エアバッグ装置
【課題】補助室の内圧を低く設定することができ、しかも、より広範囲に亘って各種エアバッグ装置においても適用することができ、乗員をソフトに拘束することができるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグを乗員の頭部を拘束する第2気室を有する第2バッグ部と乗員の腹部等を拘束する第1バッグ部とから構成し、第2バッグ部の基端部側には、第2気室を支持し第2気室と隔壁によって画成された第1気室を設ける。隔壁には、第1気室と第2気室とを連通させる通孔を形成する。エアバッグ内の内圧としては、第1バッグ部の内圧を高圧にし、第1気室の内圧を中圧、第2気室の内圧を低圧に設定する。これにより、乗員の頭部をソフトに拘束することができる。
【解決手段】エアバッグを乗員の頭部を拘束する第2気室を有する第2バッグ部と乗員の腹部等を拘束する第1バッグ部とから構成し、第2バッグ部の基端部側には、第2気室を支持し第2気室と隔壁によって画成された第1気室を設ける。隔壁には、第1気室と第2気室とを連通させる通孔を形成する。エアバッグ内の内圧としては、第1バッグ部の内圧を高圧にし、第1気室の内圧を中圧、第2気室の内圧を低圧に設定する。これにより、乗員の頭部をソフトに拘束することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置は、車両の衝突時にエアバッグの気室が膨張展開することで、乗員を拘束して乗員に対する安全性の向上を目的として用いられている。また、エアバッグ装置としては、運転席用のエアバッグ装置、助手席用のエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、後部座席用のエアバッグ装置等として、各種のエアバッグ装置が提案され、また、実用化されている。
【0003】
エアバッグ装置における機能としては、色々な機能が求められているが、乗員の衝撃エネルギーを十分に吸収することができ、しかも、乗員の拘束をソフトに行うことができる機能を備えたエアバッグ装置の提案が行われている。乗員をソフトに拘束することができるエアバッグ装置として、本願出願人は、既に、エアバッグ及びエアバッグ装置(特許文献1参照)を提案している。
【0004】
特許文献1に記載されたエアバッグ及びエアバッグ装置を、本願発明の従来例として図21を用いて説明する。図21に示すように、エアバッグ装置50は、基端部側から乗員側の中央下部にかけて主室51を配し、乗員側の中央上部には補助室52を配した構成になっている。主室51と補助室52とは、連通部53を介して連通した構成になっている。
【0005】
エアバッグの膨張展開時には、インフレータ57からの膨張ガスによって主室51が高圧となるように設定されており、補助室52は、主室51に比べて低圧となるように設定されている。また、補助室52は、テザーベルト54によりエアバッグ装置50の基端部側に連結されている。そして、補助室52は、一つの主室51によって支えられている構成になっている。
【0006】
このように構成することによって、車体(インストルメントパネル)との間に高圧室となった主室51を介在させることができる。そして、低圧となっている補助室52を主室51で支えておくことができる。このように、主室51で支えられている補助室52によって、乗員の頭部55をソフトに拘束することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−221912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたエアバッグ装置50では、補助室52はテザーベルト54によってエアバッグ装置50の基部側に連結してある。しかも、補助室52を一つの主室51で支えている構成になっている。主室51は、主室51の上部において補助室52を支持する機能を担っているが、同時に乗員の腹部56を拘束する役目を担っている。そのため、主室51の内圧としては、補助室52だけを支えておくときの内圧よりも高圧になっている。
【0009】
そのため、乗員をソフトに拘束できるように、補助室52の内圧を低く設定しておこうとしても、低くできる補助室52の内圧の下限値はある程度高めに設定されることになる。即ち、乗員をソフトに拘束できるように、補助室52の内圧を低く設定し過ぎると、補助室52を押し潰した乗員の頭部は主室51で拘束されることになる。そのため、補助室52の内圧を
あまり下げた状態に設定しておくことはできない。しかも、主室51の内圧とバランスさせながら補助室52の内圧を設定するには、高度な圧力チューニングを必要とし、開発コスト、ひいては製造コストを押し上げる要因になり得る。
【0010】
本願発明は、特許文献1に記載したエアバッグ装置の改良を図り、補助室の内圧を低く設定することができ、しかも、より広範囲に亘って各種エアバッグ装置においても適用することができ、乗員をソフトに拘束することができるエアバッグ装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の課題は、請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明のエアバッグ装置は、膨張用ガスを発生するインフレータと、インフレータからのガスを受け入れて膨張するエアバッグと、を備え、前記エアバッグは、インフレータからの膨張用ガスを受け入れて膨張展開を行う第1バッグ部及び第2バッグ部を有し、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室間は、画成され、前記両先端部側気室の結合により乗員拘束面が構成され、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部が、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した前記先端部側気室である第2気室とを有し、前記第1気室と前記第2気室とは、隔壁によって画成され、前記隔壁には、前記第1気室と前記第2気室とを連通する通孔が形成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第1バッグ部内の内圧と前記第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧に設定され、かつ、前記第1気室内の内圧が、前記第2気室内の内圧よりも高圧に設定されていることを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記第1気室及び前記第2気室は、前記第2バッグ部に構成され、前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と前記第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力が、前記第1バッグ部内の内圧から前記第1気室内の内圧、次に前記第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定されていることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本願発明では、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部は、それぞれ前記第1気室及び前記第2気室を有し、前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の第2気室と前記第2バッグ部の第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2バッグ部の第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力として、前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、
前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定されてなることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記第1バッグ部と前記第2バッグ部とは、それぞれ互いに独立した外壁部を有し、膨張展開時に前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との間に空間部が形成されてなることを主要な特徴としている。
【0015】
また、本願発明では、一つインフレータからの膨張ガスが、前記第1バッグ部及び前記
第2バッグ部に分配されてなることを主要な特徴としている。
【0016】
更に、本願発明では、画成された前記第1バッグ部の先端部側気室と前記第2バッグ部の先端部側気室とが、両者を画成する隔壁に形成した連通孔を介して連通し、前記第1バッグ部の先端部側気室内に供給された膨張ガスの一部が、前記連通孔を通って前記第2バッグ部の先端部側気室に流入してなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、画成された第1バッグ部と第2バッグ部とにより、各バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室同士を互いに結合して乗員拘束面を構成している。しかも、第1バッグ部及び第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部の構成として、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した第2気室とを有する構成にしている。
【0018】
第1気室と第2気室とを画成する隔壁には、通孔が形成されており両気室間を連通している。そして、エアバッグが膨張展開したときにおける第1バッグ部内の内圧と第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧となるように設定しており、しかも、第1気室内の内圧が第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定している。
【0019】
このように構成されているので、第1バッグ部と第2バッグ部とにより乗員を拘束する乗員拘束面を構成することができ、しかも、第2気室で乗員の頭部を拘束する構成にすることができる。このように第1気室と第2気室とからなる二重構造の気室で乗員の頭部を拘束することができる。そして、乗員の頭部を最もソフトに拘束することができるように、乗員の頭部を拘束する気室を割り当てることができる。
【0020】
また、乗員拘束面は、独立した第1バッグ部と第2バッグ部とにより構成されているので、乗員の頭部を拘束する第2気室を、例えば、第2バッグ部に構成した場合には、この第2気室を第1気室と第1バッグ部とによって支持することができる。このように、第2気室を第2バッグ部とは独立した第1バッグ部でも支持することができるので、特許文献1に記載されたエアバッグ装置のように補助室を主室だけで支持している場合に比べて、第1気室の内圧を高圧に設定しなくてもよい。
このように構成することができるので、乗員の頭部を最もソフトに拘束することができるようになる。
【0021】
第1気室及び第2気室は、第2バッグ部に構成しておくことも、第1バッグ部及び第2バッグ部にそれぞれ構成しておくこともできる。第1気室及び第2気室を第2バッグ部に構成した場合には、乗員拘束面を第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と第2気室とを結合させることにより構成しておくことができる。
【0022】
そして、第2気室で乗員の頭部を拘束させることができ、エアバッグが膨張展開したときのエアバッグ内の圧力としては、第1バッグ部内の内圧から第1気室内の内圧そして第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定しておくことができる。
【0023】
即ち、第2気室の内圧を乗員の頭部をソフトに拘束する低圧に設定することができ、しかも、第2気室を第1バッグ部と共に支持している第1気室の内圧を中圧に設定し、第1バッグ部の内圧を高圧に設定することができる。
【0024】
そして、高圧に設定した第1バッグ部で第2気室を支持することができるので、第1気室の内圧を可能な限り低めに設定することができる。また、第1気室では、乗員の頭部を拘束した第2気室の変形を支持することができる。このように、第1気室を第1バッグ部
