献を参照)。肝傷害では、自己免疫性肝炎又はウイルス性肝炎を患っている患者にIFNγ産生の増加が観察された。加えて、肝臓でIFNγを発現しているトランスジェニックマウスは、慢性急性肝炎によく似た肝傷害を発症する(Toyonaga et al. 1994, PNAS 91, 614-618)。IFNγはin vitroでマウス肝細胞の細胞死を引き起こし、この事象はTNFによって促進されたことから、IFNγは肝細胞に対して細胞傷害性でもあり得る(Morita et al. 1995, Hepatology 21, 1585-1593)。
他の分子は、ConAモデルで防護的であることが記載されている。rhIL-6の単回投与は、トランスアミナーゼの放出を完全に阻害した(Mizuhara et al. 1994, J. Exp. Med. 179, 1529-1537)。
{対象のタンパク質の全身発現を達成することを目的とした、筋肉繊維へのcDNA電気的導入}
in vivo遺伝子導入のためのウイルス性でない技術の中で、筋肉中へのプラスミドDNAの直接注射及びそれに続くエレクトロポレーションは、単純、安価且つ安全である。形質導入されたDNAは通常は染色体組込みを受けないが、筋繊維の分裂後の性質と長い寿命とが、形質導入された遺伝子の安定な発現を許容する(Somiari et al. 2000, Molecular Therapy 2,178)。種々の報告により、筋肉産生されたタンパク質の血流への分泌が、対応するcDNAのエレクトロポレーション後に達成されることが示されている(Rizzuto et al. PNAS, 1996, 6417; Aihara H et al., 1998, Nature Biotech 16, 867)。加えて、疾患モデルにおいて、筋肉発現されたEpo及びIL-18 BPのin vivoの効力が示されている(Rizzuto, 2000, Human Gene Therapy 41, 1891; Mallat, 2001, Circulation research 89, 41)。
本実施例では、次の材料及び方法を用いた。
【0101】
{動物}
全ての研究で雌のC57/BL6(8週齢)を用いた。一般に、実験群あたり7匹の動物を用いた。マウスは、12時間の明暗サイクル下、通常の条件で維持し、放射線照射した食べ物及び水を自由に与えた。
{筋肉電気的導入}
[ベクターの選択]
His又はStrepIIをタグ付けしたhIL-6遺伝子又はIPAAA44548遺伝子を、ゲートウェイ適合性のCMVプロモーター含有pDEST12.2でクローニングした。
[エレクトロポレーションのプロトコル]
マウスをガス(イソフルラン, Baxter, Ref: ZDG9623)で麻酔した。後肢を剪毛して、エコーグラフィックゲルを施した。ヒアルロニダーゼを後脛骨筋に注射した(20Uを50 μLの滅菌NaCl 0.9%に溶解して, Sigma, Ref. H3631)。10分後、100 μgのプラスミド(片肢あたり50 μgを25 Lの滅菌NaCl 0.9%に溶解して)を同じ筋肉に注射した。DNAは、筋肉内注射の前に、PBS-L-グルタミン酸緩衝液中に調製した。電気的導入のため、エレクトロ・スクエア・ポーラスター(ElectroSquarePorator(BTX, ref ECM830))を用いて、片足に対し、1回のパルスを20 msの間に75ボルトにて1秒の間隔をおいて10回のパルスを、2つの円形の電極(サイズ:直径0.5 mm)による単極方式で電場を施した(Mir LM et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Apr 13;96(8):4262-7 and Haas K et al., Neuron. 2001 Mar;29(3):583-91.。
【0102】
{読み出し}
[血液のサンプリング]
1.30時間、6時間及び8時間の異なる時点で、眼から100 μLの血液を採取した。屠殺時には、心臓から血を採った。
[血液サンプル中のサイトカイン及びトランスアミナーゼの検出]
TH1/TH2 CBAアッセイ(BD 551287)を用いて、IL-2、IL-5、IL-4、TNFα及びIFNγのサイトカインレベルを測定した。COBAS装置(Hitachi)を用いて、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)及び尿素の血液パラメータを決定した。
{ConA誘導}
雌のC57/BL6マウス(IFFA CREDOから入手)、8週齢動物;ConA(Sigmaから購入、ref.C7275)。異なる濃度にてConAをi.v.に注射し(0時点)、注射後1.30時間、6時間又は8時間で血液サンプルを採取した。サイトカイン、ASAT、ALATの測定は、上述するように行った。
[ConAモデルでのIL-6前処置]
ConA注射の1時間前に、hIL-6を産生しているCHO細胞を注射した。
[IPAAA44548及びIL-6の電気的導入]
0日目にIPAAA44548ベクター又はhIL-6ベクター、空ベクター(負の対照)の電気的導入を行った(上のプロトコルに従って)。電気的導入後から5日眼に、ConA(20 mg/kg)をi.v.注射し、3つの時点で血液を採取した(1.30時間、6時間、24時間)。サイトカイン、ASAT、ALATの測定は、上述するように行った。
【0103】
{結果}
このようなcDNA電気的導入を用いてIPAAA44548で処置したConA誘導性劇症肝炎のモデルマウスは、in vivoで、血中のTNFα、IL-2及びIFNγのレベルの増加を示した(図17A〜Cを参照)。加えて、ASAT及びALATのレベルも対照に対して増加していた(図17D〜Eを参照)。
図18A〜Fの結果は、正の対照の比較例を表している(rhIL-6はConAにより誘導される炎症誘発性応答を遮断することが知られている)。血液中でhIL-6を発現させ、続いてConA誘導性肝臓毒性からの保護を示すために、pDEST12.2hIL-6-STREPII又はpDEST12.2 STREPIIのいずれかの電気的導入ベクターを使用した。
これらの実施例は、電気的導入を使用した血清中のIPAAA44548タンパク質の発現が、ConA曝露後における炎症誘発性サイトカインレベルを全身レベルで増加させ、また、トランスアミナーゼレベルの増加により測定されるように、肝臓疾患を悪化させることを示している。
これらの結果は、予測したIPAAA44548のIFNγ様活性を確かめ、そのタンパク質自体について一連の興味深い治療的用途を開拓している。例えば、IFNγの既知の用途は、IPAAA44548への適合性についてすぐにも調べられ得る(例えば、抗癌活性)。また、例えばモノクローナル抗体など、in vivoでのIPAAA44548活性の更なる研究又は臨床上の用途で有益であり得るIPAAA44548の阻害剤又はアンタゴニストをすぐにでも同定できるであろう。
【0104】
(INSP037の配列情報)
配列番号1 (INSP037のヌクレオチド配列)
1 ATGACTTCAC CAAACGAACT AAATAAGCTG CCATGGACCA ATCCTGGAGA
51 AACAGAGATA TGTGACCTTT CAGACACAGA ATTCAAAATA TCTGTGTTGA
101 AGAACCTCAA AGAAATTCAA GATAACACAG AGAAGGAATC CAGAATTCTA
151 TCAGACAAAT ATAAGAAACA GATTGAAATA ATTAAAGGGA ATCAAGCAGA
201 AATTCTGGAG TTGAGAAATG CAGATGGCAC ACTTTAG
配列番号2 (INSP037のタンパク質配列)
1 MTSPNELNKL PWTNPGETEI CDLSDTEFKI SVLKNLKEIQ DNTEKESRIL
51 SDKYKKQIEI IKGNQAEILE LRNADGTL
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】配列番号2のインファーマティカゲノムスレッダー検索の結果を示す。
【図2】配列番号2と最近縁構造との間でインファーマティカゲノムスレッダーにより得られたアラインメントを示す。
【図3】INSP037の予測ヌクレオチド配列(配列番号1を含む)を、その翻訳(配列番号2)とともに示す。
【図4】INSP037のクローン化ヌクレオチド配列(配列番号1を含む)とその翻訳(配列番号2)であり、INSP037について予測された配列とクローン化配列は同一であることを示している。
【図5】PCRII-TOPO-IPAAA44548のマップを示す。
【図6】発現ベクターpEAK12dのマップを示す。
【図7】プラスミドpDONR201のマップを示す。
【図8】発現ベクターpEAK12d-IPAAA44548-6HISのマップを示す。
【図9】大腸菌発現ベクターpDEST14のマップを示す。
【図10】プラスミドpDEST14-IPAAA44548-6HISのマップを示す。
【図11】PCRII-TOPO-IPAAA44548のヌクレオチド配列を示す。
【図12】pDEST14-IPAAA44548-6HISのヌクレオチド配列を示す。
【図13】pEAK12D-IPAAA44548-6HISのヌクレオチド配列を示す。
【図14】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-NRの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図15】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-month-aaの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037が新規であることを実証している。
【図16A】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についての、翻訳されたヌクレオチドのデータベースであるNCBI-month-ntの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図16B】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-ntの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図17】ConA誘導性劇症肝炎のマウスモデルでのINSP037活性の実験の結果を示す。
【図18】ConA誘導性劇症肝炎のマウスモデルに対しIL-6効果を示している正の対照を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明において4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として同定されたINSP037と称するタンパク質に関し、また、疾患の診断、予防及び治療における前記タンパク質及びそれをコードする遺伝子由来の核酸配列の使用に関する。
本明細書に引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
薬剤の発見プロセスにおいて、機能ゲノム学の時代の到来にあわせて根幹的な革命が現在進行している。“機能ゲノム学”という用語は、対象のタンパク質配列に機能を帰属させるためにバイオインフォマティクスツールを利用するアプローチに用いられる。そのようなツールは、配列データの生成速度が、これらタンパク質配列に機能を割り当てる研究室の能力をはるかに越えるのでますます必要性を増している。
バイオインフォマティクスツールの潜在能力及び精度が高まっているために、前記ツールは通常の生化学的特徴付け技術と急速に置き換えられつつある。実際、本発明の同定に用いた高度なバイオインフォマティクスツールは、今や、高い信頼度をもつ結果を出力する能力を有する。
配列データが利用可能になるにつれ、種々の研究機関及び企業組織がそれらを調査し、重要な発見が絶え間なく達成され続けている。しかしながら、研究及び薬剤発見のための標的として、更なる遺伝子及びそれらがコードするポリペプチドを同定し特徴付ける必要性は引き続き存在している。
【0003】
(分泌タンパク質に関する導入部)
細胞外タンパク質を生成及び分泌する細胞の能力は、多くの生物学的過程の中核である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は、すべて細胞によって分泌される。前記過程は、分泌小胞と形質膜との融合を介する。全てではないが、多くの場合、タンパク質は、シグナルペプチドによって小胞体に向けられて分泌小胞内へと導かれる。シグナルペプチドは、細胞質から分泌小胞のような膜結合区画へのポリペプチド鎖輸送に作用するシス作動性配列である。分泌小胞へ導かれるポリペプチドは、細胞外マトリックスに分泌されるか、又は形質膜に保持される。形質膜に保持されるポリペプチドは、1つ又は2つ以上の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能で中核的役割を果す分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(粘着分子)、プロテアーゼ、並びに増殖因子及び分化因子である。
【0004】
(サイトカインに関する導入部)
サイトカインは、白血球から主要に分泌される増殖因子ファミリーであり、ナノモル以下の濃度で細胞内の一連の反応を実行することができる強力な調節物質として作用するメッセンジャータンパク質である。インターロイキン、ニューロトロフィン、増殖因子、インターフェロン及びケモカインは全て、細胞性レセプターと共に働いて細胞の増殖及び分化を調節するサイトカインファミリーと定義される。それらのサイズは、サイトカインが迅速に体内のあちこちに輸送され、必要なときには分解されることを可能にする。広範囲の細胞機能、特に免疫応答及び細胞増殖を制御することにおけるそれらの役割は、ここ20年にわたる多くの研究によって明らかにされている(S.B. Boppana (1996) Indian. J. Pediatr. 63(4):447-52)。サイトカインは、他の増殖因子のように、1つの特異的な組織又は腺ではなく多数の異なる種類の細胞によって生産されるという事実によって古典的ホルモンとは区別され、また、標的細胞上に位置する特異的な高親和性レセプターとの相互作用を介して広範囲の細胞に効果を及ぼす。
全サイトカインのコミュニケーション系は、多面作用性(1つのメッセンジャーが多種の作用を引き起こす)及び重複性(各作用が2つ以上のメッセンジャーに引き起こされる)の両方を示す(G. Tringali et al. (2000) Therapie. 55(1):171-5; L. Tessarollo (1998)) Cytokine Growth Factor Rev. 9(2):125-137)。1個の細胞に対する個々のサイトカインの作用はまた、前記サイトカインの濃度、他のサイトカインの濃度、サイトカインの時間的順序、及び細胞の内部状態(細胞周期、隣接する細胞の存在、癌性)にも左右されるであろう。
【0005】
サイトカインは典型的には小さな(200アミノ酸未満)タンパク質であるが、それらは、翻訳後にスプライシングされるさらに大きな前駆体からしばしば生成される。mRNAの選択的スプライシング経路に加えて、前記スプライシングによって、各サイトカインの広範な変種が提供され、その各々は生物学的作用において実質的に異なり得る。多くのサイトカインの膜及び細胞外マトリックス結合型も、単離されている(M. Okada-Ban et al. (2000) Int. J. Biochem. Cell Biol. 32(3):263-267;S.P. Atamas (1997) Life Sci. 61(12):1105-1112)。
サイトカインは複数のファミリーに分類され得るが、大部分は無関係である。配列類似性はしばしば非常に低いので、分類は通常、二次構造組成を基にしている。前記ファミリーは、例えばIFN様、IL2様、IL1様、IL6様及びTNF様といった原型メンバーに因んで命名されている(A. Zlotnik et al. (2000) Immunity 12(2):121-127)。
サイトカインは、多細胞生物における多くの重要な反応、例えば免疫応答調節(J. Nishihira (1998) Int. J. Mol. Med. 2(1):17-28)、炎症(P.K. Kim et al. (2000) Surg. Clin. North. Am. 80(3):885-894)、創傷治癒(R.A. Clark (1991) J. Cell Biochem. 46(1):1-2)、胚発生及び発育、並びにアポトーシス(H.D. Flad et al. (1999) Pathobiology 67(5-6):291-293)に関与することが、研究によって示されている。
HIV及びカポジ肉腫随伴ウイルスのような病原性生物(ウイルス及び細菌)は、抗サイトカイン因子及びサイトカインファミリー類似体をコードしており、これによって前記因子及び前記類似体がサイトカインレセプターと相互作用して体の免疫応答を制御することが可能となる(S. Sozzani et al. (2000) Pharm. Acta. Helv. 74(2-3):305-312; Y. Aoki et al. (2000) J. Hematother. Stem. Cell Res. 9(2):137-145)。ウイルスがコードするサイトカインであるウィロカイン(virokine)は、宿主の免疫系を模倣して破壊するという能力のために、ウイルスの病原性発揮に必要とされることが示されている。
【0006】
サイトカインは、以下を含む病状及び疾患の治療、予防及び/又は診断に有用であり得る:免疫異常、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性紅斑性狼瘡及び多発性硬化症、炎症性疾患、例えばアレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、敗血症、内毒素ショック、敗血症性ショック、悪疫質、筋肉痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス感染後消耗症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性塞栓性肺疾患、気道炎症、創傷治癒、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、腫瘍性疾患、例えばメラノーマ、肉腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、血液疾患、骨髄増殖性疾患、ホジキン病、骨粗しょう症、肥満、糖尿病、痛風、心脈管系疾患、再灌流障害、アテローム性硬化症、虚血性心疾患、心不全、発作、肝疾患、エイズ、エイズ関連合併症、神経障害、男性不妊症、加齢及び感染(マラリア原虫感染、細菌感染及びウイルス感染を含む)。
サイトカインの臨床的利用は、免疫系の調節物質としての役割に焦点が当てられており(F.H. Rodriguez et al. (2000) Curr. Pharm. Des. 6(6):665-680)、例えば甲状腺癌に対する応答の促進においてである(C. Schmutzler et al. (2000) 143(1):15-24)。サイトカインの細胞増殖及び細胞分化の制御により、サイトカインはまた抗癌標的にもなっている(E. Lazar-Molnar et al. (2000) Cytokine. 12(6):547-554; K. Gado (2000) 24(4):195-209)。サイトカイン及びサイトカインレセプターにおける新規な変異は、いくつかの事例で疾患に対する抵抗性を付与することが示されている(S.J. van Deventer et al. (2000) Intensive Care Med. 26(Suppl1):S98-S102)。活性を調節して潜在的副作用を除去するために、合成サイトカイン(ミューテイン)を作製することも、また重要な研究方法であった(A.B. Shanafelt et al. (1998) 95(16):9454-9458)。
このように、サイトカイン分子は、多数が疾患の進行に役割を果たし得る多様な生理学的機能において役割を果たすことが示されている。サイトカイン分子の活性を変更することは疾患の表現型を変えるための手段であり、新規なサイトカイン分子が上記で特定した疾患及び他の症状の治療でも役割を果たし得る且つ前記治療の開発においても有用であり得ることから、新規なサイトカイン分子を同定すること自体、極めて適切である。
【0007】
(インターフェロンに関する導入部)
インターフェロンは、4−へリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーである。インターフェロンは、その構造と酸性媒体中での安定性とに応じて、I型又はII型に分類される。I型インターフェロンは、その配列に基づいて以下の5つの群に分類される:インターフェロン-アルファ(IFN-α)、インターフェロン‐ベータ(IFN-β)、インターフェロン‐オメガ(IFN-θ)及びインターフェロン‐タウ(IFN-τ)。これまでに同定されている唯一のII型インターフェロンはインターフェロン‐ガンマ(IFN-γ)であって、活性化T細胞及びNK細胞によって産生される。
I型インターフェロンの遺伝子は、ヒトの第9染色体上にクラスターを形成している。ヒトでは、少なくとも14のIFN-α非対立遺伝子が存在しており、天然に存在するIFN-αタンパク質の数はIFN-α遺伝子の対立形質によってさらに増加すると推定されている(Jussain et al, 1996, J. Interferon Cytokine Res. 16:853-9)。
インターフェロンは、細胞表面の特異的な膜レセプターと結合することによってその細胞活性を発揮して、複雑な一連の細胞内事象を開始させる。I型インターフェロンは、抗ウイルス作用、免疫調節作用及び抗増殖作用を含む多種多様な生物学的応答を誘導し、これら作用の結果として、多様な疾患及び症状の治療に有効であることが判明している。
【0008】
インターフェロンは強力な抗ウイルス物質であり、α‐インターフェロンは特に、ヒトパピローマウイルス感染、B型及びC型肝炎感染を含む多様なウイルス感染の治療に有用であることが見出されている(Jaeckel et al, 2001, 345(2):1452-7)。I型インターフェロンはまた細胞増殖も阻害し、α‐インターフェロンは長年、以下を含む多様な悪性腫瘍の治療に臨床的に用いられている:毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性リンパ腫、軽度リンパ腫、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病、腎細胞癌及び卵巣癌。さらに、I型インターフェロンは自己免疫疾患の治療に有用であって、インターフェロン‐βは多発性硬化症の治療について承認されている。
インターフェロン‐τは、反芻動物の受胎産物ホモジェネートで最初に同定されたが、それ以来ヒトで同定されている(WO96/35789参照)。インターフェロン‐τは、他のI型インターフェロンと類似する多くの活性を示すが、いくつかの異なる作用も示す。特にインターフェロン‐τは、妊娠の成立及び維持を促進する抗黄体融解作用を有する(Martal et al, Reprod Fertil Dev, 1997, 9(3):355-80)。さらに、ウイルスによるインターフェロン‐α及びβの誘導が一過性(数時間持続)である一方、ウイルスによるインターフェロン‐τ発現の誘導は数日間持続でき、HIV-1に対する抗レトロウイルス作用を有することが見出されている(Dereuddre-Bosquet et al, J. Acquir. Immune Defic Syndr. Hum. Retrovirol, 1996, 11(3):241-6)。
【0009】
II型インターフェロン(インターフェロンγを含む)は、次に挙げるような病状及び疾患の治療、予防及び/又は診断に有用であり得る:免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及び他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症などの真菌病、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)。
要約すると、4−へリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーである分泌タンパク質は、多様な生理学的機能において役割を果たすことが示されており、前記機能の多くが疾患過程において役割を果たし得る。特にインターフェロンは、種々の生理学的過程において重要な役割を果たすことが見出されており、その結果として、広範囲の疾患の治療において有用であることが判明している。しかしながら、疾患(上述する疾患を含む)の治療及び予防のための新薬の開発を可能にする新規なインターフェロンを同定する必要性は、依然として存在している。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、INSP037タンパク質が4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるという発見に基づいている。
本発明の第一の特徴の一態様では、次のようなポリペプチドが提供される:
(i) 配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、若しくは(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)の断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)若しくは(ii)の機能的等価物である、ポリペプチド。
本発明の第一の特徴の第二態様によると、次のようなポリペプチドが提供される:
(i) 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、若しくは(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)の断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)若しくは(ii)の機能的等価物である、ポリペプチド。
【0011】
配列番号2に記載の配列を有するポリペプチドは、これ以降では“INSP037ポリペプチド”と称される。INSP037は、また本明細書中でIPAAA44548とも呼ばれている。
