説明

エネルギー減損因子を用いた良性前立腺増殖症の処置

本発明は、前立腺上皮細胞において、エネルギー代謝(特に、ATPおよびNADH/NADPHの産生)を妨害する因子の投与による、良性前立腺増殖症の処置または予防のための方法を提供する。本出願は、良性前立腺増殖症(BPH)を処置するための方法を提供する。この方法は、治療上有効な量のエネルギー減損因子(EA)を、そのような処置を必要とするヒト被験体に投与する工程を包含し、このエネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する因子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮出願第60/496,163号(2003年8月18日出願)、同第60/488,265号(2003年7月18日出願)、同第60/472,907号(2003年5月22日出願)、同第60/460,012号(2003年4月2日出願)、同第60/458,846号(2003年3月28日出願)、同第60/458,665号(2003年3月28日出願)、同第60/458,663号(2003年3月28日出願)、同第60/442,344号(2003年1月23日出願)、および同第60/441,110号(2003年1月17日出願)の利益を主張する。これらの出願の各々は、その全体が、全ての目的のために本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、良性前立腺増殖症の処置および予防に関し、そして医薬分野および類似分野(化学、医薬品化学および生物学が挙げられるがこれらに限定されない)に適用を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
良性前立腺増殖症(BPH)は、前立腺上皮細胞が異常に増殖して尿の流れを妨げる疾患であり、米国では1000万人を超える成人男性が罹患しており、そして世界中の他の国全体では、数百万人を超える人々が罹患している。比較的近年まで、外科的介入が、この疾患の唯一の処置であった。そして今日でさえも、手術は、最後の処置手段であり、他の処置が有効でないかまたは有効でなくなった場合にほぼ必然的に頼っている。前立腺手術およびそれからの回復は痛みを伴い、この手術自体は、有効でないかもしれず、深刻な副作用の危険をもたらす。BPHの処置における手術の役割の近年の概説については、Barry,2001を参照のこと(完全な引用は以下に提供される)。
【0004】
BPHの症状を処置するためには、ほんの2つのクラスの薬物しか現在利用可能でない。1つのクラスとしては、活性形態のテストステロン(ジヒドロテストステロン、すなわちDHT)の産生を阻害する化合物が挙げられる。これらの薬物使用は、男性において性欲低下ならびに筋肉量減少および緊張低下を引き起こし得、そして高度の前立腺癌の出現増加と関連する。さらに、この治療は、この薬物の最初の投与と前立腺の大きさの有意な減少との間での、非常に長い遅延(数ヶ月)によって制限される。BPHについて現在使用されている第2のクラスの薬物であるαアドレナリン作用性ブロッカーは、平滑筋を弛緩させて、尿をより自由に尿道に通過させる。このクラスの薬物は、第1のクラスの薬物よりも迅速に症状を減少させるが、これは、前立腺の大きさを低下させず、より大きく増殖するのを防止もせず、このことは、最終的な手術的介入をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、BPHの基礎となる疾患状態を、深刻な副作用を伴わずに処置し得る薬物についての、重大な、満たされていない必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、前立腺上皮細胞における、解糖を阻害するか、ミトコンドリア機能を損なうか、さもなければエネルギー代謝を妨害する化合物(「エネルギー減損(energolytic)因子」)の投与によってBPHを処置するための方法および組成物を提供する。本発明の方法は、前立腺上皮細胞における解糖を阻害する任意の解糖インヒビター、またはこれらの細胞におけるエネルギー産生もしくはミトコンドリア機能を損なう化合物を用いて実施され得る。このような化合物の例示的なクラスとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:解糖を直接的もしくは間接的に阻害する化合物、エネルギー代謝を妨害する化合物、ミトコンドリア機能を損なう化合物、ミトコンドリア毒、解糖インヒビター、ヘキソキナーゼのインヒビター、ロニダミン(lonidamine)またはロニダミンアナログ、ゴシポールまたはゴシポールアナログ、3−ブロモピルベートまたはそのアナログ、および2−デオキシグルコース(2DG)または2DGアナログ。さらに、HIF−1αの発現を直接的もしくは間接的に妨害する(それによって、前立腺上皮細胞によるグルコース取り込みを減少させる)因子は、本発明の方法に従って用いられ得る。
【0007】
従って、1つの局面では、本発明は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する因子(「エネルギー減損因子」)の治療上有効な量を、そのような処置を必要とするヒト被験体に投与することによって、良性前立腺増殖症(BPH)を処置するための方法を提供する。
【0008】
関連する方法では、本発明は、治療上有効な量のエネルギー減損因子を、BPH症状を示すヒト被験体に投与することによって、BPHに関係する症状を減少するための方法を提供する。
【0009】
関連する方法では、本発明は、治療上有効な量のエネルギー減損因子をヒト被験体に投与することによって、この被験体において前立腺の大きさを減少するための方法を提供する。
【0010】
関連する方法では、本発明は、予防上有効な量のエネルギー減損因子をヒト被験体に投与することによって、BPHの予防のための方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、このエネルギー減損因子は、2−デオキシグルコース、3−ブロモピルベート、ゴシポール、オキサメート、ヨードアセテート、アポプトリジン、ロンダミン、2−デオキシグルコースアナログ、3−ブロモピルベートアナログ、ゴシポールアナログ、オキサメートアナログ、ヨードアセテートアナログ、アポプトリジンアナログ、およびロンダミンアナログの群より選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、この被験体は、癌と診断されてもおらず、癌の処置中でもない;および/または約2ng/mlより多い血清PSAを有する;および/または約10ng/ml未満の血清PSAを有する;および/または以前に良性前立腺増殖症(BPH)について処置されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、このエネルギー減損因子は、BPHについての別の処置と組み合わせて投与される。このBPHについての他の処置は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する第2因子の投与、前立腺減少手術、および/またはBPHを処置するために現在用いられている2つのクラスの薬物のうちの1つによる薬物の投与であり得る。
【0014】
1つの実施形態では、このエネルギー減損因子は、少なくとも1日当たり1回、少なくとも5日間投与される。本発明の1つの局面では、この被験体のAUASIスコアもしくはIPSSスコアは、処置開始後60日目以後に測定して処置の開始前のベースラインと比較した場合に、少なくとも3ポイント、必要に応じて少なくとも約5ポイント、減少され;前立腺の大きさは、少なくとも約20%、必要に応じて少なくとも約40%、減少され;そして/または血清PSAレベルは、少なくとも約20%、必要に応じて少なくとも約40%、減少される。
【0015】
本発明は、(a)患者においてBPHを診断する工程;(b)この患者にエネルギー減損因子(EA)を投与する工程;および(c)BPHの1つ以上の症状発現がこの患者において減少されるか否かを決定する工程によって、BPHを処置するための方法をさらに提供する。(a)BPHと診断された患者に、エネルギー減損因子を投与する工程;および(b)良性前立腺増殖症(BPH)の1つ以上の症状発現がこの患者において減少されるか否かを決定する工程によってBPHを処置するための方法もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
以下の定義は、本発明の理解を助けるために提供される。他に定義されない限り、本明細書中で用いられる、技術、表示および他の科学用語または医学用語または専門用語の全ての用語は、化学分野および医薬分野の当業者によって通常理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合には、通常理解される意味を有する用語は、明確さおよび/または容易な参照のために本明細書中で定義され、本明細書中にこのような定義を含めることは、当該分野で一般的に理解されるものとの実質的な相違を表すとみなされるべきではない。
【0017】
本明細書中で用いられる場合、状態または患者を「処置する」とは、臨床結果を含めて、有益な結果または所望の結果を得る工程を採ることをいう。本発明の目的のためには、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、BPHの1以上の症状の軽減または改善、疾患の程度の低減、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善、緩和または安定化、および以下に記載の他の有益な結果が挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、症状の「減少」(およびこの語句の文法上の等価物)は、症状の重篤度もしくは頻度の減少、または症状の除去を意味する。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、薬物を被験体に「投与する」または薬物の被験体への「投与」(およびこの語句の文法上の等価物)は、直接的投与(自己投与を含む)および間接的投与(薬物の処方行為を含む)の両方を包含する。例えば、本明細書中で用いられる場合、患者に薬物の自己投与を指示するか、および/または患者に薬物についての処方を提供する、医師は、この薬物をこの患者に投与している。
【0020】
本明細書中で用いられる場合、BPHの「症状発現」とは、BPHを有する被験体に特有の症状、兆候、解剖学的状態(例えば、前立腺の大きさ)、生理学的状態(例えば、PSAレベル)、または報告(例えば、AUASIスコア)をいう。
【0021】
本明細書中で用いられる場合、薬物の「治療上有効な量」は、BPHを有する被験体に投与した場合に、この被験体において意図される治療効果(例えば、BPHの1以上の症状発現の軽減、改善、緩和または除去)を有する薬物量である。完全な治療効果は、1用量の投与によっては必ずしも生じず、一連の用量の投与の後にのみ生じ得る。従って、治療上有効な量は、1回以上の投与によって投与され得る。
【0022】
本明細書中で用いられる場合、薬物の「予防上有効な量」は、被験体に投与した場合に、意図された予防効果(例えば、疾患もしくは症状の発生(もしくは再発)を予防または遅延させるか、または疾患もしくは症状の発生(もしくは再発)の可能性を低減する)を有する薬物量である。完全な予防効果は、1用量の投与によっては必ずしも生じず、一連の用量の投与の後にのみ生じ得る。従って、予防上有効な量は、1回以上の投与によって投与され得る。
【0023】
本明細書中で用いられる場合、「TID」または「QD」は、それぞれ、「1日に3回」および「1日に1回」それらの慣用的な意味を有する。
【0024】
(2.良性前立腺増殖症および代謝インヒビターの効果)
本発明は、良性前立腺増殖症(BPH)の処置に有用な組成物および方法を提供する。特に、本発明は、BPHの処置または予防のための前立腺上皮細胞におけるエネルギー産生を阻害または低減させる化合物の使用に関する。
【0025】
