説明

ウエザストリップ

【課題】作業性の低下を招くことなく、シール性の低下を防止することのできるウエザストリップを提供する。
【解決手段】ドア用開口部のフランジ部33に取着されるトリム部11は、車内側側壁部12から延びる車内側保持リップ21と、車外側側壁部13から延びる第1〜第3車外側保持リップ22、23、24とを備える。スポンジ材よりなる第1及び第2車外側保持リップ22、23の各先端部は、車内側保持リップ21の先端部よりもフランジ部33の付根側に位置し、ソリッド材よりなる第3車外側保持リップ24の先端部は、車内側保持リップ21の先端部よりもフランジ部33の先端側に位置する。車内側保持リップ21のフランジ部33との当接位置Aと、第3車外側保持リップ24のフランジ部33との当接位置Bとの間の距離W1は、第1車外側保持リップ22のフランジ部33との当接位置Cと、前記当接位置Aとの間の距離W2よりも大きく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア用開口部周縁に沿って取付けられるウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の自動車ボディに形成されたドア用開口部周縁にはウエザストリップが設けられる。図4に示すように、ウエザストリップ80は、ドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部91に取付けられ、車内側側壁部82と、車外側側壁部83と、両側壁部82、83を連結する連結部84とを具備する断面略U字状のトリム部81と、車外側側壁部83から車外側に突出するシール部85とを備えている。そして、ドアを閉めたときに、シール部85がドアの周縁部に圧接されることによって、自動車ボディとドアとの間がシールされるようになっている。
【0003】
また、一般に、ウエザストリップ80は、車内側側壁部82からトリム部81の内側に延出する一本の車内側保持リップ86と、車外側側壁部83からトリム部81の内側に延出する複数本の車外側保持リップ87とを備えている。そして、フランジ部91をトリム部81の内側に挿通させることで、基本的に両保持リップ86、87の弾性力に基づいて、ウエザストリップ80がドア用開口部の周縁部に取付けられている。
【0004】
複数本の車外側保持リップ87は、トリム部81(ウエザストリップ80)のフランジ部91への取付前の状態において、先端部が車内側保持リップ86の先端部よりもフランジ部91の付根側(図では上側)に位置する外周側リップ87aと、先端部が車内側保持リップ86の先端部よりもフランジ部91の先端側(図では下側)に位置する内周側リップ87bとに区別される。
【0005】
また、基本的に車内側保持リップ86及び車外側保持リップ87はトリム部81と同様にソリッド材により構成されるのであるが、近年、外周側リップ87aをスポンジ材で構成するといった技術がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、ウエザストリップ80の取付状態において、外周側リップ87aがより確実にフランジ部91と圧接することとなり、従って、トリム部81とフランジ部91との間のシール性の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−123032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、図4に示すように、外周側リップ87aをスポンジ材により構成する場合、発泡のばらつき等に起因して、当該外周側リップ87aが通常よりも膨張して大きく形成される場合がある(尚、同図二点鎖線は外周側リップ87aの正規の大きさを示す)。この場合、外周側リップ87aの体積が大きくなることに起因して、フランジ部91に対する外周側リップ87aの反発力が大きくなってしまうことが懸念される。
【0007】
ところで、車内側保持リップ86と、外周側リップ87aと、内周側リップ87bとが上記のような相対位置関係にあることから、外周側リップ87aの反発力が大きくなってしまうと、フランジ部91に対して外周側リップ87aが突っ張ってしまい、車内側保持リップ86とフランジ部91との当接部位を中心に、連結部84が車内側に変位するようにしてトリム部81が回動変位してしまうことが懸念される。
【0008】
このようにトリム部81が回動変位してしまうと、所期とするトリム部81の取付状態のバランスが崩れ、場合によっては、外周側リップ87a(のフランジ部91との当接部位)に対して高圧で噴き付けられた水等が、車外側保持リップ87とフランジ部91との間からトリム部81の内側に浸入しやすくなってしまうおそれがある。
【0009】