好ましくは、本発明の第一の特徴のINSP037ポリペプチドは、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として機能する。当業者であれば、“4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質”という用語を理解するだろうし、また本技術分野で既知の種々のアッセイの一つを用いて、ポリペプチドがこの部類のメンバーとして機能するかどうかを容易に確かめることができるであろう。4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドの存在は、タンパク質の配列及び二次構造の解析によって同定することができる。インターフェロン活性は、しばしば、抗ウイルス活性又は癌細胞の抗増殖活性として測定される。そのアッセイの例は、文献に見出すことができる(Schiller J.H., J Interferon Res 1986; 6(6):615-25, Gibson, U.E. et al., J Immunol Methods (1989) 20; 125(1-2):105-13 and Chang et al., J. Biol. Chem. (2002) 277(9):7118-7126)。
【0012】
第二の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする精製核酸分子を提供する。
好ましくは、前記精製核酸分子が、配列番号1に記載の核酸配列(INSP037ポリペプチドをコードしている)を含む。好ましくは、前記精製核酸分子が、配列番号1に記載の核酸配列(INSP037ポリペプチドをコードしている)から成るか、又はその配列の余剰的(redundant)等価物若しくは断片である。
第三の特徴では、高ストリンジェンシー条件下で本発明の第二の特徴の核酸分子とハイブリダイズする精製核酸分子を提供する。
第四の特徴では、本発明は、本発明の第二又は第三の特徴の核酸分子を含むベクター、例えば発現ベクターを提供する。本発明の好ましいベクターには、pDEST14-IPAAA44548-6HIS(図10参照)、PCRII-TOPO-IPAAA44548(図11参照)、pDEST14-IPAAA44548-6HIS(図12参照)及びpEAK12D-IPAAA44548-6His(図13参照)が含まれる。
第五の特徴では、本発明は、本発明の第四の特徴のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0013】
第六の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと特異的に結合し、且つ好ましくは前記ポリペプチドの分泌タンパク質活性を抑制し、より好ましくは4−へリックスバンドルサイトカイン活性を抑制し、さらに好ましくはインターフェロンγ様活性を抑制するリガンドを提供する。
第七の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節するために有効な化合物を提供する。
本発明の第七の特徴の化合物は、前記ポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性を増加させ得るか(アゴニスト作用)、又は低下させ得る(アンタゴニスト作用)。
重要なことには、INSP037エクソンポリペプチド及びINSP037ポリペプチドの機能を同定することによって、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定し得るスクリーニング方法のデザインが可能になる。本発明の第六及び第七の特徴のリガンド及び化合物は、そのような方法を用いて同定され得る。これらの方法は、本発明の特徴として含まれる。これらの方法を用いれば、臨床応用においてin vivoでINSP037活性を改変するのに有益であり得る、例えばモノクローナル抗体などのINSP037の阻害剤又はアンタゴニストをすぐに同定できるであろう。そのような化合物は、INSP037ポリペプチドのIFNγ様活性を打ち消すのにも有用であると思われる。
【0014】
第八の特徴では、本発明は、インターフェロンが関与している疾患の治療又は診断で使用するために、本発明の第一の特徴のポリペプチド、又は本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、又は本発明の第四の特徴のベクター、又は本発明の第五の特徴の宿主細胞、又は本発明の第六の特徴のリガンド、又は本発明の第七の特徴の化合物を提供し、特にはIFNγ様ポリペプチドを提供する。そのような疾患としては、次のものが挙げられるが、これだけに限られない:免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)。
【0015】
本発明のこれら第一、第二、第三、第四、第五、第六又は第七の特徴の一部は、上記疾患の治療用薬物の製造にも用いることができる。
第九の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性のレベルを前記患者由来の組織で評価する工程、及び前記発現レベル又は活性を対照のレベルと比較する工程を含む患者の疾患を診断する方法を提供し、この場合前記対照のレベルと異なるレベルは疾患を示している。前記の方法は、好ましくはin vitroで実施されるであろう。同様な方法は、患者における疾患の治療的処置のモニタリングに使用され得る。この場合、時間の経過にしたがってポリペプチド又は核酸分子の発現レベル若しくは活性のレベルが対照のレベルに向かって変化することは、疾患の緩解を示している。
本発明の第一の特徴のポリペプチドを検出する好ましい方法は、以下の工程を含む:(a)本発明の第六の特徴のリガンド(例えば抗体)と生物学的サンプルとを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
当業者には、本発明の第九の特徴の方法に、例えば短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった種々の異なる方法が存在することは明らかであろう。同様な方法を短期又は長期ベースで用いて、モニターされる疾患の治療を可能にすることができる。本発明はまた、前記疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0016】
好ましくは、本発明の第九の特徴の方法によって診断される疾患は、上述するような、インターフェロンが関与している疾患である。
第十の特徴では、本発明は、4−へリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質としての本発明の第一の特徴のポリペプチドの使用を提供する。INSP037の適切な使用の一つは、充分に確立されている治療法と組合せての、細菌感染、真菌感染又はウイルス感染におけるアジュバントとしての使用である。考えられる他の使用としては、マクロファージを活性化するためのINSP037の使用、並びにMHC分子及び抗原プロセッシング成分の発現を増加させるためのINSP037の使用が挙げられる。本明細書に含まれる実験結果は、INSP037の予測されるINFγ様活性を確かめている。この発見は、本発明のポリペプチドを、抗癌用途などのINFγの既知用途での使用に対する適合性について試験できるという点で(例えば、Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701を参照)、タンパク質それ自体の一連の興味深い治療的用途を開拓している。同様に、in vivoでのINSP037活性の更なる研究又は臨床応用に有益であり得る、INSP037の阻害剤又はアンタゴニスト(例えばモノクローナル抗体など)をすぐに同定できるであろう。
第十一の特徴では、本発明は医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を、医薬として許容できる担体と組合せて含有する。
第十二の特徴では、本発明は、インターフェロンが関与している疾患の診断又は治療のための医薬品の製造で使用するために、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二の若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を提供する。そのような疾患としては、本発明の第八の特徴に関連して上述されるものが挙げられる。
【0017】
第十三の特徴では、本発明は患者の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、本発明の第一の特徴のポリペプチド、本発明の第二若しくは第三の特徴の核酸分子、本発明の第四の特徴のベクター、本発明の第五の特徴の宿主細胞、本発明の第六の特徴のリガンド又は本発明の第七の特徴の化合物を患者に投与することを含む。
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性が、健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に罹患している患者で低下する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、リガンド又は化合物が、アゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現又は前記ポリペプチドの活性が、健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較した場合に罹患している患者で上昇する疾患については、前記患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、リガンド又は化合物がアンタゴニストであるべきである。前記アンタゴニストの例には、アンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド(例えば抗体)が含まれる。
好ましくは、そのような疾患が、インターフェロンが関与している上述のような疾患である。
第十四の特徴では、本発明は、本発明の第一の特徴のポリペプチドを高レベル若しくは低レベルで発現するように、又は全く発現しないように形質転換したトランスジェニック又は遺伝子ノックアウト非ヒト動物を提供する。前記トランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
好ましくは、そのような疾患が、インターフェロンが関与している上述のような疾患である。
【0018】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び方法の要旨は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に個々の態様を説明するためのものであり、前記用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、リコンビナントDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられるであろう。前記技術は当業者の技術範囲内である。
前記のような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989); DNA Cloning, Vol. I and II ( D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154 & 155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds. 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker, eds. 1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I−IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds. 1986)。
【0019】
本明細書において用いる“ポリペプチド”という用語は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合によって互いに結合した2つ又は3つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。前記改変ペプチド結合によるものは、すなわちペプチドイソスターである。この用語は、短鎖(ペプチド及びオリゴペプチド)及び長鎖(タンパク質)の両方を指す。
本発明のポリペプチドは成熟タンパク質の形態を有するものでもよく、またプレ-、プロ-又はプレプロ-タンパク質であってプレ-、プロ-又はプレプロ-部分の切断によって活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生じるタンパク質でもよい。そのようなポリペプチドでは、プレ-、プロ-又はプレプロ-配列がリーダー配列若しくは分泌配列であっても、又は成熟ポリペプチド配列の精製のために用いられる配列であってもよい。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、融合タンパク質の一部分を形成することができる。例えば、1つ又は2つ以上の付加アミノ酸配列を含むことがしばしば有利である。前記付加アミノ酸配列は、分泌若しくはリーダー配列、プロ-配列、精製に役立つ配列、又は例えばリコンビナント形成の間により高いタンパク質安定性を付与する配列を含んでもよい。あるいは、又は前記に加えて、前記成熟ポリペプチドを別の化合物、例えば前記ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えばポリエチレングリコール)と融合させることができる。
【0020】
ポリペプチドは、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセッシング)によって、又は本技術分野で周知の化学的改変技術によって改変された、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。本発明のポリペプチドに一般的に存在する公知の改変には、グリコシル化、脂質付加、硫化、γ-カルボキシル化(例えばグルタミン酸残基の)、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化がある。他の可能な改変には、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有結合付加、ヘム部分の共有結合付加、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合付加、脂質誘導体の共有結合付加、ホスファチジルイノシトールの共有結合付加、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、タンパク質へのトランスファーRNA媒介性アミノ酸付加(例えばアルギニル化)及びユビキチン結合が含まれる。
改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシ末端を含むポリペプチド内のいずれの場所に存在してもよい。実際、共有結合改変によるポリペプチドのアミノ末端若しくはカルボキシ末端又はその両端の閉塞(blockage)は、天然に存在するポリペプチド及び合成ポリペプチドで一般的であり、そのような改変は本発明のポリペプチドにも存在し得る。
【0021】
ポリペプチド内に存在する改変は、多くの場合ポリペプチドが生成される方法の関数であろう。組換えによって生成されるポリペプチドについて、改変の性質及び程度は大部分が、特定の宿主細胞の翻訳後改変能力及び問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在している改変シグナルによって決定されるであろう。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で変動する。
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製することができる。そのようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド(例えば、細胞培養物から精製される)、組換え的に生成されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成的に生成されたポリペプチド、又は前記方法の組合せによって生成されたポリペプチドが含まれる。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP037ポリペプチドと相同なポリペプチドであり得る。本明細書で用いる用語として、2つのポリペプチドは、前記ポリペプチドの一方の配列が他方のポリペプチドの配列に対して充分に高い同一性又は類似性を有する場合、“相同である”と称される。“同一性”とは、アラインメントを施した配列のどの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で同一であることを示す。“類似性”は、アラインメントを施した配列のいずれの特定の場所においても、アミノ酸残基が前記配列間で類似の種類であることを示す。同一性及び類似性の度合いは、容易に計算できる(Computational Molecular Biology, A.M. Lesk ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing. Informatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinje, Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux eds., M. Stockton Press, New York, 1991)。好ましくは、本明細書で言及される同一性比率は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター:the National Center for Biotechnology Information; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されたデフォルトパラメータを用いるBLASTバージョン2.1.3を使用して決定される [Blosum 62 matrix; ギャップオープンペナルティ=11及びギャップ伸長ペナルティ=1]。
【0022】
従って、相同なポリペプチドには、INSP037ポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば前記ポリペプチドが由来した種における対立形質変種又は地理的変種)及び変異体(例えばアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む変異体)が含まれる。前記変異体は、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチドを含んでもよく、さらにそのような置換アミノ酸残基は遺伝コードでコードされたものでもそうでなくてもよい。典型的な前記の置換は、Ala、Val、Leu及びIle間で;SerとThr間で;酸性残基AspとGlu間で;AsnとGln間で;塩基性残基LysとArg間で;又は芳香族残基PheとTyr間で生じる。特に好ましいものは、いくつか(すなわち5から10、1から5、1から3、1から2、又は単に1つ)のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失又は付加された変種である。とりわけ好ましいものは、タンパク質の特性及び活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失である。また、その際とりわけ好ましいものは、保存的置換である。
前記変異体にはまた、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含まれる。
【0023】
典型的には、2つのポリペプチド間で80%を越える同一性が、機能的等価物の指標であると考えられる。好ましくは、本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドは、INSP037ポリペプチド又はそれらの活性な断片と、80%を越える配列同一性の度合いを有する。より好ましいポリペプチドは、それぞれ90%、95%、98%又は99%を越える同一性の度合いを有する。
本発明の第一の特徴の機能的に等価なポリペプチドはまた、構造についてのアラインメントの1つ又は2つ以上の技術を用いて同定されたポリペプチドであってもよい。例えば、バイオペンジウム(Biopendium)検索データベースの作製に用いられる検索ツールの一角を構成するインファーマティカ=ゲノムスレッダー(Inpharmatica Genome Threader)技術を用いて(WO 01/69507として公表されているPCT出願を参照されたい)、INSP037ポリペプチドと比較して低い配列同一性しかもたないが、INSP037ポリペプチド配列との顕著な構造的相同性を共有するために、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質と予測される、現在は機能が未知のポリペプチドを同定することができる。“顕著な構造的相同性”とは、インファーマティカ=ゲノムスレッダーが、2つのタンパク質は10%以上の確実性を有して構造的相同性を共有すると予測することを意味する。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた、INSP037ポリペプチドの断片並びにこれらポリペプチドの機能的等価物の断片を含むが、ただし、これら断片がインターフェロンγ様活性を保持するか又はこれらポリペプチドと共通の抗原決定基を有することを条件とする。
【0024】
本明細書において用いる、“断片”という用語は、INSP037、ポリペプチド又はその機能的等価物の1つのいずれかのアミノ酸配列の一部(全体ではないが)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。前記断片は、前記配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含むべきであり、さらに個々の配列に応じてnは好ましくは7又はそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20又はそれより大きい)。小さな断片は、抗原決定基を構成することができる。
そのような断片は、“独立的存在(free-standing)”(すなわち、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸若しくはポリペプチドの一部に融合されているのでもない)であってもよく、又はより大きなポリペプチドに含まれて、前記ポリペプチドの一部分又は領域を形成してもよい。より大きなポリペプチドの内部に含まれている場合、本発明の断片は、最も好ましくは連続するただ1つの領域を形成する。例えばある種の好ましい態様は、前記断片のアミノ末端に融合したプレ−及び/又はプロ−ポリペプチド領域を有する断片、及び/又は前記断片のカルボキシ末端に融合した付加的領域を有する断片に関する。しかしながら、いくつかの断片がただ1つのより大きなポリペプチドの内部に含まれていてもよい。
本発明のポリペプチド又はその免疫原性断片(少なくとも1つの抗原決定基を含む)を用いて、例えばポリクローナル又はモノクローナル抗体といった、前記ポリペプチドに免疫特異的なリガンドを作製することができる。そのような抗体を用いて、本発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離若しくは同定するか、又はアフィニティークロマトグラフィーで本発明のポリペプチドを精製することができる。前記抗体はまた、当業者には明らかなように、他の用途のうち診断的又は治療的補助としても用いることができる。
【0025】
“免疫特異的”という用語は、前記抗体が、従来技術における他の近縁ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して実質的に強い親和性を有することを意味する。本明細書で用いる“抗体”という用語は、完全な分子だけでなく問題の抗原決定基と結合することができるその断片、例えばFab、F(ab’)2及びFvも指す。従って、そのような抗体は、本発明の第一の特徴のポリペプチドと結合する。
“実質的に強い親和性”とは、既知の細胞表面受容体に対する親和性と比較して、本発明のポリペプチドに対する親和性の測定可能な増加が存在することを意味する。
好ましくは、本発明のポリペプチドに対する親和性が、既知のIFNγ様ポリペプチドに対する親和性より、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、106倍も又はそれ以上に強い。
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択される哺乳類(例えばマウス、ウサギ、ヤギ又はウマ)が、本発明の第一の特徴のポリペプチドで免疫され得る。動物を免疫するために用いられるポリペプチドは、リコンビナントDNA技術によって誘導されてもよく、又は化学的に合成されてもよい。所望する場合には、前記ポリペプチドを担体タンパク質と結合させることができる。前記ポリペプチドと化学的に結合させることができる一般的に用いられ得る担体には、ウシ血清アルブミン、チログロブリン及びキーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。次に、前記担体結合ポリペプチドが用いられて、動物が免疫される。免疫した動物から血清が採集され、既知の方法(例えばイムノアフィニティークロマトグラフィー)にしたがって処理される。
【0026】
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対するモノクローナル抗体もまた、当業者は容易に生成できる。ハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を作製する一般的な方法論は、周知である(例えば以下を参照されたい:G. Kohler & C. Milstein, Nature 256:495−497(1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72(1983); Cole et al., 77−96 “Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”, Alan R. Liss, Inc. (1985))。
本発明の第一の特徴のポリペプチドに対して生成されたモノクローナル抗体のパネル(panels)を種々の特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は、それらを作らせた個々のポリペプチドの精製に特に有用である。あるいは、対象のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を、例えば当技術分野で知られるPCR技術によってハイブリドーマから単離し、さらにクローニングし適切なベクターで発現させることができる。
また、非ヒト可変領域がヒト定常領域と結合又は融合されているキメラ抗体(例えば以下を参照されたい:Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439(1987))も有用であり得る。
【0027】
