説明

ウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置

【課題】長期にわたって、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部にグリースを供給して、潤滑不良を防止することができるウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ハウジング11と、ハウジング11により軸受を介して支持されるウォーム20と、ウォーム21に噛み合うウォームホイール21とを備え、ウォーム20とウォームホイール21の噛み合い部Aは、ハウジング11内に充填されたグリースにより潤滑されるウォーム減速機14において、ウォームホイール21の回転軸と同心に、ウォームホイール21の上端面に隣接して、第1プーリ61が設けられ、ウォームホイール21の歯部より径方向外側で、回転軸に平行な軸のまわりに回転自在に支持される第2プーリ62が設けられており、第1プーリ61と第2プーリ62がベルトを介して連結され、ベルト60がハウジング11とわずかな隙間を介して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーム減速機は、ウォームとウォームホイールを螺合させて、電動モータを駆動させると、ウォームとウォームホイールの歯数の違いにより、電動モータの回転を減速するとともに出力を増幅するものである。例えば、自動車用のコラム型電動パワーステアリング装置では、電動モータの回転を、ウォーム減速機により、ウォームからウォームホイールに伝えることで、減速するとともに出力を増幅した後、操舵軸に付与することで、ステアリング操作をトルクアシストしている。このウォームとウォームホイールの噛み合い部は、ハウジング内に供給されるグリースにより潤滑されている。
【0003】
ウォームとウォームホイールの噛み合いにおいて、ウォームの歯は螺旋方向に沿うため、ウォームの回転にともない、グリースがウォームの端部に向かい流動する。これにより、ウォームを支持する軸受近傍にグリースが滞留し、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部のグリースが不足し、潤滑不良を生じるという問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された従来技術では、ウォームの回転にともないウォームの端部に向かって流動するグリースの流動方向を、ウォームホイールの外周に導くように変更する案内部材が設けられている。この案内部材は、ウォームを囲む周壁を有する筒形状となっており、一端が周壁の内部に対向し、他端がウォームホイールの外周に対向するグリース流路が形成されている。この構成により、グリース流路を介して、ウォームの端部に向かって流動するグリースを、ウォームホイールの外周に導かれるようにして滞留を防ぎ、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部のグリースが不足するのを防止している。(特許文献1の図2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−29057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウォームとウォームホイールとの噛み合いにおいて、グリースはウォームを支持する軸受近傍に滞留するだけでなく、ウォームホイールの上下方向にも掻き出されて滞留している。これは、グリースがウォームホイールの下方向に掻き出された場合、重力によりハウジング内に落下することにより、循環して再使用されるが、ウォームホイールの上方向に掻き出された場合、ウォームホイールの上端面及びウォームホイール上端面に対向する軸受側面に滞留するためである。これにより、長期にわたる使用において、循環されずに滞留するグリース量が増加することで、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部のグリースが不足し、潤滑不良を生じるという問題があった。このような潤滑不良は、ウォーム及びウォームホイールの焼き付きによる破損等、耐久性を低下させる。また、電動パワーステアリング装置においては、円滑なトルクアシストを阻害するために操舵フィーリングを低下させる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、長期にわたって、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部にグリースを供給して、潤滑不良を防止することができるウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために提供される請求項1に記載の発明は、ハウジングと、前記ハウジングにより軸受を介して支持されるウォームと、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備え、前記ウォームとウォームホイールの噛み合い部は、前記ハウジング内に充填されたグリースにより潤滑されるウォーム減速機において、前記ウォームホイールの回転軸と同心に、前記ウォームホイールの上端面に隣接して、第1プーリが設けられ、前記ウォームホイールの歯部より径方向外側で、前記回転軸に平行な軸のまわりに回転自在に支持される第2プーリが設けられており、前記第1プーリと前記第2プーリがベルトを介して連結され、前記ベルトが前記ハウジングとわずかな隙間を介して配置されることを特徴とする。
