説明

ウエハへのレジスト形成方法

【課題】凹凸のあるウエハ表面にレジストを均一にむらなく形成する。
【解決手段】レジスト形成方法は、ウエハWの中心部にレジストRを滴下した後、またはウエハWの中心部にレジストRを滴下しながら、ウエハWをウエハWの中心軸Cのまわりで回転させることによって、ウエハWの外周部に、滴下されたレジストRの盛り上がり部を形成する第1の塗布ステップ(図(b))と、第1の塗布ステップに続いて、ウエハWを中心軸Cのまわりで回転させながら、レジストRの滴下位置を中心部からウエハWの外周部に向けて変化させて、ウエハWにレジストRを滴下する第2の塗布ステップ(図(c))と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハへのレジスト形成方法に関し、特にレジストをウエハに均一に塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜磁気ヘッドの製造工程は、半導体プロセス技術を利用したウエハ上への積層工程を含んでいる。ウエハ上への積層工程においては、他の多くの半導体装置と同様、成膜した膜のパターン化や、所定の平面形状を有する膜の成膜などの目的でフォトレジスト(以下、レジストという。)が頻繁に用いられている。図14は、スピンコーティング法を用いたレジストの塗布方法を示す概念図である。スピンコーティング法では、ウエハWの中心部にレジストRを滴下した後ウエハWを回転させ、遠心力を利用してレジストRをウエハW全面に拡散させる。
【0003】
ウエハ上には多数の素子が同時に形成されるためレジストを均一に塗布することが重要である。このため、特許文献1には、レジストを吐出させるノズルをウエハの中央部から周辺部まで径方向に沿って等速移動させながらレジストを滴下する技術が開示されている。同文献には、ノズルを基板の周辺部から中央部に径方向に沿って等速移動させる技術も述べられている。
【0004】
特許文献2には、レジストの膜厚の均一化およびレジストのウエハからの落下防止のため、ノズル位置をウエハ中央部に固定した状態で、レジストの粘度を時間とともに低下させながらレジストを滴下する技術が開示されている。初期段階でウエハ上に滴下されたレジストは遠心力によってウエハの外周部に到達するが、粘度が高いためウエハの外周部にとどまりやすくなり、ウエハ外への落下が防止され、レジストの節約が可能となる。粘度の調整は、レジストに混合するシンナの量を制御することによっておこなわれる。
【特許文献1】特開2000−350955号公報
【特許文献2】特開2002−045772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンコーティング法は、レジストを滴下するウエハ表面が平坦である場合には均一な膜厚の膜が得られやすく、ウエハの一部が未塗布のままとなることもほとんどない。しかし、薄膜磁気ヘッドの積層工程では、シャントパターンの作成等のため、途中段階で多くの段差あるいは凹凸がウエハ上に形成されており、その状態でレジストを塗布することが多い(詳細は実施形態を参照。)。レジストを段差の多いウエハ表面に塗布する場合、レジストの移動が凸部によって妨害され、レジストはウエハの全角度方向に均一に拡散していかない。この結果、レジストが径方向に延びる多数の線状の拡散ルートに沿って放射状に拡がる傾向が生じ、部分的にレジストが行き渡らない部位が生じる。この現象は、レジストが低粘度の場合や、レジストが濡れにくい溶剤や揮発性の高い溶剤を含む場合に顕著となる。レジストが行き渡らない部位は露光、現像後にパターン欠陥を生じる。ウエハ表面が部分的にレジストに覆われない現象は、レジストの滴下量を増加しても劇的には改善されない。これは、レジストがウエハ表面を放射状に拡散していく傾向が一度付いてしまと、レジスト滴下量を増加しても、レジストはその軌跡に従いウエハの外周部に移動していくためである。この結果、滴下されたレジストはレジストに覆われていない部位を覆うことなくウエハから落下してしまう。
【0006】
特許文献1に記載の技術はウエハを回転させながらレジストを滴下するため、ウエハの外周部にはレジストが拡散しやすいが、逆に中央部にレジストが留まりにくい。このため、ウエハ中央部に未塗布部分が生じやすく、ウエハ中央部のパターン欠陥が生じやすい。特許文献2に記載の技術はレジストの粘度を時間とともに調整する必要があるため、工程の増加を招くだけでなく、複雑な混合装置を必要とする。同特許文献に示されているように、複数の粘度を有するレジストを別々のタンクにあらかじめ保有しておくことも考えられるが、切替装置などの設備コストが必要となる。レジストの温度を調整して粘度を変更することも考えられるが、温度毎(粘度毎)に温度調整装置が必要となるため同様の問題がある。