説明

ウエハの位置合わせ装置及びウエハの位置合わせ方法

【課題】保持台の表面に異常があるか否かを早期に検出できる技術を提供すること。
【解決手段】ウエハWを保持台1に保持させ、当該保持台1を1回転以上回転させ、ウエハのW周縁位置を光センサ4により検出する。そして、この保持台1の回転方向の位置と光センサ4の受光出力との関係データを取得し、当該関係データに基づいてウエハの向き及び中心位置を検出する。さらに、前記関係データにおいて保持台の加速領域と減速領域に対応する実測データに基づいてウエハと保持台1に嵌め込まれた保持部材3との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する。例えば前記関係データにおいて保持台1の等速領域に対応するデータに基づいて、前記滑り現象が生じていないときの、加速領域と減速領域におけるデータを推定し、推定されたデータと前記実測データとを比較して比較結果に基づいて前記判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの向き及び中心位置を検出して、ウエハの位置合わせするための位置合わせ装置及び位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいては、半導体ウエハ「以下(ウエハという)」を保持台に載置して1回転させ、その間に光センサにより取得したウエハの周縁の径方向の関係データに基づいて、ウエハの向き及び中心位置を検出する位置合わせ装置が用いられている。ウエハの位置合わせが必要な理由としては、シリコンの結晶方向を特定するためにウエハに形成されたノッチやオリエンテーションフラットなどを、プロセス時に所定の向きに揃えておくことにより、プロセス結果の評価の信頼性を高めることなどが挙げられる。また、搬送アームに対するウエハの位置がずれていると、ウエハ搬送時に装置の構成部材に衝突したり、あるいはプロセス用の載置台からはみ出すなどの不具合が生じることから、ウエハの中心位置合わせが必要である。
【0003】
前記保持台の表面には複数個例えば3個のOリングが、ウエハWの位置ずれ防止のために設けられており、これらOリングは、保持台上のウエハWの裏面と接触するように、Oリングの表面が保持台から僅かに飛び出るように、保持台に嵌め込まれている。
【0004】
ところで、Oリングの表面が汚れたり劣化すると、ウエハの停止時にOリング上を滑ってしまい、ウエハの回転時に検出したウエハの向き、中心位置がずれてしまう現象が発生する。通常位置合わせ装置では、定期的メンテナンスにより、保持台の表面状態について検査を行っている。
【0005】
しかしながら、定期的メンテナンスの間隔が長過ぎると、Oリングの汚れや劣化に気付かずに処理を続行してしまい、ウエハWの滑りの程度が大きくなってノッチなどを検出できなくなり、装置がエラー停止しまう場合がある。また、停止時におけるウエハWの滑りにより、搬送アームがウエハWを受け取る位置がずれて搬送トラブルが起こり、装置を停止する場合もある。これらの場合、装置内にウエハが取り残されて回収できなくなり、歩留まりが低下したり、稼働率が低下してしまう。一方、定期的メンテナンスの間隔が短すぎると、Oリングを交換する際、どうしても本来の交換時間のタイミングよりも早くなってしまう。
【0006】
ところで、特許文献1には、ウエハのエッジを径方向外方からクランプする手段を備えたアライナにおいて、クランプが完全であるか不完全であるかを判別することができる技術が提案されている。しかしながら、当該特許文献1の構成によっても、保持台のウエハ載置面の異常を検知することはできず、本発明の課題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、保持部材の表面の異常を早期に検知することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、ウエハの向き及び中心位置を検出して、ウエハの位置合わせをするための位置合わせ装置において、
ウエハを保持するための保持部材と、この保持部材が嵌め込まれる保持台と、
この保持台を回転させるための回転機構と、
ウエハの周縁位置を検出するための光センサと、