抗体は、例えばヒト化により、改変して個体での免疫原性を減少させることができる(例えば以下を参照されたい:Jones et al., Nature,321:522(1986); Verhoeyen et al., Science, 239:1534(1988); Kabat et al., J. Immunol., 147:1709(1991); Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029(1989); Gorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:34181(1991); Hodgson et al., Bio/Technology 9:421(1991))。本明細書で用いられる“ヒト化抗体”という用語は、非ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン中のCDRアミノ酸及び選択した他のアミノ酸がヒト抗体の等価なアミノ酸に代えて置換されている抗体分子を指す。従って、ヒト化抗体はヒトの抗体とよく似ているが、ドナー抗体の結合能力を有する。
また別の選択肢では、前記抗体が、2つの異なる抗原結合ドメインを有し、その各ドメインは異なるエピトープに向けられている“二重特異性”抗体であってもよい。
ファージディスプレー技術を用いて、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体をコードしている遺伝子を、関連する抗体の保有についてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅V-遺伝子レパートリー、又は未感作ライブラリーのいずれかから選択することができる(J. McCafferty et al., (1990) Nature 348:552−554; J. Marks et al., (1992) Biotechnology 10:779−783)。前記抗体の親和性は、鎖のシャッフリングによって改善することもできる(T. Clackson et al., (1991) Nature 352:624−628)。
上記の技術によって作製された抗体は、ポリクローナルであれモノクローナルであれ、免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で試薬として用いることができるという点で、更なる有用性を有する。これらの用途では、これら抗体を、分析的に検出可能な試薬(例えば放射性同位元素、蛍光分子又は酵素)で標識することができる。
【0028】
本発明の第二及び第三の特徴の好ましい核酸分子は、配列番号2に記載のポリペプチド配列及び機能的に等価なポリペプチドをコードするものである。これら核酸分子は、本明細書に記載した方法及び用途で用いることができる。本発明の核酸分子は、好ましくは本明細書で開示される配列に由来する少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、この場合、前記個々の配列に応じてnは10又はそれより大きい(例えば12、14、15、18、20、25、30、35、40又はそれより大きい)。
本発明の核酸分子は、上記で述べた核酸分子に相補的な配列も含む(例えばアンチセンス又はプローブとしての目的のために)。
本発明の核酸分子は、RNA(例えばmRNA)、又はDNA(例えばcDNA、合成DNA又はゲノムDNAを含む)の形態であってもよい。そのような核酸分子は、クローニングによって、化学合成によって、又はそれらの組合せによって得ることができる。前記核酸分子は、固相ホスホルアミダイト化学合成のような技術を用いる化学合成によって、ゲノム又はcDNAライブラリーから、又は生物体からの分離によって調製することができる。RNA分子は、一般的にはDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって作製され得る。
核酸分子は、二本鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)でも、非コード鎖(アンチセンス鎖とも称される)でもよい。
“核酸分子”という用語には、DNA及びRNAのアナログ(例えば改変骨格を含むもの)、並びにペプチド核酸(PNA)も含まれる。本明細書で用いられる“PNA”という用語は、アンチセンス分子又は抗遺伝子(anti-gene)作用因子を指し、長さが少なくとも5ヌクレオチドであってアミノ酸残基のペプチド骨格に結合されたオリゴヌクレオチドを含む。前記ペプチド骨格は好ましくはリジンで終わり、前記末端リジンは当該組成物に可溶性を付与する。PNAは、PEG化(pegylated)されて細胞内での寿命が延長されてもよい{細胞内では、PNAは優先的に相補性一本鎖DNA及びRNAと結合して転写物の伸長を停止させる(P.E. Nielsen et al. (1993) Anticancer Drug Des. 8:53−63)}。
【0029】
配列番号2のポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1に示す核酸分子のコード配列と同一であり得る。これらの分子はまた、遺伝コードの縮退の結果として、配列番号2をコードする配列と異なる配列を有することもある。そのような核酸分子には、それ自体で成熟なポリペプチドのコード配列;成熟ポリペプチドのコード配列及び付加コード配列(例えばリーダー配列又は分泌配列をコードするもの)、例えばプロ-、プレ-又はプレプロ-ポリペプチド配列をコードするもの;前述の付加的コード配列を伴なって、又は伴なわないで、さらに付加的な非コード配列(非コード5’及び3’配列を含む)を伴なう成熟ポリペプチドのコード配列が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記の非コード5’及び3’配列は、例えば転写される非翻訳配列で、転写(終止シグナルを含む)、リボソーム結合及びmRNA安定性において役割を果たすものである。前記核酸分子は、更なる機能性を提供するアミノ酸のような付加アミノ酸をコードする付加配列を含むこともできる。
本発明の第二及び第三の特徴の核酸分子は、本発明の第一の特徴のポリペプチド及び断片の機能的等価物及びそれらの断片もコードし得る。そのような核酸分子は、天然に存在する変種(例えば天然に存在する対立形質変種)であっても、又は前記分子は天然に存在することが知られていない変種であってもよい。前記のような天然に存在しない核酸分子の変種は、突然変異誘発技術(核酸分子、細胞又は生物に対して適用される技術が含まれる)によって達成できる。
【0030】
このような変種の中では、特にヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の核酸分子と異なる変種が挙げられる。置換、欠失又は挿入には、1つ又は2つ以上のヌクレオチドが関与し得る。変種は、コード領域又は非コード領域又はその両方において変化していてもよい。コード領域における変化は、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、欠失又は挿入を生成し得る。
本発明の核酸分子はまた、多様な理由で、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて操作されてもよく、前記方法としては、遺伝子産物(ポリペプチド)のクローニング、プロセッシング及び/又は発現の改変が挙げられる。ランダム断片化によるDNAシャッフリング並びに遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのPCRリアッセンブリーは、ヌクレオチド配列の操作に用いられ得る技術に含まれる。部位特異的突然変異誘発を用いて、新規な制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドンの優先性の変化、スプライシング変種の生成、変異の導入などを行うことができる。
【0031】
本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする核酸分子は、結合核酸分子が融合タンパク質をコードするように、異種配列に連結されてもよい。前記のような結合核酸分子は本発明の第二又は第三の特徴に包含される。例えば、本発明のポリペプチドの活性の阻害物質についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、前記のような結合核酸分子を用いて、市販の抗体により認識され得る融合タンパク質を発現させることは、有用であり得る。融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチド配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を含むように操作し、それによって前記ポリペプチドを異種タンパク質から切り離して精製することができるようにしてもよい。
本発明の核酸分子には、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子と部分的に相補的であり、したがってそのコード核酸分子とハイブリダイズする(ハイブリダイゼーション)アンチセンス分子も含まれる。そのようなアンチセンス分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、当業者にはよく知られるように、本発明のポリペプチドをコードする標的核酸を認識し、その標的核酸と特異的に結合してその転写を妨げるようにデザインすることができる(例えば以下の文献を参照されたい:J.S. Cohen, Trends in Pharm. Sci., 10:435(1989); J. Okano, Neurochem. 56:560(1991); J. O’ Connor, Neurochem. 56:560(1991); Lee et al., Nucleic Acids Res. 6:3073(1979); Cooney et al., Science 241:456(1988); Dervan et al., Science 251:1360(1991))。
【0032】
本明細書で用いられる“ハイブリダイゼーション”という用語は、2つの核酸分子が水素結合によって互いに会合することを指す。典型的には、1つの分子が固相支持体に固定され、他方は溶液中で遊離しているであろう。次に、2つの分子は、水素結合に適した条件下で互いに接触させられ得る。前記結合に影響する因子には以下が含まれる:溶媒の種類及び体積;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;攪拌;液相分子の固相支持体への非特異的結合を妨害する薬剤(デンハルト試薬、又はBLOTTO);分子の濃度;分子の結合速度を増加させる化合物の使用(硫酸デキストラン又はポリエチレングリコール);及びハイブリダイゼーションに続く洗滌条件のストリンジェンシー(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。
完全に相補的な分子と標的分子とのハイブリダイゼーションの阻害は、当業者に知られるハイブリダイゼーションアッセイを用いて調べることができる(例えばSambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。従って、実質的に相同な分子は、文献(G.M. Wahl and S.L. Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:399−407; A.R. Kimmel, 1987, Methods Enzymol. 152:507−511)で教示されるように、完全に相同な分子と標的分子との結合を種々のストリンジェンシー条件下で競合させ阻害するであろう。
“ストリンジェンシー”とは、異なる分子の会合よりも非常に類似した分子の会合に適したハイブリダイゼーション反応の条件を指す。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、以下を含む溶液(50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNA)中で42℃にて一晩インキュベーションし、続いてフィルターを約65℃にて0.1倍のSSC中で洗滌すると定義される。低ストリンジェンシー条件は、35℃にて実施されるハイブリダイゼーション反応を含む(Sambrook et al.(上掲書)を参照されたい)。好ましくは、ハイブリダイゼーションに用いられる条件が高ストリンジェンシー条件である。
【0033】
本発明のこの特徴の好ましい態様は、INSP037ポリペプチド(配列番号2)をコードする核酸分子の全長にわたって少なくとも70%同一である核酸分子、及びそのような核酸分子と実質的に相補的な核酸分子である。好ましくは、本発明のこの特徴の核酸分子は、配列番号1によって生じる核酸分子の全長にわたって少なくとも80%同一の領域又はそれらと相補的な核酸分子を含む。これに関しては、そのような核酸配列の全長にわたって少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%又は99%同一の核酸分子が特に好ましい。この特徴の好ましい態様は、INSP037ポリペプチドと同じ生物学的機能又は活性を実質的に保持するポリペプチドをコードする核酸分子である。
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明の核酸分子を検出する方法を提供する:(a)二重鎖を形成するハイブリダイゼーション条件下で、本発明の核酸プローブを生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)形成された前記の二重鎖を全て検出する工程。
【0034】
本発明に従って利用し得るアッセイに関連して下記でさらに考察するように、上述の核酸分子をRNA、cDNA又はゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして用いて、INSP037ポリペプチドをコードする完全長cDNA及びゲノムクローンを単離し、さらにINSP037ポリペプチドをコードする遺伝子と高い配列類似性を有する相同遺伝子又はオーソログ遺伝子のcDNA又はゲノムクローンを単離することができる。
これに関しては、当技術分野で既知の他の技術のうち、特に以下の技術を利用することができる。これらの技術は、例示として下記で考察される。DNAのシークエンシング及び解析の方法は周知であって、当技術分野では一般的に利用可能であり、本明細書で考察される本発明の態様の多くを実施するために実際に用いることができる。そのような方法では、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、シークエナーゼ(US Biochemical Corp., Cleaveland, OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、又はポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せ(例えば市販(Gibco/BRL, Gaithersburg, MD)のELONGASE増幅システムで見出されるようなもの)のような酵素を利用することができる。好ましくは、シークエンシング過程は、例えばハミルトンマイクロラブ(Hamilton Micro Lab)2200(Hamilton, Reno, NV)、ペルティエサーマルサイクラー(Peltier Thermal Cycler)PTC200(MJ Research, Watertown, MA)、ABIカタリスト並びに373及び377DNAシークエンサー(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化することができる。
【0035】
INSP037ポリペプチドの機能と等価な機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子を単離する方法の1つは、当技術分野で知られている標準的な手法を用い、天然のプローブ又は人工的に設計したプローブによりゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーを探索することである(例えば以下の文献を参照されたい:“Current Protocols in Molecular Biology”, Ausubel et al.(eds). Greene Publishing Association and John Wiley Interscience, New York, 1989, 1992)。特に有用なプローブは、適切なコード遺伝子(配列番号1)に由来する核酸配列に一致するか、又は前記配列と相補的であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、さらに好ましくは少なくとも50の連続する塩基を含むプローブである。前記のようなプローブは、分析的に検出可能な試薬で標識して、前記プローブの識別を容易にすることができる。有用な試薬には、放射性同位元素、蛍光色素、及び検出可能な生成物の形成を触媒し得る酵素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらのプローブを用いて、当業者は、ヒト、哺乳類又は他の動物供給源から対象のタンパク質をコードするゲノムDNA、cDNA又はRNAポリヌクレオチドの相補的なコピーを単離し、近縁配列、例えば前記のファミリー、タイプ及び/又はサブタイプに属するまた別のメンバーについて、前記の供給源をスクリーニングすることができるであろう。
【0036】
多くの場合、単離されるcDNA配列は不完全で、ポリペプチドをコードする領域は短く(通常は5’末端で)切断されているであろう。完全長cDNAを得るために、又は短いcDNAを伸長させるために、いくつかの方法が利用可能である。そのような配列は、部分的なヌクレオチド配列を用い、上流の配列(例えばプロモーター及び調節エレメント)を検出するための当技術分野で公知の種々の方法を用いて伸長させることができる。例えば、使用され得るある方法は、cDNA末端迅速増幅法(RACE;例えば以下を参照されたい:Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988) 85:8998−9002)に基づく。前記技術の最近の改変(例えばマラソン(Marathon)(商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示される)は、より長いcDNAの検索を顕著に単純化している。“制限部位”PCRと称されるわずかに異なる技術では、普遍的プライマーを用いて、既知の遺伝子座に近接する未知の核酸配列が検索される(G. Sarkar (1993) PCR Methods Applic. 2:318−322)。逆PCRも、既知の領域に基づく多様なプライマーを用いて、配列を増幅すること又は伸長することに用いられ得る(T. Triglia et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186)。使用され得る別の方法は捕捉PCRで、この方法は、ヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける既知配列に近接しているDNA断片のPCR増幅を含む(M. Lagerstrom et al. (1991) PCR Methods Applic. 1:111−119)。未知配列を検索するために用いられ得る別の方法は、パーカーの方法である(J.D. Parker et al.(1991) Nucleic Acids Res. 19:3055−3060)。さらに、ゲノムDNAを少しずつ移動して調べるためにPCR、入れ子(nested)プライマー及びプロモーターファインダーTM(PromoterFinderTM)ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)を用いてもよい。この方法ではライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン結合部の発見に有用である。
【0037】
完全長cDNAをスクリーニングする場合、より大きなcDNAを包含するようにサイズ選択されたライブラリーを用いることが好ましい。さらにまた、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという点で、ランダムプライミングした(random−primed)ライブラリーが好ましい。ランダムプライムライブラリーの使用は、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生成できない状況で特に好まれ得る。ゲノムライブラリーは、5’非転写調節領域に配列を伸長させるために有用であり得る。
本発明のある態様では、染色体上の位置特定のために、本発明の核酸分子を用いることができる。この技術では、核酸分子は個々のヒト染色体上の特定の位置に対して特異的に標的化され、個々のヒト染色体上の特定の位置とハイブリダイズさせることができる。本発明の関連配列の染色体上へのマッピングは、遺伝子関連疾患に関する配列の相関性確認において重要な工程である。いったん染色体の正確な位置に配列がマッピングされたら、前記配列の染色体上の物理的な位置を遺伝子地図データと相関させることができる。そのようなデータは、例えば以下で見出すことができる:V. McKusick, Mendelian Inheritance in Man(ジョーンズホプキンス大学、ウェルチ医学図書館を通じてオンラインで利用可能である)。同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係を、次に連鎖解析(物理的に近接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))によって同定する。これにより、ポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検索する研究者に貴重な情報が提供される。いったん疾患又は症候群の位置が遺伝連鎖によって特定のゲノム領域で大まかに限局されたら、前記領域にマッピングされるいずれの配列も、更なる解析のための関連遺伝子又は調節遺伝子となることができる。前記核酸分子はまた、正常な個体、キャリア個体又は罹患個体間で転座、逆位などによる染色体位置上の相違を検出するために用いることができる。
【0038】
本発明の核酸分子はまた、組織分布同定(tissue localisation)のために貴重である。そのような技術は、ポリペプチドをコードするmRNAの検出によって、組織中の前記ポリペプチドの発現パターンの決定を可能にする。これらの技術には、in situハイブリダイゼーション技術及びヌクレオチド増幅技術(例えばPCR)が含まれる。これらの研究から得られる結果は、生物内での前記ポリペプチドの正常な機能を示唆する。さらに、変異遺伝子によってコードされるmRNAの発現パターンと正常mRNA発現パターンとの比較研究によって、変異ポリペプチドの疾患における役割に対する貴重な洞察が提供される。そのような不適切な発現は時間的、位置的又は量的性質を有する場合もある。
遺伝子サイレンシングアプローチを実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir et al. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
上記に述べた遺伝子サイレンシングの有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロッティングによる)、又はTaqManによる方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0039】
本発明のベクターは本発明の核酸分子を含み、クローニングベクターでも発現ベクターでもよい。本発明のベクターで形質転換、トランスフェクト又は形質導入され得る本発明の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。
本発明のポリペプチドは、宿主細胞内に含まれるベクター中の前記ポリペプチドをコードする核酸分子の発現によって、リコンビナント形態で調製することができる。前記のような発現方法は当業者によく知られており、多くは以下の文献でより詳細に記述されている:Sambrook et al.(上掲書)及びFernandez & Hoeffler(1998, eds. “Gene expression systems. Using nature for the art of expression”, Academic Press, San Diego, London, Boston, New York, Sydney, Tokyo, Toronto)。
【0040】
一般的には、要求される宿主でポリペプチドを生成させるために、核酸分子の維持、増殖又は発現に適したいずれの系又はベクターも用いることができる。周知であり日常的である種々の技術のいずれによっても(例えば前掲書(Sambrook et al.)に記載されたようなもの)、適切なヌクレオチド配列を発現系に挿入することができる。一般的には、コード遺伝子は制御エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位(細菌での発現の場合)、及び場合によってオペレーター)の制御下に置かれ、それによって所望のポリペプチドをコードするDNA配列を形質転換宿主細胞でRNAに転写させることができる。
適切な発現系の例には、例えば染色体系、エピソーム系及びウイルス由来系、例えば以下に由来するベクターが含まれる:細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス、又は上記の組合せ、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの(例えばコスミド及びファージミドを含む)。ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドに包含させ発現させるよりも大きいDNA断片を搬送するのに用いることができる。
【0041】
特に適切な発現系には、リコンビナントバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物(例えば細菌);酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系が含まれる。無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドの生成に用いることができる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の宿主細胞への導入は、多くの標準的な実験室マニュアル(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)及び上掲書(Sambrook et al.))に記載された方法によって達成できる。特に適切な方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、擦過ローディング(scrape loading)、弾道導入又は感染が含まれる(以下を参照されたい:Sambrook et al.(1989)上掲書;Ausubel et al.(1991)上掲書;Spector, Goldman & Leinwald,(1998))。真核細胞では、発現系は、その系の要求に応じて一過性(例えば、エピソーム性)又は永続的(染色体組込み)であり得る。
