説明

エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法

【解決手段】本発明は、エチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法を提
供する。その方法として、エチレン−ビニル アルコール共重合体溶液を押出成形機のダ
イに通し、カッターナイフを用いてエチレン−ビニル アルコール共重合体溶液をペレッ
ト状に切断すると共に、流動する凝縮用流体により直接ペレット状のエチレン−ビニル
アルコール共重合体を冷却して析出させて取り出し、次に、固液分離装置を用いてエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットを単離する工程を含むものである。
【効果】本発明の方法により、連続して安定な造粒が可能となり、形状とサイズが均一したエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法に関し、特に、
その形状と大きさが均一したエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの連続的製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体を凝縮するために用いられる凝縮用流体中、酢酸及び/又は燐酸塩類などの添加剤を加えるとともにエチレン−ビニルアルコール共重合体の耐熱性を改良する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(Ethylene-Vinyl Alcohol Copolymer, 以下EVOHと略称する)は、非常に優れた酸素バリアー性、耐溶剤性、透明性と加工特性など多くの優れた特性を有するため、フィルム、シートや繊維に広く加工され、食品又は薬品の包装材料、或いは瓶、ガソリンタンクなどの容器を製造する材料として、EVOHは広く利用されている。
【0004】
一般、周知のEVOHの重合工程は、ビニル酢酸とエチレンとを原料に、フリーラジカル溶液共重合反応により製造される。通常、この反応は、メタノールを重合反応溶剤として使用し、55〜75℃範囲の反応温度下で行われ、加工特性とガスバリアー性を兼ね備える観点から、通常、反応圧力は25〜60kg/cm2Gの範囲に調整され、これにより適当なエ
チレン含量を維持する。重合反応終了後、エチレン−ビニルアセテート共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate Copolymer, 以下EVOAcと略称する)を得る。次に、EVOAcを含有するメタノール溶液の圧力を緩めて未反応のエチレンを除去した後、メタノールストリッパーにより未反応のビニルアセテートを除去し、その後、鹸化処理(saponification)することで、EVOH溶液を得る。例えば、米国特許第 384765号明細書(特許文献1)において、鹸
化(saponifying)処理後のエチレン−ビニルアセテート共重合体の単離・精製方法が開示
されている。この方法によると、含水メタノール中、アルカリ触媒を用いて、エチレン−ビニルアセテート共重合体を鹸化し、これにより得た水溶液をノズル或いは小さな隙間から押し出して、稀メタノール溶液又は水によりなる凝集バスの溶液中に入れることで、ミクロ多孔状のチップあるいは条状物(strands)を形成し、次に、水洗することにより上
記のチップ或いは条状物における鹸化で発生した酢酸塩と過剰のアルカリ触媒を除去し、乾燥する。
【0005】
また、例えば、米国特許第 6238606号明細書(特許文献2)において、鹸化したエチレン−ビニルアセテート共重合体からその粒片状物を製造する方法が開示されている。この方法によると、条状物状態において、鹸化したエチレン−ビニルアセテート共重合体(エチレン−ビニルアルコール共重合体とも称し、以下EVOHと略称する)溶液を、凝集溶液として押出し、得られる条状物をカットする方法において、上記凝集液の重量(X)と、鹸
化したエチレン−ビニルアセテート共重合体の重量(Y)との比率X/Yが、50〜1000の範囲内に設定されている。しかるに、この‘606号特許中、凝集液を利用し、EVOH溶液を析出して造粒する場合、EVOH溶液の析出量または凝集液組成をコントロールする必要があり、このEVOH析出量が増加したり又は凝集液組成が変化した場合、析出した条状物が断裂し易くなり、また、EVOH溶液中に多くの水分を含む場合も同様に析出した条状物が断裂し易くなり、形成したペレットのサイズが不均一になり、安定した操作が難しくなる。
【0006】
この外、EVOH製品の加工の際の耐熱性を高めるため、例えば、日本特公昭46−37664号
公報(特許文献3)において、EVOH中に酢酸、蟻酸、酒石酸などの添加剤でEVOHを処理する方法が開示されている。また、日本特公昭55−19242号公報(特許文献4)においても
、EVOH中に酢酸、燐酸の混合溶液を添加して、その加工時の耐熱性を改善する方法が記載されている。なお、日本特公昭57−5834号公報(特許文献5)の開示によると、EVOH溶液中で有機酸とそのナトリウム塩またはカリウム塩の混合物を利用することで、その加工時の耐熱性を高めることが示されている。