BPH(良性前立腺増殖症とも称される)の特徴の簡潔な議論は、本発明の理解を助ける。BPHは、前立腺における細胞の過成長(過形成)に関与し、前立腺の拡大を生じ、尿路症状および尿路疾患の低減をもたらす。前立腺は、結合組織および平滑筋の間質に分泌上皮細胞を含み(前立腺解剖学のより詳細に記述に関しては、Barry、2003を参照のこと)、そして、BPHは、上皮成分の過形成に関与する。正常な前立腺における分泌上皮成分は、この組織における亜鉛のレベルが他の正常な組織と比較して非常に高いという点で、顕著である。高亜鉛レベルの結果は、酵素m−アコニターゼの亜鉛阻害に関する機構を通して、トリカルボン酸(TCA)回路を介するエネルギーの産生および酸化的リン酸化が腺上皮において実質的に低減するということであり、それによってこの組織を、エネルギー源として、他の器官および組織よりかなり解糖に依存性にしている。m−アコニダーゼ(TCA回路における重要な酵素)の亜鉛阻害は、前立腺上皮細胞におけるTCA回路の少なくとも実質的な低減、そして、おそらくは、ほぼ完全な遮断を生じる。m−アコニダーゼの亜鉛に基づく阻害の別の生理学的な結果は、TCA回路からのクエン酸の流用であり、このことにより、前立腺が、精子がエネルギー源として使用する大量のクエン酸塩を精液中に分泌することを可能にしている。一般的には、Costello、1999;Costelloら、2000;CostelloおよびFranklin、2000を参照のこと。
【0026】
身体の他の正常細胞は、クエン酸塩の代謝を阻害するレベルまで亜鉛を蓄積しないので、前立腺上皮細胞は、独自に解糖(嫌気性代謝)に依存し、解糖のインヒビターに対して、およびこれらの細胞におけるトリカルボン酸回路のほぼ完全な遮断を増進させる化合物(これらの化合物としては、ATPおよび/またはNADH/NADPH産生を妨げる化合物が挙げられるが、これらに限定されない)、グルコース輸送を低減させる化合物ならびにHIF−1αインヒビターに対して独自に感受性である。本発明の方法は、前立腺上皮細胞におけるこの増加した解糖に対する依存性およびトリカルボン酸回路のほぼ完全な遮断を標的する。さらに、トリカルボン酸(TCA)回路によるエネルギーの産生および酸化的リン酸化が分泌上皮において実質的に低減する(しかし、おそらく完全には、消滅しない)ので、ミトコンドリアの機能を損なう薬剤もまた、前立腺上皮細胞において、異なる効果を有し得る。特定の機構に束縛されることを意図することなく、前立腺上皮細胞において解糖および/またはミトコンドリアの機能を阻害する薬剤の投与は、これらの細胞のエネルギーを他の細胞と比較して優先的に枯渇させると考えられる。特定の機構に束縛されることを意図することなく、解糖を阻害するかまたはミトコンドリアの機能をさらに損なうことにより、あるいはその両方により優先的にクエン酸産生細胞を破壊することによって、BPHと関連する過形成のクエン酸産生細胞は、前立腺の大きさを低減させ、その状態を軽減し、その臨床結果を軽減するために破壊される。従って、本発明の方法に従って、前立腺上皮細胞におけるエネルギー産生を阻害するか、または損なう化合物が、BPHを有するか、またはBPHに感受性のヒトまたは他の哺乳動物に、エネルギーを枯渇させることによって、身体の正常な細胞と比較して少なくともある程度のクエン酸産生細胞の優先的な破壊を生じる期間、エネルギー産生を損なう(ATPレベルを減少させる)用量で投与される。
【0027】
前立腺上皮細胞におけるエネルギー産生を阻害するか、または損なう化合物は、本明細書中では、「エネルギー減損(energolytic)因子」または「EA」と称される。本発明の実施に有用である減損因子としては、解糖を阻害する化合物、ミトコンドリアの機能を損なう化合物およびそれら両方を行なう化合物が挙げられ、全ての場合において、前立腺のグルコース代謝に直接的または間接的に作用する化合物を含む。従って、一実施形態において、エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞における解糖を損なう化合物である。一実施形態において、エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞において、ミトコンドリアの機能を損なう化合物である。一実施形態において、エネルギー減損因子は、解糖およびミトコンドリア機能の両方を妨げる。一実施形態において、因子の組合せが使用され、それは、一実施形態において、解糖のインヒビターである一種の因子の投与およびミトコンドリアの機能のインヒビターである第二因子の同時(simultaneous)投与または同時(contemporaneous)投与を含む。
【0028】
エネルギー減損因子の一クラスとしては、解糖を(直接的に、または間接的に)阻害する化合物が挙げられる。例えば、EAは、グルコースをピルビン酸へ変換する工程を触媒する酵素、またはピルビン酸のアセチル−CoAへの酸化を阻害し得る。例えば、エネルギー減損因子は、これらに限定されないが、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、アルドース、ホスホグリセラーゼキナーゼ、エノラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのインヒビターであり得る。例として、このような化合物としては、これらに限定されないが、米国特許第5,824,665号に記載される化合物(6−アミノ−6−デオキシ−グルコース;N−アセチル−β−D−マンノサミン;D−マンノサミン;N−α−(p−トシル)−L−リジンクロロメチルケトン);ホスホグリセリン酸;キノンメチド;タキソドン;タキソジオン;α−メチレンラクトン;ユーパロチンアセテート;ユーパクニン;ベルノレピン;アルガリン酸(argaric acid);キナルジン酸;5’−p−フルオロスルホニルベンゾイルアデノシン;5−ケト−D−フルクトース;5−ケト−D−フルクトース−1,6−ビスホスフェート、Mg−ホスホグリセレート;2,3−ジホスホグリセレート;3(トランス)−クロロホスホエノールピルベート;3(シス)−シアノホスホエノールピルベート;D−タルトロネート;セミアルデヒドホスフェート;アミノエノールピルベート;D−グリシドールホスフェート;L−グリシドールホスフェート;ヒドロキシ−1−シクロプロパンカルボン酸;D(−)3−ホスホグリセリン酸;グリオキシレート;ヒドロキシピルベート;キヌレネート;キサンツレネート;α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸;ブロモピルビン酸;フルオロピルビン酸)またはこれらの薬学的に受容可能なアナログもしくは誘導体が挙げられる。例えば、Bisswanger、1981;Furuta、1982;Waymack、1979;Lowe、1984;Bisswanger、1980;Colombo、1975;Hanson、1970;McCune、1989;Mansour、1978;Avigad、1974;Scopes、1982;Gunter、1982;Liu、1990;Wirsching、1985;Spring、1971;Rose、1969;O’Leary、1981;de Domenech、1980;およびJohnson、1982を参照のこと。
【0029】
別のクラスのエネルギー減損因子としては、ミトコンドリアの機能を損なう化合物(例えば、ミトコンドリア毒)が挙げられる。ミトコンドリア毒としては、米国特許第6,670,330号に記載されるミトコンドリア毒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
上記のように、いくつかのエネルギー減損因子は、解糖およびミトコンドリア機能の両方を妨げ得る。例えば、作用の特定の機構に対して本発明を制限すること意図せずに、薬物ロニダミン(lonidamine)は、ミトコンドリア膜を破壊し、ミトコンドリアに結合するヘキソキナーゼの活性の低減および解糖経路および酸化的リン酸化によるATP産生の妨害を生じる。解糖を損なう因子が、TCA回路に入るために利用可能なピルビン酸の量を減少させることによって、一般的に少なくとも間接的に、ミトコンドリアによるエネルギー産生を減少させることもまた理解される。
【0031】
いくつかの例示的なエネルギー減損因子は、以下で考察する。
【0032】
(2−デオキシグルコースおよび2−デオキシグルコースのアナログ)
本発明の方法における使用に適した一つのエネルギー減損因子は、2−デオキシ−D−グルコース(2−DG)である。2−DGは、ヘキソキナーゼによってリン酸化され、2−DG−6−リン酸を産生し、これは、さらに代謝されず、そして、ヘキソキナーゼを阻害する。2−DGは、癌細胞において、解糖を阻害することが示されている。
【0033】
エネルギー減損因子の別の例は、解糖阻害活性を有する2−DGのアナログである。本明細書中で使用される場合、2−DGアナログは、グルコース環の2位にヒドロキシル基を有さない2−DG以外の任意のD−グルコースアナログである。L−グルコースおよびそのL−アナログは、本発明の目的の2−DGアナログではない。グルコースアナログとしては、マンノース、ガラクトース、グルコースおよび5−チオ−グルコースが挙げられる。グルコースまたは2−DGのアナログは、グルコース環の任意の位置で水素の代わりにフッ素を有し得る;従って、2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(2−FDG)および2−ジフルオロ−2−デオキシ−D−グルコースは、2−DGアナログである。グルコースのアナログまたは2−DGは、グルコース環の6位以外の任意の位置のヒドロキシル基の代わりに、アミノ基を有し得る;従って、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(2−グルコサミン)および2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース(2−ガラクトサミン)は、2−DGアナログである。他の例示的な2−DGアナログとしては、2−F−マンノース、2−マンノサミン、2−デオキシガラクトース、2−F−デオキシガラクトースならびにジ、トリおよび前述の2−DGアナログまたは後述のアナログの一つ以上を含む他のオリゴ糖が挙げられる。本発明の方法に有用な他の2−DGアナログとしては、図2に示されるアナログが挙げられる。本発明に有用な2−DGアナログとしてはまた、Reinhold、2000、Oncol.Rep.、7:1093−97に記載されるアナログ(例えば、2−デオキシ−D−グルコース四酢酸)およびPCT公開WO 01/82926(Lampidis、2001年3月2日)に記載されるアナログが挙げられる。本発明の方法に使用するのに適したさらなる2−DGアナログは、「Treatment Of Cancer With 2−Deoxyglucose」と題された米国特許第10/____(2004年1月9日出願;代理人整理番号54492−2000400)に記載される。
【0034】
(3−ブロモピルベートおよびそのアナログ)
本発明の方法に使用するための適した別のクラスのエネルギー減損因子は、3−ハロ−ピルベートのクラスであって、ヘキソキナーゼのインヒビターであるブロモピルベートが挙げられるが、これに限定されない。3−ハロ−ピルベートについてのさらなる情報については、米国特許第6,670,330号および米国特許公開番号20030087961を参照のこと。
【0035】
(ゴシポールおよびゴシポールアナログ)
本発明の方法に使用するための適した別のクラスのエネルギー減損因子は、ゴシポールおよびそのアナログからなるクラスであって、ゴシポール(+)、ゴシポール(−)、ゴシポール(+)およびゴシポール(−)の混合物、ゴシポール酢酸、ゴシポールアルデヒド、ゴシポールヘミアセタール、ゴシポールキノイド、ゴシポロン、これらの代謝産物およびこれらの生理学的に受容可能な塩が挙げら得るが、これらに限定されない。本発明の方法に使用され得るゴシポール、ゴシポールアナログ、処方物、および単位投薬形態は、PCT特許出願番号WO 02/097053;WO 02/47673;米国特許第6,114,397号および同第4,381,298号ならびに米国特許出願公開番号2002137801に記載される。
【0036】
(ロニダミンおよびロニダミンのアナログ)
本発明の方法に使用するための適したエネルギー減損因子のクラスの別の例は、ロニダミン(1−(2,4−ジクロロベンジル)−1H−インダゾール−3−カルボン酸;DoridaminaTM;ロニダミンはまた本明細書中ではLNDを称される;米国特許第3,895,026号を参照のこと)およびそのアナログからなるクラスである;ロニダミンは、最初は、抗精子形成剤として同定され、その後、ヨーロッパのいくつかの国において、乳癌、子宮頸部癌、肺癌および前立腺癌の処置に認可された。Silvestrini、1981;Gattoら、2002を参照のこと。LNDの抗癌特性は、少なくとも一部は、ミトコンドリア膜の崩壊の結果であり、それによってミトコンドリアに結合したヘキソキナーゼの活性を低減し、解糖経路および酸化的リン酸化によるATP産生を妨害する。Floridiら、1981、Fanciulliら、1996;およびGatto、2002を参照のこと。また、Kaplan、2000を参照のこと。ロニダミンおよびそのアナログの投与によるBPHを処置するための方法は、同時係属の米国特許出願10/____(「Treatment Of Benign Prostatic Hypertrophy」と題される、代理人整理番号54492−2000100、2004年1月16日出願)に記載される。
