説明

ウエザストリップ

【課題】ドアガラスの昇降に際しての異音の発生を抑制することのできるウエザストリップを提供する。
【解決手段】フレームレスドア1に取着されるドアウエザストリップ2は、ベルトラインの後端縁に対応して設けられる後型成形部13を備え、後型成形部13は、ドアガラスGに接触してシールを行うガラスシール22を備えている。ガラスシール22のドアガラスGとの接触面には、ドアガラスGの昇降方向に沿って延在するたて糸43と、たて糸43に対して直交して延在するよこ糸44とが織られることで構成されたクロスシート41が取着されている。また、たて糸43はアセテート繊維で構成され、よこ糸44はガラス繊維で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードトップ車等のドアに取着されるウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に設けられるドアの周縁部にはドアウエザストリップが取付けられている。ドアウエザストリップは、ドアの外周に沿って取付けられる取付基部と、中空部を有するシール部とを備えている。そして、ドアの閉鎖時には、ドアウエザストリップのシール部が自動車ボディに形成されたドア用開口部の周縁部に圧接され、ドアと自動車ボディとの間がシールされるようになっている。
【0003】
また、ハードトップ車やオープントップ車に採用されるフレームレスのドアに関しては、ドアの前縁部、下縁部、及び後縁部に沿ってドアウエザストリップが取付けられる。図9に示すように、かかるドアウエザストリップ91は、ベルトラインに対応して配置される後側の端末において、ドア(ドアインナパネル)の車内側の面を被覆する後型成形部93を備えている。後型成形部93は、ドアガラスの昇降をガイドするとともに、ベルトラインにおいてドアガラスの後縦縁部をシールする横断面略コ字状のガラスシール95を備えている。また、ガラスシール95のドアガラスとの接触面(内側面)に対し、ドアガラスとの間の摩耗対策として、滑性剤を塗布したり、ポリエチレン等のフィルムを貼り付けたり、ガラスシール95を滑性剤が配合された材料により構成したりする等の技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−238329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように、ガラスシール95の接触面にコーティングが施されたり、フィルムが貼り付けられたりする場合には、ガラスシール95の接触面の剛性が高くなり、ガラスシール95全体で変形しようとする。このようにガラスシール95の接触面の剛性が高くなると、ドアガラスの昇降に際し、摩擦力に基づいてガラスシール部95がドアガラスに引っ張られてドアガラスの変位方向に変位させられたかと思うと、自身の弾性力に基づいてドアガラスの表面を滑るようにして元の位置に戻るといったことを繰り返すスティックスリップ現象が生じるおそれがあり、これに起因して異音の発生が懸念される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアガラスの昇降に際しての異音の発生を抑制することのできるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.ドアに取付けられ、昇降するドアガラスの内側面及び外側面に接触するシール部を備えたウエザストリップであって、
前記シール部のうちドアガラスと接触し得る部位には、接着層を介してシート状の保護手段が取着され、
前記保護手段は、ドアガラスの昇降方向に対して交差する方向に延在するよこ糸と、前記よこ糸の延在方向に対して交差する方向に延在するたて糸とを織ることで構成されるとともに、
前記よこ糸は、前記たて糸よりも硬質の繊維により構成されていることを特徴とするウエザストリップ。
【0009】
手段1によれば、シール部のうちドアガラスと接触し得る部位には、よこ糸とたて糸とが織られることで構成された(布状の)保護手段が取着されている。また、よこ糸を比較的硬質の繊維で構成する一方で、たて糸を比較的軟質(柔軟)な繊維で構成することによって、互いに隣接するよこ糸のうち一方のよこ糸に生じた変化(変位、変形)を、両よこ糸間に介在するたて糸によってある程度吸収(和らげる)することができ、前記一方のよこ糸の変化が他方のよこ糸に与える影響を極力抑制することができる。このため、例えば、保護手段が取着された部位の一部に変化や振動が生じたとしても、かかる変化や振動が広範囲に広がってしまうといった事態を抑制することができ、ドアガラスの昇降に伴ってシール部がドアガラスに引っ張られる等した際に、シール部のドアガラスとの接触部位のうち一塊で動作してしまう領域を極力細分化することができる。従って、スティックスリップの発生や振動の大きさを抑制することができ、結果的に、異音の発生を抑制することができる。
