説明

インフレータブル物品用のセルフシーリング組成物

主要エラストマーとしての、不飽和ジエンエラストマー;
30phrと90phrの間の質量含有量を有する熱可塑性炭化水素可塑剤樹脂;
Tg (ガラス転移温度)が−20℃よりも低く、0〜60phrの間の質量含有量を有する液体可塑剤;および、
0〜30phr未満の充填剤、
を少なくとも含むことを特徴とする、インフレータブル物品におけるパンク防止層として特に用いられるセルフシーリングエラストマー組成物。
本発明の組成物を含むパンク防止層を備えたタイヤのようなインフレータブル物品。上記パンク防止層は、有利なことに、例えばブチルゴムをベースとする気密層と組合せて、インフレータブル物品内に、パンク防止気密ラミネートを形成させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフシーリング組成物、およびこれら組成物の、任意のタイプの“インフレータブル”物品、即ち、定義によれば、空気によって膨張させたときにその使用可能な形状となる任意の物品におけるパンク防止層としての使用に関する。
本発明は、さらに詳細には、インフレータブル物品、特に、インフレータブルタイヤにおける、稼動中の穿孔による如何なる開孔も封鎖するためのそのような組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に近年、タイヤ製造業者は、インフレータブル(inflatable:膨張式/空気注入式)タイプの疲労した車輪の極めて初期の使用にさかのぼる問題、即ち、車両が1本以上のタイヤの著しいまたは完全な圧力減にもかかわらず走行し続けるのを如何にして可能にするかという問題に対する新規な解決策を開発するのに著しい努力を払っている。数十年間、スペア車輪が唯一且つ一般的な解決法であるとみなされていた。その後、最近になって、可能な限りスペアタイヤを使用しないという著しい利点が出現している。“エクステンデッド・モビリティ(extended mobility)”の概念が開発された。関連技術は、パンクまたは圧力低下後も、順守すべきある種の制約に応じて、同じタイヤで走行することを可能にしている。このことは、例えば、多くの場合危険な状況において停止しスペア車輪を装着する必要なしに、救難地点まで運転するのを可能にする。
【0003】
そのような目的を達成するのを可能にし、且つ、定義によれば、自動的に、即ち、何らの外的介入なしで、クギのような異物によってパンクした場合にタイヤを密封することのできるセルフシーリング組成物は、開発するのが特に困難である。
使用可能であるためには、セルフシーリング層は、物理的および化学的性質の多くの条件を満たさなければならない。特に、セルフシーリング層は、極めて広い操作温度範囲に亘って、また、タイヤの寿命全体に亘って有効でなければならない。セルフシーリング層は、穿刺物体がその場に残存している場合にその孔を塞ぎ得なければならず、穿刺物体が除かれている場合は、セルフシーリング層は、その孔を充たしてタイヤを密封し得なければならない。
【0004】
多くの解決法が、考案されてはいるものの、特に、経時的に安定性に欠き或いは極端な操作温度条件下においては有効性に欠くために、或いは、これらのセルフシーリング組成物の製造および/または使用における困難性故に、車両タイヤにおいては真に開発され得ていない。
従って、高温において良好な有効性を残存させるために、文献US‐A‐4 113 799号(またはFR‐A‐2 318 042号)は、セルフシーリング層として、高分子量を有するブチルゴム及び低分子量を有するブチルゴムの組合せを含み、部分的に架橋させ、必要に応じて小割合の熱可塑性スチレンエラストマーと一緒の組成物を提案している。
【0005】
文献US‐A‐4 228 839号は、タイヤ用のセルフシーリング層として、照射分解性の第1のポリマー材料、例えば、ポリイソブチレンと、照射架橋性の第2のポリマー材料、好ましくはブチルゴムとを含有するゴムコンパウンドを提案している。
また、文献US‐A‐4 426 468号は、極めて高い分子量を有する架橋ブチルゴムをベースとするタイヤ用のセルフシーリング組成物を提案している。
【0006】
ブチルゴムの既知の欠点は、ブチルゴムが広い温度範囲に亘って大きなヒステリシスの損失(高tanδレベル)を被ることであり、この欠点は、大きいヒステリシスの増大およびタイヤの転がり抵抗性のかなりの悪化でもって、上記のセルフシーリング組成物それ自体に対して影響を有する。
また、不飽和ジエンエラストマー(天然ゴム)をベースとするセルフシーリング組成物は、特に、特許US‐A‐4 913 209号、US‐A‐5 085 942号およびUS‐A‐5 295 525号において、同じタイプの用途について説明されている。
【0007】
これらの組成物は、粘着付与剤としての常に100phrよりも多い高含有量の炭化水素樹脂と大量の液体状態のエラストマー(イソプレン)の組合せた存在に特徴を有する。
ところで、そのような高い樹脂含有量は、その混入にエラストマーマトリックスの極めて長時間の混錬を必要とするという事実は別として、ヒステリシスに対して、ひいては、タイヤの転がり抵抗性に対しても不利益となり得る。
さらにまた、大量の液体エラストマーは上記組成物に高い流動性を与え、この高流動性は、他の欠点の、特に、ある種のタイヤを使用する場合にしばしば直面する、タイヤを比較的高温(典型的には60℃よりも高い)で使用するときのセルフシーリング組成物のクリーピングのリスクの源である。
【発明の概要】
【0008】
研究の続行中、本出願人等は、ブチルゴムも、大量の炭化水素樹脂と液体エラストマーも必要としない新規なセルフシーリング組成物を見出した。この組成物は、インフレータブル物品において、特に比較的高温で使用する場合に、従来技術のセルフシーリング組成物よりも良好なパンク防止性能を与える。
【0009】
従って、第1の主題によれば、本発明は、特にインフレータブル物品におけるパンク防止層として使用することのできるセルフシーリングエラストマー組成物に関し、該組成物は、少なくとも下記成分を含むことを特徴とする:
主要エラストマーとしての、不飽和ジエンエラストマー;
30phrと90phrの間の炭化水素樹脂;
Tg (ガラス転移温度)が−20℃よりも低く、0phrと60phrの間の質量含有量を有する液体可塑剤;および、
0〜30phr未満の充填剤。
【0010】
第2の主題によれば、本発明は、セルフシーリング組成物として、本発明に従うセルフシーリング組成物を含むパンク防止層を備えたインフレータブル物品に関する。
好ましくは、本発明のインフレータブル物品、特に、タイヤは、上記パンク防止層と組合せたとき、パンク防止気密ラミネートを構成する気密層も含み、このラミネートは、例えば、このラミネートを上記インフレータブル物品またはタイヤの内壁上に置いたときに特に有利である。
【0011】
本発明は、特に、乗用車タイプの車両;SUV (スポーツ用多目的車);二輪車(特に自転車またはオートバイ);航空機;または、バン類、“重量”車両(即ち、地下鉄列車、バス、道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、農業用および土木工学機械のような道路外車両)から選ばれる産業用車両;および、他の輸送または操作用車両に装着することを意図するタイヤに関する。
【0012】
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様をこれらの実施態様に関連する図1および2と一緒に考慮すれば容易に理解し得るであろう;これらの図面は、下記を、特定の縮尺で描いてない簡略化した形で略図的に示す:
半径断面における、本発明に従うセルフシーリング組成物を使用したタイヤの1例(図1);および、
本発明に従うセルフシーリング組成物を製造するのに使用することのできる配合用押出機の1例(図2)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半径断面における、本発明に従うセルフシーリング組成物を使用したタイヤの例を示す。
【図2】本発明に従うセルフシーリング組成物を製造するのに使用することのできる配合用押出機の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I. 発明の詳細な説明
本説明においては、他に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量%である。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、“a”よりも大きい値から出発し“b”よりも小さい値に至る範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、“a”から出発し“b”に至る値の範囲を意味する、即ち、厳格な限定値“a”および“b”を含む。
