説明

エアブロー装置

【課題】車両の表面に付着した水分を確実に除去することができるエアブロー装置を提供する。
【解決手段】搬送ライン30の上を移動している車両Wに向けて高圧エアZ1を吹き付けるエアブロー装置Aに、高圧エアを供給するエア供給源に接続されたブロア配管20と、ブロア配管20に接続され、エア供給源から送り込まれた高圧エアを吹き出す吹出口が形成された吹き出しダクト10と、吹き出しダクト10を保持する保持手段とを設ける。また、吹き出しダクト10は、保持手段により、搬送ライン30の上方に、吹出口が搬送ライン30と相対向するように保持される。また、エアブロー装置Aは、吹き出しダクト10の吹出口から、搬送ライン30の上を移動している車両Wに、車両Wの進行方向(X方向)に対して斜め後方に向け、且つ進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアZ1を吹き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のワークについた水分を除去する(水切りする)ためのエアブロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、完成車の検査ラインでは、車両をシャワーの中に通すことにより車両の水漏れを検査するシャワーテストが行われている。また、このシャワーテストが終わると、エアブロー装置を用いて、車両に対して、車両の塗面(ボディの表面)に付着した水分を除去する処理(水切り処理)を施すようにしている。このように水分を除去する処理を施すのは、車両のボディに水分を付着させたままにしておくと、水に含まれる不純物が気化する過程で凝固して、塗面(ボディの表面)にシミを生じさせることがあるためである。
【0003】
ここで、従来技術のエアブロー装置を用いた、車両の表面に付着した水分を除去する処理について、図9および図10を用いて説明する。
図9は、従来技術によるエアブロー装置の構成を示した模式図である。
また、図10は、図9に示したエアブロー装置による車両の表面に付着した水分を除去する処理の様子を示した模式図であり、図10(a)は、処理対象の車両Wが、エアブロー装置Bを通過する前の状態を示し、図10(b)は、当該車両Wが、エアブロー装置Bから高圧エアを吹き付けられている状態を示した模式図である。
【0004】
図9および図10に示すように、エアブロー装置Bは、車両Wを搬送する搬送ライン300(例えば、コンベヤベルト等により構成される)上に設置され、搬送ライン300の上を移動する車両W(車両Wは、図10に示す矢印X方向に移動している)の表面に向けて高圧エアを吹き付け、車両Wの表面に付着した水分を吹き飛ばすようになされている。
【0005】
具体的には、エアブロー装置Bは、高圧エアを供給するエア供給源(図示せず)に接続されたエアホース100a、100bと、エアホース100a、100bの先端部に取り付けられた空気吹出グリル200と、空気吹出グリル200を保持・固定するための架台400とを備えている。
また、空気吹出グリル200は、略箱状に形成され、その箱状の底面部に、エアホース100a、100bを介して、エア供給源(図示せず)から供給される高圧エアを吹き出す吹出口が形成されている。
なお、空気吹出グリル200は、前記吹出口が搬送ライン300に載置された車両Wの上方であって且つ車両Wと相対向するように、架台400に保持・固定されている。
【0006】
そして、上記のように構成されたエアブロー装置Bは、搬送ライン300上を移動している車両Wに対して、車両Wの上方から、車両Wの進行方向(X方向)に対して直角且つ垂直な高圧エアを吹き付け、これにより、車両Wに付着した水分の除去を行っている(車両Wに対して、拡散しない指向性のある高圧エアを吹き付けている)。
なお、上述した従来技術と同様、車両に、該車両の進行方向に対して、エアノズルから直角且つ垂直な高圧エアを吹き付け、車両に付着した水分の除去を行うエアブロー装置の構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−228794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術のエアブロー装置は、車両の表面に付着した水分を十分に吹き飛ばすことが出来ず、エアブローを行っても、車両の表面に水分が残ることがあるという技術的課題を有している。
具体的には、上述した従来技術のエアブロー装置は、図10(b)に示すように、搬送ライン300の上を移動する車両Wに、車両Wの進行方向(X方向)に対して直角且つ垂直な高圧エアZ2を吹き付けているため、高圧エアZ2で吹き飛ばされた水滴sが車両Wの後方に押し流されていた。
そのため、車両Wの後方では、車両Wの前方側から押し流されてくる水滴sと、車両後方に元から付着している水滴sとが合わさり、車両W上の水滴sが大きくなり、高圧エアZ2で吹き飛ばしきれないことがあった。すなわち、エアブローを行っても、車両Wの表面に水分が残ることがあるため、エアブローを行った後で、さらに、車両の表面に残った水分(残水)を拭き取る作業が行われており、作業の手間およびコストを上昇させていた。
