説明

エッチング装置

【課題】エッチング装置の透過窓の洗浄頻度を低減させる。
【解決手段】ICPエッチング装置1は、基板2のホルダ5が設けられた処理室3を有し、処理室3の上部には円筒形の透過窓11が取り付けられている。透過窓11の内周にはコーティング層23が形成されており、透過窓11の外側にはICPコイル25が配置されている。基板2のエッチング時には、ICPコイル25から電磁波が処理室3内のエッチングガスを励起させてプラズマを発生させる。プラズマ中のイオンなどは、基板2に到達して基板2上の薄膜をエッチングすると共に、コーティング層23をエッチングする。コーティング層23がエッチングされることで、基板2上の薄膜から放出される物質が透過窓11の内面に付着し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、導電性膜や絶縁膜をプラズマを用いてエッチングすることがある。このようなプロセスに使用されるエッチング装置としては、例えば放電形式に誘導結合方式(Inductively Coupled Plasma;ICP)を採用したICPエッチング装置がある。ICPエッチング装置は、薄膜を形成した基板を収容する真空チャンバを有する。真空チャンバは、石英ガラスによって製造された円筒形の透過窓を有し、透過窓の外側には、高周波電源に接続されたコイルが螺旋状に巻かれている。真空チャンバ内にエッチングガスを導入し、コイルに高周波電流を投入すると、真空チャンバ内にプラズマが発生する。そして、基板の置かれたステージ内に配置された電極に低周波〜高周波電流を印加すると、プラズマによって形成されたエッチングガスのラジカルやイオンが基板に向けて加速されて、基板上の薄膜がエッチングされる。
【0003】
ここで、反応性に乏しい貴金属をエッチングする場合、ICPエッチング装置では、薄膜をエッチングしたときに形成される被エッチング物が基板から離脱して、真空チャンバの側壁およびICPコイルからの高周波の透過窓に付着する。この場合には、ICPコイルで発生させた高周波の電磁波が透過窓に付着した導電性の薄膜によって遮断され、真空チャンバ内に導入できなくなってプラズマを発生できなくなる。この場合、ICPエッチング装置を停止して真空チャンバ内を清掃する必要がある。
【0004】
そこで、従来のエッチング装置では、透過窓の付近に、エッチング用のプラズマとは別にクリーニング用のプラズマを生成させ、透過窓への被エッチング物の付着を防止していた。
また、従来のエッチング装置には、コイルの立下り部分を透過窓の近傍に近づけて配置し、コイルと透過窓の間に容量性結合を形成させると共に、プラズマ発生時にはコイルを透過窓の外周に沿って回動させるものがある。コイルとプラズマ間の容量結合により、プラズマ中のイオンの一部がコイルに向かって加速されて、透過窓に衝突する。この衝突により透過窓に付着した被エッチング物が削られる。コイルを回動させることで、透過窓の付着物が均一に除去される。
さらに、透過窓の内側に凹凸を形成することで凹部分への被エッチング物の付着を低減させたり、透過窓の内側に多数の孔を有する石英ガラス製の防着板を配置したりするエッチング装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−209179
【特許文献2】特開2002−75963
【特許文献3】特開2000−195841
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コイルとプラズマ間の容量結合による効果は十分ではなく、洗浄周期も高々300枚程度である。また、石英ガラス性の透過窓の内側に凹凸を形成するには、複雑な加工が必要であった。
【0007】

この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エッチング装置の透過窓の洗浄頻度を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、エッチング対象物を収容可能で、前記エッチング対象物を支持するホルダと、電磁波を透過する透過窓を有する処理室と、前記透過窓の外側に配置されたコイルと、前記コイルに高周波電圧を印加する電源と、前記透過窓の内面に取り付けられ、前記処理室内で発生させたプラズマによってエッチング可能な絶縁膜と、を含むことを特徴とするエッチング装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