前記保持台が一回転以上回転したときに、前記保持台の回転方向の位置と光センサの受光出力との関係データを取得するデータ取得部と、
前記関係データにおける保持台の加速領域と減速領域との少なくとも一方に対応するデータに基づいてウエハと保持部材との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のウエハの位置合わせ方法は、ウエハを保持台に嵌め込まれた保持部材に保持させ、当該保持台を1回転以上回転させる工程と、
この工程を行いながら、前記ウエハの周縁位置を光センサにより検出する工程と、
前記保持台の回転方向の位置と前記光センサの受光出力との関係データを取得する工程と、
前記関係データに基づいて前記ウエハの向き及び中心位置を検出する工程と、
前記関係データにおいて前記保持台の加速領域と減速領域との少なくとも一方に対応するデータに基づいて前記ウエハと前記保持部材との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウエハの周縁位置を検出するための光センサを備え、保持台の回転方向と前記光センサの受光出力との関係データを取得し、この関係データにおいて保持台の加速領域と減速領域に対応する実測データに基づいてウエハとこの保持台に嵌め込まれた保持部材との間で滑り現象が発生しているか否かを判定しているので、保持部材の表面の異常を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る位置合わせ装置の保持台、検出機構の概略を示す斜視図である。
【図2】前記保持台と保持部材の関係を示す斜視図である。
【図3】前記保持台の平面図及び断面図である。
【図4】制御部の構成を示す構成図である。
【図5】正常時における保持台の回転方向位置と受光出力とを対応付けた関係データを示す特性図である。
【図6】異常時における保持台の回転方向位置と受光出力とを対応付けた関係データを示す特性図である。
【図7】前記異常時における関係データの拡大データを示す特性図である。
【図8】前記異常時における関係データの拡大データを示す特性図である。
【図9】本発明の作用を示すフローチャートである。
【図10】保持台の回転方向位置と受光出力とを対応付けた関係データを示す特性図である。
【図11】加速領域の基準サンプリング値と測定サンプリング値のデータのイメージを示す特性図である。
【図12】前記位置合わせ装置が組み込まれた真空処理装置の一実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の位置合わせ装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。本発明の位置合わせ装置は、ウエハWを載置するための保持台1を備えており、この保持台1は、回転機構をなすステージモータ2にシャフト21を介して接続され、鉛直軸周りに回転できるように構成されている。この保持台1は、図1及び図2に示すように、ウエハWの裏面側中央が載置されるように、平面形状はウエハWよりも小さい円形状に構成されている。前記ステージモータ2にはエンコーダ22が接続されている。
【0014】
また、当該保持台1は例えばアルミニウムにより構成され、その表面11には、図2に示すように、複数個の保持部材が設けられている。この保持部材は、例えばゴムや樹脂等の弾性があり、摩擦係数が大きいものより構成され、この例では保持部材として例えば3個のOリング3が設けられている。このOリング3は、ウエハとの間で摩擦を生じさせて滑り現象を防止するための滑り防止部材をなすものであり、例えば図3(a)、(b)に示すように、前記保持台1の表面11に形成された凹部12内に嵌め込まれている。この凹部12は、例えば保持台1の表面11において、例えば保持台1の回転中心を中心とした同一円周上に互いに等間隔で配置されている。
【0015】
また、ウエハW裏面とOリング3の表面とを接触させるために、Oリング3の表面は、ウエハW裏面が前記保持台1の表面11と接しないように、前記保持台1の表面11より僅かに例えば1mm〜2mm程度突出するように保持台1に嵌め込まれている。このような保持台1は、直径L1が例えば100mmに設定され、Oリング3の直径L2は例えば10mmに設定されている。