【0042】
コード核酸分子は、所望であれば、例えば翻訳ポリペプチドの小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への分泌のために、シグナルペプチド又はリーダー配列のような制御配列をコードする配列を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。これらのシグナルは前記ポリペプチドにとって内因性であってもよく、又は異種シグナルであってもよい。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングで細菌宿主によって取り除くことができる。
制御配列の他に、宿主細胞の増殖に関連して前記ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することが望ましい場合がある。調節配列の例は、化学的又は物理的刺激(調節化合物の存在を含む)又は多様な温度若しくは代謝条件に応答して遺伝子の発現を増加させたり低下させたりする配列である。調節配列は、ベクターの非翻訳領域、例えばエンハンサー、プロモーター並びに5’及び3’非翻訳領域である。これらは、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写及び翻訳を実行する。そのような調節配列は、その強度及び特異性を変化させることができる。利用されるベクター系及び宿主に依存して、多くの適切な転写及び翻訳エレメント(構成性及び誘発性プロモーターを含む)を用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘発性プロモーター、例えばBluescriptファージミド(Stratagene, La Jolla, CA)又はpSportl(商標)プラスミド(Gibco BRL)などのハイブリッドlacZプロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリン(polyhedrin)プロモーターは、昆虫細胞で用いることができる。植物細胞ゲノムに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えば熱ショック、RUBISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)又は植物ウイルスに由来するプロモーター又はエンハンサー(例えばウイルスプロモーター又はリーダー配列)は、ベクターへクローニングすることができる。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子由来又は哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。配列の多数コピーを含む細胞株の作製が必要な場合、SV40又はEBVをベースとするベクターが、適切な選択マーカーとともに用いられ得る。
【0043】
発現ベクターは、特定の核酸コード配列を適切な調節配列とともにベクター内に配置させることができるように構築される。前記コード配列の調節配列に関する位置及び向きは、前記コード配列が調節配列の“制御”下で転写されるような位置及び向きである(すなわち制御配列にてDNA分子と結合するRNAポリメラーゼは、前記コード配列を転写する)。いくつかの事例では、前記配列を適切な向きで制御配列に付属させることができるように(すなわちリーディングフレームを維持するために)、前記配列を改変する必要があるであろう。
制御配列及び他の調節配列は、ベクターへの挿入の前に核酸コード配列に連結させることができる。あるいは、制御配列及び適切な制限部位を既に含む発現ベクターへ、コード配列を直接クローニングすることができる。
リコンビナントポリペプチドの長期的かつ高収量の生成のためには、安定な発現が好ましい。例えば、対象のポリペプチドを安定に発現する細胞株は、ウイルスの複製起点及び/又は内因性発現エレメント並びに選択マーカー遺伝子を同じ又は別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて形質転換させることができる。ベクターの導入に続き、選択培地に切り替える前に細胞を栄養(enriched)培地で1−2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することで、選択マーカーの存在によって、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖及び回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0044】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は当技術分野で公知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection, ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。そのような細胞株には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ボウズ(Bowes)メラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞及び他の多数の細胞株が挙げられるが、これだけに限られない。
バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料は、特にインビトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA)からキットの形態で(“MaxBac”キット)商業的に入手可能である。そのような技術は一般的に当業者に知られており、文献には完全に記載されている(Summers & Smith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987))。この系での使用に特に適切な宿主細胞には、昆虫細胞、例えばドロソフィラ(Drosophila)S2細胞及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞が含まれる。
当技術分野で公知である多くの植物細胞培養及び植物体(whole plant)遺伝子発現系が存在する。適切な植物細胞遺伝子発現系の例には、米国特許第5,693,506号、5,659,122号及び5,608,143号に記載されるものが含まれる。植物細胞培養における遺伝子発現の更なる例は、文献に記載されている(Zenk (1991) Phytochemistry 30:3861−3863)。
特に、プロトプラストを単離し、これを培養して完全な再生植物を形成することが可能な植物は全て利用することができ、それによって導入遺伝子を含む完全な植物が回収できる。特に、サトウキビ、サトウダイコン、綿花、果実及び他の樹木、マメ類及び野菜の主要な種の全てを含む(ただしこれらに限定されない)全ての植物は、培養細胞又は培養組織から再生させることができる。
【0045】
特に好ましい細菌宿主細胞の例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E. coli)、ストレプトマイセス及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞が含まれる。
真菌での発現に特に適切な宿主細胞の例には、酵母細胞(例えばS.セレビシエ(cerevisiae))及びアスペルギルス細胞が含まれる。
形質転換細胞株の回収に用いることができる多くの選択系は、当技術分野で公知である。そのような例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(M. Wigler et al.(1977) Cell 11:223−32)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(I. Lowy et al.(1980) Cell 22:817−23)の遺伝子が挙げられ、これらはそれぞれtk−又はaprt±細胞で用いることができる。
さらにまた、抗代謝物質耐性、抗生物質耐性又は除草剤耐性を選択基準として用いてもよい。例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)はメトトレキセートに対する耐性を付与し(M. Wigler et al.(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567−70)、nptはアミノグリコシド系ネオマイシン及びG−418に対する耐性を付与し(F. Colbere−Garapin et al.(1981) J. Mol. Biol. 150:1−14)、さらにals又はpatはそれぞれクロロスルフロン(chlorsulfuron)及びホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。さらに別の選択可能な遺伝子が報告されており、それらの例は当業者には明白であろう。
【0046】
マーカー遺伝子の発現の有無は対象の遺伝子も存在することを示唆するが、対象の遺伝子の存在及び発現を確認する必要があり得る。例えば、関連配列がマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、マーカー遺伝子機能が存在しないことによって、適切な配列を含む形質転換細胞を識別することができる。あるいは、マーカー遺伝子は、ただ1つのプロモーターの制御下に、本発明のポリペプチドをコードする配列とともに直列に配置することができる。通常、誘発又は選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、直列遺伝子の発現も示している。
あるいは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に知られている多様な手法で同定することができる。前記手法には、DNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーション及びタンパク質バイオアッセイ、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアッセイ技術(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射性イムノアッセイ(RIA))が含まれ(ただしこれらに限定されない)、核酸又はタンパク質の検出及び/又は定量のためにメンブレン、溶液又はチップをベースとする技術が含まれる(例えば以下を参照されたい:R. Hampton et al.(1990) Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul, MN;及びD.E. Maddox et al.(1983) J. Exp. Med. 158:1211−1216)。
【0047】
多様な標識及び結合技術が当業者に知られており、種々の核酸及びアミノ酸アッセイで用いることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に近縁な配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプローブの作製手段には、標識したポリヌクレオチドを用いるオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識又はPCR増幅が含まれる。あるいは、本発明のポリペプチドをコードする配列をベクターにクローニングしてmRNAプローブを作製することができる。そのようなベクターは当技術分野で公知であって、商業的に入手可能であり、適切なRNAポリメラーゼ(例えばT7、T3又はSP6)及び標識ヌクレオチドを添加することによりin vitroでRNAプローブを合成することに用いられ得る。これらの手法は、商業的に入手可能な種々のキット(Pharmacia & Upjohn (Kalamazoo, MI); Promega (Madison, WI); U.S. Biochemical Corp., (Cleaveland, OH))を用いて実施することができる。
検出を容易にするために用いられ得る適切なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素及び蛍光、化学発光又は色素生産性物質、基質、コファクター、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0048】
本発明の核酸分子は、トランスジェニック動物(特にげっ歯類動物)の作製にも用いることができる。そのようなトランスジェニック動物は、本発明の別の特徴を構成する。そのような作製は、体細胞の改変によって局部的に、又は遺伝性改変を導入する生殖細胞系列療法によって実施することができる。前記のようなトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドのモジュレーターとして有効な薬剤分子のための動物モデルを作製するために特に有用であり得る。
ポリペプチドは、周知の方法によってリコンビナント細胞培養物から回収し精製することができる。前記周知の方法には、硫安又はエタノール沈澱、酸性抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸化セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが含まれる。高性能液体クロマトグラフィーは、精製に特に有用である。単離及び精製の間にポリペプチドが変性した場合には、タンパク質のリフォールディングのためによく知られている技術を用いて活性な高次構造を再生することができる。
【0049】
所望の場合には、可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を連結させることにより特殊化したベクター構築物も、タンパク質の精製を容易にするために用いることができる。そのような精製促進ドメインの例には、金属キレートペプチド(例えば固定化金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, WA)で用いられるドメイン)が含まれる。切断可能なリンカー配列(例えばXA因子又はエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CA)に特異的なもの)を精製ドメインと本発明のポリペプチドとの間に包含させて、精製を容易にすることに用いてもよい。そのような発現ベクターの1つは、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位に先行するいくつかのヒスチジン残基と融合させた本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、IMAC(固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;J. Porath et al.(1992) Prot. Exp. Purif. 3:263−281)により精製を容易にし、一方、チオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについての考察は以下で提供される:D.J. Kroll et al.(1993) DNA Cell Biol. 12:441−453)。
【0050】
スクリーニングアッセイで使用するためにポリペプチドを発現させる場合、一般的には、前記ポリペプチドを発現する宿主細胞の培地中に前記ポリペプチドが分泌されることが好ましい。この場合、本発明のポリペプチドは、スクリーニングアッセイでの使用に先立って、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィーなどの標準的なタンパク質精製技術を用いて、収集することもできる。タンパク質精製の適切な方法の例は、本明細書の実施例において提供される。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、ポリペプチドを回収する前に、先ず初めに細胞を溶解させねばならない。
あるいは、本発明のポリペプチドは、好ましくは細胞表面融合タンパク質として発現されてもよい。この場合、スクリーニングアッセイでの使用に先立って、宿主細胞を、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)又はイムノアフィニティー技術などの技術を用いて、収集することができる。
本発明のポリペプチドを用いて、種々の薬剤スクリーニング技術のいずれかで化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は、本発明のポリペプチドの遺伝子発現レベル又は活性レベルを活性化させる(アゴニスト作用)か、又は阻害する(アンタゴニスト作用)ことができ、本発明のさらなる特徴を形成し得る。好ましい化合物は、本発明の第一の特徴のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現を変化させることに有効であるか、又は本発明の第一の特徴のポリペプチドの活性を調節することに有効である。
アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー又は天然物混合物から単離することができる。これらのアゴニスト又はアンタゴニストは、天然又は改変された基質、リガンド、酵素、レセプター、若しくは構造的若しくは機能的模倣物質であってもよい。前記のようなスクリーニング技術の適切な概論については、以下を参照されたい:Coligan et al.(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5。
【0051】
良好なアンタゴニストである可能性が高い化合物は、本発明のポリペプチドと結合し、結合しているときに前記ポリペプチドの生物学的作用を誘発しない分子である。強力なアンタゴニストには、本発明のポリペプチドと結合し、それによって本発明のポリペプチドの活性を阻害又は消滅させる小型有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。そのようなやり方で、前記ポリペプチドと正常な細胞の結合分子との結合が阻害され、その結果前記ポリペプチドの正常な生物学的活性が阻害され得る。
このようなスクリーニング技術で用いられる本発明のポリペプチドは、溶液中で遊離していても、固相支持体に固定されていても、細胞表面に保持されていても、又は細胞内に位置していてもよい。一般に、このようなスクリーニングの方法は、前記のポリペプチドを発現している適切な細胞又は細胞膜を用いることを含み、前記細胞又は細胞膜をテスト化合物と接触させて、結合又は機能的応答の刺激若しくは阻害を観察する。続いて前記テスト化合物と接触させた細胞の機能的応答を、前記テスト化合物と接触させなかった対照細胞と比較する。このようなアッセイによって、前記ポリペプチドの活性化によって生じるシグナルをテスト化合物がもたらすか否かを、適切な検出系を用いて評価することができる。活性化の阻害剤は、一般的には既知のアゴニストの存在下でアッセイを行われ、テスト化合物の存在下でのアゴニストによる活性化の影響が観察される。
【0052】
本発明のIFNγ様ポリペプチドのリガンドを同定する好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)推定上の結合パートナーに対する本発明のポリペプチドの結合に応答して(又は本発明のポリペプチドの結合に応答して検出可能なシグナルを提供し得る第二の成分に関連する)検出可能なシグナルを提供し得る、本発明のIFN様ポリペプチドの推定上の結合パートナーを細胞表面に発現している細胞を、推定上の結合パートナーに対する結合を可能にする条件下で、スクリーニング対象の本発明のポリペプチドと接触させる工程;及び、
(b) 本発明のポリペプチドと推定上の結合パートナーとの相互作用から生じるシグナルのレベルを測定することによって、本発明のポリペプチドが推定上の結合パートナーに結合して、その推定上の結合パートナーを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
本発明のIFNγ様ポリペプチドのリガンドを同定する更に好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a) 推定上の結合パートナーに対する本発明のポリペプチドの結合に応答して(又は本発明のポリペプチドの結合に応答して検出可能なシグナルを提供し得る第二の成分に関連する)検出可能なシグナルを提供し得る、本発明のIFNγ様ポリペプチドの推定上の結合パートナーを細胞表面に発現している細胞を、推定上の結合パートナーに対する結合を可能にする条件下で、本発明のポリペプチドと接触させる工程;及び、
(b) 本発明のポリペプチドと推定上の結合パートナーとの相互作用から生じるシグナルのレベルを、本発明のポリペプチドが存在しない場合のシグナルのレベルと比較することによって、本発明のポリペプチドが推定上の結合パートナーに結合して、その推定上の結合パートナーを活性化するか又は阻害するかを決定する工程。
【0053】
さらに好ましい態様では、上述の一般的な方法が、標識した又は標識していないINSP037ポリペプチドの存在下で、アゴニスト又はアンタゴニストの同定を行うことをさらに含み得る。
本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法の別の態様では:ポリペプチドがリガンドに結合することを可能にする条件で、候補化合物の存在下、表面にリガンドを発現している細胞又は前記リガンドを含む細胞膜に対する本発明のポリペプチドの結合の阻害を決定する工程;及び、リガンドに結合したポリペプチドの量を決定する工程を含む。本発明のポリペプチドの結合を低下させ得る化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。本発明のポリペプチドは標識されているのが好ましい。
より詳細には、アゴニスト化合物又はアンタゴニスト化合物をスクリーニングする方法は、以下の工程を含む:
(a) 本発明の標識ポリペプチドと、本発明のリガンドを細胞表面上に発現している細胞まるごと又は本発明のリガンドを含む細胞膜をインキュベートする工程;
(b) 細胞丸ごと又は細胞膜に結合している標識ポリペプチドの量を測定する工程;
(c) 工程(a)の標識ポリペプチドと細胞丸ごと又は細胞膜との混合物に候補化合物を添加して、その混合物を平衡状態に到達させる工程;
(d) 工程(c)の後で細胞丸ごと又は細胞膜に結合している標識ポリペプチドの量を測定する工程;及び、
(e) 工程(b)で結合している標識ポリペプチドと工程(d)で結合している標識ポリペプチドとの差を比較する工程、
を含み、工程(d)での結合を低下させる化合物は、アゴニスト又はアンタゴニストであると考えられる。
【0054】
前記ポリペプチドは、上記のアッセイにおいて用量依存的な様式で多様な生理学的及び病理学的プロセスを調節することが判明するであろう。従って、本発明の“機能的等価物”には、上記アッセイにおいて用量依存的な様式で同じ調節的活性のいずれかを示すポリペプチドが含まれる。用量依存的活性の程度は本発明のポリペプチドのそれと同一である必要はないが、好ましくは前記“機能的等価物”は、所定の活性アッセイにおいて本発明のポリペプチドと比較して実質的に類似の用量依存性を示すであろう。
あるいは、単純な結合アッセイを用いてもよい。この場合、テスト化合物のポリペプチド保持表面への付着が、直接的又は間接的にテスト化合物と結合させた標識手段によって検出されるか、又は標識競合物質との競合を含むアッセイで検出される。別の態様では、競合薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この場合、ポリペプチドと特異的に結合することができる中和抗体が、結合についてテスト化合物と競合する。このようにして、前記抗体を用いて、前記ポリペプチドに対し特異的な結合親和性を保有する一切のテスト化合物の存在を検出することができる。
【0055】
前記ポリペプチドをコードするmRNAの細胞内産生に対する添加テスト化合物の影響を検出するアッセイをデザインすることもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナル又はポリクローナル抗体を用いてポリペプチドの分泌レベル又は細胞結合レベルを測定するELISAを構築することができ、前記ELISAを用いて、適切に操作された細胞又は組織からのポリペプチド生成を阻害又は増強し得る化合物について検索することができる。続いて、前記ポリペプチドと被検化合物との結合複合体の形成を測定することができる。
また本発明の用語の範囲内のアッセイ方法は、過剰発現アッセイ又は除去(ablation)アッセイで本発明の遺伝子及びポリペプチドの使用を必要とするものも含む。前記のアッセイは、これら遺伝子/ポリペプチドの細胞内レベルの操作及びこの操作事象による前記被操作細胞の生理機能に対する影響の評価を含む。例えばそのような実験によって、特定の遺伝子/ポリペプチドが関与するシグナル伝達経路及び代謝経路の詳細が明らかにされ、本研究対象のポリペプチドが相互作用するポリペプチドのアイデンティティーに関する情報がもたらされ、さらに関連遺伝子及びタンパク質を調節する方法についての手がかりが提供される。
【0056】
使用され得る別の薬剤スクリーニング技術は、対象のポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の高速大量処理スクリーニングを提供する(国際特許出願WO84/03564を参照されたい)。前記方法では、多数の異なる小型のテスト化合物が固相支持体上で合成され、次に本発明のポリペプチドと反応させられ洗浄され得る。ポリペプチドを固定する方法の1つは、非中和抗体を使用することである。続いて、当技術分野で周知の方法を用いて、結合ポリペプチドを検出することができる。精製ポリペプチドはまた、前述の薬剤スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接被覆させることができる。