【0009】
本請求項のウォーム減速機は、ウォームホイールが回転すると、第1プーリが回転し、第1プーリと第2プーリとの間に巻き掛けられたベルトが、回転するウォームホイール上端面の上を移動する。ウォームホイール上端面とベルトとの隙間は小さくされているので、ウォームホイールの回転とともに、ウォームホイール上端面に滞留したグリースは、ベルトと接触し、上記隙間からはみ出たグリースが、ベルトに掻き出される。ベルトは移動しているので、掻き出されたグリースは、ベルトの外周面に付着して移動する。ベルトはウォームホイールの径方向外方へ移動し、ウォームホイールの歯部の外側に位置する、ハウジング側面を通過する。このハウジング側面とベルトとの間の隙間は小さくされているので、ベルトに付着したグリースは、ハウジング側面と接触し、上記隙間からはみ出たグリースが、ハウジング側面に掻き出される。
【0010】
上記問題点を解決するために提供される請求項2に記載の発明は、請求項1記載のウォーム減速機において、前記第2プーリの直径は、前記第1プーリの直径よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
本請求項のウォーム減速機は、第2プーリの直径が、第1プーリの直径よりも小さいため、第1プーリと第2プーリとの間に巻き掛けられたベルトは、ウォームホイールの径方向に対し、斜め方向に移動する。ウォームホイールの回転により、ウォームホイールの径方向内方から外方へと移動するベルトは、ウォームホイールの径方向に対し、斜め方向に移動するので、グリースをウォームホイール上端面に滞留させることなく、効率的に径方向外方へと移動させることができる。
【0012】
上記問題点を解決するために提供される請求項3に記載の発明は、請求項1記載のウォーム減速機において、前記ベルトの外周面には、突起部又は溝部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本請求項のウォーム減速機は、ベルトの外周面に突起部又は溝部が設けられているので、ウォームホイール上端面に滞留したグリースを効率的に掻き出して、ベルトに付着させて移動することができる。
【0014】
上記問題点を解決するために提供される請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウォーム減速機において、前記回転軸と前記第1プーリとが、ワンウェイクラッチを介して取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本請求項のウォーム減速機は、第1プーリの回転軸にワンウェイクラッチが取り付けられているので、第1プーリと第2プーリとの間に巻き掛けられたベルトは、ウォームホイールの回転方向によらず、一方向にのみ移動する。これにより、ベルトとウォームホイールの歯部の径方向外側のハウジング側面との隙間、すなわち、ベルトに付着したグリースを掻き出す場所が1箇所に限定されるので、掻き出したグリースを1箇所に集めることができる。1箇所に集められたグリースは、容易に流動して、重力方向下方に位置するウォームケース内に溜ることができる。
【0016】
上記問題点を解決するために提供される請求項5に記載の発明は、電動モータの動力を、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウォーム減速機を介して操舵機構に伝達することを特徴とする。
【0017】
本請求項の電動パワーステアリング装置は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウォーム減速機を備えているので、長期にわたって、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部にグリースを供給して、潤滑不良を防止することができる。従って、長期にわたって、円滑な操舵補助力を伝達するとともに、操舵フィーリングを低下させない電動パワーステアリング装置を作ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長期にわたって、ウォームとウォームホイールとの噛み合い部にグリースを供給して、潤滑不良を防止することができるウォーム減速機及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態のウォーム減速機が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図。
