説明

ウェハカセット

【課題】ウェハ同士の貼り付きを防止し、移送中の揺れによるウェハへのダメージを軽減するウェハカセットを得ること。
【解決手段】対向する一対の側面1aの双方の内壁に、底面に対して傾きを有するように形成された複数の保持溝11を備え、複数の保持溝11の各々に、複数のウェハWの各々を傾いた状態で収容する。ウェハカセットは、保持溝11同士の間に設けられた複数のリブ1bを備え、複数のウェハWの各々を複数のリブ1bの各々にもたれ掛かった状態で保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象のウェハを複数枚収容したウェハカセットを、一列に配列させた複数の処理槽に移送装置によって順次浸漬させて自動的にエッチング及び洗浄するシリコンウェハエッチング装置に用いるウェハカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、シリコンウェハエッチング装置は、エッチング槽、洗浄槽及び乾燥槽と、各槽へのウェハカセットの投入及び取り出しを行う移送装置とを備えており、洗浄槽の直後に乾燥槽が設けられていて、洗浄後直ちに乾燥を行うようになっている。エッチング槽、洗浄槽にてウェハ同士が貼り付いてしまうと、エッチング処理が不安定になったり、ウォーターマークが形成されるなどして製品品質を損なうことになる。また、洗浄槽から移送した乾燥槽内でウェハ同士が貼り付いていると、ウェハに付着している残水量が多くなり乾燥に時間を要してしまい生産効率に支障がでる。このため、ウェハが貼り付かない状態で処理し、移送することが求められている。
【0003】
通常、シリコンウェハエッチング装置に用いるウェハカセットは、底面に対して垂直にウェハ挿入用の保持溝が設けられており、ウェハは起立した状態で収納される。しかし、洗浄中のウェハの位置を補正する機能を備えていないため、隣接する保持溝に収納されたウェハ同士が処理中・処理後に貼り付くことがある。
【0004】
この改善策として、ウェハカセットを移送する際に槽から斜めに引き上げて取り出したり、取り出し後にウェハカセットを傾け、保持溝の開口角度を変更するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−297658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ウェハは薄肉化傾向にあり、以前よりもウェハ自体の反り量や撓み量は増加し、ウェハ同士の貼り付きの発生は増加傾向にあり、エッチング槽、洗浄槽内でもウェハ同士の貼り付きが発生している。特許文献1に記載の発明は、エッチング槽や洗浄槽からの取り出し後にウェハカセットを傾けウェハを動かして保持溝の開口角度を変更することにより乾燥不良の抑制を図っている。しかし、エッチング槽や洗浄槽内での処理中にウェハの位置を補正できないため、槽内でウェハ同士が貼り付いてしまう問題がある。
【0007】
また、エッチング槽や洗浄槽からの取り出し後にウェハカセットを動かして保持溝の開口角度を変更することにより、ウェハが保持溝に衝突してウェハにストレスを与えるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウェハ同士の貼り付きを防止し、移送中の揺れによるウェハへのダメージを軽減するウェハカセットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対向する一対の側面の双方の内壁に、底面に対して傾きを有するように形成された複数の保持溝を備え、複数の保持溝の各々に、複数のウェハの各々を傾いた状態で収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェハ同士の貼り付きを防止し、移送中の揺れによるウェハへのダメージを軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるウェハカセットの斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかるウェハカセットの上面図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかるウェハカセットの断面図である。
【図4】図4は、複数のウェハを収容した状態のウェハカセットを示す部分断面図である。
【図5】図5は、ウェハカセットを槽に浸漬する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるウェハカセットの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかるウェハカセットの斜視図である。図2は、実施の形態にかかるウェハカセットの上面図である。図3は、実施の形態にかかるウェハカセットの断面図であり、図2におけるIII−III線に沿った断面を示している。ウェハカセット1は、ウェハWを収容する箱状の構造体であり、天面はウェハWの出し入れができるように開放されている。側面1aの内壁に複数のリブ1bが設けられており、リブ1b同士の間には保持溝11が形成されている。保持溝11の各々は、底面1cに対して5〜45°程度傾いている。また、ウェハカセット1の底面1cには、下部保持溝12が形成されており、下部保持溝12の両端は、左右の側面1aの内壁の保持溝11と繋がっている。
【0014】
図4は、複数のウェハWを収容した状態のウェハカセット1を示す部分断面図である。保持溝11内に配置されることによってウェハカセット1に収容されたウェハWは、下端部が下部保持溝12に進入してリブ1bにもたれ掛かかり、斜めになった状態で保持される。
【0015】
図5は、ウェハカセット1を槽3に浸漬する工程を示す図である。ウェハカセット1は、一列に配列させた複数の処理槽に順次浸漬させて自動的にエッチング及び洗浄するシリコンウェハエッチング装置に用いられる。ウェハWを収容したウェハカセット1を移送装置4により槽3に浸漬する。ウェハカセット1を槽3に浸漬する際には、ウェハWにストレスを与えないようにするために、保持溝11の角度と同じ角度で槽3に浸漬することが好ましい。
【0016】
槽3に浸漬されたウェハWは、斜めになった状態でウェハカセット1に保持されたまま処理されるため、前後のウェハWと貼り付かず、安定したエッチング処理、洗浄処理が可能となる。
【0017】
処理完了後、槽3から移送する際には、浸漬する場合と同様に、ウェハWにストレスを与えないようにするために、保持溝11の角度と同じ角度で移送装置4により槽3から引き上げることが好ましい。
【0018】
次工程への搬送時にも、ウェハWは斜めになった状態でウェハカセット1に保持されたまま移送されるため、搬送中にウェハWが揺れることが無く、ウェハWにストレスがかかることもない。
【0019】
以上のように、本実施の形態にかかるウェハカセットは、ウェハを斜めに傾けた状態で保持する保持溝を有することでウェハの位置が補正され、保持溝を形成するリブの一方に常にウェハがもたれかかる状態で保持でき、隣り合うウェハの間隔を一定に保つことができる。これにより、ウェハ同士の貼り付きを抑制し、エッチング処理の安定化を図り、ウォーターマークの発生を防止できる。また、常にウェハがリブにもたれかかるため、移送中の揺れによってウェハにストレスが加わることを防止できる。
【符号の説明】
【0020】
1 ウェハカセット
1a 側面
1b リブ
1c 底面
3 槽
4 移送装置
11 保持溝
12 下部保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の側面の双方の内壁に、底面に対して傾きを有するように形成された複数の保持溝を備え、
前記複数の保持溝の各々に、複数のウェハの各々を傾いた状態で収容することを特徴とするウェハカセット。
【請求項2】
前記複数の保持溝同士の間に設けられた複数のリブを備え、前記複数のウェハの各々を前記複数のリブの各々にもたれ掛かった状態で保持することを特徴とする請求項1に記載のウェハカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8920(P2013−8920A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141950(P2011−141950)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】