説明

インプリント用樹脂スタンパ及びその製造方法

【課題】微細な凹凸パターンが高い寸法精度で形成された樹脂製のインプリント用スタンパ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一方の表面に微細な凹凸パターンを有するインプリント用樹脂製スタンパであって、前記凹凸パターンがミーリング方式又はシェーパー方式で行われる切削加工により形成され、前記樹脂が、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント精度に優れたインプリント用樹脂スタンパ及びその製造方法並びにこの樹脂スタンパを用いた凹凸パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス、ディスプレイ、電子ペーパー、記録メディア、バイオチップ、光デバイスなどの製造工程における微細パターンの形成するための技術として、ナノインプリント技術が知られている。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工の技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はスタンパ(即ち金型)の作製精度によって決定される。したがって、高い精度のスタンパさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に且つはるかに安価な装置を用いて、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
インプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、スタンパ(金型)により塑性変形させた後、冷却してパターンを形成する熱インプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のスタンパを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させパターンを形成する光インプリント技術である。特に光インプリント技術は室温にてパターン形成できるため熱による基板、スタンパ間の線膨張係数差による歪が発生しにくく、高精度のパターン形成が可能であり、半導体等のリソグラフィ技術の代替技術として注目を集めている。
【0004】
インプリント技術では、パターン成形を安価に行うことができるが、マザースタンパである金型に樹脂が付着し易く、樹脂が付着した場合、そのスタンパを補修することは極めて困難である。金型が非常に高価なため、製造全体として安価とは言えない場合が多い。
【0005】
その理由から、2工程によるインプリント法が用いられている。このインプリント法は、図5(a)に示すように、第1工程でマザースタンパ(金型)30の凹凸パターンが形成された表面を、加熱した熱可塑性樹脂フィルム32の表面に押圧した後、冷却して硬化させ、マザースタンパの凹凸パターンが反転された凹凸パターンを形成した中間スタンパ32aを得、次に、図5(b)に示すように、第二工程でこの中間スタンパ32aを、製品基板34上に塗布された光硬化性樹脂36に押圧して紫外線等により硬化させ、製品基板34上にマザースタンパと同一の凹凸パターン36aを得るというものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−55235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この方法では、製品が樹脂製の中間スタンパを用いて成形されるため、マザースタンパ(テンプレート)には深刻な損傷が発生することはない。しかしながら、熱インプリント法で中間スタンパの作製する場合、硬化段階でマザースタンパと熱可塑性樹脂フィルム間の線膨張係数差に起因して、マザースタンパの寸法通りの中間スタンパを得られない場合がある。また、熱インプリント工程において、フィルムおよびスタンパを加熱・押圧・冷却する過程で面内に大きな温度バラツキが生じた場合、中間スタンパの面内全域にて良好な寸法精度の中間スタンパを得ることが困難になる。そして、中間スタンパの寸法精度が良好でない場合、特に高い寸法精度が要求される製品の製造時に、中間スタンパと製品基板とのアライメント工程に影響が出る。
【0008】
即ち、製品基板と中間スタンパとのアライメント(位置合わせ)を行う場合、一般に、中間スタンパと製品基板に2個以上の位置合わせ用パターン(アライメントマークともいう)が形成されており、これらのマークを2点以上の位置合わせ用のカメラ(アライメントカメラともいう)で観察し、マークを合わせることで位置合わせを行う。しかしながら、上述したようにマザースタンパから中間スタンパへの転写工程において中間スタンパが収縮した場合、パターンの寸法に変化が生じ、2点以上のアライメントマークが合わなくなり、精確な位置合わせができなくなるという問題が生じる。また、あらかじめ収縮量を見込み、マザースタンパの寸法を補正する方法にてアライメントマークを合わせる方法もあるが、面内全域にて良好なアライメントを得ることは困難である。
【0009】
従って、本発明の目的は、微細な凹凸パターンが高い寸法精度で形成された樹脂製のインプリント用スタンパ及びその製造方法を提供することにある。また、微細な凹凸パターンを製品の基板上の精確な位置に形成することが可能な凹凸パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、一方の表面に微細な凹凸パターンを有するインプリント用樹脂製スタンパであって、前記凹凸パターンが切削加工により形成されていることを特徴とするインプリント用樹脂スタンパにより達成される。