絶縁膜がプラズマによってエッチングされることで、エッチング対象物から放出された被エッチング物が透過窓に膜形成しなくなる。これによって、メンテナンスの周期を長くでき、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエッチング装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係るエッチング装置のエッチング対象物の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係るエッチング装置の構成の変形例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態に係るエッチング装置の構成の他の変形例を示す一部拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係るエッチング装置の構成の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態に係るエッチング装置の構成の変形例を示す断面図である。(その1)
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係るエッチング装置の構成の変形例を示す断面図である。(その2)
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係るエッチング装置の構成の変形例を示す断面図である。(その3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0012】
図1に断面構造を示すように、ICPエッチング装置(エッチング装置)1は、薄膜が形成された基板2(エッチング対象物)を収容可能な処理室3を有する。処理室3は、下側にエッチング対象物を収容する収容容器10を有し、収容容器10の上には透過窓11が配置されている。透過窓11の上部は天板12で閉鎖されている。
【0013】
収容容器10は、底部及び側部が閉塞されており、内部に基板2を載置するホルダ5が設けられている。ホルダ5は、例えば、静電チャック方式によって基板2を保持する。収容容器10の底部には、排気用のポート13が設けられており、ポート13を介して処理室3が真空ポンプ14に接続されている。さらに、ホルダ5には、エッチャントを基板2に向かって加速させるバイアス用電源(LF電源)15に接続されている。LF電源15
は、低周波インピーダンスの整合器17と、コンデンサ16を介してホルダ5に接続されている。また、収容容器10の側部には、ガス導入ポート18が設けられており、ガス導入ポート18を介してエッチングガスの供給源19に接続されている。収容容器10は、例えば、アルミニウムやステンレスから製造されている。
【0014】
透過窓11は、円筒形の石英ガラスからなり、下端は収容容器10の上端に形成された溝21にOリングなどのパッキン材22を用いて固定されている。透過窓11は、高周波の電磁波を透過可能であれば良く、石英ガラスに限定されない。透過窓11の内面にはコーティング層23(絶縁層)が形成されている。透過窓11の外側には、ICPコイル25が配置されている。ICPコイル25は、高周波インピーダンスの整合器26を介してRF電源27に接続されている。
【0015】
透過窓11の上部は、天窓12の溝28にOリングなどのパッキン材29を用いて固定されている。天板12は、例えば、アルミニウムやステンレスから製造されており、アースに接続されている。
【0016】
さらに、エッチング装置1には、プラズマの制御や、バイアス電圧の印加、ガス供給、真空引きを制御するコントロールユニット30が設けられている。また、基板2の温度を制御する不図示の温度調整機能がホルダ5に設けられている場合には、コントロールユニット30に基板2の温度を制御する機能が追加される。
【0017】
ここで、透過窓11の内面に形成されたコーティング層23の詳細について説明する。