【0010】
また、各よこ糸に関しても、その長手方向全体がドアガラスに接触するのではなく、所定間隔毎に配設される各たて糸を挟んだピッチでドアガラスに接触するため、ドアガラスとの接触部位を細分化する(接触面積を小さくする)ことができる。従って、各よこ糸とドアガラスとの間に働く摩擦力を低減させることができ、スティックスリップの発生をより確実に抑制することができる。
【0011】
さらに、例えば、たて糸及びよこ糸をともに軟質の繊維によって構成する場合に比べ、ドアガラスの摺動性を向上させることができる。加えて、シール部のドアガラスとの接触部位に保護手段が取着されることにより、ドアガラスの昇降の繰返し等により、シール部が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、シール部とドアガラスとのシール圧を減少させることでも上記のようなスティックスリップの発生を抑制することができるのであるが、その場合はシール性の低下を招くおそれがある。これに対し、本手段のように保護手段を取着することで、シール性を確保しつつ、スティックスリップ等に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0012】
尚、上記作用効果がより確実に奏されるように、たて糸及びよこ糸の太さ(直径)は5〜20μmとすることが望ましい。また、(平)織り単位(たて糸、よこ糸のピッチ)は250〜350μmとすることが望ましい。
【0013】
手段2.ドアガラスの昇降方向に対する前記たて糸の交差角度は、−45度以上45度以下であることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0014】
本手段2によれば、比較的軟質な繊維よりなるたて糸をドアガラスの昇降方向に極力沿わせて延在させることにより、ドアガラスの昇降に際し、シール部のドアガラスとの接触部位に対して、ドアガラスの昇降方向に沿って引き延ばされたり押し縮められたりするような力が作用した場合に、たて糸(互いに隣接するよこ糸間の間隔)がドアガラスの昇降方向に沿って伸縮するようにして、かかる力に起因する変形を確実に和らげることができる。従って、上記手段1の作用効果が一層確実に奏される。
【0015】
手段3.前記よこ糸は、初期弾性率(ヤング率)が1000kgf/mm2を超える(好ましくは2000kgf/mm2以上)繊維で構成され、前記たて糸は、初期弾性率(ヤング率)が1000kgf/mm2未満の繊維で構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0016】
手段3によれば、上記手段1の作用効果が確実に奏される。尚、初期弾性率が1000kgf/mm2を超える繊維(硬質繊維)の素材としては、例えば、ガラス繊維、ケブラー(登録商標)やザイロン(登録商標)等の超高強度高弾性率繊維、麻などが挙げられる。また、初期弾性率が1000kgf/mm2未満の繊維(軟質繊維)の素材としては、例えば、アセテート、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエステルなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
【図2】ドアウエザストリップを示す図1のJ−J線断面図である。
【図3】車外側(取付面側)から見た後型成形部を示す斜視図である。
【図4】ガラスシールの断面図である。
【図5】クロスシート等を示す拡大断面図である。
【図6】ミラーベースウエザストリップを車内側から見たときの正面図である。
【図7】ガラスアウタウエザストリップ及びガラスインナウエザストリップを示す断面図である。
【図8】ガラスランの断面図である。
【図9】従来のドアウエザストリップの後型成形部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。車両としての自動車には、車両本体としての自動車ボディに形成されたドア用開口部を開閉するフロントドアが設けられている。図1に示すように、フロントドア(以下、単に「ドア1」と称する)は、昇降して窓部Wを開閉するドアガラスGと、ドア1の外周に沿って取付けられるドアウエザストリップ2とを備えている。本実施形態におけるドア1は、ベルトラインの上方において窓部Wを囲うドアフレームが設けられていない所謂フレームレスタイプのドアである。
【0019】
