説明

エアロゾル生成装置及び方法、並びに、それを用いた成膜装置及び方法

【課題】濃度が制御されたエアロゾルを安定的に生成することができるエアロゾル生成装置、及び、そのようなエアロゾル生成装置を用いた成膜装置を提供する。
【解決手段】エアロゾル生成装置は、収納される粉体を導出する開口10が形成されている粉体収納室1と、粉体が開口から導出される際に粉体の導出を補助又は促進するアシストガス導入部13と、開口から導出される粉体を分散させるガスを供給する分散ガス導入部17とを含む。また、成膜装置は、そのようなエアロゾル生成装置と、基板を固定する基板ステージ7と、該エアロゾル生成装置によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズル6とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の粉体を分散させたエアロゾルの生成装置及び方法、並びに、そのようなエアロゾルを用いて成膜を行う成膜装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)関連の機器の開発に伴い、積層セラミックコンデンサや圧電アクチュエータ等の素子の微細化及び集積化がますます進んでいる。そのため、そのような素子を、成膜技術を用いて製造する研究が盛んに進められている。
【0003】
最近では、固体粒子の衝突付着現象を利用した成膜技術の1つであるエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が、セラミック膜の形成方法として注目されている。AD法とは、原料の微小な粉体をガスに分散させることにより生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射して、基板や先に形成された膜に粉体を衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、「分散相は固体又は液体の粒子からなり、分散媒は気体からなるコロイド系」のことである(高橋幹二著、「エアロゾル学の基礎」、森北出版第1版、P.1)。AD法によれば、気孔率が低く、緻密で強固な膜を形成することができるので、上記のような微細な素子の性能を向上できる可能性がある。
【0004】
ところで、このようなAD法を用いて、厚さや密度が均一な良質な膜を形成するためには、濃度が均一なエアロゾルを長時間に渡ってノズルに供給し続けることが重要となる。そのためには、粉体をガスに分散させるエアロゾル生成機構に、一定量の粉体を連続して供給しなければならない。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、プラズマ中に粉末をキャリアガスと共に供給することにより試料に粉末を蒸着する、所謂プラズマ蒸着において用いられる粉末供給装置が開示されている。この粉末供給装置は、内部で攪拌させた粉末を供給する粉末供給部と、該粉末供給部から送られてくる粉末の内、凝集した微粉末を分散させて元の微粉末に戻すための分散器とを有している。
【0006】
また、特許文献2には、プラズマ蒸着において用いられる粉末供給装置であって、中心から所定の位置の円周上に溝が切られたターンテーブルと、該ターンテーブルの上に載置され、粉末を上記ターンテーブルの溝に落としこむ粉末容器とによって構成される粉末供給装置が開示されている。この粉末供給装置においては、上記粉末容器の底部に回転する攪拌羽が取り付けられており、この攪拌羽は、粉末が攪拌羽を中心として移動するような形状になっている。
【0007】
さらに、特許文献3には、プラズマ蒸着において用いられる粉末供給装置であって、回転可能な攪拌羽と粉末落下孔が備えられた粉末収容室と、粉末落下孔に対向する円周上に溝が設けられた回転盤と、該溝の粉末落下箇所に隣接する溝内の箇所にその先端部が挿入された粉末吸入用パイプと、上記溝の何れかの箇所に吹き付けるためのキャリアガスを通す孔とを備えた粉末供給装置が開示されている。
【0008】
特許文献4には、粉体収容部と、粉体輸送手段と、エアロゾル化手段とを備えるエアロゾル発生装置が開示されている。このエアロゾル発生装置において、粉体輸送手段は粉体収納部からの粉体が充填される溝を設けた循環式の輸送手段であり、エアロゾル化手段は、溝の一部にガスを吹き付けるガス導入口とこれに近接したエアロゾル導出口を有しており、ガス導入口から導入される搬送ガスが、上記粉体輸送手段に輸送された粉体の一部に吹き付けられてエアロゾル化し、このエアロゾルが上記エアロゾル導出口から導出される。また、特許文献4には、このようなエアロゾル発生装置と、エアロゾルを基材に吹き付けるためのノズルとを備える複合構造物作製装置も開示されている。
【0009】
特許文献5には、脆性材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材に向けてノズルより噴射して、上記エアロゾルを基材表面に衝突させ、微粒子の構成材料からなる構造物を基材上に形成させる複合構造物作製装置に用いるエアロゾル発生装置が開示されている。このエアロゾル発生装置は、微粒子の補給が可能な粉体収納部と、この粉体収納部からの微粒子を所定量連続して搬送する粉体供給部と、ガス導入部からのガスで上記粉体供給部からの微粒子をエアロゾル化して導出部より導出するエアロゾル化部とを備えている。また、特許文献5には、そのようなエアロゾル発生装置と、エアロゾルを基材に吹き付けるためのノズルを備える複合構造物作製装置も開示されている。
【特許文献1】特開平5−186864号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平5−239625号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2005−68542号公報(第2頁、図2)
【特許文献4】特開2003−275631号公報(第2頁、図2)
【特許文献5】特開2005−11261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2に開示されている粉末供給装置によれば、幅及び深さが一定の溝が形成されている粉末供給盤を用いることにより、溝の容積に応じた一定量の粉体を供給することができる。そのため、粉末供給盤により供給された粉体をガスによって分散させることにより、濃度が安定したエアロゾルを生成することは可能である。しかしながら、分散ガスの量を増やして粉体の濃度の低いエアロゾルを生成したい場合には、粉末供給盤に大量のガスが流れ込み、粉体がガスにより舞い散ってしまうので、エアロゾル濃度を制御することが困難になってしまう。