【0037】
ロニダミンアナログの例としては、トルニダミン;AF−2364およびAF−2785(図1;Ansariら、1998;およびCorsiら、1976を参照のこと);Silvestrini,1981;Loblら、1981、Chengら、2001ならびに米国特許第3,895,026号および米国特許第6,001,865号に記載される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
(他のエネルギー減損因子)
本発明の方法において有用な、他の有用な糖分解インヒビター、ミトコンドリア機能インヒビター、ミトコンドリア毒、およびヘキソキナーゼインヒビターは、公知であるか、または当該分野で公知のアッセイもしくは本明細書中に記載されるアッセイを使用して同定され得る。例えば、本発明のエネルギー減損因子としての使用のための化合物としては、PCT特許公開WO01/82926および米国特許第6,670,330号;同第6,218,435号;同第5,824,665号;同第5,652,273号;および同第5,643,883号;および米国特許出願公開番号20030072814;同20020077300(例えば、アポプトリジン);同20020035071に記載されるものが挙げられる。
【0039】
本発明のエネルギー減損因子として使用するための化合物としてはまた、米国特許公開番号20020035071(Pitha)に記載される代謝拮抗剤が挙げられ、これには、3−O−メチルグルコース(Jayら、1990,J.Neurochem.55:989−1000);1,5−アンヒドロ−D−グルシトール(Polygalitrol)(Solsら、1954、J.Biol.Chem.,210:581−95;1,5−アンヒドログルシトール−6−ホスフェート(Craneら、1954、J.Biol.Chem.,210:597−696;2,5−アンヒドロ−D−マンニトールおよび2,5−アンヒドログルシトール)のような無水糖が挙げられる。
【0040】
本発明のエネルギー減損因子として使用するための化合物としてはまた、乳酸デヒドロゲナーゼのインヒビター(例えば、オキサメート)、およびグリセルアデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼのインヒビター(例えば、ヨードアセテート)が挙げられる(Lampidis、WO01/82926を参照のこと)。
【0041】
前立腺上皮細胞においてエネルギー産生を妨害し、BPHおよびその症状の処置に有用な化合物は、当業者に公知なスクリーニングおよびアッセイならびに/または本明細書中に記載されるスクリーニングおよびアッセイによって同定され得る。例えば、ミトコンドリア機能を妨害する化合物の同定のための方法は公知である(例えば、米国特許第6,183,948号および同第6,479,251号に記載される方法)。ヘキソキナーゼ(Fanciulliら、1996、およびFloridiら、1981を参照のこと)および他の糖分解酵素のインヒビターについてのアッセイもまた、公知であり、本明細書中に教示されるような、本発明の方法において使用するために適切な化合物をスクリーニングするために使用され得る。
【0042】
さらに、本発明の実施において有用ないくつかの因子は、ロニダミンの1つ以上の活性を模倣する能力(例えば、アポトーシスの誘導またはインビトロでの前立腺上皮細胞もしくは細胞株におけるHIF−1αタンパク質発現/蓄積の低酸素誘導の阻害(例えば、HIF−1αタンパク質発現/蓄積の低酸素誘導の阻害))によって同定される。これらの特性を有する化合物を同定するための本発明によって提供されるアッセイおよびスクリーニングは、以下のセクション7および実施例に記載される。
【0043】
(細胞株におけるアポトーシスアッセイ)実施例2に示されるように、ロニダミンは、ヒト前立腺細胞由来の細胞株においてアポトーシスを誘導する。アポトーシスの誘導は、PC3細胞(ATCC番号CLR−1435)(クエン酸酸化性である前立腺由来の細胞株)よりも、LNCaP細胞(ATCC番号CLR−1740)(クエン酸産生性である前立腺由来の細胞株)において、有意に高く、ロニダミンのような代謝インヒビターに対するクエン酸産生前立腺細胞の感受性と一致している。エネルギー減損因子がBPHまたはその症状発現の処置または予防のために使用される本発明のいくつかの実施形態において、同様なアポトーシス誘導活性を有する因子が選択される。従って、本発明のいくつかの実施形態において、クエン酸産生前立腺細胞(例えば、LNCaP細胞)においてアポトーシスを誘導する(カスパーゼ3活性を増強する)エネルギー減損因子が、BPHを処置するために投与される。本発明のいくつかの実施形態において、PC3細胞におけるよりも有意に高い程度までLNCaP細胞においてアポトーシスを誘導する因子が、BPHを処置するために投与される。本発明のいくつかの実施形態において、この因子によるアポトーシスの誘導は、PC3細胞およびLNCaP細胞の2つの細胞におけるアポトーシスのレベルの違いが最も大きい因子濃度でアッセイされる(但し、このアッセイにおいて使用される因子の濃度は1mMを超えない)場合、LNCaP細胞において、PC3細胞におけるよりも少なくとも約2倍(ときには、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約10倍)高い。
【0044】
(初代細胞培養物におけるアポトーシスアッセイ)実施例2に示されるように、ロニダミンは、ヒト前立腺上皮細胞の初代培養物においてアポトーシスを誘導する。アポトーシスの誘導は、ヒト前立腺間質細胞の初代培養物におけるよりも、前立腺上皮細胞の初代培養物において有意に高く、ロニダミンのような代謝インヒビターに対するクエン酸産生前立腺細胞の感受性と一致する。エネルギー減損因子がBPHまたはその症状発現の処置または予防に使用される本発明のいくつかの実施形態において、類似のアポトーシス誘導活性を有する因子が、選択される。従って、本発明のいくつかの実施形態において、本発明において使用するために有用なエネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞においてアポトーシスを誘導する。本発明のいくつかの実施形態において、ヒト前立腺間質細胞の初代培養物におけるよりも有意に高い程度まで、前立腺上皮細胞の初代培養物においてアポトーシスを誘導する因子が、BPHを処置するために投与される。本発明のいくつかの実施形態において、この因子は、間質細胞においてアポトーシスを有意に誘導しない。本発明のいくつかの実施形態において、この因子によるアポトーシスの誘導は、上皮細胞および間質細胞の2つの細胞株におけるアポトーシスのレベルの違いが最も大きいアナログの濃度でアッセイされる(但し、このアッセイにおいて使用されるアナログの濃度は1mMを超えない)場合、上皮細胞において、間質細胞におけるよりも少なくとも2倍(ときには少なくとも4倍、ときには、少なくとも10倍、およびときには、少なくとも20倍)高い。1つの実施形態において、本発明は、BPHの処置に有用な因子を同定するための方法を提供し、このような方法は、この因子が、前立腺間質細胞においてアポトーシスを誘導する程度よりも高い程度で、前立腺上皮細胞においてアポトーシスを誘導するか否かを決定する工程、およびこのような因子が、前立腺間質細胞においてアポトーシスを誘導する程度よりも高い程度で、前立腺上皮細胞においてアポトーシスをまさに誘導する場合、このような因子をBPHの処置に有用な因子として同定する工程を包含する。本明細書中に記載されるように、種々のアッセイ(例えば、カスパーゼ3アッセイ)を使用して、アポトーシスの誘導を決定し得る。
【0045】
(HIF−1α発現アッセイ)実施例1に示されるように、ロニダミンは、低酸素の条件下で培養されたクエン酸産生細胞において、HIF−1α発現/蓄積(核画分において測定される)を、200マイクロモル濃度においてほぼ2分の1まで、高ロニダミン濃度において5分の1より低く(すなわち、10分の1より低く)までに減少させた。従って、本発明のいくつかの実施形態において、エネルギー減損因子は、低酸素条件下で培養されたLNCaP細胞において、ロニダミン非存在下の培養物と比較して、少なくとも約2分の1まで、少なくとも約5分の1までまたは少なくとも約10分の1までにHIF−1α発現を減少させる(HIF−1α蓄積を妨げる)。
【0046】
実施例1に対応する図において、前立腺細胞におけるHIF−1α発現に対するロニダミンの効果は、低酸素条件下(酸素レベル<0.1%)で培養されたPC3において細胞よりも、LNCaP細胞においてより顕著であるようである。本発明に従うBPHの処置に有用ないくつかのロニダミンアナログは、類似の効果を有し得る。
【0047】
これらの実験の結果は、ロニダミンによるHIF−1αの阻害の機構または特異性を明確には確立しない。HIF−1αレベルに対するロニダミンの効果は、Floridiら、1985によってロニダミンの活性として記載されるタンパク質合成の全般的な阻害に対して全体的にまたは一部起因し得る。HIF−1αレベルに対するロニダミンの効果はまた、ミトコンドリアによる酸素利用に対するロニダミンの効果に全体的または一部起因し得る。Hagenら、2003は、HIF−1αが構成的に合成されるが、酸素の存在下で分解されることを報告した。低酸素条件下において、ロニダミンによるミトコンドリア呼吸の阻害が、ミトコンドリアによる酸素消費を減少することが可能である。次いで、これは、酸素依存性酵素、プロリルヒドロラーゼの活性の増強を導き得、これは、HIF−1α分解経路においてある役割を果たす。
【0048】
上記のようなインビトロアッセイに加えて、エネルギー減損因子は、本発明の方法において使用するためにインビボで評価され得る。例えば、限定ではなく、適切なアッセイとしては、前立腺機能および活性の測定(前立腺機能のインビボ測定および前立腺の大きさのインビボ測定を含む)が挙げられる。
【0049】
(前立腺機能のインビボ測定)前立腺機能(特に呼吸)に対する化合物の効果は、その化合物の投与に続いて、前立腺組織代謝(例えば、動物における前立腺による還元ATP、シトレート、および/またはラクテートの産生)をモニタリングすることによって評価され得る。本発明において有用ないくつかのエネルギー減損因子は、検出可能である。ATP、シトレート、および/またはラクテートのレベルは、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)または他の方法の技術を使用して、ヒト、非ヒト霊長類動物および他の哺乳類動物を含む動物において、インビボで直接的におよび/または間接的にモニタリングされ得る。例えば、MRSアッセイの説明について、NarayanおよびKurhanewicz、1992;Kurhanewiczら、1991;Thomasら、1990を参照のこと。
【0050】
(前立腺の大きさのインビボ測定)前立腺の大きさに対する化合物の効果は、標準的な方法(例えば、ヒトについての超音波検査、ならびに動物における超音波検査および/または器官重量の比較)を使用して、化合物の投与後に評価され得る。アッセイは、ヒト、あるいはより一般的には、健常な非ヒト動物またはサル、イヌ、ラットもしくはBPHの他の動物モデルにおいて実行され得る(Jeyarajら、2000;Leeら、1998;Mariottiら、1982を参照のこと)。本発明において有用ないくつかのエネルギー減損因子は、前立腺の大きさを検出可能に減少させる。
【0051】
