説明

インプリント装置、それを用いた物品の製造方法

【課題】レプリカモールドの製造に際し、ブランクモールドの凸部に対してパターン部を形成するのに有利なインプリント装置を提供する。
【解決手段】このインプリント装置1は、被処理部材7を保持しつつ移動可能とする部材保持部3と、原版13を保持しつつ移動可能とする原版保持部4と、原版保持部4に設置され、被処理部材7の表面との距離を計測する計測部16と、被処理部材7に対して原版保持部4を平面駆動させつつ計測部16が計測した計測値に基づいて凸部7aの位置を特定し、凸部7aとパターン部13aとの位置合わせを実施させた後、部材保持部3または原版保持部4の少なくともいずれか一方を駆動させることで接触を実施させる制御部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、それを用いた物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂を型(モールド)で成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板(ウエハ)上のインプリント領域であるショットに紫外線硬化樹脂(インプリント材、光硬化性樹脂)を塗布する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)を型により成形する。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで引き離すことにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
上記技術を採用したインプリント装置では、型と基板上の樹脂とを押し付ける際に、例えばショット上に異物が付着していると、型のパターン部が異物と接触し破損する可能性がある。また、特にデバイス(物品)の量産時には、型を使用した押し付け動作が頻繁に行われることから、パターン部の耐久性の劣化や離型性の低下が発生し易い。そこで、通常、使用する型を予め複数準備して定期的に交換する。したがって、使用する型の製造コストを抑えることは、インプリント装置を採用するリソグラフィー工程では重要となる。この型の製造について、特許文献1は、フォトマスク製造技術などを用いて製造したマスターモールドから、実際にインプリント装置にて使用するレプリカモールドを製造する方法を開示している。
【0004】
一方、従来の縮小投影型の半導体露光装置と同様に、このインプリント装置においても型と基板との相対位置(XYZ軸の3次元方向)を合わせることが重要である。この位置合わせについて、特許文献2は、距離計測機構を用いたZ軸方向の位置計測と、面内位置計測機構を用いたXY軸方向の位置計測とを実施して、型と基板との相対位置を計測するパターン形成装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207475号公報
【特許文献2】特開2007−139752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、インプリント装置に用いる型は、ガラスや金属などの材質で、平板状の本体部と、その平板の一方の面上に形成された凸部とからなる。この凸部は、その表面に微細パターンを有し、インプリント処理時には基板上の樹脂と接触する。したがって、凸部の外形は、被転写位置であるショットの形状に影響するため、型の製造の際には、凸部の外形と内部の微細パターンとの相対位置も精度良く調整する必要がある。また、マスターモールドと同様の形状であるレプリカモールドは、ブランクモールドにおける微細パターンが加工されていない滑らかな表面を有する凸部(被転写部)に、マスターモールドのパターン部と同一形状のパターンを転写することで製造される。このとき、ブランクモールドの凸部に対してパターンを正確に転写するためには、この凸部と、原版に形成されたマスターモールドと同一形状のパターン部との平面方向の相対位置を合わせる必要がある。一般的に、この位置合わせは、ブランクモールドの外形に対して所定の位置に凸部を作成した後、ブランクモールドの外形と原版のパターン部の相対位置を合わせることにより行う。しかしながら、ブランクモールドの凸部には製造誤差が存在するため、その外形を用いた位置合わせには精度的に限界がある。これに対して、レプリカモールドの製造方法を示す特許文献1では、原版のパターン部とブランクモールドの凸部との位置合わせについてはなんら触れられていない。また、パターン形成装置を示す特許文献2では、原版のパターン部とブランクモールドの凸部との両方に形成されたアライメントマークを用いて位置合わせを行う。しかしながら、ブランクモールドの製造コストを抑える観点から、ブランクモールドにはアライメントマークを形成しないことが望ましい。
【0007】
上述のとおり、例えば半導体デバイス製造工程においてインプリント装置を採用する場合には、型の使用寿命による定期的な交換を要するため、型として上記のようなレプリカモールドを使用することが望ましい。しかしながら、一般的にレプリカモールドの製造には、実際のデバイス製造工程で使用されるインプリント装置とは別のレプリカモールド製造装置を使用するため、そのための設備投資コストおよび製造装置の設置スペースなどを別途要する。