【0011】
本発明の樹脂スタンパは、切削加工により凹凸パターンを形成しており、従来の中間スタンパのようにその作製過程において熱インプリント工程を必要としないため、硬化収縮による寸法変化が生じない。本発明の樹脂スタンパを使用してインプリントを行う場合、アライメントマーク及び面内全域の凹凸パターンを目的の位置に精確に形成できるため、そのアライメントを精確に行うことができ、製品基板上に凹凸パターンを精確な位置に形成することが可能となる。さらに、従来のようにマザースタンパを用いる必要がないため、製造コストの削減が図られる。
【0012】
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
【0013】
(1)前記樹脂が、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂である。
樹脂基板の表面を精密に切削し、精確なパターンを形成することができる。また、これら樹脂は、表面エネルギーが低く、スタンパとして用いた場合の離型性に優れるので好ましい。
(2)前記樹脂が4−メチル−1−ペンテン系樹脂である。
上記樹脂の中でも特にポリメチルペンテンは、離型性及び紫外線透過性に優れているだけでなく、インプリント用スタンパとしての耐久性にも優れている。
(3)切削加工がミーリング方式又はシェーパー方式で行われる。
これらの方式を用いれば精密に切削を行うことができる。
(4)光インプリント用樹脂スタンパである。
インプリント時において樹脂スタンパ側から紫外線を照射可能であるため、光インプリント用の樹脂スタンパとして好適である。
【0014】
また、本目的は、一方の表面に微細な凹凸パターンを有するインプリント用樹脂製スタンパの製造方法であって、前記凹凸パターンの形状に関するデータが入力されたNC制御装置を有する切削加工機の加工処理部に樹脂製の基板を載置する工程、及び次いで前記切削加工機を用いて、前記樹脂製の基板の表面を前記入力された凹凸パターンの形状に関するデータに従う切削処理に付す工程、を含むインプリント用樹脂スタンパの製造方法により達成される。
【0015】
更に、本目的は、上記樹脂スタンパの前記凹凸パターンを有する表面を、製品用の基板の上に形成した光硬化性樹脂組成物層に押圧して、該光硬化性樹脂組成物層の表面が前記凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程、前記樹脂スタンパを有する積層体の前記光硬化性樹脂組成物層を光によって硬化させる工程、及び前記樹脂スタンパを除去することにより、製品用の基板の上に前記凹凸パターンの反転凹凸パターンを形成する工程、を含む凹凸パターン形成方法により達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂スタンパは微細凹凸パターンの寸法精度が良好であり、インプリントにおいて製品用の基板とのアライメントを精確に行うことが可能である。従って、本発明の樹脂スタンパを用いれば、微細凹凸パターンが精確に形成された、電子ディスプレイリブ、電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)を有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ミーリング方式用いる切削加工機の一例を示す概略外観図である。
【図2】ミーリング方式により凹凸パターンを形成する工程の説明図である。
【図3】切削する形状の例を示す説明図である。
【図4】シェーパー方式で切削を行う様子を示す説明図である。
【図5】従来のインプリント法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
[切削加工]
上述したように、本発明のインプリント用樹脂スタンパは、その表面に凹凸パターンを切削加工によって形成することにより作製される。切削加工はミーリング方式やシェーパー方式等で行うことができる。
【0020】
ミーリング方式で行う場合、例えば図1に示す切削加工機10を使用する。この切削加工機10は、側面形状コの字型のフレーム部12を有し、下部にはX方向(左右方向)及びY方向(前後方向)に移動可能なテーブル14が設けられており、テーブル14には本発明の樹脂スタンパの元となる樹脂製の基板(樹脂基板)20が固定されている。また、フレーム部12の上部にはZ方向(上下方向)に移動可能な主軸部16を備えており、その主軸部16には切削工具18が矢印A方向に回転可能に取り付けられている。それぞれの方向への移動動作は、切削加工機に接続されているNC制御装置(図示せず)により制御される。予め凹凸パターンの形状のデータをNC制御装置に入力し、その動作プログラムに沿って、樹脂基板20と切削工具18との相対的な位置関係を作り、図2に示すように、切削工具18を回転させて切れ刃19で樹脂基板20の表面を所望の凹凸パターン形状に切削する。凹凸パターンの断面形状(V状、角状、U状等)は、図3(a)及び(b)に示すように切削工具18の切れ刃19の形状、あるいは回転軸の変更等により選択可能である。
【0021】
一方、シェーパー方式は、図4に示すように、切削工具22は回転せず、樹脂基板20と切削工具22との相対位置を制御することにより樹脂基板20の表面を切削する方法である。本図では矢印方向に切削工具22を移動させて溝部24を形成する様子を示している。シェーパー方式はNC制御装置を有する多軸制御可能な切削加工機で行うことができる。