これに対し、上記のようなトリム部81の回動変位を防止するべく、内周側リップ87bの剛性を高めたり、車内側保持リップ86を複数本設けたりすることも考えられるが、この場合、ウエザストリップ80の取付けに際してフランジ部91をトリム部81の内側に挿入しにくくなり、作業性の低下を招くおそれがある。また、トリム部81の内側に浸入してしまった水の車室内への浸入を防止するべく、トリム部81の内側においてフランジ部91の先端部と圧接するシール部材を別途設けることも考えられるが、製造作業性の低下やコストの増大を招くおそれがある。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、取付作業性や製造作業性の低下を招くことなく、シール性の低下を防止することのできるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0012】
手段1.車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に、前記ドアの周縁部に圧接されるシール部とを備えたウエザストリップであって、
前記トリム部には、前記車内側側壁部から車外側かつ前記連結部側に延出する車内側保持リップが1本だけ設けられるとともに、前記車外側側壁部から車内側かつ前記連結部側に延出する第1車外側保持リップ、第2車外側保持リップ、及び第3車外側保持リップが設けられ、
前記第1及び第2車外側保持リップは、スポンジ材により構成されるとともに、各先端部が前記車内側保持リップの先端部よりも前記フランジ部の付根側に位置し、
前記第1車外側保持リップは、前記車外側側壁部の先端部から延出し、
前記第2車外側保持リップは、前記トリム部の取付前の状態において、その先端部が前記車内側保持リップのドア用開口部外周側の面と当接し、
前記第3車外側保持リップは、ソリッド材により構成されるとともに、その先端部が前記車内側保持リップの先端部よりも前記フランジ部の先端側に位置し、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設され、当該インサートは、前記車外側側壁部に埋設される車外側対応部と、前記車内側側壁部に埋設される車内側対応部と、前記連結部に埋設され、前記車外側対応部及び前記車内側対応部を連結する連結部対応部とを備えて断面略U字状をなし、
前記車内側対応部は、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車外側対応部よりも前記フランジ部の付根側にまで延設され、
前記車内側保持リップの付根部は、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車内側対応部の先端縁と略同じ位置に設けられ、
前記トリム部の取付状態において、前記車内側保持リップの前記フランジ部との当接位置Aと、前記第3車外側保持リップの前記フランジ部との当接位置Bとの間の距離W1が、前記第1車外側保持リップの前記フランジ部との当接位置Cと、前記当接位置Aとの間の距離W2よりも大きく構成されていることを特徴とするウエザストリップ。
【0013】
手段1によれば、距離W1が距離W2よりも大きく構成されることから、距離W1が距離W2以下である場合に比べ、第3車外側保持リップの反発力に基づいた位置Aを中心にトリム部を回動変位させる力が比較的大きくなり、結果的に、第1及び第2車外側保持リップがフランジ部に対してより一層圧接されることとなる。このため、スポンジ材よりなる第1及び第2車外側保持リップが発泡のばらつきにより膨張してこれらの反発力が大きくなった場合であっても、車内側保持リップとフランジ部との当接部位を中心に、連結部が車内側に変位するようにしてトリム部が回動変位してしまうといった事態を抑止することができる。従って、当該回動変位に起因して第1及び第2車外側保持リップとフランジ部との間から雨水等が浸入しやすくなってしまうといった事態を防止することができ、トリム部(第1及び第2車外側保持リップ)とフランジ部との間のシール性の低下を防止することができる。
【0014】
さらに、本手段によれば、第3車外側保持リップの剛性を高めたり、車内側保持リップを複数本設けたりするのではなく、車内側保持リップと第1〜第3車外側保持リップとの相対位置関係を上記のように設定することで、第1及び第2車外側保持リップとフランジ部との間のシール性を確保している。このため、第3車外側保持リップの剛性を高めたり、車内側保持リップを複数本設けたりすることに起因して、フランジ部をトリム部の内側に挿入しにくくなり(挿入時の加重が大きくなってしまい)、取付作業性の低下を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0015】
