説明

エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーの製造方法

【課題】エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーの調製方法を提供すること。
【解決手段】触媒系として、
a.単一のシクロペンタジエニル配位子と一置換型の窒素配位子とを有する触媒を含有する第4族金属、ここで、該触媒は、下記の式Iにより定義される、
b.アルミノキサン活性化化合物、
c.触媒1molあたり0〜0.20molのさらなる活性化化合物、



を適用することにより、エチレン、α−オレフィン、および1〜5重量%のビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーの調製方法に関する。本発明はまた、本発明に係る方法により取得可能なポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法およびポリマーは、EP−A−765908から公知である。この特許出願には、エチレン、プロピレン、およびビニルノルボルネンよりなるポリマーさらにはポリマーの種々の製造方法が記載されている。ビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーの利点は、硬化剤として過酸化物を使用したときに高速でかつ高レベルまで硬化することである。それが理由で、過酸化物硬化に好適なゴム組成物、たとえば、ケーブルやワイヤー、自動車用途のホース(たとえば、ラジエーターホースやブレーキシステムで用いられるホース)、熱可塑性エラストマー、および多種多様なさらなるゴム用品の製造に用いられるゴム組成物などでポリマーを使用することが望ましい。
【0003】
しかしながら、公知の方法の1つを用いてビニルノルボルネンを含むポリマーを製造した場合、ポリマー中に多量の分枝が形成され、ときにはポリマーのゲル化さえも起こるという重大な欠点が存在する。多量の分枝に起因して、ポリマーは広い分子量分布を有する。これは、ポリマーを含むゴムの機械的特性上の欠点である。ゲル化が起こった場合、ポリマーは、部分架橋または完全架橋される。ゲル化が欠点である理由は、それにより重合過程が不安定になったり、反応器のファウリングが発生したり、ポリマーが、造形品の製造を目的としたゴム組成物に有効に使用できなくなったりすることにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーの調製方法を提供することである。ここで、このポリマーは、以下に定義される動的機械的量Δδから判断してより少ない分枝を示し、ゲル化の危険性を示さないかまたは少なくとも低減された危険性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
驚くべきことに、そのような方法が得られる理由は、成分として、
a.単一のシクロペンタジエニル配位子と一置換型の窒素配位子とを有する非架橋型触媒、ここで、該触媒は、下記の式Iにより定義される、
b.アルミノキサン活性化化合物、
c.触媒1molあたり0〜0.20molのさらなる活性化化合物、
を含む触媒系を用いてポリマーが調製されることにある。
【化1】


〔式中、Yは、
ai)式:
【化2】


{ここで、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜20ヒドロカルビル基(ハロゲン原子、C1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基、もしくはC6〜10アリールオキシ基により置換されていないか、またはそれらによりさらに置換されている)、アミド基、式:
−Si−(R 式III
(ここで、各Rは、独立して、水素、C1〜8アルキル基もしくはC1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基もしくはC6〜10アリールオキシ基よりなる群から選択される)
で示されるシリル基、および式:
−Ge−(R2’ 式IV
(ここで、R2’は、独立して、水素、C1〜8アルキル基もしくはC1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基もしくはC6〜10アリールオキシ基よりなる群から選択される)
で示されるゲルマニル基よりなる群から選択される}
により定義されるリン置換基、
aii)式:
【化3】


{ここで、Y’m、Y’kのそれぞれは、CR、C=CR、C=NR、SiRR、C=O、NR、PR、O、またはSであり、
Zは、−A=A−であり、かつ各Aは、CR、N、またはPであり、
各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、式IIで示されるシリル基、または式IIIで示されるゲルマニル基よりなる群から選択され、
k、m、およびnは、独立して、値0、1、2、または3を有し、ただし、k+m+n>0である}
により定義される置換基、および
aiii)式:
【化4】