【図2】図1のII‐II線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るウォーム減速機が適用された電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図2は、図1のII‐II線に沿う断面図である。
【0021】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1では、ステアリングホイール等の操舵部材2を取り付けている第1操舵軸3と、ピニオン軸4に連結される第2操舵軸5とが、トーションバー6を介して同軸的に連結されている。ピニオン軸4の端部近傍に形成されたピニオン歯4aに、車両の左右方向に延びる転蛇軸としてのラックバー7のラック歯7aが噛み合っており、ピニオン軸4及びラックバー7からなるラックアンドピニオン機構によって操舵機構が構成されている。
【0022】
ラックバー7は、車体に固定されるハウジング(図示せず)内に直線往復動自在に支持されていて、ハウジング(図示せず)の外側に突出するラックバー7の両端部にはそれぞれタイロッド8が結合されている。各タイロッド8、は対応するナックルアーム9を介して、対応する操向輪10に連結されている。第1及び第2操舵軸3、5を支持するハウジング11は、例えば、アルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング11は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング12と、筒状のギヤハウジング13とにより構成されている。具体的には、ギヤハウジング13の上端13aが、センサハウジング12の外周の環状段部12aに嵌め合わされている。ギヤハウジング13は、ウォームギヤ機構からなるウォームギヤ減速機14を収容し、センサハウジング12はトルクセンサ15及び制御基板16等を収容している。
【0023】
ウォーム減速機14は、第2操舵軸5の軸方向中間部に、一体回転可能でかつ軸方向移動を不能に連結されたウォームホイール21と、図2に示すように、電動モータMの回転軸17に、例えば、スプライン継手18等の継手機構を介して、一体回転可能に連結されたウォーム20とを備える。ギヤハウジング13内において、ウォーム20およびウォームホイール21は、噛み合い領域Aにて噛み合っている。
【0024】
ウォームホイール21は、第2操舵軸5に相対回転不能に結合される環状の芯金21aと、芯金21aの周囲を取り囲んで芯金21aに一体回転可能かつ相対回転不能に結合され、かつ外周に複数の歯(図示せず)が形成された合成樹脂部材21bとを備える。芯金21aは、例えば、合成樹脂部材21bの樹脂成形時に金型内にインサートされるものである。なお、ウォームホイール21の上端面は平坦となるように、芯金21a及び合成樹脂部材21bは形成されている。
【0025】
第2操舵軸5は、ウォームホイール21を軸方向の上下に挟んで配置される第1及び第2転がり軸受22、23により回転自在に支持されている。第1転がり軸受22の外輪24は、センサハウジング12下端の筒状突起12b内に設けられた軸受保持孔25に嵌め入れられて保持されている。また、外輪24の上端面は環状の段部26に当接しており、外輪24は、センサハウジング12に対する軸方向上方への移動が規制されている。
【0026】
一方、第1転がり軸受22の内輪27は、第2操舵軸5に締まりばめにより嵌め合わされている。また、内輪27の下端面は、ウォームホイール21の芯金21aの上端面に当接している。第2転がり軸受23の外輪28は、ギヤハウジング13の軸受保持孔29に嵌め入れられている。外輪28の下端面は、環状の段部30に当接し、外輪28は、ギヤハウジング13に対する軸方向下方への移動が規制されている。
【0027】
一方、第2転がり軸受23の内輪31は、第2操舵軸5に一体回転可能で、かつ第2操舵軸5に対する軸方向移動を規制された状態に取り付けられている。また、内輪31は、第2操舵軸5の段部32と、第2操舵軸5のねじ部に締めこまれるナット33との間に挟持されている。トーションバー6は、第1及び第2操舵軸3、5を貫通している。トーションバー6の上端6aは、連結ピン34により、第1の操舵軸3と一体回転可能に連結され、下端6bは、連結ピン35により、第2操舵軸5と一体回転可能に連結されている。第2操舵軸5の下端は、中間軸(図示せず)を介して、ピニオン軸4に連結されている。
【0028】
上記の連結ピン34は、第1操舵軸3と同軸に配置される第3の操舵軸36を、第1の操舵軸3と一体回転可能に連結している。第3操舵軸36は、ステアリングコラムを構成するチューブ37内を貫通している。第1操舵軸3の上部は、例えば、針状ころ軸受からなる第3転がり軸受38を介してセンサハウジング12に回転自在に支持されている。第1操舵軸3の下部の縮径部39と、第2操舵軸5の上部の孔40とは、第1及び第2操舵軸3、5の相対回転を所定の範囲に規制するように、回転方向に所定の遊びを設けて嵌め合わされている。
【0029】
なお、電動パワーステアリング装置1は、車体に取り付けられた状態において、ウォームギヤ減速機14は、ウォーム20及び電動モータM部分を重力方向下側にして、第1操舵軸3を上方に、第2操舵軸5を下方にして斜め方向に配置されている。