また、インサートの車内側対応部が車外側対応部よりもフランジ部の付根側にまで延設されるとともに、車内側保持リップの付根部は、トリム部のフランジ部への取付方向において車内側対応部の先端縁と略同じ位置に設けられている。このため、従来のウエザストリップと比べて車内側保持リップの傾斜角度や断面形状を変更することなく、車内側シールリップを第2車外側保持リップと当接するまでフランジ部の付根側に寄せて設け、当接位置Aをフランジ部の付根側に位置させることができる。従って、例えば、当接位置Aをフランジ部の付根側に位置させるべく、車内側保持リップをフランジ部と直交する方向に近付くように傾けて形成することに起因して、フランジ部に対してトリム部を嵌合させ難くなり、取付作業性の低下を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0016】
加えて、先端部が車内側保持リップの先端部よりもフランジ部の付根側に位置し、スポンジ材よりなる2本の第1及び第2車外側保持リップを備えることにより、シール性の向上を図ることができる。また、車内側保持リップが車内側側壁部のうちインサート(車内側対応部)が埋設された部位から延出しているため、トリム部の取付時に、車内側保持リップの変形に伴って車内側側壁部が変形してしまうといった事態を防止することができる。さらに、トリム部の内側においてフランジ部の先端部と圧接するシール部材を別途設けなくても、上記のように、トリム部とフランジ部との間のシール性を十分に確保することができることから、シール部材を別途設けることに起因して製造作業性の低下やコストの増大を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0017】
尚、車内側保持リップとフランジ部とがトリム部の取付方向においてある程度幅を持って当接している場合には、「前記車内側保持リップの前記フランジ部との当接位置A」とあるのを、「前記車内側保持リップの前記フランジ部との当接部位のうち最も前記フランジ部の付根側の位置A」としてもよい。さらに、第1車外側保持リップとフランジ部とがトリム部の取付方向においてある程度幅を持って当接している場合には、「前記第1車外側保持リップの前記フランジ部との当接位置C」とあるのを、「前記第1車外側保持リップの前記フランジ部との当接部位のうち最も前記フランジ部の付根側の位置C」としてもよい。
【0018】
尚、「前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設され、当該インサートは、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記各骨片部同士を連結するボンド部とを備え、前記骨片部は、前記車内側側壁に埋設される車内側対応部と、前記車外側側壁に埋設される車外側対応部と、前記連結部に埋設され、前記車内側対応部及び前記車外側対応部を連結する連結部対応部とからなり断面略U字状をなし」ていることとしてもよい。
【0019】
手段2.前記シール部は中空形状に構成され、
前記第3車外側保持リップの付根部は、前記ドアの開閉方向において、前記シール部のうち前記ドア用開口部内周側の付根部と少なくとも一部が重複する位置に設けられていることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0020】
例えば、第3車外側保持リップの付根部がシール部の付根部よりもフランジ部の付根側に位置する場合、ドア閉時に(シール部がドアに圧接して変形した際に)、第3車外側保持リップを中心に連結部が車内側に変位するようにしてトリム部が回動変位してしまうおそれがある。その一方で、第3車外側リップの付根部がシール部の付根部よりもフランジ部の先端側に位置する場合、ドア閉時に車外側側壁部の延出方向中間位置が湾曲変形してしまうおそれがある。これに対し、本手段2のように、第3車外側保持リップの付根部位置とシール部の付根部位置とをドアの開閉方向(車幅方向)においてほぼ一致させることで、上記不具合を回避することができる。従って、トリム部の変形や変位を防止して、シール性の低下等を抑制することができる。
【0021】
手段3.前記車外側側壁部と前記連結部とのなす角度は鋭角であり、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車内側対応部の付根部は前記車外側対応部の付根部よりも前記フランジ部の付根側に位置していることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0022】
手段3によれば、車外側側壁部と連結部とのなす角度を鋭角とすることで、連結部の傾斜に合わせて連結部対応部をフランジ部の付根側に傾かせて延設し、車内側対応部の付根部をフランジ部の付根側に位置させることができる。このため、上記のように車内側対応部を車外側対応部よりもフランジ部の付根側に延設させる場合であっても、車内側対応部の延出長が従来のものと比べて長くなってしまうといった事態を抑止することができる。従って、インサートの重量が増加してしまうといった事態を防止することができ、ウエザストリップの軽量化を図ることができる。
【0023】