{ここで、SubおよびSubのそれぞれは、独立して、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル;シリル基、アミド基、およびホスフィド基よりなる群から選択される}
により定義される置換基、よりなる群から選択され、
Cpは、シクロペンタジエニル、置換型シクロペンタジエニル、インデニル、置換型インデニル、フルオレニル、および置換型フルオレニルよりなる群から選択される配位子であり;
Xmは、活性化可能な配位子であり、かつnは、Mの原子価およびXの原子価に依存して1または2であり;そして
Mは、チタン、ハフニウム、およびジルコニウムよりなる群から選択される第4族金属である。〕
【0006】
驚くべきことに、本発明に係る方法を用いると、エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーは、かなり少ない長鎖分枝化を示し、しかもまったくまたはほとんどゲル化を示さない。さらなる利点として、本発明に係る方法を用いて得られるポリマーでは、ビニルノルボルネンの大部分は、2つの二重結合のうちの1つだけで重合され、第2の二重結合は、ポリマーの硬化に利用可能である。この結果、ポリマーは、過酸化物硬化に対していっそう反応性が高くなる。
【0007】
本発明の特定の実施形態では、さらなる活性化化合物は使用されない。
【0008】
先に定義した触媒を用いて、エチレン、α−オレフィン、および非共役ジエンのモノマー単位を含むポリマーを調製する方法については、EP−A−1162214に記載されている。しかしながら、文献では、活性化化合物としてアルミノキサンを使用することが推奨されておらず、しかもビニルノルボルネンを含むポリマーの特定の調製について注目されていない。
【0009】
好ましくは、触媒1molあたり0〜0.2molのさらなる活性化化合物を使用する。最も好ましくは、さらなる活性化化合物をまったく使用しない。その場合、アルミノキサンを単独の活性化化合物として使用する。
【0010】
本発明に係る方法で用いられる触媒は、好ましくは、金属に共有結合されたホスフィンイミン配位子を含有する。この配位子は、式:
【化5】


〔式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜20ヒドロカルビル基(ハロゲン原子、C1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基、もしくはC6〜10アリールオキシ基により置換されていないか、またはそれらによりさらに置換されている)、アミド基、式IIIで示されるシリル基、および式IVで示されるゲルマニル基よりなる群から選択される。〕により定義される。
【0011】
この配位子は、窒素原子に(二重)結合されたリン原子が1つだけ存在するという意味で「一置換型の窒素原子」を含有する。
【0012】
好ましいホスフィンイミンは、各R’がヒドロカルビル基であるものである。とくに好ましいホスフィンイミンは、トリ−(第三級ブチル)ホスフィンイミンである(すなわち、この場合、各R’は第三級ブチル基である)。
【0013】
本明細書中で使用する場合、「ケトイミド配位子」という用語は、(a)金属−窒素原子結合を介して遷移金属に結合され;(b)窒素原子上に単一の置換基を有し(この場合、この単一の置換基は、N原子に二重結合された炭素原子である);かつ(c)好ましくは、式VIIIに示されるように炭素原子に結合された2個の置換基(以下に記載のSubおよびSub)を有する;配位子を意味する。
【0014】
条件a、b、およびcは、以下のように図式化される。
【化6】