【0011】
この点について、特許文献3〜5においては、粉末供給盤(回転盤)の溝に直接キャリアガスを吹き付けてエアロゾルを生成することにより、搬送された後の粉体の量が変動するのを抑制している。しかしながら、これらの文献に開示されている粉体供給装置においては、粉体収納室の開口から粉体を自然に落下させていることにより、粉末供給盤の溝に粉体を配置している。そのため、粉体の流動性が悪い場合には、粉体が開口から落下し難くなるので、粉体が全く供給されないか、或いは、粉体量の制御ができなくなるおそれがある。その結果、エアロゾルの濃度を制御することが困難になってしまう。
【0012】
さらに、特許文献1においては、気密容器内に配置された粉末を攪拌するための攪拌体及び攪拌羽が設けられている。この攪拌羽と粉末供給盤の溝との間には、粉体がスタックしないだけの十分な隙間が設けられている(第3頁、図2及び図3)。また、攪拌体と粉末供給盤とは、互いに噛み合ってコンタミネーション(不純物)が発生するのを防ぐために、機械的な重なりがないように配置されている。そのため、粉体の流動性が悪い場合には、粉体が溝に入って行かないおそれがある。また、隙間が大きすぎると、溝に配置される粉体の量が安定しないおそれもある。
【0013】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、濃度が制御されたエアロゾルを安定的に生成することができるエアロゾル生成装置及び方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、そのようなエアロゾル生成装置によって生成されたエアロゾルを用いて成膜を行う成膜装置及び方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係るエアロゾル生成装置は、収納される粉体を導出する開口が形成されている粉体収納室と、粉体が開口から導出される際に粉体の導出を補助又は促進する補助手段と、開口から導出される粉体を分散させるガスを供給するガス供給手段とを具備する。
【0015】
また、本発明の1つの観点に係る成膜装置は、原料の粉体をガスに分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法を用いる成膜装置であって、上記エアロゾル生成装置と、基板を固定する基板ステージと、上記エアロゾル生成装置によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルとを具備する。
【0016】
さらに、本発明の1つの観点に係るエアロゾル生成方法は、開口が形成された粉体収納室に収納された粉体を、該粉体の導出を補助又は促進しながら開口から導出するステップ(a)と、前記開口から導出された粉体をガスによって分散させるステップ(b)とを具備する。
【0017】
また、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、上記エアロゾル生成方法を用いることにより原料の粉体が分散しているエアロゾルを生成するステップ(A)と、ステップ(A)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて吹き付けて、原料の粉体を基板に衝突させることにより、原料を基板上に堆積させるステップ(B)とを具備する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粉体収納室に形成された開口から粉体が導出される際に、補助手段によりその導出を補助又は促進するので、粉体を開口からよりスムーズに導出させることができる。それにより、粉体の供給量を安定させることができると共に、粉体の供給量を容易に調節できるようになるので、濃度が制御されたエアロゾルを長時間に渡って生成できるようになる。従って、そのようにして生成されたエアロゾルを用いることにより、膜厚や密度を含む膜質の安定した膜を形成できると共に、膜厚や密度の制御をより簡単にできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1の(a)は、本発明の第1の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を示す断面図である。また、図1の(b)は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の内部を示す上面図である。なお、図1の(a)は、図1の(b)の一点鎖線A−A'における断面を示している。
【0020】
図1に示すように、このエアロゾル生成装置は、粉体収納室1及びエアロゾル生成部2を含んでいる。
粉体収納室1は粉体を収納するチャンバであり、その上底部には粉体供給口1aが設けられており、下底部には開口10が形成されている。この開口10を介して、粉体収納室1とエアロゾル生成部2とが接続されている。
【0021】
粉体収納室1には、モータによって駆動されることにより回転する攪拌羽11が備えられている。この攪拌羽11の回転軸12にはO(オー)リング12aがはめ込まれており、それによって粉体収納室1内の気密が確保される。なお、図1の(b)には4枚の攪拌羽11が示されているが、攪拌羽の数は適宜変更しても構わない。攪拌羽11の材料としては、金属等の硬質な材料を用いても良いし、ゴム、シリコンゴム、テフロン(登録商標)等の柔軟性に優れた材料を用いても良い。或いは、金属羽の周縁部をゴムによって覆う等、それらの材料を組み合わせて用いても良い。
このような粉体収納室1に粉体を収納し、攪拌羽11によって粉体を攪拌する。それにより、粉体が開口10から落下し、エアロゾル生成部2に導出される。
【0022】
また、粉体収納室1には、粉体が開口10から導出されるのを補助又は促進するために、アシスト(補助)ガス導入部13が設けられている。アシストガス導入部13は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。なお、アシストガスの種類としては、後述する分散ガスと同じものを用いることが望ましい。
【0023】
エアロゾル生成部2には、モータによって駆動されることにより回転する回転盤14が備えられている。回転盤14の回転軸15にはOリング15aがはめ込まれており、それによってエアロゾル生成部2内の気密が確保される。