手段4.前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップの各付根部間の距離は、前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップの突出長よりも短く構成されるとともに、
前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップは、前記トリム部の取付状態においても、互いに当接しない構成となっていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0024】
手段4によれば、第1及び第2車外側保持リップの各付根部間の距離が、第1及び第2車外側保持リップの各突出長よりも短くなるように、第1及び第2車外側保持リップが近接配置されている。結果として、第1車外側保持リップと車内側保持リップとを近接配置することができ、上記のように、車内側シールリップをフランジ部の付根側に極力寄せて設け、第1及び第2車外側保持リップとフランジ部との間のシール性の低下を防止するといった作用効果がより確実に奏される。
【0025】
また、第1及び第2車外側保持リップはトリム部の取付状態においても互いに当接しない構成となっている。このため、例えば、トリム部の取付けに際し、第1車外側保持リップが第2車外側保持リップに当接して支持されてしまい、第1車外側保持リップが的確に追従変形しなくなってしまうといった事態を回避することができる。従って、フランジ部に対し第1及び第2車外側保持リップが突っ張ってしまうことに起因してトリム部が傾いてしまい、第1及び第2車外側保持リップとフランジ部との間のシール性の低下を招いてしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1はフロントドアが開放状態にある自動車の斜視図である。図2はフランジ部への取付前の状態にあるウエザストリップを示す断面図である。図3はフランジ部への取付状態にあるウエザストリップを示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、車両としての自動車1には、自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア2」という)が開閉可能に設けられている。また、ドア2に対応する自動車ボディ3(車両本体)のドア用開口部4の周縁部には、ドア2の閉鎖時においてドア用開口部4の周縁部とドア2との間をシールするウエザストリップ5(オープニングトリム)が設けられている。尚、ウエザストリップ5は、ドア用開口部4の周縁部に沿って取付けられる押出成形部と、押出成形部の両端末部同士を連結する型成形部とを備え、全体として略環状をなしている。
【0028】
図2、図3に示すように、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12と、車外側側壁部13と、両側壁部12、13を連結する連結部14とを具備して断面略U字状をなすトリム部11と、車外側側壁部13から車外側に突出して設けられ、内部に中空部15aを有してなるシール部15とを備えている。また、車内側側壁部12及び車外側側壁部13は互いに略平行して延びている。
【0029】
さらに、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12から車外側かつ連結部14側に向けて延びる車内側保持リップ21と、車外側側壁部13から車内側かつ連結部14側に向けて延びる第1車外側保持リップ22、第2車外側保持リップ23、及び第3車外側保持リップ24とを備えている。
【0030】
また、ドア用開口部4の周縁部には、自動車ボディ3を構成するインナパネル31及びアウタパネル32が接合されることによりフランジ部33が形成されている。そして、トリム部11の内側にフランジ部33を相対的に嵌め込むことで、基本的には車内側保持リップ21及び車外側保持リップ22〜24による弾性力等に基づいて、ウエザストリップ5がドア用開口部4の周縁部に取付けられている。また、ドア2の閉鎖時においては、シール部15がドア2の周縁部に圧接して潰れ変形し、これによりドア2と自動車ボディ3との間がシールされるようになっている。尚、フランジ部33の強度を高めるべく板状のリーンフォースを両パネル31、32間に設けることとしてもよい。
【0031】
加えて、ウエザストリップ5は、連結部14から車内側に向けて延び、図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆うためのカバーリップ26を備えている。本実施形態では、トリム部11、車内側保持リップ21、第3車外側保持リップ24、及びカバーリップ26はソリッドEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成され、シール部15、第1及び第2車外側保持リップ22、23はスポンジEPDMにより構成されている。また、ウエザストリップ5には、カバーリップ26及び連結部14の外表面を被覆する被覆部27が設けられている。本実施形態の被覆部27はポリエチレンシートにより構成されている。
