説明

ウェーハ搬送装置

【課題】チャンバ100の外側に無用なスペースを必要とすることなく、低価格で、チャンバ100に設けたウェーハWの搬出入口101を可及的に小さくでき、しかも正確なウェーハWの搬送が可能なウェーハ搬送装置300を提供する。
【解決手段】Xリンクユニット21で構成した伸縮手段2と、前記Xリンクユニット21を構成するリンク要素21a同士の回転軸22に係合して伸縮軸線Cに沿ってスライド可能に支持するガイド部材8と、前記伸縮手段2の先端部に取り付けられて前記載置板1を抜脱可能かつ回転不能に保持する保持手段4と、前記伸縮手段2によってウェーハW交換室から受渡位置に向かって移動する途中での載置板1の、若干の伸縮軸線Cからの位置ずれを是正しながら受渡位置に導く案内機構63とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウェーハをチャンバ等に出し入れするためのウェーハ搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のウェーハ搬送装置は、ウェーハを載置する載置板を、チャンバの外側に設けたウェーハ交換室と該チャンバの内部に設定した受渡位置との間で、搬送棒を押し引きすることによって出し入れするようにしている。
ところが、上述した構成であると、搬送距離分だけ、搬送棒がウェーハ交換室から突出することになり、チャンバ外側に大きな突出スペースを必要とする。
そこで、半導体製造装置でよく見られる多関節アーム型搬送ロボットを用いることもあるが、単にウェーハ交換室とチャンバの内部で載置板を搬出入する目的から考えると構造が複雑でオーバースペックとなり、高価格化を招きがちである。
【0003】
また、特許文献1に示すように、パンタグラフ機構(Xリンクユニット)を利用した搬送装置も考えられている。この搬送機構は、具体的には、伸縮可能なテレスコピックレールの先端部に載置板を設け、このテレスコピックレールの下方に、該テレスコピックレールを伸縮駆動して載置板を出し入れするための前記パンタグラフ機構を組み込んだものである。このようなものであれば、チャンバ外側に不要なスペースを設ける必要はない。
【0004】
なお、案内構造であるテレスコピックレールを利用しているのは、単にパンタグラフ機構のみで載置板を進退駆動するとガタやたわみが生じて、ウェーハ載置板を正確に受渡位置に搬送できないためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−217939
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成であると、テレスコピックレールとパンタグラフ機構とが上下に2段重なった状態で同時に伸縮するため、チャンバに設けたウェーハの搬出入口あるいはそれを開閉するためのゲートバルブを、それらが両方出入りできるかなりの大きさに設定しなければならないし、そのためにチャンバ内の真空度の劣化を招く怖れもある。
【0007】
本発明はこういった問題点を一挙に解決すべく図ったものであって、その主たる所期課題は、チャンバの外側に無用なスペースを必要とすることなく、低価格で、チャンバに設けたウェーハの搬出入口を可及的に小さくでき、しかも正確なウェーハの搬送が可能なウェーハ搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るウェーハ搬送装置は、ウェーハを載置するための載置板を、チャンバに設けた開閉可能な搬出入口を介して、該チャンバの外側に設けたウェーハ交換室と該チャンバの内部に設定した受渡位置との間で出し入れするためのものである。
【0009】
