説明

エストロンおよびエストラジオールの2−置換誘導体の調製方法

本発明は、i)一つ以上の工程により一般式(I)の化合物を一般式IIの化合物に導く反応による、一般式(II)の化合物の合成;


[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個のC原子を有するアルキルまたはアルキレン基であり、9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]ii)一般式IIの化合物を一般式IIIの化合物に導く芳香族化;


[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する]および、iii)場合により、一般式IIIの化合物を一般式IVの化合物に導く還元;


[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する]を含むエストロンおよびエストラジオールの2位置換誘導体の合成法を提供する。更に本発明は、上記製法で中間体となりうるいくつかの新規化合物、およびこれら新規化合物の調製法を提供する。本発明はまた、他のエストロゲン性中間体を本質的に含まない2−アルコキシ−エストロン、2−アルコキシ−エストラジオール、またはそれらの混合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロンおよびエストラジオールの2位置換誘導体の調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロンおよびエストラジオールなどの、17−ケトステロイド類または17−ヒドロキシステロイド類の治療的価値は周知である。ステロイド類それ自身に加えて、エストロンおよびエストラジオールの誘導体にも、治療的価値があることが見出されてきた。この点において特に、2−メトキシ−エストラジオールなどのエストロンおよびエストラジオールの2−アルコキシ誘導体に言及する必要がある。
【0003】
2−メトキシエストラジオール、1,3,5(10)−エストラトリエン−2,3,17b−トリオール−2−メチル−エーテル(2−ME2)は、エストラジオールの内因性代謝物である。2−ME2のエストロゲン性活性は低いが、下記のような抗がん活性など、重要な他の生物学的作用を有することが見出されている。
【0004】
米国特許第5,504,074号、第5,66,143号および第5,892,069号には、2−ME2を用いた異常細胞有糸分裂により特徴付けられる哺乳類疾患の治療法が記述されている。加えて国際公開番号WO−A−02/42319には、異常血管新生で特徴付けられる疾患を治療するための2−ME2が記述されている。
【0005】
望ましくない細胞有糸分裂は多くの疾患の特徴であり、がん、アテローム性動脈硬化、固形がんの増殖、血管機能不全、子宮内膜症、網膜症、関節症、および異常創傷治癒を含むが、これに限定されない。加えて、細胞有糸分裂は広範囲の生物学的機能において重要であり、胚の正常発達、黄体の形成、周期的な子宮内膜増殖、創傷治癒および炎症ならびに免疫応答を含むが、これに限定されない。
【0006】
米国特許番号5,521,168には、眼圧を低下させるための2−ME2の使用が記述されている。2−ME2はまた、エストロゲン誘導性下垂体部腫瘍血管新生を阻害し、S.K.BanerjeeらによりProc.Amer.Assoc.Cancer Res.39巻,1998年3月号に報告されたような、Fisher344ラットにおける腫瘍増殖を抑制する。
【0007】
ヒトにおける2−ME2のいかなる治療的使用も、2−ME2が高水準の純度であることを必要とする。特に2−ME2は、エストラジオールおよび他のエストロゲン性代謝物により弱められる作用を有するため、実質的にそのような混入がない2−ME2合成であることが望まれる。混入しているエストラジオール、エストロンおよび2−ヒドロキシエストラジオールにより見られることがある作用には、女性化、子宮内膜増殖、子宮がんおよび乳がんのリスク増大、生殖器の発生効果、白血球形成の阻害および造血細胞への作用などの、エストロゲン性作用を含む。加えて、4−ヒドロキシエストラジオール、4−メトキシエストラジオールおよびエストラジオールは、少なくとも疑いのある発がん性物質として知られている。
【0008】
これらの知見は我々に、2−メトキシエストラジオールなどの、エストロンおよびエストラジオールの2−アルコキシ誘導体を調製する新規合成法を探索することを促した。
【0009】
2−ME2の調製法は当技術分野で既知である。例えば、J.Am.Chem.Soc.、1958年3月5日号、1213−1216ページで公表された、J.Fishmanによる“Synthesis of 2−methoxyestrogens”と題する論文には、エストラジオールから出発する2−メトキシ−エストラジオールの調製が記述されている。また米国特許番号6,051,726にも、エストラジオールから出発する2−アルコキシエストラジオール類の調製が記述されている。しかし、エストラジオールから出発するこのような製法の欠点は、出発物質のエストラジオールおよび/または任意のエストロゲン性中間体などの望ましくないエストロゲン性活性化合物が、最終生成物の2−ME2に混入するリスクである。上記のように、このようなエストロゲン性不純物は、非常に望ましくない。
【0010】
欧州特許出願公開第0776904号は、3−ケト−5(10),9(11)−ゴナジエン誘導体のアルキルケタール類調製の完全に異なる技術分野に関する。その実施例では、エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオンから出発するこのようなゴナジエン誘導体の調製が記述されている。エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオン化合物は、(+)5α−ヒドロキシ−7aβ−メチル−2,3,3aα,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−1H−インデン−1−オン−4α−(3−プロピオン酸)ラクトンと2−ペンタノン−ネオペンチルアセタール−5−マグネシウムクロリドとの縮合;5α−ヒドロキシ基の酸化;第一の環(B)の閉環;ケタールの開裂;第二の環(A)の閉環により調製する。欧州特許出願公開第0776904号には、エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオンの2位置換誘導体の調製は記述されておらず、また提案されてもいない。
【0011】
更に、H.Aliら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1、1991年、2485−2491ページには、適した位置に二重結合を有する19−ノルステロイド類を用いて、C2位またはC4位に官能基を選択的に導入し、ついでA環の芳香族化で2位置換エストラジオールまたは4位置換エストラジオールに導くという経路の可能性が記述されている。この経路に基づくそのような2位置換反応の具体的な例は示されていなかった。
【0012】
2位置換エストラジオール類のその他の調製は、P.W.Le Quesneら、Steroids、53巻/6号、1989年6月号、649−661ページ;L.R.Axelrodら、Chem.&Ind.、1959年11月号、1454−1455ページ;およびM.Mihailovic、Tetrahedron、33巻、1977年、235−237ページに記述されている。
【発明の開示】
【0013】
有利には、エストロンおよびエストラジオールの2−アルコキシ誘導体を調製する新規経路がここに見出された。加えてこの製法は、エストラジオールおよびエストロンの他の誘導体合成にも用いることができる。
【0014】
この新たに見出された経路において、A環の芳香族化は合成の最終工程で行われる。その結果、最終生成物は、エストロゲン性中間体を本質的に含まずに調製される。有利には新たに見出された経路は、シトラクトンまたはその誘導体から開始できる。シトラクトンは比較的安価であり、例えばJ.Fishmanにより記述された経路よりも、そのような経路を経済的により魅力的にする。
【0015】
従って本発明は、
i)一般式(I)の化合物を一工程または複数工程で一般式IIの化合物に導く反応による、
【0016】
【化22】