に比べて中圧に設定することができるので、第2気室及び第1気室による乗員の頭部の拘束は、最もソフトな拘束となるようにすることができる。
【0025】
第1気室及び第2気室を、第1バッグ部及び第2バッグ部にそれぞれ構成した場合には、乗員拘束面を第1バッグ部の第2気室と第2バッグ部の第2気室とを結合させることにより構成しておくことができる。そして、第1バッグ部及び第2バッグ部のうち一方のバッグ部における第2気室、例えば、第2バッグ部の第2気室で乗員の頭部を拘束させることができる。
【0026】
このとき、エアバッグが膨張展開したときのエアバッグ内の圧力としては、第1バッグ部の第1気室内の内圧が、第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧となるように設定し、第1バッグ部の第2気室内の内圧が、第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0027】
そして、第1バッグ部の第1気室内の内圧が、第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定し、第2バッグ部の第1気室内の内圧が、第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0028】
このように構成することにより、第2バッグ部の第2気室を4つの気室の中で一番低圧に設定することができ、乗員の頭部をソフトに拘束することができる。また、第1バッグ部の第2気室における内圧は、第1バッグ部の第1気室における内圧よりも低圧に設定されているので、第1バッグ部の第2気室で拘束する乗員の部位、例えば、乗員の腹部をソフトに拘束することができる。
【0029】
また、第1バッグ部の第2気室は、乗員の頭部よりも質量が大きな乗員の部位を拘束することになるので、第2バッグ部の第2気室の内圧よりも第1バッグ部の第2気室の内圧を高めに設定しておくことが望ましい。
【0030】
第1バッグ部の外壁部と第2バッグ部の外壁部とは、それぞれ互いに独立した外壁部として構成しておくことができ、膨張展開時には第1バッグ部と第2バッグ部との間に空間部を形成することができる。
【0031】
このように構成することにより、乗員が膨張展開した第1バッグ部及び第2バッグ部に当接すると、第1バッグ部及び第2バッグ部は乗員を拘束するために変形を行うが、空間部によって第1バッグ部及び第2バッグ部のそれぞれの変形を、他方のバッグ部の変形による影響が少ない状態で変形できる。
【0032】
第1バッグ部及び第2バッグ部を膨張展開させる膨張ガスを発生するインフレータとしては、一つのインフレータを使用する構成にしておくことも、第1バッグ部と第2バッグ部に対してそれぞれ専用のインフレータを配設した構成にしておくこともできる。一つのインフレータを使用する構成では、一つのインフレータで発生した膨張ガスを第1バッグ部及び第2バッグ部に分配する流路を構成しておくことができる。
【0033】
複数のインフレータを使用するよりも一つのインフレータからの膨張ガスを分配する方が、インフレータの配設個数が減った分、インフレータの取り付けに関係する部品点数を少なくすることができ、占有スペースを抑え、コンパクト化を図ることができる。そして、コストの低減を図ることができる。
【0034】
本願発明では、第1バッグ部の先端部側気室と第2バッグ部の先端部側気室とを連通孔を介して連通した構成にすることができる。そして、他方の先端部側気室に比べて高圧状
態になっている一方の先端部側気室に供給された膨張ガスの一部を、連通孔を通って低圧状態である他方の先端部側気室に流入させることができる。
【0035】
また、低圧状態である他方の先端部側気室のバッグ形状を迅速に形成することができる。即ち、低圧状態である他方の先端部側気室は、乗員の頭部を拘束する第2気室として構成することができる。このとき、第2気室の基端部側に配される第1気室の内圧は、中圧状態になるので、第1気室から供給される膨張ガスで第2気室を膨張展開させると、第2気室を膨張させるのに時間を要することになるが、高圧状態になっている一方の先端部側気室に供給された膨張ガスの一部を利用して、第2気室を展開させることができ、第2気室の内圧が所定圧に達するまでの時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】エアバッグが膨張展開した状態の概略図を示すエアバッグ装置の断面図である。(実施例1)
【図2】図1のA方向から見た要部斜視図である。(実施例1)
【図3】エアバッグの屈曲状態を示す要部斜視図である。(実施例1)
【図4】他のエアバッグの屈曲状態を示す要部斜視図である。(実施例1)
【図5】エアバッグの縦断面図である。(実施例2)
【図6】一方のメイン基布パネルとインナーチューブの一方を構成する基布パネルとを平面状に広げた平面図である。(実施例2)
【図7】インナーチューブを構成する一対の基布パネルの縫着状態を示す図である。(実施例2)
【図8】他方のメイン基布パネルと隔壁パネルとの縫着状態を示す断面図である。(実施例2)
【図9】一対のメイン基布パネル間に隔壁パネルを縫着した状態を示す断面図である。(実施例2)
【図10】一対のメイン基布パネルの縫着状態を示す平面図である。(実施例2)
【図11】図10のXI−XI断面図である。(実施例2)
【図12】図10のXII−XII断面図である。(実施例2)
【図13】図10のXIII−XIII断面図である。(実施例2)
【図14】図10のXIV−XIV断面図である。(実施例2)
【図15】他方のメイン基布パネル側が内側に来るように屈曲させた状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図16】一対のメイン基布パネルの自由端側を互いに縫着した状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図17】他の構成における一対のメイン基布パネルを示す平面図である。(実施例2)
【図18】エアバッグが膨張展開した状態を示すエアバッグ装置の概略断面図である。(実施例3)
【図19】エアバッグの縦破断面図である。(実施例3)
【図20】エアバッグ装置の基端部を示す要部縦破断面図である。(実施例3)
【図21】エアバッグが膨張展開した状態の概略図を示すエアバッグ装置の断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるエアバッグ装置の構成として、助手席用エアバッグ装置及び運転席用エアバッグ装置を例に挙げて説明するが、本願発明のエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、後部座席用のエアバッグ装置等に対しても好適に適用することができる。そのため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0038】
尚、以下の説明において、実施例1と実施例2は、助手席用のエアバッグ装置に関する構成例であり、実施例3は、運転席用のエアバッグ装置に関する構成例を示している。
【実施例1】
【0039】
図1は、助手席用のエアバッグ装置1の断面図を示しており、エアバッグ10を膨張展開させたとき、膨出したエアバッグ10と乗員5との位置関係を示している。図2、図3に示すように、エアバッグ10は膨張展開時には、筒状体の両端を重ね合わせた形状に構成されており、エアバッグ10は、第1バッグ部18と第2バッグ部19とを有した構成になっている。
【0040】
エアバッグ装置1は、インストルメントパネル3内に収納されており、通常は裏面側に形成した溝状の破断予定線において開裂して開く蓋によって外部に露呈しないように収納されている。車両の衝突時等において、エアバッグ装置1のインフレータ6が作動すると、インフレータ6で発生した膨張ガスが、エアバッグ10内に供給されてエアバッグ10は膨張展開を開始する。エアバッグ10の膨張展開によって、エアバッグ装置1を覆っていたインストルメントパネルフェイシアが扇状に開いて、エアバッグ10はフロントガラス2の内面に沿いながら、フロントシート4に座している乗員5側に向かって膨張展開することができる。尚、図示例では、乗員5を拘束しているシートベルトの図示は省略している。
【0041】
エアバッグ10は、乗員5の腹部5bや胸部5cを主として拘束する第1バッグ部18と乗員5の頭部5aを拘束する第2バッグ部19とを備えている。第1バッグ部18と第2バッグ部19とは、隔壁パネル15によって画成されている。
【0042】
第2バッグ部19は、膨張方向の先端部側気室として構成され、乗員5の頭部5aが接触する第2気室19bと、エアバッグ装置1の基端部側気室として構成された第1気室19aとを有し、隔壁パネル16によって第1気室19aと第2気室19bとが画成された構成になっている。隔壁パネル16には、第1気室19aと第2気室19bとを連通させる通孔16aが形成されている。
【0043】
そして、第1バッグ部18と第2バッグ部19の第2気室19bとは、隔壁パネル15に形成した連通孔15aを介して連通している。また、第2気室19bには、第2気室19b内のガスを外部に排出するベントホール9が形成されている。ベントホール9を第2気室19bに形成した構成例を示しているが、ベントホール9は必要な部位に適宜数形成することができる。
【0044】
図2、図3に示すように、エアバッグ10は、乗員拘束面パネルを構成する第1メイン基布パネル11と、裏面側に配される第3メイン基布パネル13と、第1メイン基布パネル11の両側縁と第3メイン基布パネル13の両側縁とをそれぞれ縫製して接続する一対の第2メイン基布パネル12と、により筒状に形成されている。
【0045】
そして、筒状のエアバッグ10内には、第1バッグ部18と第2バッグ部19とを画成する隔壁パネル15と、第2バッグ部19において第1気室19aと第2気室19bとを画成する隔壁パネル16が縫製によって取り付けられている。第1バッグ部18及び第2バッグ部19が膨張展開したときには、第1バッグ部18と第2バッグ部19との間には、空間部45が形成される。そして、第1バッグ部18の膨張方向の先端部側気室と第2気室19bとによって、乗員拘束面46を構成している。
【0046】
乗員5が膨張展開した第1バッグ部18及び第2バッグ部19に当接すると、第1バッグ部18及び第2バッグ部19は乗員を拘束するために変形を行うが、空間部45が形成されていることにより、第1バッグ部18及び第2バッグ部19の変形を、それぞれ他方のバッグ部の変
形による影響が少ない状態で変形することができる。
【0047】
隔壁パネル15に形成した連通孔15aの形成数及び孔の開口面積は、第1バッグ部18から第2バッグ部19の第2気室19bに流入するガス量を調整することができる構成であれば、適宜の孔数、適宜の開口面積に形成しておくことができる。また、隔壁パネル16に形成した通孔16aの形成数及び孔の開口面積は、第1気室19aから第2気室19bに流入するガス量を調整することができる構成であれば、適宜の孔数、適宜の開口面積に形成しておくことができる。
【0048】
エアバッグ10の一端部側には、インフレータ6からの膨張ガスを導入するガス導入口11aが形成されており、ガス導入口11a内には膨張ガスを第1バッグ部18と第2バッグ部19とに分配するインナーチューブ39が配設されている。インナーチューブ39は、第1バッグ部18と第2バッグ部19にそれぞれ供給できる膨張ガスの流量が、第2バッグ部19に供給される流量よりも第1バッグ部18に供給される流量の方が多くなるように、流路径が構成されている。
【0049】
エアバッグ10の両端部には、それぞれ縫製代38aが形成されており、各縫製代38aを重ね合わせた状態で両端部間を縫製することで、図4に示すように両端部間を結合させることができる。これにより、内部にインナーチューブ39を備えたエアバッグ10を構成できる。
【0050】
これにより、インフレータ6で発生した膨張ガスをガス導入口11aからインナーチューブ39を介して、第1バッグ部18と第2バッグ部19内に供給することができる。インナーチューブ39の構成により、第1バッグ部18には第2バッグ部19に供給する膨張ガスの流量に比べて多く膨張ガスを供給することができ、第1バッグ部18の内圧は、第2バッグ部19の第1気室19aにおける内圧よりも高圧にできる。そして、第2気室19b内には最初に第1気室19aからの膨張ガスが通孔16aを通って供給され、その後、第1バッグ部18の膨出方向における先端部側気室18bから連通孔15aを通った膨張ガスが第2気室19b内に供給されることになる。
