説明

エアバッグ装置

【課題】車体側とエアバッグ側との間を非接触状態で結合した場合に、接続されるべきエアバッグを車体側から確認可能なエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からエアバッグ側に非接触で伝送可能なエアバッグ装置であって、エアバッグ側Sは、エアバッグ側Sが有するエアバッグの固有情報を保有するRFICタグ150を備える。車体側Vは、エアバッグの固有情報と照合するための認証用固有情報を記憶する記憶手段130と、RFICタグ150が返信するエアバッグの固有情報を受信可能な無線通信部140と、受信したエアバッグの固有信号と認証用固有情報とを照合する制御部120と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のエアバッグ装置に関する。特に、衝突しそうな場合の車両状態に応じるエアバッグ装置であって、膨張を開始する電気的検知器を含むエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が前面から衝突した際に生じる衝撃が一定値以上に達した場合に、シートベルトの働きを補助して乗員に加わる衝撃を軽減するエアバッグ装置が知られている。例えば、自動車にエアバッグ装置を搭載する場合に、自動車の衝突を検知して作動する衝撃センサ及びエアバッグ作動電源を車体側に配置し、エアバッグ駆動制御部およびエアバッグをステアリング側に配置している。
【0003】
このようなエアバッグ装置を搭載した自動車は、自動車が何らかの物体に衝突した場合、衝撃センサの作動によって衝撃センサから衝突検知信号が出力される。出力された衝突検知信号は車体側からステアリング側に伝送される。ステアリング側に伝送された衝突検知信号は、エアバッグ駆動制御部に伝えられ、エアバッグを展開する。
【0004】
ところで、自動車の車体側に配置される各構成部品はその配置位置が固定的であるが、ステアリング側に配置された各構成部品はステアリングの回転操作に対応して、その配置位置が回転移動するため、車体側とステアリング側とを電気的に接続する場合、ケーブルリールによる接続や非接触カップラ手段等による恒久的接続が用いられていた。
【0005】
これらの恒久的接続は、各種の部品が必要であった。又、配線がわずらわしく、車体側とステアリング側とを電気的に接続し、所定の個所に各種の部品を取り付けるのに多くの工数を要していた。
【0006】
前述の問題を解決するために、車体側機構とステアリング側機構との間を非接触状態で結合した場合に、ステアリング側機構に配置した電力蓄積用コンデンサに常時電力を蓄積させることを可能にしたステアリング装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−114067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、エアバッグ装置はステアリング側、すなわち運転席に設けられると共に、エアバッグ装置が助手席に設けられる場合がある。更には、サイドエアバッグ装置が設けられる場合もある。このような複数のエアバッグ装置が設けられる車両に対して、特許文献1による装置は、車体側機構とステアリング側機構との間を非接触状態で結合しているので、接続されるべきエアバッグを車体側から確認することが困難である。接続されるべきエアバッグを車体側から確認できることが好ましい。そして、このことが本発明の課題といってよい。
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、車体側とステアリング側との間を非接触状態で結合した場合に、接続されるべきエアバッグを車体側から確認可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のようなエアバッグ装置を提供する。
【0010】
(1) エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からエアバッグ側に非接触で伝送可能なエアバッグ装置であって、前記エアバッグ側は、当該エアバッグ側が有するエアバッグの固有情報を保有するRFICタグを備え、前記車体側は、前記エアバッグの固有情報と照合するための認証用固有情報を記憶する記憶手段と、前記RFICタグが返信する前記エアバッグの固有情報を受信可能な無線通信部と、受信した前記エアバッグの固有信号と前記認証用固有情報とを照合する制御部と、を備えるエアバッグ装置。
【0011】