あらゆる種々のエネルギー減損因子が、BPHの処置に使用され得る。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ヘキソキナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコキナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ホスホフルクトキナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アルドースのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ホスホグリセリン酸キナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、エノラーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ピルビン酸キナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、乳酸デヒドロゲナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコース輸送のインヒビターである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコース輸送体のレベルを減少させるか、またはそれらのレベルが上昇するのを防ぐ。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシ−D−グルコース(2−デオキシグルコースまたは2−DG)である。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシグルコースのアナログである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシ−D−グルコース四酢酸または5−チオ−グルコースである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ゴシポールである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ゴシポールアナログである。一実施形態において、このエネルギー減損因子、3−ブロモピルベートである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、3−ブロモピルベートアナログである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ロニダミンのアナログである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ロニダミンである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、トルニダミン(tolnidamine)である。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、オキサメートである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ヨードアセテートである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アポプトリジンである。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アポトリジンのアナログである。
【0052】
一実施形態において、このエネルギー減損因子は、1000未満の分子量を有し、必要に応じて500未満の分子量を有する。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、合成であり、天然に存在しない。
【0053】
一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ヘキソキナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコキナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ホスホフルクトキナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アルドースのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ホスホグリセリン酸キナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、エノラーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ピルビン酸キナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、乳酸デヒドロゲナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコース輸送のインヒビターではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、グルコース輸送体のレベルを減少させず、それらのレベルが上昇するのを防ぎもしない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、HIF−1αの直接的インヒビターでも間接的なインヒビターでもない。
【0054】
一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシグルコースではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシグルコースのアナログではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、2−デオキシ−D−グルコース四酢酸ではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、5−チオ−グルコースではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ゴシポールではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ゴシポールアナログではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、3−ブロモピルベートではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、3−ブロモピルベートアナログではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ロニダミンではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、トルニダミンではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ロニダミンのアナログではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アコニターゼのインヒビターではない。
【0055】
一実施形態において、このエネルギー減損因子は、オキサメートではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、ヨードアセテートではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アポトリジンではない。一実施形態において、このエネルギー減損因子は、アポトリジンのアナログではない。
【0056】
いくつかの実施形態において、このエネルギー減損因子は、亜鉛ではなく、または解糖を阻害することもしくはミトコンドリアの機能を障害することが公知であったか否かに関わらず、2004年1月1日にBPHの処置のための使用に関して公知であったあらゆる因子のいずれかでもない。
【0057】
説明のために、多岐にわたるエネルギー減損因子が本明細書に記載されたが、本発明に従ってBPHを処置もしくは予防するためまたはその症状を軽減するために使用するのに適切なエネルギー減損因子は、薬学的に受容可能である(すなわち、投与される用量および処方において、被験体に対して毒性でない)こと、あるいはこの因子に関連する任意の毒性(例えば、副作用)に、被験体に対する利益が上回るがことが、理解される。薬学的に受容可能な因子の同定および評価の方法は、医学および薬学分野で周知である。例えば、治療指数(すなわち、毒性効果に対する治療効果の用量比、これは、ED50/LD50比として表わされ得る)は、細胞培養アッセイおよび動物研究を用いて推定され得る。これらから得られたデータは、ヒトでの使用のための範囲の投薬量を処方するために使用される。高い治療指数を示す薬学的組成物が、好ましい。
【0058】
特定の実施形態において、このエネルギー減損因子は、上記に名前を挙げた化合物の薬学的に受容可能な塩である。薬学的に受容可能な塩としては、酸による付加塩、および塩基による塩が挙げられる。塩基による塩は、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩)、あるいはアンモニウム塩(例えば、アンモニアまたは適切な有機アミン(例えば、ジエチルアミン、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−アミンもしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)−アミン)による塩)である。酸付加塩を形成するために適切な酸は、例えば、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸もしくはリン酸)、または有機酸(例えば、有機スルホン酸(sulphonic acid)(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸もしくはメタンスルホン酸)および有機カルボン酸(例えば、酢酸、乳酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸もしくはクエン酸))である。
【0059】
特定の実施形態において、このエネルギー減損因子は、上記に名前を挙げた化合物のプロドラッグであるか、薬学的に活性な代謝産物のプロドラッグである。プロドラッグ形態は、当該分野で公知であり、そしてこの形態としては、上記に列挙した化合物のエステル、アミドおよび他の誘導体が挙げられる。
【0060】
(4.エネルギー減損因子の投与が利益をもたらす患者)
したがって、BPHと診断されたかまたはBPHの症状を示すヒト被験体へのエネルギー減損因子の投与は、1つ以上の症状の重症度または頻度の低減、前立腺の大きさまたは肥大速度の低下、認知される生活の質の改善、およびBPHの他の症状の発現の、より正常な状態への復帰などの利益をもたらす。さらに、BPHの予防を必要とするヒト被験体へのエネルギー減損因子の投与は、その被験体においてBPHが発現、再発または進行する確率の減少などの利益をもたらす。便宜上でのみ以下の物質が章にまとめられ、そして全ての編成された章における開示が、本明細書において開示される発明のあらゆる局面に適用可能であることは、読者にとって明らかである。
【0061】
本発明の一局面において、エネルギー減損因子は、BPHの処置を必要とする患者に投与される。本明細書中で使用される場合、「BPHの処置を必要とする患者」は、BPHと診断された男性である。BPHは、当該分野で公知の方法および基準を用いて診断され得る。最も一般的な試験は、直腸内触診であり、この試験においては、医師が、前立腺が正常の大きさおよび堅さであるか否かを決定する。他の診断アッセイとしては、尿流速試験、放尿後残尿量の決定(例えば、腹部の脈打ち、残尿のドレナージ、X線尿路造影法もしくは超音波検査による)、American Urologic Association Symptom Index(AUASI;Barryら、1992)またはInternational Prostate Symptom Score(IPSS;Barryら、2001)における中度もしくは重度症状の記録、および当該分野で公知の他の試験が挙げられる。
【0062】
BPHの処置の所望される臨床結果としては、BPHの1つ以上の症状(以下を参照のこと)の軽減または回復、前立腺の大きさの減少(以下を参照のこと)、治療開始前の基準測定と比較したAUASIスコアまたはIPSSスコアの低下(例えば、3点以上(例えば、5点以上)、8未満のAUASIスコアまたはIPSSスコア、少なくとも約20%まで(例えば、少なくとも約40%まで)の血清PSAの減少、4未満(例えば、2未満)の血清PSA、尿力学パラメータの改善、および処置した医師によってその被験体のBPHの重症度の減少を示すと認められる、他の所望される結果が挙げられるが、これらに限定されない。処置への反応の評価は、薬物の最初の投与後の任意の時間で行われ得る。例えば、評価は、処置開始後約30日、約60日または約90日で行われる。あるいは、評価は、処置開始後約6日、約12日、約18日、約24日または数ヶ月より後で行われ得る。あるいは、評価は、処置過程過終了後約30日未満、約30日、約60日または約90日で行われ得る。
【0063】
関連する局面において、エネルギー減損因子は、BPHに関連する症状を示すヒト被験体に投与されて、その症状の頻度または重症度を低減させる。本明細書中で使用される場合、「BPHに関連する症状」とは、以下の症状のいずれか一つまたはそれ以上を指す:(1)尿意促迫、(2)末期の尿滴下、(3)頻尿、(4)夜間多尿、(5)弱い/緩慢な尿流、(6)膀胱が完全に空でないという感覚、(7)間欠的排尿、(8)力んで排尿する、(9)排尿障害、(10)血尿、(11)急性尿閉、(12)尿路感染症、および(13)失禁。