【0007】
これら従来の技法によると、条状析出EVOHの断裂を生じ易く、または形成されるEVOHペレットのサイズが不均一になり、安定した操作が難しいなどの問題に鑑み、本発明の研究者らは、エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造工程について広く研究を重ね、遂に本発明を完成するに至った。
【特許文献1】米国特許第 384765号明細書
【特許文献2】米国特許第 6238606号明細書
【特許文献3】特公昭46−37664号公報
【特許文献4】特公昭55−19242号公報
【特許文献5】特公昭57−5834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール(EVOH)共重合体ペレットの製造方法を提供するものであって、エチレン−ビニル アルコール共重合体溶液を押出成形機のダイを通じ、
カッターナイフを用いてエチレン−ビニル アルコール共重合体溶液を直接ペレット状に
切断し、カッターナイフの操作と共に流動する凝縮用流体により直接ペレット状のエチレン−ビニルアルコール共重合体を冷却析出させて取り出し、その後、固液分離装置により上記エチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットを単離するなどの工程を含むもので
ある。
【0009】
本発明は、更に別なエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法に関す
るものであって、エチレン−ビニル アルコール共重合体を凝縮する凝縮用流体中に酢酸
および/または燐酸塩類の添加剤を加え、同時にエチレン−ビニルアルコール共重合体の耐熱性を改良する方法をも提供する。
【0010】
本発明の方法により、連続した方式で安定した造粒が行われ、形状とサイズが均一で、優れた耐熱性を有するエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、エチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法に関するもので
あって、エチレン−ビニル アルコール共重合体の溶液を押出成形機のダイを通じ、カッ
ターナイフを用いてエチレン−ビニル共重合体溶液を直接ペレット状に切断し、カッターナイフの操作と共に流動する凝縮用流体により直接ペレット状のエチレン−ビニル アル
コール共重合体を冷却析出させて取り出し、その後、固液分離装置により上記エチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットを単離する工程を含むものである。
【0012】
本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法により、エチレン−ビニルアルコール共重合体を凝縮する凝縮用流体中、更に酢酸および/または燐酸塩類などの添加剤を加えることで、エチレン−ビニルアルコール共重合体の耐熱性を同時に改善するものである。
【0013】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットに関するものであって、本発明の方法により製造され、その中、ペレットの形態がペレット表面に任意な連続点よりな
る軌跡が弧状を示し、且つペレットの全体の表面系が、一つの曲面を呈することを特徴とする。
【0014】
本発明において、「ペレット全体の表面系が一つの曲面を呈する」ということは、ペレット表面に面と面との間に何ら明らか境界線が存在しないことを意味し、例えば、円球形、長円条形、楕円形および水滴形(water drops)などの形状を取り得るものである。
【0015】
本発明の方法において、カッターナイフを用いてエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を直接切断してペレット状にする時、カッターナイフの操作と共に流動する凝縮用流体によりペレット状のエチレン−ビニルアルコール共重合体を冷却析出させて取り出すが、これら造粒工程は、流動する凝縮用流体中で直接切断し造粒するものである故、以下「流動液内造粒法」と称することもある。
【0016】
本発明の流動液内造粒法を、更に詳細に述べるため、以下図面と実例を用いて詳しく説明する。
第1図は、本発明方法を施行するための系統構成を示す図であり、その中、1はEVOH溶液の供給管を示し、2は濾過装置、3は押出成形機のダイ、4はカッターナイフ、5は切断胴体、6は還流凝縮管、7は凝縮用流体、8は固液分離装置、9はEVOHペレット取出口、10はカッターナイフ回転軸と駆動装置、11はヒートエクチェンジャー、12は凝縮液補給口、13は凝縮液溢流口、14と15は流体輸送設備などをそれぞれ示す。
【0017】
第1図を参照しながら説明すると、EVOH溶液は、流体輸送設備(14)を用い、供給管(1)より濾過装置(2)に送られ、その後押出成形機のダイ(3)に入り、このダイ(3)は
外部の加熱装置によりダイ内の溶液温度を調節することができ、ダイ(3)を通ったEVOH