【0032】
さらに、トリム部11には、その長手方向に沿って金属製のインサート17が埋設されている。本実施形態のインサート17は、トリム部11の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設された断面略U字状の骨片部18と、各骨片部18同士を、その略中央部分において連結するセンターボンド部(図示略)とを備える所謂センターボンドタイプのインサートである。骨片部18は、車内側側壁部12に埋設される車内側対応部18aと、車外側側壁部13に埋設される車外側対応部18bと、連結部14に埋設され、車内側対応部18aと車外側対応部18bとを連結する連結部対応部18cとを備え、押出成形後の曲げ加工においてトリム部11ともども折り曲げられることで断面略U字状に構成される。一方、センターボンド部は、連結部14内のほぼ中央に位置するようにして埋設される。本実施形態では、インサート17(骨片部18)の車内側対応部18aが車外側対応部18bよりもフランジ部33の付根側にまで延出している。
【0033】
さて、スポンジEPDMよりなる第1及び第2車外側保持リップ22、23は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、その先端部が車外側保持リップ21の先端部よりもフランジ部33の付根側(本例ではドア用開口部4外周側:図2、図3では上方)に位置している。また、ソリッドEPDMよりなる第3車外側保持リップ24は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、その先端部が車外側保持リップ21の先端部よりもフランジ部33の先端側(本例ではドア用開口部4内周側:図2、図3では下方)に位置している。
【0034】
具体的に、第1車外側保持リップ22は、車外側側壁部13の先端部から車内側かつフランジ部33の付根側に延出する第1辺部22aと、第1辺部22aの先端部から車内側かつ連結部14側に延出する第2辺部22bとを備え、断面略く字状をなしている。第1車外側保持リップ22が略く字状であることにより、フランジ部33やトリム部11の製造誤差が生じた場合に、第1車外側保持リップ22が伸縮するようにしてより一層追従的に変形する。
【0035】
また、第2車外側保持リップ23は、トリム部11の取付前の状態において、略直線状に延び、先端部において車内側保持リップ21のドア用開口部4外周側の面と当接している(図2参照)。
【0036】
さらに、第3車外側保持リップ24の付根部は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、シール部15のドア用開口部4内周側の付根部と同じ位置に設けられている。すなわち、ドア2の開閉方向(車幅方向)において、第3車外側保持リップ24の付根部位置と、シール部15の付根部位置とが一致している。
【0037】
また、車内側保持リップ21は、各車外側保持リップ22〜24よりも長くかつ厚肉に構成されている。このため、トリム部11(ウエザストリップ5)のフランジ部33への取付状態において、車内側保持リップ21により、車外側保持リップ22〜24がフランジ部33に押付けられ、車外側側壁部13がフランジ部33に沿って延在することとなる。尚、車外側保持リップ22〜24が設けられることにより、車外側側壁部13を直接フランジ部33に当接させる場合に比べ、フランジ部33に溶接痕等の凹凸がある場合において、車外側側壁部13とフランジ部33との間に部分的に隙間が形成されてしまうといった事態を防止することができる。
【0038】
さらに、車内側保持リップ21の付根部は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、インサート17の車内側対応部18aの先端縁と同じ位置に設けられている。尚、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、車内側側壁部12及び車外側側壁部13の先端部はほぼ同じ位置となっている(車外側側壁部13の方が車内側側壁部12よりも若干フランジ部33の付根側(図2、図3では上方)に位置している)。加えて、車内側保持リップ21の先端部は連結部14側に屈曲している。このため、トリム部14の取付状態において、車内側保持リップ21とフランジ部33との当接面積が大きくなり、取付状態の安定化が図られている。
【0039】