コーティング層23は、エッチングガスと反応性を有し、基板2から放出される被エッチング物がコーティング層23に堆積するレートより、プラズマからのイオンやラジカルでエッチングされるレートの方が早くなる材料、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂からなり、その厚さは約10mmとする。コーティング層23を形成するときは、例えば、ポリアミド酸の溶液を透過窓11の内面の全周にわたって塗布した後、常温で乾燥させる。さらに、例えば300℃〜500℃以上の温度で加熱して、ポリアミド酸のイミド化反応を起こさせて、ポリイミド層を形成する。また、コーティング層23の形成方法の他の例としては、ポリイミドのシートを透過窓11の内周に接着剤、例えばポリイミド系の接着剤を用いて密着させることがある。
【0018】
次に、エッチング装置1を用いたエッチングについて、基板2の上方に形成した薄膜をエッチングしてキャパシタを形成する場合を例にして説明する。
図2(a)に示すように、シリコン製の基板2上には、不図示のトランジスタなどが形成されると共に、絶縁膜30が形成されている。さらに、絶縁膜30の上には、キャパシタの下部電極となるプラチナ膜31が形成されている。プラチナ膜31の上には、PZT膜32と、IrO膜33が順番に積層されている。これら膜31〜33は、例えば、不図示のスパッタリング装置を用いたスパッタリング法によって形成される。
【0019】
さらに、IrO膜33の上には、エッチング装置1で各薄膜31〜33をパターニングするためのハードマスク34が形成されている。ハードマスク34は、例えば、酸化シリコン膜をCVD法で形成し、フォトレジストを用いてパターニングすることで形成される。ここで、エッチング対象物は、図2(a)に示す構成に限定されない。
【0020】
これら薄膜31〜33及びハードマスク34が積層された基板2は、エッチング対象物として、処理室3内に搬入され、ホルダ5上に固定される。最初に、コントロールユニット30は、処理室3の内部を所定の圧力まで1Pa以下に真空引きする。続いて、エッチングガスの供給源19からエッチングガス、例えばCl、Ar、O、CF、Fなどが処理室3内に供給される。この後、コントロールユニット30がRF電源27からI
CPコイル25に例えば、13.56MH以上の高周波の電流を供給する。ICPコイル25からは、電磁波が発振される。電磁波は、透過窓11を通過して処理室3内に導入され、処理室3内でエッチングガスを励起させる。
【0021】
これによって、図1中に破線で示すように、処理室3内で、かつICPコイル25の内側の領域にプラズマが発生する。ここで、透過窓11の内周に設けられたコーティング層23は、絶縁膜から形成されており、電磁波の伝播を妨げない。従って、コーディング層23がプラズマの発生状態に影響を与えることはない。
【0022】
プラズマが安定したら、1MHz以下のLF電源15を稼動させ、バイアス電圧を処理室の天板2とホルダ5の間に印加する。これによって、図1に下向きの矢印で示すように、プラズマ中のイオンやラジカルが基板2に導かれる。基板2の上方に形成されているIrO膜33は、イオンやラジカルの衝突によってエッチングされる。
【0023】
このとき、エッチングによってIrO膜33の表面から被エッチング物(エッチング生成物)が引き剥がされる。被エッチング物は、例えば、導電性を有するIrや、Irの酸化膜がある。被エッチング物は、真空ポンプ14によって処理室3の外に排出されるが、一部の被エッチング物は図1に波線の矢印で示すように処理室3内を移動する。その結果、一部の被エッチング物質が、収容容器10の内壁や、透過窓11の近傍に到達する。
【0024】
透過窓11の近傍に到達した被エッチング物は、透過窓11の内側に配置されているコーティング層23の内周面に付着して膜を形成しようとする。Irなどの導電性を有する被エッチング物が透過窓11の内側に膜を形成すると、膜がアースとして働くのでICPコイル25からの電磁波の導入が阻害される。その結果、処理室3内でプラズマが発生しなくなる。しかしながら、この実施の形態では、コーティング層23の内周面がプラズマによってエッチングされることで、被エッチング物がコーティング層23に付着することが防止される。これによって、処理室3内でプラズマを安定的に発生させられる。
【0025】
具体的には、処理室3内、特に透過窓11の内側の領域では、プラズマとICPコイル25の間の容量結合が生じる。その結果としてプラズマとICPコイル25の間に電界が発生して、プラズマ中のイオンやラジカルの一部が透過窓11に向かうように加速させられる。
【0026】