回転盤14には、所定の幅及び深さを有する溝16が円周に沿って形成されている。回転盤14は、この溝16が粉体収納室1の開口10に対向するように配置されている。回転盤14は、開口10から落下した粉体を溝16によって受けながら回転することにより、粉体を一定の割合で搬送する。なお、図1の(a)において、溝16の断面形状は半円となっているが、矩形やV字型のように、半円以外の形状であっても構わない。
【0024】
図2は、図1に示す粉体収納室1の底部と、攪拌羽11と、回転盤14との位置関係を説明するための拡大図である。図2において、長さLGAPは、攪拌羽11の最下部11aと回転盤14のトップ(溝16の壁部の最上部)14aとの間隔を示しており、長さLDEPは、粉体収納室1の内底面1bから見た回転盤14のトップ14aの深さを示している。長さLDEPが正の場合には、粉体収納室1の内底面1bよりも回転盤14のトップ14aの位置が下がっていることを示す。
【0025】
図2に示すように、攪拌羽11と粉体収納室1の内壁及び内底面との間には、空隙が設けられている。これは、攪拌羽11と粉体収納室1の内壁や内底面とが擦れ合って互いに相手を削ることにより、コンタミネーション(汚染物質)が発生して粉体に混入するのを防ぐためである。そのため、このような空隙は、攪拌羽11の周縁部が金属等の硬質材料によって形成されている場合には必要であるが、ゴム等の軟質材料によって形成されている場合には設けなくても良い。
【0026】
また、攪拌羽11と回転盤14のトップ14aとの間にも空隙が設けられている(即ち、長さLGAP>0)。これは、攪拌羽11と回転盤14が擦れ合ってコンタミネーションが発生するのを防ぐためである。そのため、この空隙も、攪拌羽11の周縁部が金属等の硬質材料によって形成されている場合には必要であるが、ゴム等の軟質材料によって形成されている場合には設けなくても良い。なお、図2において、回転盤14は、そのトップ14aが粉体収納室1の内底面1bよりも若干下がるように配置されているため、回転盤14と攪拌羽11の間には当然に空隙が形成される。しかしながら、回転盤のトップ14aの位置は、粉体収納室1の内底面1bに揃えても良いし(即ち、LDEP=0)、内底面1bより高くしても良い(即ち、LDEP<0)。ただし、粉体を効率良く溝16に充填するためには、トップ14aの位置を粉体収納室1の内底面1bと同じ高さにするか、それよりも下げることが望ましい(即ち、LDEP≧0)。
【0027】
本実施形態においては、攪拌羽11と回転盤のトップ14aとの間隔LGAPを1mm以下としており、好ましくは、0.5mm以下としており、さらに好ましくは、できるだけ小さくする。その理由は、両者の間隔が長すぎると、粉体が開口10内を落下しても、その粉体を溝16内に確実に充填することが困難になるので、搬送される粉体量のばらつきが大きくなるからである。従って、攪拌羽11の周縁部をゴム等の軟質材料によって形成する場合には、LGAP=0としても良い。また、粉体量のばらつきを最小限に抑えるために、この間隔LGAPは、エアロゾル生成装置の駆動中においても高い精度で維持されていることが望ましい。
【0028】
再び、図1を参照すると、エアロゾル生成部2には、分散ガス導入部17及びエアロゾル導出部18が設けられている。
分散ガス導入部17は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。分散ガスの種類としては、窒素(N)、酸素(O)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、それらの混合ガス、或いは、乾燥空気等が用いられる。図1の(a)に示すように、分散ガス導入部17によってエアロゾル生成部2内に導入された分散ガスの吹き出し口は、回転盤14の溝16に対向するように設けられている。
【0029】
図3は、図1の(b)に示すエアロゾル導出部18付近を拡大して示す断面図である。図3に示すように、エアロゾル導出部18は、先端の開口部が溝16に対向するように配置された管である。エアロゾル導出部18は、図3に示すように、溝16の真上を向くように配置されても良いし、図の左右方向又は奥行き方向に傾けるように配置されても良い。また、生成されたエアロゾルを確実にエアロゾル導出部18に導くために、エアロゾル導出部18の先端部が溝16の内部に入り込むようにすることが望ましい。なお、エアロゾル導出部18の位置は、溝16の円周上のいずれかであれば良いが、粉体収納室1の開口10の直下からあまり遠くない位置にすることがより望ましい。粉体が搬送される距離が短くなり、エアロゾル生成部2の内壁(特に天井)に粉体が付着することが少なくなるからである。このようなエアロゾル導出部18の他端は、例えば、フレキシブルな材料によって形成された配管に接続される。
【0030】
このようなエアロゾル生成装置において、粉体収納室1に所望の粉体を収納して攪拌羽11を駆動すると共に、エアロゾル生成部2において回転盤14を回転させ、回転盤14の溝16に対して分散ガスを吹き付け始める。
粉体収納室1に収納された粉体は、攪拌羽11によって攪拌されながら、開口10を通って溝16に落下する。その際に、粉体収納室1にアシストガスを導入することにより、開口10内に気流を形成する。なお、アシストガスは、連続的に導入するようにしても良いし、間欠的に導入するようにしても良い。この気流が、粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用する。それにより、粉体は、よりスムーズに開口10から溝16に落下する。溝16に落下した粉体は、回転盤14の回転速度に応じて堆積して搬送される。
【0031】
一方、回転盤14の溝16においては、そこに吹き付けられた分散ガスが溝16に沿って流れることにより気流が形成されている。この分散ガスは、エアロゾル導出部18の先端部の開口からその内部に流れ込む。その際に、エアロゾル導出部18の周囲には、エアロゾル導出部18の内部に向かう吸引力が発生する。この吸引力により、溝16に堆積していた粉体が分散ガスと共にエアロゾル導出口18に流れ込む。このようにして生成されたエアロゾルは、エアロゾル導出口18に接続されているフレキシブルな配管等を介して、成膜装置等に導入される。
【0032】
このように、本実施形態によれば、粉体収納室1にアシストガスを導入することにより、粉体がよりスムーズに開口10から落下するようになるので、溝16に堆積する粉体の量を安定させることができる。また、本実施形態によれば、攪拌羽11と回転盤14のトップ14aとの間隔を1mm以下とすることにより、コンタミの発生を抑制しつつ、溝16に充填される粉体の量を安定させることが可能となる。その結果、回転盤14の回転速度を変化させることにより、単位時間あたりに供給される粉体の量を正確に制御できるようになるので、濃度の安定したエアロゾルを長時間に渡って生成できるようになると共に、エアロゾル濃度を容易に制御できるようになる。