また、ドア1には、ベルトラインに沿って、ドアアウタパネル3の上縁部に取付けられるガラスアウタウエザストリップ5と、ドアインナパネル4の上縁部に取付けられるガラスインナウエザストリップ6とが設けられている(図7参照)。さらに、ベルトラインの上方において窓部Wの前方位置には(ドアガラスGの前方に隣接させて)ドアミラー7を取付けるためのミラーベース8が設けられ、ミラーベース8の周縁部にはミラーベースウエザストリップ9が設けられている。加えて、ドア1には、ドアガラスGの昇降を案内するとともに、ドアガラスGの周縁部をシールするガラスラン10が設けられている。
【0020】
また、ドアウエザストリップ2は、ドア1の前縁部、下縁部、及び後縁部に沿って取付けられる押出成形部11と、押出成形部11の前側の端末に一体形成された前型成形部12、及び、押出成形部11の後側の端末に一体形成された後型成形部13とを備えている。本実施形態では、ドアウエザストリップ2は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。
【0021】
図2に示すように、押出成形部11は、ドア1の外周に沿って設けられるリテーナ部DRに取付けられる取付基部15と、ドア2の外周側かつ車内側に突出形成され、中空部を有してなる中空シール部16と、取付基部15から車外側に延出した背面シール部17とを備えている。そして、ドア1が閉鎖されたときに、中空シール部16が自動車ボディのドア用開口部の周縁部に圧接し、これにより自動車ボディとドア1と間がシールされるようになっている。尚、押出成形部11の取付基部15には、押出成形部11の長手方向に沿って所定間隔毎にクリップ19が取付けられており、当該クリップ19をリテーナ部DRに形成された取付孔20に嵌め込むことでドアウエザストリップ2がドア1に取付けられている。
【0022】
さて、図3に示すように、後型成形部13は、ドアインナパネル4の車内側の面に取付けられ、ドアインナパネル4の車内側の面を被覆する型部本体21と、ドアガラスGの昇降をガイドするとともに、ベルトラインにおいてドアガラスGの後縁部をシールする横断面(横方向に切ったときの断面)略コ字状のガラスシール22と、ガラスシール22よりも車内側に設けられ、ガラスインナウエザストリップ6の後側の端末と突き合わされる端末部23とを備え、型成形によりこれらが一体的に形成されている。
【0023】
型部本体21は、ドアインナパネル4の車内側の面に合致する断面形状を有しており、ドアガラスGよりも車外側に位置し、ドアインナパネル4の後上の隅部と当接する第1板状部24と、第1板状部24の前縁部から車内側に延出する第2板状部25と、ドアガラスGよりも車内側に位置し、第2板状部25の車内側の端縁から前方に延出する第3板状部26とを備えている。また、型部本体21(第1〜第3板状部24、25、26)には、後型成形部13(EPDM)よりも硬質な樹脂材料(例えばポリプロピレン等)よりなり、型成形時にインサート成形される図示しない埋設部材が設けられている。加えて、第1板状部24及び第3板状部26には車幅方向に貫通する挿通孔27が形成されており、当該挿通孔27とドアインナパネル4に形成された取付孔とを位置合わせしてクリップ(図示略)を取付けることにより、後型成形部13がドア1に固定されている。
【0024】
ガラスシール22は、第2板状部25の上縁から上方に向けて延び、ドアガラスGの後端縁に対向して、ドアガラスGの外周面に接触する後面シール部31と、後面シール部31の車内側の端縁から前方に延び、ドアガラスGの車内側の面に接触する車内側シール部32(図4参照)と、後面シール部31の車外側の端縁から前方に延び、ドアガラスGの車外側の面に接触する車外側シール部33とを備えている。また、ガラスシール22は上方に向けて次第に窄むような形状をなすとともに、ガラスシール22の上部は下部に比べて薄肉になっている。加えて、図4に示すように、車外側シール部33には、型部本体21に埋設された埋設部材と一体的に形成され、後型成形部13の成形に際してインサート成形される芯部36が埋設されている。
【0025】
端末部23は、第3板状部26の上部から車外側に突出するようにして、第2板状部25の上部前方位置に設けられ、前方及び上方に開口している。また、前記車内側シール部32は、端末部23の車外側の壁部と連続的に形成されている。
【0026】
尚、窓部Wを閉めた状態で車室外に配置されるガラスアウタウエザストリップ5は、雨水の浸入や風切り音の発生を防止する等の機能を十分に発揮させるべく、後型成形部13よりも後方のドア1の後端縁にまで延びている。一方、ガラスインナウエザストリップ6は、ガラスアウタウエザストリップ5よりも短く構成され、ガラスインナウエザストリップ6の後端末は、窓部Wを閉鎖した状態にあるドアガラスGの後縁部よりも前方に配置される端末部23と突き合わされている。