【0015】
I‐1. セルフシーリング組成物
本発明のセルフシーリング組成物または材料は、少なくとも、主要エラストマー(好ましくは、50phrよりも多い含有量を有する)としての不飽和ジエンエラストマー、30phrと90phrの間の炭化水素樹脂および−20℃よりも低いTgを有し且つ0phrと60phrの間の質量含有量を有する液体可塑剤を含むエラストマー組成物である(phrは、100質量部の固形ゴム当りの質量部を示す)。この組成物のもう1つの本質的な特徴は、この組成物が充填剤を含有しないか、或いは、せいぜい、この組成物が30phrよりも少ない充填剤を含有することである。
【0016】
I‐1‐A. 不飽和ジエンエラストマー
用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(即ち、共役型であるまたは共役型でない2個の炭素‐炭素二重結合を含有するモノマー)から少なくとも一部得られるエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0017】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、飽和および不飽和に分類し得る。本出願においては、“不飽和”(または“本質的に不飽和”)ジエンエラストマーなる用語は、共役ジエンモノマーから一部得られ且つ30モル%よりも多い共役ジエンから得られる繰返し単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエン類とアルファ‐オレフィン類とのコポリマーのようなジエンエラストマーは、この定義から除外され、その低いジエン由来繰返し単位含有量(常に15モル%未満)故に、“飽和”または“本質的に飽和”のジエンエラストマーと称し得る。
【0018】
好ましくは、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン)の繰返し単位含有量(モル%)を有する不飽和ジエンエラストマーを使用する;そのようなジエンエラストマーは、さらに好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー(例えば、スチレン‐ブタジエンゴム即ちSBR)、イソプレンコポリマー(勿論、ブチルゴム以外の)、およびこれらのエラストマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0019】
液体タイプのジエンエラストマーと比較して、本発明の組成物の不飽和ジエンエラストマーは、定義によれば、固体である。その数平均分子量(Mn)は、好ましくは100 000g/モルと5 000 000g/モルの間、より好ましくは200 000g/モルと4 000 000g/モルの間である。上記Mn値は、既知の方法で、例えば、SECによって測定する:テトラヒドロフラン溶媒;35℃の温度;1g/lの濃度;1ml/分の流量;注入前に0.45μmの有孔度フィルターにより濾過した溶液;較正用ポリマー(例えば、ポリイソプレン)によるムーア(Moore)較正;直列の4本WATERSカラムセット(“STYRAGEL” HMW7、HMW6E、2本のHT6E);示差屈折計(WATERS2410)検出およびその関連操作ソフトウェア(“WATERS EMPOWER”)。
【0020】
さらに好ましくは、本発明の不飽和ジエンエラストマー組成物は、イソプレンエラストマーである。用語“イソプレンエラストマー”は、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン‐イソプレンコポリマー(SIR)、スチレン‐ブタジエン‐イソプレンコポリマー(SBIR)およびこれらのエラストマーのブレンドによって形成される群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである。これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは、90%よりも多い、より好ましくは95%よりも多い、特に98%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0021】
上記不飽和ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーは、エラストマーマトリックスの全てを、或いは、上記マトリックスが1種以上の他のエラストマーをジエンエラストマーまたは例えば熱可塑性エラストマータイプの非ジエンエラストマーと一緒に含む場合、上記マトリックスの質量による主要量(好ましくは50%よりも多く、さらに好ましくは70%よりも多くを含む)を構成し得る。換言すれば、また、好ましくは、本発明の組成物においては、不飽和(固形)ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーの含有量は、50phrよりも多く、より好ましくは70phrよりも多い。さらにより好ましくは、不飽和ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーのこの含有量は、80phrよりも多い。
【0022】
1つの特定の実施態様によれば、上記不飽和ジエンエラストマーは、特に天然ゴムのようなイソプレンジエンエラストマーである場合、本発明のセルフシーリング組成物中に存在する唯一のエラストマーである。しかしながら、上記不飽和ジエンエラストマーは、他の可能性ある実施態様によれば、小含有量(質量による)の他の(固形)エラストマーと組合せ得る;これらの他のエラストマーは、不飽和ジエンエラストマー(例えば、BRまたはSBR)、または飽和ジエンエラストマー (例えば、ブチル)、またはジエンエラストマー以外のエラストマー、例えば、熱可塑性スチレン(TPS)エラストマーのいずれかであり、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)、スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)、スチレン/エチレン‐ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン‐プロピレン/スチレン(SEPS)、スチレン/エチレン‐エチレン‐プロピレン/スチレン(SEEPS)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0023】
驚くべきことに、充填していない(または極めて軽度に充填した)この不飽和ジエンエラストマーは、熱可塑性炭化水素樹脂を推奨の狭い範囲で添加した後に、本説明の残余において詳細に説明するように、高度に有効なセルフシーリング組成物の機能を満たし得ることが判明している。
【0024】
I‐1‐B. 炭化水素樹脂
上記セルフシーリング組成物の第2の本質的構成成分は、23℃で固体である可塑剤としての炭化水素樹脂である。
用語“樹脂”は、本出願においては、当業者にとっては既知であるように、定義にすれば、オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に、室温(23℃)で固体である熱可塑性化合物に対して使用される。
【0025】
炭化水素樹脂は、炭素と水素を本質的にベースとする、当業者にとって周知のポリマーであり、特に、ポリマーマトリックス中で可塑剤または粘着付与剤として使用し得る。炭化水素樹脂は、使用する含有量において、真の希釈剤として作用するように、使用を意図するポリマー組成物と本来混和性(即ち、相溶性)である。炭化水素樹脂は、例えば、R. Mildenberg、M. ZanderおよびG. Collin (New York, VCH, 1997, ISBN 3‐527‐28617‐9)による“Hydrocarbon Resins”と題した著作物に記載されており、その第5章は、炭化水素樹脂の特にゴムタイヤの用途に当てられている(5.5. "Rubber Tires and Mechanical Goods")。炭化水素樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族であり得、或いは脂肪族/芳香族タイプ、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。炭化水素樹脂は、石油系(その場合、石油樹脂としても知られている)または石油系でない天然または合成樹脂であり得る。