【0015】
この配位子もまた、1個の炭素原子だけが窒素原子に(二重)結合されているという意味で一置換型の窒素原子を含有する。
【0016】
置換基「Sub」および「Sub」は、同一であっても異なっていてもよい。例示的な置換基としては、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル;シリル基、アミド基、およびホスフィド基が挙げられる。
【0017】
本明細書中で使用する場合、シクロペンタジエニル配位子という用語は、その従来の意味(すなわち、イータ−5結合を介して金属に結合された五炭素環を有する配位子)を広義に示すものとする。したがって、「シクロペンタジエニル」という用語には、無置換型シクロペンタジエニル、置換型シクロペンタジエニル、無置換型インデニル、置換型インデニル、無置換型フルオレニル、および置換型フルオレニルが包含される。シクロペンタジエニル配位子に対する置換基の例示的なリストには、C1〜10ヒドロカルビル基(このヒドロカルビル置換基は、無置換であるかまたはさらに置換されている);ハロゲン原子、C1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基、またはC6〜10アリールオキシ基;無置換であるかまたは2個以下のC1〜8アルキル基により置換されているアミド基;無置換であるかまたは2個以下のC1〜8アルキル基により置換されているホスフィド基;式IIIで示されるシリル基および式IVで示されるゲルマニル基;よりなる群が含まれる。
【0018】
本発明に係る方法で用いられる触媒は、活性化可能な配位子をも含有していなければならない。「活性化可能な配位子」という用語は、アルミノキサン活性化化合物(またはアルミノキサン化合物およびオレフィン重合を促進するための最終的に副次量のさらなる活性化化合物)により活性化されうる配位子を意味する。例示的な活性化可能な配位子は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜10ヒドロカルビル基、C1〜10アルコキシ基、C5〜10アリールオキシド基;(該ヒドロカルビル基、該アルコキシ基、および該アリールオキシド基のそれぞれは、ハロゲン原子、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基、またはC6〜10アリールオキシ基により置換されていなくてもよいし、またはそれらにより置換されていてもよい)、ケイ素基、無置換であるかまたは2個以下のC1〜8アルキル基により置換されているアミド基;無置換であるかまたは2個以下のC1〜8アルキル基により置換されているホスフィド基よりなる群から選択される。
【0019】
活性化可能な配位子の数は、金属の価数および活性化可能な配位子の価数に依存する。好ましい触媒金属は、最高酸化状態(すなわち4+)の第4族金属であり、好ましい活性化可能な配位子は、モノアニオン性である(たとえばヒドロカルビル基、とくにメチル)。したがって、好ましい触媒は、ホスフィンイミン配位子、シクロペンタジエニル配位子、および第4族金属に結合された2個の塩化物(またはメチル)配位子を含有する。いくつかの場合には、触媒成分の金属は、最高酸化状態をとっていないこともある。たとえば、チタン(III)成分は、ただ1つの活性化可能な配位子を含有するであろう。
【0020】
本発明に係る方法に使用するための最も好ましい触媒は、ホスフィンイミン配位子とシクロペンタジエニル型配位子と2個の活性化可能な配位子とを有する最高酸化状態の第4族有機金属錯体である。これらの要件は、好ましい触媒に対する以下の式を用いて簡潔に記載しうる。
【化7】