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、凹凸のあるウエハ表面にレジストを均一にむらなく形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウエハへのレジスト形成方法は、ウエハの中心部にレジストを滴下した後、またはウエハの中心部にレジストを滴下しながら、ウエハをウエハの中心軸のまわりで回転させることによって、ウエハの外周部に、滴下されたレジストの盛り上がり部を形成する第1の塗布ステップと、第1の塗布ステップに続いて、ウエハを中心軸のまわりで回転させながら、レジストの滴下位置を中心部からウエハの外周部に向けて変化させて、ウエハにレジストを滴下する第2の塗布ステップと、を有している。
【0009】
レジストはまずウエハの中心部に滴下され、ウエハの回転によってウエハの外周部に拡散していく。この工程によってウエハの中心部が全体的にレジストに覆われ、中心部における未塗布部分が発生しにくくなるとともに、外周部に盛り上がり部が形成される。レジストが外周部に向けて拡散していく際には、レジストはウエハ表面の凸部でトラップされやすいため、この時点ではウエハの中心部と外周部を除く範囲には未塗布部分が生じている可能性が高い。次に、ウエハを回転させ、滴下位置を変えながらレジストを滴下することによって、ウエハの中心部と外周部を除く部位の未塗布部分もレジストで覆われやすくなる。これは、レジストを中心部から滴下する際に形成されたレジストの軌跡とは全く別の軌跡に沿ってレジストが移動していくためである。しかも、第1の塗布ステップにおいてウエハの外周部に盛り上がり部が形成されているので、レジストがウエハ外に流出するおそれも少ない。このため、ウエハの全域がむらなくレジストで覆われる。
【0010】
第2の塗布ステップは、レジストの滴下が終了した後さらにウエハを中心軸のまわりで回転させることによって、滴下されたレジストを拡散させることを含んでいることが望ましい。これによって、レジストの拡散がさらに促進され、ウエハ上のレジストの未塗布部分がさらに減少する。
【0011】
第2の滴下ステップに続いて、ウエハを、中心軸のまわりで回転させることによって、レジストの膜厚を調整する膜厚調整ステップを有していてもよい。
【0012】
膜厚調整ステップにおけるウエハの回転数は第2の滴下ステップにおけるウエハの回転数よりも大きくすることが望ましい。これによって、レジストのウエハ外周方向への拡散を促進し、所望の膜厚を得ることが容易となる。
【0013】
第1の塗布ステップは、レジストの滴下が終了した後ウエハの回転数を上げることによって、滴下されたレジストを外周部に拡散させることを含んでいてもよい。また、第1の塗布ステップは、ウエハを静止させた状態でレジストを滴下させることと、レジストの滴下が終了した後ウエハを回転させることによって、滴下されたレジストを外周部に拡散させることと、を含んでいてもよい。
【0014】
第2の塗布ステップは、レジストの滴下位置を中心部からウエハの外周部まで連続的に変化させることを含んでいることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば凹凸のあるウエハ表面にレジストを均一にむらなく形成する方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、一般的なハードディスク装置に用いられる薄膜磁気ヘッドの製造方法において、読込み素子に係る部分の積層工程を図1〜12を参照して説明する。各図は図x(a)が平面図(ここで、xは図番(x=1〜12)。以下同様。)、図x(b)が図x(a)中xb−xb線で切断した断面図、図x(c)が図x(a)中xc−xc線で切断した断面図、図x(d)が図x(a)中xd−xd線で切断した断面図である。また、実際のウエハには多数の素子が形成されるが、各図では一つの素子の部分だけを切り出して示している。
【0017】
(ステップ1)まず、図1に示すように、アルティックからなる基板1の上にアルミナからなる絶縁層2を成膜する。センサー素子11(図8参照)はESD(Electro-Static Discharge)によるダメージから防護される必要がある。そこで、センサー素子11と基板1とを等電位にするため、センサー素子11を上下から包囲する下部磁気シールド層7および上部磁気シールド層16と基板1との間にプラグ8b,17b(図12参照)を設ける。そのための一手順として、絶縁層2上にレジスト3を形成し、プラグ8b,17bの形成される部位にフォトパターン4bを形成する。同様に、書き込みヘッド(図示せず)もESDによるダメージから防護される必要がある。そこで、書き込みヘッドと基板1とを等電位にするため、書き込みヘッドと基板1との間にもプラグ8a,17a(図12参照)を設けることが望ましい。そのための一手順として、プラグ8a,17aの形成される部位にフォトパターン4aを形成する。