【0030】
次に、図2に示すように、ウォーム20は、ギヤハウジング13により保持される第4及び第5転がり軸受43、44により、それぞれ回転自在に支持されている。第4及び第5転がり軸受43、44の内輪45、46は、ウォーム20の対応するくびれ部に嵌合されている。また、外輪47、48は、ギヤハウジング13の軸受保持孔49、50に、それぞれ保持されている。
【0031】
ギヤハウジング13は、ウォーム20の周面の一部に対して径方向に対向する部分13bを含んでいる。(以下、この部分をウォームケース13cという)また、ウォーム20の一端部20aを支持する第4転がり軸受43の外輪47は、ギヤハウジング13の段部51に当接して位置決めされている。一方、内輪45は、ウォーム20の位置決め段部52に当接することによって、他端部20b側への移動が規制されている。
【0032】
また、ウォーム20の他端部20b(継手側端部)の近傍を支持する第5転がり軸受44の内輪46は、ウォーム20の位置決め段部54に当接することによって、一端部20a側への移動が規制されている。また、外輪48は、予圧調整用のねじ部材55により、第4転がり軸受43側へ付勢されている。ねじ部材55は、ギヤハウジング13に形成されるねじ孔56にねじ込まれることにより、一対の転がり軸受43、44に予圧を付与するとともに、ウォーム20を軸方向に位置決めしている。予圧調整後のねじ部材55を固定するために、ねじ部材55にロックナット57が係合されている。
【0033】
ギヤハウジング13内において、ウォーム20及びウォームホイール21の噛み合い領域Aを含む領域に、グリースが充填されている。そして、第1転がり軸受22の内輪27の下端面とウォームホイール21の上端面との間の第2操舵軸5に、第1プーリ61が嵌め合わせられている。ウォームホイール21の外周の合成樹脂部材21bの外側には、半円筒形状の第2プーリハウジング65が形成されており、第2プーリハウジング65内に、第2操舵軸5と平行な軸のまわりに、回転自在に第2プーリ62が支持されている。第2プーリハウジング65は、第1プーリ61の方向に対して開口部を有しており、この開口部とギヤハウジング13の内周面との間には、エッジ部64が形成されている。第2プーリの直径は、第1プーリの直径よりも小さい。第1プーリ61と第2プーリ62の間には、第2プーリハウジング65の開口部を通り、ベルト60が巻き掛けられている。ベルト60の側面とウォームホイール21上端面との間には、わずかな隙間を有しており、ベルト60の外周面とエッジ部64との間にも、わずかな隙間が形成されて配置されている。
【0034】
上記構成によれば、操舵によりウォームホイール21は回転し、この回転にともない、ウォーム20とウォームホイール21とが噛み合い、グリースはウォームホイールの上下方向に掻き出される。ウォームホイール21の下方向に掻き出されたグリースは、重力によりハウジング11内に落下し、ウォームケース13c内に溜ることにより、循環して再使用される。ウォームホイール21の上方向に掻き出されたグリースは、ウォームホイール21の上端面に滞留する。
【0035】
ここで、ウォームホイール21の回転とともに第1プーリ61が回転し、第1プーリ61と第2プーリ62との間に巻き掛けられたベルト60が、回転するウォームホイール21上端面の上を移動する。ウォームホイール21上端面とベルト60との隙間は小さくされており、ウォームホイール21上端面は平坦に形成されているので、ベルト60との隙間の大きさは一様となっている。これにより、ウォームホイール21の回転とともに、ウォームホイール21上端面に滞留したグリースは、ベルト60と接触し、上記隙間からはみ出たグリースが、ベルト60に掻き出される。ベルト60は移動しているので、掻き出されたグリースは、ベルト60の外周面に付着して移動する。なお、第2プーリ62の直径は、第1プーリ61の直径よりも小さいため、第1プーリ61と第2プーリ62との間に巻き掛けられたベルト60は、ウォームホイール21の径方向に対し、斜め方向に移動する。ウォームホイール21の上端面を、径方向内方から外方へ、かつ、ウォームホイール21の径方向に対し、斜め方向に移動するベルト60は、グリースをウォームホイール21上端面に滞留させることなく、効率的に径方向外方へと移動させることができる。
【0036】
次に、ベルト60はウォームホイール21の径方向外方へと移動し、ウォームホイール21の歯部の外側に位置する、第2プーリハウジング65のエッジ部64の側面を通過する。このエッジ部64とベルト60の外周面との間の隙間は小さくされているので、ベルト60の外周面に付着したグリースは、エッジ部64と接触し、上記隙間からはみ出たグリースが、エッジ部64に掻き出される。エッジ部64に掻き出されグリースは、エッジ部64の周辺に落下し、近傍のウォームホイール21の歯部に潤滑を供給するとともに、ハウジング11内に溜まる。
【0037】