【0017】
一般式(II)の化合物の調製;
【0018】
【化23】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、式中、R2は、1−6個のC原子を有するアルキルまたはアルキレン基であり;9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]
ii)一般式IIの化合物を一般式IIIの化合物に導く芳香族化;
【0019】
【化24】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する];および
iii)場合により、一般式IIIの化合物を一般式IVの化合物に導く還元;
【0020】
【化25】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する]
を含むエストロンおよびエストラジオールの2位置換誘導体の調製法を提供する。
【0021】
更に本発明は,上記製法において中間体となりうる数種の新規化合物、およびこれらの新規化合物の調製法を提供する。
【0022】
更に、上述のように、本発明の製法は、エストロゲン性中間体を基本的に含まない、2−アルコキシ−エストロンまたは2−アルコキシエストラジオール、またはそれらの混合物の調製に利用できる。
【0023】
(本発明の詳細な説明)
先に指摘したように本発明は、エストロン、エストロン誘導体、エストラジオールおよび/またはエストラジオール誘導体の調製法を提供する。しかし、本製法は、エストロンおよび/またはエストラジオールの2−アルコキシ誘導体の合成に特に有利である。従って具体的な実施形態において本発明は、エストロンおよび/またはエストラジオールの2−アルコキシ誘導体、すなわち2位がアルコキシ基で置換されたエストロンおよび/またはエストラジオールの、上述のような調製成法を提供する。更に本発明は、2−メトキシ−エストロンおよび/または2−メトキシエストラジオールのこのような調製法を提供する。上記のようにそのような製法は、最終生成物中の一切のエストロゲン性中間体を最少化するため、特に有利である。
【0024】
式II、IIIおよびIVにおけるR1は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert.−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert.−ペンチルまたはネオ−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルなどの、1個から10個の炭素原子を有する、分岐または直鎖アルキル基であることができる。R1がアルキル基である具体的な実施形態において、R1はメチルまたはエチル基である。R1がアルケニル基である基の例には、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニルおよびペンテニルが含まれる。R1がアリール基である基の例には、フェニル、ベンジルおよびトリルが含まれる。
【0025】
本発明の具体的な実施形態において、式II、IIIおよびIV中のR1は−OH;または−OR2基であり、式中、R2は、1−6個の炭素原子を有するアルキル基である。更なる実施形態において、R1はC1−C6アルコキシ基、すなわち−OR2基であり、式中、R2は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。こそのようなアルコキシ基の例には、メトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、イソプロポキシ−、ブチルオキシ−、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ−が含まれる。更なる実施形態において、式II、IIIおよびIVにおけるR1はメトキシまたはエトキシ基であり、より更なる実施形態において、R1はメトキシ基である。
【0026】
R1がアルコキシ基の場合、本発明は2−アルコキシ エストロンおよび/または2−アルコキシ−エストラジオールの調製法を提供する。本製法の工程ii)に従って調製した2−アルコキシ−エストロンの還元により、2−アルコキシ−エストラジオールが得られる。
【0027】
式IIにおける9番原子と10番原子との間の結合は、単結合または二重結合であることができる。しかし、本発明の具体的な実施形態において、9番原子と10番原子との間の結合は二重結合である。
【0028】
一般式IIの化合物を一般式IIIの化合物に導く工程ii)における芳香族化は、本製法に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。このような芳香族化の例には、カリウム−tert−ペントキシドなどの芳香族化剤、および無水酢酸の使用;およびアロマターゼなどの酵素の使用が含まれる。
【0029】
具体的な実施形態において芳香族化は、カリウムペントキシドで行う。
【0030】
もう一つ別の具体的な実施形態において芳香族化は、エチレンジアミン中のリチウムを用いて行う。
【0031】
式IIにおける9番原子と10番原子との間の結合が二重結合である場合、芳香族化によって、一般式IIIの化合物の2異性体、9−アルファ−H異性体および9−ベータ−H異性体を得ることができる。このうち、ヒト体内に天然に存在する9−アルファ−H異性体の合成が好ましい。有利には、9番原子と10番原子との間の結合が二重結合である一般式IIの化合物のエチレンジアミン中のリチウムを用いた芳香族化によって、9−アルファ−H異性体を主成分として含む異性体混合物が得られる。
【0032】
更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、ジエチルアミン、テトラヒドロフラン;およびそれらの混合物が含まれる。反応中の温度は広範に変化してよい。1つの実施形態において、反応は0℃から60℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は室温(20−25℃)で行う。
【0033】
更なる実施形態において、混合物は、ついで塩基性溶液を用いて反応停止し、酸塩基抽出により混合物から残存出発物質を除去する。
【0034】
一般式IVの化合物に導く一般式IIIの化合物の工程iii)での還元は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの実施形態において還元は、還元剤の作用により行う。適した還元剤の例には、NaBHおよびLiAlHが含まれる。具体的な実施形態において、還元剤としてNaBHを使用うる。更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、メタノールおよびエタノールなどのアルカノール類;ジエチルアミン;テトラヒドロフラン;およびそれらの混合物が含まれる。反応中の温度は広範に変化することができる。1つの実施形態において、反応は0℃から70℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は室温(20−25℃)で行う。
【0035】
一般式IIの化合物のいくつかは、新規であると考えられる。従って本発明はまた、一般式IIの化合物を提供する
【0036】
【化26】