【0016】
さらに、前記位置合わせ装置には、前記保持台1の径方向におけるウエハWの周縁位置を検出するための光センサ4が設けられている。この光センサ4は、例えばLED等からなる発光部41と、CCDセンサ等からなる受光部42とにより透過型センサとして構成されている。これらの発光部41と受光部42とは、上下に対向するように配置されている。
【0017】
前記発光部41からの光の内の一部は、保持台1上に載置されたウエハWで遮られ、残りの光が受光部42に入射するように構成されている。受光部42は、具体的には受光素子が保持台1の径方向に例えば1300個並んでおり、受光した受光素子の数に対応する大きさだけ電圧降下が起こり、その電圧降下分の電圧値が図4に示すA/D(アナログ/ディジタル変換部)43を介して制御部5に送られることになる。従って、この電圧値は、ウエハWに遮られずに受光部42に到達した受光量、つまりウエハWの周縁の位置方向の位置に対応した値となり、受光部42の配置間隔寸法の分解能を有している。
【0018】
制御部5は、図4に示すように、プログラム51、メモリ52、CPU53、アラーム出力部54と、を備えている。また、バス50には、既述のようにA/D変換部43を介して受光部42が接続されると共に、ステージモータ2やエンコーダ22が接続されている。
【0019】
前記プログラム51には、データ取得プログラムや検出プログラム、判定プログラム等が含まれている。前記データ取得プログラムは、前記保持台1が一回転以上回転したときに、前記保持台1の回転方向の位置と光センサ4の受光出力との関係データを取得するデータ取得部をなすものである。そして、このデータ取得プログラムは、ステージモータ2により保持台1を1回転よりも多い回転角となるように回転させ、ステージモータ2に接続されたエンコーダ22からのパルスをカウントする毎に、受光部42からA/D変換部43を介して取り込んだ電圧値である受光出力を読み取り、パルスカウント値と電圧値とを対応付けた関係データを作成してメモリ52に記憶するステップ群を有している。
【0020】
前記検出プログラムは、前記関係データから、保持台1の回転位置と対応する受光出力を切り出し、切り出したデータ、具体的には、後述の図10に示すように、正弦波の波形から、ウエハWの向き及び中心位置を検出する機能を有する。この例では、前記正弦波の波形からウエハWの位置合わせ用の欠落部であるノッチ部の位置を演算するステップ群と、ウエハWの保持台1の回転中心位置からのウエハWの回転中心位置のずれ量(偏心量)を演算するステップ群を備え、前記ノッチ部の位置よりウエハWの向きを、前記偏心量よりウエハWの中心位置を夫々検出するようになっている。
【0021】
前記判定プログラムは、前記関係データにおける加速領域と減速領域との少なくともに対応するデータに基づいて、ウエハWとOリング3との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する判定部をなすものである。具体的には、この判定プログラムは、前記関係データにおいて等速領域に対応するデータに基づいて、前記滑り現象が生じていないとしたときの加速領域と減速領域との少なくとも一方におけるデータを推定し、推定されたデータとこのデータに対応する領域において実測されたデータとを比較して、比較結果に基づいて、前記判定を行うステップ群を備えている。この際、前記比較結果により、前記実測されたデータが前記推定されたデータから外れていると判断したときに、更に外れている部分がウエハの位置合わせ用の欠落部に相当する部分であるか否かを判定し、前記欠落部に相当しないときに前記滑り現象が発生していると判定するステップ群を有するように構成されている。
【0022】
前記アラーム出力部54は、異常判定プログラムにおいて、ウエハWとOリング3との間でウエハWの滑り現象が発生していると判定されたときに、所定のアラーム出力を行うステップ群を備えている。前記アラーム出力は、コンピュータの表示画面への出力や、アラームランプの点灯、アラーム音の発生等である。
【0023】