【0033】
なお、本実施形態においては、粉体の導出を補助又は促進する手段として、アシストガス導入部13と、回転盤14との間隔を規定された攪拌羽11との両方を設けているが、いずれか一方を設けるだけでも、従来と比較して安定的にエアロゾルを生成することは可能である。
【0034】
本発明の第1の実施形態に係るエアロゾル生成装置の変形例として、粉体収納室1の開口10の径を小さくする場合には、アシストガス導入部13を粉体収納室1の圧力調整部として用いても良い。開口10の径が小さい場合には、アシストガスを導入することにより、粉体収納室1内は加圧状態となる。従って、エアロゾル生成部2に対して粉体収納室1内の圧力を高い状態に維持するようにすれば、この圧力差が粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用するので、粉体をよりスムーズに開口10から溝16に落下させることができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係るエアロゾル生成装置について、図4を参照しながら説明する。ここで、図1に示すエアロゾル生成装置においては、分散ガスを回転盤14の溝16に直接吹き付けているが、必ずしもそのようにする必要はない。
図4に示すエアロゾル生成装置は、図1の(a)に示す分散ガス導入部17及びエアロゾル導出部18の替わりに、分散ガス導入部20及びエアロゾル導出部21を有している。また、このエアロゾル生成装置には、回転盤14の溝16の一部の箇所と分散ガス導入部20とを接続する粉体導出路22が形成されている。粉体導出路22の径は、供給される粉体の径や流動性等に応じて異なるが、例えば、1mm〜3mm程度の細管である。
【0036】
このようなエアロゾル生成装置の粉体収納室1に粉体を配置して動作を開始すると、アシストガスによる補助を得て粉体が開口10から落下し、溝16に堆積する。この粉体は、回転盤14が回転することにより粉体導出路22の位置まで搬送される。そして、溝16に配置された粉体は、アシストガスと共に粉体導出路22を高速で通過し、分散ガス導入部20に噴射される。このとき、粉体導出路22の径と分散ガス導入部20の径との差によって生じるガスの膨張力により、粉体は極めて高く分散した状態となる。さらに、そこを分散ガスが通過することにより、粉体が分散ガスと共に導出される。このようにしてエアロゾルが生成される。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。図5は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
図5に示すように、このエアロゾル生成装置は、粉体収納室30と、分散ガス供給管31とを含んでいる。
【0038】
粉体収納室30は、漏斗形状、或いは、漏斗と円筒とを組み合わせた形状を有する容器である。このような容器としては、例えば、粉体を下方へ落下させるためのホッパーが知られている。また、分散ガス供給管31は、ガスボンベ等から供給される分散ガスを搬送するための管体であり、一部に開口32が形成されている。この開口32の位置と、粉体収納室30の先端部(漏斗部分)に形成されている開口とが合うように、各部が配設されている。
【0039】
さらに、粉体収納室30には、その中に配置された粉体が分散ガス供給管31に導出されるのを補助又は促進するために、アシストガス導入部33が設けられている。アシストガス導入部33は、配管及びバルブを含んでおり、配管の先には、例えば、ガスボンベが接続されている。
【0040】
このような粉体収納室30に粉体34を収納すると、粉体は円錐の斜面に沿って移動することにより開口に導かれ、分散ガス供給管31内に落下する。その際に、粉体収納室1にアシストガスを導入することにより、粉体収納室30内に気流を形成する。なお、アシストガスは、連続的に導入するようにしても良いし、間欠的に導入するようにしても良い。この気流が、粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用する。それにより、粉体は、よりスムーズに開口を通って分散ガス供給管31内に落下するようになる。この粉体が、分散ガス供給管31内において分散ガスにより分散されることにより、エアロゾルが生成される。
【0041】
このように、本実施形態によれば、内壁の一部が斜面となっている粉体収納室にアシストガスを導入することにより、簡単な構成で、粉体をエアロゾル生成部に安定して供給することが可能となる。
【0042】
本発明の第3の実施形態に係るエアロゾル生成装置の変形例として、粉体収納室30の開口径を小さくする場合には、アシストガス導入部33を粉体収納室30の圧力調整部として用いても良い。粉体収納室30の開口径が小さい場合には、アシストガスを導入することにより、粉体収納室30内は加圧状態となる。従って、分散ガス供給管31内に対して粉体収納室30内の圧力を高い状態に維持するようにすれば、この圧力差が粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用するので、粉体をよりスムーズに分散ガス供給管31内に供給することができる。
【0043】
次に、本発明の第4の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。図6は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を示す断面図である。
図6に示すように、このエアロゾル生成装置は、図1の(a)に示すアシストガス導入部13の替わりに、ノッカー40を備えている。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0044】
ここで、ノッカーとは、粉体を収納する容器や粉体を搬送する配管等に取り付けられ、容器等に振動又は衝撃を与えることにより粉体の付着や詰まりを除去する装置である。ノッカーの種類としては、圧縮空気の力によりピストンを駆動するエアーノッカーや、電力によりハンマーを駆動する電子式のノッカーが知られている。
このようなノッカー40を駆動して粉体収納室1に振動又は衝撃を与えることにより、粉体収納室1に収納された粉体を、よりスムーズに開口10から溝16に落下させることができる。
【0045】