〔式中、(a)Mは、Ti、Hf、およびZrから選択される金属であり;(b)PIは、先に定義した式VIIで示されるホスフィンイミン配位子であり;(c)Cpは、シクロペンタジエニル、置換型シクロペンタジエニル、インデニル、置換型インデニル、フルオレニル、置換型フルオレニルよりなる群から選択される配位子であり;そして(d)Xは、活性化可能な配位子である。〕
【0021】
アルミノキサンは、共触媒としておよび/または触媒毒スカベンジャーとしておよび/またはアルキル化剤として使用可能である。ほとんどの場合、アルミノキサンは、さまざまな有機アルミニウム化合物の混合物である。
【0022】
アルモキサンは、全体式:(RAlO(RAlO)Al(R〔式中、各Rは、独立して、C1〜20ヒドロカルビル基よりなる群から選択され、mは0〜50であり、好ましくは、RはC1〜4基であり、mは5〜30である。〕で表しうる。混合物に含まれる化合物中のR基のほとんどがメチルであるメチルアルモキサン(または「MAO」)は、好ましいアルモキサンである。
【0023】
アルモキサンはまた、一般に炭化水素溶媒中の溶液として容易に入手可能な市販品である。
【0024】
アルモキサンは、利用時、好ましくは20:1〜1000:1のアルミニウム対遷移金属(触媒中)モル比で添加される。好ましい比は、50:1〜250:1である。
【0025】
本発明に係る方法において触媒活性を増大させるために立体的に嵩高い化合物を使用することが好ましい。立体的に嵩高いアミンおよび/または立体的に嵩高いアルコールが好ましい。ヒンダードフェノールが最も好ましい。
【0026】
本発明に係る方法は、バルク重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法でありうる。
【0027】
本発明に係る方法は、好ましくは溶液法である。エチレンプロピレンエラストマーの重合のための溶液法は、当技術分野で周知である。これらの方法は、無置換であってもよいし、またはC1〜4アルキル基により置換されていてもよいC5〜12炭化水素、たとえば、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、および水素化ナフサのような不活性炭化水素溶媒の存在下で行われる。
【0028】
本発明に係る方法は、20℃〜150℃の温度で行いうる。先に述べたように、より高い重合温度を用いると、一般的には、溶液粘度の低下(望ましい)を生じるであろうが、分子量の低下(望ましくないこともある)も生じるであろう。
【0029】
ポリマーを調製するために本発明に係る方法で用いられるモノマーは、反応器に供給する前に溶媒に溶解/分散させることが可能である(またはガス状モノマーの場合、反応混合物に溶解するように、モノマーを反応器に供給することが可能である)。混合前、好ましくは、溶媒およびモノマーを精製して水や酸素のように触媒毒になる可能性のある物質を除去する。供給原料の精製は、当技術分野の標準的技法に従って行われ、たとえば、モレキュラーシーブ、アルミナ床、および酸素除去触媒がモノマーの精製に使用される。好ましくは、溶媒自体(たとえば、メチルペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン、またはトルエン)もまた、同じように処理される。
【0030】
重合反応器に供給する前に、供給原料を加熱または冷却してもよい。追加のモノマーおよび溶媒を第2の反応器(利用する場合)に添加してもよく、そして反応器を加熱または冷却してもよい。
【0031】
一般的には、触媒成分は、個別の溶液として反応器に添加しうるか、または前混合してから反応器に添加しうる。
【0032】
重合反応器中の滞留時間は、反応器の設計および容量に依存するであろう。一般的には、反応物の十分な混合が達成される条件下で反応器を操作しなければならない。2台の直列反応器を使用する場合、最終ポリマーの50〜95重量%を第1の反応器中で重合し、残りの部分を第2の反応器中で重合することが好ましい。二連並列反応器構成を使用することも可能である。反応器から送出された直後、溶媒は除去され、得られたポリマーは従来方式で仕上げ処理される。
【0033】
3台以上の重合反応器を使用することもまた、本発明の範囲内にある。
【0034】
本発明はまた、本発明に係る方法により取得可能なポリマーに関する。本発明はまた、本発明に係る方法により取得可能なポリマーと可塑剤と充填剤とを含む配合物に関する。
【0035】
1つの二重結合だけで重合されるビニルノルボルネン非共役ジオレフィンの率が比較的高いので、ポリマーは、ビニルノルボルネンに由来する多くの二重結合を硬化に利用可能な状態で含む。とくに過酸化物型硬化系を用いた場合、ビニルノルボルネンに由来する二重結合が速い硬化速度を与えることは公知である。
【0036】
これらの理由により、過酸化物硬化法による製造に、好ましくは、ホース、ケーブルやワイヤーの被覆、形材、および熱可塑性加硫ゴムの製造に、本発明に係るポリマーを使用することが非常に望ましい。
【0037】
本発明に係る方法を用いて取得可能なポリマーは、3個からたとえば23個までの炭素原子を有する1種以上のα−オレフィンのモノマー単位を含有しうる。そのようなα−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンである。好ましくは、ポリマーは、α−オレフィンとしてプロピレンのモノマー単位を含有する。
【0038】
ポリマーは、10000〜500000kg/kmolの重量平均分子量を有しうる。好ましくは、ポリマーは、20000〜400000kg/kmol、より好ましくは50000〜300000kg/kmolの重量平均分子量を有する。
【0039】
ポリマーは、たとえば、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%モル%、より好ましくは0.2〜6重量%のビニルノルボルネンを含有する。最も好ましいのは、1〜5重量%のビニルノルボルネンを含有するポリマーである。
【0040】
好ましいビニルノルボルネンは、5−ビニル−2−ノルボルネンである。本発明の一実施形態では、ポリマーは、エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンよりなる。本発明の第2の実施形態では、ポリマーは、エチレン、α−オレフィン、ビニルノルボルネン、およびさらなる非共役ジエン、たとえば、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、および5−エチリデン−2−ノルボルネン、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンを含む。
【0041】
好ましくは、ポリマーは、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%の5−エチレン−2−ノルボルネンを含む。
【0042】
好ましくは、ポリマーは、40〜90重量%のエチレン、0.1〜10重量%の非共役ジエンを含み、残りの部分はα−オレフィンである。
【0043】
ポリマーが以下の条件:
[VNB]>0.01かつ
Δδ>30−15×[VNB]、これによって、Δδは負ではないを満たす場合、非常に良好な結果が得られる。ここで、[VNB]は、重量%単位で表されるポリマー中のビニルノルボルネンの含有率であり、Δδは、125℃で動的機械的スペクトロスコピー(DMS)により決定したときの0.1rad/sの周波数における位相角δと100rad/sの周波数における位相角δとの差を度単位で表したものである。この量は、材料中に存在する超分子状(長鎖分枝状)構造の量の尺度であり、ハー・セー・ブーエイ(H.C.Booij)著,弾性ゴム+ゴム・プラスチック(Kautschuk+Gummi Kunststoffe),第44巻,第2号,p.128−130(参照により本明細書に援用されるものとする)で導入されたものである。
【0044】
好ましくは、Δδ>35−15×[VNB]。
【0045】
より好ましくは、以上の条件のほかに、ポリマーは、以下の条件:
Δδ>25−12.5×(Q−2)
をも満たす。ここで、Q=Mw/Mn、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。
【実施例】
【0046】
これ以降で、以下の実施例および比較実験に基づいて本発明について明確に説明するが、それらに限定されるものではない。
【0047】
MwおよびMn(重量平均分子量および数平均分子量)の分析
実施例に記載されているように調製されたエラストマー性コポリマーを以上に記載した方法に従ってサイズ排除クロマトグラフィーおよび示差粘度測定(SEC−DV)により分析した。コポリマーはすべて、エラストマー性であり、DSC分析では、25℃よりも高いピーク温度を有するピークを示さなかった。
【0048】
このSEC−DV分析の装置および実験条件は、以下のとおりであった。
【0049】
【表1】