【0051】
そして、乗員5の頭部5aを第2気室19bによって拘束することができる。このとき、第1バッグ部18内の内圧が高圧となるように設定することができ、第2バッグ部19の第1気室19aの内圧が中圧となるように設定することができ、第2気室19bの内圧が低圧となるように設定することができる。
【0052】
そして、第2気室19bは、第1気室19aで支持されるとともに第1バッグ部18によっても支持されている構成になっている。そのため、第2気室19bの内圧を多少低く設定しても、第1バッグ部18でも第2気室19bを支持しておくことができるので、多少低く設定した第2気室19bを乗員5の頭部5aによって押し潰されたとしても、乗員5の頭部5aは第1気室19aと第1バッグ部18とによって拘束することができる。
【0053】
また、第1バッグ部18には第2バッグ部19よりも多くの流量の膨張ガスが供給されるので、第1バッグ部18の膨張展開に伴って第2気室19bの展開を助成することができ、しかも、連通孔15aを通った膨張ガスが第2気室19b内に供給されることで、第2気室18bの膨張展開を迅速に行うことができる。そして、高圧状態になっている第1バッグ部18によって、乗員5の頭部5aよりも質量が大きな腹部5bや胸部5c等を拘束することができる。
【0054】
図4は、実施例1の変形例を示す斜視図であり、エアバッグ10の構成としては、図3で示した場合と同様に筒状のエアバッグ10を環状に形成している。図1では、第1バッグ部18の基端部側気室18aと膨張方向の先端部側気室18bとは、途中に仕切りがない状態でそのまま連通した構成を示しているが、図4で示す実施例1の変形例では、第1バッグ部18内
が、隔壁パネル17によって、基端部側気室18aと膨張方向の先端部側気室18bとが画成された構成になっている。隔壁パネル17に形成した通孔17aによって、第1気室となった基端部側気室18aと第2気室となった先端部側気室18bとは連通した構成になっている。
【0055】
他の構成は、図1、図2で示したエアバッグ10と同様の構成になっている。そのため、図1、図2で示したエアバッグ10と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。また、ガス導入口11a内には不図示のインナーチューブが配設されており、この不図示のインナーチューブは、図3に示したインナーチューブ39と同様に構成されている。即ち、ガス導入口11aから導入された膨張ガスが、第2バッグ部19よりも第1バッグ部18に多く供給されるように不図示のインナーチューブは構成されている。
【0056】
このように構成することによって、第1バッグ部18も第1気室となった基端部側気室18aと第2気室となった先端部側気室18bとを有する構成にすることができる。そして、エアバッグ10の膨張展開時には、第1バッグ部18の第1気室18aの内圧が、第2バッグ部19の第1気室19aの内圧よりも高圧となるように設定することできる。そして、第1バッグ部18の第2気室18bの内圧が、第2バッグ部19の第2気室19bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0057】
また、第1バッグ部18における第1気室18aと第2気室18bとの関係は、エアバッグ10の膨張展開時には、第1気室18aの内圧が第2気室18bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。更に、第2バッグ部19における第1気室19aと第2気室19bとの関係は、エアバッグ10の膨張展開時には、第1気室19aの内圧が第2気室19bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0058】
このように構成することによって、乗員5に当接する第2気室18b、19bの内圧を、第1気室18a、19aの内圧に比べてそれぞれ低く設定することができ、乗員5をソフトに拘束することができる。しかも、第2気室18b、19bをそれぞれ支持する第1気室18a、19aの内圧を第2気室18b、19bの内圧よりも高圧に設定することができるので、第2気室18b、19bで確実に乗員5を拘束することができる。
【実施例2】
【0059】
実施例2も助手席用のエアバッグ装置におけるエアバッグ20の構成に関するものであり、特に、エアバッグ20の組立て構成例について、図5〜図17を用いて説明する。尚、実施例1と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。
【0060】
図5は、膨張展開したエアバッグ20の縦断面図を示している。エアバッグ20は、上方側に第1気室27a、第2気室27bを有する第2バッグ部27と下方側に第1バッグ部26を備えた構成になっている。第2気室27bと第1バッグ部26の膨張方向の先端部側気室26bとは画成された構成になっており、第1バッグ部26の膨張先端側と第2バッグ部27の膨張先端側とが、縫製によって結合されている。そして、画成されて当接した第2気室27bと第1バッグ部26の膨張方向の先端部側気室26bとによって、乗員拘束面46が構成されている。第1バッグ部26の基端部側気室26aと先端部側気室26bとは、途中に隔壁が介在されずに連通した状態に構成されている。
【0061】
そして、第1バッグ部26と第2バッグ部27とが膨張展開してときには、第1バッグ部26と第2バッグ部27との間には、空間部45が形成されている。この空間部45が形成されることにより、第1バッグ部26の先端部側気室26b及び第2バッグ部27で乗員5を拘束するときに、第1バッグ部26と第2バッグ部27とが乗員5からの衝撃を吸収して変形する動きを、
それぞれ他方のバッグ部の変形による影響が少ない状態で動くことができる。
【0062】
第1気室27aと第2気室27bとは、隔壁パネル25によって画成されており、隔壁パネル25には、第1気室27aと第2気室27bとを連通させる通孔25aが形成されている。第1気室27aの基端部側における内部及び第1バッグ部26の基端部側における内部には、インフレータ6から供給される膨張ガスを第1気室27a及び第1バッグ部26に分配するインナーチューブ39が配設されている。
【0063】
次に、図6〜図16を用いて、第1バッグ部26及び第2バッグ部27を製造する製造方法を説明する。
尚、この図示例では、第1バッグ部26及び第2バッグ部27における縦方向の中間部分は一定幅で長尺に形成されているので、要部を十分な大きさで表示しながら全体としてコンパクトに描けるように、省略して示している。
【0064】
また、以下で説明する第1バッグ部26及び第2バッグ部27の製造方法は、一つの例示であってエアバッグを製造する公知の製造方法を用いて第1バッグ部26及び第2バッグ部27を製造することは可能である。そのため、以下で説明する製造方法に限定されるものではなく、適宜の製造方法を採用することができる。
【0065】
図6に示すように、エアバッグ20を構成する一方のメイン基布パネル21に、図示せぬインフレータからの膨張ガスを導入するガス導入口21aを形成し、インナーチューブ39を構成する一方のインナーチューブ用パネル23には開口23aを形成する。ガス導入口21aに開口23aを重ね合わせた状態でガス導入口21aの周囲を縫製部38により縫着し、メイン基布パネル21とインナーチューブ用パネル23とを縫い合わせる。
【0066】
インナーチューブ39を構成する他方のインナーチューブ用パネル24をインナーチューブ用パネル23に重ね合わせ、図7に示すように、メイン基布パネル21を折り曲げた状態で、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24との一方側の側縁を縫製部38により縫着する。これを、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24との他方側の側縁についても同様にして行う。
【0067】
尚、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24とを重ね合わせる縫着は、メイン基布パネル21の長手方向に沿って対向して配される一対の側縁に対して行う。これにより、長手方向の両端部は開口した状態にすることができ、インナーチューブ39を構成することができる。そして、長手方向における両端部での開口面積を調整することにより、インナーチューブ39で第1バッグ部26(図15参照)と第2バッグ部27(図15参照)に分配する膨張ガスの流量を調整することができる。
【0068】
次に、エアバッグ20を構成する他方のメイン基布パネル22に、第1気室27aと第2気室27bとを画成する隔壁パネル25を縫製部38により縫着する。隔壁パネル25には、第1気室27aと第2気室27bとを連通させる通孔25aが形成されている。
【0069】
図9に示すように、隔壁パネル25を縫着したメイン基布パネル22を長手方向に折り曲げた状態で、インナーチューブ用パネル23、24を縫着したメイン基布パネル21に重ねて、隔壁パネル25の側縁をメイン基布パネル21に縫着する。そして、図10に示すように、重ね合わせたメイン基布パネル21とメイン基布パネル22の周囲を縫製部38により縫着する。
【0070】
図10におけるメイン基布パネル21とメイン基布パネル22との縫着状態は、XI−XI断面を示す図11、XII−XII断面を示す図12、XIII−XIII断面を示す図13及びXIV−XIV断面を示す図14にそれぞれ示している。即ち、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22
とによって筒状のバッグが形成され、筒状のバッグ内には、ガス導入口21a及び開口23aに連通したインナーチューブ39が構成されている。
【0071】
尚、メイン基布パネル22の端縁を内側に折り曲げた状態で、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22とを縫着した構成を示しているが、メイン基布パネル22の端縁を内側に折り曲げたときに、メイン基布パネル21の側縁を折り曲げた内側に包み込むように縫着することも、メイン基布パネル21の端縁を内側に折り曲げた状態にして縫着することも、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22の端縁を折り曲げずに縫着することもできる。
【0072】
図10に示した状態に構成した後に、メイン基布パネル22が内側に来るように折り曲げて、図15に示す状態にする。その後、エアバッグ20の両端部20a、20bを更に内側に折り曲げて、エアバッグ20の両端部20a、20b同士を縫製部38により縫着する。即ち、図16に示すように、空間部45を有する環状の形状に構成することができる。
【0073】
これにより、第1バッグ部26と第2バッグ部27とは、互いに独立した外壁部を有した構成に形成され、ガス導入口21a及び開口23aから導入される膨張ガスをインナーチューブ39によって、第1バッグ部26と第2バッグ部27とに分配することができる。そして、第2バッグ部27内には、隔壁パネル25で画成された第1気室27aと第2気室27bとを構成することができる。
【0074】
第1気室27aは、第2バッグ部27の基端部側気室として構成され、第2気室27bは、第2バッグ部27の膨張方向の先端部側気室として構成することができる。第1気室27aと第2気室27bとは、隔壁パネル25に形成した通孔25aを介して連通している。
【0075】
第1バッグ部26における基端部側気室26aと膨張方向の先端部側気室26bとは、途中に隔壁が介在されずに連通した構成になっているが、第2バッグ部27と同様に、基端部側気室26aと先端部側気室26bとの間に隔壁を設けて、この隔壁に形成した通孔を介して基端部側気室26aと先端部側気室26bとが連通する構成にしておくこともできる。
【0076】
第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとは、画成された構成になっているが、図16において当接状態になるエアバッグ20の両端部20a、20bの当接面における周囲を縫着等により固定することで、第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとの間に連通孔を形成しておくこともできる。連通孔を形成することにより、第2気室27bよりも高圧状態にした先端部側気室26bから連通孔を介して膨張ガスを第2気室27bに供給させることができる。