【0026】
炭化水素樹脂のガラス転移温度 (Tg)は、好ましくは0℃よりも高く、特に20℃よりも高い(通常は、30℃と95℃の間)。
また、知られているとおり、これらの炭化水素樹脂は、これらの樹脂が加熱したときに軟化し、従って、成形することができる点で、熱可塑性樹脂とも称し得る。また、炭化水素樹脂は、軟化点または軟化温度(この温度において、例えば粉末形の樹脂生成物は膠質となる)によっても定義し得る。この軟化点は、概してかなり不十分に定義されている樹脂の融点と置き換わる傾向にある。炭化水素樹脂の軟化点は、一般に、Tgよりも約50〜60℃高い。
本発明の組成物においては、上記樹脂の軟化点は、好ましくは40℃よりも高く(特に40℃と140℃との間)、より好ましくは50℃よりも高い(特に50℃と135℃の間)。
【0027】
上記樹脂は、30phrと90phrの間の質量による量で使用する。30phrよりも低いと、パンク防止性能が、組成物の過剰の剛性のために、不十分であることが判明しており、一方、90phrよりも高いと、上記材料は、不十分な機械的強度を有し、しかも、その性能が高温(典型的には60℃よりも高い)において劣化するというリスクを伴う。これらの理由により、上記樹脂の含有量は、好ましくは40phrと80phrの間、さらに好ましくは少なくとも45phrに等しく、特に45〜75phrの範囲内である。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも任意の1つ、さら好ましくは全てを有する:
・25℃よりも高いTg
・50℃よりも高い(特に50℃と135℃の間の)軟化点;
・400g/モルと2000g/モルの間の数平均分子量(Mn);および、
・3よりも低い多分散性指数(Ip) (Ip = Mw/Mn、式中、Mwは質量平均分子量であること思い起こされたい)。
【0029】
さら好ましくは、この炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てを有する:
・25℃と100℃の間(特に30℃と90℃の間)のTg
・60℃よりも高い、特に60℃と135℃の間の軟化点;
・500g/モルと1500g/モルの間の数平均分子量Mn;および、
・2よりも低い多分散性指数Ip
【0030】
Tgは、規格ASTM D3418 (1999年)に従って測定する。軟化点は、規格ISO4625 (“RingおよびBall”の方法)に従って測定する。マクロ構造(Mw、MnおよびIp)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:テトラヒドロフラン溶媒;35℃の温度;1g/lの濃度;1ml/分の流量;注入前に0.45μmの有孔度フィルターにより濾過した溶液;ポリスチレンを使用するムーア(Moore)較正;直列の3本WATERSカラムセット(“STYRAGEL”HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(WATERS2410)検出およびその関連操作ソフトウェア(WATERS EMPOWER)。
【0031】
そのような炭化水素樹脂の例としては、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂のブレンドによって形成される群から選ばれる炭化水素樹脂を挙げることができる。上記のコポリマー樹脂のうちでは、さらに詳細には、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノール樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、およびこれらの樹脂のブレンドによって形成される群から選ばれるコポリマーを挙げることができる。
【0032】
用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、アルファ‐ピネンモノマー、ベータ‐ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する。好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形である:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン(右旋性鏡像体と左旋性鏡像体のラセミ体混合物)。適切なビニル芳香族モノマーは、例えば、スチレン;アルファ‐メチルスチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン類;クロロスチレン類;ヒドロキシスチレン類;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびC9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーである。
【0033】
さら詳細には、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/(D)CPDコポリマー樹脂、C5留分/スチレンコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、およびこれらの樹脂のブレンドによって形成された群から選ばれる樹脂を挙げることができる。
【0034】
上記樹脂は、全て当業者にとって周知であり、例えば、ポリリモネン樹脂の場合は、DRT社から品名“Dercolyte”として販売されている樹脂;C5留分/スチレン樹脂またはC5留分/C9留分樹脂に関しては、Neville Chemical Company社から品名“Super Nevtac”として販売されている、またはKolon社から品名“Hikorez”として販売されている樹脂;或いは、Struktol社から品名“40 MS”または“40 NS”として、またはExxon Mobil社から品名“Escorez”(芳香族および/または脂肪族樹脂のブレンドである)として販売されている樹脂が商業的に入手可能である。
【0035】
I‐1‐C. 液体可塑剤
本発明のセルフシーリング組成物は、60phrよりも少ない(換言すれば、0phrと60phrの間の)含有量でもって、“低Tg”可塑剤と称する23℃において液体である可塑剤をさらに含むという本質的特徴を有する;この可塑剤の機能は、特に、上記ジエンエラストマーと炭化水素樹脂を希釈することによってマトリックスを軟質化させ、特に“低温”セルフシーリング性能(即ち、典型的に0℃よりも低い温度における性能)を改良することである。そのTgは、定義すれば、−20℃よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い。
【0036】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の液体エラストマーまたは任意の増量剤オイル、即ち、より一般的には、エラストマー、特に、ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらの可塑剤またはオイル類は、比較的粘稠であり、特にその性質からして室温で固体である炭化水素樹脂と対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。
【0037】
特に適するのは、例えば、上述した特許文献US 4 913 209号、US 5 085 942号およびUS 5 295 525号に記載されているような、例えば、液体BR、液体SBR、液体IRまたは解重合天然ゴムの形の、典型的には300と90 000の間、より一般的には400と50 000の間の低数平均分子量(Mn)を有する液体エラストマーである。また、そのような液体エラストマーと下記で説明するようなオイル類とのブレンドも使用することができる。
【0038】
また、オイル増量剤、特に、ポリオレフィンオイル(即ち、オレフィン、モノオレフィンまたはジオレフィンの重合から得られるオイル);パラフィン系オイル、ナフテン系オイル(低または高粘度を有し、水素化または非水素化の);芳香族またはDAE (留出物芳香族系抽出物(distillate aromatic extract))オイル、MES (中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油(およびそのオリゴマー、例えば、ナタネ油、ダイズ油またはヒマワリ油)およびこれらオイル類の混合物から形成される群から選ばれるオイル増量剤も適している。
【0039】