当技術分野で公知の標準的なレセプター結合技術により膜結合レセプター又は可溶性レセプターを同定するのに、本発明のポリペプチドが用いられ得る。前記標準的な技術は、例えばリガンド結合アッセイ及び架橋アッセイであり、そのようなアッセイでは、ポリペプチドが放射性同位体で標識されているか、化学的に改変されているか、又はその検出若しくは精製を容易にするペプチド配列と融合されており、推定上のレセプター供給源(例えば細胞の組成物、細胞膜、細胞上清、組織抽出物又は体液)とインキュベートされる。結合の有効性は、生物物理的技術、例えば表面プラズモン共鳴(Biacore AB, Uppsala, Swedenにより供給されている)及び分光法を用いて測定することができる。結合アッセイは、レセプターの精製及びクローニングのために用いることができるが、ポリペプチドとそのレセプターとの結合に競合する前記ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定するためにも用いることができる。スクリーニングアッセイを実施する標準的方法は、当技術分野ではよく理解されている。
【0057】
本発明はまた、上記で述べるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質、酵素を同定する方法に有用なスクリーニングキットを含む。
本発明は、上記アゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、レセプター、基質及び酵素、並びに上記で述べる方法によって発見され、本発明のポリペプチドの活性又は抗原性を調節する他の化合物を含む。
本発明はまた、本発明のポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物を適切な医薬担体と組合せて含む医薬組成物を提供する。これらの組成物は、下記で詳細に説明するように、治療用若しくは診断用試薬として、ワクチンとして、又は他の免疫原性組成物として適切であり得る。
本明細書で用いられる専門用語にしたがえば、ポリペプチド、核酸、リガンド又は化合物{X}を含む組成物は、組成物中のX+Yの合計の少なくとも85質量%がXである場合に不純物(本明細書中ではY)を“実質的に含まない”。好ましくは、Xが組成物中のX+Yの合計の少なくとも約90質量%、より好ましくは少なくとも約95質量%、98質量%又は99質量%を構成する。
【0058】
本医薬組成物は、好ましくは治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物を含むべきである。本明細書で用いられる“治療的に有効な量”という用語は、標的疾患又は症状を治療、緩和若しくは予防するために、又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すために必要な治療薬剤の量を指す。いずれの化合物についても、治療的に有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイ(例えば新生物細胞培養アッセイ)又は動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ又はブタ)のいずれかで見積もることができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路の決定にも用いることができる。次にそのような情報を用いて、ヒトで有用な投与用量及び投与経路を決定することができる。
ヒト対象者に対する正確な有効量は、疾患状態の重篤度、対象者の全身の健康状態、対象者の年齢、体重及び性別、食事、投与時間及び投与回数、併用薬剤、反応感受性及び治療に対する許容性/応答性に依存するであろう。この量は、日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般には、有効用量は、0.01mg/kgから50mg/kg、好ましくは0.05mg/kgから10mg/kgであろう。本組成物は、患者に個別に投与されてもよく、又は他の薬剤、医薬品又はホルモンと一緒に投与されてもよい。
【0059】
医薬組成物はまた、治療薬の投与のために医薬的に許容できる担体を含むことができる。そのような担体には、抗体及び他のポリペプチド、遺伝子並びに他の治療薬剤(例えばリポソーム)が含まれるが、ただし担体がそれ自体で前記組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘発せず、かつ不都合な毒性をもたらすことなく投与され得ることを条件とする。適切な担体は、大型でゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子であり得る。
医薬組成物に、医薬的に許容できる塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような);及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような)を用いることができる。医薬的に許容できる担体についての綿密な考察は以下のテキストで入手可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)。
治療用組成物中の医薬的に許容できる担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールを含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などのような助剤が、前記組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、患者が摂取できるように、前記医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
【0060】
いったん製剤化されたら、本発明の組成物を直接対象者に投与することができる。治療される対象者は動物で、特にヒト対象者が治療され得る。
本発明で用いられる医薬組成物は、多数の経路(経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、心室内、経皮的アプリケーション(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸的手段が挙げられるが、ただしこれらに限定されない)によって投与できる。遺伝子銃又はハイポスプレーもまた、本発明の医薬組成物の投与に用いることができる。典型的には、本治療用組成物は、注射用物質(液体溶液又は懸濁剤のいずれか)として調製できる。注射に先立ち液体ビヒクルで溶液又は懸濁液とするのに適する固体を調製することもできる。
本組成物の直接的デリバリーは一般に、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内に注射することによって達成されるか、又は組織の間隙腔に送達されるであろう。前記組成物はまた、病巣に投与してもよい。投薬治療は、単回投与スケジュールでも複数回投与スケジュールでもよい。
本発明のポリペプチドの活性が特定の疾患状態において過剰である場合には、いくつかのアプローチが利用可能である。あるアプローチは、医薬的に許容できる担体とともに上記のような阻害化合物(アンタゴニスト)を、前記ポリペプチドの機能を阻害するのに有効な量で対象者に投与することを含む。前記ポリペプチドの機能の阻害は、例えばリガンド、基質、酵素、レセプターの結合を遮断することによって、又は第二のシグナルを阻害することによって成され、それによって異常な症状が緩和される。好ましくは、前記アンタゴニストが抗体である。最も好ましくは、そのような抗体が、先に記載するような免疫原性を最少にするキメラ抗体及び/又はヒト化抗体である。
【0061】
別のアプローチでは、リガンド、基質、酵素、レセプターに対する結合親和性を保持する該ポリペプチドの可溶形を投与することができる。典型的には、前記ポリペプチドは、関連部分を保持する断片の形態で投与することができる。
また別のアプローチでは、前記ポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、内部で生成される又は別々に投与されるアンチセンス核酸分子(上述のような)の使用といった発現遮断技術を用いて、阻害することができる。遺伝子発現の改変は、ポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、5’領域又は調節領域(シグナル配列、プロモーター、エンハンサー及びイントロン)に対して相補的な配列又はアンチセンス分子(DNA、RNA又はPNA)をデザインすることによって達成できる。同様に、阻害は“三重らせん”塩基対方法論を用いて達成することができる。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために二重らせんが充分に開く能力を阻害することから有用である。三重らせんDNAを用いる近年の治療上の進歩は、文献に記載されている(J.E. Gee et al.(1994) In:B.E. Huber & B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY)。相補的配列又はアンチセンス分子をデザインし、リボソームに対する結合を妨げて転写を妨害することによってmRNAの翻訳を遮断することもできる。そのようなオリゴヌクレオチドは投与されてもよいし、またin vivoでの発現によりin situで生成させてもよい。
【0062】
さらに、本発明のポリペプチドの発現は、そのコードmRNA配列に特異的なリボザイムを用いることによって妨げることができる。リボザイムは、天然又は合成であり得る触媒的活性型のRNAである(例えば以下を参照されたい:N. Usman et al., Curr. Opin. Struct. Biol.(1996) 6(4):527−533)。合成リボザイムをデザインして、選択した位置でmRNAを特異的に切断し、それによってmRNAの機能的ポリペプチドへの翻訳を妨げることができる。リボザイムは、通常RNA分子で見出されるような、天然のリボースリン酸骨格及び天然の塩基を用いて合成され得る。或いは、リボザイムは、非天然の骨格(例えば2’-O-メチルRNA)を用いて合成されて、リボヌクレアーゼ分解から保護されてもよく、また改変塩基を含んでいてもよい。
RNA分子は、細胞内安定性及び半減期を増加させるように改変されてもよい。可能な改変には、RNA分子の5’及び/又は3’末端へのフランキング配列の付加、又は分子の骨格内でホスホジエステル結合に代わるホスホロチオエート又は2’-O-メチルの使用が含まれるが、ただしこれらに限られない。この概念は、PNAの生成にも受け継がれ、内因性エンドヌクレアーゼによって同様に容易には認識されないイノシン、ケオシン(gueosine)及びブトシン(butosine)のような非慣用塩基、並びにアセチル-、メチル-、チオ-及び同様な改変形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン及びウリジンの包含によってPNA分子の全てに広げられ得る。
【0063】
本発明のポリペプチド及びその活性の過小発現に関連する異常な状態を治療するためには、いくつかのアプローチも利用可能である。あるアプローチは、前記ポリペプチドを活性化する化合物(すなわち上記で述べたアゴニスト)の治療的に有効な量を対象者に投与し、異常な状態を緩和することを含む。あるいは、本ポリペプチドの治療量を適切な医薬担体と組合せて投与し、関連性のあるポリペプチド生理学的バランスを回復させることができる。
遺伝子治療を用い、対象者の関連細胞によって本ポリペプチドの内因性産生を行わせることができる。遺伝子治療は、欠陥のある遺伝子を修正した治療用遺伝子と置き換えることによって、前記ポリペプチドの不適切な生成を永久的に治療することに用いられる。
本発明の遺伝子治療は、in vivo又はex vivoで実施することができる。ex vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製、治療用遺伝子の導入、及び遺伝的に改変した細胞を患者に戻して導入することを必要とする。対照的に、in vivo遺伝子治療は、患者の細胞の単離及び精製を必要としない。
【0064】
治療用遺伝子は、患者に投与するために、典型的には“パッケージング”されている。遺伝子デリバリービヒクルは、リポソームのような非ウイルス性、又は、例えばK.L. Berkner (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:39−66に記載されているアデノウイルスのような複製欠損ウイルス若しくはN. Muzyczka (1992) Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:97−129及び米国特許第5,252,479号に記載されているアデノ付随ウイルス(AAV)ベクターであり得る。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、複製欠損レトロウイルスベクターで発現させるために、操作され得る。次に、この発現構築物は単離されて、前記ポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターで形質導入したパッケージ細胞に導入され得る。その結果、前記パッケージ細胞は、対象の遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生することができるようになる。これらのプロデューサー細胞は、in vivoで細胞を操作するため及びin vivoでポリペプチドを発現させるために、対象者に投与することができる(以下を参照されたい:Gene Therapy and Other Molecular Genetic−based Therapeutic Approaches, Chapter 20(及びその中に引用された文献), “Human Molecular Genetics” (1996) T. Strachan & A.P. Read, BIOS Scientific Publishers Ltd.)。
【0065】
別のアプローチは“裸のDNA”の投与で、この場合、治療用遺伝子が血流又は筋肉組織に直接注射される。
本発明のポリペプチド又は核酸分子が疾患を引き起こす原因物質である場合には、本発明は、前記疾患を引き起こす原因物質に対する抗体を生成するワクチンとして用いることができる前記ポリペプチド又は核酸分子を提供する。
本発明のワクチンは、予防的(すなわち、感染を防ぐ)であっても治療的(すなわち、感染後の疾患を治療する)であってもよい。そのようなワクチンは、免疫性を付与する抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を、通常は上記で述べた医薬的に許容できる担体と組合せて含む。前記担体には、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない担体のいずれもが含まれる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(“アジュバント”)として機能してもよい。さらにまた、前記抗原又は免疫原は、細菌の類毒素(例えばジフテリア、破傷風、コレラ、H.ピロリ菌(pyroli)由来の類毒素)及び他の病原体と結合されてもよい。
ポリペプチドは胃で分解されるので、ポリペプチドを含むワクチンは、好ましくは非経口的に(例えば皮下、筋肉内、静脈内又は皮内注射)投与される。非経口投与に適した製剤には、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに水性及び非水性の無菌懸濁剤が含まれる。前記無菌注射溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤をレシピエントの血液に対して等張にする溶質を含んでいてもよく、前記無菌懸濁剤は、懸濁剤又は増粘剤を含んでもよい。
【0066】
本発明のワクチン製剤は、単位用量又は複数単位用量の容器で提供されてもよい。例えば、密封されたアンプル及びバイアルでの提供は、使用直前に無菌液状担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。投与量はワクチンの比活性に依存し、型どおりの検査によって容易に決定することができる。
例えば、国際特許出願WO 98/55607に記載されるような、本発明のポリペプチドに結合する抗体の遺伝的送達も有効であり得る。
ジェット式注射と呼ばれる技術(例えば、www.powderject.comを参照)も、ワクチン組成物の製剤形態に有用であり得る。
ワクチン接種に適する方法の幾つか及びワクチン送達システムは、国際特許出願WO 00/29428に記載されている。
本発明はまた、本発明の核酸分子の診断薬としての使用に関する。本発明の核酸分子により特徴付けられ、機能不全に付随する遺伝子の変異型の検出は、前記遺伝子の過小発現、過剰発現又は位置的若しくは時間的発現の変化から生じる疾患の診断、又はそのような疾患に対する感受性の診断を規定するか又はそれら診断に付け加えることができる診断ツールを提供する。前記遺伝子に変異を保有する個体は、種々の技術によってDNAレベルで検出することができる。
診断のための核酸分子は、対象者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検又は剖検材料から入手できる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、又はPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)若しくは他の増幅技術を分析に先立って用いることによって、ゲノムDNAを酵素的に増幅してもよい(以下の文献を参照されたい:Saiki et al., Nature 324:163−166(1986); Bej et al., Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol., 26:301−334(1991); Birkenmeyer et al., J. Virol. Meth., 35:117−126(1991); Van Brunt, J., Bio/Technology, 8:291−294(1990))。
【0067】
ある態様では、本発明のこの特徴は、本発明のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現レベルを評価すること、及び前記発現レベルを対照のレベルと比較することを含む、患者における疾患を診断する方法を提供する。この場合、前記対照レベルと異なるレベルは疾患を示唆する。前記方法は、以下の工程を含み得る:
a)本発明の核酸分子と核酸プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、患者由来の組織サンプルを前記核酸プローブと接触させる工程;
b)工程a)で用いた条件と同じ条件下で、対照サンプルを前記プローブと接触させる工程;及び、
c)前記サンプル中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;
この場合、対照サンプル中のハイブリッド複合体レベルと異なるハイブリッド複合体レベルが患者サンプルで検出されることは、疾患を示唆する。
本発明のさらなる特徴は、以下の工程を含む診断方法を含む:
a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
b)前記組織サンプルから、本発明の核酸分子を単離する工程;及び、
c)疾患に付随する前記核酸分子における変異の存在を検出することによって、患者を疾患について診断する工程。
【0068】
上記に記載した方法における核酸分子の検出を補助するために、増幅工程、例えばPCRの使用が含まれ得る。
正常な遺伝子型と比較すると、増幅産物におけるサイズの変化によって、欠失及び挿入が検出される。点変異は、増幅DNAを本発明の標識RNAとハイブリダイズさせるか、あるいは本発明の標識アンチセンスDNA配列とハイブリダイズさせることによって同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によって、又は溶融温度における差異を評価することによって、ミスマッチを有する二重鎖と区別することができる。DNAをストリンジェントな条件下で前記DNAとハイブリダイズする核酸プローブと接触させてハイブリッド二本鎖分子を形成させること(前記ハイブリッド二本鎖は、疾患に付随する変異に対応するいずれかの部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有する)、及び、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を前記DNA鎖の対応部分における疾患付随変異の有無を示すものとして検出することによって、患者における変異の有無を検出することができる。
前記のような診断は特に出生前検査で有用であり、新生児検査でもなお有用である。
【0069】
参照遺伝子と“変異”遺伝子との間の点変異及び他の配列的相違は、他の周知の技術、例えば直接DNAシークエンシング又は一本鎖構造多型性(Orita et al., Genomics, 5:874−879(1989))によって同定できる。例えば、シークエンシングプライマーは、二本鎖PCR産物又は改変PCRによって作製された一本鎖テンプレート分子とともに用いることができる。配列決定は、放射能標識ヌクレオチドを用いる通常の方法によって、又は蛍光タグを用いる自動シークエンシング法によって実施される。クローン化DNAセグメントを、特異的DNAセグメントを検出するためのプローブとして用いることもできる。
この方法の感受性は、PCRと併用したとき極めて増強される。さらに、点変異及び他の配列の変動(例えば多型性)は、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドをただ1つのヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅に用いることによって、上記のように検出することができる。
DNA配列の相違はまた、変性剤の存在下又は非存在下でのゲル内のDNA断片の電気泳動移動度における変化によって、又は直接DNAシークエンシング(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)によっても検出することができる。特定の位置における配列の変化はまた、RNase及びS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイによって、又は化学切断法(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 85:4397-4401を参照)によっても明らかにすることができる。
【0070】
ミクロ欠失、異数性、転座、逆位のような変異は、通常のゲル電気泳動及びDNAシークエンシングの他に、in situ分析によっても検出できる(例えば以下を参照されたい:Keller et al., DNA Probes, 2nd Ed., Stockton Press, New York, N.Y., USA(1993))。
すなわち、細胞内のDNA又はRNA配列は、それらを単離及び/又はメンブレン上に固定する必要なしに、変異について分析することができる。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、現在のところ最も一般的に用いられている方法で、FISHに関する多数の概論が存在する(例えば以下を参照されたい:Trachuck et al., Science, 250, 559-562(1990);及びTrask et al., Trends, Genet., 7, 149-154(1991))。
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、遺伝的変種、変異及び多型性の効率的スクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法はよく知られていて一般的な応用性を有しており、遺伝子発現、遺伝連鎖及び遺伝的可変性を含む分子遺伝学における種々の疑問に取り組むのに用いることができる(例えば以下を参照されたい:M. Chee et al., Science (1996) , Vol 274, pp610-613)。
【0071】
ある態様では、前記アレイが、以下の文献に記載されている方法に従って調製され使用される(PCT出願WO95/11995(Chee et al.);D.J. Lockhart et al.(1996) Nat. Biotech. 14:1675−1680;M. Schena et al.(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619)。オリゴヌクレオチド対は、2つから100万個を越える範囲にわたり得る。前記オリゴマーは、光誘導化学法を用いて基板上の指定領域で合成される。基板は、紙、ナイロン又は他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド若しくは他の適切な固相支持体のいずれであってもよい。別の特徴では、オリゴヌクレオチドは、PCT特許出願(WO95/251116, Baldeschweiler et al.)に記載されているように、化学的結合方法及びインクジェット応用装置を用いることによって基板表面上で合成することができる。別の特徴では、ドット(又はスロット)ブロットに類似する“格子化(gridded)”アレイが、真空系、熱結合方法、UV結合方法、機械的又は化学的結合方法を用いて基質表面にcDNA断片又はオリゴヌクレオチドを配置すること及び連結させることに用いられ得る。上述するようなアレイは、手動で、又は利用可能な装置(スロットブロット又はドットブロット装置)、材料(適切な固相支持体すべて)及び機械(ロボット機器を含む)を用いて作製することができ、8、24、96、384、1536又は6144個のオリゴヌクレオチド、又は2つから100万個を越える範囲の他のいずれの数をも含むことができる(このことは、アレイ自体を商業的に入手可能な計測器の有効利用に向くものとしている)。
【0072】
上記で考察する方法の他に、対象者に由来するサンプルから、ポリペプチド又はmRNAの異常な増加又は低下のレベルを決定することを含む方法によって、疾患を診断することができる。発現低下又は発現増加は、例えば、核酸増幅、一例を挙げるとPCR、RT-PCR、RNase保護、ノーザンブロット法及び他のハイブリダイゼーション方法のようなポリヌクレオチドの定量のために当技術分野で周知の方法のいずれかを用いて、RNAレベルで測定することができる。
宿主に由来するサンプルで本発明のポリペプチドレベルを決定することに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知られており、また上記でいくらか詳細に考察されている(ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイを含む)。本発明のこの特徴では、以下の工程を含む診断方法が提供される:(a)上記のようなリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び(b)前記複合体を検出する工程。