このように加速させられた一部のイオンやラジカルは、コーティング層23に到達し、コーティング層23をエッチングする。コーティング層23は、主にポリイミドで形成されているので、イオンやラジカルによって容易にエッチングされる。従って、透過窓11の内周のコーティング層23の内面は、イオンやラジカルによって徐々にエッチングされ、膜厚が減少させられる。
【0027】
プラズマによるコーティング層23のエッチングレートは、被エッチング物の成膜レートより大きいので、透過窓11の近傍に到達した被エッチング物は、コーティング層23の内周に付着できないか、付着したとしても即座にエッチングによってコーティング層23の表面から除去される。即ち、コーティング層23の表面は、エッチングによって常に新しい面が露出し、被エッチング物のコーティング層23への付着が防止される。ICPコイル25からの電磁波の導入が妨げられることがないので、プラズマを安定して発生させられる。ここで、コーティング層23は、ポリイミドなどの樹脂から形成されているので、コーティング層23からの被エッチング物は、IrO膜33のエッチングに影響は与えない。
【0028】
同様に、PZT膜32や、Pt膜31をエッチングしてキャパシタをパターニングする
。このとき、被エッチング物として、PZTの構成元素や、Ptなどが放出されるが、コーティング層23がエッチングされることで、被エッチング物の透過窓11の内面への付着が防止される。
【0029】
この結果、図2(b)に示すように、シリコン製の基板2の上方にプラチナ膜からなる下部電極31Aと、PZT膜からなる強誘電体膜32Aと、IrO膜からなる上部電極33とが積層されたキャパシタ35が形成される。エッチング対象となる膜は、IrO膜33や、PZT膜32、Pt膜31に限定されず、例えば、Ir、PtO、Ru、RuOなどの貴金属材料や、その他の強誘電体層でも良い。
【0030】
ここで、コーティング層23の厚さは、エッチング装置1を洗浄することなく所定枚数(例えば、1000枚以上)の基板2を処理できる厚さにすることが好ましい。エッチング装置1の洗浄頻度を低減できるので、作用効率が向上する。
【0031】
また、コーティング層23は、絶縁体からなり、エッチングガスと反応性を有し、基板2から放出される被エッチング物がコーティング層23に堆積するレートより、プラズマからのイオンやラジカルでエッチングされるレートの方が早くなる材料を用いて形成される。このために、被エッチング物がコーティング層23の内周に堆積して導電膜を形成することを防止できる。透過窓11の内側に導電膜が形成されると、ICPコイル25からの電磁波の伝播が妨げられ、プラズマを発生させられなくなる。これに対し、前記のような特徴を有するコーティング層23を設けることで、導電膜の形成が妨げられ、プラズマを安定して発生できる。
【0032】
以上、説明したように、この実施の形態では、コーティング層23を透過窓11の内周の全面に形成することで、被エッチング物の透過窓11の内周への堆積を防止するので、エッチングを安定して実施できるようになる。また、エッチング装置1のメンテナンスの周期を長くでき、作業効率を向上できる。
【0033】
エッチング装置1のメンテナンス時には、残ったコーティング層23を薬剤によって透過窓11の内面から全て剥がし、その後に新たなコーティング層23を透過窓11の内面に形成する。また、残ったコーティング層23の表面を洗浄し、不純物などを取り除いた後、コーティング層23の厚さが所望の値になるように新しいコーティング層23を、残っているコーティング層23に重ねても良い。
【0034】
ここで、図3に実施形態の変形例を示す。ICPエッチング装置51は、処理室3を有する。処理室3は、下側にエッチング対象物を収容する収容容器10を有し、収容容器10の上には筒体52が配置されており、筒体52の上部が天板で閉鎖されている。筒体52は、収容容器10に一体、又は別体に形成され、例えば、アルミニウムなどから製造されている。天板12は、中央に石英ガラス製の透過窓53が嵌め込まれている。透過窓53の内面にはコーティング層54が形成されている。コーティング層54の材料や厚さは、前記と同様である。さらに、透過窓53の外側には、渦巻き状のICPコイル55が配置されている。ICPコイル55は、整合器26を経てRF電源27に接続されている。その他の構成は、図1と同様である。
【0035】