[式中、R1およびR2は上記で規定されたものであり;9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]。
【0037】
具体的な実施形態において、R1はC1−C6アルコキシ基、すなわち−OR2基であり、式中、R2は、1個から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。このようなアルコキシ基の例には、メトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、イソプロポキシ−、ブチルオキシ−、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ−が含まれる。更なる実施形態において、式II、IIIおよびIVにおけるR1はメトキシまたはエトキシ基であり、更なる実施形態において、R1はメトキシ基である。
【0038】
有利には一般式IIの化合物は、シトラクトン((4aS−(4aα,6aα,9aβ,9bα))−デカヒドロ−6a−メチルシクロペンタ(f)(1)ベンゾピラン−3,7−ジオン)とも呼ばれる、一般式Iの化合物から調製される。
【0039】
具体的な実施形態において、式IIの化合物は、
a)一般式Iの化合物と一般式Vの化合物との反応で、一般式(VI)の化合物を調製する;
【0040】
【化27】

【0041】
【化28】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有し;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基であり;XはClまたはBrから選択される]
【0042】
【化29】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
b)一般式(VI)の化合物のヒドロキシ基の酸化で、一般式(VII)の化合物を生成する;
【0043】
【化30】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
c)一般式VIIの化合物のB環の閉環で、一般式VIIIの化合物を調製する;
【0044】
【化31】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
d)一般式VIIIの化合物を一工程または複数工程で反応させて、一般式IIの化合物に導く;
工程を含む製法で調製する。
【0045】
具体的な実施形態において、工程a)におけるカップリング反応は、グリニャール反応を用いて行われ、ここで一般式Vの化合物は最初に一般式Vaの化合物に変換される。
【0046】
【化32】