【0027】
さて、図3〜図5に示すように、本実施形態では、ドアガラスGと接触するガラスシール22の内側面に対し、保護手段としてのクロスシート41が接着層42を介して取着されている。図5に示すように、クロスシート41は、ガラスシール部32におけるドアガラスGの昇降方向(図5矢印方向)に沿って延在するたて糸43と、たて糸43に対して直交する方向に延びるよこ糸44とが織られることで構成されている。また、よこ糸44は、初期弾性率(ヤング率)が7400kgf/mm2のガラス繊維で構成され、たて糸43は、初期弾性率(ヤング率)が300〜500kgf/mm2のアセテート繊維で構成されている。
【0028】
また、たて糸43及びよこ糸44の太さ(直径)は、それぞれ5〜20μmとなっている。さらに、クロスシート41の平織り単位は250〜350μmとなっている。加えて、クロスシート41は、縦幅(ドアガラスGの周同方向に沿った幅)が横幅よりも短く構成され、後面シール部31、車内側シール部32、及び車外側シール部33に沿って屈曲されて貼り付けられている。尚、クロスシート41の縦幅と横幅とが異なることから、クロスシート41をガラスシール22に取着する際に、取着する方向を誤ってしまうといった事態を防止することができ、確実にたて糸43がドアガラスGの昇降方向に沿って延在するように取着することができる。
【0029】
以上詳述したように、本実施形態によれば、後型成形部13のガラスシール22の内側面に対して、たて糸43とよこ糸44とが織られることで構成されたクロスシート41が取着されている。また、よこ糸44を比較的硬質の繊維(本例ではガラス繊維)で構成する一方で、たて糸43を比較的柔軟な繊維(本例ではアセテート繊維)で構成することによって、互いに隣接するよこ糸44のうち一方のよこ糸44に生じた変化(変位、変形)を、両よこ糸44間に介在するたて糸43によってある程度吸収(和らげる)することができ、前記一方のよこ糸44の変化が他方のよこ糸44に与える影響を極力抑制することができる。このため、例えば、クロスシート41が取着された部位の一部に変化や振動が生じたとしても、かかる変化や振動が広範囲に広がってしまうといった事態を抑制することができ、ドアガラスGの昇降に伴ってガラスシール22がドアガラスGに引っ張られる等した際に、ガラスシール22のドアガラスGとの接触部位のうち一塊で動作してしまう領域を極力細分化することができる。従って、ドアガラスGの昇降に際し、摩擦力に基づいて接触面がドアガラスGに引っ張られ、ガラスシール22(の一部)がドアガラスGの摺動方向側に変位したり、そのように変位したガラスシール22が自身の弾性力に基づいてドアガラスGの表面を滑るようにして元の位置に戻ったりを繰り返すスティックスリップの発生や振動の大きさを抑制することができ、結果的に、異音の発生を抑制することができる。
【0030】
また、各よこ糸44に関しても、その長手方向全体がドアガラスGに接触するのではなく、所定間隔毎に配設される各たて糸43を挟んだピッチでドアガラスGに接触するため、ドアガラスGとの接触部位を細分化する(接触面積を小さくする)ことができる。従って、各よこ糸44とドアガラスGとの間に働く摩擦力を低減させることができ、スティックスリップの発生をより確実に抑制することができる。
【0031】
さらに、例えば、たて糸43及びよこ糸44をともに軟質の繊維によって構成する場合に比べ、ドアガラスGの摺動性を向上させることができる。加えて、ガラスシール22の内側面にクロスシート41が取着されることにより、ドアガラスGの昇降の繰返し等により、クロスシート41が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、ガラスシール22とドアガラスGとのシール圧を減少させることでも上記のようなスティックスリップの発生を抑制することができるのであるが、その場合はシール性の低下を招くおそれがある。これに対し、本実施形態のようにクロスシート41を取着することで、シール性を確保しつつ、スティックスリップ等に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、たて糸43をドアガラスGの昇降方向に沿わせて延在させることにより、ドアガラスGの昇降に際し、ガラスシール22のドアガラスGとの接触部位に対して、ドアガラスGの昇降方向に沿って引き延ばされたり押し縮められたりするような力が作用した場合に、たて糸43(互いに隣接するよこ糸44間の間隔)がドアガラスGの昇降方向に沿って伸縮するようにして、かかる力に起因する変形を確実に和らげることができる。従って、上記作用効果が一層確実に奏される。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図6を参照して説明する。尚、図6はミラーベースウエザストリップ9を車内側から見たときの正面図である。