溶液、直ちに切断胴体(5)に入り、カッターナイフ(4)により切断されてEVOH溶液ペレットを形成する。上記の切断胴体(5)内のEVOHペレット、直ちに環状管(6)で凝縮用流体により持ち去られ、同時にEVOH溶液ペレットに凝縮され、その後、固液分離装置(8)に
送られ、そこでEVOHペレットと凝縮用流体とに分離され、ペレット取出口(9)によりEVOHペレットが集められる。上記の凝縮用流体は、次にヒートエクスチェンジャ(11)によ
り熱を除去され、再度切断胴体(5)に送られ利用する。
【0018】
上記ヒートエクスチェンジャ(11)内の凝縮用流体量は、凝縮液補給口(12)および凝縮液溢流口(13)によりコントロールされ、ヒートエクスチェンジャ(11)内の凝縮用流体量が不足する場合、凝縮補給口(12)により補充され、逆に凝縮用流体が多くすぎた場合は、凝縮液溢流口(13)により溢出し、ヒートエクスチェンジャ(11)内の凝縮用流体を適量範囲内に保つことができる。
【0019】
本発明のEVOHペレットの製造方法によると、外部の加熱装置を用いてダイ内の溶液温度をコントロールするが、この溶液温度は55〜100℃範囲内の温度にコントロールされることが好ましく、より好ましくは60〜90℃範囲であり、最も好ましくは60〜85℃範囲である。本発明方法において、用いられるダイ温度は、得られるEVOHペレットの形状とサイズに多大な影響を与える。温度が55℃より非常に低くなった場合、EVOH溶液は相分離を引き起こし、ダイが詰まり問題となる。また、温度が高すぎ場合、例えば、100℃より高くなると、EVOH溶液のペレットは凝集しにくく、凝縮効果が低下して、生産コストを高める。本発明方法において、使用されるダイは、特に制限はなく、EVOH溶液がスムースに通れば良いが、一般、一定した孔径サイズと数を有するノズルにより構成される。上記の孔径サイズは、製造するEVOHペレットのサイズにより決まり、これらは周知の技法であり、特に限定されるものではないが、通常、使用されるダイアパーチャーは4〜数
百個の範囲内である。
【0020】
本発明の方法において使用される流体輸送設備(14と15)としては、例えば、遠心ポンプ、歯車ポンプと押出成形機が挙げられる。
また、本発明の方法において、EVOHペレットの形状とサイズは、カッターナイフの回転速度、凝縮用流体の温度と流量にも影響される。回転速度が速ければ速い程、得られるEVOHペレットは小さく、遅ければ遅い程、得られるEVOHペレットは大きくなる。カッターナイフの回転速度としては、特に制限はないが、通常、550〜6000rpm範囲内が好ま
しく、より好ましくは850〜4500rpmであり、最も好ましくは1000〜3000rpmの範囲である。但し、カッターナイフの回転速度が850rpm以下の場合、用いるダイ
のダイアパーチャー間の距離は240mm或いはそれ以上であることが必須条件となる。
【0021】
本発明の方法において、通常、凝縮用流体の温度が低い程、EVOH溶液ペレットをより有効に冷却し得る。一般に凝縮用流体の温度としては、−20〜50℃の範囲が好ましく、より好ましくは0°〜35℃の範囲である。本発明によると、凝縮用流体としては、例えば
、液態窒素、水、低級(C1−4)アルコール或いはこれらの混合物が用いられる。
【0022】
本発明の方法において、凝縮用流体の流量とEVOH溶液の供給量との間には関連性があり、EVOH溶液の供給量が大きい程、より多大な凝縮用流体の流量が必要とする。本発明の方法によると、凝縮用流体の流量をAとし、且つEVOH溶液供給量をBとして示した場合、又、凝縮用流体の流量AとEVOH溶液供給量Bとの比率をRとした場合、そのR値(即ち、A/B)は
0.2〜150の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜100の範囲であり、更に好ましくは1.0〜80の範囲内である。
【0023】
本発明の方法によると、従来の周知の技法におけるEVOH溶液が凝縮溶液を通って条状物を析出する際、容易に条状物が断裂し、操作が不安定になる欠点を解消することができる。本発明の方法において、上記の造粒系のパラメーターを調節することにより、連続し且つ安定に操作することができ、形状およびサイズの均一したペレットが得られる。本発明の方法により固液分離装置を経て分離して得たペレットの形状は、ペレットの表面上に任意の連続点より構成される弧状の軌跡を示し、且つそのペレット表面上の面と面との間に何らかの明らかな境界面がなく、通常、例えば、円球形(第2図を参照)、長円条形(第3図を参照)、楕円形(第4図を参照)と水滴形(第5図を参照)などが挙げられ、良く見られる形状としては、円球形と長円条形が挙げられる。形状常数Sによりペレットの幾
何学形状を示した場合、S=L/D、の式中、LはEVOHペレット乾燥後の投影面積における長径を、且つDはEVOHペレット乾燥後の投影面積における短径を示す。そのD値は、通常0.5〜10mmの範囲で、好ましくは1〜8mmの範囲、更に好ましくは1.5〜6mmの範囲である。本発明の方法により得られるEVOHペレットの形状常数としては、S≧1であり、通常1〜10の範囲であり、好ましくは1〜6の範囲であり、更に好ましくは1〜4の範囲である。S=1の場合、ペレットは第2図の如く圓球形を示す。S>1の場合、ペレットの形状は圓球形を示さず、S値が大きい程、ペレットの形状は長条形に近くなる。S>1の場合、ペレットの形状としては、例えば、第3図、第4図および第5図に示す如く、それぞれ長条形、楕円形および水滴形を示す。