【0018】
(ステップ2)次に、図2に示すように、イオンミリング、RIE(Reactive Ion Etching)、ウェットエッチングなどを用いて絶縁層2にホール5a,5bを形成する。その後、NMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)や一般的な有機溶剤を用いて、フォトレジスト3を絶縁層2から剥離する。
【0019】
(ステップ3)次に、図3に示すように、センサー素子11の下部磁気シールド層7を形成するため、スパッタ、蒸着法などを用いてシード層6を成膜する。
【0020】
(ステップ4)次に、図4に示すように、フォトレジストにてパターンフレーム31を形成した後、電気めっきにより、センサー素子11が形成される部位の下方に下部磁気シールド層7を形成する。このとき同時に、ホール5a,5b内およびその上方にもプラグ8a,8bを形成する。その後、上記と同様の方法によってパターンフレーム31をシード層6から剥離する。
【0021】
(ステップ5)次に、図5に示すように、下部磁気シールド層7とプラグ8bとを結ぶ領域に、フォトレジストを用いてマスキングカバーパターン9を形成する。これは、下部磁気シールド層7とプラグ8bとを等電位にするためにシード層6の一部をシャントパターンとして残し、かつその他の部分を除去するためである。
【0022】
(ステップ6)次に、図6に示すように、シード層6のうち、マスキングカバーパターン9、下部磁気シールド層7、またはプラグ8a,8bで覆われていない部分を、イオンミリング等を用いて除去する。
【0023】
(ステップ7)次に、図7に示すように、アルミナからなる絶縁層9をスパッタ等によって成膜し、その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて、絶縁層9、下部磁気シールド層7、およびプラグ8a,8bの頂面を平坦化する。
【0024】
(ステップ8)次に、図8に示すように、センサー素子11およびリード部12を形成する。センサー素子11は十数種類の積層膜よりなる読み込みセンサーである。リード部12はセンサー素子11にセンス電流を供給するための導体である。基板1と書き込みセンサーとを等電位にするためのシャント用パターン13もこの段階で形成する。
【0025】
(ステップ9)次に、図9に示すように、アルミナ等からなる層間絶縁膜14を形成し、ホール5a,5bと同様のホール35a,35bを形成する。次にシード層6と同様のシード層15をスパッタ等で成膜する。その後フォトレジストでパターンフレーム32を形成し、電気めっきにより、センサー素子11が形成された部位の上方に上部磁気シールド層16を形成する。このとき同時に、ホール35a,35b内およびその上方にもプラグ17a,17bを形成する。その後、上記と同様の方法によってパターンフレーム32をシード層15から剥離する。
【0026】
(ステップ10)次に、図10に示すように、上部磁気シールド層16とプラグ17bとを結ぶ領域に、フォトレジストを用いてマスキングカバーパターン18を形成する。これは、上部磁気シールド層16とプラグ17bとを等電位にするために、シード層6の一部をシャントパターンとして残すためである。同様に、プラグ17b近傍にフォトレジストを用いてマスキングカバーパターン19,20を形成する。これは、書き込み素子を基板1と等電位にするために、プラグ17b近傍のシード層6の一部をシャントパターンとして残すためである。
【0027】
(ステップ11)次に、図10に示すように、イオンミリング等を用いて、マスキングカバーパターン18〜20でカバーされていない部分のシード層15を除去する。
【0028】
(ステップ12)最後に、図12に示すように、アルミナからなる絶縁層21をスパッタ等により成膜し、その後、CMPを用いて絶縁層21およびプラグ17a,17bの頂面を平坦化する。その後、従来技術を用いて、引き続き書き込みヘッド部分を形成していく。
【0029】
以上の製作工程において、レジストが塗布されるステップはステップ1,4,5,9,10と多く存在している。これらのステップのうち、ステップ5はプラグ8a,8bが突出しており、ステップ10ではプラグ17a,17bが突出しており、ウエハ表面の凹凸が大きい状態でレジストを塗布する必要がある。そのため、従来技術を用いてレジストを塗布すると、ウエハ外周面に向かうレジストの流れがウエハ表面の凸部(プラグ8a,8b,17a,17b)に妨害され、均等に塗布されないという問題を生じる。
【0030】