1つの特定の実施態様によれば、ポリブテンタイプのオイル、例えば、特にポリイソブチレン(PIB)オイルを使用し得る;このオイルは、試験した他のオイル類、特に、通常のパラフィン系オイルと比較して、諸性質の優れた妥協点を示す。例えば、PIBオイルは、特に、Univar社から品名“Dynapak Poly”(例えば“Dynapak Poly 190”)として、BASF社から品名“Glissopal”(例えば“Glissopal 1000”)または“Oppanol”(例えば、“Oppanol B12”)として市販されている;パラフィン系オイルは、例えば、Exxon社から品名“Telura 618”として或いはRepsol社から品名“Extensol 51”として市販されている。
【0040】
また、液体可塑剤としては、エーテル、エステル、ホスフェートおよびスルホネート可塑剤、特に、エステルおよびホスフェートから選ばれる可塑剤が適している。好ましいホスフェート可塑剤としては、12個と30個の間の炭素原子を含むホスフェート可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルリンを挙げることができる。好ましいエステル可塑剤としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる化合物を挙げることができる。上記トリエステルのうちでは、好ましいグリセリントリエステルとして、C18不飽和脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物によって形成された群から選ばれる脂肪酸を主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)含むグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くの、さらにより好ましくは80質量%よりも多くのオレイン酸を含む。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレート)は、タイヤトレッドにおける可塑剤として周知である;例えば、そのようなトリエステルは、特許出願WO 02/088238号(またはUS 2004/0127617号)に記載されている。
【0041】
液体可塑剤の数平均分子量 (Mn)は、好ましくは400 g/モルと25 000g/モルの間、さらにより好ましくは800 g/モルと10 000g/モルの間である。過度に低いMn値においては、可塑剤が組成物の外に移行するリスクが存在し、一方、過度に高いMn値は、この組成物が硬質になり過ぎる結果となり得る。1000と4000g/モルの間のMn値が、意図する用途、特に空気タイヤにおける使用において優れた妥協点となることが判明している。
【0042】
液体可塑剤の数平均分子量(Mn)は、SECにより、既知の方法で測定する;試験標本を、先ず、約1g/lの濃度でもってテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルターで濾過する。装置は、WATERS Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は1ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は30分である。商品名STYRAGEL HT6Eを有する2本のWATERSカラムセットを使用する。ポリマー試験標本溶液の注入容量は、100μlである。検出器は、WATERS 2410示差屈折計であり;クロマトグラフデータを処理するその関連ソフトウェアは、WATERS MILLENNIUMシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得た較正曲線と対比する。
【0043】
要するに、上記液体可塑剤は、好ましくは、液体エラストマー、ポリオレフィンオイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、DAEオイル、MESオイル、TDAEオイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれらの化合物の混合物から形成される群から選択する。より好ましくは、上記液体可塑剤は、液体エラストマー、ポリオレフィンオイル、植物油およびこれらの化合物の混合物から形成される群から選択する。
【0044】
当業者であれば、以下の説明および実施態様に照らして、上記セルフシーリン組成物の特定の使用条件、特に、使用することを意図するインフレータブル物品の使用に応じて液体可塑剤の量を調整することは可能であろう。
【0045】
好ましくは、上記液体可塑剤含有量は、5phr〜40phrの範囲内、より好ましくは10phr〜30phrの範囲内である。上記の最低値よりも低いと、上記エラストマー組成物は、ある種の用途において高過ぎる剛性を有するリスクに至り、一方、推奨する最高値よりも高いと、上記組成物が不十分な凝集力を有し且つセルフシーリング特性を悪化させるリスクが存在する。
【0046】
I‐1‐D. 充填剤
【0047】
本発明の組成物は、充填していないまたはほんの極めて僅かにしか充填していない、即ち、0〜30phr未満の充填剤を含有するという本質的特性を有する。
用語“充填剤”とは、本明細書においては、補強用(典型的には、好ましくは500nm未満、特に20nmと200nmの間の質量平均粒度を有するナノ粒子)であるか或いは非補強用または不活性である(典型的には、1μmよりも大きい、例えば、2μmと200μmの間の質量平均粒度を有するマイクロ粒子)のいずれかの任意のタイプの充填剤を意味することを理解されたい。
【0048】
これらの充填剤は、補強用であるまたは補強用ではないにかかわらず、本質的には、最終組成物に寸法安定性、即ち、必要とする最低の機械的一体性を付与するためのみである。充填剤が、エラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーに対して補強性であることが分っている場合は、幾分少なめの量の充填剤を使用することが好ましい。
多過ぎる、特に、30phrよりも多い量は、もはや、最低限必要とする可撓性、変形性およびクリープ特性を達成することを不可能にする。これらの理由により、本発明の組成物は、好ましくは0〜20phr未満、より好ましくは0〜10phr未満の充填剤を含有する。
【0049】
補強用充填剤として当業者に知られている充填剤の例としては、特に、カーボンブラックナノ粒子もしくは補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンドを挙げることができる。
例えば、カーボンブラックとしては、タイヤにおいて一般的に使用される全てのカーボンブラック類、特に、HAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(これらはタイヤ級ブラック類と称している)が適している。そのようなブラック類のうちでは、さらに詳細には、以下を挙げることができる:例えば、N326、N330、N347、N375、N683またはN772ブラック類のような300、600または700シリーズのカーボンブラック類(ASTM級)。適切な補強用無機充填剤は、特に、シリカ(SiO2)タイプの鉱質充填剤、特に、450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gのBET表面積を有する沈降または焼成シリカである。
【0050】
非補強用または不活性充填剤として当業者に知られている充填剤の例としては、特に、下記を挙げることができる:天然炭酸カルシウム(チョーク)または合成炭酸カルシウム、合成または天然ケイ酸塩(例えば、カオリン、タルクまたは雲母)、粉砕シリカ、酸化チタン、アルミナまたはアルミノケイ酸塩のマイクロ粒子。層状充填剤の例としては、特に、グラファイト粒子を挙げることができる。着色用充填剤または着色充填剤は、上記組成物を所望の色合に応じて着色するのに有利に使用し得る。
【0051】
充填剤の物理的状態は、重要ではない;充填剤は、粉末、ミクロスフィア、顆粒またはビーズ、或いは任意の他の適切な濃密形の形状であり得る。勿論、用語“充填剤”は、種々の補強用および/または非補強用充填剤の混合物も意味することを理解されたい。
当業者であれば、本説明に照らして、上記セルフシーリング組成物の配合を如何にして調整して所望の特性レベルを達成し且つその配合を想定する特定の用途に適応化するかは、承知していることであろう。
【0052】