そして、基端側をウェーハ交換室に支持され、先端部で載置板を前記ウェーハ交換室と受渡位置との間で進退駆動するものであって、一対のリンク要素の中央部同士を回転可能に連結したXリンクユニットを1又は複数直列させて構成した伸縮手段と、前記ウェーハ交換室内に設けられ、前記各Xリンクユニットを構成するリンク要素同士の回転軸に係合し、該回転軸を伸縮手段の伸縮軸線に沿ってスライド可能に支持するガイド部材と、前記伸縮手段の先端部に取り付けられて前記載置板を抜脱可能かつ略回転不能に保持する保持手段と、前記受渡位置で載置板を受け取る受取手段とを具備してなり、前記受取手段が、前記伸縮手段によってウェーハ交換室から受渡位置に向かって移動する途中での載置板の、位置ずれを是正しながら受渡位置に導く案内機構を具備したものであることを特徴とする。
【0010】
なお、保持手段が載置板を「略回転不能」に保持する程度とは、受取手段での位置ずれによる是正機能が働く範囲内での回転やずれは許容し、それ以上は許容しない程度のことである。また、「位置ずれ」とは、前記保持手段による保持ずれや、伸縮手段のたわみ、ガタによる位置ずれの範囲内のことである。
【0011】
このようなものであれば、Xリンクユニット(いわゆるパンタグラフ機構)を利用した伸縮手段によってウェーハ載置板を搬送するようにしているので、従来の搬送棒で必要であったチャンバ外側の突出スペースが不要となるうえ、駆動手段をも含めた構成を簡単化でき、低価格化が可能となる。
【0012】
一方、この種のXリンクユニットを利用した伸縮手段であると、各リンク要素を結合する回転軸での僅かなガタやたわみにより、例えば伸張時に該伸縮手段が理想の伸縮軸線からずれて、ウェーハ載置板を正確に受渡位置に搬送できないおそれがある。
【0013】
これに対し、本発明であれば、載置板が、ウェーハ交換室内においてはガイド部材によって正確に理想の伸縮軸線上を案内された伸縮手段によって、また、チャンバ内に進入すると、受取手段の案内機構によって、ずれなく確実に受渡位置にまで搬送することができる。
【0014】
また、伸縮手段を正確に伸縮させて載置板に位置ずれが生じないようにする目的のために、チャンバの内外に分離してガイド部材及び案内機構をそれぞれ設けた構成とし、ゲートバルブを通過するのが、ほぼ直列に配置した載置板、保持手段及び伸縮手段のみとなるように構成しているので、前記搬出入口及びゲートバルブを可及的に小さくでき、チャンバ真空度の劣化等を抑制できる。
【0015】
簡単な構成で受取手段を実現するには、前記受取手段が、チャンバ内に設置され、載置板の先端に当接して前記受渡位置を定めるストッパ部材をさらに具備し、前記案内機構が、前記ストッパ部材から前記搬出入口に向かって延びるピンと、前記載置板の先端面に形成されて前記ピンに嵌合する嵌合穴とからなり、前記ピンを先細り形状又は前記嵌合穴の入口部分をテーパ形状として、嵌合初期時においてはピンと嵌合穴に嵌合ガタが存在し、前記受渡位置においては、ピンと嵌合穴とががたなく嵌合する寸法に設定したものであることが望ましい。
【0016】
特にピンをある程度の可撓性を有したものにしておけば、なお好ましい。
【0017】
案内機構を効率的に作用させるための具体的態様としては、前記回転軸の一部が前記ガイド部材の先端を越えて該ガイド部材から離脱した位置において、前記案内機構が作用するように設定されているものを挙げることができる。
【0018】
チャンバ内部で載置板を移動させるためのステージを利用して、載置板抜脱のための構成の簡単化を図るには、前記保持手段が、載置板の基端部に設けられた係合孔に上下から係合する係合部材を具備したものであり、受取手段が、前記受渡位置で受け取った載置板を上下動させるZステージを具備したものであり、前記保持手段に保持されて前記受渡位置に搬送された載置板が、前記Zステージによって上昇又は下降することにより、前記係合部材と係合孔との係合が解除されるように構成しておくことが好ましい。
【0019】
保持手段の好ましい具体的態様としては、前記保持手段が、伸縮部材の先端部に設けられて、該伸縮部材の伸縮に拘わらず常に伸縮軸線上を移動する互いに偏位した第1部材及び第2部材をさらに具備したものであり、前記係合部材が、前記第1部材又は第2部材のいずれか一方に1点を固定され、他方に他点をスライド可能に支持されて、その姿勢が一定に保たれるように構成されたものを挙げることができる。