【0024】
本発明の方法によると、凝縮用流体中に酢酸および/または燐酸塩類の添加剤を加えることが含まれ、これにより得られるEVOHペレットの耐熱特性を更に改善することができる。
【0025】
本発明の方法において、使用されるEVOH共重合体溶液系は、エチレンとビニルアセテートとを原料として、フリーラジカル溶液共重合反応を行うことにより得られるものである。
【0026】
この共重合体反応は、通常、メタノールを重合用溶剤として、55〜75℃の反応温度
下で、適当なエチレン含量を調整することにより、25〜60kg/cm2Gの反応系圧力下で共重合反応が行われ、これによりエチレン−ビニルアセテート共重合体が得られる。次に、アルカリの存在下で、エチレン−ビニルアセテート共重合体を鹸化反応させることにより本発明の目的物が得られる。
【0027】
本発明に用いられるEVOHの性状については、特に制限はなく、通常、よく見られ且つ一般に製造され得るEVOH溶液が用いられる。これらEVOHは、通常10〜60モル%のエチレン含
量を備え、より好ましくは25〜50モル%である。この外、エチレン−ビニルアセテー
ト共重合体がエチレン−ビニルアルコール共重合体に転化する鹸化度は、通常、80モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。EVOH共重合体のエチレン含量が低すぎるか、または高すぎるか、或いは鹸化度が低すぎると、EVOH共重合体の性質、例えば、ガスバリアー性、耐水性又は加工性などに影響を与える。
【0028】
本発明の方法において、造粒に用いられるEVOH溶液中に含まれるEVOHの重量%としては、通常、30〜60%であり、より好ましくは35〜50%、更に好ましくは38〜45%である。EVOH溶液中のEVOH含量が30重量%以下にと、本発明における造粒の困難度が増し、安定な操作が不可能となり、得られるEVOHペレットは、凝縮用溶液により有効に凝縮することができなくなる。また、EVOH溶液中のEVOH重量%が60%以上になると、EVOH溶液の粘度が大きくなり、輸送の際困難度が増加すると共に、EVOHの相分離をもたらし、操作の安定性が低下する。
【0029】
本発明の方法において、造粒に用いられるEVOH溶液中に含まれても良い溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSOと略称する)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMFと略称する)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、フェノール、メタクレゾール或いはこれら溶剤と水との混合液などが挙げられる。含水混合液を用いる場合、アルコール類と水との混合液が好ましく、アルコールと水との重量比は99/1〜60/40の範囲内が好ましく、より好ましくは、90/10〜70/30範囲内
である。
【0030】
本発明の方法により造粒した後、通常、更に水洗処理してEVOHペレット中に含まれる不純物を除去する。次に、乾燥工程に入り、水分を乾燥により蒸散し、EVOHペレットの含水率を特定値より低くする。乾燥後のEVOHペレットの表面は、局部又は全体が通常白色の皮膜により覆われ、EVOHペレットの外観に影響を与える。本発明中、上記水洗後および乾燥処理前に、更に予備乾燥の工程を施すことで、乾燥後のEVOHペレットの外観を大幅に改善することができる。この予備工程は、通常、30〜130℃の温度下で行われ、より好ましくは40〜110℃範囲、更に好ましくは45〜105℃範囲であり、相対温度5〜100%、好ましくは30〜95%、更に好ましくは45〜90%の相対温度下、アルゴン、窒素、空気又はこれらの混合組成ガスより選ばれるガス中、好ましくは、窒素又は空気中で予備乾燥を施す。
【実施例】
【0031】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
エチレン含量が32モル%のエチレン−ビニル アセテート共重合体(EVOAc)を鹸化度が99.5モル%より大きいエチレン−ビニル アルコール共重合体(EVOH)として、メ
タノールと水との混合液中に溶解する。上記メタノールと水との重量%比は70:30、溶解後の溶液に含まれるEVOHの重量%は39%である。このEVOH溶液を貯蔵タンク中に保存すると共に、その溶液温度を60℃に保ち、次の本発明の方法に用いられる造粒系の原料供給源とする。
【0032】
上記のEVOH溶液を歯車ポンプにより100リットル/1分間の速度で供給管に送り、次