【0047】
この反応に適した溶媒には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0048】
具体的な実施形態において、粉末マグネシウムを用い、これをジブロモエタンで活性化し、その後一般式Vの化合物を加えて一般式Vaの化合物を調製する。後者を、一般式Iを含む溶液または懸濁液に分割添加して、一般式VIの化合物を生成する。更なる実施形態において、反応は還流温度および大気圧(1bar)で行う。好ましくは、得られた生成物を、ヘプタンと酢酸エチルの1:1混合物から結晶化して精製する。
【0049】
工程b)で一般式VIIの化合物を生じるための、一般式VIの化合物のヒドロキシ基の酸化は、この目的に適することが当業者に周知の任意の酸化方法で行うことができる。適した酸化方法の例には、クロム酸、酸化クロム/ピリジン、塩素/ピリジン、二クロム酸カルシウム、クロム酸ピリジン類およびN−ブロモスクシンイミドなどの酸化剤を用いた処理;およびオッペナウアー酸化が含まれる。1つの具体的な実施形態において酸化は、アセトン中のクロム酸を用いた酸化で行う。第二の実施形態において酸化は、過ルテニウム酸テトラ−n−プロピルアンモニウム(TPAP)およびN−メチルモルホリン N−オキシド(NMO)を用いて行う。代替溶媒としてジクロロメタンを使用できる。
【0050】
工程c)における一般式VIIIの化合物を調製するための、一般式VIIの化合物のB環の閉環は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。B環においてそれら炭素原子は、最終生成物のエストロン誘導体またはエストラジオール誘導体のB環を形成するものと理解される。1つの具体的な実施形態において閉環工程は、アルカリ性条件下でのアルドール縮合により行われ、更なる実施形態においてこの縮合にアルドール生成物の脱水が続く。用いることができる適した塩基の例には、カリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ペントキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが含まれる。当業者はより多くの塩基を用いることができることを更に理解するであろう。更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、トルエン;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルカノール類;テトラヒドロフラン;およびそれらの混合物が含まれる。具体的な実施形態において、メタノール、トルエンおよび水の混合物を溶媒として用いる。反応中の温度は広範に変化できる。1つの実施形態において、反応は0℃から80℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は室温(20℃−25℃)で行う。別の実施形態において反応は、55℃から75℃の温度範囲内で行う。更なる実施形態において、得られた一般式VIIIの化合物を、アルコールなどの適した溶媒からの結晶化で精製する。具体的な実施形態において、一般式VIIIの化合物をイソプロパノール中での結晶化で精製する。
【0051】
工程d)による一般式VIIIの化合物からの一般式IIの化合物の合成は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの具体的な実施形態において工程d)の反応は、
d1)一般式IXの化合物を得るための、9番原子と10番原子との間の結合が二重結合である一般式VIIIの化合物の加水分解;
【0052】
【化33】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する]
d2)9番原子と10番原子との間の点線の結合が二重結合である一般式IIの化合物を得るための、一般式IXの化合物からのA環の閉環;
を含む。
【0053】
代替的な実施形態において工程d)の反応は、
d3)一般式Xの化合物を得るための、一般式VIIIの化合物の9番原子と10番原子との間の二重結合の水素化;
【0054】
【化34】