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、レプリカモールドの製造に際し、ブランクモールド(被処理部材)の凸部に対してパターン部を形成するのに有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、原版に形成されたパターン部に対して未硬化樹脂を塗布し、該未硬化樹脂と、被処理部材が有する凸部とを接触させて成形し硬化させることで、凸部の表面に樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、被処理部材を保持しつつ移動可能とする部材保持部と、原版を保持しつつ移動可能とする原版保持部と、原版保持部に設置され、被処理部材の表面との距離を計測する計測部と、被処理部材に対して原版保持部を平面駆動させつつ計測部が計測した計測値に基づいて凸部の位置を特定し、凸部とパターン部との位置合わせを実施させた後、部材保持部または原版保持部の少なくともいずれか一方を駆動させることで接触を実施させる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レプリカモールドの製造に際し、ブランクモールドの凸部に対してパターン部を形成するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態のパターン部形成工程の流れを示すフローチャートである。
【図3】ブランクモールド上の計測位置に関する図である。
【図4】基準モールドを用いた計測部補正量を求める方法を説明する図である。
【図5】第1実施形態のパターン転写工程での動作を示す図である。
【図6】凸部の表面に傾きが存在する場合の計測値とその傾き量を示す図である。
【図7】レプリカモールドのパターン部の最終加工工程での動作を示す図である。
【図8】第2実施形態のパターン部形成工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。図1は、本実施形態に係るインプリント装置1の構成を示す図である。このインプリント装置1は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、被処理基板であるウエハ上(基板上)の未硬化樹脂をモールド(型)で成形し、ウエハ上に樹脂のパターンを形成する装置である。さらに、本実施形態のインプリント装置1は、上記のような通常のインプリント処理以外に、同一のパターン部を有するレプリカモールドを複数製造するために、ブランクモールドの凸部にパターン部を形成するパターン部形成処理をも実施する。図1では、このパターン部形成処理を実施する場合のインプリント装置1の例を示している。ここで、「レプリカモールド」とは、通常のインプリント処理にて採用されるモールドのうち、マスターモールドが有するパターン部を基準として製造された、同一形状のパターン部を有するモールドである。また、「ブランクモールド」とは、パターン部が形成(加工)されておらず、滑らかな表面のままの凸部(被転写部)を有し、後にこの凸部にパターン部が形成されることでレプリカモールドとなる被処理部材である。これらのモールドについては、以下詳説する。なお、ここでは、インプリント装置1のインプリント方式は、光硬化法を採用するものとする。また、以下の図においては、ウエハ上の樹脂に対して照射される紫外線の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。インプリント装置1は、まず、光照射部2と、モールド保持機構3と、ウエハステージ4と、塗布部5と、制御部6とを備える。
【0014】
光照射部2は、インプリント処理の際に、モールド(ブランクモールド7)に対して紫外線8を照射する。この光照射部2は、不図示の光源と、この光源から射出された紫外線8をインプリントに適切な光に調整するための光学素子とから構成される。なお、本実施形態では光硬化法を採用するために光照射部2を設置しているが、例えば熱硬化法を採用する場合には、光照射部2に換えて、熱硬化性樹脂を硬化させるための熱源部を設置することとなる。
【0015】
通常のインプリント処理の際には、モールドとして、例えば、本実施形態のインプリント装置1で製造するレプリカモールドを採用し得る。このレプリカモールドは、外周形状が矩形であり、後述するウエハステージ4に載置されるウエハに対する面に3次元状に形成されたパターン部(例えば回路パターンなどの転写すべき凹凸)を含む凸部を有する。レプリカモールドの材質は、石英などの紫外線8を透過させることが可能な材料である。さらに、レプリカモールドは、以下のような変形を容易とするために、紫外線8が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さを有するキャビティ(凹部)が形成された形状としてもよい。
【0016】
一方、パターン部形成処理の際には、被処理部材として、ブランクモールド7がモールド保持機構3に設置される。このブランクモールド7は、上述のとおり、パターン部(凹凸)が形成されてない凸部7aを有し、後にレプリカモールドとなる構成部材である。凸部7aの平面サイズは、例えば26×33mmであり、凸部7aの厚み(高さ)は、例えばその周囲の非凸部の面(凸部以外の面)から30μmである。また、凸部7aの表面には、パターン部を生成する樹脂の付着を促進するため、例えば有機系の化学化合物からなる密着剤が塗布(コーティング)されていることが望ましい。
【0017】