ELISA、RIA及びFACSのようなポリペプチドレベルを測定するためのプロトコルは、ポリペプチド発現の変化レベル又は異常レベルを診断するための基礎をさらに提供することができる。ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象体(好ましくはヒト)から得られた体液又は細胞抽出物を、複合体形成に適した条件下で、前記ポリペプチドに対する抗体と混合することによって確立される。標準的な複合体形成量は、種々の方法、例えば分光測定方法によって定量することができる。
【0073】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、前記ポリペプチドの発現によって特徴付けられる症状又は疾患の診断のために、又は本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物を用いて治療されている患者をモニターするアッセイにおいて、用いることができる。診断目的に有用な抗体は、治療薬として上記で述べたのと同じ様式で調製することができる。前記ポリペプチドについての診断アッセイは、前記抗体及び標識を用いてヒトの体液又は細胞若しくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。前記抗体は改変して、又は改変せずに用いることができ、さらにそれらをレポーター分子と共有結合又は非共有結合によって結合させることによって標識することができる。当技術分野で公知の多様なレポーター分子を用いることができ、それらのいくつかは上記に記載されている。
生検組織由来の、対象者、対照及び疾患サンプルで発現されているポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象者の値との間の偏差は疾患診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを用いて、ポリペプチド発現の有無及び過剰を識別し、治療的処置の間のポリペプチドレベルの調節をモニターすることができる。そのようなアッセイはまた、動物実験、臨床試験又は個々の患者の治療モニタリングにおける特定の治療的処置方法の有効性を評価することに用いることができる。
【0074】
本発明の診断キットは、以下を含み得る:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;又は
(c)本発明のリガンド。
本発明のある特徴では、診断キットが、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子を増幅させるために有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーの使用についての指示書を含み得る。前記キットは、ハイブリダイズしていないRNAを消化するための薬剤を保持している第三の容器をさらに含んでもよい。
本発明の別の特徴では、診断キットが核酸分子のアレイを含んでもよく、前記核酸分子の少なくとも1つが本発明の核酸分子であってもよい。
本発明のポリペプチドを検出するために、診断キットは、本発明のポリペプチドと結合する1つ又は2つ以上の抗体;及び、前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬;を含み得る。
【0075】
そのようなキットは、疾患又は疾患に対する感受性、特に、免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬(Kimball et al., Arch Dermatol 2002 Oct:138(10):1341-6)、移植片対宿主病(Miura Y., et al., Blood 2002 Oct 1:100(7):2650-8)、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病(Anaya et al., J Rheumatol 2002 Sep; 29(9):1874-6)、クローン病(Schmit A. et al., Eur Cytokine Netw 2002 Jul-Sep:13(3):298-305)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患(Oei J et al., Acta Paediatr 2002:91(11):1194-9)、侵襲性且つ慢性の歯周炎(Gonzales JR, et al., J clin Periodontol 2002 Sep:29(9):816-22)、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫(Vaishampayan U, Clin Cancer Res 2002 Dec:8(12):3696-701)、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患(Semin Liver Dis 2002:22 Suppl 1:7)、AIDS(Dereuddre-Bosquet N., et al., J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retroviol 1996 Mar 1: 11(3):241-6)、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患(Bogdan, Current Opinion in Immunology 2000, 12:419-424)、ペーロニー病(Lacy et al., Int J Impot Res 2002 Oct:14(5):336-9)、結核(Dieli et al., J Infect Dis 2002 Dec 15;186(12):1835-9)及びウイルス感染(Pfeffer LM, Semin Oncol 1997 Jun 24:S9-63-69)又はこれらに対する感受性を診断することに有用であろう。
本発明の種々の特徴及び態様は、特にINSP037ポリペプチドに関連する実施例を介して、これからより詳細に説明されるであろう。
本発明の範囲を逸脱することなく細部の改変がなされ得ることは、理解されるであろう。
【0076】
(実施例1:INSP037の同定)
配列番号2から得られるポリペプチド配列はINSP037のエクソンの翻訳を表しており、PDBデータベースに存在するタンパク質構造に対するインファーマティカ=ゲノムスレッダーツールでクエリー(query)として前記ポリペプチド配列を用いた。最もマッチングするものは、4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーの構造である。前記の最もマッチングするものは、前記クエリー配列とのアラインメントで84%のゲノムスレッダー信頼度を示した(図1)。図2は、INSP037クエリー配列と、4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーであるウシインターフェロンγの配列(PDB-1d9g)(Randal et al., Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 2000 (Jan;56), (Pt 1):14-24)とのアラインメントを示している。INSP037ポリペプチド配列が、図2では“IPAAA445”と称されていることを注記しておく。4−ヘリックスバンドルサイトカインファミリータンパク質のメンバーは、治療上重要である。
図16Bは、INSP037がホモ・サピエンスの第3染色体上に見出せることを示している。上述するように、全てのI型インターフェロンは、第9染色体上に密集している。従って、第3染色体上のINSP037遺伝子の位置は(3q25.33, chr3:157121275-157121511 (on hg15/build 33))、INFγ様インターフェロンであるという本発明でのアノテーションと合致しており、だからII型インターフェロンであるとアノテーションされる。
【0077】
(実施例2:cDNAライブラリーからのINSP037(IPAAA44548)のクローニング)
{cDNAライブラリー}
ヒトcDNAライブラリー(バクテリオファージラムダ(λ)ベクター中に含まれている)は、Stratagene若しくはClontechから購入するか、又はSerono Pharmaceutical Research Instituteで製造元(Stratagene)のプロトコルに従ってλZAP若しくはλGT10ベクター中に調製した。バクテリオファージλDNAは、感染させた大腸菌宿主株の小規模培養物から製造元(Promega, Corporation, Madison WI.)の指示にしたがいWizard Lambda Preps DNA精製系を用いて調製した。用いたライブラリー及び宿主株のリストは、表Iに示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
{PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー}
仮想的cDNAの完全長配列を増幅するために、プライマーデザイナーソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用いて、下の表2に示すように、18〜25塩基の長さを有するPCRプライマー対をデザインした。PCRプライマーは、55±10℃に近いTm及び40〜60%のGC含量をもつように最適化した。標的配列IPAAA44548に対して高い選択性を有するプライマー(ほとんど又は全く非特異的プライミングを示さない)を選択した。
【0080】
【0081】
{ファージライブラリーDNAに由来する仮想的cDNAのPCR}
IPAAA44548(図3)をコードする完全長の仮想的cDNAは、遺伝子特異的クローニングプライマー(CP1及びCP2、図3及び表2)を用いて264bpのPCR増幅産物(図4)として得られた。PCRは、1XのAmpliTaq(登録商標)緩衝液、200μMのdNTP、各々50ピコモルのクローニングプライマー、2.5ユニットのAmpliTaq(登録商標)(Perkin Elmer)及び各々100ngのファージライブラリープールDNAを含む最終容積50μLで、次のようにプログラムしたMJリサーチDNAエンジンを用いて行った:94℃にて1分;94℃にて1分、x℃にてy分、及び72℃、を40サイクル(ここでxは最低Tm−5℃で、yは産物1kbにつき1分である);続いて72℃にて1分を1サイクル行ってから、4℃にて保持サイクル。
増幅産物は、1xのTAE緩衝液(Life Technology)中0.8%のアガロースゲルで可視化し、予測される分子量で移動したPCR産物をWizard PCR Preps DNA精製系(Promega)を用いてゲルから精製した。50μLの滅菌水に溶出させたPCR産物を、直接サブクローニングするか、又は20℃で保存した。
{PCR産物のサブクローニング}
PCR産物を、インビトロジェン社(Invitrogen Corporation)から購入したTOPO TAクローニングキットを用い製造元に指定されている条件を用いて、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCRII TOPO)中にサブクローニングした(それぞれカタログ番号K4575-01及びK4600-01)。簡単に記すと、ヒト下垂体ライブラリー(ライブラリー番号3)増幅に由来する4μLのゲル精製PCR産物を、1μLのTOPOベクター及び1μLの塩溶液とともに室温にて15分間インキュベートした。続いて前記反応混合物で大腸菌株TOP10(Invitrogen)を次のように形質転換した。ワンショットTOP10細胞の50μLアリコートを氷上で解凍してから、2μLのTOPO反応物を添加した。前記混合物を氷上で15分間インキュベートし、続いて42℃にて正確に30秒間のインキュベーションによってヒートショック処理した。サンプルを氷上に戻し、250μLの温SOC培地(室温)を添加した。サンプルを、振盪しながら(220rpm)37℃にて1時間インキュベートした。続いて形質転換混合物をアンピシリン(100μg/mL)含有L-ブロス(LB)プレート上に蒔いて、37℃で一晩インキュベートした。cDNA挿入物を含むアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRによって同定した。
【0082】
{コロニーPCR}
滅菌つま楊枝を用いて、コロニーを50μLの滅菌水に接種した。続いて接種物の10μLアリコートを、使用したプライマー対がSP6(5’)及びT7であったことを除き上述のように20μLの全反応容積でPCRを行った。サイクリング条件は以下のとおりであった:94℃にて2分;94℃にて30秒、47℃にて30秒及び72℃にて1分、を30サイクル;72℃にて7分を1サイクル。続いて更なる分析の前にサンプルを4℃で維持した(保持サイクル)。
PCR反応産物を、1xのTAE緩衝液中において1%アガロースゲル上で分析した。予測されるPCR産物サイズ(264bpのcDNA+187bp(マルチクローニングサイト又はMCSのため))を示すコロニーを、アンピシリン(50μg/mL)含有L-ブロス(LB)5mL中で、220rpmにて振盪しながら37℃にて一晩増殖させた。
{プラミドDNAの調製及びシークエンシング}
MiniprepプラスミドDNAを、Qiaprep Turbo9600自動システム(Qiagen)又はWizard Plus SV Miniprepキット(Promega Cat.# 1460)を用い、製造元の指示に従って5mLの培養物から調製した。プラスミドDNAを100μLの滅菌水に溶出させた。そのDNA濃度を、エッペンドルフBO分光計を用いて測定した。BigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems Cat.# 4390246)を用い製造元の指示にしたがいながら、プラスミドDNA(200−500ng)をT7及びSP6プライマーと共にDNAシークエンシングした。Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore cat.#LSKS09624)を用いてシークエンシング反応物を精製し、続いてApplied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0083】
(実施例3:HEK293/EBNA細胞におけるINSP037(IPAAA44548)発現用プラスミドの構築)
続いて、DNAシークエンシングによって同定したIPAAA44548の完全なコード配列(ORF)を含むpCRII-TOPOクローン(図5)を用いて、ゲートウェイ(Gateway)(登録商標)クローニング法(Invitrogen)により、前記挿入物を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図6)中にサブクローニングした。前記クローン化配列は、ただ1つのヌクレオチド置換A134Gを含む(図4)。
{インフレーム6HISタグ配列に融合させたゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFの作製}
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は二工程PCR反応を必要とし、これによって5’末端にattB1組換え部位及びコザック配列がフランキングし、3’末端にインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグをコードする配列、終止コドン及びattB2組換え部位がフランキングするIPAAA44548のORF(ゲートウェイ適合性cDNA)が作製される。第一のPCR反応物(最終容積50μL)は以下を含む:25ngのpCRII TOPO-IPAAA44548(プラスミド13124、図5)、2μLのdNTP(5mM)、5μLの10xのPfxポリメラーゼ緩衝液、各々0.5μLの遺伝子特異的プライマー(100μM)(EX1フォワード及びEX2リバース)及び0.5μLのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)。PCR反応は、95℃で2分の最初の変性工程に続いて、94℃で15秒及び68℃で30秒を12サイクル、で実施した。Wizard PCR prepDNA精製システム(Promega)を用い製造元の指示に従って、反応混合物から直接、PCR産物を精製した。
第二のPCR反応物(最終容積50μL)は、以下を含んでいた:10μLの精製PCR産物、2μLのdNTP(5mM)、5μLの10xのPfxポリメラーゼ緩衝液、各々0.5μLのゲートウェイ変換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)、及び0.5μLのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ。第二のPCR反応の条件は、以下のとおりであった:95℃にて1分;94℃で15秒、45℃で30秒及び68℃で3.5分を4サイクル;及び、94℃にて15秒、55℃にて30秒及び68℃にて3.5分を25サイクル。PCR産物は、上述のように精製した。
あるいはE.coliにおいてIPAAA44548を発現させるために、第一のPCRの遺伝子特異的プライマー(EX3-フォワード及びEX2-リバース)、並びにGCPF及びGCPRプライマーを用い、上記と同じ条件を用いて、メチオニン開始コドンの上流にシャイン-ダルガーノ配列を含むORFを作製した。得られたPCR産物をSD-IPAAA44548と称した。
【0084】
{ゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR201及び発現ベクターpEAK12dへのサブクローニング}
ゲートウェイクローニング方法の第二段階は、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR201(Invitrogen, 図7)へのサブクローニングを含む。前記サブクローニングは、以下のようである:5μLの精製PCR産物を、1.5μLのpDONR201ベクター(0.1μg/μL)、2μLのBP緩衝液及び1.5μLのBPクロナーゼ(clonase)酵素ミックス(Invitrogen)とともに、室温で1時間インキュベートした。この反応をプロテイナーゼK(2μg)の添加によって停止させ、さらに10分間37℃でインキュベートした。バイオラド=ジーンパルサー(Biorad Gene Pulser)を用いるエレクトロポレーションによって、前記の反応物のアリコート(2μL)を大腸菌DH10B細胞へ形質転換した。形質転換体をLB-カナマイシンプレート上に蒔いた。Wizard Plus SV Miniprepsキット(Promega)を用いて、得られたコロニーの1−4からプラスミドミニ-プレップDNAを調製し、続いて1.5μLの前記プラスミド溶出物を組換え反応物に用いた。前記組換え反応物は、最終容積10μL中に、1.5μLのpEAK12dベクター(図6)(0.1μg/μL)、2μLのLR緩衝液及び1.5μLのLRクロナーゼ(Invitrogen)を含んでいた。この混合物を室温で1時間インキュベートし、プロテイナーゼK(2μg)の添加によって反応を停止させ、さらに10分間37℃でインキュベートした。この反応物のアリコート(1μL)を用いて、エレクトロポレーションにより、大腸菌DH10B細胞を形質転換した。
正しい挿入物を含むクローンを、pEAK12dプライマー(pEAK12d F及びpEAK12d R)をPCRに用いたことを除き、上に記載するようにコロニーPCRを行うことによって同定した。Qiaprep Turbo 9600自動化システム(Qiagen)を用いるか、又はWizard Plus SV miniprepsキット(Promega)により手動で、正しい挿入物を含むクローンからプラスミドmini prep DNAを単離して、pEAK12d F及びpEAK12d Rプライマーを用いて配列を確認した。
配列を確認したクローンの500mL培養物から、プラスミドpEAK12d-IPAAA44548-6His(プラスミド番号11775、図8)のCsCl勾配精製maxi-prepDNAを調製して(J. Sambrook, et al., in Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)、滅菌水に1μg/μLの濃度で再懸濁して-20℃で保存した。
【0085】
{発現ベクターpEAK12dの構築}
ベクターpEAK12dは、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12(Edge Biosystemsから購入)のゲートウェイクローニング系適合型である。pEAK12では、対象cDNAがヒトEF1αプロモーターの制御下で発現される。pEAK12dは、下記のように作製した。
pEAK12は、制限酵素HindIII及びNotIで消化し、クレノウ(Klenow)(New England Biolabs)を用いて平滑末端にし、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Roche)を用いて脱リン酸化した。脱リン酸化後、平滑末端のゲートウェイリーディングフレームカセットC(ゲートウェイベクター変換系、Invitrogen cat#11828-019)に前記ベクターを連結して、大腸菌DB3.1細胞(ccdB遺伝子を含むベクターの増殖を許容する)を形質転換した。前記カセットは、ccdB遺伝子にフランキングなAttR組換え部位を含み、クロラムフェニコール耐性を有する。前記ベクターを連結した前記カセットで、Wizard Plus SV Miniprepsキット(Promega)を用いていくつかの耐性コロニーからMini prep DNAを単離し、AseI/EcoRIで消化して、前記カセットが正しい方向性で挿入されたことを示している670bpの断片が生じるコロニーを同定した。得られたプラスミドをpEAK12d(図6)と名付けた。
{ゲートウェイ適合性IPAAA44548 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR201及び大腸菌発現ベクターpDEST14へのサブクローニング}
インフレーム3’6HISタグコード配列及び5’上流シャイン-ダルガーノ配列を含むゲートウェイ適合性SD-IPAAA44548 ORFを、BPクロナーゼ(clonase)を用いてpDONR201へサブクローニングした。次に、得られたプラスミドは、上述のLRクロナーゼを使用して、大腸菌発現ベクターpDEST14(Invitrogenより購入、図9)とともに組換え反応に用いた。得られた発現プラスミド(pDEST14-IPAAA44548-6HIS)(図10、プラスミド12896)を、上述のように配列確認した。大腸菌での発現のために、CsCl精製maxi-prep DNAで大腸菌宿主株BL21を再形質転換させた。挿入されたcDNAの発現は、T7プロモーターの制御下にある。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例4:IPAAA44548を含むcDNAライブラリーの同定)
CP1及びCP2を用いて得られ且つ正しいサイズ(264bp)で移動するPCR産物を、ライブラリー3、8及び12(それぞれ下垂体、脳皮質及び胎児腎)において同定した。
(実施例5:クローン化IPAAA44548-S-6HIS(プラスミド番号12118)の哺乳類細胞での発現)
{細胞培養}
エプスタイン=バーウイルスの核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)は、Ex細胞VPRO無血清培地(シードストック、維持培地、JRH)に懸濁状態で維持した。トランスフェクションの16-20時間前(−1日目)に、細胞を2つのT225フラスコに播種した(2%FBS播種培地(JRH)を含むDMEM/F12(1:1)中に2x105細胞/mlの密度でフラスコ当たり50mL)。次の日(トランスフェクション0日目)、JetPEI(登録商標)試薬を用いてトランスフェクションを行った(プラスミドDNA2μL/μg、PolyPlus-トランスフェクション)。各フラスコについて、113μgのプラスミド番号12118を2.3μgのGFP(蛍光レポーター遺伝子)とコトランスフェクトした。トランスフェクション混合物を2つの前記T225フラスコに加え、37℃(5% CO2)で6日間インキュベートした。陽性トランスフェクションの確認は、1日目及び6日目に定量的蛍光試験によって実施した(Axiovert 10 Zeiss)。
【0088】
6日目に(採集日)、2つのフラスコから上清(100mL)をプールし、遠心分離して(4℃、400g)、固有の識別標を付したポットに入れた。
6Hisタグ付加タンパク質のQCのために(内部バイオプロセッシングQC)、アリコート(500μL)を保持した。
スケールアップしたバッチを、“懸濁細胞のPEIトランスフェクション”と呼ばれるプロトコルにしたがい(BP/PEI/HH/02/04を参照)、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミン(Polysciencesより入手)を用いて生産した。
このプロトコルは、以下の比率を基準にした:
400mLスピナーの場合;1%FBSを含むFEME200mL中に1×106個のHEK293EBNA細胞;
10mLのFEME1%にプラスミド(番号12118)400μgを希釈し、800μgのPEIを添加した。トランスフェクション後90分してFEME1%培地を添加し、全量を400mLにした。スピナーは、採集まで6日間培養し続けた。
【0089】
{精製方法}
C-末端6Hisタグを有するリコンビナントタンパク質を含む培養液サンプル100mL又は400mLを、冷緩衝液A(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グルセロール;pH7.5)を用いて、それぞれ最終容積200mL及び800mLに希釈した。0.22μmの滅菌フィルター(Millipore, 500mLフィルターユニット)で前記サンプルをろ過し、滅菌培養角ビン(Nalgene)で4℃にて維持した。
精製は、自動サンプル添加装置(Labomatic)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems)で4℃にて実施した。精製方法は、以下の2つの連続する工程を含んでいた:Niイオンで荷電されているPoros 20MC(Applied Biosystems)カラム(4.6x50mm、0.83mL)での金属アフィニティークロマトグラフィー、続いてセファデックスG-25中型(Amersham Pharmacia)カラム(1.0x10cm)でのゲルろ過。