前記関係データの一例について図5及び図6に示す。図中、横軸がエンコーダのパルスカウント値に対応するサンプリング番号(保持台の回転方向位置)、縦軸が光センサ4の受光出力(ウエハWの周縁位置)である。図5に示す関係データは、保持台1の表面に異常がない正常時の関係データであり、図6に示す関係データは、Oリング3の表面に異常がある異常時の関係データである。図7及び図8は異常時の関係データの異常発生部分の拡大データを示す。
【0024】
そして、図5における横軸のT0は保持台1の回転起動時、T1は回転速度が等速になった等速開始時、T2は等速停止時、T3は保持台1の回転停止時を示している。この際、回転起動時T0から等速開始時T1までが加速領域、等速停止時T2から回転停止時T3までが減速領域である。また、等速開始時T1から等速停止時T2までが保持台1が等速回転する等速領域であり、この間にウエハWが360度回転することになる。
【0025】
一方、異常時のデータを見ると、Oリング3の表面に異常がある場合には、データの波形が、加速領域及び減速領域において、正常時のデータの波形とは異なる。前記異常がある場合とは、例えばOリング3の表面が汚れている場合、或いは劣化している場合等であって、ウエハWとの密着性が低下し、ウエハWとOリング3との間に滑り現象が発生した場合をいう。このような場合、保持台1の加速時や減速時にウエハWがOリング3表面に対して滑りやすい状態になり、この滑りによるウエハWの位置ずれが関係データの波形に表れる。一方、保持台1が等速で回転しているときには、慣性により滑り現象は発生しない。従って、図6に示す異常時の関係データでは、加速領域及び減速領域の波形が正常時の関係データの波形とは異なるが、等速領域の波形は、同様である。
【0026】
図7は、図6における加速領域の波形の拡大データである。この例ではサンプリング番号が0〜100が加速時に相当するが、サンプリング数が0〜50の間の波形に乱れがあり、この位置で滑り現象が発生したことが理解される。また、図8は、図6における減速領域の波形の拡大データであり、この例ではサンプリング数が2505以降が減速時に相当する。この場合、サンプリング数が2500〜2550の間の波形に乱れがあり、この位置で滑り現象が発生したことが理解される。
【0027】
続いて、上述実施の形態の作用について、図9のフロー図を参照しながら説明する。先ず、ウエハWを外部の搬送アームにより保持台1上のOリング3に載置し、当該保持台1を回転させ、回転位置毎に受光部42からの受光出力を取得する。この例では、ステージモータ2が一回転する間にエンコーダから2400パルスが出力するように構成されている。このため、360/2400=0.15度(π/1200)の分解能で各位置(回転位置)を検出できる。ウエハWの回転については、この例では520度(360度+180度)、つまり1回転半だけウエハWを回転させ、各位置と受光出力との関係データを取得してメモリに格納する(ステップS1)。
【0028】
このステップS1も含めて以降の各ステップは、前記プログラム51により実行される。一連のステップの詳細を説明する前に、ウエハWの位置ずれ検出の概略を述べておくと、次のようにまとめられる。即ち、ウエハWの回転開始から停止に至るまでの光センサ4の受光出力の正弦波の関数を求め、加速領域、減速領域において、取得データが当該関数から外れている場合に、ウエハWとOリング3との間に滑り現象が発生したとして判定しようとするものであり、更にノッチ部を考慮してステップを組み立てている。
【0029】
各ステップの説明を続けると、取得した関係データに基づいて、ノッチ部の位置を求めると共に(ステップS2)、等速領域における受光出力の最大値と最小値とを求め(ステップS3)、最大値と最小値との中間値を関数値のゼロとして取り扱うと共に、回転開始時点の位相を0度として、正弦波の関数を求める。図10(a)は、前記関数がAsinθの場合を示している。Aは前記最大値と最小値との差分の1/2の値であり、θは(π/1200)で表わされる位相である。
【0030】
ところで、最大値、最小値を取得するときにノッチ部については避ける必要があるため、ステップS2にて求めたノッチ部の位置におけるデータは除外している。また、確率は極めて低いが、正弦波の山の頂点あるいは谷の底点にノッチ部が位置した場合には、ノッチ部の前後のデータに基づいて補間して最大値あるいは最小値を推定することが好ましい。なお、このような補間処理をせずに、ノッチ部を除いたデータから最大値あるいは最小値を求めた場合には、多少正弦波データが本来のデータに対してずれるが、補間処理をせずに正弦波データを求めてもよい。