モールド保持機構(部材保持部)3は、レプリカモールドまたはブランクモールド7(以下「モールド類」という)を保持するモールドチャック10と、このモールドチャック10を保持しつつ移動可能とするモールド駆動機構11とを含む。モールドチャック10は、モールド類における紫外線8の照射面側の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールド類を保持し得る。例えば、モールドチャック10が真空吸着力によりモールド類を保持する場合には、モールドチャック10は、外部に設置された不図示の真空ポンプに接続され、この真空ポンプのON/OFFによりモールド類の脱着が切り替えられる。また、モールドチャック10およびモールド駆動機構11は、光照射部2から射出された紫外線8がウエハステージ4上に載置されたウエハまたは原版13に向けて照射されるように、中心部(内側)に開口領域12を有する。この開口領域12には、不図示であるが、開口領域12の一部とレプリカモールドとで囲まれる空間を密閉空間とする光透過部材(例えばガラス板)が設置され、真空ポンプなどを含む圧力調整装置により空間内の圧力が調整される。この圧力調整装置は、例えば、レプリカモールドとウエハ上の未硬化樹脂との押し付け動作に際し、空間内の圧力をその外部よりも高く設定することでパターン部をウエハに向かい凸形に撓ませ、未硬化樹脂に対してパターン部の中心部から接触させる。これにより、パターン部と未硬化樹脂との間に気体(空気)が閉じ込められるのを抑え、パターン部に未硬化樹脂を隅々まで充填させることができる。さらに、モールド保持機構3は、不図示であるが、モールドチャック10におけるモールド類の保持側に、モールド類の側面に外力または変位を与えることによりレプリカモールド(パターン部)の形状を補正する倍率補正機構を有する。
【0018】
モールド駆動機構11は、通常のインプリント処理の際にはレプリカモールドとウエハ上の未硬化樹脂と、パターン部形成処理の際にはブランクモールド7と原版13とで、押し付けまたは引き離しを選択的に行うようにモールド類を各軸方向に移動させる。このモールド駆動機構11は、単一の駆動系であってもよいし、粗動駆動系と微動駆動系との組み合わせであってもよい。単一の駆動系の場合には、この駆動系は、少なくともZ軸方向に駆動する。一方、粗動駆動系と微動駆動系との組み合わせの場合には、粗動駆動系は、主にZ軸方向に長距離駆動し、微動駆動系は、粗動駆動系に追従して、例えば6軸(X、Y、Z、ωx、ωy、ωz)方向に微小駆動する。なお、これらの駆動系に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータやエアシリンダがある。また、インプリント装置1における押し付けおよび引き離し動作は、モールド類をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、ウエハステージ4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。
【0019】
通常のインプリント処理の際の被処理基板は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板などのウエハである。このウエハの被処理面には、レプリカモールドに形成されたパターン部により成形される紫外線硬化樹脂(以下「樹脂」という)が塗布される。
【0020】
一方、パターン部形成処理の際には、原版13がウエハステージ4のチャック14に載置される。この原版13は、その表面にブランクモールド7の凸部7aに転写されるべきパターンが形成(加工)されたパターン部13aを有する。原版13の材質は、上記ウエハと同様のシリコン系が望ましいが、例えば石英などでもよい。また、パターン部13aの表面には、凸部7aのパターン部を生成する樹脂の付着(残留)を防止するため、例えばフッ素系の材料からなる離型剤が塗布(コーティング)されている。さらに、原版13は、その表面におけるパターン部13aの周辺領域の一部に、パターン部13aの平面位置を特定するためのアライメントマークが設置されている。このアライメントマークは、少なくとも1つ存在すればよいが、より高精度に平面位置を特定するために、パターン部13aの形成位置を中心とした四隅に1つずつ存在することが望ましい。
【0021】
ウエハステージ(原版保持部)4は、ウエハまたは原版13を保持し、レプリカモールドとウエハ上の未硬化樹脂との、またはブランクモールド7と原版13上の未硬化樹脂との押し付けに際し、モールド類と未硬化樹脂との位置合わせを実施する。このウエハステージ4は、ウエハまたは原版13を吸着力により保持するチャック14と、このチャック14を機械的手段により保持し、各軸方向に移動可能とするステージ駆動機構15とを含む。このステージ駆動機構15は、単一の駆動系であってもよいし、粗動駆動系と微動駆動系との組み合わせであってもよい。単一の駆動系の場合には、この駆動系は、少なくともXY軸による平面方向(水平方向)に駆動する。一方、粗動駆動系と微動駆動系との組み合わせの場合には、粗動駆動系は、主にXY軸による平面方向に長距離駆動し、微動駆動系は、粗動駆動系に追従して、例えば6軸(X、Y、Z、ωx、ωy、ωz)方向に微小駆動する。なお、これらの駆動系に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータや平面モータがある。
【0022】
また、ウエハステージ4は、モールド類に向かう側に、モールドチャック10に保持されたモールド類の表面までの距離(以下「ギャップ量」という)を計測する計測部16を備える。この計測部16としては、例えば、その内部に、計測用光源(例えばレーザ照射部)、撮像素子(センサ)、および解析機構などを含む構成があり得る。この場合、計測用光源から射出された光(レーザ)は、モールド類の表面に到達して反射し、計測部16に再度戻る。この戻り光を、例えばCCDなどの撮像素子が観測し、その観測結果に基づいて、解析機構がギャップ量を算出する。この計測方法には、例えば、計測方向に対して斜めに光を入射させたときの戻り光の位置に基づいてギャップ量を計測する方法や、戻り光と参照光との干渉縞に基づいてギャップ量を計測する方法がある。ここで、参照光のビームスポット径は、80μm程度であり、このビームスポット径の範囲内における計測値の平均が計測位置でのギャップ量となる。