エッチング時には、RF電源27からの高周波電流によってICPコイル55が電磁波を発生させる。電磁波は、透過窓53及びコーティング層54を通って処理室3内に伝播し、プラズマを発生させる。プラズマ中のイオンやラジカルは、LF電源15を用いたバイアス電圧によって基板2に加速させられ、薄膜をエッチングする。エッチングされた薄膜の構成元素を含む被エッチング物の一部は、透過窓53に向けて処理室3内を移動する。その一方で、イオンやラジカルの一部は、ICPコイル55とプラズマの容量結合によ
って透過窓53に向けて加速させられ、コーティング層54の表面をエッチングする。これによって、薄膜から放出される被エッチング物がコーティング層54に堆積しなくなる。
【0036】
さらに、図4に別の変形例を示す。このICPエッチング装置56では、ICPコイル25の導線の配置に併せて、コーティング層23の厚さが厚くなっている。より具体的には、ICPコイル25の導線の内側、即ち透過窓11を挟んで対向する位置のコーティング層23が他の領域より厚くなっている。これは、ICPコイル25の位置は、イオンやラジカルが打ち込まれ易く、コーティング層23が他の領域に比べてエッチングされ易いため、この部分23Aのコーティング層23の膜厚を予め厚くすることで、メンテナンス頻度を低下できるからである。
【0037】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図5(a)に全体の概略を示すと共に、図5(b)に一部を拡大して示すように、ICPエッチング装置(エッチング装置)61は、処理室3を有する。処理室3は、下部に収容容器10を有し、収容容器10の上には、透過窓ユニット62が配置され、最上部は天板12で閉鎖されている。
【0038】
透過窓ユニット62は、分割された3つの透過窓63,64,65を有する。具体的には下側が第1の透過窓63、中間が第2の透過窓64と、上側が第3の透過窓65になっている。第1の透過窓63は、収容容器10の溝21にOリングなどのパッキン材22を用いて固定されており、ホルダ5の中心を通る処理室3の中心線から第1の半径r1を有する円筒形の石英ガラスを用いて製造されている。第1の透過窓63の上端は、下側連結部材71の下面に刻まれた溝72にOリングなどのパッキン材73を用いて固定されている。下側連結部材71は、例えば円筒形状を有し、例えば、アルミニウムなどの金属材料から製造されている。下側連結部材71の内径は、第1の半径r1と同程度の大きさである。
【0039】
第2の透過窓64は、下側連結部材71の上面に刻まれた溝75にOリングなどのパッキン材76を用いて固定されている。第2の透過窓64は、中心線から第2の半径r2を有する円筒形の石英ガラスを用いて製造されている。第2の半径r2は、第1の半径r1より大きい。第2の半径r2は、例えば、ホルダ5に載置される基板2の外周と、下側連結部材71(第1の透過窓63)の最も内側の部分を結ぶ直線L1より外側に、第2の透過窓64が配置されるような値である。
【0040】
第2の透過窓64の上端は、上側連結部材81の下面に刻まれた溝82にOリングなどのパッキン材83を用いて固定されている。上側連結部材81は、例えば円筒形状を有し、例えば、アルミニウムなどの金属材料から製造されている。上側連結部材81の内径は、下側連結部材71より大きく、第2の半径r2と同程度の大きさである。
【0041】
第3の透過窓65は、上側連結部材81の上面に刻まれた溝82にOリングのパッキン材83を用いて固定されている。第3の透過窓65は、中心線から第3の半径r3を有する円筒形の石英ガラスを用いて製造されている。第3の半径r3は、第2の半径r2より大きい。第3の透過窓65の上端は天板にOリングなどのパッキン材29を用いて固定されている。第3の半径r3は、例えば、ホルダ5に載置される基板2の中心と、上側連結部材81(第2の透過窓64)の最も内側の部分を結ぶ直線L2より外側に、第3の透過窓65が配置されるような値である。
【0042】
ICPコイル25は、例えば、2重に巻き回されており、その一部が第2の透過窓64の外側に配置され、残りが第3の透過窓65の外側に配置されている。
【0043】
このエッチング装置61では、第1の実施の形態と同様にエッチングが行われる。基板2からは、被エッチング物が放出される。被エッチング物の一部は、第1の透過窓63の内面に付着する。また、被エッチング物の他の一部は、第1の透過窓63のさらに上方に移動するが、第2の透過窓64は、第1の透過窓63より外側で、かつ下側連結部材71によって基板2から隠れた位置に配置されているので、被エッチング物が到達し難い。第3の透過窓65は、第2の透過窓64より外側で、かつ上側連結部材81によって基板2から隠れた位置に配置されているので、さらに被エッチング物が到達し難い。