【0077】
また、図16において当接状態になるエアバッグ20の両端部20a、20bの当接面における周囲を固定せずに、第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとにそれぞれベントホールを形成しておくこともできる。そして、エアバッグ20の両端部20a、20bが当接状態になったときに、このベントホールが上述した連通孔としての機能を奏させるように構成にすることもできる。そして、ベントホールを連通孔として機能させることにより、第2気室27bよりも高圧状態になっている先端部側気室26bから膨張ガスを、連通孔を通して第2気室27bに供給することができる。
【0078】
そして、第1バッグ部26の内部圧力を、第1気室27aにおける内部圧力よりも高圧となるように設定し、第2気室27bの内部圧力が第1気室27aの内部圧力よりも低圧となるように設定することができる。このように、内部圧力を設定することにより第2気室27bでソフトに乗員5の頭部5a(図1参照)を拘束することができる。しかも、第1バッグ部26では、頭部5aよりも質量のある乗員5の腹部5b(図1参照)や胸部5c(図1参照)を拘束することができる。
【0079】
上記説明では、インナーチューブ39をエアバッグ20内に形成した構成について説明したが、図17(a)、(b)に示すように、インナーチューブを用いない構成にすることもできる。
即ち、メイン基布パネル21に二つのガス導入口41a、41bを形成し、メイン基布パネル21、22間に通孔25aが形成された隔壁パネル25を縫着させ、重ね合わせたメイン基布パネル21、22に対して、二つのガス導入口41a、41bの間で横幅方向に沿った縫着を行うとともに、重ね合わせたメイン基布パネル21、22の周囲を縫着することにより、エアバッグ20を構成することができる。
そして、図16に示すようにエアバッグ20の各両端部を結合することにより側面視がC字状のエアバッグ20を構成することができる。
【0080】
図17(a)におけるb−b断面である図17(b)に示すように、第1バッグ部26と第2バッグ部27とは、二つのガス導入口41a、41bの間に形成した縫製部38によって画成されたバッグ部として構成されることになる。そして、第1バッグ部26に形成したガス導入口41aと第2バッグ部27に形成したガス導入口41bに、それぞれ接続した図示せぬインフレータからの膨張ガスを導入することができる。
【0081】
ガス導入口41aとガス導入口41bとにそれぞれ個別のインフレータを接続する構成の代わりに、ガス導入口41a及びガス導入口41bと一つのインフレータとの間に分岐管を配設し、分岐管を介して一つのインフレータからの膨張ガスをガス導入口41a及びガス導入口41bに導入する構成にしておくこともできる。
【実施例3】
【0082】
実施例3は、運転席用のエアバッグ装置30に関するものであり、図18〜図20を用いて説明する。尚、実施例1と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。
【0083】
運転席用のエアバッグ装置30はステアリングホイール42内に、折り畳まれて収納されており、車両の前面衝突時あるいは衝突を予知した時に、インフレータ6から噴射された膨張ガスによって運転席に搭乗している乗員5の前面を覆うように膨張展開され、乗員5を前方から拘束することができる。
【0084】
図18、図19に示すように、運転席用のエアバッグ装置30では、第1バッグ部31が乗員側から見た正面視でドーナツ状に形成され、第2バッグ部32がドーナツ状の中心部に配された構成に形成されている。第2バッグ部32は、エアバッグ装置30の基端部側に形成された第1気室32aと第2バッグ部32の膨張方向の先端側に形成された第2気室32bを有する構成になっており、第1気室32aと第2気室32bとは、隔壁34によって画成されている。
【0085】
そして、隔壁34に形成した通孔34aを通って、第1気室32aから第2気室32bに膨張ガスを供給することができる。そして、インフレータ6において膨張ガスが発生すると、第1バッグ部31及び第2バッグ部32は、ステアリングホイール42の間から乗員5側に向けて膨張展開することができる。また、第1バッグ部31は、基端部側気室31aを構成する基布パネルと膨張方向の先端部側気室31bを構成する基布パネルとを縫着することにより構成されている。
【0086】
図20に示すように、ベースプレート8には、インフレータ6を取り付けた分岐部材36が固定されており、第1バッグ部31の基端側は、ベースプレート8と分岐部材36とに固定されている。そして、第1バッグ部31の基端側における開口で分岐部材36に形成した第1開口36aを覆うように構成されている。
【0087】
第2バッグ部32の基端側における開口で、分岐部材36に形成した第2開口36bを覆い、インフレータ6で発生した膨張ガスを分岐部材36の第2開口36bを介して第2バッグ部32内に導入することができる。分岐部材36を介して膨張ガスを導入する際、矢印で示すように、第1バッグ部31に導入される導入流量と第2バッグ部32に導入される導入流量とを調整することができる。
【0088】
図20では、第1バッグ部31と第2バッグ部32とは、一つの壁部で画成された構成を示しているが、第1気室32aの外壁部と第1バッグ部31の外壁部とを独立した外壁部として構成し、第1気室32aの外壁部と第1バッグ部31の外壁部との間に空間部を形成しておくこともできる。
【0089】
第1気室32aの膨張方向の先端部側気室31bと第2気室32bとは、一部部位において互いに結合しており、乗員側に向いた先端部側気室31bの面と第2気室32bの面とによって、乗員拘束面46が構成されている。
【0090】
エアバッグの膨張展開時に先端部側気室31bと第2気室32bとが当接する当接面の周囲を縫着等により結合し、この当接面に先端部側気室31bと第2気室32bとを連通する連通孔35aを形成しておくこともできる。連通孔35aとしては、適宜数構成しておくことができる。また、第1バッグ部31の基端部側気室31aに、ベントホール9を形成しておくことができる。
【0091】
図20に示すように、第1バッグ部31に導入される膨張ガスの導入流量は、第2バッグ部32に導入される膨張ガスの導入流量よりも多くの流量が導入することができる。これにより、第1バッグ部31内の内圧を第1気室32aの内圧よりも高圧に設定することができ、第1気室32aの内圧を第2気室32bの内圧よりも高圧に設定することができる。
【0092】
このようにバッグ部内の内圧を設定することができるので、低圧に設定した第2気室32bによって乗員5の頭部5aをソフトに拘束することができる。そして、第2気室32bの支持を中圧状態にした第1気室32aで支持することができ、乗員5の胸部5c等を拘束する第1バッグ部31を高圧状態にすることができる。
【0093】
第1バッグ部31を構成している、基端部側気室31aを構成する基布パネルと膨張方向の先端部側気室31bを構成する基布パネルと縫着部に隔壁を縫着することにより、第1バッグ部31の基端部側気室31aと先端部側気室31bとを、画成した気室として構成することもできる。このとき、基端部側気室31aと先端部側気室31bとを連通させるための通孔を、基端部側気室31aと先端部側気室31bとを画成する隔壁に形成しておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明は、エアバッグ装置に対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1・・・エアバッグ装置、
5・・・乗員、
6・・・インフレータ、
10・・・エアバッグ、
11・・・第1メイン基布パネル、
11a・・・ガス導入口、
12・・・第2メイン基布パネル、
13・・・第3メイン基布パネル、
15・・・隔壁パネル、
16・・・隔壁パネル、
18・・・第1バッグ部、
18a・・・基端部側気室、
18b・・・先端部側気室、
19・・・第2バッグ部、
19a・・・第1気室、
19b・・・第2気室、
20・・・エアバッグ、
21・・・メイン基布パネル、
22・・・メイン基布パネル、
23・・・インナーチューブ用パネル、
24・・・インナーチューブ用パネル、
25・・・隔壁パネル、
25a・・・通孔、
26・・・第1バッグ部、
26a・・・基端部側気室、
26b・・・先端部側気室、
27・・・第2バッグ部、
27a・・・第1気室、
27b・・・第2気室、
30・・・エアバッグ装置、
31・・・第1バッグ部、
31a・・・基端部側気室、
31b・・・先端部側気室、
32・・・第2バッグ部、
32a・・・第1気室、
32b・・・第2気室、
34・・・隔壁、
36・・・分岐部材、
38・・・縫製部、
39・・・インナーチューブ、
46・・・乗員拘束面、
50・・・エアバッグ装置、
51・・・主室、
52・・・補助室、
53・・・連通部、
54・・・テザーベルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置は、車両の衝突時にエアバッグの気室が膨張展開することで、乗員を拘束して乗員に対する安全性の向上を目的として用いられている。また、エアバッグ装置としては、運転席用のエアバッグ装置、助手席用のエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、後部座席用のエアバッグ装置等として、各種のエアバッグ装置が提案され、また、実用化されている。
【0003】
エアバッグ装置における機能としては、色々な機能が求められているが、乗員の衝撃エネルギーを十分に吸収することができ、しかも、乗員の拘束をソフトに行うことができる機能を備えたエアバッグ装置の提案が行われている。乗員をソフトに拘束することができるエアバッグ装置として、本願出願人は、既に、エアバッグ及びエアバッグ装置(特許文献1参照)を提案している。
【0004】
特許文献1に記載されたエアバッグ及びエアバッグ装置を、本願発明の従来例として図21を用いて説明する。図21に示すように、エアバッグ装置50は、基端部側から乗員側の中央下部にかけて主室51を配し、乗員側の中央上部には補助室52を配した構成になっている。主室51と補助室52とは、連通部53を介して連通した構成になっている。
【0005】
エアバッグの膨張展開時には、インフレータ57からの膨張ガスによって主室51が高圧となるように設定されており、補助室52は、主室51に比べて低圧となるように設定されている。また、補助室52は、テザーベルト54によりエアバッグ装置50の基端部側に連結されている。そして、補助室52は、一つの主室51によって支えられている構成になっている。
【0006】
このように構成することによって、車体(インストルメントパネル)との間に高圧室となった主室51を介在させることができる。そして、低圧となっている補助室52を主室51で支えておくことができる。このように、主室51で支えられている補助室52によって、乗員の頭部55をソフトに拘束することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−221912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたエアバッグ装置50では、補助室52はテザーベルト54によってエアバッグ装置50の基部側に連結してある。しかも、補助室52を一つの主室51で支えている構成になっている。主室51は、主室51の上部において補助室52を支持する機能を担っているが、同時に乗員の腹部56を拘束する役目を担っている。そのため、主室51の内圧としては、補助室52だけを支えておくときの内圧よりも高圧になっている。
【0009】
そのため、乗員をソフトに拘束できるように、補助室52の内圧を低く設定しておこうとしても、低くできる補助室52の内圧の下限値はある程度高めに設定されることになる。即ち、乗員をソフトに拘束できるように、補助室52の内圧を低く設定し過ぎると、補助室52を押し潰した乗員の頭部は主室51で拘束されることになる。そのため、補助室52の内圧を
あまり下げた状態に設定しておくことはできない。しかも、主室51の内圧とバランスさせながら補助室52の内圧を設定するには、高度な圧力チューニングを必要とし、開発コスト、ひいては製造コストを押し上げる要因になり得る。