【0023】
塗布部5は、モールド保持機構3の近傍に設置され、ウエハ上または原版13上に樹脂(未硬化樹脂)を塗布する。ここで、この樹脂は、紫外線8を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂(インプリント材)であり、半導体デバイス製造工程やレプリカモールドの製造工程などの各種条件により適宜選択される。この塗布部5は、例えば液滴吐出方式(ドロップ式)を採用し、吐出ノズル5aから吐出される樹脂の量は、ウエハ上または原版13上に形成される樹脂の所望の厚さや、形成されるパターンの密度などにより適宜決定される。
【0024】
制御部6は、インプリント装置1の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。制御部6は、例えば、コンピュータなどで構成され、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。本実施形態の制御部6は、少なくともモールド保持機構3や、計測部16を含むウエハステージ4、塗布部5または後述のアライメント計測系17などの動作を制御し、それに関わる各種演算処理を実行する。なお、制御部6は、インプリント装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0025】
さらに、インプリント装置1は、アライメント計測系17や、不図示であるが、モールド類を装置外部からモールド保持機構3へ搬送するモールド搬送機構、またはウエハや原版13を装置外部からウエハステージ4へ搬送する基板搬送機構などを含み得る。特に、アライメント計測系(アライメントスコープ)17は、例えばパターン部形成処理において、チャック14に載置された原版13のアライメントマークを観測(検出)し、パターン部13aのパターン位置を特定する。なお、インプリント装置1の構成上、例えば、ウエハステージ4を複数搭載したり、1つのウエハステージ4が複数のウエハや原版13を保持したり、または塗布部5を複数搭載したりするなどの種々の変更があり得る。
【0026】
次に、インプリント装置1による処理動作について説明する。本実施形態のインプリント装置1は、通常のインプリント処理を行うと共に、これとは別の処理として、レプリカモールドの製造のためのブランクモールド7に対するパターン部形成処理も行う。まず、通常のインプリント処理について概略で説明する。まず、制御部6は、基板搬送機構によりウエハステージ4上のチャック14にウエハを載置および固定させ、ステージ駆動機構15によりウエハを塗布部5の塗布位置へ移動させる。次に、塗布部5は、塗布工程として、ウエハの所定の被処理領域であるショットに樹脂(未硬化樹脂)を塗布する。次に、制御部6は、ウエハ上の前記ショットがモールド(例えばレプリカモールド)に形成されたパターン部の直下に位置するようにステージ駆動機構15を移動させる。次に、制御部6は、モールド駆動機構11を駆動させ、ウエハ上の樹脂にモールドを押し付ける(押型工程)。この押し付けにより、樹脂は、パターン部の凹凸に充填される。この状態で、制御部6は、硬化工程として、光照射部2にモールドの上面から紫外線8を照射させ、モールドを透過した紫外線8により樹脂を硬化させる。そして、樹脂が硬化した後に、制御部6は、モールド駆動機構11を再駆動させ、モールドを樹脂から引き離す(離型工程)。これにより、ウエハ上の前記ショットの表面には、パターン部の凹凸部に倣った3次元形状の樹脂のパターン(層)が成形される。このような一連のインプリント動作をステージ駆動機構15の駆動によりショットを変更しつつ複数回実施することで、1枚のウエハ上に複数の樹脂のパターンを成形することができる。
【0027】
次に、パターン部形成処理について説明する。図2は、本実施形態に係るパターン部形成処理の流れ(動作シーケンス)を示すフローチャートである。まず、制御部6は、パターン部形成処理を開始すると、基板搬送機構を利用し、原版13をウエハステージ4上のチャック14に搬入させ、載置および固定させる(ステップS100)。ここで、原版13は、装置外部から直接搬入されてもよいし、例えば、予め装置内の格納部(不図示)に格納され、この格納部から搬入されてもよい。次に、制御部6は、アライメント計測系17により、原版13に形成されているパターン部13aのパターン位置を検出し特定する(ステップS101)。ここで、「パターン位置」とは、パターンの平面方向(XYθ)の位置であり、このうちXY軸方向は、アライメント計測系17による計測中心からのシフトずれを、θ方向(回転方向)は、ウエハステージ4のXY軸方向の駆動軸からの回転ずれをそれぞれ示す。また、この場合のアライメント計測系17による計測中心は、例えばウエハの中心位置をゼロとする位置である。制御部6は、アライメント計測系17に対し、原版13に配置されたアライメントマークを検出させるが、このとき2つ以上のアライメントマークを検出させれば、θ方向のずれ量を特定することができる。また、2つ以上のアライメントマークを検出する際には、制御部6は、理想的な仮想マーク計測用の位置に原版13を移動させて、アライメント計測系17により検出させることで、各アライメントマークの理想位置からのずれ量を特定する。ここで、原版13におけるXY平面内の各アライメントマークの理想位置が既知であり、各アライメントマークとパターン部13aとの位置関係も既知であるとする。なお、別途、外部装置による計測でパターン位置が既知である場合には、ここでのアライメント計測処理を省略し、既知のパターン位置をステップS101の計測結果として以後の工程にて参照してもよい。次に、制御部6は、モールド搬送機構を利用し、ブランクモールド7をモールド保持機構3のモールドチャック10に搬入させ、保持および固定させる(ステップS102)。ここでも、ブランクモールド7は、装置外部から直接搬入されてもよいし、例えば、予め装置内の格納部(不図示)に格納され、この格納部から搬入されてもよい。