(1)の発明によるエアバッグ装置は、エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からエアバッグ側に非接触で伝送可能なエアバッグ装置であって、エアバッグ側は、エアバッグの固有情報を保有するRFICタグを備え、車体側は、エアバッグの固有情報と照合するための認証用固有情報を記憶する記憶手段と、RFICタグが返信するエアバッグの固有情報を受信可能な無線通信部と、受信したエアバッグの固有信号と認証用固有情報とを照合する制御部と、を備えているので、車体側とエアバッグ側との間を非接触状態で結合した場合に、接続されるべきエアバッグを車体側から容易に確認できる。
【0012】
(2) 前記制御部は、車体側のイグニッションスイッチがオンされると、前記記憶手段に記憶された前記認証用固有情報を読み取り、前記無線通信部を介して前記エアバッグの固有情報を受信して前記固有信号と前記認証用固有情報とを照合する(1)記載のエアバッグ装置。
【0013】
(2)の発明によるエアバッグ装置は、車体側とエアバッグ側との間を非接触状態で結合した場合に、車体側のイグニッションスイッチがオンされると、接続されるべきエアバッグを車体側から容易に確認できる。
【発明の効果】
【0014】
発明によるエアバッグ装置は、車体側とエアバッグ側との間を非接触状態で結合した場合に、接続されるべきエアバッグを車体側から容易に認証できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明によるエアバッグ装置の一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。図2は、前記実施形態によるエアバッグ装置の部分構成図である。図3は、前記実施形態によるエアバッグ装置のステアリング側の部分斜視分解組立図である。
【0017】
図1において、本発明によるエアバッグ装置は、車両側Vには、衝撃センサ110と、制御部120と、記憶手段130と、無線通信部140と、インバータ手段160と、を備えている。又、ステアリング側Sには、RFICタグ150と、整流手段180と、電力蓄積用コンデンサ200と、点火回路210と、スクイブ220と、を備えている。インバータ手段160と整流手段180は電磁カップリング手段170で非接触に結合されている。制御部120と、記憶手段130及びインバータ手段160は車載LAN400で相互に接続されている。
【0018】
図1において、衝撃センサ110は、車両に加えられた衝撃が予め定められた値を越えた場合に作動信号を発生する。この作動信号は制御部120に送出され、制御部120からインバータ手段160と電磁カップリング手段170を介して、点火回路210に伝送され、蓄電手段である電力蓄積用コンデンサ200に蓄えられている電力がスクイブ220に供給される。スクイブ220に電力が加えられると、直ちにエアバッグ内の火薬が点火してエアバッグが展開する。なお、衝撃センサ110による作動信号は、インバータ手段160から整流手段180へ伝送するときに、後述する電力と周波数を変えている。
【0019】
図1において、通常は車両に備え付けられたバッテリーである直流電源にインバータ手段160が接続され、直流が低周波(通常300HZ以下)の交流に変換される。変換された交流は電磁カップリング手段170により、ステアリング側Sに交流電力が伝送される。伝送された電力は整流手段180により直流に整流され、電力蓄積用コンデンサ200に充電される。通常の状態では、電力蓄積用コンデンサ200には充電された状態で待機している。
【0020】
このように、発明によるエアバッグ装置は、エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からステアリング側に非接触で伝送可能としている。したがって、配線がわずらわされることなく、車体側とステアリング側とを電気的に接続し、所定の個所に各種の部品を取り付けるのに多くの工数を要することも低減される。
【0021】
更に、図1において、RFICタグ150は、当該ステアリング側Sが有するエアバッグの固有情報を保有している。RFICタグ150は、アンテナ152と図示されない制御回路及び電源用コンデンサを内蔵している。無線通信部140から特定の周波数が発信されると、アンテナ152で受信した電磁波から電力を得て制御回路で整流して、電源用コンデンサに充電し、制御回路の動作用電源となると共に、RFICタグ150内の固有情報(例えば、内部に記憶された識別子)をアンテナ152から返信する。
【0022】
図1において、記憶手段130は、エアバッグの固有情報と照合するための認証用固有情報を記憶している。認証用固有情報は、例えば、符号化された識別子である。無線通信部140は、RFICタグ150が返信するエアバッグの固有情報を受信可能としている。
【0023】