【0020】
より具体的には、前記回転軸上に前記第1部材を設けるとともに、前記伸縮軸線を中心として対称に配置された一対の第1アームの基端部を、前記各第1アームの中間部位にそれぞれ枢結し、その先端部同士を直接又は中間部材を介して枢結することで、第1アームの先端部枢結点上又は前記中間部材上に、Xリンクユニットの動作に拘わらず、常に伸縮軸線上を移動する前記第2部材を設けるようにしたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、チャンバの外側に無用なスペースを必要とすることなく、低価格化が可能であり、さらにはチャンバに設けたウェーハの搬出入口を可及的に小さくでき、しかも正確なウェーハの搬送が可能なウェーハ搬送装置の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における搬送装置の伸縮手段が縮退したときを示す模式的平面図。
【図2】同実施形態における搬送装置の伸縮手段が伸長したときを示す模式的平面図。
【図3】同実施形態における搬送装置の伸縮手段が縮退したときの模式的側面図。
【図4】同実施形態におけるウェーハ位置決め時の受取手段周辺の拡大図。
【図5】同実施形態におけるZステージ上動時の受取手段周辺の別の拡大図。
【図6】同実施形態における受取手段周辺の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1、図3における符号は、チャンバ100の外壁に取り付けられたウェーハ交換室たるロードロック室200を示している。このロードロック室200は、チャンバ100内を真空に保持し大気に開放しないことを目的に、チャンバ100への処理前、処理後のウェーハWを出し入れするために設置された真空室であり、チャンバ100におけるウェーハWの搬出入口101に臨んで設けてある。この搬出入口101には、図示しないゲートバルブが設けられており、ロードロック室200内が真空になった状態で、ゲートバルブを開いてチャンバ100へウェーハWを搬入あるいは搬出するように構成してある。したがって、処理前/処理後のウェーハWをロードロック室200に出し入れするたびに大気への開放と真空引きが繰り返される。
【0024】
しかして、この実施形態では、前記ロードロック室200とチャンバ100内との間でゲートバルブを介してウェーハWを搬出入するために、図1に示すようなウェーハ搬送装置300を設けている。
【0025】
具体的に、このウェーハ搬送装置300は、図1及び図2に示すように、ウェーハWを載置するための載置板1と、この載置板1を前記ロードロック室200とチャンバ100内に定められた所定の受渡位置との間で進退移動させる伸縮手段2と、この伸縮手段2を伸縮駆動する駆動手段3と、前記伸縮手段2の先端部と載置板1の基端部との間に介在して載置板1を保持する保持手段4とを基本構成として具備したものである。
【0026】
載置板1は矩形簿板状をなすもので、その上面中央部には、円形状の凹部1aが形成してある。そして、この凹部1aにウェーハWがガタ無く嵌り込んで搬送される。
【0027】
伸縮手段2は、基端部をロードロック室200に支持させるとともに、先端部で前記載置板1を進退駆動するものであり、複数のXリンクユニット21を直列させて構成してある。Xリンクユニット21は、上下方向から視て、伸縮軸線Cを中心に対称に配置した一対の帯状をなすリンク要素21aの中央部同士を、上下方向に延びる回転軸22によって回転可能に連結したものである。そして、各リンク要素21aの先端部を、次段のXリンクユニット21における各リンク要素21aの基端部にそれぞれ回転可能に接続してある。なお、最先端のXリンクユニットは、リンク要素21aが回転軸22までの長さとなっており、X字状をなしていない。
【0028】
