説明

インダクタンス部品とこれを用いたモジュールデバイス及び電子機器

【課題】本発明は、コイルを有するインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器において、そのコイル内部における温度上昇の低減を目的とする。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、脚4Aを有する閉路状磁心4、5と、脚4Aに組み込まれたコイル7とを備え、コイル7には放熱部材9を密着させて設ける構成としたものである。
このような構成により、コイル7と放熱部材9の間に磁心4を介在させること無く、コイル7で発生した熱を効率よく放熱部材9に伝達することができる。その結果として、コイル7内部における温度上昇を大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを有するインダクタンス部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のインダクタンス部品は、図6に示されるように、トランス1の引出電極1Aを実装基板2に設けた貫通孔2Aに挿入する構成とするとともに、トランス1における磁心1Bの下面に放熱板3を設けることにより、コイル1Cで発生した熱を放熱させていた。
【0003】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−80382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のインダクタンス部品はコイル内部における温度上昇が問題となっていた。
【0005】
すなわち、上記従来の構成においては、コイル1Cと放熱板3との間に磁心1Bが介在してしまうため、コイル1Cから放熱板3への放熱効率が悪く、その結果として、コイル1C内部における温度上昇を生んでいた。
【0006】
そこで本発明は、コイルを有するインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器において、そのコイル内部における温度上昇の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、脚を有する閉路状磁心と、前記脚に組み込まれたコイルとを備え、前記コイルには放熱部材を密着させて設ける構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器は、放熱部材をコイルに密着させる構成としたことにより、コイルと放熱部材の間に磁心を介在させること無く、コイルで発生した熱を効率よく放熱部材に伝達することができる。その結果として、コイル内部における温度上昇を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1において、磁心4の中脚4Aと、磁心5の中脚5Aとを互いに対向させ閉路状磁心を構成しており、この中脚4A、5Aには、ボビン6を介してコイル7を巻回している。
【0011】
ここで、この中脚4Aは、図2に示すごとく、放熱部材としての放熱板9における貫通孔9Aに挿入させており、図1に示すごとく、コイル7と磁心4との間に介在させている。
【0012】
そして、磁心4の外脚4Cを、図2に示すごとく、放熱板9形成平面に垂直な方向に、図1に示す背脚4Bから、コイル7及び中脚4Aを覆うごとく形成している。これと同様に磁心5の外脚を、図1に示す背脚5Bから、コイル7及び中脚5Aを覆うごとく形成し、前述の外脚4Cと対向させている。
【0013】
ここで、このボビン6の下側(磁心4の背脚部4B対向面側)には切欠き6Bを設けており、この切欠き6Bから露出させたコイル7と、銅等の導電性の高い金属等からなる放熱板9とを、接着剤などの固着手段10により固着している。
【0014】
さらに、この放熱板9には、図2に示すごとく、その貫通孔9Aから外側部にまでスリット9Bを形成している。これは、1次巻線に電流が流れることにより発生した磁束に起因して、放熱板9において短絡電流が発生し、この短絡電流の発生による逆方向の磁束の発生を防ぐためである。
【0015】
さらに、この放熱板9は、図1に示すごとく、コイルと対向する部分9Cからコイルと対向しない部分9Dにまで設ける構成としている。
【0016】
なお、このスリット9Bは、図3に示すごとく、貫通孔9Aの径(あるいは幅)よりも太い幅を有するよう形成してもかまわない。ただし、図1に示すごとく、少なくとも放熱板9の一部がコイルと対向する部分9Cから形成される構成とすることが、放熱特性を向上させる上で望ましい。
【0017】
そして、図1、4に示すごとく、コイルと対向しない部分9Dにまで引き出された放熱板9の上側(磁心5の背脚部5B対向面側)には熱伝導性樹脂11を設けるとともに、この熱伝導性樹脂11の上側(磁心5の背脚部5B対向面側)には銅等からなるリードフレーム12を設けている。このリードフレーム12は、図1に示すごとく、その一端がコイル7の引出端子7Aと電気的に接続される構成とするとともに、その他端が実装基板13に設けられた貫通孔13Aに挿入される構成とすることにより、コイル7の電極を実装基板13表面まで引き出すことを可能としている。
【0018】
さらに、本実施形態においては、実装基板13に貫通孔13Bを設け、この貫通孔13Bに磁心5の背脚部5Bを陥没させることにより、このモジュールデバイス全体の低背化を可能としている。
【0019】
このように、本実施形態のモジュールデバイスは、コイル7と放熱板9の間に磁心4を介在させること無く、放熱板9をコイル7に密着させる構成としたことにより、コイル7と放熱板9の間に磁心4を介在させること無く、コイル7で発生した熱を効率よく放熱板9に伝達することができる。そして、放熱板9をコイルと対向する部分9Cから、コイル7と対向しない部分9Dにまで設ける構成とすることにより、コイル7から伝達されたその熱をコイルと対向しない部分9Dへ放出させることができるため、コイル7内部における温度上昇を大幅に低減することができる。
【0020】
さらに、本実施形態においては、放熱板9における熱伝導性樹脂11非形成面側にヒートシンク14を設けることにより放熱性を高めている。
【0021】
なお、コイル7と放熱板9との間に固着手段10を介在させない構成としてもかまわないが、本実施の形態に示すごとく、コイル7と放熱板9との間に接着剤などの固着手段10を設けることにより、コイル7と放熱板9との密着性を高め、コイル7から放熱板9への伝熱特性を高めることができるため望ましい。また、この固着手段10は熱伝導性の高い材料を用いることが望ましい。