次に、本発明の第5の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。図7は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
図7に示すように、このエアロゾル生成装置は、図5に示す粉体収納室30の替わりに、粉体収納室50を有している。その他の構成については、図5に示すものと同様である。
【0046】
粉体収納室50は、漏斗形状、或いは、漏斗と円筒とを組み合わせた形状を有する容器容器であり、その上部には粉体供給口51が設けられている。また、漏斗の先端部に形成されている開口と、分散ガス供給管31の開口32の位置とが合うように、各部が配設されている。さらに、粉体収納室50の外側には、ノッカー52が設置されている。
【0047】
このような粉体収納室50に粉体53を収納すると、粉体は円錐の斜面に沿って移動することにより開口に導かれる。このとき、ノッカー52を駆動して粉体収納室50に振動又は衝撃を与えることにより、粉体53を、よりスムーズに分散ガス供給管31内に落下させることができる。
【0048】
次に、本発明の第6の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。図8は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
図8に示すように、このエアロゾル生成装置は、図5に示す粉体収納室30の替わりに、粉体収納室60を有している。その他の構成については、図5に示すものと同様である。
【0049】
粉体収納室60は、漏斗形状、或いは、漏斗と円筒とを組み合わせた形状を有する容器である。この漏斗の先端部に形成されている開口と、分散ガス供給管31の開口32の位置とが合うように、各部が配設されている。また、粉体収納室60の内部には、ピストン61が備えられている。ピストン61は、例えば、油圧式シリンダや、エアシリンダや、電子式シリンダ等の駆動装置62によって駆動される。
【0050】
このような粉体収納室60に粉体63を収納すると、粉体は円錐の斜面に沿って移動することにより開口に導かれる。このとき、粉体63を開口から押し出すようにピストン61を駆動することにより、粉体63を、よりスムーズに分散ガス供給管31内に落下させることができる。
【0051】
次に、本発明の第7の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。
図9の(a)は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の内部を示す上面図である。図9の(a)に示すように、このエアロゾル生成装置は、図1の(b)に示す攪拌羽11の替わりに、攪拌羽70を有している。その他の構成については、図1に示すものと同様である。なお、図9には4枚の攪拌羽70が示されているが、攪拌羽の数は適宜変更しても構わない。
【0052】
攪拌羽70は、その先端部が粉体収納室1の底面に接触するように配置されている。望ましくは、攪拌羽70を粉体収納室1の側面に接触させても良い。
図9の(b)は、図9の(a)に示す攪拌羽70を示す斜視図である。各攪拌羽70は、その先端部と粉体収納室1の底面との為す角度が小さくなるように、途中から折り曲げられている。また、攪拌羽70は、例えば、ゴムや、シリコンゴムや、テフロン(登録商標)のように、柔軟性に優れた材料によって形成されている。
【0053】
このような攪拌羽70を回転させると、攪拌羽70は、粉体収納室1に収納された粉体を攪拌すると共に、その先端部を押し付けヘラのようにして、下側に入り込んだ粉体を底面に押し付ける。この押し付ける力が、粉体の導出を補助又は促進する駆動力として作用する。それにより、粉体はよりスムーズに溝16に落下するようになる。また、攪拌羽70を上記の材料によって形成することにより、攪拌羽70の端部と粉体収納室1の底面や側面との接触部分が削れることがなくなるので、コンタミネーション(不純物)が粉体に混合してしまうおそれもなくなる。
【0054】
ここで、攪拌羽の形状については、攪拌羽を粉体収納室の底面に対して比較的小さい角度で接触させることができれば、図9の(b)に示すものに限られない。例えば、羽を緩やかに湾曲させた形状にしても良い。或いは、攪拌羽を回転軸に対して斜めに取り付けるようにしても良い。さらに、本実施形態においては、攪拌羽(押し付けヘラ)を回転駆動しているが、平行移動させるように駆動しても良い。
なお、本実施形態においても、攪拌羽70の最下部と回転盤14との間隔を1mm以下とすることが望ましい(即ち、LGAP=LDEP≦1mm)。
【0055】
次に、本発明の第8の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明する。図10は、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
本実施形態に係るエアロゾル生成装置は、図1に示すエアロゾル生成装置において、粉体供給室1の替わりに、図5に示す粉体供給室30を配置したものである。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0056】
本実施形態においては、アシストガスによる補助を受けて粉体供給室30から落下させた粉体を、回転盤14の溝16によって受ける。そして、回転盤14を回転させることにより粉体を所定の位置まで搬送し、その位置において分散ガスを導入することにより粉体を分散させる(図1参照)。
【0057】
本実施形態によれば、回転盤14の回転速度を変化させることにより、分散ガスの導入箇所に単位時間に搬送される粉体の量を正確に制御できるようになる。
なお、本実施形態に係るエアロゾル生成装置の変形例として、粉体供給部30の替わりに、図7に示す粉体供給部室50や、図8に示す粉体供給室60を配置しても良い。
【0058】
以上、本発明の第1〜第8の実施形態に係るエアロゾル生成装置について説明したが、それらの実施形態において用いられた補助手段(粉体の導出を補助又は促進する手段)を複数組み合わせても良い。例えば、図1に示すエアロゾル生成装置に、図6に示すノッカー40を付加しても良いし、図6に示すエアロゾル生成装置に、図9に示す攪拌羽70を取り付けても良い。
【0059】
次に、本発明の一実施形態に係る成膜装置について説明する。図11は、本実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