また、図3に示すように、本実施形態では、車内側保持リップ21のフランジ部33との当接部位のうち最もフランジ部33の付根側の位置Aと、第3車外側保持リップ24のフランジ部33との当接部位のうち最もフランジ部33の付根側の位置Bとの間の距離W1が、第1車外側保持リップ22のフランジ部33との当接部位のうち最もフランジ部33の付根側の位置Cと前記位置Aとの間の距離W2よりも長く構成されている。加えて、第1車外側保持リップ22の付根部と第2車外側保持リップ23との間の距離は、第1及び第2車外側保持リップ22、23の各突出長よりも短く構成されている。また、トリム部11のフランジ部33への取付状態においても、第1車外側保持リップ22及び第2車外側保持リップ23は互いに当接しないように構成されている。
【0040】
さらに、図2に示すように、車外側側壁部13(の内側面)と連結部14(の内側面)とのなす角度θは鋭角となっている。また、インサート17はトリム部11の内側面に沿って埋設され、連結部対応部18cは車内側かつフランジ部33の付根側に傾斜して延び、車内側対応部18aの付根部は、車外側対応部18bの付根部よりもフランジ部33の付根側に位置している。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、車内側保持リップ21のフランジ部33との当接位置Aと、第3車外側保持リップ24のフランジ部33との当接位置Bとの間の距離W1が、第1車外側保持リップ22のフランジ部33との当接位置Cと当接位置Aとの間の距離W2よりも大きく構成されている。このため、距離W1が距離W2以下である場合に比べ、第3車内側保持リップ24の反発力に基づいた位置Aを中心にトリム部11を回動変位させる力が比較的大きくなり、結果的に、第1及び第2車外側保持リップ22、23がフランジ部33により圧接されることとなる。このため、スポンジEPDMよりなる第1及び第2車外側保持リップ22、23が発泡のばらつきにより膨張してこれらの反発力が大きくなった場合であっても、車内側保持リップ21とフランジ部33との当接位置Aを中心に、連結部14が車内側に変位するようにしてトリム部11が回動変位してしまうといった事態を抑止することができる。従って、当該回動変位に起因して第1及び第2車外側保持リップ22、23とフランジ部33との間から雨水等が浸入しやすくなってしまうといった事態を抑止することができ、トリム部11(第1及び第2車外側保持リップ22、23)とフランジ部33との間のシール性の低下を防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、第3車外側保持リップ24の剛性を高めたり、車内側保持リップ21を複数本設けたりするのではなく、車内側保持リップ21と第1〜第3車外側保持リップ22〜24との相対位置関係を上記のように設定することで、第1及び第2車外側保持リップ22、23とフランジ部33との間のシール性を確保している。このため、第3車外側保持リップ24の剛性を高めたり、車内側保持リップ21を複数本設けたりすることに起因して、フランジ部33をトリム部11の内側に挿入しにくくなり(挿入時の加重が大きくなってしまい)、取付作業性の低下を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0043】
また、インサート17の車内側対応部18aが車外側対応部18bよりもフランジ部33の付根側(図2、図3では上方)にまで延設されるとともに、車内側保持リップ21の付根部は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において車内側対応部18aの先端縁と略同じ位置に設けられている。このため、従来のウエザストリップと比べて車内側保持リップ21の傾斜角度や断面形状を変更することなく、車内側シールリップ21を第2車外側保持リップ23と当接するまでフランジ部33の付根側に寄せて設け、当接位置Aをフランジ部33の付根側に位置させることができる。従って、例えば、当接位置Aをフランジ部33の付根側に位置させるべく、車内側保持リップ21をフランジ部33と直交する方向に近付くように傾けて形成することに起因して、フランジ部33に対してトリム部11を嵌合させ難くなり、取付作業性の低下を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0044】
加えて、先端部が車内側保持リップ21の先端部よりもフランジ部33の付根側に位置し、スポンジEPDMよりなる2本の第1及び第2車外側保持リップ22、23を備えることにより、シール性の向上を図ることができる。また、車内側保持リップ21が車内側側壁部12のうちインサート17(車内側対応部18a)が埋設された部位から延出しているため、トリム部11の取付時に、車内側保持リップ21の変形に伴って車内側側壁部12が変形してしまうといった事態を防止することができる。さらに、トリム部11の内側においてフランジ部33の先端部と圧接するシール部材を別途設けなくても、上記のように、トリム部11とフランジ部33との間のシール性を十分に確保することができることから、シール部材を別途設けることに起因して製造作業性の低下やコストの増大を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0045】