【0031】
ウエハWの回転時において、等速領域ではウエハWの滑り現象は起こらないので、最大値及び最小値は等速領域にて取得している。正弦波の山の頂点あるいは谷の底点が加速領域あるいは減速領域に位置していたとしても、ウエハWを一回転半回しており、加速領域及び減速領域は例えば100パルス分(π/24)の領域であるから、等速領域には必ず正弦波の山の頂点あるいは谷の底点が現れる。
【0032】
ステップS4では、このようにノッチ部の位置を考慮した上で、最大値及び最小値と、これらの値を採る各位置と、に基づいて正弦波の関数を求めている。例えば正弦波がAsinθの場合には、最小値の位置は、3/2・πとなる。つまり、回転開始時のサンプリング番号を「0」とすると、サンプリング番号が「1800」のときに最小値となる。従って、最小値となるサンプリング番号について「1800」からのずれ分を求めれば、正弦波関数が求められる。図10(b)には、サンプリング番号のずれ分がαであるときの正弦波を示しており、この場合には、(1)式となる。
【0033】
Asin(θ+α)・・・・・・・(1)
ウエハWの回転動作については、予め設定された設定速度まで加速した後、等速となり、その後減速して停止する。加速領域と減速領域とにおいて、ウエハWに滑りが発生していなければ、受光出力のサンプリング値は、(1)式で表わされる正弦波(関数)の上に載っている。このため、加速領域と減速領域とにおける各位置毎に、サンプリング値が前記正弦波の上に載っているとした場合の各サンプリング値を求め、これを基準サンプリング値(受光出力)とし、各位置と基準サンプリング値とを対応付けて基準データとしてメモリ内に格納する(ステップS5)。
【0034】
次に、ステップS1で取得した関係データにおける加速領域及び減速領域の各位置の受光出力のサンプリング値(測定サンプリング値)と、前記基準データにおける加速領域及び減速領域の各位置の受光出力のサンプリング値(基準サンプリング値)を比較して、各位置毎に、サンプリング値の差分がしきい値であるか否かを判断する(ステップS6)。
【0035】
図11は、加速領域における基準サンプリング値と測定サンプリング値とについてメモリ内のデータのイメージを示している。なお、減速領域についても同様に表わされる。加速領域と減速領域とは予め設定されており、加速領域は例えば回転開始時点から100パルス分であり、減速領域は例えば停止時点から遡って100パルス分である。また、エンコーダのパルス間隔をクロックによりカウントし、クロックのパルス間隔が徐々に増えている領域及び徐々に減少している領域を夫々加速領域及び減速領域として取り扱うようにしてもよい。
【0036】
ステップS6にて、加速領域及び減速領域の各位置毎の測定サンプリング値と基準サンプリング値との差分がしきい値以下であれば、正常として取り扱い、ウエハWの向きとウエハWの中心位置を位置合わせデータとして取得し、フローを終える。これに対して前記差分がしきい値以上であれば、ウエハWがOリング3に対して滑りを起こした可能性もあるが、ノッチ部を検出している可能性もある。このため、例えば前記差分が外れている領域において、前記基準データにおいてノッチ部が存在した場合のサンプリング群から得られる線図をコンピュータが作成する。そして、作成された線図と、測定サンプリング値を補間して得られる線図と、についてパターンマッチングを行い、そのマッチングの程度により、ノッチ部であるか、それともウエハWの滑り現象の発生であるかについて推定する(ステップS7)。
【0037】
そして、ノッチ部であれば正常として取り扱い、既述のように、位置合わせデータを取得してフローを終える。一方、ノッチ部でなければ、ウエハがOリング3に対して滑りを起こしたと判定して、アラーム出力部54により、所定のアラームを出力する(ステップS8)。
【0038】