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車両の表面に付着した水分を確実に除去することができるエアブロー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、車両を搬送する搬送ラインに設置され、搬送ラインの上を移動している車両に向けて高圧エアを吹き付け、該車両の表面に付着した水分を吹き飛ばすエアブロー装置に適用される。
そして、前記エアブロー装置は、高圧エアを供給するエア供給源に接続されたブロア配管と、前記ブロア配管に接続され、前記エア供給源から送り込まれた高圧エアを吹き出す吹出口が形成された吹き出しダクトと、前記吹き出しダクトを保持する保持手段とを備え、前記吹き出しダクトは、前記保持手段により、前記搬送ラインの上方に、前記吹出口が前記搬送ラインと相対向するように保持され、前記吹き出しダクトの前記吹出口から、前記搬送ラインの上を移動している車両に、該車両の進行方向と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることを特徴としている。
【0010】
このように本発明のエアブロー装置は、搬送ラインの上を移動している車両に、該車両の進行方向と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアを吹き付けるようにしている。
そのため、本発明によれば、車両に付着した水分は、車両の外側に吹き飛ばされるようになり、上述した従来技術のように、高圧エアを吹き付けている際に、車両の後方に大きな水滴が付着してしまうことがなく、その結果、車両に付着する水滴を残らず吹き飛ばすことが可能になる。
【0011】
また、前記吹き出しダクトは、前記吹出口が、前記搬送ラインの上を移動している車両の進行方向と反対側に突出するV字状に形成されていることが望ましい。
このように、吹き出しダクトの吹出口を形成することにより、搬送ラインの上を移動している車両に対して略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、車両の表面に付着した水分を確実に除去することができるエアブロー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のエアブロー装置を図面に基づいて説明する。
先ず、本発明の実施形態のエアブロー装置の構成について、図1乃至図7に基づいて説明する。
なお、本実施形態のエアブロー装置は、例えば、完成車の検査ラインにおけるシャワーテストの後で行われる車両に付着した水分を除去する処理に用いられる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のエアブロー装置の概略構成図である。また、図2は、本発明の実施形態のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトを下方から見た斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトを後方から見た斜視図である。
また、図4は、本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトの平面図である。また、図5は、本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出し用の吹き出しダクトの正面図である。
また、図6は、本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトの模式図である。また、図7は、本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトと、高圧エアを吹き付ける車両との関係を示した模式図である。
【0015】
図1および図7に示すように、本実施形態のエアブロー装置Aは、車両Wを搬送する搬送ライン30(例えば、コンベヤベルト等により構成される)に設置され、搬送ライン30の上を移動している車両W(車両Wは、図7に示す矢印X方向に移動する)に向けて高圧エアを吹き付け、車両Wの表面(塗装面)に付着した水分の除去を行う。
【0016】
具体的には、エアブロー装置Aは、高圧エアを供給するエア供給源1(エアコンプレッサ等により構成される)と、エア供給源1に電磁弁2を介して接続された送風用のブロア配管(送風用ダクト)20と、ブロア配管の端部20aを保持・固定する略アーチ状になされた架台(保持手段)40と、ブロア配管の端部20aに取り付けられた、高圧エアを吹き出す吹き出しダクト10と、エアブロー装置Aの動作を制御する制御装置3とを備えている。
なお、ブロア配管の端部20aは、搬送ライン30の上方に、搬送ライン30と相対向するように、架台40に保持・固定されている。