【0010】
本願発明は、特許文献1に記載したエアバッグ装置の改良を図り、補助室の内圧を低く設定することができ、しかも、より広範囲に亘って各種エアバッグ装置においても適用することができ、乗員をソフトに拘束することができるエアバッグ装置を提供することを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の課題は、請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明のエアバッグ装置は、膨張用ガスを発生するインフレータと、インフレータからのガスを受け入れて膨張するエアバッグと、を備え、前記エアバッグは、インフレータからの膨張用ガスを受け入れて膨張展開を行う第1バッグ部及び第2バッグ部を有し、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室間は、画成され、前記両先端部側気室の結合により乗員拘束面が構成され、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部が、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した前記先端部側気室である第2気室とを有し、前記第1気室と前記第2気室とは、隔壁によって画成され、前記隔壁には、前記第1気室と前記第2気室とを連通する通孔が形成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第1バッグ部内の内圧と前記第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧に設定され、かつ、前記第1気室内の内圧が、前記第2気室内の内圧よりも高圧に設定されていることを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記第1気室及び前記第2気室は、前記第2バッグ部に構成され、前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と前記第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力が、前記第1バッグ部内の内圧から前記第1気室内の内圧、次に前記第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定されていることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本願発明では、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部は、それぞれ前記第1気室及び前記第2気室を有し、前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の第2気室と前記第2バッグ部の第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2バッグ部の第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力として、前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、
前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定されてなることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記第1バッグ部と前記第2バッグ部とは、それぞれ互いに独立した外壁部を有し、膨張展開時に前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との間に空間部が形成されてなることを主要な特徴としている。
【0015】
また、本願発明では、一つインフレータからの膨張ガスが、前記第1バッグ部及び前記
第2バッグ部に分配されてなることを主要な特徴としている。
【0016】
更に、本願発明では、画成された前記第1バッグ部の先端部側気室と前記第2バッグ部の先端部側気室とが、両者を画成する隔壁に形成した連通孔を介して連通し、前記第1バッグ部の先端部側気室内に供給された膨張ガスの一部が、前記連通孔を通って前記第2バッグ部の先端部側気室に流入してなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、画成された第1バッグ部と第2バッグ部とにより、各バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室同士を互いに結合して乗員拘束面を構成している。しかも、第1バッグ部及び第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部の構成として、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した第2気室とを有する構成にしている。
【0018】
第1気室と第2気室とを画成する隔壁には、通孔が形成されており両気室間を連通している。そして、エアバッグが膨張展開したときにおける第1バッグ部内の内圧と第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧となるように設定しており、しかも、第1気室内の内圧が第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定している。
【0019】
このように構成されているので、第1バッグ部と第2バッグ部とにより乗員を拘束する乗員拘束面を構成することができ、しかも、第2気室で乗員の頭部を拘束する構成にすることができる。このように第1気室と第2気室とからなる二重構造の気室で乗員の頭部を拘束することができる。そして、乗員の頭部を最もソフトに拘束することができるように、乗員の頭部を拘束する気室を割り当てることができる。
【0020】
また、乗員拘束面は、独立した第1バッグ部と第2バッグ部とにより構成されているので、乗員の頭部を拘束する第2気室を、例えば、第2バッグ部に構成した場合には、この第2気室を第1気室と第1バッグ部とによって支持することができる。このように、第2気室を第2バッグ部とは独立した第1バッグ部でも支持することができるので、特許文献1に記載されたエアバッグ装置のように補助室を主室だけで支持している場合に比べて、第1気室の内圧を高圧に設定しなくてもよい。
このように構成することができるので、乗員の頭部を最もソフトに拘束することができるようになる。
【0021】
第1気室及び第2気室は、第2バッグ部に構成しておくことも、第1バッグ部及び第2バッグ部にそれぞれ構成しておくこともできる。第1気室及び第2気室を第2バッグ部に構成した場合には、乗員拘束面を第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と第2気室とを結合させることにより構成しておくことができる。
【0022】
そして、第2気室で乗員の頭部を拘束させることができ、エアバッグが膨張展開したときのエアバッグ内の圧力としては、第1バッグ部内の内圧から第1気室内の内圧そして第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定しておくことができる。
【0023】
即ち、第2気室の内圧を乗員の頭部をソフトに拘束する低圧に設定することができ、しかも、第2気室を第1バッグ部と共に支持している第1気室の内圧を中圧に設定し、第1バッグ部の内圧を高圧に設定することができる。
【0024】
そして、高圧に設定した第1バッグ部で第2気室を支持することができるので、第1気室の内圧を可能な限り低めに設定することができる。また、第1気室では、乗員の頭部を拘束した第2気室の変形を支持することができる。このように、第1気室を第1バッグ部
に比べて中圧に設定することができるので、第2気室及び第1気室による乗員の頭部の拘束は、最もソフトな拘束となるようにすることができる。
【0025】
第1気室及び第2気室を、第1バッグ部及び第2バッグ部にそれぞれ構成した場合には、乗員拘束面を第1バッグ部の第2気室と第2バッグ部の第2気室とを結合させることにより構成しておくことができる。そして、第1バッグ部及び第2バッグ部のうち一方のバッグ部における第2気室、例えば、第2バッグ部の第2気室で乗員の頭部を拘束させることができる。
【0026】
このとき、エアバッグが膨張展開したときのエアバッグ内の圧力としては、第1バッグ部の第1気室内の内圧が、第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧となるように設定し、第1バッグ部の第2気室内の内圧が、第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0027】
そして、第1バッグ部の第1気室内の内圧が、第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定し、第2バッグ部の第1気室内の内圧が、第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0028】
このように構成することにより、第2バッグ部の第2気室を4つの気室の中で一番低圧に設定することができ、乗員の頭部をソフトに拘束することができる。また、第1バッグ部の第2気室における内圧は、第1バッグ部の第1気室における内圧よりも低圧に設定されているので、第1バッグ部の第2気室で拘束する乗員の部位、例えば、乗員の腹部をソフトに拘束することができる。
【0029】
また、第1バッグ部の第2気室は、乗員の頭部よりも質量が大きな乗員の部位を拘束することになるので、第2バッグ部の第2気室の内圧よりも第1バッグ部の第2気室の内圧を高めに設定しておくことが望ましい。
【0030】
第1バッグ部の外壁部と第2バッグ部の外壁部とは、それぞれ互いに独立した外壁部として構成しておくことができ、膨張展開時には第1バッグ部と第2バッグ部との間に空間部を形成することができる。
【0031】
このように構成することにより、乗員が膨張展開した第1バッグ部及び第2バッグ部に当接すると、第1バッグ部及び第2バッグ部は乗員を拘束するために変形を行うが、空間部によって第1バッグ部及び第2バッグ部のそれぞれの変形を、他方のバッグ部の変形による影響が少ない状態で変形できる。
【0032】
第1バッグ部及び第2バッグ部を膨張展開させる膨張ガスを発生するインフレータとしては、一つのインフレータを使用する構成にしておくことも、第1バッグ部と第2バッグ部に対してそれぞれ専用のインフレータを配設した構成にしておくこともできる。一つのインフレータを使用する構成では、一つのインフレータで発生した膨張ガスを第1バッグ部及び第2バッグ部に分配する流路を構成しておくことができる。
【0033】
複数のインフレータを使用するよりも一つのインフレータからの膨張ガスを分配する方が、インフレータの配設個数が減った分、インフレータの取り付けに関係する部品点数を少なくすることができ、占有スペースを抑え、コンパクト化を図ることができる。そして、コストの低減を図ることができる。
【0034】
本願発明では、第1バッグ部の先端部側気室と第2バッグ部の先端部側気室とを連通孔を介して連通した構成にすることができる。そして、他方の先端部側気室に比べて高圧状
態になっている一方の先端部側気室に供給された膨張ガスの一部を、連通孔を通って低圧状態である他方の先端部側気室に流入させることができる。
【0035】
また、低圧状態である他方の先端部側気室のバッグ形状を迅速に形成することができる。即ち、低圧状態である他方の先端部側気室は、乗員の頭部を拘束する第2気室として構成することができる。このとき、第2気室の基端部側に配される第1気室の内圧は、中圧状態になるので、第1気室から供給される膨張ガスで第2気室を膨張展開させると、第2気室を膨張させるのに時間を要することになるが、高圧状態になっている一方の先端部側気室に供給された膨張ガスの一部を利用して、第2気室を展開させることができ、第2気室の内圧が所定圧に達するまでの時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】エアバッグが膨張展開した状態の概略図を示すエアバッグ装置の断面図である。(実施例1)
【図2】図1のA方向から見た要部斜視図である。(実施例1)