図11に示すように、この成膜装置は、エアロゾル生成装置100及び成膜部200を有している。エアロゾル生成装置100としては、本発明の第1〜第8の実施形態に係るエアロゾル生成装置のいずれかが適用される。
【0060】
成膜部200は、成膜チャンバ5と、噴射ノズル6と、基板ステージ7と、真空ポンプ8とを含んでいる。成膜チャンバ5の内部は、真空ポンプ8により所定の真空度に維持されている。また、噴射ノズル6は、エアロゾル生成装置100によって生成され、エアロゾル搬送管6aを介して供給されるエアロゾルを噴射する。基板ステージ7は、3次元的に移動可能な可動ステージであり、膜が形成される基板9を固定する。この基板ステージ7を制御することにより、基板9と噴射ノズル6との相対位置及び相対速度が調節される。
【0061】
このような成膜装置において、エアロゾル生成装置100に所望の原料の粉体(例えば、金属粉やセラミックス粉)を配置すると共に、成膜部200の基板ステージに基板9を配置する。原料の粉体の径は、成膜材料の種類や基板材料との関係等により様々であるが、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミックス膜を形成する場合には、粒子径を0.1μm〜10μm程度とすることが好ましい。また、基板としては、SUS(ステンレス鋼)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、シリコン等の様々な部材を用いることができる。さらに、基板材料の上に下地層又は電極層として金属膜を形成したものを、基板9として用いても良い。
【0062】
そして、エアロゾル生成装置100を駆動すると、原料の粉体がガスに分散しているエアロゾルが生成される。このエアロゾルは、エアロゾル搬送管6aを介して噴射ノズル6に供給される。そして、噴射ノズル6によってエアロゾルを基板9に向けて噴射すると、原料の粉体が基板9に衝突して破砕し、メカノケミカル現象により基板9に付着して堆積する。このとき、基板9と噴射ノズル6との相対速度や、基板を往復させる回数を調節することにより、基板9上に堆積する膜の厚さを制御することができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る成膜装置によれば、AD法を用いることにより、気孔率が低くて緻密な金属膜やセラミックス膜等を形成することができる。特にセラミックス膜を形成する場合には、硬度の高い(強固な)膜を形成することが可能となる。なお、AD法においては、基板材料や下地層の材料の硬度と、原料の粉体の硬度や噴射速度との関係によっては、基板等とAD膜(AD法により形成された膜)との界面にアンカー層(原料の粉体が下層に食い込んでいる領域)が観察される場合がある。
また、本実施形態によれば、濃度の安定したエアロゾルを長時間に渡って生成し、成膜部の噴射ノズルに供給することができるので、密度(気孔率)等の膜質や膜厚の安定した良質なAD膜を形成することが可能となる。
【0064】
(実験1)
本発明の第1の実施形態に係るエアロゾル生成装置を用いて、アシストガスによる効果を確認するための実験を行った。
(i)実験方法及び評価方法
次の条件の下でエアロゾルを生成してそれを捕集し、そこに含まれる粉体の量を次の方法により計測した。即ち、図1に示すエアロゾル導出部18に、ニチアス株式会社製のPFAチューブ(内径3mm、外径4mm)の一端を接続し、水で満たした100ccの捕集瓶にPFAチューブの他端を挿入して水中にエアロゾルを吹き込むことにより、この瓶に粉体を捕集した。エアロゾルの生成中には5分ごとに捕集瓶を交換し、60分間に渡って(即ち、捕集瓶12本分)粉体を得た。粉体の捕集後、粉体が混入している水をホットプレートによって蒸発させ、実験前後の捕集瓶の重量を計測することにより粉体供給量を求め、それらの平均値を平均粉体供給量とした。また、粉体供給量の変動幅を次式(1)及び(2)を用いて算出し、絶対値が大きい方を本実験における結果として採用した。
粉体供給量の変動幅=(供給量最小値−平均供給量)/(平均供給量)…(1)
粉体供給量の変動幅=(供給量最大値−平均供給量)/(平均供給量)…(2)
【0065】
(ii)エアロゾル生成条件
試料:平均粒径が0.7μmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)
分散ガスの種類:純酸素(G2グレード)
アシストガスの種類:純酸素(G2グレード)
分散ガスの流量 アシストガスの流量 回転盤の回転数
実施例1−1 3リットル/分 3リットル/分 0.7回転/分
実施例1−2 2リットル/分 4リットル/分 0.7回転/分
比較例1−1 6リットル/分 0リットル/分 0.7回転/分
比較例1−2 6リットル/分 0リットル/分 5.0回転/分
比較例1−3 0リットル/分 6リットル/分 0.7回転/分
なお、上記の実施例及び比較例において、分散ガスの流量とアシストガスの流量とはトータルで同量になる。また、攪拌羽と回転盤との距離LGAPは、約0.3mmとした。
【0066】
(iii)結果
平均粉体供給量 供給量の変動幅
実施例1−1 40mg/分 ±20%
実施例1−2 100mg/分 ±10%
比較例1−1 0mg/分 −
比較例1−2 10mg/分 ±70%
比較例1−3 600mg/分 ±80%
【0067】
上記の結果に示すように、比較例1−1においては、アシストガスを導入していないので、粉体を全く供給することができなかった。また、比較例1−2は、比較例1−1に対して回転盤の回転速度を上げることにより粉体の供給を試みたものであるが、この場合には粉体をごく僅か(約10mg/分)供給できたのみであった。また、供給量の変動幅も±70%とかなり大きい。なお、一般に、粉体の単位時間当りの供給量(g/分)は、溝の容積(cc)と、粉体のかさ密度(g/cc)と、回転盤の回転速度(回転/周)との積によって決定される。さらに、比較例1−3は、アシストガスのみを導入したものであるが、この場合には、大量の粉体が供給され(約600mg/分)、その変動幅はかなり大きくなってしまった(±80%)。これは、アシストガスの流量が多すぎるために回転盤の溝にガスが大量に流れ込み、粉体が気流に流されて制御不能になってしまったためと考えられる。
【0068】
それに対して、分散ガスとアシストガスとを併用した実施例1−1においては、粉体(約40mg/分)を供給することができ、その変動幅も小さい範囲に収まっていた(±20%)。また、実施例1−2は、分散ガスとアシストガスの流量比を変化させたものであるが、この場合には、変動幅をさらに小さくすることができた(±10%)。さらに、この結果から、アシストガスの流量を調節することにより、粉体の供給量を制御できることが確認された。