【0017】
また、図6に示すように、吹き出しダクト10は、その上端にブロア配管の端部20aに形成された開口(図示せず)に接続される接続口11が形成されていると共に、下端に、略V字状に形成されたエア吹出口12が設けられている。
また、吹き出しダクト10は、エア吹出口12が搬送ライン30と相対向するように、ブロア配管の端部20aに取り付けられている。
【0018】
また、制御装置3は、例えば、コンピュータにより構成され、エア供給源1の駆動を制御すると共に、電磁弁2の開閉動作の制御を行い、吹き出しダクト10からの高圧エアの噴出を制御する。
そして、エア供給源1からの高圧エアは、ブロア配管20を経由して、吹き出しダクト10に送り込まれ、その送り込まれた高圧エアが、エア吹出口12から吹き出され、搬送ライン30の上で移動する車両Wの表面に吹き付けられる。
なお、本実施形態は、エアブロー装置Aの吹き出しダクト10の構成に特徴があり、吹き出しダクト10以外の構成は、従来技術のものと同様である。そのため、以下では、吹き出しダクト10の構成を中心に説明する。
【0019】
本実施形態の吹き出しダクト10は、下端の形成された吹出口12が、搬送ライン30の上を移動している車両Wに、車両Wの進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状の高圧エア(車両Wの中心(車幅方向における中心)から略扇状に広がる高圧エア)を吹き付けることができるように構成されている。
この構成により、本実施形態によれば、吹き出しダクト10から、車両Wに対して、略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることができるため、搬送ライン30の上を移動している車両Wの表面に付着している水分を効率よく吹き飛ばすことができる。
なお、本実施形態では、吹き出しダクト10は、上記のように、車両Wの進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることができるように構成されていればよく、その具体的な形状について特に限定されるものではないが、例えば、以下のように構成されていてもよい。
【0020】
具体的には、吹き出しダクト10は、図2、図3、および図6に示すように、その上端から下端に向かって断面(前後方向(X方向)と平行な断面)が小さくなるテーパ状に形成され、その下端に略V字状に形成された吹出口12が開口している。
なお、吹出口12は、搬送ライン30の上を移動している車両Wの進行方向と反対側に突出するV字状に形成されている。
【0021】
また、吹き出しダクト10は、図2、図3、および図4に示すように、前面10aがV字状に凹み、後面10bがV字状に突出する形状になされている。また、図5に示すように、吹き出しダクト10は、正面視上において、略矩形状に形成されている。
さらに、吹出ダクト10は、下端の吹出口12が、車両Wの進行方向(X方向)に垂直方向に向いて形成されているのではなく、車両Wの進行方向(X方向)に対して、斜め後方に向けて配置されていることが望ましい。
【0022】
この構成により、吹き出しダクト10は、搬送ライン30の上を移動している車両Wに対して、車両Wの進行方向(X方向)に対して斜め後方に向け、且つ進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる(例えば、車両Wの中心(車幅方向における中心)から所定角度「α度」扇状に広がる)高圧エアを吹き出すことが可能になる。
以下、本実施形態のエアブロー装置Aによる車両Wの表面に付着した水分を除去する処理について、図8に基づいて説明する。
【0023】
図8は、本発明の実施形態のエアブロー装置が、搬送ラインの上を移動している車両に対して、高圧エアを吹き付けている様子を示した模式図である。
図示するように、エアブロー装置Aの吹き出しダクト10からは、搬送ライン30の上を移動している車両Wに、その進行方向(X方向)に対して、上方から斜め後方に向かい、且つ車両Wの進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアZ1が吹き付けられている。
この構成により、車両Wに付着している水滴sは、車両Wの後方だけでなく、車両の外側に向けて吹き飛ばされる。
【0024】
すなわち、本実施形態のエアブロー装置Aは、上述した従来技術によるエアブロー装置B(図10参照)のように、車両Wに対して上方から、進行方向(X方向)に対して、直角且つ垂直な高圧エアを吹き付けるのではなく、車両Wの進行方向(X方向)に対して、斜め後方に向けて、且つ車両Wの進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる(例えば、所定角度「α度」扇状に広がる)高圧エアZ1を吹き付けている。
そのため、図示するように、高圧エアZ1により吹き飛ばされた水滴sは、車両Wの外側に吹き飛ばされるようになり、上述した従来技術のエアブロー装置Bと比べて車両Wの後方に押し流される水滴sの量が少なくなる。