【0050】
ポリマーの組成
ゴム業界で慣用される方法に準拠してフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりコポリマーの組成を決定した。FT−IR測定では、全組成物に対する重量パーセントで種々のモノマーの組成が得られる。
【0051】
動的機械的スペクトロスコピーによるΔδの決定
8mmパラレルプレートジオメトリーを用いてレオメトリック・サイエンティフィックRDA−2(Rheometric Scientific RDA−2)動的機械的アナライザーにより動的機械的実験を行い、材料の線形粘弾特性を決定した。試験サンプルを150℃(約15分間)で厚さ2mmのシートの形態に圧縮成形し、これから直径8mmの円形ディスクを切り出した。30%未満の捩れ歪み振幅において、0.1および100rad/sの角周波数ωの関数として、応力と歪みの位相角δおよび剪断モジュラスGの絶対値を決定した。測定はすべて、窒素雰囲気下、125℃で行った。スリップを起こさないように、サンプルに十分な正常圧力が加わることを注意深くチェックした。Δδは、0.1rad/sの周波数における位相角δと100rad/sの周波数における位相角δとの差から計算され、度単位で表される。ML(1+4)125℃は、125℃で測定されるムーニー粘度である。
【0052】
連続重合手順
1台または2台の溶液重合用直列反応器(それぞれ3Lの容積を有する)中で重合を行った。触媒失活不純物(たとえば、水、酸素、および当業者に公知の極性化合物)を除去するために種々の吸収媒体に接触させることにより、供給物ストリームを精製した。
【0053】
本方法では、すべての供給物ストリームが連続である。前混合されたヘキサン、プロペン、エチレン、ジエン、水素、アルミノキサン、ならびに立体的に嵩高いアミンおよび/または立体的に嵩高いアルコールを前冷却してから(第1の)反応器に供給した。米国特許第6,063,879号明細書およびそこに引用されている参考文献ならびにWO−A−02/070569に記載の方法に従って調製され、表1に列挙された前触媒と、妥当な場合にはt−BF20ボレート溶液と、を個別に(第1の)反応器に供給した。排出ラインを介してポリマー溶液を連続的に取り出し、そして連続的に水蒸気ストリッピングを行ってから明確に規定された時間にわたりミルにかけて生成されたポリマーをバッチ式乾燥させることにより、後処理した。
【0054】
条件およびポリマーのデータを表2および3に提示する。
【0055】
【表2】