なお、ウォームホイール21の上端面を、径方向内方から外方へ移動したベルト60は、第2プーリ62を通過すると、移動方向を逆にして、ウォームホイール21の上端面を、径方向外方から内方へと移動する。このとき、ベルト60の外周面に付着したグリースは、すでにエッジ部64に掻き出されているので、ウォームホイール21の上端面にグリースを戻してしまうことはない。図2では、ウォームホイール21の回転方向をCとした場合の、ベルト60の移動方向D1,D2を示している。
【0038】
ハウジング11内に溜まったグリースは、一旦ウォームケース13c内に溜り、ウォーム20の回転により、ウォーム20の歯面に付着して、ウォーム20とウォームホイール21との噛み合い部に、再度グリースを供給することができる。
【0039】
このように、本発明のウォーム減速機14は、ウォームホイール21上端面に付着して滞留状態のグリースが効率的に回収されて、グリースとして再使用されることにより、グリースを切れることなく循環させることができる。このため、本発明のウォーム減速機14は、長期にわたって、ウォーム20とウォームホイール21との噛み合い部にグリースを供給して、潤滑不良を防止することができる。そして、本発明のウォーム減速機14を備えることにより、長期にわたって、円滑な操舵補助力を伝達するとともに、操舵フィーリングを低下させない電動パワーステアリング装置1を作ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:電動パワーステアリング装置、
2:操舵部材、 3:第1操舵軸、
4:ピニオン軸(操舵機構)、 4a:ピニオン歯、
5:第2操舵軸、 6:トーションバー、 6a:上端、
7:ラックバー、 7a:ラック歯、 8:タイロッド、
9:ナックルアーム、 10:操向輪、 11:ハウジング、
12:センサハウジング、 13:ギヤハウジング、
13a:上端、 13b:内周面、 13c:ウォームケース、
14:ウォーム減速機、
15:トルクセンサ、 16:制御基板、 17:回転軸、
18:スプライン継手、 20:ウォーム、 20a:一端部、
20b:他端部(継手側端部)、 21:ウォームホイール、
21a:芯金、 21b:合成樹脂部材、
22:第1転がり軸受、 23:第2転がり軸受、
24:外輪、 25:軸受保持孔、 26:段部、 27:内輪、 28:外輪、
29:軸受保持孔、 30:段部、 31:内輪、 32:段部、 33:ナット、
34:連結ピン、 35:連結ピン、 36:第3操舵軸、 37:チューブ、
38:第3転がり軸受、 39:縮径部、 40:孔、
43:第4転がり軸受、 44:第5転がり軸受、
45:内輪、 46:内輪、 48:外輪、 49:軸受保持孔、
50:軸受保持孔、 51:段部、 52:位置決め段部、 54:位置決め段部、
55:ねじ部材、 56:ねじ孔、 57:ロックナット、
60:ベルト、 61:第1プーリ、 62:第2プーリ、 63:回転軸、
64:エッジ部、 65:第2プーリハウジング
A:噛み合い領域、 M:電動モータ、
C:回転方向、 D1,D2:移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングにより軸受を介して支持されるウォームと、
前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備え、
前記ウォームとウォームホイールの噛み合い部は、
前記ハウジング内に充填されたグリースにより潤滑されるウォーム減速機において、
前記ウォームホイールの回転軸と同心に、前記ウォームホイールの上端面に隣接して、第1プーリが設けられ、
前記ウォームホイールの歯部より径方向外側で、前記回転軸に平行な軸のまわりに回転自在に支持される第2プーリが設けられており、
前記第1プーリと前記第2プーリがベルトを介して連結され、前記ベルトが前記ハウジングとわずかな隙間を介して配置される
ことを特徴とするウォーム減速機。
【請求項2】
請求項1記載のウォーム減速機において、
前記第2プーリの直径は、前記第1プーリの直径よりも小さい
ことを特徴とするウォーム減速機。
【請求項3】
請求項1記載のウォーム減速機において、
前記ベルトの外周面には、突起部又は溝部が設けられている
ことを特徴とするウォーム減速機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウォーム減速機において、
前記回転軸と前記第1プーリとが、ワンウェイクラッチを介して取り付けられている
ことを特徴とするウォーム減速機。
【請求項5】
電動モータの動力を、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウォーム減速機を介して操舵機構に伝達する
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−207737(P2012−207737A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74653(P2011−74653)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】