説明

インバータ圧縮機駆動装置

【課題】リングコアの取付け固定用の部材を必要とせず、出力コードのスイッチングノイズが周辺の他の配線に輻射しない、安価で使い易いインバータ圧縮機駆動装置を提供する。
【解決手段】圧縮機47の電気接続端子部を覆うカバー1とインバータ圧縮機駆動装置のケースを一体とし、インバータ圧縮機駆動装置を圧縮機47に直接取付けるようにして、出力コード42の長さを最短にすると同時に、出力コード42に取付けたリングコア60をカバー1に収納するように構成したものであり、リングコア60を固定する別部材を必要とせず、出力コード42が周辺配線に接近しないようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等に搭載される冷却システムのインバータ圧縮機を駆動するインバータ圧縮機駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫等の冷却システムには圧縮機が搭載されており、特に、インバータ圧縮機においては、その駆動装置が必要であるが、インバータ圧縮機の駆動装置は高速スイッチング動作を行うため、スイッチングノイズを発生させる。
【0003】
スイッチングノイズの大きさは安全規格で規制されているため、スイッチングノイズを低減する手段として、インバータ駆動装置と圧縮機を電気接続するコードに焼結フェライト等の磁性材料で成形されたリングコアを取付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来のインバータ圧縮機駆動装置について説明する。
【0005】
図4は、特許文献1に記載された従来のインバータ圧縮機駆動装置の斜視図である。
【0006】
図4において、圧縮機100の側面に、ブラケット100aおよび電気接続用の接続端子100bを有している。
【0007】
圧縮機駆動装置104は、内部にスイッチング回路を持ち、そのスイッチング動作により圧縮機100を駆動する。
【0008】
カバー108は、ブラケット100aと嵌合して接続端子100bのある電気接続部を覆う防滴・感電防止構造を成している。
【0009】
出力コード112は、圧縮機100とインバータ圧縮機駆動装置104を電気接続するものであり、圧縮機100側の端に電気接続用のコネクタであるクラスタブロック116を有している。
【0010】
焼結フェライト等の磁性材料でリング状に成形されたリングコア120は、中央の穴部を出力コード112が貫通している。また、リングコア120は固定用部材124およびネジ128で周囲の筐体に固定される。
【0011】
以上のように構成されたインバータ圧縮機駆動装置について、以下その動作を説明する。
【0012】
インバータ圧縮機駆動装置104は、内部のスイッチング回路を動作させ、出力コード112およびクラスタブロック116を介して圧縮機100に通電させることにより、圧縮機100を所望の回転数にて回転させるように制御する。
【0013】
出力コード112には、インバータ圧縮機駆動装置のスイッチング動作により高周波のノイズが乗ることになるが、出力コード112には、リングコア120が取付けられているため、それにより高周波インピーダンスが増加され、高周波信号が熱に変換されることにより、スイッチングノイズが低減される。
【0014】
以上のような動作により、インバータ圧縮機駆動装置104は、スイッチングノイズを低減しながら、圧縮機100を回転制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−155925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の構成では、リングコア120の取付け固定に固定用部材124およびネジ128の部材が必要となり、その取付け工数も必要となる。加えて、リングコア120により低減されているというものの、出力コード112にはスイッチングノイズが乗っているため、出力コード112と周辺の配線が接近する場合などには、スイッチングノイズが他の周辺配線に輻射してしまうため、出力コード112は、他の周辺配線と距離を置いて配置しなければならないという課題を有していた。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、スイッチングノイズを低減することができ、配線仕様に制約を受けず、且つ、組立て工数も低減できるインバータ圧縮機駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ圧縮機駆動装置は、圧縮機の電気接続端子部を覆うカバーとインバータ圧縮機駆動装置のケースを一体とし、インバータ圧縮機駆動装置を圧縮機に直接取付けるようにして、出力コードの長さを最短にすると同時に、出力コードに取付けたリングコアをカバーに収納するように構成したものである。
【0019】
これによって、スイッチングノイズを低減するためのリングコアを固定する別部材を必要とせず、また、出力コードが周辺配線に接近しないようにすることができるので、周辺の配線仕様に制約を及ぼすことがなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインバータ圧縮機駆動装置は、リングコアを固定する別部材を必要とせず、出力コードが周辺配線に接近しないようにしたものであるから、スイッチングノイズを低減しながら、リングコアが容易に取付けられ、周辺の配線仕様に制約を及ぼすこともなく、安価で使い易いインバータ圧縮機駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の分解斜視図