駆動手段3は、ロードロック室200に設けられ、最も基端側のXリンクユニット21におけるリンク要素21aの各基端部を前記伸縮軸線Cと直交する方向に対称に駆動し、前記伸縮手段2を伸縮させるものである。より具体的には、伸縮軸線Cと直交する水平方向に延びる雄ネジ部材31と、この雄ネジ部材31に螺合して進退する一対の雌ネジ部材32とを具備している。雄ネジ部材31は、その各端部をロードロック室200の対向する側壁にそれぞれ回転可能に取り付けたものであり、伸縮軸線Cを境にしてネジの切る向きが逆にしてある。また、この雄ネジ部材31の一端は、前記側壁を貫通させて外方に突出させてあり、その突出させた部位には、図示しないモータが取り付けてある。雌ネジ部材32は、伸縮軸線Cを中心にして対称に配置されており、前記雄ネジ部材31と供回りしないように、図示しないガイドなどによって一定の姿勢に保持されている。そして、これら各雌ネジ部材32に、最も基端側のXリンクユニット21におけるリンク要素21aの各基端部がそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0029】
したがって、前記モータを駆動して雄ネジ部材31を回転させると、その回転方向によって、各雌ネジ部材32が伸縮軸線Cと直交する方向に対称に移動する。そして、その移動に伴って、最も基端側のXリンクユニット21におけるリンク要素21aの各基端部間の距離が拡縮し、当該Xリンクユニット21におけるリンク要素21a同士のなす角度が変化して伸縮軸線C方向の長さが拡縮する。他のXリンクユニット21も、直列接続してあるから、この基端側のXリンクユニット21の動きに追随して同様に動作し、その結果、全体としてみると、伸縮手段2は、駆動手段3に支持された基端部を固定点として、先端部が伸縮する。
【0030】
ところで、この実施形態では、伸縮動作に拘わらず、伸縮手段2の中心線が、上下方向から視て伸縮軸線Cから外れることのないように、前記リンク要素21a同士を結合している回転軸22を、伸縮軸線Cに沿って延びる長尺状のガイド部材8によってスライド可能に係合させている。ここでのガイド部材8は、例えばロードロック室200の底壁に固定されたもので、上方に開口する溝8aを有したチャネル状のものである。この溝8aに、前記回転軸22の下端部が係合する。また、このロードロック室200には、前記ガイド部材8に加え、載置板1を移動可能に下方から支持する複数のローラ5が設けられている。
【0031】
保持手段4は、伸縮手段2の先端部と載置板1の基端部との間に介在するものであり、先端側に設けられて載置板1に対し、回転不能かつ略ガタ無く、さらに上下方向に抜脱可能に係合する係合構造41と、基端側に設けられて伸縮手段2と回転不能に結合する結合構造42とからなる。
【0032】
係合構造41は、載置板1の基端部に上下に貫通し、かつ上下方向から視て伸縮軸線Cと直交する向きに延伸する長尺状の係合孔41aと、この係合孔41aの幅と略等しい径を有し、前記係合孔41aに略ガタ無く嵌合する係合部材41bから形成される。
【0033】
結合構造42は、前記係合部材41bから伸縮手段2側に向かって一体的に延びる本体部材423と、伸縮手段2の先端部に設けられて、該伸縮手段2の伸縮に拘わらず常に伸縮軸線C上に位置する互いに偏位した第1部材421及び第2部材422とを具備し、前記本体部材423を、第1部材421に固定するとともに前記第2部材422に伸縮軸線C方向にのみスライド可能に支持させたものである。
【0034】
この結合構造42について詳述すると、該結合構造42は、伸縮軸線Cを中心として対称に配置された一対の第1アーム42a及び各第1アーム42aの先端部同士を連結する中間部材42cをさらに具備している。
【0035】
各第1アーム42aは、その基端部を、最先端のXリンクユニット21におけるリンク要素21aの、回転軸22とは異なる位置にそれぞれ枢支させるとともに、その先端部を前記中間部材42cの各端部にそれぞれ枢結したものである。そして、この中間部材42cにおける中心位置、つまり伸縮軸線C上の位置に、前記第2部材422を固定している。
【0036】