【0028】
次に、制御部6は、ステップS103およびS104として、計測部16に対してブランクモールド7の凸部7aと、その周辺の平面領域(以下「非凸部」という)7bとを計測させる。まず、ステップS103では、制御部6は、計測部16が予め指定された計測点を計測できる位置に、ステージ駆動機構15を平面駆動させる。そして、ステップS104では、制御部6は、計測部16によりギャップ量を計測させる。制御部6は、これらステップS103およびS104の動作を、指定された全ての計測点の計測が終了するまで繰り返し実行する。なお、制御部6は、この動作の繰り返しを、ステージ駆動機構15のステップ駆動とギャップ量の計測とを計測点ごとに繰り返すステップ・アンド・リピート方式で実行してもよい。または、制御部6は、この動作の繰り返しを、ステージ駆動機構15をスキャン駆動させつつギャップ量の計測を同時に行うステップ・アンド・スキャン方式で実行してもよい。
【0029】
ここで、ブランクモールド7上の計測位置について説明する。図3は、ブランクモールド7上の計測位置を示す図である。特に、図3(a)は、計測部16側から見たブランクモールド7上の計測位置と、そのXY軸の両位置におけるZ軸方向の計測値を示す図である。ステップS104では、制御部6は、計測部16により、例えば、互いに直交する、凸部7aに対するX軸方向の位置計測用である被計測線(被計測位置)20と、凸部7aに対するY軸方向の位置計測用である被計測線21とを計測する。この計測では、ステージ駆動機構15は、例えば、ブランクモールド7の中心など設計上の凸部7aの中心を基準として、X軸駆動およびY軸駆動する。2つの被計測線20、21の寸法(計測範囲)は、それぞれ凸部7aの平面寸法に非凸部7bにおける一定の計測分を含む範囲となる。例えば、凸部7aのX軸方向の長さが33mmであるとすると、X軸方向の被計測線20の長さは、33mm+数mm×2(両端分)となる。なお、この例では、計測範囲を凸部7aの内側も含む一直線としているが、例えば、凸部7aのおおよその位置が予め既知である場合は、計測範囲を凸部7aの端部付近に限定してもよい。また、この例では、計測箇所を2つの被計測線20、21の2箇所としているが、平均化効果により計測精度を向上させるため、X軸およびY軸方向にてそれぞれ2つ以上の計測範囲を指定してもよい。具体的には、例えば、一方のX軸方向の計測を少なくとも1つ以上の他方のY軸方向の位置に対して実施させればよい。
【0030】
この計測にて得られる計測値22、23を、図3(a)に示すように凸部7aの位置に対応させてプロットすると、凸部7aは、非凸部7bに対して計測部16から近い距離にあるため、凸部7aと非凸部7bとで計測値に差分が生じる。したがって、制御部6は、この差分から凸部7aの端部の段差の位置を特定することができる。なお、実際の計測では、様々な要因により計測値にバラツキが発生するため、制御部6は、計測値に対して移動平均処理を実行し、計測値をスムージングすることが望ましい。また、特に凸部7aの端部での角付近の計測値は、ビームスポット径の影響を受け、凸部端点(段差位置)がはっきりと見られず、なだらかに推移したものとなる。そこで、本実施形態では、凸部7aと非凸部7bとの高さの差が既知であることを利用し、制御部6は、この高さの差と各計測点同士の差分とを比較することで、凸部端点を特定する。
【0031】
図3(b)は、この凸部端点の特定に関し、図3(a)に示すX軸方向の被計測線20における左側の段差部分の計測値を拡大した概念図である。図3(b)において、複数の点24は、計測部16による1点ごとの計測値であり、凸部7aの表面位置25および非凸部7bの表面位置26を取っている。この場合、制御部6は、例えば、凸部7aと非凸部7bとの表面位置から中間値27を算出し、計測値がなだらかに変化している部分の計測値と中間値27とが交わる位置28を凸部端点と特定し得る。
【0032】
図2のフローチャートに戻り、次に、制御部6は、ステップS103およびS104にて得られた計測値に基づいて、凸部7aの位置(凸部位置)を算出する(ステップS105)。ここで、「凸部位置」とは、凸部7aの平面方向(XYθ)の位置であり、このうちXY軸方向は、計測部16の計測中心からのシフトずれを、θ方向(回転方向)は、ウエハステージ4のXY軸方向の駆動軸からの回転ずれをそれぞれ示す。また、この場合の計測部16の計測中心は、例えばブランクモールド7の中心位置をゼロとする位置である。このとき、制御部6は、凸部位置のX位置(中心座標x)を、X軸方向の計測結果である計測値22から得られる左右両端の各段差の位置の平均として算出する。同様に、制御部6は、凸部位置のY位置(中心座標y)を、Y軸方向の計測結果である計測値23から得られる上下両端の各段差の位置の平均として算出する。さらに、制御部6は、凸部7aの理想位置からの回転量θを、計測値22、23の両計測結果から算出する。具体的には、まず、X軸方向の計測値22から得られる凸部7aのX軸方向の長さをX、凸部7aのX軸方向の設計値(例えば33mm)をXとする。同様に、Y軸方向の計測値23から得られる凸部7aのY軸方向の長さをY、凸部7aのY軸方向の設計値(例えば26mm)をYとする。このとき、回転量θの値は、例えば、以下の式(1)を解いたθと、式(2)を解いたθとの平均として算出することができる。
cos(θ)=X/X (1)
cos(θ)=Y/Y (2)