【0034】
図6に示すように、ミラーベースウエザストリップ9は、ミラーベース8(図1参照)の外形状に対応して略三角形状をなし、ミラーベース8の周縁部とドア1との間をシールするミラーベース本体51と、ドアガラスGの前縦縁部に対応して設けられ、ドアガラスGの昇降を案内するとともに、ドアガラスGが上昇して窓部Wが閉じられたときに、ドアガラスGの前縁部とドア1との間をシールするガラスラン部55とを備えている。
【0035】
ミラーベース本体51は、ドア開口部の上縁部の前傾斜部に対応して、後方に向けて上方傾斜して延びる前傾斜辺部52と、前傾斜辺部52の後端部(上端部)からドアガラスGの前縦縁部に沿って下方に延びる後縦辺部53とを備えている。前傾斜辺部52(ミラーベース本体51)の上縁部後端は、閉状態にあるドアガラスGの上縁部前端とほぼ同じ高さ位置となるように設定されている。
【0036】
ガラスラン部55は、ミラーベース本体51の後縦辺部53(の後側面)により構成される底壁部56と、底壁部56から後方(窓部Wの内周側)に向けて延出し、ドアガラスGの内側面及び外側面に接触する車内側リップ57及び車外側リップ58とを備え、断面略コ字状をなしている。尚、ミラーベース本体51の前傾斜辺部52及び後縦辺部53(ガラスラン部55)は、少なくともベルトラインにまで延びている。
【0037】
そして、ドアガラスGにより窓部Wが閉鎖された状態においては、車内側リップ57がドアガラスGの内側面に圧接し、車外側リップ58がドアガラスGの外側面に圧接することとなり、これによって、ドアガラスGの車外側及び車内側がそれぞれシールされるようになっている。また、ドア1の閉鎖時に、自動車ボディのドア用開口部の上縁部に設けられた図示しないルーフサイドウエザストリップのシール部が、ミラーベースウエザストリップ9及び閉状態にあるドアガラスGに圧接されることで、自動車ボディとドア1との間がシールされるようになっている。尚、本実施形態では、ミラーベースウエザストリップ9はEPDMにより構成されている。
【0038】
さて、本実施形態では、ドアガラスGと接触するガラスラン部55の内側面に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41(図5参照)が取着されている。また、本実施形態のクロスシート41は、底壁部56、車内側リップ57、及び車外側リップ58に沿って屈曲されつつ、ガラスラン部55の長手方向ほぼ全域にわたって貼り付けられている。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、ミラーベースウエザストリップ9のガラスラン部55のドアガラスGとの接触面(内側面)に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41が取着されている。従って、ミラーベースウエザストリップ9のガラスラン部55において、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0040】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図7を参照して説明する。図7に示すように、ドアアウタパネル7の上縁部に取付けられるガラスアウタウエザストリップ5は、ドアアウタパネル3の上縁部に取付けられる断面略U字状の基部61と、基部61から車内側に向けて突出し、ドアガラスGの外側面に接触する上下一対の上段シール部62及び下段シール部63とを備えている。
【0041】
また、ドアインナパネル4の上縁部に取付けられるガラスインナウエザストリップ6は、ドアインナパネル4の上縁部に取付けられる断面略U字状の基部65と、基部65から車外側に向けて延出する上下一対の上段シール部66及び下段シール部67とを備えている。
【0042】
そして、ドアガラスGを昇降させると、ガラスインナウエザストリップ6のシール部62、63がドアガラスGの内側面に圧接(接触)するとともに、ガラスアウタウエザストリップ5のシール部66、67がドアガラスGの外側面に圧接(接触)し、これによって、ベルトラインにおいてドアガラスGの外側面及び内側面がそれぞれシールされるようになっている。尚、本実施形態では、ガラスアウタウエザストリップ5及びガラスインナウエザストリップ6は、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)により構成されている。
【0043】