この第2部材422には、伸縮軸線C方向に延びる貫通孔Hが設けてあり、この貫通孔Hに前記本体部材423の基端側部位を、略ガタ無くスライド可能に貫通させている。
【0037】
一方、前記第1部材421は、最先端の回転軸22上に設けてある。
【0038】
かかる構成によって、伸縮手段2が伸縮しても、第1部材421及び第2部材422はその間の距離が変動はするものの、常に伸縮軸線C上に位置し、これら第1部材421及び第2部材422に支持された本体部材423は、その姿勢が一定に維持される。
【0039】
受取手段6は、図1、3、6に示されるようにチャンバ100内の所定部位に予め定められた受渡位置で、載置板1を受け取るためのものであり、載置板1を上下動させるZステージ61と、このZステージ61上に設けた台座62とに加え、前記伸縮手段2によってロードロック室200から受渡位置に向かって移動する途中での載置板1の、若干の伸縮軸線Cからの位置ずれを是正しながら受渡位置に導く案内機構63を具備している。
【0040】
Zステージ61は、チャンバ100内に設置された少なくとも上下動可能なもので、このZステージ61の上面端部に、前記台座62が固定してある。この台座62は、矩形平板状をなす本体621と、搬出入口101と反対側の本体の端辺から起立する板状のストッパ部材622とからなるものである。
【0041】
案内機構63は、前記ストッパ部材622から前記搬出入口101に向かって延びる一対のピン63aと、前記載置板1の先端面に形成されて前記ピン63aにそれぞれ嵌合する一対の嵌合穴63bとから構成されるものである。前記ピン63aは、ある程度の可撓性を有した先細り形状をなすものである。また、前記嵌合穴63bは、入口部分が奥に比べて少し広い径のテーパ形状をなすものである。そして、嵌合初期時においてはピン63aと嵌合穴63bに嵌合ガタが存在し、前記受渡位置においては、ピン63aと嵌合穴63bとががたなく嵌合する寸法に設定してある。また、受渡位置に前記載置板1が位置づけられた状態において、前記係合孔41aはZステージ61上からはみ出て外側に位置するように設定してある。
【0042】
次に、このような構成のウェーハ搬送装置300の動作について説明する。
【0043】
図1に示すように伸縮手段2が縮退状態で、載置板1がロードロック室200にあるときに、この載置板1に処理前のウェーハWが載せられる。この状態ではゲートバルブは閉じている。次にロードロック室200が真空引きされ、その後、ゲートバルブが開放される。
【0044】
その状態で、駆動手段3が伸縮手段2を図2に示すように伸長駆動し、載置板1をゲートバルブを通じてチャンバ100内の受渡位置に向かって移動させる。この過程で、当初、ガイド部材8に全て係合していた回転軸22のうち、最先端の回転軸22がガイド部材8を超えて外れだすとともに、載置板1の先端部約半分以上がローラ5の支持から外れ、この位置付近で、案内機構63が作用しだす。すなわち載置板1の嵌合穴63bとピン63aとの嵌合が始まる。
【0045】
さらに伸縮手段2が伸長すると、前記案内機構63の作用で載置板1の嵌合穴63bとピン63aとの嵌合がさらに深くなる。最終的に載置板1がストッパ部材622に到達してそれ以上進めなくなる受渡位置では、嵌合穴63bとピン63aとのガタのない嵌合によって、図4に示すように、伸縮軸線C方向のみならず、その直交方向についても載置板1は正確に位置決めされる。
【0046】
次に、図5に示すようにZステージ61が上動する。このことによって保持手段4の係合部材41bが、係合孔41aから抜脱され、載置板1が受取手段6に受け渡される。
【0047】
そして、伸縮手段2が縮退して、再度ロードロック室200内に戻り、ゲートバルブが閉じられる。
【0048】
チャンバ100内で処理がなされたウェーハWを取り出す場合は、まずゲートバルブが開き、伸縮手段2が伸長して係合部材41bを係合孔41aに係合し得る位置まで移動させる。次に、Zステージ61が下動して、台座62ごと、載置板1を受渡位置に位置づける。その過程で、係合孔41aが上方から係合部材41bに外嵌する。