【0064】
本発明の方法によるエネルギー減損因子の投与は、代表的に、1つ以上のこれらの症状の重症度の低減または除去をもたらす;通常、これらの症状全ての、重症度の低減または除去をもたらす;そしてしばしば、これらの症状全ての除去をもたらす。
【0065】
別の関連する局面において、エネルギー減損因子が投与されて、前立腺の大きさの減少を必要とするヒト被験体において、前立腺の大きさが減少する。本明細書中で使用される場合、「前立腺の大きさの減少を必要とするヒト被験体」は、(1)イメージング(例えば、超音波検査、磁気共鳴画像法)および/または(2)前立腺による尿道の圧迫から直接的もしくは間接的に生じる1つ以上の徴候もしくは症状(例えば、本明細書において考察されるBPHの症状を含む)によって決定されるような、肥大した前立腺を有する男性である。血清PSA(前立腺特異的抗原)の減少もまた、前立腺体積の減少の有用な代用である。個体間で変動するが、肥大した前立腺は、しばしば、大きさが30グラム、40グラム、または50グラムを超える。前立腺の大きさの減少の程度は、多くの要因(治療開始時での肥大の程度が挙げられる)に起因して被験体間で変動するが、代表的に、前立腺の大きさにおける、少なくとも約10体積%の減少、より多くの場合、少なくとも約25%の減少、時には、少なくとも約40%の減少、時には、少なくとも約50%の減少が観察され、そして時には、50%より多くの減少でさえ観察される。この減少は、イメージングまたは他の方法によって決定され得る。血清PSAもまた、いくつかの例において、前立腺体積の有用な代用として働く。
【0066】
関連する局面において、エネルギー減損因子は、2ng/mlよりも多い血清PSAレベルで被験体に投与される。PSAは、前立腺の上皮細胞によってのみ分泌される。BPHを有する男性において、より高いPSAレベルは、より低いPSAレベルを有する男性よりも、間質細胞増殖に対する上皮細胞増殖の比が相対的に高いことを示唆する。本発明は、エネルギー減損因子による処置に対して好適に反応するはずの患者を決定するのに使用するために適切な、多くの診断法を提供する。したがって、このような処置は、2ng/mlよりも多いPSAレベルを有する被験体において特に良好な結果を提供し得る。したがって、2ng/mlよりも多い血清PSA値を有する被験体を同定することによって、本発明の方法から最も顕著に利益を受けることが予期される被験体が、BPHを有する男性の集団において選択され得る。本発明の一実施形態において、被験体は、約4ng/mlよりも多いPSAレベルを有する。より高いPSAレベルは、BPHよりも前立腺癌とより密接に関係するので、一実施形態において、エネルギー減損因子による治療のために選択された被験体は、約10ng/ml未満のPSAレベルを有する。
【0067】
本発明の一局面において、エネルギー減損因子は、BPHの予防から利益を受ける被験体に投与される。一例において、「BPHの予防から利益を受ける被験体」とは、外科手術、経尿道マイクロ波温熱療法、経尿道針切除(transurethral needle ablation)、経尿道電気蒸散療法(electrovaporization)、レーザー治療、バルーン拡張、前立腺尿道ステント、薬物療法、または他の治療によるBPHの治療を以前に受けた男性および現在BPHと診断されておらず、その症状も示さない男性である。別の例において、BPHの予防から利益を受ける被験体は、年齢に起因して、BPHを発症する危険性が高い男性(例えば、40歳より年齢が上の男性、50歳より年齢が上の男性、60歳より年齢が上の男性、または70歳より年齢が上の男性)である。別の例において、BPHの予防から利益を受ける被験体は、無症候性であるか、またはBPHの明瞭な診断がされ得ないほど十分に軽度の症状を有するが、上昇した血清PSAレベル(例えば、PSA>2ng/mlまたはいくつかの場合、>4ng/ml)を有する男性である。
【0068】
ある場合、エネルギー減損因子が投与されるその被験体は、BPHについて以前に処置を受けた男性である一方で、他の場合、その被験体は、BPHについて以前に処置を受けたことがない男性であることは、前述から明らかである。
【0069】
本発明の一実施形態において、BPHの処置または予防を必要とするその被験体はまた、癌の処置中ではない。関連する実施形態において、BPHの処置または予防を必要とするその被験体は、癌を有すると診断されていない。一実施形態において、BPHの処置または予防を必要とする被験体は、癌を有さない。一実施形態において、処置を必要とするその被験体は、前立腺癌以外の癌を有するが、前立腺癌は有さない。本明細書中で使用される場合、「癌」は、その通常の医学的意味を有し、悪性腫瘍疾患(頭部癌、頸部癌、前立腺癌および乳癌、白血病およびリンパ腫を含む)をいい、一般に、クローン性、自律性、退生、および転移によって特徴付けられる(Mendelsohn,1991を参照のこと)。
【0070】
一実施形態において、本発明は、エネルギー減損因子を患者に投与することによって、その患者におけるBPHを処置する方法を提供する。関連する実施形態において、本発明は、BPHを処置するための方法を提供し、この方法は、(a)BPHと診断された患者にエネルギー減損因子を投与する工程、および(b)BPHの1以上の症状発現が、その患者において減少されるか否かを決定する工程を包含する。一実施形態において、本発明は、(a)患者においてBPHを診断する工程、(b)その患者にエネルギー減損因子を投与する工程、および(c)BPHの1以上の症状発現が、その患者において減少されるか否かを決定する工程によって、BPHを処置するための方法を提供する。前述の実施形態において、必要に応じて、その被験体は、癌であると診断されてもおらず、癌の処置中でもなく;必要に応じて、PSA>2ng/mlを有し、必要に応じて、PSA>2ng/mlおよび<10ng/mlを有する。
【0071】
別の局面において、本発明は、(a)BPHの処置のためにエネルギー減損因子の使用を広告する工程、および(b)BPHの処置に使用するために、個人にエネルギー減損因子を販売する工程を伴う方法を提供する。一実施形態において、その広告は、エネルギー減損因子製品を識別する商標に対して言及し、その販売されるエネルギー減損因子は、同じ商標によって識別される。エネルギー減損因子が販売されるその個人としては、法人(会社)などが挙げられ、「BPHの処置に使用するために、個人にBPHを販売する工程」が、例えば、BPHの処置のために患者に流通させるために医療機関に販売する工程を包含することが理解される。
【0072】
(5.投与の用量、経路、スケジュールおよび持続時間)
種々の経路、投薬スケジュール、および投薬形態が、BPHの処置および予防のためのエネルギー減損因子の投与に適切である。適切な投薬スケジュールおよび投与様式は、本明細書の開示を読めば、当業者に明らかであり、そして/または慣用的な薬理学的方法を使用して決定され得る。
【0073】
エネルギー減損因子の投与の用量、スケジュールおよび持続時間は、種々の要因に依存する。当然のことながら、主要な要因は、特定の薬剤の選択である。他の重要な要因は、その被験体の年齢、体重および健康状態、BPH症状の重篤度、もしあれば、その被験体の病歴、同時に行われる処置、目的(例えば、治療または予防)、薬物投与の好ましい様式、使用される処方物、その薬物に対する患者の応答などが挙げられる。投与に関するガイダンスは、異なる適応症のための薬剤を使用する以前の経験(例えば、癌を処置するために投与されるロニダミンは、約1ヶ月の期間にわたって1日3回、150mg用量で投与される)によって、ならびにヒトおよび他の動物における新たな研究から提供される。細胞培養研究は、投薬量を最適化するために当該分野で頻繁に使用され、本明細書中に開示されるアッセイは、このような用量を決定する(例えば、前立腺上皮細胞において有意なアポトーシスを誘導するが、前立腺間質細胞においても他の細胞においてもアポトーシスを誘導しない用量を決定する)ことにおいて使用され得る。特定の薬剤について、科学文献(例えば、本明細書中で引用される特許公開および非特許刊行物を含む)は、特定の薬剤もしくは薬剤のクラスについての投薬量、処方物および投薬形態に関する重要なガイダンス(例えば、血清中でその薬剤(または代謝産物)の生物学的に有効な血清レベルを生じることが公知または推定される投薬量)を提供する。
【0074】
例えば、エネルギー減損因子は、処置される患者の体重1kgあたり約1mg〜約2gのエネルギー減損因子の範囲の用量においてBPHの処置のために投与され得、1より多い用量が投与され得る。一実施形態において、エネルギー減損因子は、処置される患者の体重1kgあたり約1mg〜約5gの範囲の用量において投与される。別の実施形態において、エネルギー減損因子は、処置される患者の体重1kgあたり約100mg〜約1gの範囲の用量で投与される。特定の他の実施形態において、エネルギー減損因子は、処置される患者の体重1kgあたり約50〜250mgの用量で投与される。別の実施形態において、治療上有効用量は、約50mg/kg〜約500mg/kgである。例示のために、エネルギー減損因子の治療上有効用量は、毎日または2日に1回または1週間に1回、患者に投与され得る。一般に、その薬剤の複数回投与が使用される。当業者、および患者の便宜性によって選択される用量に依存して、その用量全体は、1日に1回に投与され得るか、またはその用量は、1日の経過にわたって複数回の小さい用量で投与され得る。例えば、その用量は、2回のより少ない用量に分けられ得るか、1日に2回投与され得るか、または3回のより少ない用量に分けられ得、1日に3回投与され得る。あるいは、その用量は、合わされ得るかまたは隔日に与えられ得るか、またはより頻度が少なくてもよいが、いずれにしても、その用量は、一定の期間にわたって繰り返して投与され得る。最適な処置の利益のために、治療上有効用量の投与は、数日間続けられ、代表的には、少なくとも5連続日、しばしば、少なくとも1週間、しばしば数週間以上にわたって続けられる。一実施形態において、そのエネルギー減損因子は、1日に1回(qday)、2回(bid)、3回(tid)、または4回(qid)、あるいは2日に1回(qod)または1週間に1回(qweek)投与され、処置は、3日〜2週間以上の範囲の期間、続けられる。一実施形態において、その処置は、1〜3ヶ月続けられる。別の実施形態において、その処置は、1年間続けられる。従って、患者は、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年以上にわたって、そのエネルギー減損因子を投与され得る。予防的適用のために、処置は、患者の生涯を通じて無限に続けられ得る。医療において十分に理解されているように、処置は、本発明の範囲から逸脱することなく、毒性が観察された場合または患者の都合のために、一時的に中断され得る。
【0075】
例示のためであって限定ではなく、本発明は、経口投与に適したエネルギー減損因子の薬学的処方物(錠剤、カプセル剤、および丸剤が挙げられる)を提供し、1〜100mgの間の化合物を含み、別の実施形態において、1〜10mgとの間の化合物を含む。別の実施形態において、その処方物は、200〜1000mgの間の化合物を含み、別の実施形態において、500〜1000mgの間の化合物を含む。
【0076】
さらに、本発明は、1日1回の経口投薬を可能にする化合物の制御放出処方物および徐放性処方物を提供する。本発明のこのような徐放性処方物(錠剤、カプセル剤、および丸剤が挙げられる)は、1mg〜3gの間の活性化合物を含み、種々の代替的実施形態では、1mg〜10mgの間のその化合物を含むものであり;他に、150〜500mgの間の活性化合物を含むもの;および他に、750mg〜2gのその活性化合物を含むものが挙げられる。
【0077】
治療的適用および予防的適用において、そのエネルギー減損因子は、数ヶ月または数年程度の長さの期間にわたって、1回または多数回投与され得る。本発明の一実施形態において、その薬剤は、その症状が軽くなるかまたはなくなるまでに限って、症候性(例えば、排尿に困難を来した経験がある)BPH患者に投与され、次いで、症状が再び現れず、かつその症状が再び現れるまで、処置が中止される。症状が再び現れた場合、その薬剤の投与は、再開され得る。別の実施形態において、処置は、症状がなくなった後でも続くか、または少なくとも一定期間(例えば、1週間、2週間、1ヶ月または数ヶ月)にわたって、受容可能な標的レベルに低下される。別の実施形態において、その薬物は、無症候性の被験体に投与されて、症状の発生または再発を予防する(すなわち、予防的に投与される)。この期間は、2ヶ月〜6ヶ月以上またはわずか1週間〜8週間にわたる、継続的なTID投与を含み得る。本発明の特定の薬剤(例えば、ロニダミンおよびそのアナログ)を7〜30日にわたって、150mgの経口TIDで投与すると、望ましくない副作用を制限または排除しながら、BPHの処置における完全な治療上の利益を可能にし得る。なお別の実施形態において、BPHは、本発明の方法に従って、より短期間にわたって、遙かに高い用量の化合物をBPH患者に投与することによって処置される(すなわち、より少ない投与回数;一実施形態において、代謝インヒビターの単回の投与が、BPH症状からの解放を提供するに十分である)。