【図3】エアバッグの屈曲状態を示す要部斜視図である。(実施例1)
【図4】他のエアバッグの屈曲状態を示す要部斜視図である。(実施例1)
【図5】エアバッグの縦断面図である。(実施例2)
【図6】一方のメイン基布パネルとインナーチューブの一方を構成する基布パネルとを平面状に広げた平面図である。(実施例2)
【図7】インナーチューブを構成する一対の基布パネルの縫着状態を示す図である。(実施例2)
【図8】他方のメイン基布パネルと隔壁パネルとの縫着状態を示す断面図である。(実施例2)
【図9】一対のメイン基布パネル間に隔壁パネルを縫着した状態を示す断面図である。(実施例2)
【図10】一対のメイン基布パネルの縫着状態を示す平面図である。(実施例2)
【図11】図10のXI−XI断面図である。(実施例2)
【図12】図10のXII−XII断面図である。(実施例2)
【図13】図10のXIII−XIII断面図である。(実施例2)
【図14】図10のXIV−XIV断面図である。(実施例2)
【図15】他方のメイン基布パネル側が内側に来るように屈曲させた状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図16】一対のメイン基布パネルの自由端側を互いに縫着した状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図17】他の構成における一対のメイン基布パネルを示す平面図である。(実施例2)
【図18】エアバッグが膨張展開した状態を示すエアバッグ装置の概略断面図である。(実施例3)
【図19】エアバッグの縦破断面図である。(実施例3)
【図20】エアバッグ装置の基端部を示す要部縦破断面図である。(実施例3)
【図21】エアバッグが膨張展開した状態の概略図を示すエアバッグ装置の断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるエアバッグ装置の構成として、助手席用エアバッグ装置及び運転席用エアバッグ装置を例に挙げて説明するが、本願発明のエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、後部座席用のエアバッグ装置等に対しても好適に適用することができる。そのため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0038】
尚、以下の説明において、実施例1と実施例2は、助手席用のエアバッグ装置に関する構成例であり、実施例3は、運転席用のエアバッグ装置に関する構成例を示している。
【実施例1】
【0039】
図1は、助手席用のエアバッグ装置1の断面図を示しており、エアバッグ10を膨張展開させたとき、膨出したエアバッグ10と乗員5との位置関係を示している。図2、図3に示すように、エアバッグ10は膨張展開時には、筒状体の両端を重ね合わせた形状に構成されており、エアバッグ10は、第1バッグ部18と第2バッグ部19とを有した構成になっている。
【0040】
エアバッグ装置1は、インストルメントパネル3内に収納されており、通常は裏面側に形成した溝状の破断予定線において開裂して開く蓋によって外部に露呈しないように収納されている。車両の衝突時等において、エアバッグ装置1のインフレータ6が作動すると、インフレータ6で発生した膨張ガスが、エアバッグ10内に供給されてエアバッグ10は膨張展開を開始する。エアバッグ10の膨張展開によって、エアバッグ装置1を覆っていたインストルメントパネルフェイシアが扇状に開いて、エアバッグ10はフロントガラス2の内面に沿いながら、フロントシート4に座している乗員5側に向かって膨張展開することができる。尚、図示例では、乗員5を拘束しているシートベルトの図示は省略している。
【0041】
エアバッグ10は、乗員5の腹部5bや胸部5cを主として拘束する第1バッグ部18と乗員5の頭部5aを拘束する第2バッグ部19とを備えている。第1バッグ部18と第2バッグ部19とは、隔壁パネル15によって画成されている。
【0042】
第2バッグ部19は、膨張方向の先端部側気室として構成され、乗員5の頭部5aが接触する第2気室19bと、エアバッグ装置1の基端部側気室として構成された第1気室19aとを有し、隔壁パネル16によって第1気室19aと第2気室19bとが画成された構成になっている。隔壁パネル16には、第1気室19aと第2気室19bとを連通させる通孔16aが形成されている。
【0043】
そして、第1バッグ部18と第2バッグ部19の第2気室19bとは、隔壁パネル15に形成した連通孔15aを介して連通している。また、第2気室19bには、第2気室19b内のガスを外部に排出するベントホール9が形成されている。ベントホール9を第2気室19bに形成した構成例を示しているが、ベントホール9は必要な部位に適宜数形成することができる。
【0044】
図2、図3に示すように、エアバッグ10は、乗員拘束面パネルを構成する第1メイン基布パネル11と、裏面側に配される第3メイン基布パネル13と、第1メイン基布パネル11の両側縁と第3メイン基布パネル13の両側縁とをそれぞれ縫製して接続する一対の第2メイン基布パネル12と、により筒状に形成されている。
【0045】
そして、筒状のエアバッグ10内には、第1バッグ部18と第2バッグ部19とを画成する隔壁パネル15と、第2バッグ部19において第1気室19aと第2気室19bとを画成する隔壁パネル16が縫製によって取り付けられている。第1バッグ部18及び第2バッグ部19が膨張展開したときには、第1バッグ部18と第2バッグ部19との間には、空間部45が形成される。そして、第1バッグ部18の膨張方向の先端部側気室と第2気室19bとによって、乗員拘束面46を構成している。
【0046】
乗員5が膨張展開した第1バッグ部18及び第2バッグ部19に当接すると、第1バッグ部18及び第2バッグ部19は乗員を拘束するために変形を行うが、空間部45が形成されていることにより、第1バッグ部18及び第2バッグ部19の変形を、それぞれ他方のバッグ部の変
形による影響が少ない状態で変形することができる。
【0047】
隔壁パネル15に形成した連通孔15aの形成数及び孔の開口面積は、第1バッグ部18から第2バッグ部19の第2気室19bに流入するガス量を調整することができる構成であれば、適宜の孔数、適宜の開口面積に形成しておくことができる。また、隔壁パネル16に形成した通孔16aの形成数及び孔の開口面積は、第1気室19aから第2気室19bに流入するガス量を調整することができる構成であれば、適宜の孔数、適宜の開口面積に形成しておくことができる。
【0048】
エアバッグ10の一端部側には、インフレータ6からの膨張ガスを導入するガス導入口11aが形成されており、ガス導入口11a内には膨張ガスを第1バッグ部18と第2バッグ部19とに分配するインナーチューブ39が配設されている。インナーチューブ39は、第1バッグ部18と第2バッグ部19にそれぞれ供給できる膨張ガスの流量が、第2バッグ部19に供給される流量よりも第1バッグ部18に供給される流量の方が多くなるように、流路径が構成されている。
【0049】
エアバッグ10の両端部には、それぞれ縫製代38aが形成されており、各縫製代38aを重ね合わせた状態で両端部間を縫製することで、図4に示すように両端部間を結合させることができる。これにより、内部にインナーチューブ39を備えたエアバッグ10を構成できる。
【0050】
これにより、インフレータ6で発生した膨張ガスをガス導入口11aからインナーチューブ39を介して、第1バッグ部18と第2バッグ部19内に供給することができる。インナーチューブ39の構成により、第1バッグ部18には第2バッグ部19に供給する膨張ガスの流量に比べて多く膨張ガスを供給することができ、第1バッグ部18の内圧は、第2バッグ部19の第1気室19aにおける内圧よりも高圧にできる。そして、第2気室19b内には最初に第1気室19aからの膨張ガスが通孔16aを通って供給され、その後、第1バッグ部18の膨出方向における先端部側気室18bから連通孔15aを通った膨張ガスが第2気室19b内に供給されることになる。
【0051】
そして、乗員5の頭部5aを第2気室19bによって拘束することができる。このとき、第1バッグ部18内の内圧が高圧となるように設定することができ、第2バッグ部19の第1気室19aの内圧が中圧となるように設定することができ、第2気室19bの内圧が低圧となるように設定することができる。
【0052】
そして、第2気室19bは、第1気室19aで支持されるとともに第1バッグ部18によっても支持されている構成になっている。そのため、第2気室19bの内圧を多少低く設定しても、第1バッグ部18でも第2気室19bを支持しておくことができるので、多少低く設定した第2気室19bを乗員5の頭部5aによって押し潰されたとしても、乗員5の頭部5aは第1気室19aと第1バッグ部18とによって拘束することができる。
【0053】
また、第1バッグ部18には第2バッグ部19よりも多くの流量の膨張ガスが供給されるので、第1バッグ部18の膨張展開に伴って第2気室19bの展開を助成することができ、しかも、連通孔15aを通った膨張ガスが第2気室19b内に供給されることで、第2気室18bの膨張展開を迅速に行うことができる。そして、高圧状態になっている第1バッグ部18によって、乗員5の頭部5aよりも質量が大きな腹部5bや胸部5c等を拘束することができる。
【0054】
図4は、実施例1の変形例を示す斜視図であり、エアバッグ10の構成としては、図3で示した場合と同様に筒状のエアバッグ10を環状に形成している。図1では、第1バッグ部18の基端部側気室18aと膨張方向の先端部側気室18bとは、途中に仕切りがない状態でそのまま連通した構成を示しているが、図4で示す実施例1の変形例では、第1バッグ部18内
が、隔壁パネル17によって、基端部側気室18aと膨張方向の先端部側気室18bとが画成された構成になっている。隔壁パネル17に形成した通孔17aによって、第1気室となった基端部側気室18aと第2気室となった先端部側気室18bとは連通した構成になっている。
【0055】
他の構成は、図1、図2で示したエアバッグ10と同様の構成になっている。そのため、図1、図2で示したエアバッグ10と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。また、ガス導入口11a内には不図示のインナーチューブが配設されており、この不図示のインナーチューブは、図3に示したインナーチューブ39と同様に構成されている。即ち、ガス導入口11aから導入された膨張ガスが、第2バッグ部19よりも第1バッグ部18に多く供給されるように不図示のインナーチューブは構成されている。
【0056】
このように構成することによって、第1バッグ部18も第1気室となった基端部側気室18aと第2気室となった先端部側気室18bとを有する構成にすることができる。そして、エアバッグ10の膨張展開時には、第1バッグ部18の第1気室18aの内圧が、第2バッグ部19の第1気室19aの内圧よりも高圧となるように設定することできる。そして、第1バッグ部18の第2気室18bの内圧が、第2バッグ部19の第2気室19bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0057】
また、第1バッグ部18における第1気室18aと第2気室18bとの関係は、エアバッグ10の膨張展開時には、第1気室18aの内圧が第2気室18bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。更に、第2バッグ部19における第1気室19aと第2気室19bとの関係は、エアバッグ10の膨張展開時には、第1気室19aの内圧が第2気室19bの内圧よりも高圧となるように設定することができる。
【0058】
このように構成することによって、乗員5に当接する第2気室18b、19bの内圧を、第1気室18a、19aの内圧に比べてそれぞれ低く設定することができ、乗員5をソフトに拘束することができる。しかも、第2気室18b、19bをそれぞれ支持する第1気室18a、19aの内圧を第2気室18b、19bの内圧よりも高圧に設定することができるので、第2気室18b、19bで確実に乗員5を拘束することができる。
【実施例2】
【0059】
実施例2も助手席用のエアバッグ装置におけるエアバッグ20の構成に関するものであり、特に、エアバッグ20の組立て構成例について、図5〜図17を用いて説明する。尚、実施例1と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。