にダイアパーチャーが8個で孔径が2.8mmのダイに上記のEVOH溶液を通し、ダイの温度を70℃に保持し、ダイを経過したEVOH溶液を直ちにカッターナイフを用いて1500rpmの回転速度で切断し、EVOH溶液ペレットを形成すると共に、120リットル/1分間の流速で6℃の還流凝縮液を用いてEVOH溶液のペレットを冷却し、この冷却後のペレットを固液分離装置によりEVOHペレットを単離する。上記に得たEVOHペレットを30分間水洗した後、85℃、相対湿度が95%の空気中において、オーブンで預備乾燥を40分間施し、この預備乾燥処理後のペレットを120℃のオーブンで24時間乾燥し、残余の水分を除去して、乾燥後のEVOHペレットを得る。
【0033】
上記の乾燥後のEVOHペレットをキャリパー(caliper、副尺、バーニヤ)により任意の20粒について、その長径(L)と短径(D)とを測定し、その平均値から形状常数S値を求め、更に肉眼により乾燥後のEVOHペレットの表面に局部又は全面に白色皮膜が有るか否かを調べた。
〔実施例2〕
EVOH溶液中に含まれるEVOHの重量%を44%に変えた外は、すべて実施例1と同じ方法でEVOHペレットを製造し、形状常数S値を求めた。
〔実施例3〕
供給管によるEVOH溶液の輸送量を4リットル/1分間と還流凝縮液量を310リットル
/1分間に変え、水洗後のEVOHペレットを直接120℃のオーブン中で24時間乾燥した
外は、すべて実施例1と同じ方法でEVOHペレットを製造し、形状常数S値を求めた。
〔実施例4〕
カッターナイフの回転速度を2200rpmとダイ温度を80℃に変え、水洗後のEVOHペ
レットを70℃、相対湿度47%の空気下、オーブン中で40分間予備乾燥を施した外は、すべて実施例1と同じ方法で製造し、乾燥処理を行ない、形状常数S値を求めた。
〔比較例1〕
供給管によるEVOH溶液の輸送量を83リットル/1分間と5℃の還流凝縮液量を150
リットル/1分間と、カッターナイフの回転速度を800rpmに変えた外、すべて実施例1
と同じ方法で操作した。本比較例1においては、還流凝縮液の温度は本発明の範囲内にあ
ったが、カッターナイフの回転速度が本発明の限定範囲より低いため、造粒できず、形状常数も測定できなかった。
〔比較例2〕
供給管によるEVOH溶液の輸送量を70リットル/1分間と5℃の還流凝縮液量を180
リットル/1分間及びダイ温度を50℃に調整した外は、すべて実施例1と同じ方法で操作した。本比較2において、還流凝縮液温は本発明の限定範囲内にあったが、ダイ温度が本
発明の限定範囲外にあったため、造粒できず、形状常数も測定できなかった。
【0034】
上記の実施例1〜5で得た粒子について測定した形状常数S値と、乾燥後のEVOHペレット
表面の肉眼による観察の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
上記の表1より明らかに比較例1と2の造粒条件が本発明の範囲外にあったため、造粒できなかった。また、実施例3においては、予備乾燥を施さなかったため、ペレット成品の
表面に白色皮膜が存在したが、この被膜の存在、外観上の問題だけであり、本発明のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの各特性に対しては何らの悪影響は見られず、造粒状態が良好で、本発明の範囲内にあった。
〔実施例6〕
用いるダイのダイアパーチャーを4個(ダイアパーチャー間の距離は2.54mm)に変
え、凝縮液温を3〜4℃に、且つカッターナイフの回転速度を580rpmに変えた外は、
すべて実施例1と同じ方法でEVOHペレットを製造した。この条件下で造粒を施すことで、
造粒加工性が十分に良好で、且つ均一なペレットを得ることができた。
〔実施例7〕
エチレン含量が32モル%のエチレン−ビニルアセテート共重合体(EVOAc)を鹸化処
理して、鹸化度が99.5モル%より大きいEVOHを得る。これをメタノールと水との混合液中に溶解する。上記メタノールと水との重量比は70:30であり、溶解後の溶液には39重量%のEVOHが含まれる。このEVOH溶液を貯蔵タンクに保存すると共に、液温を60℃に保ち、次の本発明の方法における造粒系の原料供給源とする。
【0037】
上記のEVOH溶液を歯車ポンプにより100リットル/1分間の速度で供給管に送り、こ
のEVOH溶液を8個のダイアパーチャーを有し、孔径が2.8mmのダイを経て、ダイ温度を
70℃に調整し、ダイを通ったEVOH溶液は、直ちに回転速度が1500rpmのカッターナ
イフで切断して、EVOH溶液のペレットを形成し、流速が120リットル/1分間で6℃の還流凝縮液によりEVOH溶液のペレットを冷却する。これら還流凝縮液中には、0.2重量%の酢酸、0.1重量%の燐酸二水素マグネシウムおよび0.05重量%の燐酸二水素カリウムの混合液からなる添加剤が含まれている。冷却後のEVOHペレットは、固液分離装置を用いて、EVOHペレットを単離する。次に、このEVOHペレットを30分間水洗した後、85℃、相対湿度95%の空気中、オーブンを用いて40分間預備乾燥し、その後直ちにオーブン中、120℃下で24時間乾燥して、残留する水分を除去し、乾燥したEVOHペレットを得る。
【0038】