【0022】
切削工具の切れ刃の材質としては、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、サーメット、超硬合金、セラミックス等を用いることができるが、精密に切削を行うことができる点でダイヤモンド工具を用いることが好ましい。
【0023】
以上のようにして樹脂基板の表面に微細な凹凸パターンを形成する。微細な凹凸パターンの幅及び深さ等のサイズは用途に応じて適宜選択する。例えば、数μmの範囲で切削可能であり、そのサイズに応じて切削工具のサイズを選択する。
【0024】
なお、樹脂の基板の厚さは、凹凸パターンの深さに応じて適宜設定する。例えば、フィルム状の薄い厚さのものから比較的厚みのある板状のものまで使用可能であり、具体的には例えば1μm〜10mmである。切削加工は上記切削加工機に限定されるものではなく、従来から公知の種々の切削加工機を用いて行うことが可能である。
【0025】
また、切削加工時には、熱による樹脂基板の寸法変化を避けるため、樹脂基板の温度を、光インプリント成形時の温度と同一にしたほうがよく、切削加工機の設置環境・加工機温度・切削オイル等の温度も考慮する必要がある。
【0026】
[樹脂スタンパ用材料]
本発明のインプリント用樹脂スタンパの材料としては、樹脂スタンパとして使用した場合の離型性の点から表面エネルギーが低い樹脂が好ましい。また、紫外線をスタンパ側から照射して光インプリントを行うことができる点で紫外線透過性が高い樹脂が好ましい。例えば、表面エネルギーが35mN/m以下、好ましくは20〜30mN/mである樹脂が好ましく、また、紫外線透過率が、波長365nmで70%以上、好ましくは80%以上である樹脂が好ましい。
【0027】
上記好ましい樹脂の具体例として、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂が挙げられる。本発明において、炭化水素系樹脂とは、炭素と水素から構成される樹脂のことをいい、例えば、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体、シクロオレフィンの単独重合体又は異なるシクロオレフィン同士の共重合体若しくはシクロオレフィンとα−オレフィンとの共重合体(シクロオレフィン系樹脂)が挙げられる。α−オレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンが好ましく、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等が挙げられる。シクロオレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン等が挙げられる。
【0028】
また、フッ素系樹脂とは、フッ素原子を含有する樹脂のことをいい、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられる。
【0029】
また、シリコーン系樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルビニルシロキサン、エチルビニルシロキサン、フェニルビニルシロキサン、エチルメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、エチルフェニルシロキサン等を適用することができる。
【0030】
これら離型性に優れる樹脂を用いれば、離型性を向上させるために表面処理を行う必要はないため、樹脂スタンパの作製工程の増加減少や費用削減効果が図られる。
【0031】
上記列挙した樹脂のうち、ポリプロピレン、ポリエチレン、4−メチル−1−ペンテン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びフッ素系樹脂が好ましく、中でも4−メチル−1−ペンテン系樹脂が特に好ましい。ここで、4−メチル−1−ペンテン系樹脂には、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他、4−メチル−1−ペンテンと他のモノマー(上述のα−オレフィン等)との共重合体が含まれ、共重合体の場合、4−メチル−1−ペンテンの割合がその共重合体の質量に対して60質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90%質量以上が好ましい。特に4−メチル−1−ペンテンの単独重合体が好ましい。4−メチル−1−ペンテン系樹脂が好ましい理由は、離型性及び紫外線透過性に優れるだけでなく、インプリント用スタンパとしての耐久性が高いことによる。これは、引張強度や破断伸び等の良好な機械的特性が関係しているものと考えられる。
【0032】
ここで、上記表面エネルギーは、接触角計(Drop−master(協和界面社製)、標準溶媒:水、1−ブロモナフタレン、ジヨードメタン)により得られた接触角の数値から、北崎、畑の拡張Fowkes式に基づく幾何学平均法による解析(北崎寧昭、畑敏雄ら、日本接着協会誌、第8巻(3)131−141頁(1972年))で求めた値をいう。
【0033】
上記樹脂には、種々の添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0034】