d4)一般式XIの化合物を得るための、一般式Xの化合物の加水分解;
【0055】
【化35】

d5)9番原子と10番原子との間の点線の結合が単結合である一般式IIの化合物を得るための、一般式XIの化合物のA環の閉環;
を含む。
【0056】
A環においてそれらの炭素原子は、最終生成物のエストロン誘導体またはエストラジオール誘導体のA環を形成するものと理解される。
【0057】
工程d1)の加水分解は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの実施形態において加水分解は、酸性条件下で行う。適した加水分解剤の例には、塩酸、硫酸、パラ−トルエンスルホン酸およびリン酸などの、ハロゲン化水素類、リン酸類、スルホン酸類および硫酸類が含まれる。1つの実施形態において、加水分解剤として硫酸(HSO)を用いる。この目的に適することが当業者に周知のいかなる溶媒も、反応中の溶媒として用いることができる。適した溶媒の例には、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのC1−C6アルカノール類が含まれる。1つの実施形態において溶媒としてエタノールを用いる。反応中の温度は広範に変化できる。1つのある実施形態において、反応は0℃から40℃の温度範囲内で行われ、具体的な実施形態において、反応は室温(20℃−25℃)で行う。
【0058】
工程d2)のA環の閉環は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの具体的な実施形態において閉環工程は、アルカリ性条件下でのアルドール縮合により行い、更なる実施形態においてこの縮合にアルドール生成物の脱水が続く。用いることができる適した塩基の例には、カリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ペントキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが含まれる。当業者はより多くの塩基を用いてよいと更に理解するであろう。更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、トルエン;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルカノール類;テトラヒドロフラン;およびそれらの混合物が含まれる。反応中の温度は広範に変化してよい。ある実施形態において、反応は0℃から80℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は室温(20℃−25℃)で行う。
【0059】
工程d3)の水素化は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの実施形態においてPd/Cおよび水素を水素化に用いる。更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、テトラヒドロフラン;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルカノール類;およびそれらの混合物が含まれる。具体的な実施形態において、溶媒としてエタノールを用いる。反応中の温度は広範に変化できる。1つの実施形態において、反応は0℃から80℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は25℃から60℃の温度範囲内で行う。
【0060】
工程d4)の加水分解は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの実施形態において加水分解は酸性条件下行う。適した加水分解剤の例には、塩酸、硫酸、パラ−トルエンスルホン酸およびリン酸などの、ハロゲン化水素類、リン酸類、スルホン酸類および硫酸類が含まれる。1つの実施形態において、加水分解剤として硫酸(HSO)を用いる。この目的に適することが当業者に周知のいかなる溶媒も、反応中の溶媒として用いることができる。適した溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどのC1−C6アルカノール類が含まれる。1つの実施形態において、溶媒としてエタノールを用いる。反応中の温度は広範囲で変化してよい。1つの実施形態において、反応は0℃から40℃の温度範囲内で行い、具体的な実施形態において、反応は室温(20℃−25℃)で行う。
【0061】
工程d5)のA環の閉環は、この目的に適することが当業者に周知の任意の方法で行うことができる。1つの実施形態において閉環工程は、アルカリ性条件下でのアルドール縮合により行い、更なる実施形態においてこの縮合にアルドール生成物の脱水が続く。用いることができる適した塩基の例には、カリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ペントキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが含まれる。当業者はより多くの塩基を用いてよいと更に理解するであろう。更なる実施形態において、反応は適した溶媒中で行う。適した溶媒の例には、トルエン;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルカノール類;テトラヒドロフラン;およびそれらの混合物が含まれる。反応中の温度は広範に変化できる。ある実施形態において、反応は0℃から80℃の温度範囲内で行う。具体的な実施形態において、反応は室温(20℃−25℃)で行う。
【0062】
前述の中間体の多くは新規であると考えられる。従って本発明はまた、一般式Vの化合物
【0063】
【化36】

および一般式VaであるそのMg活性化対応物
【0064】
【化37】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有し、XはClまたはBrから選択される]を提供する。更なる実施形態において、R3およびR4は独立にメチルまたはエチル基である。具体的な実施形態において、R3およびR4はメチル基であり、R1はメトキシ基である。一般式Vによる適した化合物の例には、例えば2−(3−クロロ−1−メトキシ−プロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサンおよび2−(3−ブロモ−1−メトキシプロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサンが含まれる。一般式Vaによる適した化合物の例には、例えば3−メトキシ−2−ペンタノン−ネオペンチルアセタール−5−マグネシウムクロリドおよび3−メトキシ−2−ペンタノン−ネオペンチルアセタール−5−マグネシウムブロミドが含まれる。
【0065】
一般式(V)の化合物は例えば、適切に置換されたプロペン化合物のハロゲン化により調製できる;1個のハロゲン原子をニトリル基で置換し;グリニャール反応によりメチル基を付加し、3位に適切な基が置換した5−クロロ−ペンタン−2−オン化合物へ変換し;酸性条件下におけるネオペンチルグリコールとの反応で、一般式(V)の化合物を得る。2−(3−クロロ−1−メトキシ−プロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサンの調製は、図1に図示している。
【0066】
更に本発明は、R1、R2、R3およびR4が上で定義した意味を有する一般式(VI)の化合物を提供する。
【0067】
【化38】