上記の乾燥後のEVOHペレットを10g秤量し、長さ、幅、高さがそれぞれ6cm×0.5cmのアルミ箔皿に入れ、高温炉中で耐熱性試験を、200℃下で30分間加熱し、取出して冷却した後、黄色測定儀を用いて、その黄変度を測定する。上記の黄色測定儀として、X−Rite株式会社製のSP68型分光光度計を用い、ASTM D1925に記載の方法により測定した。黄変度は黄変指数(YI値)で示し、YI値が大きい程、黄変度が大きく、耐熱性が悪いことを示し、又、YI値が小さい程、黄変度が小さく、耐熱性が良いことを表す。
〔実施例8〜10〕
実施例8〜10においては、還流凝縮液中に含まれる酢酸、燐酸二水素マグネシウムおよ
び燐酸二水素カリウム混合液の添加量を表2に示す比率に変えた外は、すべて実施例7と同じ方法でEVOHペレットを製造し、その耐熱試験を行なった。
〔参考例1〜7〕
参考例1〜7においては、還流凝縮液中に含まれる酢酸、燐酸二水素マグネシウムおよび燐酸二水素カリウム混合液の添加量を表2に示す比率に変えた外は、すべて実施例7と同じ方法でEVOHペレットを製造し、その耐熱性試験を行なった。
【0039】
上記の実施例8〜10と参考例1〜7における耐熱性試験後に得たYI値の結果を表2に併
せて示す。
【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
表2より明らかに実施例7〜10において、還流凝縮液中に酢酸と燐酸塩などの添加剤を添加した場合、成品の耐熱性を高め得ることが判る。本発明において、耐熱性に対する要望の必然性はないが、成品の最終用途により不要とする場合もあるので、上記の参考例も又本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
本発明を上記の実施例と参考例とを用いて詳しく説明したが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。その故、本発明の精神と範囲を脱離しない限り、それぞれ異なる修飾と変化を加えることができ、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の方法により行なわれる系統構成図を示し;
【図2】図2は、本発明方法の具体的により製造したペレットの形状を示し;
【図3】図3は、本発明方法の別の具体例により製造したペレットの形成を示し;
【図4】図4は、本発明方法の又別の具体例により製造したペレットの形状を示し;
【図5】図5は、本発明方法の更に別の具体例により製造したペレットの形状を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
55〜100℃範囲のエチレン−ビニル アルコール共重合体溶液を押出成形機のダイ
を通し、回転速度が850〜6000rpm範囲内のカッターナイフによりエチレン−ビニル アルコール共重合体溶液を直接ペレット状に切断すると共に、但し、カッターナイ
フの回転速度が850rpm以下の場合、用いるダイのダイアパーチャー間の距離を240mm或いはそれ以上にして切断すると共に、−20〜50℃範囲の流動性凝縮用流体を用い
て、そのペレット状のエチレン−ビニル アルコール共重合体を直接冷却させて析出させ
て析出し、次に固液分離装置によりエチレン−ビニル アルコール共重合体を分離するこ
とを特徴とするエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項2】
上記エチレン−ビニル アルコール共重合体溶液の温度が60〜90℃範囲内にあるこ
とを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造
方法。
【請求項3】
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液の温度が60〜85℃範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項4】
上記凝縮用流体の温度が0〜35℃範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項5】
上記カッターナイフによる切断が850〜4500rpm範囲内にある回転速度で行われることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項6】
上記カッターナイフによる切断が1000〜3000rpm範囲内にある回転速度で行われることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項7】
上記凝縮用流体が液体窒素、水、低級(C1 - 4)アルコール又はその混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項8】
上記凝縮用流体の流量をAで示し、且つエチレン−ビニル アルコール共重合体溶液の
供給量をBで示し、又、凝縮用流体流量Aとエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液供給量Bとの比率をRで示した場合、そのR値(A/B)が0.2〜150範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項9】