【0056】
表のデータから明らかなように、本発明に係る実施例の場合、「多」量のt−BF20共触媒を使用した比較例と比べて、等しいΔδでより多くのVNBを組み込むことができる。
【0057】
Δδ値が(非常に)小さくなるほど、より多くの(高)分枝状ポリマー材料が存在することが示唆される。ゲル形成は、より多くの高分枝状材料が存在することに関連付けられる。
【0058】
実施例1 対 比較実験A
実施例1では、触媒活性化剤としてのMMAO−7と共に触媒を適用した。生成したEPDMポリマーは、高いVNB含有率および比較的低い分枝度(Δδが18.5であることから判断して)を有する。さらなる類似の条件下で触媒活性化剤としてBF20を適用した比較実験Aのポリマーは、著しく低いVNB含有率を有していたにもかかわらず、分枝度はより高く、より低いΔδ(12.1)を生じた。
【0059】
実施例1および2 対 比較実験AおよびB
現象は反応器構成に依存しない。実施例1および2では、MMAO−7を触媒活性化剤として使用した。実施例1は、単一反応器構成(3L)を有し、一方、実施例2は、直列の二反応器構成(3L+3L)を有していた。これらの実験では、両方のEPDMポリマーが、中程度の分枝度(18.5および15.5のΔδ)で高いVNB含有率を有していた。比較実験AおよびBでは、BF20を触媒活性化剤として使用した。比較実験Aは、一反応器構成(3L)を有し、一方、比較実験Bは、直列の二反応器構成(3L+3L)を有していた。両方の実験で、EPDMポリマーは、低いVNB含有率で生成され、高い分枝度(両方とも12.1のΔδ)を生じた。実施例1ならびに実施例3、6、および7からわかるように、VNBは、一般に、Δδを低下させる。
【0060】
実施例3
実施例3では、EPDMポリマーは、極端な高いVNB含有率(4wt%)で生成され
た。適用された触媒活性化剤は、MAOであった。
【0061】
実施例4 対 比較実験C
実施例4では、非常に高いVNB含有率(3.2)を有するEPDMポリマーが、MAO活性化触媒を用いて生成された。比較実験Cでは、さらなる同一条件下で、ボレート活性化触媒を使用した。比較実験Cと比べて、実施例4では、VNB含有率が約10倍の大きさで等量の分枝を得た(Δδ(9.0および8.6)から判断して)。
【0062】
実施例5、7、および8
実施例5および7では、本発明に係る2種の異なる触媒を使用し、さらに活性化MAOも使用した。実施例5(Cat3)では、VNB含有率は比較的高いが(1.3wt%)、中程度の分枝度が得られたにすぎなかった(20のΔδ)。実施例8(Cat1)では、0.32wt%のVNB含有率で低い分枝レベルが得られた(30のΔδ)。
【0063】
実施例8 対 比較実験C
実施例8(MAO活性化)および比較実験C(ボレート活性化)では、2種のEPDMポリマーが、ほとんど等しいVNB含有率(0.32wt%および0.34wt%)で生成された。いずれの場合にも、触媒1を適用した。MAO活性化の実施例8は、ほとんど分枝化されなかったが(30のΔδ)、ボレート活性化の比較例Cは、かなり分枝化された(8.6のΔδ)。
【0064】
実施例6
実施例6では、BHTの代わりにBHEBを使用した。この場合にも、VNB含有率は高かったが(1.4wt%)、分枝度が高くなりすぎることはなかった(13のΔδ)。
【0065】
実施例7 対 比較実験A
実施例7(MAO活性化)では、BEHBもBHTも使用しなかった。ポリマーは、ほとんど分枝化されなかった(34のΔδ)。比較実験A(ボレート活性化)では、同一のVNB含有率を有するEPDMポリマーが生成され(0.29wt%)、かなりの量の分枝を有していた(12.1のΔδ)。
【0066】
実施例9
実施例9では、MMAO−7を使用した。生成されたEPDMポリマーは、低いVNB含有率を有し、低い分枝度を生じた(Δδが34.4であることから判断して)。
【0067】
実施例10および11
実施例10および11では、MMAO−7をCat4と組み合わせて使用した。生成されたEPDMポリマーは、それらのVNB含有率に対して比較的高いΔδ値を有していた。
【0068】
比較例D
比較例Dでは、バナジウム系チーグラー・ナッタ触媒が低いVNB含有率(0.58wt%)で比較的低いΔδを与えることが実証される。実施例6(1.42wt%のVNBを有する)と比べて、より低いVNB含有率で類似のΔδが得られる。
【0069】
比較例E
比較例Eでは、VNBをなんら添加することなくボレートと特定のTi系触媒とを用いることにより比較的低いΔδが得られることが示される。
【0070】
比較例F
比較例Fでは、特定のHf触媒と組み合わせてBF20を用いることにより無視しうるVNB含有率で比較的低いΔδが得られることが示される。
【0071】
比較実験G
比較実験Gでは、ボレート活性化触媒を適用して高いVNB含有率を有するEPDMポリマーを生成させるべく努力がなされた。それほど反応器のファウリングを引き起こすことなく安定な条件下でそのような実験を行うことは不可能であった。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒系として、
a.単一のシクロペンタジエニル配位子と一置換型の窒素配位子とを有する触媒を含有する第4族金属、ここで、該触媒は、下記の式Iにより定義される、
b.アルミノキサン活性化化合物、
c.触媒1molあたり0〜0.20molのさらなる活性化化合物、
【化1】