滑剤としては、リン酸アルキルポリオキシアルキレン化合物、リン酸トリアルキルエステル化合物、リン酸塩及びリン酸アミド等のリン原子含有化合物、非変性又は変性ポリシロキサン等のシリコーン系樹脂、フルオロ(メタ)アクリレート類等のフッ素原子含有エチレン性化合物が挙げられる。滑剤の添加量は、樹脂100質量部に対し、通常0.01〜5質量部である。滑剤を添加することで、更に離形性を向上させることができる。
【0035】
酸化防止剤としては、公知のものを用いることができるが、紫外線透過性を低下させない点から、フェノール系酸化防止剤を用いるのが好ましい。
【0036】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3'',5,5’,5''−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a''−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。その中でも、極めて透明性に優れたものとなることから、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)であることが特に好ましい。
【0037】
また、本発明の樹脂スタンパは、光インプリント法に使用するに際し、光、主に紫外線の照射を受けるために光安定剤を含むことが好ましい。
【0038】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれもADEKA社製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、使用する樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0039】
上述した添加剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これら添加剤と樹脂との混合は、各成分が均一に混合できればどのような方法を用いてもよく、例えば、これら成分を溶融状態で混練する方法が好適な方法として挙げられる。混練装置は、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスなどの密閉式混練装置、ミキシングロールなどの開放式混練装置を用いて行うことができる。混練後、ペレット化して、カレンダー法、押出成形法、インフレーション法、プレス成形法等の公知の方法でフィルム成形する。
【0040】
[本発明の樹脂スタンパを用いたインプリント]
以下、上記作製した本発明の樹脂スタンパを用いて製品基板上に凹凸パターンを形成する手順について説明する。本発明の樹脂スタンパは光インプリントに好適である。光インプリントは通常の方法で行うことが可能である。
【0041】
まず、本発明の樹脂スタンパの凹凸パターンを有する表面を、製品用の基板の上に形成した光硬化性樹脂組成物層に押圧して、該光硬化性樹脂組成物層の表面が前記凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する。次に、その積層体の光硬化性樹脂組成物層を光によって硬化させた後、樹脂スタンパを除去することにより、製品用の基板の上に樹脂スタンパの凹凸パターンが反転した凹凸パターンを形成する。これにより、製品基板上に凹凸パターンを形成することができる。
【0042】
本発明の方法において、本発明の樹脂スタンパを用いて凹凸パターンを形成するための光硬化性樹脂組成物はどのようなものでも良い。特にナノインプリントプロセス法に使用できる液状組成物が好ましい。液状組成物の場合、粘度は0.1Pa・s〜100Pa・sが好ましい。光硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂と光開始剤を含む組成物が好ましい。
【0043】
光硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、エポキシ樹脂、イミド系オリゴマー、ポリエン・チオール系オリゴマー等が挙げられる。
【0044】
ウレタンアクリレートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類とポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA等のポリオール類と2−ヒドロキシエチルアクリレート2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基とウレタン結合を有するものである。
【0045】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、無水フタル酸とプロピレンオキサイドとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールとアクリル酸とからなるポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0046】