【0049】
その後、伸縮手段2が縮退して、載置板1をロードロック室200内に戻し、ゲートバルブが閉じられる。そして、処理後のウェーハWを取り出して、別の処理前のウェーハWと交換し、再度、前述した動作を繰り返す。
【0050】
したがって、かかる構成のウェーハ搬送装置300によれば、Xリンクユニット21を利用した伸縮手段2によってウェーハ載置板1を搬送するようにしているので、従来の搬送棒で必要であったチャンバ100外側の突出スペースが不要となるうえ、駆動手段3も含めた構成を簡単化でき、多関節型アーム式ウェーハ搬送装置300のように高価格化を招くことなく、低価格での実現が可能となる。
【0051】
また、ガイド部材8によりリンク要素21aの中心回転軸22が伸縮軸線C上を移動するようにガイドしており、かつ保持手段4によって載置板1の姿勢を一定に維持しているので、実用上問題のない範囲で、ずれなく確実にウェーハWを搬送することができる。
【0052】
なお、ガイド部材8がロードロック室200にのみ配備されていることから、前記回転軸22の一部が、ガイド部材8を外れ、その分だけ、伸縮手段2の先端部がわずかにたわむなどしてずれる場合もあり得るが、受取手段6によって、そのずれを是正できるようにしているため、極めて正確に載置板1を受渡位置に搬送することができる。
【0053】
また、このように、伸縮手段2を正確に伸縮させて載置板1に位置ずれが生じないようにする目的のために、チャンバ100の内外に分離してガイド部材8及び案内機構63をそれぞれ設けた構成とし、ゲートバルブを通過するのが、ほぼ直列に配置した載置板1、保持手段4及び伸縮手段2のみとなるように構成しているので、搬出入口101及びゲートバルブを可及的に小さくすることができる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、保持手段の構造について言えば、前記実施形態とは逆に、先端側の第1部材に本体部材をスライド可能に支持させて、第2部材に本体部材を固定するようにしてもよい。また、第1部材、第2部材の配備位置は、要は伸縮軸線上にあればよく、例えば、リンク要素の中央回転軸上に設けてもよい。係合孔や係合部材の形状も前記実施形態に限られず、要は載置板が回転できないように係合するものであればよい。
【0056】
さらに、中間部材はなくてもよく、アームの先端部同士を直接枢結してもよい。ただし、中間部材が存在した方が、伸縮に伴う第1部材と第2部材の距離の変動を小さく抑制でき、本体部材の長さの短いコンパクトな構成が可能となる。また、第2部材には、貫通孔でなく溝を設けてもよい。
【0057】
加えて、案内機構は、載置板側にピンを設け、ストッパ部材側に嵌合穴を設けた構成でもよいし、ピンと嵌合孔という組み合わせではなく、溝と突条といった組み合わせでも構わない。また、ピンの先端をテーパではなく半球状にしてもよい。ピンや嵌合孔は単一でも3つ以上でも構わない。
【0058】
加えて、前記実施形態では、駆動手段のモータをロードロック室の外側に設けていたが、真空対応モータにしてロードロック室内に設けるようにしてもよい。その場合、電気ケーブルはフィードスルーによって外部に引き出せばよい。そして、このようにすれば、小型化をより促進できる。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100・・・チャンバ
101・・・搬出入口
200・・・ウェーハ交換室(ロードロック室)
300・・・ウェーハ搬送装置
W・・・ウェーハ
C・・・伸縮軸線
1・・・載置板
2・・・伸縮手段
21・・・Xリンクユニット
22・・・回転軸
21a・・・リンク要素21a
3・・・駆動手段
4・・・保持手段
421・・・第1部材
422・・・第2部材
41a・・・係合孔
41b・・・係合部材
42a・・・第1アーム
42c・・・中間部材
8・・・ガイド部材
6・・・受取手段
61・・・Zステージ
622・・・ストッパ部材
63・・・案内機構