本発明の実施形態においては、これらのステップにおいてレジストは以下のような多重スキャン方法に従って塗布される。表1は、本発明の実施形態によるレジスト塗布方法の手順を示す表である。表2は、本実施形態と対比するための、従来技術によるレジストの塗布方法を示す表である。各表で網掛けを施した部分が互いに異なる工程である。図13は、表1のステップc〜gに対応したウエハの状況を示す概念図である。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
(ステップa)まず、ウエハWを所定のウエハホルダー(図示せず)に搬入する。ウエハホルダーはウエハWを回転可能に保持するとともに、レジストをウエハ表面に塗布するための装置であり、従来の設備をそのまま利用することができる。レジストRを供給するノズル25は原点(待機位置)にあり、ウエハWも静止している。ウエハWがステップ5の状態にある場合は、薄膜磁気ヘッドの読込み素子は後工程で形成される。ウエハがステップ10の状態にある場合は、多数の読込み素子がすでに形成された状態にある。以下のステップはウエハがいずれの状態にある場合でも同様に適用することができる。
【0034】
(ステップb)次に、ウエハWがウエハホルダーに装着された状態で、ノズル25をウエハWの中心部に移動させる。
【0035】
(ステップc:第1の塗布ステップ)次に、図13(a)に示すように、一回目のレジスト滴下をウエハ中心部に対しておこなう。具体的には、ウエハの中心部にレジストRを滴下しながら、ウエハWを中心軸Cのまわりで低速で回転させることによって、レジストRを遠心力でウエハWの外周部へ拡散させていく。ウエハWの回転数は100rpm以下が好ましい。あまり回転数を高くするとレジストRがウエハWの外周部から落下してしまうためである。しかし、あまり低速回転であると、レジストRの径方向への拡散が十分に得られず、後述する盛り上がり部41が形成されにくくなる。ウエハWを静止させた状態でレジストRを滴下してもよく、この場合もレジストRの滴下量が増えていくに従って、レジストRは徐々にウエハWの外周部へ拡散していく。ウエハWを静止させた状態でレジストRを滴下すると、レジストが比較的長時間ウエハW中心部に滞留するので、中心部に未塗布部が生じにくくなり、レジストを均一に塗布することができる。なお、ステップc〜gのステップは一連の操作であり、連続的に実施してもよいし、間隔をおいて実施してもよい。
【0036】
(ステップd)次に、図13(b)に示すように、レジストの滴下が終了した後、回転数をそのまま数秒から十数秒保持することで、中心部に塗布されたレジストRをウエハW外周部へとさらに拡散させていく(スプレッド回転)。ステップcよりウエハWの回転数を上げてもよい。外周部に到達したレジストRは表面張力によってウエハWの外周部に保持される。その後も同一の回転数を保持することにより、外周部に向けて引き続き拡散していくレジストRは外周部で保持され、ウエハWの外周部に、レジストRがウエハ中心部より厚く溜まったクラウン(盛り上がり部41)が形成される。ウエハWの回転数はレジストRの拡散を促し盛り上がり部41が形成され、かつウエハWの外周からのレジストRの流出が生じないように設定することが望ましく、具体的には100rpm以内とするのがよい。本ステップは、ウエハWの外周部に盛り上がり部41を形成することを目的とする。したがって、レジストRが拡散していく経路となるウエハWの中間部(中心部と外周部の中間領域)は、レジストRがウエハ上のプラグ8a,8bまたはプラグ17a,17bにトラップされ、レジストRが未塗布の部位も存在している可能性がある。なお、ステップcでウエハWを静止させた状態でレジストRを滴下させた場合は、レジストRの滴下が終了した後ウエハWを回転させることによって、滴下されたレジストRを外周部に拡散させる。
【0037】
(ステップe:第2の塗布ステップ)次に、図13(c)に示すように、ウエハWを中心軸Cのまわりで回転させながら、レジストRの滴下位置を中心部からウエハWの外周部に向けて変化させて、ウエハWにレジストRを滴下する。レジストRの滴下位置がステップcと異なっているため、レジストはステップcとは異なる拡散経路を辿ることができる。このため、未塗布部分にレジストRが直接滴下されやすく、直接滴下されない場合でも、近傍の塗布されたレジストRと表面張力で結合しやすくなる。さらに、外周部分に集約していたレジストRと新たに供給されたレジストRとが表面張力で結びつく効果も期待できる。このように、第2の塗布ステップによって未塗布部分が一層解消されていく。ウエハWの回転数は滴下されたレジストを拡散させるためステップdと同程度が望ましい。
【0038】
レジストRの滴下位置は中心部から外周部に向けて離散的に(ステップ状に)変化させてもよいが、中心部からウエハWの外周部まで連続的に変化させるほうが、ウエハWの全域に、より一層均等にレジストRを滴下することができるので好ましい。この場合、レジストRはらせん状の経路で滴下されるため、ウエハWの各角度位置においてレジストの滴下された部分と滴下されない部分とが混在している。しかし、レジストRはウエハWの回転により外周部に向かって移動するので、レジスト間の未滴下領域にも拡散されていく。