【0068】
更に本発明は、R1、R2、R3およびR4が上で定義した意味を有する一般式VIIの化合物を提供する。
【0069】
【化39】

【0070】
更に本発明は、R1、R2、R3およびR4が上で定義した意味を有する一般式VIIIの化合物を提供する。
【0071】
【化40】

【0072】
更に本発明は、R1およびR2が上で定義した意味を有する一般式IXの化合物を提供する。
【0073】
【化41】

【0074】
更に本発明は、R1、R2、R3およびR4が上で定義した意味を有する一般式Xの化合物を提供する。
【0075】
【化42】

【0076】
更に本発明は、R1およびR2が上で定義した意味を有する一般式XIの化合物を提供する。
【0077】
【化43】

【0078】
本発明を、以下の非限定的な実施例および図2の反応スキームにより説明する。
【実施例1】
【0079】
工程A:(3aα,4α,5α,7aα)5−ヒドロキシ−7a−メチル−4[7−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オンの調製
マグネシウム粉末50メッシュ(10g)を乾燥テトラヒドロフラン(70ml)に懸濁した。この懸濁液を50℃まで加熱した。
ジブロモエタン(500μl)を加えた後、激しい反応が発生した。2−(3−クロロ−1−メトキシ−プロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサンの最初の一部(2g)を加えた。
還流で1時間撹拌後、2−(3−クロロ−1−メトキシ−プロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサン(35g)を加えた。
還流で20時間撹拌後、反応混合物を20℃に冷却した。
未反応のマグネシウムを沈下させ、上層をシリンジに抜き取り、(4aS−(4aα,6aα,9aα,9bα))−デカヒドロ−6a−メチルシクロ−ペンタ(f)(l)ベンゾピラン−3,7−ジオン(シトラクトン、28g)のテトラヒドロフラン(110ml)懸濁液に−35℃で加えた。
−30℃で4時間撹拌後、温度を1時間で20℃に上げた。
【0080】
塩化アンモニウム溶液(200mlの水に10g)を、反応混合物に40分で滴下して加えた。
その懸濁液を1時間撹拌し、Dicalite(登録商標)フィルター上でろ過した。
フィルターをジクロロメタンで洗浄した(100mlで2回)。
減圧下30℃で溶媒がなくなるまで溜去し、残渣をジクロロメタンで抽出した(100mlで5回)。有機層を合わせて減圧下30℃で濃縮した。
乾燥後、51.6gの粗(3aα,4α,5α,7aα)5−ヒドロキシ−7a−メチル−4[7−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オンを得た。
【実施例2】
【0081】
工程B:(3aα,4β,5α,7aβ)−5−オキソ−7a−メチル−4[6−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オンの調製、ヒドロキシ基の酸化
(3aα,4α,5α,7aα)5−ヒドロキシ−7a−メチル−4[7−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オン(85g)のジクロロメタン(450ml)溶液に、N−メチルモルホリン(35g)と過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(2g)を20℃で加えた。
20℃で20時間撹拌後、シリカ(50g)を加えた。
Dicalite(登録商標)フィルター上でシリカを用いて反応混合物をろ過し、フィルターをジクロロメタンで洗浄した(500ml)。
ろ液を30℃で乾固するまで溜去した。
約10%の出発物質を含む、75.36gの粗(3aα,4β,5α,7aβ)−5−オキソ−7a−メチル−4[6−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オンを得た。
【実施例3】
【0082】
工程C:(3aα,9aα,9bβ)−4,5,8,9,9a,9b−ヘキサヒドロ−3a−メチル−6−(2−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−メトキシエチル)−1H−ベンズ(e)インデン−3,7(2H,3aH)−ジオンの調製、B環の形成
カリウム−tert−ブトキシド(6.4g)をトルエン(100ml)および2−プロパノール(32ml)に20℃で懸濁させた。
カリウム−tert−ブトキシド/トルエン/2−プロパノール混合物に、(3aα,4α,5α−7aα)−5−オキソ−7a−メチル−4[6−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オン(80g)のトルエン(400ml)溶液を30分で加えた。
反応混合物を20℃で2時間撹拌後、反応混合物を酢酸(8ml)でpH=4に酸性化した。
水(300ml)を加えて20℃で15分撹拌した後、層を分離した。
水層をトルエンで抽出し(100mlで3回)、合わせた有機層を、水酸化ナトリウム(5g)の水溶液(100ml)で抽出した。有機層を減圧下50℃で乾固するまで溜去した。
残渣を2−プロパノール(300ml)に50℃で溶解し、その溶液を10℃に冷却した。
10℃で2時間撹拌後、白色の一番晶(7.8g)を得た。
母液を乾固するまで溜去し、ヘプタン(50ml)に溶解した。
その溶液を70℃で30分間撹拌し、ついで20℃に冷却した。
その懸濁液を20℃で50時間撹拌後、白色の二番晶(11.5g)を得た。
【実施例4】
【0083】
工程BおよびC:(3aα,9aα,9bβ)−4,5,8,9,9a,9b−ヘキサヒドロ−3a−メチル−6−(2−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−メトキシ−エチル)−1H−ベンズ(e)インデン−3,7(2H,3aH)−ジオンの調製酸化とアルドール縮合の組み合わせ
トルエン(690ml)とピリジン(162ml)の混合物中の(3aα,4α,5α,7aα)5−ヒドロキシ−7a−メチル−4[7−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−5−メトキシ−3−オキソヘキシル]−1H−インデン−1−オン(147g)の溶液を、−2℃冷却した。