本発明の1つの特定の有利な実施態様によれば、補強用充填剤が本発明の組成物中に存在する場合、その含有量は、好ましくは5phr未満(即ち、0phrと5phrの間)、特に2phr未満(即ち、0phrと2phrの間)である。そのような含有量は、本発明の組成物に優れたセルフシーリング性能を依然として付与すると共に、本発明の組成物の製造方法にとって特に有益であることが判明している。さらに好ましくは、0.5phrと2phrの間の含有量を、特に充填剤がカーボンブラックである場合に使用する。
【0053】
I‐1‐E. 各種添加剤
上記のベース構成成分、即ち、不飽和ジエンエラストマー、炭化水素可塑化用樹脂、液体可塑剤および任意構成成分としての充填剤は、それら自体で、上記セルフシーリング組成物が、上記セルフシーリング組成物を使用するインフレータブル物品内でそのパンク防止機能を完全に満たすのに十分である。
【0054】
しかしながら、例えば、UV安定剤、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤、各種他の安定剤のような保護剤;および、上記セルフシーリング組成物を着色するのに有利に使用することのできる着色剤のような種々の他の添加剤を、典型的には少量で(好ましくは20phr未満、より好ましくは15phr未満の含有量でもって)添加し得る。意図する用途次第では、短繊維またはパルプの形の繊維を必要に応じて添加して、上記セルフシーリング組成物により大きな固着力を付与することもできる。
【0055】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記セルフシーリング組成物は、不飽和ジエンエラストマーを架橋するための系をさらに含む。この架橋系は、好ましくは、イオウ系の架橋系、換言すれば、“加硫”系と称する架橋系である。
好ましくは、上記イオウ系加硫系は、加硫活性化剤として、グアニジン誘導体、即ち、置換グアニジンを含む。置換グアニジンは、当業者にとっては周知であり(例えば、WO 00/05300号参照)、挙げることのできる非限定的な例としては、N,N'‐ジフェニルグアニジン(DPGと略記する)、トリフェニルグアニジンおよびジ‐o‐トリルグアニジンがある。好ましくは、DPGを使用する。
【0056】
この加硫系においては、最適なセルフシーリング性能を得るために、イオウ含有量は、好ましくは0.1phrと1.5phrの間、特に0.2phrと1.2phrの間(例えば、0.2phrと1.0phrの間)であり;グアニジン誘導体の含有量は、それ自体で、0phrと1.5phrの間、特に0phrと1.0phrの間 (特に、0.2〜0.5phrの範囲内)である。
上記の系は、加硫促進剤が存在する必要はない。従って、好ましい実施態様によれば、上記組成物は、そのような促進剤を含有しないか、或いは、せいぜい1phr未満、より好ましくは0.5phr未満の促進剤を含有し得る。そのような促進剤を使用する場合、挙げることのできる例としては、イオウの存在下にジエンエラストマーにおける加硫促進剤として作用し得る任意の化合物 (一次または二次促進剤)、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムタイプの促進剤、およびジチオカルバミン酸亜鉛がある。もう1つの有利な実施態様によれば、上記加硫系は、亜鉛または酸化亜鉛(これらは加硫活性化剤として知られている)を含有しなくてもよい。
【0057】
本発明のもう1つの可能性ある実施態様によれば、イオウ供与体をイオウ自体の代りに使用し得る。イオウ供与体は、当業者にとって周知である。典型的には、そのようなイオウ供与体の量は、好ましくは0.5phrと10phrの間、より好ましくは1phrと5phrの間であるように調整して、上記の好ましい等価イオウ含有量を得るようにする。
【0058】
硬化後、上述したような加硫系は、上記組成物に十分な固着力を与えるが、上記組成物を真に加硫させない:当業者にとって既知の通常の膨潤方法を使用して測定することができるその架橋量は、事実上、検出閾値に近い。
上述したエラストマーとは別に、上記セルフシーリング組成物は、不飽和ジエンエラストマーと対比してこの場合も少質量画分として、例えば、不飽和ジエンエラストマーと相溶性の熱可塑性ポリマーのようなエラストマー以外のポリマーも含有し得る。
【0059】
I‐2. 上記セルフシーリング組成物の製造
上述した組成物は、任意の適切な手段によって、例えば、ブレードミキサーまたは開放ミル内で、組成物の各種成分の緊密な均質混合物が得られるまで配合および/または混錬することによって製造し得る。
しかしながら、以下の製造上の問題が生じ得る:充填剤の不存在または少なくとも認知し得る程度の充填剤量においては、上記組成物は、あまり凝集性でない。この凝集性の欠如は、比較的高い炭化水素樹脂含有量も加わったために、組成物の粘着性がもはや相殺されず、組成物の幾分かが持ち去られることのようであり得る(その組成物が配合器具に不都合に粘着するリスクが存在する結果となり、このことは、工業的操作条件下においては許容し得ない)。
【0060】
上記問題を軽減するために、本発明のセルフシーリング組成物は、加硫系を含む場合、下記の工程を含む方法を使用して製造し得る:
a) 先ず、少なくとも1種の不飽和ジエンエラストマーと、30phrと90phrの間の炭化水素樹脂とを含むマスターバッチを、これらの各種成分を、ミキサー内で、上記炭化水素樹脂の軟化点よりも高い“高温配合温度”または“第1温度”と称する温度においてまたはこの温度までの温度で配合することによって製造する工程;および、
b) 次いで、少なくとも架橋系を、上記マスターバッチ中に、全てを同じミキサーまたは異なるミキサー内で、100℃よりも低く維持する“第2温度”と称する温度においてまたはその温度までの温度で配合することによって混入して、上記セルフシーリング組成物を得る工程。
上記第1および第2温度は、勿論、上記マスターバッチおよびセルフシーリング組成物それぞれの温度であり、これらの温度は、その場で測定可能な温度であり、ミキサー自体の設定温度ではない。
【0061】
用語“マスターバッチ”とは、この場合、定義すれば、少なくとも上記ジエンエラストマーと上記炭化水素樹脂を含むコンパウンド、即ち、即使用可能な最終セルフシーリング組成物用のプレカーサーコンパウンドを意味するものと理解すべきである。
【0062】
上記液体可塑剤は、任意の時点で、特に、マスターバッチ自体の“高温” (即ち、樹脂の軟化点よりも高い温度)での製造中(この場合、炭化水素樹脂のジエンエラストマー中への混入前、混入中または混入後)、低めの温度において同様にして、或いは、例えばマスターバッチの製造後(この場合、架橋系の添加前、添加中または添加後)に、全部または一部混入し得る。
【0063】
必要に応じて、各種添加剤をこのマスターバッチに混入し得るが、これら添加剤が、マスターバッチにおいて適切であるか(例えば、安定剤、着色剤、UV安定剤、酸化防止剤等)、或いはマスターバッチの使用をもくろむ最終セルフシーリング組成物において適切であるかによる。
そのような方法は、工業的に許容し得る操作条件下に、特に高含有量の液体可塑剤の使用を特に必要としないで、高炭化水素含有量を有し得る有効なセルフシーリング組成物を迅速に製造するのに特に適していることが判明している。
【0064】
ジエンエラストマーを炭化水素樹脂と接触させてマスターバッチを製造するのは、上記高温配合工程a)においてである。初期状態においては、即ち、エラストマーと接触させる前では、上記樹脂は、固形状態または液体状態であり得る。好ましくは、より良好な配合処理においては、固形ジエンエラストマーを液体状態の炭化水素と接触させる。この接触を実施するためには、上記樹脂をその軟化点よりも高い温度に加熱することで十分である。使用する炭化水素樹脂のタイプによるが、上記高温配合温度は、典型的には70℃よりも高く、一般的には90℃よりも高く、例えば、100℃と150℃の間である。
【0065】
好ましくは、上記液体可塑剤は、マスターバッチ自体の製造中の工程a)において少なくとも一部が導入されることが好ましく、この場合、上記炭化水素樹脂を導入するのと同時または導入した後に少なくとも一部が導入されることがより好ましい。1つの特に有利な実施態様によれば、上記炭化水素樹脂と上記液体可塑剤は、上記ジエンエラストマー中に混入する前に、一緒にブレンドしていてもよい。
【0066】
架橋系を混入する工程b)は、好ましくは80℃よりも低い、好ましくは上記樹脂の軟化点よりも低い温度で実施する。従って、使用する炭化水素樹脂のタイプによるが、工程b)の配合温度は、好ましくは50℃よりも低く、より好ましくは20℃と40℃の間である。