加えて、本実施形態では、ガラスアウタウエザストリップ5のうち、後型成形部13よりも後方に位置する部位においては、下段シール部63が除去されているとともに、ガラスアウタウエザストリップ5のうち、ガラスシール22と交錯する部位においては、前記ガラスシール22の車外側シール部33(図3等参照)が、ガラスアウタウエザストリップ5の上段シール部62と下段シール部63との間に挿通されている。車外側シール部33が上段シール部62と下段シール部63との間に挿通されることにより、ガラスアウタウエザストリップ5の端末の浮き上がりを抑制することができる上、ガラスアウタウエザストリップ5と後型成形部13との間に隙間が形成されてしまうといった事態を防止することができる。従って、ガラスアウタウエザストリップ5の取付状態の安定化や、外観品質、遮音性、及びシール性の向上等を図ることができる。さらには、当該構成により、車外側シール部33の下面が下段シール部63でカバー(被覆)されるため、ドアガラスGが車外側シール部33の下端部に直接接触することを回避することができる。従って、車外側シール部33がドアガラスGに突き上げられることに起因して、ドアウエザストリップ2が損傷してしまうといった事態を防止することができる。
【0044】
さて、本実施形態では、ドアガラスGと接触するシール部62、63、66、67の接触面に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41(図5参照)が取着されている。また、本実施形態のクロスシート41は、ガラスアウタウエザストリップ5及びガラスインナウエザストリップ6の長手方向ほぼ全域にわたって貼り付けられている。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、ガラスアウタウエザストリップ5及びガラスインナウエザストリップ6のシール部62、63、66、67のドアガラスGとの接触面に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41が取着されている。従って、ガラスアウタウエザストリップ5及びガラスインナウエザストリップ6において、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0046】
尚、上段シール部62と下段シール部63との間に車外側シール部33が挿通されるといった構成を採用することで、ガラスシール22の車外側シール部33の上下の幅を比較的短く設定する必要があり、車外側シール部33のドアガラスGとの接触部と、車外側シール部33に埋設された芯部36との間の距離が近くなる。このため、車外側シール部33のうちドアガラスGに圧接されることに伴って追従的に変形する領域が狭くなり、局所的に大きな変形を強いられる分、反力が増大する。すなわち、スティックスリップが発生しやすくなるおそれがある。この点、上記第1実施形態のように、車外側シール部33を含むガラスシール22の内側面にクロスシート41を取着することで、かかる不具合を抑制することができる。
【0047】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図8を参照して説明する。図8に示すように、ガラスラン10は、基底部74と、該基底部74から延びる車外側側壁部75及び車内側側壁部76とを具備して断面略コ字状をなす本体部71と、車外側側壁部75から車内側かつ基底部74側に延出する車外側シールリップ72と、車内側側壁部76から車外側かつ基底部74側に延出する車内側シールリップ73とを備えている。そして、所定の接続部材を介してドアインナパネル4に固定されたチャンネル部DCに対して本体部71が嵌め込まれることでガラスラン10がドア1に取着される。また、本体部71の内側にドアガラスGが進入することで、車外側シールリップ72がドアガラスGの外側面に対して圧接され、車内側シールリップ73がドアガラスGの内側面に対して圧接される。これによって、ドアガラスGの車外側及び車内側がそれぞれシールされるようになっている。
【0048】
さらに、車内側側壁部76から車外側に延出し、ドアガラスGが本体部71の内側に進入して車内側シールリップ73が車内側に傾倒するようにして変形した際に車内側シールリップ73の裏面に接触するサブリップ77が設けられており、当該サブリップ77によってドアガラスGのがたつきが抑制される。尚、本実施形態のガラスラン10はEPDMにより構成されている。また、車外側シールリップ72は車内側シールリップ73よりも小さく構成されている。これにより、ドアガラスGが車外側に寄せられ、フラッシュサーフィス化が図られる。加えて、車外側側壁部75の内側面、及びサブリップ77の車内側シールリップ73との接触面には摺動層(例えばウレタン塗膜)が形成され、基底部74の内側面には植毛が施されている。