塩素ガス(42g)を2時間で反応混合物中に導入した。
反応混合物を−2℃で2時間撹拌後、亜硫酸ナトリウム(93g)と炭酸ナトリウム(78g)の水溶液(750ml)中に、10℃で反応混合物を注いだ。
その混合物を20℃で30分間撹拌後、層を分離した。水層をトルエンで抽出した(150mlで4回)。
合わせた有機層を減圧下50℃で乾固するまで溜去した。
残渣をトルエン(660ml)に溶解した。
そのトルエン溶液に、水(185ml)およびメタノール(430ml)中の水酸化カリウム(127.5g)の溶液を加えた。
65℃で45分間撹拌後、反応混合物を20℃に冷却した。
層を分離し、有機層を50%メタノール(水溶液)で洗浄した(175mlで2回)。合わせた水/メタノール抽出層をジクロロメタンで洗浄した(100mlで4回)。
合わせた有機層を減圧下40℃で乾固するまで溜去し、残渣を2−プロパノール(250ml)に50℃で懸濁させた。
50℃で15分間撹拌後、その懸濁液を10℃で1時間撹拌し、結晶をろ過して2−プロパノールで洗浄した(10mlで2回)。
乾燥後、58.04gの生成物を得た。
【実施例5】
【0084】
工程D:2−メトキシ−(+)4,5−セコ−エストロ−9−エン−3,5,17−トリオンの調製、ケタールの加水分解
(3aα,9aα,9bα)−4,5,8,9,9a,9b−ヘキサヒドロ−3a−メチル−6−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−メトキシ−エチル)−1H−ベンズ(e)インデン−3,7(2H,3aH)−ジオン(16.2g)のエタノール(200ml)懸濁液に、硫酸(2mL)をこの懸濁液に20℃で加えた(pH=2)。
反応混合物を40℃で2時間撹拌した。
酢酸ナトリウム(3.5g)の水溶液(100ml)を反応混合物に加えた。
反応混合物を20℃に冷却した。
ジクロロメタン(100ml)および水(100ml)を加えた後、混合物を20℃で30分間撹拌し、層を分離した。
水層をジクロロメタンで抽出した(50mlで3回)。
ジクロロメタン抽出層を合わせて、50℃で乾固するまで溜去し、16.7gの組成生物を得た。
【実施例6】
【0085】
工程E:2−メトキシ−エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオンの調製と精製、A環の形成
2−メトキシ−(+)4,5−セコ−エストロ−9−エン−3,5,17−トリオン(10g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を、30分でカリウム−tert−ブトキシド(750mg)のテトラヒドロフラン(50ml)懸濁液に20℃で加えた。
20℃で7時間撹拌後、反応混合物を4.0N硫酸でpH=6に中和した。
反応混合物を減圧下35℃で濃縮した。
残渣をジクロロメタン(100ml)に溶解し、水で抽出した(50mlで2回)。
有機層を35℃で乾固するまで溜去し、8.1gの粗生成物を得た。
【実施例7】
【0086】
工程F:2−メトキシ−エストロンの調製、芳香族化
リチウム(0.58g)をエチレンジアミン(100ml)に100℃でゆっくりと加えた。
その混合物を100℃で30分間撹拌後、20℃に冷却した。
その試薬に20℃で、2−メトキシ−エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオン(5g)のエチレンジアミン(20ml)溶液を30分で加えた。
20℃で3時間撹拌後、反応混合物を水(250ml)に注いだ。
硫酸でpH=7に酸性化した。
20℃で12時間撹拌後、淡褐色結晶が得られ、ろ別した。
粗生成物(6g)をシリカ上でろ過して無機塩を除き、1.7gの生成物を得た。生成した9α−H異性体の、生成した9α−H異性体に対する比は、約7:1であった。
【実施例8】
【0087】
工程F:2−メトキシ−エストロンの調製、芳香族化
20℃で2−メトキシ−エストラ−4,9−ジエン−3,17−ジオン(500mg、1.66mmol)をテトラヒドロフラン(12.5ml)に溶解した。その後、1.7Mカリウム−tert−ペントキシド溶液(5mlのトルエン、8.5mmolのカリウム−tert−ペントキシド)を加えた。反応を25mlの1M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液で停止した。水層を分離し、2M硫酸でpHを4にした。ジクロロメタン(15ml)を3回に分けて抽出した後、有機層を乾固するまで溜去して、200mgの粗生成物を得た。
最初の有機層(テトラヒドロフラン/トルエン)は、かなりの量の生成物を含むと思われた。乾固するまで溜去後、250mgの生成物を得た。
生成した9α−H異性体の、生成した9α−H異性体に対する比は、約1:1であった。
【実施例9】
【0088】
工程G:2−メトキシ−エストラジオールの調製、還元
2−メトキシエストロン(2g)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液に、33%水酸化ナトリウム(200μl)と水(2ml)を20℃で加えた。
水素化ホウ素ナトリウム(0.25g)を反応混合物にゆっくりと加えた。
反応混合物を20℃で1時間撹拌し、酢酸でpH=7に中和した。
30分間撹拌後、層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した(10mlで2回)。
有機層を合わせて35℃で乾固するまで溜去した。
残渣(2.1g)をシリカ(200g)上でトルエンと酢酸エチルの混合物(トルエンと酢酸エチルの体積比9:1)でクロマトグラフィー分離した。
アセトンとエタノールから結晶化して、400mgの2−メトキシエストラジオールを得た。
【図面の簡単な説明】
【0089】
本発明を説明するために以下の図を同封した。
【図1】2−(3−クロロ−1−メトキシ−プロピル)−2,5,5−トリメチル−[1,3]ジオキサンの合成の反応式である。
【図2】2−メトキシエストラジオールの調製の反応式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロンおよびエストラジオールの2−置換誘導体の調製方法であって、
i)一般式(I)の化合物を一つ以上の工程で一般式IIの化合物に導く反応による、
【化1】