上記のR値(A/B)が、0.5〜100範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項10】
上記のR値(A/B)が1.0〜80範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項11】
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液中に含まれるエチレン−ビニルアルコール共重合体重量%比が30〜60%範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−ビニル アルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項12】
上記請求項1〜11のいずれかに記載の任意項のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法であって、更にその使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体の凝縮用流体中に酢酸および/または燐酸塩類の添加剤を添加することを含む製造方法。
【請求項13】
上記の燐酸塩類が燐酸二水素マグネシウム、燐酸二水素カリウムまたはその混合物であることを特徴とする請求項12に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。
【請求項14】
上記請求項1〜11のいずれかに記載の任意項のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法であって、その内、エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットを単離した後、一つの水洗工程と一つの予備乾燥処理工程とを含み、その乾燥工程は、30〜130℃の温度下、相対湿度5〜100%中、アルゴン、窒素、空気又はそれらより組み合わされてなる組成の気体中で行われることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法であって、その内、エチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットを単離した後、一つの水洗工程と一つの預備乾燥処理工程を含み、その乾燥工程は、30〜130℃の温度下、相対湿度5〜100%中、アルゴン、窒素、空気又はそれらより組み合わされてなる組成の気体中で行われることを特徴とする製造方法。
【請求項16】
上記請求項1〜11のいずれか、請求項13または15に記載の任意項の方法により製造されたエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットであって、その中、ペレットの形状がペレットの表面上任意の連続点より構成された弧形の軌跡よりなり、且つペレット全体の表面が一つの曲面を示すことを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット。
【請求項17】
上記請求項16に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットであって、その内、Lがエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの投影面積の長径を示し、且つDがその短径を示した場合、そのエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの形状常数S=L/Dであり、且つそのS値が1〜10範囲内にあることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット。
【請求項18】
上記請求項17に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットであって、そのS値が1〜6範囲内にあることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット。
【請求項19】
上記請求項18に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットであって、そのS値が1〜4範囲内にあることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−524144(P2006−524144A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500458(P2006−500458)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000291
【国際公開番号】WO2005/095077
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(591057290)長春石油化學股▲分▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】