【0049】
さて、本実施形態では、車外側シールリップ72及び車内側シールリップ73のうちドアガラスGと接触する接触面に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41が取着されている。また、本実施形態のクロスシート41は、ガラスラン10の長手方向ほぼ全域にわたって貼り付けられている。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、ガラスラン10のシールリップ72、73のドアガラスGとの接触面に対し、上記第1実施形態と同様のクロスシート41が取着されている。従って、ガラスラン10において、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0051】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0052】
(a)上記実施形態では、クロスシート41のよこ糸44は、初期弾性率(ヤング率)が7400kgf/mm2のガラス繊維で構成され、たて糸43は、初期弾性率(ヤング率)が300〜500kgf/mm2のアセテート繊維で構成されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、たて糸43が比較的軟質(柔軟)な繊維により構成され、よこ糸44が比較的硬質な繊維により構成されていればよい。但し、上記実施形態の作用効果がより確実に奏されるように、よこ糸44は、初期弾性率(ヤング率)が1000kgf/mm2を超える(好ましくは2000kgf/mm2以上)繊維で構成され、たて糸43は、初期弾性率(ヤング率)が1000kgf/mm2未満の繊維で構成されることが望ましい。尚、初期弾性率が1000kgf/mm2を超える繊維(硬質繊維)の素材としては、例えば、ガラス繊維、ケブラー(登録商標)やザイロン(登録商標)等の超高強度高弾性率繊維、麻などが挙げられる。また、初期弾性率が1000kgf/mm2未満の繊維(軟質繊維)の素材としては、例えば、アセテート、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエステルなどが挙げられる。
【0053】
また、上記第1実施形態ではドアウエザストリップ2がEPDMにより構成され、第2実施形態ではミラーベースウエザストリップ9がEPDMにより構成され、第3実施形態ではガラスアウタウエザストリップ5、ガラスインナウエザストリップ6がTPOにより構成され、第4実施形態ではガラスラン10がEPDMにより構成されているが、別の素材により構成してもよい。
【0054】
(b)上記第3実施形態では、ドアアウタウエザストリップ5及びドアインナウエザストリップ6の両方にクロスシート41が取着されているが、ドアアウタウエザストリップ5及びドアインナウエザストリップ6のどちらか一方にのみクロスシート41が取着される構成としてもよい。また、上記第4実施形態では、車外側シールリップ72及び車内側シールリップ73の両方にクロスシート41が取着されているが、車外側シールリップ72及び車内側シールリップ73のどちらか一方にのみクロスシート41が取着される構成としてもよい。但し、一般に、ドアガラスGはフラッシュサーフィス化によって車外側に寄せられる傾向にあるので、少なくとも車外側に配置されるドアアウタウエザストリップ5及び車外側シールリップ72に対してクロスシート41が取着されることが望ましい。
【0055】
(c)上記実施形態では、フレームレスドアに取着され、ドアガラスGに接触するシール部を有する各種ウエザストリップについて具体化しているが、ドアフレームを有するドアに取着されるガラスラン(ドアフレームに取着される部位を含む)やガラスアウタウエザストリップ、ガラスインナウエザストリップに適用することとしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、フロントドアに取付けられる各種ウエザストリップ(ドアウエザストリップ2、ドアアウタウエザストリップ5、ドアインナウエザストリップ6、ガラスラン10)に具体化しているが、その他のドア(リアドア等)に取付けられるウエザストリップに適用することとしてもよい。
【0057】
さらに、上記第1実施形態ではドアウエザストリップ2の後型成形部13に具体化され、第2実施形態ではミラーベースウエザストリップ9のガラスラン部55に具体化され、第3実施形態ではベルトラインに沿って設けられるガラスウエザストリップ5、6に具体化され、第4実施形態ではガラスラン10に具体化されているが、1つのドア1に対してこれらのウエザストリップ2、5、6、9、10のうち少なくとも1つに具体化されていればよい。また、具体化されるウエザストリップ2、5、6、9、10を任意に組合わせることも可能である。もちろん、これらのウエザストリップ2、5、6、9、10の全てを具体化することとしてもよい。加えて、上記第1実施形態において、ドアウエザストリップ2の前型成形部12のドアガラスGとの接触部位に対してもクロスシート41を取着することとしてもよい。