〔式中、Yは、
ai)式:
【化2】


{ここで、各Rは、独立して、ハロゲン原子、C1〜20ヒドロカルビル基(ハロゲン原子、C1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基、もしくはC6〜10アリールオキシ基により置換されていないか、またはそれらによりさらに置換されている)、アミド基、式:
−Si−(R 式III
(ここで、各Rは、独立して、C1〜8アルキル基もしくはC1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基もしくはC6〜10アリールオキシ基よりなる群から選択される)
で示されるシリル基、および式:
−Ge−(R2’ 式IV
(ここで、R2’は、独立して、C1〜8アルキル基もしくはC1〜8アルコキシ基、C6〜10アリール基もしくはC6〜10アリールオキシ基よりなる群から選択される)で示されるゲルマニル基よりなる群から選択される}
により定義されるリン置換基、
aii)式:
【化3】


{ここで、Y’のそれぞれは、CR、C=CR、C=NR、SiR、C=O、NR、PR、O、またはSであり、
Zは、−A=A−であり、かつ各Aは、CR、N、またはPであり、
各Rは、独立して、ヒドロカルビル基、式IIIで示されるシリル基、または式IVで示されるゲルマニル基よりなる群から選択され、
k、m、およびnは、独立して、値0、1、2、または3を有し、ただし、k+m+n>0である}
により定義される置換基、および
aiii)式:
【化4】


{ここで、SubおよびSubのそれぞれは、独立して、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、シリル基、アミド基、およびホスフィド基よりなる群から選択される}により定義される置換基、
よりなる群から選択される。
Cpは、シクロペンタジエニル、置換型シクロペンタジエニル、インデニル、置換型インデニル、フルオレニル、および置換型フルオレニルよりなる群から選択される配位子であり;
Xは、活性化可能な配位子であり、かつnは、Mの原子価およびXの原子価に依存して1または2であり;そして
Mは、チタン、ハフニウム、およびジルコニウムよりなる群から選択される第4族金属である。〕
を適用することにより、エチレン、α−オレフィン、および1〜5重量%のビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーを調製する方法。
【請求項2】
Yが、式IIにより定義されるリン置換基、および式VIにより定義される置換基よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが、式VIにより定義される置換基よりなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒系として、
a.単一のシクロペンタジエニル配位子と一置換型の窒素配位子とを有する触媒を含有する第4族金属、ここで、該触媒は、下記の式Iにより定義される、
b.アルミノキサン活性化化合物、
c.触媒1molあたり0〜0.20molのさらなる活性化化合物、
【化5】


〔式中、Yは、
aii)式:
【化6】


{ここで、Y’のそれぞれは、CR、C=CR、C=NR、SiR、C=O、NR、PR、O、またはSであり、
Zは、−A=A−であり、かつ各Aは、CR、N、またはPであり、
各Rは、独立して、ヒドロカルビル基、式IIIで示されるシリル基、または式IVで示されるゲルマニル基よりなる群から選択され、
k、m、およびnは、独立して、値0、1、2、または3を有し、ただし、k+m+n>0である}
により定義される置換基、および
aiii)式:
【化7】


{ここで、SubおよびSubのそれぞれは、独立して、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル、シリル基、アミド基、およびホスフィド基よりなる群から選択される}により定義される置換基、
よりなる群から選択される。
Cpは、シクロペンタジエニル、置換型シクロペンタジエニル、インデニル、置換型インデニル、フルオレニル、および置換型フルオレニルよりなる群から選択される配位子であり;
Xは、活性化可能な配位子であり、かつnは、Mの原子価およびXの原子価に依存して1または2であり;そして
Mは、チタン、ハフニウム、およびジルコニウムよりなる群から選択される第4族金属である。〕
を適用することにより、エチレン、α−オレフィン、およびビニルノルボルネンのモノマー単位を含むポリマーを調製する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により取得可能なポリマー。

【公開番号】特開2012−46764(P2012−46764A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231927(P2011−231927)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2006−518558(P2006−518558)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(511253210)ランクセス エラストマーズ ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】