最初のクロマトグラフィー工程のために、金属アフィニティーカラムを30カラム容積のEDTA溶液(100mMのEDTA;1MのNaCl;pH8.0)で再生させ、15カラム容積の100mM NiSO4溶液で洗浄してNiイオンを再荷電し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グリセロール;400mMのイミダゾール;pH7.5)で洗浄し、最後に15カラム容積の緩衝液A(15mMのイミダゾールを含む)で平衡化した。Labomaticサンプル添加装置でサンプルを200mLのサンプルループに移し、続いてNi金属アフィニティーカラムに流速10mL/分で装荷した。400mLのスケールアップサンプルの場合、前記の移して装荷する工程を4回繰り返した。その後、前記カラムを12カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて28カラム容積の緩衝液A(20mMイミダゾールを含む)で洗浄した。20mMイミダゾール洗浄の間に、ゆるく付着していた混入タンパク質はカラムから溶出した。リコンビナントHisタグ付加タンパク質を、流速2mL/分、10カラム容積の緩衝液Bで最後に溶出させ、この溶出タンパク質を1.6mL画分で採集した。
【0090】
二番目のクロマトグラフィー工程のために、セファデックスG-25ゲルろ過カラムを2mLの緩衝液D(1.137MのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容積の緩衝液C(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。Niカラムから溶出したピーク画分は、VISIONに統合されているサンプル添加装置を自動的に通過して、セファデックスG-25カラムに装荷され、2mL/分の流速の緩衝液Cでタンパク質を溶出した。脱塩サンプルを2.2mL画分で回収した。前記画分を、0.22μmの滅菌遠心分離フィルター(Millipore)でろ過し、凍結して-80℃で保存した。サンプルのアリコートを、抗His抗体を用い、クーマシー染色及びウェスタンブロットによってSDS-PAGE(4−12%NuPAGEゲル;Novex)で分析した。
クーマシー染色:NuPAGEゲルを0.1%のクーマシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)中で室温にて1時間染色し、続いてバックグラウンドが除かれてタンパク質のバンドが鮮明に見えるようになるまで、20%メタノール/7.5%酢酸中で脱染した。
ウェスタンブロット:電気泳動に続いて、タンパク質を4℃にて1時間、290mAでゲルからニトロセルロースメンブレンへ電気的に移した。前記メンブレンを、5%粉乳を含む緩衝液E(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;0.1%トゥイーン20(pH7.4))で室温にて1時間ブロッキングし、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液E中で2つのウサギポリクローナル抗体混合物(G-18及びH-15、各々0.2μg/mL;Santa Cruz)とともに4℃で一晩インキュベートした。室温でさらに1時間インキュベートした後、前記メンブレンを緩衝液Eで洗滌し(10分、3回)、続いて2.5%粉乳を含む緩衝液Eで1/3000に希釈したHRP結合抗ウサギ二次抗体(DAKO、HRP0399)と室温で2時間インキュベートした。緩衝液Eで洗滌(10分、3回)した後、前記メンブレンをECLキット(Amersham Pharmacia)で1分処理した。続いて前記メンブレンをハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に露光し、前記フィルムを現像してウェスタンブロット画像を視覚的に分析した。
タンパク質アッセイ:クーマシー染色によって検出可能なタンパク質バンドを示すサンプル中の標準物質としてのウシ血清アルブミンと共に、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0091】
{細菌細胞でのIPAAA44548-SEC-6HIS(プラスミド番号12896)の発現}
下記の方法では、タンパク質を産生させるための大腸菌BL-21 DE3細菌株の使用について記述する。“BL21 DE3”は、リコンビナントタンパク質を過剰発現させるために広く使用されているT7RNAポリメラーゼを用いる発現系の一環である。
{細菌株BL21(DE3)の形質転換}
TSS法の手順を使用した。前記方法のプロトコルは以下の文献から得た:C.T. Chug et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1989) 86:2172-2175。
リコンビナントプラスミドNo.12896のDNA10−100ng(2μL)をTSS法のためのコンピテントなBL21に添加して、氷上に20分静置した。SOC培地(0.8mL)を添加し、そのチューブを37℃、200rpmで1時間インキュベートした。この培養物から20μL及び200μLを採取して、アンピシリン(最終濃度40μg/mL)含有LBプレート上に蒔いて、37℃にて一晩静置した。
翌日、3コロニーを単離して、グリセロールストックの調製に用い、形質転換産物をファーメンター内に移す前に振盪フラスコ実験で発現についてテストした(前記3コロニーは振盪フラスコ実験において同じ性能であったので、前記3コロニーのうちの1つをラージスケール用に選択した)。
【0092】
{リコンビナント大腸菌株の長期保存用シードストックの調製}
アンピシリン(最終濃度40μg/mL)含有LB培地が入っている5mLチューブに、新鮮な寒天プレートからただ一つのコロニーを接種した。細菌を37℃、200rpmで一晩増殖させた。翌朝一晩培養物の50μLを採取し、新たな5mL LBチューブ(+抗生物質)に接種し、細菌を指数増殖期に移行させるために37℃、200rpmで2−3時間インキュベートした。
続いて20%グリセロール5mLを前記培養物に添加して、混合した。5本の低温貯蔵バイアルに1.5mLずつ分注して、-80℃にて保存してシードストックとした(内部グリセロールストック)。
{5リットルスケールでの発現}
前記リコンビナント株を5リットルのバイオラフィット(Biolafitte)攪拌タンクリアクターで増殖させた。操作時に前記タンクリアクターは、適切な抗生物質(最終濃度40μg/mL)と、T7プロモーターの前誘発を避けるための0.5%グルコースとを含む5リットルのECPM 1培地(表IVに示す組成を有する)を含んでいた。リサーチグレード・ラン2464のみを調製して、精製にまわした。
接種物は、500mLのLB(+抗生物質、0.5%グルコース)振盪フラスコで、凍結細菌1ループ(グリセロールシードストックバイアルの1つから掻きとる)から出発し自動的接種の前に9時間増殖させて調製した。細胞がOD10に達したとき(通常は7から9時間の増殖後)、IPTG(最終濃度1mM)を用いて、タンパク質産生を誘導した。誘導は3時間続けた。
増殖及び誘導までのファーメンター設定条件は、以下のように設定した:溶解酸素濃度50%、酸素圧に応じて300から700rpm、pH7.0。酸素圧はエアスパージング+/−酸素(25mL/分)で維持した。1時間毎に5mLのサンプルを採取し、600nmにて光学密度を測定した。
細胞を収穫し、4000rpm(Sorvall RC 3B)で遠心分離した。そのペレットを、更なる処理まで-20℃で凍結保存した。
細胞抽出物におけるタンパク質の存在を、SDS-PAGEのクーマシー染色によって評価した。
【0093】
【0094】
【0095】
{精製方法}
67gの凍結細菌ペーストを、完全にEDTAフリーのプロテアーゼインヒビター(Roche)を1錠/50mLで補充した270mLの緩衝液A(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;1mMのPMSF;1mMのベンズアミジン;8.7%(w/v)のグリセロール、pH7.5)に懸濁させた。Z-プラス細胞破砕装置(Constant Cell Disruption Systems)に1300barにて2回通すことによって、前記細菌を破砕した。
続いて、このサンプルを36,000xgで30分遠心分離した。その上清(300mL)を、緩衝液Aで平衡化したNi-NTA-アガロースカラム(2.5x3.0cm)に4mL/分の流速で装荷した。
前記カラムを100mLの緩衝液Aで洗浄し、続いて20mMイミダゾールを含む緩衝液A 85mLで洗浄した。タンパク質は、3mL/分の流速にて20mMから250mMイミダゾールを含む緩衝液Aの300mL直線グラジエントによって溶出させて、7.5mLずつ画分を集めた。1秒毎の画分のサンプルを還元性SDS-サンプル緩衝液で1/6に希釈し、4−12%NuPageゲル(Novex)にウェル当たり15μLを装荷し、電気泳動後に前記ゲルをクーマシーブルーで染色した。
最も高いIPAAA44548濃度を有する画分(画分36−42)をプールし、その総容積は53mLであった(プールN1)。より低い純度及び濃度を有するプールN1の両側の画分(画分32−35及び画分43−44)は、44mLの容積を有するプールN2としてプールした。
【0096】
Ni-カラムから得たプールを、緩衝液B(50mMトリス-HCl、1mMベンズアミジン、pH7.5)で平衡化したQ-セファロースファストフローカラム(1.5x12cm)でさらに精製した。52mLのプールN1を300mLの緩衝液B及び648mLのH2Oで希釈して、最終容積1000mLを得た。前記サンプルを流速5mL/分にてカラムに装荷し、前記カラムを150mLの緩衝液Bで洗浄し、0mM-400mMのNaClを含む緩衝液Bの160mL直線グラジエントを用いてタンパク質を溶出させた。画分を2mLずつ集め、上記に記載したようにクーマシー染色SDS-PAGEによって分析した。画分28−30(プールQ1)は、9.6kDaの予測される分子量の位置に1つのタンパク質バンドを含んでいた。画分31−33(プールQ2)は加えて、ダイマーの形成を示す約20kDaの位置にタンパク質バンドを含んでいた。
Ni-カラムから得たプールN2の43mLを、300mLの緩衝液B及び657mLのH2Oで1000mLに希釈した。前記サンプルをQ-セファロースカラムに装荷し、タンパク質を溶出させて、その画分をプールN1について記載するように分析した。分画28−30(プールQ3)は、9.6kDaの予測される分子量の位置に1つのタンパク質バンドを含んでいた。各Qプールの容積は5.5mLであった。
Q-セファロースカラムから得たプールを、スーパーデックス(Superdex)G75ゲルろ過カラム(HiLoad16/60, Pharmacia)に通した。前記カラムを0.5MのNaOHで洗浄し、PBSで平衡化させた。前記カラムを流速1mL/分で流して、5mLのプールを前記カラムに装荷した。画分を2mLずつ集め、上記に記載するようにクーマシー染色SDS-PAGEにより分析した。
【0097】
IPAAA44548は、プールQ1からは画分31−35(9.5mL)(S1)に溶出し、プールQ2からは2つのピーク、画分31−34(7.5mL)(S2)及び画分26−28(5.8mL)(S3)に溶出し、プールQ3からは画分32−35(7.5mL)(S4)に溶出した。非還元性SDS-PAGEで分析したとき、プールS3は80%を越えるタンパク質をダイマーとして含むことを示し、一方、他のプールはダイマーを微量のみ含んでいた。プールS1及びS2は類似する純度及び濃度を有しており、それらを1つのプールS1b(9.5+7.5=17mL)にプールした。
タンパク質濃度は、280nmでの吸収を測定し、モル吸光係数の計算値7,090及び分子量9,625を用いて決定した。タンパク質の分子量を質量分析により決定し、プールS1b及びS4ではタンパク質の分子量が9,624.6であることが見出された。プールS3でのタンパク質分子量は19,252.2であると決定され、このプールにはジスルフィド架橋を有するダイマーが存在することが確認された。これらのプールは、LPSについてアッセイを行って1.1 U/mgから3.4 U/mgを含んでいた。
【0098】
【0099】
(実施例6:IPAAA44548(INSP037)のin vivoでの特徴付け)
IPAAA44548(INSP037)タンパク質(IPAAA44548-6-HIS及びIPAAA44548-ATT-6HIS)は、コンカナバリンA(ConA)及びフィトヘマグルチニン(PHA)刺激したヒト末梢血単核細胞(hPBMC)によるIFNγ分泌をin vitroで誘導することが示された(予備データ、データは示さず)。これらのデータに基づいて、下に説明するように、in vivo ConAモデルで電気的導入(エレクトロトランスファー:electrotransfer)によりIPAAA44548(INSP037)の活性を試験することを決定した。
{肝臓のコンカナバリンA(ConA)誘導性肝炎}
中毒性肝臓疾患は、薬理的療法が未だ発見されていないため、人類における全世界的な健康問題を代表している。例えば、肝臓の肝硬変をもたらす急性慢性肝炎は、活性化されたT細胞によって肝臓の実質細胞が徐々に破壊されてゆく疾病状態である。ConA誘導性肝臓毒性は、マウスにおけるT細胞依存性アポトーシス性及びネクローシス性肝障害の3つの実験的モデルの1つである。Gal N(D-ガラクトサミン)感作マウスを、重篤なアポトーシス性肝傷害と二次的なネクローシス肝傷害が表れる活性化抗CD3モノクローナルAB又はスーパー抗原SEBのいずれかに曝露させた(Kusters S, Gastroenterology. 1996 Aug;111(2):462-71)。T細胞分裂促進性の植物レクチンであるConAを未感作マウスに注射しても、肝臓のアポトーシスを生じる結果となり、ネクローシスに進行する。ConAは、全身的なTNFα、IFNγ及びその他種々のサイトカインの放出を誘導する。TNFα及びIFNγの両方は、肝傷害の重要なメディエーターである。トランスアミナーゼ放出8時間後に、傷害が重篤な肝臓破壊を引き起こす。
肝臓の損傷には種々の種類の細胞が関与していることが示されており、そのような種類の細胞としては、CD4 T細胞、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞が挙げられる(Kaneko J Exp Med 2000, 191, 105-114)。抗CD4抗体は、T細胞の活性化と、結果として引き起こされる肝臓の損傷を遮断する(Tiegs et al. 1992, J Clin Invest 90, 196-203)。CD8に対するモノクローナル抗体を用いたマウスの前処置は防護に失敗したが、一方マクロファージの除去は肝炎の誘導を妨害した。
【0100】
肝臓のConA誘導性肝炎におけるIFNγ様タンパク質IPAAA44548の役割について調べるために、研究を行った。種々のサイトカインは、ConA誘導性肝臓損傷の誘導又はConA誘導性肝臓損傷からの防護の付与のいずれかにおいて重要であることが示されている。例えば、TNFαは、ConA注射後最初に産生されるサイトカインの一つであり、抗TNFα抗体は疾患に対する防護を付与する(Seino et al. 2001, Annals of surgery 234, 681)。抗IFNγ抗血清が、ConA処理した動物の血中でのトランスアミナーゼレベルの低下によって測定して、マウスを有意に保護するという理由から、IFNγも肝傷害の重要なメディエーターであると考えられる(上記Kustersらの文献を参照)。肝傷害では、自己免疫性肝炎又はウイルス性肝炎を患っている患者にIFNγ産生の増加が観察された。加えて、肝臓でIFNγを発現しているトランスジェニックマウスは、慢性急性肝炎によく似た肝傷害を発症する(Toyonaga et al. 1994, PNAS 91, 614-618)。IFNγはin vitroでマウス肝細胞の細胞死を引き起こし、この事象はTNFによって促進されたことから、IFNγは肝細胞に対して細胞傷害性でもあり得る(Morita et al. 1995, Hepatology 21, 1585-1593)。
他の分子は、ConAモデルで防護的であることが記載されている。rhIL-6の単回投与は、トランスアミナーゼの放出を完全に阻害した(Mizuhara et al. 1994, J. Exp. Med. 179, 1529-1537)。
{対象のタンパク質の全身発現を達成することを目的とした、筋肉繊維へのcDNA電気的導入}
in vivo遺伝子導入のためのウイルス性でない技術の中で、筋肉中へのプラスミドDNAの直接注射及びそれに続くエレクトロポレーションは、単純、安価且つ安全である。形質導入されたDNAは通常は染色体組込みを受けないが、筋繊維の分裂後の性質と長い寿命とが、形質導入された遺伝子の安定な発現を許容する(Somiari et al. 2000, Molecular Therapy 2,178)。種々の報告により、筋肉産生されたタンパク質の血流への分泌が、対応するcDNAのエレクトロポレーション後に達成されることが示されている(Rizzuto et al. PNAS, 1996, 6417; Aihara H et al., 1998, Nature Biotech 16, 867)。加えて、疾患モデルにおいて、筋肉発現されたEpo及びIL-18 BPのin vivoの効力が示されている(Rizzuto, 2000, Human Gene Therapy 41, 1891; Mallat, 2001, Circulation research 89, 41)。
本実施例では、次の材料及び方法を用いた。
【0101】
{動物}
全ての研究で雌のC57/BL6(8週齢)を用いた。一般に、実験群あたり7匹の動物を用いた。マウスは、12時間の明暗サイクル下、通常の条件で維持し、放射線照射した食べ物及び水を自由に与えた。
{筋肉電気的導入}
[ベクターの選択]
His又はStrepIIをタグ付けしたhIL-6遺伝子又はIPAAA44548遺伝子を、ゲートウェイ適合性のCMVプロモーター含有pDEST12.2でクローニングした。
[エレクトロポレーションのプロトコル]
マウスをガス(イソフルラン, Baxter, Ref: ZDG9623)で麻酔した。後肢を剪毛して、エコーグラフィックゲルを施した。ヒアルロニダーゼを後脛骨筋に注射した(20Uを50 μLの滅菌NaCl 0.9%に溶解して, Sigma, Ref. H3631)。10分後、100 μgのプラスミド(片肢あたり50 μgを25 Lの滅菌NaCl 0.9%に溶解して)を同じ筋肉に注射した。DNAは、筋肉内注射の前に、PBS-L-グルタミン酸緩衝液中に調製した。電気的導入のため、エレクトロ・スクエア・ポーラスター(ElectroSquarePorator(BTX, ref ECM830))を用いて、片足に対し、1回のパルスを20 msの間に75ボルトにて1秒の間隔をおいて10回のパルスを、2つの円形の電極(サイズ:直径0.5 mm)による単極方式で電場を施した(Mir LM et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 Apr 13;96(8):4262-7 and Haas K et al., Neuron. 2001 Mar;29(3):583-91.。
【0102】
{読み出し}
[血液のサンプリング]
1.30時間、6時間及び8時間の異なる時点で、眼から100 μLの血液を採取した。屠殺時には、心臓から血を採った。
[血液サンプル中のサイトカイン及びトランスアミナーゼの検出]
TH1/TH2 CBAアッセイ(BD 551287)を用いて、IL-2、IL-5、IL-4、TNFα及びIFNγのサイトカインレベルを測定した。COBAS装置(Hitachi)を用いて、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)及び尿素の血液パラメータを決定した。
{ConA誘導}
雌のC57/BL6マウス(IFFA CREDOから入手)、8週齢動物;ConA(Sigmaから購入、ref.C7275)。異なる濃度にてConAをi.v.に注射し(0時点)、注射後1.30時間、6時間又は8時間で血液サンプルを採取した。サイトカイン、ASAT、ALATの測定は、上述するように行った。
[ConAモデルでのIL-6前処置]
ConA注射の1時間前に、hIL-6を産生しているCHO細胞を注射した。
[IPAAA44548及びIL-6の電気的導入]
0日目にIPAAA44548ベクター又はhIL-6ベクター、空ベクター(負の対照)の電気的導入を行った(上のプロトコルに従って)。電気的導入後から5日眼に、ConA(20 mg/kg)をi.v.注射し、3つの時点で血液を採取した(1.30時間、6時間、24時間)。サイトカイン、ASAT、ALATの測定は、上述するように行った。
【0103】
{結果}
このようなcDNA電気的導入を用いてIPAAA44548で処置したConA誘導性劇症肝炎のモデルマウスは、in vivoで、血中のTNFα、IL-2及びIFNγのレベルの増加を示した(図17A〜Cを参照)。加えて、ASAT及びALATのレベルも対照に対して増加していた(図17D〜Eを参照)。
図18A〜Fの結果は、正の対照の比較例を表している(rhIL-6はConAにより誘導される炎症誘発性応答を遮断することが知られている)。血液中でhIL-6を発現させ、続いてConA誘導性肝臓毒性からの保護を示すために、pDEST12.2hIL-6-STREPII又はpDEST12.2 STREPIIのいずれかの電気的導入ベクターを使用した。
これらの実施例は、電気的導入を使用した血清中のIPAAA44548タンパク質の発現が、ConA曝露後における炎症誘発性サイトカインレベルを全身レベルで増加させ、また、トランスアミナーゼレベルの増加により測定されるように、肝臓疾患を悪化させることを示している。
これらの結果は、予測したIPAAA44548のIFNγ様活性を確かめ、そのタンパク質自体について一連の興味深い治療的用途を開拓している。例えば、IFNγの既知の用途は、IPAAA44548への適合性についてすぐにも調べられ得る(例えば、抗癌活性)。また、例えばモノクローナル抗体など、in vivoでのIPAAA44548活性の更なる研究又は臨床上の用途で有益であり得るIPAAA44548の阻害剤又はアンタゴニストをすぐにでも同定できるであろう。
【0104】
(INSP037の配列情報)
配列番号1 (INSP037のヌクレオチド配列)
1 ATGACTTCAC CAAACGAACT AAATAAGCTG CCATGGACCA ATCCTGGAGA
51 AACAGAGATA TGTGACCTTT CAGACACAGA ATTCAAAATA TCTGTGTTGA
101 AGAACCTCAA AGAAATTCAA GATAACACAG AGAAGGAATC CAGAATTCTA
151 TCAGACAAAT ATAAGAAACA GATTGAAATA ATTAAAGGGA ATCAAGCAGA
201 AATTCTGGAG TTGAGAAATG CAGATGGCAC ACTTTAG
配列番号2 (INSP037のタンパク質配列)
1 MTSPNELNKL PWTNPGETEI CDLSDTEFKI SVLKNLKEIQ DNTEKESRIL
51 SDKYKKQIEI IKGNQAEILE LRNADGTL
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】配列番号2のインファーマティカゲノムスレッダー検索の結果を示す。
【図2】配列番号2と最近縁構造との間でインファーマティカゲノムスレッダーにより得られたアラインメントを示す。
【図3】INSP037の予測ヌクレオチド配列(配列番号1を含む)を、その翻訳(配列番号2)とともに示す。
【図4】INSP037のクローン化ヌクレオチド配列(配列番号1を含む)とその翻訳(配列番号2)であり、INSP037について予測された配列とクローン化配列は同一であることを示している。
【図5】PCRII-TOPO-IPAAA44548のマップを示す。
【図6】発現ベクターpEAK12dのマップを示す。
【図7】プラスミドpDONR201のマップを示す。
【図8】発現ベクターpEAK12d-IPAAA44548-6HISのマップを示す。
【図9】大腸菌発現ベクターpDEST14のマップを示す。
【図10】プラスミドpDEST14-IPAAA44548-6HISのマップを示す。
【図11】PCRII-TOPO-IPAAA44548のヌクレオチド配列を示す。
【図12】pDEST14-IPAAA44548-6HISのヌクレオチド配列を示す。
【図13】pEAK12D-IPAAA44548-6HISのヌクレオチド配列を示す。
【図14】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-NRの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図15】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-month-aaの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037が新規であることを実証している。
【図16A】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についての、翻訳されたヌクレオチドのデータベースであるNCBI-month-ntの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図16B】INSP037ポリペプチド(配列番号2)についてのNCBI-ntの結果で、100%のマッチングは存在せず、したがってINSP037は新規であることを示している。
【図17】ConA誘導性劇症肝炎のマウスモデルでのINSP037活性の実験の結果を示す。
【図18】ConA誘導性劇症肝炎のマウスモデルに対しIL-6効果を示している正の対照を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか又は前記アミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のポリペプチドの断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)又は(ii)の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項2】
4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として機能する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2に記載のアミノ酸配列に相同であり、且つ4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質である、請求項1の(iii)の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2に記載のアミノ酸配列又はその活性な断片と、80%を超える配列同一性、好ましくは90%、95%、98%又は99%を超える配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の断片又は機能的等価物。
【請求項5】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと顕著な構造的相同性を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能的等価物。
【請求項6】