【0060】
図5は、膨張展開したエアバッグ20の縦断面図を示している。エアバッグ20は、上方側に第1気室27a、第2気室27bを有する第2バッグ部27と下方側に第1バッグ部26を備えた構成になっている。第2気室27bと第1バッグ部26の膨張方向の先端部側気室26bとは画成された構成になっており、第1バッグ部26の膨張先端側と第2バッグ部27の膨張先端側とが、縫製によって結合されている。そして、画成されて当接した第2気室27bと第1バッグ部26の膨張方向の先端部側気室26bとによって、乗員拘束面46が構成されている。第1バッグ部26の基端部側気室26aと先端部側気室26bとは、途中に隔壁が介在されずに連通した状態に構成されている。
【0061】
そして、第1バッグ部26と第2バッグ部27とが膨張展開してときには、第1バッグ部26と第2バッグ部27との間には、空間部45が形成されている。この空間部45が形成されることにより、第1バッグ部26の先端部側気室26b及び第2バッグ部27で乗員5を拘束するときに、第1バッグ部26と第2バッグ部27とが乗員5からの衝撃を吸収して変形する動きを、
それぞれ他方のバッグ部の変形による影響が少ない状態で動くことができる。
【0062】
第1気室27aと第2気室27bとは、隔壁パネル25によって画成されており、隔壁パネル25には、第1気室27aと第2気室27bとを連通させる通孔25aが形成されている。第1気室27aの基端部側における内部及び第1バッグ部26の基端部側における内部には、インフレータ6から供給される膨張ガスを第1気室27a及び第1バッグ部26に分配するインナーチューブ39が配設されている。
【0063】
次に、図6〜図16を用いて、第1バッグ部26及び第2バッグ部27を製造する製造方法を説明する。
尚、この図示例では、第1バッグ部26及び第2バッグ部27における縦方向の中間部分は一定幅で長尺に形成されているので、要部を十分な大きさで表示しながら全体としてコンパクトに描けるように、省略して示している。
【0064】
また、以下で説明する第1バッグ部26及び第2バッグ部27の製造方法は、一つの例示であってエアバッグを製造する公知の製造方法を用いて第1バッグ部26及び第2バッグ部27を製造することは可能である。そのため、以下で説明する製造方法に限定されるものではなく、適宜の製造方法を採用することができる。
【0065】
図6に示すように、エアバッグ20を構成する一方のメイン基布パネル21に、図示せぬインフレータからの膨張ガスを導入するガス導入口21aを形成し、インナーチューブ39を構成する一方のインナーチューブ用パネル23には開口23aを形成する。ガス導入口21aに開口23aを重ね合わせた状態でガス導入口21aの周囲を縫製部38により縫着し、メイン基布パネル21とインナーチューブ用パネル23とを縫い合わせる。
【0066】
インナーチューブ39を構成する他方のインナーチューブ用パネル24をインナーチューブ用パネル23に重ね合わせ、図7に示すように、メイン基布パネル21を折り曲げた状態で、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24との一方側の側縁を縫製部38により縫着する。これを、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24との他方側の側縁についても同様にして行う。
【0067】
尚、インナーチューブ用パネル23とインナーチューブ用パネル24とを重ね合わせる縫着は、メイン基布パネル21の長手方向に沿って対向して配される一対の側縁に対して行う。これにより、長手方向の両端部は開口した状態にすることができ、インナーチューブ39を構成することができる。そして、長手方向における両端部での開口面積を調整することにより、インナーチューブ39で第1バッグ部26(図15参照)と第2バッグ部27(図15参照)に分配する膨張ガスの流量を調整することができる。
【0068】
次に、エアバッグ20を構成する他方のメイン基布パネル22に、第1気室27aと第2気室27bとを画成する隔壁パネル25を縫製部38により縫着する。隔壁パネル25には、第1気室27aと第2気室27bとを連通させる通孔25aが形成されている。
【0069】
図9に示すように、隔壁パネル25を縫着したメイン基布パネル22を長手方向に折り曲げた状態で、インナーチューブ用パネル23、24を縫着したメイン基布パネル21に重ねて、隔壁パネル25の側縁をメイン基布パネル21に縫着する。そして、図10に示すように、重ね合わせたメイン基布パネル21とメイン基布パネル22の周囲を縫製部38により縫着する。
【0070】
図10におけるメイン基布パネル21とメイン基布パネル22との縫着状態は、XI−XI断面を示す図11、XII−XII断面を示す図12、XIII−XIII断面を示す図13及びXIV−XIV断面を示す図14にそれぞれ示している。即ち、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22
とによって筒状のバッグが形成され、筒状のバッグ内には、ガス導入口21a及び開口23aに連通したインナーチューブ39が構成されている。
【0071】
尚、メイン基布パネル22の端縁を内側に折り曲げた状態で、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22とを縫着した構成を示しているが、メイン基布パネル22の端縁を内側に折り曲げたときに、メイン基布パネル21の側縁を折り曲げた内側に包み込むように縫着することも、メイン基布パネル21の端縁を内側に折り曲げた状態にして縫着することも、メイン基布パネル21とメイン基布パネル22の端縁を折り曲げずに縫着することもできる。
【0072】
図10に示した状態に構成した後に、メイン基布パネル22が内側に来るように折り曲げて、図15に示す状態にする。その後、エアバッグ20の両端部20a、20bを更に内側に折り曲げて、エアバッグ20の両端部20a、20b同士を縫製部38により縫着する。即ち、図16に示すように、空間部45を有する環状の形状に構成することができる。
【0073】
これにより、第1バッグ部26と第2バッグ部27とは、互いに独立した外壁部を有した構成に形成され、ガス導入口21a及び開口23aから導入される膨張ガスをインナーチューブ39によって、第1バッグ部26と第2バッグ部27とに分配することができる。そして、第2バッグ部27内には、隔壁パネル25で画成された第1気室27aと第2気室27bとを構成することができる。
【0074】
第1気室27aは、第2バッグ部27の基端部側気室として構成され、第2気室27bは、第2バッグ部27の膨張方向の先端部側気室として構成することができる。第1気室27aと第2気室27bとは、隔壁パネル25に形成した通孔25aを介して連通している。
【0075】
第1バッグ部26における基端部側気室26aと膨張方向の先端部側気室26bとは、途中に隔壁が介在されずに連通した構成になっているが、第2バッグ部27と同様に、基端部側気室26aと先端部側気室26bとの間に隔壁を設けて、この隔壁に形成した通孔を介して基端部側気室26aと先端部側気室26bとが連通する構成にしておくこともできる。
【0076】
第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとは、画成された構成になっているが、図16において当接状態になるエアバッグ20の両端部20a、20bの当接面における周囲を縫着等により固定することで、第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとの間に連通孔を形成しておくこともできる。連通孔を形成することにより、第2気室27bよりも高圧状態にした先端部側気室26bから連通孔を介して膨張ガスを第2気室27bに供給させることができる。
【0077】
また、図16において当接状態になるエアバッグ20の両端部20a、20bの当接面における周囲を固定せずに、第1バッグ部26の先端部側気室26bと第2バッグ部27の第2気室27bとにそれぞれベントホールを形成しておくこともできる。そして、エアバッグ20の両端部20a、20bが当接状態になったときに、このベントホールが上述した連通孔としての機能を奏させるように構成にすることもできる。そして、ベントホールを連通孔として機能させることにより、第2気室27bよりも高圧状態になっている先端部側気室26bから膨張ガスを、連通孔を通して第2気室27bに供給することができる。
【0078】
そして、第1バッグ部26の内部圧力を、第1気室27aにおける内部圧力よりも高圧となるように設定し、第2気室27bの内部圧力が第1気室27aの内部圧力よりも低圧となるように設定することができる。このように、内部圧力を設定することにより第2気室27bでソフトに乗員5の頭部5a(図1参照)を拘束することができる。しかも、第1バッグ部26では、頭部5aよりも質量のある乗員5の腹部5b(図1参照)や胸部5c(図1参照)を拘束することができる。
【0079】
上記説明では、インナーチューブ39をエアバッグ20内に形成した構成について説明したが、図17(a)、(b)に示すように、インナーチューブを用いない構成にすることもできる。
即ち、メイン基布パネル21に二つのガス導入口41a、41bを形成し、メイン基布パネル21、22間に通孔25aが形成された隔壁パネル25を縫着させ、重ね合わせたメイン基布パネル21、22に対して、二つのガス導入口41a、41bの間で横幅方向に沿った縫着を行うとともに、重ね合わせたメイン基布パネル21、22の周囲を縫着することにより、エアバッグ20を構成することができる。
そして、図16に示すようにエアバッグ20の各両端部を結合することにより側面視がC字状のエアバッグ20を構成することができる。
【0080】
図17(a)におけるb−b断面である図17(b)に示すように、第1バッグ部26と第2バッグ部27とは、二つのガス導入口41a、41bの間に形成した縫製部38によって画成されたバッグ部として構成されることになる。そして、第1バッグ部26に形成したガス導入口41aと第2バッグ部27に形成したガス導入口41bに、それぞれ接続した図示せぬインフレータからの膨張ガスを導入することができる。
【0081】
ガス導入口41aとガス導入口41bとにそれぞれ個別のインフレータを接続する構成の代わりに、ガス導入口41a及びガス導入口41bと一つのインフレータとの間に分岐管を配設し、分岐管を介して一つのインフレータからの膨張ガスをガス導入口41a及びガス導入口41bに導入する構成にしておくこともできる。
【実施例3】
【0082】
実施例3は、運転席用のエアバッグ装置30に関するものであり、図18〜図20を用いて説明する。尚、実施例1と同様の構成については、同じ部材符号を用いることでその部材の説明は省略している。
【0083】
運転席用のエアバッグ装置30はステアリングホイール42内に、折り畳まれて収納されており、車両の前面衝突時あるいは衝突を予知した時に、インフレータ6から噴射された膨張ガスによって運転席に搭乗している乗員5の前面を覆うように膨張展開され、乗員5を前方から拘束することができる。
【0084】
図18、図19に示すように、運転席用のエアバッグ装置30では、第1バッグ部31が乗員側から見た正面視でドーナツ状に形成され、第2バッグ部32がドーナツ状の中心部に配された構成に形成されている。第2バッグ部32は、エアバッグ装置30の基端部側に形成された第1気室32aと第2バッグ部32の膨張方向の先端側に形成された第2気室32bを有する構成になっており、第1気室32aと第2気室32bとは、隔壁34によって画成されている。
【0085】
そして、隔壁34に形成した通孔34aを通って、第1気室32aから第2気室32bに膨張ガスを供給することができる。そして、インフレータ6において膨張ガスが発生すると、第1バッグ部31及び第2バッグ部32は、ステアリングホイール42の間から乗員5側に向けて膨張展開することができる。また、第1バッグ部31は、基端部側気室31aを構成する基布パネルと膨張方向の先端部側気室31bを構成する基布パネルとを縫着することにより構成されている。
【0086】
図20に示すように、ベースプレート8には、インフレータ6を取り付けた分岐部材36が固定されており、第1バッグ部31の基端側は、ベースプレート8と分岐部材36とに固定されている。そして、第1バッグ部31の基端側における開口で分岐部材36に形成した第1開口36aを覆うように構成されている。