図1において、制御部120は、図示されないイグニッションスイッチをオンすると、記憶手段130に記憶された認証用固有情報を読み取り、かつRFICタグ150が保有するエアバッグの固有情報を無線通信部140が受信し、受信したエアバッグの固有信号と認証用固有情報とを照合する。そして、接続されるべきエアバッグを車体側から容易に確認できる。
【0024】
例えば、接続されるべきエアバッグが異なっていた場合は、表示器に警報表示してもよく、警報音を発信してもよく、警報表示と警報音を併用してもよい。又、本発明によるエアバッグ装置は、製造ラインにおける検査工程に役立てることもできる。
【0025】
図2及び図3は、前記構成品の一部の実体的な構成を示しており、図2及び図3において、RFICタグ150は、円盤状の形状となっており、RFICタグ150の直下に電力蓄積用コンデンサ200が配置されている。電力蓄積用コンデンサ200は、エアバッグの動作の信頼性を高めるために、1次ナノキャパシタ202と2次ナノキャパシタ204との2つのコンデンサにより構成されている。図3の実施形態において、1次及び2次ナノキャパシタ202・204は、ナノテクノロジーを用い、従来のキャパシタよりも蓄電効率、エネルギー密度を高めたものであり、狭い空間にて高容量のコンデンサを実現することができる。
【0026】
図2及び図3において、1次ナノキャパシタ202と2次ナノキャパシタ204との間には、点火回路210が配置されている。又、電力蓄積用コンデンサ200の下部には充電用回路が配置されている。充電回路も信頼性を高めるために充電回路192と充電回路194との2つの充電回路により構成されている。点火回路210の信号は静電気や電磁波による誤動作を防止するためにフェライトコア212を介してエアバッグ収納体300の中に収められたスクイブ220に接続されている。
【0027】
なお、本発明による実施形態において、車体側から認証されるエアバッグはステアリングに備えられているとして説明したが、本発明によるエアバッグ装置のエアバッグは、ステアリングに備えられるものに限定されることなく、インパネに備えられる助手席用のエアバッグやシートに備えられるサイドエアバッグなど、全てのエアバッグに適用できる。
【0028】
又、本発明による実施形態において、イグニッションスイッチをオンすると、接続されるべきエアバッグを車体側から容易に確認できるとしたが、イグニッションスイッチがオンされた時だけではなく、イグニッションスイッチがオンされた後にエアバッグが取り外されたことや、別の部品が取り付けられたことを判定するために、エアバッグに備わるRFICタグが保有する固有情報と認証用固有情報とを常時照合してもよい。そして、この照合結果を警報表示してもよい。
【0029】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるエアバッグ装置の一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】前記実施形態によるエアバッグ装置の部分構成図である。
【図3】前記実施形態によるエアバッグ装置のステアリング側の部分斜視分解組立図である。
【符号の説明】
【0031】
120 制御部
130 記憶手段
140 無線通信部
150 RFICタグ
S ステアリング側
V 車体側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを作動する電力及びエアバッグの作動信号を車体側からエアバッグ側に非接触で伝送可能なエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ側は、当該エアバッグ側が有するエアバッグの固有情報を保有するRFICタグを備え、
前記車体側は、前記エアバッグの固有情報と照合するための認証用固有情報を記憶する記憶手段と、前記RFICタグが返信する前記エアバッグの固有情報を受信可能な無線通信部と、受信した前記エアバッグの固有信号と前記認証用固有情報とを照合する制御部と、を備えるエアバッグ装置。
【請求項2】
前記制御部は、車体側のイグニッションスイッチがオンされると、前記記憶手段に記憶された前記認証用固有情報を読み取り、前記無線通信部を介して前記エアバッグの固有情報を受信して前記固有信号と前記認証用固有情報とを照合する請求項1記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−62492(P2007−62492A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249246(P2005−249246)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】