【図2】同実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の斜視図
【図3】同実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の側面図
【図4】従来のインバータ圧縮機駆動装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
請求項1に記載の発明は、圧縮機と、前記圧縮機に取付けられ、かつ圧縮機の電気接続端子部を覆うカバーと、前記カバー内に収納され、かつ前記圧縮機を駆動するインバータ駆動回路と、前記インバータ駆動回路と前記圧縮機を接続する出力コードと、前記出力コードに取り付けられた焼結フェライト等の磁性材料で成形されたリングコアを具備し、さらに、前記カバーに、前記リングコアを収納固定するリングコア収納部を設けたものである。
【0023】
これによって、スイッチングノイズを低減しながら、出力コードの長さを最短にし、出力コードが周辺配線に接近しないようにでき、周辺の配線仕様に制約を及ぼさない、使い易いインバータ圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記リングコア収納部を、前記カバーの側壁とコネクタ接続作業を行う窓部を閉塞する蓋を備える構成とし、前記蓋の前記カバーへの取付けにより、前記リングコアを、前記カバーと前記蓋によって挟持固定したものである。
【0025】
これによって、リングコアを固定する別部材を必要とせず、リングコアの取付けを容易とし、安価、かつ組立て性の良いインバータ圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の分解斜視図、図2は、同実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の斜視図、図3は、同実施の形態1におけるインバータ圧縮機駆動装置の側面図である。
【0028】
図1から図3において、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂により射出成形されたカバー1には、内部にインバータ駆動回路であるプリント基板5が収納できるように、プリント基板5の大きさに対して若干大きい開口部9を有している。
【0029】
プリント基板5は、ガラス布・ガラス不織布エポキシ樹脂に銅箔パターンが表面に形成されており、複数の電子部品がはんだ付け実装されることにより、インバータ駆動回路を形成している。また、プリント基板5には、接続用のコネクタ13およびコネクタ14も実装されており、4箇所の角部には複数の基板取り付け穴5aが設けられている。
【0030】
カバー1には、コネクタ13およびコネクタ14からのコードを引き出すための窓部(開口)17が形成されており、コードを引き出し作業の後、蓋11を取り付けすることによって閉口されるようになっている。
【0031】
カバー1の内部4箇所には、開口部9に向かって突出した突出部1aが一体成型されて設けられており、この突出部1aには、空洞部を備えた筒状のゴムブッシュ19が突出部1aをゴムブッシュ19の空洞部に嵌め込むように、それぞれ取り付けられている。
【0032】
突出部1aの高さは、ゴムブッシュ19の高さよりも高く、先端がゴムブッシュ19より突出するようになっており、この突出した部分がプリント基板5の基板取り付け穴5aに嵌るようになっている。また、このゴムブッシュ19は、プリント基板5をカバー1に収納取付けた状態で、カバー1とプリント基板5によって挟み込まれている。
【0033】
カバー1の開口部9のそれぞれの角部には、取付け穴1bが開けられているほか、プレス加工されたアルミ合金製のアルミ板21の角部には、孔21aが開けられており、アルミ板固定用ネジ25にてアルミ板21をカバー1に固定して、開口部9を閉塞するようになっている。
【0034】
アルミ板21の内側面に密着して絶縁シート29が(例えば、2枚重ねられて)固定ネジ31にて取り付けられているが、この絶縁シート29は、安全規格を満足する電気絶縁性能(たとえば、1750V、1分間の絶縁耐力試験に耐える)を持っている。
【0035】
プリント基板5には、インバータ駆動回路の駆動半導体である圧縮機駆等動用のIPM(インテリジェントパワーモジュール)等である半導体素子5bが実装されているが、半導体素子5bだけは、コネクタ13等の他の部品とは反対側のアルミ板21と対向する実装面に実装されている。
【0036】
半導体素子5bは、絶縁シート29が取り付けられたアルミ板21と密着しており、アルミ板21をカバー1に取付けることによって、プリント基板5がゴムブッシュ19を圧縮状態にしている。
【0037】
密閉型の圧縮機47の外郭には、接続端子47aを有するほか、金属板を折り曲げ加工したブラケット51が溶接により取付けられており、インバータ駆動回路であるプリント基板を収納するカバー1の底部がブラケット51と向き合う方向で、カバー1の取付け穴1cをブラケット51のネジ穴51aに取り付けネジ55によって固定されることによって、圧縮機47に取り付けられている。