【0087】
第2バッグ部32の基端側における開口で、分岐部材36に形成した第2開口36bを覆い、インフレータ6で発生した膨張ガスを分岐部材36の第2開口36bを介して第2バッグ部32内に導入することができる。分岐部材36を介して膨張ガスを導入する際、矢印で示すように、第1バッグ部31に導入される導入流量と第2バッグ部32に導入される導入流量とを調整することができる。
【0088】
図20では、第1バッグ部31と第2バッグ部32とは、一つの壁部で画成された構成を示しているが、第1気室32aの外壁部と第1バッグ部31の外壁部とを独立した外壁部として構成し、第1気室32aの外壁部と第1バッグ部31の外壁部との間に空間部を形成しておくこともできる。
【0089】
第1気室32aの膨張方向の先端部側気室31bと第2気室32bとは、一部部位において互いに結合しており、乗員側に向いた先端部側気室31bの面と第2気室32bの面とによって、乗員拘束面46が構成されている。
【0090】
エアバッグの膨張展開時に先端部側気室31bと第2気室32bとが当接する当接面の周囲を縫着等により結合し、この当接面に先端部側気室31bと第2気室32bとを連通する連通孔35aを形成しておくこともできる。連通孔35aとしては、適宜数構成しておくことができる。また、第1バッグ部31の基端部側気室31aに、ベントホール9を形成しておくことができる。
【0091】
図20に示すように、第1バッグ部31に導入される膨張ガスの導入流量は、第2バッグ部32に導入される膨張ガスの導入流量よりも多くの流量が導入することができる。これにより、第1バッグ部31内の内圧を第1気室32aの内圧よりも高圧に設定することができ、第1気室32aの内圧を第2気室32bの内圧よりも高圧に設定することができる。
【0092】
このようにバッグ部内の内圧を設定することができるので、低圧に設定した第2気室32bによって乗員5の頭部5aをソフトに拘束することができる。そして、第2気室32bの支持を中圧状態にした第1気室32aで支持することができ、乗員5の胸部5c等を拘束する第1バッグ部31を高圧状態にすることができる。
【0093】
第1バッグ部31を構成している、基端部側気室31aを構成する基布パネルと膨張方向の先端部側気室31bを構成する基布パネルと縫着部に隔壁を縫着することにより、第1バッグ部31の基端部側気室31aと先端部側気室31bとを、画成した気室として構成することもできる。このとき、基端部側気室31aと先端部側気室31bとを連通させるための通孔を、基端部側気室31aと先端部側気室31bとを画成する隔壁に形成しておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本願発明は、エアバッグ装置に対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1・・・エアバッグ装置、
5・・・乗員、
6・・・インフレータ、
10・・・エアバッグ、
11・・・第1メイン基布パネル、
11a・・・ガス導入口、
12・・・第2メイン基布パネル、
13・・・第3メイン基布パネル、
15・・・隔壁パネル、
16・・・隔壁パネル、
18・・・第1バッグ部、
18a・・・基端部側気室、
18b・・・先端部側気室、
19・・・第2バッグ部、
19a・・・第1気室、
19b・・・第2気室、
20・・・エアバッグ、
21・・・メイン基布パネル、
22・・・メイン基布パネル、
23・・・インナーチューブ用パネル、
24・・・インナーチューブ用パネル、
25・・・隔壁パネル、
25a・・・通孔、
26・・・第1バッグ部、
26a・・・基端部側気室、
26b・・・先端部側気室、
27・・・第2バッグ部、
27a・・・第1気室、
27b・・・第2気室、
30・・・エアバッグ装置、
31・・・第1バッグ部、
31a・・・基端部側気室、
31b・・・先端部側気室、
32・・・第2バッグ部、
32a・・・第1気室、
32b・・・第2気室、
34・・・隔壁、
36・・・分岐部材、
38・・・縫製部、
39・・・インナーチューブ、
46・・・乗員拘束面、
50・・・エアバッグ装置、
51・・・主室、
52・・・補助室、
53・・・連通部、
54・・・テザーベルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスを発生するインフレータと、インフレータからのガスを受け入れて膨張するエアバッグと、を備え、
前記エアバッグは、インフレータからの膨張用ガスを受け入れて膨張展開を行う第1バッグ部及び第2バッグ部を有し、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室間は、画成され、前記両先端部側気室の結合により乗員拘束面が構成され、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部が、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した前記先端部側気室である第2気室とを有し、
前記第1気室と前記第2気室とは、隔壁によって画成され、
前記隔壁には、前記第1気室と前記第2気室とを連通する通孔が形成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第1バッグ部内の内圧と前記第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧に設定され、かつ、前記第1気室内の内圧が、前記第2気室内の内圧よりも高圧に設定されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1気室及び前記第2気室は、前記第2バッグ部に構成され、
前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と前記第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力が、前記第1バッグ部内の内圧から前記第1気室内の内圧、次に前記第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部は、それぞれ前記第1気室及び前記第2気室を有し、
前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の第2気室と前記第2バッグ部の第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2バッグ部の第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力として、前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、
前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定されてなることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第1バッグ部と前記第2バッグ部とは、それぞれ互いに独立した外壁部を有し、膨張展開時に前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との間に空間部が形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
一つインフレータからの膨張ガスが、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部に分配されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
画成された前記第1バッグ部の先端部側気室と前記第2バッグ部の先端部側気室とが、両者を画成する隔壁に形成した連通孔を介して連通し、前記第1バッグ部の先端部側気室内に供給された膨張ガスの一部が、前記連通孔を通って前記第2バッグ部の先端部側気室に流入してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
膨張用ガスを発生するインフレータと、インフレータからのガスを受け入れて膨張するエアバッグと、を備え、
前記エアバッグは、インフレータからの膨張用ガスを受け入れて膨張展開を行う第1バッグ部及び第2バッグ部を有し、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部におけるそれぞれの膨出方向の先端部側気室間は、画成され、前記両先端部側気室の結合により乗員拘束面が構成され、
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部のうち少なくとも一方のバッグ部が、エアバッグ装置の基端部側に形成した第1気室と膨出方向の先端側に形成した前記先端部側気室である第2気室とを有し、
前記第1気室と前記第2気室とは、隔壁によって画成され、
前記隔壁には、前記第1気室と前記第2気室とを連通する通孔が形成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第1バッグ部内の内圧と前記第2バッグ部内の内圧とが、互いに異なる内圧に設定され、かつ、前記第1気室内の内圧が、前記第2気室内の内圧よりも高圧に設定されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1気室及び前記第2気室は、前記第2バッグ部に構成され、
前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の膨出方向における先端部側気室と前記第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力が、前記第1バッグ部内の内圧から前記第1気室内の内圧、次に前記第2気室内の内圧の順番で圧力が低圧となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部は、それぞれ前記第1気室及び前記第2気室を有し、
前記乗員拘束面は、画成された前記第1バッグ部の第2気室と前記第2バッグ部の第2気室との結合により構成され、
前記エアバッグが膨張展開したとき、前記第2バッグ部の第2気室は、少なくとも乗員の頭部に対向した位置に配され、かつ、前記エアバッグ内の圧力として、前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、
前記第1バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第1バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定され、前記第2バッグ部の第1気室内の内圧が、前記第2バッグ部の第2気室内の内圧よりも高圧に設定されてなることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第1バッグ部と前記第2バッグ部とは、それぞれ互いに独立した外壁部を有し、膨張展開時に前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との間に空間部が形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
一つインフレータからの膨張ガスが、前記第1バッグ部及び前記第2バッグ部に分配されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
画成された前記第1バッグ部の先端部側気室と前記第2バッグ部の先端部側気室とが、両者を画成する隔壁に形成した連通孔を介して連通し、前記第1バッグ部の先端部側気室内に供給された膨張ガスの一部が、前記連通孔を通って前記第2バッグ部の先端部側気室に流入してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−35437(P2013−35437A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173673(P2011−173673)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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