続いて、このような位置合わせ装置を組み込んだ真空処理装置について図12に基づいて説明する。図12は前記真空処理装置の全体構成を示す平面図である。真空処理装置は、ウエハWのロード、アンロードを行うローダモジュールを構成する搬送室61と、常圧雰囲気と真空雰囲気とを切り替えられるように構成されたロードロック室62,63と、真空搬送室64と、真空処理室65A〜65Dと、を備えている。図12中Cは密閉型キャリア、GTはキャリアCの蓋体と一緒に開閉されるゲートドア、Gはゲートバルブである。
【0039】
前記搬送室61の側面には、本発明の位置合わせ装置10が設けられており、搬送室61に設けられた第1の搬送アーム66により、密閉型キャリアCと、ロードロック室62,63と、位置合わせ装置10との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0040】
前記真空処理室65A〜65Dとしては、例えば成膜装置やアニール装置、エッチング装置等が割り当てられており、第2の搬送アーム67により、ロードロック室62,63と各真空処理室65A〜65Dとの間でウエハWの受け渡しが行なわれるようになっている。
【0041】
続いて、前記真空処理装置におけるウエハWの流れについて簡単に説明する。先ず、多数枚のウエハWが収納された密閉型キャリアCを搬送室61に搬入し、第1の搬送アーム66により、当該キャリアC内のウエハWを受け取り、位置合わせ装置10に搬送して、保持台1に受け渡す。ここで、この搬送アーム66はウエハWの周縁部を保持するように構成されると共に、搬送アーム66の内縁が保持台1の外縁よりも大きく、保持台1の下方側で搬送アーム66に対して進退させたときに、搬送アーム66の先端がシャフト21と干渉しないように構成されている。こうして、ウエハWを保持した搬送アーム66を保持台1の上方側から下降させることにより、ウエハWが保持台1上のOリング3に載置される。一方、搬送アーム66を保持台1の下方側から上昇させることにより、Oリング3上のウエハWが搬送アームに受け渡される。
【0042】
そして、保持台1をステージモータ2により鉛直軸まわりに回転させ、既述のように関係データを取得して、Oリング3の表面が異常であるか否かの判定と、位置合わせデータの取得作業を行う。この際、Oリング3の表面に異常がないと判定されると、前記位置合わせデータに基づいて、ウエハWの中心が、第1の搬送アーム66上の予め設定された位置になるように、搬送アーム66による受け取り位置を補正する。こうして、保持台1(Oリング3)上のウエハWは、その中心が位置合わせされた状態で第1の搬送アーム66に受け取られる。
【0043】
そして、常圧雰囲気のロードロック室62,63のゲートバルブGを開き、前記第1の搬送アーム66により前記ウエハWをロードロック室62,63内に搬入する。次いで、ロードロック室62,63を所定の真空雰囲気まで減圧した後、ゲートバルブGを開き、第2の搬送アーム67によりウエハWを受け取り、真空処理室65A〜65Dのいずれかに搬送し、当該真空処理室65A〜65Dにおいて、所定の真空処理を実施する。
【0044】
こうして真空処理室65A〜65D内にて処理が行なわれたウエハWは、第2の搬送アーム67により当該真空処理室65A〜65Dから搬出され、真空雰囲気に設定されたロードロック室62,63内に搬入される。次いでロードロック室62,63内を常圧雰囲気まで戻した後、第1の搬送アーム66によりロードロック室62,63内のウエハWを受け取り、第1の搬送室66を介して所定のキャリアCに戻される。
【0045】
一方、Oリング3の表面が異常であると判定されると、所定のアラームが出力される。この際、予め制御部5には、Oリング3の表面に異常があると判定されたときの、搬送アーム66の制御を行うステップ群が備えられており、前記アラーム出力により、搬送アーム66の制御が行われる。この場合、例えば当該ウエハWを含むロットのウエハWに対して、位置合わせ用のデータ(ウエハの向き及び中心位置)の取得作業を行った後、第1の搬送アーム66により、当該ウエハWを例えば元のキャリアCに戻すように搬送制御が行われる。そして、この後、保持台1のメンテナンス作業を実施する。このように、ロットのウエハWに対して位置合わせ用のデータの取得を続行するのは、Oリング3に異常が検出されたときでも、既述のように、保持台1を等速で回転させるときには、ウエハの滑り現象は発生せず、位置合わせ用のデータの取得を実施することができるからである。
【0046】