【0038】
圧縮機47の電気接続端子部である接続端子47aは、カバー1とブラケット51により囲われており、防滴・感電防止構造を構成している。
【0039】
出力コード42のプリント基板5側は、コネクタ14によりプリント基板5の出力部に接続されている。また、圧縮機47側には、接続用のクラスタブロック40が取付けられており、カバー1の底部に設けられた取り出し穴1dからカバー1の外部に出て、圧縮機47の接続端子47aに接続される。
【0040】
また、出力コード42には、スイッチングノイズの低減のため、焼結フェライト等の磁性材料でリング状に成形されたリングコア60が取付けられている。
【0041】
リングコア60は、出力コード42がリングコア60の中央の穴部を貫通した状態でカバー1側壁のリングコア収納部1eに配置されており、カバー1の窓部17を蓋11で閉塞し、ネジ64にて固定することにより、カバー1と蓋11により挟まれてリングコア収納部1eに密着して取付けられている。
【0042】
また、出力コード42は、カバー1内のみに収納されるようになっている。
【0043】
電源コード44は、コネクタ13にてプリント基板5に接続されるとともに、反対側は外部の電源へ接続され、プリント基板5に電源を供給している。
【0044】
以上のように構成されたインバータ圧縮機駆動装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0045】
インバータ駆動回路であるプリント基板5は、電源コード44から電源が供給され、プリント基板5内の回路で整流されたDC電源を半導体素子5bでスイッチングし、出力コード42で圧縮機47に供給することにより、圧縮機47を所望の回転数で運転する。
【0046】
したがって、出力コード42に不必要なスイッチングノイズが乗ることになるが、出力コード42には、リングコア60が取付けられているため、出力コード42の高周波インピーダンスが増加され、高周波信号が熱に変換されることにより、スイッチングノイズは低減される。
【0047】
ここでリングコア60は、カバー1のリングコア収納部1eに蓋11で圧接して取付け
られているため、圧縮機47の振動が加わったとしても、カバー1とぶつかって破損することはない。
【0048】
ところで、半導体素子5bがスイッチング動作を行い、圧縮機47を駆動すると、半導体素子5bは発熱するが、その発熱は密着しているアルミ板21へ熱伝達し、カバー1の外部へと放熱されるようになっている。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、出力コード42の長さが最短で、カバー1内のみに収納されているため、周辺の配線に接近しないようになっており、スイッチングノイズに起因する周辺の配線仕様への制約を無くせるという効果があり、使い易いインバータ圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0050】
また、出力コード42に取付けたリングコア60をカバー1に収納し、蓋11で固定するようにしているため、リングコア60を固定する別部材を必要とせず、リングコア60が容易に取付けられるという効果があり、安価なインバータ圧縮機駆動装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかるインバータ圧縮機駆動装置は、リングコアを固定する別部材を必要とせずにリングコアが容易に取付けられるとともに、スイッチングノイズに起因する周辺の配線仕様への制約を無くすことができるので、リングコアを使用した他の電力制御機器、家庭電化機器などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 カバー
1e リングコア収納部
5 プリント基板(インバータ駆動回路)
11 蓋
17 窓部
42 出力コード
47 圧縮機
47a 接続端子(電気接続端子部)
60 リングコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、前記圧縮機に取付けられ、かつ圧縮機の電気接続端子部を覆うカバーと、前記カバー内に収納され、かつ前記圧縮機を駆動するインバータ駆動回路と、前記インバータ駆動回路と前記圧縮機を接続する出力コードと、前記出力コードに取り付けられた焼結フェライト等の磁性材料で成形されたリングコアを具備し、さらに、前記カバーに、前記リングコアを収納固定するリングコア収納部を設けたインバータ圧縮機駆動装置。
【請求項2】
前記リングコア収納部を、前記カバーの側壁とコネクタ接続作業を行う窓部を閉塞する蓋を備える構成とし、前記蓋の前記カバーへの取付けにより、前記リングコアを、前記カバーと前記蓋によって挟持固定した請求項1に記載のインバータ圧縮機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62972(P2013−62972A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200460(P2011−200460)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】