【0078】
経口送達のために処方される場合、好ましい投薬形態としては、丸剤、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などが挙げられ、必要に応じて、徐放性に処方される。経口投与に適した他の適切な形態としては、トローチ、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハ、ロゼンジなどが挙げられる。他の投与様式もまた企図され、これらの様式としては、非経口経路、吸入スプレー、経皮経路、直腸経路、前立腺内(intraprostetic)注射(例えば、EA含有微粒子の)および他の経路が挙げられる。
【0079】
ロニダミンの場合、例示的な投薬スケジュールは、同時係属中の米国特許出願第10/ 号(標題「Treatment Of Benign Prostatic Hypertrophy」,代理人整理番号54492−2000100、2004年1月16日出願)に記載される。一実施形態において、その投薬形態は、商標名DoridaminaTMで市販されている150mgの単位投薬形態(例えば、約30日間の150mg経口TID)である。企図される他の投薬レジメンとしては、例えば、「低用量」(例えば、合計1日投薬量が1〜300mg/日、5〜300mg/日、5〜70mg/日、1〜25mg/日、20〜45mg/日、40〜65mg/日、40〜70mg/日、50〜100mg/日、50〜200mg/日、および50〜300mg/日の範囲で投薬される)、「高用量」(例えば、0.5gより高い合計1日用量(例えば、0.5〜5g/日、0.5〜3g/日、0.5〜1g/日および1〜3g/日、またはより高い範囲の用量)、および「中間用量」(例えば、300mg/日より大きくかつ500mg/日未満の用量(例えば、>300〜400mg/日または400<500mg/日、例えば、450mg/日の範囲の用量)が挙げられる。
【0080】
2−デオキシグルコース(2−DG)およびそのアナログ(2−DGA)(例えば、図2に示されるようなもの)の場合、例示的投薬スケジュールは、同時係属中の米国特許出願第10/ 号(標題「Treatment Of Cancer With 2−Deoxyglucose」,代理人整理番号54492−20004.00、2004年1月9日出願)に記載される。例えば、2DGおよび2DGAは、処置される患者の体重1kgあたり約1mg〜約2gの2−DGまたは2−DGAの範囲の用量で、BPHの処置のために投与され得る。別の実施形態において、2−DGまたは2−DGAは、処置される患者の体重1kgあたり約10mg〜約1gの2−DGまたは2−DGAの範囲の用量で投与される。特定の他の実施形態において、2−DGまたは2−DGAは、処置される患者の体重1kgあたり約50〜250mgの2−DGまたは2−DGAの用量で投与される。別の実施形態において、その治療上有効用量は、約25mg/kg〜約150mg/kgである。例示のために、2DGまたは2DGAの治療上有効用量は、その患者に毎日または隔日で1回、または1週間に1回投与され、その薬物の複数回投与もまた採用される。開業医によって選択される用量および患者の利便性に依存して、その用量全体は、1日に1回投与され得るか、またはその用量は、1日の過程にわたって、複数回のより小さな容量で投与され得る。例えば、その用量は、2つのより少ない用量に分けられ得、1日に2回投与され得るか、または3つのより少ない用量に分けられ得、1日に3回投与され得る。あるいは、その用量は合わせられて、2日に1回与えられてもよく、またはより少ない頻度ですら与えられてもよいが、いずれにしても、その用量は、一定期間にわたって繰り返し投与される。最適な処置利益のために、その治療上有効用量の投与は、複数日にわたって続けられ、代表的には、少なくとも5連続日にわたって、しばしば少なくとも1週間、およびしばしば数週間以上にわたって続けられる。一実施形態において、2DGまたは2DGAは、1日に1回(qday)、2回(bid)、3回(tid)、もしくは4回(qid)または隔日で1回(qod)もしくは1週間に1回(qweek)投与され、処置は、3日〜2週間以上の範囲の期間にわたって続けられる。一実施形態において、その処置は、1〜3ヶ月にわたって続けられる。別の実施形態において、その処置は、1年にわたって続けられる。従って、患者は、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年以上にわたって、2DGまたは2DGAを投与され得る。予防的適用のために、処置は、その患者の生涯にわたって無限に続けられ得る。医療において十分に理解されているように、処置は、本発明の範囲から逸脱することなく、毒性が観察された場合または患者の都合のために、一時的に中断され得る。
【0081】
これらの投薬スケジュールは、例示であって限定ではなく、投薬スケジュールが、例えば、治療に対する患者の応答に基づいて治療の過程の間に変更され得ることが理解される。
【0082】
(6.処置の組み合わせ)
エネルギー減損因子は、BPHを処置すること、BPHの症状を改善すること、そのエネルギー減損因子の効果を増強すること、または他の治療利益を提供することを意図する、他の因子(エネルギー減損因子および非エネルギー減損を含む)または手順と組み合わせて、BPH患者に投与され得る。「組み合わせ」た因子の投与は、並列投与(一定期間にわたって患者に対して両方の因子を投与すること(例えば、交互の日にEAとタムスロシンとを1ヶ月間投与すること))、同時投与(それらの因子は、ほぼ同じ時間に(例えば、互いに約30分間以内に)投与される)、および共処方(それらの因子は、経口投与または非経口投与のために適切な単一投与形態へと合わされるかもしくは配合される)を包含する。エネルギー減損因子(またはエネルギー減損の組み合わせ(例えば、ロニダミンと2‐DG))と組み合わせて投与するための例示的因子としては、亜鉛、αブロッカー、5‐αレダクターゼインヒビター、および植物抽出物(下記参照)が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、複数の異なるエネルギー減損因子が、組み合わせて使用され得る。
【0083】
(亜鉛)
上記のように、前立腺の分泌上皮細胞中の高濃度の亜鉛は、m‐アコニターゼを阻害し、エネルギー生成についての解糖作用に対するこの組織の依存性を増加する。本発明の方法に従って、何人かの患者においては、亜鉛(例えば、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、酸化亜鉛、ピコリン酸亜鉛、および他の亜鉛含有化合物)を本発明の薬物組成物と同時投与して、上記処置の効力を最大にすることが有益であり得る。例えば、限定ではないが、15〜300mg/日(代表的には、30〜50mg/日)の亜鉛が、投与され得る。
【0084】
(αアドレナリン作動性ブロッカー)
αブロッカーは、BPHのいくつかの症状を、基礎となる疾患を治癒することなく改善する。これらの因子は、膀胱頚部および前立腺中にある筋肉を弛緩し、尿道に対する圧力を減少することによって、作用する。例示的αブロッカーとしては、ドキサゾシン(Cardura)、テラゾシン(Hytrin)、タムスロシン(Flomax)、アルフゾシン(Xatral)、およびプラゾシン(Hypovase)が挙げられる。本発明の一実施形態において、αブロッカーは、BPHを処置するためにエネルギー減損因子と組み合わせて投与される。別の実施形態において、αブロッカーは、「標準的」投与量(エネルギー減損因子と同時投与しない場合に投与される量)よりも低投与量(量または低頻度(例えば、1日1回ではなく隔日)で投与される。
【0085】
(5‐αレダクターゼインヒビター)
5‐αレダクターゼインヒビターは、テストステロンからジヒドロテストステロン2(DHT)(前立腺拡大に寄与するアンドロゲンである)への変換を阻害する。例示的な5‐αレダクターゼインヒビターは、フィナステリド(Proscar)である。本発明の一実施形態において、5‐αレダクターゼインヒビターは、BPHを処置するためにエネルギー減損因子と組み合わせて投与される。別の実施形態において、5‐αレダクターゼインヒビターは、「標準的」投与量よりも低投与量(量)または低頻度(例えば、1日1回ではなく隔日)で投与される。
【0086】
(植物)
ノコギリパルメット(Saw Palmetto)(Serenoa repens)もしくはその抽出物、またはPygeum Africanumもしくはその抽出物は、BPHの処置における治療利益のために、エネルギー減損因子と組み合わせて投与され得る。
【0087】
(手順)
さらに、EAは、BPHの処置のための手順(外科手術(前立腺の経尿道切除;前立腺の経尿道切開;もしくは開放前立腺切除)、レーザー治療、経尿道マイクロ波温熱療法、バルーン拡張、前立腺尿道ステントの配置、経尿道針切除、前立腺の経尿道電気蒸気療法、または他の非薬物治療が挙げられる)と組み合わせてかまたはその手順の前に、投与され得る。
【0088】
(Hif‐1αインヒビター)
いくつかの実施形態において、本発明のエネルギー減損因子は、Hif‐1αインヒビターと組み合わせてBPH患者に投与される。他のように示されない限り、「Hif‐1α」は、前立腺細胞中のHif‐1αレベルの減少を引き起こすがこの細胞中の解糖作用もミトコンドリア機能も特異的には妨害しない、因子を指すために本明細書中で使用される。例示的なHif‐1αインヒビターとしては、P13キナーゼインヒビター;LY294002;ラパマイシン;ヒストンデアセチラーゼインヒビター(例えば、[(E)‐(1S,4S,10S,21R)‐7‐[(Z)‐エチリデン]‐4,21‐ジイソプロピル‐2‐オキサ‐12,13‐ジチア‐5,8,20,23‐テトラアザビシクロ‐[8,7,6]‐トリコス‐16‐エン‐3,6,9,19,22‐ペンタノン(FR901228,デプシペプチド));熱ショックタンパク質90(Hsp90)インヒビター(例えば、ゲルダナマイシン、17‐アリルアミノ‐ゲルダナマイシン(17‐AAG)、および他のゲルダナマイシンアナログ、ならびにラジシコールおよびラジシコール誘導体(例えば、KF58333));ゲニステイン;インダノン;スタウロスポリン;プロテインキナーゼ1(MEK‐1)インヒビター(例えば、PD98059(2’‐アミノ‐3’‐メトキシフラボン));PX‐12(1‐メチルプロピル2‐イミダゾリルジスルフィド);プレウロチンPX‐478;キノキサリン1,4‐ジオキシド;酪酸ナトリウム(NaB);ニトロプルシドナトリウム(SNP)および他のNOドナー;微小管インヒビター(例えば、ノボビオシン、パンゼム(2‐メトキシエストラジオールすなわち2‐ME2)、ビンクリスチン、タキサン、エポチロン、ジスコデルモリド、および上記のうちのいずれかの誘導体;クマリン;バルビツール酸およびチオバルビツール酸アナログ;カンプトテシン;およびYC‐1(本明細書中に参考として援用されるBiochem.Pharmacol.15,Apr 2001,61(8):947〜954に記載される化合物)およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一局面において、Hif‐1αインヒビターは、BPHを有する被験体を処置するために、単独で(本発明のエネルギー減損因子とは組み合わせずに)投与され得る。
【0089】
(7.アッセイ)
一局面において、本発明は、BPHの処置のための化合物の有用性を決定するための方法、およびBPHの処置において有用な化合物を同定するための方法を提供する。一実施形態において、上記の方法は、(a)クエン酸産生細胞を、上記化合物と接触させる工程;(b)クエン酸酸化細胞を、上記化合物と接触させる工程;およびc)上記クエン酸酸化細胞と比較した上記クエン酸産生細胞に対する接触の差次的影響を検出する工程、を包含する。差次的影響(例えば、本明細書中に記載されるような影響)は、上記因子が、BPHの処置のために有用であり得ることを示す。その後、さらなるアッセイおよび確認アッセイが、実施され得る。上記方法は、簡便にはインビトロで実行され得る。