【0039】
ステップdにおいてノズル25はウエハWの中心部にあるので、ノズル25は中心部から外周部に向かって移動させるほうが好ましいが、外周部から中心部に向けて移動させることも可能である。さらに、中心部から外周部への動きを複数回繰返したり、中心部と外周部との間を往復運動させるなど、ノズルの移動パターンは適宜設定することができる。その際、レジストの滴下位置をノズルの移動毎に変えれば、未塗布部分を解消する効果は一層高められる。
【0040】
(ステップf)次に、図13(d)に示すように、レジストの滴下が終了した後さらにウエハWを中心軸のまわりで回転させることによって、滴下されたレジストRを拡散させる。ステップeの終了時においてもレジストRはウエハWのほぼ全域に拡散されているが、まだ未塗布部分が残っている可能性がある。本ステップではさらにウエハWの回転数を上げることによってレジストRの拡散を促し、未塗布部分を解消する。ステップeでレジストRを追加塗布しているので、盛り上がり部41はさらに高く形成されている。従って、ウエハ回転数をさらに増加してもレジストRがウエハWから流出するおそれは小さい。そこで、ウエハ回転数は100rpm以上とすることが好ましい。ステップfの終了時には、ウエハ上には、盛り上がり部41をダムとして、盛り上がり部41の内側にレジストRが均等な膜厚で形成され、かつ未塗布部分も従来技術とくらべて大きく解消され、または完全に解消された状態となっている。
【0041】
(ステップg:膜厚調整ステップ)次に、図13(e)に示すように、ウエハWを中心軸Cのまわりで回転させることによって、レジストRの膜厚を調整する。レジストRは遠心力によってさらにウエハWの外周側に拡散していき、外周部以外のレジストRの膜厚は減少していく。すでにウエハWの全域にレジストRが塗布されているので、レジストRが剥離するおそれはなく、膜厚は全体的に減少していく。本ステップはステップfで代用することもできる。なお、本ステップはレジストRの外周部への移動を目的とするので、少なくともステップfと同等(100rpm以上)、またはそれ以上の回転数とすることが望ましい。具体的な回転数は所望の膜厚に応じて決定することが望ましい。
【0042】
これに対して、表2に示す従来技術の塗布方法によれば、ステップa,bは本実施形態と同様であるが、ステップc’でレジストを滴下し、ステップe’でレジストを拡散させるためのスプレッド回転を行っているだけである。この方法では、ステップc’でウエハ中心のまわりにレジストが塗布され、その後のウエハの回転によってレジストが外周に移動する。その際レジストは径方向に延びる多数の線状の拡散ルートに沿って放射状に拡散していくが、いったん拡散ルートができでしまうと、レジストの滴下量を増加しても最初についた軌跡を追従していくので、ウエハの全域に行き渡ることは難しい。
【0043】
一方、本実施形態では第1回目の滴下はウエハの中心におこない、第2回目の滴下はウエハの中心から連続的に外周方向に位置を変えながらおこなうので、第2回目に滴下されたレジストは既存の軌跡に拘束されずに拡散し、未塗布部分にも有効に塗布される。しかも、第1回目の滴下においてウエハ外周に盛り上がり部41が形成されているので、拡散したレジストと盛り上がり部41を構成するレジストとが表面張力で結合し、外周部近傍の未塗布部分にも有効に塗布される。第1回目の滴下はウエハの中心に対しておこなっているので、未塗布部分や膜厚の不足部分の発生しやすいウエハ中央部にもレジストがむらなく形成される。盛り上がり部41はダムとしても機能するので、滴下したレジストをウエハ内に無駄なく滞留させることができ、ウエハ全面がレジストで覆われた状態が形成される。その後、所望の膜厚となるようにウエハ回転数を制御することで、ウエハ全面を所定の膜厚のレジストで覆うことが可能になり、パターン欠陥の発生を有効に防止することができる。
【0044】
以上、薄膜磁気ヘッドの製造工程におけるウエハへのレジスト形成方法を述べたが、本方法は薄膜磁気ヘッドの製造工程だけでなく、一般の半導体装置の製造工程においても、ウエハ表面に凹凸がある状態でレジストを形成する場合に同様に適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図3】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図4】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図5】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図6】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