【0044】
従って、第2及び第3の透過窓64,66に到達する被エッチング物は極めて少なくなる。第2及び第3の透過窓64,65の外側には、ICPコイル25が配置されているが、第2及び第3の透過窓64,65への被エッチング物の付着が防止されるので、電磁波の伝播が妨げられ難くなる。従って、エッチングを安定して行えると共に、装置メンテナンスの頻度を低減できる。
【0045】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
図6に示すICPエッチング装置(エッチング装置)91は、第1の透過窓63の代わりに、収容容器10と一体に形成された筒状の側壁92が設けられている。側壁92の内周は、第1の半径r1にほぼ等しい。透過窓ユニット62Aは、第2の透過窓64と、上側連結部材81と、第3の透過窓65を有する。第2の透過窓64は、側壁92の内周の上端と、基板2の外縁とを結ぶ直線L1の外側に配置されているので、被エッチング物が付着し難い。同様に、第3の透過窓65は、第3の半径r3を有するので、被エッチング物が付着し難い。
【0046】
このエッチング装置91では、第2及び第3の透過窓64,65に対する被エッチング物の付着が抑制されるので、エッチングを安定して行えると共に、装置メンテナンスの頻度を低減できる。ここで、エッチング装置91は、第2の透過窓64又は第3の透過窓65のみを有しても良い。
【0047】
図7に示すエッチング装置101は、第1から第3の透過窓63,64,65のそれぞれの内面にコーティング層23を有する。コーティング層23の構成及び作用効果は、第1の実施の形態と同様である。コーティング層23は、全ての透過窓63〜65の内面に形成しても良いし、一部の透過窓63〜65の内面のみに形成しても良い。好ましくは、ICPコイル25が配置されている透過窓64,65にコーティング層23が形成される。
【0048】
また、ICPエッチング装置の他の変形例として、連結部材71,81を透過窓63〜65より内側に突出させても良い。連結部材71,81によって被エッチング物が透過窓64,65に到達し難くなる。この場合には、第2及び第3の透過窓64,65の半径r2,t3を同じにするか、半径r2,t3の差を小さくすることも可能である。
さらに、エッチング装置61,91,101の透過窓の数は4つ以上でも良い。また、1つの透過窓64,65の外側にIPCコイル25を2巻き以上巻き回しても良い。
【0049】
図8に示すエッチング装置111のように、第2及び第3の透過窓64,65の代わりに、半径が徐々に変化する円筒形の透過窓112を有しても良い。透過窓112は、中央を通る処理室3の中心線からの距離が、ホルダ5に近い端部に比べて、ホルダ5から遠い端部の方が大きい。透過窓112に半径は、基板2から放出される被エッチング物の軌跡を予め予測し、被エッチング物が殆ど到達しない距離に透過窓112の内周面が配置され
るように決定される。このエッチング装置111では、上側、つまり基板2から離れるに従って徐々に透過窓112が外側に配置されるので、被エッチング物が到来し難くなる。透過窓112の内側にコーティング層23を形成しても良い。
【0050】
透過窓11,63,64,65は、楕円形や、多角形でも良い。コーティング層23,54は、少なくともICPコイル25,55の導線の内側、即ち透過窓11,53,63,64,65,112を挟んで対向する位置に形成されていれば良く、透過窓11,53,63,64,65,112の内面の全面に形成されていなくても良い。
【0051】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0052】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) エッチング対象物を収容可能で、前記エッチング対象物を支持するホルダと、電磁波を透過する透過窓を有する処理室と、前記透過窓の外側に配置されたコイルと、前記コイルに高周波電圧を印加する電源と、前記透過窓の内面に取り付けられ、前記処理室内で発生させたプラズマによってエッチング可能な絶縁膜と、を含むことを特徴とするエッチング装置。