【0090】
関連する局面において、本発明は、BPHの処置のための化合物の有用性を決定するための方法を提供する。この方法は、(a)低酸素条件下で培養したクエン酸産生細胞を、上記化合物と接触させる工程;および(b)上記接触が、HIF‐1α発現において、(核画分において測定して)少なくとも約2分の1への、時には少なくとも約5分の1への、時には少なくとも約10分の1への、用量依存性減少を生じる場合に、化合物を、BPHの処置のために有用であるとして同定する工程による。HIF‐1α発現についての多数のアッセイが、公知である。一般的に、免疫アッセイ(例えば、イムノブロットおよびELISA)が、最も簡便である。そのようなアッセイのための試薬および方法は、当該分野で周知である。他のタンパク質の発現は、相対的発現値を得るために測定され得る(例えば、図7参照)。
【0091】
これらの方法は、エネルギー減損因子であるロニダミンが、前立腺細胞のアポトーシスを誘導するという知見、およびその誘導は、クエン酸酸化細胞と比較してクエン酸産生細胞において実質的に顕著であるという知見、およびロニダミンは、前立腺細胞において、特に低酸素条件下では、HIF‐1αの発現(蓄積)を減少するという知見に、部分的には基づいて開発された。
【0092】
種々の細胞およびアッセイが、本発明の方法において使用され得る。クエン酸産生細胞およびクエン酸酸化細胞型は、公知であり、当該分野で公知のアッセイおよび基準を使用して、同定され得る。例えば、CostelloおよびFranklin,1997,Urology 50:3〜12およびFranklinら、1995、Endocrine 3:603〜607を参照のこと。適切なクエン酸産生細胞としては、前立腺上皮細胞の初代培養物、および前立腺上皮細胞から誘導された特定の樹立された細胞株(例えば、LNCaP細胞)が挙げられる。適切なクエン酸酸化細胞としては、前立腺間質細胞の初代培養物、および前立腺細胞から誘導された特定の樹立された細胞株が挙げられる(多くの悪性腫瘍前立腺上皮細胞は、クエン酸産生型からクエン酸酸化型への明らかな代謝変換を経験する;Franklinら、1995、Endocrine 3:603〜607参照)。一実施形態において、上記クエン酸産生細胞は、LNCaP細胞であり、クエン酸酸化細胞は、PC‐3細胞である。ヒト前立腺上皮細胞の初代培養物およびヒト前立腺間質細胞の初代培養物は、市販されており(例えば、細胞は、Cambrex Bio Science Rockland,Inc.,191 Thomaston Street,Rockland,Maine 04841から入手され得る)、周知の組織培養方法(例えば、Peehl,DM,Culture of Epithelial Cells:Prostate Culture,1992,159〜180参照)に従って調製され得る。前立腺から誘導された樹立された細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549、Manassas,VA 20108 USA)から入手可能であるか、または周知の方法に従って調製され得る。別の実施形態において、上記細胞は、m‐アコニターゼを阻害するレベルまで亜鉛を蓄積するように改変された細胞(前立腺細胞以外の細胞)、およびクエン酸を代謝できない(必要に応じて、前立腺細胞以外の)細胞からなる群より選択される組換え細胞の群より選択される。一実施形態において、上記細胞は、m‐アコニダーゼを発現しないように、またはその不活性変異体のみを発現するように、改変された細胞である。一実施形態において、上記細胞は、ヒト細胞である(しかし、他の哺乳動物由来の細胞もまた、使用され得る)。一実施形態において、上記細胞は、テロメラーゼ発現が構成的に生じるような改変によって不死化されている。
【0093】
代表的なアッセイにおいて、細胞は、試験化合物と、通常、一定濃度範囲(例えば、10μM、50μM、100μM、200μM、400μM、600μM、および800μM)にて接触される。この接触は、上記細胞が培養される培地に上記化合物を添加すること、または他の任意の接触方法によって、簡便に達成される。一実施形態において、上記化合物は、キャリア(例えば、リポソームキャリア)または溶媒中にある上記細胞もしくは細胞培養物中に導入される。薬物スクリーニングアッセイにおいて通常であるように、適切なコントロール(例えば、ネガティブコントロール)および統計方法が、使用されることが理解される。アッセイは、全細胞、細胞抽出物、あるいは核抽出物に対して実行され得る。
【0094】
下記実施例に開示されるように、クエン酸産生細胞およびクエン酸酸化細胞に対するロニダミンの差次的影響のうちのいくつかは、低酸素条件下で増殖された細胞において最も顕著であることが発見された。従って、本発明のいくつかの実施形態において、上記細胞は、低酸素条件下で増殖される。例えば、細胞は、低酸素レベル(例えば、<0.1%)にて培養され得る。低酸素はまた、高細胞密度での培養によって誘導され得る。
【0095】
差次的影響の例は、クエン酸酸化細胞と比較してクエン酸産生細胞において大きい、アポトーシスの誘導である。一実施形態において、この差次的影響は、クエン酸酸化細胞と比較してクエン酸産生細胞において大きい、アポトーシスの誘導である。一実施形態において、この差次的影響は、少なくとも約10倍または少なくとも約20倍である。アポトーシスについての多数のアッセイまたはそのマーカーもしくは他の指標が、公知であり、本アッセイにおいて使用され得る。例えば、限定ではないが、アポトーシスアッセイとしては、カスパーゼ3についてのアッセイ;DNA断片化アッセイ(例えば、TUNELアッセイ;BD Biosciences No 556381)およびアネキシンVアッセイ(例えば、BD Biosceinces No556547)が挙げられる。
【0096】
実施例1に対応する図面において、前立腺細胞におけるHIF‐1α発現に対するロニダミンの影響は、低酸素条件下(酸素レベル<0.1%)で培養した場合にPC3細胞よりもLNCaP細胞において顕著であるようである。本発明に従うBPHの処置のために有用ないくつかのエネルギー減損因子は、類似する影響を有し得る。従って、測定され得る別の差次的影響は、クエン酸酸化細胞よりもクエン酸産生細胞(特に、低酸素条件下で培養された細胞)において大きい、HIF‐1α発現の減少である。例えば、その差異は、少なくとも約2倍、時には少なくとも約4倍である。
【実施例】
【0097】
(8.実施例)
(実施例1)
(ロニダミンは、前立腺細胞におけるHIF−1αの発現を減少させる)
本実施例は、ヒト前立腺癌の転移性病巣に由来する二つの細胞株におけるHIF−1α発現へのロニダミン処置の効果を示す。LNCaPは、クエン酸塩産生細胞であり(ATTC番号CRL−1740)、PC3は、クエン酸塩酸化細胞である(ATTC番号CRL−1435)。Franklinら;1995,Endocrine 3:603−607を参照のこと。細胞を、the American Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box1549,Manassas,VA 20108 USAから得ることが可能である。
【0098】
図3および図4に示すように、ロニダミン処置は、核(NE)および細胞全体の抽出(WCE)調製物中に検出されるHIF−1αタンパク質のレベルを減少させた。この阻害は、濃度依存性であり、酸素正常状態(PC3細胞のみ)ならびに低酸素状態(LNCaP細胞およびPC3細胞)下で観察された。このロニダミン効果は、HIF−1αサブユニットに特異的であり、800μMでの濃度を除き、試験した条件の下、アクチン、カスパーゼ3、NF−κB、またはIκBαのタンパク質レベルの検出可能な阻害を有さなかった。しかし、ロニダミンは、一般にタンパク質合成を阻害すると報告される(Floridiら、前出)。本明細書中に提示する結果は、ロニダミンが、HIF−1αの特異的なインヒビターであるという決定的な証拠として解釈すべきではなく、BPHの処置においてロニダミンの治療効果が、全体または部分的にいずれかの細胞型におけるHIF−1αの蓄積に対する阻害効果によるものとしても解釈すべきではない。
【0099】
(方法)
細胞を、ディッシュへ5×10細胞の密度でプレートし、次いで2日間37℃インキュベーター(5%CO)中で維持した。アッセイの前に、細胞を予め温めた(37℃)RPMI−1640培地(ATCC番号30−2001;10mM HEPES;1mM ピルビン酸ナトリウム;2mM L−グルタミン;4500mg グルコース/L;1500mg 重炭酸ナトリウム/L)で二回リンスした。細胞を、酸素正常状態または低酸素状態(酸素レベル<0.1%)のいずれかにおいて37℃で4時間異なる濃度で、ロニダミン非存在または存在下で2mlの培地と共にインキュベートした。このインキュベーションの終わりに、ディッシュを氷上に置き、そして細胞を、冷PBS緩衝液(4℃)を用いてすばやく二回洗浄した。核抽出物については、細胞を、緩衝液A(10mM Tris,pH7.5;1.5mM MgCl;10mM KClおよびプロテアーゼインヒビター)ならびに緩衝液C(0.5M NaCl;20mM Tris pH7.5;1.5mM MgCl;20%グリセロールおよびプロテアーゼインヒビター)を順次用いて溶解した。実験に使用したプロテアーゼインヒビターは、5個のプロテアーゼインヒビターのカクテルであった(500mM AEBSF−HCl、1mg/ml アプロチニン、1mM E−64、500mM EDTAおよび1mM ロイペプチン;Calbiochem番号539131)。細胞全体の溶解物について、細胞を150mM NaCl;10mM Tris pH7.5;10mM EDTA;1% TritonX−100;0.5% デオキシコール酸およびプロテアーゼインヒビターを用いて溶解した。このタンパク質濃度を、Bio−Radタンパク質アッセイを使用して測定した。等量のタンパク質を、SDS−PAGEゲルにロードした。PVDF膜へサンプルを移した後、この膜を5%無脂肪ミルクを含有するTBSTを用いて4℃で一晩ブロッキングした。続いて、この膜を、一次抗体(HIF−1α、HIF−1βおよびアクチン)、およびアルカリホスファターゼ結合体化二次抗体を用いてそれぞれ2時間インキュベートした。カスパーゼ3、NF−κB、P65およびIκBαの発現を検出するために、この膜を、5%無脂肪ミルクを含有するTBSTを用いて室温で1時間ブロッキングし、そしてタンパク質を、対応する抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、そしてアルカリホスファターゼ結合体化二次抗体と共に一時間インキュベートすることによって検出した。特定のタンパク質を、比色分析の基質を使用して検出し、そして各タンパク質の強度を、NIHイメージ系を使用して定量した。
【0100】
上のように一般に実施した別個の実験において、HIF−1αおよび他のタンパク質の発現への0〜600μMのロニダミンの効果を、低酸素状態下の細胞培養物に由来するLNCaP細胞全体の抽出物(図6)または核抽出物(図7)中で決定した。
【0101】
(実施例2)
(ロニダミンは、クエン酸塩産生細胞においてアポトーシスを誘導する)
ロニダミンで処置した細胞においてアポトーシスを生じるか否かを決定するために、クエン酸塩を産生する細胞(LNCaP)およびクエン酸塩を酸化する細胞(PC3)へのロニダミンの効果を調べた。図4に示すように、ロニダミンは、クエン酸塩酸化細胞(PC3)におけるよりもより大きな程度でクエン酸塩産生細胞(LNCaP)においてカスパーゼ3の活性化を誘導した。カスパーゼ3の活性化は、時間依存性プロセスである(図5)。
【0102】
ロニダミンの効果をまた、前立腺上皮細胞(クエン酸塩を蓄積する)および前立腺間質細胞(クエン酸塩を蓄積しない)の初代培養においても調べた。図5に示すように、ロニダミンは、濃度依存性の様式で前立腺上皮細胞にのみアポトーシスを誘導した。対照的に、アポトーシスの誘導は、ロニダミンによる処置の後、前立腺間質細胞には観察されなかった。
【0103】
(方法)
(免疫ブロッティング)
免疫ブロッティングを、実施例2に記載するように実施した。カスパーゼ3の発現を検出するために、膜を、5%無脂肪ミルクを含有するTBSTを用いて室温で一時間ブロッキングし、そしてカスパーゼ3タンパク質を、カスパーゼ3抗体と共に4℃で一晩、そしてアルカリホスファターゼ結合体化二次抗体を用いて一時間インキュベーションすることによって検出した。特定のタンパク質を、比色分析の基質を使用して検出し、そして各タンパク質の強度を、NIHイメージ系を使用して定量した。
【0104】
(初代細胞培養)