なお、回転量θを算出する方法は、これに限定するものではなく、例えば、各軸方向における複数の計測箇所を計測する場合には、各計測箇所での計測値の差分から回転量θを算出してもよい。
【0033】
ここで、計測部16の計測用光源から射出される光の光軸は、計測用光源からブランクモールド7に向かい完全に垂直になるのが理想である。しかしながら、計測部16の各構成要素の取り付け誤差や経時変化などにより、実際にはブランクモールド7に対して斜めに光が照射され、計測値にずれが生じ得る(騙され得る)。同様に、計測部16の平面方向の取り付け位置にも設計位置からの誤差などがあり、計測値には平面方向の位置に起因したずれも生じ得る。そこで、本実施形態では、例えば、モールドの外形に対して凸部の位置に全くずれのない調整用のモールド(以下「基準モールド」という)を使用して、予め計測誤差を補正する。以下、この光軸ずれや位置ずれに伴う計測誤差(補正量)を「計測部補正量」という。また、以下簡単のために、上記のような基準モールドを用いた計測誤差の補正について説明するが、例えば、凸部の位置にずれがあるモールドを用いることもあり得る。この場合、予め別の計測装置(例えば、原子間力顕微鏡などの形状を精密に計測可能な装置)でモールドの外形に対する凸部の位置を計測し、制御部6は、この予め計測した位置(凸部の位置の誤差)を計測部補正量に反映させればよい。または、凸部の位置を示すアライメントマークをモールド上に設置(形成)し、このアライメントマークの位置を計測して予め凸部の位置を特定しておくことで、制御部6は、この凸部の位置を計測部補正量に反映させてもよい。
【0034】
図4は、基準モールドを用いて計測部補正量を求める方法を説明するための概略図である。図4において、計測用光源から照射された光の光軸30は、基準モールド31の中心線(凸部中心位置)32に対して斜めになっており、さらに、この位置に対応した計測部16による計測値33を示している。このように、光軸30が斜めになると、照射位置がずれた分だけ計測値33も水平方向にずれる。ここで、基準モールド31の凸部中心位置32が既知であるため、計測値33から得られる凸部中心位置と真の凸部中心位置32との差分Δdが、計測部16の光軸ずれ量となる。そこで、制御部6は、この差分Δdの算出をX軸およびY軸方向に対してそれぞれ実行することで、X軸とY軸との計測部補正量を求めることができる。そして、制御部6は、この計測部補正量を記憶し、例えば、このステップS105にて算出される凸部7aの位置に反映させれば、凸部7aの真の位置を算出することができる。
【0035】
図2のフローチャートに戻り、次に、制御部6は、塗布工程として、ステップS101にて得られた原版13上のパターン位置に基づいて、塗布部5により、パターン13a上に樹脂を塗布させる(ステップS106)。このとき、制御部6は、まず、パターン13a上の塗布開始位置が吐出ノズル5aの真下となる位置に、ステージ駆動機構15を駆動させる。その後、制御部6は、例えば、塗布部5からの樹脂の吐出と同時に、塗布終了位置までステージ駆動機構15をスキャン駆動させることで、最終的にパターン13aの全面に対して樹脂を塗布させる。
【0036】
次に、制御部6は、パターン転写工程として、ステップS101にて得られた原版13上のパターン位置と、ステップS105にて得られたブランクモールド7上の凸部位置とに基づいて、凸部7aにパターンを有する層を形成する(ステップS107)。図5は、パターン転写時のブランクモールド7と原版13との動作を示す概略断面図である。このステップS107では、制御部6は、まず、モールド駆動機構11を駆動させ、原版13上の樹脂18にブランクモールド7(凸部7a)を押し付ける(STEP1:押型工程)。この押し付けにより、樹脂18は、パターン部13aの凹凸部に充填される。この状態で、制御部6は、光照射部2にブランクモールド7の上面から紫外線8を照射させ、ブランクモールド7を透過した紫外線8により樹脂18を硬化させる(STEP2:硬化工程)。そして、樹脂18が硬化した後に、制御部6は、モールド駆動機構11を再駆動させ、ブランクモールド7を樹脂18から引き離す(STEP3:離型工程)。ここで、パターン転写時の設計上(理想上)のウエハステージ4の位置(ステージ駆動機構15の可動ステージの位置)をPとし、パターンの位置(ずれ量)をPとし、凸部7aの位置(ずれ量)をPとする。このとき、パターン転写時のウエハステージ4の位置PWSは、以下の式(3)で現される。
WS=P+(P−P) (3)
なお、制御部6は、この式(3)を、ウエハステージ4のXYθの各軸方向の目標位置のそれぞれの算出に適用する。
【0037】
ここで、制御部6は、計測部16による計測値22、23から、凸部7aの表面に傾き(垂直回転成分)が存在すると認識した場合には、モールド駆動機構11を凸部7aの傾きを相殺する方向へ予め駆動しておくことが望ましい。これにより、凸部7aの表面と、パターン部13aの表面との平行性が保たれるので、インプリント装置1は、凸部7aに対する、より良好なパターン部の形成が可能となる。図6は、凸部7aの表面に傾きが存在する場合のX軸またはY軸のいずれかの計測値と、その傾き量を示す概念図である。図6において、複数の点40は、計測部16による1点ごとの計測値であり、この計測値に対して、凸部7aの表面の近似直線41を取っている。このように、凸部7aの表面の傾き量は、例えば、凸部部分の計測値を最小二乗法により1次近似して得た回帰直線での1次の係数として得ることができる。
【0038】