(付記2) 前記絶縁膜は、前記コイルの導線の内側の位置に少なくとも形成されていることを特徴とする付記1に記載のエッチング装置。
(付記3) 前記絶縁膜は、前記エッチング対象物からの被エッチング物が前記絶縁膜に堆積するレートより、プラズマによるエッチングレートの方が大きいことを特徴とする付記1又は付記2に記載のエッチング装置。
(付記4) 前記絶縁膜は、ポリイミド樹脂によって形成されていることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載のエッチング装置。
(付記5) 前記透過窓は、前記処理室の中央を通る前記処理室の中心線からの距離が、前記ホルダに近い端部に比べて、前記ホルダから遠い端部の方が大きいことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載のエッチング装置。
(付記6) 前記透過窓は、前記ホルダに近い端部から順番に、第1の半径を有する第1の透過窓と、第1の半径より大きい第2の半径を有する第2の透過窓と、第2の半径より大きい第3の半径を有する第3の透過窓とを有し、前記第2及び第3の透過窓の外側に前記コイルが配置されていることを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか一項に記載のエッチング装置。
(付記7) 前記絶縁膜は、前記コイルの導線の内側の位置の厚さが、他の部分の厚さより大きいことを特徴とする付記2に記載のエッチング装置。
(付記8) エッチング対象物を収容可能で、前記エッチング対象物を支持するホルダと、電磁波を透過する透過窓を有する処理室と、前記透過窓の外側に配置されたコイルと、前記コイルに高周波電圧を印加する電源と、を有し、前記透過窓は、前記処理室の中央からの距離が、前記ホルダに近い端部に比べて、前記ホルダから遠い端部の方が大きいことを特徴とするエッチング装置。
(付記9) 前記透過窓は、前記ホルダに近い端部から順番に、第1の半径を有する第1の透過窓と、第1の半径より大きい第2の半径を有する第2の透過窓と、第2の半径より大きい第3の半径を有する第3の透過窓とを有し、前記第2及び第3の透過窓の外側に前記コイルが配置されていることを特徴とする付記8に記載のエッチング装置。
【符号の説明】
【0053】
1,51,56,91,101,111 エッチング装置
2 基板(エッチング対象物)
3 処理室
5 ホルダ
11,53,63,64,65,112 透過窓
23 コーティング層(絶縁膜)
25,55 ICPコイル
27 RF
r1 第1の半径
r2 第2の半径
r3 第3の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象物を支持するホルダと、
電磁波を透過する透過窓とを有する処理室と、
前記透過窓の外側に配置されたコイルと、
前記コイルに高周波電圧を印加する電源と、
前記透過窓の内面に取り付けられた絶縁膜と、
を含むことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記絶縁膜は、少なくとも前記透過窓の前記コイルの導線の位置の内面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記絶縁膜は、前記エッチング対象物からの被エッチング物が前記絶縁膜に堆積するレートより、前記プラズマによるエッチングレートの方が大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記絶縁膜は、ポリイミド樹脂よりなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記透過窓は、前記ホルダに近い端部から順番に、第1の半径を有する第1の透過窓と、第1の半径より大きい第2の半径を有する第2の透過窓と、第2の半径より大きい第3の半径を有する第3の透過窓とを有し、前記第2及び第3の透過窓の外側に前記コイルが配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102075(P2013−102075A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245442(P2011−245442)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】