【0058】
(d)上記実施形態では特に言及していないが、クロスシート41の表面(ドアガラスGとの接触面)に摺動性の向上等を図るためのコーティングを施してもよい。但し、クロスシート41の凹凸が残るようにコーティングを施すこととする。
【0059】
また、上記実施形態では、たて糸43がドアガラスGの昇降方向に沿って延在しているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、ドアガラスGの昇降方向に対して交差する方向に延在するよう構成してもよい。但し、たて糸43の交差角度が大きくなると、スティックスリップ現象が起きやすくなってしまうことが懸念されるため、たて糸43は、ドアガラスGの昇降方向に対して車内側又は車外側に45度よりも大きく傾かないように延在することが望ましい。
【0060】
(e)上記実施形態では特に言及していないが、クロスシート41の上縁部及び下縁部はドアガラスGに接触しないように設定されていることとしてもよい。当該構成を採用する場合、クロスシート41が剥がれてしまうといった事態を抑制することができる。尚、ドアガラスGに接触しないようにするための方法としては、クロスシート41の上縁部及び下縁部がドアガラスGの軌道上から外れるように配置したり、クロスシート41の上縁部及び下縁部を所定の材料で埋設したりすることが挙げられる。但し、クロスシート41の上縁部及び下縁部がドアガラスGの軌道上から外れるように配置することで、クロスシート41が取着される部位の形状を変形させたり、クロスシート41を外観に現れるように露出させたりする必要が生じる場合、端縁がドアガラスGに接触しても剥がれないように比較的強固に接着したり、端縁を埋設したりする方法を採ることが好ましい。
【0061】
(f)図5では、便宜上各糸43、44とも一本の糸として表現されているが、このようにモノフィラメントで構成されてもよいし、マルチフィラメントで構成されていてもよい。但し、たて糸43(互いに隣接するよこ糸間の間隔)がドアガラスGの昇降方向に沿って伸縮するようにしてガラスシール22の変形を和らげるといった観点からすると、たて糸43は、個々の繊維が比較的細径のマルチフィラメントで構成されることが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
1…ドア、2…ドアウエザストリップ、5…ガラスアウタウエザストリップ、6…ガラスインナウエザストリップ、9…ミラーベースウエザストリップ、10…ガラスラン、13…後型成形部、22…ガラスシール、41…クロスシート、43…たて糸、44…よこ糸、55…ガラスラン部、62,66…上段シール部、63,67…下段シール部、72…車外側シールリップ、73…車内側シールリップ、G…ドアガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに取付けられ、昇降するドアガラスの内側面及び外側面に接触するシール部を備えたウエザストリップであって、
前記シール部のうちドアガラスと接触し得る部位には、接着層を介してシート状の保護手段が取着され、
前記保護手段は、ドアガラスの昇降方向に対して交差する方向に延在するよこ糸と、前記よこ糸の延在方向に対して交差する方向に延在するたて糸とを織ることで構成されるとともに、
前記よこ糸は、前記たて糸よりも硬質の繊維により構成されていることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
ドアガラスの昇降方向に対する前記たて糸の交差角度は、−45度以上45度以下であることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
前記よこ糸は、初期弾性率が1000kgf/mm2を超える繊維で構成され、前記たて糸は、初期弾性率が1000kgf/mm2未満の繊維で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68170(P2011−68170A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218457(P2009−218457)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】