必要に応じて、マスターバッチを冷却する中間工程を上記工程a)とb)の間に加えて、架橋系を上記前以って製造したマスターバッチに導入する(工程b)の前に、マスターバッチ温度を100℃よりも低く、好ましくは80℃よりも低く、特に上記樹脂の軟化点よりも低くする。
【0067】
カーボンブラックのような充填剤を使用する場合、その充填剤は、工程a)において、即ち、不飽和ジエンエラストマーおよび炭化水素樹脂と同時に、或いは、工程b)において、即ち、架橋系と同時に導入し得る。極めて小割合の、好ましくは0.5phrと2phrの間のカーボンブラックは、上記組成物の配合および製造を、さらにまた、上記組成物の最終押出加工性をさらに改良することを見出している。
マスターバッチを製造するための工程a)は、好ましくは、例えば、図2において簡易化した形で略図的に示しているような配合用スクリュー押出機内で実施する。
【0068】
図2は、押出スクリュー(21) (例えば、シングルスクリュー配合用押出機)、ジエンエラストマー(固形である)用の第1定量ポンプ(22)および樹脂(固形または液体である)および液体可塑剤用の第2定量ポンプ(23)を本質的に含む配合用スクリュー押出機(20)を示す。炭化水素樹脂および液体可塑剤は、炭化水素樹脂と液体可塑剤を既に前以って混合している場合は、例えば1基の定量ポンプによって導入し得、或いは炭化水素樹脂と液体可塑剤は、それぞれ、第2ポンプと第3ポンプによって別個に導入してもよい(第3ポンプは、図面を単純化するために図1には示していない)。上記定量ポンプ(22、23)は、材料の計量および初期特性、計量機能(エラストマー、樹脂および液体可塑剤のための)の配合機能からの切り離しを常に制御してより良好なプロセス制御をもたらしながら、圧力を上昇させるのにも使用する。
上記押出スクリューによって押し進められる生産物は、スクリュー回転によってもたらされる極めて高い剪断下に緊密に配合され、そのようにしてミキサーを通って、例えば、“チョッパー・ホモジナイザー(chopper‐homogenizer)”と称する部分(24)まで前進し、このゾーンの後、そのようにして得られた最終マスターバッチ(25)は、矢印方向(F)に進行し、最後に、生産物を所望寸法に押出加工するためのダイ(26)によって押出される。
【0069】
そのように押出加工され、即使用可能なマスターバッチは、その後、架橋系および任意構成成分としての充填剤を導入するための、例えば、2本ロール開放ミルタイプの開放ミキサーに移し、冷却する;上記開放ミキサー内の温度は、100℃よりも低く、好ましくは80℃よりも低く、さら好ましくは上記樹脂の軟化点よりも低く保つ。有利には、上記開放ミルのロールを、例えば、循環水によって40℃よりも低い、好ましくは30℃よりも低い温度に冷却して、上記組成物のミル壁へのあり得る望ましくない粘着を回避する。
【0070】
押出装置(20)によるマスターバッチ生産物を直接形成させて、上記開放ミキサーへの輸送および/または上記開放ミキサー内への導入を容易にすることは可能である。また、2本ロール開放ミルに連続供給することも可能である。
上述した好ましい方法および特定の装置によって、本発明の組成物は、満足し得る工業的条件下に、組成物のミキサー壁への望ましくない粘着によって器具を汚染するリスクを犯すことなく製造することが可能である。
【0071】
I‐3. 上記セルフシーリング組成物のパンク防止層としての使用
上記で説明したセルフシーリング組成物または材料は、固形である(23℃において)弾力性のコンパウンドであり、特に、その特定の配合により、極めて高い可撓性と変形性に特徴を有する。
上記セルフシーリング組成物または材料は、任意のタイプの“インフレータブル”物品、即ち、定義すれば、空気によって膨張させたときにその使用可能な形状を有する任意の物品におけるパンク防止層として使用し得る。
挙げることのできるそのようなインフレータブル物品の例としては、ゴムボートおよびバルーン、またはゲームもしくはスポーツにおいて使用するボール類がある。
【0072】
上記組成物は、ゴム製のインフレータブル物品、最終製品または半製品における、最も具体的には、二輪車タイプ、乗用車または産業用車両のような自動車用或いは自転車のような非自動車用のタイヤにおけるパンク防止層として使用するのにとりわけ良好に適している。
そのようなパンク防止層は、好ましくは、インフレータブル物品の内壁上に置いて内壁を完全にまたは少なくとも部分的に覆っている;しかしながら、そのような層は、インフレータブル物品の内部構造体に完全に一体化させてもよい。
上記パンク防止層の厚さは、好ましくは0.3mmよりも厚く、より好ましくは0.5mmと10mmの間(特に1mmと5mmの間)である。
【0073】
特定の用途分野においては、関連する寸法および圧力並びに本発明を実施する方法は変化し得、その場合、パンク防止層は、幾つかの好ましい厚さ範囲を含むことは、容易に理解し得るであろう。即ち、例えば、乗用車タイプのタイヤにおいては、このパンク防止層は、少なくとも0.5mm、好ましくは1mmと5mmの間の厚さを有し得る。もう1つの例によれば、重量車両または農業用車両タイヤにおいては、好ましい厚さは、1mmと6mmの間であり得る。もう1つの例によれば、土木工学分野または航空機分野の車両タイヤにおいては、好ましい厚さは、2mmと10mmの間であり得る。最後に、もう1つの例によれば、自転車タイヤにおいては、好ましい厚さは、0.4mmと2mmの間であり得る。
【0074】
本明細書において説明するセルフシーリング組成物は、そのようなセルフシーリング層を含まないタイヤと比較して、極めて広いタイヤ操作温度範囲に亘って、転がり抵抗性に関する悪影響を実際に示さないという利点を有する。通常のセルフシーリング組成物と比較して、ある種のタイヤを使用する場合に頻繁に遭遇するような比較的高い温度(典型的には60℃よりも高い)で使用中の過剰なクリープのリスクは、かなり低減される。
【0075】
勿論、本発明は、上記で説明したセルフシーリング組成物を、タイヤにおいて或いは任意の他のインフレータブル物品において、気密層と必ずしも組合せないで使用する場合にも当てはまる。
しかしながら、本発明の特定の好ましい実施態様によれば、上記セルフシーリング組成物は、少なくとも第2の気密層と組合せて、セルフシーリング性で気密性であり、且つタイヤのようなインフレータブル物品の内壁として特に使用することのできる多層ラミネートを形成させる。
上記ラミネートの第2層は、例えば、材料が金属材料またはポリマー材料のいずれかの、空気気密性フィルム(airtight) (または、より一般的には気体気密性(gastight)フィルム)の機能を満たし得る任意のタイプの材料を含み得る。好ましくは、この気密層は、0.05mmよりも厚く、より好ましくは0.05mmと6mmの間(例えば、0.1〜2mm)の厚さを有する。
【0076】
好ましい実施態様によれば、この気密第2層は、ブチルゴム組成物を含む。用語“ブチルゴム”は、知られている通り、イソブチレン/イソプレンコポリマー(IIRと略記する)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化、好ましくは塩素化または臭素化形を意味するものと理解すべきである。好ましくは、ブチルゴムは、ハロゲン化ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルと非ハロゲン化ブチルとのブレンドである。ブチルゴムは、それ自体で、或いは、1種以上の他のエラストマー、特に、例えば、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンのようなジエンエラストマーと組合せて使用し得る。また、気密組成物は、当業者にとって既知の気密層において通常存在する各種添加剤、例えば、カーボンブラックのような補強用充填剤;シーリングを改良するラメラ充填剤(例えば、カオリン、タルク、雲母、クレーまたは変性クレー(“オルガノクレー”)のようなフィロケイ酸塩);酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤のような保護剤;架橋系(例えば、イオウ系または過酸化物系);各種加工助剤または他の安定剤も含有する。
【0077】
上記ラミネートの2つの層は、任意の適切な手段によって、例えば、種々の接着剤を使用しての、好ましくは加圧下での単純な熱処理(例えば、16バールの圧力下150℃で数分間)によって或いは第3の接着剤層を挿入して他の2つの層を一緒に粘着させることによって一緒に結合させ得る。
【0078】
II. 本発明の典型的な実施態様