但し、Oリング3の表面が異常であると判定されると、例えば当該ウエハWに対して、位置合わせ用のデータの取得作業を行った後、第1の搬送アーム66により、例えば元のキャリアCに戻すように搬送制御を行い、ロットの残りのウエハWに対しては位置合わせ用のデータの取得を続行せずに、Oリング3のメンテナンス作業を実施するようにしてもよい。
【0047】
さらに、大きさの異なるしきい値を設けてウエハの滑りの程度を2段階で判定し、滑りの程度が大きい場合には、例えばAlarmを表示し、当該ウエハに対して、位置合わせ用のデータの取得作業を行った後、直ちに保持台1のメンテナンス作業を実施し、滑りの程度が小さい場合には、例えばWarningを表示し、当該ウエハを含むロットの全てのウエハWに対して、位置合わせ用のデータの取得作業を行った後、保持台1のメンテナンス作業を実施するようにしてもよい。
【0048】
上述の実施の形態によれば、保持台1の回転方向位置とウエハの周縁位置とを対応付けた関係データを取得し、ウエハWの回転開始から停止に至るまでの受光出力の正弦波の関数を求め、加速領域、減速領域において、取得データが当該関数から外れている場合に、ウエハWとOリング3との間に滑り現象が発生していると判定して、Oリング3の異常検出信号を出力している。このため、ウエハWの位置合わせを行う度に、保持台1に嵌め込まれたOリング3に異常があるか否かを判定できるので、Oリング3の表面の異常を早期に検知することができる。これにより、適切なタイミングでOリング3のメンテナンスを行うことができるので、Oリング3の汚れや劣化に気付かずに処理を続行してしまい、位置合わせ用のデータが検出できなくなるといった事態や、搬送アームによる受け渡しや搬送のトラブルを未然に防ぐことができる。一方、Oリング3の交換を適切なタイミングで行うことができ、本来の交換時間のタイミングよりも早く交換するといったことを防止することができる。
【0049】
また、本発明の位置合わせ装置を含む真空処理装置によれば、Oリング3の表面の異常を早期に検知することができるので、位置合わせ用のデータが検出できなくなることによる装置停止や、搬送トラブルによる装置停止を未然に防ぐことができる。これにより、装置内に取り残されてウエハWが回収不能になるといったことが起こりにくくなり、歩留まりの低下を抑えられ、また装置の稼働率の低下も抑えることができる。
【0050】
以上において、本発明では、ウエハの位置合わせ用の欠落部がオリエントフラットである場合にも適用できる。この場合には、加速領域、減速領域にオリエントフラットが位置したときには、オリエントフラットを避けるように設定し直して、データを取得することが行われる。
【0051】
さらに、本発明では、加速領域、減速領域のいずれか一方のデータを用いて、ウエハの滑り現象の発生を検出するようにしてもよい。Oリング3の表面に異常がある場合には、加速領域、減速領域の両方にウエハの滑りが発生することが多いため、加速領域、減速領域のいずれか一方のデータを用いて判定しても、ウエハの滑りを検出できる確率が高いからである。また、既述のように、Oリング3表面に異常が確認されたときに、ロットの全てのウエハに対して位置合わせデータを取得してからOリング3表面のメンテナンスを行う場合には、必ずしもロット内の全てのウエハに対して滑り現象の発生を検出できなくでもよいからである。
【0052】
さらにまた、この手法では、保持台1の回転中心と、ウエハ中心とが一致しているときにはウエハの回転位置と光センサ4の受光出力とを対応付けた関係データは正弦波とならないが、保持台1の回転中心とウエハ中心とが一致することは稀であり、ロットの次のウエハの検出の際に、前記関係データが正弦波となる確率が高いので、ウエハとOリング3との間に滑り現象が発生しているか否かを判定することができ、特に問題はない。
【0053】
さらにまた、保持台の回転方向の位置と光センサの受光出力との関係データを取得する工程は、前記保持台を一回転させて行うようにしてもよい。この場合には、正弦波の最大値又は最小値が加速領域又は減速領域に位置することがあるが、この際、例えば等速領域にある正弦波の最大値又は最小値の一方と、変極点の位置から、既述の(1)式に示す正弦波関数を求め、これに基づいてウエハとOリング3との間で滑り現象が発生しているか否かを判定することができる。また、正弦波の最大値又は最小値が加速領域又は減速領域に位置したときには、再度保持台1を回転させて、正弦波の最大値又は最小値が等速領域に位置するデータを取得し直すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