また、例えば、第3車外側保持リップ24の付根部がシール部15のドア用開口部4内周側の付根部よりもフランジ部33の付根側(ドア用開口部4外周側)に位置する場合、ドア2の閉鎖時に(シール部15がドア2に圧接して変形した際に)、第3車外側保持リップ24を中心に連結部14が車内側に変位するようにしてトリム部11が回動変位してしまうおそれがある。その一方で、第3車外側リップ24の付根部がシール部15のドア用開口部4内周側の付根部よりもフランジ部33の先端側に位置する場合、ドア2の閉鎖時に車外側側壁部13の延出方向中間位置(第2車外側リップ23と第3車外側リップ24との間の部位)が湾曲変形してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態のように、第3車外側保持リップ24の付根部位置とシール部15のドア用開口部4内周側の付根部位置とをドア2の開閉方向(車幅方向)においてほぼ一致させることで、上記不具合を回避することができる。従って、トリム部11の変形や変位を防止して、シール性の低下等を抑制することができる。
【0046】
さらに、車外側側壁部13と連結部14とのなす角度θは鋭角であり、トリム部11のフランジ部33への取付方向において、車内側対応部18aの付根部は車外側対応部18bの付根部よりもフランジ部33の付根側に位置している。すなわち、車外側側壁部13と連結部14とのなす角度θを鋭角とすることで、連結部14の傾斜に合わせて連結部対応部18cをフランジ部33の付根側に傾かせて延設し、車内側対応部18aの付根部をフランジ部33の付根側(ドア用開口部4外周側)に位置させることができる。このため、上記のように車内側対応部18aを車外側対応部18bよりもフランジ部33の付根側に延設させる場合であっても、車内側対応部18aの延出長が従来のものと比べて長くなってしまうといった事態を抑止することができる。従って、インサート17の重量が増加してしまうといった事態を防止することができ、ウエザストリップ5の軽量化を図ることができる。
【0047】
また、第1車外側保持リップ22及び第2車外側保持リップ23の各付根部間の距離は、第1車外側保持リップ22及び第2車外側保持リップ23の各突出長よりも短く構成されている。このように、第1及び第2車外側保持リップ22、23が近接配置されることで、結果的に、第1車外側保持リップ22と車内側保持リップ21とを近接配置することができる。従って、上記のように、車内側シールリップ21をフランジ部33の付根側に極力寄せて設け、第1及び第2車外側保持リップ22、23とフランジ部33との間のシール性の低下を防止するといった作用効果がより確実に奏される。さらに、第1車外側保持リップ22及び第2車外側保持リップ23は、トリム部11のフランジ部33への取付状態においても、互いに当接しない構成となっている。このため、例えば、トリム部11の取付けに際し、第1車外側保持リップ22が第2車外側保持リップ23に当接して支持されてしまい、第1車外側保持リップ22が的確に追従変形しなくなってしまうといった事態を回避することができる。従って、フランジ部33に対し第1及び第2車外側保持リップ22、23が突っ張ってしまうことに起因して、連結部14が車内側に変位するようにしてトリム部11が傾いて取付けられてしまい、第1及び第2車外側保持リップ22、23とフランジ部33との間のシール性の低下を招いてしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0048】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0049】
(a)上記実施形態では、フロントドア2に対応する自動車ボディ3のドア用開口部4の周縁部に設けられるウエザストリップ5について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)、スライディングドア等の他の開閉部材の周縁部に圧接されるウエザストリップについて適用することも可能である。
【0050】
(b)上記実施形態では、トリム部11のフランジ部33への取付方向が、ドア用開口部4の内外周方向と一致しているが、ドア用開口部4の内外周方向に対し、フランジ部33が傾いて延在する構成を採用してもよい。
【0051】