上記で説明したセルフシーリング組成物および多層ラミネートは、全てのタイプの車両用のタイヤにおいて、特に、極めて高速で走行する傾向を有する乗用車用のタイヤまたは特に高内部温度条件下に走行および作動する傾向を有する重量貨物車両のような重量産業用車両用のタイヤにおいて有利に使用し得る。
【0079】
1例を挙げれば、添付図面1は、本発明に従うタイヤの半径断面を極めて略図的に示している(特定縮尺に準じていない)。
このタイヤ1は、クラウン補強材即ちベルト6によって補強されたクラウン2、2つの側壁3および2つのビード4を有し、これらのビード4の各々は、ビードワイヤー5によって補強されている。クラウン2は、トレッド(この略図には示していない)が取付けられている。カーカス補強材7は、各ビード4内の2本のビードワイヤー5の周りに巻付けられており、この補強材7の上返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向って位置しており、この場合、タイヤリム9上に取付けて示している。カーカス補強材7は、それ自体知られている通り、“ラジアル”コードと称されるコード、例えば、繊維または金属コードによって補強されている少なくとも1枚のプライからなる、即ち、これらのコードは、実際上、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2つのビード4の中間に位置しクラウン補強材6の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
【0080】
タイヤ1は、その内壁が、少なくとも2つの層(10a、10b)を含む多層ラミネート(10)を含み、このラミネートが、その第1層(10a)のためにセルフシーリング性であり、その第2層(10b)のために気密性であることに特徴を有する。
本発明の好ましい実施態様によれば、2つの層(10a、10b)は、上記タイヤの実質的に内壁全体を覆い、一方の側壁から他方の側壁に、上記タイヤが装着位置にあるときの少なくともリムガターのレベルまで延びている。しかしながら、他の可能性ある実施態様によれば、層10aは、気密領域(層10b)の部分のみ、例えば、上記タイヤのクラウン領域のみを覆い得るか、或いは、少なくともクラウン領域から上記タイヤのショルダーまたは中心点(赤道)まで延び得る。
【0081】
もう1つの好ましい実施態様によれば、上記ラミネートを、セルフシーリング第1層(10a)が、添付図面に概略示しているように、他の層(10b)に対して上記タイヤの半径方向の最外部層であるような形で配置する。換言すれば、セルフシーリング層(10a)は、タイヤ1の内部空洞11の側面上の気密層(10b)を覆っている。もう1つの可能性ある実施態様は、この層(10a)が半径方向の最内部層であり、その場合、気密層(10b)とタイヤ1の残余の構造体との間に位置する実施態様である。
【0082】
この例においては、層10b (0.7〜0.8mmの厚さを有する)は、“内部ライナー”用の通常の配合を有するブチルゴムをベースとする;上記内部ライナーは、通常、通常のタイヤにおいて、カーカス補強材をタイヤの内部空間からの空気の拡散から保護することを意図する上記タイヤの半径内面を形成している。従って、この気密層10bは、タイヤ1を膨張させ圧力下に保つのを可能にしている。そのシーリング特性は、比較的遅い圧力低下速度を担保するのを可能にしており、タイヤの膨張を、正常な操作状態において、十分な時間、通常は数週間または数ヶ月間保つのを可能にしている。
層10a自体は、3つの本質的構成成分、即ち、天然ゴム(NR)(100phr)、約50phrの炭化水素樹脂(約90℃の軟化点を有するExxon Mobil社からの“Escorez 2101”)および約15phrの液体ポリブタジエン(約5200のMnを有するSartomer Cray Valley社からの“Ricon 154”)を含む本発明に従うセルフシーリング組成物からなる;また、層10aは、極めて少量(1phr)のカーボンブラック(N772)も含有する。
【0083】
上記セルフシーリング組成物は、図2に略図的に示しているようなシングルスクリュー(40L/D)押出機(既に上記で説明している)を使用して製造した。上記3つのベース構成成分(NR、樹脂および液体可塑剤)を、上記樹脂の軟化点よりも高い温度(100℃と130℃の間)で混合した。使用した押出機は、2つの異なる供給口(ホッパー) (NR用の供給口と、約130℃〜140℃の温度で前以って一緒に混合した樹脂と液体可塑剤用のもう一つの供給口)および樹脂/液体可塑剤ブレンド用の加圧液体注入ポンプ(約100〜110℃の温度で注入する)を有していた。従って、エラストマー、樹脂および液体可塑剤を緊密に配合し終わったとき、上記組成物の望ましくない粘着は極めて有意に低減されていることが判明した。
【0084】
上記押出機は、上記マスターバッチを所望寸法に押出加工し、他の構成成分、即ち、イオウ(例えば0.5phrまたは1.2phr)とDPG(例えば0.3phr)をベースとする加硫系およびカーボンブラック(1phrの含有量を有する)の、+30℃よりも低く維持した低温(ロールを循環水で冷却することにより)での最終混入のための2本ロール開放ミル内に入れるためのダイを備えていた。
【0085】
従って、層10bとタイヤの空洞11との間に置かれた層10aは、タイヤに、偶発的穿孔による圧力減に対する有効な保護を与え、これらの穿孔を自動的に封鎖するのを可能にしている。
【0086】
クギのような異物がタイヤの構造体、例えば、タイヤ1の側壁3のような壁またはクラウン6を貫通する場合、セルフシーリング層として機能する上記組成物は、種々の応力を受ける。これらの応力に反応して、また、その有利な変形性および弾力特性のために、上記組成物は、異物の周りに不透過性接触領域を産み出す。上記異物の輪郭または外形が均一または規則的であるかどうかは殆ど重要ではなく、上記セルフシーリング組成物の可撓性が微細な大きさの開口中に浸透するのを可能にする。この上記セルフシーリング組成物と異物との相互作用により、異物が侵襲した領域を密封する。
【0087】
異物が、偶発的であれ或いは意図的であれ、除去された場合、穿孔は残存し、その大きさによるが、比較的大きな漏れを生じやすい。静水圧に曝された上記セルフシーリング組成物は、十分に可撓性で且つ変形性であり、変形することによって穿孔を閉鎖して、膨張ガスが漏出するのを防止する。特にタイヤの場合、上記セルフシーリング組成物の可撓性は、荷重タイヤが走行時に変形する段階においてさえも、周囲壁からの力に何の問題もなく耐え得ることが判明している。
【0088】
上述したようなパンク防止層(10a)を備えたタイヤは、加硫(または硬化)前または後に製造し得る。
第1の場合(即ち、タイヤを硬化させる前)においては、上記セルフシーリング組成物を所望の位置に通常の方法で単純に適用して、層10aを形成させる。その後、加硫操作を通常通りに実施する。
タイヤ製造技術の熟練者にとって有利な製造方法の変法は、例えば、最初の工程において、上記セルフシーリング組成物を、気密層で被覆し次いでタイヤの残りの構造体で被覆する前に、当業者にとって周知の製造方法を使用して、適切な厚さ(例えば、2〜6mm)を有するスキムの形で、タイヤ構築用ドラム上に直接平坦に付着させることからなる。また、このタイプの方法は、気密層10bが半径方向の最外層である第2の実施態様を容易に製造することも可能にする。
【0089】
第2の場合(即ち、タイヤを硬化させた後)においては、上記セルフシーリング組成物を、硬化させたタイヤの内側に、任意の適切な方法によって、例えば、適切な厚さのフィルムを結合させる、スプレーするまたは押出加工‐ブロー成形することによって適用する。
【0090】
試用においては、乗用車タイプで、205/55R16サイズを有し、“Michelin、Energy 3ブランド”のタイヤを試験した。タイヤの内壁(気密層(10b)を既に含む)を、3mmの厚さを有する上記のセルフシーリング層(10a)で被覆し、その後、各タイヤを加硫した。
【0091】
装着し、膨張させたときのタイヤの1本に、8個の直径5mmの開孔を、ポンチ(punch)を使用して、一方ではトレッドとクラウンブロックを貫通して、他方では側壁を貫通して生じさせ、ポンチは直ぐに取除いた。
予期に反して、このタイヤは、回転が止まるまで1500kmよりも長い距離の間、400kgの公称荷重下で、回転ドラム上での150km/時の回転に圧力を低下させることなく耐えていた。
【0092】
もう1本のタイヤにおいて、試験を同じ方法で実施したが、今度は、穿孔事物を1週間その場に放置した。同じ優れた結果が得られた。
セルフシーリング組成物を有してなく、また、上記と同じ条件下においては、そのようにして開孔させたタイヤは、1分未満でその圧力を喪失し、回転するのに完全に不適切となった。