図2のフローチャートに戻り、次に、制御部6は、モールド搬送機構を利用し、凸部7aにパターンを有する層が形成されたモールド(元のブランクモールド7)を、モールド保持機構3のモールドチャック10から搬出させる(ステップS108)。ここで、制御部6は、次の処理対象となるブランクモールド7が存在する場合には、ステップS102に戻り、次のブランクモールド7に対する処理を進行する。そして、制御部6は、ステップS107にて処理対象となる全てのブランクモールド7に対するパターン転写工程が終了した後、基板搬送機構を利用し、原版13をウエハステージ4上のチャック14から搬出させ(ステップS109)、一連の処理を終了する。なお、ここでは、ブランクモールド7に存在する1つの凸部7aに対してパターンを転写するものとしたが、本発明は、これに限定するものではない。例えば、ブランクモールド7に複数の凸部が存在し、それらの凸部が被処理対象である場合には、制御部6は、上述の手順に沿って各凸部の位置を算出することで、上記と同様に、凸部ごとに正確なパターンの転写が可能となる。
【0039】
上記パターン部形成処理にて凸部にパターンが形成されたモールドは、インプリント装置1の外部に搬出された後、他の製造装置によりパターン部の最終加工が実施される。図7は、このパターン部の最終加工工程での動作を示す概略図である。まず、インプリント装置1にて処理されたモールド50は、エッチング処理により、パターンが形成された樹脂層(樹脂18)の下層に対して加工を行う(STEP1:エッチング工程)。この加工が終了した後(STEP2)、残留した樹脂18は、除去処理(洗浄処理)により除去され(STEP3:樹脂除去工程)、レプリカモールドが完成する。
【0040】
このように、インプリント装置1では、ブランクモールド7にアライメントマークを要せず、ブランクモールド7の凸部7aの凸部位置を参照することで、原版13との位置合わせを実施する。したがって、特に同一のパターン部形状を有する複数のレプリカモールドを製造するに際して、その元となるブランクモールドの製造コストを抑えることができる。また、実際に装置内に保持された状態のブランクモールド7のアライメントメークを計測する計測系(観察系)を要しないことから装置の構成を簡略化できる。これにより、パターン部形成処理専用のレプリカモールド製造装置とすることなく、通常のインプリント処理を実施するインプリント装置1にてパターン部形成処理を実施することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、レプリカモールドの製造に際し、ブランクモールドの凸部に対してパターン部を形成するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインプリント装置について説明する。本実施形態のインプリント装置の特徴は、パターン部形成工程にて、制御部6が計測部16によりギャップ量を計測させる際に、予めブランクモールド7と計測部16の計測用光源とを可能な限り接近させた状態とする点にある。計測部16では、被計測スポットまでの距離が離れるほど、取り付け誤差による光軸の傾きやビームスポット径の拡がりに影響し、計測精度が低下することが考えられる。このブランクモールド7と計測部16の計測用光源とを予め接近させるのは、そのような影響を抑えるためである。ここで、この接近動作を行う際には、チャック14上に原版13を載置していないことが必要となる。これは、原版13の厚みが例えば数百μmであるのに対して、ブランクモールド7の凸部7aの表面と、計測用光源の出射部との距離は、数十μmを想定しているため、原版13をチャック14上に載置したままでは互いに干渉するからである。
【0043】
図8は、第1実施形態に係る図2のフローチャートに対応した、本実施形態に係るパターン部形成処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、特に図2のフローチャートに示す流れと異なる部分について詳説する。まず、制御部6は、パターン部形成処理を開始すると、この時点では原版13の搬入を行わず、ブランクモールド7をモールドチャック10に搬入させ、保持および固定させる(ステップS200)。次に、制御部6は、本実施形態の特徴であるギャップ狭量工程として、モールド駆動機構11を駆動させ、ブランクモールド7の凸部7aの表面と計測用光源の出射部との距離を、数十μmに設定する(ステップS201)。次に、制御部6は、図2のステップS103およびS104に対応したステップS202およびS203として、計測部16に対してブランクモールド7の凸部7aとその周辺の領域とを計測させる。次に、制御部6は、図2のステップS105に対応したステップS204として、凸部7aの凸部位置を算出する。ここまでの工程が終了した後、制御部6は、モールド駆動機構11を再度駆動させ、一旦モールドチャック10をウエハステージ4から離間する方向へと退避させることが望ましい。次に、制御部6は、図2のステップS100およびS101に対応したステップS205およびS206として、原版13の搬入、およびパターン部13aのパターン位置の検出を実行する。その後のステップS207〜S210の工程は、図2のステップS106〜S109の工程と基本的に同様であるが、本実施形態では、制御部6は、ステップS209として原版13の搬出を実施させた後、ステップS210としてブランクモールド7を搬出させる。このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、計測部16から被計測スポットまでの距離が遠いことに起因した種々の影響を抑え、計測精度を良好とすることができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、1つのインプリント装置1において、通常のインプリント処理に加えて、ブランクモールド7の凸部7aにパターン部を形成するパターン部形成処理をも実施可能とした。しかしながら、パターン部形成処理専用のレプリカモールド製造装置に対して上記実施形態のパターン部形成処理を適用しても、ブランクモールド7の低コスト化および装置構成の簡略化の観点から有利となり得る。また、本発明のインプリント装置1は、上記実施形態に示したようなインプリント処理およびパターン部形成処理の2つの用途に限定されず、例えば、原版13の製造などにも適用可能である。この場合、インプリント装置1は、マスターモールドに形成されているパターンを、のちに原版13となる基材(ブランク原版)に対して転写する処理に採用され得る。この処理では、モールドチャック10に保持および固定されるものがマスターモールドであり、ウエハステージ4上のチャック14に載置および固定されるものがブランク原版である。