W 半導体ウエハ
1 保持台
2 ステージモータ
22 エンコーダ
3 Oリング
4 光センサ
41 発光部
42 受光部
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの向き及び中心位置を検出して、ウエハの位置合わせをするための位置合わせ装置において、
前記ウエハを保持するための保持部材と、前記保持部材が嵌め込まれる保持台と、
この保持台を回転させるための回転機構と、
前記ウエハの周縁位置を検出するための光センサと、
前記保持台が一回転以上回転したときに、前記保持台の回転方向の位置と前記光センサの受光出力との関係データを取得するデータ取得部と、
前記関係データにおける前記保持台の加速領域と減速領域との少なくとも一方に対応するデータに基づいて前記ウエハと前記保持部材との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する判定部と、を備えたことを特徴とするウエハの位置合わせ装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記関係データにおいて等速領域に対応するデータに基づいて、前記滑り現象が生じていないとしたときの加速領域と減速領域との少なくとも一方におけるデータを推定し、推定されたデータとこのデータに対応する領域において実測されたデータとを比較して、比較結果に基づいて、前記判定を行うことを特徴とする請求項1記載のウエハの位置合わせ装置。
【請求項3】
前記比較結果により、前記実測されたデータが前記推定されたデータから外れていると判断したときに、更に外れている部分がウエハの位置合わせ用の欠落部に相当する部分であるか否かを判定し、前記欠落部に相当しないときに前記滑り現象が発生していると判定することを特徴とする請求項2記載のウエハの位置合わせ装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記ウエハの裏面が前記保持台に接触しないように、前記保持台の上面より飛び出していることを特徴とする請求項1に記載のウエハ位置合わせ装置。
【請求項5】
前記保持部材は、当該保持部材とウエハとの間で摩擦を生じさせて滑り現象を防止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のウエハの位置合わせ装置。
【請求項6】
ウエハを保持台に嵌め込まれた保持部材に保持させ、当該保持台を1回転以上回転させる工程と、
この工程を行いながら、前記ウエハの周縁位置を光センサにより検出する工程と、
前記保持台の回転方向の位置と前記光センサの受光出力との関係データを取得する工程と、
前記関係データに基づいて前記ウエハの向き及び中心位置を検出する工程と、
前記関係データにおいて前記保持台の加速領域と減速領域との少なくとも一方に対応するデータに基づいて前記ウエハと前記保持部材との間で滑り現象が発生しているか否かを判定する工程と、を含むことを特徴とするウエハの位置合わせ方法。
【請求項7】
前記判定する工程とは、前記関係データにおいて等速領域に対応するデータに基づいて、前記滑り現象が生じていないとしたときの加速領域と減速領域との少なくとも一方におけるデータを推定し、推定されたデータとこのデータに対応する領域において実測されたデータとを比較して、比較結果に基づいて前記判定を行うステップを含むことを特徴とする請求項6記載のウエハの位置合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−69590(P2012−69590A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211172(P2010−211172)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】