【0093】
他の耐久試験を、上述のタイヤと同一であるが、750kmを150km/時の速度で走行させ、今回はポンチをその穿孔内に残存させた本発明に従うタイヤにおいて実施した。ポンチを取除いた後(或いは回転の結果としてポンチが排出した後)、本発明のこれらのタイヤは、上記と同じ条件(移動距離:1500km、速度:150km/時、公称荷重:400kg)において、回転ドラム上での回転に圧力低下なしに耐えていた。
【符号の説明】
【0094】
1 空気式タイヤ
2 クラウン
3 側壁
4 ビード
5 ビードワイヤー
6 クラウン補強材(ベルト)
7 カーカス補強材
8 カーカス補強材の上返し
9 タイヤリム
10 気密パンク防止ラミネート
10a パンク防止層
10b 気密層
11 内部空洞
20 配合スクリュー押出機
21 押出スクリュー
22 第1定量ポンプ
23 第2定量ポンプ
24 チョッパー・ホモジナイザー
25 最終マスターバッチが得られる領域
26 ダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要エラストマーとしての、不飽和ジエンエラストマー;
30phrと90phrの間の質量含有量の炭化水素樹脂;
Tg (ガラス転移温度)が−20℃よりも低く、0phrと60phrの間の質量含有量を有する液体可塑剤;および、
0〜30phr未満の充填剤、
を少なくとも含むことを特徴とする、インフレータブル物品におけるパンク防止層として特に用いることのできるセルフシーリングエラストマー組成物。
【請求項2】
前記不飽和ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンドによって形成される群から選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記不飽和ジエンエラストマーが、好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレンおよびこれらのエラストマーのブレンドによって形成される群から選ばれるイソプレンエラストマーである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記不飽和ジエンエラストマー含有量が、50phrよりも多い、好ましくは70phrよりも多い、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記イソプレンエラストマー、好ましくは天然ゴムが、前記組成物の唯一のエラストマーである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記ジエンエラストマーの数平均分子量が、100000g/モルと5000000g/モルの間である、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記炭化水素樹脂含有量が、45〜75phrの範囲内である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記炭化水素樹脂が、0℃よりも高い、好ましくは+20℃よりも高いTg (ガラス転移温度)を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記炭化水素樹脂が、+25℃と+100℃の間のTgを有する、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記炭化水素樹脂の数平均分子量が、400g/モルと2000g/モルの間である、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記炭化水素樹脂が、シクロペンタジエン(CPD)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂のブレンドによって形成される群から選ばれる、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
前記液体可塑剤含有量が、5phr〜40phrの範囲内にある、請求項1〜11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記液体可塑剤含有量が、10phr〜30phrの範囲内にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記液体可塑剤が、液体エラストマー、ポリオレフィン系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、DAEオイル、MESオイル、TDAEオイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記液体可塑剤が、液体エラストマー、ポリオレフィン系オイル、植物油およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記液体可塑剤の数平均分子量(Mn)が、300g/モルと90000g/モルの間である、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
0〜20phr未満、好ましくは0〜10phr未満の充填剤を含有する、請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
補強用充填剤としてカーボンブラックを含有する、請求項1〜17のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
5phr未満、好ましくは2phr未満のカーボンブラックを含有する、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
0.5phrと2phrの間のカーボンブラックを含有する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
加硫系を更に含有する、請求項1〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
前記加硫系が、イオウとグアニジン誘導体をベースとする、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記グアニジン誘導体が、ジフェニルグアニジン(DPG)である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記加硫系が、0.1phrと1.5phrの間のイオウと、0phrと1.5phrの間のグアニジン誘導体とを含む、請求項22または23記載の組成物。
【請求項25】
前記加硫系が、0.2phrと1.2phrの間のイオウと、0phrと1.0phrの間のグアニジン誘導体とを含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
パンク防止層を備えたインフレータブル物品であって、該防止層が、セルフシーリング組成物として、請求項1〜25のいずれか1項記載のエラストマー組成物を含む、前記インフレータブル物品。
【請求項27】
前記セルフシーリング組成物が、0.3mmよりも大きい厚さを有するパンク防止層の形で用いられている、請求項26記載の物品。
【請求項28】
前記パンク防止層が、0.5mmと10mmの間の厚さを有する、請求項27記載の物品。
【請求項29】
前記パンク防止層が、インフレータブル物品の内壁上に配置されている、請求項26〜28のいずれか1項記載の物品。
【請求項30】
ゴム物品である、請求項26〜29のいずれか1項記載の物品。
【請求項31】
タイヤである、請求項30記載の物品。
【請求項32】
前記パンク防止層を気密層と組合せ、それによって気密性セルフシーリングラミネートを構成させる、請求項26〜31のいずれか1項記載の物品。
【請求項33】
前記気密層が、ブチルゴムをベースとする、請求項32記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−529972(P2011−529972A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520361(P2011−520361)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005345
【国際公開番号】WO2010/012413
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】