63a・・・ピン
63b・・・嵌合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを載置するための載置板を、チャンバに設けた開閉可能な搬出入口を介して、該チャンバの外側に設けたウェーハ交換室と該チャンバの内部に設定した受渡位置との間で出し入れするためのウェーハ搬送装置であって、
基端側をウェーハ交換室に支持され、先端部で載置板を前記ウェーハ交換室と受渡位置との間で進退駆動するものであって、一対のリンク要素の中央部同士を回転可能に連結したXリンクユニットを1又は複数直列させて構成した伸縮手段と、
前記ウェーハ交換室内に設けられ、前記各Xリンクユニットを構成するリンク要素同士の回転軸に係合し、該回転軸を伸縮手段の伸縮軸線に沿ってスライド可能に支持するガイド部材と、
前記伸縮手段の先端部に取り付けられて前記載置板を抜脱可能かつ略回転不能に保持する保持手段と、
前記受渡位置で載置板を受け取る受取手段とを具備してなり、
前記受取手段が、前記伸縮手段によってウェーハ交換室から受渡位置に向かって移動する途中での載置板の位置ずれを是正しながら受渡位置に導く案内機構を具備したものであることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項2】
前記受取手段が、チャンバ内に設置され、載置板の先端に当接して前記受渡位置を定めるストッパ部材をさらに具備したものであり、
前記案内機構が、前記ストッパ部材から前記搬出入口に向かって延びるピンと、前記載置板の先端面に形成されて前記ピンに嵌合する嵌合穴とからなり、前記ピンを先細り形状又は前記嵌合穴の入口部分をテーパ形状として、嵌合初期時においてはピンと嵌合穴に嵌合ガタが存在し、前記受渡位置においては、ピンと嵌合穴とががたなく嵌合する寸法に設定したものであることを特徴とする請求項1記載のウェーハ搬送装置。
【請求項3】
前記回転軸の一部が前記ガイド部材の先端を越えて該ガイド部材から離脱した位置において、前記案内機構が作用するように設定されている請求項2記載のウェーハ搬送装置。
【請求項4】
前記保持手段が、載置板の基端部に設けられた係合孔に上下から係合する係合部材を具備したものであり、
受取手段が、前記受渡位置で受け取った載置板を上下動させるZステージを具備したものであり、
前記保持手段に保持されて前記受渡位置に搬送された載置板が、前記Zステージによって上昇又は下降することにより、前記係合部材と係合孔との係合が解除されるように構成してあることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のウェーハ搬送装置。
【請求項5】
前記保持手段が、伸縮部材の先端部に設けられて、該伸縮部材の伸縮に拘わらず常に伸縮軸線上に位置し、かつ互いに異なる位置に配置した第1部材及び第2部材をさらに具備したものであり、
前記係合部材が、前記第1部材又は第2部材のいずれか一方に1点を固定され、他方に他点をスライド可能に支持されて、その姿勢が一定に保たれるように構成していることを特徴とする請求項4記載のウェーハ搬送装置。
【請求項6】
前記回転軸上に前記第1部材を設けるとともに、
前記伸縮軸線を中心として対称に配置された一対の第1アームの基端部を、前記各第1アームの中間部位にそれぞれ枢結し、その先端部同士を直接又は中間部材を介して枢結することで、第1アームの先端部枢結点上又は前記中間部材上に、Xリンクユニットの動作に拘わらず、常に伸縮軸線上を移動する前記第2部材を設けるようにしたことを特徴とする請求項5記載のウェーハ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−165956(P2010−165956A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8304(P2009−8304)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】