【0022】
なお、図1に示すごとく、リードフレーム12の表面に、FET15やダイオード16などの電子部品を実装することも可能である。このFET15やダイオード16からの発熱も、熱伝導性樹脂11を介して放熱板9に伝達され、ヒートシンク14により放熱させることができる。
【0023】
なお、コイル7は巻線タイプのものでも、偏平形のものでもかまわないが、偏平形のものを用いると、放熱板9との接触面積を容易に確保することができるため望ましい。
【0024】
また、コイル7の形状は偏平形、巻線タイプに限られず、磁心4、5に組み込まれる構成であればよい。
【0025】
なお、放熱部材は板形状のものに限定しない。
【0026】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2におけるインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器について図5を参照しながら説明する。
【0027】
なお、実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
本実施の形態において、放熱板17にはコイル7を覆うごとく形成された屈曲部17Aを設けており、この屈曲部17Aを設けることにより、モジュールデバイス全体の低背化を可能としている。なお、屈曲部17Aの形状は省スペース化を適える形状であればコイル7を覆うごとく形成される形状に限定されないが、コイル7を覆う形状とすることにより、よりコイル7の熱を放熱することができ望ましい。
【0029】
また、磁心4の背脚部4Bと放熱板17との間に接着剤などの固着手段18を設けることにより、磁心4の熱を効率よく放熱板17に伝達することができる構成としている。
【0030】
さらに、コイル7の引出電極19をリードフレーム12に接続することなく、直接実装基板13の貫通孔13Cに挿入する構成とすることにより、実装基板13におけるFET15、ダイオード16の電極引出部分から離れた場所に、コイル7の電極引出部分を配置する構成を実現している。
【0031】
また、本実施の形態においては、中央部分に貫通孔20Aを有し、ピン端子21により実装基板13と電気的に接続される制御基板20を設けている。この貫通孔20Aに磁心5及びボビン6を埋め込む構造とするとともに、ボビン6に設けた位置決め手段としての位置決め部6Aによって制御基板20を位置決めすることにより、本モジュールデバイス内における制御基板20の位置を一定とすることができる。
【0032】
このようなパワーを変換するブロックを取り扱うモジュールデバイス内に、制御基板20を一定の位置に組み込むことにより、本モジュールデバイスの入出力特性の安定化を図ることができる。そのことにより、パワーの変換ブロックの標準化を図ることができるため、モジュールを使わない一品一様設計時の無駄を大幅に削減することができる。ここで言う設計時の無駄としては、基板設計工数、誤作動対策、異常試験の実施、異常対策等が挙げられる。
【0033】
なお、本実施の形態においては、位置決め手段としての位置決め部6Aをボビン6に設ける構成としたが、実装基板13や放熱板17などに設けてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のインダクタンス部品と、これを用いたモジュールデバイス、及び電子機器は、コイル内部における温度上昇を大幅に低減することができるという効果を有し、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1におけるモジュールデバイスの断面図
【図2】本発明の実施の形態1のモジュールデバイスにおける磁心と放熱板とを組み合わせた状態の上面図
【図3】本発明の実施の形態1のモジュールデバイスにおける磁心と放熱板とを組み合わせた状態の上面図
【図4】本発明の実施の形態1のモジュールデバイスにおける放熱板と熱伝導性樹脂とリードフレームとを組み合わせた状態の上面図
【図5】本発明の実施の形態2におけるモジュールデバイスの断面図
【図6】従来のインダクタンス部品の断面図
【符号の説明】
【0036】
4 磁心(閉路状磁心)
4A 中脚(脚)
5 磁心(閉路状磁心)
7 コイル
9 放熱板(放熱部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚を有する閉路状磁心と、
前記脚に組み込まれたコイルとを備え、
前記コイルには放熱部材を密着させて設けた
インダクタンス部品。
【請求項2】
放熱部材は、コイルと対向する部分からコイルと対向しない部分にまで形成した請求項1に記載のインダクタンス部品。
【請求項3】
放熱部材には屈曲部を設けた請求項1に記載のインダクタンス部品。
【請求項4】
放熱部材は放熱板とし、
この放熱板には脚に挿入される貫通孔を設けた
請求項1に記載のインダクタンス部品。
【請求項5】
放熱板には、貫通孔から放熱板外側部にまで形成されたスリットを設けた請求項4に記載のインダクタンス部品。
【請求項6】
放熱板には、コイルを覆うごとく形成された屈曲部を設けた
請求項4に記載のインダクタンス部品。
【請求項7】
コイルは偏平形コイルとした請求項4に記載のインダクタンス部品。
【請求項8】
請求項1に記載のインダクタンス部品における放熱部材に
電子部品を実装したモジュールデバイス。
【請求項9】
放熱部材の表面に熱伝導性樹脂を形成し、
この熱伝導性樹脂に熱的に接触されたリードフレームを設けた
請求項8に記載のモジュールデバイス。
【請求項10】
リードフレームとコイルの引出端子とを電気的に接続した請求項9に記載のモジュールデバイス。
【請求項11】
放熱部材の裏面にヒートシンクを設けた請求項8に記載のモジュールデバイス。
【請求項12】
請求項1〜7に記載のインダクタンス部品又は請求項8〜11に記載のモジュールデバイスの内、少なくともいずれか1つが搭載された電子機器。
【請求項13】
請求項8〜11に記載のモジュールデバイスに位置決め手段を設け、
この位置決め手段に位置決めされる制御基板を設けた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−72033(P2008−72033A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251053(P2006−251053)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】