(c)上記実施形態において、第2車外側保持リップ23の付根部と第3車外側保持リップ24の付根部との間の距離は、第1車外側保持リップ22の付根部と第2車外側保持リップ23との間の距離の2倍以上6倍未満に設定されていることとしてもよい。尚、かかる距離の比率を2倍未満とすると、位置A、B間の距離W1を位置A、C間の距離W2よりも大きくするのが困難となってしまうおそれがある。また、かかる距離の比率を6倍よりも大きくなると、第3車外側保持リップ24の付根部とシール部15の付根部とを位置合わせすることができなくなったり、第3車外側保持リップ24が連結部14側に寄りすぎてしまって、フランジ部33と的確に圧接できなくなってしまったりする等、全体のバランスが崩れてしまうおそれがある。これに対し、かかる比率を上記のように設定することで、これらの不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図2】取付前の状態にあるウエザストリップを示す断面図である。
【図3】取付状態にあるウエザストリップを示す断面図である。
【図4】従来のウエザストリップを示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…自動車、2…ドア、3…自動車ボディ、4…ドア用開口部、5…ウエザストリップ、11…トリム部、12…車内側側壁部、13…車外側側壁部、14…連結部、15…シール部、17…インサート、18a…車内側対応部、18b…車外側対応部、18c…連結部対応部、21…車内側保持リップ、22…第1車外側保持リップ、23…第2車外側保持リップ、24…第3車外側保持リップ、33…フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に、前記ドアの周縁部に圧接されるシール部とを備えたウエザストリップであって、
前記トリム部には、前記車内側側壁部から車外側かつ前記連結部側に延出する車内側保持リップが1本だけ設けられるとともに、前記車外側側壁部から車内側かつ前記連結部側に延出する第1車外側保持リップ、第2車外側保持リップ、及び第3車外側保持リップが設けられ、
前記第1及び第2車外側保持リップは、スポンジ材により構成されるとともに、各先端部が前記車内側保持リップの先端部よりも前記フランジ部の付根側に位置し、
前記第1車外側保持リップは、前記車外側側壁部の先端部から延出し、
前記第2車外側保持リップは、前記トリム部の取付前の状態において、その先端部が前記車内側保持リップのドア用開口部外周側の面と当接し、
前記第3車外側保持リップは、ソリッド材により構成されるとともに、その先端部が前記車内側保持リップの先端部よりも前記フランジ部の先端側に位置し、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設され、当該インサートは、前記車外側側壁部に埋設される車外側対応部と、前記車内側側壁部に埋設される車内側対応部と、前記連結部に埋設され、前記車外側対応部及び前記車内側対応部を連結する連結部対応部とを備えて断面略U字状をなし、
前記車内側対応部は、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車外側対応部よりも前記フランジ部の付根側にまで延設され、
前記車内側保持リップの付根部は、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車内側対応部の先端縁と略同じ位置に設けられ、
前記トリム部の取付状態において、前記車内側保持リップの前記フランジ部との当接位置Aと、前記第3車外側保持リップの前記フランジ部との当接位置Bとの間の距離W1が、前記第1車外側保持リップの前記フランジ部との当接位置Cと、前記当接位置Aとの間の距離W2よりも大きく構成されていることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
前記シール部は中空形状に構成され、
前記第3車外側保持リップの付根部は、前記ドアの開閉方向において、前記シール部のうち前記ドア用開口部内周側の付根部と少なくとも一部が重複する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
前記車外側側壁部と前記連結部とのなす角度は鋭角であり、前記トリム部の前記フランジ部への取付方向において、前記車内側対応部の付根部は前記車外側対応部の付根部よりも前記フランジ部の付根側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップの各付根部間の距離は、前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップの突出長よりも短く構成されるとともに、
前記第1車外側保持リップ及び前記第2車外側保持リップは、前記トリム部の取付状態においても、互いに当接しない構成となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52505(P2010−52505A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217784(P2008−217784)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】