エポキシアクリレートは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物とアクリル酸又はメタクリル酸との反応により合成されたものであり、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとアクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0047】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物や臭素化物等が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α−α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体;ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、鉄−アレン錯体化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、オニウム塩、ピリジニウム塩、アルミニウム錯体/シラノール塩、トリクロロメチルトリアジン誘導体等が挙げられる。上記オニウム塩やピリジニウム塩の対アニオンとしては、例えば、SbF6-、PF6-、AsF6-、BF4-、テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート、トリフルオロメタンスルフォネート、メタンスルフォネート、トリフルオロアセテート、アセテート、スルフォネート、トシレート、ナイトレート等が挙げられる。
【0049】
光重合開始剤の添加量は、一般に光硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。
【0050】
上記光硬化性樹脂組成物には、反応性希釈剤が添加されてもよく、反応性希釈剤としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0051】
上記光硬化性樹脂組成物には、更に、必要に応じて、一般に添加されている光重合開始助剤、熱重合禁止剤、充填剤、接着付与剤、チクソ付与剤、可塑剤、着色剤等が添加されてもよい。
【0052】
光硬化性樹脂を硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発行する多くのものが採用でき、例えば、超高圧、高圧、低圧水銀当、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、0.1秒〜数十秒程度、好ましくは0.5〜数秒である。紫外線照射量は300mJ/cm2以上が好ましい。インプリント時の温度はスタンパの熱による寸法変化を考慮して決める。例えば周囲の環境を23℃に保ち、インプリント時のスタンパ・基板温度も23℃に保つようにする。この場合は中間型作製も常に23℃にて行うのが望ましい。
【0053】
なお、上記インプリントにおいて、本発明の樹脂スタンパは寸法精度が高いため、製品基板と樹脂スタンパとのアライメントを精密に行うことができ、製品基板上に高精度な凹凸パターンを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の樹脂スタンパを用いれば、高品質な電子ディスプレイ、電子ペーパー等の情報表示用パネルの隔壁や電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)等を有利に得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 切削加工機
12 フレーム部
14 テーブル
16 主軸部
18 切削工具
19 切れ刃
20 樹脂基板
22 切削工具
23 切れ刃
24 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に微細な凹凸パターンを有するインプリント用樹脂製スタンパであって、
前記凹凸パターンが切削加工により形成されていることを特徴とするインプリント用樹脂スタンパ。
【請求項2】
前記樹脂が、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用樹脂スタンパ。
【請求項3】
前記樹脂が4−メチル−1ペンテン系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂スタンパ。
【請求項4】
前記切削加工が、ミーリング方式又はシェーパー方式で行われることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂スタンパ。
【請求項5】
光インプリント用樹脂スタンパである請求項1〜4の何れか1項に記載の樹脂スタンパ。
【請求項6】
一方の表面に微細な凹凸パターンを有するインプリント用樹脂製スタンパの製造方法であって、
前記凹凸パターンの形状に関するデータが入力されたNC制御装置を有する切削加工機の加工処理部に樹脂製の基板を載置する工程、及び
次いで前記切削加工機を用いて、前記樹脂製の基板の表面を前記凹凸パターンの形状に関するデータに従う切削処理に付す工程、
を含むインプリント用樹脂スタンパの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の樹脂スタンパの前記凹凸パターンを有する表面を、製品用の基板の上に形成した光硬化性樹脂組成物層に押圧して、該光硬化性樹脂組成物層の表面が前記凹凸パターン表面に沿って密着した積層体を形成する工程、
前記樹脂スタンパを有する積層体の前記光硬化性樹脂組成物層を光によって硬化させる工程、及び
前記樹脂スタンパを除去することにより、製品用の基板の上に前記凹凸パターンの反転凹凸パターンを形成する工程、
を含む凹凸パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181895(P2012−181895A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44652(P2011−44652)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】