これにより、本実施形態のエアブロー装置Aによれば、高圧エアを吹き付けている最中に、車両Wの後方に大きな水滴が付着する現象が抑制されるため、車両Wに付着する水滴を残らず吹き飛ばすことが可能になる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、車両Wの表面に付着した水分を確実に除去することができるようになるため、エアブローを行った後の、車両Wの表面に残った水分(残水)を拭き取る作業が削減される。
これにより、本実施形態によれば、完成車の検査工程の手間およびコストを軽減することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0026】
例えば、本実施形態のエアブロー装置の吹き出しダクト10は、吹出口12が略V字状に形成されていたが、特にこれに限定されるものではない。車両Wの進行方向(X方向)に対して、上方から斜め後方に向かい、且つ車両Wの進行方向(X方向)と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることができれば、どのような形状であってもよい。例えば、車両Wの進行方向(X方向)に対して、吹出口12が円弧凸状に形成されていてもよい。
【0027】
また、上述した実施形態では、エアブロー装置Aが、完成車の検査ラインで利用される場合を例にしたが、あくまでもこれは例示である。例えば、塗装工程等において、車両に付着している洗浄液を除去する処理に、本実施形態のエアブロー装置Aを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態のエアブロー装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトを下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトを後方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトの平面図である。
【図5】本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出し用の吹き出しダクトの正面図である。
【図6】本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトの模式図である。
【図7】本発明の実施形体のエアブロー装置を構成する吹き出しダクトと、高圧エアを吹き付ける車両との関係を示した模式図である。
【図8】本発明の実施形態のエアブロー装置が、搬送ラインの上を移動している車両に対して、高圧エアを吹き付けている様子を示した模式図である。
【図9】従来技術によるエアブロー装置の構成を示した模式図である。
【図10】図9に示したエアブロー装置による車両の表面に付着した水分を除去する処理の様子を示した模式図である。
【符号の説明】
【0029】
W 車両
A エアブロー装置
1 エア供給源
2 電磁弁
3 制御装置
10 吹き出しダクト
10a 前面(吹き出しダクト)
10b 後面(吹き出しダクト)
11 接続口(吹き出しダクト)
12 エア吹出口(吹き出しダクト)
20 ブロア配管(送風用ダクト)
20a ブロア配管の端部
30 搬送ライン
40 架台(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を搬送する搬送ラインに設置され、搬送ラインの上を移動している車両に向けて高圧エアを吹き付け、該車両の表面に付着した水分を吹き飛ばすエアブロー装置であって、
高圧エアを供給するエア供給源に接続されたブロア配管と、
前記ブロア配管に接続され、前記エア供給源から送り込まれた高圧エアを吹き出す吹出口が形成された吹き出しダクトと、
前記吹き出しダクトを保持する保持手段とを備え、
前記吹き出しダクトは、前記保持手段により、前記搬送ラインの上方に、前記吹出口が前記搬送ラインと相対向するように保持され、
前記吹き出しダクトの前記吹出口から、前記搬送ラインの上を移動している車両に、該車両の進行方向と相対向する方向に略扇状に広がる高圧エアを吹き付けることを特徴とするエアブロー装置。
【請求項2】
前記吹き出しダクトは、前記吹出口が、前記搬送ラインの上を移動している車両の進行方向と反対側に突出するV字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアブロー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−100188(P2010−100188A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274173(P2008−274173)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】