【0045】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 インプリント装置
3 モールド保持機構
4 ウエハステージ
6 制御部
7 ブランクモールド
7a 凸部
13 原版
13a パターン部
16 計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版に形成されたパターン部に対して未硬化樹脂を塗布し、該未硬化樹脂と、被処理部材が有する凸部とを接触させて成形し硬化させることで、前記凸部の表面に樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記被処理部材を保持しつつ移動可能とする部材保持部と、
前記原版を保持しつつ移動可能とする原版保持部と、
前記原版保持部に設置され、前記被処理部材の表面との距離を計測する計測部と、
前記被処理部材に対して前記原版保持部を平面駆動させつつ前記計測部が計測した計測値に基づいて前記凸部の位置を特定し、前記凸部と前記パターン部との位置合わせを実施させた後、前記部材保持部または前記原版保持部の少なくともいずれか一方を駆動させることで前記接触を実施させる制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記計測部による前記凸部の被計測位置は、前記凸部の端部の段差を含み、
前記制御部は、前記計測部が前記凸部の前記表面と該凸部以外の表面とを複数の点で計測した前記計測値の差分に基づいて前記凸部の位置を特定し、かつ、前記凸部の中心位置を算出することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記被計測位置は、前記原版保持部の前記平面駆動の基準となる2つの軸方向に沿った被計測線として設定され、
前記制御部は、前記計測部に対し、一方の前記軸方向の計測を、少なくとも1つ以上の他方の前記軸方向の位置に対して実施させることを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記計測部による計測に際し、外形に対して凸部の位置が既知の型、または凸部の位置を示すアライメントマークが配置された型を利用して前記被処理部材の前記凸部の位置を計測させることで、予め前記計測部の計測誤差を補正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記原版の前記パターン部が形成されている側の表面に配置されたアライメントマークを計測するアライメント計測系を有し、
前記制御部は、前記接触を実施する前に、前記アライメント計測系による計測結果に基づいて前記パターン部の位置を特定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部により特定される前記被処理部材の前記凸部の位置および前記パターン部の位置は、設計上の位置からの回転方向を含む平面方向でのずれ量であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記原版を前記原版保持部に保持させる前に、前記被処理部材の前記凸部と前記計測部との間の距離を、前記原版の高さよりも小さくなるように接近させた状態で、前記計測部により前記距離を計測させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記被処理部材は、前記凸部に前記パターンが形成されたのち、基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させて、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント処理で採用される前記型となることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させて、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント装置は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインプリント装置であり、
前記部材保持部は、前記被処理部材に換えて前記型を保持し、
前記原版保持部は、前記原版に換えて前記基板を保持する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
請求項9項に記載のインプリント装置を用いて基板上に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62286(P2013−62286A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198132(P2011−198132)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】