図7】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図8】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図9】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図10】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図11】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図12】薄膜磁気ヘッドの読込み素子に係る部分の積層工程を示す概念図である。
【図13】表1のステップc〜gに対応したウエハの状況を示す概念図である。
【図14】スピンコーティング法を用いたレジストの塗布方法を示す概念図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 絶縁層
3 レジスト
6,15 シード層
7 下部磁気シールド層
8a,8b プラグ
9,18,19,20 マスキングカバーパターン
11 センサー素子
12 リード部
13 シャント用パターン
16 上部磁気シールド層
17a,17b プラグ
25 ノズル
31,32 パターンフレーム
41 盛り上がり部
W ウエハ
R レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの中心部にレジストを滴下した後、またはウエハの中心部にレジストを滴下しながら、前記ウエハを該ウエハの中心軸のまわりで回転させることによって、該ウエハの外周部に、滴下された前記レジストの盛り上がり部を形成する第1の塗布ステップと、
前記第1の塗布ステップに続いて、前記ウエハを前記中心軸のまわりで回転させながら、レジストの滴下位置を前記中心部から該ウエハの外周部に向けて変化させて、該ウエハにレジストを滴下する第2の塗布ステップと、
を有する、ウエハへのレジスト形成方法。
【請求項2】
前記第2の塗布ステップは、前記レジストの滴下が終了した後さらに前記ウエハを前記中心軸のまわりで回転させることによって、滴下された前記レジストを拡散させることを含む、請求項1に記載のレジスト形成方法。
【請求項3】
前記第2の滴下ステップに続いて、前記ウエハを、前記中心軸のまわりで回転させることによって、前記レジストの膜厚を調整する膜厚調整ステップを有する、請求項1または2に記載のレジスト形成方法。
【請求項4】
前記膜厚調整ステップにおける前記ウエハの回転数は前記第2の滴下ステップにおける前記ウエハの回転数よりも大きい、請求項3に記載のレジスト形成方法。
【請求項5】
前記第1の塗布ステップは、前記レジストの滴下が終了した後前記ウエハの回転数を上げることによって、滴下された前記レジストを前記外周部に拡散させることを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のレジスト形成方法。
【請求項6】
前記第1の塗布ステップは、
前記ウエハを静止させた状態で前記レジストを滴下させることと、
前記レジストの滴下が終了した後前記ウエハを回転させることによって、滴下された前記レジストを前記外周部に拡散させることと、
を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のレジスト形成方法。
【請求項7】
前記第2の塗布ステップは、前記レジストの滴下位置を前記中心部から該ウエハの外周部まで連続的に変化させることを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のレジスト形成方法。
【請求項8】
前記ウエハは、薄膜磁気ヘッドの読込み素子が多数形成された、または形成されるべきウエハである、請求項1から7のいずれか1項に記載のレジスト形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−108838(P2008−108838A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288944(P2006−288944)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【出願人】(504320086)新科技研有限公司 (17)
【氏名又は名称原語表記】SAE Technologies(H.K.)Limited
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre,6 Science Park East Avenue,Hong Kong Science Park,Shatin,N.T.,Hong Kong
【Fターム(参考)】