ヒト前立腺上皮細胞(Cambrex番号CC−2555)およびヒト前立腺間質細胞(Cambrex番号CC−2508)の初代培養を、Cambrex Bio Science Rockland,Inc.(191 Thomaston Street,Rockland,Maine 04841)から得た。
【0105】
(アポトーシスアッセイ)
細胞を、96ウェルプレートに1ウェルあたり2×10細胞の密度でプレートし、次いで37℃インキュベーター(5%CO)中で16時間維持した。ロニダミンを、各ウェルへ異なる濃度で添加し、次いで37℃で6時間インキュベートした。カスパーゼ3活性を調べるために、ホモジェナス緩衝液およびカスパーゼ3基質(Promega番号G7791;Promega Corporation,2800 Woods Hollow Road,Madison WI USA 53711)を、カスパーゼ3インヒビター(Promega番号G5961)の存在下または非存在下で各ウェルへ添加した。切断した基質の蛍光強度を、蛍光プレートリーダーを使用して励起485nmおよび発光530nmで決定した。
【0106】
(9.引用文献)
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

本発明を、特定の実施形態に関して詳細に記載したが、当業者は、変更および改良が随伴する特許請求の範囲に示すような本発明の範囲および精神内にあることを認識する。本明細書中に引用する全ての刊行物および特許文献を、そのような刊行物または文献の各々を、本明細書中に参考として援用されると詳細にかつ個々に示されるように、本明細書中に参考として援用する。刊行物および特許文献(特許、公開された特許出願、および未公開の特許出願)の引用は、このような文献のいずれかが、関連する先行技術であることの承認として意図されないし、その内容および日付けに関するいかなる承認をも構成しない。記した詳細な説明および実施例の様式によって記載されている本発明について、当業者は、本発明が種々の実施形態で実施され得、前述の詳細な説明および実施例は例示の目的であり、付随する特許請求の範囲を限定する目的ではないことを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、ロニダミン(I、R=CI)、トルニダミン(tolnidamine)(I、R=CH)、AF−2364(II)およびAF−2785(III)についての構造を示す。
【図2−1】図2は、選択された2−DGアナログの構造を示す。
【図2−2】図2は、選択された2−DGアナログの構造を示す。
【図3】図3は、正常酸素条件下および低酸素条件下、ならびにロニダミンの存在下および非存在下でのLNCaP細胞中のHIF−1αの発現を示す。図3Aは、核抽出物を用いたアッセイを示す。図3Bおよび図3Cは、細胞全体抽出物を用いたアッセイを示す。
【図4】図4は、正常酸素条件下および低酸素条件下、ならびにロニダミンの存在下および非存在下でのPC−3細胞中のHIF−1αの発現を示す。図4Aおよび図4Cは、核抽出物を用いたアッセイを示す。図4Bは、細胞全体抽出物を用いたアッセイを示す。
【図5】図5は、LNCaP細胞(図5A)およびPC−3細胞(図5B)中でのロニダミン誘導性アポトーシスを示す。
【図6】図6は、前立腺上皮細胞中でのロニダミン誘導性アポトーシスを示す。
【図7】図7は、前立腺上皮細胞(図7A)および前立腺間質細胞(図7B)中のロニダミン誘導性アポトーシスを示す。
【図8】図8は、低酸素条件下で培養したLNCaP細胞由来の細胞全体抽出物中で決定した場合のHIF−1αおよび他のタンパク質の発現に対する0〜600μMロニダミンの効果を示す。
【図9】図9は、低酸素条件下で培養したLNCaP細胞由来の核抽出物中で決定した場合のHIF−1αおよび他のタンパク質の発現に対する0〜600μMロニダミンの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
良性前立腺増殖症(BPH)を処置するための方法であって、
治療上有効な量のエネルギー減損因子(EA)を、そのような処置を必要とするヒト被験体に投与する工程
を包含し、該エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する因子である、方法。
【請求項2】
良性前立腺増殖症(BPH)に関係する症状を減少するための方法であって、
治療上有効な量のエネルギー減損因子(EA)を、該症状を示すヒト被験体に投与する工程
を包含し、該エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する因子である、方法。
【請求項3】
ヒト被験体において前立腺の大きさを減少するための方法であって、
治療上有効な量のエネルギー減損因子(EA)を、該被験体に投与する工程
を包含し、該エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する、方法。
【請求項4】
良性前立腺増殖症(BPH)の予防のための方法であって、
予防上有効な量のエネルギー減損因子(EA)を、ヒト被験体に投与する工程
を包含し、該エネルギー減損因子は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記エネルギー減損因子は、2−デオキシグルコース、3−ブロモピルベート、ゴシポール、オキサメート、ヨードアセテート、アポプトリジン、およびロンダミンからなる群より選択される、方法。
【請求項6】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記エネルギー減損因子は、2−デオキシグルコース、3−ブロモピルベート、ゴシポール、オキサメート、ヨードアセテート、アポプトリジン、およびロンダミンからなる群より選択される化合物のアナログである、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記被験体は、癌と診断されてもおらず、癌の処置中でもない、方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記被験体は、約2ng/mlより多い血清PSAを有する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記被験体は、約10ng/ml未満の血清PSAを有する、方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記被験体は、以前に良性前立腺増殖症(BPH)について処置されている、方法。
【請求項11】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記エネルギー減損因子は、良性前立腺増殖症(BPH)についての他の処置と組み合わせて投与される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記良性前立腺増殖症(BPH)についての他の処置は、前立腺上皮細胞におけるエネルギー代謝を妨害する因子の投与を包含する、方法。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記エネルギー減損因子は、少なくとも1日当たり1回、少なくとも5日間投与される、方法。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の方法であって、処置の開始前のベースラインと比較した場合に、処置開始後60日目以後に測定した場合に、
a)前記被験体のAUASIスコアもしくはIPSSスコアは、少なくとも3ポイント、必要に応じて少なくとも約5ポイント、減少され;
b)前記被験体の前立腺の大きさは、少なくとも約20%、必要に応じて少なくとも約40%、減少され;そして/または
c)前記被験体の血清PSAレベルは、少なくとも約20%、必要に応じて少なくとも約40%、減少される、
方法。
【請求項15】
良性前立腺増殖症(BPH)を処置するための方法であって、
(a)患者において良性前立腺増殖症(BPH)を診断する工程;
(b)該患者にエネルギー減損因子(EA)を投与する工程;および
(c)良性前立腺増殖症(BPH)の1つ以上の症状発現が該患者において減少されるか否かを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項16】
良性前立腺増殖症(BPH)を処置するための方法であって、
(a)良性前立腺増殖症(BPH)と診断された患者に、エネルギー減損因子を投与する工程;および
(b)良性前立腺増殖症(BPH)の1つ以上の症状発現が該患者において減少されるか否かを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法であって、前記エネルギー減損因子は、2−デオキシグルコース、3−ブロモピルベート、ゴシポール、オキサメート、ヨードアセテート、アポプトリジン、およびロンダミンからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
患者における良性前立腺増殖症の処置または予防のための医薬の調製における、エネルギー減損因子の使用。
【請求項19】
請求項18に記載の使用であって、前記患者は、2ng/mlより多い血清PSAを有し、必要に応じて、約10ng/ml未満の血清PSAを有する、使用。
【請求項20】
請求項18または19に記載の使用であって、前記エネルギー減損因子は、良性前立腺増殖症(BPH)についての別の処置と組み合わせて投与される、使用。
【請求項21】
良性前立腺増殖症(BPH)の処置のための化合物の有用性を決定するための方法であって、
a)クエン酸産生細胞を、該化合物と接触させる工程;
b)クエン酸酸化細胞を、該化合物と接触させる工程;
c)該クエン酸酸化細胞と比較した該クエン酸産生細胞に対する該接触の差次的影響を検出する工程
を包含し、差次的影響は、該因子が、良性前立腺増殖症(BPH)の処置のために有用であり得ることを示す、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記細胞は、前立腺に由来する、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記細胞は、ヒト細胞である、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記クエン酸産生細胞およびクエン酸酸化細胞は、低酸素条件下で培養された細胞である、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、前記差次的影響は、クエン酸酸化細胞と比較してクエン酸産生細胞において大きいアポトーシスの誘導である、方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、前記クエン酸産生細胞は、ヒト前立腺上皮細胞の初代培養物であり、前記クエン酸酸化細胞は、ヒト前立腺間質細胞の初代培養物である、方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、前記クエン酸産生細胞およびクエン酸酸化細胞は、樹立された細胞株である、方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法であって、前記クエン酸産生細胞は、LNCaP細胞であり、前記クエン酸酸化細胞は、PC−3細胞である、方法。
【請求項29】
良性前立腺増殖症(BPH)の処置のための化合物の有用性を決定するための方法であって、
(a)低酸素条件下で培養したクエン酸産生細胞を、該化合物と接触させる工程;および
(b)該接触が、HIF−1α発現において、(核画分において測定して)少なくとも約2分の1への用量依存性減少を生じる場合に、該化合物を、良性前立腺増殖症(BPH)の処置のために有用であるとして同定する工程
を包含する、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記クエン酸産生細胞は、LNCaP細胞である、方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518343(P2006−518343A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500983(P2006−500983)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/001146
【国際公開番号】WO2004/064736
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505257121)スレッシュオールド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】