【0069】
(実験2)
本発明の第1の実施形態に係るエアロゾル生成装置を用いて、攪拌羽11と回転盤14のトップ14aとの間隔LGAPを規定する効果を確認するための実験を行った。
(i)実験方法及び評価方法
実験1と同様の実験方法において、図1に示す攪拌羽11の高さと回転盤14の高さを変化させた。この高さは、株式会社ミツトヨ製のデプスマイクロメータDMSを用いて測定した。また、評価方法は、実験1と同様である。
【0070】
(ii)エアロゾル生成条件
間隔LGAPと、粉体供給室1の内底面1bと回転盤14のトップ14aとの距離LDEP(図2参照)を次のように設定した。それ以外については、実験1の実施例1−2と同様の条件を用いた。
GAPDEP
実施例2−1 0.3mm 0.2mm
実施例2−2 0.6mm 0.5mm
実施例2−3 0.8mm 0.7mm
実施例2−4 1.0mm 0.9mm
比較例2−1 1.3mm 1.2mm
比較例2−2 1.5mm 1.4mm
なお、上記の実施例及び比較例において、攪拌羽11と粉体供給室1の内底面1bとの間隔(LGAP−LDEP)は全て0.1mmである。
【0071】
(iii)結果
平均粉体供給量 粉体供給量の変動幅
実施例2−1 100mg/分 ±10%
実施例2−2 80mg/分 ±25%
実施例2−3 60mg/分 ±30%
実施例2−4 55mg/分 ±35%
比較例2−1 25mg/分 ±90%
比較例2−2 20mg/分 ±100%
また、この結果を図12に示す。図12の横軸は間隔LGAP(mm)を示しており、左側の縦軸は平均粉体供給量(mg/分)を示しており、右側の縦軸は粉体供給量の変動幅の絶対値(%)を示している。
【0072】
上記の結果及び図12に示すように、比較例2−1及び2−2においては、粉体供給量の変動幅が急激に上昇しており(例えば、LGAP=1.3mmの場合に90%)、粉体供給量を制御できなくなっていることがわかる。一方、実施例においては、粉体供給量の変動幅は高くても35%付近に留まっている(例えば、LGAP=1mmの場合)。この結果から、LGAPを1mm以下とすることにより、粉体の供給量が安定することが確認された。
【0073】
(実験3)
本発明の一実施形態に係る成膜装置において、上記の実施例1並びに比較例1及び3における条件の下で生成されたエアロゾルを用いて成膜する実験を行った。
(i)実験方法及び評価方法
最終的に10μm程度の膜を形成することを目標として、平均粉体供給量(即ち、エアロゾル濃度)に基づいて基板ステージの往復回数を設定した。そして、図11に示す成膜装置において、設定された回数だけ基板ステージを往復させることにより膜を形成した。このような成膜を、実験1の実施例1−1並びに比較例1−1及び1−3の条件の下で各々6回行い、それらの膜厚を測定して平均値を得た。また、膜厚の変動幅を、次式(3)及び(4)を用いて算出し、絶対値が大きい方を本実験における結果として採用した。
膜厚の変動幅=(膜厚最小値−平均膜厚)/(平均膜厚)…(3)
膜厚の変動幅=(膜厚最大値−平均膜厚)/(平均膜厚)…(4)
【0074】
(ii)成膜条件
基板材料:YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)
成膜温度:室温
なお、攪拌羽と回転盤との距離LGAPは、約0.3mmとした。
【0075】
(iii)結果
平均粉体供給量 供給量変動 平均膜厚 膜厚変動
実施例1−1 40mg/分 ±20% 10μm ±20%
比較例1−1 0mg/分 − 成膜できず −
比較例1−3 600mg/分 ±80% 12μm ±70%
【0076】
上記の結果に示すように、比較例1−1のエアロゾルを用いた場合には、粉体を供給することができなかったので、膜は形成できなかった。また、比較例1−3のエアロゾルを用いた場合には、粉体の供給量変動が大きいため(±80%)膜厚変動も大きくなり(±70%)、平均膜厚についても、目標とした10μmから大きく離れてしまった(約12μm)。
それに対して、実施例1−1のエアロゾルを用いた場合には、目標値(10μm)に近い膜厚を得ることができ、膜厚変動を小さく抑えることができた(±20%)。
【0077】
以上の2つの実験結果より、エアロゾル生成装置において分散ガスに加えてアシストガスを併用することにより、粉体を長時間(例えば、60分間)に渡って安定して成膜部に供給することができ、また、粉体量を容易に制御できることが確認された。また、そのようにして生成されたエアロゾルを用いることにより、厚さが均一な膜を得ることができ、膜厚の制御をし易くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、粉体をガスに分散させたエアロゾルの生成装置、及び、そのようなエアロゾルを用いて成膜を行う成膜装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示す回転盤のトップ周辺を拡大した断面図である。
【図3】図1に示すエアロゾル導出部付近を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係るエアロゾル生成装置の一部を示す断面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を説明するための図である。
【図10】本発明の第8の実施形態に係るエアロゾル生成装置の構成を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図12】実験2の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1、30、50、60 粉体収納室
1a、51 粉体供給口
1b 粉体収納室の内底面
2 エアロゾル生成部
5 成膜チャンバ
6 噴射ノズル
6a エアロゾル搬送管
7 基板ステージ
8 真空ポンプ
9 基板
10、32 開口
11、70 攪拌羽
11a 攪拌羽の最下部
12、15 回転軸
12a、15a O(オー)リング
13、33 アシストガス導入部
14 回転盤
14a 回転盤のトップ
16 溝
17、20 分散ガス導入部
18、21 エアロゾル導出部
22 粉体導出路
31 分散ガス供給管
34、53、63 粉体
40、52 ノッカー
51 粉体供給口
61 ピストン
62 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納される粉体を導出する開口が形成されている粉体収納室と、