一般式(II)の化合物の調製;
【化2】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個のC原子を有するアルキルまたはアルキレン基であり;および9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]
ii)一般式IIの化合物を一般式IIIの化合物に導く芳香族化;
【化3】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する];および
iii)場合により、一般式IIIの化合物を一般式IVの化合物に導く還元;
【化4】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有する]
を含む、方法。
【請求項2】
一般式II、IIIおよびIVの化合物において、R1が−OR2基であり、R2が1個から6個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式IIにおいて、9番原子と10番原子との間の結合は二重結合である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程ii)における芳香族化がエチレンジアミン中のリチウムの作用により行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程iii)における還元が還元剤としてNaBHを用いて行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一般式IIの化合物
【化5】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個のC原子を有するアルキルまたはアルキレン基であり;9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]。
【請求項7】
一般式IIの化合物の調製方法であって、
【化6】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個のC原子を有するアルキルまたはアルキレン基であり;9番原子と10番原子との間の結合は単結合または二重結合である]
a)一般式Iの化合物を一般式Vの化合物と反応させて、
【化7】

【化8】

[式中、R1およびR2は上で定義した意味を有し;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基であり;およびXはClまたはBrから選択される]
一般式(VI)の化合物を調製する;
【化9】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
b)一般式(VII)の化合物を生成するために、一般式(VI)の化合物のヒドロキシ基を酸化する;
【化10】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
c)一般式VIIIの化合物を合成するために、一般式VIIの化合物のB環を閉環する;
【化11】

[式中、R1、R2、R3およびR4は上で定義した意味を有する]
d)一般式IIの化合物に導くために、一般式VIIIの化合物を一以上の工程で反応させる;
工程を含む、方法。
【請求項8】
工程d)の反応が
d1)一般式IXの化合物を得るための、9番原子と10番原子との間の結合が二重結合である一般式VIIIの化合物の加水分解;
【化12】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個のC原子を有するアルキル基またはアルキレン基である]
d2)一般式IXの化合物から、9番原子と10番原子との間の結合が二重結合である一般式IIの化合物を得るための、A環の閉環;
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程d)の反応が
d3)一般式Xの化合物を得るための、一般式VIIIの化合物の9番原子と10番原子との間の二重結合の水素化;
【化13】

d4)一般式XIの化合物を得るための、一般式Xの化合物の加水分解;
【化14】

d5)9番原子と10番原子との間の結合が単結合である一般式IIの化合物を得るための、一般式XIの化合物のA環の閉環;
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
一般式Vの化合物
【化15】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1−6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基であり;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基であり、XはClまたはBrから選択される]。
【請求項11】
一般式(VI)の化合物
【化16】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基であり;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基である]。
【請求項12】
一般式(VII)の化合物
【化17】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2または−R2−OH基であり;R2は、1から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基であり;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基である]。
【請求項13】
一般式VIIIの化合物
【化18】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基であり;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基である]。
【請求項14】
一般式IXの化合物
【化19】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基である]。
【請求項15】
一般式Xの化合物
【化20】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基であり;R3およびR4は独立に1個から6個の炭素原子を含むアルキル基である]。
【請求項16】
一般式XIの化合物
【化21】

[式中、R1は、C1−C10アルキル、アルケニルまたはアリール基;−Cl、−Br、−I、−F;−CN;−OH;または−OR2、−O(CO)R2もしくは−R2−OH基であり、R2は、1個から6個の炭素原子を含むアルキルまたはアルキレン基である]。
【請求項17】
本質的にエストロゲン性中間体を含まない2−アルコキシ−エストロン、2−アルコキシ−エストラジオール、またはそれらの混合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−509109(P2008−509109A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524335(P2007−524335)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053732
【国際公開番号】WO2006/013196
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】