配列番号2の配列に由来する7又はそれ以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20又はそれ以上)のアミノ酸残基からなり、且つ請求項1の(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の断片。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードしている精製核酸分子。
【請求項8】
配列番号1に記載の核酸配列を有するか、又は配列番号1に記載の核酸配列の余剰的等価物若しくは断片である、請求項7に記載の精製核酸分子。
【請求項9】
高ストリンジェンシー条件下で、請求項7又は8に記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求項11記載のベクターで形質転換されている宿主細胞。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合し、好ましくは前記ペプチドのインターフェロンγ様活性を阻害する、リガンド。
【請求項13】
抗体である、請求項12記載のリガンド。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現又は活性のレベルを上昇又は低下させる、化合物。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに、前記ポリペプチドの生物学的作用のいずれをも誘導することなく結合する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
天然の又は改変されている基質、リガンド、酵素、受容体又は構造的若しくは機能的模倣体である、請求項14又は15に記載の化合物。
【請求項17】
疾患の治療又は診断に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10に記載のベクター、請求項11に記載の宿主細胞、請求項12若しくは13に記載のリガンド又は請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
患者由来の組織における、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現のレベルを評価すること又は請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの活性を評価すること、及び前記発現又は活性のレベルを対照レベルと比較することを含み、ここで、前記レベルが前記対照レベルと異なることは疾患を示している、患者の疾患を診断する方法。
【請求項19】
in vitroで実施される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(a)請求項12又は13記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
(a)患者由来の組織サンプルを核酸プローブと、請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;及び
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;を含み、ここで、対照サンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なった患者サンプルのハイブリッド複合体レベルの検出は疾患を示している、請求項18又は19記載の方法。
【請求項22】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを核酸プライマーと、請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;
(c)前記サンプルの核酸を増幅する工程;及び、
(d)患者サンプル及び対照サンプルの両サンプルから、増幅した核酸のレベルを検出する工程、
を含み、ここで、対照サンプルの増幅した核酸のレベルと顕著に異なる患者サンプルの増幅した核酸のレベルの検出は疾患を示している、請求項18又は19記載の方法。
【請求項23】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を単離する工程;及び、
(c)前記疾患の指標として、前記核酸分子中で疾患に関連する変異の存在を検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む請求18又は19記載の方法。
【請求項24】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物において変異の有無を検出することをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
核酸分子を、前記核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に関連する変異に対応している任意の部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;及び、
疾患に関連する変異の有無の指標として、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を検出すること;
によって、患者における変異の有無を検出する請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
疾患が、免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬、移植片対宿主病、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患、侵襲性且つ慢性の歯周炎、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患、AIDS、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患、結核及びウイルス感染から選択される、請求項18〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質としての使用。
【請求項28】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド又は請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ワクチン組成物。
【請求項30】
免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬、移植片対宿主病、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患、侵襲性且つ慢性の歯周炎、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患、AIDS、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患、結核及びウイルス感染から選択される疾患の治療用薬物の製造に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド、請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド、請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項28記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者の疾患を治療する方法。
【請求項32】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較する場合に低い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較する場合に高い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアンタゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現若しくは活性のレベル又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子の発現のレベルを、患者由来の組織において一定期間にわたってモニターすることを含む、患者において疾患の治療をモニターする方法であって、
前記期間にわたる発現又は活性のレベルが、対照レベルに向かって変化することは前記疾患の緩解の指標である前記方法。
【請求項35】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を、前記ポリペプチド又は前記核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1又は2以上の化合物と接触させること;及び、
前記核酸分子又は前記ポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;を含む、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定する方法。
【請求項36】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーを使用するための指示書を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項37】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器を更に含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
核酸分子のアレイを含むキットであって、前記核酸分子の少なくとも1つが請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子である前記キット。
【請求項39】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合する1又は2以上の抗体、及び前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬を含む、キット。
【請求項40】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドを高レベルで若しくは低レベルで発現するように又は発現しないように形質転換されている、トランスジェニック又はノックアウト非ヒト動物。
【請求項41】
請求項40記載のトランスジェニック非ヒト動物を候補化合物と接触させること;及び前記動物の疾患に対する前記候補化合物の作用を決定することを含む、疾患を治療するのに有効な化合物をスクリーニングする方法。
【請求項42】
疾患が、請求項30に記載の疾患のいずれか1つである、請求項31〜37又は41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)のいずれかのポリペプチド:
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか又は前記アミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(ii) 4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質であるか、又は(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、(i)のポリペプチドの断片であるポリペプチド;又は
(iii) (i)又は(ii)の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項2】
4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質として機能する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2に記載のアミノ酸配列に相同であり、且つ4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質である、請求項1の(iii)の機能的等価物であるポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2に記載のアミノ酸配列又はその活性な断片と、80%を超える配列同一性、好ましくは90%、95%、98%又は99%を超える配列同一性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の断片又は機能的等価物。
【請求項5】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと顕著な構造的相同性を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能的等価物。
【請求項6】
配列番号2の配列に由来する7又はそれ以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20又はそれ以上)のアミノ酸残基からなり、且つ請求項1の(i)のポリペプチドと共通の抗原決定基を有する、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の断片。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードしている精製核酸分子。
【請求項8】
配列番号1に記載の核酸配列を有するか、又は配列番号1に記載の核酸配列の余剰的等価物若しくは断片である、請求項7に記載の精製核酸分子。
【請求項9】
高ストリンジェンシー条件下で、請求項7又は8に記載の核酸分子とハイブリダイズする、精製核酸分子。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求項11記載のベクターで形質転換されている宿主細胞。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合し、好ましくは前記ペプチドのインターフェロンγ様活性を阻害する、リガンド。
【請求項13】
抗体である、請求項12記載のリガンド。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現又は活性のレベルを上昇又は低下させる、化合物。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに、前記ポリペプチドの生物学的作用のいずれをも誘導することなく結合する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
天然の又は改変されている基質、リガンド、酵素、受容体又は構造的若しくは機能的模倣体である、請求項14又は15に記載の化合物。
【請求項17】
疾患の治療又は診断に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10に記載のベクター、請求項11に記載の宿主細胞、請求項12若しくは13に記載のリガンド又は請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
患者由来の組織における、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現のレベルを評価すること又は請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの活性を評価すること、及び前記発現又は活性のレベルを対照レベルと比較することを含み、ここで、前記レベルが前記対照レベルと異なることは疾患を示している、患者の疾患を診断する方法。
【請求項19】
in vitroで実施される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
(a)請求項12又は13記載のリガンドを、リガンド-ポリペプチド複合体の形成に適する条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;及び
(b)前記複合体を検出する工程;
を含む請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
(a)患者由来の組織サンプルを核酸プローブと、請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子と前記プローブとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プローブと接触させる工程;及び
(c)前記サンプルにおけるハイブリッド複合体の存在を検出する工程;を含み、ここで、対照サンプルのハイブリッド複合体のレベルと異なった患者サンプルのハイブリッド複合体レベルの検出は疾患を示している、請求項18又は19記載の方法。
【請求項22】
(a)患者の組織由来の核酸サンプルを核酸プライマーと、請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子と前記プライマーとの間でハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で、接触させる工程;
(b)対照サンプルを、工程(a)で用いられるのと同じ条件下で前記プライマーと接触させる工程;
(c)前記サンプルの核酸を増幅する工程;及び、
(d)患者サンプル及び対照サンプルの両サンプルから、増幅した核酸のレベルを検出する工程、
を含み、ここで、対照サンプルの増幅した核酸のレベルと顕著に異なる患者サンプルの増幅した核酸のレベルの検出は疾患を示している、請求項18又は19記載の方法。
【請求項23】
(a)疾患について検査される患者から、組織サンプルを入手する工程;
(b)前記組織サンプルから、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を単離する工程;及び、
(c)前記疾患の指標として、前記核酸分子中で疾患に関連する変異の存在を検出することによって、疾患について患者を診断する工程;
を含む請求18又は19記載の方法。
【請求項24】
核酸分子を増幅させて増幅産物を生成し、前記増幅産物において変異の有無を検出することをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
核酸分子を、前記核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブとストリンジェントな条件下で接触させて、疾患に関連する変異に対応している任意の部分で前記核酸プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分を有するハイブリッド二本鎖分子を形成させること;及び、
疾患に関連する変異の有無の指標として、前記プローブ鎖のハイブリダイズしていない部分の有無を検出すること;
によって、患者における変異の有無を検出する請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
疾患が、免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬、移植片対宿主病、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患、侵襲性且つ慢性の歯周炎、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患、AIDS、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患、結核及びウイルス感染から選択される、請求項18〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの、4−ヘリックスバンドルサイトカインフォールドのインターフェロンγ様分泌タンパク質としての使用。
【請求項28】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド又は請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項7〜9のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ワクチン組成物。
【請求項30】
免疫疾患、例えば自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、グレーブス病、自己免疫性脱毛症、強皮症、乾癬、移植片対宿主病、単球及び好中球の機能不全、B細胞機能の減衰、炎症性疾患、例えば急性炎、敗血性ショック、喘息、アナフィラキシー、湿疹、皮膚炎、アレルギー、鼻炎、結膜炎、糸球体腎炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、膵炎、消化器系炎症、潰瘍性大腸炎、敗血症、内毒素性ショック、敗血性ショック、悪液質、筋痛、強直性脊椎炎、重症筋無力症、ウイルス後疲労症候群、肺疾患、呼吸窮迫症候群、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道の炎症、創傷治癒、I型及びII型の糖尿病、子宮内膜症、皮膚疾患、ベーチェット病、免疫不全症、慢性肺疾患、侵襲性且つ慢性の歯周炎、癌、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、腎腫瘍、大腸腫瘍、ホジキン病、転移性黒色腫などの黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、神経芽細胞腫、血液病、鼻咽腔癌、白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患及びその他の新生物疾患、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、痛風、心血管系疾患、再灌流障害、アテローム性動脈硬化症、虚血性心臓疾患、心不全、脳卒中、慢性肝炎などの肝臓疾患、AIDS、AIDS関連症候群、神経疾患、繊維性疾患、男性不妊、加齢、並びに感染症、例えばプラズモディウム感染、細菌感染、真菌病(白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症など)、抗菌免疫を伴う疾患、結核及びウイルス感染から選択される疾患の治療用薬物の製造に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド、請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項10記載のベクター、請求項11記載の宿主細胞、請求項12若しくは13記載のリガンド、請求項14〜16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項28記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者の疾患を治療する方法。
【請求項32】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較する場合に低い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
疾患にかかっている患者での天然遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が健常な対象者での発現又は活性のレベルと比較する場合に高い疾患に対して、前記患者に投与されるポリペプチド、核酸分子、ベクター、リガンド、化合物又は組成物がアンタゴニストである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現若しくは活性のレベル又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子の発現のレベルを、患者由来の組織において一定期間にわたってモニターすることを含む、患者において疾患の治療をモニターする方法であって、
前記期間にわたる発現又は活性のレベルが、対照レベルに向かって変化することは前記疾患の緩解の指標である前記方法。
【請求項35】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子を、前記ポリペプチド又は前記核酸分子に対し結合親和性を有すると疑われる1又は2以上の化合物と接触させること;及び、
前記核酸分子又は前記ポリペプチドと特異的に結合する化合物を選択すること;を含む、疾患の治療及び/又は診断に有効な化合物を同定する方法。
【請求項36】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;前記核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;及び、疾患の診断を容易にするために前記プローブ及びプライマーを使用するための指示書を含む、疾患の診断に有用なキット。
【請求項37】
ハイブリダイズしないRNAを消化するための薬剤を保有する第三の容器を更に含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
核酸分子のアレイを含むキットであって、前記核酸分子の少なくとも1つが請求項7〜9のいずれか1項に記載の核酸分子である前記キット。
【請求項39】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合する1又は2以上の抗体、及び前記抗体と前記ポリペプチドとの間の結合反応の検出に有用な試薬を含む、キット。
【請求項40】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチドを高レベルで若しくは低レベルで発現するように又は発現しないように形質転換されている、トランスジェニック又はノックアウト非ヒト動物。
【請求項41】
請求項40記載のトランスジェニック非ヒト動物を候補化合物と接触させること;及び前記動物の疾患に対する前記候補化合物の作用を決定することを含む、疾患を治療するのに有効な化合物をスクリーニングする方法。
【請求項42】
疾患が、請求項30に記載の疾患のいずれか1つである、請求項31〜37又は41のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−537696(P2007−537696A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516450(P2006−516450)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002641
【国際公開番号】WO2004/113379
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002641
【国際公開番号】WO2004/113379
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】
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