粉体が前記開口から導出される際に、粉体の導出を補助又は促進する補助手段と、
前記開口から導出される粉体を分散させるガスを供給するガス供給手段と、
を具備するエアロゾル生成装置。
【請求項2】
前記補助手段が、前記粉体収納室内にガスを供給する、請求項1記載のエアロゾル生成装置。
【請求項3】
前記補助手段が、前記粉体収納室内の圧力が前記粉体収納室の開口の外部における圧力よりも高くなるように圧力調節を行う、請求項1又は2記載のエアロゾル生成装置。
【請求項4】
前記補助手段が、前記粉体収納室に振動又は衝撃を与える、請求項1〜3のいずれか1項記載のエアロゾル生成装置。
【請求項5】
前記補助手段が、前記開口から粉体を押し出す、請求項1〜4のいずれか1項記載のエアロゾル生成装置。
【請求項6】
前記補助手段が、前記粉体収納室内に備えられたピストンを含む、請求項5記載のエアロゾル生成装置。
【請求項7】
前記補助手段が、前記粉体収納室内に備えられた押し付けヘラを含む、請求項5記載のエアロゾル生成装置。
【請求項8】
前記ガス供給手段が、前記粉体収納室の開口に対応する位置に開口が形成されている管体と、該管体の内部に気流を形成する手段とを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のエアロゾル生成装置。
【請求項9】
前記開口に対向する円周上に所定の幅及び深さを有する溝が形成されている回転体を有し、前記回転体を回転させることにより、前記開口から導出されて溝に配置される粉体を前記ガス供給手段の位置まで搬送する搬送部をさらに具備する請求項1〜7のいずれか1項記載のエアロゾル生成装置。
【請求項10】
前記補助手段が、前記粉体収納室内に収納される粉体を攪拌する回転羽であって、前記回転羽の最下部と前記回転体の最上部との間の距離が1mm以下となるように前記粉体収納室内に配置されている前記回転羽を含む、
請求項9記載のエアロゾル生成装置。
【請求項11】
前記ガス供給手段が、前記回転体に形成されている溝に向けてガスを吹き付ける、請求項9又は10記載のエアロゾル生成装置。
【請求項12】
前記搬送部によって搬送される粉体を前記溝から導出する通路をさらに具備し、
前記ガス供給手段が、前記通路を通って導出される粉体を搬送する気流を発生する、請求項9又は10記載のエアロゾル生成装置。
【請求項13】
原料の粉体をガスに分散させたエアロゾルを基板に向けて吹き付けることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法を用いる成膜装置であって、
請求項1〜12のいずれか1項記載のエアロゾル生成装置と、
基板を固定する基板ステージと、
前記エアロゾル生成装置によって生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、
を具備する前記成膜装置。
【請求項14】
開口が形成された粉体収納室に収納された粉体を、該粉体の導出を補助又は促進しながら前記開口から導出するステップ(a)と、
前記開口から導出された粉体をガスによって分散させるステップ(b)と、
を具備するエアロゾル生成方法。
【請求項15】
ステップ(a)が、前記粉体収納室にガスを供給することを含む、請求項14記載のエアロゾル生成方法。
【請求項16】
ステップ(a)が、前記粉体収納室内の圧力が前記粉体収納室の外部における圧力よりも高くなるように圧力調整することを含む、請求項14又は15記載のエアロゾル生成方法。
【請求項17】
ステップ(a)が、前記粉体収納室に振動を与えることを含む、請求項14〜16のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法。
【請求項18】
ステップ(a)が、前記粉体収納室から粉体を押し出すことを含む、請求項14〜17のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法。
【請求項19】
ステップ(a)が、ピストンを用いることにより前記粉体収納室から粉体を押し出すことを含む、請求項18記載のエアロゾル生成方法。
【請求項20】
ステップ(a)が、押し付けヘラを用いることにより前記粉体収納室から粉体を押し出すことを含む、請求項18記載のエアロゾル生成方法。
【請求項21】
ステップ(b)が、前記開口から導出された粉体を、内部に気流が形成されている管体に投入することを含む、
請求項14〜20のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法。
【請求項22】
ステップ(a)において前記開口から導出された粉体を所定の幅及び深さを有する溝に配置して搬送するステップ(a')をさらに具備し、
ステップ(b)が、ステップ(a')において搬送された粉体にガスを吹き付けることによりエアロゾルを生成することを含む、
請求項14〜20のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法。
【請求項23】
ステップ(a)において前記開口から導出された粉体を所定の幅及び深さを有する溝に配置して搬送するステップ(a')と、
ステップ(a')において搬送された粉体を前記溝から導出するステップ(a'')と、
をさらに具備し、
ステップ(b)が、前記溝から導出された粉体を搬送する気流を発生することを含む、
請求項14〜20のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか1項記載のエアロゾル生成方法を用いることにより、原料の粉体が分散しているエアロゾルを生成するステップ(A)と、
ステップ(A)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて吹き付けて、原料の粉体を基板に衝突させることにより、原料を基板上に堆積させるステップ(B)と、
を具備する成膜方法。
【請求項25】
請求項24記載の成膜方法を用いることにより形成された金属膜。
【請求項26】
請求項24記載の成膜方法を用いることにより形成されたセラミックス膜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−231390(P2007−231390A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56316(P2006−56316)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】